説明

放射性ヨウ素化方法

本発明は、検査対象の生物学的標的化分子(BTM)を放射性ヨウ素で標識するための新規な方法を提供する。また、本方法を用いて製造される新規な放射性ヨウ素化BTM並びにかかる放射性ヨウ素化BTMを含む放射性医薬組成物も提供される。本発明はまた、本方法で有用な放射性ヨウ素化中間体並びにかかる放射性ヨウ素化BTMを用いるインビボイメージング方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の生物学的標的化分子(BTM)を放射性ヨウ素で標識するための新規な方法を提供する。また、本方法を用いて製造される新規な放射性ヨウ素化BTM並びにかかる放射性ヨウ素化BTMを含む放射性医薬組成物も提供される。本発明はまた、本方法で有用な放射性ヨウ素化中間体並びにかかる放射性ヨウ素化BTMを用いるインビボイメージング方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
有機分子に放射性ハロゲンを導入する方法は公知である[Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)]。123I標識放射性医薬品の場合に関し、Eersels et al[J.Lab.Comp.Radiopharm.,48,241−257(2005)]は以下の4つの主要な合成経路を比較している。
(I)酸化的放射性ヨウ素化
(ii)求核性同位体交換
(iii)求核性非同位体交換
(iv)求電子性標識
経路(iv)は、通例、トリアルキルスズ、トリアルキルシリル或いは有機水銀又は有機タリウム誘導体のような有機金属前駆体の使用を必要とする。これらのうち、室温での領域特異的放射性ヨウ素化が可能である点で、放射性ヨード脱スタンニル化経路が好ましい求電子性標識方法として認識されている。Eersels et alは、特に優れた放射性ヨウ素化方法は存在しないと結論づけた。
【0003】
放射性医薬品合成における有機スズ中間体の使用は、Ali et al[Synthesis,423−445(1996)]の総説に記載されている。Kabalka et alは、放射性同位体及び放射性ハロゲン標識を可能にするための有機ボラン前駆体の使用に関して広範な発表を行った[例えば、J.Lab.Comp.Radiopharm.,50,446−447及び888−894(2007)参照]。
【0004】
放射化学を含む生物医学研究における「クリック化学」の応用がNwe et al[Cancer Biother.Radiopharm.,24(3),289−302(2009)]の総説に記載されている。そこに記載されている通り、主たる関心は、PET用放射性同位体である18F(及びそれよりは少ないものの11C)、並びに99mTc又は111InのようなSPECTイメージングに適した放射性金属に関する「クリック・トゥ・キレート(click to chelate)」アプローチに向けられていた。18F−フルオロアルキル置換トリアゾールを組み込んだ生成物を与える標的化ペプチドの18Fクリック標識が、Li et al[Bioconj.Chem.,18(6),1987−1994(2007)]及びHausner et al[J.Med.Chem.,51(19),5901−5904(2008)]によって報告されている。
【0005】
国際公開第2006/067376号には、ベクターを標識する方法であって、Cu(I)触媒の存在下で次の式(I)の化合物を次の式(II)の化合物と反応させるか、或いは次の式(III)の化合物を次の式(IV)の化合物と反応させることで、それぞれ次の式(V)又は式(VI)のコンジュゲートを得ることを含む方法が開示されている。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

式中、L1、L2、L3及びL4は各々ンカー基であり、R*は放射性核種を含むレポーター部分である。
【0008】
【化3】

式中、L1、L2、L3、L4及びR*は上記で定義した通りである。
【0009】
国際公開第2006/067376号のR*は、放射性核種(例えば、陽電子放出放射性核種)を含むレポーター部分である。この目的に適した陽電子放出放射性核種には、11C、18F、75Br、76Br、124I、82Rb、68Ga、64Cu及び62Cuがあると記載されており、11C及び18Fが好ましい。他の有用な放射性核種として、123I、125I、131I、211At、99mTc及び111Inが記載されている。
【0010】
国際公開第2007/148089号には、ベクターを放射性標識する方法であって、Cu(I)触媒の存在下で次の式(I)の化合物を次の式(II)の化合物と反応させるか、或いは次の式(III)の化合物を次の式(IV)の化合物と反応させることで、それぞれ次の式(V)又は式(VI)のコンジュゲートを得ることを含む方法が開示されている。
【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

式中、L1、L2、L3及びL4は各々ンカー基であり、R*は放射性核種を含むレポーター部分である。
【0013】
【化6】

国際公開第2006/067376号及び国際公開第2007/148089号のいずれにおいても、金属放射性核種は、例えば当業者にとって公知の方法による直接組込みにより、キレート化剤に好適に導入されると記載されている。国際公開第2006/067376号及び国際公開第2007/148089号のいずれにも、クリック放射性ヨウ素化のために特有の方法論は開示されていない。詳しくは、式(I)〜(IV)の化合物のいかなる組合せが適当であるか、リンカー基L1、L2、L3、L4のいかなる組合せが適当であるか、及びいかなるタイプのR*基が適当であるかは開示されていない。加えて、国際公開第2006/067376号は18Fに焦点を合わせており、しかもフルオロアセチレンは放射性標識のために魅力的な中間体ではなかろう。なぜなら、これは−80℃で沸騰し、液体状態では爆発的に不安定であると報告されているからである[Middleton,J.Am.Chem.Soc.,81,803−804(1959)]。
【0014】
国際公開第2006/116629号(Siemens Medical Solutions USA,Inc.)には、標的生体高分子に対して親和性を有する放射性標識リガンド又は基質の製造方法であって、
(a)(i)第1の分子構造、(ii)脱離基、(iii)クリック化学反応に関与し得る第1の官能基、及び任意には(iv)第1の官能基と分子構造との間のリンカーを含む第1の化合物を、放射性試薬の放射性成分で脱離基を置換するのに十分な条件下で放射性試薬と反応させて第1の放射性化合物を生成する段階、
(b)(i)第2の分子構造、及び(ii)第1の官能基とのクリック化学反応に関与し得る第2の相補的官能基を含む第2の化合物であって、任意には第2の化合物と第2の官能基との間にリンカーを含む第2の化合物を用意する段階、
(c)第1の放射性化合物の第1の官能基をクリック化学反応によって第2の化合物の相補的官能基と反応させて放射性リガンド又は基質を生成する段階、並びに
(d)放射性リガンド又は基質を単離する段階
を含む方法が開示されている。
【0015】
国際公開第2006/116629号は、その方法が放射性同位体124I、18F、11C、13N及び15Oと共に使用するのに適しており、好ましい放射性同位体は18F、11C、123I、124I、127I、131I、76Br、64Cu、99mTc、90Y、67Ga、51Cr、192Ir、99Mo、153Sm及び201Tlであることを教示している。国際公開第2006/116629号はまた、使用し得る他の放射性同位体には、72As、74As、75Br、55Co、61Cu、67Cu、68Ga、68Ge、125I、132I、111In、52Mn、203Pb及び97Ruがあることを教示している。しかし、国際公開第2006/116629号は、その方法を生物学的分子の放射性ヨウ素化にどのように適用すべきかについての詳しい教示を示していない。
【0016】
したがって、代わりの放射性ヨウ素化方法に対するニーズが今なお存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
国際公開第2006/067376号パンフレット
【発明の概要】
【0018】
本発明は、クリック放射性ヨウ素化を用いて生物学的標的化分子(BTM)を放射性ヨウ素化する方法を提供する。本方法は、温和な条件下で実施できるという利点を有しており、したがって一定範囲の分子(潜在的には、放射性ヨウ素化反応条件下におけるBTMの不安定性のために通常の直接放射性ヨウ素化方法が実行できない分子を含む)に対する適合性を有している。かかる感受性の例には、通常の放射性ヨウ素化のために必要な酸化条件に対する不適合性又は不安定性がある。本方法は、非酸化条件下で実施でき、したがって酸化を受けやすいBTMを標識するために特に有利である放射性ヨウ素化方法を提供する。
【0019】
本方法は、放射性ヨウ素がトリアゾール又はイソキサゾールヘテロアリール環に直接結合した生成物を与える。したがって、かかる放射性ヨウ素化生成物は、インビボでの代謝性脱ヨウ素化並びにその結果としての放射性ヨウ素の望ましくない胃及び/又は甲状腺取込みに対して良好な安全性を示すと予想される。したがって、かかる生成物はインビボイメージング用の放射性医薬品として使用するのに適しており、これは重要な利点である。
【0020】
クリック放射性ヨウ素化方法は、自動合成装置で使用するために容易に適合させることができる。それに関しては、使用されるヨードアセチレン(H−≡−I)の揮発性(約1気圧で32℃と予測されるが、60〜80℃と報告されている)は、放射性標識に先立って反応性の放射性ヨウ素化学種を容易に蒸留するため有利に使用でき、その結果として生成物の放射化学純度(RCP)は最大になる。これは、例えばクロマトグラフィーによる追加の生成物精製プロセスの必要性を最小限に抑える。これはまた、放射能及び/又は放射線量の損失リスクが増大するため、揮発性の放射性ヨウ素含有化学種(例えば、分子状ヨウ素I2)が望ましくないものと見なされる通常の放射性ヨウ素化方法とは対照的である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、過酢酸を用いて製造された[123I]−ヨードアセチレンのRP−HPLC分析結果である。
【図2】図2は、[123I]−ヨードアセチレンを蒸留するために使用した装置を示している。
【図3】図3は、蒸留から約10分後におけるHPLC分析結果であって、94%のRCPを有する[123I]−ヨードアセチレンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の態様では、本発明は、生物学的標的化部分の放射性ヨウ素化方法であって、
(i)次の式(Ia)又は式(Ib)の化合物を用意する段階、及び
【0023】
【化7】

