放射線撮影装置及びその制御方法
【課題】変換素子のリセットを目的とする光を照射する光源の負荷や消費電力、発熱量を低減するとともに、変換素子の劣化の促進を抑制する。
【解決手段】変換素子を有する画素を複数含み構成され、被写体300を透過した放射線111bに基づく放射線画像を取得するための平面検出器120と、変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源130と、前記放射線画像の撮影を行う前に、放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出し、当該基準値に基づいて変換素子を飽和状態とする光を光源130から照射する制御を行う制御部150を備える。
【解決手段】変換素子を有する画素を複数含み構成され、被写体300を透過した放射線111bに基づく放射線画像を取得するための平面検出器120と、変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源130と、前記放射線画像の撮影を行う前に、放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出し、当該基準値に基づいて変換素子を飽和状態とする光を光源130から照射する制御を行う制御部150を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置及びその制御方法に関するものである。なお、本明細書では、X線、γ線などの電磁波やα線、β線も放射線に含めるものとして説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコンやアモルファスセレン等の非単結晶半導体を主材料とし、放射線又は光を電荷に変換する変換素子を具備したデジタル放射線撮影装置が実用化されてきている。また、CCDやCMOSセンサなど、単結晶半導体を主材料とし、放射線又は光を電荷に変換する変換素子を具備したデジタル放射線撮影装置も実用化されてきている。
【0003】
放射線撮影装置としては、放射線を可視光に変換する蛍光体を用いて、当該可視光を、アモルファスシリコン等を主材料とする変換素子で電荷に変換する間接方式と、アモルファスセレン等を主材料とする変換素子で放射線を直接電荷に変換する直接方式とがある。どちらの方式も、大面積で薄い放射線検出装置を実現できることから、フラットパネルディテクタ(FPD)、或いは、平面検出器とも呼ばれ、被写体の撮影からその放射線画像を観察するまでの時間が非常に短いという特徴を有している。
【0004】
これらの放射線撮影装置は、装置に電源が投入されて変換素子にバイアスが与えられてからの経過時間や、撮影動作の時間、装置に照射される放射線量又は光量等の影響を受けて、装置の特性の変動やそれにより取得される画像信号に変動が生じる恐れがある。例えば、変換素子のダングリングボンドや欠陥がトラップ準位として働くことにより暗電流が変動したり、過去の放射線又は光照射の履歴の影響で残像(ラグ)が発生又は変動したりする恐れがある。また、それらの少なくとも1つの要因により、変換素子における放射線又は光の入力と発生する電荷の出力との入出力特性である感度が変動する恐れがある。
【0005】
そこで、下記の特許文献1や特許文献2では、放射線撮影装置に被写体情報を担う放射線を照射する前に、別途準備された光源から被写体情報を担わない光を照射して、装置の特性や取得される画像信号の変動を抑制する変動抑制効果を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−181183号公報
【特許文献2】特開2008−256675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の技術では、被写体情報を担わない光の1回に照射する照射量が多くなるという懸念がある。この場合、光を放射する光源に流れる電流量の増大に伴って、光源の負荷が増大して光源の消費電力が増大し、更に、光源の発熱量も増大する結果となる。また、光源からの1回の光の照射量が多いと、光が照射される変換素子の素子劣化が促進されてしまう。また、直前に放射線を照射した範囲によって、残像が発生する範囲も異なってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、変換素子のリセットを目的とする光を照射する光源の負荷や消費電力、発熱量を低減するとともに、変換素子の劣化の促進を抑制する放射線撮影装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線撮影装置は、放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置であって、変換素子を有する画素を複数含み構成され、前記被写体を透過した前記放射線に基づく放射線画像を取得するための平面検出器と、前記変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源と、前記放射線画像の撮影を行う前に、前記放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出し、当該基準値に基づいて前記変換素子を飽和状態とする光を前記光源から照射する制御を行う制御部とを有する。
また、本発明は、上述した放射線撮影装置の制御方法を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変換素子のリセットを目的とする光を照射する光源の負荷や消費電力、発熱量を低減することが可能となるとともに、変換素子の劣化の促進を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す平面検出器の概略構成の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置を含む放射線撮影システムの概略構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、オフセット画像の最小画素値が検出された画素を含む横ライン画素の画素値の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態を示し、放射線絞り範囲の変更に伴って設定される基準値の検出範囲の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成の一例を示す模式図である。この図1に示す放射線撮影装置100は、特に、医療用として使われる。
【0015】
放射線撮影装置100は、図1に示すように、例えば、放射線源110、平面検出器120、光源130、画像処理回路140、及び、制御部150を有して構成されている。
【0016】
放射線源110は、制御部150の制御に基づいて、患者等の被写体300に、X線などの放射線111aを照射するものである。
【0017】
平面検出器120は、図1に示すように、例えば、波長変換体121、センサ部122、駆動回路123、及び、読み出し回路124を有して構成されている。
【0018】
波長変換体121は、被写体300を透過した放射線111bを可視光に波長変換するものである。センサ部122は、変換素子を有する画素を複数含み構成され、波長変換体121により得られた可視光に応じた電気信号を出力するものである。駆動回路123は、制御部150の制御に基づいて、センサ部122の駆動を行うものである。読み出し回路124は、制御部150の制御に基づいて、センサ部122からの電気信号を読み出してデジタル画像信号(放射線画像信号)を出力するものである。
【0019】
光源130は、制御部150の制御に基づいて、放射線撮影装置100の特性や取得される放射線画像信号の変動を抑制するために、被写体情報を担わない光をセンサ部122に放射するものである。具体的に、光源130は、センサ部122の変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射するものである。本実施形態では、少なくとも平面検出器120と光源130とが筐体(不図示)内に設けられている。
【0020】
画像処理回路140は、制御部150の制御に基づいて、読み出し回路124から読み出されたデジタル画像信号に対して適宜画像処理を行うものである。なお、画像処理回路140で行われる画像処理の具体的方法は、デジタル画像信号を利用するものであって、上記課題を解決できるものであれば何でも良い。
【0021】
制御部150は、必要に応じて、放射線源110、駆動回路123、読み出し回路124、光源130、画像処理回路140等の制御を行って、放射線撮影装置100における動作を統括的に制御するものである。例えば、制御部150は、画像処理回路140で画像処理されたデジタル画像信号を入力し、入力したデジタル画像信号に基づいて、光源130の動作を制御する。
【0022】
なお、画像処理回路140と制御部150は、それらの少なくとも1つが読み出し回路124と同じIC又は異なるICに組み込まれて筐体内に保持されていてもよい。また、放射線撮影装置100では、放射線源110と平面検出器120との間に被写体300が設置され、被写体情報を担う被写体300を透過した放射線111bの線量に応じた電気信号に基づくデジタル画像信号が取得される。
【0023】
また、本実施形態では、平面検出器120として、波長変換体121を設け、波長変換体121で放射線から波長変換された可視光をセンサ部122で電気信号に変換する間接方式の形態を用いたが、本発明においてはこれに限定されるものではない。例えば、波長変換体121を用いずにセンサ部122で放射線を直接電気信号に変換する直接方式の形態を用いても構わない。
【0024】
本実施形態では、制御部150(必要に応じて平面検出器120及び画像処理回路140も含む)が、光源130からセンサ部122への光の照射の必要性を示す情報を検出する手段として機能している。
【0025】
次に、平面検出器120の詳細に説明する。
図2は、図1に示す平面検出器120の概略構成の一例を示す模式図である。なお、図2に示す例では、説明の便宜上、画素1220の個数として3行×3列の9個を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、画素数は必要に応じて適宜その行列数が決められるものである。
【0026】
センサ部122は、ガラス基板等の絶縁性基板上に、画素1220(S11〜S33)が2次元行列状に複数配置された放射線検出部を有している。各画素1220(S11〜S33)は、それぞれ、放射線又は光を電荷に変換する変換素子1221(D11〜D33)と、当該変換された電荷に基づく電気信号を出力するためのスイッチ素子1222(T11〜T33)とを有して構成されている。また、各変換素子1221(D11〜D33)は、放射線又は光を電荷に変換する変換部Dと、当該電荷を蓄積する容量C1とを有して構成されている。なお、容量C1を変換素子1221の外部に別途構成する形態でもよい。
【0027】
本実施形態における平面検出器120は間接方式であるため、図2では不図示であるが、センサ部122の上面に、図1に示す波長変換体121が構成されている。ここで、波長変換体121は、例えば、CsI:TlやGd2O2S:Tb等の材料が好適に用いられて形成されている。
【0028】
また、本実施形態における変換素子1221(D11〜D33)は、例えば、アモルファスシリコンを主材料とするMIS型変換素子を用いて構成されている。ただし、本発明においてはこれに限定されるものではなく、PIN型変換素子を用いて構成されていてもよい。また、変換素子1221(D11〜D33)として、アモルファスセレンなどを主材料とした放射線を直接電荷に変換可能な素子を用いてもよく、この場合、波長変換体121は不要となる。また、変換素子1221(D11〜D33)は、2つの電極と、その2つの電極の間に設けられた半導体層とを少なくとも有して形成されている。
