説明

放射線撮影装置

【課題】少なくとも放射線検出手段を移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置において、移動時に放射線検出手段に生じている歪の影響を緩和し、正確な画像を取得可能にする。
【解決手段】撮影時に検出パネル11内の固体検出器40の検出面に生じている歪量を複数のレーザー変位計52により検出し、この結果に基づいてPZT51を駆動して検出面の歪を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも放射線検出手段を移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置において、特に撮影品質の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線撮影を行うための放射線CT(Computed Tomography)装置が知られている。このような放射線CT装置としては、円錐状に放射線を発する放射線源および2次元検出パネルが回転軸を間に挟んで対向配置された撮影部を回転させつつ、回転軸上に被験者を配して放射線像を連続撮影し、さらに連続撮影により得られた画像信号を基に画像再構成演算を行うことによって、3次元放射線CT像を得るものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このような放射線CT装置は、特許文献1に記載の装置のように、ベッドの上に被験者を寝かせ、撮影部を鉛直方向に回転させながら撮影を行なう装置の他にも、撮影部が可動式のアームで保持されており、撮影部の位置や角度を自由に調整可能で、被験者を寝かせた状態で撮影部を鉛直方向に回転させながら撮影を行なう態様のみならず、被験者を直立させた状態で撮影部を水平方向に回転させながら撮影を行なう態様等、種々の撮影を行なうことが可能な装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−058309号公報
【特許文献2】特開2007−000606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような放射線CT装置の撮影部は、一般にCアームの両端に各々放射線源および検出パネルが互いに対向するように取り付けられた構造であり、被験者の周囲を放射線源および検出パネルが回転しながら撮影が行なわれる。このような装置では、撮影時の回転による振動等により、被験者に対する放射線源および検出パネルの位置関係が変化してしまうと正確な画像を取得することができなくなるため、放射線源および検出パネルの位置の変位を計測し、位置ずれに起因する誤差を補正する処理を行うものが提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、厳密に言うと、検出パネルについては位置が移動するだけでなく、振動によってパネルそのものの検出面が変形して歪が生じてしまうことがあり、パネルの検出面に歪が生じて検出面に凹凸が発生してしまうと、被写体の正確な形状を撮影することができなくなってしまう。このような場合には、特許文献2に記載のように、放射線源および検出パネルの位置ずれに起因する誤差を補正しただけでは正確な画像を得ることはできない。
【0007】
このような問題は、通常のCT装置やコーンビームCT装置のいずれでも起こりえるが、特にフラットパネルディテクターを用いる装置では検出面が歪み易いので、上記の問題が顕著に発生する。また、放射線CT装置に限らず、トモセンシス撮影装置等、少なくとも検出パネルを移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置では、共通の課題となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも放射線検出手段を移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置において、移動時に放射線検出手段に生じている歪の影響を緩和し、正確な画像を取得可能な放射線撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による放射線撮影装置は、放射線を発する放射線源と、放射線を検出する放射線検出手段と、少なくとも放射線検出手段を移動させる移動手段とを備え、少なくとも放射線検出手段を移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置であって、放射線検出手段の検出面に生じている歪量を検出する歪検出手段と、放射線検出手段の検出面の歪を補正する歪補正手段と、歪検出手段により検出された歪量に基づいて、歪補正手段の補正量を制御する制御手段とを備えたものであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、歪補正手段は、圧電素子とすることが好ましい。
【0011】
また、歪補正手段は、放射線検出手段の検出面に対応した複数の位置に配することが好ましい。
【0012】
この場合、制御手段は、放射線検出手段の検出面のうち、関心領域に対応した位置に配された歪補正手段のみを動作させるものとしてもよい。
【0013】
さらに、放射線検出手段は、有機物基板上に形成された固体検出器としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の放射線撮影装置によれば、放射線を発する放射線源と、放射線を検出する放射線検出手段と、少なくとも放射線検出手段を移動させる移動手段とを備え、少なくとも放射線検出手段を移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置において、放射線検出手段の検出面に生じている歪量を検出する歪検出手段と、放射線検出手段の検出面の歪を補正する歪補正手段と、歪検出手段により検出された歪量に基づいて、歪補正手段の補正量を制御する制御手段とを備えたことにより、移動時に放射線検出手段に生じている歪の影響を緩和し、正確な画像を取得することが可能となる。