(ii)クリック環付加触媒の存在下で前記式(Ia)又は式(Ib)の化合物を次の式(II)の化合物と反応させることで、クリック環付加によってそれぞれ次の式(IIIa)又は式(IIIb)のコンジュゲートを得る段階
を含む方法を提供する。
【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

式中、
*はヨウ素の放射性同位体であり、
1は存在しても存在しなくてもよいリンカー基であり、
BTMは生物学的標的化部分である。
【0026】
「放射性ヨウ素化」という用語はその通常の意味を有し、即ち、放射性標識のために使用されるせ放射性同位体がヨウ素の放射性同位体である放射性標識プロセスをいう。
【0027】
リンカー基が存在しない場合、それは式(Ia)のアジド基又は式(Ib)のニトリルオキシド官能基がBTMに直接結合していることを意味する。
【0028】
「生物学的標的化部分」(BTM)という用語は、投与後、インビボで哺乳動物体の特定部位に選択的に取り込まれるか又は特定部位に局在する化合物を意味する。かかる部位は、例えば、特定の疾患状態に関係するものであるか、或いは器官又は代謝過程がいかに機能しているかを表すものであり得る。
【0029】
ヨウ素の放射性同位体という用語はその通常の意味を有し、即ち、放射性であるヨウ素元素の同位体をいう。好適なかかる放射性同位体には、123I、124I、125I及び131Iがある。BTMが131Iで標識された場合、生成物はインビボでの治療用途(例えば、BTMが抗体又は抗体フラグメントである場合の放射性免疫療法)のための放射性医薬品として有用であり得る。
【0030】
「クリック環付加触媒」という用語は、第1の態様のクリック(アルキン+アジド)又はクリック(アルキン+イソニトリルオキシド)環付加反応を触媒することが知られている触媒を意味する。クリック環付加反応で使用するための好適なかかる触媒は、当技術分野で公知である。好ましいかかる触媒はCu(I)を含むと共に、以下で説明する。好適な触媒のさらなる詳細は、Wu and Fokin[Aldrichim.Acta,40(1),7−17(2007)]及びMeldal and Tornoe[Chem.Rev.,108,2952−3015(2008)]によって記載されている。
【0031】
好ましい態様
第1の態様の方法で使用するための好ましい前駆体は式(Ia)のアジドであり、したがって好ましい生成物は式(IIIa)のトリアゾールである。
【0032】
本発明で使用するための好ましいヨウ素の放射性同位体は、PET又はSPECTを用いるインビボでの医学イメージングに適するものである。かかる放射性同位体は、好ましくは123I、124I又は131Iであり、さらに好ましくは123I又は124Iであり、最も好ましくは123Iである。
【0033】
BTMは合成品又は天然品であり得るが、好ましくは合成品である。「合成品」という用語はその通常の意味を有し、即ち、天然の供給源(例えば、哺乳動物体)から単離されるものではなく人造のものをいう。かかる化合物は、その製造及び不純物プロファイルを完全に制御できるという利点を有している。したがって、天然由来のモノクローナル抗体及びそのフラグメントは、本明細書中で使用する「合成品」という用語の範囲外にある。
【0034】
BTMの分子量は、好ましくは30000ダルトン以下である。さらに好ましくは、分子量は200〜20000ダルトンの範囲内にあり、最も好ましくは300〜18000ダルトンの範囲内にあり、400〜16000ダルトンが特に好ましい。BTMが非ペプチドである場合、BTMの分子量は好ましくは3000ダルトン以下であり、さらに好ましくは200〜2500ダルトンであり、最も好ましくは300〜2000ダルトンであり、400〜1500ダルトンが特に好ましい。
【0035】
生物学的標的化部分は、好ましくは、線状ペプチド、環状ペプチド又はこれらの組合せであり得る3〜100量体ペプチド、ペプチド類似体、ペプトイド又はペプチド模倣体、単一のアミノ酸、酵素基質、酵素アンタゴニスト、酵素アゴニスト(部分アゴニストを含む)又は酵素阻害剤、レセプター結合化合物(レセプター基質、アンタゴニスト、アゴニスト又は基質を含む)、オリゴヌクレオチド、或いはオリゴDNAフラグメント又はオリゴRNAフラグメントからなる。
【0036】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合(即ち、1つのアミノ酸のアミンを別のアミノ酸のカルボキシルに連結するアミド結合)によって連結された(以下で定義するような)2以上のアミノ酸を含む化合物を意味する。「ペプチド模倣体」又は「模倣体」という用語は、ペプチド又はタンパク質の生物学的活性を模倣するが、化学的性質がペプチド的でない(即ち、いかなるペプチド結合(つまり、アミノ酸間のアミド結合)も含まない)生物学的活性化合物をいう。ここでは、ペプチド模倣体という用語は広い意味で使用され、性質が完全にはペプチド的でない分子(例えば、プソイドペプチド、セミペプチド及びペプトイド)を包含する。「ペプチド類似体」という用語は、以下で説明するような1種以上のアミノ酸類似体を含むペプチドをいう。“Synthesis of Peptides and Peptidomimetics”,M.Goodman et al,Houben−Weyl E22c,Thiemeも参照されたい。
【0037】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体(例えば、ナフチルアラニン)或いはアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のもの又は純粋に合成由来のものであってよく、光学的に純粋なもの(即ち、単一の鏡像異性体)、したがってキラルなものであるか、或いは鏡像異性体の混合物であってよい。本明細書中では、アミノ酸に関する通常の三文字略語又は一文字略語が使用される。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋なものである。「アミノ酸模倣体」という用語は、アイソスター(即ち、天然化合物の立体構造及び電子構造を模倣するように設計されたもの)である天然アミノ酸の合成類似体を意味する。かかるアイソスターは当業者にとって公知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロ−インベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−二置換テトラゾールを包含する[M.Goodman,Biopolymers,24,137(1985)参照]。放射性標識されたアミノ酸(例えば、チロシン、ヒスチジン又はプロリン)は、インビボイメージング剤において有用であることが知られている。
【0038】
BTMが酵素基質、酵素アンタゴニスト、酵素アゴニスト、酵素阻害剤又はレセプター結合化合物である場合、それは好ましくは非ペプチドであり、さらに好ましくは合成品である。「非ペプチド」という用語は、いかなるペプチド結合(即ち、2つのアミノ酸残基間のアミド結合)も含まない化合物を意味する。好適な酵素の基質、アンタゴニスト、アゴニスト又は阻害剤には、グルコース及びグルコース類似体、脂肪酸、或いはエラスターゼ、アンギオテンシンII又はメタロプロテイナーゼ阻害剤がある。好適な合成レセプター結合化合物には、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン及び他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2レセプター用リガンド及びトロパンのようなドーパミン輸送体用リガンド、並びにセロトニンレセプター用リガンドがある。
【0039】
BTMは、最も好ましくは3〜100量体ペプチド又はペプチド類似体である。BTMがペプチドである場合、それは好ましくは4〜30量体ペプチドであり、最も好ましくは5〜28量体ペプチドである。
【0040】
BTMが酵素基質、酵素アンタゴニスト、酵素アゴニスト又は酵素阻害剤である場合、本発明の好ましいかかる生物学的標的化分子は合成の薬物様小分子(即ち、医薬品分子)である。好ましいBTMは、トロパンのようなドーパミン輸送体リガンド、脂肪酸、ドーパミンD−2レセプターリガンド、ベンズアミド類、アンフェタミン類、ベンジルグアニジン類、イオマゼニル、ベンゾフラン(IBF)及び馬尿酸である。好ましいトロパン誘導体は、123I−CIT(Dopascan(商標))、123I−CIT−FP(DaTSCAN(商標))、及び123I−2β−カルボメトキシ−3β−(4−フルオロフェニル)−N−(1−ヨードプロプ−1−エン−3−イル)ノルトロパンのE異性体(Altropane(商標))である。Dopascan(商標)及びDaTSCAN(商標)は特に好ましい。上記その他のトロパン剤は、Morgan and Nowotnik[Drug News Perspect.,12(3),137−145(1999)]によって記載されている。好ましい脂肪酸は123I−BMIPP及び123I−IPPAである。好ましいアンフェタミン誘導体は123I−IMPである。好ましいベンジルグアニジンは、m−ヨードベンジルグアニジン(MIBG)、即ち123I−MIBGである。
【0041】
BTMがペプチドである場合、好ましいかかるペプチドには以下のものがある。
−ソマトスタチン、オクトレオチド及び類似体。
−STレセプターに結合するペプチド(ここで、STとは大腸菌(E.coli)及び他の微生物によって産生される耐熱性毒素をいう。)。
−ボンベシン。
−血管作用性小腸ペプチド。
−ニューロテンシン。
−ラミニンフラグメント、例えば、YIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG。
−白血球集積部位を標的化するためのN−ホルミル走化性ペプチド。
−血小板第4因子(PF4)及びそのフラグメント。
−例えば血管形成を標的化し得るRGD(Arg−Gly−Asp)含有ペプチド[R.Pasqualini et al.,Nat Biotechnol.1997 Jun;15(6):542−6]、[E.Ruoslahti,Kidney Int.1997 May;51(5):1413−7]。
−α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン又はトロンボスポンジンのペプチドフラグメント。α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン及びトロンボスポンジンのアミノ酸配列は、以下の参考文献に見出すことができる。α2−抗プラスミン前駆体[M.Tone et al.,J.Biochem,102,1033(1987)]、β−カゼイン[L.Hansson et al,Gene,139,193(1994)]、フィブロネクチン[A.Gutman et al,FEBS Lett.,207,145(1996)]、トロンボスポンジン1前駆体[V.Dixit et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,83,5449(1986)]、R.F.Doolittle,Ann.Rev.Biochem.,53,195(1984)。
−アンギオテンシンII:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe(E.C.Jorgensen et al,J.Med.Chem.,1979,Vol 22,9,1038−1044)及び[Sar,Ile]アンギオテンシンII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Ile(R.K.Turker et al.,Science,1972,177,1203)のようなアンギオテンシンの基質又は阻害剤であるペプチド。
−アンギオテンシンI:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu。
【0042】
好ましいBTMペプチドはRGDペプチドである。さらに好ましいかかるRGDペプチドは、次式のフラグメントを含む。
【0043】
【化10】

