説明

放射線固体検出器

【課題】放射線固体検出器が内部給電手段で駆動している場合に、無駄な電力消費を抑えつつ、適切なオフセット補正値による高精度のオフセット補正を行うことのできる放射線固体検出器を提供する。
【解決手段】所定期間撮影が実行されない場合には撮影可能な撮影モードから撮影を休止する撮影休止モードに遷移し、所定の起動信号が入力されると撮影モードに遷移するように、カセッテ制御部30が電力供給手段による各機能部に対する給電状態を制御するとともに、温度センサ27により測定されたセンサパネル部24の温度が、記憶部31に記憶されているオフセット補正値を算出した際のセンサパネル部24の温度よりも所定以上変動している場合には、新たにオフセット補正値を取得するように各機能部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線固体検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用の放射線画像を取得する手段として、いわゆるフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)と呼ばれる固体撮像素子を2次元的に配置した放射線固体検出器が知られている。このような放射線固体検出器には、放射線検出素子として、a−Se(アモルファスセレン)のような光導電物質を用いて放射線エネルギーを直接電荷に変換し、この電荷を2次元的に配置されたTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等の信号読出し用のスイッチ素子によって画素単位に電気信号として読み出す直接方式のものや、放射線エネルギーをシンチレータ等で光に変換し、この光を2次元的に配置されたフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換してTFT等によって電気信号として読み出す間接方式のもの等があることが知られている。
【0003】
そして、何れの方式においても、被写体を透過してきた放射線を放射線固体検出器で検出して得られた実写画像データに対してゲイン補正やオフセット補正等を行い、実写画像データを補正する必要があることが知られている。
【0004】
ゲイン補正やオフセット補正を行うためには、ゲイン補正値、オフセット補正値が必要であるが、これらの補正値は、経時的に変化するものであるため、放射線固体検出器に対して定期的にキャリブレーションを行い、補正値を更新するのが一般的である。
例えば間接方式の放射線固体検出器の場合、放射線検出素子の各画素を構成するシンチーレータ、光電変換素子や信号読出し用のスイッチ素子であるTFT等は、通電使用に伴う温度上昇による影響を受けやすく、特性が徐々に変化することが知られている。このため、ゲイン補正値、オフセット補正値について適宜更新しなければ、適切な補正を行うことができない。
【0005】
特に、オフセット補正値は、ゲイン補正値に比べて比較的変動周期が短く(すなわち変動しやすく)、温度変化等により大きく変化することが知られている。このため、撮影状態に近い状態で求められたオフセット補正値に基づく補正を行わなければ、画像品質に影響を及ぼすことになる。
【0006】
そこで、オフセット補正値の経時的な特性の変動を把握するために、放射線固体検出器に放射線を照射しないで読み取りを実施するいわゆるダーク読取を定期的に行い、このダーク読取値に基づきオフセット補正値を算出して、適宜オフセット補正値を更新するオフセットキャリブレーションが行われている。
この算出時、ダーク読取の信号に電気的に重畳するノイズ影響を緩和する為、個々の放射線検出素子毎に複数回ダーク読取を行い、それによって得たダーク読取値の平均値を求めてオフセット補正値とすることが一般的である。
【0007】
また、撮影室に固定設置される立位型或いは臥位型撮影装置においては、それぞれの装置に内蔵された放射線固体検出器に連続通電し、温度上昇が飽和した状態で使用することにより、温度特性の安定化を図ることも行なわれている。
【0008】
ところで、近年、内部給電手段としてバッテリを内蔵し、ケーブルレスで駆動する可搬型の放射線固体検出器が開発されている。
【0009】
このような可搬型の放射線固体検出器では、バッテリの消耗防止のため、一般的には、撮影に使用しない時は各部に電力を供給せず撮影休止モード(いわゆるスリープモード)とし(例えば、特許文献1参照)、撮影に際しては、技師による電源スイッチの操作や、コンソールからの起動指示によって、各機能部に電力が供給され、撮影モードに遷移する構成が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−208308号公報
【特許文献2】特開2000−139889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、放射線固体検出器をバッテリによって駆動させる場合、オフセット補正値を得るためのダーク読取を撮影毎に行うと、その度にバッテリの電力を消耗し、充電サイクルが短くなるという問題がある。
また、撮影室に固定設置された放射線固体検出器であれば、前述のように、連続通電して温度上昇が飽和した状態で使用することもできるが、放射線固体検出器をバッテリによって駆動させる場合には、バッテリの電力消耗を抑える必要性から、連続通電しておくことは困難である。
【0011】
他方で、一般的な単純放射線撮影の場合、1人の患者を連続撮影したとしても、その撮影枚数は数枚程度であり、この間に、放射線固体検出器内部の温度が上昇し、放射線固体検出器の特性が変化することは稀である。また、バッテリの消耗防止のため、撮影完了後にできるだけ各部に電力を供給しない撮影休止モードとする場合には、一連の撮影サイクルを繰り返す間に、通電による放射線固体検出器内部の温度上昇はあまりなく、比較的安定している。
【0012】
従って、例えば始業時等にキャリブレーションを行いオフセット補正値を取得して、以後、撮影休止モードに維持され、撮影リクエスト時に再度覚醒させ、撮影完了後には再び撮影休止モードに維持されるというような使用態様である場合には、前記キャリブレーション時からの放射線固体検出器内部の温度変動が少なく、始業時に取得したオフセット補正値をデフォルト値として使用して、実写画像データのオフセット補正を行っても精度の高い補正を行うことができる。
それにもかかわらず、このような場合にもダーク読取及びオフセット補正値の取得を頻繁に行うとすると、無駄に消費電力が増えてしまい、バッテリの充電サイクルも短くなるとの問題がある。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、放射線固体検出器が内部給電手段で駆動している場合に、無駄な電力消費を抑えつつ、適切なオフセット補正値による高精度のオフセット補正を行うことのできる放射線固体検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、
