説明

放射線画像撮影装置

【課題】HV印加に起因する欠陥サイズの変化に対応して、画像補正が必要な箇所に正確に画像補正することができる放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線検出器から取得した欠陥検出用データを用いて、放射線検出器の欠陥画素を検出し、放射線検出器における欠陥の情報を示す欠陥情報を生成する欠陥検出手段と、欠陥情報を用いて、放射線検出器が撮影した放射線画像の欠陥補正を行なう欠陥補正手段と、欠陥補正手段が欠陥補正を行なう際に、放射線検出器への高電圧印加からの経過時間に応じて、欠陥情報における欠陥の大きさを変更する欠陥サイズ変更手段とを有することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を被写体に照射し、被写体を透過した放射線を放射線検出器で検出して電気信号に変換し、変換した電気信号に基づいて放射線画像を生成する放射線画像撮影装置に関するものであり、特に、放射線検出器の欠陥補正機能を有する放射線画像撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線画像撮影装置は、例えば、医療用の診断画像や工業用の非破壊検査などを含む各種の分野で利用されている。放射線画像撮影装置において、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を検出する放射線検出器としては、現在では、放射線を電気信号に変換するフラットパネル型検出器(FPD(Flat Panel Detector))を用いるものがある。
【0003】
放射線画像検出器にFPDを用いる方法としては、例えば放射線の入射によってアモルファスセレンなどの光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集して電気信号として読み出す、いわば放射線を直接的に電気信号に変換する直接方式と、放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成された蛍光体層(シンチレータ層)を有し、この蛍光体層によって放射線を可視光に変換し、この可視光を光電変換素子で読み出す、いわば放射線を可視光として電気信号に変換する間接方式との、2つの方式がある。
【0004】
このFPDを利用する放射線画像撮影装置において、放射線画像の画質低下の一因として、FPDの欠陥画素が挙げられる。
すなわち、FPDの画素(放射線検出素子)は、全てが常に入射した放射線の照射量に対して適正な強度(濃度)の信号を出力する場合ばかりではなく、種々の原因により、放射線の照射量に対して、適正な強度よりも低い値の信号や高い値の信号を出力する欠陥画素が存在する場合がある。
【0005】
当然のことであるが、欠陥画素は、適正な放射線画像信号を得ることができない。従って、欠陥画素は、誤診等の重大な問題の原因となる可能性がある。
また、FPDの欠陥画素は、FPDの蓄積時間などに応じて、周りの正常画素にも影響を及ぼす。そのため、FPDの蓄積時間などに応じて、撮影された放射線画像に現れる欠陥の大きさが変化する場合がある。
【0006】
このような、FPDの欠陥画素を補正するために、特許文献1では、放射線検出素子の出力信号に基づいて作成された第1の画像データから画像欠陥を検出すると共に、検出された画像欠陥の位置情報を示す欠陥情報を生成し記憶しておき、被写体を透過した放射線を放射線検出素子に照射して作成した第2の画像データで、記憶している欠陥情報に応じて、画像欠陥の画像データを補正している。
また、蓄積時間に起因する欠陥の大きさの変化に対応するため、特許文献2では、撮像素子の欠陥画素のアドレス情報に対応する画素を中心として範囲を設定し、撮像素子の蓄積時間が長くなるほど、アドレス情報に対応する画素を中心として範囲を広げて、設定した範囲の画素の出力の補正を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−79109号公報
