説明

散乱イオン分析装置

【課題】強磁場中に配置されるマイクロチャンネルプレートでの二次電子増幅率の減少を抑制して散乱イオンの測定精度の低下を抑制できる散乱イオン分析装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る散乱イオン分析装置は、磁場形成手段18と散乱イオン検出器20とアパーチャ16とを備え、散乱イオン検出器は、マイクロチャンネルプレート(MCP)22と二次電子の位置を検出する位置検出手段30とバイアス電圧を印加するためのバイアス電源32とを有し、MCP22では、磁場B方向に対し、微細貫通孔26に入射する散乱イオンの入射方向が傾いているのと同じ側に微細貫通孔26の中心軸26bが傾き、且つ散乱イオンの入射方向の傾きよりも中心軸26bの傾きが小さくなるように当該微細貫通孔26が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー又は中エネルギーのイオンビームを利用したラザフォード後方散乱分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラザフォード後方散乱(Rutherford Backscattering Spectroscopy:RBS)分析装置のうち、試料に照射されるイオンビームに平行な磁場を用いて前記試料から散乱する散乱イオンのエネルギー分析を行う平行磁場型のRBS分析装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。
【0003】
この装置は、図6に示されるように、イオンを加速してイオンビームbmを発生させる加速器部100と、このイオンビームbmが試料sに照射されることで当該試料sから散乱した散乱イオンを検出し、この散乱イオンのエネルギースペクトルを測定するスペクトロメータ部200とで構成されている。
【0004】
加速器部100は、イオンを発生させるイオン源102と、このイオン源102で発生させたイオンを一方向に加速してイオンビームbmを発生させる加速管104とを備えている。
【0005】
スペクトロメータ部200は、内部に前記イオンビームbmが照射されると共に、このイオンビームbmが照射される位置に試料sがセットされる真空容器202と、この真空容器202内にイオンビームbmの照射方向(ビーム軸)と平行な磁場(強磁場)bを形成するための磁場形成手段204とを備えている。
【0006】
真空容器202内には、散乱イオン検出器206とアパーチャ208とが配置されている。散乱イオン検出器206は、真空容器202内において照射される前記イオンビームbmの上流側に配置され、イオンビームbmが照射されることで試料sから散乱(後方散乱)する散乱イオンを検出するものである。
【0007】
この散乱イオン検出器206は、図7にも示されるように、マイクロチャンネルプレート(Micro Channel Plate:MCP)210と位置検出手段220とで構成される。
【0008】
MCP210は、板状のMCP本体212に数μm〜数十μmのポア径(チャンネル径)を有する多数の微細貫通孔(チャンネル)214,214,…が互いに平行となるように形成されている。各チャンネル214は、その中心軸がMCP本体212表面(図7における上側の面)の法線方向に対して所定の角度(7°〜13°程度:バイアス角)θとなるように形成されている。
【0009】
このようにMCP本体212に形成されている複数のチャンネル214,214,…は、それぞれが二次電子増幅器の役割を果たしている。MCP210の両面(図7における上下の面)間にMCPバイアス電源216によって直流のバイアス電圧が印加された状態でMCP210の表面側から各チャンネル214に入射したイオンや電子、X線などがチャンネル214の壁面(内周壁)214aに衝突することで当該壁面214aから二次電子が放出される。これら壁面214aから放出された二次電子が前記バイアス電圧で加速されながら対向する壁面214aへの衝突を繰り返しつつチャンネル214を通過することで増幅された二次電子(ゲイン:10〜10程度)が裏面側から射出される(図8参照)。
【0010】
位置検出手段220は、このように増幅された二次電子が入射することでMCP210に入射してきた前記散乱イオンの位置の検出を行い、この位置情報を電流信号として出力するものである。
【0011】
アパーチャ208は、中央部に開口208aを有する板状部材であり、散乱イオン検出器206と試料sとの間を仕切るように配置されている。この開口208aは、加速器部100から真空容器202内に照射されるイオンビームbmの通過を許容すると共に、試料sから散乱した散乱イオンのうち特定の範囲の散乱角を有し且つ磁場形成手段204が形成する磁場bにより前記イオンビームbmのビーム軸に特定の領域で収束する散乱イオンの通過を許容するものである。
【0012】
このように構成されるRBS分析装置においては、加速器部100から試料sに向けてイオンビームbmが照射される。一方、磁場形成手段204によって、真空容器202内にイオンビームbmのビーム軸と平行な磁場(強磁場)bが形成される。
