説明

散乱光式煙感知器

この散乱光式煙感知器は、感知器本体と、この感知器本体の外側に位置する開放状の検煙空間に向けて光を発する発光手段と、この発光手段から前記検煙空間に発せられた光に対する散乱光を受光し、この受光した散乱光の受光量に応じた受光信号を出力する受光手段と、この受光手段から出力された受光信号によって特定される前記受光量に基づいて、火災発生の有無を判断する火災判断手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光した光が煙によって散乱されることで生ずる散乱光を検出することで煙を感知する散乱光式煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の散乱光式煙感知器は、基本的に感知器内に外部からの煙を流入する煙チャンバーを備え、この煙チャンバー内を検煙空間として、発光素子からの光による煙の散乱光を受光素子で受光して火災を検出するようにしている。
【0003】
このように感知器の煙チャンバー内に検煙空間を設ける理由は、煙に光を当てることにより発生する微弱な散乱光を外光の影響を受けずに高精度に検出するためであり、また、検煙空間に虫などの異物が存在すると、これら異物によって光が散乱されて誤報を生じる可能性があることから、これら異物が検煙空間に入る込むことを煙チャンバーによって防止するためである。このように、煙チャンバーを設けてそこを検煙空間とすることは、従来の散乱光式煙感知器においては必須の技術であった(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6-109631号公報
【特許文献2】特開平7-12724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の散乱光式煙感知器にあっては、煙チャンバーを必須の構造として備えていることによる問題が存在していた。
【0006】
まず、従来の煙感知器は煙を流入し易くするため、煙チャンバーの部分が飛び出した形態をもっており、天井面などに飛び出した状態で設置されることとなり、室内デザィンを大きく損なう要因の一つとなっている。
【0007】
また、煙チャンバーに対する外部からの煙の流入は、その周囲に位置するカバー、煙流入口、防虫網、及び、外光遮断用のラビリンス(光遮蔽用の壁)を通るため、流入特性が不十分であり、煙の検出に時間遅れを起こす問題がある。
【0008】
更に、煙感知器の設置状態で煙チャンバー内に埃が付着したり結露が生ずると、内部反射光によるS/Nの悪化や誤動作を起す場合があるため、煙チャンバーを定期的に清掃点検する必要であり、その分、運用コストが嵩むなどの問題がある。
【0009】
しかし、煙による散乱光に対する外光の影響を排除することが、光の波長特性や偏光特性を利用して可能であれば、感知器内に検煙空間を形成するための煙チャンバーは不要となり、従来の煙チャンバーに起因した問題を解消できる等の様々なメリットがある。
【0010】
このような点に鑑みて、本発明は、感知器内の煙チャンバーを不要とした、散乱光式煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、感知器本体と、前記感知器本体に内蔵され、前記感知器本体の外側に位置する開放状の検煙空間に向けて光を発する発光手段と、前記感知器本体に内蔵され、前記発光手段から前記検煙空間に発せられた光に対する散乱光を受光し、この受光した散乱光の受光量に応じた受光信号を出力する受光手段と、前記受光手段から出力された受光信号によって特定される前記受光量に基づいて、火災発生の有無を判断する火災判断手段とを備えて構成される。
【0012】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記火災判断手段は、前記受光量とその微分値とに基づいて、火災発生の有無を判断するように構成される。
【0013】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の本発明において、前記火災判断手段は、前記受光量が所定の火災閾値を越え、かつ、前記受光量の微分値が所定の誤報閾値以下である場合に、火災が発生したと判断するように構成される。
【0014】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の本発明において、前記火災判断手段は、前記受光量が所定の火災閾値を越え、かつ、前記受光量の微分値が所定の誤報閾値を越えている場合、さらに前記微分値が所定の誤報閾値を越えた時から一定時間後に前記受光量が所定の障害閾値を越えているか否かを判定し、前記受光量が前記障害閾値を越えていた場合は、火災検出を妨げる障害が発生したと判断するように構成される。
【0015】
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記火災判断手段は、前記受光量が所定の第1の火災閾値を越えている時間が、所定の第1の設定時間以上継続し、かつ、前記受光量が前記第1の火災閾値より大きい所定の第2の火災閾値を越えている時間が、前記第1の設定時間より長い所定の第2の設定時間以上継続している場合に、火災が発生したと判断するように構成される。
【0016】
また、請求項6に記載の本発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の本発明において、前記発光手段は、複数の発光手段を備えるように構成される。
【0017】
また、請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載の本発明において、前記発光手段は、第1波長の光を発する第1発光手段と、第1波長より短い第2波長の光を発する第2発光手段とを備え、前記第1発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第1散乱角に対し、前記第2発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第2散乱角を大きくして構成される。
【0018】
また、請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の本発明において、前記第1波長の中心波長を800nm以上とし、前記第2波長の中心波長を500nm以下とし、前記第1散乱角を20°〜50°の範囲とし、前記第2散乱角を100°〜150°の範囲として構成される。
【0019】
また、請求項9に記載の本発明は、請求項6に記載の本発明において、前記発光手段は、第1発光手段と第2発光手段とを備え、前記第1発光手段から発光される光を、当該第1発光手段の光軸及び前記受光素子の光軸を通る第1散乱面に垂直な偏光面をもつ光とし、前記第2発光手段から発光される光を、当該第2発光手段の光軸及び前記受光素子の光軸を通る第2散乱面に水平な偏光面をもつ光とし、前記第1発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第1散乱角に対し、前記第2発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第2散乱角を大きくして構成される。
【0020】
また、請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載の本発明において、前記第1散乱角を80°以下とし、前記第2散乱角を100°以上として構成される。
【0021】
また、請求項11に記載の本発明は、請求項6から10のいずれか一項に記載の本発明において、前記複数の発光手段のそれぞれの光軸と前記受光素子の光軸とを含む平面が、相互に略非同一平面になるよう、前記複数の発光手段を立体角配置して構成される。
【0022】
また、請求項12に記載の本発明は、請求項6から11のいずれか一項に記載の本発明において、前記発光手段は、第1発光手段と第2発光手段とを備え、前記火災判断手段は、前記第1発光手段にて発光された光が煙にて散乱されることにより生じる散乱光に対する前記受光手段における受光量と、前記第2発光手段にて発光された光が煙にて散乱されることにより生じる散乱光に対する前記受光手段における受光量とを相互に比較することにより、前記煙の種類を識別し、この煙の種類に応じた判断基準に基づいて、火災発生の有無を判断するように構成される。
【0023】
また、請求項13に記載の本発明は、請求項1から12のいずれか一項に記載の本発明において、前記検煙空間における前記発光手段の光軸と前記受光手段の光軸との相互の交点を、前記感知器本体から約5mm以上離して構成される。
【0024】
また、請求項14に記載の本発明は、請求項1から13のいずれか一項に記載の本発明において、前記感知器本体の外表面の少なくとも一部を虫忌避材料で構成され、あるいは、前記感知器本体の外表面の少なくとも一部に虫忌避剤を塗布又は含浸させて構成される。
【0025】
また、請求項15に記載の本発明は、請求項1から14のいずれか一項に記載の本発明において、前記受光手段の視野角を5度以内として構成される。
【0026】
また、請求項16に記載の本発明は、請求項1から15のいずれか一項に記載の本発明において、前記発光手段は、コリメートされた平行光を発するように構成される。
【0027】
また、請求項17に記載の本発明は、請求項1から16のいずれか一項に記載の本発明において、前記受光手段から出力された前記受光信号を増幅するログアンプをさらに備えて構成される。
【0028】
また、請求項18に記載の本発明は、請求項1から17のいずれか一項に記載の本発明において、前記発光手段を、変調発光信号を用いて間欠的に発光駆動させる発光制御手段と、前記受光手段から出力された前記受光信号を、前記変調発光信号に同期して増幅する増幅手段と、をさらに備えて構成される。
【0029】
また、請求項19に記載の本発明は、請求項18に記載の本発明において、前記発光手段を、変調発光信号を用いて間欠的に発光駆動させる発光制御手段をさらに備え、前記発光手段は、可視光波長帯域の光を発光し、前記発光制御手段は、1ミリ秒以内の発光パルス幅で、前記間欠的な発光駆動を行うように構成される。
【0030】
また、請求項20に記載の本発明は、請求項19に記載の本発明において、前記発光制御手段は、前記間欠的な発光駆動における合計発光時間を1ミリ秒以内として構成される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、感知器本体の外側の検煙空間に向けて発光を行い、この検煙空間からの光を受光するので、感知器本体の外側に検煙点を設定して煙感知を行うことができる。このため、煙チャンバーを省略できるので、従来の煙チャンバーの部分が突出した形態は必要なくなり、その部分を扁平な薄型形状にできる。この結果、散乱光式煙感知器を天井面に設置した際に、検煙空間側となる感知器本体の外面を天井面にほぼ揃えることができ、天井面から飛び出すことのないフルフラットの設置を可能とする。また、天井面をフルフラットに設計し、施工できることから、室内デザインの品質を飛躍的に向上できる。また、外面の開放空間を検煙空間として煙の散乱光を検出するため、従来の煙チャンバーのような煙の流入を妨げる構造的な要因がなく、火災の煙につき時間遅れを起すことなく検出できる。さらには、検煙空間は外部の開放空間となり、開放検煙空間に相対する本体外面は下向きに露出しているため、埃の結露の付着がなく、これに起因した誤報の問題が解消され、清掃も不要であることから、運用コストが低減できる。
【0032】
また、本発明によれば、受光量とその微分値に基づいた火災判断を行うことで、検煙空間に虫などの異物が存在した場合の誤動作を回避でき、開放空間を検煙空間とすることによる問題も解消することができる。
【0033】
また、本発明によれば、受光量が所定の火災閾値を越え、かつ、受光量の微分値が所定の誤報閾値以下である場合に火災と判断する。これは、火災による煙濃度の増加が、虫などの異物による受光量の変化に比べ時間的に緩やかであることから、受光量が火災レベルに達しても直ぐに火災とは判断せず、その微分値を判定して異常閾値以下であることを条件に火災と判断するものである。このことにより、検煙空間に虫などの異物が存在した場合の誤動作を一層確実に回避できる。
【0034】
また、本発明によれば、微分値が所定の誤報閾値を越えた時から一定時間後に受光量が所定の障害閾値を超えていた場合は、異物による障害と判断する。これは虫などの異物による受光信号の変化には、一時的なものと継続的なものとに分類でき、虫の飛来等の一時的な受光信号の異常変化は、微分値が異常閾値を超えた後、ある一定時間後には解消されていることから、一定時間後に受光信号が障害閾値以下であれば、非障害と判断できる。これに対し、クモの巣やカーテン等が検煙空間内に移動や接触した場合には、一定時間を経過しても、受光信号は障害閾値を越えた異常レベルを継続しており、感知器が正常に煙を感知できないトラブル状態にあることから、この状態を障害と判断して通知することで、感知器の保守点検を可能とする。
【0035】
また、本発明によれば、受光量が第1の火災閾値を越えている時間が第1の設定時間以上継続し、かつ、受光量が第2の火災閾値を越えている時間が第2の設定時間以上継続している場合に、火災発生と判断する。これは、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器においては、火災の煙の煙濃度の変化と、火災以外(例えば、タバコや調理)の煙の煙濃度の変化とが、相互に類似する傾向にあるため、これらを相互に区別することが困難であったのに対して、煙チャンバーを不要とした本発明に係る散乱光式煙感知器においては、火災の煙と火災以外の煙との異なる傾向をそのまま検出結果に反映させることができるという特徴を活かし、これら両種類の煙を区別して誤報を防止する。