【特許文献2】特開2007−129339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、FPD、特にアモルファスセレンを使って放射線を検出するFPDを用いる放射線画像撮影装置では、装置の起動時にFPDのアモルファスセレンに、放射線の入射により発生した電子と正孔を走行させるための電場を形成するために、数kVの高電圧(HV)を印加する必要がある。ここで、FPDは、HV印加からの時間経過によって、欠陥の状態が変化する。
図2は、HV印加からの経過時間と、欠陥サイズとの関係を表すグラフである。図2に示すように、HV印加直後に放射線画像を撮影すると、高電圧の影響で欠陥画素の異常な信号が、その周囲の正常な画素にも影響を及ぼし、撮影した放射線画像に現れる欠陥のサイズが大きくなる。この欠陥のサイズは、HV印加後の経時と共に小さくなり、ある時間tが経過した時点で、安定する。すなわち、時間tが経過した時点で、FPDが、その時点で有する欠陥の状態となる。
なお、FPDにおける欠陥のサイズとは、x−y方向に二次元的に配列された画素を有するFPDにおける、x方向および/またはy方向への欠陥画素の連続数である。すなわち、欠陥画素の連続数が多いほど、欠陥のサイズが大きい。
【0009】
しかしながら、特許文献1のように、あらかじめ検出しておいた欠陥情報に基づいて欠陥を補正する方法では、HV印加直後の欠陥サイズの拡大に対応できず、HV印加直後に撮影した放射線画像に補正を行なっても補正不足になる。また、HV印加直後に欠陥を検出して欠陥情報として記憶して、HV印加直後に撮影した放射線画像を好適に補正できるようにした場合は、HV印加から十分な時間が経過してから撮影した放射線画像に対しては、補正の必要がない画素の範囲にまで補正を行なってしまうので、過剰な補正となり補正精度が悪くなる。
また、特許文献2のように、蓄積時間に応じて、欠陥サイズを変更する方法では、蓄積時間に起因する欠陥サイズの変化には対応できるが、HV印加に起因する欠陥サイズの変化には対応できず、特許文献1と同様に、HV印加直後に撮影した放射線画像に補正を行なっても、補正不足となったり、過剰な補正となったりして補正精度が悪くなる。
【0010】
このように、HV印加直後に撮影を行なった場合は、欠陥を正確に補正できないので、緊急に放射線画像を撮影したい場合でも、装置を使用できなかったり、撮影しても高品質な放射線画像を提供することができないおそれがあり、診断に影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、HV印加に起因する欠陥サイズの変化に対応して、画像補正が必要な箇所に正確に画像補正することができる放射線画像撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、放射線源から放射線を被写体に照射し、前記被写体を透過した放射線を、フラットパネル型の放射線検出器で検出して、前記被写体が撮影された放射線画像を生成する放射線画像撮影装置において、前記放射線検出器から取得した欠陥検出用データを用いて、前記放射線検出器の欠陥画素を検出し、前記放射線検出器における欠陥の情報を示す欠陥情報を生成する欠陥検出手段と、前記欠陥情報を用いて、前記放射線検出器が撮影した放射線画像の欠陥補正を行なう欠陥補正手段と、前記欠陥補正手段が欠陥補正を行なう際に、前記放射線検出器への高電圧印加からの経過時間に応じて、前記欠陥情報における欠陥の大きさを変更する欠陥サイズ変更手段とを有することを特徴とする放射線画像撮影装置を提供するものである。
【0013】
さらに、前記欠陥サイズ変更手段が、前記欠陥検出手段が前記欠陥情報を作成してからの経過時間に応じて、前記欠陥の大きさを変更することが好ましい。
【0014】
また、前記欠陥検出手段は、前記放射線検出器への高電圧印加から所定時間が経過した後に取得した前記欠陥検出用データを用いて、前記放射線検出器の欠陥を検出し、欠陥情報を生成することが好ましい。
【0015】
また、前記欠陥サイズ変更手段は、前記放射線検出器への高電圧印加から前記所定時間が経過した後は、前記欠陥の大きさを変更しないことが好ましい。
【0016】
また、前記欠陥検出手段は、複数の前記欠陥検出用データを平均したデータを用いて、前記放射線検出器の欠陥を検出することが好ましい。
【0017】
また、前記欠陥検出用データは、前記放射線検出器に放射線を一様に照射し、前記放射線検出器から画像信号を読み取ることで得られる一様照射画像であることが好ましい。