【0013】
イオンビームbmが試料sの測定部位に到達すると、当該部位でイオンが散乱(後方散乱)する。この試料sで後方散乱したイオン(散乱イオン)は、磁場bによってローレンツ力を受け、前記ビーム軸を取り巻く螺旋軌道に沿って加速器部100側に移動する。この螺旋軌道は、散乱イオンの散乱角や当該散乱イオンの有するエネルギーによって変わる。従って、特定の散乱角で特定のエネルギーを有する散乱イオンのみがアパーチャ208の開口208aの位置で前記特定の領域内に収束して当該開口208aを通過し、散乱イオン検出器206に到達する。
【0014】
このように散乱イオンが散乱イオン検出器206に到達することでMCP210から増幅された二次電子が射出され、これら増幅された二次電子が位置検出手段220に入射することで前記散乱イオンのMCP210への入射位置、即ち、前記散乱イオンの散乱イオン検出器206への到達位置の検出がなされる。そして、試料sとアパーチャ208間の距離やアパーチャ208と散乱イオン検出器206間の距離、イオンビームbmのエネルギー、印加磁場強度等と、散乱イオン検出器206への散乱イオンの前記到達位置とから散乱イオンのエネルギーを求めることができる。このようにして求めたデータに基づき高速高分解能のRBS分析が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−190963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記の平行磁場型のRBS分析装置では、アパーチャ208を通過する散乱イオンのエネルギー選別を行うため真空容器202内には磁場形成手段204により強磁場bが形成されている。このとき当該真空容器202内に配置された散乱イオン検出器206は前記強磁場b中に置かれ、この散乱イオン検出器206を構成するMCP210も前記強磁場b中に置かれることになる。
【0017】
このようにMCP210が強磁場b中に置かれると、当該MCP210における二次電子増幅率が低下する場合がある。これは、強磁場(磁力線)bの方向に対してバイアス角θを有するチャンネル214内で二次電子が前記強磁場bからのローレンツ力により螺旋状に移動しようとするため、バイアス電圧に沿った方向の移動が制限されて当該バイアス電圧により加速され難くなるからである。
【0018】
具体的には、例えば、図9に示されるような方向からMCP210のチャンネル214に散乱イオンが入射した場合、壁面214aから放出された二次電子は、強磁場bから受けるローレンツ力によって、チャンネル214の壁面(図9においては右側の壁面)214aに沿って移動する(図9の矢印α参照)。
【0019】
このように二次電子が移動すると、壁面214aとの一つの衝突から次の衝突までのバイアス電圧に沿った方向の移動距離L12が小さくなり、バイアス電圧によって十分加速されない。即ち、二次電子が壁面214aに衝突したときに新たな二次電子を発生させるための十分なエネルギーを得ることができない。従って、二次電子がバイアス電圧により十分加速されない場合、MCP210での二次電子増幅率が減少する(ゲインで1桁か2桁程度減少する)。
【0020】
このようにMCP210における二次電子増幅率が減少すると、散乱イオン検出器206、詳細には位置検出手段220がバックグランドノイズ等の影響を受け易くなり、RBS分析装置における測定精度が低下する場合がある。
【0021】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、強磁場中に配置されるマイクロチャンネルプレートでの二次電子増幅率の減少を抑制して散乱イオンの測定精度の低下を抑制できる散乱イオン分析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る散乱イオン分析装置は、加速されたイオンビームが試料に照射されたときに当該試料から散乱する散乱イオンのエネルギースペクトルを測定するための散乱イオン分析装置であって、内部に前記イオンビームが照射されると共に、このイオンビームが照射される位置に前記試料がセットされる真空容器と、この真空容器内に前記イオンビームの入射方向と平行な磁場を形成するための磁場形成手段と、前記磁場が形成された前記真空容器内で前記試料から散乱する散乱イオンを検出する散乱イオン検出器と、この散乱イオン検出器と前記試料との間の位置に設けられ、前記散乱イオン検出器側から前記試料側に入射される前記イオンビームの通過を許容すると共に、前記試料側から前記散乱イオン検出器側に向かって散乱する前記散乱イオンのうち特定の範囲の散乱角を有し且つ前記磁場形成手段の磁場により前記イオンビームのビーム軸に特定の領域で収束する散乱イオンの通過を許容する開口を有するアパーチャとを備え、前記散乱イオン検出器は、複数の微細貫通孔が前記磁場方向と直交する面上に並び、この微細貫通孔の一方側開口から前記散乱イオンが入射することで他方側開口から増幅された二次電子が射出されるマイクロチャンネルプレートと、このマイクロチャンネルプレートの二次電子射出側に配置され前記射出される二次電子の位置を検出する位置検出手段と、前記マイクロチャンネルプレートに接続され、当該マイクロチャンネルプレートにおける散乱イオン入射側部分と二次電子射出側部分との間にバイアス電圧を印加するためのバイアス電源とを有し、前記マイクロチャンネルプレートでは、前記磁場方向に対し、前記微細貫通孔に入射する散乱イオンの入射方向が傾いているのと同じ側に前記微細貫通孔の中心軸が傾き、且つ前記散乱イオンの入射方向の傾きよりも前記中心軸の傾きが小さくなるように当該微細貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、前記微細貫通孔に入射した散乱イオンが当該微細貫通孔における二次電子射出側を向いた壁面に大きい入射角で衝突する。そのため、この壁面から放出される二次電子は、放出される壁面の法線に対し大きい角度で、即ち、当該マイクロチャンネルプレートの二次電子射出側に向けて放出されて対向する壁面に向うため、バイアス電圧に沿った前記二次電子の移動距離が大きくなる。
【0024】
その結果、前記壁面との衝突から次の衝突までに前記バイアス電圧によって前記二次電子が十分加速され、即ち、十分エネルギーを得、次の衝突の際に新たな二次電子を発生させることができる。
【0025】
例えば、図10に示されるような方向から散乱イオンが微細貫通孔214に入射する場合、放出された二次電子が放出される壁面214aから下方(二次電子放出側)に向かって対向する壁面214aまで移動するため、バイアス電圧に沿った移動距離L11が大きくなり、この移動の間にバイアス電圧によって前記二次電子が十分加速される。そのため、前記二次電子が前記対向する壁面214aに衝突したときに新たな二次電子が発生する。
【0026】
このように衝突のたびに二次電子が発生することで、強磁場中でも前記マイクロチャンネルプレートにおける二次電子増幅率の減少を抑制でき、位置検出手段に十分な量の二次電子が到達する。その結果、精度よく散乱イオン検出器に到達した散乱イオンの位置が検出され、当該装置における散乱イオンの測定精度の低下が抑制される。
【0027】
本発明に係る散乱イオン分析装置においては、前記散乱イオン検出器は、前記ビーム軸を中心とした円周方向に沿って配置されると共に、前記円周方向に沿って複数の領域に分割され、前記複数の微細貫通孔は、共通の前記領域内では前記磁場方向に対して全て同じ側に前記中心軸が傾くと共に、前記領域毎に当該領域内の微細貫通孔に入射する前記散乱イオンの入射方向が前記磁場方向に対して傾いているのと同じ側に前記中心軸が傾くようにそれぞれ形成されている構成が好ましい。
【0028】
前記アパーチャを通過して前記イオン検出器に到達する散乱イオンは、前記ビーム軸を中心とした円周方向全域に亘って到達する。そのため、前記のような構成とすることで、各領域において、到達した散乱イオンを測定することができる。しかも、各領域において、前記同様、前記マイクロチャンネルプレートにおける二次電子増幅率の減少を抑制できるため、前記アパーチャを通過した前記散乱イオンを効率よく測定でき、当該装置における散乱イオンの測定精度がより向上する。
【0029】
また、前記散乱イオン検出器では前記磁場方向に沿って複数枚の前記マイクロチャンネルプレートが配置され、これら複数枚のマイクロチャンネルプレートのうち最も前記試料側の前記マイクロチャンネルプレートの前記微細貫通孔が、当該微細貫通孔に入射する前記散乱イオンの入射方向が前記磁場方向に対して傾いているのと同じ側に前記中心軸が傾き、且つ前記散乱イオンの入射方向の傾きよりも前記中心軸の傾きが小さくなるように形成されている構成が好ましい。
【0030】
このような構成にすることで、前記複数枚のマイクロチャンネルプレートの各微細貫通孔がそれぞれ連通してより長い貫通孔となり、内部を通過する二次電子の前記壁面との衝突回数が増加する。そのため、二次電子の増幅率が向上し、その結果、当該装置での散乱イオンの測定精度がより向上する。
【0031】
また、前記磁場方向に並ぶ複数枚のマイクロチャンネルプレートは、隣り合う前記マイクロチャンネルプレートが互いに前記磁場方向に間隔をおいて配置されると共に前記隣り合うマイクロチャンネルプレート間に電位差発生手段が接続されている構成が好ましい。尚、この場合、前記電位差発生手段は、抵抗素子であることが好ましい。
【0032】
このような構成とすることで、前記マイクロチャンネルプレート間で電位差が生じ、この電位差によって上流側の前記マイクロチャンネルプレートから射出された前記二次電子が下流側の前記マイクロチャンネルプレートに到達するまでに十分加速される。そのため、前記散乱イオンは、前記下流側のマイクロチャンネルプレートの微細貫通孔に入射して壁面と衝突したときに新たな二次電子を発生させるための十分なエネルギーを得ることができる。また、十分なエネルギーを得た二次電子が位置検出手段に到達することで、当該位置検出手段における検出信号強度が増加する。
【0033】
