説明

新規なポリオルガノシロキサン類およびそれらの使用

本発明は、新規なポリオルガノシロキサン類、それらの調製方法、および特に例えば油圧液などの力および/または熱伝達液としての、ならびに化粧品組成物中でのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリオルガノシロキサン類、それらの調製方法、および特に例えば油圧液などの力および/または熱伝達液としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な脂肪族、芳香族または不飽和炭化水素類、例えばαオレフィン類、リン酸エステル類、フェニルエーテル類、ポリエステル類またはポリエーテル類の他に、ポリオルガノシロキサン類は、長年にわたり合成油圧液として公知であった(例えば、米国特許第2398187号明細書;米国特許第4048084号明細書;米国特許第4116847号明細書;米国特許第4132664号明細書;米国特許第4175049号明細書;米国特許第4357473号明細書;英国特許第1093555号明細書;英国特許第867167号明細書;米国特許第4340495号明細書など)。さらに、米国特許第5684112号明細書は、化粧品組成物において使用するためのコンディショナーとしての分枝状ポリオルガノシロキサン類を開示している。式(MeSiO)Si−フェニルの化合物は、特に制動液として、Baysilon PD5の商標名を付けてMomentive Performance Materials社によって販売されている。しかしシリコーンシールもしくは膜と接触する状況では、上記の化合物は、低分子量を備える多数の他のポリオルガノシロキサン類と同様に、シリコーンシールもしくは膜の膨潤の増加またはシリコーンシールを通る液体の拡散、さらにそこで液体の漏出を引き起こす。そこで、本発明の課題は、力伝達液として適合する、そして上記の短所を示さない媒体を見いだすことであった。この媒体は、特に、力伝達のために、ならびに制動用、すなわち遅延性力分布もしくは力伝達のための媒体として使用できなければならなかった。この要件は、特にバネ装置としての弾性ゴム膜から、または粘性の制動力伝達液を備えるまた別の空間を分離する膜によって取り囲まれたエアクッションから構成される液体封入式マウント(hydro−mount)において明らかである。さらに、この液体は、様々な温度で、特に低温では適切な粘度範囲を有し、高温に耐性であり、そして取り囲んでいる膜をほんの少ししか変化させないと考えられた。さらに、液体媒体は、低圧縮性を有すると想定されており、そして金属やシーリング材料、例えば特にエラストマー、例えばシリコーンエラストマーとの相互作用中に、できればそれらの特性を変化させてはならない。
【0003】
同様にいわゆる液体封入式マウントの製造における制動液として使用されるグリコール類は天然ゴムもしくはEPDMをベースとするエラストマーバネ要素とともに液体封入式マウントにおいて使用できるが、それらは容認可能な膨潤を引き起こし、これらの膜を通しての望ましくない高度の拡散もしくは透過性もしくは透過を誘発し、そしてさらに低温範囲内では十分に低い粘度を有していないので、シリコーンエラストマー由来のバネ要素の状況に使用するためには大いに不適合であることが証明されている。その他の化合物、例えば低分子量合成媒体は、低過ぎる沸点を有する、またはそれらは大気中の酸素もしくは湿気の存在下では粘度が少なくとも上昇する、または液体が実際に固化するような方法で樹脂化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2398187号明細書
【特許文献2】米国特許第4048084号明細書
【特許文献3】米国特許第4116847号明細書
【特許文献4】米国特許第4132664号明細書
【特許文献5】米国特許第4175049号明細書
【特許文献6】米国特許第4357473号明細書
【特許文献7】英国特許第1093555号明細書
【特許文献8】英国特許第867167号明細書
【特許文献9】米国特許第4340495号明細書
【特許文献10】米国特許第5684112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、本発明は、グリコール類、炭化水素類または線状ポリジメチルシロキサン類とポリオルガノシロキサンエラストマー膜もしくはシールとが接触する状況に発生するこれらの問題を回避する適切な液体を見いだすという課題を有した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは驚くべきことに、シリル化シリコネート類およびシリケート類のクラス内でこれらの課題を達成できる低重合度を備える化合物を見いだした。
【0007】
そこで、本発明は以下を提供する:
式(I):
(I)
(式中、
a=2〜6、好ましくは3もしくは4、特に好ましくは4、
b=0〜10、好ましくは0〜2、いっそうより好ましくは0、
c=0〜3、好ましくは0〜2、より好ましくは0もしくは1、
d=0〜2、好ましくは0もしくは1、
c+d=1〜2、好ましくは1、
a/(c+d)>2、好ましくは≧3、
式中、
M、D、T、Qは以下、
【化1】

