説明

放射線硬化型樹脂組成物、光ファイバ用被覆組成物、光ファイバ素線、及び、光ファイバ心線

【課題】低吸水率、高屈折率及び高柔軟性の硬化物を与えるとともに、硬化性に優れた放射線硬化型樹脂組成物、及び、光ファイバ用被覆組成物、並びに、これを用いた光ファイバ素線、及び、光ファイバ心線を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)下記一般式(I)で示される化合物と
(B)ラジカル重合開始剤と
を含有することを特徴とする放射線硬化型樹脂組成物。


[一般式(I)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型樹脂組成物、光ファイバ用被覆組成物、光ファイバ素線、及び、光ファイバ心線に関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスやプラスチック等からなる光ファイバに一次被覆層が設けられてなる光ファイバ素線が広く知られている。
【0003】
光ファイバ素線の一次被覆層は、通常、信頼性の観点で吸水率が低いこと、耐久性(耐熱、耐水性)が高いに加え、マイクロベンドロス防止のため、ヤング率が低いことや低温特性(ヤング率の温度依存性が小さいこと)に優れていることが求められる。さらに、一次被覆層は、ガラスファイバより漏れ出た光をガラスファイバヘ戻さないことが可能な程度に屈折率が高いことも要求される。
たとえば、特許文献1には、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化性樹脂組成物を使用することが提案されているが、反応性モノマーとしてTgの高い吸水性のアミド系モノマーであるN−ビニルピロリドンを用いているため、低ヤング率、低温特性及び低吸水率が不十分である。
【0004】
低屈折率の反応性モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートを使用した提案もなされているが(特許文献2参照)、ガラスファイバより漏れ出た光をガラスファイバヘ戻さないために求められる高屈折率(1.48以上の屈折率)が達成されていない。
【0005】
そこで、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートのような高屈折率のアクリレート化合物、及びN−ビニルピロリドンに比較して低吸水率のアミド系モノマーとしてN−ビニルカプロラクタム(高屈折率)を用いる提案もなされているが(特許文献3)、低温特性及び吸水率は、未だ不十分である。
【0006】
さらに、高屈折率を目的として特定のビフェニル構造のモノマー(特許文献4参照)、硫黄原子を導入したモノマー(特許文献5,6参照)が開示されているが、これらのモノマーは、通常のアクリロイル基やメタクリロイル基といった汎用的な重合性基を有しており、このような重合性基を有するモノマーは、重合時における硬化収縮(体積収縮)が大きく、また酸素による重合阻害を受けるため、硬化性も十分ではないという問題があった。
【0007】
体積収縮が小さいモノマーとしては、非特許文献1、2、3、4および特許文献7,8に環状アリルスルフィドモノマーが開示されている。しかしながら、これらの文献には、接着用途、歯科用途、レンズに使用できるという記載はあるものの、光ファイバ用被覆組成物に用いる用途に対しての記載は全くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−19694号公報
【特許文献2】特開昭61−87450号公報
【特許文献3】特許第281107号公報
【特許文献4】特開2001−302742号公報
【特許文献5】特開2002−321946号公報
【特許文献6】特開2004−51936号公報
【特許文献7】特許第3299542号明細書
【特許文献8】特許第4153031号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules, 1994, 27, 7935.
【非特許文献2】Macromolecules, 1996, 29, 6983.
【非特許文献3】Macromolecules, 2000, 33, 6722.
【非特許文献4】J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、低吸水率、高屈折率及び高柔軟性の硬化物を与えるとともに、硬化性に優れた放射線硬化型樹脂組成物及び光ファイバ用被覆組成物、並びに、これを用いた光ファイバ素線及び光ファイバ心線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため、ラジカル重合性モノマーや重合開始剤を含有する放射線硬化型樹脂組成物について鋭意検討を重ねた結果、光ファイバの一次被覆層の材料として求められる屈折率を達成するためには、高屈折率の反応性モノマーを用いる必要があるが、光ファイバの被覆材料用として知られている上記したような既知のモノマーを使用する場合、充分な屈折率を得るべく、その含有量を多くすると、被覆層のTgが高くなってしまい、柔軟性を悪化させる原因になることが分かった。ところが、環状アリルスルフィドモノマーを用いた場合には、放射線硬化型樹脂組成物中の、光ファイバの一次被覆層の材料として求められる屈折率を達成するための配合量を少なくでき、被覆層のTgを低く抑えることができる。また、放射線硬化型樹脂組成物は硬化性に優れ、かつ、得られる硬化物が低吸水率であることを知見し、本発明をなすに至った。さらに、この環状アリルスルフィドモノマーを含有する放射線硬化型樹脂組成物が、光ファイバの一次被覆層の材料としてのみならず、一次被覆層と二次被覆層との間に設けられるバッファー層の材料としても有用であることを見出した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0012】
(1) (A)下記一般式(I)で示される化合物と
(B)ラジカル重合開始剤と
を含有することを特徴とする放射線硬化型樹脂組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
[一般式(I)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0015】
(2) 一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【0016】
【化2】