最も好ましいかかるRGDペプチドは、BTMが次の式(A)のペプチドである場合である。
【0044】
【化11】

式中、X1は−NH2又は次式の基である。
【0045】
【化12】

式中、aは1〜10の整数である。
式A中、aは好ましくは1である。
【0046】
BTMがペプチドである場合、ペプチドの一方又は両方の末端(好ましくは両方の末端)に代謝抑制基(MIG)がコンジュゲートされる。このようにして両方のペプチド末端を保護することは、インビボイメージング用途のために重要である。さもないと、急速な代謝の結果としてBTMペプチドに対する選択的結合親和性が失われると予想されるからである。「代謝抑制基」(MIG)という用語は、アミノ末端又はカルボキシ末端におけるBTMペプチドの酵素(特にカルボキシペプチダーゼのようなペプチダーゼ)代謝を阻止又は抑制する生体適合性基を意味する。かかる基はインビボ用途のために特に重要であって、これらは当業者にとって公知であり、好適にはペプチドアミン末端に関してはN−アシル化基−NH(C=O)RG(式中、アシル基−(C=O)RGはC1-6アルキル基及びC3-10アリール基から選択されるRGを有するか、或いはポリエチレングリコール(PEG)構成単位を含む。)から選択される。好適なPEG基は、リンカー基(L1)に関して以下で説明する。好ましいかかるPEG基は、式Bio1又はBio2(下記)のバイオモディファイアーである。好ましいかかるアミノ末端MIG基はアセチル、ベンジルオキシカルボニル又はトリフルオロアセチルであり、最も好ましくはアセチルである。
【0047】
ペプチドカルボキシル末端に関して好適な代謝抑制基には、カルボキサミド、tert−ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、アミノアルコール及びポリエチレングリコール(PEG)構成単位がある。BTMペプチドのカルボキシ末端アミノ酸残基にとって好適なMIG基は、アミノ酸残基の末端アミンをC1-4アルキル基(好ましくはメチル基)でN−アルキル化したものである。好ましいかかるMIG基はカルボキサミド又はPEGであり、最も好ましいかかる基はカルボキサミドである。
【0048】
第1の態様の方法では、リンカー基(L1)は好ましくは存在している。好ましいリンカー基(L1)は合成品であり、式−(A)m−の基(式中、各Aは独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、糖或いは単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択され、mは1〜20の値を有する整数である。)を含む。
【0049】
1が1〜10のアミノ酸残基を有するペプチド鎖からなる場合、アミノ酸残基は好ましくはグリシン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びセリンから選択される。L1がPEG部分からなる場合、それは好ましくは次の式Bio1又はBio2の単分散PEG様構造のオリゴマー化で導かれる単位からなる。
【0050】
【化13】

かかるPEG様構造は、式Bio1(式中、pは1〜10の整数である。)の17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸であり得る。
別法として、式Bio2のプロピオン酸誘導体に基づくPEG様構造も使用できる。
【0051】
【化14】

式中、pは式Bio1に関して定義した通りであり、qは3〜15の整数である。式Bio2中、pは好ましくは1又は2であり、qは好ましくは5〜12である。
【0052】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖からなっていない場合、好ましいL1基は、2〜10の原子、最も好ましくは2〜5の原子、特に好ましくは2又は3の原子を含む−(A)m−部分を構成する結合原子の主鎖を有している。
【0053】
商業的に入手できないBTMペプチドは、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald;Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されているような固相ペプチド合成法によって合成できる。
【0054】
第1の態様の方法では、式(II)の化合物は、好ましくは次の式(IIa)の化合物の脱保護によってインサイチュで生成できる。
【0055】
【化15】

式中、M1はアルキン保護基であり、I*は式(II)に関して定義した通りである。式(IIa)中のI*の好ましい態様は、式(II)に関して記載した通りである。
【0056】
「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない程度に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。好適なアルキン保護基は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts,Chapter 8,pages 927−933,4th edition(John Wiley & Sons,2007)に記載されており、トリアルキルシリル基(ここで、各アルキル基は独立にC1-4アルキルである。)、アリールジアルキルシリル基(ここで、アリール基は好ましくはベンジル又はビフェニルであり、各アルキル基は独立にC1-4アルキルである。)、ヒドロキシメチル及び2−(2−ヒドロキシプロピル)を包含する。好ましいかかるアルキン保護基はトリメチルシリルである。式(IIa)の保護されたヨードアルキンは、放射性ヨードアルキンの揮発性を制御できると共に、式(II)の所望アルキンをインサイチュで制御された状態で生成して式(Ia)又は式(Ib)のアジド誘導体との反応の効率を最大にすることができるという利点を有している。
【0057】
第1の態様の方法は、好ましくは無菌状態で実施される結果、式(IIIa)又は式(IIIb)の生成物が放射性医薬組成物として得られる。放射性医薬組成物のさらに詳しい説明は、第3の態様(下記)に示される。このように、本方法を無菌製造条件下で実施することで、所望の無菌で非発熱性の放射性医薬品生成物が得られる。したがって、基本構成部分、特に式(IIIa)又は式(IIIb)の生成物に接触する装置部分(例えば、バイアル及び移送管)は無菌であることが好ましい。かかる構成部品及び試薬は、無菌濾過或いは(例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる)終末滅菌をはじめとする、当技術分野で公知の方法によって滅菌できる。非放射性の構成部分を予め滅菌しておけば、放射性ヨウ素化された放射性医薬品生成物に関して最小数の操作を実施すれば済むので好ましい。しかし、予防策として、少なくとも最終無菌濾過段階を含めることが好ましい。