【0036】
また、本発明によれば、複数の発光手段を備えることで、複数の受光量に基づく複合的な判断を行うことができ、火災判定を一層正確に行うことができる。
【0037】
また、本発明によれば、2つの発光手段につき、受光素子に対する散乱角を異ならせることで、煙の種類による散乱特性の相違を作り出し、同時に、2つの発光部から発する光の波長を異ならせることで、波長に起因した散乱特性の相違を作り出し、この散乱角の相違と波長の相違の相乗効果によって煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差をもたせることで、煙の識別確度を高め、検煙空間が外部にあっても、外光の影響を受けずに火災による煙を確実に検出でき、更に、調理の湯気やタバコの煙による非火災報を防止し、更に火災による煙についても黒煙火災と白煙火災といった燃焼物の種類を確実に識別することができる。
【0038】
また、本発明によれば、2つの発光部から発する光の各散乱面に対する偏光面を異ならせることで、光の偏光方向に起因した散乱特性の相違を作り出し、同時に2つの発光部につき、受光素子に対する散乱角を異ならせることで、煙の種類による散乱特性の相違を作り出し、この偏光方向の相違と散乱角の相違の相乗効果によって煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差をもたせることで、煙の識別確度を高め、検煙空間が外部にあっても、外光の影響を受けずに火災による煙を確実に検出でき、更に、調理の湯気やタバコの煙などによる非火災報を確実に防止し、また火災時の煙についても黒煙火災と白煙火災を識別して燃焼物の種類を確実に識別することができる。
【0039】
また、本発明によれば、複数の発光手段を立体角配置したので、発光手段の光軸と受光手段の光軸の相互の交点となる検煙点を、感知器本体外面の外側の空間に設定して煙による散乱光を検出することができる。
【0040】
また、本発明によれば、第1発光手段の光に対する散乱光の受光量と、第2発光手段の光に対する散乱光の受光量とを比較することにより、例えば両者の比を取って閾値と比較することで煙の種類を識別し、煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行う等、複数の受光量に基づいた複合的判断を行うことで、一層正確な火災検出を行うことができる。
【0041】
また、本発明によれば、発光手段の光軸と受光手段の光軸との相互の交点を、感知器本体からから5mm以上離したので、感知器本体の外面に埃が付着したり、虫が這いまわっても、その影響を回避することができる。
【0042】
また、本発明によれば、感知器本体の外表面の少なくとも一部を虫忌避材料等にて構成することで、外表面に虫を近寄りにくくし、誤報を未然に防ぐことができる。
【0043】
また、本発明によれば、受光手段の視野角を5度以内とすることで、検煙空間における散乱光検出のためのエリアの大きさを必要最小限とし、外光による影響を防ぐことができる。
【0044】
また、本発明によれば、発光手段は、コリメートされた平行光を発することで、検煙空間における散乱光検出のためのエリアの大きさを必要最小限とし、外光による影響を防ぐことができる。
【0045】
また、本発明によれば、受光信号をログアンプで増幅する。これにより、外光が直接受光素子に入射するような場合において、通常のリニアアンプでは出力が飽和して増幅機能が失われる場合であっても、受光増幅出力が飽和しないようにすることができ、安定的に火災検知を行うことができる。
【0046】
また、本発明によれば、発光手段を変調発光信号を用いて間欠的に発光駆動し、受光信号を変調発光信号に同期して増幅するので、この変調発光と同期受光によって、誤報の要因となる照明光などを検出対象から除外し、外光による誤報を確実に防止することができる。
【0047】
また、本発明によれば、発光パルス幅を1ミリ秒以内とすることで、人間の視覚感度として不感帯となる発光時間に抑え、感知器における発光部の点滅を人間が認識できないようにすることができる。
【0048】
また、本発明によれば、間欠的な発光駆動における合計発光時間を1ミリ秒以内とすることで、人間の視覚感度として不感帯となる発光時間に抑え、感知器における発光部の点滅を人間が認識できないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、実施の形態1における散乱光煙感知器の断面図である。
【図2A】図2Aは、実施の形態1における散乱光式煙感知器を天井面に設置した状態を示す図である。
【図2B】図2Bは、実施の形態1における散乱光式煙感知器を天井面に埋込装着した状態を示す図である。
【図3】図3は、チャンバーベースの斜視図である。
【図4】図4は、図3のチャンバーベースを用いた検煙部全体の断面図である。
【図5】図5は、実施の形態1における散乱光式煙感知器の回路ブロックである。
【図6】図6は、図5の発光制御部による発光駆動のタイムチャートである。
【図7】図7は、図5の信号処理部に設けている火災判断部の処理機能をハードウェアにより実現した回路ブロック図である。
【図8】図8は、火災による煙を受けた際の図7の火災判断部の動作を示したタイムチャートである。
【図9】図9は、一時的に散乱光が増加した場合のタイムチャートである。
【図10】図10は、検煙点Pの近傍の本体外面に異物が止まって動かないような場合のタイミングチャートである。
【図11】図11は、図5の信号処理部に設けた火災判断部の機能をプログラム制御により実行するためのフローチャートを示している。
【図12】図12は、実施の形態2における散乱光式煙感知器のチャンバーベースの斜視図である。
【図13A】図13Aは、図12のチャンバーベースに設けている発光部と受光部の設置位置に対応した光学的な位置関係を3次元座標空間で模式的に表した図である。
【図13B】図13Bは、発光光軸と受光光軸をxy平面となる水平面から見た図である。
【図14】図14は、散乱角と各種煙の散乱光量との関係を示す図である。
【図15】図15は、散乱角と、濾紙燻焼煙に対するケロシン燃焼煙及び綿灯芯燻焼煙の散乱光量比率との関係を示す図である。
【図16】図16は、実施の形態3における散乱光煙感知器の断面図である。
【図17】図17は、チャンバーベースの斜視図である。
【図18】図18は、図17のチャンバーベースを用いた検煙部全体の断面図である。
【図19】図19は、実施の形態3における散乱光式煙感知器の回路ブロックである。
【図20A】図20Aは、第1発光素子、第2発光素子、及び、受光素子について、その光軸による立体角配置を示す図である。
【図20B】図20Bは、第1発光素子のA点と受光素子のC点の間の立体角配置を取り出した図である。
【図20C】図20Cは、第2発光素子のB点と受光素子のC点との立体角配置を取り出した図である。
【図21】図21は、第1発光素子、第2発光素子、及び、受光素子の光軸が同一平面に存在すると仮定した場合の配置関係を示す図である。
【図22】図22は、視野角と視野面積との関係を示す図である。
【図23】図23は、綿灯芯を燃焼させた場合に生ずる燻焼煙を対象とした散乱効率Iを散乱角θについて示したグラフ図である。
【図24】図24は、ケロシンを燃焼させた場合に生ずる燃焼煙を対象とした散乱効率Iを散乱角θについて示したグラフ図である。
【図25】図25は、綿灯芯による燻焼煙とケロシンによる燃焼煙とに対する受光信号量とその比率を示す図である。
【図26】図26は、図19の回路ブロックをもつ火災感知処理のフローチャートである。
【図27】図27は、図26の障害判定処理のフローチャートである。
【図28】図28は、一時的に散乱光が増加した場合のタイムチャートである。
【図29】図29は、検煙点Pの近傍の本体外面に異物が止まって動かないような場合のタイミングチャートである。
【図30】図30は、実施の形態4の検煙部構造を模式的に示した説明図である。
【図31】図31は、実施の形態4の検煙部構造の立体配置を示す図である。
【図32A】図32Aは、第1発光素子、第2発光素子、及び、受光素子について、その光軸による立体角配置を示す図である。
【図32B】図32Bは、第1発光素子のA点と受光素子のC点の間の立体角配置を取り出した状態を示す図である。
【図32C】図32Cは、第2発光素子のB点と受光素子のC点との立体角配置を取り出した状態を示す図である。
【図33】図33は、図30の検煙部構造において散乱角と偏光角を変えた場合の煙の種類に対する受光信号量の実験的に得られた結果を示す図である。
【図34】図34は、偏光方向と散乱角を設定した場合の燃焼物の種類に対する受光信号量とその比率を示す図である。
【図35】図35は、実施の形態5における火災判定処理のフローチャートである。
【図36】図36は、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器における、タバコの煙に対する受光レベルと時間との関係を示す図である。
【図37】図37は、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器における、火災の煙に対する受光レベルと時間との関係を示す図である。
【図38】図38は、実施の形態5の散乱光式煙感知器における、タバコの煙に対する受光レベルと時間との関係を示す図である。
【図39】図39は、実施の形態5の散乱光式煙感知器における、火災の煙に対する受光レベルと時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1、40、100 散乱光式煙感知器
2、112 感知器本体
3、113 端子盤
4、41、114 チャンバーベース
4a、108 検煙部
5、109、110、125、129 発光素子(第1発光素子、第2発光素子)
5b、42、109b 発光開口
6、111、133 受光素子
6b、43、111b 受光開口
7 本体外面
9、116 透明カバー
11、136 感知器ベース
15、102 発報回路
16、103 信号処理部
17、104 記憶部
18、105、106 発光制御部(第1発光制御部、第2発光制御部)
19、107 増幅回路
20、25、30 コンパレータ
21、24、31 基準電圧源
23 微分回路
26 単安定マルチバイブレータ
27、28、29 ANDゲート
126、130 偏光フィルター
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
まず、実施の形態1の散乱光式煙感知器について説明する。図1は実施の形態1における散乱光煙感知器の断面図である。図1において、散乱光式煙感知器1は、概略的に、感知器本体2、端子盤3、チャンバーベース4、発光素子5、受光素子6、及び、透明カバー9を備えて構成されている。
【0052】
このうち、感知器本体2内には端子盤3が収納され、この端子盤3の内側には回路基板8が収納されている。この回路基板8の下方には、チャンバーベース4が装着されており、このチャンバーベース4には、発光手段としての発光素子5と、受光手段としての受光素子6とが収納されている。
【0053】
チャンバーベース4の下面である本体外面7は、略平坦に形成されており、この本体外面7には、透明カバー9が装着されている。また、本体外面7には、発光素子5から発せられた光を散乱光式煙感知器1の外部に射出するための発光開口5bと、このように射出されて煙によって散乱された光を受光素子6に導入するための受光開口6bとが形成されている。この本体外面7からさらに下方に離れた外部の開放空間には、発光素子5の光軸と受光素子6の光軸とが相互に交差する光軸交点Pが設定されており、この光軸交点Pが検煙点を構成する。このように、第1の実施の形態における散乱光煙感知器11の特徴の一つは、検煙点が散乱光式煙感知器1の外部に設定されていることであり、散乱光式煙感知器1の内部に検煙空間を形成する必要がないことから、煙チャンバーが省略されている。
【0054】
図2Aは、散乱光式煙感知器1を取付ける基礎になる感知器ベース11を天井面10に設置し、この感知器ベース11に図1の散乱光式煙感知器1を装着した状態を示している。この図2Aに示すように、散乱光式煙感知器1においては、従来の散乱光式煙感知器に設けられている煙チャンバーが省略されているので、この煙チャンバーによる飛び出しがない分、散乱光式煙感知器1の全体の厚みを薄くでき、散乱光式煙感知器1を、天井面11から下方にあまり突出させることなく(散乱光式煙感知器1を天井面11に対しほとんど目立たせることなく)設置できる。
【0055】
図2Bは、感知器ベース11を天井面10内に設置し、この感知器ベース11に図1の散乱光式煙感知器1を埋込装着した状態を示している。この図2Bに示すように、散乱光式煙感知器1の下面(図1の本体外面7や透明カバー9)を天井面11に対して略面一状に設置でき、この場合には、煙チャンバーによる飛び出しが全くがなく、フルフラットな天井構造を実現できる。特に、煙チャンバーを不要として散乱光式煙感知器1の全体の厚みを薄くしているので、天井内に埋め込まれる部分が従来よりも小さくなり、狭い天井空間内にも散乱光式煙感知器1を配置できる。
【0056】
