説明

操作者判定装置及び操作者判定装置を備えた車載用装置

【課題】低コストで応答速度が早い操作者判定装置及び操作者判定装置を備えた車載用装置を実現する。
【解決手段】超音波センサ11a〜11cにより、ナビゲーション装置20の操作ボタン20c、タッチボタン20dなどの操作者の手または腕(D,P)の位置を検出して検出信号を出力し、操作者判定装置の判定部により、操作者が助手席の搭乗者のみであるか否かを判定することができる。そして、ナビゲーション装置20の制御部により、車両の走行中に、目的地入力など複雑な操作に基づいて制御部が実行する機能を停止し、判定部が、操作者が助手席の搭乗者のみであると判定した場合に、機能の停止を解除することができる。ここで、操作者の手または腕の位置の検出に超音波センサを用いるため、信号の処理負荷を小さくすることができるとともに、低コストで作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナビゲーション装置等の車載用装置の操作者を判定する操作者判定装置及び操作者判定装置を備えた車載用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載用ナビゲーション装置(カーナビゲーション)等の各種装置において、通常、操作する者は各種装置に設けられた表示画面を見ながら操作を行うため、危険防止のために、車両の走行中には運転者が、例えば、カーナビゲーション装置の目的地入力など複雑な操作ができないように制御されている。
一方、助手席の搭乗者が車両の走行中にカーナビゲーション装置を操作しても安全運転に支障がないため、助手席の搭乗者が走行中にナビゲーション装置を操作することができれば、走行中に目的地を変更できたり、目的地に行く前に立ち寄りたい場所の情報を集めたりすることが可能になり、快適なドライブを楽しむことができるようになる。
【0003】
そこで、例えば、下記特許文献1に記載の発明では、CMOSカメラにより撮像した画像データに基づいて、ナビゲーション装置が運転席、助手席のいずれの側から操作されたかを判断し、運転者に対してのみ車両走行中における操作制限を適用し、助手席の搭乗者による操作のみを可能とする操作者判定方法及び操作者判定装置を開示している。
【特許文献1】特開2002−133401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の操作者判定方法及び操作者判定装置では、CMOSカメラにより撮像した画像データの画像処理等の解析が必要であるため、処理負荷が大きくなるので、応答速度が遅くなるという問題があった。また、CMOSカメラは、コストが高いという問題もあった。
【0005】
そこで、この発明は、低コストで応答速度が早い操作者判定装置及び操作者判定装置を備えた車載用装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両に設けられた車載用装置の操作部を操作する操作者が、前記車両の運転者及び助手席の搭乗者のいずれであるかを判定する操作者判定装置であって、前記操作者の手または腕の位置を検出し、検出信号を出力する超音波センサと、前記超音波センサから出力される検出信号に基づいて、前記操作者が前記助手席の搭乗者のみであるか否かを判定する判定手段と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、超音波センサにより、車載用装置の操作部を操作する操作者の手または腕の位置を検出し、検出信号を出力し、判定手段により、超音波センサから出力される検出信号に基づいて、操作者が助手席の搭乗者のみであるか否かを判定することができる。これにより、操作者が車両の運転者及び助手席の搭乗者のいずれであるかを判定することができる。また、操作者の手または腕の位置の検出に超音波センサを用いるため、信号の処理負荷を小さくすることができるとともに、低コストで作製することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の操作者判定装置において、前記超音波センサは複数個設けられており、前記運転者の手または腕の位置を検出する超音波センサと前記助手席の搭乗者の手または腕の位置を検出する超音波センサとが少なくとも1個ずつ備えられている、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、運転者の手または腕の位置を検出する超音波センサと助手席の搭乗者の手または腕の位置を検出する超音波センサとが少なくとも1個ずつ備えられているため、各超音波センサにより運転席側及び助手席側のいずれから反射してきた超音波かを正確に区別して検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の操作者判定装置において、前記超音波センサは、狭指向性である、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、超音波センサは、狭指向性であるため、運転席側及び助手席側のいずれから反射してきた超音波かを正確に区別して検出することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の操作者判定装置において、複数個の前記超音波センサがアレイ状に配列して形成されており、前記各超音波センサから送信される超音波の位相差を制御可能に構成されている、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、複数個の超音波センサがアレイ状に配列して形成されており、各超音波センサから送信される超音波の位相差を制御可能に構成されているため、超音波センサの超音波の位相差を制御して送信することにより、各超音波の干渉により特定方向に強められた超音波を進行させることができる。