放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システム
【課題】放射線の照射中にデータの読み出し処理を行って得られた画像データに基づいて、濃淡のない放射線画像を生成することが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1は、放射線検出素子7からのフレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、放射線が照射された時点で読み出し処理を行っているフレームを含む所定数のフレーム分の読み出し処理を行って、各フレームごとにデータDを取得し、制御手段22は、フレームごとの各データD(m)〜D(m+2)を加算して画像データdを算出し、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子7については、画像データdから、当該放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている各放射線検出素子7の画像データdの総和Σdに所定の定数a(z)を乗算した値を減算し、減算して算出した値を当該放射線検出素子7の画像データdとする。
【解決手段】放射線画像撮影装置1は、放射線検出素子7からのフレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、放射線が照射された時点で読み出し処理を行っているフレームを含む所定数のフレーム分の読み出し処理を行って、各フレームごとにデータDを取得し、制御手段22は、フレームごとの各データD(m)〜D(m+2)を加算して画像データdを算出し、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子7については、画像データdから、当該放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている各放射線検出素子7の画像データdの総和Σdに所定の定数a(z)を乗算した値を減算し、減算して算出した値を当該放射線検出素子7の画像データdとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに係り、特に放射線の照射中にも読み出し処理を行う放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図3や図7に示すように、通常、放射線検出素子7が検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が設けられている。そして、放射線画像撮影前、すなわち放射線画像撮影装置に放射線発生装置から放射線が照射される前に、TFT8のオン/オフを適宜制御しながら、各放射線検出素子7内に残存する余分な電荷を放出されるリセット処理が行われるように構成される場合が多い。
【0005】
そして、各放射線検出素子7のリセット処理が終了した後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線6を介してTFT8にオフ電圧を印加して全TFT8をオフ状態とした状態で放射線発生装置から放射線画像撮影装置に放射線を照射すると、放射線の線量に応じた電荷が各放射線検出素子7内で発生して、各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0006】
そして、放射線画像撮影後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から、その内部に蓄積された電荷を読み出して、読み出し回路17で電荷電圧変換する等して画像データとして読み出すように構成される場合が多い。
【0007】
しかし、このように構成する場合、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間のインターフェースを的確に構築し、放射線が照射される段階で放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7内に電荷を蓄積できる状態になっていることが必要となるが、装置間のインターフェースの構築は必ずしも容易ではない。そして、放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7のリセット処理を行っている最中に放射線が照射されてしまうと、放射線の照射により発生した電荷が各放射線検出素子7から流出してしまい、照射された放射線の電荷すなわち画像データへの変換効率が低下してしまう等の問題があった。
【0008】
そこで、近年、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出する技術が種々開発されている。そして、それらの技術の一環として、例えば特許文献4や特許文献5に記載された技術を利用して、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出することが考えられている。
【0009】
特許文献4、5では、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始される以前から、例えば後述する図7等に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理を繰り返して行い、放射線が照射されている最中にも画像データの読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置や画像データの読み出し方法が記載されている。
【0010】
そして、検出部P上に配列された全ての放射線検出素子7のうち画像データを読み出す対象の各放射線検出素子7から各画像データを読み出す期間を1フレームとするとき、放射線の照射が開始されたフレームから放射線の照射が終了したフレームの次のフレームまでの各フレームごとに読み出された画像データを各放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構成する技術が開示されている。
【0011】
すなわち、図17に示すように、ゲートドライバ15bから、図中の一番上側の走査線5から順に各走査線5へのオン電圧の印加を開始し、以降、オン電圧を印加する走査線5を図中の下方向に順次切り替えて印加しながら行う各フレームごとの各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理において、例えば、図18に斜線を付して示す部分ΔTの走査線5にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したとする。
【0012】
この場合、放射線が照射されたフレームである第1フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データだけでなく、その次の第2フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データを第1フレームの画像データに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データが再構築される。
【0013】
また、図19に示すように、さらにその次の第3フレームまで考慮し、第1フレームから第3フレームで各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された各画像データを放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データが再構築されるように構成される場合もある。
【0014】
なお、図18や図19は、斜線を付して示す部分ΔTにのみ放射線が照射されたことを表すものではなく、図17に示したように一番上側の走査線5から順にオン電圧を印加する走査線5を切り替えながら読み出し処理を行う際に、斜線を付して示す部分ΔTの走査線5にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されたことを表すものであり、放射線は、検出部Pの全域にわたって照射される。
【0015】
そして、放射線画像撮影装置に放射線が照射されている間に走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧が印加される走査線5に接続されている各放射線検出素子7からは、それ以前にオン電圧が印加された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータよりも著しく大きな値の画像データが読み出される。これを利用して、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値を監視することによって、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されたことを放射線画像撮影装置自体で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開平9−140691号公報
【特許文献5】特開平7−72252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、本発明者らの研究では、例えば、図19に示したように、第1フレームから第3フレームで各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された各画像データを放射線検出素子7ごとに加算し、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構築して、図20(A)に示すような放射線画像pを生成した場合、放射線が照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δT(すなわち図19の斜線部分ΔTに相当する画像領域)の画像データが、その上側の画像領域Aや下側の画像領域Bの画像データより値が大きくなることが分かっている。
【0018】
すなわち、例えば、放射線画像撮影装置の検出部Pの全域に同じ線量の放射線を一様に照射した場合に取得される各画像データを加算して再構築した各画像データdに基づいて生成された放射線画像p(図20(A)参照)において、信号線6の延在方向(図中では縦方向の矢印方向)に沿って、加算されて再構築された各画像データdを見た場合、図20(B)に示すように、画像領域Aや画像領域Bの画像データdに比べて、放射線が照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTの画像データdが大きな値になる。
【0019】
そのため、放射線画像p中の画像領域δTの部分が、画像領域Aや画像領域Bに比べてやや黒くなる(すなわち暗くなる)。このように、放射線画像撮影装置に対して放射線を一様に照射したにもかかわらず、放射線画像p中に濃淡が現れる。
【0020】
これは、放射線画像撮影装置の検出部Pの全域に同じ線量の放射線を一様に照射した場合だけでなく、実際に被写体を介して放射線画像撮影装置に放射線を照射して放射線画像を行った場合でも、同様に生成された放射線画像に濃淡が現れる。そして、このように生成された放射線画像に濃淡が現れると、放射線画像が見づらいものになる。
【0021】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線が照射されている最中にもデータの読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置で得られた画像データに基づいて、濃淡のない放射線画像を生成することが可能な放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記所定数のフレーム分の読み出し処理を行って取得した前記各放射線検出素子ごとの前記各データを加算して前記各放射線検出素子ごとに画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとすることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の放射線画像撮影装置システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記データを送信する通信手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データに基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記所定数のフレーム分の読み出し処理で取得された前記各放射線検出素子ごとの前記各データの情報、および放射線の照射が開始された時点および終了した時点でそれぞれオン電圧が印加された前記各走査線の情報に基づいて、前記各フレームごとの前記各データを前記各放射線検出素子ごとに加算して前記各放射線検出素子ごとの画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとするコンソールと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムによれば、各フレームごとに各放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理を繰り返し行うように構成することで、各放射線検出素子ごとに読み出されるデータの値を監視することで、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となり、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子を的確に特定することが可能となる。
【0025】
そして、従来の場合と同様に、各フレームごとに取得した各データを加算して各放射線検出素子ごとの画像データdを再構築するが、その際、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子については、放射線画像撮影装置に放射線が照射されたことに起因して各スイッチ手段中を流れるリーク電流の量が増加することにより、画像データdに増加分が発生する。
【0026】
しかし、上記のように特定した放射線検出素子について算出した画像データdから、当該放射線検出素子が接続されている信号線に接続されている各放射線検出素子の画像データdの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、このようにして算出した値を当該放射線検出素子の画像データdとして補正する。
【0027】
このように補正することで、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子(すなわち図20(A)に示した画像領域δTの各放射線検出素子)について、放射線が照射されたことに起因して各スイッチ手段中を流れるリーク電流の量が増加することにより画像データに生じた増加分を、画像データd中から的確に除去することが可能となり、これらの各放射線検出素子の画像データdの値を、放射線が照射されていた間には読み出し処理が行われなかった各放射線検出素子(すなわち図20(A)に示した画像領域A、Bの各放射線検出素子)の画像データdの値と同等の値になるように補正するように構成することが可能となる。
【0028】
そのため、これらの補正された画像データdに基づいて生成された放射線画像pでは、画像領域δTの部分が、画像領域Aや画像領域Bと同等の明るさ(輝度)になり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】各実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】読み出し処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】各放射線検出素子のリセット処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図11】各放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に放射線が照射されるタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図12】各実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図13】放射線が照射される前後に放射線検出素子から放出される電荷や他の放射線検出素子からリークする各電荷と読み出されるデータとの関係を説明する図である。
【図14】(A)〜(C)は照射時間を変えて放射線を照射した場合に各データを加算して算出される各画像データを各放射線検出素子ごとにプロットしたグラフである。
【図15】図14(A)の場合の線量と照射時間と同じ条件下でアルミ板や鉛板の厚さを変えて実験を行った場合の総和と増加分との関係を表すグラフである。
【図16】図15において放射線の照射時間を変化させた場合の総和と増加分との関係を表すグラフである。
【図17】各フレームごとの各放射線検出素子からのデータの読み出し処理を説明する図である。
【図18】第1フレームの斜線部分の走査線にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したことを表す図である。
【図19】画像データの再構築に用いられる3フレーム分の画像データを説明する図である。
【図20】(A)再構築された画像データに基づいて生成された放射線画像を表す図であり、(B)画像領域δTの画像データが画像領域A、Bの画像データより大きくなることを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0032】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
【0033】
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0034】
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、後述するデータD等を、後述するコンソール58(図12参照)等の外部装置との間で無線方式で送受信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
【0035】
なお、アンテナ装置39の設置位置は蓋部材38の側面部に限らず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置39を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置39は1個に限らず、複数設けることも可能である。さらに、データD等を外部装置との間で有線方式で送受信するように構成することも可能であり、その場合は、例えば、通信手段として、ケーブル等を差し込むなどして接続するための接続端子等が放射線画像撮影装置1の側面部等に設けられる。
