説明

改善された低温流動特性を有する燃料油組成物

燃料油及び潤滑剤用の添加剤として及び特に燃料油における低温流動性向上剤としての、α−オレフィン、ビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルを重合導入されて含有するポリマーの使用が記載される。さらに、これらのポリマーが添加された燃料油及び潤滑剤;並びにそのようなコポリマーを含有している添加剤パッケージが記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油及び潤滑剤用の添加剤として及び特に燃料油における低温流動性向上剤としての、α−オレフィン、ビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルを重合導入されて含有するポリマーの使用;これらのポリマーが添加された燃料油及び潤滑剤;並びにそのようなコポリマーを含有している添加剤パッケージに関する。
【0002】
技術水準:
パラフィンろうを含有している鉱油、例えば中間留分、ディーゼル及び暖房用油は、温度低下の際に流動特性の明らかな劣悪化を示す。この原因は、曇り点の温度から生じる、大きくて小片形のろう結晶を形成するより長鎖のパラフィンの結晶化にある。これらのろう結晶はスポンジ状構造を有し、かつ結晶ネットワーク中での他の燃料成分の包接をまねく。これらの結晶の発生はタンク中並びに自動車中の燃料フィルターの目詰まりを速やかにもたらす。流動点(PP)を下回る温度では、結局のところ燃料の流動はもはや行われない。
【0003】
これらの問題を取り除くために、既に長い間、しばしばパラフィンのごく小さなクリスタライトの早期形成のための成核剤と実際の低温流動性向上剤(CFI又はMDFIとも呼ばれる)との組合せからなる少ない濃度の燃料添加剤が添加される。そしてまたこれらは燃料のパラフィンと類似の結晶化特性を示すが、しかしながらそれらの成長を妨害するので、添加剤の添加されていない燃料と比較して明らかにより低い温度でのフィルターの通過が可能である。そのための尺度としていわゆる目詰まり点(CFPP)が測定される。別の添加剤として、燃料中のごく小さなクリスタライトの沈降を妨害するいわゆるろう沈降防止添加剤(WASA)が使用されることができる。
【0004】
低温流動性向上剤は、ベース燃料及び添加剤の状態に応じて約50〜500ppmの量で計量供給される。技術水準からは多様なCFI−製品が公知である(例えば米国特許(US-A)第3,038,479号明細書、同第3,627,838号明細書及び同第3,961,961号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第0,261,957号明細書又は独国特許出願公開(DE-A)第31 41 507号明細書及び同第25 15 805号明細書参照)。普通のCFIは通常、高分子化合物、特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)−コポリマー、例えば商標名KerofluxでBASF AGから販売されている製品である。
【0005】
従来のCFIと潤滑性向上剤(モノ−又はポリカルボン酸とモノ−又はポリアルコールとのエステル)との組合せ物も、改善されたCFI−組合せ物として記載されている(欧州特許出願公開(EP-A)第0 721 492号明細書)。
【0006】
欧州特許出願公開(EP)第0922716号明細書には、エチレンに加えて少なくとも2つの別のエチレン系不飽和化合物、例えばビニルエステル、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル又は高級オレフィンを重合導入されて含有するターポリマーの製造方法が記載されている。これらは鉱油留分の流動点向上剤として適しているはずである。
【0007】
独国特許出願公開(DE)第1902925号明細書には、エチレン、短鎖カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル及び長鎖不飽和モノエステル、例えば長鎖カルボン酸のビニルエステル又は長鎖アルコールから誘導されるアクリルエステルを重合導入されて含有するターポリマーが記載されている。これらは、中間留分の流動点を低下させるはずであり、かつそれらの濾過性を改善するはずである。
【0008】
米国特許(US)第4,156,434号明細書には、エチレン及び酢酸ビニルに加えてC12〜C24−アルコールから誘導されるアクリルエステルを重合導入されて含有するターポリマーが記載されている。これらはガス油の流動点を低下させるはずである。濾過性を改善する効果は記載されていない。
【0009】
CFI−特性を有する別の添加剤、特により費用のかからずに使用されうるそのような添加剤の絶え間ない需要が存在する、例えばそれ故に、これらは市販のCFIよりも僅かな配量で燃料油又は潤滑剤の低温流動特性及び特に燃料油の濾過性を改善するからである。
【0010】
発明の簡単な説明:
従って、本発明の課題は、新規のそのような添加剤を提供することであった。
【0011】
意外なことにこの課題は、α−オレフィン、ビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルを重合導入されて含有するポリマーがCFI−添加剤として有用であり、そのうえ従来のEVA−CFIよりも良好な性能を有するという予期しない観察結果により解決されることができた。
【0012】
従って、本発明の第一の対象は、燃料油及び潤滑剤のための添加剤としての、α−オレフィン、ビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルを重合導入されて含有するポリマーの使用に関する。特に、ビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルをランダム分布で重合導入されて含有するそのようなポリマーが使用される。好ましくは、前記ポリマーは本質的には前記の3つのモノマーから構成されているターポリマーである。
【0013】
好ましくは、モノマーM1、M2及びM3を含んでいるモノマーから構成されているポリマーが使用され、その際にM1、M2及びM3は次の一般式
【0014】
【化1】

