説明

支持装置

【課題】 可動部の位置の変化によらず略一定の支持力可動部に対して付与し、且つ構造が簡単で、外部からエネルギーを供給する必要が無く、構成部品の劣化が発生しない自重支持装置を提供する。
【解決手段】 本発明では、
軸方向に着磁され、両先端に磁極を有する柱形状からなる第一の永久磁石と、
貫通穴を有し、前記貫通穴の軸方向と平行で且つ略一様な磁場が、前記貫通穴内部の一定範囲において発生するように着磁された第二の永久磁石とからなり、
前記第一の永久磁石の一方の先端が、前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴に非接触で挿入され、且つ前記略一様な磁場の範囲内に位置するよう配置されており、
前記第一の永久磁石の他方の先端が、前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置するよう配置されており、
前記第一の永久磁石と前記第二の永久磁石との間に発生する磁力を、支持力として利用することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は一般に、可動部を有する装置に搭載され、かかる可動部に対し一定の支持力を与える支持装置に関する。
このような支持装置は、例えば、鉛直方向に動作可能なテーブル上に基板を保持し、その鉛直方向の位置決めを行う半導体製造装置用ステージ装置において、テーブル部分に対し重力に抗する支持力を与える等の用途に用いられ、自重支持装置、カウンターバランス等の名称でも知られるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や半導体検査装置、液晶製造装置等においては、装置内部において半導体ウェハやガラス基板等の基板を保持し、その正確な位置決めを行うためのステージ装置が必要とされる。
【0003】
そのようなステージ装置としては、例えばウェハ検査装置におけるスキャン動作、ステップ動作のように水平方向の動作、位置決めを行うものの他、焦点合わせ等の目的で鉛直方向、即ちZ方向への動作、位置決めを行うものがある。また、両者を一体とした装置も存在する。
【0004】
ステージ装置の鉛直方向動作を実現するための駆動方法としては、例えば電磁モータを利用したもの等、種々の方法が採用されている。(例えば特許文献1参照。)
【0005】
テーブルや搭載基板等に対しては、通常は鉛直下方に重力がかかるため、テーブルの動作状態に関わらず、鉛直方向の駆動部は、この重力に対抗する力を常に発生させておく必要がある。このことは即ち、鉛直方向の駆動部である電磁モータに対し、静止時においても常に一定の電流を流し続ける必要があることを意味するため、消費電流の増大や、ジュール熱による位置精度への悪影響等の問題があることが従来より指摘されていた(特許文献3)。
【0006】
このような問題点に対する対策としては、例えば特許文献2に見られるように、電磁モータ等からなる駆動部に加え、別途エアシリンダ等による自重支持装置を設けることが行われていた。しかしながら、鉛直方向のテーブル位置の変化によらず一定の自重支持力を与えるためには、エアシリンダ内部圧力の制御機構を設ける必要があり、機構の複雑化、コストの増大という問題が生じる。
【0007】
また同文献には、エアシリンダに加えて永久磁石を用いた例が紹介されているが、永久磁石の吸引力及び反発力は、永久磁石間の距離に応じて変化するため、鉛直方向のテーブル位置が変化してもその支持力を一定とするためには、やはり別途制御機構を設ける必要がある。
【0008】
また別の対策としては、例えば特許文献3に見られるように、永久磁石と板バネを組み合わせることで、鉛直方向のテーブル位置によらず略一定の支持力を得ることの出来る支持装置が紹介されている。この場合、支持力を一定とするための制御機構は不要であるが、永久磁石間の力は距離の二乗に逆比例するのに対し、板バネの力はテーブルの変位に比例するため、両者を組み合わせて得られた力を完全に一定とすることは不可能であり、鉛直方向のテーブル位置の変化に応じて多少変動することは免れない。更に、板バネの変形を利用しているため、長期間の使用による板バネの劣化が生じた場合には、支持力が大きく変動することになってしまう可能性がある。
【特許文献1】特開2007−123860号公報(図2)
【特許文献2】特開2006−140399号公報(図3)
【特許文献3】特開平10−521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の態様は、上記問題を解決するためになされたもので、可動部を有する装置に搭載され、かかる可動部に対し一定の支持力を与える支持装置であって、可動部の位置の変化によらず略一定の力を可動部に対して付与し、且つ構造が簡単で、外部からエネルギーを供給する必要が無く、構成部品の劣化が発生しない自重支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一実施形態によれば、
