説明

数値制御装置及び数値制御方法

【課題】移動量及び動作を開始して終了するまでの時間の入力を受け付けることにより、自動的に移動軌跡データ及び速度データを生成して工作機械の動作を制御することができる数値制御装置及び数値制御方法を提供する。
【解決手段】移動量データ及び移動時間データの入力を受け付け、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、制御対象の移動軌跡を示す移動軌跡データ及び速度の変化を示す速度データを生成する。生成した移動軌跡データ及び速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の動作を制御する数値制御装置及び数値制御方法に関する。特に多軸構成の工作機械であっても容易に同期させつつ動作を制御することが可能な数値制御装置及び数値制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械は、3軸が互いに直交した直動軸を有する構成が主流であり、互いに直交する3軸構成の工作機械の動作を制御する場合、速度指令として各軸方向の速度成分を合成した速度である送り速度Fを用いる。送り速度Fは、互いに直交する3軸、例えばX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の速度成分Fx、Fy、Fzを用いて、(式1)のように表すことができる。送り速度Fは、数値制御装置への入力指令として用いられているGコードのF指令に相当する。
【0003】
F = (Fx2 +Fy2 +Fz2 1/2 ・・・ (式1)
【0004】
加えて最近では、従来の互いに直交する3軸構成に回転軸を追加した4軸以上の制御軸を有する多軸構成の工作機械が普及しつつある。多軸構成の工作機械の動作を制御する場合、工具の先端位置だけでなく、工具の姿勢も制御する必要が生じる。多軸構成の工作機械への速度指令は、例えば5軸構成の場合には、X軸、Y軸、Z軸の直動3軸に、A軸、B軸の仮想的な回転2軸を有する5軸構成の工作機械と仮定して、送り速度Fを、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、A軸方向、B軸方向の速度成分Fx、Fy、Fz、Fa、Fbを用いて、(式2)のように表すことができる。
【0005】
F = (Fx2 +Fy2 +Fz2 +Fa2 +Fb2 1/2 ・・・ (式2)
【0006】
しかし、互いに直交する軸方向の速度成分と回転軸方向の速度成分とを同じレベルで取り扱うことにより、(式2)における送り速度Fは物理的意味づけがなくなり、本来の刃先とワークとの相対速度を示していないという問題点があった。そこで、特許文献1では、回転軸方向の速度成分の単位時間当たりの変化量も入力として受け付けることにより、多軸構成の工作機械の動作を制御する場合であっても、工具の先端位置制御に加えて、工具の姿勢も制御しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−185364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、送り速度F及び回転軸方向の速度成分の単位時間当たりの変化量、すなわち回転角速度を入力として受け付けることから、作業者はどの程度の速度の入力であればうまく動作を制御することができるかを経験的に熟知しておく必要があり、作業者の負担が大きくなるという問題点があった。また、各軸の動作を同期させることは、速度の入力を受け付けるだけでは困難である。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、移動量及び動作を開始して終了するまでの時間の入力を受け付けることにより、自動的に移動軌跡データ及び速度データを生成して工作機械の動作を制御することができる数値制御装置及び数値制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1発明に係る数値制御装置は、制御対象の移動軌跡を示す移動軌跡データ及び速度の変化を示す速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力する数値制御装置において、移動量データ及び移動時間データの入力を受け付ける入力受付手段と、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて移動軌跡データ及び速度データを生成する生成手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2発明に係る数値制御装置は、第1発明において、前記生成手段は、動作の制御対象となるサーボモータの特性に応じて起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度を特定する特定手段と、特定した両加速度及び入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、時間に対する速度変化を表す一次関数を生成する一次関数生成手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第3発明に係る数値制御装置は、第1又は第2発明において、前記速度データの基礎となる時間を、仮想的な時間との関数として表すようにしてあることを特徴とする。
【0013】
次に、上記目的を達成するために第4発明に係る数値制御方法は、制御対象の移動軌跡を示す移動軌跡データ及び速度の変化を示す速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力する数値制御方法において、移動量データ及び移動時間データの入力を受け付けるステップと、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて移動軌跡データ及び速度データを生成するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