【0029】
本実施形態におけるスイッチ素子1222(T11〜T33)は、例えば、アモルファスシリコンを主材料とする薄膜トランジスタ(TFT)を用いて構成されている。ただし、本発明においてはこれに限定されるものではなく、ポリシリコンを主材料とするTFTを用いてもよい。また、本実施形態におけるスイッチ素子1222(T11〜T33)は、図2に示すように、三端子の能動素子を用いているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、スイッチングダイオードなどの2端子の能動素子を用いてもよい。また、本実施形態におけるスイッチ素子1222(T11〜T33)は、図2に示すように、変換素子1221の一方の電極と当該スイッチ素子1222の2つの主電極であるソース及びドレインのうちの一方が接続されている。しかしながら、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば、変換素子1221とスイッチ素子1222のゲートが接続されてソース・フォロウ・アンプを構成するものであってもよい。その際には、変換素子1221とスイッチ素子1222のゲートとの接続部の電位を初期化するためのスイッチ素子を別途設けてもよい。
【0030】
駆動配線G1〜G3は、センサ部122における行方向の複数の画素1220のスイッチ素子1222の制御端子であるゲートに、行単位で共通に接続されており、駆動回路123からの駆動信号を各スイッチ素子1222に伝送するものである。信号配線M1〜M3は、センサ部122における列方向の複数の画素1220のスイッチ素子1222のソース又はドレインの他方に、列単位で共通に接続されており、スイッチ素子1222によって出力された電気信号を読み出し回路124に伝送するものである。また、本実施形態では、変換素子1221の他方の電極には、複数の画素1220に共通のバイアス配線(不図示)が接続されており、変換素子1221が放射線又は光を電荷に変換するためのバイアスが変換素子1221に供給されるようになっている。
【0031】
このように、センサ部122は、絶縁性基板上に設けられた画素1220(S11〜S33)、駆動配線G1〜G3、信号配線M1〜M3、バイアス配線を有して構成されている。
【0032】
駆動回路123は、駆動配線G1〜G3と電気的に接続され、各駆動配線G1〜G3に接続されている画素1220のスイッチ素子1222に行単位で駆動信号を印加して、スイッチ素子1222の導通状態と非道通状態を制御してセンサ部122を駆動する。
【0033】
ここで、駆動回路123から出力される駆動信号は、スイッチ素子1222を導通状態とするパルス状の導通電圧を有している。例えば、駆動回路123から1行目の駆動配線G1を介して駆動信号が印加されたスイッチ素子(T11〜T13)は導通状態となり、変換素子(D11〜D13)の電荷に応じた電気信号が信号配線M1〜M3を介して行単位で並列に出力される。同様に、2行目のスイッチ素子(T21〜T23)も3行目のスイッチ素子(T31〜T33)も順次駆動され、画素1220から行単位で出力された電気信号は、読み出し回路124で1フレームのデジタル画像信号に変換されて出力される。
【0034】
読み出し回路124は、信号配線M1〜M3と電気的に接続され、信号配線M1〜M3を介して出力された電気信号を行単位で並列に読み出し、並列の信号を直列の信号に変換し且つアナログの信号をデジタル信号へ変換してデジタル画像信号を出力する。
【0035】
読み出し回路124は、信号配線M1〜M3に電気的に接続され、当該各M1〜M3からの電気信号を増幅して出力する演算増幅器(A1〜A3)と、当該演算増幅器からの電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路を有している。ここで、サンプルホールド回路は、電気信号をサンプリングするスイッチ(Sr1〜Sr3)と、サンプリングされた電気信号を保持する容量(CL1〜CL3)によって構成されている。これらの演算増幅器(A1〜A3)とサンプルホールド回路は、信号配線M1〜M3ごとに設けられており、センサ部122から並列に出力された電気信号は、サンプルホールド回路まで並列に処理される。
【0036】
読み出し回路124は、更に、マルチプレクサSr4と、演算増幅器Bと、アナログデジタル変換器(A/D変換器)1241を有して構成されている。マルチプレクサSr4は、信号配線M1〜M3ごとに設けられたサンプルホールド回路に保持された電気信号を順次出力して直列の画像信号に変換する。演算増幅器Bは、マルチプレクサSr4から出力された画像信号をインピーダンス変換する。A/D変換器1241は、演算増幅器Bから出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し、当該デジタル画像信号を出力する。
【0037】
なお、図2に示す例では、A/D変換器1241をマルチプレクサSr4の後段に設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、A/D変換器1241を、信号配線M1〜M3ごとにマルチプレクサSr4の前段に設けてもよい。また、読み出し回路124中の構成は一例であって様々な形態が考えられるが、信号配線M1〜M3からのアナログ信号を入力して、増幅、マルチプレクス、A/D変換を行ってデジタル画像信号として出力する機能があれば、図2に示す構成以外でも構わない。
【0038】
なお、図2には示されていないが、本実施形態の放射線撮影装置100には、図1に示すように、センサ部122の受光面(即ち放射線の入射側)に対して反対側の表面(裏面)と、筐体との間に光源130が配置されている。ここで、センサ部122の受光面は、画素1220が形成された表面であり、波長変換体121と対向しており、被写体300の撮影時には放射線が照射される側の表面である。
【0039】
光源130は、有機ELパネルやLED、冷陰極管などが好適に用いられ、また、必要に応じて周知の導光体と組み合わせて用いてもよい。また、光源130の発光波長は、変換素子1221(D11〜D33)が吸収可能な帯域であることが望まれる。また、光源130から照射された光は、センサ部122の裏面から直接入射して、各変換素子1221(D11〜D33)の半導体層に吸収される。
【0040】
次に、図1及び図2を用いて、平面検出器120による画像取得動作を説明する。
被写体300の放射線画像を取得する際に、制御部150は、放射線源110から被写体300に放射線111aを照射する制御を行う。これにより、被写体300を透過した放射線111bが平面検出器120に照射される。
【0041】
そして、平面検出器120に照射された放射線111bは、波長変換体121においてセンサ部122の変換素子1221(D11〜D33)が感知可能な波長帯域の光に波長変換を行い、波長変換された光が変換素子1221(D11〜D33)に照射される。そして、変換素子1221(D11〜D33)では、変換部Dにおいて照射された光の量に応じて電荷を発生し、当該電荷は容量C1に蓄積される。ここまでの動作を「蓄積動作」と称する。
【0042】
次に、制御部150は、駆動回路123を制御して、駆動回路123から各駆動配線G1〜G3に駆動信号を与えて、行ごとにスイッチ素子1222(T11〜T33)を導通状態にして画素1220から電荷に基づく電気信号を出力する読み出し動作を行う。本実施形態では、駆動回路123からの駆動信号は、1行目の駆動配線G1、2行目の駆動配線G2、3行目の駆動配線G3の順に順次印加される。このため、上述したように、読み出し動作のためのスイッチ素子1222の制御は、行単位で行われ、行単位で画素1220から電気信号の出力が並列に行われる。
【0043】
具体的には、まず、駆動回路123から1行目の駆動配線G1に駆動信号が印加され、1行目のスイッチ素子T11〜T13の制御端子に導通電圧が与えられる。これにより、1行目のスイッチ素子T11〜T13がオン状態となり、1行目の画素S11〜S13の各容量C1に蓄積されていた電荷に基づく電気信号が、信号配線M1〜M3に並列に出力される。そして、信号配線M1〜M3に出力された電気信号は、読み出し回路124で読み出される。
【0044】
読み出し回路124に読み出された電気信号は、演算増幅器A1〜A3で増幅される。ここで、演算増幅器A1〜A3に接続されたリセット用スイッチSw1〜Sw3は、制御部150の制御により、電気信号の読み出しを行っている時は開放されている。続いて、制御部150は、サンプルホールド回路のスイッチSr1〜Sr3を導通して、演算増幅器A1〜A3で増幅された電気信号をサンプルホールド回路の容量CL1〜CL3に蓄積する制御を行う。容量CL1〜CL3に電気信号が蓄積された後、制御部150は、スイッチSr1〜Sr3を非導通とし、容量CL1〜CL3と信号配線M1〜M3の電気的接続を遮断する。その後、制御部150は、リセット用スイッチSw1〜Sw3を用いて演算増幅器A1〜A3及び信号配線M1〜M3をリセットし、次の行からの電気信号の出力に備える。ここまでの動作を「読み出し動作」と称する。
【0045】
そして、容量CL1〜CL3にサンプルホールドされた電気信号は、マルチプレクサSr4で順次出力されて並列/直列変換されて、増幅器Bに順次読み出される。これにより、容量CL1、CL2及びCL3の順で蓄積されていた電気信号を順次出力することができる。この際、制御部150は、増幅器Bの容量Cf4は出力するごとに蓄積される電荷量が変化するため、マルチプレクサSr4で容量CL1〜CL3を選択するごとに、スイッチSw4を短絡して容量Cf4を初期状態に戻す必要がある。
【0046】
これにより1行目の画素S11〜S13の電荷に基づく電気信号が、マルチプレクサSr4によりアナログ電気信号として増幅器Bに順次出力されることになる。そして、このアナログ電気信号は、増幅器Bでインピーダンス変換され、A/D変換器1241でデジタルアナログ変換され、1行分のデジタル画像信号として出力される。ここまでの動作を「出力動作」と称する。
【0047】
この読み出し動作と出力動作とを2行目及び3行目の画素1220に対しても同様に順次行うことにより、各行分のデジタル画像信号が読み出し回路124から出力される。また、本実施形態では、例えば1行目の出力動作と2行目の読み出し動作とを同じ期間内に時間的に重ねて行うようにする。これにより、1行目の出力動作の後に2行目の読み出し動作を行う形態に比べて、1画像分の画像信号を取得する撮影動作の時間を短くすることが可能となる。
【0048】
次に、本実施形態に係る放射線撮影装置100、及び、当該放射線撮影装置100を含む放射線撮影システムの制御方法について説明する。
【0049】
放射線撮影装置100では、装置に電源が投入され変換素子1221にバイアスが与えられてからの経過時間や、撮影動作の時間、平面検出器120に照射される放射線量又は光量等の影響を受けて、装置の特性の変動や取得される画像信号に変動が生じる。これを解決するために、本実施形態の放射線撮影装置100では、被写体300の画像情報を有する放射線111bとは別に、光源130から照射された画像情報を担わない光をセンサ部122に照射して、装置の特性の変動や画像信号の変動を抑制している。ただし、この場合、画像情報を担わない光の1回の照射量が、変換素子1221の飽和状態になる以上である場合、無駄な光を変換素子1221に照射してしまい、変換素子1221の劣化や光照射を行う光源130の劣化を招く結果となる。そのため、本実施形態の放射線撮影装置100では、変換素子1221が飽和状態になるまでの光を照射できるように、予め光源130の入力電圧を調整する必要がある。