【0036】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0037】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0038】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0039】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0040】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0041】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0042】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0043】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0044】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0045】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0046】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0047】
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
【0048】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0049】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0050】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0051】
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0052】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0053】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0054】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0055】
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0056】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0057】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0058】
そして、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からデータDを読み出す画像読み出し処理等の際に、後述する制御手段22からトリガ信号を受信すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧のオン電圧とオフ電圧との間での切り替えを開始させるようになっている。
【0059】
具体的には、本実施形態では、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理の際には、制御手段22からトリガ信号を受信すると、例えば図9に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧(すなわちデータ読み出し用の電圧)とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替える処理をフレームごとに繰り返し行い、各TFT8を介して走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からデータDをそれぞれ読み出させるようになっている。
【0060】
なお、以下では、図9に示すように、検出部P(図3や図7参照)上に二次元状に配列された1面分の全ての放射線検出素子7のうちデータDを読み出す対象の各放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームという。
【0061】
また、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理前や、次の放射線画像撮影を行うまでの間等に、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
【0062】
各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、例えば、走査駆動手段15は、図10に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えさせて1面分のリセット処理Rmを行い、この1面分のリセット処理Rmを必要に応じて繰り返し行わせながら各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0063】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0064】
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0065】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0066】
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0067】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると、各放射線検出素子7内に蓄積されていた電荷が各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6に放出され、信号線6を介してコンデンサ18bに流入して蓄積される。そして、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
【0068】
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0069】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0070】
そして、制御手段22は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせてデータDとして下流側に出力させるようになっている。
【0071】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7のデータDは、アナログマルチプレクサ21(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値のデータDに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0072】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0073】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、クレードル等の図示しない充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
【0074】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
【0075】
次に、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理や、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了の検出処理等について説明する。
【0076】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、走査駆動手段15に対して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させるためのトリガ信号を送信するようになっている。
【0077】
また、制御手段22は、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせるようになっている。なお、本実施形態では、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理は、各放射線検出素子7から余分な電荷を放出させるリセット処理を兼ねているが、例えば各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する前等に、各放射線検出素子7のリセット処理を別途行うように構成してもよいことは前述した通りである。
【0078】
本実施形態では、このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前から、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始される。そのため、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームでは、放射線が照射されていない各放射線検出素子7内で発生した暗電荷がデータDとして読み出される。
【0079】
これらの暗電荷に相当するデータDは、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射後に読み出されるデータD、すなわち放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した有用な電荷に相当するデータを含むデータDに含まれる、暗電荷に起因するオフセット分に相当する。そのため、これらの暗電荷に相当するデータDは、いわゆるオフセット補正値Oとして用いることができ、放射線の照射後に読み出されるデータDからこのオフセット補正値Oを減算することで、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した有用な電荷のみに相当する有用なデータDを算出することができる。
【0080】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出される各データDを、余分なデータDとして廃棄するのではなく、オフセット補正値Oとしてそれぞれフレームごとに記憶手段40に保存させるようになっている。
【0081】
しかし、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されて以降のフレームごとのオフセット補正値Oを全て保存する必要はない。また、記憶手段40の記憶容量等の制約もある。そのため、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されている。
【0082】
そのため、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータD(この場合はオフセット補正値O)が記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくようになっている。
【0083】
一方、制御手段22は、上記のようにして各放射線検出素子7からデータDを読み出して記憶手段40に保存させると同時に、本実施形態では、読み出されたデータDの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するようになっている。
【0084】
図9に示したタイミングで、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加しながら各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行っている際に、例えば、m回目のフレームにおいて、図11に示すようなタイミングで放射線が照射されたものとする。
【0085】
なお、図11では、斜線を付した期間が、放射線が照射された期間を表す。また、図11に示した走査線5のラインLa〜Lbの各ラインが、例えば図18や図19に示した斜線部分ΔTの走査線5、すなわち放射線が照射されている間にオン電圧が順次印加されていた走査線5の各ラインに相当する。
【0086】
図11に示したような場合、m回目のフレームでは、走査線5のラインL1〜La-1にそれぞれオン電圧が印加されて、走査線5の各ラインL1〜La-1にTFT8を介して接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線が照射される前に読み出された暗電荷に起因するデータである。そして、これらのデータDは、m−1回目のフレーム以前のフレームの場合(すなわちデータDがオフセット補正値Oの場合)と同様に、データD自体の値としては小さい値になる。
【0087】
一方、図11に示すように、m回目のフレームの走査線5のラインLaでは、放射線が照射され始め、走査線5のラインLaに接続されている各放射線検出素子7内で放射線の照射に起因して電荷(電子正孔対)が発生するため、暗電荷に起因するデータとは明らかに異なる、より大きな値のデータDが読み出されるようになる。
【0088】
そこで、例えば、上記のようにして読み出し回路17で各放射線検出素子7から読み出された個々のデータDの値を制御手段22で監視して、読み出されたデータDが例えば予め設定された閾値を越えたか否かを判断し、読み出されたデータDが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
【0089】
しかし、このように構成した場合、放射線が照射されていないにもかかわらず大きなデータDを出力する異常な放射線検出素子7があった場合や、データDに生じるゆらぎがたまたま大きな値になった場合に、誤って放射線の照射が開始されたと判断してしまう虞れがある。
【0090】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、上記のようにして読み出し回路17で読み出された、走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各データDの積算値ΣD(n)を、走査線5の各ラインLnごとに算出し、走査線5の各ラインLnごとの各データDの積算値ΣD(n)が例えば予め設定された閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたと判断するようになっている。
【0091】
本実施形態では、このように、制御手段22は、走査線5の各ラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDの積算値ΣD(n)に基づいて、走査線単位で放射線の照射の開始を検出するようになっている。そして、制御手段22は、放射線の照射の開始を検出した走査線5のライン番号(この場合はa)とその際のフレームのフレーム番号(この場合はm)とをCPUのメモリや記憶手段40等に記憶させるようになっている。
【0092】
また、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷(電子正孔対)の量は、放射線検出素子7内の電荷量が飽和するまでは、放射線の照射時間(すなわち放射線の照射の開始から終了までの時間間隔)が長くなるほど多くなる。
【0093】
従って、上記の例で言えば、m回目のフレームで、放射線の照射が開始された直後に読み出し処理が行われた走査線5のラインLaに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDよりも、走査線5のラインLa+1に接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDの方が大きくなり、積算値についても、積算値ΣD(n)よりも積算値ΣD(n+1)の方が大きくなる。
【0094】
そして、この傾向は、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されている間も続き、放射線が照射されている間にTFT8にオン電圧が印加されて読み出し処理が行われた、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7については、それらのデータDの積算値がΣD(a)<ΣD(a+1)<…<ΣD(b-1)<ΣD(b)のように、放射線の照射時間が長くなるほど大きくなる。
【0095】
しかし、放射線の照射が終了した直後に読み出し処理が行われた走査線5のラインLb+1に接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータDは、放射線の照射が終了する直前に読み出し処理が行われた走査線5のラインLbに接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータDの値とさほど変わらない。
【0096】
そのため、走査線5のラインLb+1に接続されている各放射線検出素子7のデータDの積算値ΣD(b+1)は、走査線5のラインLbに接続されている各放射線検出素子7のデータDの積算値ΣD(b)とほぼ同じ値になる。また、同様に、走査線5のラインLb+1以降の各ラインLnにおいても積算値ΣD(n)は積算値ΣD(b)と同等の値になる。
【0097】
そこで、制御手段22は、上記のようにして放射線の照射開始を検出した後、例えば、走査線5の各ラインLnごとに算出する各放射線検出素子7の各データDの積算値ΣD(n)と、その直前に算出した走査線5のラインLn-1の積算値ΣD(n-1)との差が、予め設定された閾値以下になった場合に、当該直前の走査線5のラインLn-1(上記の例では走査線5のラインLb)にオン電圧が印加された時点で放射線の照射が終了したと判断するようになっている。
【0098】
本実施形態では、このように、制御手段22は、走査線5の各ラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDの積算値ΣD(n)に基づいて、走査線単位で放射線の照射の終了を検出するようになっている。そして、制御手段22は、放射線の照射の終了を検出した走査線5のライン番号(この場合はb)とその際のフレームのフレーム番号(この場合はm)とをCPUのメモリや記憶手段40等に記憶させるようになっている。
【0099】
また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷は、その後の1回の読み出し処理で90%以上がデータDとして読み出され、その読み残し分の電荷がその次の読み出し処理で読み出されることが分かっている。
【0100】
そして、図11に示すように、少なくとも走査線5のラインL1〜Laに接続されている各放射線検出素子7については、m+1回目のフレームで放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が読み出され、m+2回目の読み出し処理でその読み残し分が読み出される。
【0101】
そのため、本実施形態では、図11や図19に示したように、放射線の照射開始を検出したm回目のフレームからm+2回目のフレームまで各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行い、放射線の照射が開始された時点で読み出し処理を行っているm回目のフレームを含む3回分の各フレームごとに、各放射線検出素子7ごとのデータDを取得して記憶手段40に保存するようになっている。
【0102】
そして、本実施形態では、制御手段22は、m+2回目のフレーム、すなわち放射線の照射が開始されたと判断したフレームを含む3回分のフレームの読み出し処理を終了した時点で、走査駆動手段15に対してトリガ信号を送信して、ゲートドライバ15bからの走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加を停止させて、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を終了させるようになっている。