【0008】
を表し、およびRは:
1個以上の酸素原子、1個以上のハロゲン原子ならびに1個以上のシアノ基を含むことのできる30個までの炭素原子を備える脂肪族および/または芳香族残基からなる群から選択される、ただしM内の残基Rの少なくとも1つは炭素原子を介してケイ素に結合しており、M内の残基Rの少なくとも1つは少なくとも2個、好ましくは少なくとも4個、いっそうより好ましくは少なくとも5個の炭素原子を含むことを前提とする)
のポリオルガノシロキサン類の使用。
【0009】
このとき前記ポリオルガノシロキサン類は、力および/または熱伝達液として、または化粧品組成物中の成分として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
力伝達液は、生成場所と作用場所との間の所定の距離にわたって機械力を伝達および/または分配するために適合する。特に、油圧、制動およびギア液または油が力伝導液として挙げられる。本発明による力伝達液によって満たされる要件には以下:
優れた潤滑特性、
老化への高い抵抗性、
高い引火点、
低い凝固点または流出点、
シリコーンエラストマー類との適合性、
特に、低い透過性または透過度、
樹脂類もしくは酸類が存在しないこと、
粘度(動的ならびに運動学的粘度の両方)に温度が及ぼす影響が低いこと、
低圧縮性
が含まれる。
【0011】
そこで、式(I)のポリオルガノシロキサン類は、好ましくは−28℃未満の流出点(DIN ISO 3016、ASTM D5985)または−30℃未満の凝固点(DIN ISO 3016、ASTM E 537−76)を有する。
【0012】
式(I)のポリオルガノシロキサン類は、好ましくは180℃より高い、好ましくは190℃より高い沸点を有する。
【0013】
式(I)のポリオルガノシロキサン類は、好ましくは厚さ2mmを有するサンプルについて、DIN 53532にしたがったいわゆる燃料透過性FPとして決定される、140℃で70[g/m/d]未満、好ましくは40[g/m/d]未満、特に好ましくは20[g/m/d]未満のEP値を備える、ポリジメチルシロキサンエラストマー上の透過度を有する。
【0014】
式(I)では、R基は炭素原子を介してケイ素原子に結合しているR基ならびに酸素原子を介してケイ素原子に結合しているR基の両方を含む。すなわちそれらはこの状況ではアルコキシ基(以下では、R’と呼ぶことがある)である。しかしアルコキシ基R’を含むM基を備える本発明によるポリオルガノシロキサン類は、余り好ましくない、または言い換えると、本発明によると、M中ではSi−C−結合R基(以下ではR’’と呼ぶことがある)が好ましい。
【0015】
M中の残基Rの内の少なくとも1つが炭素原子を介してシリコンに結合されていて、およびM中の残基Rの内の少なくとも1つが少なくとも2個の炭素原子を含むという要件は、M中にSi−C結合されていて、同時に少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、いっそうより好ましくは少なくとも5個の炭素原子を含む残基Rが存在する状況も含む。Mが少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、いっそうより好ましくは少なくとも5個の炭素原子を備えるSi−C結合R残基を含むこの状況が、本発明において好ましい状況である。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明によるポリオルガノシロキサン類中のM中の残基Rの内の少なくとも1つは、芳香族基、特にフェニル基、好ましくはフェニルエチルもしくはフェニルプロピル基、特に(2−フェニル−2−メチル)−エタン−1−イル基を含む基を表す。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明によるポリオルガノシロキサン類のM中の残基Rの内の少なくとも1つは、以下:
アリール、
−CH−CHR−R(式中、
は、水素またはC〜C−アルキルである、および
は、Rと同一の意味を有する)、
−CR=CH−R
(式中、
は、Rと同一の意味を有する、および
は、Rと同一の意味を有する、または水素である)
からなる群から選択される式Rの基を表す。
【0018】
好ましいM基には:
−SiR’’
(式中、好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは正確には1つの基R’’は、上述したように基Rである)が含まれる;特に好ましくは、Mは、基:
−SiMe
または
−SiR’’R’;
(式中、残基R’’またはR’の内の少なくとも1つは少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、いっそうより好ましくは少なくとも5個の炭素原子を含む)である;特に好ましくは、Mは、
−SiMeR’
である。
【0019】
本発明によるポリオルガノシロキサン類は、同一または相違する基Mを含むことができる。これは、上記に規定した必須の基Mの他に、さらに少なくとも2個の炭素原子を備える残基RもSi−C結合残基も含まない基M、例えば−SiMeおよび−Si(OMe)が存在してよいことを意味する。
【0020】
しかし好ましくは、本発明によるポリオルガノシロキサン類中の全基Mは、少なくとも2個の炭素原子を備える残基R、特に少なくとも2個の炭素原子を備えるSi−C結合残基Rを含んでいる。
【0021】
また別の好ましい実施形態では、本発明は、式(I)のポリオルガノシロキサン類の使用に関するが、このとき該ポリオルガノシロキサン類は、式(Ia)または(Ib):
2−61−2 (Ia)、
2−60−31−2 (Ib)、
(式中、M、D、TおよびQは、上記に規定したとおりである)
を有する。
【0022】
好ましくは、式(Ia)または(Ib)のポリオルガノシロキサン類は、以下の構造:
Q、

