説明

撮像装置

【課題】光線クロストークを防止しながら撮像装置の構成を簡素化する。
【解決手段】撮像装置100は、光透過性の基板32と、基板32の第1面321に対向する複数のレンズ44と、基板32の第2面322に形成されて各レンズ44の光軸が通過する開口部36を有する遮光層34と、第2面322に間隔をあけて対向する受光面56をレンズ44の光軸が通過するように配置された複数の受光素子54とを具備する。レンズ44の有効径Dと、開口部36の直径aと、受光面56と遮光層との距離hと、受光面56の直径dと、受光面56とレンズ44の中心との距離sと、各受光素子54のピッチpと、基板32の屈折率nとは、a<(h・D+h・d−s・d)/sおよびtan−1{(p−a/2−d/2)/h}>sin−1(1/n)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体認証のために生体の静脈像を撮像する撮像装置が特許文献1に開示されている。図9に示すように、特許文献1の撮像装置は、複数の受光素子921が配列された受光部92と、各受光素子921に対応するレンズ(マイクロレンズ)941を含むレンズアレイ94と、受光部92とレンズアレイ94との間に介在する遮光層96とを具備する。遮光層96は、遮光性の板状部材で構成され、各受光素子921に対応する円筒状の開口部に光透過性の透光部961を充填した構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−36058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、遮光層96の構造が複雑であるという問題がある。受光素子毎に開口部を有する薄膜状の遮光層が形成された基板を特許文献1の遮光層96の代わりに採用すれば構成は簡素化されるが、各レンズに対応する受光素子にそのレンズ以外からの光が到達するという問題(以下ではこの現象を「光線クロストーク」という)が顕在化する。以上の事情を考慮して、本発明は、光線クロストークを防止しながら撮像装置の構成を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の撮像装置は、第1面と第1面の反対側の第2面とを含む光透過性の第1基板(例えば基板32)と、第1面に沿って平面状に配置されて各々が入射光を集光する複数のレンズと、第2面に形成されて各レンズの光軸が通過する開口部を有する遮光層と、第2面に間隔をあけて対向する受光面をレンズの光軸が通過するように各レンズに対応して平面状に配置された複数の受光素子とを具備し、複数のレンズのうち相互に隣合う第1レンズ(例えばレンズ44[1])および第2レンズ(例えばレンズ44[2])の各々の光軸を通過する基準面内において、第1レンズの有効径の周縁(例えば点QA1)から第1レンズの光軸を通過して第1レンズに対応する受光素子の受光面の周縁(例えば点QA2)に至る直線(例えば直線LA)と第1基板の第2面との交点(例えば交点C1)で画定される基準領域の直径(例えば直径a0)を下回るように、第1レンズに対応する開口部の直径(例えば直径a)が設定され、かつ、基準面のうち第1レンズの光軸と第2レンズの軸との間の領域において、第2レンズに対応する開口部の周縁(例えば点QB1)と第1レンズに対応する受光素子の受光面の周縁(例えば点QB2)とを通過する直線(例えば直線LB)が第2レンズの光軸に対してなす角度(例えば角度θ)が、第1面に対する入射光の最大屈折角(例えば最大屈折角αm)を上回る。
【0006】
以上の構成では、レンズ毎に開口部が形成された遮光層が第1基板の第2面に形成されるから、遮光性の板状部材の各開口部に透光部を挿入した特許文献1の構成と比較して、構成が簡素化されるという利点がある。また、第1レンズに対応する開口部の直径が基準領域の直径を下回る(第1条件)から、第1レンズに対応する開口部を通過する光のうち第1レンズ以外から到来した成分は、第1レンズに対応する受光素子の受光面に到達しない。更に、第2レンズに対応する開口部と第1レンズに対応する受光面とを結ぶ直線の角度が最大屈折角を上回る(第2条件)から、第2レンズに対応する開口部を通過した光は、第1レンズに対応する受光素子の受光面に到達しない。すなわち、各受光素子に対する光線クロストークを防止することが可能である。
【0007】