[式中、
はH又はC〜C40−、例えばC〜C20−、特にC〜C10−、好ましくはC〜C−ヒドロカルビルを表し;
、R及びRは互いに独立してH又はC〜C−アルキルを表し;
はC〜C20−ヒドロカルビルを表し;
、R及びRは互いに独立してH又はC〜C−アルキルを表し;かつ
はC〜C20−ヒドロカルビルを表す]を有する。
【0015】
本発明により使用されるポリマー中で、モノマーM1、M2及びM3は次のモル割合(Mx/(M1+M2+M3)でポリマー中に含まれていてよい:
M1:0.60〜0.98、好ましくは0.7〜0.95、特に0.8〜0.9;
M2:0.01〜0.20、好ましくは0.015〜0.17、特に0.02〜0.16;
M3:0.01〜0.20、好ましくは0.02〜0.15、特に0.03〜0.1、殊に0.03〜0.09。
【0016】
好ましくは、RはH、メチル又はエチル、及び特にHを表し;すなわちモノマーM1は好ましくはエチレン、プロペン又は1−ブテン、及び特にエチレンを表す。
【0017】
モノマーM2中で基R、R及びRは好ましくはH又はメチルを表す。特に好ましくは基R、R及びRの2つがHを表し、かつ他の基がH又はメチルを表す。特に基R、R及びRの3つ全てがHを表す。
【0018】
は好ましくはC〜C12−ヒドロカルビル、特に好ましくはC〜C10−ヒドロカルビル、より優れて好ましくはC〜C−ヒドロカルビル、及びさらにより優れて好ましくはC〜C−ヒドロカルビルを表す。ヒドロカルビルはその場合に好ましくはアルキルを表す。特にRはn−ブチル、2−エチルヘキシル又はラウリルを表し、その場合にn−ブチル及び2−エチルヘキシル及び殊に2−エチルヘキシルがさらにより優れて好ましい。
【0019】
好ましくはモノマーM2はアクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル及びアクリル酸ラウリルエステルから、及び特に好ましくはアクリル酸−n−ブチルエステル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルエステルから選択されている。特にアクリル酸−2−エチルヘキシルエステルが重要である。
【0020】
モノマーM3中で、R、R及びRは互いに独立して好ましくはH又はメチル、特に好ましくはHを表す。
【0021】
は好ましくはC〜C10−ヒドロカルビルを表す。ヒドロカルビルはその際に好ましくはアルキルを表す。特に好ましくはRはエチル又はメチル、及び特にメチルを表す。
【0022】
特に好ましくはモノマーM3は酢酸ビニルである。
【0023】
好ましくは、本発明により使用されるポリマーは、モノマーM1、M2及びM3の、好ましくはラジカルの、重合、特に高圧重合により、得ることができる。
【0024】
好ましくは使用されるポリマーは、エチレン/アクリル酸−n−ブチルエステル/酢酸ビニル−ポリマー、エチレン/アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル/酢酸ビニル−ポリマー及びエチレン/アクリル酸ラウリルエステル/酢酸ビニル−ポリマーから選択されており、その際にまず最初に挙げた2つのポリマーが特に好ましい。特にエチレン/アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル/酢酸ビニル−ポリマーが使用される。
【0025】
好ましくは前記ポリマーは低温流動性向上剤として使用される。
【0026】
前記ポリマーは、単独で又は他のそのようなポリマーとの組合せで、添加剤の添加された燃料又は潤滑剤における低温流動性向上剤としての作用を示すのに十分である量で使用される。
【0027】
本発明の別の対象は、約120〜500℃の範囲内で沸騰する中間留分燃料のより大きな質量割合と、前記の定義による少なくとも1つの本発明により使用されるポリマー(低温流動性向上剤)のより小さな質量割合とを有している燃料油組成物に関する。
【0028】
そのような燃料油組成物はさらに、燃料成分としてバイオディーゼル(動物及び/又は植物生産由来の)を0〜100質量%、好ましくは0〜30質量%の割合で含んでいてよい。
【0029】
好ましい燃料油組成物は、ディーゼル燃料、燈油及び暖房用油から選択されており、その際にディーゼル燃料は精製、石炭ガス化又はガス液化により得ることが可能であり、そのような製品の混合物であってよく、かつ場合により再生燃料と混合されていてよい。混合物の硫黄含量が好ましくは多くとも500ppmであるそのような燃料油組成物が好ましい。
【0030】
本発明の別の対象は、従来の潤滑剤のより大きな質量割合と、前記の定義による少なくとも1つのポリマーのより小さな質量割合とを有している潤滑剤組成物に関する。
【0031】
本発明の範囲内で、本発明により使用されるポリマーは従来の別の低温流動性向上剤及び/又は別の潤滑油添加剤及び燃料油添加剤との組合せで使用されることができる。
【0032】
そのうえ、本発明の最後の対象は、前記の定義による少なくとも1つの本発明により使用されるポリマーを少なくとも1つの常用の別の潤滑油添加剤及び燃料油添加剤との組合せで含んでいる添加剤パッケージに関する。
【0033】
発明の詳細な説明:
a)本発明により使用されるポリマー
本発明により使用されるポリマーは、好ましくは本質的には上記で定義されたモノマーM1、M2及びM3から構成されている。製造に制約されて、場合により調節剤(連鎖停止剤)として使用される化合物が僅かな割合で含まれていてよい。
【0034】
他に記載されていない限り、次の一般的な定義が当てはまる:
〜C40−ヒドロカルビルは特にC〜C40−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、スクアリル(Squalyl)及び高級同族体並びにそれらに属する位置異性体を表す。同じことはC〜C20−ヒドロカルビル基に当てはまる。C〜C−ヒドロカルビルは特にC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ネオオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル及びネオノニルを表す。C〜C10−ヒドロカルビルはさらにまた特にさらにデシル及びネオデシルを表す。C〜C−ヒドロカルビルは特にC〜C−アルキル、例えばn−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル及び2−エチルヘキシルを表す。
【0035】
適しているモノマーM1の例として次のものを挙げることができる:非末端の又は好ましくは末端の二重結合を有するモノ−アルケン、特にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン及び1−デセン並びに炭素原子40個までを有する高級モノ不飽和同族体。
【0036】
好ましいα,β−不飽和カルボン酸エステルM2の例として次のものを挙げることができる:C〜C20−アルカノールのアクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸−t−ブチルエステル、アクリル酸−n−ペンチルエステル、アクリル酸ネオペンチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル、アクリル酸ヘプチルエステル、アクリル酸オクチルエステル、アクリル酸ネオオクチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸ノニルエステル、アクリル酸ネオノニルエステル、アクリル酸デシルエステル、アクリル酸ネオデシルエステル、アクリル酸ラウリルエステル、アクリル酸パルミチルエステル及びアクリル酸ステアリルエステル;さらに相応するメタクリル酸エステル、クロトン酸エステル及びイソクロトン酸エステル、その場合にアクリレート(アクリル酸エステル)が好ましい。
【0037】
適しているモノマーM3の例として次のものを挙げることができる:
〜C20−カルボン酸ビニルエステル、特に酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキン酸のビニルエステル;さらに相応するプロペニルエステル。しかしながらビニルエステルが好ましい。
【0038】
本発明によるポリマーはそのうえ約1000〜20000、特に好ましくは1000〜10000、特に1500〜6000、及び殊に1500〜5000の範囲内の数平均分子量Mを有する。
【0039】
前記ポリマーはまた1000〜30000、特に2000〜20000の質量平均分子量M及び/又は1.5〜5.0、好ましくは1.8〜4.0、及び特に1.9〜3.5のM/M−比を有していてよい。
【0040】
特に好ましいポリマーは、モノマー:エチレン、酢酸ビニル及びアクリル酸エステル−モノマーから構成されており、前記アクリル酸エステル−モノマーはアクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル及びアクリル酸ラウリルエステルから、及び好ましくはアクリル酸−n−ブチルエステル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルエステルから選択されている。特に前記アクリル酸エステル−モノマーはアクリル酸−2−エチルヘキシルエステルである。
【0041】
エチレン、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル(AEH)及び酢酸ビニル(VAC)からなるポリマーに対して、前記モノマーの質量割合は次の通りである:
AEH:4〜80質量%、好ましくは5〜62質量%、特に約7〜45質量%
VAC:1〜42質量%、好ましくは1〜30質量%、特に約1〜25質量%、殊に1〜20質量%。
【0042】
そのようなポリマーの粘度(ウベローベ DIN 51562により測定)はその都度約120℃の温度で約5〜25000mm/s、好ましくは約10〜1000mm/s、特に約50〜700mm/sである。
【0043】
b)ポリマーの製造
本発明によるポリマーは、それ自体として公知の方法により、好ましくは技術水準(例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry 第5版、見出語:ろう(Waxes)、第A28巻、p. 146以降、VCH Weinheim、Basel、Cambridge、New York、Tokio、1996;さらに米国特許(US)第3,627,838号明細書;独国特許出願公開(DE-A)第2515805号明細書;独国特許出願公開(DE-A)第3141507号明細書;欧州特許出願公開(EP-A)第0007590号明細書参照)から公知の不飽和化合物の直接のラジカル高圧−共重合方法により、製造される。
【0044】
前記ポリマーの製造は好ましくは撹拌される高圧オートクレーブ中で又は高圧管形反応器又は2つの組合せ中で行われる。それらの場合に、主に長さ/直径の比は5:1〜30:1、好ましくは10:1〜20:1の範囲内の関係にある。
【0045】
重合に適している圧力条件は、1000〜3000bar、好ましくは1500〜2000barである。反応温度は例えば160〜320℃の範囲内、好ましくは200〜280℃の範囲内である。
【0046】
前記コポリマーの分子量を調節するための調節剤として、例えば、一般式I
【0047】
【化2】