軸方向に着磁され、両先端に磁極を有する柱形状からなる第一の永久磁石と、
貫通穴を有し、前記貫通穴の軸方向と平行で且つ略一様な磁場が、前記貫通穴内部の一定範囲において発生するように着磁された第二の永久磁石とからなり、
前記第一の永久磁石の一方の先端が、前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴に非接触で挿入され、且つ前記略一様な磁場の範囲内に位置するよう配置されており、
前記第一の永久磁石の他方の先端が、前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置するよう配置されており、
前記第一の永久磁石と前記第二の永久磁石との間に発生する磁力を、支持力として利用することにより、
永久磁石を組み合わせた簡単な構造でありながら、外部から何らエネルギーの供給をすることなく、搭載された装置の可動部の位置によって変化しない略一定の支持力を発生させる支持装置を得ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、
前記第一の永久磁石は、複数の永久磁石を組み合わせたものととすることにより、支持装置の形態を、搭載される装置の構造に応じた適切な形状とすることが可能となる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、
前記第二の永久磁石を、複数の永久磁石を組み合わせたものとすることにより、自重支持装置の形態を、ステージ装置の構造に応じた適切な形状とすることが可能となる。
更に、複数の永久磁石の形状、及びそれらの着磁の方向を適宜調節することで、発生磁場の利用効率を向上させ、前記第二の永久磁石全体の形状を小型化することが可能となる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、
請求項1から請求項3にいずれかの一に記載の支持装置である第一の支持装置と、
同じく請求項1から請求項3にいずれかの一に記載の支持装置である第二の支持装置と、
軸方向に着磁され、両先端に磁極を有する柱形状からなる第三の永久磁石とからなり、
前記第一の支持装置を構成する前記第一の永久磁石と、前記第二の支持装置を構成する前記第一の永久磁石とは、その着磁方向が互いに平行で且つ逆方向となるよう配置されており、
前記第一の支持装置を構成する前記第二の永久磁石と、前記第二の支持装置を構成する前記第二の永久磁石とは、それぞれの貫通穴内部に発生している略一様な磁場が、互いに平行で且つ逆方向になるよう配置されており、
前記第一の支持装置を構成する前記第一の永久磁石のうち、前記第一の支持装置を構成する前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置する先端と、
前記第二の支持装置を構成する前記第一の永久磁石のうち、前記第二の支持装置を構成する前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置する先端とが、
前記第三の永久磁石を介して接続されている支持装置セットを構成することにより、
支持装置セットを構成する各支持装置の形状を大型化することなく、搭載された装置の可動部が受ける支持力の均一性を更に向上させることが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、第三の永久磁石は、複数の永久磁石を組み合わせてなる支持装置とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、可動部の位置によって変化しない、略一定の支持力を可動部に与える支持装置を得ることが出来る。
このような支持装置を、例えば、電磁モーターによって可動部を鉛直方向に駆動する装置において、可動部に対して鉛直上方に支持力を与えるように搭載すれば、可動部が受ける重力がキャンセルされるため、電磁モーターに供給する電流を低減することが可能となるという効果がある。
また、当該支持力は永久磁石によるものであり、外部からのエネルギーの供給や制御は何ら必要としないため、支持装置の構造を単純なものとすることが出来る。
更に、本発明に係る支持装置は、板バネ等の物理的な変形を伴うものではなく、永久磁石間で働く非接触の力を利用するものであるため、構成部品の劣化が生じることなく長期間に渡り使用することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施の形態について説明をする。