【0050】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置を含む放射線撮影システムの概略構成の一例を示す模式図である。ここで、図3において、図1に示す放射線撮影装置100と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0051】
放射線撮影システム10は、図3に示すように、例えば、放射線撮影装置100と、テーブル210と、放射線発生装置220と、モニタ230を有して構成されている。
【0052】
テーブル210は、図1に示す被写体300を載置する台である。
放射線源110は、被写体300を載置するテーブル210を挟んで、平面検出器120と対向した位置に取り付けられている。平面検出器120は、図1と同様に、波長変換体121と、センサ部122と、駆動回路123と、読み出し回路124を有して構成されている。なお、図3に示す例では、平面検出器120は、テーブル210に取り付けられている例が示されているが、例えば、カセッテとして自由に持ち運べる形態であってもよい。この平面検出器120は、ケーブル又は無線通信によって、PC(パーソナルコンピュータ)からなる制御部150と接続されており、放射線撮影装置100の内部にある電源(不図示)、放射線発生装置220を介した放射線源110と同期が取られている。
【0053】
放射線発生装置220には、撮影ボタン(動画)221及び撮影ボタン(静止画)222の各種のボタン等が設けられており、当該各種のボタンの操作状態及び制御部150の制御に従って、放射線源110から放射線111aを発生させる。
【0054】
モニタ230は、例えば制御部150に接続されており、撮影者(技師、医師等)は、モニタ230を通じて撮影画像を確認することが可能となっている。
【0055】
また、本実施形態では、PCからなる制御部150とは別構成で画像処理回路140が構成されているが、例えばPCからなる制御部150の内部に画像処理回路140が構成されている形態であってもよい。画像処理回路140は、センサ部122からの出力を読み出し回路124を経てデジタル画像信号として取得し、画像処理を行う。
【0056】
本実施形態の制御部150は、画像処理回路140から得られた暗出力値及びそれが1画像分となった暗出力画像を用いた演算処理後の情報と、放射線源110の動作状態に基づいて、光源130の発光動作の制御を行う。なお、光源130を発光させる条件等は、後述する。
【0057】
また、放射線撮影装置100には、撮影モードとして、放射線画像を静止画で撮影する静止画モード(静止画撮影モード)と、放射線画像を動画で撮影する動画モード(動画撮影モード)による撮影機能がある。そして、放射線撮影装置100は、静止画モードと動画モードとを少なくとも切り替え可能に構成されている。撮影者は、図3の撮影ボタン(動画)221の操作により静止画モードから動画モードへの切り替えが可能であり、撮影ボタン(静止画)222の操作により動画モードから静止画モードへの切り替えが可能である。
【0058】
次に、撮影のタイミングを含めた制御例について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図4は、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートである。
【0059】
静止画モードによる撮影中に、まず、ステップS101において、制御部150は、図3の撮影ボタン(動画)221が押されたか否かを判断する。
【0060】
ステップS101の判断の結果、撮影ボタン(動画)221が押されていない場合には、ステップS102に進み、制御部150は、引き続き、静止画モードによる撮影を行う制御を行う。その後、ステップS101に戻る。
【0061】
一方、ステップS101の判断の結果、撮影ボタン(動画)221が押された場合には、ステップS103に進み、制御部150は、動画モードの設定を行う。
【0062】
続いて、ステップS104において、制御部150は、最後の静止画モードによる撮影を行う制御を行う。
【0063】
続いて、ステップS105において、制御部150は、静止画モードによる撮影を終了する制御を行う。
【0064】
このステップS105の処理と共に、ステップS106において、制御部150は、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、撮影モードの切り替えに係る放射線画像の動画撮影(S110)を行う前(直前)に、被写体300に放射線を照射せずに撮影された画像である。
【0065】
続いて、ステップS107において、制御部150は、ステップS106で検出した基準値(本例では最小画素値)を、例えば内部メモリに保存する制御を行う。
【0066】
続いて、ステップS108において、制御部150は、例えば上述した基準値に基づいて、光源130の発光量を調整する制御を行う。具体的に、制御部150は、変換素子1221を飽和状態とする光を光源130から照射するための制御を行う。
【0067】
ステップS105及びS108の処理が終了すると、ステップS109に進む。
ステップS109に進むと、光源130は、ステップS108の制御部150による発光量の調整に基づいて、当該調整に係る発光量の光を、センサ部122に発光して照射する。
【0068】
その後、ステップS110に進み、制御部150は、ステップS103で設定した動画モードによる撮影開始の制御を行う。
以上の処理により、図4に示すフローチャートの処理が終了する。
【0069】
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。即ち、この図5は、図4に示すフローチャートの処理に対応したものである。
【0070】
図5の駆動タイミングチャートにおいて、制御部150の制御により、静止画モードと動画モードでは、放射線の放射による放射線画像Xの撮影と連続して、放射線が放射されないオフセット画像Fの撮影が行われる。ここでは、直前に撮影された画像の一例として、オフセット画像Fを取り上げて説明を行う。そして、最後に撮影されたオフセット画像Fは、平面検出器120から制御部150に送られ、内部メモリ等に保存される。
【0071】
このとき、制御部150は、図2のA/D変換器1241のAD変換前または後において、1画素ずつ画素値の比較を行い、オフセット画像Fの全画素値より基準値を検出する。ここで、基準値は、A/D変換器1241により変換される場合があるため、最大画素値または最小画素値となる(本例では、最小画素値を用いている)。また、基準値は、デジタル値またはアナログ値、その他の信号でも構わない。ここで、本実施形態では、一例として、基準値が最小画素値の場合を取り上げて説明を行う。
【0072】
図6は、本発明の第1の実施形態を示し、オフセット画像の最小画素値が検出された画素を含む横ライン画素の画素値の一例を示す模式図である。
具体的に、制御部150は、最小画素値である基準値を検出し、当該基準値から画素の飽和値までの差分の画素値を計算して、次の放射線画像の撮影を行う際に全ての変換素子1221が飽和状態となる光の発光量(照射量)を予め予測して当該発光量を調整する。そして、光源130は、制御部150の制御に基づいて、図5に示すタイミングチャートに示す駆動のように光をセンサ部122に照射して、事前に予測し調整された、変換素子1221が飽和状態となる発光量の光を照射する。その後、図5に示すタイミングチャートでは、動画モードによる撮影が開始される。
【0073】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図4は、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートである。
【0074】
動画モードによる撮影中に、まず、ステップS201において、制御部150は、図3の撮影ボタン(静止画)222が押されたか否かを判断する。
【0075】
ステップS201の判断の結果、撮影ボタン(静止画)222が押されていない場合には、ステップS202に進み、制御部150は、引き続き、動画モードによる撮影を行う制御を行う。その後、ステップS201に戻る。
【0076】
一方、ステップS201の判断の結果、撮影ボタン(静止画)222が押された場合には、ステップS203に進み、制御部150は、静止画モードの設定を行う。
【0077】
続いて、ステップS204において、制御部150は、最後の動画モードによる撮影を行う制御を行う。
【0078】
続いて、ステップS205において、制御部150は、動画モードによる撮影を終了する制御を行う。
【0079】
このステップS205に処理と共に、ステップS206において、制御部150は、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、撮影モードの切り替えに係る放射線画像の静止画撮影(S210)を行う前(直前)に、被写体300に放射線を照射せずに撮影された画像である。
【0080】
続いて、ステップS207において、制御部150は、ステップS206で検出した基準値(本例では最小画素値)を、例えば内部メモリに保存する制御を行う。
【0081】
続いて、ステップS208において、制御部150は、例えば上述した基準値に基づいて、光源130の発光量を調整する制御を行う。具体的に、制御部150は、変換素子1221を飽和状態とする光を光源130から照射するための制御を行う。
【0082】
ステップS205及びS208の処理が終了すると、ステップS209に進む。
ステップS209に進むと、光源130は、ステップS208の制御部150による発光量の調整に基づいて、当該調整に係る発光量の光を、センサ部122に発光して照射する。
【0083】
その後、ステップS210に進み、制御部150は、ステップS203で設定した静止画モードによる撮影開始の制御を行う。
以上の処理により、図7に示すフローチャートの処理が終了する。
【0084】
図8は、本発明の第1の実施形態を示し、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。即ち、この図8は、図7に示すフローチャートの処理に対応したものである。
【0085】
この図7及び図8における切り替えの場合も、上述した図4及び図5における切り替えの場合と同様に、光源130から照射する光を制御して、変換素子1221に光を照射する。
【0086】
第1の実施形態によれば、オフセット画像における基準値に基づき光源の発光量を制御することにより、光源130からの1回の光の照射量を抑えることができる。これにより、変換素子1221の(光)リセットを目的とする光を照射する光源130の負荷や消費電力、発熱量を低減することが可能となるとともに、変換素子1221の劣化の促進を抑制することが可能となる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0088】
ここで、第2の実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成は、第1の実施形態に係る図1の放射線撮影装置100の概略構成と同様である。また、第2の実施形態に係る放射線撮影システムの概略構成は、第1の実施形態に係る図3の放射線撮影システム10の概略構成と同様である。以下の説明においては、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明を行う。
