説明

故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置およびパルス増幅器故障検出方法

【課題】小型化が可能な故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係る故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置は、入力されるパルスを増幅して出力するパルス増幅器11と、パルス増幅器11の入力端子に接続され、パルス増幅器11に入力されるパルスに同期したパルス増幅器11を動作させる制御信号を形成して、この制御信号を入力端子に入力するパルス増幅器制御回路12と、パルス増幅器制御回路12に接続され、制御信号を連続波に変換する平均化回路17と、平均化回路17に接続され、平均化回路17から出力された連続波の電圧Vgaveとしきい値電圧Vsとを比較する比較回路18と、比較回路18に接続され、比較回路18から出力される差分電圧(Vgave−Vs)に基づいて、パルス増幅器11の故障、あるいはパルス増幅器制御回路12の異常を検出する警報装置23と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置およびパルス増幅器故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置等に用いられるパルス増幅装置は、内部に、レーダ装置の受信期間に増幅機能を停止させ、送信期間にのみ増幅動作する送信用増幅器を有している。増幅機能の制御は、例えば、増幅器のゲートにパルスを入力することによって制御される。
【0003】
従来のこのパルス増幅装置は、送信用増幅器の故障を検出するために、増幅器とパルス増幅装置の出力端子との間に、方向性結合器等のRF結合回路によって接続された故障検出回路(検波回路および比較回路)を有しており、この回路により、出力RF信号を検波および比較し、故障の有無を判定していた。
【0004】
すなわち、送信用増幅器が故障して出力RF信号の電圧レベルが低下すると、検波出力電圧が低下し、この低下した電圧が比較回路のしきい値電圧よりも小さい場合に、故障を判定する。
【0005】
しかし、この種のパルス増幅装置は、送信用増幅器と増幅装置の出力端子との間に故障検出回路を接続させるためにRF結合回路が必要となり、この回路が、パルス増幅装置の小型化を阻害する要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4434510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、この問題に鑑みてなされたものであり、小型化が可能な故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置およびパルス増幅器故障検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置は、入力されたパルスを増幅して出力するパルス増幅器と、このパルス増幅器の入力端子に接続され、前記パルス増幅器に入力される前記パルスに同期して前記パルス増幅器を動作させる制御信号を形成して、この制御信号を前記入力端子に入力するパルス増幅器制御回路と、このパルス増幅器制御回路に接続され、前記制御信号を連続波に変換する平均化回路と、この平均化回路に接続され、前記平均化回路から出力された前記連続波の電圧としきい値電圧とを比較する比較回路と、この比較回路に接続され、前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記パルス増幅器の故障、あるいは前記パルス増幅器制御回路の異常を検出する警報装置と、を具備することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の実施形態に係るパルス増幅器故障検出方法は、パルス増幅器に入力されるパルスに同期して前記パルス増幅器を動作させる複数の制御信号をパルス増幅器制御回路によって形成するステップと、前記パルス増幅器制御回路によって形成された前記複数の制御信号を分岐し、分岐された一方の前記複数の制御信号を前記パルス増幅器に入力すると同時に、分岐された他方の前記複数の制御信号を、前記複数の制御信号を連続波に変換する平均化回路に入力するステップと、前記平均化回路に入力された前記複数の制御信号を連続波に変換するステップと、前記連続波の電圧と、しきい値電圧とを、比較回路に入力し、前記比較回路からの出力信号を検出することにより、前記パルス増幅器の故障あるいは前記パルス増幅器制御回路の異常を検出するステップと、を具備することを特徴とする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置の構成を示すブロック図である。
【図2】平均化回路(積分回路)を示す回路図である。
【図3】比較回路(コンパレータ)を示す回路図である。