本発明の好適な態様において、各レンズの有効径Dと、遮光層の各開口部の直径aと、各受光素子の受光面と遮光層の表面との距離hと、各受光面の直径dと、各受光面と各レンズの中心との距離sとは、以下の数式(A)の関係を満たす。
a<(h・D+h・d−s・d)/s ……(A)
以上の構成では、撮像装置の各要素の寸法が数式(A)の関係を満たすから、第1レンズに対応する開口部を通過する光のうち第1レンズ以外から到来した成分は、第1レンズに対応する受光素子の受光面に到達しない。
【0008】
本発明の好適な態様において、遮光層の各開口部の直径aと、複数の受光素子のピッチpと、各受光素子の受光面と遮光層の表面との距離hと、各受光面の直径dと、第1基板の屈折率nとは、以下の数式(B)の関係を満たす。
tan−1{(p−a/2−d/2)/h}>sin−1(1/n) ……(B)
以上の構成では、撮像装置の各要素の寸法が数式(B)の関係を満たすから、第2レンズに対応する開口部を通過した光は、第1レンズに対応する受光素子の受光面に到達しない。
【0009】
本発明の好適な態様の撮像装置は、第1基板の第1面に間隔をあけて対向する第2基板(例えば基板42)を具備し、複数のレンズは、第2基板のうち第1基板との対向面(例えば表面421)に形成される。更に好適な態様において、第1基板と第2基板とは熱膨張率が相等しい。以上の態様では、第1基板と第2基板とで熱膨張率が共通するから、各レンズと各開口部との位置のずれや第1基板および第2基板の熱応力を防止することが可能である。他方、第1基板の第1面に複数のレンズを形成した構成(例えば後述の第2実施形態)では、撮像装置が薄型化されるという利点がある。
【0010】
本発明の好適な態様の撮像装置は、第1基板の第2面に間隔をあけて対向する第3基板(例えば基板52)を具備し、複数の受光素子は、第3基板のうち第1基板との対向面(例えば表面521)に形成される。更に好適な態様において、第1基板と第3基板とは熱膨張率が相等しい。以上の態様では、第1基板と第3基板とで熱膨張率が共通するから、各開口部と各受光素子との位置ずれや第1基板および第3基板の熱応力を防止することが可能である。
【0011】
本発明の好適な態様の撮像装置は、第2基板と第3基板との間に介在する光透過性の充填層を具備する。充填層の屈折率と第1基板の屈折率とを略一致させた構成によれば、第1基板に入射した光が第1基板と充填層との境界面(第2面)で直進するから、数式(B)を満たすように各要素の寸法を選定することで光線クロストークを有効に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る撮像措置の断面図である。
【図2】撮像装置の分解断面図である。
【図3】光線クロストークを防止するための第1条件の説明図である。
【図4】光線クロストークを防止するための第2条件の説明図である。
【図5】充填層の内部を進行する光の角度の説明図である。
【図6】第2実施形態に係る撮像装置の断面図である。
【図7】第3実施形態に係る撮像装置の断面図である。
【図8】第4実施形態に係る撮像装置の断面図である。
【図9】特許文献1の撮像装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置100の断面図であり、図2は、撮像装置100の分解断面図である。撮像装置100は、生体認証のために生体200(例えば人間の指)の静脈像を撮像する生体認証装置(静脈センサー)であり、図1および図2に示すように遮光基板30と集光基板40と受光基板50とを具備する。集光基板40は受光基板50と生体200(被写体)との間に介在し、遮光基板30は集光基板40と受光基板50との間に介在する。
【0014】
遮光基板30は、基板32と遮光層34とを含んで構成される。基板32は、図2に示すように、集光基板40側の表面(以下「第1面」という)321と受光基板50側の表面(以下「第2面」という)322とを含む光透過性の板状部材である。例えばガラス基板が基板32として好適に利用される。遮光層34は、基板32の第2面322に形成された遮光性の薄膜である。図2に示すように、遮光層34には複数の開口部36が形成される。
【0015】
集光基板40は、基板42と複数のレンズ(マイクロレンズ)44とを含んで構成される。基板42は、基板32と熱膨張率(線膨張係数)が等しい光透過性の板状部材である。基板42の厚さは0.5mm程度である。例えば遮光基板30の基板32と同様にガラス基板が基板42として好適に利用される。複数のレンズ44は、基板42のうち遮光基板30の第1面321に対向する表面421に形成されて行列状に配列する。各レンズ44は、生体200側からの入射光を集光する凸レンズである。なお、基板42と複数のレンズ44とを一体に形成することも可能である。レンズ44の曲率半径は例えば160μm程度に設定される。
【0016】
図1に示すように、複数のレンズ44の表面が遮光基板30の第1面321に対向および接触するように基板32と基板42との間隔が規定される。遮光層34の各開口部36は、集光基板40の各レンズ44に1対1に対応して形成された略円形の透光領域である。レンズ44の光軸はそのレンズ44に対応する開口部36の中心を通過する。
【0017】
受光基板50は、基板52と複数の受光素子54とを含んで構成される。基板52は、基板32および基板42と熱膨張率(線膨張係数)が等しい光透過性の板状部材である。例えば遮光基板30の基板32や集光基板40の基板42と同様にガラス基板が基板52として好適である。遮光基板30と受光基板50とは、両者間に充填された充填層60(接着剤)で相互に固定される。充填層60は、基板32と屈折率が等しい光透過性の材料(例えば樹脂材料)で形成される。
【0018】
図2に示すように、複数の受光素子54は、基板52のうち遮光基板30の第2面322に対向する表面521に形成されて行列状に配列する。各受光素子54は、第2面322に対向する略円形の受光面56に入射する光量に応じた検出信号を生成する。集光基板40の各レンズ44と受光基板50の各受光素子54とは1対1に対応する。具体的には、レンズ44の光軸はそのレンズ44に対応する受光素子54の受光面56の中心を通過する。なお、受光基板50の製造には、例えば2009−200104号公報に開示された技術を利用できる。
【0019】
以上の構成において、図1に矢印で示すように、所定の位置(例えば生体200を挟んで集光基板40とは反対側)に配置された光源(図示略)による照射光が生体200の内部の静脈にて透過または反射して集光基板40に入射し、各レンズ44で集光されたうえで遮光層34の開口部36を通過して受光素子54の受光面56に到達する。すなわち、生体200の静脈像が撮像される。遮光層34の各開口部36は、その開口部36に対応する受光素子54に対する入射光を制限する手段として機能する。
【0020】
以上の構成によれば、受光素子54毎に開口部36を形成した遮光層34が基板32の第2面322に形成されるから、遮光性の板状部材の開口部に透光部961を充填した図9の遮光層34を採用する特許文献1の技術と比較して撮像装置100の構成が簡素化されるという利点がある。
【0021】
ところで、特許文献1の技術では、受光部92がシリコンで形成され、レンズアレイ94が石英ガラスで形成され、遮光層96が樹脂材料で形成される。すなわち、各要素の熱膨張率が大幅に相違する。したがって、例えばレンズ941と遮光層96の透光部961と受光素子921との各位置を高い精度で整合させることが困難であるという問題がある。また、熱膨張率の相違に起因した熱応力が各要素に発生するという問題もある。他方、第1実施形態では、基板32と基板42と基板52とで熱膨張率が共通するから、レンズ44と開口部36と受光素子54との位置の誤差を防止するとともに、各要素(集光基板40,遮光基板30,受光基板50)における熱応力の発生を抑制できるという利点がある。もっとも、熱膨張率の相違が問題とならないのであれば、基板32と基板42との熱膨張率を相違させた構成や、基板42と基板52との熱膨張率を相違させた構成も採用され得る
【0022】
撮像装置100の各要素の寸法は、光線クロストークが防止されるように選定される。図3および図4に示すように、集光基板40の複数のレンズ44のうち任意の1個のレンズ44[1]とレンズ44[1]に隣接する1個のレンズ44[2]とに着目して各要素の寸法の条件を詳述する。以下の説明では、レンズ44[1]に対応する要素(光軸A,開口部36,受光素子54,受光面56)の符号に便宜的に添字[1]を付加し、レンズ44[2]に対応する要素の符号には添字[2]を付加する。図3および図4は、レンズ44[1]の光軸A[1]とレンズ44[2]の光軸A[2]とを通過する平面(以下「基準面」という)での撮像装置100の断面図である。なお、図3および図4では、図面の煩雑化を防止する趣旨から各要素のハッチングを省略した。
【0023】
