説明

断熱パネルの製造方法

【課題】実際の注入用孔の位置を確認してからノズルを注入用孔に挿入して、発泡断熱材の注入・充填ができ、ノズルの折損等の故障、装置の稼動停止を回避できると共に、製品品質の向上及び歩留まりの向上を図れるようにすること。
【解決手段】薄膜材50として、注入用孔25を閉塞する側の面に枠材20と色調が異なる着色を施したものを選択し、該薄膜材を枠材のパネル空間部30側の面に接着し、各仮組パネルPoの幅、長さ、高さ、注入用孔の位置等のパネル情報を読取ることに基づいて、画像認識手段であるCCDカメラ2を移動し、枠材と注入用孔内正面に見える薄膜材との色調差をCCDカメラによって認識することによって注入用孔の位置を確認する。そして、CCDカメラによって検出された情報に基づいてノズルを注入用孔に挿入し、パネル空間内に発泡断熱材40を注入・充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対の表面板と枠材とで仮組パネルを構成し、パネル空間に発泡断熱材を注入・充填して断熱パネルとする断熱パネルの製造方法に関し、特に、枠材に設けた注入用孔の内端を閉塞する薄膜材を備えた断熱パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の断熱パネルは、枠材内面の注入用孔の下側位置に可撓性を有する薄膜材の下部を接着して、該薄膜材で上記注入用孔を閉塞し、該枠材を一対の表面板の辺部間に介設して仮組パネルを組み付け、仮組パネルを平盤を介して積載し加圧固定した後、上記注入用孔に挿入されるノズルよりパネル空間内に発泡断熱材を注入・充填することで製造している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の断熱パネルの製造方法では、発泡断熱材の注入・充填に際して、各平盤に平盤NO等の平盤情報を記録し、この平盤情報と各仮組パネルの幅、長さ、高さ、発泡断熱材注入用孔の位置等のパネル情報とを読取って、積載される最初の平盤を求めると共に、その最初の平盤のNOを基準として後続の平盤情報とこれらに載置された仮組パネルのパネル情報とを対応させ、各仮組パネルの積載高さからパネル最大積載数、各パネルの発泡心材注入用孔高さ及び発泡断熱材の注入量を演算し、これら演算値に基づいて発泡断熱材の注入高さ、注入量を決定している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−1263号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開平10−58466号公報(特許請求の範囲、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の断熱パネルの製造方法においては、平盤情報と各仮組パネルの幅、長さ、高さ、発泡断熱材注入用孔の位置等のパネル情報を読取ることに基づいて、ノズルを水平方向及び上下方向に移動し注入用孔に対し位置合わせする。この場合、注入用孔の位置のパネル情報は設計寸法情報であり、厚さが異なる複数種類のパネルを多数積層するので、注入用孔の位置のパネル情報は実際位置とはずれが生じる。また、搬送装置の位置決め精度が粗いこともノズルと注入用孔との位置ずれが生じる。従って、上記従来の断熱パネルの製造方法においては、実際の注入用孔の位置を確認することをしないで発泡断熱材を注入するため、ノズルと注入用孔との位置ずれがある場合に、ノズルを注入用孔に挿入させようとするときに、ノズルに偏心力が作用してノズルが折れ曲がり、装置の稼動を長時間停止する虞があり、また、ノズルの周りに発泡断熱材が付着して以後の発泡断熱材の注入・充填が不良又は不能になる懸念がある。
【0005】
