説明

放電灯点灯装置

【課題】 放電灯のフィラメントロスを低減して非常時に放電灯を長時間点灯できる放電灯点灯装置を提供することである。
【解決手段】 通常時には、交流電源を整流して直流を得る整流器13で得られた直流電圧を昇圧回路14で昇圧し、インバータ回路15は昇圧された電圧を高周波電圧に変換する。非常用電源充電回路18は整流器13で得られた直流電力を非常用電源19に充電する。非常用電源昇圧回路20は、非常時に非常用電源19の電圧を昇圧して昇圧回路14の前段に出力する。点灯制御部25は、通常時は昇圧回路14で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し、フィラメント予熱をしながら放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時には非常用電源昇圧回路20からの電圧を昇圧回路14で昇圧して高周波電圧に変換し、フィラメント予熱を停止またはフィラメントに流す電流を減少させて、放電灯17を高周波点灯する非常点灯動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時は交流電源で放電灯を点灯させる常用点灯装置と、交流電源の停電時には非常用電源で放電灯を点灯させる非常用点灯装置とを一体的に形成した放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常時においては放電灯を常用点灯装置で点灯しつつ非常用電源に充電し、商用の交流電源が停電となった場合には、非常用点灯装置で非常用電源からの電源により放電灯を非常灯として点灯させる照明器具がある。このような照明器具では、常用点灯装置と非常用点灯装置とを照明器具内に別々に搭載している。常用点灯装置および非常用点灯装置が個別に装備されているので、構成部品の中に重複するものが多く、部品コストの上昇を招くと共に器具組立にも手数がかかる。そこで、常用点灯装置および非常用点灯装置の構成部品の重複するものを少なくし、部品コストを低減するできるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−38754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、常用点灯装置と非常用点灯装置とを一体形とし常用点灯装置と非常用点灯装置との構成分品を単に共用すると、通常点灯時にフィラメント予熱する場合には、非常点灯時においてもフィラメントの予熱をすることになり、非常点灯時においても通常点灯時のようにフィラメントロスが生じることになるので、非常点灯時間を短くすることになって好ましいことではない。
【0004】
また、常用点灯装置には、放電灯が異常の場合に放電灯の点灯制御を停止する安全回路や、放電灯が未装着状態では点灯制御を停止する装着検出回路が設けられているが、非常点灯時には放電灯が点灯することが優先されるので、これら回路の動作により非常点灯ができなくなってしまうことは好ましいことではない。
【0005】
本発明の目的は、通常点灯時と非常点灯時との動作を異ならせることで、非常点灯動作を良好に行うことができる放電灯点灯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係わる放電灯点灯装置は、通常時は交流電源を整流して得られた直流を高周波変換しフィラメントを有する放電灯を高周波点灯する常用点灯装置と、通常時は交流電源を整流して非常用電源を充電するとともに非常時は非常用電源を電源として放電灯を非常点灯させる非常用点灯装置とを一体的に形成した放電灯点灯装置であって、前記交流電源を整流して直流を得る整流器と;前記整流器で得られた直流電圧を昇圧する昇圧回路と;前記昇圧回路で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯するインバータ回路と;前記整流器で得られた直流電力を非常用電源に充電する非常用電源充電回路と;非常時に前記非常用電源の電圧を昇圧して前記インバータ回路に出力する非常用電源昇圧回路と;通常時はフィラメントに電流を流してフィラメント予熱をしながら前記昇圧回路で昇圧された前記整流器からの直流電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時にはフィラメント予熱を停止またはフィラメントに流す電流を減少させて、前記非常用電源昇圧回路からの電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する非常点灯動作を行う点灯制御部と;
を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明および以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義や技術的意味は以下による。
【0008】