撮像装置100の各要素の寸法は、光線クロストークを防止するための第1条件(図3)と第2条件(図4)とを満たすように選定される。第1条件は、開口部36[1]を通過する光のうちレンズ44[1]を透過した光のみが受光素子54[1]の受光面56[1]に入射する(すなわち、レンズ44[1]以外から到来して開口部36[1]を通過した光は受光面56[1]の外側に到達する)という条件である。第2条件は、開口部36[2]を透過した光が受光素子54[1]の受光面56[1]に入射しない(受光面56[1]の外側に到達する)という条件である。第1条件および第2条件の各々について以下に詳述する。
【0024】
<第1条件>
図3に示すように、基準面内に直線LAを想定する。直線LAは、レンズ44[1]の周縁上の点QA1からレンズ44[1]の光軸A[1]と交差して受光素子54[1]の受光面56[1]の周縁上の点QA2に至る直線である。点QA1と点QA2とは、基準面内で光軸A[1]を挟んで反対側に位置する。直線LAと遮光基板30の基板32の第2面322との交点C1により基準領域Rが画定される。すなわち、基準領域Rは、第2面322と光軸A[1]との交点C0を中心として交点C1を円周上の点とする直径a0の円形領域である。基準領域Rの直径a0は、交点C0と交点C1との距離(すなわち半径)の2倍に相当する。
【0025】
図3から理解されるように、開口部36[1]の直径aが基準領域Rの直径a0を下回るように各開口部36の直径aを選定すれば(a<a0)、レンズ44[1]以外の領域から到来して開口部36[1]を通過した光は受光面56[1]の外側に到達する。すなわち、第1条件が満たされる。
【0026】
図3から幾何学的に把握される通り、基準領域Rの直径a0と、受光面56[1]の直径dと、受光面56[1](基板52の表面521)と遮光層34の表面との距離hと、光軸A[1]に沿う距離xとは、以下の数式(a1)の条件を満たす。距離xは、図3に示すように、直線LAと光軸A[1]との交点C2から受光面56[1]までの距離である。
a0/(h−x)=d/x ……(a1)
数式(a1)から以下の数式(a2)が導出される。
a0=d(h−x)/x ……(a2)
【0027】
また、レンズ44[1]の直径(有効径)Dと、受光面56[1]とレンズ44[1]の中心(基板42の表面421)との距離sは以下の数式(a3)を満たす。
D/(s−x)=d/x ……(a3)
数式(a3)から以下の数式(a4)が導出される。
x=d・s/(D+d) ……(a4)
【0028】
数式(a4)を数式(a1)に代入することで以下の数式(a5)が導出される。
a0=(h・D+h・d−s・d)/s ……(a5)
開口部36[1]の直径aが基準領域Rの直径a0を下回る(a<a0)という前述の条件と数式(a5)とから、第1条件を表現する以下の数式(A)が導出される。遮光層34の各開口部36の直径aは、数式(A)を満たすように選定される。
a<(h・D+h・d−s・d)/s ……(A)
【0029】
<第2条件>
図4に示すように、基準面内に直線LBを想定する。直線LBは、レンズ44[1]の光軸A[1]とレンズ44[2]の光軸A[2]との間の領域において、開口部36[2]の周縁上の点QB1と受光素子54[1]の受光面56[1]の周縁上の点QB2とを通過する直線である。直線LBは、レンズ44[2]の光軸A[2]に対して角度θをなす。
【0030】
図4から理解されるように、直線LBの角度θが、開口部36[2]を通過して充填層60の内部を進行する光が光軸A[2]に対してなす角度αの最大値(以下「最大屈折角」という)αmを上回れば(θ>αm)、開口部36[2]を通過した光は受光面56[1]には到達しない。すなわち、第2条件が満たされる。
【0031】
図5に示すように、遮光基板30の基板32の第1面321に入射角αinで空気中から光が入射した場合を想定する。入射角αinと第1面321での屈折角αとの関係は、基板32の屈折率nを含む以下の数式(b1)で表現される。
sin(α)=sin(αin)/n ……(b1)
【0032】
充填層60の屈折率が基板32の屈折率nと同等であると仮定すると、基板32の第1面321に入射した光は、基板32と充填層60との境界面(第2面322)にて直進し、数式(b1)を満たす屈折角αで充填層60の内部を透過する。充填層60の内部での最大屈折角αmは、数式(b1)の入射角αinを90°とした場合に相当するから(sin(αm)=sin(90°)/n)、最大屈折角αmを表現する以下の数式(b2)が導出される。
