説明

放射線粘性破壊ポリプロピレン及びそれから造られる繊維

【課題】溶融紡糸中で30cm未満の粘着点を有し、オリゴマーを除去する為の後重合処理無しに1500ppm未満のオリゴマー含有量及び300dg/分より大きい溶融流量を有するプロピレンホモポリマーを得る。
【解決手段】溶融紡糸中で30cm未満の粘着点を有し、オリゴマーを除去する為の後重合処理無しに1500ppm未満のオリゴマー含有量及び300dg/分より大きい溶融流量を有するプロピレンホモポリマーが、多段式流動床反応器で、放射線粘性破壊(radiation visbreaking) によって調製される。このポリマーは、実質的に酸素の無い状態で照射され、次いで調節された酸素量の存在下で多段階処理に掛けられる。放射線粘性破壊方法は、他のプロピレンポリマー材料にも適用出来る。この放射線粘性破壊方法によって製造されるプロピレンポリマー材料は、例えば、押し出し被膜、フィルム製造及び射出成形に使用出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線粘性破壊(radiation visbroken) プロピレンポリマー材料及び、それらから造られる繊維、フィルム及びその他の製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンポリマーは、低分子量生成物を製造する為に、一般に、粘性破壊(ビスブレーキング(visbreaking) )と呼ばれている方法で連鎖切断する事が出来る。この方法は、分子量を低下させ、ポリマーの溶融流量を上昇させるばかりでなく、狭い分子量分布をもたらす。一般的に、高分子量は、良好な物性をもたらすが、加工性は悪い。反対に、低分子量は、物性は劣るが、加工性は良好である。狭い分子量分布を持つ低分子量ポリマーは、多くの加工製品で、良好な物性及び加工性を与える。従って、過去においては、最終用途として望まれるものよりも高い分子量までプロピレンを重合して、次いで、望ましい分子量まで粘性破壊する事が一般に行われていた。
【0003】
良く知られる化学反応の幾つかの異なるタイプは、プロピレンポリマーを粘性破壊するのに使用する事が出来る。1つの例として、熱的高温分解があり、これは、ポリマーを、例えば350℃以上の押出機中で、高温に曝す事によって行われる。その他の方法としては、強力な酸化剤に曝す方法がある。更に別の方法としては、イオン化放射線に曝す方法がある。例えば、米国特許第4,282,076号明細書は、ポリマーの第1の部分をイオン化放射線に曝して活性化し、その照射ポリマーを、非照射ポリマーの第2の部分に加え、その混合物に、酸化防止剤の安定化量を添加し、押出機中で剪断混合する事によって粘性破壊する事によってプロピレンポリマーの分子量を減少させる方法を開示する。
【0004】
その他の方法は、現場で殆ど専ら使用される方法であって、ペレット化前に、ポリマーに対して、前劣化剤(prodegradant)を添加する方法である。前劣化剤は、ポリマーと混合した時に、連鎖切断を促進する物質であり、次いで押し出し条件下で加熱される。現在、現場で使用されている前劣化剤は、主にアルキルヒドロパーオキシド又はジアルキルパーオキシドである。これらの物質は、高温で遊離基連鎖反応を開始し、ポリプロピレン分子を切断する。アルキルヒドロパーオキシド又はジアルキルパーオキシドの前劣化剤の使用は、多くの点で、ポリマーを粘性破壊するのに充分な方法ではあるが、改良の余地は大いに存在する。その改良点の一つは、前劣化剤の分解生成物の存在であり、これは、異物としてポリマー中に残留する。これらの分解生成物は、ポリマーのその後の処理及びポリマーから造られた製品の使用において有害となる。
【0005】
又、ポリマーの照射は、分子量の減少及び分子量分布を狭くするよりも、望ましい特性を作る為に使用する事が出来る。例えば、米国特許第4,916,198号明細書は、歪みを受けにくい伸び粘性(strain hardening elongational viscosity) を持たないポリプロピレンから、歪みを受けにくい伸び粘性を有するゲル無しポリプロピレンの製造方法を開示する。このポリマーは、ポリマーのゲル化を引き起こす事なしに、そして、照射されたポリマーを、長い鎖の分岐の顕著な形成の為に充分な時間維持して、線状プロピレンポリマー材料の実質的な連鎖切断が生起するまで、酸素を実質的に存在させずに照射される。照射ポリマーは、次いで、遊離基を不活性化する為に、酸素の非存在下で処理される。米国特許第5,047,446号明細書は、長い鎖の分岐と、放射線誘発遊離基形成を更に高める為、及び空気の存在下で長期間の貯蔵に安定なポリマーを与える為の遊離基含有照射高分子量プロピレンポリマー材料の処理方法を開示する。2段階流動床方法が使用され、その第1段階で、ラジカル再結合の為に中間温度を採用し、第2段階では、ラジカル不活性化の為に高温を採用する。
【0006】
α−オレフィンを重合した場合の生成物は、多くの異なる鎖長を有するα−オレフィン単位の分子ストランド又は鎖のブレンドである。鎖の大部分の長さは、何千個の炭素原子を表示するが、必然的に、短い長さの鎖も存在し、2つのα−オレフィン単位が低いものである。この短い鎖長分子は、オリゴマーと称される。本明細書においては、「オリゴマー」は、その有する炭素原子数が40未満のα−オレフィン単位の鎖と定義される。オリゴマーは、重合工程後に一般に行われる未反応モノマー除去工程でポリマーから分離出来る。又、オリゴマーは、例えば、粘性破壊及び溶融押し出しの様な後重合処理の結果として、ポリマー中で形成されもする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
殆どの市販α−オレフィンポリマーでは、ポリマー粒子中のオリゴマーの濃度は、問題となる程には高くない。実際、オリゴマーの存在は、ポリマーの溶融レオロジーに関しては有益な効果を有する。然しながら、特に、オリゴマー濃度が、ポリマーの1000〜10,000ppmの範囲にある、高い溶融流量(>10dg/分、ASTM D1238、条件L(230℃、2.16kg))を持つ実質的に結晶性プロピレンポリマーの場合には、ポリマー中のオリゴマーの実質的濃度は、ポリマーが溶融押し出しされる時、例えば、ポリマーが繊維に転換されている時に、ポリマーからの「煙」の発生の原因となる。然しながら、オリゴマーの全てが、溶融ポリマーがダイを出た後であって、固化する温度に冷却される前に溶融ポリマーから発生されるものではない。押し出されたポリマー中の残留オリゴマーは、押し出しポリマーから造られる繊維、包装フィルム及び容器といった製品で不快な味及び臭いとなる。
【0008】