図1は、本発明に係る支持装置を搭載した、ステージ装置の一例を示す斜視図である。また、図2は、図1に示すステージ装置の内部構造を示す断面図である。
【0017】
本発明に係る支持装置は、図10に示したように棒型永久磁石7とリング型永久磁石8の対によって構成されており、本実施例においては四箇所において搭載されている。このような支持装置が支持力を発生させる原理等については後述する。
【0018】
図1及び図2に示されたステージ装置においては、基板を搭載するための円形のテーブル1を有している。テーブル1の下部にはテーブルベース2が配置されており、テーブル1とテーブルベース2とは図示しない真空吸着手段により固定され、両者は一体となっている。
【0019】
テーブルベース2の下部には、中空の矩形断面を有するエアー可動子3が固定されている。
【0020】
また、エアー可動子3を取り囲むように、中空の矩形断面を有するエアー固定子4が配置され、エアー固定子4はベースプレート5に固定されている。
【0021】
エアー可動子3とエアー固定子4はそれぞれアルミナセラミックスからなっており、これらは5μm程度の隙間を介して四面で対抗している。両者の各対抗面には図示しない静圧気体軸受が形成されているため、エアー可動子3とエアー固定子4とは非接触状態で滑らかに嵌合している。
【0022】
このような構造とすることにより、テーブル1、テーブルベース2、及びエアー可動子3は一体となって、エアー固定子4及びベースプレート5に対して上下に移動することが出来る。
【0023】
尚、エアー可動子3、及びエアー固定子4をいずれも矩形断面を有する形状としたのは、エアー可動子3の回転方向の自由度を制限するためである。テーブル1を回転方向にも駆動する必要がある場合は、ベースプレート5自体を回転させる機構を設ければよい。
【0024】
テーブル1に駆動力を与える駆動部は、コイル6a、及びモーター用永久磁石6bから構成されるリニアモーター6である。コイル6aはベースプレート5上面の中心部に固定され、モーター用永久磁石6bはエアー可動子3の内壁に固定されている。外部より、図示しないケーブルを介してコイル6aに電流を供給することで、コイル6aとモーター用永久磁石6bとの間に駆動力を発生させる。
【0025】
次に、本発明に係る支持装置について説明する。
テーブルベース2の下面外周近くの四箇所には、円柱形状である棒型永久磁石7のN極端が先端固定具10により固定されており、それぞれのS極端がテーブルベース2に対し垂直下方に突出している。
【0026】
また、ベースプレート5上の四箇所には、中心に貫通穴9を有するリング型永久磁石8が固定されている。リング型永久磁石8は貫通穴9と平行な方向に着磁されており、全てN極を上方に向け、それぞれの上方に配置された各棒型永久磁石7と中心軸を一致させて配置されている。
【0027】
また、各棒型永久磁石7の下端(S極)は、各リング型永久磁石8の貫通穴9に挿入されており、テーブル1がその鉛直方向のストローク中央位置にある際において、各棒型永久磁石7の下端が、リング型永久磁石8の高さ方向の中心に位置するよう設計されている。
【0028】
ここで、リング型永久磁石8の着磁方向に沿って形成された貫通穴9の少なくとも中央付近に置いては、着磁方向に沿った略一様な磁場が存在している。
【0029】
本実施例では、高さが40mm、直径が50mm、貫通穴9の直径が16mmで、残留磁束密度が約1200mTのネオジム磁石からなるリング型永久磁石8を使用している。このリング型永久磁石8において、貫通穴9内部の中心軸に沿った磁束密度を、その高さ方向の位置に沿ってプロットしたものを図3に示した。同図によれば、リング型永久磁石8の中心である高さ20mmの位置を中心として、±約10mmの範囲内ではほぼ一様とみなせる磁場が形成されていることがわかる。
【0030】
貫通穴9の中央付近に棒型永久磁石7の一端を配置すると、棒型永久磁石7は当該磁場から力を受けるが、その力の大きさは当該磁場の大きさに比例する。従って、リング型永久磁石8の貫通穴9において、磁場が略一様である範囲内に棒型永久磁石7の先端がある限りは、棒型永久磁石7が受ける力はその高さ方向の位置によらず、ほぼ一定となる。
【0031】
棒型永久磁石7の残留磁束密度を1200mT、直径を10mmとした場合、一つの棒型永久磁石7が受ける力は約23Nである。この力は、棒型永久磁石7の断面積に比例するため、実際の設計においては、必要とする支持力に応じて断面積が決定される。
【0032】