【0018】
また、前記欠陥検出用データは、放射線を照射せずに前記放射線検出器から画像信号を読み取ることで得られる無曝射画像であることが好ましい。
【0019】
また、前記欠陥検出手段は、撮影のモードごとに前記放射線検出器の前記欠陥を検出することが好ましい。
【0020】
ここで、前記モードは、前記放射線検出器から読み取る電荷の蓄積時間に応じて、モード分けされていることが好ましい。
【0021】
また、前記モードは、前記放射線源が照射する放射線の線量に応じて、モード分けされていることが好ましい。
【0022】
また、前記放射線検出器は、アモルファスセレンのパネルを用いて放射線を検出するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、HV印加に起因する欠陥サイズの変化に対応して、画像補正が必要な箇所に正確に画像補正することができ誤診を引き起こす可能性のきわめて低い、高品質な画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の構成を概念的に表す一実施形態の図である。
【図2】HV印加からの経過時間と欠陥サイズとの関係を表すグラフである。
【図3】図1に示す放射線画像撮影装置の画像処理部の構成を表すブロック図である。
【図4】図1に示す放射線画像撮影装置による欠陥補正を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の放射線画像撮影装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態の放射線画像撮影装置の構成を概念的に表す図である。図1に示す放射線画像撮影装置(以下、撮影装置ともいう)10は、放射線を被写体(被検体)Hに照射し、被写体Hを透過した放射線を後述する放射線検出部30の放射線検出器32で検出して画像データに相当する電気信号に変換し、この変換した電気信号に基づいて、被写体Hが撮影された放射線画像を生成する。撮影装置10は撮影部12と、撮影データ処理部14と、画像処理部16と、出力部18と、撮影指示部20と、制御部22とによって構成されている。
【0027】
撮影指示部20は、撮影メニューや、撮影条件などを設定し、被写体Hの撮影を指示する部位である。撮影指示部20には、撮影メニューや、撮影条件を設定するための入力キーや、撮影の指示手段が設けられる。
図示例においては、撮影の指示手段として、2段押し型の撮影ボタンが用いられている。撮影ボタンは、1段目まで押下されると(半押しされると)撮影の準備状態となり、2段目まで押下されると(全押しされると)撮影が開始される。撮影指示部20は、撮影ボタンが押下されていない状態、1段目まで押下された状態、および2段目まで押下された状態を表す撮影の指示信号や、撮影条件等の情報を制御部22に出力する。
【0028】
制御部22は、撮影指示部20から供給された撮影の指示信号等に応じて、撮影装置10の各部位の動作を制御する部位である。
制御部22は、例えば、設定された撮影メニュー、撮影条件で撮影が行なわれるように撮影部12を制御する。
また、後に詳述するが、撮影装置10は、放射線検出器32の欠陥(欠陥画素)を検出して放射線検出器32における欠陥の位置やサイズの情報を示す欠陥マップを作成し、この欠陥マップを用いて撮影した放射線画像の欠陥の補正を行なう。制御部22は、欠陥の位置を検出するために、設定されたタイミングで、放射線検出器32から、欠陥検出に用いる欠陥検出用データを読み出すように撮影データ処理部14を制御する。具体的には、撮影装置10においては、撮影装置10の起動時、および、所定の時間間隔ごとの、放射線検出器32が安定した状態のときに、欠陥の位置を検出するために、欠陥検出用データを取得する。このとき、後述する撮影のモードごとに欠陥検出用データを取得する。
ここで、放射線検出器が安定した状態とは、図2に示す、高電圧印加(HV印加)からの経過時間と欠陥サイズとの関係を表すグラフにおいて、HV印加に起因する欠陥サイズの変化が無くなった(あるいは時間あたりの変化量が所定値以下になった)時の状態である。また、本発明において、欠陥サイズとは、x−y方向に二次元的に配列された画素を有するFPDにおける、x方向および/またはy方向への欠陥画素の連続数であり、すなわち、欠陥の連続数が多いほど、欠陥のサイズが大きい。