また、上記従来の断熱パネルの製造方法においては、パネル空間部への発泡断熱材の注入・膨張時に薄膜材が注入用孔を閉じないで、発泡断熱材が注入用孔より漏れ出して発泡固化する場合があり、人手により注入用孔付近の発泡断熱材を除去する後処理作業が必要となっている。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、実際の注入用孔の位置を確認してからノズルを注入用孔に挿入して、発泡断熱材の注入・充填ができ、ノズルの折損等の故障、装置の稼動停止を回避できると共に、製品品質の向上及び歩留まりの向上を図れるようにした断熱パネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の断熱パネルの製造方法は、一対の表面板の辺部間に枠材を装着して仮組パネルを構成し、上記枠材に設けられた注入用孔を介して挿入されるノズルよりパネル空間内に発泡断熱材を注入・充填し、上記注入用孔を閉塞するように、可撓性を有し下部のみを上記枠材のパネル空間部側面に接着された薄膜材を備えた断熱パネルの製造方法であって、上記薄膜材として、上記注入用孔を閉塞する側の面に上記枠材と色調が異なる着色を施したものを選択し、該薄膜材を上記枠材のパネル空間部側の面に接着する薄膜材接着工程と、上記枠材と上記注入用孔内正面に見える上記薄膜材との色調差を画像認識手段によって認識することによって上記注入用孔の位置を確認する注入位置検出工程と、上記画像認識手段によって検出された情報に基づいて上記ノズルを上記注入用孔に挿入し、上記パネル空間内に発泡断熱材を注入・充填する発泡断熱材充填工程と、を有することを特徴とする(請求項1)。この場合、上記注入位置検出工程は、各仮組パネルの幅、長さ、高さ、注入用孔の位置等のパネル情報を読取ることに基づいて、画像認識手段を水平方向及び上下方向に移動して行う方が好ましい(請求項2)。
【0008】
このように構成することにより、画像認識手段によって実際の注入用孔の位置を確認してからノズルを移動し注入用孔に対し位置合わせすることを行い、その後、ノズルを注入用孔に挿入させ、発泡断熱材の注入・充填を行うことができる。この場合、各仮組パネルの幅、長さ、高さ、発泡断熱材注入用孔の位置等のパネル情報を読取ることに基づいて画像認識手段を水平方向及び上下方向に移動して行うことにより、異なる種類の多数の断熱パネルに対応してノズルを注入用孔に挿入することができる(請求項2)。
【0009】
また、この発明において、上記薄膜材接着工程は、上端に内向き下方に向かって折り返された折曲部を有する上記薄膜材を用い、該薄膜材の下部のみ接着して設けることが好ましい(請求項3)。
【0010】
このように構成することにより、薄膜材の上端に内向き下方に向かって折り返された折曲部を有するので、発泡断熱材がその膨張時に折曲部に接触して折曲部を確実に押圧することができる。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1記載の発明によれば、画像認識手段を用いて枠材と薄膜材との色調差により実際の注入用孔の位置を確認してからノズルを移動し注入用孔に対し位置合わせすることを行い、その後、ノズルを注入用孔に挿入させ、発泡断熱材の注入・充填を行うことができるので、ノズルの折損等の故障、装置の稼動停止を回避できると共に、製品品質の向上及び歩留まりの向上を図れるようにした断熱パネルの製造方法を提供することができる。また、実際の注入用孔の位置を確認してからノズルを注入用孔に位置合わせすることにより、注入用孔とノズルとの寸法差が小さくてもノズルを接触させずに挿入することができ、その分ノズル径を最大限大きくできるので、発泡断熱材の注入効率の向上が図れる。
【0012】
(2)請求項2記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に異なる種類の多数の断熱パネルに対応してノズルを注入用孔に挿入することができる。
【0013】
(3)請求項3記載の発明によれば、薄膜材の上端に内向き下方に向かって折り返された折曲部を有するので、発泡断熱材がその膨張時に折曲部に接触して折曲部を確実に押圧する。これにより発泡断熱材の膨張圧力が薄膜材に加わり、薄膜材が注入用孔を確実に閉じることができる。従って、上記(1)に加えて、更に発泡断熱材が注入用孔より漏れ出して発泡固化し、人手により注入用孔付近の発泡断熱材を除去する後処理作業が不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施形態に係る断熱パネルの製造方法を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、オゾンを破壊しないノンフロンの発泡剤例えば炭素数5の飽和炭化水素(シクロペンタン)を含有する発泡断熱材を用いた断熱パネルの製造方法について説明する。
【0015】