【0103】
そして、制御手段22は、上記のようにして、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を終了させると、後述する画像データdの補正処理等をコンソール58で行う場合には、放射線の照射の開始を検出したm回目のフレームの1つ前のフレームであるm−1回目のフレームから、放射線の照射の終了を検出したm+1回目までの各フレームの各放射線検出素子7ごとの各データDを、通信手段であるアンテナ装置39(図1や図7等参照)を介してコンソール58に送信するようになっている。
【0104】
また、この場合、制御手段22は、記憶手段40から、放射線の照射の開始を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はa)や、放射線の照射の終了を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はb)の情報を読み出して、それらの情報も送信するようになっている。
【0105】
なお、m−1回目のフレームで読み出されたデータDを各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOとする代わりに、例えば、放射線の照射が開始された時点で読み出し処理が行われていたm回目のフレームより前の数フレーム分の放射線検出素子ごとのデータDの平均値を算出する等して、その平均値等を放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oとするように構成することも可能である。
【0106】
そして、その場合は、この1フレーム分の各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oの各データと、m回目およびm+1回目の各フレームの各放射線検出素子ごとの各データDが送信される。
【0107】
なお、本実施形態における画像データdの補正処理等については、放射線画像撮影システム50の構成について説明した後で説明する。
【0108】
[放射線画像撮影システム]
図12は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。放射線画像撮影システム50は、図12に示すように、例えば、放射線を照射して図示しない患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師等の操作者が被写体に照射する放射線開始の制御等の種々の操作を行う前室R2、およびそれらの外部に配置される。
【0109】
撮影室R1には、前述した放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51や、被写体に照射する放射線を発生させる図示しないX線管球を備える放射線源52やそれをコントロールする放射線発生装置55、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55やコンソール58とが無線通信する際にこれらの通信を中継する無線アンテナ53を備えた基地局54等が設けられている。
【0110】
なお、図12では、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填して用いる場合が示されているが、前述したように、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台等と一体的に形成されたものであってもよい。また、前述したように、放射線画像撮影装置1と外部装置との通信をLANケーブル等のケーブルを介して行う場合には、図12に示したように、それらのケーブルを基地局54に接続するように構成し、ケーブルや基地局54を介して有線通信でデータ等の情報を送受信できるように構成することも可能である。
【0111】
また、基地局54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、基地局54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等の間で情報を送信する際のLAN通信用の信号等を、放射線発生装置55との間で情報を送信する際の信号に変換し、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0112】
前室R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。そして、放射線発生装置55は、放射線技師等の操作者により曝射スイッチ56が操作されて操作卓57から信号が送信されてくると、放射線源52を起動させたり、放射線源52から放射線を照射させるようになっている。
【0113】
放射線発生装置55は、このほか、指定されたブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に対して放射線を適切に照射できるように放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りを調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を放射線源52に対して行うようになっている。なお、これらの処理を、放射線技師等の操作者が手動で行うように構成してもよい。
【0114】
また、放射線発生装置55は、放射線源52からの放射線の照射開始から設定された時間が経過した時点で、放射線源52のX線管球を停止させる等して、放射線源52からの放射線の照射を停止させるようになっている。
【0115】
放射線画像撮影装置1の構成等については前述した通りであるが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、上記のようにブッキー装置51に装填されて用いられる場合もあるが、ブッキー装置51には装填されず、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。
【0116】
すなわち、放射線画像撮影装置1を単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられたベッドや図12に示すように臥位撮影用のブッキー装置51B等の上面側に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることもできるようになっている。この場合、例えばポータブルの放射線源52B等から、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
【0117】
本実施形態では、撮影室R1や前室R2の外側に、コンピュータ等で構成されたコンソール58が設けられている。コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続、或いは内蔵されている。
【0118】
なお、コンソール58を例えば前室R2等に設けるように構成することも可能である。また、コンソール58に、例えば、放射線画像撮影装置1の状態を覚醒(wake up)状態とスリープ(sleep)状態との間で遷移させる機能を持たせたり、或いは、放射線技師等の操作者が撮影室R1で行う放射線画像撮影の内容を表す撮影オーダ情報を作成したり選択したりすることを可能とする機能を持たせたりするように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0119】
[画像データの算出処理および補正処理等について]
以下、上記のようにして得られた各データDに基づいて画像データdを算出する処理や、算出した画像データdに対する補正処理等について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてあわせて説明する。
【0120】
なお、各データDに基づく画像データdの算出処理や画像データdに対する補正処理等を放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成してもよく、また、放射線画像撮影システム50のコンソール58で行うように構成することも可能である。以下では、それらをあわせて説明する。また、以下では、m回目のフレーム等で読み出された各放射線検出素子7ごとのデータDをD(m)等と表す。
【0121】
前述したように、m回目のフレームにおいて図11に示すようなタイミングで放射線が照射されたものとすると、走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDは、m回目のフレームでは読み出されず、m+1回目のフレームで読み出され、その読み残し分がm+2回目のフレームで読み出される。
【0122】
また、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDはm回目のフレームで読み出され、その読み残し分がm+1回目のフレームで読み出される。なお、この場合、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDはm回目およびm+1回目の各フレームでほぼ100%読み出されてしまうため、m+2回目のフレームではほとんど読み出されない。
【0123】
さらに、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDは、m回目のフレームとm+1回目のフレームとで分割されて読み出され、m+2回目のフレームでその読み残し分が読み出される。
【0124】
そのため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、前述した従来の場合と同様に、m回目からm+2回目の各フレームのデータDを各放射線検出素子7ごとに加算して画像データdを算出し、各放射線検出素子7の画像データdを再構築するようになっている。
【0125】
正確には、前述したように、各データDには、それぞれ暗電荷に起因するオフセット分であるオフセット補正値Oが重畳されているため、制御手段22やコンソール58は、下記(1)式に示すようにそれぞれオフセット補正値Oを減算した各データDを加算して、すなわち、下記(2)式に従って各放射線検出素子7ごとに画像データdを算出するようになっている。
d=(D(m)−O)+(D(m+1)−O)+(D(m+2)−O)…(1)
∴d=D(m)+D(m+1)+D(m+2)−3O …(2)
【0126】
しかし、このように、各フレームのデータDを加算して画像データdを算出しても(正確には上記(1)式または(2)式に従って画像データdを算出しても)、再構築した画像データdに基づく放射線画像pでは、図20(B)に示したように、少なくとも放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTの画像データdの値が、他の画像領域A、Bの画像データdの値より大きくなり、放射線画像p上に濃淡が現れる場合があることは前述した通りである。
【0127】
そこで、上記のようにして算出した画像データdの補正、特に放射線画像pにおける画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように適切に補正することが必要となる。
【0128】
本発明者らの研究では、放射線画像pにおける画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値が他の画像領域A、Bの画像データdの値より大きくなる理由は、以下のように考えられている。
【0129】
すなわち、スイッチ手段であるTFTの特性として、各放射線検出素子7内に蓄積された電荷が各TFT8を介してごく僅かであるが信号線6にリークする。すなわち、図13に示すように、例えば走査線5のラインLiにオン電圧が印加されて放射線検出素子7iから電荷Qが読み出されている際にも、各TFT8を介して他の各放射線検出素子7から同じ信号線6に電荷qがそれぞれ流れ込む。
【0130】
そして、放射線検出素子7iからの電荷Qと他の各放射線検出素子7からリークしたごく小さな各電荷qとの総和が増幅回路18で電荷電圧変換されて、データDiとして読み出される。なお、他の全ての放射線検出素子7について電荷qと記載されているからといって、他の各放射線検出素子7から互いに等しい量の電荷qがリークすることを意味するものではなく、リークする電荷qは、個々のTFT8の製造特性や各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷量等に依存した値になる。
【0131】
また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、本実施形態では、照射された放射線がシンチレータ3(図2等参照)で電磁波に変換されるが、この電磁波が各TFT8に照射されると、各TFT8内を流れるリーク電流の量が多くなり、各TFT8で各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷のリーク量が増加する。すなわち、図13に示した場合の放射線検出素子7i以外の他の各放射線検出素子7から各TFT8を介してリークして同じ信号線6に流れ込む電荷qの量が大きくなる。
【0132】
そのため、放射線検出素子7iからの電荷Qと他の各放射線検出素子7からリークした各電荷qとの総和に相当するデータDiの値が、他の各放射線検出素子7から各TFT8を介してリークして同じ信号線6に流れ込む電荷qの量が増加した分だけ増加する。そのため、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTの画像データdの値が、他の画像領域A、Bの画像データdの値より大きくなると考えられている。
【0133】
ここで、本発明者らの研究で得られた知見に基づいて、さらに詳しく解析する。
【0134】
図14(A)〜(C)は、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を、放射線の照射時間を変えて照射した場合に、m回目からm+2回目の各読み出し処理で読み出された各データD(m)、D(m+1)、D(m+2)を上記(2)式に従って加算して得られた各画像データdを、図20(A)と同様に、1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7についてプロットしたグラフである。
【0135】
そして、図14(A)〜(C)では、被写体を介さない状態で放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線量(なお、線量は放射線の照射時間と単位時間当たりに照射する放射線の線量(すなわち線量率)との積で表される。)が同じ線量であるが、放射線の照射時間を種々変化させた場合が示されている。
【0136】
なお、図14(A)〜(C)では、画像領域δTの範囲が種々変化されたように示されているが、これは、照射時間が長くなると、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の範囲が広くなることを表すものであり、画像領域δTの範囲は照射時間に比例して変化する。
【0137】
ここで、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の、画像領域A、δT、Bの全放射線検出素子7の画像データdの総和をαとすると、図14(A)〜(C)に示されるように、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を照射した場合、総和αは、図14(A)〜(C)に示すいずれの場合も同じ値になる。なお、画像データdの総和αは信号線6ごとに算出される。
【0138】
画像データdの総和αが図14(A)〜(C)に示すいずれの場合も同じ値になる理由は、放射線の照射時間や放射線の線量率が異なっていても、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の線量が同じであれば、シンチレータ3で放射線から変換され各放射線検出素子7に照射される電磁波の光量が同じ光量になり、放射線の照射(すなわち電磁波の照射)により各放射線検出素子7内で発生する電荷の量が同じになるためであると考えられる。
【0139】
また、図14(A)〜(C)に示すように、画像領域δTに属する各放射線検出素子7の個々の画像データdの、画像領域A、Bに属する各放射線検出素子7の個々の画像データdに対する増加分をΔDとした場合、照射時間が短くなり、照射される放射線の線量率(すなわち単位時間当たりに照射される放射線の線量)が大きくなると、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDが大きくなる。
【0140】
これは、放射線画像撮影装置1に照射される放射線が強くなり(すなわち線量率が大きくなり)、シンチレータ3で変換されて各TFT8に照射される電磁波の単位時間当たりの光量が大きくなると、それに比例して各TFT8内で発生する電子正孔対も多くなり各TFT8内を流れるリーク電流の量が多くなることに対応していると考えられる。
【0141】
同様に、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の照射時間が長くなり、線量率が小さくなると、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDも小さくなる(図14(C)参照)。
【0142】
しかし、その一方で、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和をβとした場合、放射線の照射時間や放射線の線量率が異なっていても、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が同じ線量であれば、総和βは、図14(A)〜(C)に示すいずれの場合も同じ値になる。なお、総和βは信号線6ごとに算出される。
【0143】
これは、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が同じ線量になれば、結果的に各TFT8内を流れるリーク電流の総量が同じになるためと考えられる。なお、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和βとは、各増加分ΔDを、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数分だけ加算した値を表す。
【0144】
以上のように、本発明者らの研究では、図14(A)〜(C)に示すように、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を照射した場合、増加分ΔDは、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例するという知見が得られた。
【0145】
また、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線が照射された場合には、すなわち各放射線検出素子7や各TFT8に同じ光量の電磁波が照射された場合には、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αや、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和βは、線量率や照射時間等を可変させても、それぞれ同じ値になるという知見が得られた。
【0146】
ところで、図14(A)〜(C)に示した上記の実験結果は、被写体を介さない状態で放射線画像撮影装置1に放射線を照射した場合の結果であるが、各放射線検出素子7や各TFT8側から見れば、被写体の有無には関係なく、シンチレータ3から照射される電磁波の光量に依存して上記の画像データdの総和αや増加分ΔDの総和βが決まるはずである。