【0089】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図9は、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートであり、図4に示す処理と同様の処理については同じステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0090】
まず、図9の処理では、図4に示すステップS101〜S105の処理を行う。
【0091】
ステップS104の処理が終了すると、ステップS301において、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の検出を行う。
具体的に、ステップS301では、放射線源110と平面検出器120との距離が一定で放射線照射範囲が切り替わった時に、制御部150は、まず、放射線発生装置220のエンコーダ等に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の位置情報の要求信号を送信する。そして、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が決まった時に、放射線発生装置220から放射線絞り範囲として放射線の画素範囲の信号を受信し、当該受信信号から、放射線絞り範囲の検出を行う。
【0092】
続いて、ステップS302において、制御部150は、まず、ステップS301で検出した放射線絞り範囲に基づいて基準値の検出範囲を設定する。そして、制御部150は、設定した基準値の検出範囲に基づいて、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、図4のステップS106におけるものと同様である。
【0093】
その後、図4に示すステップS107〜S110の処理を経て、図9に示すフローチャートにおける処理を終了する。
【0094】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図10は、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートであり、図7に示す処理と同様の処理については同じステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0095】
まず、図10の処理では、図7に示すステップS201〜S205の処理を行う。
【0096】
ステップS204の処理が終了すると、ステップS401において、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の検出を行う。
具体的に、ステップS401では、放射線源110と平面検出器120との距離が一定で放射線照射範囲が切り替わった時に、制御部150は、まず、放射線発生装置220のエンコーダ等に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の位置情報の要求信号を送信する。そして、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が決まった時に、放射線発生装置220から放射線絞り範囲として放射線の画素範囲の信号を受信し、当該受信信号から、放射線絞り範囲の検出を行う。
【0097】
続いて、ステップS402において、制御部150は、まず、ステップS401で検出した放射線絞り範囲に基づいて基準値の検出範囲を設定する。そして、制御部150は、設定した基準値の検出範囲に基づいて、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、図7のステップS206におけるものと同様である。
【0098】
その後、図7に示すステップS207〜S210の処理を経て、図10に示すフローチャートにおける処理を終了する。
【0099】
図11は、本発明の第2の実施形態を示し、放射線絞り範囲の変更に伴って設定される基準値の検出範囲の一例を示す模式図である。
【0100】
図11(a)は、撮影モード切り替え時に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が拡大された場合を示している。図11(a)において、範囲1101は、前回(直前)の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、範囲1102は、今回の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、放射線絞り範囲が範囲1101から範囲1102に拡大されている。この場合、制御部150は、例えば、前回の撮影で放射線が照射されなかった範囲を基準値の検出範囲とし、当該範囲のオフセット画像の全画素値から、基準値(最小画素値)を検出する。
【0101】
また、図11(b)は、撮影モード切り替え時に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が縮小された場合を示している。図11(b)において、範囲1103は、前回(直前)の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、範囲1104は、今回の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、放射線絞り範囲が範囲1103から範囲1104に縮小されている。この場合、制御部150は、例えば、縮小された範囲(1104)を基準値の検出範囲とし、当該範囲のオフセット画像の全画素値から、基準値(最小画素値)を検出する。
【0102】
第2の実施形態によれば、放射線絞り範囲に基づいて基準値の検出範囲を設定することにより、第1の実施形態における効果に加えて、更に、基準値の検出対象の画素数を減らすことができ、オフセット画像からの基準値の検出を早めることが可能となる。
【0103】
(本発明の他の実施形態)
前述した本発明の各実施形態に係る放射線撮影装置100の制御方法を示す図4、図7、図9及び図10の各ステップは、コンピュータのCPUが記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0104】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0105】
なお、本発明は、前述した各実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図4、図7、図9及び図10に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システム或いは装置に直接、或いは遠隔から供給するものを含む。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合も本発明に含まれる。
【0106】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0107】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0108】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RWなどがある。また、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などもある。
【0109】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、若しくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0110】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0111】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、ダウンロードした鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0112】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した各実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した各実施形態の機能が実現され得る。
【0113】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した各実施形態の機能が実現される。
【0114】
なお、本発明の課題解決を目的とし、前述した各実施形態の組み合わせを行った場合や、容易に想像がつく応用を行った場合も本発明の範囲に含まれるものである。つまり、前述した各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0115】
100:放射線撮影装置、110:放射線源、111a,111b:放射線、120:平面検出器、121:波長変換体、122:センサ部、123:駆動回路、124:読み出し回路、130:光源、140:画像処理回路、150:制御部、300:被写体
【技術分野】
【0001】
放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置及びその制御方法に関するものである。なお、本明細書では、X線、γ線などの電磁波やα線、β線も放射線に含めるものとして説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコンやアモルファスセレン等の非単結晶半導体を主材料とし、放射線又は光を電荷に変換する変換素子を具備したデジタル放射線撮影装置が実用化されてきている。また、CCDやCMOSセンサなど、単結晶半導体を主材料とし、放射線又は光を電荷に変換する変換素子を具備したデジタル放射線撮影装置も実用化されてきている。
【0003】
放射線撮影装置としては、放射線を可視光に変換する蛍光体を用いて、当該可視光を、アモルファスシリコン等を主材料とする変換素子で電荷に変換する間接方式と、アモルファスセレン等を主材料とする変換素子で放射線を直接電荷に変換する直接方式とがある。どちらの方式も、大面積で薄い放射線検出装置を実現できることから、フラットパネルディテクタ(FPD)、或いは、平面検出器とも呼ばれ、被写体の撮影からその放射線画像を観察するまでの時間が非常に短いという特徴を有している。
【0004】
これらの放射線撮影装置は、装置に電源が投入されて変換素子にバイアスが与えられてからの経過時間や、撮影動作の時間、装置に照射される放射線量又は光量等の影響を受けて、装置の特性の変動やそれにより取得される画像信号に変動が生じる恐れがある。例えば、変換素子のダングリングボンドや欠陥がトラップ準位として働くことにより暗電流が変動したり、過去の放射線又は光照射の履歴の影響で残像(ラグ)が発生又は変動したりする恐れがある。また、それらの少なくとも1つの要因により、変換素子における放射線又は光の入力と発生する電荷の出力との入出力特性である感度が変動する恐れがある。
【0005】
そこで、下記の特許文献1や特許文献2では、放射線撮影装置に被写体情報を担う放射線を照射する前に、別途準備された光源から被写体情報を担わない光を照射して、装置の特性や取得される画像信号の変動を抑制する変動抑制効果を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−181183号公報