【0017】
[一般式(II)中、Rは一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、mは0または1を表す。]
【0018】
(3) 一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【0019】
【化3】

【0020】
[一般式(III)中、Rは一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、nは0または1を表す。]
【0021】
(4) (C)前記一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性化合物を、更に含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【0022】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の放射線硬化型樹脂組成物であることを特徴とする光ファイバ用被覆組成物。
【0023】
(6) 光ファイバと前記光ファイバの外周側に設けられた一次被覆層とを有する光ファイバ素線であって、前記一次被覆層が、上記(5)に記載の光ファイバ用被覆組成物から形成されたことを特徴とする光ファイバ素線。
【0024】
(7) 上記(6)に記載の光ファイバ素線と、前記光ファイバ素線の外周側に設けられた二次被覆層とを有する光ファイバ心線。
【0025】
(8) 光ファイバと前記光ファイバの外周側に設けられた一次被覆層とを有する光ファイバ素線と、前記光ファイバ素線の外周側に設けられた二次被覆層とを有する光ファイバ心線であって、
前記一次被覆層と前記二次被覆層との間にバッファー層が設けられるとともに、
前記一次被覆層及び前記バッファー層のいずれか少なくとも一方が、上記(5)に記載の光ファイバ用被覆組成物から形成されたことを特徴とする光ファイバ心線。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低吸水率、高屈折率及び高柔軟性の硬化物を与えるとともに、硬化性に優れた放射線硬化型樹脂組成物及び光ファイバ用被覆組成物、並びに、これを用いた光ファイバ素線及び光ファイバ心線を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバ心線の概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光ファイバ心線の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る放射線硬化型樹脂組成物及び光ファイバ用被覆組成物、並びに、これを用いた光ファイバ素線及び光ファイバ心線について詳細に説明する。
【0029】
[放射線硬化型樹脂組成物]
本発明の放射線硬化型樹脂組成物は、(A)下記一般式(I)で示される化合物と(B)ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0030】
【化4】

【0031】
[一般式(I)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0032】
本発明において、放射線硬化型樹脂組成物とは、放射線照射により、含有される重合性成分の重合反応を起こすことができる組成物をいうものとする。
【0033】
<(A)一般式(I)で表される化合物>
【0034】
【化5】

【0035】
[一般式(I)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【0036】
一般式(I)で表される化合物は環状アリルスルフィドモノマーまたは環状アリルスルフィド化合物と以後称する。環状アリルスルフィドモノマーは重合性成分として機能することができ、好ましくは、加熱により、または光照射により直接もしくはラジカル重合開始剤の作用によってラジカル重合を起こす化合物である。開環重合により二重結合を有するポリマーに変化する。一般式(I)で表される化合物は、硬化による体積収縮が小さい上、形成された硬化物は低吸水率かつ高屈折率である。
【0037】
重合反応は以下の式のように表される。
【0038】
【化6】

