説明

操作装置及びこれを備えた画像記録装置

【課題】ラッチ機構に用いられているバネの弾性力を容易に変更することが可能な操作装置を提供すること。
【解決手段】操作装置30の上段カバー95に操作レバー70が設けられている。操作レバー70は、リンク機構を介して表示パネル34に連結されており、操作レバー70がスライドされると、その位置に応じた回動姿勢となるように表示パネル34が回動する。操作レバー70の下方にラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、操作レバー70に取り付けられた環状バネ64と、ラック68,69とにより構成されている。環状バネ64の突起65とラック68,69の溝88,89とが係合・解除を繰り返すことで、表示パネル34の回動と姿勢保持とが実現される。操作レバー70に対する取付位置に応じて環状バネ64のバネ力が変わるようにバネ支持体61が構成されており、環状バネ64の取付位置を変えることで、突起65と溝88との係合力が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対して倒伏した第1回動姿勢と装置本体に対して起立した第2回動姿勢との間で回動可能に装置本体に支持された表示パネルを具備する操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機能やプリンタ機能、スキャナ機能等の複数の機能を一体的に備えた複合機には、被記録媒体に画像を記録する画像記録部と、原稿の画像を読み取る画像読取部とが備えられている。また、上記複合機には、上記各機能を実行するための指示を入力したり、各種設定を行ったり、装置の動作状態や指示内容を表示したりするための操作装置が備えられている。操作装置には、液晶ディスプレイ等の薄型ディスプレイが組み付けられた表示パネルが設けられており、この薄型ディスプレイの画面に各種の情報が表示される。
【0003】
この種の操作装置の一例として、特許文献1には、操作装置に対して倒伏した姿勢と起立した姿勢との間で回動可能な操作パネル体を備えた操作装置が開示されている。この従来の操作装置では、回動機構としてバネを利用したラッチ機構が採用されている。このため、操作者は、操作パネル体の回動時に適度なクリック感を得ることができ、また、所定の回動角度で操作パネル体の姿勢を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−105557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、表示パネルに搭載される薄型ディスプレイが大型化する傾向にある。このため、表示パネルの枠体が小さくなり、回動時に操作者が掴むための取っ手を上記枠体に設けることができない。一方、操作摘みを操作装置の上面に設け、これをスライドさせることによって、そのスライド動作に連動して表示パネルが回動するリンク機構を採用することが考えられる。この場合、操作者は、操作摘みを操作するだけで容易に表示パネルを回動させることができる。このような構成であっても、表示パネルの回動時に適度なクリック感を生じさせるために、上記ラッチ機構が搭載されることが好ましい。
【0006】
しかしながら、長年使用されることによって上記ラッチ機構のバネの特性が劣化する場合がある。この場合、当該バネによるクリック感が低下するばかりでなく、表示パネルを所定の回動角度で維持するために要するバネ力が生じなくなり、表示パネルを所定の回動角度で維持することが困難となる。特に、薄型ディスプレイがタッチパネルである場合は、薄型ディスプレイが操作者によってタッチ操作されるたびに表示パネルが押圧されるので、タッチ操作される際に表示パネルが勢いよく倒れ、薄型ディスプレイが故障するおそれがある。上記バネの経年劣化による上記問題は、上記バネを交換すれば解決可能であるが、従来の操作装置では、上記バネが装置内部に複雑に組み付けられているため、修理作業が容易でない。そのため、操作者は、修理のために複合機そのものを修理工場へ送る必要があり、修理が終わって操作者の手元に複合機が返却されるまで時間がかかっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ラッチ機構に用いられているバネの弾性力を容易に変更することが可能な操作装置及びこれを備えた画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、ディスプレイを有し、装置本体に対して倒伏した第1回動姿勢と装置本体に対して起立した第2回動姿勢との間で回動可能に装置本体に支持された表示パネルと、上記装置本体にスライド可能に支持された操作摘みと、上記操作摘みのスライド動作に連動して上記表示パネルを回動させるリンク機構と、上記操作摘みのスライド位置に応じた回動姿勢で上記表示パネルを保持するラッチ機構と、を具備する操作装置として構成されている。