説明

放電灯点灯装置

【課題】短時間で放電灯を任意の輝度で点灯できる放電灯点灯装置を得る。
【解決手段】本発明による放電灯点灯装置は、冷陰極管(3)に流れる管電流(IL)を検出する管電流検出回路(5)と、管電流検出回路(5)が管電流(IL)を検出しない期間(TC)は調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に付与する調光信号(VB)を無効にして交流変換回路(2)から連続的に交流出力(VL)を発生させ、管電流検出回路(5)が管電流(IL)を検出したときに調光制御回路(7)を駆動する調光切替回路(9)とを備えている。冷陰極管(3)に管電流(IL)が殆ど流れない起動時は、調光切替回路(9)により調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に付与する調光信号(VB)が無効となるため、交流変換回路(2)の交流出力(VL)が連続的に冷陰極管(3)に供給される。これにより、起動時に必要十分な励磁エネルギが速やかに冷陰極管(3)に供給され、短時間で冷陰極管(3)を任意の輝度で点灯することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)等の放電灯点灯装置、特に放電灯の輝度を調整する調光制御回路を有し且つ短時間で放電灯を任意の輝度で点灯することができる放電灯点灯装置に属する。
【0002】
【従来の技術】
液晶テレビやノート型パソコン等に搭載される液晶表示装置のバックライト等に使用される冷陰極管等の放電灯点灯装置は公知である。例えば、図5に示す従来の放電灯点灯装置は、十数ボルトの直流電圧VINを発生する直流電源(1)と、直流電源(1)の直流電圧VINを数百ボルト〜千数百ボルトの交流電圧VLに変換する交流変換回路(2)と、交流変換回路(2)の出力端子に接続された放電管としての冷陰極管(3)と、冷陰極管(3)の調光信号VBを出力する調光信号発生回路(4)と、冷陰極管(3)に流れる管電流ILを検出する管電流検出回路(5)と、管電流検出回路(5)の検出電流値が予め設定された電流値となるように交流変換回路(2)の交流電圧VLを制御する電流制御信号VAを出力する管電流制御回路(6)と、調光信号発生回路(4)の調光信号VBにより管電流制御回路(6)の電流制御信号VAを連続的又は断続的に出力するゲート手段を有する調光制御回路(7)と、調光制御回路(7)の出力信号VDから交流変換回路(2)を駆動する駆動信号VGを形成する駆動回路(8)とを備えている。
【0003】
図6に示すように、交流変換回路(2)は、直流電源(1)に接続される矩形波電圧発生回路(21)と、矩形波電圧発生回路(21)に接続され且つ1次巻線(22a)と直列に形成される漏洩インダクタンス(22c)を含むリーケージトランス(22)と、リーケージトランス(22)の2次巻線(22b)に接続された共振コンデンサ(23)とを有する。リーケージトランス(22)及び共振コンデンサ(23)は直列共振回路(24)を構成する。ここで、リーケージトランス(22)の1次巻線(22a)及び2次巻線(22b)の巻数をそれぞれN1、N2[turn]とすると、リーケージトランス(22)の巻数比N2/N1は100程度となるように設定される。詳細な図示は省略するが、矩形波電圧発生回路(21)は、例えば複数のスイッチング素子をブリッジ接続して構成され且つ各スイッチング素子のスイッチング動作により直流電源(1)からの直流電圧VINを矩形波交流電圧に変換するスイッチング回路と、1次側巻線にスイッチング回路が接続され且つ2次側巻線から電圧調整された矩形波交流電圧VSを発生する出力トランスとを有する。駆動回路(8)から入力される駆動信号VGにより、前記のスイッチング回路を構成する各スイッチング素子を数十[kHz]程度の周波数でオン・オフ動作させることにより、直流電源(1)から入力される直流電圧VINを矩形波交流電圧VSに変換する。矩形波電圧発生回路(21)から出力される矩形波交流電圧VSは、リーケージトランス(22)及び共振コンデンサ(23)で構成される直列共振回路(24)により高圧(数百ボルト〜千数百ボルト)で且つ数十[kHz]程度の周波数の正弦波交流電圧VLに変換され、冷陰極管(3)に供給される。調光信号発生回路(4)は、交流変換回路(2)のスイッチング周波数(数十[kHz]程度)よりも十分に低い一定周波数(数十[Hz]〜数[kHz])の矩形パルス信号を発生し、冷陰極管(3)の所望の輝度に応じて矩形パルス信号のオン・デューティを変化させることにより、冷陰極管(3)の調光信号VBを出力する。したがって、冷陰極管(3)の輝度が最大のときはオン・デューティ100[%]の矩形パルス信号、即ち図7(A)に示すように正電圧レベル一定の調光信号VBを出力する。