【0039】
[上記反応式中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。ZはZが開環した場合の2つの炭素原子及び硫黄原子以外の原子団により形成された連結基を表す。lは繰り返し単位の数を表す。]
【0040】
この環状アリルスルフィドモノマーの硬化による体積収縮が小さいことは、形成された硬化した放射線硬化型樹脂の変形が小さく、内部に応力を有さないために、非常に寸度安定性が高い硬化物となるため、非常に有用である。本発明の環状アリルスルフィドモノマーは成長ラジカルがSラジカルであることと、S原子のα位の水素(隣の炭素の水素)原子を有するため、チオールエン反応に見られるような酸素重合阻害を受けないという特徴を有することを、発明者は確認している。そのため、汎用的なラジカル重合性モノマーであるメタクリレートや、アクリレートモノマーよりも酸素存在下、もしくは溶存酸素存在下においても重合反応が進行しやすいという特徴を有する。放射線硬化型樹脂組成物を構成した際にも、汎用モノマーを用いた場合は、溶存酸素によりある程度の重合阻害を受ける。それに対して、環状アリルスルフィドモノマーを用いた際は重合阻害を受けにくいために少ないラジカル開始剤量で硬化が可能である。
【0041】
また、汎用的なラジカル重合性モノマーであるメタクリレートや、アクリレートモノマーは重合がビニル基への付加を行う反応であるため、側鎖である置換基が炭素原子が2つごとに導入される。これによりTgが上昇し、脆性がうまれ、接着性が損なわれるが、上記環状アリルスルフィドモノマーは、例えば8員環の環状アリルスルフィドモノマーを用いる場合は炭素硫黄原子などの8つの連結鎖に一つ置換基が導入される。そのため、Tgの上昇を抑えることができ、柔軟性及び密着性を保つことが出来る。また、環状アリルスルフィドモノマーの重合体は、炭素-硫黄-炭素の結合距離が長く、また結合角が小さいため、重合体そのものがある程度の柔軟性を有するものである。
【0042】
一般式(I)中、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。Zにより形成される環構造の構成要素としてはメチレン炭素を挙げることができ、メチレン炭素以外に、カルボニル基、チオカルボニル基、酸素原子や、硫黄原子など二価の有機連結基を挙げることもでき、これらの組み合わせにより上記環構造が構成される。その環員数は6〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましく、7〜8であることが特に好ましい。また、その環構造のメチレン炭素数は3〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが特に好ましい。
一般式(I)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Rで表されるアルキル基としては直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜3であることが特に好ましい。なお、本発明において、ある基について「炭素数」とは、置換基を有する基については、該置換基を含まない部分の炭素数をいうものとする。
【0043】
で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2,3−ジブロモプロピル基、アダマンチル基、ベンジル基、4−ブロモベンジル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
一般式(I)中において、Rで表される基が更に置換基を有する場合、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(I)の環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、一般式(I)で表される化合物は多官能体を表す。
【0044】
一般式(I)中において、Rが水素原子またはアルキル基を表し、かつZで表される環構造の環員数が6〜9であり、かつZで表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に、カルボニル基、酸素原子または硫黄原子のいずれか、もしくはそれらの組み合わせを含むことが好ましく、Rが水素原子またはアルキル基を表し、かつZで表される環構造の環員数が6〜8であり、かつZで表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外にカルボニル基と酸素原子の組み合わせ、または硫黄原子を含むことがより好ましく、Rが水素原子またはアルキル基を表し、かつZで表される環構造の環員数が7〜8であり、かつZで表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に硫黄原子を含むことが特に好ましい。
【0045】
一般式(I)中において、Rが水素原子またはアルキル基を表し、かつZで表される環構造の環員数が6〜9であり、かつZで表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に、カルボニル基、酸素原子または硫黄原子のいずれか、もしくはそれらの組み合わせを含むことが好ましく、Rが水素原子またはアルキル基を表し、かつZで表される環構造の環員数が6〜8であり、かつZで表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外にカルボニル基と酸素原子の組み合わせ、または硫黄原子を含むことがより好ましく、Rが水素原子またはアルキル基を表し、かつZで表される環構造の環員数が7〜8であり、かつZで表される環構造が2つの炭素原子及び硫黄原子以外にメチレン炭素以外に硫黄原子を含むことが特に好ましい。
上記の中でも、Rが水素原子を表すことが更に好ましい。
【0046】
一般式(I)は下記に示す、一般式(II)、または一般式(III)であることがより好ましい。
以下に、一般式(II)、及び(III)について説明する。
【0047】
【化7】

【0048】
[一般式(II)中、Rは一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1を表す。]
【0049】
一般式(II)中、R、R12、R13、R14、R15で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
【0050】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるヘテロ環基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数4〜14のヘテロ環基であることが好ましく、炭素数4〜10のヘテロ環基であることがより好ましく、炭素数5のヘテロ環基であることが特に好ましい。R13、R14、R15で表されるヘテロ環基の具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2,3−ジブロモプロピルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−ブロモベンジルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルキルチオ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、イソブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ターシャリーオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基、2,3−ジブロモプロピルチオ基、アダマンチルチオ基、ベンジルチオ基、4−ブロモベンジルチオ基などが挙げられる。
【0051】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールチオ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラニルチオ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ノルマルプロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ノルマルブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ターシャリーオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ノルマルプロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ノルマルブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、ターシャリーブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ターシャリーオクチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールカルボニルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基、アントラニルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0052】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるスルホニルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアミノ基は、一置換アミノ基であっても、二置換のアミノ基であってもよく、二置換のアミノ基が好ましい。無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。このようなアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるハロゲン原子としては、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられ、ブロモ基が好ましい。
【0053】
一般式(II)中、R、R12、R13、R14、R15で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(II)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、一般式(II)で表される化合物は多官能体を表す。
一般式(II)中、mは0または1の整数を表す。mは1であることが好ましい。
【0054】
およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0055】
13は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
14は複数の場合はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
15は水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることがより好ましく、アシルオキシ基であることが更に好ましい。
【0056】
より好ましい態様としては、一般式(II)中、RおよびR12がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R13、R14およびR15がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アシル基であり、この態様において、R15が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが0または1であることがさらに好ましい。更に好ましい態様としては、一般式(II)中、RおよびR12が水素原子またはメチル基であり、R13およびR14がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R15がアルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつmが0または1である化合物を挙げることができる。より一層好ましい態様としては、一般式(II)中、RおよびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、mが1である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、RおよびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14が水素原子であり、R15がアシルオキシ基であり、かつmが1である化合物を挙げることができる。
【0057】
【化8】