複数の放射線検出素子を2次元状に配置した検出手段と、
前記検出手段の前記各放射線検出素子の出力値を各画素単位で読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記出力値に基づいて各画素毎のオフセット補正値を算出する演算手段と、
前記読取手段及び前記演算手段を制御してオフセット補正値を取得させる補正値取得制御手段と、
オフセット補正値を記憶する補正値記憶部と、
各機能部に電力を供給する内部給電手段を含む電力供給手段と、
前記電力供給手段による各機能部に対する電力供給を制御する給電制御手段と、
前記検出手段の温度を測定する温度測定手段と、
を有する放射線固体検出器であって、
前記給電制御手段は、所定期間撮影が実行されない場合には撮影可能な撮影モードから撮影を休止する撮影休止モードに遷移し、所定の起動信号が入力されると撮影モードに遷移するように、前記電力供給手段による各機能部に対する給電状態を制御するものであり、
前記温度測定手段は、前記起動信号が入力された後に前記温度を測定し、
補正値取得制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度が、前記補正値記憶部に記憶されているオフセット補正値を算出した際の温度よりも所定以上変動している場合には、新たにオフセット補正値を取得するように前記読取手段及び前記演算手段を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射線固体検出器が起動信号を受けて撮影休止モードから覚醒すると検出手段の温度を測定し、この測定結果によって、予め補正値記憶部に記憶されているオフセット補正値を用いることができるかどうかを判断する。
オフセット補正値は放射線検出素子等の温度変化等により大きく変化するため、温度変化があったときには、それに応じて適宜オフセット補正値を更新する必要がある。この点、本実施形態では、検出手段の温度に所定以上の変動がある場合には、新たにオフセット補正値を算出するため、適切なオフセット補正値を用いて精度の高いオフセット補正を行うことができる。
また、検出手段の温度に所定以上の変動がない場合には、新たなオフセット補正値の算出を行わずに、予め補正値記憶部に記憶されているオフセット補正値を用いてオフセット補正を行うので、内部給電手段で駆動する放射線固体検出器において、内部給電手段の無駄な電力消費を抑えて、放射線固体検出器の撮影可能時間を長く保つことが可能となるとの効果を奏する。
【0016】
また、一定時間撮影が行われないときには、給電制御手段の制御により、自動的に撮影休止モードとなるので、内部給電手段の無駄な電力消費量を抑えて、放射線固体検出器の撮影可能時間を長く保つことが可能となるとの効果を奏する。
【0017】
また、撮影休止モードにおいては、検出手段及び読取手段に対する電力供給が停止し又は電力供給レベルが低減するようにした場合には、オフセット補正値に影響を与える検出手段等の温度変化が少ないため、予め補正値記憶部に記憶されているデフォルト値としてのオフセット補正値をそのまま使用することができる。これにより、頻繁にダーク読取及びオフセット補正値の算出を行う必要がなく、無駄な電力消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1から図7を参照しながら、本発明に係る放射線固体検出器の好適な一実施形態について説明する。ただし、本発明を適用可能な実施形態は図示例のものに限定されるものではない。
【0019】
放射線固体検出器は、例えば図1に示すような放射線画像撮影システム1内に配置されて、放射線画像データ(以下、単に「画像データ」と称する。)を取得するものである。
本実施形態において放射線固体検出器は、いわゆるフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下「FPD」という。)をカセッテ型(可搬型)に構成したカセッテ
型のFPD2(以下「FPDカセッテ2」と称する。)である。
【0020】
本実施形態において、放射線画像撮影システム1は、このFPDカセッテ2と、FPDカセッテ2と通信可能なコンソール5とを備えている。
【0021】
図1に示すように、FPDカセッテ2は、例えば、放射線を照射して図示しない患者Mの一部である被写体(患者Mの撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1に設けられており、コンソール5は、この撮影室R1に対応して設けられている。
なお、本実施形態においては、放射線画像撮影システム内に1つの撮影室R1が設けられており、撮影室R1内に3つのFPDカセッテ2が配置されている場合を例として説明するが、撮影室の数、各撮影室に設けられるFPDカセッテ2の数は図示例に限定されない。
また、撮影室R1が複数ある場合に、コンソール5は各撮影室R1に対応して設けられていなくてもよく、複数の撮影室R1に対して1台のコンソール5が対応付けられていてもよい。
【0022】
撮影室R1内には、FPDカセッテ2を装填・保持可能なカセッテ保持部48を備えるブッキー装置3、被写体(患者Mの撮影対象部位)に放射線を照射するX線管球等の放射線源を備える放射線発生装置4が設けられている。カセッテ保持部48は、撮影時にFPDカセッテ2を装填するものである。なお、カセッテ保持部48は、ブッキー装置3に設けられているものに限定されず、例えば後述するバッテリ28の充電や有線による通信可能な端子部を備える図示しないクレードル等に備えられていてもよい。
なお、図1には撮影室R1内に臥位撮影用のブッキー装置3aと立位撮影用のブッキー装置3bとがそれぞれ1つずつ設けられている場合を例示しているが、撮影室R1内に設けられるブッキー装置3の数は特に限定されない。また、本実施形態では、各ブッキー装置3に対応して1つずつ放射線発生装置4が設けられている構成を例示しているが、例えば、撮影室R1内に放射線発生装置4を1つ備え、複数のブッキー装置3に対して1つの放射線発生装置4が対応し、適宜位置を移動させたり、放射線照射方向を変更する等して使用するようになっていてもよい。
【0023】
また、撮影室R1は、放射線を遮蔽する室であり、無線通信用の電波も遮断されるため、撮影室R1内には、FPDカセッテ2とコンソール5等の外部装置とが通信する際にこれらの通信を中継する無線アクセスポイント(基地局)6等が設けられている。
【0024】
また、本実施形態では、撮影室R1に隣接して前室R2が設けられている。前室R2には、放射線技師や医師等(以下「操作者」と称する。)が被写体に放射線を照射する放射線発生装置4の管電圧、管電流、照射野絞り等の制御を行ったり、ブッキー装置3の操作等を行う操作装置7が配置されている。