【図4】パルス増幅器が故障していない場合において、パルス増幅装置が適用されたレーダの動作を説明するための説明図であり、同図(a)は、レーダの運用状態の推移、同図(b)は、パルス増幅器の電源状態の推移、同図(c)は、パルス増幅器の状態の推移、同図(d)は、パルス増幅器の入力端子に印加される電圧の推移、同図(e)は、平均化回路の出力電圧の推移、同図(f)は、故障検出回路の出力に基づくパルス増幅器の故障(パルス増幅器の故障の可能性)の判定結果、をそれぞれ示す。
【図5】パルス増幅器が故障した場合において、パルス増幅装置が適用されたレーダの動作を説明するための説明図であり、同図(a)は、レーダの運用状態の推移、同図(b)は、パルス増幅器の電源状態の推移、同図(c)は、パルス増幅器の状態の推移、同図(d)は、パルス増幅器の入力端子に印加される電圧の推移、同図(e)は、平均化回路の出力電圧の推移、同図(f)は、故障検出回路の出力に基づくパルス増幅器の故障(パルス増幅器の故障の可能性)の判定結果、をそれぞれ示す。
【図6】パルス増幅器が故障する可能性がある場合(パルス増幅器制御回路に異常が発生した場合)において、パルス増幅装置が適用されたレーダの動作を説明するための説明図であり、同図(a)は、レーダの運用状態の推移、同図(b)は、パルス増幅器の電源状態の推移、同図(c)は、パルス増幅器の状態の推移、同図(d)は、パルス増幅器の入力端子に印加される電圧の推移、同図(e)は、平均化回路の出力電圧の推移、同図(f)は、故障検出回路の出力に基づくパルス増幅器の故障(パルス増幅器の故障の可能性)の判定結果、をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、故障または異常検出機能を有するパルス増幅装置を、パルス増幅装置と称する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るパルス増幅装置の構成を示すブロック図である。図1に示すパルス増幅装置は、パルス増幅器11、パルス増幅器制御回路12、および故障検出回路13を有するものである。
【0013】
パルス増幅器11は、増幅器RF部10内に設けられており、後述するパルス増幅器制御回路12から出力される制御信号が、パルス増幅器11に入力されるパルスに同期して入力された場合に、パルスの電力を増幅させて出力するものである。
【0014】
このように、パルス増幅器11は、パルスの電力を増幅させる時間帯に限って増幅動作を行う。従って、本実施形態に係るパルス増幅装置の消費電力が低減される。さらに、このパルス増幅装置をレーダの送信回路に適用した場合には、受信ダイナミックレンジが改善される。
【0015】
このパルス増幅器11の入力端子は、パルス増幅装置の入力端14aにDCカットコンデンサ15aを介して接続され、パルス増幅器11の出力端子は、パルス増幅装置の出力端14bにDCカットコンデンサ15bを介して接続されている。
【0016】
また、このパルス増幅器11の出力端子は、他端が接地され、一定の電圧Vdsを供給するバイアス電圧源16の一端に接続されている。
【0017】
このパルス増幅器11は、例えばGaAsFETチップ等の電力増幅素子である。この場合、FETチップのゲート端子が入力端子となり、FETチップのドレイン端子が出力端子となる。なお、FETチップのソース端子は、接地される。なお、電力増幅素子は、電力を増幅して出力することが可能な素子であればよく、例えばGaN−HEMTであってもよい。
【0018】
パルス増幅器制御回路12は、パルス増幅器11に入力されるパルスに同期してパルス増幅器11を動作させるための制御信号を形成し、出力する回路である。パルス増幅器制御回路12の出力端は、一端が2分岐される線路を介して、パルス増幅器11の入力端子に接続されている。
【0019】
なお、2分岐された線路の一方は、上述のようにパルス増幅器11の入力端子に接続されるが、2分岐された線路の他方は、後述する故障検出回路13に接続される。
【0020】
パルス増幅器制御回路12により形成される制御信号は、パルス増幅器11に入力されるパルスに同期した信号である。すなわち、パルス増幅器制御回路12は、制御信号を形成し、形成された制御信号を、パルス増幅器11に入力されるパルスに同期してパルス増幅器11に入力するための回路である。
【0021】
パルス増幅器11に入力されるパルスと制御信号との同期は、例えば、パルス増幅器11に入力されるパルスの一部をトリガーとして用い、これに基づいてパルス増幅器制御回路12が、所望の制御信号を出力すればよい。
【0022】
ここで、制御信号は、上述のようにパルス増幅器11に入力されると同時に、後述する故障検出回路13にも入力される。すなわち、制御信号は、2分岐され、その一方はパルス増幅器11に入力されるとともに、分岐された他方は、後述する故障検出回路13に入力される。
【0023】
故障検出回路13は、分岐された制御信号の他方に基づいて、パルス増幅器11が故障していること、あるいはパルス増幅器制御回路12の異常により、パルス増幅器11が故障する可能性があること、を検出するとともに、故障または異常が検出された場合には、この旨をユーザに警報するための回路である。故障検出回路13は、パルス増幅器制御回路12に接続されている。
