放射線の照射による低分子量のベータグルカンの製造方法及び放射線の照射によって製造された低分子量のベータグルカン
【課題】放射線照射によって低分子量のベータグルカン(beta−glucan)を製造する方法及びそれによって製造された低分子量のベータグルカンを提供する。
【解決手段】本発明の放射線の照射を使用して得られた低分子量のベータグルカンは、すべてのベータグルカン構造が効果的に切片化されて粘度が減少して溶解度が増加し、抗酸化活性及び免疫細胞活性の効果が優れることを確認することにより、機能性食品、化粧品及び医薬品などの原料として有用に使用することができる。
【解決手段】本発明の放射線の照射を使用して得られた低分子量のベータグルカンは、すべてのベータグルカン構造が効果的に切片化されて粘度が減少して溶解度が増加し、抗酸化活性及び免疫細胞活性の効果が優れることを確認することにより、機能性食品、化粧品及び医薬品などの原料として有用に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の照射を使用した低分子量のベータグルカン(beta−glucan)を製造する方法、及びそれによって製造された低分子量のベータグルカンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線の照射とは、非常に多量の放射線を物質に照射することによって化学反応が起きるようにしたり、生物の細胞を破壊したり、または細菌を死滅させる効果を利用した方法の総称である。またガンマ線の照射とは、コバルト−60放射性同位元素から出る短波長の光であるガンマ線を食品や医療用品などにあてることであり、これにより重大な伝染病の細菌や寄生虫及び害虫を完全に死滅させることができる有益で効果的な方法が、ガンマ線照射技術である。ガンマ線は、数センチメートルのコンクリートを透過する程度の高浸透力を有した波長なので、保健医療製品を完全密封した状態で照射処理しても無菌製品を生産することができる。コバルト−60から放出されるガンマ線は、電子のような荷電粒子に比べると、透過力が強いので液体や固体の内部まで照射するのに相応しい。医療器具の殺菌や食品照射目的には、コバルト−60線源が使用されている。牛、豚屠畜血液血漿タンパク質パウダーにガンマ線を照射して衛生的血粉を製造する方法が提示されており(特許文献1)、またとうもろこし澱粉に一定条件のガンマ線を照射して澱粉の物理化学的性質を工程的に変化させる方法が提示されている(特許文献2)。
【0003】
一般的に、放射線照射機は、イリジウム−192等の放射性同位元素をカプセルに内蔵して、それを螺旋が形成された螺旋部材(現場でピッグテール(pig tail)と呼ぶ)、すなわちピッグテールの一端に連結して、ピッグテールの残りの一端にコネクター(connector)を連結した構成からなる放射線源アッセンブリー、該放射線源アッセンブリーを遮蔽状態で内部に保管するためのソースコンテナと、放射線源アッセンブリーと連結して放射線源アッセンブリーを移動させるための制御ケーブルアッセンブリーと、ソースコンテナに連結されて検査時に検査対象物体の位置まで放射線源アッセンブリーを案内するソースガイドチューブ装置からなっている。ソースコンテナには、放射線源の放射線を遮蔽するための放射線遮蔽物質が設置されていて、内部にS字形態の放射線源アッセンブリー保管部が形成されている。制御ケーブルアッセンブリーのチューブ内部とソースガイドチューブ装置のチューブ内部には、ピッグテールが回転しながら移動できるように螺旋が形成されている。制御ケーブルアッセンブリーは、チューブとギア、ハンドルなどから構成されている。前記のような放射線源アッセンブリー、ソースコンテナ、制御ケーブルアッセンブリー、ソースガイドチューブ装置の構成は、一般的な内容であるためここでは詳しく説明しない。前記のような放射線照射機の構成と動作過程は、特許文献3などを参照することにより詳細に理解できる。
【0004】
ベータグルカン(beta−glucan)は、多糖類の一種で、人間の正常な細胞組織の免疫機能を活性化させて癌細胞の増殖と再発を抑制して、免疫細胞の機能を活発にさせるインターロイキン(interleukin)及びインターフェロン(interferon)の生成を促進させる。活性ベータグルカンは、癌細胞がある体内に入って行ってサイトカイン(cytokine)を生産させることで、免疫細胞であるT細胞とB細胞の活動を支援して細胞組織の免疫機能を活性化することができる。
【0005】
ベータグルカンは、微生物、きのこ類または穀類などから抽出して使用されていて、その種類も多様である。ベータグルカンを生産する微生物では、1−3結合ベータグルカンを生産するサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)R4系統(特許文献4)と、1−3結合ベータグルカンを生産するアグロバクテリウム(Agrobacterium)の変異株が知られている(特許文献5)。
【0006】
多糖の一種であるグルカンは、D−グルコースのみを構成糖とするブドウ糖重合体で、連結形態によってベータ(beta)あるいはアルファ(alpha)型に区分される。特に、ベータグルカン(beta−glucan)は、ブドウ糖単位体がベータ(beta)−グリコシド結合により1、3番位置に連結された基本骨格であり、さらに4番(1,4結合)あるいは6番(1,6結合)炭素に側鎖を有し、このような側鎖の有無によって構造的な差異とともに物理化学的性質を左右することが知られている。きのこ、酵母及び植物から分離したベータグルカンは、一般的に広く分布していて、キロ−ダルトン(kilo−Daltons)からメガ−ダルトン(mega−Daltons)までの分子量範囲を有している高分子量多糖類である(非特許文献1)。ベータグルカンは、ゲル化能力と水溶液での高い粘性のため、小規模の食品産業でのみ使用されている(非特許文献2)。また、ベータグルカンは、米国で次世代機能性健康食品として相当な販売量を示しており、1983年米国FDAが規定する一般安全基準(GRAS規格 title 21,vol3)に記載されている。
【0007】
しかし、ベータグルカンは、人体の経口投与時に吸収される割合が相当に低い。これは、ベータグルカンが、基本的な糖単位体が架橋した(cross−linked)重合体を含む巨大な分子で成り立っているからである。ベータグルカンは、水に不溶性で抗酸化的特徴があり、経口投与時に巨大な分子量のために胃での吸収が妨げられる。このように巨大分子のベータグルカンの吸水性は、巨大な分子を消化する胃腸内部経路での特定酵素の不足のために低い。これは、分子量が大きくて、水に不溶性であるグルカン前駆体が免疫調節因子として効率的になるために、高い濃度で特定受容体に結合して、細胞内に吸収されることがうまくいかないためと考えられる。
【0008】
また、ベータグルカンの高い粘性は、機能性食品の添加剤として難しさを有している。例えば、麦芽製造を妨害して、麦汁の分離を阻害し、ビールのろ過分離、ソース、サラダドレッシング及びアイスクリーム生産を難しくして、好ましくない沈殿物を形成する(非特許文献3)。このような食品添加剤としての使用が難しいのは、ベータグルカンの高い粘度のためである(非特許文献4)。ベータグルカンの高い粘度は、分子量及び高い濃度に関連がある(非特許文献5)。そのため、多糖類への特別な分子量の適用が求められている。
【0009】
ベータグルカンを食品及び医薬品などに多様に使用するためには、分子量が低く、水に対する水溶性及び吸水性増加だけではなく、免疫学的反応に効率的なベータグルカンが求められている。したがって、分子量が相対的に小さくて水溶性であり、適切な受容体に最適に結合して、胃腸内壁での全体的な吸収を高めるためのベータグルカンを製造する方法が求められ、人体での免疫学的機能が向上した免疫調節因子として、低分子量のベータグルカンが求められている。
【0010】
先行研究において高分子は、酸処理(非特許文献6)、酵素処理、物理的処理(非特許文献7)によって、ベータグルカンの分子量を減少させることができた。しかし、このような方法は、初期反応に添加物を使用し、そして副生成物(side products)を形成するため、より多くの精製が必要である。
【0011】
しかし、ガンマ線照射技術は、初期反応における添加物使用及び副生成物の形成がないため、前記の方法より簡単であり、さらに環境親和的である。ガンマ線照射技術の重要な長所は、照射された物質の最終生物学的滅菌であり(非特許文献8)、生物学的商品製造のために容易に使用することができることである。高分子を低分子化させる放射線の重要な長所は、化学的反応試薬の添加とその他の温度、環境、添加物の調節のような特別な操作を必要とせずに、再現性と量的変化を促進する能力を有していることである(非特許文献9)。
【0012】
したがって、本発明の目的は、ベータグルカンをさらに効果的で安全な食品添加剤として使用するために、ガンマ線照射技術を適用して、構造的な特性において短所がなく、粘性と分子量の減少、溶解度及び微生物学的安全性を改善することにある。
【0013】
そこで、本発明者は、低分子量のベータグルカンの製造方法に関して鋭意研究し、ベータグルカン溶液にガンマ線を照射すると、ベータグルカンの分子量が減少し、高分子量のベータグルカンより放射線の照射によって得られた低分子量のベータグルカンが粘性が減少して溶解度が増加し、還元糖変化能、抗酸化性、脾臓細胞増殖能及びサイトカイン(cytokine)分泌量などが増加するということを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成した。
【特許文献1】韓国特許10−0458965号
【特許文献2】韓国特許10−0156439号
【特許文献3】韓国特許公開番号2003−0029317号
【特許文献4】米国特許第5、504、079号
【特許文献5】米国特許第5、509、191号
【非特許文献1】1H Yamada,Paulsen,B.S.(Ed),Proceedings of the Phythochemical Society of Europe,2000年,第44巻、15頁
【非特許文献2】Dawkins,N.L.等,Food hydrocolloids,1995年,第9巻,1−7頁
【非特許文献3】Carr,J.M.等,Cereal Chem.,1990年,第67巻,226頁
【非特許文献4】Wood,P.J.,Webster,F.H.(Ed.),Oats: Chemistry and technology,pp.,1986年,121−152頁
【非特許文献5】Beer,M.U.等,Cereal chemistry,1996年,第73巻,58−62頁
【非特許文献6】Hasegawa等,Carbohydr.Polym.,1993年,第20(4)卷,279−283頁
【非特許文献7】Ilyina等,Process Biochem.,2000年,第35(6)卷,563−568頁
【非特許文献8】Hugo,Internat.Biodet.Biodegrad.1995年,第36(3.4)卷,197−217頁
【非特許文献9】Charlesby,Radiat.Phys.Chem.,1981年,第18(1.2)卷,59−66頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、放射線照射を使用した低分子量のベータグルカン(beta−glucan)を製造する方法、及びそれによって製造された低分子量のベータグルカンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は放射線の照射を使用して低分子量のベータグルカンを製造する製造方法を提供する。
【0016】
また本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを提供する。
【0017】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用薬学的組成物を提供する。
【0018】
また本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、免疫増進方法を提供する。
【0019】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0020】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、抗酸化用組成物を提供する。
【0021】
さらに本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、抗酸化方法を提供する。
【0022】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンの抗酸化用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0023】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用健康食品を提供する。
【0024】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用健康食品の製造のための使用を提供する。
【0025】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、アトピー予防及び改善用機能性化粧品を提供する。
【0026】
また本発明は、有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、アトピー予防及び改善方法を提供する。
【0027】
同時に本発明は、前記低分子量のベータグルカンのアトピー予防及び改善用機能性化粧品の製造のための使用を提供する。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明の低分子量のベータグルカンは、下記の工程からなる製造方法によって製造される。
1)ベータグルカンを溶媒に溶解する工程、及び
2)工程1)の溶解物に放射線を照射照射する工程。
【0030】
前記製造方法において、工程1)のベータグルカンは、微生物、きのこ類または穀類などから得ることができ、または市販されているベータグルカンを購入して使用することができる。
【0031】
前記製造方法において、工程1)の溶媒は、蒸留水、緩衝溶液、培養液またはアルコールを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、またこれらを2種以上組み合わせて使用しても良い。本発明の実施例では蒸留水を使用した。
【0032】
前記製造方法において、工程2)の放射線は、放射線源にガンマ線、電子線またはX−線を使用することができ、ガンマ線を使用することが好ましいが(Dauphin JF等,Elsevier Scientific,131−220頁)、これらに限定されるものではなく、またこれらを2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0033】
前記ガンマ線は、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90またはセシウム(Cs)−137等の放射性同位元素から放出されるガンマ線を使用して照射することが好ましく、コバルト(Co)−60放射線同位元素から放出されることがさらに好ましいが、これらに限定されるものではなく、またこれらを2種以上組み合わせて使用しても良い。前記放射線の吸収線量は10〜100kGyであることが好ましく、30〜50kGyであることがさらに好ましいが、これに限定されない。100kGy以上の線量では、ベータグルカンの分子量が減少しすぎて所望する免疫活性が示されず、10kGy以下では分子量の減少が微小に現れるため前記のような吸収線量を設定した。