また、第5発明に係る数値制御方法は、第4発明において、動作の制御対象となるサーボモータの特性に応じて起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度を特定するステップと、特定した両加速度及び入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、時間に対する速度変化を表す一次関数を生成するステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
また、第6発明に係る数値制御方法は、第4又は第5発明において、前記速度データの基礎となる時間を、仮想的な時間との関数として表すことを特徴とする。
【0016】
第1発明及び第4発明では、移動量データ及び移動時間データの入力を受け付け、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて移動軌跡データ及び速度データを生成する。生成した移動軌跡データ及び速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力することにより、作業者は、制御対象となる工作機械の動作を直感的に入力することができ、所望の動作を実現するためにどのような移動軌跡データ及び速度データを入力する必要があるかを熟知しておく必要がない。したがって、作業者に経験が要求されることなく、高い精度で工作機械の動作を制御することができる。また、多軸構成の工作機械の動作を制御する場合であっても、各軸の動作を所望のタイミングにて容易に同期させることができ、複雑な演算処理を必要としない。
【0017】
第2発明及び第5発明では、動作の制御対象となるサーボモータの特性に応じて起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度を特定し、特定した両加速度及び入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、時間に対する速度変化を表す一次関数を生成する。速度変化を一次関数で表すことができるので、数値制御装置の演算処理負荷を軽減することができ、レスポンスの維持を図ることができる。
【0018】
第3発明及び第6発明では、速度データの基礎となる時間を、仮想的な仮想時間との関数として表すことにより、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データを更新することなく、制御対象となる工作機械の動作を変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生成した移動軌跡データ及び速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力することにより、作業者は、制御対象となる工作機械の動作を直感的に入力することができ、所望の動作を実現するためにどのような移動軌跡データ及び速度データを入力する必要があるかを熟知しておく必要がない。したがって、作業者に経験が要求されることなく、高い精度で工作機械の動作を制御することができる。また、多軸構成の工作機械の動作を制御する場合であっても、各軸の動作を所望のタイミングにて容易に同期させることができ、複雑な演算処理を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る数値制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る数値制御装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る数値制御装置の速度データ生成の例示図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る数値制御装置の単軸における入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データの例示図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る数値制御装置の単軸における速度データの例示図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る数値制御装置の仮想時間関数の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る数値制御装置及び数値制御方法について、図面に基づいて具体的に説明する。以下の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0022】
また、本発明は多くの異なる態様にて実施することが可能であり、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるべきものではない。実施の形態を通じて同じ要素には同一の符号を付している。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置の構成例を示すブロック図である。本発明の実施の形態に係る数値制御装置1は、少なくともCPU(中央演算装置)11、メモリ12、記憶装置13、I/Oインタフェース14、ビデオインタフェース15、通信インタフェース16、接続インタフェース17及び上述したハードウェアを接続する内部バス18で構成されている。
【0024】
CPU11は、内部バス18を介して数値制御装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置13に記憶しているコンピュータプログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。メモリ12は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラムの実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0025】