これにより、超音波センサを狭指向性にするとともに、所定の方向に超音波を走査することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の操作者判定装置において、前記車載用装置は、ナビゲーション装置である、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、操作者判定装置をナビゲーション装置に適用することができる。これにより、例えば、車両の走行中に運転者がナビゲーション装置を操作しようとした場合に、操作者判定装置により操作者が助手席の搭乗者のみではないという判定を行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の操作者判定装置において、前記超音波センサは、前記ナビゲーション装置の表示画面の裏面に設けられている、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、超音波センサは、ナビゲーション装置の表示画面の裏面に設けられているため、超音波センサにより発生した超音波は、表示画面を伝達媒体として、送受信され、操作者の検出に用いることができる。これにより、超音波センサが外部から視認できないため、意匠性に優れた操作者判定装置を製造することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の操作者判定装置において、前記超音波センサは、前記表示画面に表示され、前記ナビゲーション装置の操作を行う操作部として機能する、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、超音波センサは、表示画面に表示され、ナビゲーション装置の操作を行う操作部として機能するため、1個の超音波センサが、超音波の送受信と操作部という2つの機能を兼ね備えることになるので、部品の数を減らすことができ、コスト低減と省スペースに寄与することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載の操作者判定装置において、前記運転者及び前記助手席の搭乗者に対して超音波を送信可能な位置に、前記超音波センサを移動させる移動手段を備えた、という技術的手段を用いる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、運転者及び助手席の搭乗者に対して超音波を送信可能な位置に、超音波センサを移動させる移動手段を備えているため、1個の超音波センサにより、運転席側と助手席側との両方の操作者の検出を行うことができるので、超音波センサの数を減じることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明では、車両に設けられ、前記車両の運転者または助手席の搭乗者が操作可能な操作部と、前記操作部に対する操作に基づいて所定の電気的制御を行う制御部と、前記操作部を操作する操作者の手または腕の位置を検出し、検出信号を出力する超音波センサと、前記超音波センサから出力される検出信号に基づいて、前記操作者が前記助手席の搭乗者のみであるか否かを判定する判定手段と、前記車両の走行中に、前記操作部に対する特定の操作に基づいて前記制御部が実行する機能を停止し、前記判定手段が、前記操作者が前記助手席の搭乗者のみであると判定した場合に、前記制御部が実行する機能の停止を解除する操作制御手段と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、超音波センサにより、車載用装置の操作部を操作する操作者の手または腕の位置を検出し、検出信号を出力し、判定手段により、超音波センサから出力される検出信号に基づいて、操作者が助手席の搭乗者のみであるか否かを判定することができる。
そして、操作制御手段により、車両の走行中に、操作部に対する特定の操作に基づいて制御部が実行する機能を停止し、判定手段が、操作者が助手席の搭乗者のみであると判定した場合に、制御部が実行する機能の停止を解除することができる。
これにより、例えばナビゲーション装置の操作のうち、目的地入力など複雑な操作で、運転者が車両の走行中に行うと、安全運転に支障が生じるおそれがあるような特定の操作は、助手席の搭乗者のみが行うことができるようにすることができ、安全かつ快適なドライブを楽しむことができるようになる。