【0034】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、分子量が1kDa〜100kDaであることが好ましく、25〜60kDaであることがさらに好ましいが、これに限定されない。本発明の実施例では、ベータグルカンの分子量を測定した結果、ベータグルカンの非照射区の分子量は170kDa以上を示す一方、ベータグルカンにガンマ線の照射を10及び30kGyした場合、30〜60kDa範囲に分子量が減少し、50kGy以上のガンマ線の照射では、25kDa以下の分子量のベータグルカンが得られたことを確認することで、ガンマ線の照射によって、多糖類であるベータグルカンの一定部分が分解されて低分子化されたことを確認することができた。
【0035】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを提供する。
【0036】
酵素処理は、ベータグルカンを低分子化するのに効果的であり、ベータ−1,3−グルカン及びベータ−1,4−グルカン構造は分解が容易であるが、ベータ−1,6−グルカン構造を切断することはとても難しい。しかし、放射線照射技術では、すべての構造をランダムに分解することができた。したがって、放射線の照射によって得られた低分子化されたベータグルカンは、酵素処理とは異なる分子構造を有するようになる(Ilyina,A.V.等,Process Biochem.2000年,第35(6)卷,563−568頁;Shimokawa,T.等,Biosci.Biotech.Biochem.,1996年,第60(9)卷,1532−1534頁)。
【0037】
本発明の実験例では、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンの粘度、溶解度及び還元糖を測定した。その結果、照射された低分子量のベータグルカンの粘度は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにしたがって減少し、50kGyで顕著に減少した。このような多糖類の粘度変化は、ガンマ線照射線量に依存した多糖類分子の切断現象のためであることが知られている。また、照射された低分子量のベータグルカンの溶解度は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにしたがって増加し、50kGyで著しく増加した。このようなガンマ線の照射による溶解度増加は、分子構造の破壊と変性によって低分子粒子を生成するためであることが知られている(Graham,J.A.等,Journal of Science Food Agriculture,2002年,第82巻,1599−1605、頁)。併せて、照射されたベータグルカンの還元糖は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにつれて増加し、50kGyで著しく増加した。還元糖が増加したということは、ポリマーが放射線に影響を受けて切断されたことを意味し、切断された糖の末端部位の、すなわち還元力を有した部位を測定したものである。したがって、還元糖含量の増加は、解重合反応(depolymerization)により、グルコースのような低分子量の糖が生成されたためであることが分かる。
【0038】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンのすべてのベータグルカンの構造が無作為に断片化されたことを特徴とする。すなわち、酵素処理は、ベータ−1,3−グルカン及びベータ−1,4−グルカンの構造のような弱い構造は容易に分解するが、ベータ−1,6−グルカンの構造は分解するのが難しい。しかし、放射線の照射は、このようなベータ−1,6−グルカンの構造も容易に切断をすることができる。
【0039】
本発明の実験例では、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量を測定した結果、照射されたベータグルカンは、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量がすべて減少した。しかし、酵素や酸処理の方法は、ベータ−1,6−ベータ−1,3−グルカン(beta−1,6−beta−1,3−glucans)を、効果的に加水分解することが難しいと報告されている(Shin,H.J.等,J.biotechnol.Bioeng.,2003年,第18(5)卷,352−355頁)。したがって、放射線の照射によって任意的にグルカン構造が切断されたベータグルカンを得ることができるという事実を確認することができた。
【0040】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用薬学的組成物を提供する。
【0041】
また本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、免疫増進方法を提供する。
【0042】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0043】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、脾臓細胞のT細胞活性を増加させることを特徴とする。本発明の実験例では、試験管内及び生体内においてベータグルカンによるT細胞活性への効果を測定した結果、照射されたベータグルカンによるT細胞活性の変化は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにつれて増加し、特に、50kGyの放射線量で照射されたベータグルカンが、T細胞活性を著しく増加することを確認した。
【0044】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、脾臓細胞のサイトカインの分泌を増加させることを特徴とする。本発明の実験例では、試験管内及び生体内においてベータグルカンによるサイトカイン分泌能への効果を測定した結果、照射されたベータグルカンにより、Th1から分泌されるサイトカインであるIFN−r及びIL−2は、ベータグルカンへのガンマ線の照射が増加するにつれて、有意的にサイトカイン分泌が増加することを確認することができた。
【0045】
ゆえに、本発明による放射線が照射された低分子量のベータグルカンが、優れた免疫調節機能を有するという事実が分かった。
【0046】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、抗酸化用組成物を提供する。
【0047】
また本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、抗酸化方法を提供する。
【0048】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンの抗酸化用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0049】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、DPPHラジカル消去能力が増加することを特徴とする。本発明の実験例では、DPPHラジカル消去能力を測定した結果、照射されたベータグルカンのDPPHラジカル消去能力が高く示され、照射線量が増加するにつれて有意的に増加した。
【0050】
本発明の前記低分子量のベータグルカンを医薬品に使用する場合、 同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上を追加して含むことができる。
【0051】
前記低分子量のベータグルカンは、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能で、一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
【0052】
すなわち、本発明の低分子量のベータグルカンは、実際の臨床投与時に経口及び非経口の様々な剤形で投与することができ、製剤化する場合には普通に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の低分子量のベータグルカンに少なくとも1種以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウムタルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤では、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられ、一般的に使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に、さまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤ではプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐薬の基材では、硬化油脂(witepsol)、マクロゴ−ル、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0053】
低分子量のベータグルカンの投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度によってその範囲が多様であり、一日投与量は、低分子量のベータグルカンの量を基準に、0.1〜100mg/kgであり、好ましくは30〜86mg/kgであり、さらに好ましくは50〜60mg/kgであり、一日に1〜6回投与することができる。
【0054】
本発明の低分子量のベータグルカンは、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0055】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用健康食品を提供する。
【0056】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用健康食品の製造のための使用を提供する。
【0057】
本発明の前記低分子量のベータグルカンを食品添加物に使用する場合、前記低分子量のベータグルカンをそのまま添加したり他の食品または食品成分とともに使用したりすることができ、通常的な方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)によって相応しく決定することができる。一般的に、食品または飲料の製造時に本発明の組成物は、原料に対して15重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で添加される。しかし、健康及び衛生を目的とするまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でもよく、安全性面で何らの問題がないので、有効成分は前記範囲以上の量でも使用することができる。
【0058】
前記食品の種類には、特別な制限がない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含んだ酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、一般的な意味での健康食品をすべて含む。
【0059】
本発明の健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キリシトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味料としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味料や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味料などを使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100ml当たり一般的に約0.01〜0.04gであり、好ましくは約0.02〜0.03gである。
【0060】
前記の他に本発明の低分子量のベータグルカンは、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ぺクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。その他に本発明の低分子量のベータグルカンは、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は、独立的にまたは混合して使用することができる。このような添加剤の割合は、本発明の低分子量のベータグルカン100重量部当たり0.01〜0.1重量部の範囲で選択することが一般的である。
【0061】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含むアトピー予防及び改善用機能性化粧品を提供する。
【0062】
また本発明は、有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、アトピー予防及び改善方法を提供する。
【0063】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンのアトピー予防及び改善用機能性化粧品の製造のための使用を提供する。
【0064】
ベータグルカンは、免疫機能増進作用を通じて皮膚炎症緩和、補湿作用効果を示してアトピー疾患の予防及び改善効果がある(pillai,R.等,Research Disclosure,2005年,第499巻,1278−1279頁)。本発明は、巨大分子であるベータグルカンを低分子量に製造して、経皮での吸収率が増大するので、アトピー疾患の予防及び改善用機能性化粧品として有用に使用することができる。
【0065】
本発明の前記低分子量のベータグルカンを化粧品に使用する場合、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含んで製造される化粧品は、一般的な乳化剤形及び可溶化剤形の形態で製造することができる。乳化剤形の化粧品では、栄養化粧水、クリーム、エッセンスなどがあり、可溶化剤形の化粧品では柔軟化粧水がある。
【0066】
相応しい化粧品の剤形では例えば、溶液、ゲル、固体または練り無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)、非イオン型の小滴分散剤の形態、クリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシーラーステックの形態で提供することができる。また、泡沫(foam)の形態または圧縮された推進剤をさらに含んだエアゾール組成物の形態でも製造することができる。
【0067】
また、前記化粧品は、本発明の低分子量のベータグルカンに追加で脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封止剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮蔽剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小滴または化粧品に通常的に使用される任意の他の成分のような化粧品学分野で通常的に使用される補助剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0068】