図3は、図1の発光素子5及び受光素子6を配置するチャンバーベース4の斜視図である。この図3において、チャンバーベース4の検煙側の本体外面7には、発光開口5b及び受光開口6bが形成され、発光開口5bの内部には発光素子5、受光開口6bの内部には受光素子6が組み込まれている(これら発光素子5と受光素子6は図3で図示せず)。
【0057】
図4は、図3のチャンバーベース4を用いた検煙部全体の断面図である(なお、透明カバー9を想像線にて示す)。この図4において、チャンバーベース4の上部はフラットな本体外面7となっており、この本体外面7には、発光開口5b及び受光開口6bが開口されると共に、保護用に透明カバー9が装着されている。なお実施の形態1においては、外部の開放検煙空間の検煙点P側の本体外面7としてフラットな外面とした場合を例にとっているが、この本体外面7としては必要に応じて多少湾曲させたりあるいは適宜の凹凸を設けたりしてもよい。
【0058】
チャンバーベース4の内部には、発光素子5と受光素子6が組み込まれ、発光素子5の発光光軸5aと受光素子6の受光光軸6aとは、本体外面7の外側の開放検煙空間の検煙点Pで交差している。ここで、本体外面7から外部空間の光軸交点となる検煙点Pまでの高さhは、任意に設定することができるが、好ましくは、散乱光式煙感知器1の外部において煙検知に障害になり得る外乱要素、例えば、本体外面7に埃や虫が付着しても、これら付着物が煙検知に影響を与えることのない高さに設定する。例えば、この高さhは、散乱光式煙感知器1の設置環境下において比較的多く発生している虫の最大の高さに設定することができ、一例として、h=5mm以上の高さを確保することが好ましい。
【0059】
またチャンバーベース4としては、虫が付着しにくい虫忌避材料で構成するか、本体外面7に虫忌避剤を含浸または塗布するようにしてもよい。また透明カバー9も虫忌避材料で構成するか、虫忌避剤を含浸または塗布するようにしてもよい。このことにより、虫が透明カバー9の外面を這い回ることを防止し、虫による誤報の発生を防止できる。なお、虫忌避剤の具体的成分は任意であるが、例えば、ジエチルトルアミドやピレスロイドを用いることができる。
【0060】
図5は、実施の形態1における散乱光式煙感知器1の回路ブロックである。この図5において、散乱光式煙感知器1は、上述した発光素子5及び受光素子6を有する検煙部4a、発報回路15、CPUを用いた信号処理部16、記憶部17、発光制御部18、及び、増幅回路19を備えて構成されている。
【0061】
このような構成において、概略的には、発光制御部18にて駆動された発光素子4aから発光が行われる。このように発光された光が、散乱光式煙感知器1の外部の検煙点Pやその周辺において煙に反射して散乱されると、この散乱光が受光素子6にて受光される。この受光素子6の出力は、増幅回路(ログアンプ)19にて増幅され、信号処理部16に入力される。この信号処理部16においては、増幅回路19から出力された受光素子6の出力のレベルと、記憶部17に予め記憶された火災閾値TH1、誤報閾値TH2、又は、障害閾値TH3とを後述するように比較することで、火災発生の有無、誤報、又は、障害発生の有無を判断する。そして、所定条件が満たされた場合、信号処理部16は、発報回路15を動作して所定の受信機に向けて火災信号を送出させる。
【0062】
ここで、信号処理部16には、火災判断部16aの機能がプログラム制御の機能として設けられる。この火災判断部16aは、受光素子6による受光信号とその微分値に基づいて火災を判断する。即ち火災判断部16aは、受光素子6による受光信号Aが所定の火災閾値TH1を越え、且つ受光信号Aの微分値Bが所定の誤報閾値TH2以下である場合に火災と判断する。
【0063】
一方、火災判断部16aは、受光素子6による受光信号Aが所定の火災閾値TH1を越え、かつ、受光信号Bの微分値が所定の誤報閾値TH2を越えている場合、微分値Bが所定の誤報閾値TH2を越えた時から一定時間T後に受光信号Aが所定の障害閾値TH3を越えているか否か判定し、障害閾値TH3以下であれば一過性の障害と判断して監視を続行し、障害閾値TH3を越えていた場合は異物による障害と判断する。
【0064】
図6は、図5の発光制御部18による発光駆動のタイムチャートである。この図6において、発光パルス(A)は、図1の発光素子5から発光される光、受光信号(B)は、図1の受光素子6にて受光される光、同期受光信号(C)は、図5の増幅回路19にて取得される受光信号を示す。すなわち、発光制御部18は、発光パルス(A)のように、繰り返し周期T1毎にパルス幅T2をパルス出力するように発光素子5を発光駆動し、発光素子5に変調発光を行わせる。これに対応して増幅回路19は、発光制御部18の変調と同期を取り、受光信号(B)を発光変調に同期した同期受光信号(C)として取得する。
【0065】
ここで発光周期T1は例えばT1=1secであり、変調発光のパルス幅T2は例えばT2=50μsecとしている。このように変調発光とこれに対応した同期受光により、外部の検煙空間からの煙の散乱光以外の光の入射による受光信号を除去し、煙による散乱光のみの受光を確実にできるようにしている。
【0066】
また発光素子5の発光波長帯域が可視光帯域にあることから、間欠発光による光を人間が見ても発光を認識できないようにするため、発光時間を1msec以内に制限している。即ち、人間が目で発光素子からの光を視認できるためには、1msecを越える継続発光時間を必要とすることから、発光素子からの光を見えなくするため、発光時間を1msec以内に制限している。
【0067】
図6の発光パルス(A)の場合、3回の発光パルスの合計発光時間(パルス幅T2×3回)が1msec以内であれば良い。例えば、上述のようにT2=50μsecとした場合、3回の発光パルスの合計発光時間は150μsecとなり、1msec以内であるため、発光が見えることはない。
【0068】
図7は、図5の信号処理部16に設けている火災判断部16aの処理機能をハードウェアにより実現した回路ブロック図である。図7において、ハードウェアで構成された火災判断部16aは、コンパレータ20、基準電圧源21、微分回路23、コンパレータ25、基準電圧源24、コンパレータ30、基準電圧源31、単安定マルチバイブレータ26、ANDゲート27,28,29等を図示のように接続して構成されている。
【0069】
コンパレータ20は、受光素子6の受光出力を増幅回路19で増幅して得た受光信号Aを入力され、基準電圧源21により設定した所定の火災閾値TH1と比較し、受光信号Aのレベルが火災閾値TH1を上回ったときにHレベル出力(High出力)を生ずる。コンパレータ20のHレベル出力はANDゲート27の一方に入力される。
【0070】
コンパレータ30は、受光素子6の受光出力を増幅回路19で増幅して得た受光信号Aを入力され、基準電圧源31により設定した障害閾値TH3と比較し、受光信号Aのレベルが障害閾値TH3を上回ったときにHレベル出力を生ずる。コンパレータ30のHレベル出力はANDゲート28の一方に入力される。
【0071】
また、受光信号Aは微分回路23で微分された後、微分値BとしてダイオードD1を介してコンパレータ25に入力される。コンパレータ25は基準電圧源24による所定の異常閾値TH2と微分値Bを比較し、微分値Bが異常閾値TH2を越えたときにHレベル出力を生ずる。なおダイオードD1は、微分回路23からプラス極性とマイナス極性を持った微分信号が得られることから、このうちのプラス極性の微分値のみを取り出すようにしている。
【0072】
コンパレータ25のHレベル出力は単安定マルチバイブレータ26に入力される。この単安定マルチバイブレータ26は、Hレベル出力を受けることで駆動され、一定時間Tに亘り、Q出力よりHレベル出力を生ずる。単安定マルチバイブレータ26のQ出力はANDゲート27の他方に反転入力される。
【0073】
したがって、コンパレータ25で微分値Bが異常閾値TH2を越えて単安定マルチバイブレータ26がT1時間に亘りHレベル出力を生じている間、ANDゲート27はコンパレータ20によるHレベルとなる火災検出信号を禁止することになる。また、コンパレータ25において微分値Bが異常閾値TH2以下であれば、単安定マルチバイブレータ26のQ出力はLレベル(Lowレベル)にあるため、ANDゲート27は許容状態にあり、このときコンパレータ20による火災検出によるHレベル出力はそのまま出力される。
【0074】
ANDゲート27の出力はANDゲート29の一方に入力される。ANDゲート29の他方にはANDゲート28の出力が反転入力される。ANDゲート28には、コンパレータ30の出力と単安定マルチバイブレータ26の反転出力が入力されている。このためANDゲート28は、コンパレータ30において障害が検出されてHレベル出力を継続的に出力している状態で、コンパレータ25によるHレベル出力でT時間に亘り動作した単安定マルチバイブレータ26がオフとなったときの反転出力で許容状態となり、このときコンパレータ30の出力がANDゲート28から出力されることで、これが障害信号となる。
【0075】
またANDゲート28がHレベル出力となる障害信号を出す際には、ANDゲート29がその反転入力により禁止状態にあり、コンパレータ30からのHレベル出力はANDゲート29で禁止され、障害信号が出力される際には火災信号の出力が禁止される。
【0076】
図8は、火災による煙を受けた際の図7の火災判断部16aの動作を示したタイムチャートである。
【0077】
火災による煙を受けた際には、受光素子6による受光信号Aは図8の(A)のように時間の経過と共に徐々に増加し、火災閾値TH1を時刻t1で越えるとコンパレータ20の出力がHレベルとなり、このときANDゲート27,29は許容状態にあることから、図8の(C)のように火災信号がHレベルとなり、図5の発報回路15を動作して受信機側に火災信号を送出する。
【0078】
このとき微分回路23の受光信号Aの微分値Bは、煙濃度の上昇が比較的緩やかであることから比較的小さな微分値であり、異常閾値TH2を越えることはない。
【0079】
図9は、図1の散乱光式煙感知器1において、本体外面7の下側の外部の開放空間の検煙点Pの部分を飛んでいる虫などが横切ることで一時的に散乱光が増加した場合のタイムチャートである。このように一時的に散乱光が生ずると、図9の(A)のように受光信号Aは急激に増加した後に通常レベルに戻り、火災閾値TH1を越えている間、図9の(C)のようにコンパレータ20の出力はHレベルとなる。
【0080】
一方、このときの受光信号Aに対する微分回路23の微分値Bは、図9の(B)のように、受光信号Aの立ち上がりでプラス方向に大きく変化した後、受光信号Bの立ち下がりでマイナス方向に大きく変化した信号となる。そして、プラス方向に大きく変化した際に異常閾値TH2を上回り、この間、図9の(D)のようにコンパレータ25がHレベル出力を生ずる。その結果、図9の(E)のように単安定マルチバイブレータ26のQ出力がHレベルとなる。
【0081】
このため、コンパレータ20の出力がHレベルとなっても、単安定マルチバイブレータ26のQ出力がHレベルとなることでANDゲート27によって火災信号の出力が禁止される。この結果、外部開放空間の検煙点Pを一時的に虫などが横切ったとしても、火災信号が出力される誤動作を起すことはない。
【0082】
なお、単安定マルチバイブレータ26による設定時間Tとしては、検煙点を異物が横切る時間を十分カバーできるように設定すればよい。この外部の検煙点を異物が横切るケースとしては、虫以外に例えば人の指先や物が横切る場合などが考えられる。
【0083】
図10は、図1の外部空間に設定した検煙点Pの近傍の本体外面7にカーテン等の異物が止まって動かないような場合のタイミングチャートである。このような異物が固定的に付着したケースにあっては、受光信号Aは図10の(A)のように、火災閾値TH1を越えて大きく立ち上り、障害閾値TH3を越えた後、その状態を継続することになる。
【0084】
微分回路23から出力される微分値Bは、図10の(B)のように、プラス方向に大きく変化し、異常閾値TH2を一時的に越える。このため異常検出用のコンパレータ25も微分値の一時的な増加に応じてHレベル出力を生じ、単安定マルチバイブレータ26を動作し、図10の(E)のように単安定マルチバイブレータ26が一定時間Tに亘りHレベル出力を生ずる。
【0085】
このため単安定マルチバイブレータ26のQ出力によりANDゲート27が禁止状態となり、単安定マルチバイブレータ26の動作中はANDゲート27からのHレベル出力はない。単安定マルチバイブレータ26が一定時間後にオフしてQ出力がLレベルとなると、ANDゲート27の禁止が解除され、Hレベル出力を生ずるが、同時にANDゲート28が単安定マルチバイブレータ26の反転出力のHレベルへの立ち上がりで許容状態となり、受光信号Aが障害閾値TH3を越えていることによるコンパレータ30からのHレベル出力を受けてANDゲート28出力がHレベルとなり、これが障害信号(トラブル信号)として出力される。
【0086】
同時に、ANDゲート28のHレベル出力でANDゲート29が禁止状態となり、ANDゲート27からHレベル出力が得られても、これが禁止され、火災信号としての出力は阻止される。
【0087】
ANDゲート28のHレベル出力による障害信号は図5の発報回路15に出力され、例えば火災発報時と異なる信号形式によって受信機に送出することで、受信側で感知器のトラブルを示す障害表示を行い、係員が感知器の検煙側の本体外面7をチェックして、付着している異物などを除去することで、トラブルを解消できる。発報回路15による受信機に対する障害信号の送出は、例えば一定時間だけパルス的に発報電流を流すような信号形式とすればよい。