また、制御部22は、撮影装置10の起動時に、放射線検出器32にHVを印加したときに、放射線検出器32にHVを印加した旨の情報を欠陥サイズ変更部48に供給する。
さらに、制御部22は、撮影された放射線画像(放射線画像データ)に、所定の画像処理を行なうように、画像処理部16を制御する。
【0029】
撮影部12は、放射線源26と、被写体Hを撮影時に所定の位置に臥位で載せるための撮影台28と、被写体Hを透過した放射線を検出する放射線検出部30とによって構成される。撮影部12において、放射線源26が放射線を照射し、撮影台28上の被写体Hを透過した放射線を放射線検出部30の放射線検出器32で検出することで、被写体Hの撮影を行なう。撮影部12は、被写体Hを撮影した放射線画像のデータ(アナログデータ)を出力する。
【0030】
放射線源26は、放射線画像撮影装置に利用される通常の放射線源である。
放射線検出器(Flat Panel Detector 以下、FPDとする)32は、被写体Hを透過した放射線を検出して、電気信号(放射線画像データ)に変換して、被写体Hが撮影された放射線画像のデータ(アナログデータを)出力する放射線(画像)の検出器であり、アモルファスセレンの光導電膜により、入射した放射線を電気信号に変換する。
【0031】
撮影データ処理部14は、制御部22からの指示に応じて、FPD32から、画像データを読み出し、読み出した画像データに対して、A/D(アナログ/デジタル)変換等の所定のデータ処理を行なう部位である。撮影データ処理部14は、データ処理後の画像データ(デジタルデータ)を出力する。
【0032】
撮影データ処理部14は、基本的に、蓄積時間に応じて、FPD32から画像データを読み出す。蓄積時間は、FPD32において、放射線が電荷に変換され、その電荷を蓄積している時間である。
撮影データ処理部14は、たとえば、被写体Hの撮影時には、曝射後、所定の蓄積時間が経過した後に放射線画像(放射線画像データ)をFPD32から読み出す。
【0033】
ここで、撮影データ処理部14は、撮影メニューに応じて、異なる蓄積時間で放射線画像をFPD32から読み出す。そこで、撮影装置10は、蓄積時間に応じて、撮影のモード分けを行なっている。これに対応して、撮影装置10では、撮影のモードごとに欠陥検出用データを取得し、欠陥の検出を行ない、欠陥マップの作成を行なう。
【0034】
すなわち、撮影データ処理部14は、撮影装置10の起動時、および、所定の時間間隔で、FPD32の状態が安定したときに、撮影のモードごとに、放射線画像の欠陥の位置を検出するための欠陥検出用データを複数枚取得する。具体的には、欠陥検出用データは、放射線を照射せずにFPD32から読み取ったデータである無曝射画像と、放射線をFPD32に一様に照射してFPD32から読み取ったデータである一様照射画像(いわゆるベタ画像)とである。
【0035】
なお、無曝射画像を取得するタイミングと、一様照射画像を取得するタイミングとは、異なっていてもよく、例えば、無曝射画像を撮影装置10の起動時ごとに取得し、一様照射画像を数ヶ月に1度取得するようにしてもよい。
【0036】
撮影データ処理部14が読み出した画像データは、次いで画像処理部16に送られる。図3に示すように、画像処理部16は、画像取得部42と、画像補正部44とを有して構成され、撮影データ処理部14から取得したデータ処理後の画像データに対して、欠陥の補正等の所定の画像処理を行ない、モニタ表示やプリント表示などの出力用の画像データとして出力部18に供給する部位である。また、画像補正部44は、欠陥の検出および欠陥サイズの変更も行なう。
画像処理部16は、コンピュータ上で動作するプログラム(ソフトウェア)、専用のハードウェア、ないしは、両方を組み合わせて構成される。画像処理部16は、画像処理後の放射線画像を出力する。
【0037】
画像取得部42は、制御部22からの指示に応じて、撮影データ処理部14が処理した画像データを取得して、画像処理部16の所定部位に供給するものである。
前述のように、撮影データ処理部14は、被写体Hを撮影した放射線画像や、欠陥を検出するための欠陥検出用データをFPD32から読み出すので、画像取得部42は、これらの画像データを、撮影データ処理部14から取得し、所定部位に供給する。