特に興味ある分野の1つに、ポリプロピレン溶融ブロー繊維(meltblown fiber) 及びその繊維から造られる不織布材料の分野がある。この用途に向く市販樹脂は、現在、2段階で造られている。最初に、高い溶融流量(MFR)のポリプロピレン粒子、例えば、400MFRのポリプロピレン粒子が反応器で造られる。
適当な紡糸性には分子量分布(MWD)が広すぎるので、分子鎖を切断する為に、この粒子に過酸化物が添加され、MFRを増加させながらMWDを狭くする。
例えば、500ppmの過酸化物を、400MFRのポリマー粒子に添加して、MWDを4.0から3.2へ下げる事が出来る。この段階で、MFRは800に増加する。この技術には多くの制約がある。第1に、そして最も重要なのは、ポリマーのオリゴマー含有量が、製品欠陥を生じる程に高いことである。重量の軽くなっているオリゴマーは、高温での紡糸中にガス状生成物となり、煙となって、紡糸操作中に凝縮物となり、製品の欠陥同様に、健康問題の原因となる。幾つかの重合方法では、ポリマー粒子からオリゴマーを洗浄する為に洗浄塔が設置される。更に、ポリマー粒子が、液状過酸化物に対して限られた吸収性を持ち、過剰の過酸化物が、皮膚刺激の原因となる残留物として残るので、添加される過酸化物の量は、制限されなければならない。従って、この方法で製造されるポリマーは、MWDの範囲と同様に、最大の達成し得るMFRにおいて制限を有する。
低いオリゴマー含有量の、即ち、1500ppm未満で、オリゴマーを除去する為の後重合処理なしに、生成物を製造しながら、プロピレンポリマーのMFR及びMWDを広範囲で調節出来る方法の必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプロピレンホモポリマーは、溶融紡糸中の粘着点が30cm以下、オリゴマーを除去する為の後重合処理なしに、オリゴマー含有量が1500ppm未満、そして300dg/分より大きいMFRを有する。
照射プロピレンポリマー材料を処理する為の本発明方法は、(1)遊離基含有、照射プロピレンポリマー材料であって、(a)少なくとも90のアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマー、(b)プロピレンとエチレン又はブチレンとのランダムコポリマー、又はプロピレン、エチレン及びブチレンのランダムターポリマーであって、最大エチレン含有量、又はエチレンとブチレンの含有量が10重量%で、少なくとも80のアイソタクチック指数を有するランダムコポリマー又はランダムターポリマー、及び(c)(i)90より大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマー及び、プロピレンと、式CH2 =CHR(ここで、Rは、H又はC2 〜C6 の直鎖又は分岐アルキル基である)のα−オレフィンとの結晶性コポリマーで、少なくとも80のアイソタクチック指数を有し、α−オレフィンがコポリマーの10重量%未満で存在する結晶性コポリマーから成る群から選ばれる、99〜55重量%のポリマー材料、及び(ii)プロピレンと、式CH2 =CHR(ここで、Rは、H又はC2 〜C6 の直鎖又は分岐アルキル基である)のα−オレフィンから成る群から選ばれるオレフィン系材料とのエラストマー性オレフィンポリマーであって、α−オレフィンが、エラストマー性ポリマーの50〜70重量%で存在する、1〜45重量%のエラストマー性オレフィンポリマーから成る異相(heterophasic)プロピレンポリマー材料から成る群から選ばれる遊離基含有、照射プロピレンポリマー材料を、0.004容量%より多く、15容量%未満の調節された活性酸素の量に、40℃〜110℃の温度T1 で曝露し、(2)ポリマーを、工程(1)と同じ範囲の調節された活性酸素の量の存在下で、少なくとも110℃の温度T2 に加熱し、(3)ポリマーを、0.004容量%以下の活性酸素の存在下で、T2 に維持する、ことを含む。
【0010】
プロピレンポリマー材料の放射線粘性破壊の為の本発明方法を使用する事によって、ポリマーの溶融流量及び分子量分布を、プロピレンホモポリマーの場合の溶融ブロー及び紡糸結合不織布材料及びその他の加工製品の製造での特定の要件に順応する為に、広い制限内で変える事が出来る。本発明方法によって造られるプロピレンポリマー材料は、オリゴマーを除去する為の後重合処理なしに、現在市販のプロピレンポリマー品種より低いオリゴマー含有量を有し、実質的に臭いはなく、それによって脱臭の必要性が避けられる。又、過酸化物粘性破壊ポリマー(peroxide-visbroken polymer)の押し出し及びペレット化で造ることの出来るポリマーよりも高いMFR(一般的な現場装置での使用において、実用的限界は100〜200dg/分のMFRである)を持つポリマーを得る事が可能である。更に、ポリマー生成物の性質、例えば、溶融流量及び粘度は、現在市販の過酸化物粘性破壊ポリプロピレンより均一である。
【0011】
本発明の放射線粘性破壊方法で造られるプロピレンポリマー材料は、例えば、フィルム及び繊維製造、押し出し被膜及び射出成形に使用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の粘性破壊プロピレンポリマー材料を造る為の流動床システムの図式的フローシートである。
本発明の方法で出発物質として使用されるプロピレンポリマー材料は、(a)少なくとも90、好ましくは95〜98のアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマー、(b)プロピレンと、エチレン又はブチレンとのランダムコポリマー又はプロピレン、エチレン及びブチレンのランダムターポリマーであって、最大エチレン含有量、又はエチレン及びブチレンの含有量が10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%で、少なくとも80、好ましくは85以上のアイソタクチック指数を有するランダムコポリマー又はランダムターポリマー、及び(c)(i)90より大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマー及び、プロピレンと、式CH2 =CHR(ここで、Rは、H又はC2 〜C6 の直鎖又は分岐アルキル基である)のα−オレフィンとの結晶性コポリマーで、少なくとも80のアイソタクチック指数を有し、α−オレフィンが、コポリマーの10重量%未満で存在する結晶性コポリマーから成る群から選ばれる、99〜55重量%のポリマー材料、及び(ii)プロピレンと、式CH2 =CHR(ここで、Rは、H又はC2 〜C6 の直鎖又は分岐アルキル基である)のα−オレフィンから成る群から選ばれるオレフィン系材料とのエラストマー性オレフィンポリマーであって、α−オレフィンが、エラストマー性コポリマーの50〜70重量%、好ましくは40〜70重量%、最も好ましくは55〜70重量%で存在する、1〜45重量%、好ましくは8〜25重量%、最も好ましくは10〜20重量%のエラストマー性ポリマーから成る異相プロピレンポリマー材料、から成る群から選ばれる。