【0088】
ここで、このような火災信号や障害信号の出力制御は、図7のようなワイヤードロジック以外にも、ソフトウェアロジックにて達成することができる。図11は、図5の信号処理部16に設けた火災判断部16aの処理を、プログラム制御により実行するためのフローチャートを示している。なお、図11の火災判断処理とは別のプログラムにより、増幅回路19から出力される受光信号Aのサンプリングと、サンプリングされた受光信号値の微分処理による微分値の演算が繰り返し行われている。
【0089】
図11の火災判定処理にあっては、まずステップSA1で受光値Aが所定の火災閾値TH1以上か否かチェックし、火災閾値TH1を越えた場合にはステップSA2に進み、微分値Bが所定の異常閾値TH2以上か否かチェックする。微分値Bが異常閾値TH2以下であれば、ステップSA3に進み、火災と判断し、火災の判定出力を生ずる。
【0090】
ステップSA2で微分値Bが異常閾値TH2を越えていた場合には、ステップSA4に進み、設定時間Tを持ったタイマーをスタートする。タイマースタート後、ステップSA5で設定時間Tの経過をチェックしており、設定時間が経過すると、ステップSA6に進み、ここで受光値Aが障害閾値TH3を越えているか否かチェックする。
【0091】
受光値Aが障害閾値TH3以下であった場合には、図9に示した場合と同様、一時的に散乱光が増加した場合であることから、この場合には特に火災判断の出力は行わない。これに対し受光値Aが障害閾値TH3を越えていた場合には、これは図10に示したように継続的に異常な受光信号が得られている状態であることから、ステップSA7で障害を判定して、その判定出力を生ずる。
【0092】
また、本実施の形態1においては、図5に示すように、受光素子6からの受光出力をログアンプである増幅回路19にて増幅しているので、火災判断を一層正確に行うことができる。すなわち、受光出力を通常のリニア型アンプで増幅した場合、外乱光の強い環境下ではアンプ出力が飽和する場合があり、火災失報に繋がる危険性があった。本実施の形態1では、受光出力をログアンプを用いて増幅しているので、比較的強い外乱光が受光部に入射した場合においても、アンプ出力が飽和して煙による散乱光を検出できないという事態を防ぐことができる。また、ログアンプにより外乱光環境下で煙散乱光を検出する場合には、煙によるアンプ出力の変化幅は小さくなるが、本実施の形態1においては、微分値を取ることでS/N比を改善し、火災判断を行うことができる。
【0093】
このように本実施の形態1によれば、煙チャンバーを省略して、散乱光式煙感知器を突出部の少ない平坦状に構成でき、天井面から飛び出すことのないフルフラットの設置を可能とする。
また、受光量とその微分値に基づいた火災判断を行うことで、検煙空間に虫などの異物が存在した場合の誤動作を回避でき、開放空間を検煙空間とすることによる問題も解消することができる。
また、受光量が火災レベルに達しても直ぐに火災とは判断せず、その微分値を判定して異常閾値以下であることを条件に火災と判断することで、検煙空間に虫などの異物が存在した場合の誤動作を一層確実に回避できる。
また、微分値が異常閾値を超えた状態が一定時間経っても解消されない場合には、障害と判断して通知することで、感知器の保守点検を可能とする。
また、検煙点を感知器本体からから5mm以上離したので、感知器本体の外面に埃が付着したり、虫が這いまわっても、その影響を回避することができる。
また、感知器本体の本体外面の少なくとも一部を虫忌避材料等にて構成することで、外表面に虫を近寄りにくくし、誤報を未然に防ぐことができる。
また、受光手段の視野角を5度以内とすることで、検煙空間における散乱光検出のためのエリアの大きさを必要最小限とし、外光による影響を防ぐことができる。
また、受光信号をログアンプで増幅することで、受光増幅出力が飽和しないようにすることができ、安定的に火災検知を行うことができる。
また、発光素子を変調発光信号を用いて間欠的に発光駆動し、受光信号を変調発光信号に同期して増幅するので、誤報の要因となる照明光などを検出対象から除外し、外光による誤報を確実に防止することができる。
また、発光パルス幅を1ミリ秒以内とすることで、人間の視覚感度として不感帯となる発光時間に抑え、感知器における発光部の点滅を人間が認識できないようにすることができる。
また、間欠的な発光駆動における合計発光時間を1ミリ秒以内とすることで、人間の視覚感度として不感帯となる発光時間に抑え、感知器における発光部の点滅を人間が認識できないようにすることができる。
【0094】
次に、実施の形態2の散乱光式煙感知器について説明する。この実施の形態2は、基本的に実施の形態1と同様であるが、発光素子の光軸と受光素子の光軸とを本体外面上に所定角度で交差するように配置した点において、発光素子の光軸と受光素子の光軸とを本体外面上で略直線的に配置した実施の形態1と異なる。なお、実施の形態2の構成及び方法は、特に説明なき点においては、実施の形態1と同様であり、同一の機能を有する構成要素には実施の形態1と同一の名称及び又は同一の符号を付する。
【0095】
図12は、実施の形態2における散乱光式煙感知器40(全体は図示せず)のチャンバーベース41の斜視図であり、このチャンバーベース41には、発光開口42と受光開口43とが、本体外面上で所定の角度で交差するように配置されており、発光開口42の内部には図示しない発光素子5が収められ、受光開口43の内部には図示しない受光素子6が収められている。
【0096】
次に、発光角度と受光角度との関係について詳細に説明する。なお、本願は、本件出願人によって2002年1月11日に先に提出された日本国特許出願番号2002−4221の全内容を組み込むものであり、以下の内容の一部は、この出願に開示されているものである。
【0097】
図13Aは、図12のチャンバーベース41に設けている発光部と受光部の設置位置に対応した光学的な位置関係を3次元座標空間で模式的に表した図である。
【0098】
図13Aにおいて、発光素子5による発光点Oからの発光光軸13をベクトルで示し、外部の開放空間に位置する光軸交点Pからの散乱光が入射する受光光軸14を受光素子6の受光点Qに対するベクトルで示している。また、これら発光光軸13と受光光軸14との交差角のうち、発光光軸13に沿った光が煙等で散乱して受光光軸14に沿った光になる際の角度を散乱角θ、この散乱角θに対する補角となる交差角を構成角δとする(θ=180度−δ)。
【0099】
図13Aにおいて、発光点O、光軸交点P及び受光点Qを結ぶ三角形が実施の形態2における散乱光式煙検知のための仮想的な光学面であり、三角形OPQを形成する面はxy平面(水平面)及びzx平面(鉛直面)のそれぞれに対し、ある角度を持って配置されている。
【0100】
ここでは、説明を簡単にするため、発光点Oのx軸上への投影を投影点Aとなるように配置しており、従って発光光軸13の鉛直方向の傾斜角φは、この場合x軸に対する角度となる。
【0101】
ここで発光光軸13と受光光軸14をxy平面となる水平面から見ると図13Bのように、投影点Aが発光点Oに対応し、投影点Bが受光点Qに対応する。すなわち発光光軸13と受光光軸14は、水平方向において、所定の角度α(水平面でのみかけ上の構成角α)をもって交差している。
【0102】
そこで、図13A、13Bにおいて、発光点Oの座標を(a1、b1、c1)、受光点Qの座標を(a2、b2、c2)とすると、構成角δ、水平面上のみかけ上の構成角α、及び、垂直方向の傾斜角φは、次式(1)〜(3)で表される。
【0103】
【数1】

【0104】
【数2】

【0105】
【数3】

【0106】
例えば、垂直方向の傾斜角φ=30°に設定し、水平面でのみかけ上の構成角α=120°とすると、構成角δ=97°となる。また水平面でのみかけ上の構成角αをα=120°、傾斜角φをφ=9.8°に設定していると、構成角δはδ=117°となる。
【0107】
これをまとめると、みかけ上の構成角α=120°を一定に保った場合の傾斜角φ=9.8°,30°に対し、実際の構成角δ=117°,97°となり、発光点Oと受光点Qの水平方向での位置を変化させない場合、垂直方向の傾斜角φを大きくすれば、逆に実際の構成角δを小さくする関係が得られる。もちろん垂直方向の傾斜角φを小さくすれば光軸交点Oの高さが低くなることから、より薄型化することになる。
【0108】
図13A、13Bのような発光から受光までの光軸の3次元関係に基づき、実施の形態2では、発光光軸13と受光光軸14の構成角δを略110°としている。この構成角δ=110°に対応する散乱角θは、θ=180°−δ=70°である。このように構成角δ=110°(θ=70°)とするのは、以下の理由による。すなわち、散乱光式感知器の検煙部には、(1)煙による散乱光量を大きくすることと、(2)煙の種類による影響を小さくすることとの、相反する2つの要求がある。発明者は、散乱角と各種の煙に対する散乱光量との関係を、実験とシュミレーションとにより求めた(OPTIMIZATION OF SENSITIVITY CHARACTERISTICS OF PHOTOELECTRIC SMOKE DETECTOR TO VARIOUS SMOKES, Nagashima et al., Asia Oceania Fire Symposium, 1998)。
【0109】
図14は、散乱角:θ(=180−δ)による散乱光量の変化を示すもので、各種の煙に対する散乱角と散乱光量との関係を、従来の散乱光式煙感知器での散乱角=40°での濾紙の燻焼煙による散乱光量を1とした時の相対比として示している。図示のように、散乱角が大きくなるに従い散乱光量は小さくなるが、煙感知器の動作を安定化させるためには、従来の散乱光量の少なくとも1/5の散乱光量を確保する必要があり、θ<90°が必要となる。一方、煙の種類による影響を小さくするためには、図15に示した濾紙燻焼煙に対するケロシン燃焼煙の出力をできるだけ大きくすることが求められる。ケロシン燃焼煙に対する感度は、少なくとも濾紙の感度の1/7以上であることが必要となり、この場合θ>50°となる。これはEN規格およびUL規格に規定された各種の火災試験に合格するための理想条件となっている。両者を満足する散乱角は、50°<θ<90°となり、理想的には、θ=70°が求められる。
【0110】
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、発光素子5の発光光軸13と受光素子6の受光光軸14を構成角δ=110°に設定した状態で水平面におけるみかけ上の構成角α及び垂直面における傾斜角φをもつようにチャンバーベース41内に埋め込み配置することで、煙粒子の大きさに対する感度の影響の少ない最適な角度配置を行っても、煙に対する光軸交点Pの飛び出し量を低く抑えることができる。
【0111】
次に、実施の形態3の散乱光式煙感知器について説明する。この実施の形態3の散乱光式煙感知器は、概略的に、発光素子を2つ備えている点において、発光素子を一つのみ設けている実施の形態1及び実施の形態2の散乱光式煙感知器と相違する。なお、実施の形態3の構成及び方法は、特に説明なき点においては、実施の形態2と同様であり、同一の機能を有する構成要素には実施の形態2と同一の名称及び又は同一の符号を付する。
【0112】
まず、発光素子を2つ設ける背景について説明する。従来の散乱光式煙感知器にあっては、火災による煙に限らず、調理の煙やバスルームの湯気等により非火災報を発してしまうことがある。
【0113】
このような火災以外の原因による非火災報を防止するため、2種類の波長の光を検煙空問に照射し、煙による散乱光について異なる波長の光強度の比を求めて煙の種類を判定する方法や、散乱面に対し垂直な偏光面をもつ光と水平な偏光面を持つ光を照射し、煙による散乱光の各偏光成分の光強度の比を求めて煙の種類を判定する方法が知られている。
【0114】
しかしながら、このような従来の異なる波長の光や偏光面の異なる光を用いて煙の種類を判別する方法にあっては、火災による煙と火災以外の原因による調理の煙やバスルームの湯気等を識別する確度が必ずしも十分とはいえず、さらに高度な煙識別が望まれている。
【0115】
そこで、本実施の形態3においては、感知器内の煙チャンバーを廃止して小型薄型化を図ることに加えて、煙識別の確度を高めて非火災報防止を確実なものとすることを目的の一つとしている。
【0116】
次に、実施の形態3における散乱光煙感知器について説明する。図16は、実施の形態3における散乱光煙感知器の断面図である。この散乱光式煙感知器100は、概略的に、感知器本体112、端子盤113、チャンバーベース114、第1発光素子109、第2発光素子110(図16には図示せず)、受光素子111、及び、透明カバー116を備えて構成されている。なお、特記する点を除き、これら感知器本体112、端子盤113、チャンバーベース114、第1発光素子109、受光素子111、透明カバー116は、それぞれ、実施の形態1における感知器本体2、端子盤3、チャンバーベース4、発光素子5、受光素子6、透明カバー9と同様に構成でき、第2発光素子110は発光素子5と同様に構成できる。
【0117】
