説明

放射線画像検出装置及び放射線画像検出方法

【課題】放射線の照射開始や照射終了を迅速かつ正確に自己検出する。
【解決手段】マトリクスに配列された複数の画素37と画素37から画像信号D1〜Dmを読み出すための信号線48が配設された撮像領域51を有し、被写体を透過したX線の照射を受けてX線画像を検出するためのFPD25と、撮像領域51内に配置され、X線の入射量に応じた電気信号を出力する複数の検出画素DPと、複数の検出素子DPの中から、感度が高い高感度素子を選択するための高感度素子情報を予め記憶するメモリ38と、高感度素子情報に基づいて選択された高感度素子の出力を監視して、X線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出し、検出結果に基づいてFPD25の動作を制御する制御部54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出装置及び放射線画像検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、画像診断を行うために、放射線、例えばX線を利用したX線撮影システムが知られている。X線撮影システムは、X線を発生するX線源や、被写体を透過したX線の照射を受けて、X線画像を検出するX線画像検出装置等を備える。X線画像検出装置としては、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素が配列されたTFTアクティブマトリクス基板を用いて、信号電荷を画素毎に蓄積することで被写体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力するFPD(flat panel detedtor)を利用したものが実用化されている。
【0003】
FPDを利用したX線画像検出装置は、フィルムやイメージングプレートを(IP)を利用したものと異なり、X線源がX線を照射する照射時間に合わせてFPDが信号電荷を蓄積する蓄積動作を実行するように、X線源との同期制御を行う必要がある。X線画像検出装置を制御するコンソール等の制御装置は、X線源に接続された照射スイッチが照射され、Xの照射が開始されるタイミングと、FPDが信号電荷の蓄積動作を開始するタイミングとを同期させるために、照射スイッチが発生する照射開始信号を受信し、これを同期信号としてX線画像検出装置に対して出力する。X線画像検出装置は、同期信号を受信すると蓄積動作に移行してX線画像の検出を開始する。
【0004】
しかし、X線画像検出装置とX線源とでメーカが異なるものを用いてX線撮影システムを構築する場合には、X線画像検出装置やその制御装置に標準で装備されている同期制御用のインターフェース(ケーブルやコネクタの規格、同期信号の型式等)が適合しない場合も有る。このため、同期信号を用いることなく、X線画像検出装置でX線の照射開始/照射終了を自己検出してX線源との同期をとる自己検出技術(いわゆるAEC:Automatic Exposure Control)が各種提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、X線検出装置の画素の一部をAEC用の判定画素として利用することによりX線の照射終了を検出する技術が開示されている。具体的には、X線の照射開始時に、複数の判定画素の中から検出されたX線の線量が最大のものを基準判定画素とし、基準判定画素の出力を定期的に取得して、基準判定画素の出力値が増大しなくなった時点をX線の照射終了として検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−143802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のX線検出装置のように、撮像領域の全域に分散配置された多数の判定画素の中から、線量が最大の基準判定画素を選択する処理には時間がかかるという問題がある。
【0008】
また、複数の判定画素には感度のばらつきが生じるのが通常であるが、ばらつきが大きく、選択された基準判定画素の感度が著しく低い場合には、照射終了を検出する精度が低下してしまうという問題もある。低線量で撮影する場合には特に問題である。
【0009】
さらに、特許文献1ではX線の照射開始を検出していないが、基準判定画素を用いた同様の方法で照射開始を検出するとすれば、照射終了を検出する場合と同様の問題が生じる。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、放射線の照射開始や照射終了を迅速かつ正確に自己検出する放射線画像検出装置及び放射線検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線画像検出装置は、マトリクスに配列された複数の画素と画素から画像信号を読み出すための信号線が配設された撮像領域を有し、被写体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出するための画像検出手段と、前記撮像領域内に配置され、前記放射線の入射量に応じた電気信号を出力する複数の検出素子と、複数の前記検出素子の中から、感度が高い高感度素子を選択するための高感度素子情報を予め記憶する記憶手段と、前記高感度素子情報に基づいて選択された前記高感度素子の出力を監視して、前記放射線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出する照射検出手段と、前記照射検出手段の検出結果に基づいて前記画像検出手段の動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記撮像領域の全域を複数の区画に分割した複数の分割領域が設定されており、複数の前記分割領域のそれぞれには、前記高感度画素が少なくとも1つ設けられていることが好ましい。
【0013】
複数の前記分割領域のそれぞれに設けられた、前記高感度素子または前記高感度素子以外の前記検出素子の出力に基づいて、前記放射線の照射野を判定する照射野判定手段を有しており、前記照射検出手段は、前記照射野に対応する前記分割領域内の前記高感度素子の出力を監視して、前記放射線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出することが好ましい。
【0014】
前記分割領域は、前記撮像領域を升目状または短冊状に区画した領域であることことが好ましい。
【0015】
前記検出素子は、前記画素とほぼ同一の構造を有し、かつ、前記信号線と常時短絡しており、前記照射検出手段は、前記信号線を通じて前記検出素子の出力を監視することが好ましい。
【0016】
前記高感度素子はキャリブレーションによって、前記被写体の撮影前に予め選択されていることが好ましい。
