説明

放電反応装置

【課題】気体に含まれる物質から活性種を生成する放電反応装置であって、安定した放電を行なうことができる放電反応装置を提供する。
【解決手段】放電反応装置は、放電を行なうための電極を含む放電器と、放電器に流入する空気の湿度を検出する湿度検出器とを備える。放電器に流入する空気の湿度を検出し、検出した湿度に基づいて電極に印加する目標電圧Va,Vb,Vcを設定し、目標電圧Va,Vb,Vcが大きくなるほど1回の電圧上昇幅Vax,Vbx,Vcxを大きく設定し、電圧上昇と定電圧に保つ期間とを繰り返しながら、目標電圧Va,Vb,Vcまで電圧を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンやラジカル等の活性種を使用して、対象となる物質を分解したり酸化したりする技術が知られている。たとえば、オゾン等は、酸化力が強いために、酸化すべき物質を効率よく酸化することができる。
【0003】
このような活性種を含む活性ガスは、原料となる所定の気体から生成される。活性ガスは、プラズマ中に原料となる気体を通すことにより生成することができる。プラズマを生成する方法としては、放電による方法やマイクロ波の供給による方法などが知られている。たとえば、空気に含まれる酸素を放電している領域に流通させることにより、オゾン等の活性酸素に変化させる装置が知られている。
【0004】
特開平9−63747号公報においては、高電圧電源回路で形成された高電圧を高速スイッチング装置により高電圧パルスとして印加される放電管と、高電圧電源回路の充電電圧を制御する充電制御回路とを備えるパルスストリーマコロナ放電によるガス処理装置が開示されている。
【0005】
特開平5−18555号公報においては、空気調和制御のために設置されている温度センサ及び湿度センサの信号を検出し、オゾン発生器から発生するオゾン量を所定量にするために電圧を制御するオゾン発生器が開示されている。
【0006】
特開2007−125195号公報においては、ヒータが固体電解質膜を十分加熱しきれていない時は低電力電源を使用し、十分加熱されている時には、高電力電源を使用するように電源を切り換える切換手段を備える酸素富化空気供給装置が開示されている。この装置においては、制御電圧を徐々に上昇させていくことによって酸素富化空気供給装置のスタートを緩やかにし、電流印加手段のエネルギーロスを低減して、省エネルギーでかつ信頼性の高い運転を実現することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−63747号公報
【特許文献2】特開平5−18555号公報
【特許文献3】特開2007−125195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
活性種を含む活性ガスを生成するために放電によりプラズマを生成する装置においては、複数の電極を有し、電極に電圧を印加することによりプラズマを生成する。放電によりプラズマを生成する装置は、電極に電圧を印加するための電源を備え、放電を大気圧中で行なう場合には電極に印加する電圧が高くなる。
【0009】
ところが、電極間に印加する電圧を一度に零ボルトから高電圧まで上昇させると、所望しない放電が生じる場合がある。例えば、コロナ放電により放電を行って、空気中に含まれる酸素からオゾンを生成する装置においては、一度に電圧を上昇すると、放電形態がコロナ放電とならずに、アーク放電や火花放電が生じる場合がある。たとえば、アーク放電は、電流密度が高くて発生する熱量が大きい。このために、放電を行なう装置を損傷したり破損したりする虞がある。たとえば、一度に0Vから数十kVまで電圧を上昇した場合においては、所望しない放電形態による放電が生じる虞があった。
【0010】
本発明は、気体に含まれる物質から活性種を生成する放電反応装置であって、安定した放電を行なうことができる放電反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放電反応装置は、気体に含まれる物質から活性種を生成する放電反応装置であって、放電を行なうための電極を含む放電器と、放電器に流入する空気の湿度を検出する湿度検出器とを備える。放電器に流入する空気の湿度を検出し、検出した湿度に基づいて電極に印加する目標電圧を設定し、目標電圧が大きくなるほど1回の電圧上昇幅を大きく設定し、電圧上昇と定電圧に保つ期間とを繰り返しながら、目標電圧まで電圧を上昇させる。
【0012】
上記発明においては、電極に印加する電圧を目標電圧まで上昇させる場合に、電圧の上昇回数が予め定められており、目標電圧と電圧の上昇回数とにより1回の電圧上昇における電圧上昇幅を算出し、算出された電圧上昇幅により目標電圧まで電極に印加する電圧を上昇させることが好ましい。