で示される脂肪族アルデヒド又は脂肪族ケトン又はそれらの混合物が使用される。
【0048】
その場合に基R及びRは同じか又は異なり、かつ次のものから選択されている:
・水素;
・C〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル;特に好ましくはC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル及びt−ブチル;
・C〜C12−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシル;好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。
【0049】
基R及びRは、4−〜13員環の形成下に互いに共有結合されていてもよい。R及びRは例えば一緒に次のアルキレン基を形成していてよい:−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−CH(CH)−CH−CH−CH(CH)−又は−CH(CH)−CH−CH−CH−CH(CH)−。
【0050】
調節剤としてのプロピオンアルデヒド又はエチルメチルケトンの使用は極めて特に好ましい。
【0051】
別の好適な調節剤は、非分枝鎖状の脂肪族炭化水素、例えばプロパン又は第三水素原子を有する分枝鎖状の脂肪族炭化水素、例えばイソブタン、イソペンタン、イソオクタン又はイソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)である。別の付加的な調節剤として、高級オレフィン、例えばプロピレンが使用されることができる。
【0052】
前記の調節剤と水素との混合物又は水素単独も同様に好ましい。
【0053】
使用される調節剤の量は高圧重合法に常用の量に相当する。
【0054】
ラジカル重合のための開始剤として、常用のラジカル開始剤、例えば有機過酸化物、酸素又はアゾ化合物が使用されることができる。複数のラジカル開始剤の混合物も適している。ラジカル開始剤として、例えば次の商業的に入手可能な物質から選択される1つ又はそれ以上の過酸化物が使用されることができる:
・ ジデカノイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、過酸化ジベンゾイル、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシジエチルアセテート、t−ブチルペルオキシジエチルイソブチラート、異性体混合物としての1,4−ジ(t−ブチルペルオキシカルボ)−シクロヘキサン、t−ブチルペルイソノナノエート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、メチル−イソブチルケトンペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,2−ジ−t−ブチルペルオキシ)ブタン又はt−ブチルペルオキシアセテート;
・ t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、異性体ジ−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン類、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサ−3−イン、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ジイソプロピルモノヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド又はt−ブチルヒドロペルオキシド;
又は
・ 例えば欧州特許出願公開(EP-A)第0 813 550号明細書から公知であるような、二量体又は三量体のケトンペルオキシド。
【0055】
過酸化物として、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシイソノナノエート又は過酸化ジベンゾイル又はそれらの混合物が特に適している。アゾ化合物としてアゾビスイソブチロニトリル(“AIBN”)を例示的に挙げることができる。ラジカル開始剤は重合に常用の量で配量される。
【0056】
好ましい操作法において、本発明によるポリマーは、モノマーM1、M2及びM3の混合物を、調節剤の存在で約20〜50℃の範囲内、例えば30℃の温度で、好ましくは連続的に、約1500〜2000barの範囲内、例えば約1700barの圧力に保持される撹拌オートクレーブに導通されるようにして製造される。通例、適している溶剤、例えばイソドデカン中に溶解されている開始剤の好ましくは連続的な添加により、反応器中の温度は所望の反応温度に、例えば200〜250℃で保持される。反応混合物の減圧後に生じるポリマーはついで従来方法で単離される。
【0057】
この操作法の変法は、もちろん可能であり、かつ当業者により法外な費用を伴わずに行われることができる。例えばコモノマー及び調節剤は別個に反応混合物に計量供給されることができ、反応温度は前記方法の間に変えることができるので、幾つかの例のみを挙げる。
【0058】
c)燃料油組成物
燃料油組成物は本発明によれば好ましくは燃料であると理解される。適している燃料はオットー燃料及び中間留分、例えばディーゼル燃料、暖房用油又は燈油であり、その際にディーゼル燃料及び暖房用油が特に好ましい。
【0059】
暖房用油は例えば、硫黄の乏しい又は硫黄に富む石油ラフィネートであるか又は通常150〜400℃の沸点範囲を有する歴青炭留出物又は褐炭留出物である。好ましくは暖房用油は硫黄の乏しい暖房用油、例えば多くとも0.1質量%、好ましくは多くとも0.05質量%、例えば多くとも0.005質量%又は例えば多くとも0.001質量%の硫黄含量を有するそのような暖房用油である。暖房用油の例として特に家庭用油暖房設備用の暖房用油又は暖房用油ELを挙げることができる。そのような暖房用油の品質要求は例えばDIN 51-603-1において規定されている(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A12巻、p. 617以降も参照、それに関して本明細書と明らかに関連づけられている)。
【0060】
ディーゼル燃料は例えば、通常100〜400℃の沸点範囲を有する石油ラフィネートである。これらはたいてい360℃までの95%−ポイント又はこれすらを上回り有する留分である。しかしまたこれらは、例えば最大345℃の95%−ポイント及び最大0.005質量%の硫黄含量によるか又は例えば285℃の95%−ポイント及び最大0.001質量%の硫黄含量により特徴付けられる、いわゆる"超低硫黄ディーゼル"又は"都市ディーゼル(City diesel)"であってもよい。精製により得ることができるディーゼル燃料に加えて、石炭ガス化又はガス液化("ガスから液体への(gas to liquid)"(GTL)燃料)により得ることができるそのようなディーゼル燃料が適している。再生燃料、例えばバイオディーゼル又はバイオエタノール、それらの混合物又は再生燃料と前記のディーゼル燃料との混合物も適している。