この操作装置において、上記ラッチ機構は、ラッチ構造体と、支持体と、板バネと、突起と、を備えている。ラッチ構造体は、上記操作摘みのスライド方向と同方向に複数のラッチ溝が並設された第1面を有する。支持体は、上記操作摘みの下部に設けられている。この支持体は、少なくとも第1側壁及び第2側壁を有し、上記第1側壁が上記第1面に対向する第1位置若しくは上記第2側壁が上記第1面に対向する第2位置の少なくともいずれかの位置に配置される。板バネは、上記支持体に着脱可能に構成されている。この板バネは、上記第1面に対向するいずれか一方の上記側壁に装着された装着状態で上記第1面から離れる方向の荷重を受けたときに弾性変形する。突起は、上記板バネに設けられており、上記装着状態にあるときに上記ラッチ溝に挿入されて上記スライド方向への上記操作摘みの移動を規制するものである。また、上記第1側壁は、上記板バネに対して上記荷重が加えられる荷重点から第1距離だけ離れた支持点で上記板バネを支持する第1支持部を有し、上記第2側壁は、上記板バネに対して上記荷重が加えられる荷重点から上記第1距離より長い第2距離だけ離れた支持点で上記板バネを支持する第2支持部を有している。
【0009】
このように構成されているため、支持体に対する板バネの装着位置を変更するだけで、板バネの弾性力が変化する。これにより、上記板バネが劣化した場合でも、その装着位置を変えるという簡単な作業を行うだけで、表示パネルの回動時に得られるラッチ感や、所定の回動角度で表示パネルを維持するための保持力を容易に回復することができる。
【0010】
なお、上記ディスプレイの具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、若しくは所謂電子ペーパーなどが考えられる。もちろん、これら以外の薄型のディスプレイにも本発明は適用可能である。
【0011】
(2) 上記支持体は、少なくとも上記第1側壁及び上記第2側壁を有し、断面が正多角形状であることが好ましい。
【0012】
このように構成されているため、例えば、第1側壁及び第2側壁に加えて、これらの側壁における上記第1距離及び上記第2距離とは異なる距離だけ荷重点から離れた支持点で上記板バネを支持可能な側壁を上記支持体に設けることも可能である。もちろん、支持体が備える全ての側壁が上記板バネを支持可能な構造であってもよい。これにより、同じ板バネに対して、複数の側壁毎に異なる弾性力を生じさせることができる。
【0013】
(3) 上記支持体は、上記第1側壁、該第1側壁に隣接する上記第2側壁、上記第1側壁に対向され上記第1支持部を有する第3側壁、及び上記第2側壁に対向され上記第2支持部を有する第4側壁を有し、断面が正四角形状である。この場合、上記ラッチ構造体は、上記操作摘みのスライド方向と同方向に複数のラッチ溝を有し、上記第1面に対向するよう配置された第2面を有する。上記板バネは、上記支持体の外周側面に外嵌可能な正四角形の環状に形成されている。上記突起は、上記板バネにおいて対向する少なくとも一対の側面それぞれに設けられている。また、上記支持体が上記第1位置に配置されたときに上記第3側壁が上記第2面に対向し、上記支持体が上記第2位置に配置されたときに上記第4側壁が上記第2面に対向する。
【0014】
この構成であれば、第1面及び第2面それぞれのラッチ溝と突起とにより操作摘みのスライド方向への移動が規制される。このため、ラッチ機構による十分なクリック感が得られるとともに、より確実に表示パネルを維持するための保持力を得ることができる。また、支持体に対して板バネを嵌め込む向きを変えるだけで、当該板バネの取付位置が変更するので、変更作業が極めて容易である。
【0015】
(4) 上記リンク機構は、一方端が上記表示パネルの裏面に軸支され他方端が上記操作摘みに連結されたリンク部材を有することが好ましい。
【0016】
(5) 上記リンク部材は、上記表示パネルの幅方向に延びる板部材で構成されており、上記表示パネルの裏面に露出された上記ディスプレイの電気的接続部を覆う位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
(6) また、上記ディスプレイが、上記表示パネルが倒伏する向きに画面が押圧されることによってタッチキー入力可能なように構成されている場合に、本発明は好ましく適用され得る。