【0013】
出発物質としてプロピレンホモポリマーが使用される場合は、少なくとも90%のアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマーが使用出来る。ポリマーが、繊維製造用に使用される場合は、それは、フレーク又は高い多孔性球体、即ち、高い表面/容積比を持つ物理的形態である事が好ましい。通常の密度を持つペレット及び球体は、ポリマーが本発明方法で処理される場合、繊維用途には適さない。繊維以外の用途、例えば、成形、フィルム及び押し出し被膜の用途には、プロピレンポリマー材料は、如何なる物理的形態でもよく、例えば、微粉砕粒子、粒状又はペレットである事が出来る。
プロピレンポリマー材料は、酸素濃度が15容量%未満、好ましくは5容量%未満、最も好ましくは0.004容量%以下に設定、維持されている、実質的に酸素無しの環境で、高エネルギーイオン化放射線に曝露される。
イオン化放射線は、照射されているプロピレンポリマー材料の塊の所望の範囲まで侵入するのに十分なエネルギーを有さなければならない。イオン化放射線は如何なる種類のものでも良いが、最も実用的な種類は、電子及びγ線である。500〜4,000kvの加速能力を有する電子発生器から発生された電子が好ましい。約0.1〜約15メガラド(Mrad)、好ましくは約0.5〜約4.0メガラドのイオン化放射線の投与量で満足な結果が得られる。
【0014】
「ラド」は、前述の米国特許第4,916,198号明細書に開示された方法で使用する照射材料のグラム当たり100エルグのエネルギー吸収となるイオン化放射線の量と通常定義される。イオン化放射線からのエネルギー吸収は、放射線感応染料を含むポリマーフィルム片がエネルギー感知手段である公知の通常の放射線量計で測定される。従って、本明細書で使用される「ラド」は、粒子のベッド又は層、或いはフィルム又はシートの形態で照射されているプロピレンポリマー材料の表面に置かれた放射線量計のポリマーフィルムのグラム当たり100エルグのエネルギー相当の吸収となるイオン化放射線量を意味する。
【0015】
遊離基含有照射プロピレンポリマー材料は、次いで、一連の酸化処理工程に掛けられる。この処理を行うのに好適な方法は、照射ポリマーを、調節された酸素の量の存在下で、T1 で操作されている流動床アセンブリーに通し、そのポリマーを、第1工程と同じ範囲内の酸素量の存在下で、T2 で操作されている第2の流動床アセンブリーに通し、次いで、T2 でポリマーを維持しながら、実質的に酸素が存在しない状態、即ち、酸素濃度が0.004容量%以下で、第3の流動床アセンブリーに通す事である。現場での操作では、3つの別々の流動床を使用する連続方法が好ましい。然しながら、この方法は、又、各処理工程に必要な温度に加熱した流動ガス流を使用して、1つの流動床のバッチ形式で行う事が出来る。幾つかの技術、例えば溶融押し出し方法とは違い、流動床方法は、照射されたポリマーを溶融状態に変換し、次いで再固化し、所望の形状に細分化する必要がない。
【0016】
第1の処理工程は、照射ポリマーを、0.004容量%より多く、15容量%%未満、好ましくは8容量%未満、最も好ましくは3容量%未満の調節された活性酸素量の存在下で、40℃〜110℃、好ましくは約80℃の温度に加熱する事から成る。所望の温度への加熱は、出来るだけ迅速に、好ましくは10分未満で行われる。次いで、ポリマーは、選択された温度に、酸素とポリマー中の遊離基との反応速度を増す為に、一般的には約90分間保たれる。当業者が容易に決める事の出来る保持時間は、出発物質の性質、使用される活性酸素濃度、照射量及び温度に依存する。最大時間は流動床の物理的制約によって決められる。
第2の処理工程では、照射ポリマーは、第1処理工程で使用された同じ範囲の調節された酸素量の存在下で、ポリマーの軟化点(ホモポリマーの場合140℃)まで、少なくとも110℃の温度に加熱される。ポリマーは、次いで、選択された温度に、連鎖切断の速度の増加及び長い鎖分岐を形成する為の再結合を最少にする為に、一般的には約90分間保たれる。保持時間は、第1処理工程に関して検討された同じファクターによって決定される。
【0017】
第3の処理工程では、ポリマーは、周囲条件下でのその後の貯蔵中に安定な生成物を製造する為に、実質的に活性酸素の不存在下で、即ち0.004容量%以下、好ましくは更に少ない量の存在下で、約10〜約120分間、好ましくは約60分間、第2処理工程で選択された温度で保たれる。
第3処理工程後、ポリマーは、流動床から放出される前に、実質的に酸素無しの雰囲気中で、約10分間、約70℃の温度まで冷却される。
「活性酸素」という表現は、照射プロピレンポリマー材料と反応する形態に在る酸素を意味する。それは、空気中で普通に見出される酸素形態の分子状酸素を含む。本発明方法の活性酸素含有要件は、真空の使用により、又は不活性ガス、例えば、窒素ガスで環境中の空気の一部又は全部を置換する事によって達成出来る。
流動床ガス流の酸素水準の調節は、ブロアーの吸入側での空気の添加で達成される。空気又は酸素は、ポリマー中での過酸化物の形成により消費される酸素を補償する為に、一定に添加されなければならない。流動媒体は、例えば、窒素又は、存在する遊離基に関して不活性なガス、例えば、アルゴン、クリプトン及びヘリウムの様なその他のガスである事が出来る。
【0018】
図1に示すフローシートでは、コンベアーベルトフイードホッパー1は、通常の設計の蓋付き構造である。その内側は、実質的に活性酸素無しの雰囲気、例えば、窒素雰囲気を含む様に操作される。それは、底部固定排出出口を有し、ここを通して、ポリマー粒子が移動して、エンドレスコンベヤーベルト2の先端水平走行上に層を形成する。
水平コンベヤーベルト2は、放射線室3に含まれ、通常の操作条件下で連続的に移動する。放射線室は、コンベヤーベルトを完全に封入し、その内部で、実質的に活性酸素の無い雰囲気を確立し、維持する為に組み立てられ、操作される。
放射線室3と組合せて、通常の設計及び操作の電子ビーム発生器4がある。通常の操作条件下で、コンベヤーベルト2上のポリマー粒子の層に直接高エネルギー電子のビームを発生する。コンベヤーベルトの排出末端の下には、反対の移動通路に向かうコンベヤーベルト2から落ちる照射プロピレンポリマー材料を受ける為に配置された固定コレクター5が存在する。固定コレクター5中の照射粒子はロータリーバルブ又はスターホイール6で除去され、移動線7に送られる。移動線7は、ガス−固体分離機8に連結する。この装置は通常の構造であり、普通は、サイクロン型分離機である。分離されたガスは、例えば、ガス排出導管10で除去され、一方分離された固体は、例えば、ロータリーバルブ又はスターホイール9で、排出線11に排出される。排出線11は流動床装置12に接続する。