まず、断熱パネルの構成を図1ないし図3を用いて説明する。図1は、この発明における断熱パネルの一例を示す斜視図、図2は、図1のI−I線に沿う拡大断面図(a)及び(a)のII矢視図(b)、図3は、断熱パネルの要部断面図である。
【0016】
断熱パネルPは、一対の鋼板製の表面板10と、両表面板10の辺部間に装着されるプラスチック製例えば塩化ビニル製の直状枠材20及びコーナー枠材21とで仮組パネル(図2に符号POで示す)が構成され、パネル空間内に注入・充填された発泡断熱材40と、枠材20に設けられた注入用孔25の内端を閉塞する薄膜材50とを備えている。
【0017】
直状枠材20の側面には、断熱パネルP同士を接合するために設けられる凹条部又は凸条部(図面では凹条部23Aを示す)が設けられ、また、コーナー枠材21の側面には、断熱パネルP同士を接合するために設けられる凹条部又は凸条部(図面では凹条部23Bを示す)が設けられている。この凹条部23A、23Bは、開口側が拡開するテーパ状に形成されている。直状枠材20の中間部における凹条部23Aの底部24には不活性ガス例えば窒素(N2)ガス及び発泡断熱材40の注入用孔25が設けられ、また、コーナー枠材21の凹条部23Bの底部24にはガス抜き孔26が設けられている(図1参照)。なお、注入用孔25は長尺の両直状枠材20に設けられているが、必要に応じて一方の直状枠材20に設けてもよい。
【0018】
仮組パネルPOは、直状枠材20及びコーナー枠材21の端面上下部に設けられた嵌合溝22内に、表面板10の辺部に折曲された折曲片11が僅かな隙間を有して嵌挿され構成されている(図2(a)参照)。
【0019】
断熱パネルPは、塩化ビニル製の枠材20の内面に薄膜材50を取り付け、この枠材20を一対の鋼板製の表面板10の辺部間に挟み、組み付けて仮組パネルPOを構成し、この仮組パネルPOのパネル空間30内に、注入用孔25に挿入されるN2ガス供給用ノズル60を通してN2ガスを充満し、次いで、注入用孔25に挿入される発泡断熱材供給用ノズル70を通して発泡断熱材40を注入・充填し、薄膜材50で注入用孔25を閉塞するように構成されてなる。
【0020】
薄膜材50は、可撓性を有する材料、例えば紙製材料にて形成されており、下部のみを接着剤52により直状枠材20の内面に接着され、ノズルの挿入が可能に上端部側が自由に変位し得、該接着部の真上の注入用孔25の内端を閉塞する機能を有する(図2(a)参照)。薄膜材50の上端には内向き下方に向かって折り返された折曲部51が設けられている。
【0021】
上記パネル空間30内に不活性ガスであるN2ガスを注入する場合や発泡断熱材40を注入する場合に、注入用孔25を介して断熱パネルPのパネル空間30内に、N2ガス供給用ノズル60又は発泡断熱材供給用ノズル70が挿入されると、薄膜材50は、図2(a)に二点鎖線で示すように、パネル空間30の内方側に変位してN2ガス又は発泡断熱材40の注入を可能にする。そして、発泡断熱材40が注入されて発泡・充填された際に、発泡断熱材40は下部から充填されるので、薄膜材50は発泡断熱材40によって下方側から押されて注入用孔25を閉塞する(図5参照)。これにより、発泡断熱材40の外部への露呈が防止される。
【0022】
この薄膜材50は、注入用孔25を閉塞するパネル空間側(内方側)の面に枠材20と色調が異なる着色、例えば茶色や黒色等を施したものが用いられ、枠材20のパネル空間部側面に接着されている。この着色は、注入用孔25の外方正面に位置させる画像認識手段例えばCCDカメラにより、枠材20と、注入用孔25に見える薄膜材50との色調差に基づいて注入用孔25の位置を情報入力できるようにするためである。
【0023】
また、コーナー枠材21の側面には、直状枠材20に設けられた凹条部又は凸条部に連なる凹条部又は凸条部(図面では凹条部23Bを示す)が設けられている。この凹条部23Bも直状枠材20の凹条部23Aと同様に開口側が拡開するテーパ状に形成されている。
【0024】
各コーナー枠材21に設けられたガス抜き孔26は、N2ガスをパネル空間30に供給してパネル空間30内の空気をN2ガスで置換する際、この空気をガス抜き孔26から外部へ排出でき、また、発泡断熱材40をパネル空間30内に注入・充填する際、発泡断熱材40から発生するガス及び余分のN2をガス抜き孔26から外部へ排出して、パネル内圧による表面板10の膨れや外れを防止する役目を果たす。