αm=sin−1(1/n) ……(b2)
【0033】
他方、図4から幾何学的に把握される通り、第2面322に平行な方向における点QB1と点QB2との距離zは、以下の数式(b3)で表現される。数式(b3)の記号pは、受光素子54[1]と受光素子54[2]とのピッチ(すなわち受光面56[1]と受光面56[2]との中心間距離)を意味する。
z=p−a/2−d/2 ……(b3)
したがって、直線LBと光軸[2]との角度θは、距離zと前述の距離h(受光面56[2]と遮光層34の表面との距離)とを含む以下の数式(b4)を満たす。
tan(θ)=z/h
=(p−a/2−d/2)/h ……(b4)
数式(b4)から以下の数式(b5)が導出される。
θ=tan−1{(p−a/2−d/2)/h} ……(b5)
【0034】
直線LBの角度θが最大屈折角αmを上回る(θ>αm)という前述の条件と数式(b2)および数式(b5)とから、第2条件を表現する以下の数式(B)が導出される。
tan−1{(p−a/2−d/2)/h}>sin−1(1/n) ……(B)
【0035】
撮像装置100の各要素の寸法は、数式(A)および数式(B)を満たすように選定される。したがって、レンズ44[1]以外から到来して開口部36[1]を通過した光は受光面56[1]に入射せず(数式(A):第1条件)、かつ、開口部36[2]を通過した光は受光面56[1]に入射しない(数式(B):第2条件)。すなわち、第1実施形態によれば、各受光素子54に対する光線クロストークを防止することが可能である。
【0036】
例えば、レンズ44の直径Dと受光素子54のピッチpと距離hとを100μmとし、受光素子54の直径dを10μmとし、距離sを400μmとした場合、数式(A)の右辺は17.5μmとなる。したがって、各開口部36の直径aは、数式(A)を満たす範囲内で例えば15μmに設定される。また、以上の条件のもとでは角度θ(数式(B)の左辺)は約41.19°となる。基板32および充填層60の屈折率nを1.53とした場合、最大屈折角αm(数式(B)の右辺)は約40.81°となるから、数式(B)の条件を満たす。以上のように数式(A)および数式(B)の双方を満たすから、各受光素子54に対する光線クロストークを防止することが可能である。
【0037】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各構成において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0038】
図6は、第2実施形態の撮像装置100の断面図である。図6に示すように、第2実施形態の撮像装置100では、遮光基板30の基板32のうち生体200側の第1面321に複数のレンズ44が形成される。各レンズ44は、第1実施形態と同様に、生体200から到来する光を集光する。
【0039】
第2実施形態においても第1条件と第2条件とを満たすように撮像装置100の各要素の寸法が選定される。したがって、第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、複数のレンズ44が基板32に形成されるから、第1実施形態の基板32は不要である。したがって、第1実施形態と比較して撮像装置100を薄型化することが可能である。
【0040】
<C:第3実施形態>
図7は、第3実施形態の撮像装置100の断面図である。図7に示すように、第3実施形態の撮像装置100は、基板42と複数のレンズ44との間に介在する遮光層46を集光基板40に追加した構成である。遮光層46には、各レンズ44に対応する円形の開口部461が形成される。生体200から基板42に入射した光のうち開口部461を通過した光が各レンズ44で集光される。
【0041】
第3実施形態における数式(A)の寸法Dは、遮光層46の開口部461の直径である。すなわち、第1実施形態におけるレンズ44の直径と第3実施形態の開口部461の直径とは、レンズ44の有効径Dとして包括される。第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0042】
<D:第4実施形態>