【0018】
(7) また、本発明は、上述のいずれかの操作装置を表面に備えた画像記録装置として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ラッチ機構に用いられているバネの弾性力を容易に変更することが可能である。その結果、バネが劣化した場合でも、バネによる弾性力を変えることによって表示パネルの回動時のクリック感や表示パネルを所定の回動角度に維持するための保持力を容易に回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、操作装置30の分解斜視図である。
【図3】図3は、操作装置30から取り外された上段カバー95の構成を示す拡大斜視図である。
【図4】図4は、表示パネル34の背面部分及び操作レバー70の周辺構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、操作レバー70の構成を示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、操作レバー70をレバートップ73側から見た平面図である。
【図7】図7は、操作レバー70の支持構造を説明するための拡大図である。
【図8】図8は、図7(B)における要部VIIIの部分拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0022】
[複合機10の概略構成]
図1は、本発明の画像記録装置の一実施形態に係る複合機10の外観を示す斜視図である。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0023】
図1に示されるように、複合機10は、高さ(上下方向7の長さ)に対して横幅(左右方向9の長さ)及び奥行き(前後方向8の長さ)が大きい薄型の直方体に概ね形成されている。複合機10は、ファクシミリ機能、プリント機能、スキャン機能、及び、コピー機能などの複数の機能を有しており、多機能装置(Multi Function Device)とも称されている。なお、本発明の画像記録装置は、上述の全ての機能を有するものに限られず、例えば、プリント機能のみを有するプリンタ、プリント機能とスキャナ機能のみを有する複合機、或いはコピー機能のみを有する複写機として本発明の画像記録装置が実施されてもよい。
【0024】
複合機10の下部にインクジェット記録方式のプリンタユニット11が設けられている。プリンタユニット11は、正面に開口13が形成されたプリンタ筐体14を有する。開口13に記録用紙を収容するためのトレイ24が装着されている。プリンタユニット11には、トレイ24の奥側から上方へ延びた後に正面側へU字状に湾曲してトレイ24の上面に至る用紙搬送路が設けられている。トレイ24に収容された記録用紙は、上記用紙搬送路に送り出された後にUターン搬送されることによって用紙搬送路中に設けられた画像記録位置に案内される。そして、該画像記録位置でインク画像が記録用紙に記録される。画像記録後の記録用紙はトレイ24の上面に排出される。本実施形態ではプリンタユニット11がインクジェット記録方式のものとして説明するが、プリンタユニット11はインクジェット記録方式のものに限られず、電子写真方式或いは熱転写方式のものであってもよい。
【0025】
プリンタユニット11の上側にスキャナユニット12が設けられている。スキャナユニット12は、上面にコンタクトガラス(不図示)が設けられたスキャナ筐体15を有する。スキャナ筐体15には、ADF(自動原稿搬送機構)19を備えた原稿カバー17が設けられている。原稿カバー17は、スキャナ筐体15の後背面側で軸支されており、コンタクトガラスを覆う閉姿勢とコンタクトガラスから離間する開姿勢との間で回動する。コンタクトガラスの上面に原稿が載置され、そして原稿カバー17が閉姿勢にされた状態で読み取り指示が入力されると、内部に設けられた画像読取ユニットによって原稿の画像が読み取られる。
【0026】
スキャナユニット12の正面側に操作装置30が設けられている。操作装置30は、図1に示されるように、左右方向9に長い横長形状に形成されている。操作装置30は、プリンタユニット11やスキャナユニット12を操作するためのものであり、コピー枚数の入力や機能の設定、コピー処理或いは読取処理を実行するための指示入力などを行う複数の入力キー32、及び、動作状態などを表示するための表示パネル34(本発明の表示パネルの一例)を備えている。
【0027】
[操作装置30]
