説明

支承装置

【課題】支承装置や構造物に対して所定値以上の入力があって損傷したかどうかを容易に確認することが出来る。
【解決手段】上沓11と、下沓12と、上沓11と下沓12との間に配設される弾性体13と、弾性体13を囲繞する拘束体16とを備える。拘束体16は固定ボルト17によって上沓11に固定されている。芯材21は上揚防止片25を有する。過剰な上揚力や水平力が加わったとき、固定ボルト17は、上揚防止片25が破損する前に破損し、拘束体16は、固定ボルト17が破損すると下沓12側に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、下沓12と拘束体16との間の間隙C1が狭くなり又は無くなり、支承装置10が破損したことを一目で判別出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成されたゴム支承がある(特許文献1参照)。ゴム支承では、ゴムの変位を拘束することで、鉛直バネ剛性を高める工夫や回転追従性能を向上させる工夫がなされている。例えば、ゴム支承では、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらを加硫接着することによって、ゴムの流動性を低減し、鉛直バネ剛性を高めるようにしている。
【0003】
また、密閉ゴム支承では、ゴム板が下沓となる金属製ポット内に配置され、ゴム板の上にピストン状の上沓が載置され、ゴム板が非圧縮性の流体的に振る舞うように拘束されることで、回転追従性能が得られるように構成されている(特許文献2参照)。なお、この密閉ゴム支承は、鉛直可撓性がないことから金属支承の扱いとなる。
【0004】
更に、所謂コンパクト支承では、大きな鉛直荷重を支持するため、上沓と下沓の相対する面にそれぞれ凹部を設け、それぞれの凹部内にゴム層が配設され、鉛直荷重が加わった際にゴムが撓み変形によって半径方向外方に膨出しないようにして、鉛直バネ剛性の向上を図るようにしている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−1820号公報
【特許文献2】特開2000−178921号公報
【特許文献3】特開2009−13773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような支承装置は、大規模震災等に予め設定された所定値以上の入力があり、上沓と下沓が相対的に大きく鉛直上向きの方向及び/又は水平方向に変位して、上沓や下沓といった強度部材が損傷した場合、直ちに交換する必要がある。度重なる余震が発生した場合、強度部材が損傷した支承装置は、本来の支承性能を発揮することが出来なくなる虞がある。
【0007】
また、支承装置は、上部構造物と下部構造物の狭い空間部に配設されるものであり、損傷しているかどうかの確認作業も大変である。従来の支承装置において、損傷しているかどうかの確認作業のし易さ等は全く配慮されていないのが実情である。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、支承装置や構造物に対して所定値以上の入力があって損傷したかどうかを容易に確認することが出来る支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る支承装置は、建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置として用いられるものであり、第一剛性体と、第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に配設される弾性体と、前記弾性体を囲繞する拘束体とを備える。前記拘束体は、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方に、前記弾性体の鉛直変位方向から固定部で固定される。前記拘束体は、前記固定部が破損すると、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方の方向に重力によって落下し、接近及び/又は当接する。これにより、前記固定部の破損前にはあった前記芯材が固定された剛性体と前記上揚防止部との間の間隙が前記拘束体の落下により狭くなり又は無くなり、この間隙の有無や大きさを判別することで、支承装置が破損したかどうかを判別することが出来る。この支承装置では、前記弾性体が、前記拘束体が落下した後においても、間に、前記拘束体が固定されていた前記剛性体を存して上部構造物を支承し続ける。従って、支承装置が損傷しても、損傷した支承装置を交換するまでの間、支承能力を維持することが出来る。
【0010】
ここで、前記拘束体は、前記弾性体の弾性変形を拘束する機能及び/又は前記弾性体の略密閉状態を保持する機能及び/又は前記第一剛性体と前記第二剛性体の相対変位を拘束する機能を有する。また、前記固定部は、水平変位方向に平行であってもよいが、好ましくは鉛直変位方向に略並行な軸を有する締結部材によって固定される。前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方には、芯材が設けることが出来る。この場合、前記芯材は、前記拘束体又は前記第一剛性体、前記第二剛性体の少なくとも何れか一つ以上と一部が重なる上揚防止部を有する。
【0011】
以上のような支承装置は、前記固定部による前記拘束体と何れか一方の剛性体との結合強度を、前記芯材と他方の前記剛性体との強度より低くし、更に、前記上揚防止部の強度より低くすることで、前記芯材や前記上揚防止部が破損する前に、前記固定部が破損するようにして、前記固定部が破損することで、前記拘束体の落下するように構成できる。固定部としては、次に説明するようにボルトを用いてもよいが、その他、溶接や接着剤であってもよく、結合手段は特に限定されるものではない。
【0012】
更に、前記芯材は、前記拘束体が前記固定部で固定される剛性体の水平変位を防止する水平変位防止部を有する構成とすることも出来る。
【0013】
例えば、前記固定部はボルトであり、前記拘束体は、上揚力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト頭部がボルト座部を底抜けして、重力によって、何れかの剛性体の側に落下するように構成することが出来る。この構成の場合、前記拘束体は、水平力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト軸部が剪断して、重力によって、第一剛性体又は第二剛性体の何れかの剛性体の側に接近及び/又は当接、若しくは落下する。
【0014】
また、前記拘束体は、上揚力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト軸部がネジ穴より引き抜かれ、重力によって、何れかの剛性体の側に落下し、接近及び/又は当接する。この場合、前記拘束体は、水平力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト軸部が水平剪断して、重力によって、何れかの剛性体の側に落下する。
【0015】
前記拘束体が前記固定部で固定される剛性体には、前記拘束体と嵌合する突出部を設けることが出来る。このような支承装置は、水平力に対して極めて強固となる。ここで、前記突出部の前記拘束体との係り長は、前記拘束体と前記芯材が固定された剛性体との間隙より大きくすることが出来る。これにより、前記拘束体が何れかの剛性体の方向に落下しても、前記突出部が前記拘束体と嵌合し続け、前記弾性体の半密閉状態を維持することが出来る。すなわち、前記支承装置が破損しても、支承能力の低下を防止することが出来る。
【0016】
前記弾性体と前記拘束体が前記固定部で固定される剛性体との間には、蓋板を配設することも出来る。ここで、前記蓋板の厚さは、前記拘束体と他方の剛性体との間隙より大きくしてもよい。これによれば、前記拘束体が何れかの剛性体の方向に落下しても、前記蓋板が前記拘束体と嵌合し続け、前記弾性体の半密閉状態を維持することが出来る。すなわち、前記支承装置が破損しても、支承能力の低下を防止することが出来る。
【0017】
また、前記拘束体が前記固定部で固定される剛性体の前記蓋板と対向する面には、前記蓋板より水平変位方向に大きい凹部を設けることも出来る。これにより、水平変位量を制限することが出来る。同様に、前記拘束体が前記固定部で固定される第一剛性体には、前記拘束体と対向する面に、前記拘束体より水平変位方向に大きい凹部を設けることによっても、水平変位量を制限することが出来る。
【0018】
前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体の外表面は、異なる色、柄、絵、図形、記号、模様等を施し、作業者が拘束体がどちらの剛性体に接近しているのか或いは当接しているのかを目視判別する作業を容易に行えるようにし、これにより、作業者が第三者に容易に伝達出来るように構成することも出来る。
【0019】
前記弾性体と前記拘束体の内周面との間には、所定以上の入力があった際に、前記拘束体が落下し易くするため、活性手段として、潤滑剤や外側面を摺滑面とし内部に前記弾性体が配設される略筒状体を設けるようにしてもよい。なお、略筒状体は、平板材、多数の孔が設けられた多孔材板、微小な凹凸を複数有する凹凸板材やメッシュ状部材等を略筒状に成形したものであってもよい。
【0020】
また、前記拘束体と前記弾性体との間には、無入力の状態で、間隙部が設けられるようにし、前記弾性体を拘束体に挿入し易くすることが出来る。
【0021】
前記弾性体の側面には、周回り方向に又は高さ方向に、凸部及び/又は凹部を設けるようにしてもよい。このような支承装置の場合、所定以上入力されると、前記弾性体が弾性変形し、弾性変形した前記弾性体の側面は、前記拘束体に当接及び/又は圧接して前記弾性体の変形が拘束される。すなわち、所定以上入力されると、前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体とによって囲繞されて半密閉状態とされ、前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化する。これにより、密閉ゴム支承のように小さな支承面積にして高荷重支承を実現しながら、弾性体の側面の凸部及び/又は凹部による隙間によって、鉛直荷重による鉛直可撓変位を実現することが出来る。また、回転作用の際には、凸部及び/又は凹部による隙間により弾性体が変形し、良好な回転追従性を実現出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、大地震等の大きな入力があって、過剰な上揚力が加わって、拘束体と、第一剛性体又は第二剛性体とを結合する固定部が破損すると、拘束体が下方にある剛性体側に接近し、極端な場合には当該剛性体上に落下して当接する。これにより、固定部の破損前には有った間隙が拘束体の降下により狭くなったり、或いは、落下によって無くなったりし、この間隙の有無や大きさを判別することで、支承装置が破損したかどうか、或いはどの程度損傷を受けたかを判別することが出来る。