さらに、前記電位差発生手段が抵抗素子であることで、簡易な構成で隣り合う前記マイクロチャンネルプレート間に電位差を生じさせることができ、装置の小型化が図られる。
【発明の効果】
【0034】
以上より、本発明によれば、強磁場中に配置されるマイクロチャンネルプレートでの二次電子増幅率の減少を抑制して散乱イオンの測定精度の低下を抑制できる散乱イオン分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る散乱イオン分析装置の全体構成を示す断面正面図である。
【図2】同実施形態に係る散乱イオン検出器の構成図である。
【図3】同実施形態に係るマイクロチャンネルプレートにおける(a)は正面図であり、(b)は図3(a)のA−A断面図である。
【図4】同実施形態に係る散乱イオン検出器における(a)は、ビーム軸方向から見た配置状態を示す構成図であり、(b)は、マイクロチャンネルプレートの微細貫通孔内での二次電子の放出を示す模式図である。
【図5】他実施形態に係る散乱イオン検出器の磁場に沿った方向から見た概略図である。
【図6】従来の散乱イオン分析装置の構成図である。
【図7】従来の散乱イオン検出器の構成図である。
【図8】マイクロチャンネルプレートの微細開孔内での二次電子の増幅過程の模式図である。
【図9】マイクロチャンネルプレートの微細開孔内に入射した散乱イオンと壁面から放出された二次電子の軌道を示す模式図である。
【図10】マイクロチャンネルプレートの微細開孔内に図9と異なる角度で入射した散乱イオンと壁面から放出された二次電子の軌道を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0037】
本実施形態に係る散乱イオン分析装置は、図1に示されるように、イオン照射装置10に接続される真空容器12を備える。このイオン照射装置10は、イオン源(図示省略)から供給される軽イオン(例えば水素イオンやヘリウムイオン)を高電圧により加速する加速器(図示省略)を備え、その加速したイオンを真空容器12内にイオンビームBmとして照射する。本実施形態においては、イオン照射装置10は、下方に接続される真空容器12内にイオンビームBmを下向きに照射する。
【0038】
真空容器12は、箱型容器で、その内部に真空が形成される。この真空容器12の天壁にはイオン入射口13が設けられ、このイオン入射口13がイオン照射管(図示省略)を介してイオン照射装置10に接続されている。
【0039】
真空容器12内には、その底部側から順に、試料ステージ14、アパーチャ(アパーチャプレート)16、及び散乱イオン検出器20が配置されている。これらはイオンビームBmのビーム軸(照射軸)に沿って上下方向に配列されている。また、真空容器12の外側には当該真空容器内にイオンビームBmと平行な磁場Bを形成する磁場形成手段として磁場形成用コイル18が設けられている。
【0040】
試料ステージ14は、水平な試料載置面を有し、この試料載置面の上に試料(例えば半導体デバイスや成膜された基板)Sがセットされる。この試料Sのセット位置は、当該試料Sの測定部位にイオンビームBmが上から照射される位置に設定される。
【0041】
アパーチャ16は、試料ステージ14と散乱イオン検出器20との間の位置であって、試料ステージ14から上方に所定寸法L1だけ距離をおいた高さ位置に設けられている。このアパーチャ16は、本実施形態においては平板状に形成され、その厚み方向がイオンビームBm(磁場B方向)と平行となる向きで配置される。このアパーチャ16の中央には当該アパーチャを厚み方向に貫通する開口16aが設けられ、この開口16aをイオンビームBmが上から下に通過する。さらに、この開口16aは、試料ステージ14上の試料Sから散乱(後方散乱)する散乱イオンのうち特定の散乱角で且つ特定のエネルギーを持つ散乱イオンのみを下から上に通過させる。
【0042】
散乱イオン検出器20は、アパーチャ16からさらに上方に所定寸法L2だけ距離をおいた高さ位置に設けられる。この散乱イオン検出器20は、当該アパーチャ16の開口16aを通過してきた散乱イオンの到達位置、詳細には、イオンビームBmのビーム軸に対して直交する平面上での二次元位置を検出し、その検出信号を増幅器(図示省略)に向けて出力する。尚、距離L1と距離L2の比は、適宜設定可能である。好ましくは、2:1程度である。
【0043】
散乱イオン検出器20は、具体的には図2にも示されるように、下方側(一方側)から入射した散乱イオンを増幅した二次電子して上方側(他方側)に射出するマイクロチャンネルプレート(以下、単に「MCP」とも称する。)22と、このMCP22の上方(二次電子射出側)に配置され当該MCP22から射出される二次電子の位置を検出し、その検出信号を出力する位置検出手段30とを備える。
【0044】