図8は、第4実施形態の撮像装置100の断面図である。図8に示すように、第4実施形態の撮像装置100は、基板52の表面521を覆う遮光層58を受光基板50に追加した構成である。遮光層58には、各受光素子54に対応する円形の開口部581が形成される。基板32および充填層60を透過した光は開口部581を通過して受光素子54に入射する。
【0043】
第4実施形態における数式(A)および数式(B)の寸法dは、遮光層58の開口部581の直径である。すなわち、受光素子54の表面のうち開口部581の内側に露出する領域が受光面56として機能する。第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【符号の説明】
【0044】
100……撮像装置、200……生体、30……遮光基板、32……基板(第1基板)、321……第1面、322……第2面、34……遮光層、36……開口部、40……集光基板、42……基板(第2基板)、44……レンズ、46……遮光層、461……開口部、50……受光基板、52……基板(第3基板)、54……受光素子、56……受光面、58……遮光層、581……開口部、60……充填層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを含む光透過性の第1基板と、
前記第1面に沿って平面状に配置されて各々が入射光を集光する複数のレンズと、
前記第2面に形成されて前記各レンズの光軸が通過する開口部を有する遮光層と、
前記第2面に間隔をあけて対向する受光面を前記レンズの光軸が通過するように前記各レンズに対応して平面状に配置された複数の受光素子とを具備し、
前記複数のレンズのうち相互に隣合う第1レンズおよび第2レンズの各々の光軸を通過する基準面内において、前記第1レンズの有効径の周縁から前記第1レンズの光軸を通過して前記第1レンズに対応する前記受光素子の前記受光面の周縁に至る直線と前記第1基板の前記第2面との交点で画定される基準領域の直径を下回るように、前記第1レンズに対応する前記開口部の直径が設定され、かつ、前記基準面のうち前記第1レンズの光軸と前記第2レンズの軸との間の領域において、前記第2レンズに対応する前記開口部の周縁と前記第1レンズに対応する前記受光素子の前記受光面の周縁とを通過する直線が前記第2レンズの光軸に対してなす角度が、前記第1面に対する入射光の最大屈折角を上回る
撮像装置。
【請求項2】
前記各レンズの有効径Dと、前記遮光層の前記各開口部の直径aと、前記各受光素子の前記受光面と前記遮光層の表面との距離hと、前記各受光面の直径dと、前記各受光面と前記各レンズの中心との距離sとは、以下の数式(A)の関係を満たす
a<(h・D+h・d−s・d)/s ……(A)
請求項1の撮像装置。
【請求項3】
前記遮光層の前記各開口部の直径aと、前記複数の受光素子のピッチpと、前記各受光素子の前記受光面と前記遮光層の表面との距離hと、前記各受光面の直径dと、前記第1基板の屈折率nとは、以下の数式(B)の関係を満たす
tan−1{(p−a/2−d/2)/h}>sin−1(1/n) ……(B)
請求項1または請求項2の撮像装置。
【請求項4】
前記第1基板の前記第1面に間隔をあけて対向する第2基板を具備し、
前記複数のレンズは、前記第2基板のうち前記第1基板との対向面に形成される
請求項1から請求項3の何れかの撮像装置。
【請求項5】
前記第1基板と前記第2基板とは熱膨張率が相等しい
請求項4の撮像装置。
【請求項6】
前記複数のレンズは、前記第1基板の前記第1面に形成される
請求項1から請求項3の何れかの撮像装置。
【請求項7】
前記第1基板の前記第2面に間隔をあけて対向する第3基板を具備し、
前記複数の受光素子は、前記第3基板のうち前記第1基板との対向面に形成される
請求項1から請求項6の何れかの撮像装置。
【請求項8】
前記第1基板と前記第3基板とは熱膨張率が相等しい
請求項7の撮像装置。
【請求項9】
前記第2基板と前記第3基板との間に介在する光透過性の充填層を具備する
請求項7または請求項8の撮像装置。
【請求項10】
前記充填層の屈折率と前記第1基板の屈折率とは相等しい
請求項9の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−199868(P2012−199868A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63926(P2011−63926)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】