記憶装置13は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等で構成されている。記憶装置13に記憶しているコンピュータプログラムは、通信インタフェース16を介して接続されている外部コンピュータからダウンロードされ、実行時には記憶装置13からメモリ12へ展開して実行される。もちろん、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体からダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0026】
また記憶装置13は、移動軌跡データ記憶部131及び速度データ記憶部132を備えている。速度データ記憶部132には、移動量データ及び移動時間データに基づいて生成された速度データを記憶する。そして、生成された速度データを積分することにより、移動量を算出することができるので、移動軌跡データを生成することができる。移動軌跡データ記憶部131には、生成した移動軌跡データを記憶している。
【0027】
接続インタフェース17は内部バス18に接続されており、工作機械2の各軸、例えばX軸2a、Y軸2b、Z軸2cの互いに直交する3軸に加えて、A軸2d、・・・、N軸2nとデータ通信することが可能に接続されている。接続インタフェース17を介して、各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力することにより、各軸の動作を所望のタイミングにて同期させつつ動作を制御することができる。
【0028】
通信インタフェース16は内部バス18に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワークに接続されることにより、外部コンピュータとデータ送受信を行うことが可能となっている。
【0029】
I/Oインタフェース14は、キーボード、マウス等を含むコンソール3の入力装置31と接続され、データの入力を受け付ける。また、ビデオインタフェース15は、コンソール3の表示装置32と接続され、所定の画像を表示する。
【0030】
以下、上述した構成の数値制御装置1の動作について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置1の機能ブロック図である。
【0031】
図2において、入力受付手段101は、コンソール3の入力装置31にて、移動量データ及び移動時間データの入力を受け付ける。移動量データは、例えば何mm移動する、何度回転する等の移動量に関する情報であり、移動時間データは、移動に要する時間、回転に要する時間等の時間に関する情報である。
【0032】
データ生成手段102は、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、サーボモータの動作を制御するサーボデータを生成する基礎となる移動軌跡データ及び速度データを生成する。生成した移動軌跡データ及び速度データは、それぞれ移動軌跡データ記憶部131及び速度データ記憶部132に記憶される。
【0033】
データ生成手段102は、加速度特定手段103と、一次関数生成手段104とを備える。加速度特定手段103は、動作の制御対象となるサーボモータの特性に応じて、起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度を特定する。すなわち、加速時及び減速時においては、サーボモータの特性に応じた等加速度でサーボモータが回転することから、起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度は一定値となり、起動時及び停止時の移動速度は、一定の傾きを有する一次関数となる。
【0034】
一次関数生成手段104は、特定された起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度から求まる、起動時及び停止時の移動速度を表す一次関数の傾き、及び入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、複数の一次関数からなる速度データ、及び速度データを積分することで得ることができる移動軌跡データを生成する。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置1の速度データ生成の例示図である。図3は、工作機械2の単軸の動作についての速度データの生成例であり、縦軸を移動速度V、横軸を時刻tとしている。
【0036】
入力を受け付けるのは、移動量データとして速度変化を表す一次関数の積分値、すなわち移動速度関数の面積S、及び移動時間データとして起動してから停止するまでの時間T、すなわち移動を開始する時刻と終了する時刻とである。まず、起動時(時刻t=t0)には、求めた移動速度を表す一次関数301の傾きがαであること、及び停止時(時刻t=t3=T)には、求めた移動速度を表す一次関数303の傾きがβであることが定まっている。
【0037】
したがって、3つの一次関数301、302、303で囲まれた面積(ハッチング部分)が、入力を受け付けた移動量データSになるように、等速関数である一次関数302の移動速度Vを調整することで、受け付けた入力に応じた一次関数を生成することができる。すなわち、3つの一次関数301、302、303で囲まれた面積が、入力を受け付けた移動量データSになるように加速の終了する時刻t1及び減速の開始する時刻t2を求めることになる。
【0038】
例えば図3において、移動量データSを求めるには、移動速度Vを表す一次関数301、302、303で囲まれた台形部分の面積を求めれば良いので、(式3)のように表すことができる。