を有する。
【0023】
また別の好ましい実施形態では、本発明は式(I)のポリオルガノシロキサン類の使用に関するが、このとき全M残基は式Rの少なくとも1つ、好ましくは正確には1つの基を含んでいる。
【0024】
また別の好ましい実施形態では、本発明は式(I)のポリオルガノシロキサン類の使用に関するが、このときM中の全残基Rは、炭素原子を介してケイ素に結合している。
【0025】
最も好ましくは、本発明によるポリオルガノシロキサン類は、少なくとも2個の炭素原子を備えるS−Ci結合残基R、特にRを含む同一のM基を含んでいる。
【0026】
例には:
QM
が含まれ、
例えば:
【化2】

【0027】
好ましいのは式:
【化3】

【0028】
またはTM型の化合物、
例えば:
【化4】

【0029】
好ましいのは式:
【化5】

【0030】
(式中、n=0〜8、好ましくは1〜5)である。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明は、式(I)のポリオルガノシロキサン類の使用に関するが、このときシロキサン単位の比率は、M:Q=4〜1:1、好ましくは4〜3:1、またはM:T=3〜1:1、好ましくは3〜2:1である。
【0032】
また別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の式:
【化6】

【0033】
のポリオルガノシロキサン類の使用に関する。
【0034】
また別の好ましい実施形態では、本発明は、25℃で100mPa.s未満の粘度およびD=1s−1の剪断速度勾配を有する式(I)のポリオルガノシロキサン類の使用に関する。つまり、式(I)のポリオルガノシロキサン類は、一般に室温では液体である。好ましくは、本発明によるポリオルガノシロキサン類は、−40℃でさえなお液体であり、そして−40℃では特に好ましくは1s−1の剪断速度Dで測定した20,000mPa.s未満の粘度を有する。
【0035】
好ましくは、本発明によって使用されるポリオルガノシロキサン類は、360〜2,000g/molの数平均Mを備える(標準物質としてのポリスチレンに対してゲル透過クロマトグラフィによって決定した)分子量を有する。
【0036】
本発明による使用は、特に液体封入式マウント中の力伝達液としての使用を含む。液体封入式マウントは、バネ本体および制動ユニットを含む制動素子である。制動ユニットは、力伝達液が充填された窩洞および流路を含んでいる(例えば欧州特許第0547287号明細書を参照されたい)。したがって、本発明は式(I)のポリオルガノシロキサン類を含む液体封入式マウントにさらに関する。
【0037】