本発明によるガンマ線の照射による低分子量のベータグルカンは、粘度が減少して水溶性が増加する物理的特性と抗酸化活性、脾臓細胞増殖とサイトカインの分泌能が増加するなどの優れた生物学的特性によって、食品、医薬品及び化粧品素材として有用に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、本発明を実施例、実験例及び製剤例によって詳細に説明する。
【0070】
但し、下記実施例、実験例及び製剤例は、本発明を具体的に例示するものであって、本発明の内容が実施例、実験例及び製剤例によって限定されるものではない。
【0071】
<実施例>ガンマ線の照射による低分子量のベータグルカンの製造
本発明で使用されたベータグルカンは、エースバイオテック(ACE BIOTECH;韓国)から購入した。ベータグルカン試料は、白パウダー形態でポリサッカライドの含量は、97.2%であり、ベータグルカンの含量は80%以上である。蒸留水にベータグルカンを10%濃度(w/v)で溶解して実験に使用した。
【0072】
多様な濃度に製造されたベータグルカン試料は、韓国原子力研究院井邑放射線科学研究所のコバルト−60放射線の照射装置(cobalt−60 irradiator)から照射された。線源の大きさは、約100kCiであり、線量率は時間当り10kGyだった。吸収線量の確認は、5mm直径アラニン線量計(diameter alanine dosimeters)(Bruker Instruments,Rheinstetten,ドイツ)で行い、線量測定(Dosimetry)システムは、国際原子力機関(IAEA)の規格に準用して標準化した後に使用し、適用された照射線量は、室温で0、10、30及び50kGyで照射した。
【0073】
<実験例1>分子量測定
ガンマ線の照射後ベータグルカンの分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography,GPC)を使用して測定した。GPCは、ウォーターズ515ポンプ(Waters 515 pump)、2×PLaqagel OH混合した(7.8×300mm)カラム、ウォーターズ2410屈折率検出器(Waters 2410 refractive index detector)のウォーターズ(Waters)GPCシステム装備を使用した。試料は、10mg/mlの濃度で水に希釈した後、100μlを投与した。カラム(Column)は、1.0ml/分の流速で40℃で作動した。分子量分布は、0.1%w/wの濃度で多様なデキストランを使用して較正(calibration)した。分子量計算のための分析は、ミレニアム(Millennium)3.05.01を使用した。
【0074】
図1は、ガンマ線の照射によるベータグルカンの分子量を示したものである。非照射されたベータグルカンの分子量は、178,035Daである。一方、10、30、50kGyでガンマ線照射されたベータグルカンの分子量は、それぞれ61,962Da、32,004Da、24,822Daに分子量が減少した。事前に調査した研究報告書によると、ベータグルカンの分子量が100kDa以上なら高分子で、50kDa以下ならば低分子であると知られている(Bohn,J.A.等,Carbohydrate Polymers.,1995年,第28(1)卷,3−14頁)。ガンマ線によるこのような変化は、グリコシド結合(glycosidic bond)の破壊によって分子の作用基(functional group)中で変化が起きるからであると判断され、グリコシド結合の分裂によって起きる分子量の大きな減少は、低分子量の糖を形成すると報告されている(Sokhey,A.S.等,Food Struct.1983年,第12巻,397−410頁)。
【0075】
<実験例2>粘度測定
ガンマ線照射されたベータグルカンの粘度は、S21番スピンドルを使用して180rpmでブルックフィールド粘度計(Brookfield viscometer)(DV−II+pro,Brook−field Engineering Laboratories,MA,米国)で測定した。粘度は、室温で測定した。
【0076】
図2は、ガンマ線照射されたベータグルカンの粘度を示した。照射線量が増加するにつれてベータグルカン溶液の粘度は減少する傾向を見せた。非照射されたベータグルカン溶液の粘度は、191.93(cp)で示され、10及び30kGyでガンマ線照射されたベータグルカン溶液の粘度は、135.5(cp)及び75.81(cp)に減少し、50kGyで照射したベータグルカンの粘度は、43.9(cp)に粘度が減少した。
【0077】
<実験例3>溶解度測定
ガンマ線照射されたベータグルカンの水溶性は、ベータグルカン溶液を凍結乾燥して凍結乾燥されたベータグルカン試料を20分間蒸留水に溶解した後、3500rpmで20分間遠心分離して上澄み液を得る。その次に、分離した上澄み液を2時間100℃で乾燥した後、乾燥した試料の重さを測定した。
【0078】
溶解度(%)={(お皿+溶解後乾燥した試料)−お皿}/凍結乾燥された試料×100
【0079】
図3は、ガンマ線照射されたベータグルカンの溶解度を示した。非照射されたベータグルカンの溶解度は、51.23%と示され、10及び30kGyの低い線量でガンマ線照射されたベータグルカンは、55.76%及び75.81%に溶解度が増加した。50kGyで照射したベータグルカンの溶解度は81.72%であり、非照射区と比べた時、溶解度が最も大きく増加したことが示された。
【0080】
<実験例4>還元糖測定
還元糖は、3,5−ジニトロサリチル酸(3、5−dinitrosalicylic acid)(DNSA)方法(Miller,G.L.1959年)によって測定した。試料1mlを15mlの試験管に移してDNSA試薬(ジニトロサリチル酸0.5g、水酸化ナトリウム8g、ロッシェル塩150gを蒸留水500mlに溶解)2mlを添加した。その混合溶液を5秒間混合して、90℃で10分間反応させた後、冷却した。試料の還元糖数値は、スペクトロフォトメーター(spectrophotometer)(UV−1601 PC,Shimadzu Co.,東京,日本)を使用して550nmで測定した。
【0081】
図4は、ガンマ線照射されたベータグルカンの還元糖を測定した。ベータグルカン還元糖のR2値が0.9383の時、非照射区ベータグルカンの還元糖は0.917%である一方、10及び30kGyの低い線量でガンマ線照射されたベータグルカンでは、それぞれ1.128%及び1.973%に還元糖が増加した。50kGyで照射したベータグルカンの溶解度は、非照射区と低いガンマ線照射区とを比較した時、2.173%で最も大きく増加した。
【0082】
<実験例5>ベータグルカン構造変化
ガンマ線照射されたベータグルカンは、濃縮された塩酸(37%,10N)に溶解した後、100℃で2時間1.3N HClで加水分解した。酸加水分解したベータグルカンは、ベータ−D−グルコース分析キット(beta−D−glucose assay kit)(Megazyme International Ireland Limt.から購入)を使用して、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量を測定した。
【0083】
表1は、放射線の照射によって低分子化されたベータグルカンにおけるベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量を示した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に見られるように、放射線の照射によって得られた低分子量のベータグルカンは、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量がすべて減少した。したがって、放射線の照射によって任意的にグルカン構造を切断したベータグルカンを得られる事実を確認することができた。
【0086】
<実験例6>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの試験管内(in vitro)T細胞活性測定
脾臓細胞増殖能力は、MTT(3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl]−2,5−diphenyl trtrazolium bromide)によって測定した。PBSを使用して5mg/mlの濃度になるように溶解したMTT溶液は、24時間培養された脾臓細胞に30μlを入れて37℃のインキュベーターで2時間反応をさせた後、遠心分離した。上澄み液を除去して、100μlのジメチルスルホキシド(DMSO,Sigma)を入れて細胞を溶解させた後、37℃のインキュベーターに5分間放置して、マイクロプレートエリサリーダー(microplate ELISA reader)を使用して595nmで吸光度を測定した。
【0087】
図5では、ガンマ線の照射によるベータグルカンのT細胞活性を示した。マウスの脾臓細胞のT細胞活性は、脾臓細胞を非照射区と照射されたベータグルカンで処理した後、24時間培養後、MTT分析によって測定した。非照射のベータグルカンより、本発明の照射されたベータグルカンとともに培養した脾臓細胞中のT細胞活性が、大きく増加することを観察することができた。0、10、30及び50kGyで照射されたベータグルカンで処理したマウスの脾臓細胞T細胞活性値は、それぞれ109、116、122及び127%であることが確認でき、50kGyで照射されたベータグルカンで処理された脾臓細胞のT細胞活性が、非照射区と比較した時に、最も高い活性数値であることが確認できた。
【0088】
<実験例7>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの試験管内(in vitro)サイトカイン分泌能測定
サイトカイン分析のために脾臓細胞の単一細胞懸濁液(single cell suspensions)は、ウェル当たり1×106細胞(cells/well)の濃度で96−ウェル組織培養プレート(well tissue cultures plates)に置いた。使用した培地は、最終濃度ウェル当たり1×106細胞に10%牛胎児血清(fetal bovine serum,FBS)、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシンが添加されたRPMI−1640培養液を使用し、5%CO2、37℃で培養した。細胞は、0〜2.5μg/ml濃度のベータグルカンで処理し、24時間培養後に採取した。分析に使用する前まで−70℃に保管した。
【0089】
本発明では、試験管内システム(in vitro system)でTh1から分泌されるサイトカインを用いて、非照射区と照射されたベータグルカンの免疫機能検査を試みた。T細胞(cytotoxic及びTh1)とナチュラルキラー細胞(NK cells)は、インターフェロン−ガンマ(interferon gamma,IFN−r)を分泌する。この主要機能は、捕食細胞の活性因子である。Th1から分泌されるサイトカインの変化は、IL−2及びIFN−ガンマ抗体、及びBD OptEIATMセット(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用するELISA方法によって測定した。図6では、非照射区と照射されたベータグルカンの刺激により脾臓細胞から分泌されるサイトカインであるTh1細胞のIFN−rを測定した。Th1細胞から分泌されるサイトカインであるIFN−rは、非照射区ベータグルカンと比較した時、ガンマ線照射線量が増加するにつれてIFN−rの分泌量が増加することを確認でき、30、50kGyで照射されたベータグルカンが、0、10kGyで照射されたベータグルカンより、サイトカインの分泌量がさらに高く示されることを確認した。
【0090】
図7では、非照射区と照射されたベータグルカンの刺激による、脾臓細胞から分泌するサイトカインであるTh1細胞のIL−2を測定した。IFN−rと同様にTh1細胞から分泌するサイトカインであるIL−2は、非照射区ベータグルカンと比較した時、ガンマ線照射線量が増加するにつれてIFN−rの分泌量が顕著に増加することを確認することができ、30、50kGyで照射されたベータグルカンが、0、10kGyで照射されたベータグルカンより、サイトカインの分泌量がさらに高く示されることを確認することができた。
【0091】
<実験例8>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの試験管内(in vitro)DPPH(2,2−Diphenyl−1−picryl−hydrazyl)ラジカル消去能力測定
本発明によるガンマ線が照射されたベータグルカンのラジカル消去能力は、アマロウィクズ(Amarowicz)などの方法で測定した(Amarowicz,R.等,Food Chemistry,2004年,第84巻,4,551−562頁)。
【0092】
図8では、ガンマ線照射されたベータグルカンの抗酸化効果を示した。ガンマ線の照射処理されたベータグルカンのDPPHラジカル消去能力は、処理されたベータグルカンのすべての濃度で非照射区ベータグルカンより高く示され、この実験結果より、ガンマ線照射線量が増加するにつれて抗酸化能力は有意的に増加したことを確認することができた。
【0093】
<実験例9>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの生体内(in vivo)T細胞活性測定
本発明でBALB/cマウス(6〜7週)は、オリエント社(Orient Inc.)(Charles River Technology;ソウル,韓国)から購入した。マウスは、22±2℃の室内温度と12時間間隔で夜と昼が変化する飼育場のポリカーボネートケージ(polycarbonate cage)で飼育し、飼料と水を自由に与えながら飼育した。動物は、非照射区(normal control)、0kGy、10kGy、30kGy、50kGyで処理された5グループに分類して、7日間50mg/kg体重の濃度で経口投与して実験を進めた。マウスの脾臓を分離した後、脾臓細胞を分析する前にRPMI培養液中に直ちに維持させた。本発明での動物実験は、国内農林部の「動物保護法令(Animal Care Act)」にしたがって行った。
【0094】
脾臓リンパ球(Spleenic lymphocytes)は、マウスの脾臓(female BALB/c mice)から一般的な分裂方法で獲得した。脾臓細胞(Splenocytes)は、37℃の5%CO2インキュベーターでRPMI−1640培養液と10%牛胎児血清(fetal bovine serum)、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシンとともに維持させた。
【0095】
図9では、非照射区と照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性を測定した。本発明では、生体内(in vivo)で脾臓細胞の免疫調節を調べるために、マウスの脾臓細胞活性測定は、非照射区と照射されたベータグルカンを7日間投与したマウスの脾臓細胞を24時間培養後、MTT分析で細胞活性を測定した。非照射区と照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性は、非照射区と比較した時、活性が高いことを確認することができた。10kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性数値は128.5%であり、30及び50kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性数値は139.3%及び183.8%と大きく増加したことを確認した。