【特許文献2】特開2008−256675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の技術では、被写体情報を担わない光の1回に照射する照射量が多くなるという懸念がある。この場合、光を放射する光源に流れる電流量の増大に伴って、光源の負荷が増大して光源の消費電力が増大し、更に、光源の発熱量も増大する結果となる。また、光源からの1回の光の照射量が多いと、光が照射される変換素子の素子劣化が促進されてしまう。また、直前に放射線を照射した範囲によって、残像が発生する範囲も異なってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、変換素子のリセットを目的とする光を照射する光源の負荷や消費電力、発熱量を低減するとともに、変換素子の劣化の促進を抑制する放射線撮影装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線撮影装置は、放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置であって、変換素子を有する画素を複数含み構成され、前記被写体を透過した前記放射線に基づく放射線画像を取得するための平面検出器と、前記変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源と、前記放射線画像の撮影を行う前に、前記放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出し、当該基準値に基づいて前記変換素子を飽和状態とする光を前記光源から照射する制御を行う制御部とを有する。
また、本発明は、上述した放射線撮影装置の制御方法を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変換素子のリセットを目的とする光を照射する光源の負荷や消費電力、発熱量を低減することが可能となるとともに、変換素子の劣化の促進を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す平面検出器の概略構成の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置を含む放射線撮影システムの概略構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、オフセット画像の最小画素値が検出された画素を含む横ライン画素の画素値の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態を示し、放射線絞り範囲の変更に伴って設定される基準値の検出範囲の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成の一例を示す模式図である。この図1に示す放射線撮影装置100は、特に、医療用として使われる。
【0015】
放射線撮影装置100は、図1に示すように、例えば、放射線源110、平面検出器120、光源130、画像処理回路140、及び、制御部150を有して構成されている。
【0016】
放射線源110は、制御部150の制御に基づいて、患者等の被写体300に、X線などの放射線111aを照射するものである。
【0017】
平面検出器120は、図1に示すように、例えば、波長変換体121、センサ部122、駆動回路123、及び、読み出し回路124を有して構成されている。
【0018】
波長変換体121は、被写体300を透過した放射線111bを可視光に波長変換するものである。センサ部122は、変換素子を有する画素を複数含み構成され、波長変換体121により得られた可視光に応じた電気信号を出力するものである。駆動回路123は、制御部150の制御に基づいて、センサ部122の駆動を行うものである。読み出し回路124は、制御部150の制御に基づいて、センサ部122からの電気信号を読み出してデジタル画像信号(放射線画像信号)を出力するものである。
【0019】
光源130は、制御部150の制御に基づいて、放射線撮影装置100の特性や取得される放射線画像信号の変動を抑制するために、被写体情報を担わない光をセンサ部122に放射するものである。具体的に、光源130は、センサ部122の変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射するものである。本実施形態では、少なくとも平面検出器120と光源130とが筐体(不図示)内に設けられている。
【0020】
画像処理回路140は、制御部150の制御に基づいて、読み出し回路124から読み出されたデジタル画像信号に対して適宜画像処理を行うものである。なお、画像処理回路140で行われる画像処理の具体的方法は、デジタル画像信号を利用するものであって、上記課題を解決できるものであれば何でも良い。
【0021】
制御部150は、必要に応じて、放射線源110、駆動回路123、読み出し回路124、光源130、画像処理回路140等の制御を行って、放射線撮影装置100における動作を統括的に制御するものである。例えば、制御部150は、画像処理回路140で画像処理されたデジタル画像信号を入力し、入力したデジタル画像信号に基づいて、光源130の動作を制御する。
【0022】
なお、画像処理回路140と制御部150は、それらの少なくとも1つが読み出し回路124と同じIC又は異なるICに組み込まれて筐体内に保持されていてもよい。また、放射線撮影装置100では、放射線源110と平面検出器120との間に被写体300が設置され、被写体情報を担う被写体300を透過した放射線111bの線量に応じた電気信号に基づくデジタル画像信号が取得される。
【0023】
また、本実施形態では、平面検出器120として、波長変換体121を設け、波長変換体121で放射線から波長変換された可視光をセンサ部122で電気信号に変換する間接方式の形態を用いたが、本発明においてはこれに限定されるものではない。例えば、波長変換体121を用いずにセンサ部122で放射線を直接電気信号に変換する直接方式の形態を用いても構わない。
【0024】
本実施形態では、制御部150(必要に応じて平面検出器120及び画像処理回路140も含む)が、光源130からセンサ部122への光の照射の必要性を示す情報を検出する手段として機能している。
【0025】
次に、平面検出器120の詳細に説明する。
図2は、図1に示す平面検出器120の概略構成の一例を示す模式図である。なお、図2に示す例では、説明の便宜上、画素1220の個数として3行×3列の9個を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、画素数は必要に応じて適宜その行列数が決められるものである。
【0026】
センサ部122は、ガラス基板等の絶縁性基板上に、画素1220(S11〜S33)が2次元行列状に複数配置された放射線検出部を有している。各画素1220(S11〜S33)は、それぞれ、放射線又は光を電荷に変換する変換素子1221(D11〜D33)と、当該変換された電荷に基づく電気信号を出力するためのスイッチ素子1222(T11〜T33)とを有して構成されている。また、各変換素子1221(D11〜D33)は、放射線又は光を電荷に変換する変換部Dと、当該電荷を蓄積する容量C1とを有して構成されている。なお、容量C1を変換素子1221の外部に別途構成する形態でもよい。
【0027】
本実施形態における平面検出器120は間接方式であるため、図2では不図示であるが、センサ部122の上面に、図1に示す波長変換体121が構成されている。ここで、波長変換体121は、例えば、CsI:TlやGd2O2S:Tb等の材料が好適に用いられて形成されている。
【0028】
また、本実施形態における変換素子1221(D11〜D33)は、例えば、アモルファスシリコンを主材料とするMIS型変換素子を用いて構成されている。ただし、本発明においてはこれに限定されるものではなく、PIN型変換素子を用いて構成されていてもよい。また、変換素子1221(D11〜D33)として、アモルファスセレンなどを主材料とした放射線を直接電荷に変換可能な素子を用いてもよく、この場合、波長変換体121は不要となる。また、変換素子1221(D11〜D33)は、2つの電極と、その2つの電極の間に設けられた半導体層とを少なくとも有して形成されている。
【0029】
本実施形態におけるスイッチ素子1222(T11〜T33)は、例えば、アモルファスシリコンを主材料とする薄膜トランジスタ(TFT)を用いて構成されている。ただし、本発明においてはこれに限定されるものではなく、ポリシリコンを主材料とするTFTを用いてもよい。また、本実施形態におけるスイッチ素子1222(T11〜T33)は、図2に示すように、三端子の能動素子を用いているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、スイッチングダイオードなどの2端子の能動素子を用いてもよい。また、本実施形態におけるスイッチ素子1222(T11〜T33)は、図2に示すように、変換素子1221の一方の電極と当該スイッチ素子1222の2つの主電極であるソース及びドレインのうちの一方が接続されている。しかしながら、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば、変換素子1221とスイッチ素子1222のゲートが接続されてソース・フォロウ・アンプを構成するものであってもよい。その際には、変換素子1221とスイッチ素子1222のゲートとの接続部の電位を初期化するためのスイッチ素子を別途設けてもよい。
【0030】
駆動配線G1〜G3は、センサ部122における行方向の複数の画素1220のスイッチ素子1222の制御端子であるゲートに、行単位で共通に接続されており、駆動回路123からの駆動信号を各スイッチ素子1222に伝送するものである。信号配線M1〜M3は、センサ部122における列方向の複数の画素1220のスイッチ素子1222のソース又はドレインの他方に、列単位で共通に接続されており、スイッチ素子1222によって出力された電気信号を読み出し回路124に伝送するものである。また、本実施形態では、変換素子1221の他方の電極には、複数の画素1220に共通のバイアス配線(不図示)が接続されており、変換素子1221が放射線又は光を電荷に変換するためのバイアスが変換素子1221に供給されるようになっている。
【0031】
このように、センサ部122は、絶縁性基板上に設けられた画素1220(S11〜S33)、駆動配線G1〜G3、信号配線M1〜M3、バイアス配線を有して構成されている。
【0032】
駆動回路123は、駆動配線G1〜G3と電気的に接続され、各駆動配線G1〜G3に接続されている画素1220のスイッチ素子1222に行単位で駆動信号を印加して、スイッチ素子1222の導通状態と非道通状態を制御してセンサ部122を駆動する。
【0033】
ここで、駆動回路123から出力される駆動信号は、スイッチ素子1222を導通状態とするパルス状の導通電圧を有している。例えば、駆動回路123から1行目の駆動配線G1を介して駆動信号が印加されたスイッチ素子(T11〜T13)は導通状態となり、変換素子(D11〜D13)の電荷に応じた電気信号が信号配線M1〜M3を介して行単位で並列に出力される。同様に、2行目のスイッチ素子(T21〜T23)も3行目のスイッチ素子(T31〜T33)も順次駆動され、画素1220から行単位で出力された電気信号は、読み出し回路124で1フレームのデジタル画像信号に変換されて出力される。
【0034】
読み出し回路124は、信号配線M1〜M3と電気的に接続され、信号配線M1〜M3を介して出力された電気信号を行単位で並列に読み出し、並列の信号を直列の信号に変換し且つアナログの信号をデジタル信号へ変換してデジタル画像信号を出力する。
【0035】