【0061】
特に好ましくは、本発明による添加剤は、低い硫黄含量を有する、すなわち0.05質量%未満、好ましくは0.02質量%未満、特に0.005質量%未満、及び殊に硫黄0.001質量%未満の硫黄含量を有するディーゼル燃料への添加のため又は低い硫黄含量を有する、例えば多くとも0.1質量%、好ましくは多くとも0.05質量%、例えば多くとも0.005質量%、又は例えば多くとも0.001質量%の硫黄含量を有する暖房用油への添加のために使用される。
【0062】
本発明による添加剤は好ましくは、燃料油組成物の全量に対して、それ自体で見て燃料油組成物の低温流動特性に本質的に十分な影響を有する量割合で使用される。好ましくは添加剤は、燃料油組成物の全量に対して、0.001〜1質量%、特に好ましくは0.01〜0.15質量%、特に0.01〜0.1質量%の量で使用される。
【0063】
d)共添加剤
本発明によるポリマーは、個々にか又はそのようなポリマーの混合物として及び場合によりそれ自体として公知の別の添加剤との組合せで燃料油組成物に添加されることができる。
【0064】
特にディーゼル燃料及び暖房用油のための、本発明による燃料油中に本発明によるポリマーに加えて含まれていてよい適している添加剤は、清浄剤、腐食抑制剤、曇り止め剤(Dehazer)、解乳化剤、発泡抑制剤(“消泡剤(Antifoam)”)、酸化防止剤、金属不活性化剤、多機能安定剤、セタン価向上剤、燃焼向上剤、染料、マーカー、可溶化剤、帯電防止剤、潤滑性向上剤、並びに燃料の低温特性を改善する別の添加剤、例えば成核剤、従来の別の流動性向上剤(“MDFI”)、パラフィン分散剤(“WASA”)及び最後に挙げた2つの添加剤の組合せ(“WAFI”)を含んでいる(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry 、第5版、第A16巻、p. 719以降;又は流動性向上剤についての冒頭に引用された特許明細書も参照)。
【0065】
常用の別の低温流動性向上剤として特に次のものを挙げることができる:
(a)エチレンと、本発明により使用されるポリマーとは異なる少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーとのコポリマー;
(b)クシ型ポリマー;
(c)ポリオキシアルキレン;
(d)極性窒素化合物;
(e)スルホカルボン酸又はスルホン酸又はそれらの誘導体;及び
(f)ポリ(メタ)アクリル酸エステル。
【0066】
エチレンと少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーとのコポリマー(a)の場合に、前記モノマーは好ましくはアルケニルカルボン酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル及びオレフィンから選択されている。
【0067】
適しているオレフィンは例えば、炭素原子3〜10個を有し、並びに1〜3個の、好ましくは1又は2個の、特に1個の、炭素−炭素−二重結合を有するそのようなオレフィンである。最後に挙げたものの場合に、炭素−炭素−二重結合は末端に(α−オレフィン)並びに内部に配置されていてよい。しかしながら好ましくはα−オレフィン、特に好ましくは炭素原子3〜6個を有するα−オレフィン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン及び1−ヘキセンである。
【0068】
適している(メタ)アクリル酸エステルは例えば(メタ)アクリル酸とC〜C10−アルカノール、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール及びデカノールとのエステルである。
【0069】
適しているアルケニルカルボン酸エステルは例えば、炭化水素基が線状又は分枝鎖状であってよい炭素原子2〜20個を有するカルボン酸のビニルエステル及びプロペニルエステルである。これらの中ではビニルエステルが好ましい。分枝鎖状炭化水素基を有するカルボン酸の中では、分枝がカルボキシル基に対してα−位に存在するそのようなカルボン酸が好ましく、その際にα−炭素原子は特に好ましくは第3級であり、すなわちカルボン酸はいわゆるネオカルボン酸である。しかしながら好ましくはカルボン酸の炭化水素基は線状である。
【0070】
適しているアルケニルカルボン酸エステルの例は酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ネオペンタン酸ビニルエステル、ヘキサン酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル及び相応するプロペニルエステルであり、その場合にビニルエステルが好ましい。特に好ましいアルケニルカルボン酸エステルは酢酸ビニルである。
【0071】
特に好ましくはエチレン系不飽和モノマーはアルケニルカルボン酸エステルから選択されている。
【0072】
2つ又はそれ以上の互いに異なるアルケニルカルボン酸エステルを重合導入されて含有するコポリマーも適しており、その際にこれらは、アルケニル官能基及び/又はカルボン酸基が異なっている。同様に適しているのは、アルケニルカルボン酸エステル(類)に加えて少なくとも1つのオレフィン及び/又は少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルを重合導入されて含有するコポリマーである。
【0073】
エチレン系不飽和モノマーは、前記コポリマー中に全コポリマーに対して、好ましくは1〜50mol%、特に好ましくは10〜50mol%、及び特に5〜20mol%の量で重合導入されている。
【0074】
コポリマー(a)は好ましくは1000〜20000、特に好ましくは1000〜10000、及び特に1000〜6000の数平均分子量Mを有する。
【0075】
クシ型ポリマー(b)は例えば、"Comb-Like Polymers. Structure and Properties", N. A. Plate及びV. P. Shibaev, J. Poly. Sci. Macromolecular Revs. 8, p. 117-253 (1974)に記載されているそのようなクシ型ポリマーである。そこに記載されているものの中では、例えば式IIのクシ型ポリマーが適している:
【0076】
【化3】