【0058】
[一般式(III)中、Rは一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子を表し、nは0または1を表す。]
【0059】
一般式(III)中、R、R23、R24、R25で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子の詳細は、上述した一般式(II)中のアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン原子の説明と同様である。
【0060】
一般式(III)中、R、R23、R24、R25で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(III)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、多官能体を表す。
一般式(III)中、nは0または1の整数を表す。nは0であることが好ましい。
【0061】
23は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
24は複数の場合はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
25は水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0062】
一般式(III)で表される化合物の好ましい態様としては、Rは、水素原子またはメチル基を表し、R23、R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、一般式(III)中、Rが水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつnが0または1である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、一般式(III)中、Rが水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、かつnが0または1である化合物を挙げることができる。よりいっそう好ましい態様としては、一般式(III)中、Rが水素原子またはメチル基であり、R23、R24、R25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基またはアリールカルボニルオキシ基であり、nが0である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、Rがメチル基であり、R23、R24が水素原子であり、R25が水素原子であり、かつnが0である化合物を挙げることができる。
【0063】
以下に、一般式(I)および(II)、(III)で表される環状アリルスルフィド化合物の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
以上説明した一般式(I)〜(III)で表される化合物の合成方法は、例えば、Macromolecules, 1994, 27, 7935. Macromolecules, 1996, 29, 6983.やMacromolecules, 2000, 33, 6722.や J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202.等に詳細に記載されている。
【0071】
環状アリルスルフィドモノマーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の放射線硬化型樹脂組成物における環状アリルスルフィドモノマーの含有量は、放射線硬化型樹脂組成物の全量に対して、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、1〜25質量%の範囲であることがより好ましく、2〜20質量%の範囲であることが更に好ましい。
特に、多官能の環状アリルスルフィドモノマーを少量含むことが好ましく、その多官能の環状アリルスルフィドモノマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、放射線硬化型樹脂組成物の全量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%が更に好ましい。0.01質量%未満では架橋性モノマーを導入した効果が現れにくく、10質量%を超えると架橋点が多くなるため脆くなり、密着強度の低下が起こりやすくなるため好ましくない。
【0072】
以上に説明した環状アリルスルフィドモノマーは、光ファイバ用被覆組成物に用いられてきた重合性化合物と比較して、皮膚刺激性や感作性(かぶれ易さ)が小さく、かつ、反応性が高く、粘度が低く、光ファイバーへの接着性に優れる。
また、これらの環状アリルスルフィドモノマーは、光ファイバ用被覆組成物の全てのモノマーの合計質量に対して、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%である。1質量%より少ないと、ガラスファイバの一次被覆層の材料として求められる屈折率(1.48以上)に達しなくなる可能性がある。
【0073】
<(B)ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、放射線を吸収して重合開始種を生成する化合物であれば、公知の重合開始剤を、適宜選択して使用することができる。
放射線としては、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線を例示できる。
本発明で使用し得る好ましいラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、フェニルアセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン及び3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール、ベンゾイル及びベンゾインブチルメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン及び2,4−ジクロロチオキサントン、フルオレン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0074】
本発明においてラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。これらの中では、特に速硬化性の点でホスフィンオキシド化合物の光重合開始剤が好ましい。これらは1種使用してもよいし、2種以上併用してもよい。(B)ラジカル重合開始剤の配合量は、(A)一般式(I)で示される化合物、(B)ラジカル重合開始剤、及び、以下に説明する(C)一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0075】
<(C)一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性化合物>
本発明の放射線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、成分(A)の環状アリルスルフィドモノマー(一般式(I)で示される化合物)以外のラジカル重合性化合物(以下、その他のラジカル重合性化合物とも言う)を含有してもよい。
その他のラジカル重合性化合物は、好ましくは反応性エチレン性不飽和化合物であり、N−ビニル化合物、又は、アミノ基若しくは水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がアミド化反応又はエステル化反応で結合した構造を有する化合物などが挙げられ、例えば下記の単官能性、2官能性、及び多官能性化合物を用いることができる。
【0076】
(単官能性化合物)
N−ビニル化合物としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどが挙げられ、またアミノ基若しくは水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がアミド化反応又はエステル化反応で結合した構造を有する化合物としては、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クミルフェノール(メタ)アクリレート、クミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、クミルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]アシッドフォスフェート、トリクロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
(2官能性化合物)
2官能性化合物としては、具体的には、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリセリンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、ペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(グリシジルオキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0078】
(多官能性化合物)
多官能性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシプロピル)イソシアヌレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0079】
また、その他のラジカル重合性化合物は、分子鎖末端にエチレン性不飽和基を有し、ポリオキシアルキレン構造を含有するオリゴマーであってもよい。主骨格の構造としてポリオキシアルキレン構造を含有し、分子鎖末端にエチレン性不飽和基を有するものあってもよく、ポリエーテル(メタ)アクリレート、またこれらの骨格を有するポリウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系オリゴマーは、いずれもポリエーテル骨格のポリオールからエステル化反応、ウレタン化反応によって得ることができる。これらのオリゴマーの数平均分子量は、3,000〜20,000、好ましくは、5,000〜15,000程度の範囲から選択できる。ポリオキシアルキレン構造を有する上記分子量のオリゴマーを用いることにより、本発明の放射線硬化型樹脂組成物の硬化物は、低ヤング率と良好な低温特性(ヤング率の温度依存性が小さいこと)の観点から好ましい。
ここで、ポリオールの具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0080】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランなどのC2〜5アルキレンオキシド)の単独重合体又は共重合体、脂肪族C12〜40ポリオール(例えば、1,2−ヒドロキシステアリルアルコール、水添ダイマージオールなど)を開始剤とした上記アルキレンオキシド単独重合体又は共重合体、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなど)付加体、水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなど)付加体などが挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
好ましいポリエーテルポリオールは、C2〜4アルキレンオキシド、特にC3〜4アルキレンオキシド(プロピレンオキシドやテトラヒドロフラン)の単独又は共重合体(ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、プロピレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体)が挙げられる。
【0081】
これらの市販品としては、例えば、(1)ポリエチレングリコールとして、三洋化成工業社製の「PEG600」、「PEG1000」、「PEG2000」、(2)ポリオキシプロピレングリコールとして、武田薬品工業社製の「タケラックP−21」、「タケラックP−22」、「タケラックP−23」、(3)ポリテトラメチレンエーテルグリコールとして、保土谷化学社製の「PTG650」、「PTG850」、「PTG1000」、「PTG2000」、「PTG4000」、(4)プロピレンオキシドとエチレンオキシドの共重合体として三井東圧化学社製の「ED−28」、旭硝子社製の「エクセノール510」、(5)テトラヒドロフランとプロピレンオキシドの共重合体として、保土谷化学社製の「PPTG1000」、「PPTG2000」、「PPTG4000」、(6)テトラヒドロフランとエチレンオキシドの共重合体として、日本油脂社製の「ユニセーフDC−1100」、「ユニセーフDC−1800」、(7)ビスフェノールAのエチレンオキシドの付加体として、日本油脂社製の「ユニオールDA−400」、「ユニオールDA−700」、(8)ビスフェノールAのプロピレンオキシドの付加体として、日本油脂社製の「ユニオールDB−400」等を挙げることができる。