【0017】
前記キャリブレーションは、前記画素の感度を補正するために、前記画素から前記画像信号を読み出すときのゲインを決定するゲインキャリブレーションであり、前記ゲインキャリブレーション時に前記検出素子から得られる前記電気信号に基づいて前記高感度検出素子が選択されることが好ましい。
【0018】
前記高感度素子は複数あり、前記照射検出手段は、前記高感度素子の出力をそれぞれ所定閾値と比較し、それぞれの前記高感度素子の出力のうちの一つが前記所定閾値以上になった時点を前記放射線の照射開始として検出することが好ましい。
【0019】
前記前記検出手段は、前記照射開始の検出時に出力が最も早く前記所定閾値以上の値になった前記高感度素子の出力が、前記所定閾値未満の値になった時点を前記照射終了として検出することが好ましい。
【0020】
本発明の放射線画像検出方法は、マトリクスに配列された複数の画素と画素から画像信号を読み出すための信号線が配設された撮像領域に配置され、前記放射線の入射量に応じた電気信号を出力する複数の検出素子の中から、感度が高い高感度素子を予め選択し、高感度素子の出力を監視して、前記放射線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出し、前記検出の結果に基づいて前記撮像領域を有し、被写体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出するための画像検出手段の動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放射線の照射開始や照射終了を迅速かつ正確に自己検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】X線撮影システムの概略的構成を示す説明図である。
【図2】FPDの構成を示す説明図である。
【図3】検出画素と高感度検出画素の配置例を示す説明図である。
【図4】検出画素から高感度検出画素を選択する態様を示す説明図である。
【図5】電子カセッテの作用を示すフローチャートである。
【図6】複数の高感度検出画素の電圧信号に基づいてX線の照射開始を検出する態様を示す説明図である。
【図7】X線の照射終了を検出する態様を示す説明図である。
【図8】撮像領域を複数の領域に分割し、各領域ごとに高感度検出画素を選択する態様を示す説明図である。
【図9】撮像領域を分割した領域毎に高感度検出画素を選択する態様を示す説明図である。
【図10】撮像領域を縦横に分割する例を示す説明図である。
【図11】フリー撮影でX線の照射野が撮像領域の一部に限られている例を示す説明図である。
【図12】フリー撮影時の電子カセッテの動作態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1に示すように、X線撮影システム10は、被写体Hを載置する天板11を有する撮影台と、被写体Hに向けてX線焦点13からX線を照射するX線源12と、被写体Hを透過したX線の照射を受けて、被写体HのX線画像を検出する電子カセッテ14(放射線画像検出装置)等を備える。X線源12は、X線を発生するX線管とX線の照射野を限定するコリメータを備える。
【0024】
また、X線撮影システム10は、高電圧発生部16、X線源制御部17、コンソール21、モニタ22等を備える。
【0025】
X線源制御部17には、操作パネル(図示しない)が設けられており、操作パネルを通じてX線管の管電圧,管電流,照射時間といった撮影条件が入力される。また、X線制御部17には、照射開始信号を入力する照射スイッチ23が接続されており、X線制御部17は照射スイッチ23から入力される照射開始信号を撮影条件とともに高電圧発生部16に与える。
【0026】
高電圧発生部16は、X線源制御部17から入力される撮影条件にしたがった管電圧や管電流を発生し、発生した管電圧や管電流をX線源12に与えることによってX線源12からX線を照射させる。
【0027】
コンソール21は、電子カセッテ14を制御する制御装置であり、通信部24を介して電子カセッテ14に対して制御信号を送信するとともに、電子カセッテ14が検出したX線画像を受信する。なお、コンソール21に対しては、照射スイッチ23からの照射開始信号は入力されない。このため、コンソール21には、X線源制御部17と同様に撮影条件が入力され、コンソール21は撮影条件を電子カセッテ14に入力する。また、後述するように電子カセッテ14はX線の照射開始及び照射終了を自己検出する。
【0028】
また、コンソール21は、補正部31を有する。補正部31は、電子カセッテ14から入力されるX線画像に対して各種画像処理を施してモニタ22に出力する。例えば、補正部31は、X線画像に対して、欠陥補正処理やノイズ除去処理を施す。欠陥補正処理は、欠陥のある画素の画素値を補間により補正する画像処理であり、ノイズ除去処理は撮影したX線画像からオフセット画像を差し引くことにより暗電荷によるノイズを除去する画像処理である。オフセット画像は、電子カセッテ14にX線を照射せずに取得された画像であり、予め取得され、記憶されている。なお、画素毎に出力値を調節するゲイン補正は、電子カセッテ14の信号処理回路53(後述)で行われる。
【0029】
モニタ22は、コンソール21が受信したX線画像を表示する他、コンソール21を操作するための操作画面の表示を行う。
【0030】
電子カセッテ14は、ほぼ直方体状の扁平な筐体内に、X線画像を検出するFPD25と、FPD25が出力するX線画像を一時的に記憶するメモリ26と、コンソール21との間でメモリ26内のデータや制御信号の通信を行う通信部27を備える。電子カセッテ14は、FPD25等の各部に給電を行うバッテリ(図示しない)を内蔵したワイヤレスタイプであり、通信部27は、例えば赤外線などの光や電波によって無線通信を行う。
【0031】
図2に示すように、FPD25は、X線を可視光に変換するシンチレータ(図示しない)や撮像領域51が形成された撮像パネル、ゲートドライバ52、信号処理回路53、制御部54等を備える。
【0032】
FPD25はいわゆる間接変換型であり、入射したX線をシンチレータによって可視光に一旦変換し、シンチレータが発生する可視光を画素37で光電変換することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素37毎に蓄積する。図示しないが、シンチレータは、撮像領域51の全面に対向するように設けられている。撮像パネルは、画素37がTFTアクティブマトリクス基板上に形成されたパネルであり、複数の画素37が配列された領域が撮像領域51である。
【0033】