【0025】
操作装置7にはコンソール5から放射線発生装置4の放射線照射条件を制御する制御信号が送信されるようになっており、放射線発生装置4の放射線照射条件は、操作装置7に送信されたコンソール5からの制御信号に応じて設定される。放射線照射条件としては、例えば、曝射開始/終了タイミング、放射線管電流の値、放射線管電圧の値、フィルタ種等がある。
【0026】
放射線発生装置4には、操作装置7から放射線の曝射を指示する曝射指示信号が送信されるようになっており、放射線発生装置4は、曝射指示信号に従って所定の放射線を所定時間、所定のタイミングで照射するようになっている。
本実施形態では、曝射指示信号の送信後実際に放射線の照射が開始されるまでの間にFPDカセッテ2においてダーク読取が行われるように連携制御される。放射線発生装置4は、曝射指示信号の受信後、このダーク読取に必要な時間を経過した後に放射線を照射する。
なお、曝射指示信号が送信されてからどの程度の時間経過後に実際の曝射を行うか及び放射線をどの程度の時間照射するか等は、予め撮影部位等に応じて規定されており、放射線発生装置4は、これに基づいて放射線の照射を行う。
また、ダーク読取の終了後に曝射指示信号が放射線発生装置4に送信される構成としてもよい。
【0027】
図2は、本実施形態におけるFPDカセッテ2の斜視図である。
FPDカセッテ2は、図2に示すように、内部を保護する筐体21を備えている。なお、図2では、筐体21がフロント部材21aとバック部材21bとで形成されている場合が示されているが、その形状、構成は特に限定されず、この他にも、筐体21を筒状のモノコック状に形成することも可能である。
【0028】
FPDカセッテ2は、その厚さやサイズが図示しないCRカセッテの場合と同様であって、CRカセッテ用に設置されている各種ブッキー装置3等に装填して使用可能であることが好ましい。具体的には、CRカセッテと同様に、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおける規格であるJIS Z 4905(対応する国際規格はIEC 60406)に準拠する寸法で構成されていることが好ましく、この場合、FPDカセッテ2の放射線入射方向の厚さは15mm+1mm〜15mm−2mmの範囲内に形成される。このようにCRカセッテとの互換性を有することにより、FPDカセッテ2を用いた撮影にも既存の設備をそのまま利用することができ、便宜である。なお、FPDカセッテ2の厚みはここに示したものに限定されない。
また、FPDカセッテ2としては、例えば、8インチ×10インチ、10インチ×12インチ、11インチ×14インチ、14インチ×14インチ、14インチ×17インチ、17インチ×17インチ等のサイズのものが用意されているが、サイズはここに挙げたものに限定されない。
【0029】
図2に示すように、本実施形態において、FPDカセッテ2の側面部分には、電源スイッチ22、インジケータ25、コネクタ部26等が配置されている。
【0030】
電源スイッチ22は、FPDカセッテ2の電源のON/OFFを切り替えるものであり、電源スイッチ22を操作することにより、後述するバッテリ28(図4参照)によるFPDカセッテ2の各機能部に対する電力供給の開始及び停止を指示する信号が後述するカセッテ制御部30(図3及び図4参照)に出力される。FPDカセッテ2を撮影に使用しないときには、電源をOFF(すなわち、バッテリ28による各機能部に対する電力供給を停止)にしておくことにより、バッテリ28の消費を抑えることができる。
【0031】
インジケータ25は、例えばLED等で構成されバッテリ28の充電残量や各種の操作状況等を表示するものである。
【0032】
コネクタ部26は、図示しない外部電源と接続されるケーブル49を接続可能となっている。コネクタ部26には、外部電源から供給される電力を受電してバッテリ28に電力を供給するための外部給電端子(図示せず)が接続されており、コネクタ部26にケーブル49が接続されることによりバッテリ28の充電が可能となる。
なお、コネクタ部26を介して外部給電端子にケーブル49が接続されることによりFPDカセッテ2の各機能部に対して直接外部電源から給電が行われるようにしてもよい。
【0033】
また、FPDカセッテ2の側面部分には、筐体21内に内蔵されたバッテリ28の交換のために開閉される蓋部材47が設けられており、蓋部材47の側面部には、FPDカセッテ2が無線アクセスポイント6を介して外部と無線方式で情報の送受信を行うためのアンテナ装置46が埋め込まれている。
【0034】
筐体21の放射線入射面X(図2参照)の内側には、放射線入射面Xから入射した放射線を吸収して可視光を含む波長の光に変換する図示しないシンチレータ層が形成されている。シンチレータ層は、例えばCsI:TlやGd22S:Tb、ZnS:Ag等の母体内に発光中心物質が付活された蛍光体を用いて形成されたものを用いることができる。
【0035】
シンチレータ層の放射線が入射する側の面とは反対側の面側には、シンチレータ層から出力された光を電気信号に変換する複数の光電変換素子23(図3参照)が2次元状に複数配列された検出手段としてのセンサパネル部24が設けられている。光電変換素子23は、例えばフォトダイオード等であり、シンチレータ層等と共に、被写体を透過した放射線を電気信号に変換する放射線検出素子を構成する。
なお、FPDカセッテ2は、放射線検出素子が光電変換素子23、シンチレータ層等を備える構成のもの(いわゆる間接型の放射線固体検出器)に限定されない。例えばシンチレータ層を介さずに、入射した放射線を放射線検出素子で直接電気信号に変換する構成のもの(いわゆる直接型の放射線固体検出器)であってもよい。
【0036】
本実施形態においては、カセッテ制御部30、走査駆動回路32、信号読出し部33等により、このセンサパネル部24の各光電変換素子23の出力値を読み取る読取手段である読取部45(図3参照)が構成されている。
【0037】
センサパネル部24及び読取部45の構成について、図3の等価回路図を参照しつつ、さらに説明する。
図3に示すように、センサパネル部24の各光電変換素子23の一方の電極にはそれぞれ信号読出し用のスイッチ素子であるTFT41のソース電極が接続されている。また、各光電変換素子23の他方の電極にはバイアス線Lbが接続されており、バイアス線Lbはバイアス電源36に接続されていて、バイアス電源36から各光電変換素子23にバイアス電圧が印加されるようになっている。
【0038】
