説明

断面の異なる複合材型材の連続成形方法

【課題】断面が異なる複合材型材を連続成形する方法を提供する。
【解決手段】中央部110に比べて両端部120、130の表面の寸法が小さいC型の移動金型100を用意して、両端部120、130及び中央部110に全体が同一面を形成するように予めプリプレグシートを積層する。ロール210、220からプリプレグシート300を引き出し、予備成形装置230を通過させて均一な断面を有するC型材310を予備成形する。予備成形品310に移動金型100を重ね合わせてホットプレス装置を通過させ、アフターキュア炉260で熱硬化を完了させ、移動金型100をとり外して成型品を完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面の異なる複合材型材の連続成形方法及びこの方法に使用する移動式金型に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の長繊維にエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグ材料を加熱成形して所望の断面形状を持つ成形品を得る技術が知られている。炭素繊維やガラス繊維は単位重量当りの強度が大きく、特に引張強度が大きいので、これらの繊維を繊維方向が縦、横、斜め方向に向くように積層した複合材料とすると、軽量で比強度、比弾性率の高い製品を得ることができ、広く航空機、工業製品に利用されている。
【0003】
成形に用いる材料は、熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維やガラス繊維を平行に並べて1つの層としたり、これらの繊維の織布を1つの層とし、これらの層を多数積層して材料とするが、必要に応じて層間にこれらの繊維の粗糸(ロービング)を介在させて成形材料としている。成形方法及び装置としてはボビンより供給された複数本の帯状のプリプレグ材料をホットプレス装置の加熱された上金型・下金型で加熱・加圧して所定の断面形状に成形され、次いで硬化炉内で成形品は完全に硬化し、製品を生産する。この間、成形品の装置内での移動は、装置後部に配置した牽引機により連続的に牽引されていた。
【0004】
下記の特許文献1は、本出願人に係る特許公報であって、上述した技術を開示している。
この技術を用いることによって複合材を連続してH型材等に成形することができるが、場所により断面形状が異なる型材を成形することはできない問題がある。
そこで本出願人は段階状の断面厚さを有する複合材の連結成形方法として特許文献2に開示する技術を提案している。
【特許文献1】特許第3400399号公報
【特許文献2】特開2008−213311号公報
【0005】
特許文献2に示すものにあっては、プリプレグ積層体の両面にプリプレグピールプライを積層して連続成形を行い、成形後にピールプライを剥離・除去することにより断面厚さ寸法が変化する製品を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ピールプライを用いることなく断面の異なる複合材型材の連続成形方法及びその成形方法に使用する移動式金型を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の複合材型材を連続成形する方法は、型材の断面形状に対応した断面形状を有し、内側壁面は同一平面で構成され、外側表面の寸法が長手方向で異なる金型部を有する移動金型を用意する工程と、移動金型の外側表面に複合材プリプレグシートをシート全体の表面が同一面を形成するように予備積層する工程と、プリプレグシートを、予備成形装置を通過させて同一の厚さ寸法を有する予備成形部材を成形する工程と、予備成形された部材の内側に複合材プリプレグシートが予備積層された移動金型を重ね合わせてホットプレスする工程と、ホットプレスされた部材をアフターキュア炉で追加熱して熱硬化を完了させる工程と、熱硬化が完了した部材から移動金型をとり外す工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のように、各種の移動式金型を用いることにより、断面の異なる種々の複合材型材を成形することができる。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明により成形される長手方向に沿って断面が異なるC型材の斜視図、図2は要部の拡大斜視図である。
全体を符号1で示すC型材は、中央部の第1の断面部10と第1の断面部10の両側に連続して成形される第2の断面部20と第3の断面部30により構成される。
第1の断面部10は、例えば厚さ寸法Tを有するC型材に成形され、第2の断面部20は厚さ寸法Tを有するC型材に成形される。同様に第3の断面部30は厚さ寸法Tを有するC型材に成形される。
【0010】
第1の断面部10の厚さ寸法Tは第2の断面部20の厚さ寸法Tより小さい。第1の断面部10と第2の断面部20の表面側は同一の平坦面Sを形成し、第1の断面部10の裏面Bと第2の断面部20の裏面Bの厚さ寸法のみが異なる。その間は傾斜面40で接続される。
第1の断面部10と第3の断面部30も同様の構造を備える。
【0011】
図3は上述した断面構造を備えるC型材を連続成形するために使用する移動金型の斜視図、図4は要部の拡大斜視図である。