【0082】
上記(メタ)アクリレート系オリゴマーとして、特にポリエーテルポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、これらは、下記(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート及び(iii)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物のウレタン化反応により得ることができる。
【0083】
(i)ポリオール成分ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アルキルジオール等が使用され、具体例としては前記のものが挙げられる。
【0084】
(ii)ポリイソシアネートポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が使用される。
【0085】
(iii)水酸基を有する(メタ)アクリレート水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2〜10アルキル(メタ)アクリレートなど)、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、更にグリシジル基又はエポキシ基含有化合物(例えば、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど)と(メタ)アクリル酸との付加反応により生成する化合物も挙げられる。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましい水酸基含有(メタ)アクリレートは、ヒドロキシC2〜4アルキル(メタ)アクリレート、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどである。
なお、ポリエーテルポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは上記成分を反応させることにより調製することができ、ポリエーテルポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成する各成分の割合は、例えば、ポリイソシアネートのイソシアネート基1モルに対して、ポリオール成分の水酸基0.1〜0.8モル、好ましくは0.2〜0.7モル、特に0.2〜0.5モル程度、水酸基含有(メタ)アクリレート0.2〜0.9モル、好ましくは0.3〜0.8モル、特に0.5〜0.8モル程度である。
【0086】
また、上記成分の反応方法は特に限定されず、各成分を一括混合して反応させてもよく、ポリイソシアネートと、ポリオール成分及び水酸基含有(メタ)アクリレートのうちいずれか一方の成分とを反応させた後、他方の成分を反応させてもよい。
【0087】
これらウレタン化反応の触媒としては、例えば、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛などの有機金属系ウレタン化触媒や、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系触媒が使用できる。
【0088】
(C)一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性化合物の配合量は、(A)一般式(I)で示される化合物、(B)ラジカル重合開始剤、及び、(C)一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性化合物の合計質量に対して、通常1〜90質量%、好ましくは20〜70質量%である。20質量%より少ないと本発明の組成物の要求の屈折率に達しなくなる可能性があり、70質量%を超えるとヤング率の温度依存性が低下するおそれがある。
【0089】
本発明の放射線硬化型樹脂組成物は、上記成分の他に、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、有機溶剤、可塑剤、界面活性剤、シランカップリング剤、着色顔料、有機又は無機粒子等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて添加することができる。
【0090】
本発明の放射線硬化型樹脂組成物は、以上に説明した成分を攪拌・混合することによって、調製することができる。放射線硬化型樹脂組成物は、液状放射線硬化型樹脂組成物であることが好ましく、特に、この放射線硬化型樹脂組成物が光ファイバ用被覆組成物である場合には、放射線硬化型樹脂組成物の粘度は、好ましくは500〜10,000cpの範囲(25℃)であり、より好ましくは500〜4,000cp(25℃)の範囲である。放射線硬化型樹脂組成物の各成分の種類・添加量を適宜調整することによって、このような粘度の範囲を有する放射線硬化型樹脂組成物を得ることができる。
【0091】
放射線硬化型樹脂組成物の粘度が上記範囲であれば、作業性(取り扱い性)に優れるとともに、光ファイバ素線の製造として常用の製造装置・製造条件に基づいて、光ファイバに放射線硬化型樹脂組成物を被覆・硬化して被覆層を形成することにより、光ファイバ素線を容易に製造できる。
【0092】
特に高速移動する光ファイバに対して放射線硬化型樹脂組成物を塗布する場合は、放射線硬化型樹脂組成物の粘度は、500〜4,000cp(25℃)の範囲が望ましい。また、この放射線硬化型樹脂組成物は、通常の放射線硬化型組成物の場合と同様に放射線を照射することにより硬化し、硬化物とすることができるが、このようにして得られる硬化層は、外部力及び温度変化によるマイクロベンドを抑制するに望ましい0.1kgf/mm前後のヤング率を有することが望ましい。なお、上記したように、放射線としては、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線を例示できるが、取り扱い性の観点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0093】
本発明の放射線硬化型樹脂組成物の硬化物は、光ファイバ用被覆材だけではなく、種々の用途、例えば、離型性コーティング材、撥水性コーティング材、保護コーティング材等に応用することもできる。また、本発明の放射線硬化型樹脂組成物の硬化物は、防水ファイバケーブル、海底ケーブル光ファイバユニット等のバッファー材(緩衝材)、充填材にも適用できる。
【0094】
特に、本発明の放射線硬化型樹脂組成物は、光ファイバ用の一次被覆材(プライマリー材)あるいはバッファー材として有用である。
【0095】
以下に、本発明の放射線硬化型樹脂組成物の硬化物が、光ファイバ素線における一次被覆材、または、光ファイバ心線におけるバッファー材として使用された実施形態について説明する。
【0096】
本発明の実施形態に係る光ファイバ素線12は、図1の概略断面図に示すように、光ファイバ10と、光ファイバ10の外周側に設けられた一次被覆層11とを有している。
光ファイバ10は、通常、コア部とコア部の外周側に設けられたクラッド部とを有しており(いずれも図示せず)、コア部及びクラッド部の材料としては、公知の材料をいずれも使用できるが、例えば、光ファイバ10がガラス製光ファイバである場合は、コア部及びクラッド部は、ともに、石英ガラスが使用される。光ファイバ10がプラスチック製光ファイバである場合には、コア部は、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどが使用され、クラッド部は、例えば、フッ素化ポリマーが使用される。
一次被覆層11は、光ファイバ用被覆組成物としての上述した本発明の放射線硬化型樹脂組成物から形成されており、より具体的には、本発明の放射線硬化型樹脂組成物に放射線を照射して得られる硬化物の層である。
上記したように、本発明の放射線硬化型樹脂組成物は硬化性が高く、また、放射線の照射により得られる硬化物は低吸水率かつ高屈折率であることから、光ファイバ素線12は、一次被覆層11が光ファイバ10より漏れ出た光を、光ファイバ10ヘ戻さないための十分な高屈折率を有するとともに、低吸水率であることによって、例えば高湿度の環境においても所望の性能が維持され、さらには、一次被覆層11が充分に硬化された硬化層であるため、所望の一次被覆層の形状(厚み等)が維持される光ファイバ素線となる。また、一般式(I)で表される化合物を使用することにより、放射線硬化型樹脂組成物中における一般式(I)で表される化合物の含有量が少ない状態でも、高屈折率の硬化物を得ることができるため、一般式(I)で表される化合物の含有量を抑えることにより、光ファイバ素線12は、高屈折率でありながら、Tgが低いことによって柔軟性にも優れた一次被覆層11を有する光ファイバ素線とすることができる。
【0097】
本発明の第1実施形態に係る光ファイバ心線30は、図1に示すように、光ファイバ素線12と、光ファイバ素線12の外周側に設けられた二次被覆層20とを有している。二次被覆層に用いられる二次被覆材(セカンダリー材)としては、放射線硬化型樹脂組成物としての公知のウレタンアクリレート組成物に放射線を照射して得られる硬化物の層であることが好ましい。このような光ファイバ心線30によれば、前記した種々の効果を有する光ファイバ素線12を有する光ファイバ心線とすることができる。
【0098】
本発明の第2実施形態に係る光ファイバ心線300は、図2の概略断面図に示すように、光ファイバ素線120と、光ファイバ素線120の外周側に設けられた二次被覆層200とを有している。また、光ファイバ素線120は、光ファイバ10と光ファイバ10の外周側に設けられた一次被覆層110とを有している。さらに、一次被覆層110と二次被覆層200との間にはバッファー層150が設けられている。
【0099】
光ファイバ10及び二次被覆層200の材料としては、第1実施形態に係る光ファイバ心線30で説明したものと同様である。
【0100】
光ファイバ心線300においては、一次被覆層110及びバッファー層150のいずれか少なくとも一方が、光ファイバ用被覆組成物としての上述した本発明の放射線硬化型樹脂組成物から形成されている。
【0101】
一次被覆層110が本発明の放射線硬化型樹脂組成物に放射線を照射して得られる硬化物の層である場合、光ファイバ心線300は、光ファイバ素線12の前記した種々の効果と同様の効果を発現する光ファイバ素線120を備えた光ファイバ心線とすることができる。この場合、バッファー層150の材料としては公知のものを制限なく使用できるが、例えば、(メタ)アクリレート重合体やウレタン変性(メタ)アクリレート重合体等が挙げられる。
【0102】
一方、バッファー層150が本発明の放射線硬化型樹脂組成物に放射線を照射して得られる硬化物の層である場合は、光ファイバ心線300は、低吸水率であることによって、例えば高湿度の環境においても所望の性能が維持され、さらには、バッファー層150が充分に硬化された硬化層であるため、所望のバッファー層の形状(厚み等)を維持される光ファイバ心線とすることができる。この場合、一次被覆層の材料としては公知のものを制限なく使用できるが、例えば、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート重合体、N−ビニルピロリドンN−ビニルカプロラクタム重合体等が挙げられる。
【0103】
光ファイバ心線300において、一次被覆層110及びバッファー層150の各々が、本発明の放射線硬化型樹脂組成物に放射線を照射して得られる硬化物の層である形態も好ましく、これにより、一次被覆層110及びバッファー層150の各々に関して上記した効果を発現できる光ファイバ心線とすることができる。
【0104】
以上に説明した本発明の第1及び第2実施形態に係る光ファイバ心線30,300に関して、光ファイバ及び各被覆層の寸法(厚み)は特に限定はされず、周知の寸法をいずれも採用できる。
【0105】
光ファイバ素線12,120、及び、光ファイバ心線30,300の製造方法としては、放射線硬化型樹脂組成物を塗布・硬化する、常用の光ファイバ被覆方法をいずれも使用できるが、例えば、特開2006−330212号公報、特開2007−108233号公報等に記載の被覆方法に準ずることができる。
【実施例】
【0106】
以下、合成例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部は、いずれも重量部である。
【0107】
<一般式(I)で表される化合物(モノマー)の合成>
例示化合物M−17、M−18、M−34、M−36、M−44、M−45及びM−46を、J. Polym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202に記載の方法に準じ、下記スキーム(Rは、M−17及びM−44合成時はメチル基、M−18合成時はフェニル基、M−34及びM−36合成時は水素原子、M−45合成時は2−ブロモフェニル、M−46合成時は2,4−ジクロロフェニル)によって合成した。出発原料を変更した以外は同様の方法により、合成した。出発原料の置換基を変更することにより、様々な置換基を有する環状アリルスルフィド化合物を合成することができる。
【0108】
【化15】