【0038】
画像補正部44は、制御部22からの指示に応じて、画像取得部42が取得した画像データ(放射線画像)に、所定の画像処理を施すものである。
画像補正部44が行なう画像処理には、特に限定はなく、オフセット補正、ゲイン補正(シェーディング補正)、濃度補正、シャープネス処理、階調補正、モニタ表示用やプリント出力用のデータに画像データを変換するデータ変換など、各種の放射線画像撮影装置や画像処理装置で行なわれている画像処理(画像補正)が、全て利用可能である。また、これらの補正は、全て、公知の方法で行なえばよい。
図示例において、画像補正部44は、FPD32の欠陥を補正する欠陥補正も行なうものであり、欠陥の位置を検出て欠陥マップを作成し、HV印加からの経過時間に応じて欠陥マップの欠陥のサイズを変更して、放射線画像データに対して、欠陥の補正を施すための、欠陥検出部46と、欠陥サイズ変更部48と、欠陥補正部50とを有する。
【0039】
前述のように、撮影装置10では、装置に起動時にFDP32のアモルファスセレンに高電圧(HV)を印加する必要がある。HV印加直後に放射線画像を撮影すると、高電圧の影響で欠陥画素の異常な信号が、その周囲の正常な画素にも影響を及ぼし、撮影した放射線画像に現れる欠陥のサイズが大きくなり、FPD32が安定な状態で検出した欠陥の位置情報に応じて欠陥の補正を行なっても、補正が必要な画素全てを補正することはできず、撮影した放射線画像は、欠陥がある画像となる。ここで、FPD32のアモルファスセレンに印加する高電圧(HV)は、数kVであり、例えば、10kVである。
欠陥サイズ変更部48は、HV印加からの時間経過に応じて、欠陥検出部46が検出した欠陥のサイズを変更するための部位である。
【0040】
画像取得部42は、欠陥検出部46には、欠陥検出用データを、欠陥補正部50には、被写体Hを撮影した放射線画像を、それぞれ、供給する。また、欠陥検出部46は、欠陥の検出結果を欠陥サイズ変更部48に供給し、欠陥サイズ変更部48は、サイズを変更した欠陥の情報を欠陥補正部50に供給する。
【0041】
欠陥検出部46は、画像取得部42が、撮影データ処理部14から取得した欠陥検出用データを用いて、放射線画像の欠陥の位置および大きさ(すなわち欠陥画素の位置)を検出する部位である。
図示例においては、一例として、複数枚取得した無曝射画像を平均した第1画像を作成する。同様に、複数枚取得した一様照射画像を平均した第2画像を作成する。第2画像から第1画像を減算して第3画像を作成し、第3画像に平滑化フィルタを掛け、平滑化フィルタを掛ける前の第3画像と、平滑化フィルタを掛けた後の第3画像との差分から第4画像を作成する。第4画像において、所定の閾値を超える画素を欠陥として検出し、検出した欠陥の情報から第1欠陥マップを作成する。
欠陥検出部46は、作成した第1欠陥マップを欠陥サイズ変更部48に供給する。
【0042】
なお、第1画像および第2画像は、それぞれ複数枚の無曝射画像および一様照射画像を平均して求めたが、本発明はこれに限定はされず、1枚ずつの無曝射画像および一様照射画像を第1画像および第2画像としてもよい。
【0043】
また、本発明において、欠陥の検出方法は、これに限定はされず、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された方法など、公知の方法が全て利用可能である。
また、第1画像および第2画像を用いて第1欠陥マップを作成したが、本発明はこれに限定はされず、第1画像のみ、あるいは、第2画像のみを用いて第1欠陥マップを作成してもよい。
【0044】
欠陥サイズ変更部48は、欠陥検出部46から供給された第1欠陥マップから、HV印加からの経過時間に応じて、欠陥サイズを変更し、第2欠陥マップを作成する部位である。
欠陥サイズ変更部48は、HV印加からの経過時間と欠陥サイズの変化量との関係を示すテーブル(HV−サイズ変化テーブル)をあらかじめ持っておき、このテーブルを用いて、HV印加からの経過時間に応じて、第1欠陥マップの欠陥サイズを変更し、第2欠陥マップを作成する。
欠陥サイズ変更部48は、第2欠陥マップを欠陥補正部50に供給する。
【0045】