本実施例においては、ウェハ等の基板、テーブル1、テーブルベース2、エアー可動子3、先端固定具10、棒型永久磁石7、及びモーター用永久磁石6bが受ける重力の合計が必要な支持力である。尚、上記構成物に限らず、駆動部により支持されている他の構成物が存在するならば、その構成物にかかる重力も必要な支持力に加算すべきことは言うまでも無い。
【0033】
本実施例では、棒型永久磁石7とリング型永久磁石8とからなる組を四組配置しているため、個々の棒型永久磁石7が受ける力の大きさが、前記必要な支持力の1/4となるよう、棒型永久磁石7の断面積が決定されている。
【0034】
以上の構成により、少なくとも静止状態においては、駆動部にはテーブル1等が受ける重力が殆どかからないため、テーブル1が静止状態においてコイル6aに供給する電流をほぼ0とすることが出来る。
【0035】
図1及び図2に示したステージ装置において、各棒型永久磁石7が受ける力の大きさと、棒型永久磁石7の位置との関係を計算にて求めた結果を図4に示した。
横軸は棒型永久磁石7の下端の位置を示しており、棒型永久磁石7の下端がリング型永久磁石8の下端にある場合を0とし、上方向を+方向としたものである。
同図において、棒型永久磁石7の下端がリング型永久磁石8の中央付近にあれば受ける力は略一定である様子が示されてはいるが、全体として僅かに右肩下がりの傾向となっている。このため、テーブル1の鉛直方向の高さによって支持力が僅かに変動してしまうこととなる。
【0036】
この問題が発生する原因と、有効な対策について以下に示す。
【0037】
尚、この様な右肩下がりの傾向があっても、図4から明らかなようにその傾向は僅かであって、略一様な力を支持力として与えることでコイル6aに供給する電流を低減させるという本発明の効果は十分に得られるものである。
【0038】
貫通穴9と平行な方向に着磁されたリング型永久磁石8は、貫通穴9内部のみならず外部においても磁場を形成しており、この外部の磁場は、貫通穴9内部のものとは異なり、一般に一様とはならない。
【0039】
棒型永久磁石7は、リング型永久磁石8により形成される磁場から力を受けるが、この力は、棒型永久磁石7の両端部に掛かるそれぞれの力の合力である。リング型永久磁石8の貫通穴9内部に配置された方の端部が受ける力は、先述のようにテーブル1の位置によらず略一定であるが、他方の端部が受ける力は、リング型永久磁石8が外部に形成した(一様ではない)磁場に起因するため、本実施例の場合には棒型永久磁石7が下方にあるほど上向の力が大きくなる。
【0040】
棒型永久磁石7の上端は、リング型永久磁石8からの距離が大きいため、棒型永久磁石7の下端が受ける力に比べて小さいが、無視できるほどではなく、両者の合計は図4に示したような結果となっている。
【0041】
その対策としてまず考えられるのが、棒型永久磁石7の長さを長くし、棒型永久磁石7の上端をリング型永久磁石8から遠ざけることである。棒型永久磁石7の上端が受ける力の影響を調べるため、棒型永久磁石7の下端をリング型永久磁石8の中心部に配置したときに棒型永久磁石7全体が受ける力の大きさと、棒型永久磁石7の長さとの関係を図5に示した。同図によれば、棒型永久磁石7の長さが短い程、棒型永久磁石7の上端はリング型永久磁石8に近づき、上端が受ける力が大きくなるため、上方向の力が増加している。逆に、棒型永久磁石7の長さを長くすると、棒型永久磁石7の上端はリング型永久磁石8から遠ざかるため力は減少して行き、長さが約150mm以上になればそれ以上減少しない。これは、棒型永久磁石7の上端が受ける力が、無視できるほど小さくなっていることを示す。
【0042】
つまり、本実施例においては棒型永久磁石7の長さを150mm以上にすることで、図4の右肩下がりの現象は解消し、棒型永久磁石7が受ける力を一定とすることが出来る。
しかし、ステージ装置が配置される空間の制約等により、かかる対策を取れない場合も多い。
【0043】
各棒型永久磁石7が受ける力、即ち支持力を更に一定に近づけるための別の対策として、本発明の別の実施の形態に係るステージ装置の一例を、図6に示した。
【0044】
図6のステージ装置において、ベースプレート5上に四つのリング型永久磁石8を配置している点は図1及び図2に示したステージ装置と同様である。しかし、図1及び図2に示したステージ装置においては四つのリング型永久磁石8は全てN極を上方に向けて配置してたのに対し、図6のステージ装置においては、二つのリング型永久磁石8(8a、8b)はN極を上方に向けて配置しており、他の二つのリング型永久磁石8(8c、8d)はS極を上方に向けて配置している点で異なる。
【0045】
また、それぞれのリング型永久磁石8に棒型永久磁石7が挿入されている点も同様であるが、図6のステージ装置においては、N極を上方に向けたリング型永久磁石8(8a、8b)に挿入された棒型永久磁石7(7a、7b)はS極を下方に向けて配置しており、他の棒型永久磁石7(7c、7d)はN極を下方に向けて配置している。