[式中、
DはR17、COOR17、OCOR17、R18、OCOR17又はOR17を表し、
EはH、CH、D又はR18を表し、
GはH又はDを表し、
JはH、R18、R18COOR17、アリール又はヘテロシクリルを表し、
KはH、COOR18、OCOR18、OR18又はCOOHを表し、
LはH、R18 COOR18、OCOR18、COOH又はアリールを表し、
ここで、
17は、炭素原子少なくとも10個を有する、好ましくは炭素原子10〜30個を有する炭化水素基を表し、
18は、炭素原子少なくとも1個を有する、好ましくは炭素原子1〜30個を有する炭化水素基を表し、
mは1.0〜0.4の範囲内のモル分率を表し、かつ
nは0〜0.6の範囲内のモル分率を表す]。
【0077】
好ましいクシ型ポリマーは、例えば無水マレイン酸又はフマル酸と、他のエチレン系不飽和モノマー、例えばα−オレフィン又は不飽和エステル、例えば酢酸ビニルとの共重合、引き続いて炭素原子少なくとも10個を有するアルコールでの無水物官能基もしくは酸官能基のエステル化により得ることができる。好ましい別のクシ型ポリマーは、α−オレフィン及びエステル化されたコモノマーのコポリマー、例えばスチレン及び無水マレイン酸のエステル化されたコポリマー又はスチレン及びフマル酸のエステル化されたコポリマーである。クシ型ポリマーの混合物も適している。クシ型ポリマーはポリフマレート又はポリマレエートであってもよい。さらにビニルエーテル類のホモポリマー及びコポリマーも適しているクシ型ポリマーである。
【0078】
適しているポリオキシアルキレン(c)は例えばポリオキシアルキレンエステル、−エーテル、−エステル/エーテル及びそれらの混合物である。好ましくはポリオキシアルキレン化合物は、炭素原子10〜30個を有する線状アルキル基少なくとも1つ、特に好ましくは少なくとも2つ及び5000までの分子量を有するポリオキシアルキレン基を有する。ポリオキシアルキレン基のアルキル基はその場合に好ましくは炭素原子1〜4個を有する。そのようなポリオキシアルキレン化合物は例えば欧州特許出願公開(EP-A)第0 061 895号明細書並びに米国特許(US)第4,491,455号明細書に記載されており、それに関して本明細書と全面的に関連づけられている。好ましいポリオキシアルキレンエステル、−エーテル及びエステル/エーテルは、一般式III
19−[O−(CH−]O−R20 (III)
[式中、
19及びR20はその都度互いに独立してR21、R21−CO−、R21−O−CO(CH−又はR21−O−CO(CH−CO−を表し、ここでR21は線状C〜C30−アルキルを表し、
yは1〜4の数を表し、
xは2〜200の数を表し、かつ
zは1〜4の数を表す]を有する。
【0079】
19並びにR20がR21を表す式IIIの好ましいポリオキシアルキレン化合物は、100〜5000の数平均分子量を有するポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。基R19の1つがR21を表し、かつ他の基がR21−CO−を表す式IIIの好ましいポリオキシアルキレンは、炭素原子10〜30個を有する脂肪酸、例えばステアリン酸又はベヘン酸のポリオキシアルキレンエステルである。R19並びにR20が基R21−CO−を表す好ましいポリオキシアルキレン化合物は、炭素原子10〜30個を有する脂肪酸、好ましくはステアリン酸又はベヘン酸のジエステルである。
【0080】
好適には油溶性である極性窒素化合物(d)は、イオン性並びに非イオン性であってよく、かつ好ましくは少なくとも1つの、特に好ましくは少なくとも2つの式>NR22の置換基を有し、ここで、R22はC〜C40−炭化水素基を表す。窒素置換基は、四級化されていてもよく、すなわちカチオン形で存在していてよい。そのような窒素化合物の例は、アンモニウム塩及び/又は少なくとも1つの炭化水素基で置換されている少なくとも1つのアミンと、カルボキシル基1〜4個を有するカルボン酸もしくはそれらの適している誘導体との反応により得ることができるアミドである。好ましくは前記アミンは少なくとも1つの線状C〜C40−アルキル基を有する。適している第一アミンは、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン及び高級線状同族体である。適している第二アミンは、例えばジオクタデシルアミン及びメチルベヘニルアミンである。アミン混合物、特に大工業的に入手可能なアミン混合物、例えば脂肪アミン又は水素化されたトールアミン(Tallamine)も適しており、これらは例えばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、2000年、電子版(electronic release)、"Amines, aliphatic"の章に記載されている。反応に適している酸は例えばシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及び長鎖炭化水素基で置換されたコハク酸である。
【0081】
極性窒素化合物の別の例は、式−A−NR2324の少なくとも2個の置換基を有する環系であり、ここで、Aは、場合によりO、S、NR35及びCOから選択されている1つ又はそれ以上の基により中断されていてよい線状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基を表し、かつR23及びR24は、場合によりO、S、NR35及びCOから選択されている1つ又はそれ以上の基により中断されていてよく、及び/又はOH、SH及びNR3536から選択されている1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてよいC〜C40−炭化水素基を表し、ここでR35は、場合によりCO、NR35、O及びSから選択されている1つ又はそれ以上の基により中断されていてよく、及び/又はNR3738、OR37、SR37、COR37、COOR37、CONR3738、アリール又はヘテロシクリルから選択されている1つ又はそれ以上の基により置換されていてよいC〜C40−アルキルを表し、ここでR37及びR38はその都度互いに独立してH又はC〜C−アルキルから選択されており;かつR36はH又はR35を表す。
【0082】
好ましくはAはメチレン単位2〜20個を有するメチレン基又はポリメチレン基である。適している基R23及びR24の例は、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、2−ケトプロピル、エトキシエチル及びプロポキシプロピルである。環式系は、同素環式、複素環式、縮合多環式又は非縮合多環式の系であってよい。好ましくは前記環系は炭素芳香族又は複素芳香族、特に炭素芳香族である。そのような多環式環系の例は、縮合ベンゼノイド構造、例えばナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びピレン、縮合非ベンゼノイド構造、例えばアズレン、インデン、ヒドロインデン及びフルオレン、非縮合多環式化合物、例えばジフェニル、複素環式化合物、例えばキノリン、インドール、ジヒドロインドール、ベンゾフラン、クマリン、イソクマリン、ベンズチオフェン、カルバゾール、ジフェニレンオキシド及びジフェニレンスルフィド、非芳香族又は部分飽和の環系、例えばデカリン、及び三次元構造、例えばα−ピネン、カンフェン、ボルニレン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロオクタン及びビシクロオクテンである。
【0083】
適している極性窒素化合物の別の例は、長鎖の第一級又は第二級のアミンとカルボキシル基含有のポリマーとの縮合物である。
【0084】
ここに挙げられた極性窒素化合物は国際公開(WO)第00/44857号パンフレット並びに前記パンフレットに挙げられた文献に記載されており、それに関して本明細書と全面的に関連づけられている。
【0085】
適している極性窒素化合物は例えば独国特許出願公開(DE-A)第198 48 621号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第196 22 052号明細書又は欧州特許(EP-B)第398 101号明細書にも記載されており、それに関して本明細書と関連づけられている。
【0086】
適しているスルホカルボン酸/スルホン酸もしくはそれらの誘導体(e)は例えば一般式IV
【0087】
【化4】