以下、複合機10が備える操作装置30について詳細に説明する。図1に示されるように、操作装置30は、プリンタユニット11の上方であって、スキャナユニット12の正面側に設けられている。
【0028】
図2は、操作装置30の分解斜視図である。図2に示されるように、操作装置30は、主として、複数のシートスイッチが配置されたスイッチ基板91と、各シートスイッチに対応する複数の入力キー32が保持されたキー保持部92,93と、操作装置30の筐体となる下段カバー94と、下段カバー94の上面に取り付けられる上段カバー95(本発明の装置本体の一例)と、表示パネル34とにより構成されている。本実施形態の操作装置30は、スイッチ基板91の上面にキー保持部92,93が配置された状態で下段カバー94が上方から覆い被せられ、更に、表示パネル34を保持する上段カバー95が下段カバー94に取り付けられることによって、組み立てられる。
【0029】
図3は、操作装置30から取り外された上段カバー95の構成を示す拡大斜視図である。図3に示されるように、表示パネル34は、横長矩形状に形成されている。この表示パネル34は、後述するように、上段カバー95の手前側を回動中心として回動可能なように上部カバー95に支持されている。表示パネル34は、大別すると、表面に開口37を有する枠体38と、枠体38に組み付けられた液晶ディスプレイ40(本発明のディスプレイの一例)とを備えている。液晶ディスプレイ40は、その画面が押圧されることによってタッチキー入力可能なタッチパネルとして構成されている。なお、本実施形態では、ディスプレイの一例としてタッチキー入力可能な液晶ディスプレイ40を例示するが、液晶ディスプレイ40に代えて、プラズマディスプレイや、ELディスプレイ、所謂電子ペーパーなど、所謂薄型ディスプレイを適用することも可能である。
【0030】
上段カバー95には、表示パネル34が収容される開口42が設けられている。開口42は、上段カバー95の上面の左右方向9の中央付近に設けられている。表示パネル34は、図1に示されるように、開口42に入り込んで、上段カバー95に対して倒伏する倒伏姿勢(本発明の第1回動姿勢の一例)と、図2に示されるように、後方側から上方へ起き上がって上段カバー95に対して起立した起立姿勢(本発明の第2回動姿勢の一例)との間で回動可能である。表示パネル34の回動機構は、枠体38の下端部の両側面に設けられた支軸43と、この2つの支軸43を回転可能に支持する軸受け部(不図示)とによって実現されている。なお、上記軸受け部は、下段カバー94に上段カバー95が取り付けられたときに、下段カバー94に設けられた半円筒状の軸受け44(図2参照)と、上段カバー95に設けられた半円筒状の軸受け(不図示)とが合わさることによって実現されている。
【0031】
本実施形態では、表示パネル34は、上記倒伏姿勢のときに、表示パネル34の表面と上段カバー95の上面とが同一面になる。表示パネル34が上記倒伏姿勢となった場合に、液晶ディスプレイ40が上段カバー95の上面から突出しなくなるため、操作装置30の外観が向上する。また、液晶ディスプレイ40に対する上側からの視認性が向上する。一方、表示パネル34が上記起立姿勢となった場合は、液晶ディスプレイ40に対する正面側からの視認性が向上する。
【0032】
図3に示されるように、上段カバー95には、操作レバー70(本発明の操作摘みの一例)が設けられている。操作レバー70の上端部に設けられたレバートップ73は、操作者によって摘み持たれる部分である。上段カバー95の上面には、開口42の右側に形成された前後方向8へ延びる長溝39が設けられている。長溝39は上段カバー95の裏面に貫通している。操作レバー70は、レバートップ73が上段カバー95の裏面側から長溝39に上方へ挿通された状態で、上段カバー95に取り付けられている。また、本実施形態では、後述するように、操作レバー70のレバートップ73が、長溝39に沿って前後方向8へ移動可能に取り付けられている。
【0033】
図4は、表示パネル34の背面部分及び操作レバー70の周辺構成を示す斜視図である。図4(A)には、倒伏姿勢の表示パネル34が示されており、(B)には、起立姿勢の表示パネル34が示されている。なお、説明の便宜上、図4では、上段カバー95及び下段カバー94の図示が省略されている。図4に示されるように、表示パネル34の裏面には、左右方向9へ延びる板部材からなるリンクプレート52(本発明のリンク部材の一例)が設けられている。リンクプレート52の横幅(左右方向9の幅)は、表示パネル34の横幅と概ね同じ寸法に形成されている。
【0034】