画素37は、フォトダイオード42と、フォトダイオード42で発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示しない)を備え、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)43を備える。画素37は、所定のピッチでn行(X方向)×m列(Y方向)の二次元上のマトリクスに配列されている。
【0034】
フォトダイオード42は、可視光の入射によって電荷(電子‐正孔対)を発生する半導体層と、その上下に上部電極及び下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード42は、下部電極にTFT43が接続され、上部電極にはバイアス線が接続され、バイアス電圧が印加される。上部電極へのバイアス電圧の印加により、半導体層で発生した電荷である電子及び正孔は、それぞれ上部電極と下部電極に移動する。これにより、キャパシタに信号電荷が蓄積される。
【0035】
TFT43は、ゲート電極が走査線47に接続され、ソース電極が信号線48に接続され、ドレイン電極がフォトダイオード42に接続されている。走査線47と信号線48は格子状に配線されている。走査線47は撮像領域51内の画素37の行数分(n行分)、信号線48は画素37の列数分(m列分)、それぞれ配線されている。走査線47は、ゲートドライバ52に接続され、信号線48は信号処理回路53に接続される。
【0036】
ゲートドライバ52は、制御部54から入力される制御信号に基づいて走査線47にゲートパルスG1〜Gnを入力し、TFT43を駆動することにより、蓄積動作、読み出し動作、リセット動作の3つの動作態様でFPD25を駆動する。
【0037】
蓄積動作は、画素37に信号電荷を蓄積する動作であり、ゲートドライバ52は、TFT43をオフ状態にすることにより蓄積動作を行わせる。TFT43がオフにされると、画素37のキャパシタと信号線48の接続が切られるので、画素37の半導体層で発生した電荷は、信号電荷として画素37のキャパシタに蓄積される。
【0038】
読み出し動作は、画素37で蓄積された信号電荷に応じた電圧信号を信号線48を通じて読み出す動作であり、ゲートドライバ52は、走査線47にゲートパルスG1〜Gnを順次入力して1行ずつTFT43をオン状態にすることにより読み出し動作を行わせる。TFT43がオン状態になると、画素37のキャパシタに蓄積された信号電荷は、信号線48に読み出されて、信号処理回路53に入力される。そして、信号電荷の量に応じた電圧信号が読み出される。
【0039】
リセット動作は、暗電荷を信号線48を通じて掃き出す動作であり、ゲートドライバ52は、走査線47にゲートパルスG1〜Gnを入力してTFT43をオン状態にすることによりリセット動作を行わせる。暗電荷は、X線の入射がなくても発生するノイズとなる電荷であり、TFT43がオフ状態の場合、X線の入射によって発生する信号電荷と同様に画素37のキャパシタに蓄積される。このため、蓄積動作の開始前にリセット動作を行うことにより、画素37に蓄積された暗電荷は、信号線48を通じて掃き出され、蓄積動作時には暗電荷によるノイズが低減された状態で信号電荷が蓄積される。
【0040】
リセット動作は、例えば、1行ずつ画素37をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式は、読み出し動作と同様に、ゲートドライバ52が走査線48に対してゲートパルスG1〜Gnを順に入力し、TFT43を1行ずつオン状態にすることにより行われる。一方、TFT43がオン状態になっている間、暗電荷が信号線を通じて積分アンプ66に流れるが、リセット動作の場合、積分アンプ66から電圧信号D1〜Dmの読み出しは行われず、制御部54は各ゲートパルスG1〜Gnの入力と同期してリセットパルスRST(後述)を出力し、積分アンプ66をリセットする。
【0041】
信号処理回路53は、積分アンプ66、マルチプレクサ(MUX)67、A/D変換器68、リセットスイッチ69等を備える。
【0042】
積分アンプ66は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなる。積分アンプ66の一方の入力端子は信号線48に接続され、他方の入力端子はグラウンド(GND)に接続される。積分アンプ66は、信号線48から入力される信号電荷をキャパシタに蓄積し、蓄積された信号電荷の量に応じた電圧信号D1〜Dmを画像信号として出力する。各列の積分アンプ66の出力端にはMUX67が接続され、MUX67の出力側には、A/D変換器68が接続される。
【0043】
MUX67は、パラレルに接続される複数の積分アンプ66から、1つの積分アンプ66を順に選択し、選択した積分アンプから出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器68に入力する。例えば、MUX67によって積分アンプ66から1行分の電圧信号D1が読み出されると、制御部54は、積分アンプ66に対してリセットパルス(リセット信号)RSTを出力し、積分アンプ66のリセットスイッチ69をオンにする。これにより、積分アンプ66に蓄積された1行目の信号電荷がリセットされる。積分アンプ66がリセットされると、制御部54は、ゲートドライバ52に対して2行目のゲートパルスG2の出力を指令して、2行目の画素37の信号電荷の読み出しを開始させる。2行目以降の読み出しも1ライン目と同様の手順で行われる。
【0044】
A/D変換器68は、電圧信号D1〜Dmをデジタルデータに変換して、電子カセッテ14の筐体内に内蔵されるメモリ26に出力する。全行の読み出しが完了すると、1画面分のX線画像がメモリ26に記録される。1画面分のX線画像は、メモリ26から読み出されて、通信部27を通じてコンソール21に出力される。こうして被写体HのX線画像が検出される。
【0045】
制御部54(照射検出手段,制御手段)は、ゲートドライバ52と信号処理回路53を制御することにより、FPD25の動作を統括的に制御する。例えば、制御部54は、通信部27を通じて入力されるコンソール21からの制御信号に基づいて、蓄積動作,読み出し動作,リセット動作をゲートドライバ52によって実行させる。また、制御部54は、後述するように、電子カセッテ14はX線の照射開始及び照射終了を検出し、検出したX線の照射開始や照射終了に合わせて、FPD25の各動作の開始や終了のタイミングを制御する。
【0046】
FPD25は、上述のようにTFT43を介して信号線48に接続された画素37の他に、TFT43を介さず信号線48に短絡して接続された検出画素DPを同じ撮像領域51内に複数備えている。
【0047】
検出画素DPは、発生した信号電荷が、X線の照射開始及び照射終了を自己検出するために利用される画素であり、後述するように撮像領域51の全体に満遍なく分散して複数設けられている(図3参照)。例えば、撮像領域51内の画素の数%程度が検出画素DPであり、その他が通常の撮像用の画素37となっている。