前述のように、撮影装置10では、起動時にFPD32にHV印加を行なう必要がある。FPD32にHV印加を行なうと、HV印加からの経過時間によって欠陥の状態が変化する。図2に示すように、HV印加直後に放射線画像を撮影すると、放射線画像に現れる欠陥のサイズが大きくなる。この欠陥のサイズは、HV印加後の経時と共に小さくなり、ある時間tが経過した時点で安定し、一定の大きさとなる。
これに応じて、欠陥サイズ変更部48は、HV印加から撮影までの経過時間が、FPD32が安定な状態になるまでの時間tよりも短い場合は、HV印加からの経過時間に応じて、第1欠陥マップの欠陥サイズを拡大して、第2欠陥マップを作成する。
また、欠陥サイズ変更部48は、HV印加から撮影までの経過時間が、FPD32が安定な状態になるまでの時間tよりも長い場合は、HV印加からの経過時間にかかわらず、欠陥サイズを変更しない。すなわち、第1欠陥マップをそのまま第2欠陥マップとする。
【0046】
なお、HV−サイズ変化テーブルは、実験やシミュレーション、その放射線画像撮影装置におけるHV印加からの経過時間と欠陥サイズとの関係を示す経験的なデータ、複数台の放射線画像撮影装置におけるHV印加からの経過時間と欠陥サイズとの関係を示す統計的なデータ、これらの複数の組み合わせ、等を用いて、HV印加からの経過時間と、欠陥サイズの変化量との関係を知見して、作成すればよい。
【0047】
また、欠陥サイズ変更部48は、好ましい態様として、さらに、第1欠陥マップを作成してからの経過時間に応じて、欠陥サイズを変更してもよい。
一例として、HV印加からの経過時間に応じて欠陥サイズを変更した後、あらかじめ持っている第1欠陥マップ作成からの経過時間と欠陥サイズの変化量の関係を示すテーブル(マップ−サイズ変化テーブル)に基づいて、第1欠陥マップ作成からの経過時間に応じて、さらに欠陥サイズを変更して、第2欠陥マップを作成してもよい。
【0048】
一般的に、FPD32の欠陥は経時によって成長し大きくなる。したがって、第1欠陥マップ作成からの経過時間に応じて、欠陥サイズを変更(拡大)することにより、FPD32の欠陥が経時によって成長しても、欠陥サイズを正確に検出することができ、撮影した放射線画像の欠陥を正確に補正することができる。その結果、欠陥検出の頻度を低減でき、欠陥検出用データの取得回数を減らすことができる。
【0049】
なお、マップ−サイズ変化テーブルは、実験やシミュレーション、その放射線画像撮影装置における第1欠陥マップ作成からの経過時間と欠陥サイズとの関係を示す経験的なデータ、複数台の放射線画像撮影装置における第1欠陥マップ作成からの経過時間と欠陥サイズとの関係を示す統計的なデータ、これらの複数の組み合わせ、等を用いて、第1欠陥マップ作成からの経過時間と、欠陥サイズの変化量との関係を知見して、作成すればよい。
【0050】
欠陥補正部50は、被写体Hを撮影し、FPD32で読み取られ、画像取得部42から供給された放射線画像に対して、欠陥サイズ変更部48から供給された第2欠陥マップに応じて、欠陥を補正する部位である。
欠陥の補正方法に特に限定はなく、供給された第2欠陥マップに基づいて、欠陥の近傍の正常画素のデータを欠陥画素の画像データとする方法や、欠陥の両隣や周辺の複数の画素の平均値を欠陥画素のデータとする方法など、各種の放射線画像撮影装置で行なわれている画像欠陥補正方法が利用可能である。
欠陥補正部50は、欠陥を補正した放射線画像を次工程、図示例では、出力部18に供給する。
【0051】
出力部18は、画像処理部16から供給された画像処理後の放射線画像を出力する部位である。出力部18は、例えば、放射線画像を画面に表示するモニタ、放射線画像をプリント出力するプリンタ、放射線画像データを記憶する記憶装置等を有して構成される。
【0052】
次に、図1および図3を参照して、撮影装置10における撮影の作用を説明する。
本発明の撮影装置10の放射線画像の撮影は、公知の放射線画像撮影装置と同様である。すなわち、撮影指示部20において、撮影が指示されると、放射線源26が放射線を被写体Hに照射し、被写体Hを透過した放射線をFPD32が検出して電気信号に変換し、変換した電気信号から放射線画像を生成する。生成された放射線画像を撮影データ処理部14が読み出し、読み出した放射線画像に対して、A/D(アナログ/デジタル)変換等の所定のデータ処理を行ない、データ処理後の放射線画像を画像取得部42が取得し、画像処理部16に供給する。