放電灯点灯装置は、通常時は交流電源で放電灯を点灯させる常用点灯装置と、交流電源の停電時には非常用電源で放電灯を点灯させる非常用点灯装置とを、一部の構成回路を共用して一体的に形成したものである。
【0009】
常用点灯装置は、少なくとも、交流電源を整流して直流を得る整流器と、整流器で得られた直流電圧を昇圧する昇圧回路と、昇圧回路で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯するインバータ回路とを有し、非常用点灯装置は、少なくとも、整流器で得られた直流電力を非常用電源に充電する非常用電源充電回路と、交流電源喪失の非常時に非常用電源の電圧を昇圧する非常用電源昇圧回路とを有する。
【0010】
非常用電源は、例えば、ニッケル−カドニウムまたはニッケル−水素からなるバッテリや、電気二重層コンデンサ等であって、非常時に放電灯を点灯するための電源となるものであればよい。
【0011】
常用点灯装置の整流器で得られた直流電力を非常用点灯装置の非常用電源に充電することから、非常用点灯装置では直流電力を得る整流器を共用している。また、非常用点灯装置の非常用電源昇圧回路の出力をインバータ回路を用いて非常点灯動作を行うことになり、常用点灯装置のインバータ回路を共用している。従って、回路構成を簡素化できる。
【0012】
点灯制御部は、共用された常用点灯装置の昇圧回路およびインバータ回路を制御する。通常時の通常点灯動作は、フィラメント予熱をしながら、昇圧回路で昇圧された整流器からの直流電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する。非常時の非常点灯動作は、フィラメント予熱を停止またはフィラメントに流す電流を減少させて、非常用電源昇圧回路からの電圧を昇圧回路で昇圧して高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する。
【0013】
請求項2の発明に係わる放電灯点灯装置は、通常時は交流電源を整流して得られた直流を高周波変換し放電灯を高周波点灯する常用点灯装置と、通常時は交流電源を整流して非常用電源を充電するとともに非常時は非常用電源を電源として放電灯を非常点灯させる非常用点灯装置とを一体的に形成した放電灯点灯装置であって、前記交流電源を整流して直流を得る整流器と;前記整流器で得られた直流電圧を昇圧する昇圧回路と;前記昇圧回路で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯するインバータ回路と;前記整流器で得られた直流電力を非常用電源に充電する非常用電源充電回路と;非常時に前記非常用電源の電圧を昇圧して前記インバータ回路に出力する非常用電源昇圧回路と;通常時は放電灯寿命末期時の安全回路または放電灯の装着検出回路の動作を許可し、前記昇圧回路で昇圧された前記整流器からの直流電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時には安全回路または装着検出回路の動作を禁止し、前記非常用電源昇圧回路からの電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する非常点灯動作を行う点灯制御部と;を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明は、通常時は放電灯寿命末期時の安全回路または放電灯の装着検出回路の動作を許可し、非常時には安全回路または装着検出回路の動作を禁止するようにしたものである。非常時には放電灯が異常となっても可能な限り放電灯の点灯を継続することが望ましい。通常時においては、放電灯のランプ電圧または半波電圧が所定値以上となると安全回路が働き点灯動作を停止させるが、非常時には安全回路の動作を禁止し、放電灯のランプ電圧または半波電圧が所定値以上となっても放電灯の点灯動作を継続し放電灯を点灯させる。また、放電灯のフィラメントが切断されたときまたはフィラメントが検出されないとき、装着検出回路が働き点灯動作を停止させるが、非常時には装着検出回路の動作を禁止し、仮りに放電灯のフィラメントの片側が切断されても放電灯の高周波点灯動作を継続させ放電灯を強制的に点灯させる。これにより、非常時には、可能な限り放電灯の点灯を継続できるようにする。
【0015】
請求項3の発明に係わる放電灯点灯装置は、請求項2の発明において、前記点灯制御部は、放電灯の安全回路または装着検出回路の動作を禁止することに代えて、安全回路または装着検出回路の動作する制限値を大きくしたことを特徴とする。
【0016】
放電灯のランプ電圧が所定値以上の状態で所定時間以上に亘り点灯動作が継続する場合、放電灯だけでなく装置にとっても好ましい状態ではない。一方、非常時においては可能な限り放電灯の点灯を継続できるようにすることが望ましい。そこで、これらの双方を満たすように、非常時には安全回路または装着検出回路の動作する制限値を常用時と比較して大きくし、非常時には放電灯がなるべく消灯しないようにしつつ、危険な状態での点灯動作を停止できるようにした。