【0096】
<実験例10>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの生体内(in vivo)サイトカイン分泌能測定
本発明では、生体内(in vivo)で非照射区と照射されたベータグルカンの免疫刺激機能を調べるために実験を進めた。Th1から分泌されるサイトカインは、ELISA方法によって測定した。図10と図11では、非照射区と照射されたベータグルカンの刺激による脾臓細胞から分泌されるサイトカインであるTh1細胞のIFN−r及びIL−2を測定した。
【0097】
Th1から分泌されるサイトカインであるIFN−r及びIL−2は、ベータグルカンへのガンマ線の照射が増加するにつれて、有意的にサイトカイン分泌が増加することを確認することができた。7日間50kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスのサイトカイン分泌量は、対照区と10、30kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスと比較して、最も多い量のサイトカインを分泌した。
【0098】
下記に本発明の低分子量のベータグルカンのための製剤例を例示する。
【0099】
<製剤例1>:薬学的製剤の製造
【0100】
1.散剤の製造
低分子量のベータグルカン 2g
乳糖 1g
前記の成分を混合して気密包に充填して散剤を製造した。
【0101】
2.錠剤の製造
低分子量のベータグルカン 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法にしたがって打錠して錠剤を製造した。
【0102】
3.カプセル剤の製造
低分子量のベータグルカン 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法にしたがってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0103】
4.丸薬の製造
低分子量のベータグルカン 1g
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、通常の方法によって1丸当たり4gになるように製造した。
【0104】
5.顆粒の製造
低分子量のベータグルカン 150mg
大豆抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
澱粉 600mg
前記の成分を混合した後、30%エチルアルコール100mgを添加し、60℃で乾燥して顆粒を形成した後、包みに充填した。
【0105】
<製剤例2>:食品の製造
本発明の低分子量のベータグルカンを含む食品を、次のように製造した。
【0106】
1.料理用薬味の製造
本発明の低分子量のベータグルカン20〜95重量部で、健康増進用料理用薬味を製造した。
【0107】
2.小麦粉食品の製造
本発明の低分子量のベータグルカン0.5〜5.0重量部を小麦粉に添加して、その混合物を使用してパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して、健康増進用食品を製造した。
【0108】
3.スープ及び肉汁(gravies)の製造
本発明の低分子量のベータグルカン0.1〜5.0重量部をスープ及び肉汁に添加して、健康増進用肉加工製品、麺類のスープ及び肉汁を製造した。
【0109】
4.牛挽肉(ground beef)の製造
本発明の低分子量のベータグルカン10重量部を牛挽肉に添加して、健康増進用牛挽肉を製造した。
【0110】
5.乳製品(dairy products)の製造
本発明の低分子量のベータグルカン5〜10重量部を牛乳に添加し、該牛乳を使用してバター及びアイスクリームのような多様な乳製品を製造した。
【0111】
6.禅食の製造
玄米、麦、もち米、ハト麦を公知の方法でアルファ化させて乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末にして製造した。
【0112】
黒豆、黒ごま、えごまも公知の方法で蒸して乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末にして製造した。
【0113】
本発明の低分子量のベータグルカンを真空濃縮器で減圧濃縮して、噴霧、熱風乾燥器で乾燥して得た乾燥物を粉砕機で粒度60メッシュに粉砕して乾燥粉末を得た。
【0114】
前記で製造した穀物類、種実類及び低分子量のベータグルカンの乾燥粉末を、次の割合で配合して製造した。
【0115】
穀物類(玄米30重量部、ハト麦15重量部、麦20重量部)、
種実類(えごま7重量部、黒豆8重量部、黒ごま7重量部)、
低分子量のベータグルカンの乾燥粉末(3重量部)、
霊芝(0.5重量部)、
地黄(0.5重量部)。
【0116】
<製剤例3>:飲料の製造
【0117】
1.健康飲料の製造
低分子量のベータグルカン 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅の実濃縮液 2g
タウリン 1g
精製水を加えて全体 900ml
通常の健康飲料製造方法によって前記の成分を混合した後、約1時間85℃で撹拌加熱して、できた溶液をろ過して滅菌した2l容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管して、本発明の健康飲料組成物製造に使用した。
【0118】
前記組成比は、比較的嗜好飲料に相応しい成分を好ましい実施例で混合組成したが、需要者の階層、需要者の国、使用用途など地域的、民族的嗜好度によってその配合比を任意に変形実施してもかまわない。
【0119】
2.野菜ジュースの製造
本発明の低分子量のベータグルカン5gを、トマトまたはにんじんジュース1,000mlに加えて、健康増進用野菜ジュースを製造した。
【0120】
3.果物ジュースの製造
本発明の低分子量のベータグルカン1gを、リンゴまたはブドウジュース1,000mlに加えて、健康増進用果物ジュースを製造した。
【0121】
<製剤例4>:低分子量のベータグルカンを使用した化粧品の製造
本発明の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む免疫強化用機能性化粧品を製造することができる。本発明者等は、低分子量のベータグルカンを含む免疫強化用機能性化粧品として、栄養化粧水、クリーム、エッセンスなどの乳化剤形の化粧品及び柔軟化粧水などの可溶化剤形の化粧品を製造した。
【0122】
<1−1>乳化剤形の化粧品製造
表2に記載した組成で乳化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
【0123】
1)1ないし9の原料を混合した混合物を65〜70℃で加熱した。
2)10の原料を前記工程1)の混合物に投入した。
3)11ないし13の原料の混合物を65〜70℃で加熱して完全に溶解させた。
4)前記工程3)を経ながら、前記2)の混合物を徐々に添加して8,000rpmで2〜3分間乳化させた。
5)14の原料を少量の水に溶解させた後、前記工程4)の混合物に添加して2分間さらに乳化させた。
6)15ないし17の原料をそれぞれ計量した後、前記工程5)の混合物に入れて30秒間さらに乳化させた。
7)前記工程6)の混合物を乳化後、脱気過程を経て25〜35℃に冷却させることにより乳化剤形の化粧品を製造した。
【0124】
【表2】
【0125】
<1−2>可溶化剤形の化粧品製造
表3に記載した組成で可溶化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
【0126】
1)2ないし6の原料を1の原料(精製水)に入れてミキサーを使用して溶解させた。
2)8ないし11の原料を7の原料(アルコール)に入れて完全溶解させた。
3)前記工程2)の混合物を前記工程1)の混合物に徐々に添加しながら可溶化させた。
【0127】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によるガンマ線の照射による低分子量のベータグルカンは、粘度が減少して水溶性が増加する物理的特性と抗酸化活性、脾臓細胞増殖とサイトカイン(cytokine)の分泌能が増加するなどの優秀な生物学的特性により、食品、医薬品及び化粧品素材として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】ガンマ線の照射によるベータグルカンの分子量減少を示したグラフである。
【図2】ガンマ線の照射によるベータグルカンの粘度減少を示したグラフである。
【図3】ガンマ線の照射によるベータグルカンの溶解度増加を示したグラフである。
【図4】ガンマ線の照射によるベータグルカンの還元糖変化の増加を示したグラフである。
【図5】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞のT細胞活性増加(in vitro)を示したグラフである。
【図6】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのINF−r分泌能の増加(in vitro)を示したグラフである。
【図7】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのIL−2分泌能の増加(in vitro)を示したグラフである。
【図8】ガンマ線照射されたベータグルカンの2,2−ジフェニル−1−ピクリル−ヒドラジル(2,2−Diphenyl−1−picryl−hydrazyl、DPPH)ラジカル消去能力の増加を示したグラフである。
【図9】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞のT細胞活性増加(in vivo)を示したグラフである。
【図10】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのINF−r分泌能の増加(in vivo)を示したグラフである。
【図11】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのIL−2分泌能の増加(in vivo)を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の照射を使用した低分子量のベータグルカン(beta−glucan)を製造する方法、及びそれによって製造された低分子量のベータグルカンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線の照射とは、非常に多量の放射線を物質に照射することによって化学反応が起きるようにしたり、生物の細胞を破壊したり、または細菌を死滅させる効果を利用した方法の総称である。またガンマ線の照射とは、コバルト−60放射性同位元素から出る短波長の光であるガンマ線を食品や医療用品などにあてることであり、これにより重大な伝染病の細菌や寄生虫及び害虫を完全に死滅させることができる有益で効果的な方法が、ガンマ線照射技術である。ガンマ線は、数センチメートルのコンクリートを透過する程度の高浸透力を有した波長なので、保健医療製品を完全密封した状態で照射処理しても無菌製品を生産することができる。コバルト−60から放出されるガンマ線は、電子のような荷電粒子に比べると、透過力が強いので液体や固体の内部まで照射するのに相応しい。医療器具の殺菌や食品照射目的には、コバルト−60線源が使用されている。牛、豚屠畜血液血漿タンパク質パウダーにガンマ線を照射して衛生的血粉を製造する方法が提示されており(特許文献1)、またとうもろこし澱粉に一定条件のガンマ線を照射して澱粉の物理化学的性質を工程的に変化させる方法が提示されている(特許文献2)。
【0003】
一般的に、放射線照射機は、イリジウム−192等の放射性同位元素をカプセルに内蔵して、それを螺旋が形成された螺旋部材(現場でピッグテール(pig tail)と呼ぶ)、すなわちピッグテールの一端に連結して、ピッグテールの残りの一端にコネクター(connector)を連結した構成からなる放射線源アッセンブリー、該放射線源アッセンブリーを遮蔽状態で内部に保管するためのソースコンテナと、放射線源アッセンブリーと連結して放射線源アッセンブリーを移動させるための制御ケーブルアッセンブリーと、ソースコンテナに連結されて検査時に検査対象物体の位置まで放射線源アッセンブリーを案内するソースガイドチューブ装置からなっている。ソースコンテナには、放射線源の放射線を遮蔽するための放射線遮蔽物質が設置されていて、内部にS字形態の放射線源アッセンブリー保管部が形成されている。制御ケーブルアッセンブリーのチューブ内部とソースガイドチューブ装置のチューブ内部には、ピッグテールが回転しながら移動できるように螺旋が形成されている。制御ケーブルアッセンブリーは、チューブとギア、ハンドルなどから構成されている。前記のような放射線源アッセンブリー、ソースコンテナ、制御ケーブルアッセンブリー、ソースガイドチューブ装置の構成は、一般的な内容であるためここでは詳しく説明しない。前記のような放射線照射機の構成と動作過程は、特許文献3などを参照することにより詳細に理解できる。
【0004】
ベータグルカン(beta−glucan)は、多糖類の一種で、人間の正常な細胞組織の免疫機能を活性化させて癌細胞の増殖と再発を抑制して、免疫細胞の機能を活発にさせるインターロイキン(interleukin)及びインターフェロン(interferon)の生成を促進させる。活性ベータグルカンは、癌細胞がある体内に入って行ってサイトカイン(cytokine)を生産させることで、免疫細胞であるT細胞とB細胞の活動を支援して細胞組織の免疫機能を活性化することができる。
【0005】
ベータグルカンは、微生物、きのこ類または穀類などから抽出して使用されていて、その種類も多様である。ベータグルカンを生産する微生物では、1−3結合ベータグルカンを生産するサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)R4系統(特許文献4)と、1−3結合ベータグルカンを生産するアグロバクテリウム(Agrobacterium)の変異株が知られている(特許文献5)。
【0006】
多糖の一種であるグルカンは、D−グルコースのみを構成糖とするブドウ糖重合体で、連結形態によってベータ(beta)あるいはアルファ(alpha)型に区分される。特に、ベータグルカン(beta−glucan)は、ブドウ糖単位体がベータ(beta)−グリコシド結合により1、3番位置に連結された基本骨格であり、さらに4番(1,4結合)あるいは6番(1,6結合)炭素に側鎖を有し、このような側鎖の有無によって構造的な差異とともに物理化学的性質を左右することが知られている。きのこ、酵母及び植物から分離したベータグルカンは、一般的に広く分布していて、キロ−ダルトン(kilo−Daltons)からメガ−ダルトン(mega−Daltons)までの分子量範囲を有している高分子量多糖類である(非特許文献1)。ベータグルカンは、ゲル化能力と水溶液での高い粘性のため、小規模の食品産業でのみ使用されている(非特許文献2)。また、ベータグルカンは、米国で次世代機能性健康食品として相当な販売量を示しており、1983年米国FDAが規定する一般安全基準(GRAS規格 title 21,vol3)に記載されている。