MCP22では、図3(a)及び図3(b)にも示されるように、円盤状のMCP本体24の面上に複数の微細貫通孔(チャンネル)26が並んでいる。これら複数の微細貫通孔26,26,…のそれぞれが二次電子増幅器の役割を果たしている。MCP22の両面(図3(b)における左右の面)間に後述のMCPバイアス電源32によって直流のバイアス電圧が印加された状態でMCP22の一方の面(以下、単に「入射側面」とも称する。:図3(b)の左側の面)22a側から各微細貫通孔26に入射した散乱イオンが微細貫通孔26の壁面(内周壁)26aに衝突することで当該壁面26aから複数の二次電子が放出される。これら壁面26aから放出された複数の二次電子が前記バイアス電圧で加速されながら対向する壁面26aへの衝突を繰り返しつつ微細貫通孔26を通過することで増幅された二次電子(ゲイン:10〜10程度)がMCP22の他方の面(以下、単に「射出側面」とも称する。:図3(b)の右側の面)側から射出される(図8参照)。
【0045】
MCP本体24は、本実施形態においては、直径80mm、厚さ0.6mmの円盤状に形成されている。微細貫通孔26は、MCP本体24を一方側の面(入射側面)22aから他方側の面(射出側面)22bへ貫通する貫通孔であり、直径(ポア径若しくはチャンネル径)が10μm乃至6μmの貫通孔である。各微細貫通孔26は、互いに平行となるように形成され、入射側面22aの法線nに対して微細貫通孔26の中心軸26bのなす角(バイアス角)θが7°となるように形成されている。尚、本実施形態においては、バイアス角θは、7°であるが、これに限定されず、5°〜15°であればよい。
【0046】
このように形成されたMCP22は、入射側面22aが磁場B方向と直交するように当該磁場B方向に沿って複数枚(本実施形態においては3枚)並べられる。このとき、互いに隣り合う(上下に並ぶ)MCP22,22は、微細貫通孔26の中心軸26bの傾き(バイアス角θ)が磁場B方向を中心に反対側となるようにそれぞれ配置されている(図2参照)。
【0047】
このように配置される複数枚のMCP22,…は、隣り合うMCP22,22同士が互いに磁場B方向に間隔(ギャップ)をおいて配置されている。本実施形態において前記間隔は、1〜2mm程度である。そして、最も下側(試料S側)に位置するMCP22の入射側面22aと、最も上側(位置検出手段30側)に位置するMCP22の射出側面22bとの間にバイアス電圧を印加するためのMCPバイアス電源32が接続されている。また、上下に隣り合うMCP22,22の対向する面同士(一方のMCP22の射出側面22bと他方のMCP22の入射側面22aと)が電気的に接続されている。
【0048】
この隣り合うMCP22の対向する面22b,22a同士は、電位差発生手段34を介して電気的に接続されている。この電位差発生手段34は、本実施形態においては、バイアス抵抗素子34である。このようにMCPバイアス電源32及びバイアス抵抗素子34が接続されることで、各MCP22における入射側面22aと射出側面22bとの間に所定の電圧が印加されると共に、隣り合うMCP22,22における一方のMCP22の射出側面22bと他方のMCP22の入射側面22aとの間にも所定の電圧が印加される。
【0049】
具体的には、本実施形態においては、MCPバイアス電源32により3000〜4000V程度印加される。その際、MCP22の抵抗値が1枚あたり10MΩ程度であり、1枚のMCP22に対して700〜1000V程度印加する必要があるため、バイアス抵抗素子34は、数MΩ程度に設定されている。尚、隣り合うMCP22,22における前記対向する面22a,22b間の電位差発生手段として、バイアス抵抗素子34に変えて直接高圧電源を接続し、最適電位差が設定できるように構成されてもよい。
【0050】
位置検出手段30は、磁場方向Bと直交する面に沿って拡がり、二次電子の到達位置を二次元で検出することができるものである。具体的に、位置検出手段30は、いわゆる2次元PDS(位置検出素子)であり、シート状の絶縁物表面に薄く一様の厚さの抵抗膜を形成したシート抵抗体と、このシート抵抗体から当該シート抵抗体に沿って直交する4方向に引き出される電極とを有し、シート抵抗体の表面抵抗を利用して当該位置検出手段30に到達した2次電子の位置を2次元で検出することができる。この位置検出手段30には、最も上側に位置するMCP22の射出側面22b側から射出された二次電子を確実に位置検出手段30に到達させるために、前記MCP22の射出側面22bとの間に100〜300V程度のバイアス電圧を印加するための位置検出器バイアス電源36が接続されている。尚、位置検出手段30は、シート抵抗体の代わりにフォトダイオードが用いられたものであってもよい。
【0051】
このように構成される散乱イオン検出器20は、イオンビームBmのビーム軸を中心とした円周方向に沿って、即ち、ビーム軸を中心に同心円上に位置するように後述の検出器ブラケット47に配置される。本実施形態においては、図4(a)にも示されるように、3つの散乱イオン検出器20が前記円周c方向に沿って配置されている。このように散乱イオン検出器20が配置されることで、前記円周cの中心部を当該散乱イオン検出器20に妨げられることなくイオンビームBmが通過可能となる。
【0052】