【0019】
この流動床は、通常の設計のもので、密閉され、その内部で、調節された活性酸素の量を含む雰囲気を確立し、維持する為に構築され、運転される。調節された活性酸素の量を含むガス流は、ブロアー13、ダンパー14及び熱交換器17を含む閉鎖循環アセンブリーを経て、導管16を通過して、流動床12中に導入される。バタフライダンパー14は、流動床を通過する所望のガス速度を調節し、維持する為に使用される。循環ガスは熱交換器17を通過し、ここで所望の温度に加熱される。オイルヒーター20及び21、熱交換器19、及び温度調節ループ18から成るオイル循環系は、ガス流中の所望の温度を維持する為に使用される。2つの別々のオイルヒーター20及び21は、ヒーターを所望温度に設定し、適当な温度のオイルを熱交換器17に流す事によって、ポリマー処理中に温度を変更するのに必要とされる時間を最少にする為に使用される。熱交換器19は、通常の設計のオイル/水熱交換器であり、加熱オイル系に対して付加的温度調節を用意する為に使用される。加熱ガスは、流動床空間の下側に入る導管16を通過し、ディストリビューター板を通過する。ガスの速度はポリマー粒子床での流動作用を起こさせる様に維持される。流動床は、バッチ形式で運転される。
この様に、滞留時間は、、プロピレンポリマー材料が流動床で維持される時間の量で調節される。プロピレンポリマー材料は、手動調節バルブを通して装置を出て、集積コンテナーに入る排出線15を通過する。
【0020】
出発物質のMFRを知る事によって、照射工程中の投与量、第1及び第2処理工程中での酸素水準、温度及び時間を、粘性破壊生成物における所望のMFRを得るのに合わせる事が出来る。
本発明の放射線粘性破壊プロピレンホモポリマーは、溶融紡糸中での粘着点が30cm以下を有し、オリゴマーを除去する為の後重合処理無しに1500ppm未満のオリゴマー含有量と、300dg/分より大きい溶融流量を有する事を特徴とする。
上述の方法で調製された放射線粘性破壊プロピレンホモポリマーは、溶融ブローに転換される紡糸繊維及び紡糸結合不織布材料に使用出来、又特定の最終用途の要件に合致する様に仕立て上げられたMFR及びMWDを有するその他の用途にも使用出来る。
溶融ブロー及び紡糸結合による不織布ウエブの形成技術は、当該技術分野においては公知である。溶融ブロー繊維は非常に細く、一般に、約3μmの直径を有し、細さの程度は、最も細い従来の紡糸結合繊維よりも細い。ダイ又はノズルのオリフィスを出る溶融ポリマーフィラメントを細くするために、特殊なダイは、加熱した、加圧流体、通常は空気を使用する。弱い、不連続な繊維は、ランダムにもつれたウエブとして形成スクリーン上に置かれる。紡糸結合材料の調製で、ポリマーは、個々別々のフィラメントを形成する為に紡糸口金を通して押し出される。その後、フィラメントは、ポリマーフィラメントを分子配向させる為のブレーキング無しに、空気作用によって延伸され、強い保持力を達成する。連続フィラメントは、次いで、ウエブ形成の為に、実質的にランダムな方法でキャリヤーベルト上に置かれる。
【0021】
本発明方法で調製されるプロピレンポリマー材料は、例えば、押し出し被膜、フィルム製造、特にキャストフィルム、繊維の溶融紡糸及び射出成形、特に肉厚の薄い容器の成形に使用出来る。又、プロピレンポリマー材料は、溶融加工への使用及び有用な製品を造る為の操作の為、5%〜95%の、通常固体の、主にアイソタクチックな、半結晶線状プロピレンポリマー材料とブレンド出来る。
ポリマーの粘着点は、次の様にして決定される。ポリマー材料では、応力誘発結晶化は、溶融紡糸中の固化の主要な形式であり、溶融紡糸中に、高度の配向が達成される。結晶化速度は、処理されている材料の分子構造の関数である。従って、紡糸中の固化点の測定は、異なるポリマーを区別するのに使用出来る。固化点は、紡糸口金面から70cm離れた点から、移動するスレッドライン(threadline)に沿って金属棒を滑らす事によって測定される。棒は上方に移動して、ポリマーがまだ溶融している点に達する。この点で、スレッドラインは棒に粘着し、破壊する。「粘着点」は、紡糸口金面から、スレッドラインが棒に粘着して破壊する点までの距離と定義される。粘着点測定での低い値が望ましい。試験の為の繊維の溶融紡糸は、0.5g/孔/分の処理量速度で、強制的な空気急冷無しに、190℃の溶融温度並びに1000m/分の紡糸速度で行われる。ダイの孔の直径は0.5mmで、ダイの長さ/直径比は4である。
【0022】
室温でのキシレン溶解割合は、20分間攪拌しながら135℃に加熱した攪拌機付きの容器で、2.5gのポリマーを250mlのキシレンに溶解する事によって決められる。溶液は攪拌を続けながら25℃まで冷却され、次いで、固体が沈降する事ができる様に、攪拌無しで30分間静置される。固体は濾紙で濾過され、残った溶液は、窒素気流中で処理する事によって蒸発され、固体残渣は、一定の重量に達するまで、80℃で、真空乾燥される。
実施例では、次の方法が、放射線粘性破壊ポリマーの物性並びに加工材料又はそれらのポリマーで造った製品の物性を決定する為に使用された:溶融流量(MFR)−ASTM−D1238、条件L;台形引き裂き強度−ASTM−D1117−80;空気浸透性−ASTM−D1117−80及びハイドロヘッド(hydrohead) −AATCC試験法127−1989。
【0023】
多分散性指数(PI)は、ポリマー中の分子量分布の目安として使用された。
低弾性率値、即ち500Paでの弾性率分離(modulus separation)は、0.1ラド/秒〜100ラド/秒に増加する振動周波数で操作する平行板レオメーターのモデルRMS−800(レオメトリック社製(米国))を使用して、200℃の温度で決定した。弾性率分離値から、PI値は次の式を使用して導かれる:
PI=54.6(弾性率分離)-1.76
(ここで、弾性率分離は、
弾性率分離 =(G′=500Paにおける周波数)/(G″=50 0Paにおける周波数)
(ここで、G′は、貯蔵弾性率であり、G″は、試験の為に選ばれた弾性率値である)と定義される)。特に指示されない限り、本明細書での全ての部及び%は、重量である。
【実施例】
【0024】
実施例1
この実施例は、略同じ溶融流量(MFR)を持つポリマー生成物を得る為の加工条件の変化のさせ方を例示する。
20.3の通常のMFRを有するプロピレンホモポリマーフレーク(Montell USA Inc.製) を照射し、表1に示す調節された酸素量に曝露した。