さらに、式(I)のポリオルガノシロキサン類は、驚くべきことに化粧品組成物の成分としても使用できるが、それは化粧品成分のために適合する溶解挙動を備えるシロキサン化合物がそれを用いて提供できるからである。さらに、それらは所望の低い拡張もしくは移動挙動、例えば砂および粉塵に関する低い粘着性、および1.50を超える、特に1.51を超える高い屈折率n25を有する。1.51を超える屈折率は、特に式(Ia)および(Ib)ならびにR=アリールアルキルの化合物において見いだされた。それを用いると特殊な光沢作用を達成できる。さらに、特に、これらの成分が目または口の中に入ることを防ぐために着色用化粧品調製物中では低移動挙動が望ましい。そこでそれらは、特にポリジメチルシロキサン類中の例えば脂肪や油とは対照的に、わずかな程度にしか広がらない式(I)のポリオルガノシロキサン類の特性によって、特にフィルム形成剤、光沢用添加物、成分を適合性にするためのエンハンサー、日焼け止め製品、特に低い砂付着性(「アンチサンディング(anti−sanding)」)を有する耐水性日焼け止め製品のための担体材料、特に化粧用スキンケア製品、例えばリップスティック、化粧品の光沢成分として作用する。そこで、例えばマスカラや「リップグロス」などの化粧品組成物、その他の着色用スキンケア製品ならびにヘアケア製品、例えばシャンプー、コンディショナーおよび特にヘアトニック、皮膚、爪および毛髪表面の光沢を強化するためのオイルや液体類は、有益にも本発明による化合物を用いて製造できる。本発明による物質は、1.5を超える高い屈折率のために、さらに皮膚上への着色または固体含有もしくはワックス含有化粧品製品(抗蒸散剤)のホワイトニングを減少させること(「アンチホワイトニング」)に貢献するためにも著しく適合する。
【0038】
したがって、本発明は式(I)のポリオルガノシロキサン類を含む化粧品組成物にさらに関する。
【0039】
本発明によるポリオルガノシロキサン類は、式(I’):
(I’)
(式中、
a=2〜6、好ましくは2〜4
b=0〜2、好ましくは0
c=0〜2、好ましくは0〜1、
d=0〜2、好ましくは0〜1、
c+d=1〜2、
a/(c+d)>2
式中、
M、D、T、Qは以下、
【化7】

【0040】
を表し、および式中、
Rは:
1個以上の酸素原子、1個以上のハロゲン原子ならびに1個以上のシアノ基を含むことのできる30個までの炭素原子を備える脂肪族および/または芳香族残基からなる群から選択されるが、
ただし、M中の残基Rの内の少なくとも1つは炭素原子を介してケイ素に結合しており、残基の内の少なくとも1つはアリールアルキルまたはアリールアルケニルであることを前提とする)の新規な化合物もさらに包含する。式(I’)の好ましいポリオルガノシロキサン類に関しては、式(I)のポリオルガノシロキサン類に関する注釈を参照することができる。
【0041】
最後に、本発明は、式(I’)のポリオルガノシロキサン類を調製するための方法であって:
i.式:
(II)
(式中、a、b、c、dは上記に規定したとおりであり、このときM、D、T、Qは以下、
【化8】