また、操作者の手または腕の位置の検出に超音波センサを用いるため、信号の処理負荷を小さくすることができるとともに、低コストで作製することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の車載用装置において、前記超音波センサは複数個設けられており、前記運転者の手または腕の位置を検出する超音波センサと前記助手席の搭乗者の手または腕の位置を検出する超音波センサとが少なくとも1個ずつ備えられている、という技術的手段を用いる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、運転者の手または腕の位置を検出する超音波センサと助手席の搭乗者の手または腕の位置を検出する超音波センサとが少なくとも1個ずつ備えられているため、各超音波センサにより運転席側及び助手席側のいずれから反射してきた超音波かを正確に区別して検出することができる。
【0026】
請求項11に記載の発明では、請求項9または請求項10に記載の車載用装置において、前記超音波センサは、狭指向性である、という技術的手段を用いる。
【0027】
請求項11に記載の発明によれば、超音波センサは、狭指向性であるため、運転席側及び助手席側のいずれから反射してきた超音波かを正確に区別して検出することができる。
【0028】
請求項12に記載の発明では、請求項9に記載の車載用装置において、複数個の前記超音波センサがアレイ状に配列して形成されており、前記各超音波センサから送信される超音波の位相差を制御可能に構成されている、という技術的手段を用いる。
【0029】
請求項12に記載の発明によれば、複数個の超音波センサがアレイ状に配列して形成されており、各超音波センサから送信される超音波の位相差を制御可能に構成されているため、超音波センサの超音波の位相差を制御して送信することにより、各超音波の干渉により特定方向に強められた超音波を進行させることができる。これにより、超音波センサを狭指向性にするとともに、所定の方向に超音波を走査することができる。
【0030】
請求項13に記載の発明では、請求項9ないし請求項12のいずれか1つに記載の車載用装置において、前記車載用装置は、ナビゲーション装置である、という技術的手段を用いる。
【0031】
請求項13に記載の発明によれば、操作者判定装置をナビゲーション装置に適用することができる。これにより、例えば、車両の走行中に運転者がナビゲーション装置を操作しようとした場合に、操作者判定装置により操作者が助手席の搭乗者のみではないという判定を行うことができる。そして、操作制御手段により、車両の走行中に、操作部に対する特定の操作に基づいて制御部が実行する機能を停止し、判定手段が、操作者が助手席の搭乗者のみであると判定した場合に、制御部が実行する機能の停止を解除することができる。
【0032】
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載の車載用装置において、前記超音波センサは、前記ナビゲーション装置の表示画面の裏面に設けられている、という技術的手段を用いる。
【0033】
請求項14に記載の発明によれば、超音波センサは、ナビゲーション装置の表示画面の裏面に設けられているため、超音波センサにより発生した超音波は、表示画面を伝達媒体として、送受信され、操作者の検出に用いることができる。これにより、超音波センサが外部から視認できないため、意匠性に優れた車載用装置を製造することができる。
【0034】
請求項15に記載の発明では、請求項14に記載の車載用装置において、前記超音波センサは、前記表示画面に表示され、前記ナビゲーション装置の操作を行う操作部として機能する、という技術的手段を用いる。
【0035】
請求項15に記載の発明によれば、超音波センサは、表示画面に表示され、ナビゲーション装置の操作を行う操作部として機能するため、1個の超音波センサが、超音波の送受信と操作部という2つの機能を兼ね備えることになるので、部品の数を減らすことができ、コスト低減と省スペースに寄与することができる。
【0036】
請求項16に記載の発明では、請求項9に記載の車載用装置において、前記運転者及び前記助手席の搭乗者に対して超音波を送信可能な位置に、前記超音波センサを移動させる移動手段を備えた、という技術的手段を用いる。
【0037】
請求項16に記載の発明によれば、運転者及び助手席の搭乗者に対して超音波を送信可能な位置に、超音波センサを移動させる移動手段を備えているため、1個の超音波センサにより、運転席側と助手席側との両方の操作者の検出を行うことができるので、超音波センサの数を減じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明に係る操作者判定装置及び操作者判定装置を備えたナビゲーション装置について、図を参照して説明する。図1は、操作者判定装置及びナビゲーション装置のブロック図を示す。図2は、操作者判定装置を搭載したナビゲーション装置の概略説明図である。図2(A)は、操作者判定装置を搭載したナビゲーション装置の正面説明図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A矢視断面図である。図3は、操作者判定装置による操作者判定処理とナビゲーション装置による操作禁止処理及び操作禁止解除処理を示すフローチャートである。図4は、超音波センサの配置の変更例を示す説明図である。