また、前記円周c方向に沿って配置された各散乱イオン検出器20において、最も下側に位置するMCP22における微細貫通孔26は、図4(b)にも示されるように、当該微細貫通孔26に入射する散乱イオンの入射方向の磁場B方向に対する傾きと中心軸26bの磁場B方向に対する傾きとが同じ側に傾き、且つ散乱イオンの入射方向の傾きよりも中心軸26bの傾きが小さくなるように形成されている。
【0053】
真空容器12内には、上下方向に延びる支柱41,42が設けられ、これらの支柱41,42に取付部材44,46をそれぞれ介して試料ステージ14及びアパーチャ16が取付けられている。また、散乱イオン検出器20は検出器ブラケット47の下面に固定されていて、この検出器ブラケット47も取付部材48を介して支柱41,42に取付けられる。検出器ブラケット47の中央部にもイオンビームBmの通過を許容するための開口(貫通孔)47aが設けられている。
【0054】
磁場形成用コイル18は、真空容器12内にイオンビームBmのビーム軸と平行な上向きの磁場Bを形成するためのもので、イオンビームBmのビーム軸を中心(螺旋軸)とする螺旋状に巻かれている。この磁場形成用コイル18は、常電導コイルでもよく、超電導コイルであってもよい。また、本発明に係る磁場形成手段18は、イオンビームBmの照射方向に相対面する永久磁石対が併用されたものでもよい。
【0055】
尚、種々のエネルギーを持つ散乱イオンを検出可能とするために、検出器ブラケット47及びアパーチャ16は、それぞれ上下に移動可能に構成され、磁場形成用コイル18は、形成する磁場Bの強度を変更可能に構成されている。
【0056】
本実施形態に係る散乱イオン分析装置は、以上の構成からなり、次に、この散乱イオン分析装置の作用を説明する。
【0057】
イオン照射装置10がイオンビームBmを下向きに照射する。このイオンビームBmは、真空容器12内の検出器ブラケット47の開口47a及びアパーチャ16の開口16aを順に通って試料ステージ14上の試料Sの測定部位に当る。一方、真空容器12の外部に設けられた磁場形成用コイル18がその通電により真空容器12内に磁場Bを形成するが、磁場Bの方向はイオンビームBmのビーム軸(照射方向)と平行な方向(図1においては上向き)であるため、当該イオンビームBmは、磁場Bの影響を受けることなく試料Sの測定部位に向かって直進する。尚、本実施形態において、磁場Bは2T程度の強磁場である。
【0058】
この試料Sの測定部位へのイオンビームBmの照射によって、当該部位でイオンビームBmを構成するイオンが散乱(後方散乱)する。その散乱したイオン、即ち散乱イオンは、当該散乱イオンの散乱角θs、当該散乱イオンのもつ電荷とエネルギーから磁場Bに起因するローレンツ力を受け、イオンビームBmのビーム軸を取り巻く螺旋軌道を描きながら上方に移動(サイクロトロン運動)する。この螺旋軌道を決定する散乱角θsや波長は、散乱イオンのもつエネルギーによって変わる。従って、特定のエネルギーをもつ散乱イオンのみがアパーチャ16の位置でビーム軸の周囲に収束し、当該アパーチャ16の開口16aを通過して散乱イオン検出器20に到達する。即ち、検出対象となる散乱イオンがアパーチャ16によって選別される。
【0059】
尚、磁場形成用コイル18が形成する磁場Bの強度、検出器ブラケット47及びアパーチャ16の上下方向の位置を変更することで、電荷やエネルギー等が異なる散乱イオンの検出が可能となる。
【0060】
このとき、アパーチャ16の開口16aを通過した散乱イオンは、磁場B中でサイクロトロン運動を行いつつ散乱イオン検出器20に到達するため、磁場B方向に沿って見た場合、円運動を行っている(図4(a)の矢印β参照)。そのため、前記散乱イオンは、散乱イオン検出器20に到達する際に、この円運動の円周β方向の速度成分を持ってMCP22の微細貫通孔26に入射する。即ち、前記散乱イオンは、試料Sから散乱イオン検出器20に向かう磁場B方向に沿った速度成分と、前記円周β方向の速度成分とを有する斜め方向から微細貫通孔26に入射し、当該微細貫通孔26を規定する壁面26aに衝突する。
【0061】
このとき、図4(b)にも示されるように、微細貫通孔26に入射する散乱イオンの入射方向の磁場B方向に対する傾きと同じ側に微細貫通孔26の中心軸26bが傾くように微細貫通孔26は形成されている。また、前記散乱イオンの入射方向の傾きよりも前記中心軸26bの傾きが小さくなるように微細貫通孔26が形成されている。そのため、微細貫通孔26に入射した散乱イオンが当該微細貫通孔26における二次電子射出側を向いた壁面26aに大きい入射角θiで衝突し、この壁面26aから放出される二次電子が放出される壁面26aの法線n1に対し大きい角度で放出される。このように放出された二次電子は、当該MCP22の射出側面に向かい、バイアス電圧に沿った二次電子の移動距離L10が大きくなる。
【0062】
その結果、壁面26aとの衝突から次の衝突までにバイアス電圧によって前記二次電子が十分加速され、即ち、十分エネルギーを得、次の衝突の際に新たな二次電子をより確実に発生させることができる。
【0063】