【0025】
一方、上記発泡断熱材40は、水を有するポリオール系原液と、ポリイソシアネート系原液と、発泡剤として炭素数5の飽和系炭化水素例えばシクロペンタンとの混合組成物にて形成されている。このように形成される発泡断熱材40は、ミキシング装置に接続する発泡断熱材供給用ノズル70から断熱パネルPのパネル空間30内に注入・充填される。
【0026】
次に、上記断熱パネルを製造する手順の一例を、断熱パネルの製造工程を示す図8のフローチャートを用いて簡単に説明する。
【0027】
(ステップ8−1)枠材20と色調が異なる着色を施した薄膜材50を、注入用孔25を閉塞するように直状枠材20に接着する。
【0028】
(ステップ8−2)直状枠材20及びコーナー枠材21を一対の表面板10の辺部間に装着して仮組パネルPOを組み付ける。
【0029】
(ステップ8−3)仮組パネルPOの幅、長さ、高さ、発泡断熱材注入用孔の位置等のパネル情報を後述する制御手段例えば中央演算処理装置7(以下に、CPU7という)が読み取り、記憶する。
【0030】
(ステップ8−4)仮組パネルPoを、後述する下ベース盤80と上ベース盤81との間に、定盤82及びスペーサ83を介して多段に平積みする。
【0031】
(ステップ8−5)パネル情報を読取ることに基づいて後述する画像認識手段であるCCDカメラ2を注入用孔25に対し、N2ガス供給用ノズル60を挿入可能な位置に注入用孔25が位置しているか否かを判断する。
【0032】
(ステップ8−6)注入用孔25がN2ガス供給ノズル60を挿入可能な位置にあると判断した場合は、N2ガス供給用ノズル60を水平方向及び上下方向に移動し注入用孔25に対し位置合わせする。また、注入用孔25がN2ガス供給ノズル60を挿入可能な位置にない場合は、次の仮組パネルPOについて、(ステップ8−5)をやり直す。
【0033】
(ステップ8−7)N2ガス供給用ノズル60を注入用孔25に挿入し、パネル空間30内に処理温度雰囲気未満のN2ガスを供給し充満させる。
【0034】
(ステップ8−8)平積みされN2ガスで置換された仮組パネルPOを移動機構(図示せず)によって所定位置へ水平移動し、(ステップ8−5)に戻ってCCDカメラ2を注入用孔25に対し、発泡断熱材供給用ノズル70を挿入可能な位置に注入用孔25が位置しているか否かを判断し、注入用孔25が発泡断熱材供給ノズル70を挿入可能な位置にあると判断した場合は、発泡断熱材供給用ノズル70を水平方向及び上下方向に移動し注入用孔25に対し位置合わせする。注入用孔25が発泡断熱材供給ノズル70を挿入可能な位置にない場合は、次の仮組パネルPOについて、(ステップ8−5)をやり直す。
【0035】
(ステップ8−9)発泡断熱材供給用ノズル70を注入用孔25に挿入し、パネル空間30内に仮組パネルPOのパネル空間30内に発泡断熱材40を注入し、発泡・充填する。この際、薄膜材50の折曲部51は、発泡断熱材40がその膨張時に折曲部に接触して折曲部51を確実に押圧する。これにより発泡断熱材40の膨張圧力が薄膜材に加わり、薄膜材50が注入用孔25を確実に閉じることができるので、発泡断熱材40が注入用孔25より漏れ出して発泡固化し、人手により注入用孔25付近の発泡断熱材40を除去する後処理作業が不要になる。
【0036】
(ステップ8−10)発泡断熱材40を発泡・充填した後、約2〜5分間待機させ、この間に、発泡断熱材40より発生するシクロペンタンのパネル外へ漏出させ、安全設備(図示せず)で回収する。
【0037】
(ステップ8−5)において、上記CCDカメラ2は、枠材20と注入用孔25内正面に見える薄膜材50との色調差により注入用孔25のエッジを検出し、このエッジ検出から注入用孔25の中心座標を検出することで、注入用孔25を認識し、その位置がノズルを挿入できる位置にあるか、否かを判断して、CPU7に位置情報を送る。この場合、色調差の認識は、予めノズルの挿入可能な注入用孔の複数のモデル画像を記憶しておいて、実際に認識された注入用孔25の画像とそれに基づいてモデル画像から選択された最も似ている画像と比較して、例えば70%以上合致していれば、注入用孔25の位置がノズルを挿入できる位置にあるものと判断するようになっている。
【0038】