なお、以下の説明は、右ハンドル車についてのものである。
【0039】
図1に示すように、操作者判定装置10は、操作者を検出する超音波センサ11と、CPU等により構成される判定部12とを備えている。操作者判定装置10に判定部12は、ナビゲーション装置20の制御部25と電気的に接続されている。
ナビゲーション装置20は、GPSセンサなどの位置検出手段21、地図情報や検索プログラム、画像処理プログラム等の各種プログラムが格納された記憶手段22、地図や現在位置等を表示する表示部23、目的地設定や画面切替等のナビゲーション装置20の操作を行う操作部24及び記憶手段22に格納されたデータ、プログラムに基づいて各部を制御する図示しないCPUを中心にROM、RAM等のメモリ装置やADコンバータなどの各種入出力インタフェース等を備えた制御部25を備えている。
ナビゲーション装置20では、位置検出手段21が現在位置を測定し、記憶手段22に記憶された地図情報等に基づいて、制御部25が目的地までの経路等の演算処理を行い、表示部23に地図や現在位置等を表示する。
【0040】
ナビゲーション装置20は、図示しないインスツルメントパネルに形成された収容部へ収容され、運転席と助手席とのほぼ中央に両席から操作することができるように配置されている。ここで、図2において、運転席は図中右側、助手席は左側とする。
【0041】
ナビゲーション装置20の表示画面20aの上部のフレーム20bには、3個の超音波センサ11(11a〜11c)が並んで配置されている。向かって右側に配置されている超音波センサ11aは、運転席側に超音波の送受信面(センサの振動面)を向けて配置されており、運転者がナビゲーション装置20を操作するときに伸ばした腕Dとナビゲーション装置20との距離を検出する。向かって左側に配置されている超音波センサ11cは、助手席側に超音波の送受信面を向けて配置されており、助手席の搭乗者がナビゲーション装置20を操作するときに伸ばした腕Pとナビゲーション装置20との距離を検出する。中央の超音波センサ11bは、ナビゲーション装置20正面に超音波の送受信面を向けて配置されており、運転者または助手席の搭乗者がナビゲーション装置20を操作するときに伸ばした腕D,Pとナビゲーション装置20との距離を検出する。
【0042】
超音波センサ11は、超音波を送受信する超音波振動子13と、一方の表面の中央部に超音波振動子13が取り付けられ、他方の表面が車内側に露出して取り付けられている音響整合層14とから構成されている。
ここで、「超音波」とは、一般に言われている人間の可聴周波数以上の音域(20kHz以上)の音波を含み、工業分野における「音波とは、弾性によって起こる波動のことであり、超音波とは人間の耳で聞くことを目的としない音波のことである。」という定義に従うものである。
超音波振動子13は、例えば、PZTなどの圧電材料により形成されており、音響整合層14を介して超音波の送受信を行い、車内の被検出対象を検出する。
音響整合層14は、例えば、ポリカーボネートなどの樹脂により形成され、超音波の伝達媒体たる空気と超音波振動子13との音響インピーダンスの差を緩和して超音波の伝達効率を向上させるとともに、超音波の指向性を決定する。例えば、図2(A)に示すように、音響整合層14を水平方向に幅広く、垂直方向に狭い形状に形成すると、水平方向には指向性が狭くなり(狭指向性)、垂直方向には指向性を広く(広指向性)することができる。例えば、水平方向の指向性を音響整合層14の法線方向の±5°以内にすることができる。
これにより、運転席側と助手席側とで超音波の検出範囲が重なることがないため、いずれの側から反射してきた超音波かを正確に区別することができる。また、垂直方向のどの位置から腕を伸ばしてナビゲーション装置20を操作しても、確実に検出することができる。
ここで、音響整合層14は、ナビゲーション装置20のフレーム20bの構成材料、または、フレーム20bに色彩など外観が似ている材質を用いることにより、外部から目立たなくすることができ、意匠的に優れた超音波センサ11を形成することができる。
【0043】
表示画面20a下部のフレーム20bには、操作ボタン20cが、表示画面内には、タッチセンサによるタッチボタン20dが設けられている。操作ボタン20c及びタッチボタン20dは操作部24(図1)として機能しており、これらを操作することにより、目的地設定や画面切替等のナビゲーション装置20の操作を行うことができる。
【0044】
(操作者判定装置による操作者判定処理とナビゲーション装置による操作禁止処理及び操作禁止解除処理)
次に、操作者判定装置による操作者判定処理とナビゲーション装置による操作禁止処理及び操作禁止解除処理について図3を用いて説明する。この操作者判定処理は、図1に示す操作者判定装置10の判定部12において、操作禁止処理及び操作禁止解除処理は、ナビゲーション装置20の制御部25においてそれぞれ実行される。
【0045】