読み出し回路124は、信号配線M1〜M3に電気的に接続され、当該各M1〜M3からの電気信号を増幅して出力する演算増幅器(A1〜A3)と、当該演算増幅器からの電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路を有している。ここで、サンプルホールド回路は、電気信号をサンプリングするスイッチ(Sr1〜Sr3)と、サンプリングされた電気信号を保持する容量(CL1〜CL3)によって構成されている。これらの演算増幅器(A1〜A3)とサンプルホールド回路は、信号配線M1〜M3ごとに設けられており、センサ部122から並列に出力された電気信号は、サンプルホールド回路まで並列に処理される。
【0036】
読み出し回路124は、更に、マルチプレクサSr4と、演算増幅器Bと、アナログデジタル変換器(A/D変換器)1241を有して構成されている。マルチプレクサSr4は、信号配線M1〜M3ごとに設けられたサンプルホールド回路に保持された電気信号を順次出力して直列の画像信号に変換する。演算増幅器Bは、マルチプレクサSr4から出力された画像信号をインピーダンス変換する。A/D変換器1241は、演算増幅器Bから出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し、当該デジタル画像信号を出力する。
【0037】
なお、図2に示す例では、A/D変換器1241をマルチプレクサSr4の後段に設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、A/D変換器1241を、信号配線M1〜M3ごとにマルチプレクサSr4の前段に設けてもよい。また、読み出し回路124中の構成は一例であって様々な形態が考えられるが、信号配線M1〜M3からのアナログ信号を入力して、増幅、マルチプレクス、A/D変換を行ってデジタル画像信号として出力する機能があれば、図2に示す構成以外でも構わない。
【0038】
なお、図2には示されていないが、本実施形態の放射線撮影装置100には、図1に示すように、センサ部122の受光面(即ち放射線の入射側)に対して反対側の表面(裏面)と、筐体との間に光源130が配置されている。ここで、センサ部122の受光面は、画素1220が形成された表面であり、波長変換体121と対向しており、被写体300の撮影時には放射線が照射される側の表面である。
【0039】
光源130は、有機ELパネルやLED、冷陰極管などが好適に用いられ、また、必要に応じて周知の導光体と組み合わせて用いてもよい。また、光源130の発光波長は、変換素子1221(D11〜D33)が吸収可能な帯域であることが望まれる。また、光源130から照射された光は、センサ部122の裏面から直接入射して、各変換素子1221(D11〜D33)の半導体層に吸収される。
【0040】
次に、図1及び図2を用いて、平面検出器120による画像取得動作を説明する。
被写体300の放射線画像を取得する際に、制御部150は、放射線源110から被写体300に放射線111aを照射する制御を行う。これにより、被写体300を透過した放射線111bが平面検出器120に照射される。
【0041】
そして、平面検出器120に照射された放射線111bは、波長変換体121においてセンサ部122の変換素子1221(D11〜D33)が感知可能な波長帯域の光に波長変換を行い、波長変換された光が変換素子1221(D11〜D33)に照射される。そして、変換素子1221(D11〜D33)では、変換部Dにおいて照射された光の量に応じて電荷を発生し、当該電荷は容量C1に蓄積される。ここまでの動作を「蓄積動作」と称する。
【0042】
次に、制御部150は、駆動回路123を制御して、駆動回路123から各駆動配線G1〜G3に駆動信号を与えて、行ごとにスイッチ素子1222(T11〜T33)を導通状態にして画素1220から電荷に基づく電気信号を出力する読み出し動作を行う。本実施形態では、駆動回路123からの駆動信号は、1行目の駆動配線G1、2行目の駆動配線G2、3行目の駆動配線G3の順に順次印加される。このため、上述したように、読み出し動作のためのスイッチ素子1222の制御は、行単位で行われ、行単位で画素1220から電気信号の出力が並列に行われる。
【0043】
具体的には、まず、駆動回路123から1行目の駆動配線G1に駆動信号が印加され、1行目のスイッチ素子T11〜T13の制御端子に導通電圧が与えられる。これにより、1行目のスイッチ素子T11〜T13がオン状態となり、1行目の画素S11〜S13の各容量C1に蓄積されていた電荷に基づく電気信号が、信号配線M1〜M3に並列に出力される。そして、信号配線M1〜M3に出力された電気信号は、読み出し回路124で読み出される。
【0044】
読み出し回路124に読み出された電気信号は、演算増幅器A1〜A3で増幅される。ここで、演算増幅器A1〜A3に接続されたリセット用スイッチSw1〜Sw3は、制御部150の制御により、電気信号の読み出しを行っている時は開放されている。続いて、制御部150は、サンプルホールド回路のスイッチSr1〜Sr3を導通して、演算増幅器A1〜A3で増幅された電気信号をサンプルホールド回路の容量CL1〜CL3に蓄積する制御を行う。容量CL1〜CL3に電気信号が蓄積された後、制御部150は、スイッチSr1〜Sr3を非導通とし、容量CL1〜CL3と信号配線M1〜M3の電気的接続を遮断する。その後、制御部150は、リセット用スイッチSw1〜Sw3を用いて演算増幅器A1〜A3及び信号配線M1〜M3をリセットし、次の行からの電気信号の出力に備える。ここまでの動作を「読み出し動作」と称する。
【0045】
そして、容量CL1〜CL3にサンプルホールドされた電気信号は、マルチプレクサSr4で順次出力されて並列/直列変換されて、増幅器Bに順次読み出される。これにより、容量CL1、CL2及びCL3の順で蓄積されていた電気信号を順次出力することができる。この際、制御部150は、増幅器Bの容量Cf4は出力するごとに蓄積される電荷量が変化するため、マルチプレクサSr4で容量CL1〜CL3を選択するごとに、スイッチSw4を短絡して容量Cf4を初期状態に戻す必要がある。
【0046】
これにより1行目の画素S11〜S13の電荷に基づく電気信号が、マルチプレクサSr4によりアナログ電気信号として増幅器Bに順次出力されることになる。そして、このアナログ電気信号は、増幅器Bでインピーダンス変換され、A/D変換器1241でデジタルアナログ変換され、1行分のデジタル画像信号として出力される。ここまでの動作を「出力動作」と称する。
【0047】
この読み出し動作と出力動作とを2行目及び3行目の画素1220に対しても同様に順次行うことにより、各行分のデジタル画像信号が読み出し回路124から出力される。また、本実施形態では、例えば1行目の出力動作と2行目の読み出し動作とを同じ期間内に時間的に重ねて行うようにする。これにより、1行目の出力動作の後に2行目の読み出し動作を行う形態に比べて、1画像分の画像信号を取得する撮影動作の時間を短くすることが可能となる。
【0048】
次に、本実施形態に係る放射線撮影装置100、及び、当該放射線撮影装置100を含む放射線撮影システムの制御方法について説明する。
【0049】
放射線撮影装置100では、装置に電源が投入され変換素子1221にバイアスが与えられてからの経過時間や、撮影動作の時間、平面検出器120に照射される放射線量又は光量等の影響を受けて、装置の特性の変動や取得される画像信号に変動が生じる。これを解決するために、本実施形態の放射線撮影装置100では、被写体300の画像情報を有する放射線111bとは別に、光源130から照射された画像情報を担わない光をセンサ部122に照射して、装置の特性の変動や画像信号の変動を抑制している。ただし、この場合、画像情報を担わない光の1回の照射量が、変換素子1221の飽和状態になる以上である場合、無駄な光を変換素子1221に照射してしまい、変換素子1221の劣化や光照射を行う光源130の劣化を招く結果となる。そのため、本実施形態の放射線撮影装置100では、変換素子1221が飽和状態になるまでの光を照射できるように、予め光源130の入力電圧を調整する必要がある。
【0050】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置を含む放射線撮影システムの概略構成の一例を示す模式図である。ここで、図3において、図1に示す放射線撮影装置100と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0051】
放射線撮影システム10は、図3に示すように、例えば、放射線撮影装置100と、テーブル210と、放射線発生装置220と、モニタ230を有して構成されている。
【0052】
テーブル210は、図1に示す被写体300を載置する台である。
放射線源110は、被写体300を載置するテーブル210を挟んで、平面検出器120と対向した位置に取り付けられている。平面検出器120は、図1と同様に、波長変換体121と、センサ部122と、駆動回路123と、読み出し回路124を有して構成されている。なお、図3に示す例では、平面検出器120は、テーブル210に取り付けられている例が示されているが、例えば、カセッテとして自由に持ち運べる形態であってもよい。この平面検出器120は、ケーブル又は無線通信によって、PC(パーソナルコンピュータ)からなる制御部150と接続されており、放射線撮影装置100の内部にある電源(不図示)、放射線発生装置220を介した放射線源110と同期が取られている。
【0053】
放射線発生装置220には、撮影ボタン(動画)221及び撮影ボタン(静止画)222の各種のボタン等が設けられており、当該各種のボタンの操作状態及び制御部150の制御に従って、放射線源110から放射線111aを発生させる。
【0054】
モニタ230は、例えば制御部150に接続されており、撮影者(技師、医師等)は、モニタ230を通じて撮影画像を確認することが可能となっている。
【0055】
また、本実施形態では、PCからなる制御部150とは別構成で画像処理回路140が構成されているが、例えばPCからなる制御部150の内部に画像処理回路140が構成されている形態であってもよい。画像処理回路140は、センサ部122からの出力を読み出し回路124を経てデジタル画像信号として取得し、画像処理を行う。
【0056】
本実施形態の制御部150は、画像処理回路140から得られた暗出力値及びそれが1画像分となった暗出力画像を用いた演算処理後の情報と、放射線源110の動作状態に基づいて、光源130の発光動作の制御を行う。なお、光源130を発光させる条件等は、後述する。
【0057】
また、放射線撮影装置100には、撮影モードとして、放射線画像を静止画で撮影する静止画モード(静止画撮影モード)と、放射線画像を動画で撮影する動画モード(動画撮影モード)による撮影機能がある。そして、放射線撮影装置100は、静止画モードと動画モードとを少なくとも切り替え可能に構成されている。撮影者は、図3の撮影ボタン(動画)221の操作により静止画モードから動画モードへの切り替えが可能であり、撮影ボタン(静止画)222の操作により動画モードから静止画モードへの切り替えが可能である。
【0058】
次に、撮影のタイミングを含めた制御例について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図4は、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートである。
【0059】
静止画モードによる撮影中に、まず、ステップS101において、制御部150は、図3の撮影ボタン(動画)221が押されたか否かを判断する。
【0060】
ステップS101の判断の結果、撮影ボタン(動画)221が押されていない場合には、ステップS102に進み、制御部150は、引き続き、静止画モードによる撮影を行う制御を行う。その後、ステップS101に戻る。