【0147】
すなわち、被写体の有無にかかわらず、各放射線検出素子7や各TFT8に照射される電磁波の光量が同じであれば、画像データdの総和αや増加分ΔDの総和βは同じ量になり、シンチレータ3から各放射線検出素子7や各TFT8に照射される電磁波の光量が変化すれば、上記の画像データdの総和αや増加分ΔDの総和βがそれに比例して変化すると考えられる。
【0148】
そして、増加分ΔD、すなわち画像領域δTの画像データdの、画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDが、上記のように、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例することを考えあわせると、結局、被写体の有無にかかわらず、
(i)増加分ΔDは、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の画像領域A、δT、Bの全放射線検出素子7の画像データdの総和αに比例して増減するが、
(ii)増加分ΔDの総和αに対する比例定数は、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例する、
ことが予想される。
【0149】
これらのことを確認するために、本発明者らは、まず、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を同じ照射時間だけ照射するが、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1参照)を被覆するアルミ板や鉛板の厚さを種々変化させ、各放射線検出素子7や各TFT8に照射される電磁波の光量を種々変化させて、上記の総和αと増加分ΔDとを測定する実験を行った。
【0150】
図15は、図14(A)の場合の線量および照射時間と同じ条件下で行った実験結果を表すグラフである。そして、図15に示すように、上記の総和αと増加分ΔDとは比例の関係にあること、すなわち上記の(i)の条件が成り立つことが確認された。
【0151】
すなわち、アルミ板や鉛板の厚さを種々変化させると、シンチレータ3に到達する放射線の線量が変化し、それに伴ってシンチレータ3から各放射線検出素子7に照射される電磁波の光量が変化する。そのため、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αが、電磁波の光量の増加(減少)に比例して増加(減少)する。
【0152】
また、シンチレータ3から各TFT8に照射される電磁波の光量も上記と同様に変化するが、それに比例して各TFT8内で発生する電子正孔対の量が変化し、各TFT8内を流れるリーク電流の量が変化する。そのため、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDが、電磁波の光量の増加(減少)に比例して増加(減少)する。
【0153】
そのため、増加分ΔDが画像データdの総和αに比例して増減する、すなわち上記の(i)の条件が成り立つようになると考えられる。
【0154】
また、図16は、図15の場合の線量と同じ線量の放射線を照射するが、照射時間を2倍および4倍にし(すなわち放射線の線量率(すなわち電磁波の単位時間当たりの光量)を1/2および1/4にし)、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rを被覆するアルミ板の厚さを種々変化させた場合の実験結果を表すグラフである。
【0155】
図16に示すように、これらの場合もそれぞれ上記の(i)の条件が成り立つが、増加分ΔDの総和αに対する比例定数が、放射線の照射時間に反比例してそれぞれ1/2および1/4になっている。すなわち、図15や図16に示すように、上記の考察の通り、増加分ΔDの総和αに対する比例定数が、放射線の照射時間(すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数)に反比例すること、すなわち上記の(ii)の条件が成り立つことが確認された。
【0156】
以上の結果から、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDと、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αとの関係は、比例定数をaとする場合、
ΔD=a×α …(3)
と表すことができることが分かる。
【0157】
その際、比例定数aは、上記の条件(ii)で示したように、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例する。そのため、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数をz本とするとき、上記の比例定数aはzの関数a(z)と表すことができる。すなわち、上記(3)式は、
ΔD=a(z)×α …(4)
と表される。
【0158】
そして、このzの関数として表される比例定数a(z)が予め分かっていれば、比例定数a(z)を用い、上記(4)式に従って、比例定数a(z)に、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αを乗算することで増加分ΔDを算出することが可能となる。
【0159】
そして、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdから、算出した増加分ΔDを減算して、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように適切に補正することが可能となる。
【0160】
なお、図11に示した例では、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5は走査線5のラインLa〜Lbであるから、この場合、上記のzは、b−a+1で表すことができる。また、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数zは、放射線の照射時間に比例するため、比例定数aをzの関数とする代わりに、放射線の照射時間の関数とすることも可能である。
【0161】
本実施形態では、図15に示したような実験を予め行って、比例定数a(z)を、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数zの関数として求めておき、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58を構成するCPUのメモリや記憶手段40、59等のメモリに記憶させておく。
【0162】
そして、制御手段22やコンソール58は、画像データdの補正処理の際に、放射線の照射の開始を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はa)と、放射線の照射の終了を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はb)とに基づいて、上記のz(図11の場合はb−a+1)を算出する。
【0163】
そして、メモリから比例定数を表す関数式a(z)を読み出し、算出したzを代入して比例定数a(z)を算出する。そして、算出した比例定数a(z)と、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αとに基づいて、上記(4)式に従って増加分ΔDを算出する。
【0164】
その際、図14(A)〜(C)に示したように、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和βは、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αに比べて、通常、非常に小さい。
【0165】
そのため、総和αを、総和αと総和βとの和、すなわち画像領域δTの画像データdを補正せずに画像領域A、Bの画像データdと合計した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和(すなわち上記(2)式に従って算出される各放射線検出素子7ごとの画像データdの総和Σd)で近似することができる。
【0166】
そこで、制御手段22やコンソール58は、上記(2)式に従って算出される補正処理前の各放射線検出素子7ごとの画像データdの総和Σdを算出して、その総和Σdを上記(4)式の総和αに代入して、増加分ΔDを算出するように構成することが可能である。なお、画像データdの総和Σdは信号線6ごとに算出される。
【0167】
この場合、制御手段22やコンソール58は、算出した増加分ΔDを、上記(2)式に従って算出した画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdから減算することで、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように補正する。
【0168】
また、上記の近似を用いずに、増加分ΔDを正確に算出するように構成する場合には、以下のように構成される。
【0169】
上記(2)式に従って算出される補正処理前の各放射線検出素子7ごとの画像データdの総和Σdには、上記の総和αのほかに、増加分ΔDが走査線5のz本だけ含まれる。すなわち、総和Σdと総和αとの関係は、増加分ΔDとzとを用いて、
Σd=α+z×ΔD …(5)
∴α=Σd−z×ΔD …(6)
の関係が成り立つ。
【0170】
これを上記(4)式に代入すると、
ΔD=a(z)×{Σd−z×ΔD}
となり、これをΔDについて解くと、
ΔD=Σd×a(z)/{1+a(z)×z} …(7)
となる。
【0171】
そこで、制御手段22やコンソール58は、上記のように、画像データdの補正処理の際に、放射線の照射の開始や終了を検出した走査線5の各ライン番号(図11の場合はa、b)に基づいて上記のzを算出し、比例定数を表す関数式a(z)に算出したzを代入して比例定数a(z)を算出するとともに、上記(2)式に従って算出した各画像データdの総和Σdを算出して、算出したz、a(z)、Σdを上記(7)式に代入して、増加分ΔDを算出する。
【0172】
そして、制御手段22やコンソール58は、算出した増加分ΔDを、上記(2)式に従って算出した画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdから減算することで、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように補正するように構成することができる。
【0173】
なお、前述したように、画像データdの総和Σd(総和αを近似する場合を含む。)は、信号線6ごと(すなわち読み出し回路17ごと)に算出される値であり、特に被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、信号線6ごとに異なる値になり得る。そのため、上記(4)式や(7)式に従って算出される増加分ΔDも信号線6ごとに異なる値になり得る。従って、増加分ΔDは、信号線6ごとに算出された総和Σdに基づいて信号線6ごとに算出される。
【0174】
また、本実施形態では、図14(A)〜(C)や上記(4)式等に示したように、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDを算出する際に、増加分ΔDを算出する放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7の画像データdの総和αを用いる場合について説明した。
【0175】
しかし、例えば当該信号線6に接続されている放射線検出素子7の中には、非常に大きな値の画像データdや非常に小さな値の画像データdしか出力しない異常な放射線検出素子7が存在する場合もある。また、放射線の検出には関与しないダミーの放射線検出素子7が設けられている場合もある。
【0176】
そのため、上記の総和αを算出するために用いる放射線検出素子7は、当該信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7である必要はなく、有効な値の画像データdを出力する各放射線検出素子7や、それらの各放射線検出素子7の中から抽出された各放射線検出素子7について総和αを算出するように構成することが可能であり、総和αを算出する対象となる各放射線検出素子7は、適宜設定される。
【0177】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、各フレームごとに各放射線検出素子7からデータDを読み出す読み出し処理を繰り返し行うように構成することで、各放射線検出素子7ごとに読み出されるデータDの値を監視することで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となる。
【0178】
そして、このように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となるため、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子7や走査線5の各ラインLa〜Lbを的確に特定することが可能となる。
【0179】
そして、従来の場合と同様に、各フレームごとに取得した各データDを加算して各放射線検出素子ごとの画像データdを再構築するが、その際、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7については、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことに起因して各TFT8内を流れるリーク電流の量が増加することにより、画像データdに増加分ΔDが発生する。
【0180】
しかし、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、上記のように特定した放射線検出素子7について算出した画像データdから、当該放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている各放射線検出素子7の画像データdの総和Σdに、例えば上記(7)式に示したような所定の定数a(z)/{1+a(z)×z}(或いは、総和Σdを総和αに等しいと近似した場合には上記(4)式に示したような所定の比例定数a(z))を乗算した値を減算し、このようにして算出した値を当該放射線検出素子7の画像データdとして補正する。
【0181】
このように補正することで、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子7(すなわち図20(A)に示した画像領域δTの各放射線検出素子7)について、放射線が照射されたことに起因して各TFT8内を流れるリーク電流の量が増加することにより画像データdに生じた増加分ΔDを、画像データd中から的確に除去することが可能となる。
【0182】
そのため、これらの各放射線検出素子7の画像データdの値を、放射線が照射されていた間には読み出し処理が行われなかった各放射線検出素子7(すなわち図20(A)に示した画像領域A、Bの各放射線検出素子7)の画像データdの値と同等の値になるように補正するように構成することが可能となる。
【0183】
そして、これらの補正された画像データdに基づいて生成された放射線画像pでは、画像領域δTの部分が、画像領域Aや画像領域Bと同等の明るさ(輝度)になり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【0184】
なお、上記の実施形態では、放射線の照射開始を検出した時点で読み出し処理を行っていたフレームを含む3回分の各フレームごとのデータD(m)〜D(m+2)を取得し、3回分のデータD(m)〜D(m+2)を加算して各放射線検出素子7ごとの画像データdを算出する場合について説明したが、例えば図18に示したように2回分の各フレームごとのデータDを取得したり、或いは4回以上の各フレームごとにデータDを取得して、それらのデータDを加算するように構成することも可能である。
【0185】
そして、このように構成した場合でも、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた走査線5の各ラインLに接続されている各放射線検出素子7について画像データdに増加分ΔDが発生するという問題が生じるため、この場合も、上記の実施形態で示した補正処理を適用することが可能である。
【0186】
また、走査線5の各ラインL1〜Lxごとに、データDを加算するフレーム数すなわち加算するデータDの数を変えるように構成することも可能であるが、この場合も、上記の問題が生じるため、上記の実施形態で示した補正処理を適用することが可能となる。
【0187】
さらに、上記のように補正した画像データdに基づいて放射線画像pを生成する際、各放射線検出素子7ごとの画像データdに対してゲイン補正や対数変換処理、正規化処理、階調処理等の各種処理を施して最終的な画像データを算出し、それに基づいて放射線画像pが生成されることは公知の内容であり、それらの処理が適宜行われることは改めて説明するまでもない。
【符号の説明】
【0188】
1 放射線画像撮影装置
5、L1〜Lx 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
58 コンソール
a(z) 比例定数(所定の定数)
D、D(m)〜D(m+2) データ
d 画像データ
P 検出部
Q 電荷
r 領域
z 本数
ΔD 増加分(画像データの総和に所定の定数を乗算した値)
Σd 画像データの総和
ΣD(n) 積算値
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに係り、特に放射線の照射中にも読み出し処理を行う放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図3や図7に示すように、通常、放射線検出素子7が検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が設けられている。そして、放射線画像撮影前、すなわち放射線画像撮影装置に放射線発生装置から放射線が照射される前に、TFT8のオン/オフを適宜制御しながら、各放射線検出素子7内に残存する余分な電荷を放出されるリセット処理が行われるように構成される場合が多い。
【0005】
そして、各放射線検出素子7のリセット処理が終了した後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線6を介してTFT8にオフ電圧を印加して全TFT8をオフ状態とした状態で放射線発生装置から放射線画像撮影装置に放射線を照射すると、放射線の線量に応じた電荷が各放射線検出素子7内で発生して、各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0006】
そして、放射線画像撮影後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から、その内部に蓄積された電荷を読み出して、読み出し回路17で電荷電圧変換する等して画像データとして読み出すように構成される場合が多い。
【0007】