ここで、チャンバーベース114には、複数の発光手段としての第1発光素子109及び第2発光素子110と、受光手段としての受光素子111とが収納されている。また、本体外面118には、第1発光素子109及び第2発光素子110から発せられた光を散乱光式煙感知器100の外部に射出するための2つの発光開口109b、110b(図16には一つの発光開口109bのみを図示する)と、このように射出されて煙によって散乱された光を受光素子111に導入するための受光開口111bとが形成されている。この本体外面118からさらに下方に離れた外部の開放空間には、第1発光素子109及び第2発光素子110の光軸と受光素子111の光軸とが相互に交差する光軸交点Pが設定されており、この光軸交点Pが検煙点を構成する。
【0118】
散乱光式煙感知器100を取付ける基礎になる感知器ベース(図示せず)を天井面(図示せず)に設置し、この感知器ベースに図16の散乱光式煙感知器100を装着した場合においては、実施の形態1の図2Aと同様、煙チャンバーによる飛び出しがない分、散乱光式煙感知器100を天井面に対しほとんど目立たせることなく設置できる。
【0119】
また、感知器ベースを天井面内に設置し、この感知器ベースに図16の散乱光式煙感知器100を埋込装着した場合においても、実施の形態1の図2Bと同様、散乱光式煙感知器100の下面(図1の本体外面118や透明カバー116)が天井面と同じレベルとなって飛び出し全くがなく、フルフラットな天井構造を実現できる。特に、煙天井内に埋め込まれる部分が従来よりも小さくなり、狭い天井空間内にも散乱光式煙感知器100を配置できる。
【0120】
図17は、第1発光素子109、第2発光素子110、及び、受光素子111を立体角配置するためのチャンバーベース114の斜視図である。図17において、チャンバーべ一ス114の本体外面118には、第1発光開口109b、第2発光開口110b、及び、受光開口111bが形成され、それぞれの開口の内部に、図1の第1発光素子109、第2発光素子110、受光素子111が組み込まれている(これら各素子は図17で図示せず)。
【0121】
図18は、図17のチャンバーべ一ス114を用いた立体角配置をとる検煙部全体の断面図である(第1発光開口109bと受光開口111bとを通る断面における断面図。なお、透明カバー116を想像線にて示す)。この図18において、チャンバーベース114の上部はフラットな本体外面118となっており、第1発光開口109b、第2発光開口110b、及び、受光開口111bが形成されており、保護用に透明カバー116が装着されている。
【0122】
チャンバーベース114の内部には、第1発光素子109、第2発光素子110(図18では図示せず)、受光素子111が組み込まれており、第1発光素子109の光軸109a、第2発光素子110光軸110a(図18では図示せず)、及び、受光素子111の光軸111aは、本体外面18の外側となる開放検煙空間の検煙点Pで立体交差している。
【0123】
ここで、本体外面118から外部空間の光軸交点となる検煙点Pまでの高さhとしては、実施の形態1と同様、本体外面7の付着物が煙検知に影響を与えることのない高さ、例えば、h=5mm以上に設定することが好ましい。
【0124】
図19は、実施の形態3の散乱光式煙感知器の回路ブロックである。この図19において、散乱光式煙感知器100は、発報回路102、MPUを用いた信号処理部103、記憶部104、第1発光制御部105、第2発光制御部106、増幅回路107、及び、検煙部108を備えて構成されている。なお、特記する点を除き、これら発報回路102、信号処理部103、記憶部104、第1発光制御部105、増幅回路107、検煙部108は、実施の形態1における発報回路15、信号処理部16、記憶部17、発光制御部18、増幅回路19、検煙部4aと同様に構成でき、第2発光制御部106は発光制御部18と同様に構成できる。
【0125】
検煙部108は、第1発光素子109、第2発光素子110、及び、受光素子111を備えて構成されている。これら第1発光素子109、第2発光素子110、及び、受光素子111は、それぞれの光軸が感知器外部の開放空間に設定された検煙点Pで交差するように、配置されている。
【0126】
図20Aは、第1発光素子109及び第2発光素子110の発光光軸109a、110aと、受光素子111の受光光軸111aとによる立体角配置を示している。
【0127】
これら発光光軸109a、110a及び受光光軸111aが交差する検煙点Pが、図17のチャンバーベース114における本体外面118の外側となる開放検煙空間に存在しており、これに対し第1発光素子109、第2発光素子110、及び、受光素子111は、チャンバーベース114の中に配置されている。
【0128】
図20Bは、第1発光素子109のA点と受光素子111のC点の間の立体角配置を取り出している。この場合、第1発光素子109のA点からの発光光軸109aと、受光素子111のC点からの受光光軸111aとを含む面は三角形PCAで与えられ、この三角形PCAを含む面の発光光軸109aと受光光軸111aとのなす角が第1発光素子109の第1散乱角θ1となる。
【0129】
図20Cは、第2発光素子110のB点と受光素子111のC点との立体角配置を取り出している。この場合、発光光軸110aと受光111aとは三角形PCBを含む面に存在しており、発光光軸110aと受光光軸111aとのなす散乱角は、三角形PCBを含む面上の発光光軸110aと受光光軸111aのなす場合に散乱角θ2として与えられている。
【0130】
ここで図20A〜20Cの立体角配置をとる検煙部108の構造を、説明を容易にするため、図21のように、第1発光素子109、第2発光素子110、及び、受光素子111の光軸が同一平面に存在すると仮定して説明すると次のようになる。
【0131】
図21において、第1発光素子109は、その発光光軸109aと受光素子111の受光光軸111aの交点Pに対する第1散乱角θ1を、この実施形態にあってはθ=30°に設定している。また第1発光素子109としては近赤外線LEDを使用しており、第1発光素子109から発せられる光は、中心波長λ1として、この実施形態にあってはλ1=900nm(=0.9μm)を設定している。
【0132】
このような第1発光素子109に対し、実施の形態3にあっては更に第2発光素子110を設けている。第2発光素子110は、その発光光軸110aと受光素子111との交点Pに対する第2散乱角θ2を、第1発光素子109と受光素子111の第1散乱角θ1より大きく構成している(θ2>θ1)。この実施形態にあっては第2散乱角θ2はθ2=120°としている。
【0133】
また第2発光素子110は可視光LEDを使用しており、第2発光素子110から発生される光の中心波長を第2波長λ2とすると、この波長λ2は第1発光素子109の波長λ1より短く設定されており、この実施形態にあってはλ2=500nm(=0.5μm)としている。
【0134】
更に、第1発光素子109及び第2発光素子110としては、コリメートされた平行光を発するレーザダイオードなどを使用することが望ましい。また、受光素子111としては、検煙点Pに対する視野角が5度以下といった狭いものを使用することが好ましい。このような視野角にした場合、検煙点Pを中心とした限定された検煙空間のみからの光を受光し、煙の散乱光以外の外乱光が受光部に入射する光量を小さくして、外光による影響を最小限に抑えることができる。この構成により、散乱光煙感知器は、照明光や太陽の反射光等の外乱光による誤作動の危険性を小さくすることができる。また、外乱光受光量を抑えることができるため、図19の増幅回路107が飽和レベルに達する危険性を小さくすることができる。
【0135】
図22は、視野角と視野面積との関係を示す図であり、横軸は、約3mの高さの天井面に散乱光煙感知器を設置して監視を行った場合の当該散乱光煙感知器の視野角、縦軸は、当該散乱光煙感知器の視野に含まれる床面の面積(視野面積)をそれぞれ示す。この図22に示すように、視野角が5度の場合、視野面積は約2200cm2であるが、視野角が20度の場合、視野面積は約38000cm2になってしまう。これによる外乱光の受光量は、室内の照明光等が均一であると仮定した場合、当該面積比で大きくなることになり、視野角が増大するに伴って、図19の増幅回路107が飽和レベルに達する危険性が2次関数的に急激に増すことになる。
【0136】
また、受光部の視野角は、外乱光の影響を小さくする意味では小さい方が良いが、受光素子111としてレンズ付きフォトダイオードやフォトトランジスタを用いる場合、視野角は5度以内であることが必要十分条件となる。また、必要以上に狭小な視野角の場合、煙散乱光の受光量自体が小さくなり、S/N比が悪くなる。これらのことから、受光部の視野角は5度以内であることが好ましい。
【0137】
図23は、図16乃至図21の検煙部構造において、綿灯芯を燻燃させた場合に生ずる燻燃煙(白色煙)を対象とした、第1発光素子109及び第2発光素子110からの光による散乱効率Iを散乱角θについて示したグラフ図である。横軸は、散乱角θ(θ=0°〜180°)、縦軸は、対数座標による散乱効率Iをそれぞれ示す。
【0138】
第1発光素子109からの発光を第1波長λ1=900nmとした場合、受光素子111側における散乱効率は特性曲線20のようになる。一方、第2発光素子110からの発光を第2波長λ2=500nmとした場合、受光素子111側における散乱効率は特性曲線21のようになる。
【0139】
この特性曲線20、21について、まず発光素子から発する光の波長について見ると、第1発光素子109の短い波長λ1=900nmの特性曲線13の方が散乱効率が低く、第2波長λ2=500nmと波長の短い第2発光素子110からの光による特性曲線14の散乱効率の方が高い事がわかる。
【0140】
一方、第1発光素子109及び第2発光素子110の各散乱効率の特性曲線20、21における散乱角θの変化に対しては、両方とも散乱角θが小さいほど散乱効率が高く、散乱角の増加に従って散乱効率が低下し、120°地点で最低値を示すが、その後散乱角の増加に伴って散乱効率が上昇する特性となっている。
【0141】
この実施の形態3にあっては、第1発光素子109の散乱角θ1をθ1=30°に設定しており、従って特性曲線20におけるP1点の散乱効率A1が得られている。一方、第2発光素子110については第2散乱角θ2をθ2=120°に設定しており、このため特性曲線21におけるP2点の散乱効率A2が得られている。
【0142】
このような第1発光素子109及び第2発光素子110からの散乱角及び波長の異なる光による散乱効率より得られる受光素子111の受光量は、(受光量)=(発光量)×(受光効率)、で与えられるため、図23の散乱効率Iに比例した受光信号量を得ることができる。
【0143】
この実施の形態3にあっては、第1発光素子109と第2発光素子110からの各光による同じ煙についての散乱光による受光素子111で得られる受光量の比率Rを求める。この受光量の比率Rは、散乱効率に比例することから、散乱効率A1、A2につき、R=A1/A2として求まる。そして、この比率Rを予め定めて閾値と比較することで、煙の種類を判断する。
【0144】
図24は、図16乃至図21の検煙部構造について、ケロシンを燃焼させた時に生ずる燃焼煙(黒色煙)を対象とした、第1発光素子109と第2発光素子110からの光による散乱効率Iを散乱角θについて示したグラフ図である。
【0145】
図24において、第1発光素子109からの発光を第1波長λ1=900nmとした場合、この光による散乱効率Iは特性曲線22のようになる。一方、第2発光素子110からの発光を第2波長λ2=500nmとした場合、この光による散乱効率Iは特性曲線23のようになる。
【0146】
この図24のグラフについて、まず波長に着目すると、図23の綿灯芯の煙と同様、第1波長λ1=900nmの第1発光素子109から発した光による散乱効率の特性曲線22が低く、これに対し第2波長λ2=500nmと波長の短い第2発光素子110から発した光による散乱効率の特性曲線23の方が大きい値を示している。
【0147】
また散乱角θに対する散乱効率の変化は、図23の場合と同様、特性曲線22、23共に散乱角θが小さいほど散乱効率が高く、散乱角θが120°付近で最低値を示した後、散乱角θの増加に対し、散乱効率が上昇する特性となっている。
【0148】
このようなケロシンの燃焼煙について、第1発光素子109の第1散乱角θ1=30°を特性曲線22について見ると、P3点により散乱効率A1’が与えられる。また第2発光素子10については第2散乱角θ2=120°であることから特性曲線23のP4点より散乱効率A2’が与えられる。
【0149】
この散乱効率A1’、A2’は、図23の場合と同様、発光量に受光効率を掛かけた受光量に比例することから、この場合についても第1発光素子109と第2発光素子110から発せられた光による受光素子111の受光量の比Rを、散乱効率A1’、A2’を用いて、R=A1’/A2’として求める。
【0150】
図25は、図23及び図24について綿灯芯による燻焼煙とケロシンによる燃焼煙とを例にとって第1発光素子109による受光信号量A1、第2発光素子110による受光信号量A2、更に各信号量の比率Rを一覧表に示している。尚、受光信号量は散乱効率に比例することから図23、図24の散乱効率Iの値をそのまま使用している。
【0151】
この図25の一覧表から明らかなように、綿灯芯を燃焼させた場合の白っぽい煙となる燻焼煙については、第1発光素子109からの光と第2発光素子110からの光の受光信号量の比率RはR=8.0となっている。
【0152】
これに対しケロシンを燃焼させた時の黒っぽい煙となる燃焼煙については、第1発光素子109と第2発光素子110からの光による受光信号量の比率がR=2.3となっている。