【0007】
しかし、ベータグルカンは、人体の経口投与時に吸収される割合が相当に低い。これは、ベータグルカンが、基本的な糖単位体が架橋した(cross−linked)重合体を含む巨大な分子で成り立っているからである。ベータグルカンは、水に不溶性で抗酸化的特徴があり、経口投与時に巨大な分子量のために胃での吸収が妨げられる。このように巨大分子のベータグルカンの吸水性は、巨大な分子を消化する胃腸内部経路での特定酵素の不足のために低い。これは、分子量が大きくて、水に不溶性であるグルカン前駆体が免疫調節因子として効率的になるために、高い濃度で特定受容体に結合して、細胞内に吸収されることがうまくいかないためと考えられる。
【0008】
また、ベータグルカンの高い粘性は、機能性食品の添加剤として難しさを有している。例えば、麦芽製造を妨害して、麦汁の分離を阻害し、ビールのろ過分離、ソース、サラダドレッシング及びアイスクリーム生産を難しくして、好ましくない沈殿物を形成する(非特許文献3)。このような食品添加剤としての使用が難しいのは、ベータグルカンの高い粘度のためである(非特許文献4)。ベータグルカンの高い粘度は、分子量及び高い濃度に関連がある(非特許文献5)。そのため、多糖類への特別な分子量の適用が求められている。
【0009】
ベータグルカンを食品及び医薬品などに多様に使用するためには、分子量が低く、水に対する水溶性及び吸水性増加だけではなく、免疫学的反応に効率的なベータグルカンが求められている。したがって、分子量が相対的に小さくて水溶性であり、適切な受容体に最適に結合して、胃腸内壁での全体的な吸収を高めるためのベータグルカンを製造する方法が求められ、人体での免疫学的機能が向上した免疫調節因子として、低分子量のベータグルカンが求められている。
【0010】
先行研究において高分子は、酸処理(非特許文献6)、酵素処理、物理的処理(非特許文献7)によって、ベータグルカンの分子量を減少させることができた。しかし、このような方法は、初期反応に添加物を使用し、そして副生成物(side products)を形成するため、より多くの精製が必要である。
【0011】
しかし、ガンマ線照射技術は、初期反応における添加物使用及び副生成物の形成がないため、前記の方法より簡単であり、さらに環境親和的である。ガンマ線照射技術の重要な長所は、照射された物質の最終生物学的滅菌であり(非特許文献8)、生物学的商品製造のために容易に使用することができることである。高分子を低分子化させる放射線の重要な長所は、化学的反応試薬の添加とその他の温度、環境、添加物の調節のような特別な操作を必要とせずに、再現性と量的変化を促進する能力を有していることである(非特許文献9)。
【0012】
したがって、本発明の目的は、ベータグルカンをさらに効果的で安全な食品添加剤として使用するために、ガンマ線照射技術を適用して、構造的な特性において短所がなく、粘性と分子量の減少、溶解度及び微生物学的安全性を改善することにある。
【0013】
そこで、本発明者は、低分子量のベータグルカンの製造方法に関して鋭意研究し、ベータグルカン溶液にガンマ線を照射すると、ベータグルカンの分子量が減少し、高分子量のベータグルカンより放射線の照射によって得られた低分子量のベータグルカンが粘性が減少して溶解度が増加し、還元糖変化能、抗酸化性、脾臓細胞増殖能及びサイトカイン(cytokine)分泌量などが増加するということを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成した。
【特許文献1】韓国特許10−0458965号
【特許文献2】韓国特許10−0156439号
【特許文献3】韓国特許公開番号2003−0029317号
【特許文献4】米国特許第5、504、079号
【特許文献5】米国特許第5、509、191号
【非特許文献1】1H Yamada,Paulsen,B.S.(Ed),Proceedings of the Phythochemical Society of Europe,2000年,第44巻、15頁
【非特許文献2】Dawkins,N.L.等,Food hydrocolloids,1995年,第9巻,1−7頁
【非特許文献3】Carr,J.M.等,Cereal Chem.,1990年,第67巻,226頁
【非特許文献4】Wood,P.J.,Webster,F.H.(Ed.),Oats: Chemistry and technology,pp.,1986年,121−152頁
【非特許文献5】Beer,M.U.等,Cereal chemistry,1996年,第73巻,58−62頁
【非特許文献6】Hasegawa等,Carbohydr.Polym.,1993年,第20(4)卷,279−283頁
【非特許文献7】Ilyina等,Process Biochem.,2000年,第35(6)卷,563−568頁
【非特許文献8】Hugo,Internat.Biodet.Biodegrad.1995年,第36(3.4)卷,197−217頁
【非特許文献9】Charlesby,Radiat.Phys.Chem.,1981年,第18(1.2)卷,59−66頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、放射線照射を使用した低分子量のベータグルカン(beta−glucan)を製造する方法、及びそれによって製造された低分子量のベータグルカンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は放射線の照射を使用して低分子量のベータグルカンを製造する製造方法を提供する。
【0016】
また本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを提供する。
【0017】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用薬学的組成物を提供する。
【0018】
また本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、免疫増進方法を提供する。
【0019】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0020】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、抗酸化用組成物を提供する。
【0021】
さらに本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、抗酸化方法を提供する。
【0022】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンの抗酸化用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0023】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用健康食品を提供する。
【0024】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用健康食品の製造のための使用を提供する。
【0025】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、アトピー予防及び改善用機能性化粧品を提供する。
【0026】
また本発明は、有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、アトピー予防及び改善方法を提供する。
【0027】
同時に本発明は、前記低分子量のベータグルカンのアトピー予防及び改善用機能性化粧品の製造のための使用を提供する。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明の低分子量のベータグルカンは、下記の工程からなる製造方法によって製造される。
1)ベータグルカンを溶媒に溶解する工程、及び
2)工程1)の溶解物に放射線を照射照射する工程。
【0030】
前記製造方法において、工程1)のベータグルカンは、微生物、きのこ類または穀類などから得ることができ、または市販されているベータグルカンを購入して使用することができる。
【0031】
前記製造方法において、工程1)の溶媒は、蒸留水、緩衝溶液、培養液またはアルコールを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、またこれらを2種以上組み合わせて使用しても良い。本発明の実施例では蒸留水を使用した。
【0032】
前記製造方法において、工程2)の放射線は、放射線源にガンマ線、電子線またはX−線を使用することができ、ガンマ線を使用することが好ましいが(Dauphin JF等,Elsevier Scientific,131−220頁)、これらに限定されるものではなく、またこれらを2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0033】
前記ガンマ線は、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90またはセシウム(Cs)−137等の放射性同位元素から放出されるガンマ線を使用して照射することが好ましく、コバルト(Co)−60放射線同位元素から放出されることがさらに好ましいが、これらに限定されるものではなく、またこれらを2種以上組み合わせて使用しても良い。前記放射線の吸収線量は10〜100kGyであることが好ましく、30〜50kGyであることがさらに好ましいが、これに限定されない。100kGy以上の線量では、ベータグルカンの分子量が減少しすぎて所望する免疫活性が示されず、10kGy以下では分子量の減少が微小に現れるため前記のような吸収線量を設定した。
【0034】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、分子量が1kDa〜100kDaであることが好ましく、25〜60kDaであることがさらに好ましいが、これに限定されない。本発明の実施例では、ベータグルカンの分子量を測定した結果、ベータグルカンの非照射区の分子量は170kDa以上を示す一方、ベータグルカンにガンマ線の照射を10及び30kGyした場合、30〜60kDa範囲に分子量が減少し、50kGy以上のガンマ線の照射では、25kDa以下の分子量のベータグルカンが得られたことを確認することで、ガンマ線の照射によって、多糖類であるベータグルカンの一定部分が分解されて低分子化されたことを確認することができた。
【0035】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを提供する。
【0036】
酵素処理は、ベータグルカンを低分子化するのに効果的であり、ベータ−1,3−グルカン及びベータ−1,4−グルカン構造は分解が容易であるが、ベータ−1,6−グルカン構造を切断することはとても難しい。しかし、放射線照射技術では、すべての構造をランダムに分解することができた。したがって、放射線の照射によって得られた低分子化されたベータグルカンは、酵素処理とは異なる分子構造を有するようになる(Ilyina,A.V.等,Process Biochem.2000年,第35(6)卷,563−568頁;Shimokawa,T.等,Biosci.Biotech.Biochem.,1996年,第60(9)卷,1532−1534頁)。
【0037】
本発明の実験例では、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンの粘度、溶解度及び還元糖を測定した。その結果、照射された低分子量のベータグルカンの粘度は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにしたがって減少し、50kGyで顕著に減少した。このような多糖類の粘度変化は、ガンマ線照射線量に依存した多糖類分子の切断現象のためであることが知られている。また、照射された低分子量のベータグルカンの溶解度は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにしたがって増加し、50kGyで著しく増加した。このようなガンマ線の照射による溶解度増加は、分子構造の破壊と変性によって低分子粒子を生成するためであることが知られている(Graham,J.A.等,Journal of Science Food Agriculture,2002年,第82巻,1599−1605、頁)。併せて、照射されたベータグルカンの還元糖は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにつれて増加し、50kGyで著しく増加した。還元糖が増加したということは、ポリマーが放射線に影響を受けて切断されたことを意味し、切断された糖の末端部位の、すなわち還元力を有した部位を測定したものである。したがって、還元糖含量の増加は、解重合反応(depolymerization)により、グルコースのような低分子量の糖が生成されたためであることが分かる。
【0038】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンのすべてのベータグルカンの構造が無作為に断片化されたことを特徴とする。すなわち、酵素処理は、ベータ−1,3−グルカン及びベータ−1,4−グルカンの構造のような弱い構造は容易に分解するが、ベータ−1,6−グルカンの構造は分解するのが難しい。しかし、放射線の照射は、このようなベータ−1,6−グルカンの構造も容易に切断をすることができる。
【0039】
本発明の実験例では、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量を測定した結果、照射されたベータグルカンは、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量がすべて減少した。しかし、酵素や酸処理の方法は、ベータ−1,6−ベータ−1,3−グルカン(beta−1,6−beta−1,3−glucans)を、効果的に加水分解することが難しいと報告されている(Shin,H.J.等,J.biotechnol.Bioeng.,2003年,第18(5)卷,352−355頁)。したがって、放射線の照射によって任意的にグルカン構造が切断されたベータグルカンを得ることができるという事実を確認することができた。
【0040】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用薬学的組成物を提供する。
【0041】
また本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、免疫増進方法を提供する。
【0042】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0043】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、脾臓細胞のT細胞活性を増加させることを特徴とする。本発明の実験例では、試験管内及び生体内においてベータグルカンによるT細胞活性への効果を測定した結果、照射されたベータグルカンによるT細胞活性の変化は、蒸留水に溶解した処理区への放射線の照射線量が増加するにつれて増加し、特に、50kGyの放射線量で照射されたベータグルカンが、T細胞活性を著しく増加することを確認した。