しかし、このように構成する場合、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間のインターフェースを的確に構築し、放射線が照射される段階で放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7内に電荷を蓄積できる状態になっていることが必要となるが、装置間のインターフェースの構築は必ずしも容易ではない。そして、放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7のリセット処理を行っている最中に放射線が照射されてしまうと、放射線の照射により発生した電荷が各放射線検出素子7から流出してしまい、照射された放射線の電荷すなわち画像データへの変換効率が低下してしまう等の問題があった。
【0008】
そこで、近年、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出する技術が種々開発されている。そして、それらの技術の一環として、例えば特許文献4や特許文献5に記載された技術を利用して、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出することが考えられている。
【0009】
特許文献4、5では、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始される以前から、例えば後述する図7等に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理を繰り返して行い、放射線が照射されている最中にも画像データの読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置や画像データの読み出し方法が記載されている。
【0010】
そして、検出部P上に配列された全ての放射線検出素子7のうち画像データを読み出す対象の各放射線検出素子7から各画像データを読み出す期間を1フレームとするとき、放射線の照射が開始されたフレームから放射線の照射が終了したフレームの次のフレームまでの各フレームごとに読み出された画像データを各放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構成する技術が開示されている。
【0011】
すなわち、図17に示すように、ゲートドライバ15bから、図中の一番上側の走査線5から順に各走査線5へのオン電圧の印加を開始し、以降、オン電圧を印加する走査線5を図中の下方向に順次切り替えて印加しながら行う各フレームごとの各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理において、例えば、図18に斜線を付して示す部分ΔTの走査線5にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したとする。
【0012】
この場合、放射線が照射されたフレームである第1フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データだけでなく、その次の第2フレームで各放射線検出素子7から読み出された画像データを第1フレームの画像データに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データが再構築される。
【0013】
また、図19に示すように、さらにその次の第3フレームまで考慮し、第1フレームから第3フレームで各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された各画像データを放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データが再構築されるように構成される場合もある。
【0014】
なお、図18や図19は、斜線を付して示す部分ΔTにのみ放射線が照射されたことを表すものではなく、図17に示したように一番上側の走査線5から順にオン電圧を印加する走査線5を切り替えながら読み出し処理を行う際に、斜線を付して示す部分ΔTの走査線5にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されたことを表すものであり、放射線は、検出部Pの全域にわたって照射される。
【0015】
そして、放射線画像撮影装置に放射線が照射されている間に走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧が印加される走査線5に接続されている各放射線検出素子7からは、それ以前にオン電圧が印加された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータよりも著しく大きな値の画像データが読み出される。これを利用して、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値を監視することによって、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されたことを放射線画像撮影装置自体で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開平9−140691号公報
【特許文献5】特開平7−72252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、本発明者らの研究では、例えば、図19に示したように、第1フレームから第3フレームで各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された各画像データを放射線検出素子7ごとに加算し、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構築して、図20(A)に示すような放射線画像pを生成した場合、放射線が照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δT(すなわち図19の斜線部分ΔTに相当する画像領域)の画像データが、その上側の画像領域Aや下側の画像領域Bの画像データより値が大きくなることが分かっている。
【0018】
すなわち、例えば、放射線画像撮影装置の検出部Pの全域に同じ線量の放射線を一様に照射した場合に取得される各画像データを加算して再構築した各画像データdに基づいて生成された放射線画像p(図20(A)参照)において、信号線6の延在方向(図中では縦方向の矢印方向)に沿って、加算されて再構築された各画像データdを見た場合、図20(B)に示すように、画像領域Aや画像領域Bの画像データdに比べて、放射線が照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTの画像データdが大きな値になる。
【0019】
そのため、放射線画像p中の画像領域δTの部分が、画像領域Aや画像領域Bに比べてやや黒くなる(すなわち暗くなる)。このように、放射線画像撮影装置に対して放射線を一様に照射したにもかかわらず、放射線画像p中に濃淡が現れる。
【0020】
これは、放射線画像撮影装置の検出部Pの全域に同じ線量の放射線を一様に照射した場合だけでなく、実際に被写体を介して放射線画像撮影装置に放射線を照射して放射線画像を行った場合でも、同様に生成された放射線画像に濃淡が現れる。そして、このように生成された放射線画像に濃淡が現れると、放射線画像が見づらいものになる。
【0021】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線が照射されている最中にもデータの読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置で得られた画像データに基づいて、濃淡のない放射線画像を生成することが可能な放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記所定数のフレーム分の読み出し処理を行って取得した前記各放射線検出素子ごとの前記各データを加算して前記各放射線検出素子ごとに画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとすることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の放射線画像撮影装置システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記データを送信する通信手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データに基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記所定数のフレーム分の読み出し処理で取得された前記各放射線検出素子ごとの前記各データの情報、および放射線の照射が開始された時点および終了した時点でそれぞれオン電圧が印加された前記各走査線の情報に基づいて、前記各フレームごとの前記各データを前記各放射線検出素子ごとに加算して前記各放射線検出素子ごとの画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとするコンソールと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムによれば、各フレームごとに各放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理を繰り返し行うように構成することで、各放射線検出素子ごとに読み出されるデータの値を監視することで、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となり、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子を的確に特定することが可能となる。
【0025】
そして、従来の場合と同様に、各フレームごとに取得した各データを加算して各放射線検出素子ごとの画像データdを再構築するが、その際、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子については、放射線画像撮影装置に放射線が照射されたことに起因して各スイッチ手段中を流れるリーク電流の量が増加することにより、画像データdに増加分が発生する。
【0026】
しかし、上記のように特定した放射線検出素子について算出した画像データdから、当該放射線検出素子が接続されている信号線に接続されている各放射線検出素子の画像データdの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、このようにして算出した値を当該放射線検出素子の画像データdとして補正する。
【0027】
このように補正することで、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子(すなわち図20(A)に示した画像領域δTの各放射線検出素子)について、放射線が照射されたことに起因して各スイッチ手段中を流れるリーク電流の量が増加することにより画像データに生じた増加分を、画像データd中から的確に除去することが可能となり、これらの各放射線検出素子の画像データdの値を、放射線が照射されていた間には読み出し処理が行われなかった各放射線検出素子(すなわち図20(A)に示した画像領域A、Bの各放射線検出素子)の画像データdの値と同等の値になるように補正するように構成することが可能となる。
【0028】
そのため、これらの補正された画像データdに基づいて生成された放射線画像pでは、画像領域δTの部分が、画像領域Aや画像領域Bと同等の明るさ(輝度)になり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】各実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】読み出し処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】各放射線検出素子のリセット処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図11】各放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に放射線が照射されるタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図12】各実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図13】放射線が照射される前後に放射線検出素子から放出される電荷や他の放射線検出素子からリークする各電荷と読み出されるデータとの関係を説明する図である。
【図14】(A)〜(C)は照射時間を変えて放射線を照射した場合に各データを加算して算出される各画像データを各放射線検出素子ごとにプロットしたグラフである。
【図15】図14(A)の場合の線量と照射時間と同じ条件下でアルミ板や鉛板の厚さを変えて実験を行った場合の総和と増加分との関係を表すグラフである。
【図16】図15において放射線の照射時間を変化させた場合の総和と増加分との関係を表すグラフである。
【図17】各フレームごとの各放射線検出素子からのデータの読み出し処理を説明する図である。
【図18】第1フレームの斜線部分の走査線にオン電圧が順次印加される間に放射線が照射されて照射が終了したことを表す図である。
【図19】画像データの再構築に用いられる3フレーム分の画像データを説明する図である。
【図20】(A)再構築された画像データに基づいて生成された放射線画像を表す図であり、(B)画像領域δTの画像データが画像領域A、Bの画像データより大きくなることを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0032】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
【0033】
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0034】
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、後述するデータD等を、後述するコンソール58(図12参照)等の外部装置との間で無線方式で送受信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
【0035】
なお、アンテナ装置39の設置位置は蓋部材38の側面部に限らず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置39を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置39は1個に限らず、複数設けることも可能である。さらに、データD等を外部装置との間で有線方式で送受信するように構成することも可能であり、その場合は、例えば、通信手段として、ケーブル等を差し込むなどして接続するための接続端子等が放射線画像撮影装置1の側面部等に設けられる。
【0036】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0037】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0038】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0039】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0040】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0041】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0042】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0043】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0044】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0045】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0046】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0047】
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
【0048】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0049】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0050】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0051】
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0052】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0053】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0054】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0055】
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0056】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0057】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0058】
そして、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からデータDを読み出す画像読み出し処理等の際に、後述する制御手段22からトリガ信号を受信すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧のオン電圧とオフ電圧との間での切り替えを開始させるようになっている。
【0059】
具体的には、本実施形態では、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理の際には、制御手段22からトリガ信号を受信すると、例えば図9に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧(すなわちデータ読み出し用の電圧)とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替える処理をフレームごとに繰り返し行い、各TFT8を介して走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からデータDをそれぞれ読み出させるようになっている。
【0060】
なお、以下では、図9に示すように、検出部P(図3や図7参照)上に二次元状に配列された1面分の全ての放射線検出素子7のうちデータDを読み出す対象の各放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームという。
【0061】
また、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理前や、次の放射線画像撮影を行うまでの間等に、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
【0062】