より詳細には、前記散乱イオンが微細貫通孔26に入射する場合、放出された二次電子が放出される壁面26aから射出側面22b側(二次電子放出側)に向かって対向する壁面26aまで移動するため、バイアス電圧に沿った移動距離L10が大きくなり、この移動の間にバイアス電圧によって前記二次電子が十分加速される。そのため、前記二次電子が前記対向する壁面26aに衝突したときにより確実に新たな二次電子が放出される。
【0064】
このように衝突のたびに二次電子が壁面26aから放出されることで、強磁場B中におかれたMCP22における二次電子増幅率の減少を抑制でき、位置検出手段30に十分な量の二次電子が到達する。その結果、精度よく散乱イオン検出器20に到達した散乱イオンの位置が検出され、当該装置における散乱イオンの測定精度の低下が抑制される。
【0065】
また、前記のように最も下方に位置するMCP22で増幅された二次電子は、射出側面22bから隣に位置する(上方に位置する)MCP22の入射側面22aに向けて射出される。このとき、対向する面22b,22a間には前記ギャップが形成され、このギャップにバイアス抵抗素子34によって電位差が形成されている。そのため、下方側のMCP22の微細貫通孔26から射出された二次電子は上方側のMPC22の微細貫通孔26に入射するまでの間、前記電位差(電圧)によって加速される(エネルギーを得る)。
【0066】
このように隣り合うMPC22,22間に電圧が印加され、この電圧によって下方側に位置するMPC22から射出された前記二次電子が上方側に位置するMPC22到達するまでに十分加速される。その結果、散乱イオンは、上方側のMPCの微細貫通孔26に入射して壁面26aと衝突したときに新たな二次電子を発生させるための十分なエネルギーを得ることができる。
【0067】
さらに、電位差発生手段がバイアス抵抗素子34であることで、簡易な構成によって隣り合うMPC22,22間に所定の電圧を印加することができ、装置の小型化が図られる。
【0068】
また、3枚(複数)のMCP22が磁場B方向に沿って並べられることで、微細貫通孔26の長さの合計距離が長くなる。即ち、複数枚のMCPの各微細貫通孔26を二次電子が順に通過することで、当該二次電子における微細貫通孔26の壁面26aとの衝突回数が増加する。そのため、二次電子の増幅率が向上し、位置検出手段30により十分な量の二次電子が到達する。その結果、より散乱イオンの到達位置の検出精度が向上する。
【0069】
また、試料Sで後方散乱する散乱イオンは、ビーム軸を中心に周方向全域に亘って散乱する。そのため、これら散乱イオンのうちアパーチャ16の開口16aを通過した散乱イオンも散乱イオン検出器20の位置においてビーム軸を中心とした円周方向全域に亘って到達する(図4(a)における矢印β,β1,β2,…参照)。
【0070】
そのため、本実施形態のように円周c方向に沿って3つの散乱イオン検出器20を配置することで(図4(a)参照)、到達した散乱イオンを複数の位置で検出できるため効率よく測定することができる。しかも、各散乱イオン検出器20において、前記同様、最も下方に位置するMCP22における微細貫通孔26の中心軸26bの傾きが、当該微細貫通孔26に入射する散乱イオンの入射方向の磁場B方向に対する傾きと同じ側に傾くように形成されている。そのため、前記同様、各散乱イオン検出器20において二次電子増幅率の減少を抑制でき、アパーチャ16の開口16aを通過した散乱イオンを効率よく測定できる。その結果、当該装置における散乱イオンの測定精度がより向上する。
【0071】
尚、本発明に係る散乱イオン分析装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0072】
例えば、本実施形態においては、円周c方向に沿って3つの散乱イオン検出器20が配置されているが、この配置に限定される必要はない。即ち、図5に示されるように、散乱イオン検出器50がビーム軸を中心とした円周方向に沿って円環状に形成・配置されてもよい。即ち、散乱イオン検出器50の中央部に磁場B方向に沿って貫通する開口50aが形成され、この開口50aは、検出器ブラケット47の開口47aと同軸となるように形成される。このように開口50aが形成されることで、イオンビームBmの試料Sへの照射の際、当該開口50aをイオンビームBmが通過することができる。
【0073】
この場合、MCP52は円周方向に沿って複数の領域52a,52b,52c,…に分割される。そして、このMCP52に形成される複数の微細貫通孔は、共通の領域内では磁場B方向に対して全て同じ側に微細貫通孔の中心軸が傾くと共に、領域毎に当該領域内の微細貫通孔に入射する散乱イオンの入射方向が磁場B方向に対して傾いているのと同じ側に中心軸が傾くようにそれぞれ形成される。
【0074】
このように構成されることで、散乱イオン検出器50に到達する散乱イオン(γ,γ1,γ2,…)をイオンビームを中心とした全周に亘って検出できる。そのため、より検出される散乱イオンの数が増加して散乱イオンの検出精度が向上する。また、前記同様、各領域内の微細貫通孔の中心軸が入射する散乱イオンの入射角と同じ側に傾いているため、前記同様に各領域での検出精度を維持できる。その結果、検出精度がさらに向上する。