【0024】
この故障検出回路13は、平均化回路17、比較回路18、および警報装置23によって構成されている。
【0025】
平均化回路17は、分岐された制御信号の他方を連続波に変換するための回路である。平均化回路17は、パルス増幅器制御回路12に接続されている。
【0026】
この平均化回路17は、例えば積分回路17´からなる。図2は、積分回路17´を示す等価回路図である。図2に示すように、積分回路17´は、抵抗19とコンデンサ20と、によって構成される。
【0027】
この積分回路17´は、制御信号の立ち上がり部分が抵抗19を介してコンデンサ20に入力されると同時にコンデンサ20が充電を開始するため、出力される電圧が上昇し、制御信号の立ち下がり部分が抵抗19を介してコンデンサ20に入力された後は、コンデンサ20が放電を開始するため、出力電圧が低下する回路である。なお、出力電圧は、抵抗19の抵抗値Rとコンデンサ20の容量Cとによって定まるCR時定数に従って上昇または低下する。
【0028】
従って、この積分回路17´を平均化回路17として適用するために、抵抗19およびコンデンサ20としては、CR時定数が制御信号の繰り返し周波数に比べて十分に小さくなるような抵抗値Rの抵抗19、および容量Cのコンデンサ20が適用される。
【0029】
比較回路18は、平均化回路17から出力された連続波の電圧Vgaveとしきい値電圧Vsとを比較するための回路である。図1に示すように、比較回路18は、平均化回路17に接続されている。
【0030】
この比較回路18は、例えばコンパレータ18´からなる。図3は、コンパレータ18´を示す等価回路図である。図3に示すように、コンパレータ18´は、非反転入力端子、反転入力端子、および出力端子を有している。また、このコンパレータ18´の反転入力端子は、一端が接地され、しきい値電圧Vsを供給するしきい値電圧源21の他端に接続されており、非反転入力端子は、平均化回路17(積分回路17´)の出力端に接続されている。
【0031】
なお、しきい値電圧源21の他端がコンパレータ18´の反転入力端子に接続され、平均化回路17(積分回路17´)の出力端が非反転入力端子に接続されてもよい。
【0032】
このコンパレータ18´は、平均化回路17(積分回路17´)から出力された連続波の電圧Vgaveと、しきい値電圧源の電圧Vs(しきい値電圧Vs)との差分電圧(Vgave−Vs)を出力するものである。
【0033】
警報装置23は、比較回路18から出力される差分電圧(Vgave−Vs)に基づいて、パルス増幅器11が故障していること、あるいはパルス増幅器制御回路13の異常により、パルス増幅器11が故障する可能性があること、を検出し、故障または異常が検出された場合には、ユーザにこの旨を警報するための装置である。この警報装置23は、比較回路18に接続されている。
【0034】
ここで、警報とは、ユーザに対して、パルス増幅器11の故障、またはパルス増幅器制御回路13の異常を知らせるための手段を意味する。この手段は、例えば音、光等であってもよいし、故障または異常を表示装置に表示する表示手段であってもよい。
【0035】
すなわち、上述の故障検出回路13は、パルス増幅器制御回路12から出力され、分岐された制御信号の他方の電圧を平均化して連続波に変換し、この連続波の電圧Vgaveとしきい値電圧Vsとの差分電圧(Vgave−Vs)を出力し、この差分電圧(Vgave−Vs)に基づいて、パルス増幅器11の故障、またはパルス増幅器制御回路12の異常、を検出してユーザに警報するための回路である。
【0036】
なお、このような図1に示すパルス増幅装置において、パルス増幅器11の入力端子とパルス増幅器制御回路12との間、およびパルス増幅器11の出力端子とバイアス電圧源16との間には、それぞれ、一端が接地されたコンデンサ22a、22bの他端が接続されている。
【0037】
これらのコンデンサ22a、22bは、例えばλ/4波長の長さを有する線路、いわゆるショートスタブにより構成されており、パルス増幅装置に入力されたパルスが、パルス増幅器制御回路13側に流れることを抑制するとともに、パルス増幅器11から出力されたパルスが、バイアス電圧源16側に流れることを抑制するために設けられている。
【0038】
以上に示すパルス増幅装置は、例えばレーダの送信側回路として適用される。
【0039】
次に、上述のパルス増幅装置の動作を、図4を参照して説明する。図4は、パルス増幅器11が故障していない場合において、パルス増幅装置が適用されたレーダの動作を説明するための説明図である。
【0040】
なお、図4(a)は、レーダの運用状態の推移、同図(b)は、パルス増幅器11の電源状態の推移、すなわちパルス増幅器11のON/OFF状態の推移、同図(c)は、パルス増幅器11の状態の推移、同図(d)は、パルス増幅器11の入力端子に印加される電圧の推移、同図(e)は、平均化回路17の出力電圧の推移、同図(f)は、故障検出回路13の出力に基づくパルス増幅器11の故障(パルス増幅器11の故障の可能性)の判定結果、をそれぞれ示している。