全体を符号100で示す移動金型は、C型の断面形状を有し、中央部に設けられる第1の金型部110と、その両側に設けられる第2の金型部120と第3の金型部130を備える。
C型の移動金型100の内側壁面Rは同一平面で構成される。
【0012】
第1の金型部110の外側表面Fは第2の金型部120に比べて高さ寸法及び幅寸法が大きく形成されており、傾斜部140で接続されている。
第3の金型部130の表面Fは、同様に第1の金型部110の表面Fに比べて、高さ寸法及び幅寸法が小さく形成されており、傾斜部150で接続されている。
そして、この移動金型100の第2の金型部120の表面Fと第3の金型部130の表面F及び第1の金型Fに対してプリプレグシートを適宜枚数積層して、積層されたプリプレグシート全体の表面が同一面を形成するように予備積層を行う。
【0013】
図5は、本発明の成形方法を示す説明図である。
複数のロール210、220に巻かれたプリプレグシート300は、最下流側に配設される引出し装置270により、一定時間毎に一定長さ引き出され、予備成形装置230へ送られる。
予備成形装置230を通過する間に、プリプレグシート300は、断面形状がC型で均一の厚さ寸法を有する予備成形部材310に成形される。
【0014】
次に、この予備成形部材310の内側に対して、第2の金型部120の裏面に、予め所定のプリプレグシート320が予備積層された移動金型100が重ね合わされる。
予備成形部材310と移動金型100は、重ね合わされた状態で次工程であるホットプレス装置250へ送られる。
ホットプレス装置250は、C型材の断面形状に対応した下金型252と上金型254を有し、予備成形部材310と移動金型100上に積層されたプリプレグシート320を同時に加圧・加熱し、一体に成形する。
【0015】
ホットプレス装置で成形された成形品330は、アフターキュア炉260で所定時間、所定温度加熱され、プリプレグ材に含浸された熱硬化樹脂は完全硬化する。
完全硬化した完成品330は引き出し装置270を通過した後に所定の長さに切断され、移動金型100をとり外して製品が完成する。
【0016】
この製品は図1に示す長手方向に沿って断面形状が異なるC型材1となる。
C型材の異なる断面部の長さ寸法や厚さ寸法は、移動金型の構造を変更することにより、任意に変更することができる。
【0017】
また本発明は、上述したC型材の他に、L型材、H型材、T型材等の種々の断面形状を有する複合材型材の成形に適用することができる。
したがって、要求される強度を備え、かつ軽量化を図ることができる複合材型材を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明により成形される長手方向に沿って断面が異なるC型材の斜視図
【図2】図1の要部の拡大斜視図
【図3】移動金型の斜視図
【図4】図3の要部の拡大斜視図
【図5】本発明の成形方法を示す説明図
【符号の説明】
【0019】
1 C型材
10 第1の断面部
20 第2の断面部
30 第3の断面部
40 傾斜面
100 移動金型
110 第1の金型部
120 第2の金型部
130 第3の金型部
210、220 ローム
230 予備成形装置
250 ホットプレス装置
260 アフターキュア装置
270 引き出し装置
300 プリプレグシート
310 予備成形部材
320 予備積層されたプリプレグシート
330 成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維などに熱硬化樹脂を含浸させた複合材プリプレグを長手方向に間欠的に供給して金型とアフターキュア炉を通過させて所定の断面形状を有する複合材型材を連続成形する方法であって、
型材の断面形状に対応した断面形状を有し、内側壁面は同一平面で構成され、外側表面の寸法が長手方向で異なる金型部を有する移動金型を用意する工程と、
移動金型の外側表面に複合材プリプレグシートをシート全体の表面が同一面を形成するように予備積層する工程と、
プリプレグシートを、予備成形装置を通過させて同一の厚さ寸法を有する予備成形部材を成形する工程と、
予備成形された部材の内側に複合材プリプレグシートが予備積層された移動金型を重ね合わせてホットプレスする工程と、
ホットプレスされた部材をアフターキュア炉で追加熱して熱硬化を完了させる工程と、
熱硬化が完了した部材から移動金型をとり外す工程と、
を備える断面の異なる複合材型材の連続成形方法。
【請求項2】
断面の異なる複合材型材を連続成形する方法に使用する移動金型であって、型材の断面形状に対応した断面形状を有し、内側壁面は同一平面で構成され、外側表面の寸法が長手方向で異なる金型部を有する移動金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−115822(P2010−115822A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289566(P2008−289566)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000132013)株式会社ジャムコ (53)
【出願人】(508337134)株式会社 ジャムコテクニカルセンター (1)
【Fターム(参考)】