【0013】
上記発明においては、放電器は、コロナ放電、ストリーマ放電および沿面放電のうち、いずれかの放電を行なうことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体に含まれる物質から活性種を生成する放電反応装置であって、安定した放電を行なうことができる放電反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態における内燃機関の概略図である
【図2】実施の形態における放電反応装置の概略図である。
【図3】実施の形態における運転制御のフローチャートである。
【図4】実施の形態における電極に印加する電圧と、生成されるオゾンの流量との関係を示すグラフである。
【図5】実施の形態における電圧の上昇パターンを説明するグラフである。
【図6】実施の形態における他の電圧の上昇パターンを説明するグラフである。
【図7】実施の形態における他の放電反応装置の放電器の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図7を参照して、実施の形態における放電反応装置について説明する。本実施の形態における放電反応装置は、内燃機関の排気浄化装置に取り付けられている。
【0017】
図1は、本実施の形態における内燃機関の概略図である。本実施の形態においては、圧縮自着火式の内燃機関を例に取り上げて説明する。内燃機関は、機関本体1を備える。機関本体1は、複数の気筒1aを有する。それぞれの気筒1aは、機関吸気通路と機関排気通路とに接続されている。それぞれの気筒1aは、対応する吸気枝管2を介してサージタンク3に連結されている。また、それぞれの気筒1aは、排気マニホルド4に接続されている。排気マニホルド4は、排気管5に接続されている。
【0018】
本実施の形態における内燃機関は、排気浄化装置を備える。本実施の形態における排気浄化装置は、排気処理装置7を含む。排気処理装置7は、排気管5に連結されている。本実施の形態における排気処理装置7は、パティキュレートフィルタ6を含む。パティキュレートフィルタ6の下流には、パティキュレートフィルタ6の温度を検出するための温度センサ9が配置されている。排気ガスは、矢印100に示すように機関排気通路に沿って流れる。
【0019】
パティキュレートフィルタ6は、排気ガス中に含まれる炭素微粒子、イオン系微粒子等の粒子状物質(PM:パティキュレートマター)を除去するフィルタである。パティキュレートフィルタは、例えば、ハニカム構造を有し、ガスの流れ方向に延びる複数の流路を有する。複数の流路において、下流端が封止された流入側の流路と上流端が封止された流出側の流路とが交互に形成されている。流路の隔壁は、コージライトのような多孔質材料で形成されている。排気ガスは、流入側の流路に流入し、隔壁を通った後に流出側の流路から流出する。隔壁を排気ガスが通過するときに粒子状物質が捕捉される。
【0020】
本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置は、活性種を含む活性ガスを機関排気通路に供給するための放電反応装置を含む。放電反応装置は、気体に含まれる物質から活性種を生成する。本実施の形態においては、大気中の空気に含まれる酸素から活性種としてのオゾンを生成する。オゾンは酸化性が強く、本実施の形態おける活性ガスは、酸化性ガスである。
【0021】
放電反応装置は、放電を行なうための放電器23を含む。放電器23は、補助管8を介して排気管5に接続されている。放電器23は、排気管5の内部にオゾンを供給できるように形成されている。
【0022】
図2に、本実施の形態における放電反応装置の概略図を示す。放電器23は、複数の電極を含む。本実施の形態における放電器23の電極は、筒状の外周電極41と、外周電極41の中心軸線上に配置されている棒状電極42とを含む。棒状電極42は、外周電極41に固定されている。棒状電極42と外周電極41との間は、絶縁体44によって絶縁されている。本実施の形態における放電器23では、外周電極41が接地されている。放電反応装置は、電源43を含み、棒状電極42は、電源43に接続されている。
【0023】
それぞれの電極は、導電性材料から形成されている。それぞれの電極は、金属材料から形成されていることが好ましい。電極は、たとえば、銅、タングステン、ステンレス、または鉄等により形成されていることが好ましい。
【0024】
放電器23は、原料となる気体を放電器23に供給する供給ポンプ45に接続されている。供給ポンプ45は、外気供給路48を介して外周電極41に連結されている。本実施の形態における供給ポンプ45は、空気を放電器23に供給するように形成されている。外気供給路48には、放電器23に流入する空気の湿度を検出するための湿度検出器として湿度センサ46が配置されている。外周電極41の端面には、オゾンを含む活性ガスを放出するための放出口47が形成されている。