【0004】
管電流検出回路(5)は、冷陰極管(3)と直列に接続された管電流検出用抵抗(51)と、アノード端子が冷陰極管(3)と管電流検出用抵抗(51)との接続点に接続された整流ダイオード(52)と、整流ダイオード(52)のカソード端子と接地端子との間に接続された平滑コンデンサ(53)とを有する。即ち、管電流検出回路(5)は、管電流検出用抵抗(51)により冷陰極管(3)に流れる管電流ILをそれに対応する電圧に変換し、管電流検出用抵抗(51)の両端子間の電圧を整流ダイオード(52)及び平滑コンデンサ(53)により整流及び平滑化してその直流電圧を検出電圧VFとして出力する。管電流制御回路(6)は、冷陰極管(3)に流れる管電流ILの設定値を規定する基準電圧VR1を発生する基準電源(61)と、管電流検出回路(5)の検出電圧VFと基準電源(61)の基準電圧VR1との誤差電圧を増幅した出力電圧VE1を出力する誤差増幅器(62)と、一定周波数(数十[kHz]程度)の三角波電圧VTを発生する三角波発振回路(63)と、誤差増幅器(62)の出力電圧VE1と三角波発振回路(63)の三角波電圧VTとを比較することによりオン・デューティが変化する矩形パルス列の電流制御信号VAを発生するPWM(パルス幅変調)コンパレータ(64)とを有する。調光制御回路(7)のゲート手段は、例えば調光信号発生回路(4)の調光信号VBと管電流制御回路(6)の電流制御信号VAとの論理積信号VDを出力するANDゲート(71)で構成することができる。即ち、調光制御回路(7)は、図7(A)に示すように調光信号発生回路(4)から正電圧レベル一定の調光信号VBが入力されたときは、管電流制御回路(6)からの電流制御信号VAを連続的に出力するため、冷陰極管(3)の輝度の調整、即ち調光動作を行わない。一方、図8(A)に示すように管電流制御回路(6)から出力される電流制御信号VAの周波数(数十[kHz]程度)よりも十分に低い周波数(数十[Hz]〜数[kHz])で且つ冷陰極管(3)の所望の輝度に対応するデューティ比を有する矩形パルス列の調光信号VBが調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に入力されたときは、管電流制御回路(6)からの電流制御信号VAを調光信号VBの周期で断続的に出力し、冷陰極管(3)の調光動作を行う。駆動回路(8)は、調光制御回路(7)のANDゲート(71)から入力される論理積信号VDから交流変換回路(2)内の矩形波電圧発生回路(21)を連続的又は断続的に駆動する駆動信号VGを形成し、矩形波電圧発生回路(21)へ出力する。
【0005】
図5に示す構成において、図7(A)に示すように装置起動時t1から調光信号発生回路(4)の調光信号VBが正電圧レベル一定のときは、調光制御回路(7)は調光動作を行わず、管電流制御回路(6)から連続的に出力される電流制御信号VAにより、駆動回路(8)から交流変換回路(2)を連続的に駆動する駆動信号VGが出力される。これにより、図7(B)に示すように交流変換回路(2)から冷陰極管(3)に連続的に交流電圧VLが印加され、図7(C)に示すように時刻t2にて冷陰極管(3)に管電流ILが流れ始めると、冷陰極管(3)が点灯を開始する。時刻t2以降は、管電流制御回路(6)により冷陰極管(3)に流れる管電流ILが略一定に保持されるので、冷陰極管(3)の輝度が常に最大値一定となる。
【0006】