【0017】
安全回路または装着検出回路の動作する制限値を大きくすることには、安全回路または装着検出回路の動作する時間を遅延させることも含まれる。通常時には安全回路や装着検出器が動作すると放電灯の点灯動作は即座に停止するが、非常時には放電灯の点灯動作を所定時間だけ許容し、その所定時間の経過後に点灯動作を停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、通常時はフィラメント予熱をしながら放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時にはフィラメント予熱を停止またはフィラメントに流す電流を減少させて、放電灯を高周波点灯する非常点灯動作を行うので、非常時にはフィラメント電流がカットまたは減少する。従って、フィラメントロスが減り非常時には非常用電源による放電灯の長時間点灯が可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、通常時は放電灯の寿命末期時の安全回路または放電灯の装着検出回路の動作を許可し、放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時には放電灯の安全回路または放電灯の装着検出回路の動作を禁止し、放電灯を高周波点灯する非常点灯動作を行うので、非常時には放電灯が異常となっても可能な限り放電灯を点灯できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、安全回路または装着検出回路の動作を禁止するのではなく、安全回路の動作する制限値を大きくするので、放電灯が点灯しない異常状態の場合の点灯制御部の異常動作を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる放電灯点灯装置の回路構成図である。交流電源11は常用点灯装置の雑防回路12を介して整流器13に入力される。整流回路13で整流された直流電圧は昇圧回路14で昇圧され、インバータ回路15に入力される。インバータ回路15は昇圧回路14で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し、負荷回路16の放電灯17に供給し高周波点灯する。一方、整流器13で得られた直流は非常用電源充電回路18に入力され、直流電力を非常用電源19に充電する。また、非常用電源昇圧回路20は交流電源11の喪失等の非常時に非常用電源19の電圧を昇圧して昇圧回路14の前段に出力するように接続されている。
【0022】
雑防回路12、整流器13、昇圧回路14、インバータ回路15、負荷回路16により、放電灯17の通常点灯動作を行う常用点灯装置を形成しており、雑防回路12、整流器13、非常用電源充電回路18、非常用電源昇圧回路20により、放電灯17の非常点灯動作を行う非常用点灯装置を形成している。雑防回路12および整流器13は、常用点灯装置と非常用点灯装置とで共用している。また、非常用電源昇圧回路20の出力を昇圧回路14の前段に接続し、非常時においても、昇圧回路14、インバータ回路15、負荷回路16を使用して放電灯17を非常時点灯動作させる。従って、昇圧回路14、インバータ回路15、負荷回路16も共用している。しかも、これらは一体的に形成されている。
【0023】
なお、図1では放電灯17が1個である場合について示しているが、放電灯が2個である2灯用の放電灯点灯装置にも適用できる。以下の説明では、放電灯17が1個である1灯用の場合について説明する。
【0024】
壁切りスイッチ部21はスイッチ22がオンしたときに導通するフォトダイオード23を有し、フォトダイオード23の導通によりフォトトランジスタ24が動作し点灯制御部25を動作させる。スイッチ22をオフしたときはフォトダイオード23が非導通となるので、フォトトランジスタ24が不動作となり点灯制御部25の放電灯点灯回路部を不動作とする。なお、スイッチ22がオフであったとしても、雑防回路12および整流器13は動作しており、整流回路13は非常用電源充電回路18に直流電圧を印加している。従って、スイッチ22がオフで点灯制御部25の放電灯点灯回路部が不動作状態であり、放電灯19が消灯していても、非常用電源充電回路18を動作させて非常用電源19に充電をすることは可能であり、非常時はスイッチ22がオフでも非常点灯を行える回路構成である。
【0025】
次に、点灯制御部25には、フォトトランジスタ24の動作や不動作に加え、非常用電源充電回路18の切替回路26の出力信号も入力される。非常用電源充電回路18の切替回路26は、交流電源11の電圧が正常範囲を逸脱したか否かを監視するとともに、交流電源の電圧が所定値以下を監視し、非常点灯動作への切り替えが必要であるか否かを判定する。
【0026】