【0023】
また、本発明では、拘束体が落下した後においても、拘束体が固定されていた剛性体を存して上部構造物を支承し続けることが出来る。
【0024】
更に、本発明では、第一剛性体と第二剛性体、更には拘束体のそれぞれの外表面に、異なる色、柄、模様、図、絵、記号等が施されているので、当該色や模様等の状態を目視し、拘束体がどちらの剛性体に近接したり接触しているのかを容易に判別することが出来る。また、これにより、支承装置の状態を第三者にも分かりやすく伝達することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した支承装置の通常の使用状態を示す断面図である。
【図2】側面の周回り方向に凸部と凹部を設けた弾性体の斜視図である。
【図3】側面の高さ方向に凸部と凹部を設けた弾性体の斜視図である。
【図4】側面に凸部と凹部を設けていない弾性体の斜視図である。
【図5】鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す特性グラフである。
【図6】破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図7】破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図8】図1,図6及び図7の変形例であり、ボルト座部の厚さを拘束体のネジ穴の螺合深さより大きくした支承装置の断面図である。
【図9】図8の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図10】図8の例において、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図11】上沓の下面に突出部を設けた支承装置の断面図である。
【図12】図11の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図13】上沓と弾性体との間に蓋板を配設した支承装置の断面図である。
【図14】図13の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図15】図13の例において、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図16】上沓に、弾性体上の蓋板より大きい凹部を設けた支承装置の断面図である。
【図17】図16の変形例であり、蓋板の厚さを凹部の深さより厚くした支承装置の断面図である。
【図18】図17の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図19】図17の例において、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図20】上沓に、拘束体が挿入される拘束体より大きい凹部を設けた支承装置の断面図である。
【図21】図20の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図22】図20の例において、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図23】上沓と下沓と拘束体に適宜の色を施した支承装置の断面図である。
【図24】図23の例において、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図25】弾性体の周囲に筒状体を設けた支承装置の断面図である。
【図26】図25の変形例を示す断面図である。
【図27】上揚防止片と下沓との間の間隙に水密部材を配設した支承装置の断面図である。
【図28】図27の例において、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図29】上揚防止片に配設凹部を設け、ここに水密部材を配設した支承装置の断面図である。
【図30】芯材と上揚防止片の先端面との間に水密部材を配設した支承装置の断面図である。
【図31】水密部材を蛇腹部材にした支承装置の断面図である。
【図32】芯材が上沓と弾性体を貫通するように設けられた支承装置の断面図である。
【図33】図32の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図34】拘束体を上沓に水平方向からボルトで固定した芯材のない支承装置の断面図である。
【図35】図34の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【図36】図1等に示した支承装置の変形例であり、拘束体を上沓に水平方向からボルトで固定した支承装置の断面図である。
【図37】図36の例において、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る弾性体拘束度可変構造が適用された支承装置について図面を参照して説明する。なお、以下、支承装置について、以下の順に沿って説明する。
【0027】
1.支承装置の説明
2.弾性体及び拘束体の説明
3.支承装置の動作説明
4.支承装置の変形例1の説明
5.支承装置の変形例2の説明
6.支承装置の変形例3の説明
7.支承装置の変形例4の説明
8.支承装置の変形例5の説明
9.支承装置の変形例6の説明
10.支承装置の変形例7の説明
11.支承装置の変形例8の説明
12.支承装置の変形例9の説明
13.支承装置の変形例10の説明
14.支承装置の変形例11の説明
15.その他の変形例
【0028】
[1.支承装置の説明]
図1に示すように、支承装置10は、橋桁等の上部構造物1と橋脚や橋台といった下部構造物2との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的又は静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。この支承装置10は、第一剛性体としての上沓11と第二剛性体としての下沓12との間に支承体となる弾性体13が介在されている。また、弾性体13は、上沓11又は下沓12(ここでは上沓11)に固定された拘束体16によって囲繞されている。
【0029】
上沓11は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材とを組み合せた材料によっても構成することが出来る。各種素材から構成される上沓11は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。なお、上沓11は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成しても良い。
【0030】
上部構造物1に対する上沓11の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓11を上部構造物に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、上沓11よりも広面積の板状をなす上部プレート3を用いて上沓11を上部構造物1に対して間接的に固定している。上沓11の上部構造物1への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0031】
なお、可動支承装置として用いるとき等は、上沓11の上部、例えば上沓11と上部プレート3との間に摺滑部材4を配設して、上部構造物1と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材4としては、例えば、フッ化炭素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓11の上面に固定したり、又は上部構造物1や上部構造物1に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0032】
下沓12は、上沓11同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材とを組み合せた材料によって構成することも出来る。各種素材から構成される下沓12は、平面形状が略多角形、略円形、略長円形、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、又は施工上、交換上で有利である。下沓12の平面形状等は、必ずしも上沓11と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓12の設定と上沓11の設定を互いに整合させる必要がある。なお、下沓12は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することも出来る。
【0033】
下部構造物2に対する下沓12の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓12を下部構造物2に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、下沓12よりも広面積の板状をなす下部プレート5を用いて下沓12を下部構造物2に対して間接的に固定している。下沓12の下部構造物2への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0034】
なお、可動支承装置として用いるとき等は、下沓12の下部、例えば下部プレート5と下沓12との間に摺滑部材6を配設して、下部構造物2と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材6としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓12の下面に固定したり、又は下部構造物2や下部構造物2に固定される取付手段側の上面に固定することが可能である。
【0035】
尚、上沓11や下沓12の直接的又は間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0036】
[2.弾性体及び拘束体の説明]
ここで用いられる弾性体13は、例えば、弾性層13aと補強板13bとが積層された積層構造の弾性体である。弾性体13は、内部に補強板13bが設けられ、弾性層13aが複数設けられ、補強板13bと弾性層13aとが加硫接着によって相互に接着されている。また、弾性体13は、上面と下面も上板13cと下板13dとが加硫接着され補強されている。
【0037】
ここで、弾性層13aとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを一種単独、或いは二種以上を併用することが出来る。そして、補強板13bや上板13cや下板13dは、鉄板といった剛性の鋼材が用いられている。以上のような積層型の弾性体13は、荷重が加わったとき、自由側面となっている補強板13bの間の弾性層13aの側面が荷重の大きさに応じて側方に僅かに膨出する特性を有する。
【0038】