【0058】
式(Ia)、式(Ib)及び式(II)の化合物、Cu(I)触媒並びに他のかかる試薬及び溶媒は、それぞれが適当なバイアル又は容器に入れた状態で供給される。かかるバイアル又は容器は、注射器又はカニューレによる溶液の添加及び抜取りを許しながら、無菌保全性及び/又は放射能安全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなっている。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔壁密封バイアルである。クロージャーは、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプ加工した隔壁シールクロージャー)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの交換又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得ると共に、外部大気ガス(例えば、酸素又は水蒸気)の侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。反応器は、かかる容器及びその好ましい実施形態から適宜に選択される。反応器は、好ましくは生体適合性プラスチック(例えば、PEEK)から製造される。
【0059】
第1の態様の方法は、好ましくは自動合成装置を用いて実施される。「自動合成装置」という用語は、Satyamurthy et al[Clin.Positr.Imag.,(5),233−253(1999)]によって記載されたような単位操作の原理に基づく自動化モジュールを意味する。「単位操作」という用語は、複雑なプロセスが一連の簡単な操作又は反応に還元されることを意味し、これは一定範囲の材料に適用できる。かかる自動合成装置は、特に放射性医薬品生成物が所望される場合、本発明の方法にとって好ましい。これらは、GE Healthcare社、CTI Inc.、Ion Beam Applications S.A.(Chemin du Cyclotron 3,B−1348 Louvain−La−Neuve,ベルギー)、Raytest社(ドイツ)及びBioscan社(米国)を含む1群の供給業者から商業的に入手できる[Satyamurthy et al,上記]。
【0060】
市販の自動合成装置はまた、放射性医薬品製造の結果として生じる液体放射性廃棄物用の適当な容器を提供する。自動合成装置は通例は放射線遮蔽を備えていないが、それは適宜に構成された放射能作業セル内で使用するように設計されているからである。放射能作業セルは、オペレーターを潜在的な放射線量から保護するために適した放射線遮蔽を与えると共に、化学薬品蒸気及び/又は放射性蒸気を除去するための換気を可能にする。自動合成装置は、好ましくは第8の態様(下記)に記載されるような「カセット」を含んでいる。
【0061】
第1の態様の放射性ヨウ素化方法は、適当な溶媒(例えば、アセトニトリル、C1-4アルキルアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン又はジメチルスルホキシド或いはこれらのいずれかの水性混合物)或いは水中で実施できる。4〜8、さらに好ましくは5〜7のpH範囲内の水性緩衝液が使用できる。反応温度は、好ましくは5〜100℃、さらに好ましくは75〜85℃、最も好ましくは周囲温度(通例15〜37℃)である。クリック環付加は、Meldal and Tornoe[Chem.Rev.,108,(2008)2952、Table 1(2008)]によって記載されているように、任意には有機塩基の存在下で実施できる。
【0062】
好ましいクリック環付加触媒はCu(I)を含んでいる。Cu(I)触媒は、反応が進行するのに十分な量、通例は触媒量又は過剰量(例えば、式(Ia)又は式(Ib)の化合物に対して0.02〜1.5モル当量)で存在している。好適なCu(I)触媒には、CuI又は[Cu(NCCH34][PF6]のようなCu(I)塩がある。しかし有利には、硫酸銅(II)のようなCu(II)塩を還元剤の存在下で使用してCu(I)をインサイチュで生成させることができる。好適な還元剤には、アスコルビン酸又はその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)、ヒドロキノン、金属銅、グルタチオン、システイン、Fe2+及びCo2+がある。Cu(I)はまた、元素態銅粒子の表面上にも内因的に存在しており、したがって例えば粉末又は顆粒の形態の元素態銅を触媒として使用することもできる。管理された粒度を有する元素態銅が好ましいCu(I)触媒源である。さらに好ましいかかる触媒は、0.001〜1mmの範囲内、好ましくは0.1〜0.7mmの範囲内、さらに好ましくは約0.4mmの粒度を有する銅粉末としての元素態銅である。別法として、0.01〜1.0mmの範囲内、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲内、さらに好ましくは0.1mmの直径を有するコイル銅線を使用することができる。Cu(I)触媒は、任意には、クリック化学においてCu(I)を安定化するために使用されるバトフェナントロリンの存在下で使用することができる。
【0063】
BTMがペプチド又はタンパク質である式(Ia)及び式(Ib)の非放射性前駆体化合物は、標準的なペプチド合成法、例えばAtherton,E.and Sheppard,R.C.;“Solid Phase Synthesis”;IRL Press:Oxford,1989に記載されているような固相ペプチド合成法によって製造できる。式(Ia)又は式(Ib)の化合物中へのアルキン基又はアジド基の導入は、ペプチドのN又はC末端の反応、或いはペプチド配列に含まれる何らかの他の官能基であって、その修飾がベクターの結合特性に影響を及ぼさない官能基との反応によって達成できる。アジド基は、好ましくは、例えばペプチドのアミン官能基と活性化酸との反応或いは別法としてペプチドの酸官能基とアミン官能基との反応による安定なアミド結合の形成によって導入され、ペプチドの合成中又は合成後に導入される。細胞、ウイルス、細菌のようなベクターにアジド基を導入する方法は、H.C.Kolb and K.B.Sharpless,Drug Discovery Today,Vol 8(24),December 2003及びその引用文献に見出すことができる。式(Ia)又は式(Ib)の化合物にアジド基を導入するために有用である好適な二官能性中間体には以下のものがある。
【0064】
【化16】