[式中、
YはSO(NR2526、SO(NHR2526、SO(NH2526)、SO(NH26)又はSONR2526を表し、
XはY、CONR2527、CO(NR2527、CO(NHR2527、R28−COOR27、NR25COR27、R28OR27、R28OCOR27、R2827、N(COR25)R27又はZ(NR2527を表し、
ここで
25は炭化水素基を表し、
26及びR27は主鎖中に炭素原子少なくとも10個を有するアルキル、アルコキシアルキル又はポリアルコキシアルキルを表し、
28はC〜C−アルキレンを表し、
は1のアニオン等価物(Anionenaequivalent)を表し、かつ
A及びBはアルキル、アルケニル又は2つの置換炭化水素基を表すか、又はこれらが結合されている炭素原子と一緒になって、芳香族又は脂環式の環系を形成する]で示されるそのようなものである。
【0088】
そのようなスルホカルボン酸もしくはスルホン酸及びそれらの誘導体は欧州特許出願公開(EP-A)第0 261 957号明細書に記載されており、それに関して本明細書と全面的に関連づけられている。
【0089】
適しているポリ(メタ)アクリル酸エステル(f)はアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのホモポリマー並びにコポリマーである。C〜C40−アルコールから誘導されるアクリル酸エステル−ホモポリマーが好ましい。縮合導入されるアルコールに関して異なる、少なくとも2つの互いに異なる(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーも好ましい。場合により前記コポリマーはさらに、前記のものとは異なる別のオレフィン系不飽和モノマーを重合導入されて含有する。前記ポリマーの質量平均分子量は好ましくは50000〜500000である。特に好ましいポリマーは飽和C14−及びC15−アルコールのメタクリル酸及びメタクリル酸エステルのコポリマーであり、その際に酸基は水素化トールアミンで中和されている。適しているポリ(メタ)アクリル酸エステルは例えば国際公開(WO)第00/44857号パンフレットに記載されており、それに関して本明細書と全面的に関連づけられている。
【0090】
e)添加剤パッケージ
最後に、本願の対象は、前記で定義されたような少なくとも1つの本発明によるポリマーと、少なくとも1つの希釈剤と、並びに場合により、特に前記の共添加剤から選択される、少なくとも1つの別の添加剤とを含有している添加剤濃縮物である。
【0091】
適している希釈剤は例えば、石油加工の際に生じる留分、例えば燈油、ナフサ又はブライトストックである。さらにまた芳香族及び脂肪族の炭化水素及びアルコキシアルカノールが適している。中間留分の場合、特にディーゼル燃料及び暖房用油の場合に好ましくは使用される希釈剤は、ナフサ、燈油、ディーゼル燃料、芳香族炭化水素、例えばソルベントナフサ ヘビー、Solvesso(登録商標)又はShellsol(登録商標)並びにこれらの溶剤及び希釈剤の混合物である。
【0092】
本発明によるポリマーは濃縮物中に、前記濃縮物の全質量に対して、好ましくは0.1〜80質量%、特に好ましくは1〜70質量%、及び特に20〜60質量%の量で存在する。
【0093】
本発明は目下、次の限定されない例に基づいてより詳細に説明される。
【0094】
実施例
実験の部:
a)製造例1〜23
全部で23の異なる本発明によるポリマーを、エチレン、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル(AEH)及び酢酸ビニル(VAC)の高圧重合により製造した。
【0095】
第1表には次の試験例において使用されるポリマーの性質がまとめられている。
【0096】
得られたポリマー中のエチレン、AEH及びVACの含量をNMR−分光法により測定した。粘度をウベローベ DIN 51562により測定した。
【0097】
【表1】