また、図8(A)に示すように、管電流制御回路(6)の電流制御信号VAの周波数よりも十分に低い周波数で且つ冷陰極管(3)の所望の輝度に対応するデューティ比を有する矩形パルス列の調光信号VBが調光信号発生回路(4)から出力される場合は、調光制御回路(7)から管電流制御回路(6)の電流制御信号VAを断続的にした出力信号VDが出力される。これにより、調光信号VBの周期で交流変換回路(2)を断続的に駆動する駆動信号VGが駆動回路(8)から出力され、図8(B)に示すように交流変換回路(2)から冷陰極管(3)に断続的に交流電圧VLが印加される。図8(C)に示すように、時刻t2にて冷陰極管(3)に管電流ILが流れ始めると冷陰極管(3)が点灯を開始し、時刻t2以降は冷陰極管(3)に管電流ILが断続的に流れ続ける。これにより、冷陰極管(3)が調光信号VBの周期で点滅を繰り返すので、調光信号VBのオン・デューティを適宜調整すれば所望の輝度が得られる。これと共に、管電流制御回路(6)により冷陰極管(3)に流れる管電流ILが略一定に保持されるので、冷陰極管(3)の輝度が常に一定となる。以上で述べた放電灯点灯装置の構成と類似の構成を有する放電灯点灯装置は、例えば下記の特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−357599号公報(第6頁、図6)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示す従来の放電灯点灯装置では、図8(A)に示すように調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に予め調光信号VBが入力されているとき、図8(C)に示すように冷陰極管(3)の管電流ILが検出されない期間TBにおいても図8(B)に示すように交流変換回路(2)の交流電圧VLが断続的に冷陰極管(3)に印加される。このため、管電流ILが検出されない暗黒始動期間TB中に冷陰極管(3)を点灯するのに必要十分な励磁エネルギを交流変換回路(2)から冷陰極管(3)に供給できず、装置起動時t1から冷陰極管(3)の点灯開始時t2までの時間TBが交流変換回路(2)の交流電圧VLを連続的に冷陰極管(3)に印加する場合(図7(B))の同時間TAに比較して長くなる欠点があった。したがって、冷陰極管(3)を長期間点灯させずに冷暗所に放置した場合の始動不良等の不具合が発生していた。
【0009】
そこで、本発明は短時間で放電灯を任意の輝度で点灯することができる放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による放電灯点灯装置は、直流電源(1)と、少なくとも1つのスイッチング素子を含むスイッチング回路を有し且つスイッチング回路のスイッチング動作により直流電源(1)から供給される直流電力を交流電力に変換する交流変換回路(2)と、交流変換回路(2)の出力端子に接続された放電管(3)と、調光信号発生回路(4)から出力される調光信号(VB)により交流変換回路(2)の交流出力(VL)を断続的に発生させて放電管(3)の輝度を調整する調光制御回路(7)とを備え、放電管(3)に流れる管電流(IL)を検出する管電流検出回路(5)と、管電流検出回路(5)に接続された調光切替回路(9)とを備えている。調光切替回路(9)は、管電流検出回路(5)の検出電流値が基準値より低いときは第1の電圧(L)レベルの出力信号(VE2)を発生し、管電流検出回路(5)の検出電流値が基準値以上となったときに第2の電圧(H)レベルの出力信号(VE2)を発生する比較手段(92)と、電源投入時に起動信号(VP)を発生する起動信号発生手段(93)と、起動信号発生手段(93)が起動信号(VP)を発生したときに第1の状態となり、比較手段(92)の出力信号(VE2)が第1の電圧(L)レベルの期間(TC)は第1の状態を保持し、比較手段(92)の出力信号(VE2)が第2の電圧(H)レベルとなったときに第2の状態となる状態保持手段(94)と、状態保持手段(94)が第1の状態のときは調光制御回路(7)に付与する調光信号(VB)を無効にして交流変換回路(2)の交流出力(VL)を連続的に発生させ、状態保持手段(94)が第2の状態となったときに調光制御回路(7)に調光信号(VB)を付与する切替手段(95)とを有する。放電管(3)に管電流(IL)が殆ど流れない起動時は、調光切替回路(9)により調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に付与する調光信号(VB)が無効となるため、交流変換回路(2)の交流出力(VL)が連続的に放電管(3)に供給される。これにより、起動時に必要十分な励磁エネルギが速やかに放電管(3)に供給され、短時間で放電管(3)を任意の輝度で点灯することができる。