【0044】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、脾臓細胞のサイトカインの分泌を増加させることを特徴とする。本発明の実験例では、試験管内及び生体内においてベータグルカンによるサイトカイン分泌能への効果を測定した結果、照射されたベータグルカンにより、Th1から分泌されるサイトカインであるIFN−r及びIL−2は、ベータグルカンへのガンマ線の照射が増加するにつれて、有意的にサイトカイン分泌が増加することを確認することができた。
【0045】
ゆえに、本発明による放射線が照射された低分子量のベータグルカンが、優れた免疫調節機能を有するという事実が分かった。
【0046】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、抗酸化用組成物を提供する。
【0047】
また本発明は、薬学的に有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、抗酸化方法を提供する。
【0048】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンの抗酸化用薬学的組成物の製造のための使用を提供する。
【0049】
前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンは、DPPHラジカル消去能力が増加することを特徴とする。本発明の実験例では、DPPHラジカル消去能力を測定した結果、照射されたベータグルカンのDPPHラジカル消去能力が高く示され、照射線量が増加するにつれて有意的に増加した。
【0050】
本発明の前記低分子量のベータグルカンを医薬品に使用する場合、 同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上を追加して含むことができる。
【0051】
前記低分子量のベータグルカンは、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能で、一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
【0052】
すなわち、本発明の低分子量のベータグルカンは、実際の臨床投与時に経口及び非経口の様々な剤形で投与することができ、製剤化する場合には普通に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の低分子量のベータグルカンに少なくとも1種以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウムタルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤では、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられ、一般的に使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に、さまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤ではプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐薬の基材では、硬化油脂(witepsol)、マクロゴ−ル、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0053】
低分子量のベータグルカンの投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度によってその範囲が多様であり、一日投与量は、低分子量のベータグルカンの量を基準に、0.1〜100mg/kgであり、好ましくは30〜86mg/kgであり、さらに好ましくは50〜60mg/kgであり、一日に1〜6回投与することができる。
【0054】
本発明の低分子量のベータグルカンは、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0055】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用健康食品を提供する。
【0056】
また本発明は、前記低分子量のベータグルカンの免疫増進用健康食品の製造のための使用を提供する。
【0057】
本発明の前記低分子量のベータグルカンを食品添加物に使用する場合、前記低分子量のベータグルカンをそのまま添加したり他の食品または食品成分とともに使用したりすることができ、通常的な方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)によって相応しく決定することができる。一般的に、食品または飲料の製造時に本発明の組成物は、原料に対して15重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で添加される。しかし、健康及び衛生を目的とするまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でもよく、安全性面で何らの問題がないので、有効成分は前記範囲以上の量でも使用することができる。
【0058】
前記食品の種類には、特別な制限がない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含んだ酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、一般的な意味での健康食品をすべて含む。
【0059】
本発明の健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キリシトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味料としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味料や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味料などを使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100ml当たり一般的に約0.01〜0.04gであり、好ましくは約0.02〜0.03gである。
【0060】
前記の他に本発明の低分子量のベータグルカンは、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ぺクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。その他に本発明の低分子量のベータグルカンは、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は、独立的にまたは混合して使用することができる。このような添加剤の割合は、本発明の低分子量のベータグルカン100重量部当たり0.01〜0.1重量部の範囲で選択することが一般的である。
【0061】
本発明は、前記製造方法によって製造された低分子量のベータグルカンを有効成分として含むアトピー予防及び改善用機能性化粧品を提供する。
【0062】
また本発明は、有効な量の前記低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、アトピー予防及び改善方法を提供する。
【0063】
さらに本発明は、前記低分子量のベータグルカンのアトピー予防及び改善用機能性化粧品の製造のための使用を提供する。
【0064】
ベータグルカンは、免疫機能増進作用を通じて皮膚炎症緩和、補湿作用効果を示してアトピー疾患の予防及び改善効果がある(pillai,R.等,Research Disclosure,2005年,第499巻,1278−1279頁)。本発明は、巨大分子であるベータグルカンを低分子量に製造して、経皮での吸収率が増大するので、アトピー疾患の予防及び改善用機能性化粧品として有用に使用することができる。
【0065】
本発明の前記低分子量のベータグルカンを化粧品に使用する場合、前記低分子量のベータグルカンを有効成分として含んで製造される化粧品は、一般的な乳化剤形及び可溶化剤形の形態で製造することができる。乳化剤形の化粧品では、栄養化粧水、クリーム、エッセンスなどがあり、可溶化剤形の化粧品では柔軟化粧水がある。
【0066】
相応しい化粧品の剤形では例えば、溶液、ゲル、固体または練り無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)、非イオン型の小滴分散剤の形態、クリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシーラーステックの形態で提供することができる。また、泡沫(foam)の形態または圧縮された推進剤をさらに含んだエアゾール組成物の形態でも製造することができる。
【0067】
また、前記化粧品は、本発明の低分子量のベータグルカンに追加で脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封止剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮蔽剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小滴または化粧品に通常的に使用される任意の他の成分のような化粧品学分野で通常的に使用される補助剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0068】
本発明によるガンマ線の照射による低分子量のベータグルカンは、粘度が減少して水溶性が増加する物理的特性と抗酸化活性、脾臓細胞増殖とサイトカインの分泌能が増加するなどの優れた生物学的特性によって、食品、医薬品及び化粧品素材として有用に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、本発明を実施例、実験例及び製剤例によって詳細に説明する。
【0070】
但し、下記実施例、実験例及び製剤例は、本発明を具体的に例示するものであって、本発明の内容が実施例、実験例及び製剤例によって限定されるものではない。
【0071】
<実施例>ガンマ線の照射による低分子量のベータグルカンの製造
本発明で使用されたベータグルカンは、エースバイオテック(ACE BIOTECH;韓国)から購入した。ベータグルカン試料は、白パウダー形態でポリサッカライドの含量は、97.2%であり、ベータグルカンの含量は80%以上である。蒸留水にベータグルカンを10%濃度(w/v)で溶解して実験に使用した。
【0072】
多様な濃度に製造されたベータグルカン試料は、韓国原子力研究院井邑放射線科学研究所のコバルト−60放射線の照射装置(cobalt−60 irradiator)から照射された。線源の大きさは、約100kCiであり、線量率は時間当り10kGyだった。吸収線量の確認は、5mm直径アラニン線量計(diameter alanine dosimeters)(Bruker Instruments,Rheinstetten,ドイツ)で行い、線量測定(Dosimetry)システムは、国際原子力機関(IAEA)の規格に準用して標準化した後に使用し、適用された照射線量は、室温で0、10、30及び50kGyで照射した。
【0073】
<実験例1>分子量測定
ガンマ線の照射後ベータグルカンの分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography,GPC)を使用して測定した。GPCは、ウォーターズ515ポンプ(Waters 515 pump)、2×PLaqagel OH混合した(7.8×300mm)カラム、ウォーターズ2410屈折率検出器(Waters 2410 refractive index detector)のウォーターズ(Waters)GPCシステム装備を使用した。試料は、10mg/mlの濃度で水に希釈した後、100μlを投与した。カラム(Column)は、1.0ml/分の流速で40℃で作動した。分子量分布は、0.1%w/wの濃度で多様なデキストランを使用して較正(calibration)した。分子量計算のための分析は、ミレニアム(Millennium)3.05.01を使用した。
【0074】
図1は、ガンマ線の照射によるベータグルカンの分子量を示したものである。非照射されたベータグルカンの分子量は、178,035Daである。一方、10、30、50kGyでガンマ線照射されたベータグルカンの分子量は、それぞれ61,962Da、32,004Da、24,822Daに分子量が減少した。事前に調査した研究報告書によると、ベータグルカンの分子量が100kDa以上なら高分子で、50kDa以下ならば低分子であると知られている(Bohn,J.A.等,Carbohydrate Polymers.,1995年,第28(1)卷,3−14頁)。ガンマ線によるこのような変化は、グリコシド結合(glycosidic bond)の破壊によって分子の作用基(functional group)中で変化が起きるからであると判断され、グリコシド結合の分裂によって起きる分子量の大きな減少は、低分子量の糖を形成すると報告されている(Sokhey,A.S.等,Food Struct.1983年,第12巻,397−410頁)。
【0075】
<実験例2>粘度測定
ガンマ線照射されたベータグルカンの粘度は、S21番スピンドルを使用して180rpmでブルックフィールド粘度計(Brookfield viscometer)(DV−II+pro,Brook−field Engineering Laboratories,MA,米国)で測定した。粘度は、室温で測定した。
【0076】
図2は、ガンマ線照射されたベータグルカンの粘度を示した。照射線量が増加するにつれてベータグルカン溶液の粘度は減少する傾向を見せた。非照射されたベータグルカン溶液の粘度は、191.93(cp)で示され、10及び30kGyでガンマ線照射されたベータグルカン溶液の粘度は、135.5(cp)及び75.81(cp)に減少し、50kGyで照射したベータグルカンの粘度は、43.9(cp)に粘度が減少した。
【0077】
<実験例3>溶解度測定
ガンマ線照射されたベータグルカンの水溶性は、ベータグルカン溶液を凍結乾燥して凍結乾燥されたベータグルカン試料を20分間蒸留水に溶解した後、3500rpmで20分間遠心分離して上澄み液を得る。その次に、分離した上澄み液を2時間100℃で乾燥した後、乾燥した試料の重さを測定した。
【0078】
溶解度(%)={(お皿+溶解後乾燥した試料)−お皿}/凍結乾燥された試料×100
【0079】
図3は、ガンマ線照射されたベータグルカンの溶解度を示した。非照射されたベータグルカンの溶解度は、51.23%と示され、10及び30kGyの低い線量でガンマ線照射されたベータグルカンは、55.76%及び75.81%に溶解度が増加した。50kGyで照射したベータグルカンの溶解度は81.72%であり、非照射区と比べた時、溶解度が最も大きく増加したことが示された。
【0080】
<実験例4>還元糖測定
還元糖は、3,5−ジニトロサリチル酸(3、5−dinitrosalicylic acid)(DNSA)方法(Miller,G.L.1959年)によって測定した。試料1mlを15mlの試験管に移してDNSA試薬(ジニトロサリチル酸0.5g、水酸化ナトリウム8g、ロッシェル塩150gを蒸留水500mlに溶解)2mlを添加した。その混合溶液を5秒間混合して、90℃で10分間反応させた後、冷却した。試料の還元糖数値は、スペクトロフォトメーター(spectrophotometer)(UV−1601 PC,Shimadzu Co.,東京,日本)を使用して550nmで測定した。
【0081】