【0046】
このように、各永久磁石の磁極の向きは一部図1及び図2に示したステージ装置と異なってはいるが、各棒型永久磁石7は、各リング型永久磁石8の磁場により、図1に示したステージ装置における場合と同様に、全て上方向の力を受ける。
【0047】
図6のステージ装置においては更に、S極を下方に向けて配置した棒型永久磁石7(7a、7b)の一の上端と、N極を下方に向けて配置した棒型永久磁石7(7c、7d)の一の上端とが、水平棒型永久磁石11(11a、11b)を介して接続されている。
これにより、棒型永久磁石7a、7b、11a、リング型永久磁石8a、8bによって、一つの支持装置セットを構成している。
同様に、棒型永久磁石7c、7d、11b、リング型永久磁石8c、8dもまた、一つの支持装置セットを構成している。
【0048】
水平棒型永久磁石11は軸方向に着磁されており、その断面形状は棒型永久磁石7と同形状としている。S極を下方に向けて配置した一の棒型永久磁石7(7a、7b)の上端(N極)と、水平棒型永久磁石11aのS極端とが吸着した状態で接続されており、更にN極を下方に向けて配置した一の棒型永久磁石7(7c、7d)の上端(S極)と、水平棒型永久磁石11bのN極端とが吸着した状態で接続されている。この様な配置とした上で、2本の水平棒型永久磁石11a、11bはそれぞれ水平固定具12によりテーブルベース2に固定されている。
【0049】
水平棒型永久磁石11を配置することで、各棒型永久磁石7の上端付近における所謂磁荷の総量は0に近づくこととなる。その結果、リング型永久磁石8がその外部に形成する磁場により棒型永久磁石7の上端付近が受ける力をほぼ0とすることが出来る。
【0050】
即ち、棒型永久磁石7の長さが短くても、図4に示したような右肩下がりの傾向が現れず、テーブル1に対して略一定の支持力を得ることが可能となる。
【0051】
尚、それぞれの水平棒型永久磁石11は単一の永久磁石である必要は無く、複数の永久磁石を、その異極同士で接続した構造としてもよい。また、その場合の水平棒型永久磁石11全体の形状は直線状である必要は無く、他の部品との取り合いによっては例えばV字型、コの字型など、様々な形状とすることができる。
【0052】
本発明の別の実施の形態に係る支持装置を搭載したステージ装置の一例を、図7、図8、及び図9に示した。
【0053】
図7は、かかるステージ装置の全体を示す斜視図である。
【0054】
図8及び図9は、図7に示したステージ装置の断面図である。
【0055】
本実施例では、円形のテーブル1がテーブルベース2に固定されている点、テーブルベース2の下部にはエアー可動子3が固定され、それを取り囲むエアー固定子4との間で静圧気体軸受を介して滑らかに嵌合している点、及びエアー固定子4がベースプレート5に固定されている点において、図1に示したステージ装置と同様である。
【0056】
一方、エアー可動子3及びエアー固定子4が円形断面を有し、両者の相対移動について、鉛直方向のみならず、回転方向の自由度をも有している点において、図1に示したステージ装置と相違している。
【0057】
この構造により本実施例に係るステージ装置は、テーブル1がベースプレート5に対して鉛直方向(Z方向)に移動できる他、回転方向(θ方向)にも動作することが出来るものである。図1及び図2に示した実施例においてテーブル1の回転運動を実現するには、先述のようにベースプレート5を回転させる機構を設ける必要があるため、ベースプレート5の回転運動を案内する軸受を別途設ける必要があった。これに対し本実施例においては、エアー可動子3及びエアー固定子4からなる単一の軸受にて構成できる点で有利である。
【0058】
テーブルベース2の下面には、円柱形上である棒型永久磁石7のN極端が先端固定具10により固定されており、そのS極端はテーブルベース2に対し垂直下方に突出している。
また、ベースプレート5の上面には、中心に貫通穴9を有するリング型永久磁石8が固定されている。リング型永久磁石8は貫通穴9と平行な方向に着磁されており、N極を上方に向けて配置されている。
【0059】
棒型永久磁石7の下端(S極)は、リング型永久磁石8の貫通穴9に挿入されており、テーブル1がその鉛直方向のストローク中央位置にある際において、棒型永久磁石7の下端(S極)が、リング型永久磁石8の高さ方向の中心に位置するよう設計されている。
棒型永久磁石7の中心軸、及びリング型永久磁石8の貫通穴9の中心軸は、テーブル1の回転軸と一致している。このため、テーブル1が回転しても、棒型永久磁石7とリング型永久磁石8との位置関係は変化せず、一定の支持力をテーブル1に与えることが出来る。
【0060】