式中、L1及びその好ましい実施形態は上記で定義した通りである。
【0065】
上記式中、L1は好適には存在している。しかし、アジド官能化アミノ酸では、アジド官能基は任意にはいかなるリンカー基も介さずにアミノ酸の側鎖に直接結合していてもよい。
【0066】
BTMをアジド基で官能化するためのさらなるアプローチは、Nwe et al[Cancer Biother.Radiopharm.,24(3),289−302(2009)]によって記載されている。Li et alは、N3−L1−CO2H型(式中、L1は−(CH24−である。)の化合物の合成法及びアミン含有BTMにコンジュゲートするためのその使用を記載している[Bioconj.Chem.,18(6),1987−1994(2007)]。Hausner et alは、N3−L1−CO2H(式中、L1は−(CH22−である。)についての関連方法を記載している[J.Med.Chem.,51(19),5901−5904(2008)]。De Graaf et al[Bioconj.Chem.,20(7),1281−1295(2009)]は、アジド側鎖を有する非天然アミノ酸及び続くクリックコンジュゲーションのためのペプチド又はタンパク質中への部位特異的組込みを記載している。
【0067】
式(Ib)のニトリルオキシドは、Ku et al[Org.Lett.,(26),4185−4187(2001)]及びその引用文献に記載された方法によって得ることができる。即ち、これらは通例、α−ハロアルドキシムをトリエチルアミンのような有機塩基で処理することによってインサイチュで生成される。K.B.G.Torsell“Nitrile Oxides,Nitrones and Nitronates in Organic Synthesis”[VCH,New York(1988)]も参照されたい。
【0068】
式(II)及び式(IIa)の放射性ヨウ素化アルキンは、第4の態様(下記)に記載されるようにして得ることができる。
【0069】
本発明は、放射性ヨウ素化のための一層化学選択的なアプローチを提供する。連結反応はBTM中の所定部位で起こり、ただ1種の可能な生成物を与える。したがって、この方法は化学選択的である。加えて、アルキン及びアジド官能基はいずれも大抵の反応条件下で安定であり、大抵の常用ペプチド官能基と反応せず、したがって放射性標識合成時に要求される保護及び脱保護段階を最少にする。さらに、標識反応時に形成されるトリアゾール環及びイソキサゾール環は加水分解しないと共に、酸化及び還元に対して極めて安定であり、これは標識されたBTMが高いインビボ安全性を有することを意味する。また、トリアゾール環はサイズ及び極性に関してアミドと同等である結果、標識されたペプチド又はタンパク質はその天然対応品に対する良好な模倣品となる。特に、トリアゾール環は公知のアミド模倣基又はバイオアイソスターである。しかし、本発明の式(IIIa)及び式(IIIb)の生成物のトリアゾール環及びイソキサゾール環は、ヨードベンゼンより急速にヨードチロシンを代謝することが知られている甲状腺脱ヨウ素化酵素によって認識されるとは予想されず、したがって放射性医薬品イメージング及び放射線療法用としてはインビボで十分に安定であると予想される。
【0070】
第2の態様では、本発明は次の式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物を提供する。
【0071】
【化17】

式中、I*、L1及びBTM並びにこれらの好ましい実施形態は第1の態様で定義した通りである。特に、L1は存在しても存在しなくてもよい。
【0072】
好ましくは、第2の態様の化合物は式(IIIa)のものである。
【0073】
本発明はまた、医学用途のための、第2の態様で定義した式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物、好ましくは式(IIIa)の化合物を提供する。
【0074】
第3の態様では、本発明は、第2の態様に係る式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物の有効量を生体適合性キャリヤー媒質と共に含む放射性医薬組成物を提供する。I*、L1及びBTMの好ましい実施形態は第1の態様(上記)で定義した通りである。第3の態様の化合物もまた、好ましくは式(IIIa)のトリアゾールである。
【0075】
「生体適合性キャリヤー媒質」は、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤を含んでいる。それは、好ましくは、組成物が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物を懸濁又は溶解するための流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤー媒質は、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性又は非低張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。生体適合性キャリヤー媒質はまた、エタノールのような生体適合性有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は配合物を可溶化するために有用である。好ましくは、生体適合性キャリヤー媒質はパイロジェンフリー注射用水、等張食塩水又はエタノール水溶液である。静脈内注射用生体適合性キャリヤー媒質のpHは、好適には4.0〜10.5の範囲内にある。
【0076】
第4の態様では、本発明は、第1の態様で定義した式(II)の化合物の製造方法であって、
(i)酸化剤の存在下で次の式(IV)又は式(V)の前駆体を放射性ヨウ化物イオンの供給物と反応させて次の式(IIb)の化合物を得る段階、及び
(ii)M2がM1基である場合には、脱保護してM1基を除去する段階
を含む方法を提供する。
【0077】
【化18】