E:エチレン
AEH:アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル
VAC:酢酸ビニル。
【0098】
b)試験例1〜4
上記で製造されたポリマー1〜23を用いて次の試験を実施した。比較目的のために、次の従来のMDFIを一緒に試験した:
比較製品A:エチレン−酢酸ビニルをベースとするポリマー混合物;ポリマー含量60% (Keroflux 6100、BASF AG)
比較製品B:エチレン−酢酸ビニルをベースとするポリマー混合物;ポリマー含量50% (Keroflux 6103、BASF AG)
比較製品C:エチレン−ターポリマー;ポリマー含量75%
比較製品D:エチレン−酢酸ビニルをベースとするポリマー混合物;ポリマー含量60%。
【0099】
従来の中間留分−燃料に、前記の本発明によるもしくは従来の低温流動性向上剤を異なる配量速度で添加し、かつ下方の混合温度、CP−値(Cloud Point;曇り点)、PP−値(Pour Point;流動点)及び添加剤の粘度並びに添加剤の添加された燃料のCFPP−値(目詰まり点)を測定した。下方の混合温度をQSAA FKL 103;章5.4.2 (ARAL-リサーチ)により、CP−値をASTM D 2500により、添加剤のPP−値をISO 3016により、添加剤の粘度をDIN 51512により及びCFPP-値をDIN EN 116により測定した。
【0100】
試験例1:下方の混合温度
中間留分における下方の混合温度を調べ、その際にソルベントナフサ ヘビー中の本発明により使用されるポリマーの50%溶液を使用した。下方の混合温度は特に、添加剤を加熱せずに燃料油中へ混合するか又は添加剤を非加熱の燃料油中へ混合するそのような精油所にとって重要である。添加剤の下方の混合温度が高い場合には、非加熱混合によりフィルターの問題となりうる。
【0101】
使用した中間留分:ディーゼル燃料、CP=−5℃、CFPP=−9℃、n−パラフィン25%、90−20=70℃。添加剤の配量:500ppm
【0102】
【表2】