以下、一層詳細に断熱パネルを製造する手順の一例を、図4,図5,図6,図7及び図8に示す断熱パネルの製造工程のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
図4は、この発明における断熱パネルの製造システムを示す概略平面図、図5は、この発明に係る断熱パネルの製造方法における断熱パネルの平積み状態の一例を示す概略断面図、図6は、図5の要部拡大断面図、図7は、断熱パネルの製造工程における不活性ガスの置換状態を示す概略平面断面図(a)及び発泡断熱材の注入状態を示す概略平面断面図(b)である。
【0040】
断熱パネルの製造システムは、図4に示すように、4列の仮組ステーションA−1,A−2,A−3,A−4と、平積みステーションB−1と、移載された加圧装置によって加圧される加圧ステーションB−2と、平積みされた仮組パネルPoを温調する2列の温調ステーションB−3,B−4と、N2ガス及び発泡断熱材40を供給(注入)する処理ステーションB−5と、4組の養生ステーションC−1,C−2,C−3,C−4と、加圧装置を解除する加圧解除ステーションD−1及び平盤解体ステーションD−2を具備している。このように構成される断熱パネルの製造システムは、図中、矢印で示したように、薄膜材50の接着,仮組パネルPoの組立,温度調整,発泡断熱材50の注入・充填及び養生を行うように構成されている。なお、仮組ステーションA−1,A−2,A−3,A−4以外のステーションB−1〜B−5,C−1〜C−4,D−1,D−2は、清浄な空気がダウンフローされた処理空間100内に配設されている。
【0041】
この場合、仮組ステーションA−1においては、予め用意された表面板10と直状枠材20及びコーナー枠材21を仮組みすると共に、直状枠材20に設けられた注入用孔25部に薄膜材50を接着する。また、仮組ステーションA−2においては、仮組ステーションA−1で組み込まれた注入情報記録部例えばバーコードをCPU7が読み取る。また、処理ステーションB−5の側方には、N2ガス供給ノズル60,発泡断熱材供給ノズル70及びCCDカメラ2を具備するN2ガス,発泡断熱材供給装置1(以下に、供給装置1という)が配設されている。この供給装置1のN2ガス供給ノズル60,発泡断熱材供給ノズル70及びCCDカメラ2は、水平のX,Y方向及び鉛直のZ方向に移動可能に構成されており、CPU7からの制御信号に基づいて移動される。
【0042】
また、N2ガス供給ノズル60はN2ガス供給管3を介してN2ガス供給源4に接続され、発泡断熱材供給ノズル70は発泡断熱材40{具体的には、上記水を有するポリオール系原液、ポリイソシアネート系原液及び発泡剤としてのシクロペンタンの混合組成物}の接続管5を介して供給源であるミキシング装置6に接続されている。この場合、N2ガス供給管3に介設されるバルブV1及び接続管5に介設されるバルブV2は、それぞれCPU7と電気的に接続されており、CPU7からの制御信号に基づいて開閉動作するようになっている。
【0043】
また、パネル平積みステーションB−1は、図5に示すように、一対の表面板10の辺部間に直状枠材20とコーナー枠材21とを組んでなる枠材20を装着した仮組パネルPOを、下ベース盤80と上ベース盤81との間に、塩化ビニルを被覆したアルミニウム製の定盤82(以下に平盤82という)及びアルミニウム製のスペーサ83を介して多段に平積みし、下ベース盤80と上ベース盤81に突設されたフランジ84,85を連結ボルト86とナット87によって固定する(ステップ8−4)。
【0044】
次に、平積みされた仮組パネルPOを図示しない移動機構によって水平移動して注入用孔25をN2ガス供給ノズル60の注入位置に停止する。すると、CCDカメラ2は、注入用孔25に関する位置情報に基づいた注入用孔25に正面に対向する位置へ移動する。このときの位置合わせは、各平盤に平盤NO等の平盤情報を記録し、この平盤情報と各仮組パネルの幅、長さ、高さ、発泡断熱材注入用孔の位置等のパネル情報とを読取って行う。画像処理によって注入用孔25に関する位置情報に対して実際の注入用孔25に位置ずれがあるかどうかを、CCDカメラ2が、枠体20と注入用孔25から見える薄膜材50との色調差により注入用孔25のエッジを検出し、このエッジ検出から注入用孔25の中心座標を検出することで、注入用孔25を認識し、実際の注入用孔25の位置の把握とノズル挿入の可否の判断を行う。ノズル挿入の可否は、CCDカメラ2が認識した注入用孔25の画像と予めノズル挿入可能な注入用孔のモデル画像のうち最も似ている画像と比較して、例えばモデル画像と実際の画像とが70%以上の合致を認識したときには、注入用孔25に対してN2ガス供給ノズル60を挿入可能と判断する(ステップ8−5)。