式中、M2はH又はM1基(ここで、M1は第1の態様で定義した通りである。)であり、各Raは独立にC1-4アルキルである。
【0078】
【化19】

式中、I*は第1の態様で定義した通りである。
【0079】
第4の態様で使用するのに適した保護基M1及びその好ましい実施形態は、第1の態様(上記)で記載した通りである。脱保護条件は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts,Chapter 8,pages 927−933,4th edition(John Wiley & Sons,2007)に記載されている。
【0080】
式(IV)又は式(V)の前駆体は非放射性である。式(IV)の化合物の一部は商業的に入手できる。即ち、トリアルキルスズ化合物Bu3Sn−≡−H及びBu3Sn−≡−SiMe3はSigma−Aldrich社から商業的に入手できる。他の有機スズ中間体は、Ali et al[Synthesis,423−445(1996)]によって記載されている。好適な酸化剤は、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)によって記載されている。好ましい酸化剤は、pH約4の過酢酸(商業的に入手可能)及びpH約1の過酢酸水素/水性HClである。M2がHである場合、式(IIb)の化合物はヨードアセチレンである。非放射性(127I)類似体の合成法は、Ku et al[Org.Lett.,(26),4185−4187(2001)]によって記載されている。放射性ヨウ素化段階で過酢酸を使用しながら式(V)に類似したアルキニルトリフルオロホウ酸カリウム前駆体を経て123I標識アルキニルヨージドを合成する方法は、Kabalka et al[J.Lab.Comp.Radiopharm.,48,359−362(2005)]によって記載されている。アルキニルトリフルオロホウ酸カリウム前駆体を対応するアルキンから合成する方法は、その文献並びにKabalka et al[J.Lab.Comp.Radiopharm.,49,11−15(2006)]に記載されている。アルキニルトリフルオロホウ酸カリウム前駆体が、空気及び水の両方に対して安定な結晶質固体であると記載されている。
【0081】
第5の態様では、本発明は、第1の態様の方法で有用な、次の式(IIb)の化合物を提供する。
【0082】
【化20】

式中、I*は第1の態様に関して定義した通りであり、M2はH又はM1(ここで、M1は式(IIa)(上記)に関して定義した通りである。)である。I*及びM1の好ましい実施形態は、第1の態様(上記)に関して定義した通りである。
【0083】
2がHである場合、式(IIb)の化合物は放射性ヨウ素化ヨードアセチレンである。使用されるヨードアセチレン(H−≡−I)の揮発性(1気圧で32℃)は、放射性標識に先立って反応性の放射性ヨウ素化学種を容易に蒸留すると共に、生成物を例えばドライアイスで冷却した容器内に捕捉するため有利に使用できる。それは、放射性ヨウ素化段階に先立つ有用な精製を表している。クリック環付加は高収率であるので、すべての化合物(II)は消費され、したがって生成物(即ち、化合物(IIIa)又は(IIIb))の放射化学純度(RCP)は最大になると予想される。
【0084】
第6の態様では、本発明は、インビボイメージング方法又はインビボ放射線療法で使用するための放射性医薬品の製造における、第2又は第5の態様に係る化合物の使用を提供する。好ましくは、かかる使用はインビボイメージング方法に関し、さらに好ましくはPET又はSPECTによるイメージングに関する。
【0085】
第7の態様では、本発明は、第1又は第4の態様の方法を実施するための自動合成装置の使用を提供する。
【0086】
自動合成装置及びその好ましい実施形態は、第1の態様(上記)で記載した通りである。
【0087】
第8の態様では、本発明は、第1の態様の好ましい実施形態の自動合成装置で使用するのに適した1回使用の無菌カセットであって、第1又は第4の態様の方法を実施するために必要な非放射性試薬を無菌の非発熱原性形態で含むカセットを提供する。
【0088】
第8の態様で使用するための上記方法の好ましい実施形態は、それぞれ第1及び第4ので記載した通りである。
【0089】
「カセット」という用語は、合成装置の可動部分の機械的運動がカセットの外側から(即ち、外部から)カセットの動作を制御するようにして、(以下に定義する)自動合成装置上に着脱自在かつ交換可能に装着し得るように設計された装置部分を意味する。
好適なカセットは直線状に並んだ弁の列を含み、その各々は倒立隔壁密封バイアルの針穿刺又は気密連結継手によって試薬又はバイアルを装着することができるポートに結合している。各弁は、自動合成装置の対応する可動アームとかみ合うはめ込み型継手を有している。かくして、カセットを自動合成装置に装着した場合、アームの外部回転が弁の開閉を制御する。自動合成装置の追加の可動部分は、注射器のプランジャー先端をつかみ、それによって注射器外筒を上昇又は降下させるように設計されている。
【0090】
カセットは融通性の高いものであって、通例は試薬を装着することができる複数の位置、及び試薬のシリンジバイアル又はクロマトグラフィー用カートリッジ(例えば、SPE)を装着するために適した複数のポートを有している。カセットは常に反応器を含んでいる。かかる反応器は好ましくは1〜10cm3、最も好ましくは2〜5cm3の容積を有しており、カセット上の様々なポートからの試薬又は溶媒の移送を可能にするため、カセットの3以上のポートが反応器に連結されるように構成されている。好ましくは、カセットは直線状に並んだ15〜40の弁、最も好ましくは20〜30の弁を有しており、25の弁が特に好ましい。カセットの弁は好ましくはそれぞれ同一であり、最も好ましくは三方弁である。本発明のカセットは放射性医薬品製造に適するように設計されており、したがって医薬品グレードの材料であって理想的には放射線分解にも耐える材料で製造されている。
【0091】
本発明の好ましい自動合成装置は、放射性ヨウ素化された放射性医薬品の所定バッチの製造を実施するために必要なすべての試薬、反応器及び機器を含む使い捨て又は1回使用のカセットを含むものである。かかるカセットは、単にカセットを交換するだけで、自動合成装置が相互汚染のリスクを最小限に抑えながら各種の放射性ヨウ素標識放射性医薬品を製造できる融通性を有することを意味する。カセットアプローチは以下の利点を有する。即ち、装置構成が単純化されてオペレーターエラーのリスクが低減すること、GMPコンプライアンスが向上すること、マルチトレーサーの使用が可能になること、製造作業間の変更が迅速になること、カセット及び試薬の作業前自動診断検査が行えること、実施すべき合成に対して化学試薬の自動バーコードクロスチェックが行えること、試薬が追跡可能であること、1回使用であるために相互汚染、不正改造及び誤用による妨害のリスクがないことが挙げられる。
【0092】
第9の態様では、本発明は、ヒト又は動物の身体の画像を生成する方法であって、第2の態様に係る化合物又は第5の態様に係る放射性医薬組成物を投与する段階、及びPET又はSPECTを用いて前記化合物又は組成物が分布した前記身体の少なくとも一部の画像を生成する段階を含む方法を提供する。
【0093】
さらに別の態様では、本発明は、薬物によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、第2の態様に係る化合物又は第5の態様に係る組成物を前記身体に投与する段階及びPET又はSPECTを用いて前記化合物又は組成物が分布した前記身体の少なくとも一部による前記化合物又は組成物の取込みを検出する段階を含む方法を提供する。
【0094】
この最後の態様の投与及び検出は、好ましくは前記薬物による治療前及び治療後に実施される結果、ヒト又は動物患者に対する薬物治療の効果を判定することができる。薬物治療が治療コースを含む場合には、治療中にもイメージングを行うことができる。
【実施例】
【0095】
以下の実施例によって本発明を例証する。実施例1は、クロマトグラフィー用真正参照標準としての非放射性(127I)ヨードアセチレンの参照試料に関する合成法を示す。実施例2は、ヨードアセチレンとベンジルアジドとのクリックカップリングによるトリアゾール環の形成を示す。実施例3〜5は、様々な酸化剤を用いる123I−ヨードアセチレンの合成法を示す。実施例6〜8は、本発明の方法を用いる放射性ヨウ素化トリアゾールの合成法の予測例を示す。実施例9は、本発明の方法を用いる放射性ヨウ素化トリアゾールの合成法の予測例を示す。
【0096】
略語
DIPEA; ジイソプロピルエチルアミン
DMF: ジメチルホルムアミド
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
MeCN: アセトニトリル
PAA: 過酢酸
RP−HPLC: 逆相HPLC
RT: 室温
THF: テトラヒドロフラン
実施例1:ヨードアセチレンの合成
【0097】
【化21】