リンクプレート52の短手方向の一方端は、表示パネル34の裏面の中段付近に回動自在に連結されている。具体的には、リンクプレート52の短手方向の一方端に支軸54(図2参照)が設けられており、表示パネル34の裏面の中段付近に軸受け55が設けられており、支軸54が軸受け55に軸支されている。また、リンクプレート52の短手方向の他方端は、操作レバー70に連結されている。具体的には、リンクプレート52の短手方向の他方端にその右側面から右側へ突出したリンクバー53が設けられており、このリンクバー53が、後述する操作レバー70の連結部78に設けられた貫通孔81に挿入されている。これにより、リンクプレート52と操作レバー70とが前後方向8に対して外れないように連結される。なお、本実施形態では、リンクプレート52、リンクバー53、及び連結部78によって、本発明のリンク機構が具現化されている。
【0035】
本実施形態では、リンクプレート52は、表示パネル34が倒伏姿勢にあるときに表示パネル34と同じように上段カバー95に対して倒伏した姿勢となる(図4(A)参照)。このとき、操作レバー70は、最も後方の位置に配置される。そして、操作レバー70が手前側へスライド操作されると、そのスライドに連動してリンクプレート52が徐々に起き上がり、リンクプレート52が表示パネル34の裏面から表示パネル34を支えながら表示パネル34を起き上がらせる。そして、操作レバー70が最も手前の位置に到達すると、表示パネル34は起立姿勢となる(図4(B)参照)。
【0036】
また、リンクプレート52は、表示パネル34の裏面に露出された液晶ディスプレイ40のコネクタやこれに接続されたフラットケーブル47(図2参照)などの電気的接続部を保護するカバーの役割を担っている。具体的には、図4(B)に示されるように、表示パネル34が起立姿勢であるときに、表示パネル34の下端部がリンクプレート52によって覆い隠されている。これにより、上記コネクタやフラットケーブル47などが保護されている。
【0037】
図5は、操作レバー70の構成を示す拡大斜視図である。図5(A)には、組み立て状態の操作レバー70が示されており、(B)には、分解された状態の操作レバー70が示されている。図5に示されるように、操作レバー70は、上部体71と下部体72とに分割可能に構成されている。上部体71及び下部体72は、後述する連結ピン79によって連結される。
【0038】
上部体71には、円柱状に形成されたレバートップ73が設けられている。このレバートップ73の下部にバネ支持体61(本発明の支持体の一例)が設けられている。バネ支持体61は、後述する環状バネ64(本発明の板バネの一例)が装着される部分である。バネ支持体61は、外方に突出する4つの頂部を有し、環状バネ64を支持可能な程度の厚みを有する平板形状のものである。バネ支持体61の下面に円柱状の連結軸74が設けられている。この連結軸74には、軸線に垂直な方向に貫通する2つの貫通孔(75,76)が形成されている。
【0039】
下部体72は、上部体71に装着される被装着部77と、リンクバー53に連結される連結部78とを有する。連結部78には、リンクバー53が挿通可能な貫通孔81が設けられている。被装着部77の上端には、図5に詳細に現れていないが、連結軸74が挿入可能な連結孔が設けられている。また、被装着部の側面には、連結ピン79が挿入可能な貫通孔80が設けられている。上部体71と下部体72との連結は以下の要領で行われる。つまり、上記連結孔に連結軸74が挿入され、貫通孔75,76のいずれかと貫通孔80とが一致した状態で、連結ピン79が貫通項80に挿入されることによって、上部体71と下部体72とが連結ピン79によって連結される。
【0040】
図6は、操作レバー70をレバートップ73側から見た平面図である。図6(A)には、環状バネ64が装着されていない状態(未装着状態)が示されており、(B)及び(C)には、環状バネ64が装着された状態(装着状態)が示されている。図6(A)に示されるように、バネ支持体61は、外方に突出する4つの頂部を有しており、これら4つの頂部を結んだときにできる形状は、平面視で正四角形状となっている。このバネ支持体61は、隣接する側壁が直交する4つの側壁(101〜104)を有している。
【0041】
図6(A)に示されるように、側壁101(本発明の第1側壁の一例)の両端に支持部106(本発明の第1支持部の一例)が設けられている。支持部106は、側壁101の中央に幅L1の凹部を設けることにより、側壁101の両端に形成される。このため、側壁101において、2つの支持部106は間隔L1で隔てられている。本実施形態では、側壁101に対向する側壁103(本発明の第3側壁の一例)の中央にも幅L1の凹部が設けられており、したがって、側壁103の両端にも、間隔L1で隔てられた2つの支持部106が形成されている。