各TFT41のゲート電極はそれぞれ走査駆動回路32から延びる走査線Llに接続されており、各TFT41のドレイン電極はそれぞれ信号線Lrに接続されている。各信号線Lrは、それぞれ信号読出し回路40内の増幅回路37に接続されており、各増幅回路37の出力線はそれぞれサンプルホールド回路38を経てアナログマルチプレクサ39に接続されている。また、アナログマルチプレクサ39にはA/D変換器42が接続されており、A/D変換器42により信号がアナログ信号からデジタル信号に変換され、変換後の信号は画像データメモリ43に記憶される。画像データメモリ43は、伝送回路44を介してカセッテ制御部30に接続されている。本実施形態では、増幅回路37、サンプルホールド回路38、アナログマルチプレクサ39を備える信号読出し回路40と、A/D変換器42と、画像データメモリ43と、伝送回路44とにより信号読出し部33が構成されている。
画像データメモリ43に記憶されたデジタル画像信号は、適宜カセッテ制御部30に送信されるようになっている。カセッテ制御部30には、記憶部31が接続されている。カセッテ制御部30は、送信されたデジタル画像信号を画像データとして記憶部31に記憶させる。
【0039】
ここで、放射線画像撮影時とダーク読取時における電気信号の流れ等について説明する。
【0040】
被写体を撮影する通常の放射線画像撮影においては、被写体を透過した放射線がシンチレータ層に入射すると、シンチレータ層からセンサパネル部24に光が照射され、光の照射を受けた量に応じて、光電変換素子23の特性が変化する。
【0041】
そして、放射線画像撮影を終了し、放射線固体検出器1から実写画像データを電気信号として読み出す際には、走査線LlからTFT41のゲート電極に読み出し電圧を印加して各TFT41のゲートを開き、光電変換素子23からTFT41を介して電気信号を信号値として信号線Lrに取り出す。そして、信号値は増幅回路37で増幅される等して、アナログマルチプレクサ39から順次A/D変換器42に送られる。そしてデジタル信号に変換された信号は各光電変換素子23(すなわち画素)ごとに画像データメモリ43に記憶される。画像データメモリ43に記憶された信号は、伝送回路44を介して適宜カセッテ制御部30に送信され、実写画像データとして記憶部31に記憶される。
【0042】
そして、TFT41に読み出し電圧を印加する走査線Llを順次走査して上記の読出し処理を走査線Llごとに行うことで、センサパネル部24の全光電変換素子23から電気信号をそれぞれ読み出していくことにより、1回の放射線画像撮影において、各光電変換素子23でそれぞれ検出され増幅される等により得られた実写画像データが、各光電変換素子23(すなわち各画素)ごとのデータとして記憶部31に記憶される。
【0043】
それに対し、ダーク読取においては、FPDカセッテ2の全ての光電変換素子23を一旦リセットして電荷を放出させた後、各TFT41のゲートを閉じて、FPDカセッテ2を放射線が照射されない状態で放置する。
【0044】
そして、所定時間経過後、走査線LlからTFT41のゲート電極に読み出し電圧を印加して各TFT41のゲートを開いて、各光電変換素子23に溜まった電荷を信号線Lrに取り出し、放射線画像撮影時と同様に、電荷を増幅回路37で増幅する等してアナログマルチプレクサ39を介して順次A/D変換器42に送る。A/D変換器42においてデジタル信号に変換された信号は各光電変換素子23(すなわち画素)ごとに画像データメモリ43に記憶される。なお、このように、放射線が曝射されない状態において、各光電変換素子23から出力された電荷を増幅する等して得られた出力値(ダーク画像データ)を、以下「ダーク読取値」と称する。画像データメモリ43に記憶されたダーク読取値は、伝送回路44を介して適宜カセッテ制御部30に送信され、各光電変換素子23のダーク読取値として記憶部31に記憶される。
【0045】
そして、TFT41に読み出し電圧を印加する走査線Llを順次走査して上記の読出し処理を走査線Llごとに行うことで、センサパネル部24の全光電変換素子23から電気信号をそれぞれ読み出していくことにより、全ての光電変換素子23についてダーク読取値が取得され、取得されたダーク読取値が、各光電変換素子23(すなわち各画素)ごとのデータとして記憶部31に記憶される。
【0046】
本実施形態では、後述するように、センサパネル部24の温度変化の状況に応じて、カセッテ制御部30がオフセット補正値を取得するか否かを決定するようになっており、オフセット補正値を取得すると決定した場合には、撮影の直前、すなわち操作装置7から放射線発生装置4に対して曝射指示信号が送信されたときに、FPDカセッテ2において複数回のダーク読取が行われる。そして、1つの光電変換素子23から各回のダーク読取ごとにダーク読取値が出力され、カセッテ制御部30は、この複数回のダーク読取値(出力値)の平均値を算出する。この平均値の算出が全ての光電変換素子23について行われ、この平均値はオフセット補正値として記憶部31に記憶されるようになっている。
【0047】
なお、オフセット補正値を生成するために何回のダーク読取を行うかの回数は特に規定されない。例えば、ダーク読取を1回行うことによりオフセット補正値を生成してもよい。この場合には、ダーク読取値の平均値を算出する処理は必要なく、当該1回のダーク読取におけるダーク読取値がオフセット補正値となる。
ダーク読取の回数が多いほど、ノイズ重畳影響の少ない、安定したオフセット補正値を算出することができるが、その分オフセット補正値を取得するまでに時間を要することとなるし、バッテリ28を消耗することにもなる。なお、本実施形態においては、各撮影の直前に5回のダーク読取を行ってオフセット補正値を算出する場合を例として以下説明する。
【0048】
図4は、FPDカセッテ2の機能的構成及びバッテリ28から各機能部に電力を供給する給電回路を示す要部ブロック図である。
図4に示すように、FPDカセッテ2は、カセッテ制御部30、記憶部31、走査駆動回路32、信号読出し回路40を備える信号読出し部33、計時手段34、通信部35、バイアス電源36、温度センサ27、バッテリ28等を備えている。
【0049】
カセッテ制御部30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random・Access Memory)等を備えるコンピュータであり、画像データの生成やオフセット補正値の算出を行う演算手段である。
ROMには、実写画像データ生成処理、オフセット補正値生成処理等、FPDカセッテ2において各種の処理を行うためのプログラム、各種の制御プログラムやパラメータ等が記憶されている。また本実施形態では、ROMには、撮影前に新たにオフセット補正値の算出を行うか否かをカセッテ制御部30が判断する際に参照する温度の閾値が記憶されている。
カセッテ制御部30は、ROMに格納された所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPUが各種処理を実行するようになっている。
【0050】