【0041】
図4に示すように、レーダを、パルス増幅器11に入力されるパルスに同期して、受信状態(Rx)と送信状態(Tx)とが繰り返されるように動作させる場合(同図(a))、送信状態(Tx)となる時間帯に限ってパルス増幅器11が増幅動作を行い(パルス増幅器11をONさせる)、その他の時間帯はパルス増幅器11が増幅動作を行わない(パルス増幅器11をOFFさせる)ようにパルス増幅器11を制御すればよい(同図(b))。
【0042】
このようにパルス増幅器11を動作させる場合、パルス増幅器11が増幅動作を行う(ONさせる)ときには例えば−1V、パルス増幅器11が増幅動作を行わない(OFFさせる)ときには例えば−4V(ピンチオフ電圧以上)の電圧を有する制御信号がパルス増幅器11の入力端子に入力されるように、パルス増幅器制御回路12において制御信号を形成し、出力する(同図(d))。
【0043】
なお、パルス増幅器11の入力端子に、パルス増幅器11に入力されるパルスとともに、例えば‐1Vを印加した場合には、ドレイン電流Idsが流れ、パルス増幅器11が増幅動作を行う(ONする)。これに対して、パルス増幅器11の入力端子に例えば‐4Vを印加した場合には、ドレイン電流Idsが流れなくなり、パルス増幅器11が増幅動作を停止する(OFFする)。
【0044】
パルス増幅器11が故障しておらず、正常な状態である場合(同図(c))、同図(d)に示されるような電圧(“1”レベルの電圧が−1V、“0”レベルの電圧が−4V)を有する制御信号を、パルス増幅器11に入力されるパルスとともにパルス増幅器11に入力することにより、パルス増幅器11は、所望の増幅動作を行う。
【0045】
ここで、パルス増幅器11の入力端子には、パルス増幅器制御回路12から出力され、2分岐された一方の制御信号が、パルス増幅器11に入力されるパルスとともに入力される。これにより、パルス増幅装置の入力端14aから入力されるパルスの電力は増幅されて、パルス増幅装置の出力端14bから出力される。
【0046】
一方で、パルス増幅器制御回路12から出力され、2分岐された他方の制御信号は、故障検出回路13に入力される。
【0047】
2分岐された他方の制御信号が故障検出回路13に入力される、すなわち、平均化回路17に入力されると、制御信号は、一定の電圧Vgaveを有する連続波に変換され、出力される(同図(e))。
【0048】
ここで、平均化回路17は、所望の時間内に含まれる複数の制御信号を連続波に変換するが、パルス増幅器11が熱破壊される指標を示す熱時定数より短い時間内に含まれる複数の制御信号を連続波に変換することが好ましい。これにより、後述するように、パルス増幅器制御回路12の異常を検出した場合に、パルス増幅器11が熱破壊により故障に至る前に、パルス増幅器11の動作を停止させる等の対応が可能となる。
【0049】
平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveは、後段の比較回路18の非反転入力端子に印加される。ここで、比較回路18の反転入力端子には、予め、パルス増幅器11が正常な状態である場合に平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveよりも高いしきい値電圧Vsを印加しておく(同図(e))。これにより、比較回路18からは、負電圧(Vgave−Vs)が出力される。
【0050】
警報装置23に負電圧(Vgave−Vs)が入力された場合、警報装置23は、負電圧(Vgave−Vs)を検出することにより、パルス増幅器11が正常な状態であると判定する(同図(f))。
【0051】
なお、平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveが比較回路18の反転入力端子に印加され、しきい値電圧Vsが非反転入力端子に印加される場合には、比較回路18からは正電圧(Vgave−Vs)が出力され、警報装置23によって、この正電圧(Vgave−Vs)を検出することにより、パルス増幅器11が正常な状態であることを判定してもよい。
【0052】
次に、以上のパルス増幅装置の動作に基づいて、パルス増幅器故障検出方法を、図5および図6を参照して説明する。図5は、パルス増幅器11が故障した場合、図6は、パルス増幅器制御回路12の異常により、パルス増幅器11が故障する可能性がある場合、のパルス増幅器故障検出方法を説明するための説明図である。なお、各図の(a)〜(f)は、それぞれ図4(a)〜(f)に対応している。
【0053】
まず、図5を参照して、パルス増幅器11が故障した場合のパルス増幅装置の動作を説明する。パルス増幅器11が正常な状態である場合(同図(c))、上述のように、比較回路13からは、負電圧(Vgave−Vs)が出力され、警報装置23は、パルス増幅器11が正常な状態であることを判定する。