【0025】
本実施の形態における放電反応装置は、制御装置30を備える。電源43、供給ポンプ45および湿度センサ46は、制御装置30に接続されている。湿度センサ46にて検出された湿度の信号は、制御装置30に入力される。供給ポンプ45は、制御装置30に制御されている。電源43は、制御装置30に制御されることにより棒状電極42に電圧を印加する。このように、放電器23における放電は、制御装置30により制御されている。
【0026】
本実施の形態における放電器23では、供給ポンプ45が駆動することにより、矢印101に示すように、外気供給路48に外気が流入する。本実施の形態における活性ガスの原料となる空気は、外気供給路48を通って放電器23に流入する。
【0027】
矢印102に示すように、酸素を含んだ空気が棒状電極42と外周電極41との間に供給される。電源43によって棒状電極42と外周電極41との間に電圧が印加される。棒状電極42と外周電極41との間で放電が生じる。本実施の形態における放電器23では、ストリーマ放電が生じる。ストリーマ放電では、棒状電極42と外周電極41との間の略全体の領域でプラズマが生成される。
【0028】
放電器23に流入した空気がプラズマの生成されている領域を通ることにより、空気に含まれる酸素からオゾンが生成される。生成されたオゾンを含む活性ガスは、矢印103に示すように、放出口47から放出される。このように、本実施の形態における放電器23は、供給された空気をプラズマ処理することによって、オゾン等の酸化性を有する気体を生成する。
【0029】
図1を参照して、本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置は、パティキュレートフィルタ6の上流側の機関排気通路内にオゾンを含む活性ガスを供給することができる。内燃機関の運転を継続すると、パティキュレートフィルタ6には、次第に粒子状物質が堆積する。パティキュレートフィルタ6上に堆積した粒子状物質を除去する場合には、粒子状物質を酸化させる再生を行う。
【0030】
本実施の形態の内燃機関においては、パティキュレートフィルタ6の再生のときに、オゾン等の酸化性の高い活性種を流入させることができる。これらの活性種は、堆積している粒子状物質と容易に酸化反応を生じる。このために、粒子状物質を比較的に低温で燃焼させて除去することができる。
【0031】
従来の技術においては、たとえば燃焼室において追加の燃料を燃焼させて、パティキュレートフィルタを高温まで昇温していた。これに対して、本実施の形態における排気浄化装置においては、比較的低温で粒子状物質を燃焼させることができるために、昇温を行なうための燃料消費を抑制することができる。
【0032】
図3に、本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置の運転制御のフローチャートを示す。上述のように、本実施の形態においては、パティキュレートフィルタの再生時に活性種としてのオゾンを生成する。図3の運転制御例は、オゾンの生成を開始するために放電器の電極に印加する電圧を上昇させる制御を含む。
【0033】
ステップ80において、内燃機関の運転状態を検出する。本実施の形態においては、パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の量を推定する。パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の堆積量は、例えば機関回転数と燃料噴射量とを関数にする単位時間あたりに蓄積する粒子状物質のマップから推定することができる。または、パティキュレートフィルタの上流の圧力と下流の圧力との差を検出する差圧検出器を配置して、差圧を検出することによりパティキュレートフィルタに堆積している粒子状物質の量を推定することができる。
【0034】
ステップ81において、パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の量が許容値を超えているか否かを判別する。パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の量が許容値以下であれば、この制御を終了する。パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の量が許容値よりも大きければ、ステップ82に移行する。本実施の形態においては、パティキュレートフィルタの粒子状物質の堆積量が許容値を超えた場合に、粒子状物質を燃焼させる再生制御を行なう。