本処理は、助手席に設けられた圧力センサ等の搭乗者センサ31(図1)により、助手席に搭乗者がいると判断された場合に、実行される。助手席に搭乗者がいないと判断された場合には、ナビゲーション装置20を操作可能な者は運転者だけなので、以下に説明する処理を行う必要がなく、ナビゲーション装置20は走行中には操作が禁止され、走行していないときにのみ操作可能となる。
【0046】
まず、本処理では、ステップS101により、操作者判定装置10では超音波センサ11が停止し、ナビゲーション装置20は操作可能な初期状態に設定される。
【0047】
続くステップS103により、例えば、車速センサ32のように、車両が走行中か否かを判断可能な信号を出力するセンサが出力する信号に基づいて、車両が走行中であるか否かを判断する。車両が走行中であると判断しない場合には(S103:No)、ナビゲーション装置20を運転者が操作しても安全運転に支障がないため、本処理を終了する。車両が走行中であると判断した場合には(S103:YES)、ステップS105の処理に移行する。
【0048】
続くステップS105では、制御部25によって操作部24に対して操作を禁止する操作禁止信号を出力して、ナビゲーション装置20を操作ができない状態にする操作禁止処理を行う。
【0049】
続くステップS107では、ナビゲーション装置20の操作があったか否かを判断する。運転者、または、助手席の搭乗者が、操作ボタン20c、または、タッチボタン20dを操作していない、つまり、ナビゲーション装置20の操作があったと判断しない場合には(S107:No)、安全運転に支障がないため、本処理を終了する。運転者、または、助手席の搭乗者が、操作ボタン20c、または、タッチボタン20dを操作した、つまり、ナビゲーション装置20の操作があったと判断した場合には(S107:YES)、ステップS109の処理に移行する。
【0050】
続くステップS109では、超音波センサ11を作動させる。
続くステップS111では、ナビゲーション装置20の操作者が助手席の搭乗者であるか否かを判断する。
ここで、ナビゲーション装置20の操作者が助手席の搭乗者であるか否かの判断は、超音波センサ11(11a〜11c)が出力する距離情報に基づいて行なわれる。
運転者または助手席の搭乗者がナビゲーション装置20を操作するときには、操作者の指先が、操作ボタン20c、または、タッチボタン20dに触れているので、操作者の腕は、ナビゲーション装置20からある一定の距離以内に存在している。そこで、この一定の距離を閾値Lsとして設定しておく。
【0051】
例えば、超音波センサ11aが、ナビゲーション装置20近傍であって、運転席方向の距離L2(L2<Ls)に存在する物体を検出し、超音波センサ11bが、ナビゲーション装置20近傍であって、ナビゲーション装置20の正面の距離L1(L1<Ls)に存在する物体を検出し、超音波センサ11cが、距離Ls以下に存在する物体を検出しなかった場合には、その物体は運転席側(右側)から近づいてきた物体であるので、その物体は運転者の腕Dである、つまり、操作者は運転者である、と判断することができる。
【0052】
また、超音波センサ11cが、ナビゲーション装置20近傍であって、助手席方向の距離L3(L3<Ls)に存在する物体を検出し、超音波センサ11bが、ナビゲーション装置20近傍であって、ナビゲーション装置20の正面の距離L4(L4<Ls)に存在する物体を検出し、超音波センサ11aが、距離Ls以下に存在する物体を検出しなかった場合には、その物体は助手席側(左側)から近づいてきた物体であるので、その物体は助手席の搭乗者の腕Pである、つまり、操作者は助手席の搭乗者である、と判断することができる。
【0053】
ナビゲーション装置20の操作者が助手席の搭乗者であると判断しない場合には(S111:No)、ナビゲーション装置20の操作者は運転者であるので、ナビゲーション装置20の操作が禁止された状態で、本操作者判定処理を終了する。ナビゲーション装置20の操作者が助手席の搭乗者であると判断した場合には(S111:YES)、ステップS113に処理を移行する。
【0054】
ステップS113では、制御部25は、操作の禁止を解除する操作禁止解除信号を操作部24に出力して、ナビゲーション装置20の操作が可能な状態にする操作禁止解除処理を行う。これにより、助手席の搭乗者はナビゲーション装置20の操作を継続することができる。
【0055】
続くステップS115では、ナビゲーション装置20の操作が終了したか、または、運転者、または、助手席の搭乗者が、操作ボタン20c、または、タッチボタン20dの操作を開始してから所定の時間が経過したか否かを判断する。操作が終了したか否かは、例えば、運転者、または、助手席の搭乗者が、操作ボタン20c、または、タッチボタン20dを操作することにより、行き先設定の確定を行ったか否か等により判断する。操作を開始してから所定の時間が経過したか否かは、例えば、図示しないタイマーなどで計時することにより判断する。
【0056】
ナビゲーション装置20の操作が終了したか、または、操作を開始してから所定の時間が経過したと判断しない場合には(S115:No)、本ステップの判断を繰り返し、待機する。ナビゲーション装置20の操作が終了したか、または、操作を開始してから所定の時間が経過したと判断した場合には(S115:YES)、ステップS117に処理を移行する。