そして、弾性体13の周囲には、周回り方向に、凸部14と凹部15とが設けられている。凸部14と凹部15は、図1の例では、互いに平行に、周回り方向に連続して設けられている。勿論、凸部14と凹部15は、周回り方向に断続的に設けられていてもよい。特に、弾性体13では、自由側面となっている弾性層13aの側面に凸部14が設けられ、補強板13bの位置に凹部15が設けられている。勿論、これとは逆に、弾性層13aの位置に凹部15を設け、補強板13bの位置に凸部14を設けるようにしてもよい。
【0039】
以上のような弾性体13は、下沓12に固定された芯材21の大径部22に配設され、支持される。弾性体13は、上沓11と下沓12との間を接着して高支圧化しても良いが、接着しないことにより、良好な回転追従性を実現することも出来る。
【0040】
なお、以上の例では、弾性体13が積層型である場合を説明したが、本発明での弾性体13は、図2に示すように、凸部14や凹部15を設けながらも、内部に鉄板といった剛性の補強板が設けられていない弾性層が一つ(単層)のものであってもよい。また、図3に示すように、弾性体13としては、高さ(厚さ)方向に、凸部14や凹部15を設けたものであってもよい。図3の例では、弾性層が単層でもよいが、図1の例のように、補強板を有する積層型であってもよい。更に、図4に示すように、側面に凸部14や凹部15を有しない弾性体であってもよい。この場合も、弾性体は、弾性層が単層でもよいが、補強板を有する積層型であってもよい。また、図1−図4の弾性体13の大きさは、拘束体16内に挿入するとき、拘束体16に嵌合する大きさでもよいが、組立性を考慮して、一回り小さくして、拘束面16aと弾性体13の側面との間に間隙を設けるようにしてもよい。なお、以下の説明では、図1に示した凸部14や凹部15を有する積層型の弾性体を例に説明する。
【0041】
以上のように構成される弾性体13は、図1に示すように、拘束体16によって囲繞されている。拘束体16は、弾性体13の外径よりやや大きい内径を有する円筒体であり、上沓11又は下沓12の何れか、図1では上沓11の外周部に固定されている。例えば、上沓11と拘束体16との結合は、固定部を構成する締結部材である固定ボルト17によって行われ、拘束体16は、弾性体13の鉛直変位の方向、すなわち上側から固定されている。具体的に、上沓11の上面外周部には、厚さ方向に、ボルト凹部17aが設けられていると共に、その底部に、貫通孔17bが形成され、貫通孔17bの周囲にボルト座部17cが形成されている。更に、拘束体16の上側の端面には、貫通孔17bに対応するネジ穴17dが設けられている。すなわち、ボルト軸部17eは、芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)螺入される。ここでは、ボルト座部17cの厚さTは、ネジ穴17dの螺合深さDより小さくなるように形成されている(T<D)。これにより、ボルト座部17cの強度は、ネジ穴17dでの螺合部強度より弱くなっている。すなわち、上揚力が加わったとき、固定ボルト17は、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損する前に、ボルト座部17cが破損することになる。更に、水平力が加わったときは、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが破断するようになっている。固定ボルト17のボルト頭部17fは、ボルト凹部17aから突出することなく収容され、上部構造物1や上部プレート3に当たらないようにしている。
【0042】
なお、この例では、ボルト座部17cの強度がネジ穴17dでの螺合部強度より弱いのであれば、(ボルト座部17cの厚さT)>(ネジ穴17dの螺合深さD)の関係であってもよい。このような関係は、上沓11と拘束体16の材料や材質等を調整することによって実現可能である。
【0043】
更に、下沓12には、芯材21が固定され、上揚防止部と水平変位防止部となっている。具体的に、芯材21は、ベースプレートとなる下沓12に下端部が固定される。芯材21は、大径部22となる頭部を有する金属性のボルト状部材からなり、先端部である大径部22が拘束体16内に配設され、弾性体13をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンのように機能する。この芯材21は、下沓12のネジ穴23に螺合されることによって固定される。なお、芯材21の下沓12への固定構造も、これに限定されるものではなく、例えば芯材21のネジ穴に、下沓12の下面から挿通させた固定ボルトを螺合して固定するようにしてもよい。また、芯材21と下沓12との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重が加わった場合にも、固定ボルト17より先に当該箇所が破損しないようになっている。なお、大径部22も、例えば芯材21の先端部に設けたネジ部を別部材の大径部のネジ穴に螺合して固定するようにしてもよい。
【0044】
芯材21と一体の大径部22は、外周部下面が上沓11の外周部にネジ等の固定部材24によって固定された拘束体16の上揚防止片25と係合する。固定部材24も、下沓12のボルト凹部24a内にボルト頭部が収まり、下沓12側に突出しないように構成されている。下沓12と一体の芯材21の大径部22は、上揚防止部ともなって、上沓11に上揚力が加わったとき、上沓11側の上揚防止片25が係止されることで、上沓11と下沓12とが乖離することを防止する。すなわち、芯材21の大径部22は、拘束体16内に配設されることで、弾性体13の鉛直方向の変位を許容し、また、水平変位防止部となって、芯材21で水平方向の変位を規制する。これにより、過剰に上沓11と下沓12とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。更に、上揚防止片25と下沓12との間は、間隙C1が設けられており、鉛直下向きに変位して、上沓11が下沓12側に移動した際にも、上揚防止片25が下沓12に突き当たらないようにしている。なお、上揚防止片25は、溶接等によって、拘束体16に固定されていてもよい。また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重が加わった場合にも、固定ボルト17より先に当該箇所が破損しないようになっている。
【0045】
すなわち、支承装置10は、上沓11側の拘束体16の下沓12側の芯材21の弾性体13を支持する大径部22が配設されることで、下沓12が上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が拘束体16によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになる。支承装置10は、半密閉のゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0046】
この支承装置10の組立方法について説明すると、拘束体16に芯材21を挿入し、芯材21を下沓12のネジ穴23に固定する。これにより、拘束体16内には、大径部22によって、弾性体13を収納するポット部が形成される。この後、ポット部には、弾性体13が芯材21の大径部22上に配置される。この後、拘束体16には、上沓11が固定ボルト17によって結合される。勿論、支承装置10の組立方法は、上記の例に限定されるものではない。なお、弾性体13と拘束体16との間は、潤滑剤18を充填するようにし、低摩擦にして弾性体13が拘束体16内で円滑に鉛直変位出来るようになる。また、摩擦力を小さくするため、拘束体16の拘束面16aを鏡面加工して低摩擦にしたり、又は、潤滑剤との組み合わせで、所定以上の入力があって、上沓11に対して拘束体16を固定している固定部が破損した際に、拘束体16が、弾性体13に対して鉛直方向に移動し易くなるように構成してもよい。
【0047】
ここで、弾性体13と拘束体16との大きさの関係について説明すると、図1の例では、支承装置10が上部構造物1と下部構造物2との間に設置され、支承装置10に対して上部構造物1の荷重によって弾性体13が変形している状態(例えば死荷重が加わった状態)において、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態となっている。つまり、上部構造物1と下部構造物2との間に設置される前は、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aとの間が非接触の状態で、隙間が設けられた状態となっており、上部構造物1と下部構造物2との間に設置されると、上部構造物1の死荷重によって、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態となる。なお、死荷重の載荷時には、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aと非接触で、通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば大型車両等の交通荷重による活荷重)があった際に、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aと当接し、更なる高荷重の入力によって拘束面16aに凸部14、並びに、凹部15の膨出変形した部分が圧接されるようにしてもよい。なお、図3に示すように、弾性体13の側面に高さ方向の凸部14と凹部15がある場合、弾性体13を、拘束体16内のポット部に容易に収納することが出来る。
【0048】
[3.支承装置の動作説明]
以上のような支承装置10では、上部構造物1と下部構造物2との間に設置されると、図1に示すように、弾性体13が、通常の使用範囲の荷重(例えば死荷重や死荷重+車両通行時の活荷重)によって、圧縮され、弾性体13の凸部14は、弾性体13を囲繞した拘束体16の拘束面16aに近接又は当接した位置となる。支承装置10は、弾性体13が鉛直荷重の大きさに応じた弾性変形をし、この弾性変形によって側面の凸部14が凹部15により構成された隙間を埋めるように変形しながら、拘束体16の拘束面16aに圧接される。すなわち、弾性体13の変位量は、拘束体16によって制限される。
【0049】
更に、弾性体13の凸部14及び凹部15と拘束体16の拘束面16aとの関係を説明すると、積層型の弾性体13は、自由側面の弾性層13aの位置に凸部14を設け、補強板13bの位置に凹部15を設けるようにしている。この場合、凸部14は、荷重が加わった際、弾性層13aの自由側面が膨出することで、凹部15より先に拘束体16の拘束面16aに強く圧接される。積層型の弾性体13は、従来最も膨出量が多い補強板間の位置の弾性層13aに凸部14を設けた上、拘束体16の拘束面16aによってこの凸部14周辺の膨出量が拘束されているので、高荷重が入力されている際でも内部の補強板13bの周囲における弾性層13aに対する局部応力が緩和される。また、内部の補強板13bが高荷重によっても潰れにくくなり、補強板13bを薄くすることが出来、支承装置10の全体の薄型化を実現出来る。なお、補強板13bの位置を凸部14とし、弾性層13aの位置を凹部15としてもよい。この場合、凹部となっている弾性層13aの自由側面が僅かに膨出することで、凸部14と凹部15の部分が同じように拘束体16の拘束面16aと当接され均等に圧接されるようにすることが出来る。