昇圧回路14は昇圧制御部28によりスイッチ素子29をオンオフ制御して入力電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路であり、非常時調光回路30を備えている。非常時調光回路30のスイッチ素子Q1は点灯制御部25からの指令でオンオフ制御される。また、非常用電源昇圧回路20は昇圧トランス31を備えており、この昇圧トランス31を動作させるスイッチ素子Q2を備えている。非常用電源昇圧回路20のスイッチ素子Q2は点灯制御部25からの指令でオンオフ制御される。また、点灯制御部25および昇圧制御部28の制御電源は、通常時にはスナバ回路32から供給するようにしており、非常時には非常用電源昇圧回路20の昇圧トランス31から供給するようにしている。
【0027】
次に、点灯制御部25は、通常時において放電灯17のフィラメント予熱回路33a、33bによりフィラメント予熱を行っている。そして、壁切りスイッチ部21のスイッチ22がオンであり、交流電源11の電圧が正常範囲内であるときは、非常時調光回路30のスイッチ素子Q1をオンして調光制御を停止し、非常用電源昇圧回路20のスイッチ素子Q2をオフにして非常用電源昇圧回路20の動作を停止する。この状態では、昇圧回路14には整流器13からの直流電圧が印加されている。
【0028】
点灯制御部25は、スイッチ素子27a、27bをオンオフ制御して、昇圧回路14で昇圧された整流器13からの直流電圧を高周波電圧に変換し、放電灯17を高周波点灯する通常点灯動作を行う。例えば、放電灯17の点灯周波数が負荷回路16の無負荷時共振周波数の近傍の周波数となるように点灯制御する。これにより、通常時の放電灯17の通常点灯状態では定電流特性を持った負荷特性となる。
【0029】
一方、点灯制御部25は、切替回路26から交流電源11の電圧が正常範囲を逸脱したことを入力すると、インバータ回路15のスイッチ素子27a、27bのオンオフ動作(発振動作)を停止する。図2は切替回路26の動作特性の説明図である。切替回路26は交流電源11の電圧を監視しており、交流電源11の電圧がしきい値V1以上であるときは正常範囲内である判断する。この場合、点灯制御部25は放電灯17を交流電源11からの電力で点灯する(AC点灯)。そして、交流電源11の電圧がしきい値V1未満となると、切替回路26は交流電源11の電圧が正常範囲を逸脱した判断する。点灯制御部25は発振動作を停止し放電灯17を不点灯状態とする(不点灯)。さらに、交流電源11の電圧が所定値V2以下となると、切替回路26は非常点灯動作を開始すべき状態であると判断する。点灯制御部25は停止状態から非常点灯動作に切り替える。
【0030】
ここで、通常点灯動作(AC点灯)と非常点灯動作(DC点灯)との間で、不点灯状態を持たせているのは、交流電源11の電圧が通常点灯動作と非常点灯動作との境界で変動したときに、通常点灯動作と非常点灯動作とが頻繁に切り替わることを避けるためである。
【0031】
点灯制御部25は、切替回路26から非常点灯動作すべき状態信号を入力すると、非常時調光回路30のスイッチ素子Q1をオフとして調光制御を有効とし、非常用電源昇圧回路20のスイッチ素子Q2をオンして非常用電源昇圧回路20の昇圧トランス31を動作させる。この状態では、昇圧トランス31の二次電圧が昇圧回路14の前段に入力され、昇圧回路14により所定電圧に昇圧される。この場合、昇圧回路14に入力される非常用電源昇圧回路20の出力電圧が変動したとしても、昇圧回路14で所定値に昇圧されるので、昇圧回路14の出力電圧はほぼ一定となり、インバータ回路15に入力される電圧はほぼ一定となる。そして、インバータ回路15による点灯制御により放電灯17が点灯する。
【0032】
点灯制御部25は、放電灯17が点灯した後に放電灯17のフィラメント予熱回路33a、33bのフィラメント予熱を停止する。このフィラメント予熱の停止により、非常用電源19から供給される電力はフィラメント予熱のために消費されることがなくなり、非常点灯時には放電灯17の点灯にだけ使用される。
【0033】
図3は、フィラメント予熱回路33a、33bのフィラメント予熱停止手段の一例を示す説明図である。図3に示すフィラメント予熱停止手段は、フィラメント予熱回路33a、33bにスイッチSWa、SWbを設けて構成されている。フィラメント予熱を行うときはスイッチSWa、SWbをオンとしてフィラメント電流を流し、フィラメント予熱を停止するときはスイッチSWa、SWbをオフしてフィラメント電流をカットする。
【0034】
図4は、フィラメント予熱回路33a、33bのフィラメント予熱停止手段の他の一例を示す説明図である。図4に示すフィラメント予熱停止手段は、インバータ回路15のスイッチ素子27bに並列に設けられたフィラメント予熱電源回路34にスイッチSW1を設けて構成される。フィラメント予熱電源回路34のフィラメントトランスFTとコンデンサC1との直列回路にスイッチSW1を直列に接続して構成される。フィラメント予熱を行うときはスイッチSW1をオンとしてフィラメント電流を流し、フィラメント予熱を停止するときはスイッチSW1をオフしてフィラメント電流をカットする。