【0054】
これに対して、パルス増幅器11が故障した場合(同図(c))、パルス増幅器11の入力インピーンダンスが低下し、入力端子は0Vに近い状態となる。パルス増幅器11が例えばFETである場合、入力端子、すなわちゲート端子は、ソース端子に短絡(ショート)した状態となり、0Vに近い状態となる。
【0055】
この場合、パルス増幅器制御回路12から制御信号を出力しても、パルス増幅器11の入力端子の電圧は、0Vに近い状態から変化することがなくなる。従って、平均化回路17の入力端子に印加される電圧も同様に、0Vに近い状態から変化しない(同図(d))。
【0056】
従って、パルス増幅器11の故障に伴って、平均化回路17から出力される連続波の電圧(Vgave)は0V近くまで上昇し、比較回路18の非反転入力端子に印加される電圧は、しきい値電圧Vsを超える(同図(e))。これにより、比較回路18から出力される電圧は、負電圧から正電圧(Vgave−Vs)に切り替わる。
【0057】
この比較回路18から出力される正電圧(Vgave−Vs)を警報装置23において検出することにより、警報装置23は、パルス増幅器11が故障していることを判定する(同図(f))。
【0058】
なお、平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveが比較回路18の反転入力端子に印加され、しきい値電圧Vsが非反転入力端子に印加される場合、比較回路18から出力される電圧は、正電圧から負電圧(Vgave−Vs)に切り替わり、この負電圧(Vgave−Vs)を警報装置23において検出することにより、パルス増幅器11が故障していることを判定してもよい。
【0059】
警報装置23において、パルス増幅器11が故障していることが判定された場合、警報装置23は、ユーザに対して、パルス増幅器11が故障していることを警報する。ユーザは、この警報により、例えばパルス増幅器11の動作を停止する。
【0060】
次に、図6を参照して、パルス増幅器11が故障する可能性がある場合(パルス増幅器制御回路12に異常が発生した場合)のパルス増幅装置の動作を説明する。パルス増幅器11が正常な状態である場合(同図(c))、上述のように、比較回路18からは、負電圧(Vgave−Vs)が出力される。
【0061】
これに対して、例えばパルス増幅器制御回路12の異常により、パルス増幅器制御回路12から出力される制御信号のデューティー比が高くなった(制御信号の“1”レベルが出力される周期が短くなった)場合(同図(c))、パルス増幅器11の入力端子に入力される電力が増加し、この状態が続けば、パルス増幅器11は熱破壊される。
【0062】
制御信号のデューティー比が高くなった場合であっても、図5に示されるパルス増幅器11が故障した場合と同様に、平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveは上昇し、比較回路18の非反転入力端子に印加される電圧は、しきい値電圧Vsを超える(同図(e))。これにより、比較回路18から出力される電圧は、負電圧から正電圧(Vgave−Vs)に切り替わる。
【0063】
この正電圧(Vgave−Vs)を警報装置23において検出することにより、警報装置23は、パルス増幅器11が故障する可能性があること、すなわち、パルス増幅器制御回路12に異常が発生していることを判定する(同図(f))。
【0064】
なお、平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveが比較回路18の反転入力端子に印加され、しきい値電圧Vsが非反転入力端子に印加される場合には、比較回路18からは、正電圧から負電圧(Vgave−Vs)に切り替わって出力され、この負電圧(Vgave−Vs)を警報装置23によって検出することにより、警報装置23は、パルス増幅器制御回路12に異常が発生していることを判定してもよい。
【0065】
警報装置23において、パルス増幅器制御回路12に異常が発生していることが判定された場合、警報装置23は、ユーザに対して、パルス増幅器制御回路12に異常が発生していることを警報する。ユーザは、この警報により、例えばパルス増幅器11の動作を停止する。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態に係るパルス増幅装置によれば、パルス増幅器11とパルス増幅装置の出力端14bとの間にRF結合回路を接続せずに、故障検出回路13は、パルス増幅器制御回路12に、これらを接続する線路を介して接続されている。従って、小型化が可能なパルス増幅装置、およびこのパルス増幅装置によるパルス増幅器故障検出方法を提供することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るパルス増幅装置によれば、パルス増幅器11の出力の一部を分岐することなく、パルス増幅器制御回路12から出力される制御信号の一部を分岐して、故障検出回路13に入力する。従って、パルス増幅装置の内部ロスが抑制される。