テーブル1の駆動力を与える駆動部は、鉛直方向の駆動力を与えるZ駆動部13と、回転方向の駆動力を与えるθ駆動部14とからなる。
【0061】
Z駆動部13は、ステージベースの下面に固定されたZ用コイル13Aと、ベースプレート5上に固定されたZ用永久磁石13Bとから構成されるリニアモーターである。
【0062】
θ駆動部14は、ステージベースの下面に固定されたθ用コイル14aと、ベースプレート5上に固定されたθ用永久磁石14bとから構成されるリニアモーターである。
【0063】
いずれのリニアモーターも、従来からよく用いられる方式と何ら変わることがないため、永久磁石の配置やコイルの方向等に関する詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施例では、棒型永久磁石7とリング型永久磁石8により構成される自重支持装置により、テーブル1の鉛直方向の変位によらず略一定の支持力をテーブル1に与えることが出来る。従って、テーブル1が少なくとも静止状態においては、Z用コイル13Aに供給する電流をほぼ0とすることができる。この効果は、テーブル1の回転方向の位置に関わらず得られるものである。
【0065】
以上に示した各実施例では、テーブル1の基板搭載面1aが鉛直上向きとなっており、このため重力に対向して得るべき支持力を、ベースプレート5からテーブル1への方向に発生させている。
【0066】
本発明はこれに限定されず、テーブル1の基板搭載面1aを鉛直下向きとしたステージ装置においても適用可能である。この場合、例えば全てのリング型永久磁石8の磁極の方向を各実施例のものとは逆向きとすることで、支持力をテーブル1からベースプレート5への方向、即ち鉛直上方とすることが出来る。このような構成も本発明の技術的範囲に属するものである。
【0067】
以上に示した各実施例では、先述のように、テーブル1がその鉛直方向のストローク中央位置にある際において、各棒型永久磁石7の一の先端が、各リング型永久磁石8の高さ方向の中心に位置する必要がある。
【0068】
このような位置関係を満足するためには、各棒型永久磁石7の長さを適切なものとする必要があるが、棒型永久磁石7はそれぞれ単一の永久磁石で構成する必要は無い。複数の棒型永久磁石7を直列に接続することで、全体の長さを調節することも可能である。この場合、棒型永久磁石7同士を接続・固定する方法としては、例えば、アルミニウム等、非磁性の素材からなるチューブで棒型永久磁石7全体を覆うなどの方法が有効である。
【0069】
以上に示した各実施例では、貫通穴9を有する永久磁石として単一のリング型永久磁石8を採用したが、それぞれのリング型永久磁石8を複数の永久磁石の組み合わせとして構成しても良い。
例えば、市販されている既製の薄型リング型永久磁石を貫通穴の軸方向に複数個重ねた構造とすることで、永久磁石を新規に制作することなく、貫通穴の長さを自由に調整可能とすることができる。
【0070】
また、以上の実施例においては、リング型永久磁石の着磁方向は貫通穴の軸方向と平行なものを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、本発明においては貫通穴内部に形成される一様磁場の方向と貫通穴の軸方向とが平行であることが必要なのであり、これが実現できるのであれば着磁方向は特に限定されるものではない。
【0071】
例えば、個々のリング型永久磁石の着磁方向を径方向としたものを複数組み合わせることで一つのリング型永久磁石を構成し、その貫通穴内部に形成される磁場の方向を貫通穴の軸方向と平行にすることも可能であり、このような構成からなる支持装置も本発明の技術的範囲に属するものである。
【0072】
また、かかる筒型永久磁石磁場発生装置を使用した場合、発生磁場の利用効率が向上するため、永久磁石を小型化することも可能となる。
【0073】
以上に示した各実施例では、永久磁石に形成される貫通穴9の断面形状は直径が一定の円柱形状としているが、本発明はこれに限定されない。
【0074】
以上では、本発明に係る支持装置を、特にステージ装置の自重支持装置として利用する形態の実施例を紹介したが、本発明に係る支持装置の利用可能な分野はこれに限定されず、様々な分野での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る支持装置を搭載した、ステージ装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すステージ装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】図1及び図2に示したステージ装置のリング型永久磁石において、貫通穴内部の中心軸に沿った磁束密度を、その高さ方向の位置に沿ってプロットしたグラフである。