【0015】
ここで、歪補正手段を、応答速度が高速である圧電素子とすれば、より適切に歪の影響を排除することが可能となる。
【0016】
また、歪補正手段を、放射線検出手段の検出面に対応した複数の位置に配すれば、より適切に歪の影響を排除することが可能となる。
【0017】
この場合、制御手段を、放射線検出手段の検出面のうち、関心領域に対応した位置に配された歪補正手段のみを動作させるものとすれば、制御手段の処理量を少なくすることができるため、実現を容易にすることができる。
【0018】
さらに、放射線検出手段を、硬度が低い有機物基板上に形成された固体検出器とすれば、歪補正手段により容易に歪を補正できるため、より適切に歪の影響を排除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の放射線撮影装置の一実施の形態に係る放射線CT装置の概略構成図
【図2】上記放射線CT装置の検出パネルの構成図
【図3】上記放射線CT装置の検出パネルにおける歪検出手段および歪補正手段の配置状態を示す上面図
【図4】上記放射線CT装置の動作時のタイミングチャート
【図5】その他の実施の形態に係る放射線CT装置の動作時のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の放射線撮影装置の第1の実施の形態に係る放射線CT装置の概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、放射線CT装置1は、放射線画像の撮影を行なう撮影装置と、被験者Pを支持するための支持台であるベッド22と、撮影装置と接続され、撮影装置の制御や撮影により得られた画像の処理を行うコンピューター30と、このコンピューター30に接続されたモニター31とから構成される。
【0022】
撮影装置は、円錐状の放射線(以後、円錐状放射線ともいう)を発する放射線源10、放射線源10から発せられた放射線を検出する検出パネル11、放射線源10および検出パネル11を保持するCアーム12からなる撮影部2と、この撮影部2を回転させる駆動部15と、駆動部15を保持するアーム20とを有するものである。
【0023】
撮影部2は回転軸Cの周りに360°回転可能である。また、可動部20aを備えたアーム20は、天井に対し移動可能に取り付けられた基部21に保持されており、撮影室内において、広範の位置に移動可能であるとともに、撮影部2の回転方向(回転軸角度)も変更可能に構成されている。
【0024】
放射線源10と検出パネル11とは回転軸Cを間に挟んで対向配置されており、放射線CT装置1により放射線CT撮影を行うときには、回転軸C、放射線源10、検出パネル11の互いの位置関係は固定される。なお、検出パネル11を構成する検出画素が並べられた検出面は、平面であってもよいし湾曲をなすものであってもよい。
【0025】
ここで検出パネル11の構成について、図面を用いて詳細に説明する。図2に示すように、検出パネル11内部には、固体検出器40が収納されている。
【0026】
固体検出器40は、プラスチック基板45上に、a−Si TFTからなる第1の導電層44、放射線の照射を受けることにより電荷を発生して導電性を呈する光導電層43、第2の導電層42、絶縁層41がこの順に積層されたものである。
【0027】
第1の導電層44は、各画素毎に対応してTFTが形成されており、各TFTの出力はICチップ46に接続され、ICチップ46は不図示の画像信号処理部に接続されている。
【0028】
固体検出器40は、第1の導電層44と第2の導電層42との間に電界を形成している際に、光導電層43に放射線が照射されると、光導電層43内に電荷対が発生し、この電荷対の量に応じた潜像電荷が第1の導電層44内に蓄積されるものである。蓄積された潜像電荷を読み取る際には、第1の導電層44のTFTを順次駆動して、各画素に対応した潜像電荷に対応するアナログ信号を出力させ、このアナログ信号を画像信号処理部において各画素毎に検出し、各画素毎に検出したアナログ信号を画素の配列順に複合する。そして、この複合したアナログ信号を不図示のAD変換部によりAD変換してデジタル画像信号を生成する。生成されたデジタル画像信号は画像信号処理部からメモリを経由してコンピューター30に送信される。
【0029】
上記の固体検出器40は、金属製の強固な基盤50上に複数のPZT51を介して取り付けられている。このPZT51は、固体検出器40の検出面の歪を補正する歪補正手段としても機能する。また、各PZT51毎に、基盤50と固体検出器40との間の変位を測定するためのレーザー変位計52が隣接して設けられている。このレーザー変位計52は、固体検出器40の検出面に生じている歪量を検出する歪検出手段として機能する。
【0030】
PZT51は、図2中上下方向に電圧を印加することにより上下方向の高さが変化する。従って、レーザー変位計52で計測された変位を相殺するようにPZT51を駆動すれば、常に固体検出器40の検出面の高さを基盤50に対して一定に保つことができる。
【0031】
図3に示すように、PZT51とレーザー変位計52の組が、固体検出器40の検出面に対応した複数の位置に配されている。
【0032】
なお、歪補正手段はPZTに限らず、他の圧電素子を用いてもよいし、圧電素子以外の機構を設けてもよい。また、歪検出手段もレーザー変位計に限らず、歪ゲージ等の他の手段を用いてもよい。
【0033】
コンピューター30は、制御手段としての不図示の中央処理装置(CPU)、不図示のHDDやSSD等のストレージデバイス、不図示のマウスやキーボード等の操作入力手段を備える。
【0034】
CPUは、放射線源10の動作制御、検出パネル11の検出動作および画像信号読出動作の制御、駆動部15による撮影部2の回転制御、アーム20および基部21の駆動制御等の各種動作制御手段としての機能の他、連続撮影により得られた複数の画像信号に対して画像再構成演算を行うことによって被写体の3次元放射線CT像を得る画像処理手段としての機能や、各レーザー変位計52(歪検出手段)により検出された歪量に基づいて、各PZT51(歪補正手段)の補正量を制御する制御手段としての機能も備える。