【0050】
そして、支承装置10は、上沓11側の拘束体16の下沓12側の芯材21の弾性体13を支持する大径部22が配設されることで、大径部22が下沓12が上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が拘束体16によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになり、半密閉のゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0051】
また、低荷重から高荷重の入力に亘って鉛直面内における回転力の作用時には、弾性体13が拘束体16によって部分的に支持されながらも凸部14又は凹部15による隙間により弾性体13が変形し、弾性体への極端な負荷なく、良好な回転追従性を実現出来る。
【0052】
ここで、図5に、鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す。
線A・・・一般的な積層ゴム支承
なお、ここで言うゴム支承は、弾性体が積層ゴムであり、内部に複数枚の鋼板が設けられた地震時水平力分散型ゴム支承や免震支承であり、密閉ゴム支承ではなく、荷重が加わった際の変位が拘束されていない支承である。
線B・・・拘束体16の内径(ポット部の内径)に対して弾性体13の外形を小さくし、凸部14と凹部15を大きく形成して、拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を大きくしたときの特性を示す。(隙間大)
線C・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を線Bの場合より小さくしたときの特性を示す。(隙間中)
線D・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を最も小さくしたときの特性を示す。(隙間小)
線E・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を設けない密閉ゴム支承。回転追従性能を有するが、鉛直方向の弾性変位はほとんど無く、金属支承の扱いとなる。
【0053】
なお、本発明では、線A−Eの何れの支承装置も適用可能である。
【0054】
図5の線Aで示すゴム支承では、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量もほぼ比例的に大きくなり、グラフの傾き(拘束度又はバネ定数)はほぼ一定である。弾性体13の側面に凸部14と凹部15を設けた線B−Dの例によれば、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量も大きくなるが、その特性は非線形となる。すなわち、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾き(拘束度又はバネ定数)は、鉛直変位又が大きくなるほど大きくなる。このように、弾性体13の側面に凸部14と凹部15を設けたときには、大きな荷重が入力されたときほど、より高度な密閉状態に変化して鉛直変位量の増加量が小さくなるような特性で、すなわち拘束度を可変として、上部構造物1を支承することが出来る。すなわち、この支承装置10では、適度な鉛直可撓性を有しながら高荷重を支持することが出来る。また、線B−Dの例を見ると、隙間が小さい程、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾きの緩やかな範囲(一次勾配)を狭く設定することが出来る。すなわち、鉛直変位が小さくなる。更に、線Eの密閉ゴム支承では、鉛直方向の弾性変位はほとんど見られない。
【0055】
特に、弾性体13の側面に凸部14と凹部15を設けた線B−Dの例によれば、高荷重が加わると、鉛直可撓変位が小さくなり、密閉ゴム支承のように挙動する。したがって、線B−Dの例では、支承する上部構造物1の種類、用途等に応じて、線B−Dの使用範囲を設定していくことになる。例えば、死荷重に活荷重が加わったとき、グラフの急勾配の範囲(二次勾配)の領域に含まれるようにすることで、車両通過時の振動や騒音を低減することが出来るようになる。なお、低荷重の載荷では、鉛直撓みがあるため、線B−Dの支承装置は、弾性支承装置に属する扱いとし得る。
【0056】
次に、この支承装置10が破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について説明する。図6は、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。上記図1に示したように、芯材21と下沓12との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高くなっている。そして、ボルト座部17cの厚さTは、ネジ穴17dの螺合深さDより小さくなるように形成されている(T<D、図1参照)。これにより、ボルト座部17cの強度は、ネジ穴17dでの螺合部強度より弱くなっている。このため、支承装置10は、支承装置10が破損するような通常の使用範囲を超える上揚力が加わった場合、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損する前に、ボルト座部17cが破損する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前は、上揚防止片25と下沓12との間にある間隙C1は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0057】
また、図7は、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。水平力が上沓11に加わったときは、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが水平剪断によって破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前は、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0058】
以上のように、支承装置10では、拘束体16の位置、すなわち間隙が拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、どちらにどの程度の隙間があるのかを確認することによって、破損しているかどうかを確認することが出来る。更に、破損の状態、すなわち図6のように、拘束体16の端面に固定ボルト17のボルト頭部17fが露出しているとき、過剰な上揚力によって支承装置10が破損していることを判別することができ、更に、図7に示すように、固定ボルト17のボルト軸部17eが水平剪断しているとき、過剰な水平力によって支承装置10が破損していると判別することが出来る。そして、過剰な上揚力や水平力で破損し拘束体16が下沓12に落下しても、新たな支承装置と交換するまでの間、芯材21は、間に弾性体13及び上沓11を存して上部構造物1を支承し続けることが出来る。
【0059】
[4.支承装置の変形例1の説明]
図8に示す支承装置30は、上記図1、図6及び図7の支承装置10と同様、上沓11と拘束体16とが固定部材である固定ボルト17によって固定されている。ここでは、ボルト座部17cの厚さTは、ネジ穴17dの螺合深さDより大きくなるように形成されている(T>D)。これにより、ボルト座部17cの強度は、ネジ穴17dでの螺合部強度より強くなっている。すなわち、上揚力が加わったとき、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損するようになっている。更に、水平力が加わったときは、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが破損するようになっている。
【0060】
なお、この例では、ボルト座部17cの強度がネジ穴17dでの螺合部強度より強いのであれば、(ボルト座部17cの厚さT)<(ネジ穴17dの螺合深さD)の関係であってもよい。このような関係は、上沓11と拘束体16の材料や材質等を調整することによって実現可能である。
【0061】
以上のように、この支承装置10が破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について説明する。図9は、破損するような大きな上揚力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。図8に示すように、ボルト座部17cの厚さTは、ネジ穴17dの螺合深さDより大きくなるように形成されている(T>D)。これにより、ボルト座部17cの強度は、ネジ穴17dでの螺合部強度より強くなっている。このため、支承装置10は、支承装置10が破損するような通常の使用範囲を超える上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損し、ネジ穴17dから引き抜かれた状態となる。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。
【0062】
また、図10は、破損するような大きな水平力が加わった場合の支承装置の状態を示す断面図である。水平力が上沓11に加わったときは、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが水平剪断によって破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。
【0063】
以上のように、支承装置30では、拘束体16の位置、すなわち間隙が拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを確認することによって、破損しているかどうかを確認することが出来る。更に、破損の状態、すなわち図9のように、固定ボルト17が上沓11のボルト凹部17aに残存し、ボルト軸部17eの先端部が露出しているとき、過剰な上揚力によって支承装置10が破損していることを判別することができ、更に、図10に示すように、固定ボルト17のボルト軸部17eが水平剪断しているとき、過剰な水平力によって支承装置10が破損していると判別することが出来る。そして、この支承装置30は、過剰な上揚力や水平力で破損し拘束体16が下沓12に落下しても、芯材21は、間に弾性体13及び上沓11を存して上部構造物1を支承し続けることが出来る。そして、過剰な上揚力や水平力で破損し拘束体16が下沓12に落下しても、新たな支承装置と交換するまでの間、芯材21は、間に弾性体13及び上沓11を存して上部構造物1を支承し続けることが出来る。