【0035】
以上の説明では、非常点灯時にフィラメント予熱を停止する場合について説明したが、フィラメント予熱を下げるようにしてもよい。図5はフィラメント予熱回路33a、33bのフィラメント予熱下げ手段の一例を示す説明図である。図5に示すフィラメント予熱下げ手段は、インバータ回路15のスイッチ素子27bに並列に設けられたフィラメント予熱電源回路34のコンデンサC1と並列にスイッチSW2とコンデンサC2との直列回路を設けて構成される。通常時にフィラメント予熱を行うときはスイッチSW2をオンとしてフィラメント電流を流し、フィラメント予熱を下げるときはスイッチSW2をオフしてフィラメント電流を減少させる。すなわち、スイッチSW2のオンオフによりキャパシタンスを変化させフィラメント電流を変化させる。
【0036】
第1の実施の形態によれば、放電点灯動作時と非常灯点灯動作時とで雑防回路12および整流器13を共用するので回路構成を簡素化できる。また、昇圧回路14、インバータ回路15、負荷回路16も共用できる。また、非常時にはフィラメント電流をカットまたは減少させるので、フィラメントロスが減り非常時には非常用電源19による放電灯の長時間点灯が可能となる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態に係わる放電灯点灯装置の回路構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、放電灯寿命末期時の安全回路35および放電灯の装着検出回路36を追加して設け、点灯制御部25は、通常時は放電灯寿命末期時の安全回路35や装着検出回路36の動作を許可し、非常時には安全回路35や装着検出回路36の動作を禁止するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0038】
安全回路35は放電灯17のランプ電圧を監視し、ランプ電圧が所定値以上となると点灯制御部25に対してランプ異常電圧が発生したことを通知する。ランプ異常電圧を検出する所定値としては放電灯寿命末期時のランプ異常電圧が設定される。点灯制御部25は、通常運転時に安全回路35からランプ異常電圧を入力すると放電灯17の点灯制御動作を停止し、装置が異常動作することのないように保護する。一方、非常運転時には安全回路35の動作を禁止し、放電灯17のランプ電圧が異常となっても点灯制御部25は非常時点灯動作を継続して放電灯17を点灯維持する。従って、非常時には放電灯17が異常となっても可能な限り放電灯17を点灯できる。
【0039】
また、装着検出回路36は放電灯17のフィラメントの状態を監視し、フィラメントが切断されたときや検出できないとき等になったとき、点灯制御部25に対して放電灯が未装着であることを通知する。点灯制御部25は、通常運転時に装着検出回路36から放電灯が未装着であることを入力すると放電灯17の点灯制御動作を停止し、装置が異常動作することのないように保護する。一方、非常運転時には装着検出回路36の動作を禁止し、点灯制御部25は非常時点灯動作を継続して放電灯17を点灯維持する。従って、非常時には放電灯17が異常となっても可能な限り放電灯17を半波放電状態で点灯できる。
【0040】
ここで、図6には図示を省略しているが、非常用電源19が充電中であることを報知する表示器が設けられている。この表示器は、例えば非常用電源19が充電中であるときは連続点灯している。安全回路24が放電灯寿命末期を検出したときは、例えば、この表示器を点滅点灯して放電灯17が寿命末期になったことを報知する。
【0041】
以上の説明では、非常時には安全回路35や装着検出回路36の動作を禁止するようにしたが、安全回路35や装着検出回路36の動作する制限値を通常時と比較して大きくし、安全回路35や装着検出回路36が動作する動作領域を狭くするようにしてよい。これにより、非常時において放電灯17を点灯する範囲が広くなる。この場合においても、充電中を表示する表示器に、安全回路35や装着検出回路36の動作する制限値が通常時より大きくなったこと(異常状態となったこと)を表示することも可能である。例えば、点滅を早めた表示あるいは表示色を変えた表示等で識別表示する。
【0042】
また、以上の説明では、非常時には安全回路35や装着検出回路36の動作を禁止するようにしたが、通常時と同様に安全回路35や装着検出回路36を動作させるようにしてもよい。
【0043】