【0061】
一方、ステップS101の判断の結果、撮影ボタン(動画)221が押された場合には、ステップS103に進み、制御部150は、動画モードの設定を行う。
【0062】
続いて、ステップS104において、制御部150は、最後の静止画モードによる撮影を行う制御を行う。
【0063】
続いて、ステップS105において、制御部150は、静止画モードによる撮影を終了する制御を行う。
【0064】
このステップS105の処理と共に、ステップS106において、制御部150は、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、撮影モードの切り替えに係る放射線画像の動画撮影(S110)を行う前(直前)に、被写体300に放射線を照射せずに撮影された画像である。
【0065】
続いて、ステップS107において、制御部150は、ステップS106で検出した基準値(本例では最小画素値)を、例えば内部メモリに保存する制御を行う。
【0066】
続いて、ステップS108において、制御部150は、例えば上述した基準値に基づいて、光源130の発光量を調整する制御を行う。具体的に、制御部150は、変換素子1221を飽和状態とする光を光源130から照射するための制御を行う。
【0067】
ステップS105及びS108の処理が終了すると、ステップS109に進む。
ステップS109に進むと、光源130は、ステップS108の制御部150による発光量の調整に基づいて、当該調整に係る発光量の光を、センサ部122に発光して照射する。
【0068】
その後、ステップS110に進み、制御部150は、ステップS103で設定した動画モードによる撮影開始の制御を行う。
以上の処理により、図4に示すフローチャートの処理が終了する。
【0069】
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。即ち、この図5は、図4に示すフローチャートの処理に対応したものである。
【0070】
図5の駆動タイミングチャートにおいて、制御部150の制御により、静止画モードと動画モードでは、放射線の放射による放射線画像Xの撮影と連続して、放射線が放射されないオフセット画像Fの撮影が行われる。ここでは、直前に撮影された画像の一例として、オフセット画像Fを取り上げて説明を行う。そして、最後に撮影されたオフセット画像Fは、平面検出器120から制御部150に送られ、内部メモリ等に保存される。
【0071】
このとき、制御部150は、図2のA/D変換器1241のAD変換前または後において、1画素ずつ画素値の比較を行い、オフセット画像Fの全画素値より基準値を検出する。ここで、基準値は、A/D変換器1241により変換される場合があるため、最大画素値または最小画素値となる(本例では、最小画素値を用いている)。また、基準値は、デジタル値またはアナログ値、その他の信号でも構わない。ここで、本実施形態では、一例として、基準値が最小画素値の場合を取り上げて説明を行う。
【0072】
図6は、本発明の第1の実施形態を示し、オフセット画像の最小画素値が検出された画素を含む横ライン画素の画素値の一例を示す模式図である。
具体的に、制御部150は、最小画素値である基準値を検出し、当該基準値から画素の飽和値までの差分の画素値を計算して、次の放射線画像の撮影を行う際に全ての変換素子1221が飽和状態となる光の発光量(照射量)を予め予測して当該発光量を調整する。そして、光源130は、制御部150の制御に基づいて、図5に示すタイミングチャートに示す駆動のように光をセンサ部122に照射して、事前に予測し調整された、変換素子1221が飽和状態となる発光量の光を照射する。その後、図5に示すタイミングチャートでは、動画モードによる撮影が開始される。
【0073】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図4は、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートである。
【0074】
動画モードによる撮影中に、まず、ステップS201において、制御部150は、図3の撮影ボタン(静止画)222が押されたか否かを判断する。
【0075】
ステップS201の判断の結果、撮影ボタン(静止画)222が押されていない場合には、ステップS202に進み、制御部150は、引き続き、動画モードによる撮影を行う制御を行う。その後、ステップS201に戻る。
【0076】
一方、ステップS201の判断の結果、撮影ボタン(静止画)222が押された場合には、ステップS203に進み、制御部150は、静止画モードの設定を行う。
【0077】
続いて、ステップS204において、制御部150は、最後の動画モードによる撮影を行う制御を行う。
【0078】
続いて、ステップS205において、制御部150は、動画モードによる撮影を終了する制御を行う。
【0079】
このステップS205に処理と共に、ステップS206において、制御部150は、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、撮影モードの切り替えに係る放射線画像の静止画撮影(S210)を行う前(直前)に、被写体300に放射線を照射せずに撮影された画像である。
【0080】
続いて、ステップS207において、制御部150は、ステップS206で検出した基準値(本例では最小画素値)を、例えば内部メモリに保存する制御を行う。
【0081】
続いて、ステップS208において、制御部150は、例えば上述した基準値に基づいて、光源130の発光量を調整する制御を行う。具体的に、制御部150は、変換素子1221を飽和状態とする光を光源130から照射するための制御を行う。
【0082】
ステップS205及びS208の処理が終了すると、ステップS209に進む。
ステップS209に進むと、光源130は、ステップS208の制御部150による発光量の調整に基づいて、当該調整に係る発光量の光を、センサ部122に発光して照射する。
【0083】
その後、ステップS210に進み、制御部150は、ステップS203で設定した静止画モードによる撮影開始の制御を行う。
以上の処理により、図7に示すフローチャートの処理が終了する。
【0084】
図8は、本発明の第1の実施形態を示し、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係るタイミングチャートである。即ち、この図8は、図7に示すフローチャートの処理に対応したものである。
【0085】
この図7及び図8における切り替えの場合も、上述した図4及び図5における切り替えの場合と同様に、光源130から照射する光を制御して、変換素子1221に光を照射する。
【0086】
第1の実施形態によれば、オフセット画像における基準値に基づき光源の発光量を制御することにより、光源130からの1回の光の照射量を抑えることができる。これにより、変換素子1221の(光)リセットを目的とする光を照射する光源130の負荷や消費電力、発熱量を低減することが可能となるとともに、変換素子1221の劣化の促進を抑制することが可能となる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0088】
ここで、第2の実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成は、第1の実施形態に係る図1の放射線撮影装置100の概略構成と同様である。また、第2の実施形態に係る放射線撮影システムの概略構成は、第1の実施形態に係る図3の放射線撮影システム10の概略構成と同様である。以下の説明においては、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明を行う。
【0089】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図9は、静止画モード(静止画撮影モード)から動画モード(動画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートであり、図4に示す処理と同様の処理については同じステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0090】
まず、図9の処理では、図4に示すステップS101〜S105の処理を行う。
【0091】
ステップS104の処理が終了すると、ステップS301において、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の検出を行う。
具体的に、ステップS301では、放射線源110と平面検出器120との距離が一定で放射線照射範囲が切り替わった時に、制御部150は、まず、放射線発生装置220のエンコーダ等に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の位置情報の要求信号を送信する。そして、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が決まった時に、放射線発生装置220から放射線絞り範囲として放射線の画素範囲の信号を受信し、当該受信信号から、放射線絞り範囲の検出を行う。
【0092】
続いて、ステップS302において、制御部150は、まず、ステップS301で検出した放射線絞り範囲に基づいて基準値の検出範囲を設定する。そして、制御部150は、設定した基準値の検出範囲に基づいて、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、図4のステップS106におけるものと同様である。
【0093】
その後、図4に示すステップS107〜S110の処理を経て、図9に示すフローチャートにおける処理を終了する。
【0094】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。具体的に、図10は、動画モード(動画撮影モード)から静止画モード(静止画撮影モード)への切り替えに係る制御のフローチャートであり、図7に示す処理と同様の処理については同じステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0095】
まず、図10の処理では、図7に示すステップS201〜S205の処理を行う。
【0096】
ステップS204の処理が終了すると、ステップS401において、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の検出を行う。
具体的に、ステップS401では、放射線源110と平面検出器120との距離が一定で放射線照射範囲が切り替わった時に、制御部150は、まず、放射線発生装置220のエンコーダ等に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)の位置情報の要求信号を送信する。そして、制御部150は、放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が決まった時に、放射線発生装置220から放射線絞り範囲として放射線の画素範囲の信号を受信し、当該受信信号から、放射線絞り範囲の検出を行う。
【0097】
続いて、ステップS402において、制御部150は、まず、ステップS401で検出した放射線絞り範囲に基づいて基準値の検出範囲を設定する。そして、制御部150は、設定した基準値の検出範囲に基づいて、平面検出器120から得られたオフセット画像の全画素値から、基準値(本例では最小画素値)を検出する制御を行う。ここで、オフセット画像は、図7のステップS206におけるものと同様である。
【0098】