【0048】
検出画素DPは、信号線48との間にTFT43が設けられておらず、信号線48に短絡接続されているので、検出画素DPで発生した信号電荷は、直ちに信号線48に読み出される。これは、同列にある通常の画素37がTFT43をオフ状態に制御され、信号電荷を蓄積する蓄積動作中であっても同様である。このため検出画素DPが接続された信号線48上の積分アンプ66には、検出画素DPで発生した電荷が常に流入する。
【0049】
制御部54は、検出画素DPが接続された信号線48から、電圧信号Vout(図2では例えばD3)を取得し、その値を監視する。具体的には、制御部54は、電圧信号VoutをA/D変換回路68を介して取得するとともに、電圧信号VoutをX線の照射開始及び照射終了を検出可能な程度に十分に短い所定の時間間隔で次々と取得することにより、電圧信号Voutを監視する。
【0050】
そして、制御部54は、電圧信号Voutに基づいてX線の照射開始や照射終了を検出し、検出したX線の照射開始や照射終了に合わせてFPD25の動作を制御する。例えば、X線の照射開始を検出するまではリセット動作を繰り返し行わせ、X線の照射開始を検出したときに蓄積動作を開始させる。また、X線の照射終了を検出したときには、蓄積動作を終了し、読み出し動作を開始させる。
【0051】
なお、検出画素DPは複数あるので、制御部54は複数の信号線48から電圧信号Voutをそれぞれ取得し、これらを監視してX線の照射開始及び照射終了を検出する。但し、詳細は後述するが、制御部54は、複数ある検出画素DPに対応する全ての信号線48から電圧信号Voutを取得するわけではなく、複数の検出画素DPの中から特に感度が良好な画素として予め選択された高感度検出画素SDP(図3参照)に接続された信号線48から電圧信号Voutを読み出し、その値を監視することによって、X線の照射開始及び照射終了を検出する。
【0052】
図3に示すように、検出画素DPは、複数の画素37が配列された撮像領域51内に複数設けられているとともに、撮像領域51内で局所的に偏ることなく撮像領域51内に満遍なく散らばって設けられている。また、検出画素DPの位置はFPD25の製造時に既知であり、FPD25は全検出画素DPの位置を不揮発性のメモリ38(図2参照)に予め記憶している。以下では、説明のために、8行×6列=48個の検出画素DP(DPij,i=1〜8,j=1〜6)が設けられているものとするが、撮像素子51内の全画素数は、例えば約400万画素あり、その数%程度が検出画素DPとなっており、48個よりも多くの画素が検出画素DPが存在する。また、以下では簡単のために1つの信号線48には1つの検出画素DPが接続されているとする。
【0053】
また、FPD25は、48個の検出画素DPのうち、8個の検出画素DPを高感度検出画素SDP(SDP1〜SDP8)として選択し、その位置を記憶している。図3に示すとおり、高感度検出画素SDPは、検出画素DPの配列の中で特別に偏ることなく、概ね全検出画素DP中に散らばって選択される。
【0054】
高感度検出画素SDPは、ゲインキャリブレーション時に選択される。ゲインキャリブレーションは、各画素37の読み出しを行うときの積分アンプ66のゲインを決定するキャリブレーションである。例えば、被写体Hがいない状態で線量等が所定のX線をFPD25に照射して撮像し、各画素37の感度に応じて、信号電荷量を電圧信号に変換する積分アンプ66のゲインを決定する。
【0055】
図4に示すように、制御部54は、ゲインキャリブレーション時に検出画素DPが接続された各信号線48の電圧信号Voutを、積分アンプ66のゲインを一定にして取得する。このとき、取得する電圧信号Voutは、このとき取得する電圧信号Voutは、積分アンプ66のゲインが一定であるため、検出画素DPの感度を表す。制御部54は、複数ある検出画素DPのなかでも電圧信号Voutが高く、感度が高い順に所定数の検出画素DPを高感度検出画素SDPとして選択する。図4においては、例として、8個の検出画素DP(DP14,DP21,DP35,DP43,DP56,DP62,DP74,DP81)を高感度検出画素SDPとして選択するが、選択する高感度検出画素SDPの個数は任意であり、1以上であれば良い。制御部54は、選択した高感度検出画素SDP1〜SDP8の位置及びこれらの高感度検出画素SDP1〜SDP8が接続された信号線48を、高感度検出画素情報38aとして不揮発性のメモリ38に記憶する(図2参照)。制御部54は、高感度検出画素情報に基づいて、高感度検出画素SDP1〜SDP8が接続された信号線48を選択する。
【0056】
上述のように構成されるX線撮影システム10を用いてX線撮影を行う場合には、以下に説明するように、電子カセッテ14(FPD25)がX線の照射開始及び照射終了を自己検出し、検出したX線の照射開始及び照射終了に合わせて、蓄積動作,読み出し動作,リセット動作を切り替える。
【0057】
図5に示すように、電子カセッテ14に電源を投入すると、電子カセッテ14は待機動作を行う(ステップS10)。待機動作は、FPD25がリセット動作を繰り返し行い、各画素37で発生する暗電荷を掃き出し続け、X線画像の検出に備える動作である。
【0058】
次いで、X線源制御部17とコンソール21にそれぞれ撮影条件が設定される。撮影条件は、X線源12が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、X線の単位時間あたりの照射量を決める管電流、X線を照射する照射時間である。撮影条件は、撮影部位や被写体Hの年齢等によって変わる。コンソール21は設定された撮影条件を電子カセッテ14に入力する。制御部54は、撮影条件の入力を撮影準備開始指示として受け取る(ステップS11)。
【0059】
撮影準備開始指示を受けると、制御部54は、高感度検出画素SDP1〜SDP8が接続された信号線48の電圧信号Vout(以下、高感度画素の電圧信号という)の監視を開始する(ステップS12)。このとき、FPD25はリセット動作を継続する。
【0060】
制御部54による高感度画素SDP1〜SDP8の各電圧信号Voutの監視は、具体的には、高感度画素SDP1〜SDP8の各電圧信号Voutを所定の時間間隔で所定の閾値Thと比較することにより行われる(ステップS13)。なお、制御部54は、所定間隔で積分アンプ66にリセットパルスRSTを入力するので、監視する高感度検出画素SDPの電圧信号VoutはリセットパルスRSTが入力されるたびに0にリセットされ、リセットパルスRSTの入力間に高感度検出画素SDPで発生した信号電荷が電圧信号Voutとなる。
【0061】