【図4】図1及び図2に示したステージ装置において、各棒型永久磁石が受ける力の大きさと、棒型永久磁石の位置との関係を計算にて求めた結果を示すグラフである。
【図5】図1及び図2に示したステージ装置において、棒型永久磁石の下端をリング型永久磁石の中心部に配置したときに棒型永久磁石全体が受ける力の大きさと、棒型永久磁石の長さとの関係を示したグラフである。
【図6】本発明の別の実施の形態に係る支持装置を搭載した、ステージ装置の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の別の実施の形態に係る支持装置を搭載した、ステージ装置の一例を示す斜視図である。
【図8】図7に示したステージ装置の内部構造を示す断面図である。
【図9】図7に示したステージ装置の内部構造を示す断面図である。
【図10】本発明に係る支持装置の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
1…テーブル
1a…基板搭載面
2…テーブルベース
3…エアー可動子
4…エアー固定子
5…ベースプレート
6…リニアモーター(駆動部)
6a…コイル
6b…モーター用永久磁石
7(7a、7b、7c、7d)…棒型永久磁石
8(8a、8b、8c、8d)…リング型永久磁石
9…貫通穴
10…先端固定具
11(11a、11b)…水平棒型永久磁石
12…水平固定具
13…Z駆動部
13a…Z用コイル
13b…Z用永久磁石
14…θ駆動部
14a…θ用コイル
14b…θ用永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に着磁され、両先端に磁極を有する柱形状からなる第一の永久磁石と、
貫通穴を有し、前記貫通穴の軸方向と平行で且つ略一様な磁場が、前記貫通穴内部の一定範囲において発生するように着磁された第二の永久磁石とからなり、
前記第一の永久磁石の一方の先端が、前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴に非接触で挿入され、且つ前記略一様な磁場の範囲内に位置するよう配置されており、
前記第一の永久磁石の他方の先端が、前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置するよう配置されており、
前記第一の永久磁石と前記第二の永久磁石との間に発生する磁力を、支持力として利用することを特徴とする
支持装置。
【請求項2】
前記第一の永久磁石は、複数の永久磁石を組み合わせてなることを特徴とする、請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記第二の永久磁石は、複数の永久磁石を組み合わせてなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の支持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3にいずれかの一に記載の支持装置である第一の支持装置と、
同じく請求項1から請求項3にいずれかの一に記載の支持装置である第二の支持装置と、
軸方向に着磁され、両先端に磁極を有する柱形状からなる第三の永久磁石とからなり、
前記第一の支持装置を構成する前記第一の永久磁石と、前記第二の支持装置を構成する前記第一の永久磁石とは、その着磁方向が互いに平行で且つ逆方向となるよう配置されており、
前記第一の支持装置を構成する前記第二の永久磁石と、前記第二の支持装置を構成する前記第二の永久磁石とは、それぞれの貫通穴内部に発生している略一様な磁場が、互いに平行で且つ逆方向になるよう配置されており、
前記第一の支持装置を構成する前記第一の永久磁石のうち、前記第一の支持装置を構成する前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置する先端と、
前記第二の支持装置を構成する前記第一の永久磁石のうち、前記第二の支持装置を構成する前記第二の永久磁石に形成された前記貫通穴の外部に位置する先端とが、
前記第三の永久磁石を介して接続されている
ことを特徴とする支持装置セット。
【請求項5】
前記第三の永久磁石は、複数の永久磁石を組み合わせてなることを特徴とする、請求項4に記載の支持装置セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−118579(P2010−118579A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291776(P2008−291776)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】