【0035】
以下、放射線CT装置1の作用について説明する。
【0036】
まず、被験者Pをベッド22上に横たわらせ、被験者Pの体の略中心を回転軸Cとして、この回転軸Cを挟んで放射線源10と検出パネル11とが対称位置に配されるように撮影部2の位置決めを行なう。撮影部2の移動は、撮影者によるコンピューター30の操作に基づいて行なわれる。
【0037】
撮影が開始されると、撮影部2を回転させつつ所定角度毎に、放射線源10から発せられ被験者Pを通った円錐状放射線の検出パネル11への曝射および検出パネル11に記録された画像信号の読出しを複数回繰り返して被験者Pを表す放射線画像を連続的に取得する。すなわち、連続撮影における各撮影毎に、検出パネル11に記録された画像信号が読み出されてコンピューター30に入力され、ストレージデバイスに蓄積される。
【0038】
このとき、放射線の曝射中にPZT51を駆動して固体検出器40の検出面の歪を補正すると、固体検出器40内での発生電荷量が変化するため、図4のタイミングチャートに示す通り、円錐状放射線の検出パネル11への曝射に先立って、検出パネル11内の固体検出器40の検出面に生じている歪量を複数のレーザー変位計52により検出し、この結果に基づいてPZT51を駆動して検出面の歪を補正する。その後、円錐状放射線の検出パネル11への曝射を行なって、画像信号の読取を行う。
【0039】
上記の処理が繰り返し実行されて、被験者Pを被写体とする連続撮影が終了する。
【0040】
連続撮影の終了後、CPUはストレージデバイスに蓄積されている複数の画像信号に基づいて画像再構成演算を行なうことにより3次元放射線CT像を生成し、モニター31上に表示させる。
【0041】
これら一連の処理は、いずれもコンピューター30内のCPUからの制御に基づいて行なわれる。
【0042】
以上、本発明の放射線撮影装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、検出パネル11内の固体検出器40の検出面に生じている歪の補正のタイミングについては、上記実施の形態の態様に限らず、図5のタイミングチャートに示す態様としてもよい。すなわち、固体検出器40の検出面の歪の検出を画像読取中に行うことで1周期の時間を短縮しても良い。
【0044】
固体検出器40の検出面の歪の検出および補正は、放射線照射毎に毎回行ってもよいし、数回に一度または一連の動画撮影の直前に一回のみ行ってもよい。
【0045】
また、検出面の全体について歪を補正するのではなく、検出面のうち関心領域(例えば図3中の領域I)のみ歪を補正するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態の装置構成は、被験者の胸部や四肢を撮影可能な比較的大型な装置であったが、このような態様に限らず、例えば乳房の周りを撮影部が回転しながら撮影を行なう比較的小型な装置とする等、どのような装置構成としてもよい。
【0047】
また、放射線CT装置に限らず、トモセンシス撮影装置等、少なくとも検出パネルを移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置であれば、どのような装置に本発明を適用することができる。
【0048】
さらに、上記以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行なってもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 放射線CT装置
2 撮影部
10 放射線源
11 検出パネル
12 Cアーム
15 駆動部
20 アーム
21 基部
22 ベッド
23 バランサーウエイト
24 振動検出センサー
30 コンピューター
31 モニター
40 固体検出器
50 基板
51 PZT
52 レーザー変位計
C 回転軸
P 被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発する放射線源と、前記放射線を検出する放射線検出手段と、少なくとも該放射線検出手段を移動させる移動手段とを備え、少なくとも前記放射線検出手段を移動させながら撮影を行なう放射線撮影装置であって、
前記放射線検出手段の検出面に生じている歪量を検出する歪検出手段と、
前記放射線検出手段の検出面の歪を補正する歪補正手段と、
前記歪検出手段により検出された歪量に基づいて、前記歪補正手段の補正量を制御する制御手段とを備えたものであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記歪補正手段が、圧電素子であることを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記歪補正手段が、前記放射線検出手段の検出面に対応した複数の位置に配されていることを特徴とする請求項1または2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記放射線検出手段の検出面のうち、関心領域に対応した位置に配された前記歪補正手段のみを動作させるものであることを特徴とする請求項3記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記放射線検出手段が、有機物基板上に形成された固体検出器であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−72502(P2011−72502A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226360(P2009−226360)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】