高感度検出画素SDP1〜SDP8の各電圧信号Voutが閾値Th未満の場合には、制御部54はリセット動作と高感度検出画素SDP1〜SDP8の各電圧信号Voutの監視を継続する。
【0062】
一方、高感度検出画素SDP1〜SDP8の各電圧信号Voutが閾値Th以上の値になった場合、制御部54は、これをX線の照射開始として検出する。具体的には、図6に示すように、ある時刻TaにおいてX線源12からX線の照射が開始され、時刻Tbで所定線量のX線が照射されるとする。このとき、高感度検出画素SDP1〜SDP8の電圧信号Voutは、X線の照射開始時Taから上昇し始める。しかし、高感度検出画素SDP1〜SDP8の各々の感度の違いや、被写体Hとの位置関係から、高感度検出画素SDP1〜SDP8の電圧信号Voutは各々異なる。例えば、X線が透過し難い骨等の組織下にある場合には当然X線が到達し難いので、電圧信号Voutは小さい。このため、制御部54は、X線の照射開始を検出する場合、全ての高感度検出画素SDP1〜SDP8の電圧信号Voutを監視する中で、最も早く閾値Th以上の値になった高感度検出画素SDPの電圧信号VoutにしたがってX線の照射開始を検出する。
【0063】
例えば、高感度検出画素SDP1は被写体Hの軟部組織下に、高感度検出画素SDP2は被写体Hに遮られずに直接X線が入射する素抜け領域に、高感度検出画素SDP3は被写体Hの骨部下にそれぞれあるとする。この場合、X線が比較的透過しやすい軟部組織下に位置する高感度検出画素SDP1では、時刻Taから電圧信号Voutが上昇し始め、時刻Tb後の時刻T1において、電圧信号Voutが閾値Th以上の値となる。一方、素抜け領域にある高感度検出画素SDP2は、被写体Hに妨げられずに直接X線が入射するので、実質的な感度は軟部組織下の高感度SDP1より高い。このため、高感度検出画素SDP2の電圧信号Voutは、時刻Taから上昇し始めると、時刻Tbの前(X線の立ち上がる過渡期)の時刻T2に閾値Th以上の値となる。また、高感度検出画素SDP3は、骨部下にあるためにX線の入射量が少ないので、時刻Taから上昇し始めるが、時刻Tb以降も閾値Thには達しない。
【0064】
簡単のため、その他の高感度検出画素SDP4〜SDP8を考えないとすると、制御部54は、高感度画素SDP2の電圧信号Voutが閾値Th以上の値となった時刻T2をX線の照射開始として検出する。
【0065】
こうしてX線の照射開始を検出すると、制御部54は、ゲートドライバ52によるリセット動作用のゲートパルスG1〜Gnの入力を中止させ、全画素37のTFT43をオフにすることにより蓄積動作を開始させる(ステップS14)。
【0066】
蓄積動作が開始されると、撮像用の各画素37には信号電荷が蓄積される。一方、高感度検出画素SDP1〜SDP8は信号線48に短絡接続されているので、高感度検出画素SDP1〜SDP8で発生した信号電荷は発生と同時に信号線48に流入する。制御部54は、照射終了の検出のために、蓄積動作中も信号処理回路53を通じて高感度画素SDPの電圧信号Voutとして読み出し、その値の監視を継続する(ステップS15)。なお、蓄積動作中に高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを監視する場合も、制御部54は、所定間隔で積分アンプ66にリセットパルスRSTを入力する。
【0067】
高感度検出画素SDPの電圧信号Voutが閾値Th以上の場合、制御部54は、FPD25に蓄積動作を継続させる。一方、高感度検出画素SDPの電圧信号が閾値Th未満になった場合、制御部54は、これをX線の照射終了として検出する。
【0068】
具体的には、図7に示すように、時刻TcでX線の線量が立ち下がり始め、時刻TdでX線の照射が完全に終了したとする。このとき、高感度検出画素SDP1〜SDP8の電圧信号Voutは、時刻Tcから下降し始め、時刻TdでX線照射が完全に終了するとともに0になる。但し、照射開始時と同様に照射終了時も、被写体Hとの位置関係や各々の感度差等によって、高感度検出画素SDP1〜SDP8の電圧信号Voutは、各々に異なる。このため、制御部54は、照射開始の検出時に電圧信号Voutが最も早く閾値Th以上の値になった高感度検出画素SDP2の電圧信号Voutを監視し、その値に基づいてX線の照射終了を検出する。前述したように(図6)、高感度検出画素SDP1〜SDP3がそれぞれ軟部組織下,素抜け領域,骨部下にあり、その他の高感度検出画素SDP4〜8を考えない場合、素抜け領域の高感度検出画素SDP2の電圧信号Voutによって照射開始が検出されるので、制御部54は、高感度検出画素SDP2の電圧信号Voutが閾値Th未満の値となった時点T4をX線の照射終了として検出する。
【0069】
こうしてX線の照射終了を検出すると、制御部54は、検出した照射終了時点T4で蓄積期間を終了し、ゲートドライバ52によって読み出し動作用のゲートパルスG1〜Gnを各走査線47に順次入力させることにより、読み出し動作を行わせる(ステップS16)。
【0070】
読み出し動作によって得られたX線画像は、読み出し動作中にメモリ26に一時的に記憶された後、コンソール21に送信される。こうして得られたX線画像には、検出画素DPに対応する画素が欠陥となっているので、補正部31で欠陥補正処理が施される。また、補正部31によってノイズ除去処理等の各種画像処理が施されることにより、観察用のX線画像となり、モニタ22に表示されたり、図示しない画像サーバに送信して保存される。
【0071】
上述のように、電子カセッテ14では、検出画素DPを全て監視するのではなく、検出画素DPから予め選択された高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを監視することにより、FPD25によってX線の照射開始及び照射終了を検出する。このため、電子カセッテ14は、全検出画素DPの電圧信号Voutを監視するよりも迅速にX線の照射開始及び照射終了を検出することができる。また、電子カセッテ14は、検出画素DPの中でも、感度が高い高感度検出画素SDPの電圧信号Voutに基づいてX線の照射開始及び照射終了を検出するので、感度の低い(あるいは被写体Hの位置によってX線の入射量の少ない)検出画素DPの電圧信号Voutに基づいてX線の照射開始及び照射終了を検出することがなく、X線の照射開始及び照射終了を高精度に検出することができる。
【0072】
電子カセッテ14は、検出画素DPの中でも感度が高い高感度検出画素SDPを用いてX線の照射開始及び照射終了を検出するので、照射されるX線が低線量の場合にも、照射開始及び照射終了を検出することができる。また、高感度検出画素SDPを用いることにより、S/N比が良く、暗電荷ノイズ等のノイズの影響を受けにくい。
【0073】