【0109】
以下に得られた物性データを記述する。
M-17;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 3.05 (m, 4H), 3.21 (s, 4H), 4.95 (m, 1H), 5.20 (s, 2H)
M-18;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.23 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (m, 3H), 8.0 (m, 3H)
M-45;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.22 (m, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.79 (dd, 1H), 7.80 (dd, 1H)
M-46;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (dd, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.79 (d, 1H)
M-44;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 2.80〜3.80(m, 7H), 4.10〜4.30 (m, 2H), 4.85 (d, 2H)
M-34;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.95 (m, 2H), 2.36 (s, 2H), 4.50 (m, 2H), 5.60 (s, 1H), 5.85 (s, 1H)
M-36;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.54 (d, 3H), 2.92〜3.10 (m, 2H), 3.59(dd, 1H),4.51 (t, 2H), 5.51 (s, 1H), 5.63 (s, 1H)
【0110】
<ポリオキシアルキレン構造を含有するオリゴマーの合成>
数平均分子量約4,000のポリプロピレングリコール407.3g(三洋化成工業(株)製、サニックスPP4000、OH価=27.5)、2,4−トリレンジイソシアネート52.2gを反応容器に仕込み、窒素通気下で、70〜80℃で2時間反応させた。その後、反応温度を50〜60℃に下げ、ジブチルチンジラウレート0.6g、2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン0.15g、2−ヒドロキシエチルアクリレート23.2gを添加し、5時間反応させ、数平均分子量約8,900のポリエーテルポリウレタンアクリレートオリゴマー(オリゴマーA)を得た。
【0111】
<実施例1,2、比較例1〜3>
表1に示すように、一般式(I)で示される化合物(実施例)又は一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性モノマー(比較例)、上記で合成したオリゴマーA、単官能性化合物、光重合開始剤を混合して、実施例1,2、比較例1〜3の放射線硬化型樹脂組成物を調製した。なお、表1中の数値の単位は、質量部である。
【0112】
次に、得られた組成物の物性を下記に示す評価方法により測定した。
評価方法:(1)ガラス板上に、実施例1〜4、比較例1,2の放射線硬化型樹脂組成物の各々を200μmの膜厚に塗布し、硬化性フィルムを得た。硬化性フィルムに対して、300mJ/cm(波長350nm)の紫外線照射で表面タック性がなくなった場合は◎、400mJ/cm(波長350nm)の紫外線照射で表面タック性がなくなった場合は○、500mJ/cm(波長350nm)の紫外線照射で表面タック性がなくなった場合は△と判定した。
(2)上記(1)で得られたサンプル(硬化フィルム)の各々についてガラス転移温度を示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。
(3)上記(1)で得られたサンプル(硬化フィルム)の各々から、0.2g秤量し、温度25℃、湿度85%の恒温層に3週間放置し、それらの吸水率をカールフィッシャー(AQ−2100ST、平沼産業株式会社製)にて測定した。
【0113】
【表1】