【0011】
本発明の実施の形態では、管電流検出回路(5)の検出電流値が予め設定された電流値となるように交流変換回路(2)の交流出力(VL)を制御する電流制御信号(VA)を出力する管電流制御回路(6)を備えている。このため、放電管(3)の点灯開始後、管電流制御回路(6)により放電管(3)に流れる管電流(IL)が略一定に保持されるので、放電管(3)の輝度が常に一定となる。調光信号発生回路(4)は、交流変換回路(2)のスイッチング周波数よりも十分に低い周波数で且つ放電管(3)の所望の輝度に対応するデューティ比を有する調光信号(VB)を出力する。調光制御回路(7)は、前記調光切替回路(9)の出力信号(VC)により前記管電流制御回路(6)の電流制御信号(VA)を連続的又は断続的に出力するゲート手段(71)を有する。管電流制御回路(6)は、管電流検出回路(5)の検出信号(VF)の電圧レベルに応じてオン・デューティが変化する電流制御信号(VA)を出力する。また、管電流検出回路(5)の検出信号(VF)の電圧レベルに応じて周波数が変化する電流制御信号(VA)を出力する管電流制御回路(6)を使用してもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による放電灯点灯装置の一実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。但し、これらの図面では図5〜図8に示す箇所と実質的に同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の放電灯点灯装置は、図1に示すように、管電流検出回路(5)が冷陰極管(3)の管電流ILを検出しない期間TC(図3)は調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に付与する調光信号VBを無効にして交流変換回路(2)から連続的に交流電圧VLを発生させ、管電流検出回路(5)が冷陰極管(3)の管電流ILを検出したときに調光制御回路(7)を駆動する調光切替回路(9)を管電流検出回路(5)に接続した点で図5に示す従来の放電灯点灯装置と異なる。
【0013】
図2に示すように、調光切替回路(9)は、冷陰極管(3)に流れる管電流ILの検出最小値を規定する基準電圧VR2を発生する基準電源(91)と、管電流検出回路(5)の検出電圧VFが基準電源(91)の基準電圧VR2より低いときに低い電圧(L)レベルの出力信号VE2を発生し、管電流検出回路(5)の検出電圧VFが基準電源(91)の基準電圧VR2以上となったときに高い電圧(H)レベルの出力信号VE2を発生する比較手段としてのコンパレータ(92)と、図示しない電源スイッチをオンしたときに単発パルスの起動信号VPを発生する起動信号発生手段としてのワンショットパルス発生器(93)と、ワンショットパルス発生器(93)からリセット端子(R)に起動信号VPが入力されたときにリセット状態となり、コンパレータ(92)の出力信号VE2が低い電圧(L)レベルの期間はリセット状態を保持し、コンパレータ(92)からセット端子(S)に高い電圧(H)レベルの出力信号VE2が入力されたときにセット状態となる状態保持手段としてのR-Sフリップフロップ(94)と、R-Sフリップフロップ(94)の反転出力信号VQと調光信号発生回路(4)の調光信号VBとの論理和信号VCを出力する切替手段としてのORゲート(95)とを備えている。調光切替回路(9)の基準電源(91)の基準電圧VR2は、管電流制御回路(6)の基準電源(61)の基準電圧VR1よりも低い値に設定される。また、調光制御回路(7)のANDゲート(71)は、調光切替回路(9)から出力される論理和信号VCと管電流制御回路(6)から出力される電流制御信号VAとの論理積信号VDを出力する。その他の構成は、図6に示す従来の放電灯点灯装置と略同様である。
【0014】