コンベヤーベルト上のポリマー床の深さは、コンベヤーベルト上に放射線量計を置き、コンベヤーベルトをフイードホッパー及びベッド水準測定装置の下に進めることによって、入口及び出口床の深さに等しくなる様に調整された。コンベヤーベルトが停止し、第2の放射線量計が、ポリマー床の上部に置かれた。ファン・デ・グラフ(Van deGraaff)加速器が作動され、2.0MeV加速電圧及び75μAビーム電流の所望の操作条件に調整された。コンベヤーベルトは、ポリマー床及び電子ビームを通す放射線量計を移動する為に、15インチ/分で運転された。照射後、ポリマー床の上部及び下部の上の放射線量計が回収され、正確な床深さ及び放出された全投与量を決定するために測定された。この試験中に使用されたポリマーはこの系から除去された。
【0025】
コンベヤーベルトフィードホッパー及びコンベヤーベルトキャビネットは、ガス漏れのない構内を形成するために密閉され、無酸素雰囲気を創り出す為に、窒素パージが作動した。同時に、空気作動コンベヤーベルト系及び流動床系が窒素でパージされた。適当な操作条件に対して加熱オイル系が設けられ、一方で、窒素パージが進行した。第1のオイルヒーターは、ガス流温度を80℃に、そして第2のオイルヒーターは140℃に調節する為に設けられた。
流動床系の酸素濃度が7%未満まで減少した段階で、流動床ブロアーをスタートさせた。酸素濃度が、窒素パージで所望の点まで減少した段階で、空気を窒素ガス流と混合して適当な酸素濃度を維持した。窒素及び空気双方の流速は、手動の流量計で設定された。
45分後、コンベヤーベルトフィードホッパー、ポリマーコンベヤーベルト構内、及び空気作動コンベヤー系での酸素濃度は、コンベヤーベルト構内及び空気作動コンベヤー系に取付けられた微量酸素分析器で測定された通り、40ppm酸素未満であった。この間に、加熱オイル系及び流動床系は、平衡の温度及び酸素濃度に達した。
試料を、ファン・デ・グラフ加速器を使用して照射した。コンベヤーベルトは、15インチ/分で、15分間運転され、照射ポリマーは、空気作動コンベヤーベルト系で流動床に送られた。15分後に、コンベヤーベルト及びファン・デ・グラフ加速器を止めた。
【0026】
流動床でのガス流は、ポリマーのパーコレーション作用を観察しながら、ガス流のバルブを使用して、手動で調整した。ポリマーは、第1段階で、表1に示される酸素濃度(24,500ppm=2.4容量%)で、90分間、80℃の温度で、流動ガス流で処理した。
第1処理段階の最後で、第1加熱オイルヒーターは流動床ガス流熱交換器から分離され、オイルヒーターを停止した。同時に、第2のオイルヒーターを作動させて、流動ガス流の温度を140℃まで上昇させた。流動床ポリマー温度がガス流温度に達するまでに凡そ30分の遅れがあった。この第2処理段階中、酸素濃度は、遅れ時間後60分間、前の水準に維持された。第2処理段階に続いて、空気添加を終了し、窒素流速を、最大値まで増加した。5分の遅れの後、流動ガス流酸素濃度は、60分間、140℃の温度に維持しながら、40ppm未満まで減少した。
【0027】
第3処理段階の最後で、冷却されてしまっていた第1オイルヒーターを作動させ、水/オイル熱交換器の水流を最大まで増加した。冷却サイクル中、流動床のポリマー温度は80℃未満まで減少した。冷却サイクルは45分持続し、その後、ポリマーを流動床から排出し、ステンレススティール容器に集めた。
ポリマーは室温に冷却された後、ポリマーのメルトフローを、ASTM1238-D−条件Lの条件下で測定した。
表1のデータは、放射線投与量を変化させた場合、照射ポリマーが曝露される酸素濃度が、又ポリマー生成物において、同じMFRを得る為に変えられねばならない事を示す。
【0028】
表1
投与量 酸素 ビーム電流 MFR PI Mw
(Mrad) (ppm) (μamps) (dg/分) (x103)

0.5 24500 75 510 3.60 26.2
1 21000 75 490 3.49 27.1
2 16000 75 400 3.44 29.9
4 12500 250 500 3.90 27.7
表1(続き)
投与量 第1段階 第2段階 第3段階
(Mrad) 時間 温度 時間 温度 時間 温度
(分)(℃) (分)(℃) (分)(℃)
(酸素無し)
0.5 90 80 60 140 60 140
1 90 80 60 140 60 140
2 90 80 60 140 60 140
4 90 80 60 140 60 140
【0029】
実施例2
この実施例は、照射ポリマーが曝露される酸素濃度を一定に保持し、放射線投与量を変化させた場合の粘性破壊ポリマーの性質についての効果を例示する。出発物質として使用されるプロピレンホモポリマーは、実施例1と同じである。処理条件及び性質は、表2に示される。


【0030】
表2
投与量 酸素 ビーム電流 MFR PI Mw
(Mrad) (ppm) (μamps) (dg/分) (x103)
0.5 23000 75 430 N/A N/A
1 23000 75 680 N/A N/A
2 23000 75 1100 N/A N/A
4 23000 250 1400 N/A N/A
表2(続き)
投与量 第1段階 第2段階 第3段階
(Mrad) 時間 温度 時間 温度 時間 温度
(分)(℃) (分)(℃) (分)(℃)
(酸素無し)
0.5 90 80 60 140 60 140
1 90 80 60 140 60 140
2 90 80 60 140 60 140
4 90 80 60 140 60 140
【0031】
実施例3
この実施例は、照射中の放射線投与量及び照射ポリマーが曝露される酸素濃度及び3つの処理段階のそれぞれでの処理時間を一定に保持し、第1段階での処理温度を変化させた場合の粘性破壊ポリマーの性質についての効果を例示する。出発物質として使用されるプロピレンホモポリマーは、実施例1と同じである。処理条件及び性質は、表3に示される。
【0032】
表3
実施例 投与量 酸素 ビーム電流 MFR PI Mw
(Mrad) (ppm) (μamps) (dg/分) (x103)

3 1 23000 75 770 N/A N/A
3 1 23000 75 430 N/A N/A
3 1 23000 75 300 N/A N/A
4 2 20000 75 525
表3(続き)
実施例 第1段階 第2段階 第3段階
時間 温度 時間 温度 時間 温度
(分)(℃) (分)(℃) (分)(℃)
(酸素無し)
3 90 60 60 140 60 140
3 90 100 60 140 60 140
3 90 120 60 140 60 140
4 90 80 60 140 60 140

【0033】
実施例4
実施例1に開示のプロピレンホモポリマーを、表3で示した条件下で、2メガラドの投与量で照射し、20,000ppmの酸素に曝露した。出発物質中のオリゴマー含有量は1900ppmで、粘性破壊ポリマーのオリゴマー含有量は727ppmであった。