【0042】
を表し、およびRは上記に規定したとおりである)の化合物を
化合物
CH=CHR−R(式中、RおよびRは上記に規定したとおりである)と、または
化合物
CR≡CR(式中、RおよびRは上記に規定したとおりである)と
ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させる工程、または
ii.式:
(II)
(上記に規定したとおりである)の化合物を
式HO−R(式中、Rは上記に規定したとおりである)の化合物と触媒の存在下で反応させる工程であって、その反応中にM中では水素放出を伴ってR−O−Si基が形成される工程、
または
iii.請求項1に記載した単位M、D、T、Qの前駆体に該当し、かつ、少なくとも1つの基R(Rは上記に規定したとおりである)を含む、幾つかのハロゲンおよび/またはアルコキシシラン類の加水分解またはアルコール分解を含む方法にさらに関する。
【0043】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に説明される。
【実施例1】
【0044】
Si[OSiMeH]およびそのオリゴマーの調製。
【0045】
2,010gのテトラメチルジシロキサン(30mol)、1,200gの水、60gの37%塩酸および1,000gのトルエンを、スターラー、温度計、還流冷却器および注入装置を装備した加熱または冷却ジャケットを備える6Lのフラットフランジ容器内へ窒素ブランケット下で収容する。1,248gのテトラエトキシシラン(6mol)を強力に攪拌しながら計量する。反応のために、混合液は計量中に47℃へ加熱される。
【0046】
計量工程が完了した後に1時間攪拌する;スターラーのスイッチを切った後、急速に2相が形成される;低い方の水相を分離して廃棄し、上方の有機相を100mLの水で洗浄する。水相を除去した後、過剰なテトラメチルジシロキサンは、カラムを用いた単段蒸留による分別法で分離する。蒸留工程は、110℃のオーバーヘッド温度に達したらすぐに停止する。
【0047】
ガスクロマトグラフィによる残留底部の分析は、71重量%のQM、3.3重量%のQ、1重量%のQおよび24.7重量%のトルエンの組成物ならびに9.15mmol/gのSiH含量を生じさせた。この分画は、それ以上精製せずに次の実施例2の反応に加え、そこでオレフィンをSiH結合に付着させた。
【実施例2】
【0048】
式Si[OSiMeテトラキス(ジメチルフェニルプロピルシロキシ)シランのポリオルガノシロキサンの調製
3,835gのα−メチルスチレンCH=CHCH−C(32.5mol)、710gの実施例1からの生成物(6.5mol M)は、スターラー、温度計、還流冷却器および注入装置を装備した加熱または冷却ジャケットを装備した6Lのフラットフランジ容器内に窒素ブランケット下で収容し、攪拌しながら90℃へ加熱する。この混合物に15重量%のPt含量を備えるテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt複合体からなる0.44gのPtの白金触媒(Silopren触媒Pt/S)を加える。
【0049】
この混合物は、放出された反応熱に起因して120℃に温度が上がる。実施例1からの2,022gの反応混合物(18.5mol M−基)の量の残りは、およそ1時間以内に計量する。反応混合物の温度は、計量速度を制御することによって、または加熱手段の温度を制御することによって140〜150℃に維持される。
【0050】
計量工程が完了した後、この後に140℃で3時間攪拌した。SiH含量のその後の測定は、0.03mmol/gを生じさせる。これは、99.2%のSiHに比較して変換率に相当する。過剰のメチルスチレンは、150℃の底部温度および<5mbarの真空で焼成することによって除去する。100℃未満へ冷却した後、白金触媒は25gの活性炭素Prekolit BKT 3および5gの水を加え、その後に1時間攪拌し、60℃および<30mbarの圧力下で水を除去することによって除去する。さらに30gの珪藻土Celite 499を加えた後、生成物は、Supra 300のフィルター層で被覆されたSeitz圧力ヌッチェに通して濾過する。
【0051】
収率:5,114g、かすかに黄色の生成物=使用したSiHシロキサンに比して90%。
【0052】
生成物の特性解析データ:
式:
【化9】