【符号の説明】
【0075】
10 イオン照射装置
12 真空容器
16 アパーチャ
16a 開口
18 磁場形成手段
20 散乱イオン検出器
22 マイクロチャンネルプレート(MCP)
26 微細貫通孔
26b 中心軸
30 位置検出手段
32 バイアス電源
B 磁場
Bm イオンビーム
S 試料
θ バイアス角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速されたイオンビームが試料に照射されたときに当該試料から散乱する散乱イオンのエネルギースペクトルを測定するための散乱イオン分析装置であって、
内部に前記イオンビームが照射されると共に、このイオンビームが照射される位置に前記試料がセットされる真空容器と、
この真空容器内に前記イオンビームの入射方向と平行な磁場を形成するための磁場形成手段と、
前記磁場が形成された前記真空容器内で前記試料から散乱する散乱イオンを検出する散乱イオン検出器と、
この散乱イオン検出器と前記試料との間の位置に設けられ、前記散乱イオン検出器側から前記試料側に入射される前記イオンビームの通過を許容すると共に、前記試料側から前記散乱イオン検出器側に向かって散乱する前記散乱イオンのうち特定の範囲の散乱角を有し且つ前記磁場形成手段の磁場により前記イオンビームのビーム軸に特定の領域で収束する散乱イオンの通過を許容する開口を有するアパーチャとを備え、
前記散乱イオン検出器は、複数の微細貫通孔が前記磁場方向と直交する面上に並び、この微細貫通孔の一方側開口から前記散乱イオンが入射することで他方側開口から増幅された二次電子が射出されるマイクロチャンネルプレートと、このマイクロチャンネルプレートの二次電子射出側に配置され前記射出される二次電子の位置を検出する位置検出手段と、前記マイクロチャンネルプレートに接続され、当該マイクロチャンネルプレートにおける散乱イオン入射側部分と二次電子射出側部分との間にバイアス電圧を印加するためのバイアス電源とを有し、
前記マイクロチャンネルプレートでは、前記磁場方向に対し、前記微細貫通孔に入射する散乱イオンの入射方向が傾いているのと同じ側に前記微細貫通孔の中心軸が傾き、且つ前記散乱イオンの入射方向の傾きよりも前記中心軸の傾きが小さくなるように当該微細貫通孔が形成されていることを特徴とする散乱イオン分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の散乱イオン分析装置において、
前記散乱イオン検出器は、前記ビーム軸を中心とした円周方向に沿って配置されると共に、前記円周方向に沿って複数の領域に分割され、
前記複数の微細貫通孔は、共通の前記領域内では前記磁場方向に対して全て同じ側に前記中心軸が傾くと共に、前記領域毎に当該領域内の微細貫通孔に入射する前記散乱イオンの入射方向が前記磁場方向に対して傾いているのと同じ側に前記中心軸が傾くようにそれぞれ形成されていることを特徴とする散乱イオン分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の散乱イオン分析装置において、
前記散乱イオン検出器では前記磁場方向に沿って複数枚の前記マイクロチャンネルプレートが配置され、
これら複数枚のマイクロチャンネルプレートのうち最も前記試料側の前記マイクロチャンネルプレートの前記微細貫通孔が、当該微細貫通孔に入射する前記散乱イオンの入射方向が前記磁場方向に対して傾いているのと同じ側に前記中心軸が傾き、且つ前記散乱イオンの入射方向の傾きよりも前記中心軸の傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする散乱イオン分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の散乱イオン分析装置において、
前記磁場方向に並ぶ複数枚のマイクロチャンネルプレートは、隣り合う前記マイクロチャンネルプレートが互いに前記磁場方向に間隔をおいて配置されると共に前記隣り合うマイクロチャンネルプレート間に電位差発生手段が接続されていることを特徴とする散乱イオン分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の散乱イオン分析装置において、
前記電位差発生手段は、抵抗素子であることを特徴とする散乱イオン分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−223921(P2010−223921A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74621(P2009−74621)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,「ナノメータ極薄膜の高分機能・高速組成分析技術に関する基盤研究」(委託研究),産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】