【0064】
[5.支承装置の変形例2の説明]
図11に示す支承装置40も、上記図1、図6及び図7の支承装置10と同様、上沓11と拘束体16とが固定部である固定ボルト17によって固定されている。更に、ここでは、上沓11の弾性体13と対向する面に、拘束体16の内周部とほぼ嵌合する突出部41が設けられている。この突出部41は、ここでは上沓11と一体的に設けられているが、板部材を固定ボルト等で用いて上沓11に固定して設けるようにしてもよい。このような突出部41の厚さDは、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1の高さdより大きくなるように形成されている(d<D)。なお、上沓11と拘束体16とを結合する固定ボルト17に関しては、図1,図6及び図7の例に従ってもよいが、ここでは図8−図10の変形例1と同様になっている。
【0065】
このような支承装置40は、突出部41が拘束体16に嵌合していることから、水平力に対して極めて強固なものとなる。図12に示すように、支承装置40が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損し、ネジ穴17dから引き抜かれた状態となる。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(d=0)、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ(=d)分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。また、突出部41の厚さDは、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1の高さdより大きい(δ=d<D)。したがって、突出部41は、拘束体16が下沓12に落下しても、拘束体16から外れることはなく、弾性体13の半密閉状態を維持することが出来る。すなわち、支承装置10は、破損後であっても、破損前とほぼ同じ支承能力を維持することが出来る。
【0066】
なお、非常に大きな水平力が加わったときには、ボルト軸部17eが水平剪断によって破断し、拘束体16が上沓11側から下沓12の上に落下することになり、拘束体16の位置で、支承装置40の破損を確認判別出来、更に、破損が水平力によって破損したことを判別出来る。
【0067】
[6.支承装置の変形例3の説明]
図13に示す支承装置50も、上記図1、図6及び図7の支承装置10と同様、上沓11と拘束体16とが固定部材である固定ボルト17によって固定されている。更に、ここでは、拘束体16内の弾性体13上に蓋板51が配設されている。なお、この蓋板51は、上沓11の対向面とは接着されておらず、上沓11が摺動出来るようになっている。この蓋板51の厚さDは、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1の高さdより大きくなるように形成されている(d<D)。なお、上沓11と拘束体16とを結合する固定ボルト17に関しては、図1,図6及び図7の例に従ってもよいが、ここでは図8−図10の変形例1と同様になっている。
【0068】
以上のようにこの支承装置50が破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について説明する。図14に示すように、支承装置50が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損し、ネジ穴17dから引き抜かれた状態となる。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(d=0)、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ(=d)分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置60が破損していると判別することが出来る。
【0069】
また、図15に示すように、破損するような大きな水平力が加わった場合には、蓋板51に対して上沓11が水平方向に滑るように変位し、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが水平剪断によって破損する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(d=0)、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ(=d)分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置60が破損していると判別することが出来る。
【0070】
以上のように、支承装置50では、拘束体16の位置、すなわち間隙が拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを確認することによって、破損しているかどうかを確認することが出来る。更に、破損の状態、すなわち図14のように、固定ボルト17が上沓11のボルト凹部17aに残存し、ボルト軸部17eの先端部が露出しているとき、過剰な上揚力によって支承装置10が破損していることを判別することができ、更に、図15に示すように、固定ボルト17のボルト軸部17eが水平剪断しているとき、過剰な水平力によって支承装置10が破損していると判別することが出来る。また、蓋板51の厚さDは、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1の高さdより大きい(δ=d<D)。したがって、蓋板51は、拘束体16が下沓12に落下しても、拘束体16から外れることはなく、弾性体13の半密閉状態を維持することが出来る。すなわち、支承装置50は、破損後であっても、破損前とほぼ同じ支承能力を維持することが出来る。
【0071】
[7.支承装置の変形例4の説明]
図16に示す支承装置60も、上記図1、図6及び図7の支承装置10と同様、上沓11と拘束体16とが固定部である固定ボルト17によって固定されている。更に、ここでは、拘束体16内の弾性体13上に蓋板61が配設されている。なお、この蓋板61は、上沓11の対向面とは接着されておらず、上沓11が摺動出来る。また、上沓11の蓋板61と対向する面には、蓋板61の一部が挿入される水平変位制限凹部62が設けられている。水平変位制限凹部62は、蓋板61より大きく形成され、蓋板61の両側に空隙が設けられるようにしている。この水平変位制限凹部62は、水平力が入力されたとき、水平変位制限凹部62の範囲内で蓋板61が移動出来、側面に突き当たることで、水平変位を制限するようにしている。
【0072】
図16の例では、蓋板61の厚さを水平変位制限凹部62の深さと同じにし、蓋板61を追加することによって、支承装置60の全体が厚くなったり、薄型化を優先するため弾性体13が薄くなることを防止している。但し、蓋板61は、図17に示すように、水平変位制限凹部62の深さより厚くするようにしてもよい。具体的に、この蓋板51の厚さTは、上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1の高さδと水平変位制限凹部62の深さdとを加算した厚さより厚くなるように形成されている(d+δ<T)。なお、上沓11と拘束体16とを結合する固定ボルト17に関しては、図1,図6及び図7の例に従ってもよいが、ここでは図8−図10の変形例1と同様になっている。
【0073】
図18に示すように、支承装置60が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損し、ネジ穴17dから引き抜かれた状態となる。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(δ=0)、若しくはδ=0に近づいて、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。
【0074】
また、図19に示すように、破損するような大きな水平力が加わった場合には、蓋板61と上沓11とが蓋板61が水平変位制限凹部62内を側面に突き当たるまで水平方向に滑るように変位し、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが水平剪断によって破損する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(δ=0)、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。
【0075】
以上のように、支承装置60では、拘束体16の位置、すなわち間隙が拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを確認することによって、破損しているかどうかを確認することが出来る。更に、破損の状態、すなわち図18のように、固定ボルト17が上沓11のボルト凹部17aに残存し、ボルト軸部17eの先端部が露出しているとき、過剰な上揚力によって支承装置10が破損していることを判別することができ、更に、図19に示すように、固定ボルト17のボルト軸部17eが水平剪断しているとき、過剰な水平力によって支承装置10が破損していると判別することが出来る。また、蓋板61の厚さTは、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1の高さδと水平変位制限凹部62の深さdとを加算した厚さより厚くなるように形成されている(d+δ<T)。したがって、蓋板61は、拘束体16が下沓12に向かって落下しても、拘束体16から外れることはなく、弾性体13の半密閉状態を維持することが出来る。また、蓋板61は、水平変位制限凹部62と係合しているので、上沓11が水平変位で外れることもない。したがって、支承装置60は、破損後であっても、破損前とほぼ同じ支承能力を維持することが出来る。
【0076】
[8.支承装置の変形例5の説明]
図20に示す支承装置70も、上記図1、図6及び図7の支承装置10と同様、上沓11と拘束体16とが固定部材である固定ボルト17によって固定されている。更に、ここでは、上沓11の弾性体13及び拘束体16と対向する面に、弾性体13及び拘束体16の上側の一部が挿入される水平変位制限凹部71が設けられている。この水平変位制限凹部71は、拘束体16の外形より大きく形成され、蓋板61の両側に空隙が設けられるようにしている。この水平変位制限凹部71は、水平力が入力されたとき、水平変位制限凹部71の範囲内で拘束体16が移動出来、側面に突き当たることで、水平変位を制限するようにしている。
【0077】