上記の構成において、時刻t1(図3)にて図示しない電源スイッチをオンして電源を投入すると、調光切替回路(9)内のワンショットパルス発生器(93)から単発パルスの起動信号VPが出力され、R-Sフリップフロップ(94)のリセット端子(R)に入力されてR-Sフリップフロップ(94)がリセット状態となる。これと共に、図3(A)に示すように、管電流制御回路(6)の電流制御信号VAの周波数(数十〜数百[kHz])よりも十分に低い周波数(数十[Hz]程度)で且つ冷陰極管(3)の所望の輝度に対応するデューティ比を有する矩形パルス列の調光信号VBが調光信号発生回路(4)から出力され、調光切替回路(9)内のORゲート(95)に入力される。図3(D)に示すように、電源投入時t1から点灯開始時t2までの暗黒始動期間TC中は冷陰極管(3)に管電流ILが殆ど流れず、管電流検出回路(5)の検出電圧VFが調光切替回路(9)内の基準電源(91)の基準電圧VR2よりも低いため、コンパレータ(92)から低い電圧(L)レベルの出力信号VE2が出力される。このため、R-Sフリップフロップ(94)はリセット状態を保持するから、反転出力端子から高い電圧(H)レベルの反転出力信号VQが出力され、ORゲート(95)に入力される。これにより、図3(B)に示すように、ORゲート(95)から調光制御回路(7)のANDゲート(71)に正電圧レベル一定の論理和信号VCが付与されるので、調光信号発生回路(4)からの調光信号VBは無効となり、調光制御回路(7)は冷陰極管(3)の調光動作を行わない。したがって、管電流制御回路(6)から調光制御回路(7)のANDゲート(71)に連続的に入力される電流制御信号VAが論理積信号VDとして調光制御回路(7)から出力され、駆動回路(8)から交流変換回路(2)内の矩形波電圧発生回路(21)に駆動信号VGが連続的に付与される。これにより、交流変換回路(2)内の矩形波電圧発生回路(21)が連続的に駆動され、直列共振回路(24)を介して図3(C)に示すように冷陰極管(3)に高圧の正弦波交流電圧VLが連続的に供給される。
【0015】
時刻t2において、図3(D)に示すように管電流ILが流れ始めて冷陰極管(3)が点灯を開始し、管電流検出回路(5)の検出電圧VFが調光切替回路(9)内の基準電源(91)の基準電圧VR2以上になると、コンパレータ(92)から高い電圧(H)レベルの出力信号VE2が出力され、R-Sフリップフロップ(94)のセット端子(S)に入力されてR-Sフリップフロップ(94)がセット状態となる。このとき、R-Sフリップフロップ(94)の反転出力端子から低い電圧(L)レベルの反転出力信号VQが出力されるので、図3(B)に示すように時刻t2以降はORゲート(95)から図3(A)に示す調光信号発生回路(4)の調光信号VBが論理和信号VCとして出力され、調光制御回路(7)のANDゲート(71)に付与される。このため、調光信号発生回路(4)の調光信号VBの周期で断続する管電流制御回路(6)の電流制御信号VAが調光制御回路(7)のANDゲート(71)から論理積信号VDとして出力され、駆動回路(8)から交流変換回路(2)内の矩形波電圧発生回路(21)に駆動信号VGが断続的に付与される。これにより、交流変換回路(2)内の矩形波電圧発生回路(21)が調光信号VBの周期で断続的に駆動され、直列共振回路(24)を介して図3(C)に示すように冷陰極管(3)に高圧の正弦波交流電圧VLが調光信号VBの周期で断続的に供給される。したがって、冷陰極管(3)の点灯開始時t2以降は、図3(D)に示すように冷陰極管(3)に管電流ILが断続的に流れ続け、冷陰極管(3)が調光信号VBの周期で点滅を繰り返す冷陰極管(3)の調光動作が行われる。これと共に、管電流制御回路(6)により冷陰極管(3)に流れる管電流ILが略一定に保持されるので、冷陰極管(3)の輝度が常に一定となる。
【0016】
本実施の形態では、冷陰極管(3)に管電流ILが殆ど流れない暗黒始動期間TC中は、調光切替回路(9)により調光信号発生回路(4)から調光制御回路(7)に付与する調光信号VBが無効となるので、調光制御回路(7)による冷陰極管(3)の調光動作が行われない。これにより、交流変換回路(2)の交流電圧VLが連続的に冷陰極管(3)に供給されるので、点灯するために必要十分な励磁エネルギを速やかに冷陰極管(3)に供給できる。また、冷陰極管(3)の点灯開始以降は、調光信号発生回路(4)からの調光信号VBが調光制御回路(7)に付与され、調光制御回路(7)による冷陰極管(3)の調光動作が行われるので、冷陰極管(3)を任意の輝度で点灯することができる。したがって、短時間で冷陰極管(3)を任意の輝度で点灯することができる。実際に、調光信号発生回路(4)から出力される調光信号VBのオン・デューティを50[%]に設定した場合、装置起動時t1から冷陰極管(3)の点灯開始時t2までの時間TCを図5及び図6に示す従来の放電灯点灯装置の場合の同時間TBの約半分に短縮することができた。