各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、例えば、走査駆動手段15は、図10に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えさせて1面分のリセット処理Rmを行い、この1面分のリセット処理Rmを必要に応じて繰り返し行わせながら各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0063】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0064】
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0065】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0066】
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0067】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると、各放射線検出素子7内に蓄積されていた電荷が各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6に放出され、信号線6を介してコンデンサ18bに流入して蓄積される。そして、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
【0068】
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0069】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0070】
そして、制御手段22は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせてデータDとして下流側に出力させるようになっている。
【0071】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7のデータDは、アナログマルチプレクサ21(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値のデータDに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0072】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0073】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、クレードル等の図示しない充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
【0074】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
【0075】
次に、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理や、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了の検出処理等について説明する。
【0076】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、走査駆動手段15に対して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させるためのトリガ信号を送信するようになっている。
【0077】
また、制御手段22は、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせるようになっている。なお、本実施形態では、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理は、各放射線検出素子7から余分な電荷を放出させるリセット処理を兼ねているが、例えば各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する前等に、各放射線検出素子7のリセット処理を別途行うように構成してもよいことは前述した通りである。
【0078】
本実施形態では、このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前から、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始される。そのため、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームでは、放射線が照射されていない各放射線検出素子7内で発生した暗電荷がデータDとして読み出される。
【0079】
これらの暗電荷に相当するデータDは、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射後に読み出されるデータD、すなわち放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した有用な電荷に相当するデータを含むデータDに含まれる、暗電荷に起因するオフセット分に相当する。そのため、これらの暗電荷に相当するデータDは、いわゆるオフセット補正値Oとして用いることができ、放射線の照射後に読み出されるデータDからこのオフセット補正値Oを減算することで、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した有用な電荷のみに相当する有用なデータDを算出することができる。
【0080】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出される各データDを、余分なデータDとして廃棄するのではなく、オフセット補正値Oとしてそれぞれフレームごとに記憶手段40に保存させるようになっている。
【0081】
しかし、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されて以降のフレームごとのオフセット補正値Oを全て保存する必要はない。また、記憶手段40の記憶容量等の制約もある。そのため、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されている。
【0082】
そのため、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータD(この場合はオフセット補正値O)が記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくようになっている。
【0083】
一方、制御手段22は、上記のようにして各放射線検出素子7からデータDを読み出して記憶手段40に保存させると同時に、本実施形態では、読み出されたデータDの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するようになっている。
【0084】
図9に示したタイミングで、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加しながら各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行っている際に、例えば、m回目のフレームにおいて、図11に示すようなタイミングで放射線が照射されたものとする。
【0085】
なお、図11では、斜線を付した期間が、放射線が照射された期間を表す。また、図11に示した走査線5のラインLa〜Lbの各ラインが、例えば図18や図19に示した斜線部分ΔTの走査線5、すなわち放射線が照射されている間にオン電圧が順次印加されていた走査線5の各ラインに相当する。
【0086】
図11に示したような場合、m回目のフレームでは、走査線5のラインL1〜La-1にそれぞれオン電圧が印加されて、走査線5の各ラインL1〜La-1にTFT8を介して接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線が照射される前に読み出された暗電荷に起因するデータである。そして、これらのデータDは、m−1回目のフレーム以前のフレームの場合(すなわちデータDがオフセット補正値Oの場合)と同様に、データD自体の値としては小さい値になる。
【0087】
一方、図11に示すように、m回目のフレームの走査線5のラインLaでは、放射線が照射され始め、走査線5のラインLaに接続されている各放射線検出素子7内で放射線の照射に起因して電荷(電子正孔対)が発生するため、暗電荷に起因するデータとは明らかに異なる、より大きな値のデータDが読み出されるようになる。
【0088】
そこで、例えば、上記のようにして読み出し回路17で各放射線検出素子7から読み出された個々のデータDの値を制御手段22で監視して、読み出されたデータDが例えば予め設定された閾値を越えたか否かを判断し、読み出されたデータDが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
【0089】
しかし、このように構成した場合、放射線が照射されていないにもかかわらず大きなデータDを出力する異常な放射線検出素子7があった場合や、データDに生じるゆらぎがたまたま大きな値になった場合に、誤って放射線の照射が開始されたと判断してしまう虞れがある。
【0090】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、上記のようにして読み出し回路17で読み出された、走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各データDの積算値ΣD(n)を、走査線5の各ラインLnごとに算出し、走査線5の各ラインLnごとの各データDの積算値ΣD(n)が例えば予め設定された閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたと判断するようになっている。
【0091】
本実施形態では、このように、制御手段22は、走査線5の各ラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDの積算値ΣD(n)に基づいて、走査線単位で放射線の照射の開始を検出するようになっている。そして、制御手段22は、放射線の照射の開始を検出した走査線5のライン番号(この場合はa)とその際のフレームのフレーム番号(この場合はm)とをCPUのメモリや記憶手段40等に記憶させるようになっている。
【0092】
また、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷(電子正孔対)の量は、放射線検出素子7内の電荷量が飽和するまでは、放射線の照射時間(すなわち放射線の照射の開始から終了までの時間間隔)が長くなるほど多くなる。
【0093】
従って、上記の例で言えば、m回目のフレームで、放射線の照射が開始された直後に読み出し処理が行われた走査線5のラインLaに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDよりも、走査線5のラインLa+1に接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDの方が大きくなり、積算値についても、積算値ΣD(n)よりも積算値ΣD(n+1)の方が大きくなる。
【0094】
そして、この傾向は、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されている間も続き、放射線が照射されている間にTFT8にオン電圧が印加されて読み出し処理が行われた、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7については、それらのデータDの積算値がΣD(a)<ΣD(a+1)<…<ΣD(b-1)<ΣD(b)のように、放射線の照射時間が長くなるほど大きくなる。
【0095】
しかし、放射線の照射が終了した直後に読み出し処理が行われた走査線5のラインLb+1に接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータDは、放射線の照射が終了する直前に読み出し処理が行われた走査線5のラインLbに接続されている各放射線検出素子7から読み出されるデータDの値とさほど変わらない。
【0096】
そのため、走査線5のラインLb+1に接続されている各放射線検出素子7のデータDの積算値ΣD(b+1)は、走査線5のラインLbに接続されている各放射線検出素子7のデータDの積算値ΣD(b)とほぼ同じ値になる。また、同様に、走査線5のラインLb+1以降の各ラインLnにおいても積算値ΣD(n)は積算値ΣD(b)と同等の値になる。
【0097】
そこで、制御手段22は、上記のようにして放射線の照射開始を検出した後、例えば、走査線5の各ラインLnごとに算出する各放射線検出素子7の各データDの積算値ΣD(n)と、その直前に算出した走査線5のラインLn-1の積算値ΣD(n-1)との差が、予め設定された閾値以下になった場合に、当該直前の走査線5のラインLn-1(上記の例では走査線5のラインLb)にオン電圧が印加された時点で放射線の照射が終了したと判断するようになっている。
【0098】
本実施形態では、このように、制御手段22は、走査線5の各ラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出されたデータDの積算値ΣD(n)に基づいて、走査線単位で放射線の照射の終了を検出するようになっている。そして、制御手段22は、放射線の照射の終了を検出した走査線5のライン番号(この場合はb)とその際のフレームのフレーム番号(この場合はm)とをCPUのメモリや記憶手段40等に記憶させるようになっている。
【0099】
また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷は、その後の1回の読み出し処理で90%以上がデータDとして読み出され、その読み残し分の電荷がその次の読み出し処理で読み出されることが分かっている。
【0100】
そして、図11に示すように、少なくとも走査線5のラインL1〜Laに接続されている各放射線検出素子7については、m+1回目のフレームで放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が読み出され、m+2回目の読み出し処理でその読み残し分が読み出される。
【0101】
そのため、本実施形態では、図11や図19に示したように、放射線の照射開始を検出したm回目のフレームからm+2回目のフレームまで各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行い、放射線の照射が開始された時点で読み出し処理を行っているm回目のフレームを含む3回分の各フレームごとに、各放射線検出素子7ごとのデータDを取得して記憶手段40に保存するようになっている。
【0102】
そして、本実施形態では、制御手段22は、m+2回目のフレーム、すなわち放射線の照射が開始されたと判断したフレームを含む3回分のフレームの読み出し処理を終了した時点で、走査駆動手段15に対してトリガ信号を送信して、ゲートドライバ15bからの走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加を停止させて、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を終了させるようになっている。
【0103】
そして、制御手段22は、上記のようにして、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を終了させると、後述する画像データdの補正処理等をコンソール58で行う場合には、放射線の照射の開始を検出したm回目のフレームの1つ前のフレームであるm−1回目のフレームから、放射線の照射の終了を検出したm+1回目までの各フレームの各放射線検出素子7ごとの各データDを、通信手段であるアンテナ装置39(図1や図7等参照)を介してコンソール58に送信するようになっている。
【0104】
また、この場合、制御手段22は、記憶手段40から、放射線の照射の開始を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はa)や、放射線の照射の終了を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はb)の情報を読み出して、それらの情報も送信するようになっている。
【0105】
なお、m−1回目のフレームで読み出されたデータDを各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOとする代わりに、例えば、放射線の照射が開始された時点で読み出し処理が行われていたm回目のフレームより前の数フレーム分の放射線検出素子ごとのデータDの平均値を算出する等して、その平均値等を放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oとするように構成することも可能である。
【0106】
そして、その場合は、この1フレーム分の各放射線検出素子7ごとのオフセット補正値Oの各データと、m回目およびm+1回目の各フレームの各放射線検出素子ごとの各データDが送信される。
【0107】
なお、本実施形態における画像データdの補正処理等については、放射線画像撮影システム50の構成について説明した後で説明する。
【0108】
[放射線画像撮影システム]
図12は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。放射線画像撮影システム50は、図12に示すように、例えば、放射線を照射して図示しない患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師等の操作者が被写体に照射する放射線開始の制御等の種々の操作を行う前室R2、およびそれらの外部に配置される。
【0109】
撮影室R1には、前述した放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51や、被写体に照射する放射線を発生させる図示しないX線管球を備える放射線源52やそれをコントロールする放射線発生装置55、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55やコンソール58とが無線通信する際にこれらの通信を中継する無線アンテナ53を備えた基地局54等が設けられている。
【0110】
なお、図12では、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填して用いる場合が示されているが、前述したように、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台等と一体的に形成されたものであってもよい。また、前述したように、放射線画像撮影装置1と外部装置との通信をLANケーブル等のケーブルを介して行う場合には、図12に示したように、それらのケーブルを基地局54に接続するように構成し、ケーブルや基地局54を介して有線通信でデータ等の情報を送受信できるように構成することも可能である。
【0111】
また、基地局54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、基地局54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等の間で情報を送信する際のLAN通信用の信号等を、放射線発生装置55との間で情報を送信する際の信号に変換し、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0112】