比較例
この比較例は、第3処理段階、即ち、酸素濃度が、T2 で0.004 容量%以下に維持されている第3段階が、プロピレンホモポリマーの照射後に除かれる場合の、経過時間のMFRに及ぼす効果を例示する。
ポリマーA及びBの両方のプロピレンポリマーを照射し、実施例1に開示の様に酸素に曝露した。ポリマーAは(Montell USA Inc.から市販されている) 、周囲温度で3.5 のキシレン溶解(wt.%)、9.0のMFR、及び0.28の細孔容積留分であって、細孔の90%より多くが1μより大きい直径を有し、気孔率が0.45cc/gの留分を有する、高多孔性プロピレンホモポリマーであり、ポリマーBは、23.8のMFRを有し、Montell USA Inc.から市販されている。
ポリマーのMFRは、MFRが経過時間にわたって安定であるかどうかを決定する為に、規則的な間隔で測定された。
【0034】
表4
ポリマー 投与量 酸素 ビーム電流 MFR
タイプ (Mrad) (ppm) (μamps) (dg/分)

A 0.5 10000 75 830
B 0.5 23000 75 820

照射以後 1 3 4 7
の時間
(週)
A MFR 1100 1400 1700 2360
(dg/分)
B MFR 810 830 920 1000
(dg/分)
表4(続き)
ポリマー 第1段階 第2段階
タイプ 時間 温度 時間 温度
(分)(℃) (分)(℃)
A 90 80 60 140
B 90 80 60 140

照射以後 11 12 14 15 17
の時間
(週)

A MFR 2500
(dg/分)
B MFR 1270 1260 1700 2100 2700
(dg/分)
【0035】
実施例6
この実施例は、プロピレン/エチレンランダムコポリマーが、実施例1に開示の方法によって照射された場合のポリマーの性質についての効果を示す。処理条件は表5に示される。ポリマーCは、エチレン含有量3.2%のプロピレン−エチレンランダムコポリマーであり、1.9dg/分の普通の溶融流量を有する。
ポリマーDは、エチレン含有量3.2%のプロピレン−エチレンランダムコポリマーであり、13.3の普通のMFRを有する。ポリマーEは、エチレン含有量3.2%のプロピレン−エチレンランダムコポリマーであり、5.5の普通のMFRを有する。全てのランダムコポリマーは、Montell USA Inc.から市販されている。ポリマーの性質は、表5に示される。
ポリマーEは、照射前に469ppmのオリゴマー含有量を有し、照射後は214ppmのオリゴマー含有量を有した。
【0036】
表5
ポリマー 投与量 酸素 ビーム電流 MFR PI Mw
タイプ (Mrad) (ppm) (μamps) (dg/分) (x103)

C 0.5 15000 75 31 2.43
C 1.0 12000 75 36 2.54
C 2.0 8000 75 30 2.62
D 0.5 7000 75 34 2.95 214
E 0.5 10000 75 37 2.73 207
表5(続き)
ポリマー 第1段階 第2段階 第3段階
タイプ 時間 温度 時間 温度 時間 温度
(分)(℃) (分)(℃) (分)(℃)
(酸素無し)
C 90 80 60 120 60 120
C 90 80 60 120 60 120
C 90 80 60 120 60 120
D 90 80 60 120 60 120
E 90 80 60 120 60 120
【0037】
実施例7
この実施例は、異相プロピレンポリマー材料が、実施例1に開示の方法によって照射された場合のポリマーの性質についての効果を示す。異相組成物は3.6のMFRを有し、全エチレン含有量は8.9%、プロピレンホモポリマーを85%、及び60%のエチレンユニットを含むエチレン/プロピレンゴムを15%有する。異相材料は、Montell USA Inc.から市販されている。処理条件及びポリマーの性質は、表6に示される。
【0038】
表6
投与量 酸素 ビーム電流 MFR PI
(Mrad) (ppm) (μamps) (dg/分)
0.5 3000 75 5.2 2.46
0.5 10000 75 7.6 2.64
1 3000 75 5.4 2.55
1 10000 75 12.3 2.63
1 30000 75 28.9 2.48
2 3000 250 8.6 2.65
2 10000 250 14.2 2.71
2 30000 250 26.4 2.51








表6(続き)
第1段階 第2段階 第3段階
時間 温度 時間 温度 時間 温度
(分)(℃) (分)(℃) (分)(℃)
(酸素無し)
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
90 80 60 120 60 120
【0039】
実施例8
放射線粘性破壊ポリマーを、実施例1に開示の方法で、同じプロピレンホモポリマーフレークを0.5メガラドの投与量に掛け、この照射ポリマーを、第1段階及び第2段階で24,000ppmに曝露する事によって製造した。放射線照射前は、プロピレンホモポリマーは20dg/分の通常のMFRを有し、1200ppmのオリゴマー含有量を有した。この照射ポリマーのMFR、多分散性指数(PI)及びオリゴマー含有量を分析した。表中の「過酸化物粘性破壊ポリマー」は、500ppmのルパソール101過酸化物(Lupersol 101 peroxide、Atochem 社製) 、1000ppmのイルガノックス1076酸化防止剤(チバガイギー社製)及び300ppmのステアリン酸カルシウムを含む、400dg/分の通常のMFRを有するプロピレンホモポリマーから造られた。このポリマーは、Montell USA Inc.から市販されている。過酸化物との反応は、MFR決定の為の加熱中に生起した。分析結果は表7に示される。
【0040】
表7
ポリマー MFR(dg/分) PI オリゴマー含有量 (ppm)
タイプ
過酸化物
粘性破壊
ポリマー 800 3.2 8000
放射線
粘性破壊
ポリマー 500 2.5 950
本発明方法で造られる放射線粘性破壊ポリマーは、狭いMWDを有し、過酸化物粘性破壊ポリマーより少ないオリゴマー含有量を有する。
【0041】
実施例9
実施例8に開示のポリマーを、小さなパイロットメルトブロー系列を使用して、溶融ブロー繊維とした。使用した紡糸条件は次の通りである。

処理速度 0.4g/孔/分
溶融温度 232℃(450°F)
空気温度 232 ℃及び260 ℃(450及び500°F)
基本重量 34g/m2
製造された繊維について、台形引き裂き強度、曲げ長さ、ハイドロヘッド(hydrohead) 及び空気浸透性試験を行った。結果を表8に示す。
【0042】
表8