【0017】
本発明の実施態様は前記の実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上記の実施の形態では矩形波電圧発生回路(21)及びリーケージトランス(22)と共振コンデンサ(23)とから成る直列共振回路(24)で交流変換回路(2)を構成したが、リーケージトランス(22)の代わりに単巻線のコイルを使用し、矩形波電圧発生回路(21)内の出力トランスの巻数比を100程度に設定して交流変換回路(2)を構成してもよい。また、矩形波電圧発生回路(21)の代わりにチョッパ回路を設け、チョッパ回路の出力側に自励式のトランジスタインバータ回路を接続して交流変換回路(2)を構成してもよい。また、上記の実施の形態では管電流検出用抵抗(51)と整流ダイオード(52)と平滑コンデンサ(53)とで管電流検出回路(5)を構成したが、オペアンプ等を含む管電流検出回路(電流−電圧変換回路)を使用してもよい。また、上記の実施の形態では管電流検出回路(5)の検出電圧VFのレベルに応じてオン・デューティが変化する矩形パルス列の電流制御信号VAを出力するパルス幅変調(PWM)方式の管電流制御回路(6)を使用したが、管電流検出回路(5)の検出電圧VFのレベルに応じて周波数が変化する矩形パルス列の電流制御信号VAを出力するパルス周波数変調(PFM)方式の管電流制御回路(6)を使用してもよい。図4は、誤差増幅器(62)から出力される誤差電圧VE1のレベルに応じて矩形パルス列のオフ期間が変化するオン幅固定の電流制御信号VAを発生する電圧−周波数変換回路(図中ではV/Fコンバータと表示)(65)を有するパルス周波数変調方式の管電流制御回路(6)を使用した変更実施の形態を示す。また、上記の実施の形態では調光切替回路(9)内の切替手段をORゲート(95)で構成したが、トランジスタ等のスイッチング素子及び抵抗等を用いて切替手段を構成し、R-Sフリップフロップ(94)がリセット状態のときにスイッチング素子をオフ状態にして調光信号発生回路(4)からの調光信号VBを遮断すると共に正電圧レベル一定の信号を調光制御回路(7)に付与し、R-Sフリップフロップ(94)がセット状態となったときにスイッチング素子をオン状態にして調光信号発生回路(4)からの調光信号VBを調光制御回路(7)に付与してもよい。また、調光切替回路(9)内のワンショットパルス発生器(93)の代わりに抵抗及びコンデンサから成る微分回路と反転器とを使用し、電源投入時に微分回路から反転器を介して出力される微分パルス信号をR-Sフリップフロップ(94)のリセット端子(R)に付与する構成としてもよい。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、放電灯の点灯開始前は、調光切替回路により調光信号発生回路から調光制御回路に付与する調光信号が無効となり、交流変換回路の交流出力が連続的に放電灯に供給されるので、点灯するために必要十分な励磁エネルギを速やかに放電灯に供給でき、短時間で放電灯を任意の輝度で点灯することができる。特に、放電灯の設定輝度が小さく、オン・デューティの狭い調光信号を調光制御回路に付与する場合や、放電灯を長期間点灯させずに冷暗所に放置した場合は、本発明の効果が顕著に現れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による放電灯点灯装置の一実施の形態を示す回路ブロック図
【図2】 図1の各回路ブロックの内部構成を示す電気回路図
【図3】 図1の回路の各部の電圧及び電流を示す波形図
【図4】 図2の変更実施の形態を示す電気回路図
【図5】 従来の放電灯点灯装置を示す回路ブロック図
【図6】 図5の各回路ブロックの内部構成を示す電気回路図
【図7】 調光動作を行わない場合の図5の回路の各部の電圧及び電流を示す波形図
【図8】 調光動作を行う場合の図5の回路の各部の電圧及び電流を示す波形図
【符号の説明】