操作を開始してから所定の時間が経過した場合に、ステップS117に処理を移行することにより、例えば、助手席の搭乗者がナビゲーション装置20の操作を中断している間に、運転者が操作を行うというおそれをなくすことができる。
【0057】
そして、ステップS117により、制御部25によって操作部24に対して操作を禁止する操作禁止信号を出力して、ナビゲーション装置20の操作ができない状態にし、本処理を終了する。
【0058】
本処理は、ナビゲーション装置20の操作が有ったときに開始してもよい。この構成を用いると、ナビゲーション装置20の操作がない場合には、本処理を行わないので、本処理で消費する電力を低減することができる。この場合、ステップS107の処理を省略する。
超音波センサ11の作動はステップS109で作動、常時作動させておいてもよい。例えば、車両のイグニッションスイッチがオンされた場合に、超音波センサ11が始動する構成を採用することもできる。この場合、ステップS109の処理を省略する。
【0059】
狭指向性の超音波センサ11を使用すると、検出方向が限定されるため、距離を検出するだけで、被検出対象の位置を特定することができる。従って、超音波センサ11aが検出した距離と超音波センサ11cが検出した距離とのうち、検出された距離が短い方が操作者の存在方向であるので、超音波センサ11aと超音波センサ11cとの2つの超音波センサを用いることで、操作者が運転者か助手席の搭乗者かを判定することができる。
【0060】
各超音波センサ11は、時間差で超音波を発信したり、発信間隔を変化させたりすることにより、腕の動きを検出することもできる。これにより、例えば、操作者と座席に置いてある荷物を区別することもできる。
【0061】
各超音波センサ11は、音響整合層14を設けずに、フレーム20bの裏面に直接、超音波振動子13を取り付けた構成としてもよい。この構成を用いると、各超音波センサ11は外部から視認できないため、意匠性に優れた操作者判定装置10を製造することができる。
【0062】
また、図4に示すように、超音波センサ11a及び超音波センサ11cは、それぞれフレーム20bの下方の角部近傍に配置してもよい。この構成を用いると、操作者が操作する操作ボタン20c及びタッチボタン20dに近い位置で操作者の腕を検出することができるため、検出感度を向上させることができる。
【0063】
なお、上述の説明は、右ハンドル車についてのものであり、左ハンドル車については、運転席と助手席とは右ハンドル車と逆の配置であり、上述の説明において、運転者と助手席の搭乗者とを入れ替えて読み替えればよい。
また、操作者判定装置10をナビゲーション装置20に適用する場合について説明したが、操作者判定装置10は、他の車載用装置、例えば、オーディオ装置などに適用することもできる。この構成を用いた場合も、運転者が車両の走行中に行うと、安全運転に支障が生じるおそれがあるような特定の操作は、助手席の搭乗者のみが行うことができるようにすることができ、安全かつ快適なドライブを楽しむことができるようになる。
【0064】
[最良の形態の効果]
(1)本実施形態の操作者判定装置10及びナビゲーション装置20によれば、超音波センサ11により、ナビゲーション装置20の操作ボタン20c、タッチボタン20dなどの操作部24を操作する操作者の手または腕(D,P)の位置を検出し、検出信号を出力し、操作者判定装置10の判定部12により、超音波センサ11から出力される検出信号に基づいて、操作者が助手席の搭乗者のみであるか否かを判定することができる。
そして、ナビゲーション装置20の制御部25により、車両の走行中に、操作部24に対する特定の操作に基づいて制御部25が実行する機能を停止し、判定部12が、操作者が助手席の搭乗者のみであると判定した場合に、制御部25が実行する機能の停止を解除することができる。
これにより、例えばナビゲーション装置20の操作のうち、目的地入力など複雑な操作で、運転者が車両の走行中に行うと、安全運転に支障が生じるおそれがあるような特定の操作は、助手席の搭乗者のみが行うことができるようにすることができ、安全かつ快適なドライブを楽しむことができるようになる。
また、操作者の手または腕(D,P)の位置の検出に超音波センサ11を用いるため、信号の処理負荷を小さくすることができるとともに、低コストで作製することができる。
【0065】
(2)運転者の手または腕(D)の位置を検出する超音波センサ11aと助手席の搭乗者の手または腕(P)の位置を検出する狭指向性の超音波センサ11cとがそれぞれ備えられているので、各超音波センサにより運転席側及び助手席側のいずれから反射してきた超音波かを正確に区別して検出することができ、操作者を正確に判定することができる。
【0066】
〈その他の実施形態〉