【0045】
N2ガス供給ノズル60は、パネル情報に基づいて水平方向(X,Y方向)及び上下方向(Z方向)に移動され、注入用孔25に位置合わせできる。
【0046】
そして、図7(a)に示すように、注入用孔25にN2ガス供給ノズル60を挿入し、仮組パネルPoのパネル空間30内にN2ガスを注入し、パネル空間30内をN2ガスで置換する(ステップ8−7)。
【0047】
このとき、各仮組パネルの積載高さからパネル最大積載数、各パネルの発泡心材注入用孔高さ及び発泡断熱材の注入量を演算し、これら演算値に基づいて発泡断熱材の注入高さ、N2ガスの注入量を決定する。なお、このときのN2ガスの供給量は1000L/min以上である。このとき、N2ガスは処理温度雰囲気未満すなわち35℃未満の温度であるので、パネル空間30内に注入された後、膨張して外部からパネル空間30内に空気が侵入するのを積極的に防止することができる。
【0048】
そして、置換に供されたN2ガスはパネルコーナー部すなわちコーナー枠材21に設けられたガス抜き孔26を介して外部に排出される。これにより、パネル内圧による表面板10の膨れや外れが防止される。なお、この際、最上段の仮組パネルPOの上部を押さえない場合では、最上段の仮組パネルPoのパネル空間30内にはN2ガスを注入せず、後述する発泡断熱材40の注入直前に手動によってN2ガスを注入する。なお、この仮組パネルPOの押さえは、発泡断熱材40の注入工程を行う場所に仮組パネルPoを移動させる際にエアバックによって行う。
【0049】
次に、供給装置1を移動して注入用孔25と発泡断熱材供給ノズル70とを位置調整する(ステップ8−8)。この際、発泡断熱材供給ノズル70を垂直方向のみに移動して発泡断熱材供給ノズル70と注入用孔25とを位置合せすることができる。なお、位置調整する前にCCDカメラ2で再度画像を確認してもよい(ステップ8−5)。そして、図7(b)に示すように、注入用孔に発泡断熱材供給ノズル70を挿入し、仮組パネルPoのパネル空間30内に、発泡断熱材40{具体的には、上記水を有するポリオール系原液、ポリイソシアネート系原液及び発泡剤としてのシクロペンタンの混合組成物}を注入し、発泡・充填する(ステップ8−9)。この発泡断熱材40の注入工程において発生するガスは、ガス抜き孔26から外部に排出される。これにより、パネル内圧による表面板10の膨れや外れが防止される。
【0050】
上記発泡断熱材40の注入工程の際、上記ポリオール系原液と、ポリイソシアネート系原液と、シクロペンタンは、所定の割合で配合された後、所定の圧力に調整されてミキシング装置6へ供給され攪拌・混合される。該混合組成物は、発泡断熱材供給ノズル70から適宜間隔をおいて配置された一対の表面板10間に注入されて発泡し、その後硬化して断熱材(フォーム)が成形される。
【0051】
異なる寸法の断熱パネルPすなわち仮組パネルPoの高さ寸法に応じて最適な量の発泡断熱材40を注入する必要があるので、予め設定された断熱パネルPの寸法すなわち仮組パネルPoの高さ寸法とパネル温度の情報を記憶したCPU7からの制御信号に基づいて発泡断熱材供給ノズル70から所定量の発泡断熱材40をパネル空間30内に注入する。
【0052】
上述のようにして仮組パネルPoのパネル空間30内に発泡断熱材40を注入し、発泡・充填した後、約2〜5分間待機させる(ステップ8−10)。その後、作製された断熱パネルPを養生して、所定の場所に搬出する。
【0053】
なお、上記実施形態では、仮組パネルPoの空間30内にN2ガスを置換した後に、空間30内に発泡断熱材40を注入・充填する場合について説明したが、N2ガスを置換せずに仮組パネルPoの空間30内に発泡断熱材40を注入・充填する製造方法にも適用可能である。この場合は、図8に想像線で示すように、CCDカメラ2を注入用孔25に対し、発泡断熱材供給用ノズル70を挿入可能な位置に注入用孔25が正確に位置しているか否かを判断し(ステップ8−5)、注入用孔25が正確に位置している場合は、発泡断熱材供給用ノズル70を水平方向及び上下方向に移動し注入用孔25に対し位置合わせする(ステップ8−8)。そして、発泡断熱材供給用ノズル70を注入用孔25に挿入し、パネル空間30内に仮組パネルPOのパネル空間30内に発泡断熱材40を注入し、発泡・充填する(ステップ8−9)。