記憶部31は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等で構成されており、記憶部31には、読取部45(図4参照)により生成される実写画像データ(被写体を透過した放射線に基づく画像データ)や、ダーク読取値(放射線を照射しない状態で取得された画像データ)等が記憶されるようになっている。
また、本実施形態において、記憶部31は、オフセット補正値を記憶する補正値記憶部として機能する。すなわち、記憶部31には、センサパネル部24の温度が比較的安定しているときに取得されたダーク読取値に基づくオフセット補正値がデフォルト値として記憶されている。その他、記憶部31には、オフセット補正値の算出が行われる毎に最新のオフセット補正値が記憶されていく。
なお、記憶部31は内蔵型のメモリでもよいし、メモリカード等の着脱可能なメモリでもよい。また、その容量は特に限定されないが、複数枚分の画像データを保存可能な容量を有することが好ましい。このような記憶手段を備えることによって、被写体に対して連続して放射線を照射し、その度ごとに画像データを記録し蓄積していくことができ、連続撮影や動画撮影を行うことが可能となる。
【0051】
計時手段34は、操作装置7から曝射指示信号が送信されてからの経過時間を計時するものである。計時手段34は、曝射指示信号が送信されてからの経過時間の情報を、カセッテ制御部30に出力するようになっている。なお、計時手段34は、カセッテ制御部30内でソフト的に実現されるものであってもよい。
【0052】
通信部35は、アンテナ装置46と接続されており、カセッテ制御部30の制御に従って、コンソール5等の外部装置との間で各種信号の送受信を行う通信手段である。通信部35は、無線アクセスポイント6を介して無線方式でコンソール5等の外部装置との通信を行う。
本実施形態において、通信部35は、読取部45によって読み取られた画像信号に基づく画像データ(実写画像データやダーク読取により得られたデータ)を外部機器であるコンソール5に送信するとともにコンソール5等から撮影オーダ情報を受信する。
【0053】
温度センサ27は、センサパネル部24の温度を測定する温度測定手段であり、筐体21の内部であって、例えばセンサパネル部24の一端又はその近傍に設けられている。温度センサ27は、FPDカセッテ2に後述するコンソール5から起動信号が入力された後にセンサパネル部24の温度を測定するようになっている。温度センサ27による測定結果は、カセッテ制御部30に出力される。
温度センサ27としては、例えばサーミスタ等の接触式のセンサの他、非接触式のセンサを適用することも可能である。
【0054】
また、FPDカセッテ2は、FPDカセッテ2の各機能部に電力を供給する内部給電手段として、バッテリ28を備えている。
なお、内部給電手段としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池、電気二重層コンデンサ等の充電自在な二次電池の他、燃料電池や取替え可能な一次電池等を適用することができる。
【0055】
バッテリ28から各機能部までの間の給電回路C上には、バッテリ28から各機能部に対する電力供給のON/OFFを切り替えるON/OFFスイッチSW1が設けられている。カセッテ制御部30がこのON/OFFスイッチSW1を制御することにより、バッテリ28から各機能部に対する電力供給を制御するようになっている。
具体的には、カセッテ制御部30は、電力供給を行う機能部については、ON/OFFスイッチSW1をONとし、電力供給を停止する機能部については、ON/OFFスイッチSW1をOFFとするように制御信号S1を出力する。これにより、適宜ON/OFFスイッチSW1が切り替えられて、電力供給源から各機能部に対する電力供給が制御される。
【0056】
本実施形態においては、バッテリ28、給電回路C、ON/OFFスイッチSW1等により、バイアス電源36及び読取部45を含むFPDカセッテ2の各機能部に対して電力を供給する電力供給手段が構成されている。そして、カセッテ制御部30は、この電力供給手段による各機能部に対する電力供給を制御する給電制御手段として機能する。
【0057】
前述のように、カセッテ制御部30には、曝射指示信号が送信されてからの経過時間の情報が、計時手段34から送られるようになっており、カセッテ制御部30は、計時手段34から送られた情報に基づいて、一の撮影のための曝射指示信号が送信されてから所定期間が経過したか否かを判断するようになっている。そして、所定期間が経過したが次の撮影が実行されていないと判断する場合には、カセッテ制御部30は、FPDカセッテ2の各機能部が撮影可能な撮影モードから撮影を休止する撮影休止モードに遷移するように、電源供給手段による各機能部に対する給電状態を制御する。
また、後述するコンソール5から所定の起動信号が通信部35を介してFPDカセッテ2に入力されると、カセッテ制御部30は、FPDカセッテ2の各機能部が撮影モードに遷移するように、電源供給手段による各機能部に対する給電状態を制御する。
【0058】
ここで、撮影モードとは、少なくともバイアス電源36(図3及び図4参照)と、信号読出し回路40に対してバッテリ28から電力が供給され、光電変換素子(フォトダイオード)23に対してバイアス電源36からバイアス電圧が印加され、TFT41に接続された信号線と接続されTFT41から信号を読み出す信号読出し回路40に電圧が印加され続ける給電状態をいう。
また、撮影休止モードとは、光電変換素子23に対するバイアス電圧の印加及び信号読出し回路40に対する電圧の印加を停止している給電状態をいう。なお、撮影休止モードの際は、外部からの信号を受けるための通信部35に対してだけ電力を供給し、全ての機能部に対する電力供給を停止させる場合には、電源スイッチ22をOFFとなるようにする。
なお、撮影モードにおいて、バッテリ28から電力が供給される機能部はバイアス電源36と、信号読出し回路40に限定されない。また、撮影休止モードにおいて電圧の印加が停止される機能部はバイアス電源36及び信号読出し回路40に限定されない。
【0059】
また、カセッテ制御部30には、温度センサ27からセンサパネル部24の温度の測定結果が送られるようになっており、カセッテ制御部30は、温度センサ27により測定されたセンサパネル部24の温度が、記憶部31に記憶されているデフォルト値としてのオフセット補正値を算出した際の温度よりも所定以上変動しているか否かを判断する。具体的には、カセッテ制御部30は、ROM等に記憶されている閾値を参照して、温度センサ27による測定結果が閾値を超えているか否かを判断する。