空気温度 台形引き 曲げ長さ ハイドロヘッド 空気
裂き強度 (cm/g) (cm 水) 浸透率
(℃) MD CD (%)
(°F) (g/gsm)
過酸化物 232 15.5 16.9 32 40 24
粘性破壊 (450)
ポリマー 260 9.1 14.3 25 48 37
(500)
放射線 232 18.7 21.3 26 40 34
粘性破壊 (450)
ポリマー 260 17.2 22.8 36 44 41
(500)
本発明方法により調製された放射線粘性破壊ポリマーは、良好な台形引き裂き強度を持つ溶融ブロー繊維を製造するが、曲げ長さ(繊維の柔軟性の測定)、空気浸透性及びハイドロヘッドは、過酸化物粘性破壊プロピレンホモポリマー繊維に類似するものであった。
【0043】
実施例10
精密溶融紡糸延伸(precision melt spin draw)(PMSD) 用に設計された小さな実験室繊維系列を、溶融中のポリマーサンプルの固化点、即ちポリマーの「粘着点」を決定するのに使用した。紡糸条件は次の通りである。
処理速度 0.5g/孔/分
溶融温度 190℃
紡糸速度 1000m/分
急冷 静止空気
過酸化物粘性破壊繊維が紡糸されるポリマーは、実施例8の過酸化物粘性破壊ポリマーを製造するのに使用されたポリマーと同じである。過酸化物との反応は、ポリマーが紡糸の為に加熱される時に生起する。放射線粘性破壊ポリマーは、実施例1に開示の通りに調製された。放射線投与量及び、照射ポリマーが照射後に曝露される酸素濃度を、粘着測定結果と共に、表9に示す。
【0044】
表9
ポリマータイプ 粘着点(cm)
過酸化物粘性破壊 45
0.5メガラド、28,500ppmの
酸素濃度での放射線粘性破壊 30
1メガラド、21,500ppmの
酸素濃度での放射線粘性破壊 25
2メガラド、15,500ppmの
酸素濃度での放射線粘性破壊 21
3つの放射線粘性破壊ポリマーサンプルの全てが、過酸化物粘性破壊ポリマーより短い粘着点を有する。粘着点は、投与量水準が増加するにつれて着実に減少する。この事は、結晶化速度が照射によって増加し、その効果は高い投与量程大きい事を示す。
【0045】
実施例11
この実施例では、プラーク及び試験棒を、放射線粘性破壊ポリマー及び過酸化物粘性破壊ポリマーから成形し、物性及びオリゴマー含有量を測定し、比較した。
両方の場合の出発物質は、Montell USA Inc.から市販されており、2dg/分のMFRを有する、3.2%のエチレンニットを含むプロピレンとエチレンのランダムコポリマーである。ポリマーは、実施例1に開示の様に、0.5メガラドの放射線投与量を使用して照射し、照射ポリマーを、表5に示される条件下で、15,000ppm(1.5容量%)の酸素に曝露した。
このポリマーを、0.12部のB−215フェノール系/ホスフィット酸化防止剤(チバガイギー社製)、0.05部のステアリン酸カルシウム及び0.20部のミラッド3988(Millad 3988) 清澄剤(clarifying agent)(Milliken 社製) と混合した。又、過酸化物粘性破壊されるポリマーは、35dg/分のメルトフローを造る為の充分なルパソール101(Atochem社製) 、及び0.06部のアトマー122(Atmer 122) 帯電防止剤(ICI社製) を含む。全ての部は、ポリマー100 部当たりの重量である。ポリマー組成物は、通常の一軸スクリュー押出機で押し出し、ペレット化した。ペレット化組成物を、次いで、溶融温度182 ℃(360°F)、金型温度60℃(140°F)で、200 トンHPM 成形機で、プラーク及び試験棒に成形した。物性は、次の方法で測定した: 破壊弾性率−ASTM−D 790;ノッチ付きアイゾット衝撃−ASTM−D256;曇り度−ASTM−D 1003−92。オリゴマーは、ガスクロマトグラフィーで揮発分として測定した。
着色は、ASTM−D 1925−70,セクションIにより、対照として空気を使用して最初に標準化された全透過率形式の比色計を使用して測定した。
黄色度は570〜580nmの主波長範囲において、白色度からの偏りと定義される。黄色度指数(YI)は、酸化マグネシウム標準対照に関する黄色度の大きさの測定である。数は少ない程、着色度は良好である。
測定結果を表10に示す。
【0046】
表10
放射線粘性破壊 過酸化物粘性破壊
ポリマー ポリマー
MFR(dg/分) 40 35
PI 2.47 2.22
Mw( x 103) 197 217
破断弾性率(kg/cm2) 10.1 x 103 9.9 x 103
(kpsi) 144.5 142.0
ノッチ付きアイゾット
衝撃(kg ・cm/cm) 10.58 8.1
(ft.lb/in) 1.96 1.5
曇り度(1mm(40mil) 当たり) 9.2 9
YI(1mm(40mil) 当たり) 3.9 3.7
揮発分(ppm) 38.2 527
このデータは、放射線粘性破壊ポリマーが、過酸化物粘性破壊生成物と同等又はそれ以上の機械的性質を有し、しかも放射線粘性破壊生成物が、過酸化物粘性破壊ポリマーより低い揮発分含有量を有する事を示す。低揮発分故に、照射樹脂は低い味覚及び臭気性を有する。
【0047】
実施例12
この実施例は、押し出し被膜での本発明の放射線粘性破壊ポリマーの使用を例示する。
2dg/分のMFRを有するプロピレンポリマー(Montell USA Inc.製) を、実施例1に開示の方法で照射した。放射線投与量は1.0メガラドであり、照射ポリマーは、第1及び第2段階で12,000ppm(1.2容量%)の酸素に曝露された。ポリマーは第1段階で、80℃の温度で90分間維持され、第2段階で、140℃で60分間維持された。第3段階で、ポリマーは、40ppm未満(0.004容量%)の酸素の存在下で、140℃で60分間保たれた。粘性破壊生成物は、凡そ35dg/分のMFRを有した。
フェノール系酸化防止剤(0.1部)及びステアリン酸カルシウム(0.07部)を、照射ポリマーの100部に添加し、この混合物を、通常の一軸スクリュー押出機で、230℃で押し出し、ペレット化した。全ての部は重量である。ペレット化組成物は、次いで、バレル長さ:直径比が26:1で、5つのコンプレッションフライト及び13のメータリングフライトを持つメータリング形スクリューの6.35cmデービス−スタンダード押出機(Davis-Standard extruder) で、中央供給、キーホール型40.6cm巾イーガンダイ(Egan die)中に押し出した。組成物は、チルロールとニップロールの間にニップを入れる基体の丁度前に移動する基体上に押し出された。以下の条件を、押し出し被膜生成物の形成に適用した。
バレル温度 204 ℃、260 ℃、288 ℃及び304 ℃
アダプター温度 321 ℃
ダイ温度 321 ℃
空気ギャップ 8.9cm
チルロール温度 16℃