【0153】
従って、白っぽい煙となる燻焼煙と、黒っぽい煙となる燃焼煙について、第1発光素子109からの光と第2発光素子110からの光による受光信号量の比率の間には十分な差が生じており、例えば比率Rについて煙の種類を判断するための閾値として例えば閾値=6を設定することで、火災発生時の煙から燻焼煙か燃焼煙かを識別することができる。
【0154】
一方、水蒸気や湯気などにあっては、煙粒子に比べ粒子径が十分に大きいことから、図23及び図24の散乱角θが小さい場合の散乱効率が火災時の煙に比べ十分に高く、第1散乱角θ1となる第1発光素子109からの光による受光信号量が十分大きく、第2散乱角θ2=120°となる第2発光素子110からの光による受光信号量との比率Rは10以上の大きな値を持つことになる。
【0155】
このため第1発光素子109からの光による受光信号量と第2発光素子110からの光による受光信号量の比率Rについて閾値=10を設定し、これを上回るような場合には水蒸気や湯気などの非火災と判断することができる。
【0156】
この点はタバコの煙についても同様であり、比率Rに対する閾値を閾値=10とすれば、タバコの煙については比率Rが10以上の大きな値が得られることから同様に非火災と判断することができる。
【0157】
図26は、図16乃至図21の検煙部を備えた図19の回路ブロックをもつ火災感知処理のフローチャートであり、信号処理部103を実現するCPUのプログラム制御により実現される。
【0158】
この火災感知処理にあっては、通常時は第1発光素子109のみを発光駆動しており、第1発光素子109からの光による受光レベルがプリアラーム的な所定閾値を越えた時に、第2発光素子110を発光駆動して両方の光による受光信号量の比率から火災を判断するようにしている。
【0159】
図26において、まずステップSB1でカウンタnをn=1にセットする。次にステップSB2で第1発光素子109をパルス的に発光駆動し、ステップSB3で第1発光素子9の発光駆動に応じて受光素子111の受光信号をサンプルホールドとして受光データA1を記憶部104に記憶する。同時に受光データA1に基づき微分値Bを求めて記憶部104に記憶する。
【0160】
ここで図19の第1発光制御部105は、実施の形態1において図6に示したのと同様に、第1発光素子109を発光駆動として、発光パルスのように、繰り返し周期T1毎にパルス幅T2をパルス出力して発光駆動する変調発光を行っており、これに対応して増幅回路107は、受光信号についても、発光変調に同期した同期受光信号として取得している。
【0161】
発光周期T1は例えばT1=1secであり、変調発光のパルス幅T2は例えばT2=500μsecとしている。このように変調発光とこれに対応した同期受光により、外部の検煙空間からの煙の散乱光以外の光の入射による受光信号を除去し、煙による散乱光のみの受光を確実にできるようにしている。
【0162】
また第1発光素子109の発光波長帯域が可視光帯域にあることから、間欠発光による光を人間が見ても発光を認識できないようにするため、発光時間を1msec以内に制限している。即ち、人間が目で発光素子からの光を視認できるためには、1msecを越える継続発光時間を必要とすることから、発光素子からの光を見えなくするため、発光時間を1msec以内に制限している。
【0163】
発光変調パルスの場合、3回の発光パルスの合計発光時間が1msec以内であればよく、この場合は合計150μsecとなるので、発光が見えることはない。このような変調発光と同期受光は、図19の第2発光制御部106による第2発光素子110の発光制御についても同じになる。
【0164】
再び図26を参照するに、ステップSB4で受光データA1が火災のプリアラームを判断する所定の閾値TH1を越えたか否かチェックしており、この閾値が越えた場合には、後の説明で明らかにするステップSB5の障害判定処理を実行した後、非火災でなければステップSB6で第2発光素子110をパルス的に発光駆動し、これによってステップSB7で受光素子110から得られる受光信号をサンプルホールド行って受光データA2として記憶部104に記憶する。
【0165】
次にステップSB8で記憶部104に記憶している第1発光素子109からの光による受光データA1と第2発光素子110からの光による受光データA2との比率Rを算出する。続いてステップSB9で比率Rを予め定めて非火災を判断するための閾値=10と比較する。比率Rが閾値=10より小さければ火災による煙と判断し、ステップSB10で燃焼物の種類を判別する閾値=6と比較する。
【0166】
この時、比率Rが閾値=6以上であれば、ステップSB11で白煙火災(燻焼火災)と判断し、ステップSB12でカウンタnをひとつ増加し、ステップSB13でカウンタnがn=3に達しているか否かチェックする。
【0167】
この場合、カウンタn=2であることからステップSB2に戻り、ステップSB2〜SB12と同じ処理を繰り返し、これによってステップSB13でカウンタnがn=3に達した事が判別されるとステップSB15で火災断定とし、火災信号を送出し、その際に必要であれば白煙火災を示す情報を同時に送信する。
【0168】
一方、ステップSB10で比率Rが閾値=6未満であった場合にはステップSB14に進み、黒煙火災(燃焼火災)と判断し、ステップSB15で火災断定を行って受信機側に火災信号を送出し、必要があれば黒煙火災を示す情報を同時に送信する。またステップSB9で比率Rが閾値10以上であれば、ステップSB16で非火災を断定し、ステップSB1に戻り、カウンタnをn=1にリセットする。
【0169】
このように実施の形態3にあっては、図16乃至図21の検煙部に設けた波長及び散乱角が異なる第1発光素子9と第2発光素子10からの光による散乱光を受光素子11で受光して両者の比率を求め、これを所定の閾値と比較して判断することで火災と非火災の判断、さらに火災と判断した場合の白煙火災か黒煙火災かの燃焼物の種類を確実に判断することができる。
【0170】
ここで図16乃至図21の検煙部構造にあっては、第1発光素子109として、第1波長λ1=900nm、第1散乱角θ1=30°、第2発光素子110として第2波長λ2=500nm、第2散乱角θ2=120°とした場合を例にとっているが、実施の形態3にあってはこの値を最適値として次の数値的な範囲で同様の効果を実現することができる。
【0171】
まず第1発光素子109の第1波長λ1としては800nm以上の中心波長であれば良い。第1発光素子109の第1散乱角θ1としてはθ1=20°〜50°の範囲に定めれば良い。一方、第2発光素子110については第2波長λ2としては中心波長を500nm以下とすれば良く、第2散乱角θ2はθ2=100°〜150°の範囲に定めれば良い。
【0172】
より具体的には第1発光素子109の第1波長λ1及び散乱角θ1と、第2発光素子110の第2波長λ2と散乱角θ2は、図23の綿灯芯の煙、即ち燻焼煙(白色煙)について、それぞれの光による受光量の比率Rが燃焼物の種類を識別する閾値=6より大きく、一方、図25のケロシンの燃焼による燃焼煙(黒色煙)については、第1発光素子109と第2発光素子110から発した煙による散乱による受光信号量の比率Rが閾値=6より小さくなるように設定すれば良い。
【0173】
更に図19の信号処理部3にあっては、図16のように、検煙点Pを本体外面118の外側となる開放検煙空間としたことに伴う固有の誤報を識別して障害信号を出力するようにしている。
【0174】
この外部の検煙点Pを持つことによる固有の誤報としては、例えば検煙点Pを人の手や虫といった異物が直接横切った場合が想定される。そこで図26の処理にあってはステップSB5に障害判定処理を設けており、その処理内容は図27のフローチャートのようになる。
【0175】
図27の障害判定処理は、まずステップSC1で受光データA1の微分値Bが所定の障害閾値TH2を越えたか否かチェックし、越えていなければ図26のステップSB6に進んで火災判断処理を実行する。
【0176】
越えていた場合は、ステップSC2で所定時間Tを設定したタイマーをスタートし、ステップSC3で設定時問Tの経過を監視する。設定時間Tを経過するとステップSC4に進み、そのときの受光データA1が障害閾値TH3を越えているか否かチェックし、越えていた場合はステップSC5で本体外面118の検煙部分にクモの巣などの異物が付着していると判断してトラブルを判定して出力することで、受信機に障害表示を行わせ、本体外面の確認清掃などの点検対応を促することになる。
【0177】
実施の形態1の図8と同様に、火災による煙濃度の増加は比較的緩やかであり、そのため微分値Bは誤報閾値TH2に対し十分に小さく、火災時あっては、誤報閾値TH2を越えることがない。このため、時刻t1で受光データA1がプリアラーム閾値TH1を越えたとき、微分値Bは誤報閾値TH2以下にあり、これが図27のステップSC1で判別され、ステップSC2〜SC5の障害判定処理はスキップされ、図26のステップSB6移行の火災判断処理に進む。なお、障害閾値TH3は火災判断のプリアラーム閾値TH1に対し十分に高いレベルに設定されている。
【0178】
図28は、本体外面118の外側の外部開放空間の検煙点Pの部分を虫などの異物が一時的に通過した場合であり、受光データA1は一時的に障害閾値TH3を越える変化を生じ、これに伴い受光データA1の立ち上がりで微分値Bはプラス側に誤報閾値TH2を越えて大きく変化し、且つ受光データA1の立ち下がりで微分値Bはマイナス側に大きく変化する。
【0179】
そこで、受光データA1が障害閾値TH3を越えた時点で既に記憶している直前の所定値Bを誤報閾値TH2と比較し、越えていた場合には障害の可能性があると判断し、その後の変化をチェックするため、微分値Bが障害閾値TH2をこえた時点からタイマーを起動して設定時間Tの経過を待つ。
【0180】
そしてT時間後に再び受光データA1をチェックし、このとき障害閾値TH3以下であることから、一時的な障害と判断し、障害は解消されていることから、障害判定出力はない。即ち、この場合には、火災判断処理の実行が抑止されることとなる。
【0181】
図29は、外部開放空間の検煙点P付近の本体外面118に比較的大きな虫などの異物が付いて固定的に存在した場合であり、受光データA1は障害閾値TH3を越える変化を生じた後、そのレベルを維持するようになる。これに伴い受光データA1の立ち上がりで微分値Bはプラス側に障害閾値TH2を越えて大きく変化する。
【0182】
そこで、受光データAが障害閾値TH3を越えた時点で既に記憶している直前の微分値Bを誤報閾値TH2と比較し、越えていた場合には障害の可能性がありと判断し、その後の変化をチェックするため、微分値Bが障害閾値TH2を越えた時点からタィマーを起動して設定時間Tの経過を待つ。そしてT時間後に再び受光データA1をチェックし、このとき障害閾値TH3を越えているため、継続的な障害と判断し、障害判定出力を行う。
【0183】
このように実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の効果に加えて、複数の受光量に基づく複合的な判断を行うことができ、火災判定を一層正確に行うことができる。
また、波長に起因した散乱特性の相違を作り出し、この散乱角の相違と波長の相違の相乗効果によって煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差をもたせることで、煙の識別確度を高めることができる。
また、複数の発光素子を立体角配置したので、発光素子の光軸と受光素子の光軸の相互の交点となる検煙点を、感知器本体外面の外側の空間に設定して煙による散乱光を検出することができる。
また、第1発光手段の光に対する散乱光の受光量と、第2発光手段の光に対する散乱光の受光量とを比較することにより、例えば両者の比を取って閾値と比較することで煙の種類を識別し、一層正確な火災検出を行うことができる。
また、受光素子の視野角を5度以内とすることで、検煙空間における散乱光検出のためのエリアの大きさを必要最小限とし、外光による影響を防ぐことができる。
また、発光素子は、コリメートされた平行光を発することで、検煙空間における散乱光検出のためのエリアの大きさを必要最小限とし、外光による影響を防ぐことができる。
【0184】
次に、実施の形態4について説明する。この実施の形態4は、基本的には実施の形態3と同様に構成されているが、2つの発光素子の散乱角と偏光方向とが実施の形態3とは異なるものである。なお、実施の形態4の構成及び方法は、特に説明なき点においては、実施の形態3と同様であり、同一の機能を有する構成要素には実施の形態3と同一の名称及び又は同一の符号を付する。
【0185】
図30は、実施の形態4の検煙部構造を模式的に示した説明図である。この図30において、第1発光素子125、第2発光素子129、受光素子133が光軸交点となる検煙点Pに向くように配置され、この検煙点Pは感知器に対し外部空問に位置する。
【0186】
第1発光素子125は、その光軸125Aと受光素子133の光軸133aを通る平面を第1散乱面127とすると、第1散乱面127に対し垂直な偏光面を持つ垂直偏光面をもつ光128を発する。
【0187】
この例では第1発光素子125としてLEDを使用しており、したがって第1発光素子125の前面に偏光フィルター126を配置し、第1散乱面127に垂直な偏光面を持つ光128を発するようにしている。この第1発光素子125の第1散乱面127における光軸125aと受光素子133の光軸133Aの成す第1散乱角θ1は、例えばθ1=70°に設定している。