(1)図5に示すように、1個の超音波センサ11を用いて、運転席側と助手席側との両方の操作者の検出を行う構成を採用することもできる。例えば、図5(A)に示すように、超音波センサ11を水平方向に往復移動させる水平移動機構40を用いて、所定のタイミングで超音波の送受信を行う構成を用いることができる。また、図5(B)に示すように、超音波センサ11の向きを水平方向に回転往復運動をさせる回転移動機構41を用いて、所定のタイミングで超音波の送受信を行う構成を用いることができる。この構成を用いると、超音波センサ11の数を減じることができる。
【0067】
(2)図6(A)に示すように、超音波センサ11は、1つの音響整合層14に、複数個の超音波振動子13をアレイ状に配列して形成してもよい。ここで、超音波センサ11をフェーズドアレイとして構成し、水平方向に配置された超音波振動子13の超音波の位相差を制御して送信することにより、超音波センサ11を狭指向性にすることができる。
例えば、図6(B)に示すように、超音波振動子13pから超音波U1、超音波振動子13qから超音波U2を位相差を制御して送信した場合、音響整合層14の法線方向に対して角度θ傾いた方向に、超音波U1と超音波U2との干渉により強められた超音波が進行する。つまり、超音波センサ11で発生させる超音波の位相差を制御することによって、強い超音波が進行する方向θを制御することができる。これにより、超音波センサ11を狭指向性にすることができ、特定の方向の被検出対象までの距離を高精度で計測することができる。
更に、各超音波振動子13の超音波の位相差を制御することによって、水平方向及び垂直方向に超音波ビームをスキャンすることが可能になる。これにより、超音波センサ11の数を減じることができる。
本実施例では、縦5列、横4列の計20個の超音波振動子13が音響整合層14に取り付けられているが、運転者と助手席の搭乗者を判定できるならば、取付個数及び配置は任意である。
この構成において用いられる超音波振動子13は、小型のPZTでもよいし、MEMS技術を用いて一体的に形成されたものでもよい。
また、小型の超音波センサ11をアレイ状に配列しても、同様な効果を奏することができる。
【0068】
(3)図7に示すように、液晶などの表示画面20aの裏面に超音波振動子13をアレイ状に配置する構成を採用することができる。図7(A)は、超音波振動子の配置の変更例の正面説明図であり、図7(B)は、図7(A)のB−B矢視断面図である。本実施例では、縦5列、横4列の計20個の超音波振動子13が表示画面20aの裏面に取り付けられているが、運転者と助手席の搭乗者を判定できるならば、取付個数及び配置は任意である。
超音波振動子13により発生した超音波は、表示画面20aを伝達媒体として、送受信され、操作者の検出に用いることができる。
ここで、超音波振動子13は、図6に示した実施例同様に、アレイ状に配置されているため、超音波ビームをスキャンすることができる。
この構成を用いると、超音波振動子13が外部から視認できないため、意匠性に優れた操作者判定装置10を製造することができる。
更に、タッチボタン20dを超音波振動子13と同じ位置に配置することにより、タッチボタン20dの感圧部としての機能を果たすこともできる。これにより、1個の超音波振動子13が、超音波の送受信と感圧部という2つの機能を兼ね備えることになるので、部品の数を減らすことができ、コスト低減と省スペースに寄与することができる。
【0069】
[各請求項と実施形態との対応関係]
ナビゲーション装置20が請求項1に記載の車載用装置に、水平移動機構40、回転移動機構41が請求項8に記載の移動手段に、制御部25が請求項9に記載の操作制御手段に、それぞれ対応する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】操作者判定装置及びナビゲーション装置のブロック図を示す。
【図2】操作者判定装置を搭載したナビゲーション装置の概略説明図である。図2(A)は、操作者判定装置を搭載したナビゲーション装置の正面説明図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A矢視断面図である。
【図3】操作者判定装置による操作者判定処理とナビゲーション装置による操作禁止処理及び操作禁止解除処理を示すフローチャートである。
【図4】超音波センサの配置の変更例を示す説明図である。
【図5】移動機構を備えた超音波センサの説明図である。図5(A)は、水平移動機構を備えた超音波センサ、図5(B)は、回転移動機構を備えた超音波センサの説明図である。
【図6】複数の超音波振動子がアレイ状に配列された超音波センサの説明図である。図6(A)は、複数の超音波振動子がアレイ状に配列された超音波センサの正面説明図及び拡大図であり、図6(B)は、超音波の指向性を制御する原理図である。
【図7】超音波振動子の配置の変更例を示す説明図である。図7(A)は、超音波振動子の配置の変更例の正面説明図であり、図7(B)は、図7(A)のB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 操作者判定装置
11 超音波センサ
12 判定手段
20 ナビゲーション装置(車載用装置)
20a 表示画面
20c 操作ボタン(操作部)
20d タッチボタン(操作部)
23 表示部
24 操作部
25 制御部(制御部、操作制御手段)