【0035】
ステップ82においては、パティキュレートフィルタの再生に必要なオゾンの流量を選定する。また、本実施の形態においては、オゾンを供給する時間を選定する。パティキュレートフィルタ6の再生に必要なオゾンの流量、およびオゾンを供給している時間は、パティキュレートフィルタ6に堆積する粒子状物質の量から選定することができる。例えば、粒子状物質の堆積量に対するオゾンの流量と、オゾンを供給する時間とを予め定めておいて、制御装置30に記憶させておくことができる。粒子状物質の堆積量を検出することにより、再生に必要なオゾン流量とオゾンを供給する時間とを定めることができる。
【0036】
次に、ステップ83に移行して、放電器23に流入する空気の湿度を検出する。図2を参照して、本実施の形態においては、外気供給路48に配置されている湿度センサ46により、放電器23の内部に供給する空気の湿度を検出することができる。検出された湿度の信号は、制御装置30に送信される。
【0037】
次に、ステップ84においては、放電器23の電極に印加する目標電圧を設定する。本実施の形態においては、棒状電極42に印加する電圧を選定する。選定されたオゾン流量と検出された湿度とから目標電圧を設定する。
【0038】
図4に、本実施の形態における放電器において、電極間に印加する電圧と生成されるオゾン流量との関係のグラフを示す。グラフにおいては、湿度として水蒸気の体積割合が示されている。水蒸気の体積割合が0%のグラフが一点鎖線で、1.5%のグラフが二点鎖線で、3%のグラフが実線で示されている。
【0039】
本実施の形態の放電器においては、電極同士の間で放電が生じてプラズマが生成される。空気に含まれる酸素がプラズマの生成されている領域を流通することによりオゾンが生成される。ところが、オゾンの生成量は湿度の影響を受ける。湿度が高いほど、オゾンの生成量が少なくなる。
【0040】
電極間に印加する電圧を必要以上に高くした場合には、過剰のオゾンが生成され、電力が無駄に消費される。または、電圧が高くなりすぎた場合には所望しない放電が生じる虞があり、放電器が損傷する虞がある。一方で、電極間に印加する電圧が低すぎると、供給するオゾン量が不足する。
【0041】
本実施の形態の放電反応装置においては、一つのオゾン流量を達成するために、湿度を検出し、湿度が高いほど電極に印加する目標電圧を高くする制御を行う。図4に示す例においては、目標流量Rtでオゾンを生成するために、それぞれの湿度に応じて目標電圧Va、目標電圧Vbまたは目標電圧Vcが設定される。たとえば、放電器に流入する空気の湿度と再生に必要なオゾンの流量とを関数にする目標電圧のマップを予め制御装置に記憶させる。検出した空気の湿度と再生に必要なオゾン流量とから、それぞれの湿度に応じた目標電圧を選定することができる。
【0042】
図3を参照して、次に、ステップ85において1回の電圧上昇幅を設定する。その後に、ステップ86において、電圧を目標電圧まで上昇させる。本実施の形態における放電反応装置は、放電を行なうために電圧を上昇するときに階段状に電圧を上昇させる制御を行う。
【0043】
図5に、本実施の形態における放電器の電極間に印加する電圧の上昇パターンのグラフを示す。横軸が時間であり、縦軸が電極間に印加する電圧である。グラフには、空気に含まれる水蒸気の体積割合が0%、1.5%および3%のグラフが示されている。図5に示す例においては、オゾンの目標流量が一定の目標流量Rtである場合を示している。図4を参照して、1つの目標流量Rtに対して、それぞれの湿度における目標電圧は、目標電圧Va、目標電圧Vbおよび目標電圧Vcになる。
【0044】
図5を参照して、本実施の形態においては、目標とするオゾンの目標流量Rtを選定するために、放電器における電極間の電圧を徐々に上昇している。本実施の形態における放電器においては、電圧上昇と一定の電圧に保つ期間とを繰り返しながら、目標電圧まで電圧を上昇させている。本実施の形態における放電反応装置は、制御装置30が電源43を制御することにより、このような電圧上昇パターンで電圧上昇を行なうことができる。
【0045】
本実施の形態においては、電圧を上昇させる回数が予め定められている。目標電圧Va,Vb,Vcを電圧を上昇させる回数で除算することにより、それぞれの湿度における電圧上昇幅Vax,Vbx,Vcxが算出される。目標電圧が大きくなるほど1回の電圧上昇幅が大きくなる。本実施の形態においては、電圧上昇幅Vaxよりも電圧上昇幅Vbxの方が大きく、さらに、電圧上昇幅Vbxよりも電圧上昇幅Vcxが大きくなる。図5に示す例においては、時刻t0から電圧上昇を開始し、時刻t1において目標電圧Va,Vb,Vcに到達している。
【0046】