前室R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。そして、放射線発生装置55は、放射線技師等の操作者により曝射スイッチ56が操作されて操作卓57から信号が送信されてくると、放射線源52を起動させたり、放射線源52から放射線を照射させるようになっている。
【0113】
放射線発生装置55は、このほか、指定されたブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に対して放射線を適切に照射できるように放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りを調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を放射線源52に対して行うようになっている。なお、これらの処理を、放射線技師等の操作者が手動で行うように構成してもよい。
【0114】
また、放射線発生装置55は、放射線源52からの放射線の照射開始から設定された時間が経過した時点で、放射線源52のX線管球を停止させる等して、放射線源52からの放射線の照射を停止させるようになっている。
【0115】
放射線画像撮影装置1の構成等については前述した通りであるが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、上記のようにブッキー装置51に装填されて用いられる場合もあるが、ブッキー装置51には装填されず、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。
【0116】
すなわち、放射線画像撮影装置1を単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられたベッドや図12に示すように臥位撮影用のブッキー装置51B等の上面側に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることもできるようになっている。この場合、例えばポータブルの放射線源52B等から、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
【0117】
本実施形態では、撮影室R1や前室R2の外側に、コンピュータ等で構成されたコンソール58が設けられている。コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続、或いは内蔵されている。
【0118】
なお、コンソール58を例えば前室R2等に設けるように構成することも可能である。また、コンソール58に、例えば、放射線画像撮影装置1の状態を覚醒(wake up)状態とスリープ(sleep)状態との間で遷移させる機能を持たせたり、或いは、放射線技師等の操作者が撮影室R1で行う放射線画像撮影の内容を表す撮影オーダ情報を作成したり選択したりすることを可能とする機能を持たせたりするように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0119】
[画像データの算出処理および補正処理等について]
以下、上記のようにして得られた各データDに基づいて画像データdを算出する処理や、算出した画像データdに対する補正処理等について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてあわせて説明する。
【0120】
なお、各データDに基づく画像データdの算出処理や画像データdに対する補正処理等を放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成してもよく、また、放射線画像撮影システム50のコンソール58で行うように構成することも可能である。以下では、それらをあわせて説明する。また、以下では、m回目のフレーム等で読み出された各放射線検出素子7ごとのデータDをD(m)等と表す。
【0121】
前述したように、m回目のフレームにおいて図11に示すようなタイミングで放射線が照射されたものとすると、走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDは、m回目のフレームでは読み出されず、m+1回目のフレームで読み出され、その読み残し分がm+2回目のフレームで読み出される。
【0122】
また、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDはm回目のフレームで読み出され、その読み残し分がm+1回目のフレームで読み出される。なお、この場合、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDはm回目およびm+1回目の各フレームでほぼ100%読み出されてしまうため、m+2回目のフレームではほとんど読み出されない。
【0123】
さらに、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータDは、m回目のフレームとm+1回目のフレームとで分割されて読み出され、m+2回目のフレームでその読み残し分が読み出される。
【0124】
そのため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、前述した従来の場合と同様に、m回目からm+2回目の各フレームのデータDを各放射線検出素子7ごとに加算して画像データdを算出し、各放射線検出素子7の画像データdを再構築するようになっている。
【0125】
正確には、前述したように、各データDには、それぞれ暗電荷に起因するオフセット分であるオフセット補正値Oが重畳されているため、制御手段22やコンソール58は、下記(1)式に示すようにそれぞれオフセット補正値Oを減算した各データDを加算して、すなわち、下記(2)式に従って各放射線検出素子7ごとに画像データdを算出するようになっている。
d=(D(m)−O)+(D(m+1)−O)+(D(m+2)−O)…(1)
∴d=D(m)+D(m+1)+D(m+2)−3O …(2)
【0126】
しかし、このように、各フレームのデータDを加算して画像データdを算出しても(正確には上記(1)式または(2)式に従って画像データdを算出しても)、再構築した画像データdに基づく放射線画像pでは、図20(B)に示したように、少なくとも放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTの画像データdの値が、他の画像領域A、Bの画像データdの値より大きくなり、放射線画像p上に濃淡が現れる場合があることは前述した通りである。
【0127】
そこで、上記のようにして算出した画像データdの補正、特に放射線画像pにおける画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように適切に補正することが必要となる。
【0128】
本発明者らの研究では、放射線画像pにおける画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値が他の画像領域A、Bの画像データdの値より大きくなる理由は、以下のように考えられている。
【0129】
すなわち、スイッチ手段であるTFTの特性として、各放射線検出素子7内に蓄積された電荷が各TFT8を介してごく僅かであるが信号線6にリークする。すなわち、図13に示すように、例えば走査線5のラインLiにオン電圧が印加されて放射線検出素子7iから電荷Qが読み出されている際にも、各TFT8を介して他の各放射線検出素子7から同じ信号線6に電荷qがそれぞれ流れ込む。
【0130】
そして、放射線検出素子7iからの電荷Qと他の各放射線検出素子7からリークしたごく小さな各電荷qとの総和が増幅回路18で電荷電圧変換されて、データDiとして読み出される。なお、他の全ての放射線検出素子7について電荷qと記載されているからといって、他の各放射線検出素子7から互いに等しい量の電荷qがリークすることを意味するものではなく、リークする電荷qは、個々のTFT8の製造特性や各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷量等に依存した値になる。
【0131】
また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、本実施形態では、照射された放射線がシンチレータ3(図2等参照)で電磁波に変換されるが、この電磁波が各TFT8に照射されると、各TFT8内を流れるリーク電流の量が多くなり、各TFT8で各放射線検出素子7内に蓄積されている電荷のリーク量が増加する。すなわち、図13に示した場合の放射線検出素子7i以外の他の各放射線検出素子7から各TFT8を介してリークして同じ信号線6に流れ込む電荷qの量が大きくなる。
【0132】
そのため、放射線検出素子7iからの電荷Qと他の各放射線検出素子7からリークした各電荷qとの総和に相当するデータDiの値が、他の各放射線検出素子7から各TFT8を介してリークして同じ信号線6に流れ込む電荷qの量が増加した分だけ増加する。そのため、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5に対応する画像領域δTの画像データdの値が、他の画像領域A、Bの画像データdの値より大きくなると考えられている。
【0133】
ここで、本発明者らの研究で得られた知見に基づいて、さらに詳しく解析する。
【0134】
図14(A)〜(C)は、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を、放射線の照射時間を変えて照射した場合に、m回目からm+2回目の各読み出し処理で読み出された各データD(m)、D(m+1)、D(m+2)を上記(2)式に従って加算して得られた各画像データdを、図20(A)と同様に、1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7についてプロットしたグラフである。
【0135】
そして、図14(A)〜(C)では、被写体を介さない状態で放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線量(なお、線量は放射線の照射時間と単位時間当たりに照射する放射線の線量(すなわち線量率)との積で表される。)が同じ線量であるが、放射線の照射時間を種々変化させた場合が示されている。
【0136】
なお、図14(A)〜(C)では、画像領域δTの範囲が種々変化されたように示されているが、これは、照射時間が長くなると、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の範囲が広くなることを表すものであり、画像領域δTの範囲は照射時間に比例して変化する。
【0137】
ここで、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の、画像領域A、δT、Bの全放射線検出素子7の画像データdの総和をαとすると、図14(A)〜(C)に示されるように、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を照射した場合、総和αは、図14(A)〜(C)に示すいずれの場合も同じ値になる。なお、画像データdの総和αは信号線6ごとに算出される。
【0138】
画像データdの総和αが図14(A)〜(C)に示すいずれの場合も同じ値になる理由は、放射線の照射時間や放射線の線量率が異なっていても、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の線量が同じであれば、シンチレータ3で放射線から変換され各放射線検出素子7に照射される電磁波の光量が同じ光量になり、放射線の照射(すなわち電磁波の照射)により各放射線検出素子7内で発生する電荷の量が同じになるためであると考えられる。
【0139】
また、図14(A)〜(C)に示すように、画像領域δTに属する各放射線検出素子7の個々の画像データdの、画像領域A、Bに属する各放射線検出素子7の個々の画像データdに対する増加分をΔDとした場合、照射時間が短くなり、照射される放射線の線量率(すなわち単位時間当たりに照射される放射線の線量)が大きくなると、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDが大きくなる。
【0140】
これは、放射線画像撮影装置1に照射される放射線が強くなり(すなわち線量率が大きくなり)、シンチレータ3で変換されて各TFT8に照射される電磁波の単位時間当たりの光量が大きくなると、それに比例して各TFT8内で発生する電子正孔対も多くなり各TFT8内を流れるリーク電流の量が多くなることに対応していると考えられる。
【0141】
同様に、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の照射時間が長くなり、線量率が小さくなると、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDも小さくなる(図14(C)参照)。
【0142】
しかし、その一方で、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和をβとした場合、放射線の照射時間や放射線の線量率が異なっていても、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が同じ線量であれば、総和βは、図14(A)〜(C)に示すいずれの場合も同じ値になる。なお、総和βは信号線6ごとに算出される。
【0143】
これは、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が同じ線量になれば、結果的に各TFT8内を流れるリーク電流の総量が同じになるためと考えられる。なお、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和βとは、各増加分ΔDを、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数分だけ加算した値を表す。
【0144】
以上のように、本発明者らの研究では、図14(A)〜(C)に示すように、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を照射した場合、増加分ΔDは、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例するという知見が得られた。
【0145】
また、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線が照射された場合には、すなわち各放射線検出素子7や各TFT8に同じ光量の電磁波が照射された場合には、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αや、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和βは、線量率や照射時間等を可変させても、それぞれ同じ値になるという知見が得られた。
【0146】
ところで、図14(A)〜(C)に示した上記の実験結果は、被写体を介さない状態で放射線画像撮影装置1に放射線を照射した場合の結果であるが、各放射線検出素子7や各TFT8側から見れば、被写体の有無には関係なく、シンチレータ3から照射される電磁波の光量に依存して上記の画像データdの総和αや増加分ΔDの総和βが決まるはずである。
【0147】
すなわち、被写体の有無にかかわらず、各放射線検出素子7や各TFT8に照射される電磁波の光量が同じであれば、画像データdの総和αや増加分ΔDの総和βは同じ量になり、シンチレータ3から各放射線検出素子7や各TFT8に照射される電磁波の光量が変化すれば、上記の画像データdの総和αや増加分ΔDの総和βがそれに比例して変化すると考えられる。
【0148】
そして、増加分ΔD、すなわち画像領域δTの画像データdの、画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDが、上記のように、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例することを考えあわせると、結局、被写体の有無にかかわらず、
(i)増加分ΔDは、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の画像領域A、δT、Bの全放射線検出素子7の画像データdの総和αに比例して増減するが、
(ii)増加分ΔDの総和αに対する比例定数は、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例する、
ことが予想される。
【0149】
これらのことを確認するために、本発明者らは、まず、放射線画像撮影装置1に同じ線量の放射線を同じ照射時間だけ照射するが、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1参照)を被覆するアルミ板や鉛板の厚さを種々変化させ、各放射線検出素子7や各TFT8に照射される電磁波の光量を種々変化させて、上記の総和αと増加分ΔDとを測定する実験を行った。
【0150】
図15は、図14(A)の場合の線量および照射時間と同じ条件下で行った実験結果を表すグラフである。そして、図15に示すように、上記の総和αと増加分ΔDとは比例の関係にあること、すなわち上記の(i)の条件が成り立つことが確認された。
【0151】
すなわち、アルミ板や鉛板の厚さを種々変化させると、シンチレータ3に到達する放射線の線量が変化し、それに伴ってシンチレータ3から各放射線検出素子7に照射される電磁波の光量が変化する。そのため、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αが、電磁波の光量の増加(減少)に比例して増加(減少)する。
【0152】
また、シンチレータ3から各TFT8に照射される電磁波の光量も上記と同様に変化するが、それに比例して各TFT8内で発生する電子正孔対の量が変化し、各TFT8内を流れるリーク電流の量が変化する。そのため、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDが、電磁波の光量の増加(減少)に比例して増加(減少)する。
【0153】
そのため、増加分ΔDが画像データdの総和αに比例して増減する、すなわち上記の(i)の条件が成り立つようになると考えられる。
【0154】
また、図16は、図15の場合の線量と同じ線量の放射線を照射するが、照射時間を2倍および4倍にし(すなわち放射線の線量率(すなわち電磁波の単位時間当たりの光量)を1/2および1/4にし)、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rを被覆するアルミ板の厚さを種々変化させた場合の実験結果を表すグラフである。
【0155】
図16に示すように、これらの場合もそれぞれ上記の(i)の条件が成り立つが、増加分ΔDの総和αに対する比例定数が、放射線の照射時間に反比例してそれぞれ1/2および1/4になっている。すなわち、図15や図16に示すように、上記の考察の通り、増加分ΔDの総和αに対する比例定数が、放射線の照射時間(すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数)に反比例すること、すなわち上記の(ii)の条件が成り立つことが確認された。
【0156】
以上の結果から、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDと、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αとの関係は、比例定数をaとする場合、