【0188】
一方、第2発光素子129の光軸129aと受光素子133の光軸133Aを通る平面を第2散乱面131とすると、第2発光素子129は第2散乱面131に平行な偏光面を持つ光132を発する。また第2発光素子129の光軸129aと受光素子133の光軸133aの第2散乱面131において成す角となる第2散乱角θ2としては、第1散乱角θ1より大きい例えばθ2=120°に設定している。
【0189】
第2発光素子129もLEDを使用していることから、第2発光素子129の前に偏光フィルター130を配置して水平偏光面をもつ光132を発するようにしている。
【0190】
このように第1発光素子125からの第1散乱面127に対し垂直偏光面を持つ光128と第2発光素子129からの第2散乱面131に対し水平偏光面をもつ光132により、P点における煙の散乱による受光素子133に向かう散乱光は、いずれの光についても第2散乱面131に平行な水平偏光面をもつ光134として煙粒子に照射されることになる。
【0191】
この実施の形態4の検煙部構造の立体配置は、図31に示すように、実施の形態3と同様のチャンバーベース114(図示せず)に第1発光素子125、第2発光素子129、及び、受光素子133を立体角配置するように組み込んでおり、光軸交点となる検煙点Pが本体外面118からh=5mm程度の高さの外部空間に設定される。
【0192】
具体的には、図31のように第1発光素子125、第2発光素子129及び受光素子133の位置をA、B、Cとすると、光軸交点となる検煙点Pとを結んだ三角錐を仮定し、三角形ABCを底辺とし、検煙点Pが頂点としてチャンバーベース114の本体外面から外部空間に位置するように立体角配置する。
【0193】
図32Aは、第1発光素子125、第2発光素子129、及び、受光素子133について、その光軸25a、29a、33aによる立体角配置を示している。
【0194】
この第1発光素子125、第2発光素子129、及び、受光素子133の光軸125a、129a、133aの交点となる検煙点Pが図16乃至図18のチャンバーベース114における本体外面118の外側の検煙空間に存在しており、これに対し第1発光素子125、第2発光素子129及び受光素子133はチャンバーベース114の中に配置されている。
【0195】
図32Bは、第1発光素子125のA点と受光素子133のC点の間の立体角配置を取り出している。この場合、第1発光素子125のA点と受光素子133のC点からの光軸125a、133aを含む面は三角形PCAで与えられ、この三角形PCAを含む面の光軸125aと光軸133aのなす角が第1発光素子125の第1散乱角θ1となる。
【0196】
図32Cは、第2発光素子129のB点と受光素子133のC点との立体角配置を取り出している。この場合、光軸129aと133aは三角形PCBを含む面に存在しており、第2発光素子129と受光素子133の光軸129a、133aのなす散乱角は三角形PCBを含む面上の光軸129aと光軸133aのなす場合に散乱角θ2として与えられている。
【0197】
図33は、図30の検煙部構造において散乱角と偏光角を変えた場合の煙の種類に対する受光信号量の実験的に得られた結果の一覧表である。図33において、散乱角θとしては70°、90°、120°をとっており、それぞれの散乱角θについて偏光角φを0°(水平偏光)及び90°(垂直偏光)とした場合を示している。
【0198】
ここで、本実施の形態4においては、実施の形態3と同様の回路ブロック(図19)を用いて同様の処理(図26、27)を行うことで、火災や障害の判断を行っている。また、非火災を判断する閾値や、白煙火災か黒煙火災かを判断するための閾値も、実施の形態3と同じものを使用することができる。
【0199】
図33の濾紙、ケロシン、タバコのそれぞれの燃焼煙に対し第1発光素子125から光を発した場合の受光信号量と第2発光素子129から光を発した場合の受光信号量を、散乱角θと偏光角φについて見ると次のことがわかる。
【0200】
まず散乱角θの変化に対しては、第1発光素子125による垂直偏光及び第2発光素子129による水平偏光のいずれについても、散乱角が小さいほど受光信号量が大きく、散乱角が大きくなると受光信号量が低下する関係にある。
【0201】
一方、同じ散乱角θ例えば70°について見ると、第1発光素子125による垂直偏光の光による受光信号量の方が、第2発光素子129による水平偏光の光による受光信号量より大きくなっていることが分かる。
【0202】
火災判断にあっては、第1発光素子125からの光による受光信号量A1と第2発光素子129からの光による受光信号量A2の比率Rを、R=A1/A2として算出して、火災か非火災か、火災であった場合の白煙火災か黒煙火災かを判別する。
【0203】
ここで比率Rを大きくするためには、図33における散乱角θとして、第1発光素子125については受光信号量が大きくなる小さい方の散乱角θ1=70°を選択し、第2発光素子129については受光信号量が小さくなる散乱角θ2=120°を選択する。
【0204】
一方、同じ散乱角における水平偏光と垂直偏光の光では、垂直偏光による光の方が受光信号量が大きく、水平偏光による光の方が受光信号量が小さくなることから、比率Rを大きくとるためには、第1発光素子125について受光信号量を大きくするために偏光角φ1=90°となる垂直偏光を選択し、第2発光素子129については受光信号量が小さくなる偏光角θ2=0°となる水平偏光を選択する。
【0205】
この図33のような散乱角θ及び偏光角φに対する測定結果に基づき、図31の実施形態にあっては、(1)第1発光素子125は垂直偏光で第1散乱角θ1=70°、(2)第2発光素子129は水平偏光で第2散乱角θ2=120°、を設定している。
【0206】
図34は、(1)(2)のように偏光方向と散乱角を設定した場合の燃焼物の種類に対する第1発光素子125からの光による受光信号量A1と第2発光素子129による受光信号量A2を図29から取り出して一覧表で示し、更に2つの信号量による比率Rを算出して示している。
【0207】
この図34の一覧表から明らかなように、濾紙やケロシンなどの火災時の燃焼物にっいては比率Rは4.44、5.60と小さく、これに対し非火災となるタバコについては比率は16.47と十分に大きく、したがって図26のフローチャートのように、ステップSB9で閾値=10により比率Rを判断することで、火災か非火災かを確実に識別することができる。
【0208】
また図34のケロシンの燃焼による煙は黒煙火災に属することから、図26のステップSB10で閾値=6を使用することで、ステップSB14に進んで黒煙火災(燃焼火災)であることを識別できる。
【0209】
図23に示した燻焼火災による煙である綿灯芯については、図34には示されていないが、その比率Rとしてケロシンより大きな値が必然的に得られる。したがって図26のステップSB10で閾値=6以上の比率Rとなって、ステップSB10で白煙火災と判断され、カウンタnによる3カウントで火災が断定される。
【0210】
ここで図30の実施形態にあっては、第1発光素子125の第1散乱角θ1=70°場合を例にとっているが、実用的にはθ1=80°以下の値とすればよい。また第2発光素子129の第2構成角θ2としてθ2=120°を例にとっているが、実用的な値としてはθ2=100°以上とすればよい。
【0211】
このように実施の形態4によれば、実施の形態3と同様の効果に加えて、光の偏光方向に起因した散乱特性の相違を作り出し、同時に2つの発光部につき、受光素子に対する散乱角を異ならせることで、煙の種類による散乱特性の相違を作り出し、煙の識別確度を高めることができる。
【0212】
次に、実施の形態5について説明する。検煙点を散乱光式煙感知器の外部に設定した場合、従来の感知器のように煙チャンバー内に煙の滞留を招くことがないため、煙の濃淡をより正確に火災検出に反映できるという特性がある。この実施の形態5は、このような特定を活かし、火災検知をより正確に行うための処理に特徴を有する。なお、実施の形態5の構成及び方法は、特に説明なき点においては、実施の形態1と同様であり、同一の機能を有する構成要素には実施の形態1と同一の名称及び又は同一の符号を付する。
【0213】
本実施の形態5において、散乱光式煙感知器は図1に示すように構成されており、その基本的な電気的構成は、図5のように構成することができる。ここで、本実施の形態5においては、火災検出の閾値として第1の火災閾値TH1と第2の火災閾値TH2との2つが設定され、これら第1の火災閾値TH1と第2の火災閾値TH2とは、任意の方法で記憶部17に予め記憶されている。このうち、第1の火災閾値TH1は、監視領域の煙濃度が、通常時(空気清浄時)よりも高く、火災が発生した可能性があるが、火災が発生したと断定するまでには至らないレベルに至ったことを示す。また、第2の火災閾値TH2は、第1の火災閾値TH1よりも高いレベルに設定され(第2の火災閾値TH2>第1の火災閾値TH1)、監視領域の煙濃度が、通常時(空気清浄時)よりも高く、火災が発生したと断定できるレベルを示す。
【0214】
また、本実施の形態5においては、火災検出レベルが第1の火災閾値TH1を越えた場合の経過時間に対する判断基準として、第1の設定時間TA1を設定しており、また、火災検出レベルが第2の火災閾値TH2を越えた場合の経過時間に対する判断基準として、第2の設定時間TA2を設定している。これら第1の設定時間TA1と第2の設定時間TA2とは、任意の方法で記憶部17に予め記憶されている。
【0215】
次に、本実施の形態5における火災判定処理について説明する。図35は、火災判定処理のフローチャートである。まず、ステップSD1で受光値Aが第1の火災閾値TH1以上か否かチェックし、第1の火災閾値TH1を越えた場合にはステップSD2に進み、第1の設定時間TA1の計時をスタートする。計時スタート後、ステップSD3で第1の設定時間TA1の経過をチェックしており、さらにこの間に、ステップSD4において、受光値Aが第1の火災閾値TH1以上である状態が維持されているか否かを継続的に監視する。そして、第1の設定時間TA1の経過前に、受光値Aが第1の火災閾値TH1以上でなくなった場合、火災以外の原因により一時的に煙濃度が上がったものと判断し、この場合には特に火災判断の出力は行わない。
【0216】
一方、受光値Aが第1の火災閾値TH1以上である状態を維持しつつ、第1の設定時間TA1が経過した場合、ステップSD5に進み、第2の設定時間TA2の経過を監視する。さらにこの間に、ステップSD6において、受光値Aが第2の火災閾値TH2以上になったか否かを継続的に監視する。第2の設定時間TA2の経過前に、受光値Aが第2の火災閾値TH2以上でなくなった場合、火災以外の原因により一時的に煙濃度が上がったものと判断し、この場合には特に火災判断の出力は行わない。一方、第2の設定時間TA2の経過後において、依然として受光値Aが第2の火災閾値TH2以上である場合、火災が発生したものと判断し、ステップSD7において火災判断の出力を行う。
【0217】
次に、このような処理を行う背景とその効果等について説明する。従来の散乱光式煙感知器においては、煙チャンバーの内部に煙を導入して火災検出を行っていたので、煙チャンバーに煙が流入するまでに時間を要し、このことが火災検出を遅らせる原因になり得る。また、逆に、煙チャンバー内に一旦煙が入ると、この煙が煙チャンバーから流出するまでに時間を要する。このことは、煙チャンバーの外部の煙濃度が低くなっているにも関わらず、煙チャンバーの内部の煙濃度を依然として高いレベルに保つことになり、誤報を招く要因になり得る。
【0218】
例えば、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器においては、火災の煙の煙濃度の変化と、火災以外(例えば、タバコや調理)の煙の煙濃度の変化とが、相互に類似する傾向にある。すなわち、本来、火災の煙の煙濃度は、上昇を続ける傾向にあるのに対して、タバコや調理等の煙の煙濃度は、上下動し、特に、低濃度の煙は火災の煙に比べて極めて低い濃度になる傾向にある。しかし、このような傾向の相違が、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器においては小さくなる。
【0219】
図36には、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器における、タバコの煙に対する受光レベルと時間との関係、図37には、煙チャンバーを備えた従来の散乱光式煙感知器における、火災の煙に対する受光レベルと時間との関係を示す。また、図38には、本実施の形態5の散乱光式煙感知器における、タバコの煙に対する受光レベルと時間との関係、図39には、本実施の形態5の散乱光式煙感知器における、火災の煙に対する受光レベルと時間との関係を示す。これら図36〜39において、横軸には時間、縦軸には受光レベルを示す。
【0220】
まず、図36のタバコの煙に対する受光レベルと、図37の火災の煙に対する受光レベルとを相互に比較すると、タバコの煙の受光レベルの方が若干大きく上下しているが、全体としては類似した傾向にある。これは、煙が煙チャンバーに流入する時間や、煙が煙チャンバーから流出するために時間を要するため、煙チャンバー内に煙が滞留し、受光レベルが平準化される傾向にあるためである。従って、このような受光レベルに基づいて、タバコの煙と火災の煙とを相互に区別することは困難である。
【0221】