その後、図7に示すステップS207〜S210の処理を経て、図10に示すフローチャートにおける処理を終了する。
【0099】
図11は、本発明の第2の実施形態を示し、放射線絞り範囲の変更に伴って設定される基準値の検出範囲の一例を示す模式図である。
【0100】
図11(a)は、撮影モード切り替え時に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が拡大された場合を示している。図11(a)において、範囲1101は、前回(直前)の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、範囲1102は、今回の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、放射線絞り範囲が範囲1101から範囲1102に拡大されている。この場合、制御部150は、例えば、前回の撮影で放射線が照射されなかった範囲を基準値の検出範囲とし、当該範囲のオフセット画像の全画素値から、基準値(最小画素値)を検出する。
【0101】
また、図11(b)は、撮影モード切り替え時に放射線絞り範囲(放射線照射範囲)が縮小された場合を示している。図11(b)において、範囲1103は、前回(直前)の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、範囲1104は、今回の撮影で放射線が照射された放射線絞り範囲であり、放射線絞り範囲が範囲1103から範囲1104に縮小されている。この場合、制御部150は、例えば、縮小された範囲(1104)を基準値の検出範囲とし、当該範囲のオフセット画像の全画素値から、基準値(最小画素値)を検出する。
【0102】
第2の実施形態によれば、放射線絞り範囲に基づいて基準値の検出範囲を設定することにより、第1の実施形態における効果に加えて、更に、基準値の検出対象の画素数を減らすことができ、オフセット画像からの基準値の検出を早めることが可能となる。
【0103】
(本発明の他の実施形態)
前述した本発明の各実施形態に係る放射線撮影装置100の制御方法を示す図4、図7、図9及び図10の各ステップは、コンピュータのCPUが記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0104】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0105】
なお、本発明は、前述した各実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図4、図7、図9及び図10に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システム或いは装置に直接、或いは遠隔から供給するものを含む。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合も本発明に含まれる。
【0106】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0107】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0108】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RWなどがある。また、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などもある。
【0109】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、若しくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0110】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0111】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、ダウンロードした鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0112】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した各実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した各実施形態の機能が実現され得る。
【0113】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した各実施形態の機能が実現される。
【0114】
なお、本発明の課題解決を目的とし、前述した各実施形態の組み合わせを行った場合や、容易に想像がつく応用を行った場合も本発明の範囲に含まれるものである。つまり、前述した各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0115】
100:放射線撮影装置、110:放射線源、111a,111b:放射線、120:平面検出器、121:波長変換体、122:センサ部、123:駆動回路、124:読み出し回路、130:光源、140:画像処理回路、150:制御部、300:被写体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置であって、
変換素子を有する画素を複数含み構成され、前記被写体を透過した前記放射線に基づく放射線画像を取得するための平面検出器と、
前記変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源と、
前記放射線画像の撮影を行う前に、前記放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出し、当該基準値に基づいて前記変換素子を飽和状態とする光を前記光源から照射する制御を行う制御部と
を有することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記光源は、前記平面検出器における前記放射線の入射側に対して反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記放射線画像の撮影を行う直前に撮影された前記オフセット画像の前記基準値に基づいて、前記光の発光量を調整する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記オフセット画像の各画素値を比較することにより検出された値であり、
前記制御部は、前記放射線画像の撮影を行う際に、全ての前記変換素子が飽和状態となる前記光の発光量を予め予測して制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記放射線撮影装置では、撮影モードとして、前記放射線画像を静止画で撮影する静止画モードと、前記放射線画像を動画で撮影する動画モードとを少なくとも切り替え可能に構成されており、
前記制御部は、前記撮影モードが切り替わる際に、前記光源から前記光を照射する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記撮影モードが切り替わる際に、前記平面検出器に対する前記放射線の照射範囲が切り替わる場合、当該照射範囲に基づいて前記基準値の検出範囲を設定し、当該基準値の検出範囲に基づいて前記基準値の検出を行うことを特徴とする請求項5に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置の制御方法であって、
前記放射線撮影装置は、変換素子を有する画素を複数含み構成され、前記被写体を透過した前記放射線に基づく放射線画像を取得するための平面検出器と、前記変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源とを備えており、
前記放射線画像の撮影を行う前に、前記放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出する検出ステップと、
前記基準値に基づいて前記変換素子を飽和状態とする光を前記光源から照射する制御を行う制御ステップと
を有することを特徴とする放射線撮影装置の制御方法。
【請求項1】
放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置であって、
変換素子を有する画素を複数含み構成され、前記被写体を透過した前記放射線に基づく放射線画像を取得するための平面検出器と、
前記変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源と、
前記放射線画像の撮影を行う前に、前記放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出し、当該基準値に基づいて前記変換素子を飽和状態とする光を前記光源から照射する制御を行う制御部と
を有することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記光源は、前記平面検出器における前記放射線の入射側に対して反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記放射線画像の撮影を行う直前に撮影された前記オフセット画像の前記基準値に基づいて、前記光の発光量を調整する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記オフセット画像の各画素値を比較することにより検出された値であり、
前記制御部は、前記放射線画像の撮影を行う際に、全ての前記変換素子が飽和状態となる前記光の発光量を予め予測して制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記放射線撮影装置では、撮影モードとして、前記放射線画像を静止画で撮影する静止画モードと、前記放射線画像を動画で撮影する動画モードとを少なくとも切り替え可能に構成されており、
前記制御部は、前記撮影モードが切り替わる際に、前記光源から前記光を照射する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記撮影モードが切り替わる際に、前記平面検出器に対する前記放射線の照射範囲が切り替わる場合、当該照射範囲に基づいて前記基準値の検出範囲を設定し、当該基準値の検出範囲に基づいて前記基準値の検出を行うことを特徴とする請求項5に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影装置の制御方法であって、
前記放射線撮影装置は、変換素子を有する画素を複数含み構成され、前記被写体を透過した前記放射線に基づく放射線画像を取得するための平面検出器と、前記変換素子に対して当該変換素子が感知可能な波長帯域の光を照射する光源とを備えており、
前記放射線画像の撮影を行う前に、前記放射線を用いずに撮影されたオフセット画像から基準値を検出する検出ステップと、
前記基準値に基づいて前記変換素子を飽和状態とする光を前記光源から照射する制御を行う制御ステップと
を有することを特徴とする放射線撮影装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−276580(P2010−276580A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132190(P2009−132190)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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