【0068】
以上に、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
例えば、上述の実施形態に係るパルス増幅装置において、平均化回路17は、積分回路17´により構成されたが、平均化回路17は、入力された制御信号を連続波に変換可能な回路であればよく、積分回路17´に限定されない。
【0070】
また、上述の実施形態に係るパルス増幅装置において、比較回路18は、コンパレータ18´により構成されたが、比較回路18は、パルス増幅器11の故障またはパルス増幅器制御回路12の異常により、平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveが、通常に出力される電圧とは異なることを検出可能な回路であればよく、コンパレータ18´に限定されない。
【0071】
また、上述の実施形態に係るパルス増幅装置において、通常は、パルス増幅器制御回路12の異常により、パルス増幅器制御回路12から出力される制御信号のデューティー比が低くなった(制御信号の“1”レベルが出力される周期が長くなった)場合には、パルス増幅器11の入力端子に入力される電力は低下するため、パルス増幅器11が熱破壊されることはない。従って、パルス増幅器制御回路12から出力される制御信号のデューティー比が低くなるようなパルス増幅器制御回路12の異常は、検出されなくてもよい。しかし、上述の実施形態によれば、制御信号のデューティー比が低くなるようなパルス増幅器制御回路12の異常を検出することができる。なお、この場合には、平均化回路17から出力される連続波の電圧Vgaveは通常よりも低くなるため、通常よりも低くなった電圧を検出するために、しきい値電圧Vsを新たに設定する必要がある。
【符号の説明】
【0072】
10・・・増幅器RF部
11・・・パルス増幅器
12・・・パルス増幅器制御回路
13・・・故障検出回路
14a・・・入力端
14b・・・出力端
15a、15b・・・DCカットコンデンサ
16・・・バイアス電圧源
17・・・平均化回路
17´・・・積分回路
18・・・比較回路
18´・・・コンパレータ
19・・・抵抗
20・・・コンデンサ
21・・・しきい値電圧源
22a、22b・・・コンデンサ
23・・・警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたパルスを増幅して出力するパルス増幅器と、
このパルス増幅器の入力端子に接続され、前記パルス増幅器に入力される前記パルスに同期して前記パルス増幅器を動作させる制御信号を形成して、この制御信号を前記入力端子に入力するパルス増幅器制御回路と、
このパルス増幅器制御回路に接続され、前記制御信号を連続波に変換する平均化回路と、
この平均化回路に接続され、前記平均化回路から出力された前記連続波の電圧としきい値電圧とを比較する比較回路と、
この比較回路に接続され、前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記パルス増幅器の故障、あるいは前記パルス増幅器制御回路の異常を検出する警報装置と、
を具備することを特徴とする故障または異常検出機能を有するパルス電力増幅装置。
【請求項2】
前記平均化回路は、積分回路であることを特徴とする請求項1に記載の故障または異常検出機能を有するパルス電力増幅装置。
【請求項3】
前記比較回路は、コンパレータであることを特徴とする請求項1または2に記載の故障または異常検出機能を有するパルス電力増幅装置。
【請求項4】
パルス増幅器に入力されるパルスに同期して前記パルス増幅器を動作させる複数の制御信号をパルス増幅器制御回路によって形成するステップと、
前記パルス増幅器制御回路によって形成された前記複数の制御信号を分岐し、分岐された一方の前記複数の制御信号を前記パルス増幅器に入力すると同時に、分岐された他方の前記複数の制御信号を、前記複数の制御信号を連続波に変換する平均化回路に入力するステップと、
前記平均化回路に入力された前記複数の制御信号を連続波に変換するステップと、
前記連続波の電圧と、しきい値電圧とを、比較回路に入力し、前記比較回路からの出力信号を検出することにより、前記パルス増幅器の故障あるいは前記パルス増幅器制御回路の異常を検出するステップと、
を具備することを特徴とするパルス増幅器故障検出方法。
【請求項5】
前記複数の制御信号を連続波に変換するステップは、前記パルス増幅器の熱時定数より短い時間内に含まれる複数の前記制御信号を連続波に変換するステップであることを特徴する請求項4に記載のパルス増幅器故障検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100021(P2012−100021A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245356(P2010−245356)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】