さらに、電子カセッテ14によるX線の照射開始の検出は、全ての高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを監視して行われるが、従来技術のように各電圧信号Voutを相互比較する等の複雑なステップはなく、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutの何れかが閾値Thを超えた時点を照射開始として検出する。このため、電子カセッテ14は、迅速に照射開始を検出することができ、X線源12からのX線の照射開始のタイミングからのタイムラグが殆ど無い。タイムラグが少ないため、被写体Hに照射されるX線を無駄にすることなくX線画像に利用できる。
【0074】
また、電子カセッテ14は、照射開始を検出した高感度検出画素SDPの電圧信号Voutに基づいてX線の照射終了を検出するので、迅速かつ正確にX線の照射終了を検出することができる。また、時刻Tc〜時刻Td間に被写体Hに照射されたX線も無駄なくX線画像に利用される。
【0075】
なお、上述の第1実施形態では、撮像領域51の全体に満遍なく検出画素DP(及び高感度検出画素SDP)がある例を説明したが、これに限らない。電子カセッテ14は、概ね撮像領域51の中央近傍で被写体Hを撮像するように使用される頻度が高く、撮像領域51の中央近傍にだけ検出画素DPを設けておいても良い。また、撮像領域51の全体に検出画素DPを設ける場合も、検出画素DPが撮像領域51内の全域において均一な密度で設けられていなくても良く、使用頻度が高い撮像領域51の中央近傍により多くの検出画素DPが設けられるようにしても良い。
【0076】
[第2実施形態]
なお、上述の第1実施形態では、撮像領域51内に満遍なく設けられた検出画素DPの全体から高感度検出画素SDPを選択する例を説明したが、これに限らない。例えば、以下に第2実施形態として説明するように、撮像領域51を複数の領域に分割し、各々の領域毎に高感度画素SDPを選択しても良い。
【0077】
図8に示すように、撮像領域51を信号線48の方向(Y方向)に長い長方形状の領域A1〜A6に分割し、これらの各領域A1〜A6毎に、検出画素DPから高感度検出画素SDPを少なくとも1個ずつ選択する。領域A1〜A6のように、撮像領域51を信号線48の方向に長い長方形状(短冊状)の領域に分割するのは、検出画素DPが信号線48に短絡接続されているので、検出画素DPがY方向のどの位置にあっても、得られる電圧信号VoutからはY方向の位置を識別できず、Y方向には検出画素DPによる分解能がないからである。
【0078】
高感度検出画素SDPの選択方法は、第1実施形態で説明した方法と同様であり、高感度検出画素SDPは、ゲインキャリブレーション時に得られる各検出画素DPの電圧信号Voutを互いに比較して選択される。このとき、第1実施形態では全検出画素DPの電圧信号Vout(感度)を比較するが、ここでは、図9(A)〜(D)に示すように、各領域A1〜A6毎に、各領域にある検出画素DPの電圧信号Voutを比較する。そして、各領域A1〜A6毎に、1以上の検出画素DPを高感度検出画素SDPとして選択する。
【0079】
撮像領域51を分割せずに、検出画素DPの全体から高感度検出画素SDPを選択すると、例えば、高感度検出素子SDPが撮像領域51の一角に集中するというように、選択された高感度検出画素SDPの配置が撮像領域51内で意図せず偏ってしまうことがあるが、上述のように、撮像領域51を分割した領域A1〜A6毎に高感度検出画素SDPを選択するようにすることで、選択される高感度検出画素SDPを撮像領域51の全域に分散させることができる。
【0080】
なお、図9において、領域A1(図9(A))と領域A4(図9(D))で2個の高感度検出画素SDPを選択し、その他の領域A2,A3,A5,A6(図9(B),(C),(E),(F))で、1個の高感度検出画素SDPが選択される例を示しているように、各領域A1〜A6の各々で選択する高感度検出画素SDPの個数は、1以上であれば各々に定めることができる。このため、例えば、使用頻度が高い撮像領域51の中央近傍を含む領域A3及び領域A4で、他の領域A1,A2,A5,A6よりも多くの高感度検出画素SDPが選択されるようにしても良い。
【0081】
なお、上述の第2実施形態では、撮像領域51を長方形の領域A1〜A6に分割し、領域A1〜A6毎に高感度検出画素SDPを選択する例を説明したが、撮像領域51の分割の仕方はこれに限らない。例えば、撮像領域51を分割する領域の数は6個に限らず、これよりも少なくてもよいし、より多くの領域に分割して、各領域毎に高感度検出画素SDPを選択しても良い。
【0082】
また、図10に示す領域B1〜B9のように、撮像領域51を縦横に分割し、升目状の各領域B1〜B9毎に高感度検出画素SDPを選択しても良い。このように、撮像領域51を縦横に分割して各領域B1〜B9内で高感度検出画素SDPを選択する態様は、各画素37(及び各検出画素DP)に個別にアクセスして信号電荷の読み出しを行うことができる、いわゆるCMOS型のFPDに特に好適である。。上述のFPD25のようにTFT型のFPDでは、検出画素DPに個別にアクセスする信号線を配設すれば良い。
【0083】
[第3実施形態]
また、電子カセッテ14でフリー撮影(撮影台を使わない撮影)を行う場合には、撮像領域51の一部分にX線を照射してX線撮影を行うことがある。以下、第3実施形態として、撮像領域51の一部にX線を照射して撮影を行う場合の電子カセッテ14の動作について説明する。
【0084】
図11に示すように、第2実施形態と同様に、撮像領域51を領域A1〜A6に分割し、各領域A1〜A6毎に高感度検出画素SDPが選択されているとする。また、撮像領域51の左下がX線の照射野71となるように、電子カセッテ14が配置されているとする。
【0085】
図12に示すように、電子カセッテ14に電源を投入すると、電子カセッテ14は待機動作を行い(ステップS20)、コンソール21に撮影条件が入力されることによって撮影準備開始指示が入力される(ステップS21)。撮影準備開始指示を受けると、制御部54は、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutの監視を開始する(ステップS22)。
【0086】
その後、X線源12からX線が照射されると、制御部54は、照射野71を判定する(ステップS23)。照射野71の判定は、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutに基づいて行う。具体的には、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを、照射野判定用の所定閾値(照射検出用の閾値Thより小さい)と比較し、電圧信号Voutがこの所定閾値以上の値になった高感度検出画素SDPが全て含まれる範囲を照射野71として判定する。閾値は、暗電荷の発生によって電圧信号Voutに重畳するノイズと識別できる程度に、極小さな値に設定される。