【0114】
アロニックスM−113(東亜合成工業(株)製):下記化学式M−113参照
カヤラッドOPP−1(日本化薬(株)製):下記化学式OPP1参照
NVC(アルドリッチ社製):N−ビニルカプロラクタム
ダロキュアTPO(チバスペシャリティケミカルズ社製):下記化学式TPO参照
DST:ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート
【0115】
【化16】

【0116】
表1から明らかなように、比較例1〜3と比較して、実施例1,2の放射線硬化型樹脂組成物は硬化性が高く、また、得られた硬化フィルムの吸水率は低かった。さらに、実施例1,2の放射線硬化型樹脂組成物においては、一般式(I)で示される化合物の使用量が5重量部と少ないにも関わらず、硬化フィルムの高屈折率(ガラスファイバより漏れ出た光を、ガラスファイバヘ戻さないための1.48以上の屈折率)であるとともに、Tgが低く、柔軟性にも優れることが分かった。よって、実施例1,2の放射線硬化型樹脂組成物の硬化物は、光ファイバ素線における一次被覆層の材料として、また、光ファイバ心線における一次被覆層及び/又はバッファ層の材料として、非常に有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0117】
10 光ファイバ
11,110 一次被覆層
12,120 光ファイバ素線
20,200 二次被覆層
30,300 光ファイバ心線
150 バッファー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で示される化合物と
(B)ラジカル重合開始剤と
を含有することを特徴とする放射線硬化型樹脂組成物。
【化1】