0℃のジュウテロクロロホルム(2ml)中のトリブチル(エチニル)スタンナン(Sigma−Aldrich社、400mg、1.27mmol)をヨウ素(322mg、1.27mmol)で処理した。次いで、反応物を15分かけて室温まで放温すると、ヨウ素の色は急速に消失した。次いで、反応物を蒸留し、ジュウテロクロロホルム中の揮発性ヨードアセチレンを無色液体として集めた。クロロホルム中でのNMRは、それが純粋なヨードアセチレン溶液であることを示した。ヨードアセチレンは揮発性物質であるので、このスケールでは収率を容易に推定できない。
【0098】
1H NMR(300MHz,CDCl3):δH 2.17(1H,s,CH)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δC 83.3(他の炭素は見られない)。
【0099】
実施例2:1−ベンジル−4−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールの合成
【0100】
【化22】

ヨードアセチレン(193mg、1.27mmol、前回の反応からの収率を100%と仮定した)を20℃のジュウテロクロロホルム(2ml)及びTHF(2ml)に溶解した溶液を、アジドメチルベンゼン(ベンジルアジド、169mg、1.27mmol)[Alfa Aeser社から商業的に入手可能、Fr.Moulin,Helvet.Chim.Acta,35,167−80(1952)]、ヨウ化銅(90mg、0.47mmol)及びトリエチルアミン(256mg、2.54mmol)で処理した。次いで、反応物を室温で48時間撹拌した。次いで、反応物をセライトで濾過して酸化銅(1)を除去し、次いでシリカ上においてガソリン中15〜50%酢酸エチルの勾配でクロマトグラフィー処理した。2つの画分を集めた。画分1を蒸発させることで無色油状物(102mg、0.77mmol)を得た。1H NMR及び13C NMRは、これが主として未反応のアジドメチルベンゼンであることを示した。
【0101】
画分2を蒸発させることで、1−ベンジル−4−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールを無色液体(104mg、0.364mmol、28%)として得たが、これは静置後に結晶化した。
【0102】
1H NMR(300MHz,CDCl3):δH 5.60(2H,s,CH2)、7.24(2H,m,2xArH)、7.32(3H,m,3xArH)、7.74(1H,s,CHArH)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δC 53.8、127.7、128.4、128.8、134.2、141.5。1つの炭素は見られない。
【0103】
実施例3:過酢酸酸化剤を用いた[123I]−ヨードアセチレンの製造及び蒸留
【0104】
【化23】

氷上のホイートン(Wheaton)バイアルに、酢酸アンモニウム緩衝液(100μl、0.2M、pH4)、[127I]−ヨウ化ナトリウム(10μl、0.01M水酸化ナトリウム中10mM溶液、1×10-7モル)、[123I]−ヨウ化ナトリウム(10μl、20〜85MBq)、過酢酸(10μl、10mM溶液、1×10-7モル)及びエチニルトリブチルスタンナンのTHF溶液(Sigma−Aldrich社、100μl、0.38mg/ml、1.2×10-7モル)を添加した。最後に、400〜600μlのTHFを添加し、ホイートンバイアルを密封し、反応混合物を室温まで放温した後、逆相HPLC分析に付した。
【0105】
エチニルトリブチルスタンナンの添加から約10分後におけるHPLC分析によれば、75%の放射化学純度(RCP)を有する[123I]−ヨードアセチレンが得られた。図1参照。それより長い保持時間を有する不純物は、123I−ジヨードアセチレンと考えられる。
【0106】
反応混合物を80〜100℃で15〜20分間加熱し、その間に[123I]−ヨードアセチレン及びTHFは短いチューブを通して氷上の回収バイアルに留出させた。この時間後、加熱バイアルの隔壁を通して低流量の窒素を流すことでチューブから残留液体を除去した。図2参照。
【0107】
蒸留から約10分後におけるHPLC分析は、94%のRCPを有する[123I]−ヨードアセチレンを示した。図3参照。
【0108】
実施例4:ヨードゲンチューブを用いた[123I]−ヨードアセチレンの製造
リン酸ナトリウム緩衝液(1ml、pH7.4、25mM)で予め濡らしたヨードゲン管(Thermo Scientific Pierce Protein Research Products社)に、リン酸ナトリウム緩衝液(100μl、pH7.4、25mM)、[127I]−ヨウ化ナトリウム(10μl、0.01M水酸化ナトリウム中10mM溶液、1×10-7モル)及び[123I]−ヨウ化ナトリウム(10μl、18MBq)を添加した。室温で6分間のインキュベーション後、前記反応体を氷上のホイートンバイアルに移し、次いでエチニルトリブチルスタンナンのTHF溶液(Sigma−Aldrich社、38μl、1mg/ml、1.2×10-7モル)を添加した。バイアルを密封し、反応混合物を室温まで放温した後、逆相HPLC分析に付した。
【0109】
エチニルトリブチルスタンナンの添加から約10分後におけるHPLC分析によれば、[123I]−ヨードアセチレンが57%の収率で得られた。
【0110】
実施例5:過酸化水素酸化剤を用いた[123I]−ヨードアセチレンの製造及び精製
氷上のホイートンバイアルに、[127I]−ヨウ化ナトリウム(10μl、0.01M水酸化ナトリウム中10mM溶液、1×10-7モル)、[123I]−ヨウ化ナトリウム(10μl、18MBq)、塩酸(100μl、1M)、過酸化水素(50μl、3%水溶液、4.4×10-5モル)及びエチニルトリブチルスタンナンのTHF溶液(Sigma−Aldrich社、38μl、1mg/ml、1.2×10-7モル)を添加した。バイアルを密封し、反応混合物を室温まで放温した後、逆相HPLC分析に付した。
【0111】
エチニルトリブチルスタンナンの添加から約10分後におけるHPLC分析によれば、[123I]−ヨードアセチレンが85%の収率で得られた。
【0112】
実施例6:1−ベンゼン−4−[123I]−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールの製造(予測例)
【0113】
【化24】