【0039】
(T+t2−t1)×(t1・tanα)/2=S ・・・ (式3)
【0040】
ここで、図3に示す台形部分の高さから、(式4)の関係が成立する。
【0041】
t1・tanα=(T−t2)・tanβ ・・・ (式4)
【0042】
(式4)をt1を求める式に変形すると、(式5)のようになる。
【0043】
t1=(T−t2)・tanβ/tanα ・・・ (式5)
【0044】
(式5)を(式4)に代入したt2に関する二次方程式から、t0以上t3以下の値を有するt2を求め、求めたt2を(式5)に代入することでt1を求めることができる。これにより、速度データを一次関数として生成することができ、生成した速度データを積分することにより移動軌跡データを生成することができる。
【0045】
図2に戻って、サーボデータ出力手段105は、生成して記憶されている速度データ及び移動軌跡データに基づいて、工作機械2のそれぞれの軸について、制御周期ごとの位置、速度を算出し、各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータとして出力する。図3の例では、t0〜t1、t1〜t2、t2〜t3の3つのブロックに分け、それぞれ単純な一次関数として生成されている速度データに基づいてサーボデータを生成すれば良いので、サーボデータを生成するCPU11の演算処理負荷を軽減することができる。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置1の単軸における入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データの例示図であり、図5は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置1の単軸における速度データの例示図である。図5(a)〜(e)に示す速度データは、それぞれ図4(a)〜(e)に示す入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて生成されたものの典型例を示している。
【0047】
通常、図4(a)に示すように、移動時間データとして、移動の開始時刻と終了時刻との入力を受け付けるとともに、移動量データとして、入力を受け付けた時間内での移動量の入力を受け付ける。図4(a)の例では、開始時刻t0における加速度、すなわち速度データの傾斜角度αと、終了時刻t3における加速度、すなわち速度データの傾斜角度βとが定まっているので、上述した(式3)及び(式4)を具備する速度データが一意的に定まり、等速運動へ移行する時刻t1、減速運動へ移行する時刻t2を求めることができる。
【0048】
図4(b)では、移動の開始時刻及び終了時刻は図4(a)と同一であるのに対して、移動量が半分になっている。開始時刻t0における加速度、すなわち速度データの傾斜角度αと、終了時刻t3における加速度、すなわち速度データの傾斜角度βとは、図4(a)と同一であることから、上述した(式3)及び(式4)を具備するように速度データを生成した場合、等速運動へ移行する時刻が時刻t1より早くなり、減速運動へ移行する時刻が時刻t2より遅くなる。したがって、等速運動時の移動速度Vは図4(a)よりも小さくなる。
【0049】
一方、図4(c)では、移動の開始時刻及び終了時刻は図4(a)と同一であるのに対して、移動量が2倍になっている。開始時刻t0における加速度、すなわち速度データの傾斜角度αと、終了時刻t3における加速度、すなわち速度データの傾斜角度βとは、図4(a)と同一であることから、上述した(式3)及び(式4)を具備するように速度データを生成した場合、等速運動へ移行する時刻が時刻t1より遅くなり、減速運動へ移行する時刻が時刻t2より早くなる。したがって、等速運動時の移動速度Vは図4(a)よりも大きくなる。
【0050】
このように、移動時間データ及び移動量データの入力を受け付けるだけで、対応する速度データを一次関数として容易に生成することができるので、サーボモータの動作を制御するサーボデータの基礎となる移動軌跡データ及び速度データを容易に生成することができ、演算処理負荷を高めることなく工作機械2の動作を制御することが可能となる。
【0051】
また、回転運動のように、直線移動ではない動作を組み合わせる場合であっても、移動時間データ及び移動量データの入力を受け付けることにより容易に速度データを生成することができる。例えば図5(d)に示すように、図5(a)で定まった等速運動へ移行する時刻t1、減速運動へ移行する時刻t2に合わせて、移動量データの入力を受け付けることにより、複雑な演算処理を実行することなく、各軸の動作を所望のタイミングで容易に同期させることができる。
【0052】
もちろん、任意の時刻t4で回転運動が終了するように、図4(e)に示すような移動量データ及び移動時間データの入力を受け付けた場合であっても、図5(e)に示すように速度データを生成することができ、作業者に経験が要求されることがない。しかも、各軸の動作を所望のタイミングにて容易に同期させることができるので、高い精度で工作機械2の動作を制御することが可能となる。
【0053】
なお、入力を受け付ける移動時間データ及び移動量データによっては、例えば十分に減速することができない等の問題が生じるおそれも残されている。そこで、時間を仮想的な時間との関数(以下、仮想時間関数)として表すことにより、入力を受け付けた移動時間データ及び移動量データを変更することなく工作機械2の動作を変更することができる。
【0054】
図6は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置1の仮想時間関数の例示図である。例えば図6(a)に示すように実時間tと仮想時間T’との関係を一次関数として表した場合、傾きが45度より小さい場合には、実時間tにおける速度よりも緩やかに工作機械2を動作させることができる。逆に図6(b)に示すように、傾きが45度より大きい場合には、実時間tにおける速度よりも速やかに工作機械2を動作させることができる。