【0087】
制御部54は、監視する高感度検出画素SDPを照射野71内に位置するものに絞り、検出した照射野71内にある高感度検出画素SDPの電圧信号Voutが閾値Th以上の値になったか否かによってX線の照射開始を検出する(ステップS24)。照射野の判定とX線の照射開始の検出は、ほぼ同時に行われ、監視する高感度検出画素SDPが照射野71内のものに絞られるため、全ての高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを監視するよりも迅速にX線の照射開始を検出することができる。
【0088】
例えば、第1実施形態では8個の高感度検出画素SDP1〜SDP8の電圧信号Voutを監視してX線の照射開始を検出したが、本第3実施形態では、照射野71には、領域A1に属する高感度検出画素SDP8と、領域A2に属する高感度検出画素SDP6の2つしかない。このため、制御部54が電圧信号Voutと閾値Thと比較する処理は1/4程度に低減されるので、制御部54の処理速度のために、X線の照射開始の検出が遅延してしまう確率が低減する。
【0089】
X線の照射開始を検出すると、制御部54はFPD25の動作を蓄積動作に移行させる(ステップS25)。そして、照射開始の検出時に用いた高感度検出画素SDPの電圧信号Voutが閾値Th未満の値になったときにX線の照射終了を検出し(ステップS26)、読み出し動作を行う(ステップS27)。
【0090】
上述のように、電子カセッテ14は、フリー撮影を行う場合、照射野71を判定し、X線の照射開始の検出のために閾値Thと比較する高感度検出画素SDPを照射野71内に位置するものに絞るので、実際にX線が照射されるまで照射野71が分からないフリー撮影であっても、迅速かつ正確にX線の照射開始及び照射終了を検出することができる。
【0091】
第3実施形態で説明した態様は、第1実施形態で説明したように、撮像領域51の全体から高感度検出画素SDPが選択されているFPDを用いてもよいが、第2実施形態で説明したように、撮像領域51内により確実に分散して高感度検出画素SDPが選択されているFPDを用いる場合に特に好適である。
【0092】
なお、上述の第3実施形態では、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを監視して照射野71を判定する例を説明したが、照射野71の判定には高感度検出画素SDPとして選択されてない他の検出画素DPを用いても良い。また、高感度検出画素SDPと他の検出画素DPをともに用いても良い。
【0093】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、1つの信号線48に検出画素DPが1つ接続されている例を説明したが、1つの信号線48に複数の検出画素DPが設けられていても良い。例えば、1つの信号線48上に2つの検出画素DPが接続されている場合、制御部54がこの信号線48から取得する電圧信号Voutは、2つの検出画素DPの信号電荷の合計に応じた電圧信号Voutとなるので、検出画素DPの感度が2倍に向上するのと同等である。この場合、同じ信号線48に接続された2つの検出画素DPがともに高感度検出画素SDPに選択される。
【0094】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、電子カセッテ14がX線の照射開始と照射終了を両方とも検出する例を説明したが、照射開始または照射終了の一方だけを検出するようにしても良い。例えば、照射開始を検出して蓄積動作を開始するとともに、照射開始を起点として計時を開始し、照射終了は検出せずに、撮影条件に含まれる照射時間の経過後に蓄積動作を終了させるようにしても良い。
【0095】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、検出画素DPをTFT43を介さずに信号線48に短絡接続された画素で形成する例を説明したが、検出画素DPは短絡画素でなくても良い。例えば、CMOS型のFPDでは、画素37毎に信号を読み出すことができるとともに、画素37に蓄積された信号電荷を失わずに信号を読み出す非破壊読み出しが可能なので、通常の撮像用の画素37を検出画素DPとして利用することができる。また、上述の第1〜第3実施形態で説明したFPD25では、撮像用の画素37と検出画素DPとで信号線48を共用しているが、検出画素DPから信号を読み出すための信号線を撮像用の画素37の信号線48とは別に設ければ、検出画素DPを短絡画素とせず、検出画素DP用の信号線にTFT等を介して接続するようにしても良い。
【0096】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、定期メンテナンスとして行われるゲインキャリブレーション時に検出画素DPから高感度検出画素SDPを選択する例を説明したが、電子カセッテ14の出荷検査時に検出画素DPから高感度検出画素SDPを選択しても良い。また、経時劣化等によって高感度検出画素SDPの感度が低下してしまうことがある。このため、定期メンテナンスでゲインキャリブレーションを行うときに、高感度検出画素SDPを再選択して、高感度検出画素SDPを更新するようにしておくことが好ましい。
【0097】
なお、上述の実施形態では、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutを閾値Thと比較することによって、X線の照射開始及び照射終了を検出する例を説明したが、これに限らない。例えば、高感度検出画素SDPの電圧信号Voutの変化率(傾き)に基づいてX線の照射開始及び照射終了を検出しても良い。具体的には、電圧信号Voutの傾きがほぼ0から一定の傾き以上になった時点を照射開始と検出し、一定以下の傾きになった後、傾きがほぼ0になった時点を照射終了と検出する。こうすると、図5及び図6で説明した高感度検出画素SDP1〜SDP3の場合、時刻Taが照射開始として検出され(図5参照)、時刻Tdが照射終了として検出される(図6)。但し、この場合も、実効的な感度が高い高感度検出画素SDP(例えば素抜け領域の高感度検出画素SDP2)を用いれば、検出精度がより良い。
【0098】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、照射開始及び照射終了の検出に1個の高感度検出画素SDP(図5及び図6では高感度検出画素SDP2)を用いる例を説明したが、高感度検出画素SDPが複数選択されている場合には、複数の高感度検出画素SDPを用いて照射開始及び照射終了を検出しても良い。例えば、半数以上の高感度検出画素SDPの電圧信号Voutが閾値Th以上(未満)になった時点を照射開始(照射終了)として検出しても良い。また、例えば、全高感度検出画素SDPの電圧信号Voutの平均値を閾値と比較して照射開始及び照射終了を検出しても良い。