図4は、ガンマ線照射されたベータグルカンの還元糖を測定した。ベータグルカン還元糖のR2値が0.9383の時、非照射区ベータグルカンの還元糖は0.917%である一方、10及び30kGyの低い線量でガンマ線照射されたベータグルカンでは、それぞれ1.128%及び1.973%に還元糖が増加した。50kGyで照射したベータグルカンの溶解度は、非照射区と低いガンマ線照射区とを比較した時、2.173%で最も大きく増加した。
【0082】
<実験例5>ベータグルカン構造変化
ガンマ線照射されたベータグルカンは、濃縮された塩酸(37%,10N)に溶解した後、100℃で2時間1.3N HClで加水分解した。酸加水分解したベータグルカンは、ベータ−D−グルコース分析キット(beta−D−glucose assay kit)(Megazyme International Ireland Limt.から購入)を使用して、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量を測定した。
【0083】
表1は、放射線の照射によって低分子化されたベータグルカンにおけるベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量を示した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に見られるように、放射線の照射によって得られた低分子量のベータグルカンは、ベータ−1,3−グルカン、ベータ−1,4−グルカン及びベータ−1,6−グルカンの含量がすべて減少した。したがって、放射線の照射によって任意的にグルカン構造を切断したベータグルカンを得られる事実を確認することができた。
【0086】
<実験例6>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの試験管内(in vitro)T細胞活性測定
脾臓細胞増殖能力は、MTT(3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl]−2,5−diphenyl trtrazolium bromide)によって測定した。PBSを使用して5mg/mlの濃度になるように溶解したMTT溶液は、24時間培養された脾臓細胞に30μlを入れて37℃のインキュベーターで2時間反応をさせた後、遠心分離した。上澄み液を除去して、100μlのジメチルスルホキシド(DMSO,Sigma)を入れて細胞を溶解させた後、37℃のインキュベーターに5分間放置して、マイクロプレートエリサリーダー(microplate ELISA reader)を使用して595nmで吸光度を測定した。
【0087】
図5では、ガンマ線の照射によるベータグルカンのT細胞活性を示した。マウスの脾臓細胞のT細胞活性は、脾臓細胞を非照射区と照射されたベータグルカンで処理した後、24時間培養後、MTT分析によって測定した。非照射のベータグルカンより、本発明の照射されたベータグルカンとともに培養した脾臓細胞中のT細胞活性が、大きく増加することを観察することができた。0、10、30及び50kGyで照射されたベータグルカンで処理したマウスの脾臓細胞T細胞活性値は、それぞれ109、116、122及び127%であることが確認でき、50kGyで照射されたベータグルカンで処理された脾臓細胞のT細胞活性が、非照射区と比較した時に、最も高い活性数値であることが確認できた。
【0088】
<実験例7>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの試験管内(in vitro)サイトカイン分泌能測定
サイトカイン分析のために脾臓細胞の単一細胞懸濁液(single cell suspensions)は、ウェル当たり1×106細胞(cells/well)の濃度で96−ウェル組織培養プレート(well tissue cultures plates)に置いた。使用した培地は、最終濃度ウェル当たり1×106細胞に10%牛胎児血清(fetal bovine serum,FBS)、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシンが添加されたRPMI−1640培養液を使用し、5%CO2、37℃で培養した。細胞は、0〜2.5μg/ml濃度のベータグルカンで処理し、24時間培養後に採取した。分析に使用する前まで−70℃に保管した。
【0089】
本発明では、試験管内システム(in vitro system)でTh1から分泌されるサイトカインを用いて、非照射区と照射されたベータグルカンの免疫機能検査を試みた。T細胞(cytotoxic及びTh1)とナチュラルキラー細胞(NK cells)は、インターフェロン−ガンマ(interferon gamma,IFN−r)を分泌する。この主要機能は、捕食細胞の活性因子である。Th1から分泌されるサイトカインの変化は、IL−2及びIFN−ガンマ抗体、及びBD OptEIATMセット(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用するELISA方法によって測定した。図6では、非照射区と照射されたベータグルカンの刺激により脾臓細胞から分泌されるサイトカインであるTh1細胞のIFN−rを測定した。Th1細胞から分泌されるサイトカインであるIFN−rは、非照射区ベータグルカンと比較した時、ガンマ線照射線量が増加するにつれてIFN−rの分泌量が増加することを確認でき、30、50kGyで照射されたベータグルカンが、0、10kGyで照射されたベータグルカンより、サイトカインの分泌量がさらに高く示されることを確認した。
【0090】
図7では、非照射区と照射されたベータグルカンの刺激による、脾臓細胞から分泌するサイトカインであるTh1細胞のIL−2を測定した。IFN−rと同様にTh1細胞から分泌するサイトカインであるIL−2は、非照射区ベータグルカンと比較した時、ガンマ線照射線量が増加するにつれてIFN−rの分泌量が顕著に増加することを確認することができ、30、50kGyで照射されたベータグルカンが、0、10kGyで照射されたベータグルカンより、サイトカインの分泌量がさらに高く示されることを確認することができた。
【0091】
<実験例8>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの試験管内(in vitro)DPPH(2,2−Diphenyl−1−picryl−hydrazyl)ラジカル消去能力測定
本発明によるガンマ線が照射されたベータグルカンのラジカル消去能力は、アマロウィクズ(Amarowicz)などの方法で測定した(Amarowicz,R.等,Food Chemistry,2004年,第84巻,4,551−562頁)。
【0092】
図8では、ガンマ線照射されたベータグルカンの抗酸化効果を示した。ガンマ線の照射処理されたベータグルカンのDPPHラジカル消去能力は、処理されたベータグルカンのすべての濃度で非照射区ベータグルカンより高く示され、この実験結果より、ガンマ線照射線量が増加するにつれて抗酸化能力は有意的に増加したことを確認することができた。
【0093】
<実験例9>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの生体内(in vivo)T細胞活性測定
本発明でBALB/cマウス(6〜7週)は、オリエント社(Orient Inc.)(Charles River Technology;ソウル,韓国)から購入した。マウスは、22±2℃の室内温度と12時間間隔で夜と昼が変化する飼育場のポリカーボネートケージ(polycarbonate cage)で飼育し、飼料と水を自由に与えながら飼育した。動物は、非照射区(normal control)、0kGy、10kGy、30kGy、50kGyで処理された5グループに分類して、7日間50mg/kg体重の濃度で経口投与して実験を進めた。マウスの脾臓を分離した後、脾臓細胞を分析する前にRPMI培養液中に直ちに維持させた。本発明での動物実験は、国内農林部の「動物保護法令(Animal Care Act)」にしたがって行った。
【0094】
脾臓リンパ球(Spleenic lymphocytes)は、マウスの脾臓(female BALB/c mice)から一般的な分裂方法で獲得した。脾臓細胞(Splenocytes)は、37℃の5%CO2インキュベーターでRPMI−1640培養液と10%牛胎児血清(fetal bovine serum)、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシンとともに維持させた。
【0095】
図9では、非照射区と照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性を測定した。本発明では、生体内(in vivo)で脾臓細胞の免疫調節を調べるために、マウスの脾臓細胞活性測定は、非照射区と照射されたベータグルカンを7日間投与したマウスの脾臓細胞を24時間培養後、MTT分析で細胞活性を測定した。非照射区と照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性は、非照射区と比較した時、活性が高いことを確認することができた。10kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性数値は128.5%であり、30及び50kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスの脾臓細胞活性数値は139.3%及び183.8%と大きく増加したことを確認した。
【0096】
<実験例10>ガンマ線照射された低分子量のベータグルカンの生体内(in vivo)サイトカイン分泌能測定
本発明では、生体内(in vivo)で非照射区と照射されたベータグルカンの免疫刺激機能を調べるために実験を進めた。Th1から分泌されるサイトカインは、ELISA方法によって測定した。図10と図11では、非照射区と照射されたベータグルカンの刺激による脾臓細胞から分泌されるサイトカインであるTh1細胞のIFN−r及びIL−2を測定した。
【0097】
Th1から分泌されるサイトカインであるIFN−r及びIL−2は、ベータグルカンへのガンマ線の照射が増加するにつれて、有意的にサイトカイン分泌が増加することを確認することができた。7日間50kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスのサイトカイン分泌量は、対照区と10、30kGyで照射されたベータグルカンを投与したマウスと比較して、最も多い量のサイトカインを分泌した。
【0098】
下記に本発明の低分子量のベータグルカンのための製剤例を例示する。
【0099】
<製剤例1>:薬学的製剤の製造
【0100】
1.散剤の製造
低分子量のベータグルカン 2g
乳糖 1g
前記の成分を混合して気密包に充填して散剤を製造した。
【0101】
2.錠剤の製造
低分子量のベータグルカン 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法にしたがって打錠して錠剤を製造した。
【0102】
3.カプセル剤の製造
低分子量のベータグルカン 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法にしたがってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0103】
4.丸薬の製造
低分子量のベータグルカン 1g
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、通常の方法によって1丸当たり4gになるように製造した。
【0104】
5.顆粒の製造
低分子量のベータグルカン 150mg
大豆抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
澱粉 600mg
前記の成分を混合した後、30%エチルアルコール100mgを添加し、60℃で乾燥して顆粒を形成した後、包みに充填した。
【0105】
<製剤例2>:食品の製造
本発明の低分子量のベータグルカンを含む食品を、次のように製造した。
【0106】
1.料理用薬味の製造
本発明の低分子量のベータグルカン20〜95重量部で、健康増進用料理用薬味を製造した。
【0107】
2.小麦粉食品の製造
本発明の低分子量のベータグルカン0.5〜5.0重量部を小麦粉に添加して、その混合物を使用してパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して、健康増進用食品を製造した。
【0108】
3.スープ及び肉汁(gravies)の製造
本発明の低分子量のベータグルカン0.1〜5.0重量部をスープ及び肉汁に添加して、健康増進用肉加工製品、麺類のスープ及び肉汁を製造した。
【0109】
4.牛挽肉(ground beef)の製造
本発明の低分子量のベータグルカン10重量部を牛挽肉に添加して、健康増進用牛挽肉を製造した。
【0110】
5.乳製品(dairy products)の製造
本発明の低分子量のベータグルカン5〜10重量部を牛乳に添加し、該牛乳を使用してバター及びアイスクリームのような多様な乳製品を製造した。
【0111】
6.禅食の製造
玄米、麦、もち米、ハト麦を公知の方法でアルファ化させて乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末にして製造した。
【0112】
黒豆、黒ごま、えごまも公知の方法で蒸して乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末にして製造した。
【0113】
本発明の低分子量のベータグルカンを真空濃縮器で減圧濃縮して、噴霧、熱風乾燥器で乾燥して得た乾燥物を粉砕機で粒度60メッシュに粉砕して乾燥粉末を得た。
【0114】
前記で製造した穀物類、種実類及び低分子量のベータグルカンの乾燥粉末を、次の割合で配合して製造した。
【0115】
穀物類(玄米30重量部、ハト麦15重量部、麦20重量部)、
種実類(えごま7重量部、黒豆8重量部、黒ごま7重量部)、
低分子量のベータグルカンの乾燥粉末(3重量部)、
霊芝(0.5重量部)、
地黄(0.5重量部)。
【0116】
<製剤例3>:飲料の製造
【0117】
1.健康飲料の製造
低分子量のベータグルカン 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅の実濃縮液 2g
タウリン 1g
精製水を加えて全体 900ml
通常の健康飲料製造方法によって前記の成分を混合した後、約1時間85℃で撹拌加熱して、できた溶液をろ過して滅菌した2l容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管して、本発明の健康飲料組成物製造に使用した。
【0118】
前記組成比は、比較的嗜好飲料に相応しい成分を好ましい実施例で混合組成したが、需要者の階層、需要者の国、使用用途など地域的、民族的嗜好度によってその配合比を任意に変形実施してもかまわない。
【0119】
2.野菜ジュースの製造
本発明の低分子量のベータグルカン5gを、トマトまたはにんじんジュース1,000mlに加えて、健康増進用野菜ジュースを製造した。
【0120】
3.果物ジュースの製造
本発明の低分子量のベータグルカン1gを、リンゴまたはブドウジュース1,000mlに加えて、健康増進用果物ジュースを製造した。
【0121】
<製剤例4>:低分子量のベータグルカンを使用した化粧品の製造