この支承装置70において、上沓11の外周部には、水平変位制限凹部71の外周壁となる突出部72が設けられている。この突出部72の高さDは、上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1の高さδより高く形成されている(d<D)。なお、上沓11と拘束体16とを結合する固定ボルト17に関しては、図1,図6及び図7の例に従ってもよいが、ここでは図8−図10の変形例1と同様になっている。
【0078】
図21に示すように、支承装置70が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損し、ネジ穴17dから引き抜かれた状態となる。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(d=0)、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。
【0079】
また、図22に示すように、破損するような大きな水平力が加わった場合には、拘束体16と上沓11とが拘束体16が水平変位制限凹部71内を側面に突き当たるまで水平方向に滑るように変位し、他の部材が破損する前にボルト軸部17eが水平剪断によって破損する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が下沓12に落下することで無くなり(d=0)、代わりに、上沓11と拘束体16との間にδ分だけ間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。
【0080】
以上のように、支承装置70では、拘束体16の位置、すなわち間隙が拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを確認することによって、破損しているかどうかを確認することが出来る。特に、この支承装置70では、上沓11側の間隙C2は突出部72で隠れるので、下沓12側の間隙C1の有無で先ずは作業者によって破損の有無判別が行われる。更に、破損の状態、すなわち図21のように、固定ボルト17が上沓11のボルト凹部17aに残存し、ボルト軸部17eの先端部が露出しているとき、過剰な上揚力によって支承装置70が破損していることを判別することができ、更に、図22に示すように、固定ボルト17のボルト軸部17eが水平剪断しているとき、過剰な水平力によって支承装置70が破損していると判別することが出来る。また、上沓11の外周部には、水平変位制限凹部71の外周壁となる突出部72が設けられている。この突出部72の高さDは、上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1の高さδより高く形成されている(d<D)。したがって、拘束体16は、下沓12に落下しても、上沓11の水平変位制限凹部71から外れることはなく、弾性体13の半密閉状態を維持することが出来る。また、拘束体16は、水平変位制限凹部71と係合しているので、上沓11が水平変位で外れることもない。したがって、支承装置70は、破損後であっても、破損前とほぼ同じ支承能力を維持することが出来る。
【0081】
なお、ここでは、上沓11の外周部には、水平変位制限凹部71の外周壁となる突出部72に関し、突出部72の高さDは、上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1の高さδより高くし(d<D)、拘束体16が、下沓12に落下しても水平変位制限凹部71から外れないようにしたが、水平変位制限凹部71で水平変位を制限出来るのであれば、d=D又はd>Dとして、拘束体16が下沓12上に落下したとき、水平変位制限凹部71から外れてもよい。
【0082】
[9.支承装置の変形例6の説明]
図23及び図24に示す支承装置80は、図1、図6及び図7の支承装置10や図8−図10に示す支承装置30と同様、上沓11と拘束体16とが固定部である固定ボルト17によって固定されている。そして、支承装置80は、破損するような通常の使用範囲を超える上揚力が加わった場合には、ボルト座部17cが破損し又はボルト軸部17eがネジ穴17dから引き抜かれ、拘束体16が上沓11側から下沓12の上に落下するようになっている。また、過剰な水平力が加わった場合には、図24に示すように、ボルト軸部17eが水平剪断によって破損し、拘束体16が上沓11側から下沓12の上に落下するようになっている。
【0083】
ところで、この支承装置80では、例えば、上沓11に第一色としての青色が着色され、上揚防止片25及び拘束体16並びに上揚防止片25の外側面に第二色としての黄色が着色され、下沓12に第三色としての赤色が着色されている。そうすると、通常の使用時にあっては、拘束体16は、固定ボルト17によって上沓11に固定されており、上揚防止片25と下沓12との間に間隙C1を形成している。したがって、通常の使用時の支承装置80では、上沓11の第一色としての青色と拘束体16及び上揚防止片25の第二色としての黄色が接した状態を確認することが出来る。そして、通常の使用範囲を超える上揚力が加わった場合には、ボルト座部17cが破損し又はボルト軸部17eがネジ穴17dから引き抜かれ、拘束体16が下沓12の上に重力により落下し、接近及び/又は当接する。また、通常の使用範囲を超える水平力が加わった場合には、ボルト軸部17eが水平剪断によって破損し(図24の例)、拘束体16が下沓12上に重力により落下し、接近及び/又は当接する。
【0084】
すると、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1が拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。これにより、破損した支承装置80では、拘束体16及び上揚防止片25の第二色としての黄色が下沓12の第三色としての赤色が接した状態を確認することが出来る。支承装置80の破損状況の確認作業を行う場合、確認者が遠隔者に対して、どの色とどの色が接しているか、又は、どの色とどの色とが離れているかを伝えるだけで、支承装置80が破損しているかどうかを確認し、遠隔者に対して例えば通信手段を介して伝達することが出来る。すなわち、支承装置80の確認作業を熟練者でなくとも行うことが容易に出来るようになる。
【0085】
なお、上沓11、拘束体16並びに上揚防止片25及び下沓12は、単色、例えば防錆被覆の色であってもよいが、ストライプや図案等の模様を施したものであってもよい。また、第一色と第二色を同色に設定し第三色のみを異なる色にしたり、或いは、第二色と第三色を同色に設定し第一色のみを異なる色にすることも出来る。更に、拘束体16は、上沓11と下沓12とが連続したすなわち全体で一つの図、柄、絵、模様、記号等を構成するようにしてもよいし、上沓11と下沓12と不連続のすなわち異なる図、柄、絵、模様、記号等を構成するようにしてもよい。また、上沓11、下沓12及び拘束体16に着色が施された支承装置80では、例えば、橋梁の色や図、柄、絵、模様、記号等と合わせて景観の向上を図ることも出来、更に、鳥類の嫌がる色や図、柄、模様等を選択することで、下部構造物2付近等に鳥類が近寄ることを防止することが出来る。このような場合には、上沓11、下沓12及び拘束体16が同じ色であってもよい。更に、上沓11と下沓12と拘束体16とを異なる色等を設定する例は、図8−図22に示すような支承装置にも適用することが出来る。
【0086】
[10.支承装置の変形例7の説明]
以上説明した支承装置10,30,40,50,60,70,80の例では、弾性体13と拘束体16の拘束面16aとの間に潤滑剤18を設け、側面が弾性変形した弾性体13と当接又は圧接されている拘束体16が破損時、下沓12上に落下するようにしていたが、このような機能を果たす滑性手段の変形例として、図25に示すように、弾性体13を筒状体91の内部に設けるようにしてもよい。この筒状体91は、外側面が摺滑面となるように形成されている。この支承装置90では、芯材21の大径部22に、更に、拘束体16の拘束面16aと摺動するピストン板92が配設され、このピストン板92の上に、弾性体13が内部に収納された筒状体91が配設されている。この筒状体91の高さは、活荷重等で弾性体13が鉛直方向に変位するように、例えば死荷重で鉛直変位した弾性体13の高さより低くなるように形成されている。かくして、弾性体13は、例えば活荷重を鉛直方向に対する若干の変位のみで支承することが出来る。また、筒状体91は拘束面16aと接する外周面が滑面となるように形成され、拘束面16aとの摩擦が小さくなるように形成されている。したがって、通常の使用範囲を超える上揚力又は水平力が加わって固定ボルト17が破損した場合において、拘束体16は、下沓12上に重力により円滑に落下する。これにより、上述のように、拘束体16が下沓12に落下しているかどうかを確認することで、支承装置90の破損状況を確認することが出来る。勿論、筒状体91と拘束体16の拘束面16aとの間に、更に潤滑剤を設けてもよい。なお、筒状体91は、平板材や多数の孔が設けられて構成される多孔板、微小な凹凸が設けられて構成される凹凸板、メッシュ材等を略筒状に形成することで構成してもよい。
【0087】
また、支承装置90の筒状体91は、図26に示すように、弾性体13からピストン板92に跨る高さを有するようにしてもよい。弾性体13が内部に収納された筒状体93の高さは、活荷重等で弾性体13が鉛直方向に変位するように、例えば死荷重で鉛直変位した弾性体13の高さより低くなるように形成されている。このような筒状体93によっても、通常の使用範囲を超える上揚力又は水平力が加わって固定ボルト17が破損した場合において、拘束体16は、下沓12上に重力により円滑に落下する。これにより、上述のように、拘束体16が下沓12に落下しているかどうかを確認することで、支承装置90の破損状況を確認することが出来る。
【0088】
なお、支承装置10,30,40,50,60,70,80の例にあっても、ピストン板92が設けられていてもよい。
【0089】
[11.支承装置の変形例8の説明]
図27及び図28に示す支承装置100は、上記図1、図6及び図7の支承装置10や図8−図10に示す支承装置30と同様、上沓11と拘束体16とが固定部である固定ボルト17によって固定されている。そして、支承装置100は、破損するような通常の使用範囲を超える上揚力が加わった場合には、ボルト座部17cが破損し又はボルト軸部17eがネジ穴17dから引き抜かれ、拘束体16が上沓11側から下沓12の上に落下するようになっている。また、過剰な水平力が加わった場合には、図28に示すように、ボルト軸部17eが水平剪断によって破断し、拘束体16が上沓11側から下沓12の上に落下するようになっている。
【0090】
更に、この支承装置100では、上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1より内部に水分が浸入することを防止する水密部材101が設けられている。ここでの水密部材101は、例えばゴムパッキンであり、芯材21の周囲に上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1を塞ぐように設けられている。したがって、この支承装置100では、上揚防止片25と下沓12との間の間隙C1から水分が浸入し、内部に錆等が発生することを防止することが出来る。