【0053】
Hoppler型落球粘度計で25℃で測定した粘度:25℃で40mPa.s、−40℃で4,117mPa.s、
屈折率n25=1.5020、密度:25℃で気体計によって測定して1.015g/mL。
【0054】
Mettler HR73ハロゲン乾燥装置を用いて決定した蒸発物含量:120℃で30分後に計量した1gについて1.6重量%。
【実施例3】
【0055】
前駆体TPhの調製
2,010gのテトラメチルジシロキサン(30mol)、1,200gの水、60gの37%塩酸および1,000gのトルエンを、スターラー、温度計、還流冷却器、注入装置および窒素ブランケットを装備した加熱/冷却ジャケットを備える6Lのフラットフランジ容器内へ収容する。1,586gのフェニルトリメトキシシラン(8mol)を強力に攪拌しながら計量する。反応のために、反応混合液は計量中に47℃へ加熱される。
【0056】
計量工程が完了した後に1時間にわたり攪拌する;スターラーのスイッチを切った後、急速に2相が形成される。低い方の水相を分離して廃棄する。上の方の有機相は100mLの水で洗浄する。水相を除去した後、過剰なテトラメチルジシロキサンは、蒸留による分別法で分離する。蒸留工程は、110℃のオーバーヘッド温度に達したらすぐに停止する。
【0057】
ガスクロマトグラフィによる残留底部の分析は、45重量%のTPh、21%のTPh、7.5重量%のTPhおよび26.5重量%のトルエン(SiH含量:6.2mmol/g)の組成物を生じさせ、これをそれ以上精製せずに次の実施例4の反応に加える。
【実施例4】
【0058】
メチルスチレン誘導体PheSi[OSiMeの調製
3,068gのα−メチルスチレン(26mol)、実施例1からの806.5gの生成物(5mol M)は、スターラー、温度計、還流冷却器、注入装置および窒素ブランケットを装備した加熱/冷却ジャケットを装備した6Lのフラットフランジ容器内に収容し、攪拌しながら90℃へ加熱する。この混合物に15重量%のPt含量を備えるテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt複合体からなる0.42gのPtの白金触媒を加える。この反応混合物は、放出された反応熱に起因して120℃に加熱される。実施例3からの2,419gの反応混合物(15mol M)の量の残りは、およそ1時間以内に計量する。反応混合物の温度は、計量速度を制御することによって、または加熱手段の温度を制御することによって140〜150℃に維持される。
【0059】
計量工程が完了した後、この後に140℃で3時間攪拌した。SiH含量の測定は、0.05mmol/gを生じさせる。これは、98.4%のSiHに比較して変換率に相当する。過剰のメチルスチレンは、150℃の底部温度および<5mbarの真空での蒸発によって除去する。100℃未満へ冷却した後、白金触媒は25gの活性炭素Prekolit BKT 3および5gの水を加え、その後に1時間攪拌し、60℃および<30mbarの圧力下で水を蒸発させることによって除去する。さらに30gの珪藻土Celite 499を加えた後、生成物は、Supra 300のフィルター層で被覆されたSeitz圧力ヌッチェに通して濾過する。
【0060】
収率:4,328gのかすかに黄色の生成物=使用したSiHシロキサンに比して91.5%。
【0061】
特性解析データ:
Hoppler型落球粘度計で25℃で測定した粘度:42mPa.s、
Hoppler型落球粘度計で−40℃で測定した粘度:11,300mPa.s、
屈折率n25=1.5210、蒸発物含量、Mettler HR 73ハロゲン乾燥装置、120℃で30分後に計量1g部分について1.6重量%、密度:25℃で気体計スピンドルによって測定して1.000g/ml。
【0062】
式:
【化10】