【0055】
また、起動時、停止時には緩やかに動作させ、それ以外は速やかに動作させるべく、図6(c)に示すような関数としても良い。図6(c)では、動作を開始する時刻t0における速度、及び終了する時刻t3における速度を緩やかにするべく、変曲点を有する関数で仮想時間関数を定義している。このように、仮想的な時間という概念を導入することにより、複雑な演算処理を必要とすることなく、工作機械2の動作を制御することが可能となる。
【0056】
以上のように本実施の形態によれば、生成した移動軌跡データ及び速度データに基づいて、工作機械2の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力することにより、作業者は、制御対象となる工作機械2の動作を直感的に入力することができ、所望の動作を実現するためにどのような移動軌跡データ及び速度データを入力する必要があるかを熟知しておく必要がない。したがって、作業者に経験が要求されることなく、高い精度で工作機械2の動作を制御することができる。また、多軸構成の工作機械2の動作を制御する場合であっても、各軸の動作を所望のタイミングにて容易に同期させることができ、複雑な演算処理を必要としない。
【0057】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。例えば、数値制御装置1を単体のコンピュータで具現化するのではなく、例えば移動量データ及び移動時間データの入力を受け付け、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて移動軌跡データ及び速度データを生成する外部コンピュータを備え、生成された移動軌跡データ及び速度データのみを数値制御装置1が取得してサーボデータを出力する構成であっても良い。あるいは、外部コンピュータで移動量データ及び移動時間データの入力を受け付け、入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データを数値制御装置1が取得して移動軌跡データ及び速度データを生成し、サーボデータを出力する構成であっても良い。また、記憶装置13の速度データ記憶部132は必ずしも必要ではなく、生成した速度データをメモリ12に一次記憶し、CPU11が読み出して移動軌跡データを生成する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 数値制御装置
2 工作機械
3 コンソール
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 I/Oインタフェース
15 ビデオインタフェース
16 通信インタフェース
17 接続インタフェース
18 内部バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の移動軌跡を示す移動軌跡データ及び速度の変化を示す速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力する数値制御装置において、
移動量データ及び移動時間データの入力を受け付ける入力受付手段と、
入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて移動軌跡データ及び速度データを生成する生成手段と
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記生成手段は、
動作の制御対象となるサーボモータの特性に応じて起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度を特定する特定手段と、
特定した両加速度及び入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、時間に対する速度変化を表す一次関数を生成する一次関数生成手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記速度データの基礎となる時間を、仮想的な時間との関数として表すようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の数値制御装置。
【請求項4】
制御対象の移動軌跡を示す移動軌跡データ及び速度の変化を示す速度データに基づいて、工作機械の各軸を駆動するサーボモータの動作を制御するサーボデータを出力する数値制御方法において、
移動量データ及び移動時間データの入力を受け付けるステップと、
入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて移動軌跡データ及び速度データを生成するステップと
を含むことを特徴とする数値制御方法。
【請求項5】
動作の制御対象となるサーボモータの特性に応じて起動時の移動加速度及び停止時の移動加速度を特定するステップと、
特定した両加速度及び入力を受け付けた移動量データ及び移動時間データに基づいて、時間に対する速度変化を表す一次関数を生成するステップと
を含むことを特徴とする請求項4記載の数値制御方法。
【請求項6】
前記速度データの基礎となる時間を、仮想的な時間との関数として表すことを特徴とする請求項4又は5記載の数値制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−8865(P2012−8865A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145197(P2010−145197)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(510178334)株式会社モーションシステム (1)
【Fターム(参考)】