第2の実施の形態によれば、非常時には安全回路35や装着検出回路36の動作を禁止または動作範囲を狭くするので、非常時には極力放電灯17を点灯継続することができる。また、通常時と同様に安全回路35や装着検出回路36を動作させて保護動作を優先させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる放電灯点灯装置の回路構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態における非常用電源充電回路の切替回路の動作特性の説明図。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるフィラメント予熱回路のフィラメント予熱停止手段の一例を示す説明図。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるフィラメント予熱回路のフィラメント予熱停止手段の他の一例を示す説明図。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるフィラメント予熱回路のフィラメント予熱下げ手段の一例を示す説明図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係わる放電灯点灯装置の回路構成図。
【符号の説明】
【0045】
11…交流電源、12…雑防回路、13…整流器、14…昇圧回路、15…インバータ回路、16…負荷回路、17…放電灯、18…非常用電源充電回路、19…非常用電源、20…非常用電源昇圧回路、21…壁切りスイッチ部、22…スイッチ、23…フォトダイオード、24…フォトトランジスタ、25…点灯制御部、26…切替回路、27…スイッチ素子、28…昇圧制御部、29…スイッチ素子、30…非常時調光回路、31…昇圧トランス、32…スナバ回路、33…フィラメント予熱回路、34…フィラメント予熱電源回路、35…安全回路、36…装着検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時は交流電源を整流して得られた直流を高周波変換しフィラメントを有する放電灯を高周波点灯する常用点灯装置と、通常時は交流電源を整流して非常用電源を充電するとともに非常時は非常用電源を電源として放電灯を非常点灯させる非常用点灯装置とを一体的に形成した放電灯点灯装置であって、
前記交流電源を整流して直流を得る整流器と;
前記整流器で得られた直流電圧を昇圧する昇圧回路と;
前記昇圧回路で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯するインバータ回路と;
前記整流器で得られた直流電力を非常用電源に充電する非常用電源充電回路と;
非常時に前記非常用電源の電圧を昇圧して前記インバータ回路に出力する非常用電源昇圧回路と;
通常時はフィラメントに電流を流してフィラメント予熱をしながら前記昇圧回路で昇圧された前記整流器からの直流電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時にはフィラメント予熱を停止またはフィラメントに流す電流を減少させて、前記非常用電源昇圧回路からの電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する非常点灯動作を行う点灯制御部と;
を備えたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
通常時は交流電源を整流して得られた直流を高周波変換し放電灯を高周波点灯する常用点灯装置と、通常時は交流電源を整流して非常用電源を充電するとともに非常時は非常用電源を電源として放電灯を非常点灯させる非常用点灯装置とを一体的に形成した放電灯点灯装置であって、
前記交流電源を整流して直流を得る整流器と;
前記整流器で得られた直流電圧を昇圧する昇圧回路と;
前記昇圧回路で昇圧された電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯するインバータ回路と;
前記整流器で得られた直流電力を非常用電源に充電する非常用電源充電回路と;
非常時に前記非常用電源の電圧を昇圧して前記インバータ回路に出力する非常用電源昇圧回路と;
通常時は放電灯寿命末期時の安全回路または放電灯の装着検出回路の動作を許可し、前記昇圧回路で昇圧された前記整流器からの直流電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する通常点灯動作を行い、非常時には安全回路または装着検出回路の動作を禁止し、前記非常用電源昇圧回路からの電圧を高周波電圧に変換し放電灯を高周波点灯する非常点灯動作を行う点灯制御部と;
を備えたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記点灯制御部は、放電灯の安全回路または装着検出回路の動作を禁止することに代えて、安全回路または装着検出回路の動作する制限値を大きくしたことを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−48657(P2007−48657A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233158(P2005−233158)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】