画像処理部16では、欠陥サイズ変更部48から供給される第2欠陥マップに基づいて、放射線画像に対して、欠陥の補正を行ない、欠陥補正後の放射線画像を出力部18に供給する。出力部18は、取得した放射線画像のモニタ表示、プリンタからのプリント出力、記憶装置への保存等を行なう。
【0053】
ここで、欠陥補正について図4のフローチャートを用いて説明する。
前述のように、撮影装置10では、起動時、および、所定の時間間隔で、かつ、FPD32が安定した状態のときに、欠陥検出用データを複数枚、モード毎に取得する。欠陥検出部46は、取得した欠陥検出用データから、FPD32の欠陥を検出し、モード毎に第1欠陥マップを作成し、記憶する。
また、撮影装置10では、起動時にFPD32にHVが印加され、FPD32にHVを印加した旨の情報が欠陥サイズ変更部48に供給される。
【0054】
被写体が撮影されると、撮影のモードに応じて、第1欠陥マップの一つが選択され、欠陥サイズ変更部48に供給される。欠陥サイズ変更部48は、HV印加からの経過時間、あるいはさらに、第1欠陥マップ作成からの経過時間に応じて、HV−サイズ変化テーブル、あるいはさらに、マップ−サイズ変化テーブルを参照して、第1欠陥マップの欠陥サイズを変更し、第2欠陥マップを作成して、欠陥補正部50に供給する。
欠陥補正部50は、第2欠陥マップを基に、撮影された放射線画像の欠陥を補正し、欠陥補正後の放射線画像を出力部18に供給する。
【0055】
前述のように、HV印加後の経過時間が短いと、欠陥画素がその周囲の正常な画素にも影響を及ぼし、撮影した放射線画像に現れる欠陥のサイズが大きくなる。そのため、あらかじめ検出しておいた欠陥情報に基づいて欠陥を補正する方法などでは、補正が必要な箇所に正確に画像補正することができず、画像補正の精度が悪くなる。
【0056】
これに対し、本発明によれば、このように、HV印加からの経過時間に応じて、あらかじめ取得した欠陥のサイズを変更するので、補正が必要な箇所に正確に画像補正することができ、高品質な放射線画像の撮影が可能となる。
【0057】
また、上記実施例では、欠陥マップを作成するための欠陥検出用データを、HVを印加した後、FPDが安定する時間tが経過した後に取得したが、本発明は、これに限定はされない。
例えば、FPDの安定に時間がかかる場合や、緊急の手術に対応するために急を要する場合には、FPDが安定する時間tが経過する前に、欠陥検出用データを取得して、第1欠陥マップを作成する必要が生じる場合もある。
【0058】
HVを印加した後、時間tが経過する前、例えば、HV印加後、図2において時間tで欠陥検出用データを取得して、第1欠陥マップを作成した場合には、時間tが経過した以降も、時間tが経過するまで、FPDの欠陥は縮小する。
従って、時間tで欠陥検出用データを取得して、第1欠陥マップを作成した場合には、欠陥サイズ変更部は、HV印加から放射線画像を撮影するまでの経過時間が、この時間tよりも短い場合には、HV印加からの経過時間に応じて、第1欠陥マップの欠陥サイズを拡大するようにして、第2欠陥マップを作成する。
また、時間tで欠陥検出用データを取得して、第1欠陥マップを作成した場合には、欠陥サイズ変更部は、HV印加から放射線画像を撮影するまでの経過時間が、この時間t1から時間tまでの間にある場合には、HV印加からの経過時間に応じて、第1欠陥マップの欠陥サイズを縮小するようにして、第2欠陥マップを作成する。
さらに、時間tで欠陥検出用データを取得して、第1欠陥マップを作成した場合には、欠陥サイズ変更部は、HV印加から放射線画像を撮影するまでの経過時間が、時間tを超える場合には、経過時間にかかわらず所定の大きさに、第1欠陥マップの欠陥サイズを縮小して、第2欠陥マップを作成する。
【0059】
また、上記実施例では、蓄積時間に応じて、撮影のモード分けを行なっているが、本発明はこれに限定はされず、被写体撮影時の放射線の線量によってモード分けしてもよいし、蓄積時間と線量との組み合わせによってモード分けしてもよい。
【0060】