そして、温度の変動が所定以上である(すなわち、閾値を超えている)場合には、カセッテ制御部30は、撮影前に再度オフセット補正値を取得するように各機能部を制御する補正値取得制御手段として機能する。具体的には、カセッテ制御部30は、撮影を行う直前に複数回ダーク読取を行わせ、読取部45によりセンサパネル部24から読み取られた出力値に基づくダーク読取値を取得するとともに、演算手段として複数回分のダーク読取値の平均値を算出してオフセット補正値を算出する。新たに算出されたオフセット補正値は、最新のオフセット補正値として、デフォルト値としてのオフセット補正値とは別に記憶部31に記憶される。なお、このオフセット補正値は、新たに算出される毎に更新され、最新のものが記憶部31に記憶されていく。
【0060】
コンソール5は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)等で構成される制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信部55、ネットワーク通信部56、等を備えて構成されており、各部はバス57により接続されている。
【0061】
記憶部52は、図示しないROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。
ROMは、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリ等で構成されており、ROMには、患部を検出するための自動部位認識に基づく階調処理・周波数処理等の画像処理を行うためのプログラム等、各種のプログラムが記憶されているほか、撮影画像の画像データを診断に適した画質に調整するための画像処理パラメータ(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数処理の強調度等)等が記憶されている。
RAMは、制御部51により実行制御される各種処理において、ROMから読み出されて制御部51で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
本実施形態では、記憶部52は、患者情報、撮影オーダ情報等を記憶している。また、記憶部52は、FPDカセッテ2から送信された実写画像データやこれに付帯する情報等を一時的に記憶するようになっている。
【0062】
制御部51は、ROMに記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行するコンソール5の制御手段である。
制御部51は、FPDカセッテ2から送られた実写画像データに基づく画像を表示する表示するように表示部54の表示を制御する表示制御手段である。
【0063】
また、制御部51は、被写体を提供する患者の患者情報、撮影オーダ情報を取得するとともに、取得した患者情報・撮影オーダ情報とFPDカセッテ2で生成されコンソール5に送信された画像データとを対応付ける対応付け手段として機能する。なお、撮影オーダ情報等は、入力部53から入力され記憶部52等に記憶されているものであってもよいし、HIS/RIS8等から予め登録されている被写体情報(撮影オーダ情報)を取得するようになっていてもよい。
【0064】
また、コンソール5には、FPDカセッテ2からオフセット補正後の実写画像データが送られるようになっており、実写画像データが送られてくると、制御部51は、HIS/RIS等に記憶されているFPDカセッテごとのゲイン補正値の中から、カセッテIDに基づいて、撮影に用いられたFPDカセッテに対応するゲイン補正値を抽出する。そして、抽出されたゲイン補正値を用いてオフセット補正後の実写画像データに対しゲイン補正を行う。
さらに、制御部51は、このオフセット補正・ゲイン補正後の実写画像データに対して、撮影部位に応じた階調処理・周波数処理等の画像処理を行い、診断用の確定画像データを生成する。
【0065】
入力部53は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。
【0066】
表示部54は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニタを備えて構成されており、制御部51から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0067】
通信部55は、無線アクセスポイント6を介してFPDカセッテ2等との間で無線方式により情報の送受信を行うものである。
本実施形態では、あるFPDカセッテ2を使用して撮影を行う際に、通信部55から当該FPDカセッテ2に対して起動信号が送信される。この起動信号は、FPDカセッテ2に対して、撮影可能な状態に遷移するよう指示する指示信号であり、FPDカセッテ2が撮影休止モードにある場合には、FPDカセッテ2は起動信号により撮影休止モードから覚醒し、撮影モードに遷移する。
【0068】
ネットワーク通信部56は、ネットワークインターフェース等により構成され、スイッチングハブを介してネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
本実施形態において、ネットワークNを介してコンソール5のネットワーク通信部56と接続される外部装置としては、HIS/RIS8、PACSサーバ9、イメージャ10等があるが、ネットワークNに接続される外部装置はここに例示したものに限定されない。
【0069】
HIS/RIS8は、撮影に関する被写体の撮影オーダ情報をコンソール5に提供する。撮影オーダ情報は、例えば検査対象を提供する患者の氏名等の患者情報や、撮影部位、撮影方法、撮影に使用するブッキー装置3の種類(臥位用のブッキー装置3aか立位用のブッキー装置3bか等)等の撮影予約に関する情報等を含んでいる。なお、撮影オーダ情報はここに例示したものに限定されず、これ以外の情報を含んでいてもよいし、上記に例示した情報のうちの一部でもよい。
また、本実施形態において、HIS/RIS8は、FPDカセッテ2ごとに予め定められているゲイン補正値等を、各FPDカセッテ2のカセッテIDと対応付けて記憶する記憶手段である。なお、オフセット補正値やゲイン補正値を記憶する記憶手段は、HIS/RIS8に限定されない。
【0070】
PACSサーバ9は、コンソール5から出力された診断用の確定画像データを保存するものである。
また、イメージャ10は、コンソール5から出力された確定画像データに基づいて放射線画像をフィルムなどの画像記録媒体に記録し、出力する。
【0071】
次に、図6及び図7を参照しつつ、本実施形態におけるFPDカセッテ2の作用について説明する。
【0072】
コンソール5の通信部55から起動信号が送信され、FPDカセッテ2の通信部35によりこの起動信号が受信されると(ステップS1)、カセッテ制御部30は、少なくともバイアス電源36と信号読出し回路40(図3及び図4参照)に対してバッテリ28から電力が供給され、光電変換素子(フォトダイオード)23に対してバイアス電源36からバイアス電圧が印加され、TFT41に接続された信号線と接続されTFT41から信号を読み出す信号読出し回路40に電圧が印加され続ける給電状態(撮影モード)となるように電力供給手段を制御する(ステップS2)。そして、温度センサ27を動作させてセンサパネル部24の温度を測定させる(ステップS3)。温度センサ27による測定結果はカセッテ制御部30に出力される(ステップS4)。