【実施例5】
【0063】
架橋シリコーンエラストマーについての重量膨潤度および透過性の測定
シリコーンエラストマーと接触する本発明による力または熱伝達液の適合性を試験するために、膨潤度および透過度を過酸化的に架橋した高粘性ポリジメチルシロキサンゴムの標準エラストマーである、Momentive Performance Materials社製のSiloprenHV 3/601と比較して調査した。
【0064】
このために、このゴムは、0.6重量%のVarox100%、すなわち2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシドを用いて175℃で10分間にわたり圧力下で架橋させ、後架橋させた、または200℃で4時間にわたり焼戻しした。下記のデータは、3.2 10−3の表面積を備える2mm試験プレート上で決定した:
膨潤度の測定:
直径が36.6mmを備える3つの検体(3回の試験)を架橋シリコーンエラストマーの2mm試験プレートからパンチングアイアンを用いて各々切削し、さらに追加の小さな穴を開けることによってサンプル1〜3を識別するためのマーキングを適用する。
【0065】
各検査対象の重量は、分析スケールで決定し、その密度は密度を決定するためのスケールを用いて水中での浮力を測定する工程によって決定する。検体は10〜20mmの液面で被覆する。液体体積は、全検体体積の約80倍である。
【0066】
液体試験媒体および基底温度を用いた接触時間後、検体を取り出し、セルロースパッド上で約10分間にわたり室温(25℃)へ冷却させるために放置する。除去後に1時間が経過する前に再び重量および密度を決定する。
【0067】
このプロセスでは、以下の式にしたがって重量膨潤度を計算した。
【0068】
重量膨潤度は:
(wt.before− wt.after100/wt.before
によって%で計算する。
【0069】
組成物Tphe(PD5)の化合物は、測定のために追加して提供された。化合物は以下の特徴を有した:
粘度etakin=4 cStまたは[mm/s] (20℃);沈降点−102℃、沸点:1mmHg(Torr)で110℃、密度0.924g/mL(20℃)、n20=1.437。
【表1】

【0070】
Alc=C−アルキル残基(例えばSilsoft034 INCI:カプリリルメチコン)
Sigma Aldrich社製品番号 33.077−9 n20=1.4680 D=0.838 [g/mL]。
【0071】
本実験は、本発明によって使用されたポリオルガノシロキサン類がグリコールと比較して軽度に増加した重量膨潤度を示すことを証明している。しかし、膨潤度は、鉱油または例えばTpheなどの化合物の膨潤度より低い。
【0072】
透過性の決定:
透過性は、DIN 53532に記載の式にしたがって、以下では「バポメーター(vapometer)」と呼ぶRycobel社製のアルミニウム製テスターを用いてFP値として決定した。架橋シリコーンエラストマーの各個別サンプルの試験表面積は31.7cm、厚さは約2mm、実験実施期間は42日間であった。
【0073】
12時間にわたる23℃および50%の空気湿度に設定した気候チャンバ内のシリコーンエラストマーからの検体の規定の予備状態調節後、上述した寸法を備える検体プレートを各々1つのバポメーターに取り付け、後者を測定のために規定温度(この場合には140℃)および貯蔵時間に設定した循環式乾燥キャビネット内に配置した。測定後、140℃に加熱した循環キャビネットからバポメーターを取り外した。シリコーンエラストマーの検体を23℃および50%の空気湿度に設定した気候チャンバ内で1時間にわたり冷却させるために放置し、検体の重量変化を決定した。
【0074】
計算は、追加の修正を行わずにDIN 53532に規定された式にしたがって実施した。
【0075】
FP=k.10/A、単位[g(m/d]
簡易化k=(m−m)/(t−t)、すなわちkは、質量−時間図における直線の勾配に一致する。
【0076】
A=単位[cm]での表面積、m=開始時間tでの単位[g]での初期質量、
m=単位[日間]または[日]での試験時点後の接触後の質量
【表2】