以上、本発明の放射線画像撮影装置について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【符号の説明】
【0061】
10 撮影装置(放射線画像撮影装置)
12 撮影部
14 撮影データ処理部
16 画像処理部
18 出力部
20 撮影指示部
22 制御部
26 放射線源
28 撮影台
30 放射線検出部
32 FPD(放射線検出器)
42 画像取得部
44 画像補正部
46 欠陥検出部
48 欠陥サイズ変更部
50 欠陥補正部
H 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から放射線を被写体に照射し、前記被写体を透過した放射線を、フラットパネル型の放射線検出器で検出して、前記被写体が撮影された放射線画像を生成する放射線画像撮影装置において、
前記放射線検出器から取得した欠陥検出用データを用いて、前記放射線検出器の欠陥画素を検出し、前記放射線検出器における欠陥の情報を示す欠陥情報を生成する欠陥検出手段と、
前記欠陥情報を用いて、前記放射線検出器が撮影した放射線画像の欠陥補正を行なう欠陥補正手段と、
前記欠陥補正手段が欠陥補正を行なう際に、前記放射線検出器への高電圧印加からの経過時間に応じて、前記欠陥情報における欠陥の大きさを変更する欠陥サイズ変更手段とを有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
さらに、前記欠陥サイズ変更手段が、前記欠陥検出手段が前記欠陥情報を作成してからの経過時間に応じて、前記欠陥の大きさを変更する請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記欠陥検出手段は、前記放射線検出器への高電圧印加から所定時間が経過した後に取得した前記欠陥検出用データを用いて、前記放射線検出器の欠陥を検出し、欠陥情報を生成する請求項1または2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記欠陥サイズ変更手段は、前記放射線検出器への高電圧印加から前記所定時間が経過した後は、前記欠陥の大きさを変更しない請求項3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記欠陥検出手段は、複数の前記欠陥検出用データを平均したデータを用いて、前記放射線検出器の欠陥を検出する請求項1〜4のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記欠陥検出用データは、前記放射線検出器に放射線を一様に照射し、前記放射線検出器から画像信号を読み取ることで得られる一様照射画像である請求項1〜5のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記欠陥検出用データは、放射線を照射せずに前記放射線検出器から画像信号を読み取ることで得られる無曝射画像である請求項1〜6のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記欠陥検出手段は、撮影のモードごとに前記放射線検出器の前記欠陥を検出する請求項1〜7のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記モードは、前記放射線検出器から読み取る電荷の蓄積時間に応じて、モード分けされている請求項8に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記モードは、前記放射線源が照射する放射線の線量に応じて、モード分けされている請求項8または9に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記放射線検出器は、アモルファスセレンのパネルを用いて放射線を検出するものである請求項1〜10のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−233589(P2010−233589A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81756(P2009−81756)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】