【0099】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、電圧信号Vout(感度)が高い順に所定数を選択することにより、検出画素DPから高感度検出画素SDPを選択する例を説明したが、検出画素DPから高感度検出画素SDPを選択する方法はこれに限らない。例えば、検出画素DPの電圧信号Voutを、高感度と定めるための所定閾値と比較して、高感度検出画素SDPを選択しても良い。
【0100】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、検出画素DP及び高感度検出画素SDPから得るを、A/D変換器68でデジタル化して、デジタルな電圧信号Voutで照射開始及び照射終了の検出を行っているが、これに限らず、制御部54は、検出画素DP及び高感度検出画素SDPから、検出画素DPからアナログの電気信号を取得しても良い。
【0101】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、FPD25として間接変換型のパネルを例に説明したが、X線を直接電気信号に変換する直接変換型パネルを用いても良い。
【符号の説明】
【0102】
10 X線撮影システム
11 天板
13 X線焦点
12 X線源
14 電子カセッテ(放射線画像検出装置)
16 高電圧発生部
17 X線源制御部
21 コンソール
22 モニタ
23 照射スイッチ
24 通信部
25 FPD
26、38 メモリ
27 通信部
37 画素
42 フォトダイオード
43 TFT
47 走査線
48 信号線
51 撮像領域
52 ゲートドライバ
53 信号処理回路
54 制御部
66 積分アンプ
67 マルチプレクサ
68 A/D変換器
69 リセットスイッチ
71 照射野
DP 検出画素
SDP 高感度検出画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスに配列された複数の画素と画素から画像信号を読み出すための信号線が配設された撮像領域を有し、被写体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出するための画像検出手段と、
前記撮像領域内に配置され、前記放射線の入射量に応じた電気信号を出力する複数の検出素子と、
複数の前記検出素子の中から、感度が高い高感度素子を選択するための高感度素子情報を予め記憶する記憶手段と、
前記高感度素子情報に基づいて選択された前記高感度素子の出力を監視して、前記放射線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出する照射検出手段と、
前記照射検出手段の検出結果に基づいて前記画像検出手段の動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記撮像領域の全域を複数の区画に分割した複数の分割領域が設定されており、複数の前記分割領域のそれぞれには、前記高感度画素が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
複数の前記分割領域のそれぞれに設けられた、前記高感度素子または前記高感度素子以外の前記検出素子の出力に基づいて、前記放射線の照射野を判定する照射野判定手段を有しており、
前記照射検出手段は、前記照射野に対応する前記分割領域内の前記高感度素子の出力を監視して、前記放射線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出することを特徴とする請求項2記載の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記分割領域は、前記撮像領域を升目状または短冊状に区画した領域であることを特徴とする請求項2または請求項3記載の放射線画像検出装置。
【請求項5】
前記検出素子は、前記画素とほぼ同一の構造を有し、かつ、前記信号線と常時短絡しており、
前記照射検出手段は、前記信号線を通じて前記検出素子の出力を監視することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項6】
前記高感度素子はキャリブレーションによって、前記被写体の撮影前に予め選択されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記載の放射線画像検出装置。
【請求項7】
前記キャリブレーションは、前記画素の感度を補正するために、前記画素から前記画像信号を読み出すときのゲインを決定するゲインキャリブレーションであり、前記ゲインキャリブレーション時に前記検出素子から得られる前記電気信号に基づいて前記高感度検出素子が選択されることを特徴とする請求項6記載の放射線画像検出装置。
【請求項8】
前記高感度素子は複数あり、
前記照射検出手段は、複数の前記高感度素子の出力をそれぞれ所定閾値と比較し、それぞれの前記高感度素子の出力のうちの一つが前記所定閾値以上になった時点を前記放射線の照射開始として検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記載の放射線画像検出装置。
【請求項9】
前記前記検出手段は、前記照射開始の検出時に出力が最も早く前記所定閾値以上の値になった前記高感度素子の出力が、前記所定閾値未満の値になった時点を前記照射終了として検出することを特徴とする請求項8記載の放射線画像検出装置。
【請求項10】
マトリクスに配列された複数の画素と画素から画像信号を読み出すための信号線が配設された撮像領域に配置され、前記放射線の入射量に応じた電気信号を出力する複数の検出素子の中から、感度が高い高感度素子を予め選択し、高感度素子の出力を監視して、前記放射線の照射開始及び照射終了の少なくとも一方を検出し、前記検出の結果に基づいて前記撮像領域を有し、被写体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出するための画像検出手段の動作を制御することを特徴とする放射線画像検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−247354(P2012−247354A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120459(P2011−120459)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】