このように、棒状電極42と外周電極41との間に電圧を印加して、酸素をオゾンに変換するプラズマを生成することができる。プラズマの生成は、たとえば、ステップ82において設定された時間で継続される。パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物資が酸化により除去される。
【0047】
本実施の形態の放電反応装置においては、電圧上昇と一定の電圧に保つ期間とを繰り返しながら、目標電圧まで電極に印加する電圧を上昇させる制御を行なっている。電圧を上昇させると、電極同士の間の空間において局所的に電界強度が強くなっている部分が生成される。電圧が一定である期間を設けることにより、電極同士の間の空間において電界強度を均一にすることができる。特に、プラズマが生成されている期間においては、電圧上昇によりイオン化した粒子が不均一に分布する状態が生成される。電圧が一定である期間を設けることにより、局所的に偏ったイオン等を均一に分散させることができる。このため、局所的に電界強度が大きくなることを回避し、火花放電またはアーク放電等の所望しない放電が生じることを抑制できる。このように、本実施の形態における放電反応装置は、安定した放電を行なうことができる。
【0048】
また、本実施の形態の放電反応装置においては、電圧を上昇させる回数が予め定められており、目標電圧と電圧を上昇させる回数とにより、1回の電圧上昇幅を算出している。この構成を採用することにより、所定の時間内において電圧上昇を完了させることができる。すなわち、電圧を上昇させる回数が定められているために、所望の時間内において要求されるオゾン流量を達成することができる。
【0049】
例えば、制御装置において、それぞれの機器に制御信号を発信する時間間隔が定められているときに、所望の時間内に電極に目標電圧を印加することができる。本実施の形態の放電反応装置においては、電圧を上昇する間隔、すなわち電圧を一定に保つ時間をほぼ一定にしているが、この形態に限られず、変化させても構わない。
【0050】
電圧を上昇させる制御としては、上記の形態に限られず、目標電圧が大きくなるほど、1回の電圧上昇幅を大きくする任意の制御を採用することができる。例えば、目標電圧に対する1回の電圧上昇幅が予め定められていても構わない。目標電圧に対する1回の電圧上昇幅を制御装置に記憶させておいて、目標電圧に基づいて電圧上昇幅が選定されても構わない。このように、目標電圧が大きくなるほど1回の電圧上昇幅を大きく設定することにより、所望しない放電の発生を抑制しながら、短時間に所望のオゾンの流量を達成することができる。
【0051】
図6に、本実施の形態における放電反応装置の電圧を上昇させるときの他の上昇パターンのグラフを示す。上記の実施例においては、電極間に印加する電圧を階段状に上昇させているが、この形態に限られず、電極間に印加する電圧は、目標電圧に向かって徐々に上昇させれば構わない。
【0052】
図6に示す例では、それぞれの湿度に対応する目標電圧Va,Vb,Vcに向かって、ほぼ一定の電圧上昇率で電圧を上昇させている。または、時刻t0から時刻t1まで、直線的に電圧を上昇させている。電極同士の間に印加する電圧を0Vから目標電圧まで短時間で上昇させると、単位時間あたりの電圧変化量が大きくなる。電極近傍の領域において、空気が急速に電離されて、ストリーマ放電が生じずに火花放電またはアーク放電が部分的に生じてしまう虞がある。すなわち、電界が形成されている領域において、均一なプラズマが得られずに所望しない放電が生じる虞がある。
【0053】
電極間に印加する電圧を目標電圧に向けて徐々に上昇させることにより、均一なプラズマを生成することができて、所望しない放電の発生を抑制することができる。図6に示す例では、直線的に電圧を上昇させているが、この形態に限られず、曲線状に電圧を上昇させても構わない。
【0054】
本実施の形態における放電器は、ストリーマ放電を行なうように形成されているが、この形態に限られず、気体に含まれる物質から活性種を生成する任意の放電を行なうことができる。
【0055】
例えば、図2を参照して、電極間に印加する電圧を徐々に上昇させると、ストリーマ放電を行う電圧より低い電圧で、コロナ放電が生じる。コロナ放電においては、棒状電極42の周りの領域においてプラズマが生成される。さらに電圧を上昇させてと、プラズマが棒状電極42と外周電極41との間の空間に充填されるストリーマ放電が生じる。ストリーマ放電は、電極間の空間における電子なだれが生じた直後に観察される放電形態である。電極に電圧が印加されると、小さな電離領域が集まってストリーマが形成される。ストリーマが成長して、一方の電極から他方の電極に到達すると、電流が流れて放電が生じる。
【0056】