【0073】
カセッテ制御部30は、この測定結果を受け取ると、記憶部31に記憶されているデフォルト値としてのオフセット補正値を算出した際の温度情報とROM等に記憶されている温度の閾値とを読み出して、温度センサ27による測定結果が、デフォルト値としてのオフセット補正値を算出した際の温度より所定以上、例えば2℃以上変動しているか否か(すなわち閾値を超えているか否か)を判断する(ステップS5)。
そして、所定以上変動していると判断した場合(ステップS5:YES)には、撮影の直前に複数回(例えば5回)ダーク読取をおこなうように読取部45を制御して複数回分のダーク読取値を取得する(ステップS6)。さらに、カセッテ制御部30は、演算手段としてこのダーク読取値の平均値を求め、オフセット補正値を算出する(ステップS7)。算出されたオフセット補正値は、最新のオフセット補正値として記憶部31に記憶される(ステップS8)。
他方、温度センサ27による測定結果が、デフォルト値としてのオフセット補正値を算出した際の温度より所定以上変動していないとカセッテ制御部30が判断した場合(ステップS5:NO)には、ダーク読取及びオフセット補正値の算出は行わない。
【0074】
その後、撮影が行われ、実写画像データが取得されて(ステップS9)、記憶部31に記憶される(ステップS10)。カセッテ制御部30は、新たにオフセット補正値の算出が行われたとき(ステップS5:YES)は、最新のオフセット補正値により、オフセット補正値の算出が行われなかったとき(ステップS5:NO)は、デフォルト値としてのオフセット補正値により、実写画像データについてオフセット補正を行う(ステップS11)。そして、カセッテ制御部30は、通信部35を介してオフセット補正後の実写画像データをコンソール5に送信する(ステップS12)。
【0075】
なお、操作装置7から曝射指示信号が送信されてからの経過時間が計時手段34によって計時されており、カセッテ制御部30は、この経過時間が所定の時間以上となったか否かを判断する(ステップS13)。そして、所定時間以上となるまで(ステップS13:NO)は、撮影モードを維持して(ステップS14)、さらに経過時間が所定の時間以上となったか否かの判断を繰り返す。所定時間以上となっても次の撮影が行われないとき(ステップS13:YES)は、光電変換素子23に対するバイアス電圧の印加及び信号読出し回路40に対する電圧の印加等を停止し、外部からの信号を受けるための通信部35に対してだけバッテリ28から電力を供給する給電状態(撮影休止モード)となるように電力供給手段を制御する(ステップS15)。
【0076】
以上のように、本実施形態によれば、FPDカセッテ2が起動信号を受けて撮影休止モードから覚醒するとセンサパネル部24の温度を温度センサ27で測定し、この測定結果によって、デフォルト値としてのオフセット補正値を用いることができるかどうかを判断する。
オフセット補正値は温度変化等により大きく変化するため、温度変化があったときには、それに応じて適宜オフセット補正値を更新する必要がある。この点、本実施形態では、センサパネル部24の温度に所定以上の変動がある場合には、撮影前に新たにオフセット補正値を算出するため、撮影時の状況に近い状況下で取得された適切なオフセット補正値を用いて精度の高いオフセット補正を行うことができる。
また、センサパネル部24の温度に所定以上の変動がない場合には、予め記憶部31に記憶されているデフォルト値としてのオフセット補正値を用いても適切なオフセット補正を行うことができる。そのため、この場合には、新たなオフセット補正値の算出を行わずに、デフォルト値としてのオフセット補正値を用いてオフセット補正を行うことにより、バッテリ28で駆動するFPDカセッテ2において、無駄な電力消費を抑えてバッテリ28の充電周期を伸ばすことができる。
【0077】
また、一定時間撮影が行われないときには、カセッテ制御部30の制御により、自動的に撮影休止モード、すなわち、光電変換素子23に対するバイアス電圧の印加及び信号読出し回路40に対する電圧の印加等を停止し、外部からの信号を受けるための通信部35に対してだけバッテリ28から電力を供給する給電状態となるので、無駄な電力消費を抑えてバッテリ28の充電周期を伸ばすことができる。
そして、このように自動的に撮影休止モードに遷移する場合には、センサパネル部24等の温度変化が少ないため、予め記憶されているデフォルト値としてのオフセット補正値をそのまま使用することができる。このため、頻繁にダーク読取及びオフセット補正値の算出を行う必要がなく、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、FPDカセッテ2においてオフセット補正を行った上で補正後の実写画像データをコンソール5に送信するようにしたが、オフセット補正はコンソール5の側で行ってもよい。この場合には、実写画像データとこれに対応するオフセット補正値とを対応付けてコンソール5に送信する。
【0079】
また、本実施形態では、センサパネル部24の温度が比較的安定しているときに取得されたダーク読取値に基づくオフセット補正値をデフォルト値としてのオフセット補正値とし、記憶部31には、このデフォルト値としてのオフセット補正値と適宜取得される最新のオフセット補正値とが記憶されており、このうち最新のオフセット補正値は新たに取得される度に順次更新される場合を例として説明したが、記憶部31に記憶されているオフセット補正値はこれに限定されない。例えば、新たにオフセット補正値を算出する度に、算出されたオフセット補正値を算出時のセンサパネル部24の温度と対応付けて記憶させてもよい。
この場合、温度センサ27からセンサパネル部24の温度の測定結果が送られると、カセッテ制御部30が当該温度に最も近い温度のときに算出されたオフセット補正値を抽出し、温度変動(すなわち温度差)が所定の閾値以下であれば、新たにオフセット補正値を算出することなく、当該オフセット補正値を用いてオフセット補正を行うようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、FPDカセッテ2でダーク読取を行った場合に、カセッテ制御部30がダーク読取値の平均値を算出する等によりオフセット補正値を算出する場合を例としたが、オフセット補正値はカセッテ制御部30において算出する場合に限定されない。例えば、FPDカセッテ2でダーク読取を行うと、当該ダーク読取によるダーク読取値(例えば5回のダーク読取による5回分のダーク読取値を加算したデータ)を実写画像データとともにコンソール5に送信し、コンソール5の制御部51により、当該ダーク読取値からオフセット補正値を算出(例えば5回分のダーク読取値の平均値を算出)してオフセット補正を行うように構成してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、FPDカセッテ2が計時手段を備え、この計時手段34により曝射指示信号が送信されてからの経過時間を計時し、一定時間が経過しても撮影が開始されないときは撮影休止モードに遷移するようにしたが、例えば、曝射指示信号が送信されてからの経過時間をコンソール5からFPDカセッテ2に送信し、カセッテ制御部30は、これに基づいて撮影休止モードに遷移するか否かを判断してもよい。