【0054】
また、上記実施形態では、発泡断熱材にノンフロン(シクロペンタン)を用いた場合について説明したが、通常のフロン系発泡断熱材を用いた断熱パネルの製造方法にも適用可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、仮組パネルPo間にスペーサ83を用いているが、枠材20,21及び表面板10の配置はこれに限定されるものではなく、スペーサを用いなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、平面状の断熱パネルの製造方法について説明したが、この発明に係る製造方法は、平面状パネル以外の他の形状、例えば隅角部用のL字形の断熱パネルの製造方法にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明における断熱パネルの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のI−I線に沿う拡大断面図(a)及び(a)のII矢視図(b)である。
【図3】断熱パネルの要部断面図である。
【図4】この発明における断熱パネルの製造システムを示す概略平面図である。
【図5】この発明に係る断熱パネルの製造方法における断熱パネルの平積み状態の一例を示す概略断面図である。
【図6】図5の要部拡大断面図である。
【図7】断熱パネルの製造工程における不活性ガスの置換状態を示す概略平面断面図(a)及び発泡断熱材の注入状態を示す概略平面断面図(b)である。
【図8】この発明に係る断熱パネルの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
P 断熱パネル
Po 仮組パネル
1 N2ガス,発泡断熱材供給装置
2 CCDカメラ(画像認識手段)
7 CPU(制御手段)
10 表面板
20 直状枠材
21 コーナー枠材
25 注入用孔
30 パネル空間
40 発泡断熱材
50 薄膜材
51 折曲部
60 N2ガス供給用ノズル
70 発泡断熱材供給用ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の表面板の辺部間に枠材を装着して仮組パネルを構成し、上記枠材に設けられた注入用孔を介して挿入されるノズルよりパネル空間内に発泡断熱材を注入・充填し、上記注入用孔を閉塞するように、可撓性を有し下部のみを上記枠材のパネル空間部側面に接着された薄膜材を備えた断熱パネルの製造方法であって、
上記薄膜材として、上記注入用孔を閉塞する側の面に上記枠材と色調が異なる着色を施したものを選択し、該薄膜材を上記枠材のパネル空間部側の面に接着する薄膜材接着工程と、
上記枠材と上記注入用孔内正面に見える上記薄膜材との色調差を画像認識手段によって認識することによって上記注入用孔の位置を確認する注入位置検出工程と、
上記画像認識手段によって検出された情報に基づいて上記ノズルを上記注入用孔に挿入し、上記パネル空間内に発泡断熱材を注入・充填する発泡断熱材充填工程と、
を有することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項2】
上記注入位置検出工程は、各仮組パネルの幅、長さ、高さ、注入用孔の位置等のパネル情報を読取ることに基づいて、画像認識手段を水平方向及び上下方向に移動して行う、ことを特徴とする請求項1記載の断熱パネルの製造方法。
【請求項3】
上記薄膜材接着工程は、上端に内向き下方に向かって折り返された折曲部を有する上記薄膜材を用い、該薄膜材の下部のみ接着して設ける、ことを特徴とする請求項1記載の断熱パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−101562(P2009−101562A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274642(P2007−274642)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】