ΔD=a×α …(3)
と表すことができることが分かる。
【0157】
その際、比例定数aは、上記の条件(ii)で示したように、放射線の照射時間、すなわち放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数に反比例する。そのため、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数をz本とするとき、上記の比例定数aはzの関数a(z)と表すことができる。すなわち、上記(3)式は、
ΔD=a(z)×α …(4)
と表される。
【0158】
そして、このzの関数として表される比例定数a(z)が予め分かっていれば、比例定数a(z)を用い、上記(4)式に従って、比例定数a(z)に、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αを乗算することで増加分ΔDを算出することが可能となる。
【0159】
そして、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdから、算出した増加分ΔDを減算して、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように適切に補正することが可能となる。
【0160】
なお、図11に示した例では、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5は走査線5のラインLa〜Lbであるから、この場合、上記のzは、b−a+1で表すことができる。また、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数zは、放射線の照射時間に比例するため、比例定数aをzの関数とする代わりに、放射線の照射時間の関数とすることも可能である。
【0161】
本実施形態では、図15に示したような実験を予め行って、比例定数a(z)を、放射線の照射される間にオン電圧が順次印加された走査線5の本数zの関数として求めておき、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58を構成するCPUのメモリや記憶手段40、59等のメモリに記憶させておく。
【0162】
そして、制御手段22やコンソール58は、画像データdの補正処理の際に、放射線の照射の開始を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はa)と、放射線の照射の終了を検出した走査線5のライン番号(図11の場合はb)とに基づいて、上記のz(図11の場合はb−a+1)を算出する。
【0163】
そして、メモリから比例定数を表す関数式a(z)を読み出し、算出したzを代入して比例定数a(z)を算出する。そして、算出した比例定数a(z)と、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αとに基づいて、上記(4)式に従って増加分ΔDを算出する。
【0164】
その際、図14(A)〜(C)に示したように、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDの総和βは、画像領域δTの画像データdの値を画像領域A、Bの画像データdの値と同等の値に補正した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和αに比べて、通常、非常に小さい。
【0165】
そのため、総和αを、総和αと総和βとの和、すなわち画像領域δTの画像データdを補正せずに画像領域A、Bの画像データdと合計した場合の全放射線検出素子7の画像データdの総和(すなわち上記(2)式に従って算出される各放射線検出素子7ごとの画像データdの総和Σd)で近似することができる。
【0166】
そこで、制御手段22やコンソール58は、上記(2)式に従って算出される補正処理前の各放射線検出素子7ごとの画像データdの総和Σdを算出して、その総和Σdを上記(4)式の総和αに代入して、増加分ΔDを算出するように構成することが可能である。なお、画像データdの総和Σdは信号線6ごとに算出される。
【0167】
この場合、制御手段22やコンソール58は、算出した増加分ΔDを、上記(2)式に従って算出した画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdから減算することで、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように補正する。
【0168】
また、上記の近似を用いずに、増加分ΔDを正確に算出するように構成する場合には、以下のように構成される。
【0169】
上記(2)式に従って算出される補正処理前の各放射線検出素子7ごとの画像データdの総和Σdには、上記の総和αのほかに、増加分ΔDが走査線5のz本だけ含まれる。すなわち、総和Σdと総和αとの関係は、増加分ΔDとzとを用いて、
Σd=α+z×ΔD …(5)
∴α=Σd−z×ΔD …(6)
の関係が成り立つ。
【0170】
これを上記(4)式に代入すると、
ΔD=a(z)×{Σd−z×ΔD}
となり、これをΔDについて解くと、
ΔD=Σd×a(z)/{1+a(z)×z} …(7)
となる。
【0171】
そこで、制御手段22やコンソール58は、上記のように、画像データdの補正処理の際に、放射線の照射の開始や終了を検出した走査線5の各ライン番号(図11の場合はa、b)に基づいて上記のzを算出し、比例定数を表す関数式a(z)に算出したzを代入して比例定数a(z)を算出するとともに、上記(2)式に従って算出した各画像データdの総和Σdを算出して、算出したz、a(z)、Σdを上記(7)式に代入して、増加分ΔDを算出する。
【0172】
そして、制御手段22やコンソール58は、算出した増加分ΔDを、上記(2)式に従って算出した画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdから減算することで、画像領域δTの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値を、画像領域A、Bの部分の各放射線検出素子7の画像データdの値と同等の値になるように補正するように構成することができる。
【0173】
なお、前述したように、画像データdの総和Σd(総和αを近似する場合を含む。)は、信号線6ごと(すなわち読み出し回路17ごと)に算出される値であり、特に被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、信号線6ごとに異なる値になり得る。そのため、上記(4)式や(7)式に従って算出される増加分ΔDも信号線6ごとに異なる値になり得る。従って、増加分ΔDは、信号線6ごとに算出された総和Σdに基づいて信号線6ごとに算出される。
【0174】
また、本実施形態では、図14(A)〜(C)や上記(4)式等に示したように、画像領域δTの画像データdの画像領域A、Bの画像データdに対する増加分ΔDを算出する際に、増加分ΔDを算出する放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7の画像データdの総和αを用いる場合について説明した。
【0175】
しかし、例えば当該信号線6に接続されている放射線検出素子7の中には、非常に大きな値の画像データdや非常に小さな値の画像データdしか出力しない異常な放射線検出素子7が存在する場合もある。また、放射線の検出には関与しないダミーの放射線検出素子7が設けられている場合もある。
【0176】
そのため、上記の総和αを算出するために用いる放射線検出素子7は、当該信号線6に接続されている全ての放射線検出素子7である必要はなく、有効な値の画像データdを出力する各放射線検出素子7や、それらの各放射線検出素子7の中から抽出された各放射線検出素子7について総和αを算出するように構成することが可能であり、総和αを算出する対象となる各放射線検出素子7は、適宜設定される。
【0177】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、各フレームごとに各放射線検出素子7からデータDを読み出す読み出し処理を繰り返し行うように構成することで、各放射線検出素子7ごとに読み出されるデータDの値を監視することで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となる。
【0178】
そして、このように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を的確に検出することが可能となるため、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子7や走査線5の各ラインLa〜Lbを的確に特定することが可能となる。
【0179】
そして、従来の場合と同様に、各フレームごとに取得した各データDを加算して各放射線検出素子ごとの画像データdを再構築するが、その際、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7については、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことに起因して各TFT8内を流れるリーク電流の量が増加することにより、画像データdに増加分ΔDが発生する。
【0180】
しかし、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、上記のように特定した放射線検出素子7について算出した画像データdから、当該放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている各放射線検出素子7の画像データdの総和Σdに、例えば上記(7)式に示したような所定の定数a(z)/{1+a(z)×z}(或いは、総和Σdを総和αに等しいと近似した場合には上記(4)式に示したような所定の比例定数a(z))を乗算した値を減算し、このようにして算出した値を当該放射線検出素子7の画像データdとして補正する。
【0181】
このように補正することで、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた各放射線検出素子7(すなわち図20(A)に示した画像領域δTの各放射線検出素子7)について、放射線が照射されたことに起因して各TFT8内を流れるリーク電流の量が増加することにより画像データdに生じた増加分ΔDを、画像データd中から的確に除去することが可能となる。
【0182】
そのため、これらの各放射線検出素子7の画像データdの値を、放射線が照射されていた間には読み出し処理が行われなかった各放射線検出素子7(すなわち図20(A)に示した画像領域A、Bの各放射線検出素子7)の画像データdの値と同等の値になるように補正するように構成することが可能となる。
【0183】
そして、これらの補正された画像データdに基づいて生成された放射線画像pでは、画像領域δTの部分が、画像領域Aや画像領域Bと同等の明るさ(輝度)になり、濃淡のない放射線画像pを生成することが可能となる。
【0184】
なお、上記の実施形態では、放射線の照射開始を検出した時点で読み出し処理を行っていたフレームを含む3回分の各フレームごとのデータD(m)〜D(m+2)を取得し、3回分のデータD(m)〜D(m+2)を加算して各放射線検出素子7ごとの画像データdを算出する場合について説明したが、例えば図18に示したように2回分の各フレームごとのデータDを取得したり、或いは4回以上の各フレームごとにデータDを取得して、それらのデータDを加算するように構成することも可能である。
【0185】
そして、このように構成した場合でも、放射線が照射されていた間に読み出し処理が行われた走査線5の各ラインLに接続されている各放射線検出素子7について画像データdに増加分ΔDが発生するという問題が生じるため、この場合も、上記の実施形態で示した補正処理を適用することが可能である。
【0186】
また、走査線5の各ラインL1〜Lxごとに、データDを加算するフレーム数すなわち加算するデータDの数を変えるように構成することも可能であるが、この場合も、上記の問題が生じるため、上記の実施形態で示した補正処理を適用することが可能となる。
【0187】
さらに、上記のように補正した画像データdに基づいて放射線画像pを生成する際、各放射線検出素子7ごとの画像データdに対してゲイン補正や対数変換処理、正規化処理、階調処理等の各種処理を施して最終的な画像データを算出し、それに基づいて放射線画像pが生成されることは公知の内容であり、それらの処理が適宜行われることは改めて説明するまでもない。
【符号の説明】
【0188】
1 放射線画像撮影装置
5、L1〜Lx 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
58 コンソール
a(z) 比例定数(所定の定数)
D、D(m)〜D(m+2) データ
d 画像データ
P 検出部
Q 電荷
r 領域
z 本数
ΔD 増加分(画像データの総和に所定の定数を乗算した値)
Σd 画像データの総和
ΣD(n) 積算値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記所定数のフレーム分の読み出し処理を行って取得した前記各放射線検出素子ごとの前記各データを加算して前記各放射線検出素子ごとに画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとすることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データの積算値に基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記所定の定数は、前記放射線の照射の開始から終了までの時間間隔に依存し、または、前記放射線の照射が開始された時点でオン電圧が印加された前記走査線から前記放射線の照射が終了した時点でオン電圧が印加された前記走査線までの前記走査線の本数に依存して可変される値であることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記データを送信する通信手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データに基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記所定数のフレーム分の読み出し処理で取得された前記各放射線検出素子ごとの前記各データの情報、および放射線の照射が開始された時点および終了した時点でそれぞれオン電圧が印加された前記各走査線の情報に基づいて、前記各フレームごとの前記各データを前記各放射線検出素子ごとに加算して前記各放射線検出素子ごとの画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとするコンソールと、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データの積算値に基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出することを特徴とする請求項4に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記所定の定数は、前記放射線の照射の開始から終了までの時間間隔に依存し、または、前記放射線の照射が開始された時点でオン電圧が印加された前記走査線から前記放射線の照射が終了した時点でオン電圧が印加された前記走査線までの前記走査線の総数に依存して可変される値であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記所定数のフレーム分の読み出し処理を行って取得した前記各放射線検出素子ごとの前記各データを加算して前記各放射線検出素子ごとに画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとすることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データの積算値に基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記所定の定数は、前記放射線の照射の開始から終了までの時間間隔に依存し、または、前記放射線の照射が開始された時点でオン電圧が印加された前記走査線から前記放射線の照射が終了した時点でオン電圧が印加された前記走査線までの前記走査線の本数に依存して可変される値であることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からデータを読み出す読み出し処理の際に、オン電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記データを送信する通信手段と、
を備え、
前記検出部上の全ての前記放射線検出素子のうち前記データを読み出す対象の前記各放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記放射線検出素子からの前記フレームごとの読み出し処理を繰り返し行い、少なくとも放射線が照射された時点で前記読み出し処理を行っている前記フレームを含む所定数のフレーム分の前記フレームごとの読み出し処理を行って、前記各フレームごとに前記各放射線検出素子ごとの前記データを取得し、
前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データに基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記所定数のフレーム分の読み出し処理で取得された前記各放射線検出素子ごとの前記各データの情報、および放射線の照射が開始された時点および終了した時点でそれぞれオン電圧が印加された前記各走査線の情報に基づいて、前記各フレームごとの前記各データを前記各放射線検出素子ごとに加算して前記各放射線検出素子ごとの画像データを算出するとともに、前記放射線が照射されていた間に前記読み出し処理が行われた前記各放射線検出素子については、当該放射線検出素子の画像データから、当該放射線検出素子が接続されている前記信号線に接続されている前記各放射線検出素子の前記画像データの総和に所定の定数を乗算した値を減算し、減算して算出した値を、当該放射線検出素子の画像データとするコンソールと、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記データの積算値に基づいて、前記走査線単位で放射線の照射の開始および終了を検出することを特徴とする請求項4に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記所定の定数は、前記放射線の照射の開始から終了までの時間間隔に依存し、または、前記放射線の照射が開始された時点でオン電圧が印加された前記走査線から前記放射線の照射が終了した時点でオン電圧が印加された前記走査線までの前記走査線の総数に依存して可変される値であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−229706(P2011−229706A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103063(P2010−103063)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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