【0042】
また、側壁101に隣接する側壁102(本発明の第2側壁の一例)の両端には、支持部107(本発明の第2支持部の一例)が設けられている。支持部107は、側壁102の中央に幅L2の凹部を設けることにより、側壁102の両端に形成される。このため、側壁102において、2つの支持部107は間隔L2で隔てられている。本実施形態では、間隔L2は間隔L1よりも長くなっている。また、側壁102に対向する側壁104(本発明の第4側壁の一例)の中央にも幅L2の凹部が設けられており、したがって、側壁104の両端にも、間隔L2で隔てられた2つの支持部107が形成されている。
【0043】
図6(B)に示されるように、バネ支持体61に環状バネ64が装着されている。環状バネ64は、例えば、細長い金属板を一定の間隔で屈曲させた後に、両端部を溶着することにより得られる。環状バネ64は、バネ支持体61の外周側面に外側から嵌入することができ、しかも、容易に取り外しすることができるように、正四角形の環状に形成されている。図示されるように、環状バネ64には、2つの突起65が設けられている。突起65は、概ね三角形状に形成されている。突起65は、互いに対向する一対の側面66,67それぞれに設けられている。突起65は、後述するラック68,69の溝88,89(本発明のタッチ溝の一例)に挿入可能なサイズ及び形状に形成されている。操作レバー70が操作装置30に装着された状態で、突起65は溝88,89に挿入される。これにより、操作レバー70がスライド方向へ移動しようとすることが突起65によって規制される。
【0044】
本実施形態では、上述したように、バネ支持体61の4つの頂部を結んでできる形状が平面視で正四角形状であり、また、環状バネ64が正四角形である。そのため、図6(B)に示されるように、側面66が第2側壁102に対向し、側面67が第4側壁104に対向するように環状バネ64をバネ支持体61に装着することができる。以下、このような装着状態を第1装着状態と称する。また、図6(C)に示されるように、側面66が第1側壁101に対向し、側面67が第3側壁103に対向するように環状バネ64をバネ支持体61に装着することもできる。以下、このような装着状態を第2装着状態と称する。
【0045】
図7は、操作レバー70の支持構造を説明するための拡大図である。図7(A)は、図4(B)における要部VIIAの部分拡大図であり、(B)は、操作レバー70の周辺機構の拡大平面図である。
【0046】
操作装置30には、操作レバー70をスライド可能に保持するとともに、操作レバー70のスライド位置に応じた所定の回動姿勢で表示パネル34を保持するためのラッチ機構が設けられている。したがって、操作者は、表示パネル34の表示が最も見やすい任意の姿勢に表示パネル34の回動角度を調整することができる。このラッチ機構は、上述したバネ支持体61、環状バネ64、突起65、及び、後述する一対のラック68,69(本発明のラッチ構造体の一例)によって具現化されている。
【0047】
図2に示されるように、ラック68,69は、下段カバー94の上面に設けられている。詳細には、ラック68,69は、長溝39の下方に設けられている。本実施形態では、操作装置30を正面から見て左側がラック68であり、右側がラック69である。図7に示されるように、ラック68,69それぞれには、互いに対向する面に複数の溝88,89が形成されている。具体的には、ラック68の右側面(本発明の第1面の一例)に前後方向8へ並んで設けられた複数の溝88が形成されている。また、ラック69の左側面(本発明の第2面の一例)に前後方向8へ並んで設けられた複数の溝89が形成されている。ラック68,69の間隔D1は、環状バネ64の2つの側面66,67の間隔D2よりも大きく、2つの突起65の間隔よりも小さく設定されている。
【0048】
溝88,89の形状及び溝深さは、環状バネ64の突起65が挿入可能に形成されている。例えば、図8に示されるように、溝88は、三角形状のV字溝となっている。図8に示されるように、本実施形態では、ラック68の右側面に垂直で溝88の谷部87を通る基準線86と溝88の後方側の溝斜面88Aとがなす傾斜角θ1は、基準線86と溝88の前方側の溝斜面88Bとがなす傾斜角θ2よりも小さい。したがって、溝88において、溝斜面88Aは、溝斜面88Bよりも傾斜がきつくなっている。なお、溝89も溝88と同様に形成されている。