【0091】
以上のような支承装置100では、通常の使用時にあっては、拘束体16が固定ボルト17によって上沓11に固定されており、上揚防止片25と下沓12との間に間隙C1を形成している。しかし、間隙C1は、水密部材101によって、水密性が確保されている。そして、通常の使用範囲を超える上揚力が加わった場合には、ボルト座部17cが破損し又はボルト軸部17eがネジ穴17dから引き抜かれ、拘束体16が下沓12の上に重力により落下する。また、通常の使用範囲を超える水平力が加わった場合には、ボルト軸部17eが水平剪断によって破断し(図24の例)、拘束体16が下沓12上に重力により落下する。
【0092】
すると、破損前は、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1が拘束体16が落下することで狭くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。これにより、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置100が破損していると判別することが出来る。また、支承装置100では、このように、拘束体16が下沓12の上に落下すると、図28に示すように、水密部材101を潰すことになる。支承装置100は、破損したときであっても、間に、弾性体13及び上沓11を存して上部構造物1を支承し続け、このような破損状態にあっても、潰れた水密部材101によって水密性を維持することが出来る。なお、水密部材101としては、特に限定されるものではないが、例えば中空ゴムパッキンを用いることで、潰れた際の厚みを薄くすることが出来、これにより、上沓11と拘束体16との間に作出される間隙C2が狭くなることを防止し、間隙C2が狭くなり作業者の間隙の判別作業を行いにくくすることを防止することが出来る。
【0093】
ところで、図29に示すように、水密部材101は、上揚防止片25の下沓12と対向する面に配設凹部102を設け、この配設凹部102に水密部材101を配設するようにしてもよい。水密部材101は、通常の使用状態のとき、配設凹部102より突出し、下沓12に圧接されることで、水密性を確保することが出来る。また、拘束体16が下沓12の上に落下したとき、水密部材101は、拘束体16の重さで潰れ、潰れた水密部材101は、配設凹部102内に収まり、上揚防止片25は、下沓12の面に接することになる。これにより、上沓11と拘束体16との間の間隙C2は、十分な間隔を確保することが出来、作業者は、間隙C2を確実に判別出来る。
【0094】
更に、水密部材101は、図30に示すように、上揚防止片25の先端面と芯材21との間の間隙部103に配設するようにしてもよい。この場合、拘束体16が下沓12の上に落下したとき、上揚防止片25は、下沓12の面に確実に接する。したがって、上沓11と拘束体16との間の間隙C2は、十分な間隔を確保することができ、作業者は、間隙C2を確実に判別出来る。
【0095】
更に、水密部材101は、図31に示すように、蛇腹部材104で構成するようしてもよい。蛇腹部材104は、薄肉金属で形成してもよいし、ゴム等の合成樹脂であってもよい。更に、水密部材を蛇腹部材104で構成したときには、上揚防止片25の先端面に、テーパ部105を設け、ここを、蛇腹部材104が潰された際の逃げとしてもよい。このような例によっても、拘束体16が下沓12の上に落下したとき、上揚防止片25は、下沓12の面に確実に接することが出来る。したがって、上沓11と拘束体16との間の間隙C2は、十分な間隔を確保することができ、作業者は、間隙C2を確実に判別出来る。
【0096】
[12.支承装置の変形例9の説明]
本発明の支承装置は、更に図32のように構成することも出来る。この支承装置110は、上沓11に表裏面に貫通した貫通孔111が穿設されている。貫通孔111には、上沓11の上面側から芯材112が挿入され、芯材112の先端部が上沓11の上面から突出することなく、上沓11が鉛直下向きに変位する分を考慮して、先端部が一段低くなるように収容されている。この貫通孔111の開口端には、上揚防止片111aがフランジ状に形成されている。また、拘束体16は、上沓11の外周部に、上述の例と同様、固定ボルト17で固定されている。拘束体16の下沓12側の先端部は、下沓12の外周部の外側に位置し、固定されていない。これにより、上沓11は、鉛直荷重の入力があったとき、弾性体13を圧縮しながら鉛直下向きに変位することが出来る。すなわち、拘束体16の下沓12側の先端部は、下沓12の外周部の外側に位置することで、上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13を略密閉状態に拘束して高支圧化させるシリンダの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が拘束体16によって包囲され、略密閉された空間に配設される。従って、支承装置110は、ほぼ密閉ゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0097】
貫通孔111に挿通される芯材112は、大径部113となる頭部を有する金属性のボルト状部材からなり、先端部である大径部113が上沓11の貫通孔111の内部に収容可能な大きさに設定されている。この芯材112は、上沓11の貫通孔111より弾性体13の略中央部に形成された挿通孔114に挿通され、更に、下沓12の弾性体13の支持面側に形成されたネジ穴115に螺合されることによって固定される。芯材112は、貫通孔111より挿入され、ネジ穴115に固定されたとき、大径部113が貫通孔111内に先端部が一段低くなるように収容される。この芯材112は、下沓12に固定されることで、上沓11と下沓12とが水平方向に相対変位しようとした際に、芯材112が上揚防止片111aの先端面又は貫通孔111の側面に突き当たり、下沓12に固定された芯材112によって上沓11の変位が制限される。すなわち、芯材112は、水平変位防止部として機能して、過剰に上沓11と下沓12とが水平方向において相対変位することを防止する。更に、芯材112の大径部113は、貫通孔111の上揚防止片111aの開口径より大きく、上揚防止片111aと係合する。芯材112は、上沓11に上揚力が加わったとき、下沓12に固定された芯材112の大径部113に上揚防止片111aが係止されることによって、上沓11と下沓12とが乖離することを防止する。すなわち、大径部113は、上揚防止部としても機能することになる。
【0098】
このような支承装置110は、芯材112が上沓11と弾性体13を貫通し下沓12に固定されていることから、水平力に対して極めて強固なものとなる。そして、図33に示すように、支承装置110が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト座部17cが破損する前に、ネジ穴17dのねじ溝やボルト軸部17eのねじ溝が破損し、ネジ穴17dから引き抜かれた状態となる。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12側に落下する。なお、この場合、下部構造物2まで重力で落下することになる。これにより、破損前、下沓12の外周面を外部に臨ませるように存在する拘束体16の下端面16bと下部構造物2、下部プレート5等との間の間隙C1は、拘束体16が下沓12側に落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16の上端面16cとの間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、下部構造物2、下部プレート5等と拘束体16との間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置110が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12の側に落下しても、芯材112に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0099】
[13.支承装置の変形例10の説明]
以上の例では、拘束体16を上沓11に鉛直変位方向から固定ボルト17で固定した例を説明したが、図34に示すように、拘束体16は、水平方向から固定ボルト17で上沓11に固定するようにしてもよい。すなわち、この支承装置120は、図35に示すように、弾性体13を囲繞する拘束体16は、筒状の上沓11の上側に嵌合するように取り付けられ、拘束体16の水平方向の貫通孔17bに固定ボルト17が挿通され、更に上沓11の水平方向のネジ穴17bに螺合される。このような支承装置120は、上沓11が拘束体16に嵌合していることから、水平力に対して極めて強固なものとなる。
【0100】
なお、この支承装置120では、下沓12上に弾性体13が配置され、この弾性体13上に、拘束体16に囲繞された上沓11が配設されている。また、拘束体16の下沓12側の先端部は、下沓12の外周部の外側に位置し、固定されていない。これにより、上沓11は、鉛直荷重の入力があったとき、弾性体13を圧縮しながら鉛直下向きに移動することが出来る。すなわち、支承装置120は、拘束体16の下沓12側の先端部が下沓12の外周部の外側に位置することで、下沓12が上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が拘束体16によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになる。支承装置120は、半密閉のゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0101】
図35に示すように、支承装置120が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト軸部17eが剪断破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前は、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置120が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0102】
なお、図35及び図36では、芯材の無い支承装置120を説明したが、この支承装置120において、支承装置10,30,40,50,60,70,80,90,100のように、拘束体16の上に上沓11を配置し、鉛直変位方向から固定ボルト17で、拘束体16を上沓11に固定するようにしてもよい。これにより、芯材の無い支承装置にあっても、上揚力で固定ボルト17が破断したのか上揚力で破断したのかを判別することが出来るようになる。
【0103】
[14.支承装置の変形例11の説明]