【0082】
また、本実施形態においては、前室R2に、操作装置7を備え、これとは別個に放射線画像撮影システム1全体の制御を行うコンソール5が設けられる構成としたが、各前室R2に操作装置7に代えてコンソール5を備える構成としてもよい。この場合、コンソール5は、放射線画像撮影システム1全体の制御を行うとともに、放射線発生装置4の制御や、ブッキー装置3の操作等も適宜行う。
【0083】
また、本実施形態においては、撮影オーダ情報は、コンソール5の制御部51が、記憶部52に予め保存してあるものを読み出したり、HIS/RIS8等に予め登録されている撮影オーダ情報をネットワークNを介して取得するものとしたが、撮影オーダ情報は、必ずしも放射線画像撮影前に作成されている必要はなく、放射線画像撮影後に、取得された画像データと対応付けるようにして撮影オーダ情報を作成するように構成することも可能である。
【0084】
また、本実施形態では、コネクタ部26に直接ケーブル49が接続される構成を例として説明したが、コネクタ部26にケーブル49が接続される構成はこれに限定されない。例えば、FPDカセッテ2をクレードル等に載置したり、ブッキー装置3に装填したりすると、外部電源等に接続されているケーブル49が、クレードルやブッキー装置3を介してFPDカセッテ2のコネクタ部26に間接的に接続される構成としてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、バッテリ28のみによって駆動する場合を例として説明したが、コネクタ部等を介して外部電源と接続されたときは外部電源によって駆動することも可能なように構成してもよい。
【0086】
また、本実施形態では、FPDカセッテ2は、アンテナ装置46を介して無線方式でコンソール5等の外部装置と通信を行うように構成したが、例えば通信用のコネクタ部を設けて、これに通信用のケーブルが接続されたときは有線方式で外部機器と通信できるように構成してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、センサパネル部24の温度の変動が所定以上である場合には、撮影の直前にダーク読取を行うようにしたが、ダーク読取を行うタイミングは当該撮影時の特性に最も近いオフセット補正値を得られるタイミングであればよく、特に限定されない。例えば、撮影の直後にダーク読取を行ってもよい。
【0088】
その他、本発明が本実施の形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】放射線画像撮影システムの一実施形態のシステム構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態におけるFPDカセッテを示す斜視図である。
【図3】図2に示すFPDカセッテのセンサパネル部及び読取部等の構成を示す等価回路図である。
【図4】図2に示すFPDカセッテの機能的構成及びバッテリから各機能部に給電する給電回路を示す要部ブロック図である。
【図5】図1に示す放射線画像撮影システムに適用されるコンソールの機能的構成を示す要部ブロック図である。
【図6】本実施形態におけるFPDカセッテの作用を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態におけるFPDカセッテの作用を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 放射線画像撮影システム
2 FPDカセッテ(放射線固体検出器)
5 コンソール
7 操作装置
22 電源スイッチ
24 アンテナ装置
27 温度センサ(温度測定手段)
28 バッテリ
30 カセッテ制御部
35 通信部
51 制御部
55 通信部
N ネットワーク
R1 撮影室
R2 前室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射線検出素子を2次元状に配置した検出手段と、
前記検出手段の前記各放射線検出素子の出力値を各画素単位で読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記出力値に基づいて各画素毎のオフセット補正値を算出する演算手段と、
前記読取手段及び前記演算手段を制御してオフセット補正値を取得させる補正値取得制御手段と、
オフセット補正値を記憶する補正値記憶部と、
各機能部に電力を供給する内部給電手段を含む電力供給手段と、
前記電力供給手段による各機能部に対する電力供給を制御する給電制御手段と、
前記検出手段の温度を測定する温度測定手段と、
を有する放射線固体検出器であって、
前記給電制御手段は、所定期間撮影が実行されない場合には撮影可能な撮影モードから撮影を休止する撮影休止モードに遷移し、所定の起動信号が入力されると撮影モードに遷移するように、前記電力供給手段による各機能部に対する給電状態を制御するものであり、
前記温度測定手段は、前記起動信号が入力された後に前記温度を測定し、
補正値取得制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度が、前記補正値記憶部に記憶されているオフセット補正値を算出した際の温度よりも所定以上変動している場合には、新たにオフセット補正値を取得するように前記読取手段及び前記演算手段を制御することを特徴とする放射線固体検出器。
【請求項2】
前記給電制御手段は、前記撮影休止モードにおいて、前記検出手段及び前記読取手段に対する電力供給を停止させ又は電力供給レベルを低減させるように、前記電力供給手段による各機能部に対する給電状態を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の放射線固体検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−71659(P2010−71659A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236052(P2008−236052)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】