【0049】
このようなラック68,69によって囲まれたスペースに、環状バネ64が装着されたバネ支持体61が嵌め入れられる。本実施形態では、第1装着状態(図6(B)参照)となるように環状バネ64が装着されたバネ支持体61をラック68,69に装着させることが可能である。この場合、第2側壁102がラック68の右側面に対向し、第4側壁104がラック69の左側面に対向するようにバネ支持体61が配置される。このようなバネ支持体61の位置が本発明の第2位置に相当する。また、第2装着状態(図6(C)参照)となるように環状バネ64が装着されたバネ支持体61をラック68,69に装着させることも可能である。この場合、第1側壁101がラック68の右側面に対向し、第3側壁104がラック69の左側面に対向するようにバネ支持体61が配置される。このようなバネ支持体61の位置が本発明の第1位置に相当する。
【0050】
バネ支持体61は、第1装着状態及び第2装着状態のいずれであっても、図7に示されるように、側面66がラック68の溝88に対向し、側面67がラック69の溝89に対向するようにバネ支持体61が配置される。この場合、側面66,67に設けられた突起65は、溝88,89に挿入される。これにより、操作レバー70がスライド方向へ移動しようとすることが突起65によって規制される。また、操作レバー70の下部体72は、貫通孔81にリンクバー53が挿通可能な向きとなるように上部体71に連結される。
【0051】
[実施形態の作用・効果]
このように構成されているため、操作者によって操作レバー70がスライドされると、操作レバー70に伝達された力が突起65に伝わる。この力を受けて突起65は溝88,89を前後方向8へ押圧する。このとき、溝88,89から受けた反力によって環状バネ64が撓むと、突起65が溝88,89から外れてスライド方向に隣接する別の溝88,89に入り込む。これが繰り返されることにより、操作者は、突起65が溝88,89から出入りする際の衝撃をクリック感として感じながら、操作レバー70を所望の位置に移動させることができる。
【0052】
操作者によって操作レバー70が後方へスライドされると、操作レバー70に入力された力が連結部78、リンクバー53、リンクプレート52を経て表示パネル34に伝達されて、表示パネル34が倒伏姿勢の方向へ回動する。また、操作レバー70が前方へスライドされると、操作レバー70に入力された力が連結部78、リンクバー53、リンクプレート52を経て表示パネル34に伝達されて、表示パネル34が起立姿勢の方向へ回動する。
【0053】
また、バネ支持体61、環状バネ64、突起65、及び、一対のラック68,69によって実現されたラッチ機構が設けられているため、操作レバー70が所望の位置で静止されると、溝88,89に挿入された突起65がスライド方向への操作レバー70の移動を規制するため、表示パネル34の回動も静止する。これにより、操作レバー70の位置に応じた回動姿勢で表示パネル34を保持することができる。
【0054】
また、バネ支持体61に対する環状バネ64の装着位置を変更することができ、その変更によって環状バネ64の弾性力を変化させることができる。そのため、仮に環状バネ64が劣化して、当初のバネ力が得られなくなっても、環状バネ64の装着位置を変えるという簡単な作業を行うだけで、操作レバー70の操作時に得られるラッチ感や、所定の回動角度で表示パネル34を維持するための保持力を容易に回復することができる。
【0055】
また、溝88において、溝斜面88Aの傾斜が溝斜面88Bよりもきつくなっている。そのため、突起65が溝88,89に挿入された状態からバネ支持体61が後方へ移動するときの負荷は前方へ移動するときの負荷よりも大きい。このため、液晶ディスプレイ40に対して操作者がタッチ入力するために画面を後方(表示パネル34が倒伏する方向)へ押圧しても、表示パネル40が倒れ難い。
【0056】
なお、本実施形態では、板バネの一例として、対向する側面66,67それぞれに突起65を有する環状バネ64を例示したが、いずれか一方の側面のみに突起65が設けられた環状バネを採用してもよい。この場合、2つのラック68,69のうち、一方のみに溝を設ければよい。また、上述の実施形態では、環状に形成された環状バネ64を採用しているが、環状のものに限定されない。バネ支持体61の側壁に取り付け可能な板バネであればあらゆるものでも適用可能である。また、上述の実施形態では、隣接する側壁が直交する4つの側壁(101〜104)を有し、平面視で正四角形状のバネ支持体61を採用したが、5つ又は6つの側壁、或いはそれ以上の側壁を有するものであって、平面視で正多角形状のバネ支持体を採用することも可能である。この場合、各側壁に上記板バネが装着可能に構成されている。