【0103】
前記の結果が示すように、50%溶液中の本発明により使用されるポリマーは従来の添加剤の溶液よりも明らかにより低い下方の混合温度を有する。
【0104】
試験例2:添加剤の流動点(PP)
添加剤のPPをISO 3016により測定し、その際にソルベントナフサ ヘビー中のポリマーの50%溶液を使用した。添加剤の流動点は、燃料油中への混合の際の取り扱いにとって重要な役割を果たす。できるだけ低いPPは、低い温度でも混合の際の添加剤の簡単な取り扱いを可能にし、かつ添加剤−タンクのための加熱コストを節約する。
【0105】
【表3】

【0106】
前記の結果が示すように、50%溶液中の本発明による添加剤は従来の添加剤の溶液よりも明らかにより低い流動点を有する。
【0107】
試験例3:粘度
粘度を50℃でDIN 51512により測定し、その際にソルベントナフサ中の本発明により使用されるポリマーの50%溶液を使用した。添加剤の粘度はまた、低い温度での混合の際のそれらの取り扱いにとって重要である。
【0108】
【表4】

【0109】
前記の結果が示すように、50%溶液中の本発明により使用される添加剤は従来の添加剤の溶液よりも明らかにより低い粘度を有する。
【0110】
試験例4:中間留分の低温流動特性の改善
例a)
使用した中間留分:LGO、オランダ、CP=1.7℃、CFPP=−1℃、n−パラフィン25%、90−20=70℃。
添加剤の配量:1500ppm
【0111】
【表5】

【0112】
例b)
使用した中間留分:ディーゼル、ベルギー、CP=−17℃、CFPP=−19℃、n−パラフィン19%、90−20=89℃。
添加剤の配量:300ppm
【0113】
【表6】

【0114】
例c)
使用した中間留分:ディーゼル燃料、日本、CP=−3.6℃、CFPP=−5℃、n−パラフィン21%、90−20=90℃。
添加剤の配量:1500ppm
【0115】
【表7】

【0116】
例d)
使用した中間留分:ディーゼル燃料、ドイツ、CP=−3.3℃、CFPP=−5℃、n−パラフィン18%、90−20=101℃。
添加剤の配量:150ppm
【0117】
【表8】

【0118】
例e)
使用した中間留分:LHO、ベルギー、CP=0℃、CFPP=−1℃、n−パラフィン18%、90−20=125℃。
添加剤の配量:350ppm
【0119】
【表9】

【0120】
例f)
使用した中間留分:ディーゼル、オランダ、CP=−5℃、CFPP=−9℃。
添加剤の配量:400ppm
【0121】
【表10】

【0122】
例g)
使用した中間留分:ディーゼル、ポーランド、CP=−12℃、CFPP=−13℃、n−パラフィン12%、90−20=73℃。
添加剤の配量:600ppm
【0123】
【表11】

【0124】
第5〜11表にまとめられた試験結果は、中間留分燃料組成物中の低温流動性向上剤としての本発明により使用されるポリマーの意外に良好な性能を証明する。目下、本発明による添加剤を用いて、一方では、従来のMDFIの有するCFPP−値と匹敵しうるCFPP−値に、しかしながらより僅かな配量速度で調節すること、もしくは同じ配量で改善されたCFPP−値を達成することが可能である。
【0125】
試験例1〜3が示すように、そのうえ本発明により使用されるポリマーはより良好かつより簡単な取り扱いを可能にする、それというのも、これらはより低い温度で混合官能であり、そのうえ従来の添加剤よりも、より僅かな粘度及びより低い流動点を有するので、これらは燃料油中への混合の前に加熱される必要がないか又はあまり加熱される必要がないからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油及び潤滑剤用の添加剤としての、α−オレフィン、ビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルを重合導入されて含有するポリマーの使用。
【請求項2】
前記ポリマーがビニルエステル及びα,β−不飽和カルボン酸のエステルをランダム分布で重合導入されて含有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記ポリマーが、M1、M2及びM3を含んでいるモノマーから構成されており、かつM1、M2及びM3が次の一般式:
【化1】

[式中、
はH又はC〜C40−ヒドロカルビルを表し;
、R及びRは互いに独立してH又はC〜C−アルキルを表し;
はC〜C20−ヒドロカルビルを表し;
、R及びRは互いに独立してH又はC〜C−アルキルを表し;かつ
はC〜C20−ヒドロカルビルを表す]を有する、請求項1から2までのいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
モノマーM1、M2及びM3が以下のモル割合:
M1:0.60〜0.98
M2:0.01〜0.20
M3:0.01〜0.20
でポリマー中に含まれている、請求項3記載の使用。
【請求項5】
モノマーM1がエチレンを表す、請求項3又は4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
、R及びRがHを表すか、又は基R、R及びRの2つがHを表し、かつ他の基がメチルを表す、請求項3から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
がC〜C−ヒドロカルビルを表す、請求項3から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
がn−ブチル又は2−エチルヘキシルを表す、請求項7記載の使用。
【請求項9】
M2がアクリル酸−n−ブチルエステル又はアクリル酸−2−エチルヘキシルエステルを表す、請求項6から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
M3が酢酸ビニルを表す、請求項3から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記ポリマーを低温流動性向上剤として使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
120〜500℃の範囲内で沸騰する中間留分燃料のより大きな質量割合と、請求項1から11までのいずれか1項の定義による少なくとも1つのポリマーのより小さな質量割合とを含有している、燃料油組成物。
【請求項13】
燃料成分がバイオディーゼル(動物又は植物生産由来の)を0〜100質量%の割合で含んでいる、請求項12記載の燃料油組成物。
【請求項14】
ディーゼル燃料、燈油及び暖房用油から選択される、請求項12記載の燃料油組成物。
【請求項15】
ディーゼル燃料が精製、石炭ガス化又はガス液化により得ることができ、そのような生成物の混合物であり、かつ及び場合により再生燃料と混合されている、請求項14記載の燃料油組成物。
【請求項16】
混合物の硫黄含量が多くとも500ppmである、請求項12から15までのいずれか1項記載の燃料油組成物。
【請求項17】
従来の潤滑剤のより大きな質量割合と、請求項1から10までのいずれか1項の定義による少なくとも1つのポリマーのより小さな質量割合とを含有している、潤滑剤組成物。
【請求項18】
前記ポリマーが、従来の別の低温流動性向上剤及び/又は別の潤滑油添加剤及び燃料油添加剤との組合せで使用される、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用又は請求項12から17までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
請求項1から10までのいずれか1項の定義による少なくとも1つのポリマーを少なくとも1つの常用の別の潤滑剤添加剤又は燃料油添加剤との組合せで含んでいる、添加剤パッケージ。

【公表番号】特表2007−513231(P2007−513231A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541910(P2006−541910)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013781
【国際公開番号】WO2005/054314
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】