40 水平移動機構(移動手段)
41 回転移動機構(移動手段)
D 運転者の手または腕(操作者の手または腕)
P 助手席の搭乗者の手または腕(操作者の手または腕)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車載用装置の操作部を操作する操作者が、前記車両の運転者及び助手席の搭乗者のいずれであるかを判定する操作者判定装置であって、
前記操作者の手または腕の位置を検出し、検出信号を出力する超音波センサと、
前記超音波センサから出力される検出信号に基づいて、前記操作者が前記助手席の搭乗者のみであるか否かを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする操作者判定装置。
【請求項2】
前記超音波センサは複数個設けられており、前記運転者の手または腕の位置を検出する超音波センサと前記助手席の搭乗者の手または腕の位置を検出する超音波センサとが少なくとも1個ずつ備えられていることを特徴とする請求項1に記載の操作者判定装置。
【請求項3】
前記超音波センサは、狭指向性であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の操作者判定装置。
【請求項4】
複数個の前記超音波センサがアレイ状に配列して形成されており、前記各超音波センサから送信される超音波の位相差を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の操作者判定装置。
【請求項5】
前記車載用装置は、ナビゲーション装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の操作者判定装置。
【請求項6】
前記超音波センサは、前記ナビゲーション装置の表示画面の裏面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の操作者判定装置。
【請求項7】
前記超音波センサは、前記表示画面に表示され、前記ナビゲーション装置の操作を行う操作部として機能することを特徴とする請求項6に記載の操作者判定装置。
【請求項8】
前記運転者及び前記助手席の搭乗者に対して超音波を送信可能な位置に、前記超音波センサを移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の操作者判定装置。
【請求項9】
車両に設けられ、
前記車両の運転者または助手席の搭乗者が操作可能な操作部と、
前記操作部に対する操作に基づいて所定の電気的制御を行う制御部と、
前記操作部を操作する操作者の手または腕の位置を検出し、検出信号を出力する超音波センサと、
前記超音波センサから出力される検出信号に基づいて、前記操作者が前記助手席の搭乗者のみであるか否かを判定する判定手段と、
前記車両の走行中に、前記操作部に対する特定の操作に基づいて前記制御部が実行する機能を停止し、前記判定手段が、前記操作者が前記助手席の搭乗者のみであると判定した場合に、前記制御部が実行する機能の停止を解除する操作制御手段と、
を備えたことを特徴とする車載用装置。
【請求項10】
前記超音波センサは複数個設けられており、前記運転者の手または腕の位置を検出する超音波センサと前記助手席の搭乗者の手または腕の位置を検出する超音波センサとが少なくとも1個ずつ備えられていることを特徴とする請求項9に記載の車載用装置。
【請求項11】
前記超音波センサは、狭指向性であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の車載用装置。
【請求項12】
複数個の前記超音波センサがアレイ状に配列して形成されており、前記各超音波センサから送信される超音波の位相差を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項9に記載の車載用装置。
【請求項13】
前記車載用装置は、ナビゲーション装置であることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか1つに記載の車載用装置。
【請求項14】
前記超音波センサは、前記ナビゲーション装置の表示画面の裏面に設けられていることを特徴とする請求項13に記載の車載用装置。
【請求項15】
前記超音波センサは、前記表示画面に表示され、前記ナビゲーション装置の操作を行う操作部として機能することを特徴とする請求項14に記載の車載用装置。
【請求項16】
前記運転者及び前記助手席の搭乗者に対して超音波を送信可能な位置に、前記超音波センサを移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載の車載用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−58095(P2008−58095A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234204(P2006−234204)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】