本発明の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む免疫強化用機能性化粧品を製造することができる。本発明者等は、低分子量のベータグルカンを含む免疫強化用機能性化粧品として、栄養化粧水、クリーム、エッセンスなどの乳化剤形の化粧品及び柔軟化粧水などの可溶化剤形の化粧品を製造した。
【0122】
<1−1>乳化剤形の化粧品製造
表2に記載した組成で乳化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
【0123】
1)1ないし9の原料を混合した混合物を65〜70℃で加熱した。
2)10の原料を前記工程1)の混合物に投入した。
3)11ないし13の原料の混合物を65〜70℃で加熱して完全に溶解させた。
4)前記工程3)を経ながら、前記2)の混合物を徐々に添加して8,000rpmで2〜3分間乳化させた。
5)14の原料を少量の水に溶解させた後、前記工程4)の混合物に添加して2分間さらに乳化させた。
6)15ないし17の原料をそれぞれ計量した後、前記工程5)の混合物に入れて30秒間さらに乳化させた。
7)前記工程6)の混合物を乳化後、脱気過程を経て25〜35℃に冷却させることにより乳化剤形の化粧品を製造した。
【0124】
【表2】
【0125】
<1−2>可溶化剤形の化粧品製造
表3に記載した組成で可溶化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
【0126】
1)2ないし6の原料を1の原料(精製水)に入れてミキサーを使用して溶解させた。
2)8ないし11の原料を7の原料(アルコール)に入れて完全溶解させた。
3)前記工程2)の混合物を前記工程1)の混合物に徐々に添加しながら可溶化させた。
【0127】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によるガンマ線の照射による低分子量のベータグルカンは、粘度が減少して水溶性が増加する物理的特性と抗酸化活性、脾臓細胞増殖とサイトカイン(cytokine)の分泌能が増加するなどの優秀な生物学的特性により、食品、医薬品及び化粧品素材として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】ガンマ線の照射によるベータグルカンの分子量減少を示したグラフである。
【図2】ガンマ線の照射によるベータグルカンの粘度減少を示したグラフである。
【図3】ガンマ線の照射によるベータグルカンの溶解度増加を示したグラフである。
【図4】ガンマ線の照射によるベータグルカンの還元糖変化の増加を示したグラフである。
【図5】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞のT細胞活性増加(in vitro)を示したグラフである。
【図6】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのINF−r分泌能の増加(in vitro)を示したグラフである。
【図7】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのIL−2分泌能の増加(in vitro)を示したグラフである。
【図8】ガンマ線照射されたベータグルカンの2,2−ジフェニル−1−ピクリル−ヒドラジル(2,2−Diphenyl−1−picryl−hydrazyl、DPPH)ラジカル消去能力の増加を示したグラフである。
【図9】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞のT細胞活性増加(in vivo)を示したグラフである。
【図10】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのINF−r分泌能の増加(in vivo)を示したグラフである。
【図11】ガンマ線照射されたベータグルカンによる脾臓細胞からのIL−2分泌能の増加(in vivo)を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量のベータグルカンを製造する方法であって、
1)ベータグルカンを溶媒に溶解する工程、及び
2)工程1)の溶解物に放射線を照射する工程とを含む、前記製造方法。
【請求項2】
工程2)の溶解物を追加的に乾燥する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
溶媒が、緩衝溶液、培養液、アルコール及び蒸留水からなる群から選択されたいずれか1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
放射線が、ガンマ線、電子線及びX線からなる群から選択されたいずれか1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
放射線が、ガンマ線であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ガンマ線が、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90及びセシウム(Cs)−137からなる群から選択されたいずれか1種の放射性同位元素から放出されることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ガンマ線が、コバルト(Co)−60放射性同位元素から放出されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
放射線の吸収線量が、10〜100kGyであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
放射線の吸収線量が、30〜50kGyであることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
低分子量のベータグルカンの分子量が、1kDa〜100kDaであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
低分子量のベータグルカンの分子量が、25kDa〜60kDaであることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法によって製造された、低分子量のベータグルカン。
【請求項13】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して粘度が減少することを特徴とする、請求項12に記載の低分子量のベータグルカン。
【請求項14】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して溶解度が増加することを特徴とする、請求項12に記載の低分子量のベータグルカン。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用薬学的組成物。
【請求項16】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して脾臓細胞のT細胞活性を増加させることを特徴とする、請求項15に記載の免疫増進用薬学的組成物。
【請求項17】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して脾臓細胞のサイトカイン分泌を増加させることを特徴とする、請求項16に記載の免疫増進用薬学的組成物。
【請求項18】
サイトカインが、IFN−rまたはIL−2であることを特徴とする、請求項17に記載の免疫増進用薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に有効な量の請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、免疫増進方法。
【請求項20】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、免疫増進用薬学的組成物の製造のための使用。
【請求項21】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、抗酸化用薬学的組成物。
【請求項22】
薬学的に有効な量の請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、抗酸化方法。
【請求項23】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、抗酸化用薬学的組成物の製造のための使用。
【請求項24】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用健康食品。
【請求項25】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、免疫増進用健康食品の製造のための使用。
【請求項26】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、アトピー予防及び改善用機能性化粧品。
【請求項27】
薬学的に有効な量の請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、アトピー予防及び改善方法。
【請求項28】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、アトピー予防及び改善用機能性化粧品の製造のための使用。
【請求項1】
低分子量のベータグルカンを製造する方法であって、
1)ベータグルカンを溶媒に溶解する工程、及び
2)工程1)の溶解物に放射線を照射する工程とを含む、前記製造方法。
【請求項2】
工程2)の溶解物を追加的に乾燥する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
溶媒が、緩衝溶液、培養液、アルコール及び蒸留水からなる群から選択されたいずれか1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
放射線が、ガンマ線、電子線及びX線からなる群から選択されたいずれか1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
放射線が、ガンマ線であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ガンマ線が、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90及びセシウム(Cs)−137からなる群から選択されたいずれか1種の放射性同位元素から放出されることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ガンマ線が、コバルト(Co)−60放射性同位元素から放出されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
放射線の吸収線量が、10〜100kGyであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
放射線の吸収線量が、30〜50kGyであることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
低分子量のベータグルカンの分子量が、1kDa〜100kDaであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
低分子量のベータグルカンの分子量が、25kDa〜60kDaであることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法によって製造された、低分子量のベータグルカン。
【請求項13】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して粘度が減少することを特徴とする、請求項12に記載の低分子量のベータグルカン。
【請求項14】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して溶解度が増加することを特徴とする、請求項12に記載の低分子量のベータグルカン。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用薬学的組成物。
【請求項16】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して脾臓細胞のT細胞活性を増加させることを特徴とする、請求項15に記載の免疫増進用薬学的組成物。
【請求項17】
低分子量のベータグルカンが、照射された吸収線量に比例して脾臓細胞のサイトカイン分泌を増加させることを特徴とする、請求項16に記載の免疫増進用薬学的組成物。
【請求項18】
サイトカインが、IFN−rまたはIL−2であることを特徴とする、請求項17に記載の免疫増進用薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に有効な量の請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、免疫増進方法。
【請求項20】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、免疫増進用薬学的組成物の製造のための使用。
【請求項21】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、抗酸化用薬学的組成物。
【請求項22】
薬学的に有効な量の請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、抗酸化方法。
【請求項23】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、抗酸化用薬学的組成物の製造のための使用。
【請求項24】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、免疫増進用健康食品。
【請求項25】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、免疫増進用健康食品の製造のための使用。
【請求項26】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを有効成分として含む、アトピー予防及び改善用機能性化粧品。
【請求項27】
薬学的に有効な量の請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンを個体に投与する工程を含む、アトピー予防及び改善方法。
【請求項28】
請求項12〜14のいずれかに記載の低分子量のベータグルカンの、アトピー予防及び改善用機能性化粧品の製造のための使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−35732(P2009−35732A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187005(P2008−187005)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(501399968)韓国原子力研究院 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(501399968)韓国原子力研究院 (8)
【Fターム(参考)】
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