一方、図38のタバコの煙に対する受光レベルと、図39の火災の煙に対する受光レベルとを相互に比較すると、タバコの煙の受光レベルの方が大きく上下し、火災の煙の受光レベルと顕著な差異が出る。このような点に着目して、本実施の形態5においては、図35に示した如き処理を行うことで、火災と非火災とを区別している。
【0222】
すなわち、図35に示した処理によれば、タバコの煙が発生した場合において、受光レベルが第1の閾値TH1を越えた場合であっても(図38の時間T1)、第1の設定時間TA1が経過する前に、受光レベルが第1の閾値TH1を下回った場合(図38の時間T2)、火災発生と判断することがない。また、受光レベルが第1の閾値TH1を越え(図38の時間T3)、さらに受光レベルが第2の閾値TH2を越えた場合であっても(図38の時間T4)、第2の設定時間TA2が経過する前に、受光レベルが第2の閾値TH2を下回った場合(図38の時間T5)、火災発生と判断することがない。すなわち、受光レベルが高くなった場合でも、その状態が一定時間以上継続しなかった場合には、火災以外の原因による煙であると判断し、火災報知を行わないので、誤報を防止できる。
【0223】
一方、火災による煙が発生した場合において、受光レベルが第1の閾値TH1を越え(図39の時間T1)、第1の設定時間TA1が経過した時点においても依然として受光レベルが第1の閾値TH1を越えている場合において(図39の時間T2)、さらに受光レベルが第2の閾値TH2を越え(図39の時間T3)、この状態が第2の設定時間TA2が経過しても継続している場合には(図39の時間T4)、火災報知を行う。
【0224】
なお、これら第1の閾値TH1、第2の閾値TH2、第1の設定時間TA1、及び、第2の設定時間TA2の具体的な設定値は任意であり、実験等の結果に基づいて決定することができる。例えば、第1の設定時間TA1としては30sec、第2の設定時間TA2としては60secを設定する。
【0225】
このように実施の形態5によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、火災の煙と火災以外の煙との異なる傾向をそのまま検出結果に反映させることができるという特徴を活かし、これら両種類の煙を区別して誤報を防止することができる。
【0226】
これまで実施の形態1〜5について説明したが、この他の利点や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。従って、広義における本発明は、ここに示した詳細な点や代表的な実施の形態に限定されるものではない。すなわち、請求の範囲やその均等物によって定義される本発明概念の思想やその範囲内において、種々の変形を行うことが可能である。
【0227】
例えば、各実施の形態1〜5の特徴は、相互に適用することができる。例えば、実施の形態5のように第1の火災閾値TH1と第2の火災閾値TH2を用いた処理を、実施の形態3のように複数の発光手段を備えた散乱光式煙感知器に適用しても良い。
【0228】
また、実施の形態1の本体外面7の表面に、虫や異物の付着などを防ぐための凹凸遮蔽物などを、全体から見て突出量として目立たない程度に形成するようにしてもよい。実施の形態1においては、本体外面7の全体を覆うように透明カバー9を装着しているが、発光開口5b及び受光開口6bに対してのみ保護カバー9を配置するものであってもよい。また、本体外面7は天井設置状態で下向きであるため、発光開口5b及び受光開口6bに透明カバー9を設けない開放型であっても良い。
【0229】
また図30の実施の形態4にあっては、第1発光素子125及び第2発光素子129としてLEDを使用し、偏光フィルター126、130を組合せることで垂直偏光面をもつ光128と水平偏光面をもつ光132を発するようにしているが、これに代えて偏光された光を出力するレーザダイオードを第1発光素子125及び第2発光素子129に使用すれば、偏光フィルター126、130は不要となる。
【0230】
また、実施形態4にあっては、第1発光素子125及び第2発光素子129の波長を等しくとったが、これを異ならせることで、より煙の識別精度を高めることもできる。
【0231】
あるいは、図16乃至図21の2つの発光素子の波長と散乱角を異ならせた検煙部構造の他の実施形態として、第1発光素子109及び第2発光素子110における波長と散乱角の関係が維持できる構成であれば、これら2つの発光素子109、110に対し、2つの受光素子を設けるようにしてもよい。
【0232】
また発光素子として白熱球や白色LEDなどの発光スペクトルの広い発光素子を用いることにより発光素子を1つとし、この発光素子に波長切替用のフィルタを設け、図16の第1発光素子109及び第2発光素子110の配置位置から光を出すように光路設定を行うことで実施することができる。
【0233】
更に図30の2つの発光素子125、129の散乱角と偏光方向を異ならせた検煙部構造についても、異なる偏光面をもつ2つの発光素子125、129に対し各々別の受光素子を2ヵ所に設けるようにしてもよい。
【0234】
また2つの発光素子125、129から発する光の偏光面については、図30における偏光フィルター126、130を機械的に回転させたり、公知の液晶フィルターを駆動するなどにより偏光面128、132を変化させることで、偏光面134の偏光方向を適宜に調整して最適な検出状態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0235】
以上のように、本発明に係る散乱光式煙感知器は、煙を感知して火災発生を報知することに有用であり、特に、天井面等の設置面からの散乱光式煙感知器の突出量を少なくして外観的にも優れた煙感知システムを構築することや、各種の煙を相互に区別して火災を正確に報知することに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知器本体と、
前記感知器本体に内蔵され、前記感知器本体の外側に位置する開放状の検煙空間に向けて光を発する発光手段と、
前記感知器本体に内蔵され、前記発光手段から前記検煙空間に発せられた光に対する散乱光を受光し、この受光した散乱光の受光量に応じた受光信号を出力する受光手段と、
前記受光手段から出力された受光信号によって特定される前記受光量に基づいて、火災発生の有無を判断する火災判断手段と、
を備えた散乱光式煙感知器。
【請求項2】
前記火災判断手段は、前記受光量とその微分値とに基づいて、火災発生の有無を判断する、
請求項1に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項3】
前記火災判断手段は、前記受光量が所定の火災閾値を越え、かつ、前記受光量の微分値が所定の誤報閾値以下である場合に、火災が発生したと判断する、
請求項2に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項4】
前記火災判断手段は、前記受光量が所定の火災閾値を越え、かつ、前記受光量の微分値が所定の誤報閾値を越えている場合、さらに前記微分値が所定の誤報閾値を越えた時から一定時間後に前記受光量が所定の障害閾値を越えているか否かを判定し、前記受光量が前記障害閾値を越えていた場合は、火災検出を妨げる障害が発生したと判断する、
請求項3に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項5】
前記火災判断手段は、前記受光量が所定の第1の火災閾値を越えている時間が、所定の第1の設定時間以上継続し、かつ、前記受光量が前記第1の火災閾値より大きい所定の第2の火災閾値を越えている時間が、前記第1の設定時間より長い所定の第2の設定時間以上継続している場合に、火災が発生したと判断する、
請求項1に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項6】
前記発光手段は、複数の発光手段を備える、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項7】
前記発光手段は、第1波長の光を発する第1発光手段と、第1波長より短い第2波長の光を発する第2発光手段とを備え、
前記第1発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第1散乱角に対し、前記第2発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第2散乱角を大きくした、
請求項6に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項8】
前記第1波長の中心波長を800nm以上とし、
前記第2波長の中心波長を500nm以下とし、
前記第1散乱角を20°〜50°の範囲とし、
前記第2散乱角を100°〜150°の範囲とした、
請求項7に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項9】
前記発光手段は、第1発光手段と第2発光手段とを備え、
前記第1発光手段から発光される光を、当該第1発光手段の光軸及び前記受光素子の光軸を通る第1散乱面に垂直な偏光面をもつ光とし、
前記第2発光手段から発光される光を、当該第2発光手段の光軸及び前記受光素子の光軸を通る第2散乱面に水平な偏光面をもつ光とし、
前記第1発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第1散乱角に対し、前記第2発光手段の光軸と前記受光素子の光軸との相互の交差で構成される第2散乱角を大きくした、
請求項6に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項10】
前記第1散乱角を80°以下とし、
前記第2散乱角を100°以上とした、
請求項9に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項11】
前記複数の発光手段のそれぞれの光軸と前記受光素子の光軸とを含む平面が、相互に略非同一平面になるよう、前記複数の発光手段を立体角配置した、
請求項6から10のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項12】
前記発光手段は、第1発光手段と第2発光手段とを備え、
前記火災判断手段は、前記第1発光手段にて発光された光が煙にて散乱されることにより生じる散乱光に対する前記受光手段における受光量と、前記第2発光手段にて発光された光が煙にて散乱されることにより生じる散乱光に対する前記受光手段における受光量とを相互に比較することにより、前記煙の種類を識別し、この煙の種類に応じた判断基準に基づいて、火災発生の有無を判断する、
請求項6から11のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項13】
前記検煙空間における前記発光手段の光軸と前記受光手段の光軸との相互の交点を、前記感知器本体から約5mm以上離した、
請求項1から12のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項14】
前記感知器本体の外表面の少なくとも一部を虫忌避材料で構成し、あるいは、前記感知器本体の外表面の少なくとも一部に虫忌避剤を塗布又は含浸させた、
請求項1から13のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項15】
前記受光手段の視野角を5度以内とした、
請求項1から14のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項16】
前記発光手段は、コリメートされた平行光を発する、
請求項1から15のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項17】
前記受光手段から出力された前記受光信号を増幅するログアンプをさらに備えた、
請求項1から16のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項18】
前記発光手段を、変調発光信号を用いて間欠的に発光駆動させる発光制御手段と、
前記受光手段から出力された前記受光信号を、前記変調発光信号に同期して増幅する増幅手段と、をさらに備えた、
請求項1から17のいずれか一項に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項19】
前記発光手段を、変調発光信号を用いて間欠的に発光駆動させる発光制御手段をさらに備え、
前記発光手段は、可視光波長帯域の光を発光し、
前記発光制御手段は、1ミリ秒以内の発光パルス幅で、前記間欠的な発光駆動を行う、
請求項18に記載の散乱光式煙感知器。
【請求項20】
前記発光制御手段は、前記間欠的な発光駆動における合計発光時間を1ミリ秒以内とする、
請求項19に記載の散乱光式煙感知器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【国際公開番号】WO2005/048208
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515492(P2005−515492)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017093
【国際出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】