【0057】
なお、上述した実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0058】
10・・・複合機
11・・・プリンタユニット
12・・・スキャナユニット
30・・・操作装置
34・・・表示パネル
40・・・液晶ディスプレイ
52・・・リンクプレート
53・・・リンクバー
61・・・バネ支持体
64・・・環状バネ
65・・・突起
67,68・・・ラック
70・・・操作レバー
73・・・レバートップ
101〜104・・・側壁
106,107・・・支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを有し、装置本体に対して倒伏した第1回動姿勢と装置本体に対して起立した第2回動姿勢との間で回動可能に装置本体に支持された表示パネルと、
上記装置本体にスライド可能に支持された操作摘みと、
上記操作摘みのスライド動作に連動して上記表示パネルを回動させるリンク機構と、
上記操作摘みのスライド位置に応じた回動姿勢で上記表示パネルを保持するラッチ機構と、を具備する操作装置であって、
上記ラッチ機構は、
上記操作摘みのスライド方向と同方向に複数のラッチ溝が並設された第1面を有するラッチ構造体と、
上記操作摘みの下部に設けられ、少なくとも第1側壁及び第2側壁を有し、上記第1側壁が上記第1面に対向する第1位置若しくは上記第2側壁が上記第1面に対向する第2位置の少なくともいずれかの位置に配置される支持体と、
上記支持体に着脱可能に構成され、上記第1面に対向するいずれか一方の上記側壁に装着された装着状態で上記第1面から離れる方向の荷重を受けたときに弾性変形する板バネと、
上記板バネに設けられ、上記装着状態にあるときに上記ラッチ溝に挿入されて上記スライド方向への上記操作摘みの移動を規制する突起と、を備え、
上記第1側壁は、上記板バネに対して上記荷重が加えられる荷重点から第1距離だけ離れた支持点で上記板バネを支持する第1支持部を有し、上記第2側壁は、上記板バネに対して上記荷重が加えられる荷重点から上記第1距離より長い第2距離だけ離れた支持点で上記板バネを支持する第2支持部を有してなる操作装置。
【請求項2】
上記支持体は、少なくとも上記第1側壁及び上記第2側壁を有し、断面が概ね正多角形状である請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
上記支持体は、上記第1側壁、該第1側壁に隣接する上記第2側壁、上記第1側壁に対向され上記第1支持部を有する第3側壁、及び上記第2側壁に対向され上記第2支持部を有する第4側壁を有し、断面が概ね正四角形状であり、
上記ラッチ構造体は、上記操作摘みのスライド方向と同方向に複数のラッチ溝を有し、上記第1面に対向するよう配置された第2面を有し、
上記板バネは、上記支持体の外周側面に外嵌可能な概ね正四角形の環状に形成されており、
上記突起は、上記板バネにおいて対向する少なくとも一対の側面それぞれに設けられており、
上記支持体が上記第1位置に配置されたときに上記第3側壁が上記第2面に対向し、上記支持体が上記第2位置に配置されたときに上記第4側壁が上記第2面に対向する請求項1に記載の操作装置。
【請求項4】
上記リンク機構は、一方端が上記表示パネルの裏面に軸支され他方端が上記操作摘みに連結されたリンク部材を有する請求項1から3のいずれかに記載の操作装置。
【請求項5】
上記リンク部材は、上記表示パネルの幅方向に延びる板部材で構成されており、上記表示パネルの裏面に露出された上記ディスプレイの電気的接続部を覆う位置に配置されている請求項4に記載の操作装置。
【請求項6】
上記ディスプレイは、上記表示パネルが倒伏する向きに画面が押圧されることによってタッチキー入力可能なように構成されている請求項1から5のいずれかに記載の操作装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の操作装置を表面に備えた画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−135541(P2011−135541A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295745(P2009−295745)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】