[一般式(I)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Zは2つの炭素原子及び硫黄原子と共に環構造を表す。]
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【化2】


[一般式(II)中、Rは一般式(I)における定義と同義である。R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、mは0または1を表す。]
【請求項3】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【化3】


[一般式(III)中、Rは一般式(I)における定義と同義である。R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、nは0または1を表す。]
【請求項4】
(C)前記一般式(I)で示される化合物以外のラジカル重合性化合物を、更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の放射線硬化型樹脂組成物であることを特徴とする光ファイバ用被覆組成物。
【請求項6】
光ファイバと前記光ファイバの外周側に設けられた一次被覆層とを有する光ファイバ素線であって、
前記一次被覆層が、請求項5に記載の光ファイバ用被覆組成物から形成されたことを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバ素線と、
前記光ファイバ素線の外周側に設けられた二次被覆層と
を有する光ファイバ心線。
【請求項8】
光ファイバと前記光ファイバの外周側に設けられた一次被覆層とを有する光ファイバ素線と、
前記光ファイバ素線の外周側に設けられた二次被覆層と
を有する光ファイバ心線であって、
前記一次被覆層と前記二次被覆層との間にバッファー層が設けられるとともに、
前記一次被覆層及び前記バッファー層のいずれか少なくとも一方が、請求項5に記載の光ファイバ用被覆組成物から形成されたことを特徴とする光ファイバ心線。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−222438(P2010−222438A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69938(P2009−69938)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】