図36は、図1と同様に、芯材21を有する支承装置130であって、図35と同様、拘束体16を、水平方向から固定ボルト17で上沓11に固定するようにしたものである。このような支承装置130は、上沓11が拘束体16に嵌合していることから、水平力に対して極めて強固なものとなる。図37に示すように、支承装置130が破損するような通常の使用範囲を超える高い上揚力が加わった場合、固定ボルト17は、ボルト軸部17eが剪断破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前は、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙C1は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙C2が発生する。したがって、作業者は、間隙C1,C2が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙C2があるとき、支承装置130が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0104】
[15.その他の変形例]
上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。また、上沓11と上揚防止部との固定方法は、上述した固定ボルト17を用いる他に、溶接や接着剤による接着等であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 上部構造物、2 下部構造物、3 上部プレート、4 摺滑部材、5 下部プレート、6 摺滑部材、10 支承装置、11 上沓、12 下沓、13 弾性体、13a 弾性層、13b 補強板、13c 上板、13d 下板、14 凸部、15 凹部、16 拘束体、16a 拘束面、16b 下端面、16c 上端面、17 固定ボルト、17a ボルト凹部、17b 貫通孔、17c ボルト座部、17d ネジ穴、17e ボルト軸部、17f ボルト頭部、18 潤滑剤、21 芯材、22 大径部、23 ネジ穴,24 固定部材、24a ボルト凹部、25 上揚防止片、30 支承装置、40 支承装置、41 突出部、50 支承装置、51 蓋板、60 支承装置、61 蓋板、62 水平変位制限凹部、70 支承装置、71 水平変位制限凹部、72 突出部、80 支承装置、90 支承装置、91 筒状体、92 ピストン板、93 筒状体、100 支承装置、101 水密部材、102 配設凹部、103 間隙部、104 蛇腹部材、105 テーパ部、110 支承装置、111 貫通孔、111a 上揚防止片、112 芯材、113 大径部、114 挿通孔、115 ネジ穴、120,130 支承装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一剛性体と、
第二剛性体と、
前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に配設される弾性体と、
前記弾性体を囲繞する拘束体とを備え、
前記拘束体は、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方に固定部で固定され、
前記拘束体は、前記固定部が破損すると、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方に接近及び/又は当接することを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記拘束体は、前記弾性体の弾性変形を拘束する機能及び/又は前記弾性体の略密閉状態を保持する機能及び/又は前記第一剛性体と前記第二剛性体の相対変位を拘束する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記固定部は、鉛直変位方向に略並行な軸を有する締結部材によって固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方には、芯材が設けられ、
前記芯材は、前記拘束体又は前記第一剛性体、前記第二剛性体の少なくとも何れか一つ以上と一部が重なる上揚防止部を有することを特徴とする請求項1−3の何れかに記載の支承装置。
【請求項5】
前記固定部による前記拘束体と前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方との結合強度は、前記芯材と前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方との強度より低いことを特徴とする請求項4に記載の支承装置。
【請求項6】
前記固定部による前記拘束体と前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方との結合強度は、前記上揚防止部の強度より低いことを特徴とする請求項4又は5に記載の支承装置。
【請求項7】
前記弾性体は、前記拘束体が落下した後においても、前記拘束体が前記固定部で固定される前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方の剛性体を存して、上部構造物を支承し続けることを特徴とする請求項1−6の何れかに記載の支承装置。
【請求項8】
前記芯材は、前記拘束体が前記固定部で固定された前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方の剛性体の水平変位を防止する水平変位防止部を有することを特徴とする請求項4−7の何れかに記載の支承装置。
【請求項9】
前記固定部は、固定ボルトであり、
前記拘束体は、上揚力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト頭部がボルト座部を底抜けして、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方の側に落下することを特徴とする請求項1−8の何れかに記載の支承装置。
【請求項10】
前記固定部は固定ボルトであり、
前記拘束体は、上揚力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト軸部がネジ穴より引き抜かれ、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方の側に落下することを特徴とする請求項1−8の何れかに記載の支承装置。
【請求項11】
前記固定部は固定ボルトであり、
前記拘束体は、水平力によって前記固定ボルトが破損すると、ボルト軸部が剪断して、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方の側に落下することを特徴とする請求項1−10の何れかに記載の支承装置。
【請求項12】
前記拘束体が前記固定部で固定される前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方の剛性体には、前記拘束体と嵌合する突出部が設けられ、
前記突出部の前記拘束体との係り長は、前記拘束体と前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか他方との間隙より大きいことを特徴とする請求項1−11の内何れか1項に記載の支承装置。
【請求項13】
前記弾性体と前記拘束体が前記固定部で固定される前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方の剛性体との間には、蓋板が配設されていることを特徴とする請求項1−11の何れかに記載の支承装置。
【請求項14】
前記蓋板の厚さは、前記拘束体と他方の剛性体との間隙より大きいことを特徴とする請求項13に記載の支承装置。
【請求項15】
前記拘束体が前記固定部で固定される前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方の剛性体の前記蓋板と対向する面には、前記蓋板より水平変位方向に大きい凹部が形成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の支承装置。
【請求項16】
前記拘束体が前記固定部で固定される前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方の剛性体には、前記拘束体と対向する面に、前記拘束体より水平変位方向に大きい凹部が形成されていることを特徴とする請求項1−15の何れかに記載の支承装置。
【請求項17】
前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体の外表面は、異なる色、柄、記号、模様、図、絵の何れかが設定されていることを特徴とする請求項1−16の何れかに記載の支承装置。
【請求項18】
前記拘束体の外表面は、前記第一剛性体又は前記第二剛性体の外表面に設定される色、柄、記号、模様、図、絵と同様に設定されることを特徴とする請求項1−17の何れかに記載の支承装置。
【請求項19】
前記拘束体の外表面は、前記第一剛性体又は前記第二剛性体の外表面に設定される色、柄、記号、模様、図、絵と異なる設定とされることを特徴とする請求項1−17の何れかに記載の支承装置。
【請求項20】
前記弾性体と前記拘束体の内周面との間には、滑性手段が施されていることを特徴とする請求項1−19の何れかに記載の支承装置。
【請求項21】
前記滑性手段は、潤滑剤であることを特徴とする請求項20に記載の支承装置。
【請求項22】
前記滑性手段は、前記弾性体が内部に配設される、外側面が摺滑面の略筒状体を含んで構成されることを特徴とする請求項20又は21に記載の支承装置。
【請求項23】
前記拘束体と前記弾性体との間には、無入力の状態で、間隙部が設けられていることを特徴とする請求項1−22の何れかに記載の支承装置。
【請求項24】
前記弾性体の側面には、凸部又は凹部が設けられていることを特徴とする請求項1−23の何れかに記載の支承装置。
【請求項25】
所定以上入力されると、前記弾性体が弾性変形し、弾性変形した前記弾性体の側面が前記拘束体に当接及び/又は圧接して前記弾性体の変形が拘束されることを特徴とする請求項1−24の何れかに記載の支承装置。
【請求項26】
所定以上入力されると、前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体とによって囲繞されて半密閉状態とされ、
前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化することを特徴とする請求項1−25の何れかに記載の支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2013−64426(P2013−64426A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202449(P2011−202449)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】