本実施の形態における放電反応装置は、ストリーマ放電の放電形態を採用しているが、コロナ放電によっても酸素からオゾンの活性種を生成することができる。また、放電反応装置における放電形態は、これらの形態に限られず、活性種を生成できる任意の放電形態を採用することができる。
【0057】
図7に、本実施の形態における他の放電器の拡大概略断面図を示す。他の放電器は、沿面放電の放電形態を有する。本実施の形態における他の放電器は、沿面放電によりプラズマを生成し、このプラズマにより活性種を生成することができる。
【0058】
本実施の形態における他の放電器は、絶縁物質で形成されている絶縁層53を備える。絶縁層53は、板状に形成されている。絶縁層53の表面には表側電極51が配置されている。本実施の形態における表側電極51は、線状に形成されている。複数の表側電極51が配置されている。表側電極51は、延びる方向が互いに平行になるように配置されている。表側電極51は、電源に接続され、高電圧が印加される。絶縁層53の裏側には裏側電極52が配置されている。裏側電極52は、例えば板状に形成されている。本実施の形態における裏側電極52は、接地されている。
【0059】
図6に示す装置例においては、矢印104に示すように空気が流れる。すなわち、他の放電器は、表側電極51が延びる方向と垂直な方向に空気が流れるように形成されている。表側電極51と裏側電極52との間に電圧を印加することにより、プラズマを含むプラズマ領域54が生成される。プラズマ領域54は、表側電極51の側方に形成される。空気は、プラズマ領域54に接触するように流れる。空気がプラズマ領域54に接触することにより、酸素がオゾンに変換される。
【0060】
本実施の形態においては、活性種としてオゾンを例示して説明したが、この形態に限られず、活性種としては、活性酸素、Oラジカル、OHラジカル、HOラジカル、NHラジカル、又はHラジカル等を例示することができる。このような活性種を生成する放電反応装置に本発明を適用することができる。
【0061】
本実施の形態の内燃機関においては、生成されたオゾンをパティキュレートフィルタに供給しているが、この形態に限られず、活性種を流入させることが好ましい任意の排気処理装置を備える内燃機関の排気浄化装置に本発明の放電反応装置を配置することができる。
【0062】
本実施の形態の内燃機関においては、放電器に外気が供給されているが、この形態に限られず、放電器に機関排気通路を流れる排気ガスが供給されていても構わない。この場合には、原料となる排気ガスを供給するためのポンプを配置しなくても、放電器に排気ガスを供給することができる。
【0063】
本実施の形態においては、内燃機関の排気浄化装置に取り付けられている放電反応装置を例示したが、この形態に限られず、任意の装置に取り付けられる放電反応装置に本発明を適用することができる。
【0064】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に含まれる変更が意図されている。
【符号の説明】
【0065】
1 機関本体
6 パティキュレートフィルタ
7 排気処理装置
23 放電器
30 制御装置
41 外周電極
42 棒状電極
43 電源
44 絶縁体
46 湿度センサ
51 表側電極
52 裏側電極
53 絶縁層
54 プラズマ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる物質から活性種を生成する放電反応装置であって、
放電を行なうための電極を含む放電器と、
放電器に流入する空気の湿度を検出する湿度検出器とを備え、
放電器に流入する空気の湿度を検出し、検出した湿度に基づいて電極に印加する目標電圧を設定し、目標電圧が大きくなるほど1回の電圧上昇幅を大きく設定し、電圧上昇と定電圧に保つ期間とを繰り返しながら、目標電圧まで電圧を上昇させることを特徴とする、放電反応装置。
【請求項2】
電極に印加する電圧を目標電圧まで上昇させる場合に、電圧の上昇回数が予め定められており、
目標電圧と電圧の上昇回数とにより1回の電圧上昇における電圧上昇幅を算出し、算出された電圧上昇幅により目標電圧まで電極に印加する電圧を上昇させることを特徴とする、請求項1に記載の放電反応装置。
【請求項3】
放電器は、コロナ放電、ストリーマ放電および沿面放電のうち、いずれかの放電を行なうことを特徴とする、請求項1または2に記載の放電反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245368(P2011−245368A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118507(P2010−118507)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】