ニップ圧力 13kg/cm2
基体 13.6kg/連(61cmx91.4cmのシート500枚)
引取系の線速度
範囲 30m/分〜305m/ 分
押し出し速度 36.3kg/時間
【0048】
実施例13
この実施例は、ブローフィルムでの本発明の放射線粘性破壊ポリマーの使用を例示する。
1.9dg/分の通常のMFRを有する、3.2%のエチレンを含むプロピレンとエチレンのランダムコポリマー(Montell USA Inc.製) を、実施例1に開示の方法で照射した。放射線投与量は0.5メガラドであり、照射ポリマーは、第1及び第2段階で3,000ppm(0.3容量%)の酸素に曝露された。ポリマーは第1段階で、80℃の温度で90分間維持され、第2段階で、120℃で60分間維持された。第3段階で、ポリマーは、40ppm未満の酸素の存在下で、120℃の温度で60分間維持された。粘性破壊生成物は、9dg/分のMFRを有した。
フェノール系酸化防止剤(0.1部)及びステアリン酸カルシウム(0.07部)を、230℃の通常の一軸スクリュー押出機で、照射ポマーの100部に添加し、この混合物をペレット化した。全ての部は重量である。ペレット化組成物は、次いで、バレル長さ:直径比が26:1の50mm押出機及び、通常の水リングを持たないが、空気リングに接続した大容量のブロアーを持つ、100mm直径環状ダイから成る、変形チー・チャン水冷ブローフィルム系列(modified Chi Chang water-quenched blown film line) で押し出した。空気リングは、45°のリップ角を持つ単一リップ空気リングであり、ダイの下4.25cmに配置されている。空気リングのギャップは調整出来るが、9mmに設定した。タワー高さは1.9メートルである。磨きニップロールは変速モーターで運転され、調整されたフィルムの線引取速度を許す。以下の条件をブローフィルム生成物の形成に適用した。
加工温度 200℃
押し出し速度 14.4kg/時間
引落比、MD/CD 6.7/2.7
ここに開示の本発明の特徴、利点及び実施態様は、前述の開示を一読すれは、当業者には容易に明らかとなるであろう。この事に関し、本発明の特定の実施態様は、極めて詳細に開示されているが、これらの実施態様の変形及び変更は、開示され、クレームされる本発明の精神と範囲から離れる事なしに有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の粘性破壊プロピレンポリマー材料を造る為の流動床システムの図式的フローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸中で30cm以下の粘着点を有し、オリゴマーを除去する為の後重合処理無しに、1500ppm未満のオリゴマー含有量を有し且つ300dg/分より大きな溶融流量を有することを特徴とするプロピレンホモポリマー。
【請求項2】
請求項1のプロピレンホモポリマーを含む繊維。
【請求項3】
請求項2の繊維を含む溶融ブロー不織布材料。
【請求項4】
請求項2の繊維を含む紡糸結合不織布材料。
【請求項5】
照射プロピレンポリマー材料の処理方法であって、
(1)遊離基含有照射プロピレンポリマー材料であって、(a)少なくとも90のアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマー、(b)プロピレンとエチレン又はブチレンとのランダムコポリマー、又はプロピレン、エチレン及びブチレンのランダムターポリマーであって、最大エチレン含有量、又はエチレンとブチレンの含有量が10重量%で、少なくとも80のアイソタクチック指数を有するランダムコポリマー又はランダムターポリマー、及び(c)(i)90より大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマー及び、プロピレンと、式CH2 =CHR(ここで、Rは、H又はC2 〜C6 の直鎖又は分岐アルキル基である)のα−オレフィンとの結晶性コポリマーで、少なくとも80のアイソタクチック指数を有し、α−オレフィンがコポリマーの10重量%未満で存在する結晶性コポリマーから成る群から選ばれる、99〜55重量%のポリマー材料、及び(ii)プロピレンと、式CH2 =CHR(ここで、Rは、H又はC2 〜C6 の直鎖又は分岐アルキル基である)のα−オレフィンから成る群から選ばれるオレフィン系材料とのエラストマー性オレフィンポリマーであって、α−オレフィンがエラストマー性ポリマーの50〜70重量%で存在する、1〜45重量%のエラストマー性オレフィンポリマーから成る異相プロピレンポリマー材料、から成る群から選ばれる遊離基含有照射プロピレンポリマー材料を、0.004容量%より多く、15容量%未満の調節された活性酸素の量に、40℃〜110℃の温度T1 で曝露し、
(2)該ポリマーを、工程(1)と同じ範囲の調節された活性酸素の量の存在下で、少なくとも110℃の温度T2 に加熱し、
(3)該ポリマーを、0.004容量%以下の活性酸素の存在下で、T2 に維持する、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5の方法で造られるプロピレンポリマー材料。
【請求項7】
請求項6のプロピレンポリマー材料から成るフィルム形成組成物。
【請求項8】
請求項6のプロピレンポリマー材料から成る押し出し被膜組成物。
【請求項9】
請求項6のプロピレンポリマー材料から成る繊維形成組成物。
【請求項10】
請求項6のプロピレンポリマー材料から成る射出成形組成物。
【請求項11】
請求項6のプロピレンポリマー材料を含むフィルム。
【請求項12】
請求項6のプロピレンポリマー材料を含む繊維。
【請求項13】
請求項12の繊維を含む不織布材料。
【請求項14】
請求項6のプロピレンポリマー材料を含む射出成形品。
【請求項15】
請求項6のプロピレンポリマー材料と、5重量%〜95重量%の通常固体で、主としてアイソタクチックの、半結晶性の線状プロピレンポリマー材料とのブレンド。

【図1】
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【公開番号】特開2007−126675(P2007−126675A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341596(P2006−341596)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【分割の表示】特願平9−83670の分割
【原出願日】平成9年4月2日(1997.4.2)
【出願人】(590004903)バーゼル・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】