THF中の[123I]−ヨードアセチレン(実施例3、4又は5)を含む冷却したホイートンバイアルに、水、硫酸銅、L−アスコルビン酸ナトリウム及びリン酸ナトリウム緩衝液を添加する。最後にベンジルアジドの溶液を添加し、氷浴を取り除く。必要に応じて加熱しながら、反応物を室温でインキュベートする。水で希釈した後、1−ベンゼン−4−[123I]−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールを逆相HPLC又はSep−Pakカートリッジによって精製する。
【0114】
実施例7:1−ベンゼン−4−[123I]−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールの製造(予測例)
【0115】
【化25】

THF中の[123I]−ヨードアセチレン(実施例3、4又は5)を含む氷上のホイートンバイアルに、ヨウ化銅(I)、L−アスコルビン酸ナトリウム、水及びジイソプロピルエチルアミンを添加する。最後にベンジルアジドの溶液を添加し、氷浴を取り除く。必要に応じて加熱しながら、反応物を室温でインキュベートする。水で希釈した後、1−ベンゼン−4−[123I]−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールを逆相HPLC又はSep−Pakカートリッジによって精製する。
【0116】
実施例8:1−ベンゼン−4−[123I]−ヨード−1H−1,2,3−トリアゾールの製造(予測例)
【0117】
【化26】

銅粉末(−40メッシュ)を仕込んで氷上に配置したホイートンバイアルに、[123I]−ヨードアセチレン(実施例3、4又は5)及びベンジルアジドを添加する。試薬の添加後、氷浴を取り除き、必要に応じて加熱しながら、反応物を室温でインキュベートする。
【0118】
実施例9:放射性ヨウ素化イソキサゾールの製造(予測例)
【0119】
【化27】

123I]−ヨードアセチレン(実施例3、4又は5)を含む冷却した3mlホイートンバイアルに、THF(0.1〜0.5ml)に溶解したニトリルオキシドの溶液を添加する。反応混合物をさらに0℃で15分間撹拌した後、室温まで放温し、すべてのヨードアセチレンが消費されるまでさらに30〜60分間撹拌する。水で希釈した後、[123I]−イソキサゾールをHPLCによって精製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的標的化部分の放射性ヨウ素化方法であって、
(i)次の式(Ia)又は式(Ib)の化合物を用意する段階、及び
【化1】

(ii)クリック環付加触媒の存在下で前記式(Ia)又は式(Ib)の化合物を次の式(II)の化合物と反応させることで、クリック環付加によってそれぞれ次の式(IIIa)又は式(IIIb)のコンジュゲートを得る段階
を含む方法。
【化2】

【化3】

式中、
*はヨウ素の放射性同位体であり、
1は存在しても存在しなくてもよいリンカー基であり、
BTMは生物学的標的化部分である。
【請求項2】
*123I、124I及び131Iから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
BTMが単一のアミノ酸、3〜100量体ペプチド、酵素基質、酵素アンタゴニスト、酵素アゴニスト、酵素阻害剤又はレセプター結合化合物である、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
BTMがRGDペプチドである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
BTMが次式のフラグメントを含むペプチドである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【化4】

【請求項6】
BTMが次の式(A)のペプチドである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【化5】

式中、X1は−NH2又は次式の基である。
【化6】

式中、aは1〜10の整数である。
【請求項7】
Cu(I)触媒が元素態銅を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
元素態銅が0.001〜1mmの範囲内の粒度を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(II)の化合物が、次の式(IIa)の化合物の脱保護によってインサイチュで生成される、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【化7】

式中、M1はアルキン保護基である。
【請求項10】
当該方法が無菌状態で実施される結果、式(IIIa)又は式(IIIb)の生成物が放射性医薬組成物として得られる、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
自動合成装置を用いて実施される、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
次の式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物。
【化8】

式中、I*及びL1は請求項1又は請求項2で定義した通りであり、BTMは請求項1又は請求項3乃至請求項6のいずれか1項で定義した通りである。
【請求項13】
請求項12記載の化合物の有効量を生体適合性キャリヤー媒質と共に含む放射性医薬組成物。
【請求項14】
請求項1で定義した式(II)の化合物の製造方法であって、
(i)酸化剤の存在下で次の式(IV)又は式(V)の前駆体を放射性ヨウ化物イオンの供給物と反応させて次の式(IIb)の化合物を得る段階、及び
(ii)M2がM1基である場合には、脱保護してM1基を除去する段階
を含む方法。
【化9】

式中、M2はH又はM1(ここで、M1は請求項9で定義した通りである。)であり、各Raは独立にC1-4アルキルである。
【化10】

式中、I*は請求項1又は請求項2で定義した通りである。
【請求項15】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法で有用な、次の式(IIb)の化合物。
【化11】

式中、I*は請求項1又は請求項2で定義した通りであり、M2は請求項14で定義した通りである。
【請求項16】
インビボイメージング方法又はインビボ放射線療法で使用するための放射性医薬品の製造における、請求項12又は請求項15記載の化合物の使用。
【請求項17】
請求項1乃至請求項10又は請求項14のいずれか1項記載の方法を実施するための自動合成装置の使用。
【請求項18】
請求項17記載の自動合成装置で使用するのに適した1回使用の無菌カセットであって、請求項1乃至請求項10又は請求項14のいずれか1項記載の方法を実施するために必要な非放射性試薬を無菌の非発熱原性形態で含むカセット。
【請求項19】
ヒト又は動物の身体の画像を生成する方法であって、請求項12記載の化合物又は請求項13記載の組成物を投与する段階、及びPET又はSPECTを用いて前記化合物又は組成物が分布した前記身体の少なくとも一部の画像を生成する段階を含む方法。
【請求項20】
薬物によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、当該方法は請求項12記載の化合物又は請求項13記載の組成物を前記身体に投与する段階及びPET又はSPECTを用いて前記化合物又は組成物が分布した前記身体の少なくとも一部による前記化合物又は組成物の取込みを検出する段階を含んでいて、前記投与及び検出が任意ではあるが好ましくは前記薬物による治療前、治療中及び治療後に実施される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−502400(P2013−502400A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525175(P2012−525175)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062149
【国際公開番号】WO2011/020907
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】