(1)・・直流電源、 (2)・・交流変換回路、 (21)・・矩形波電圧発生回路、 (22)・・リーケージトランス、 (22a)・・1次巻線、 (22b)・・2次巻線、 (22c)・・漏洩インダクタンス、 (23)・・共振コンデンサ、 (24)・・直列共振回路、 (3)・・冷陰極管(放電管)、 (4)・・調光信号発生回路、 (5)・・管電流検出回路、 (51)・・管電流検出用抵抗、 (52)・・整流ダイオード、 (53)・・平滑コンデンサ、 (6)・・管電流制御回路、 (61)・・基準電源、 (62)・・誤差増幅器、 (63)・・三角波発振回路、 (64)・・PWMコンパレータ、 (65)・・電圧−周波数変換回路、 (7)・・調光制御回路、 (71)・・ANDゲート(ゲート手段)、 (8)・・駆動回路、 (9)・・調光切替回路、 (91)・・基準電源、 (92)・・コンパレータ(比較手段)、 (93)・・ワンショットパルス発生器(起動信号発生手段)、 (94)・・R-Sフリップフロップ(状態保持手段)、 (95)・・ORゲート(切替手段)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、少なくとも1つのスイッチング素子を含むスイッチング回路を有し且つ該スイッチング回路のスイッチング動作により前記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換する交流変換回路と、該交流変換回路の出力端子に接続された放電管と、調光信号発生回路から出力される調光信号により前記交流変換回路の交流出力を断続的に発生させて前記放電管の輝度を調整する調光制御回路とを備えた放電灯点灯装置において、
前記放電管に流れる管電流を検出する管電流検出回路と、該管電流検出回路に接続された調光切替回路とを備え、
前記調光切替回路は、前記管電流検出回路の検出電流値が基準値より低いときは第1の電圧レベルの出力信号を発生し、前記管電流検出回路の検出電流値が基準値以上となったときに第2の電圧レベルの出力信号を発生する比較手段と、
電源投入時に起動信号を発生する起動信号発生手段と、
該起動信号発生手段が起動信号を発生したときに第1の状態となり、前記比較手段の出力信号が前記第1の電圧レベルの期間は前記第1の状態を保持し、前記比較手段の出力信号が前記第2の電圧レベルとなったときに第2の状態となる状態保持手段と、
該状態保持手段が前記第1の状態のときは前記調光制御回路に付与する前記調光信号を無効にして前記交流変換回路の交流出力を連続的に発生させ、前記状態保持手段が前記第2の状態となったときに前記調光制御回路に前記調光信号を付与する切替手段とを有することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記管電流検出回路の検出電流値が予め設定された電流値となるように前記交流変換回路の交流出力を制御する電流制御信号を出力する管電流制御回路を備えた請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記調光信号発生回路は、前記交流変換回路のスイッチング周波数よりも十分に低い周波数で且つ前記放電管の所望の輝度に対応するデューティ比を有する前記調光信号を出力する請求項1又は2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記調光制御回路は、前記調光切替回路の出力信号により前記管電流制御回路の電流制御信号を連続的又は断続的に出力するゲート手段を有する請求項2又は3に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記管電流制御回路は、前記管電流検出回路の検出信号の電圧レベルに応じてオン・デューティが変化する前記電流制御信号を出力する請求項2〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記管電流制御回路は、前記管電流検出回路の検出信号の電圧レベルに応じて周波数が変化する前記電流制御信号を出力する請求項2〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−185592(P2006−185592A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−75763(P2003−75763)
【出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】