【0077】
Momentive社によるSilsoft(登録商標)034
バポメーターは14日後にはもはや何の液体も含有していなかった、つまり拡散は容量流れを決定するには高過ぎた。
【0078】
バポメーターは2日後にはもはや何の液体も含有していなかった、つまり拡散は容量流れを決定するには高過ぎた。
【0079】
これらの実験は、140℃でのFP値として測定された透過度が、本発明によって使用されたポリオルガノシロキサン類を用いた場合は、グリコールまたは実施例4と類似の構造を有する、しかしMはMeSiO1/2−を表す式Tpheのシロキサンと接触した場合より小さいことを証明している。これは驚くべきことに、当業者であれば、グリコールに比較して高い膨潤度のために、本発明による化合物についても、例えば化合物Tpheの状況において典型的に測定できるような高い透過値FPを予測することができる。
【実施例6】
【0080】
本発明による化合物の使用および化粧品調製物中のそれらの適合性を以下の組成物を用いて例示する:
例えばSR1000などのMQタイプのポリメチルシロキサン樹脂を用いた耐水性マスカラ組成物
【表3】

【実施例7】
【0081】
化粧品調製物:延長した接着時間を備える、いわゆる「フルオロシリケート(INCI)」を含有するマスカラ
【表4】

【実施例8】
【0082】
化粧品調製物:「クリームトゥパウダー(cream−to−powder)」メイクアップ
【表5】

【実施例9】
【0083】
化粧品調製物:ワックス様リップグロス調製物
【表6】

【実施例10】
【0084】
化粧品調製物:リキッドカラーリップスティック
【表7】

【実施例11】
【0085】
化粧品調製物:リキッドリップスティック
【表8】

【実施例12】
【0086】
顔料を備えるリップスティック組成物
【表9】

【0087】
実施例6〜12は、実施例2および4の化合物などの化合物が例えばINCI名フェニルプロピルジメチルシロキシシリケートの下に列挙された化合物Silshine(登録商標)151などの化粧品成分と、化粧上の特性に関する明白な欠点を受容する必要を伴わずに、化粧品成分との混和性に関して置換できることを証明している。実施例4からの化合物の高い屈折率は、特に有益な光沢作用をもたらす。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(I)
(式中、
a=2〜6、
b=0〜10、
c=0〜3、
d=0〜2、
c+d=1〜2、
a/(c + d) > 2
式中、M、D、T、Qは以下、
【化1】

を表し、および
Rは:
1個以上の酸素原子、1個以上のハロゲン原子ならびに1個以上のシアノ基を含むことのできる30個までの炭素原子を備える脂肪族および/または芳香族残基からなる群から選択され、
ただし、M中の残基Rの内の少なくとも1つは炭素原子を介してケイ素に結合しており、M中の残基Rの内の少なくとも1つは少なくとも2個の炭素原子を含む)
のポリオルガノシロキサン類の力および/または熱伝達液としての使用。
【請求項2】
M中の残基Rの内の少なくとも1つは、以下:
アリール、
−CH−CHR−R(式中、
は、水素またはC〜C−アルキルである、および
は、Rと同一の意味を有する)、
−CR=CH−R(式中、
は、Rと同一の意味を有する、
は、Rと同一の意味を有する、または水素である)
からなる群から選択される式Rの基を表す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサン類は、式(Ia)または(Ib):
2−61−2 (Ia)、
2−60−31−2 (Ib)、
(式中、M、D、TおよびQは、上記に規定したとおりである)
を有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記シロキサン単位の比率は、M:Q=4〜1:1またはM:T=3〜1:1である、請求項ないし3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
式(Ia)または(Ib)の前記ポリオルガノシロキサン類は、以下の構造:
Q (Ia)、
T (Ib)、
を有する、請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
全残基Mは、式Rの少なくとも1つの基を含む、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
全残基Mは、式Rの正確に1つの基を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
M中の全残基Rは、炭素原子を介してケイ素に結合している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリオルガノシロキサン類は以下:
【化2】

からなる群から選択される、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリオルガノシロキサン類は、25℃で100mPa.s未満の粘度を有する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記ポリオルガノシロキサン類は、360〜2,000g/molの数平均Mを備える(標準物質としてのポリスチレンに対してゲル透過クロマトグラフィによって決定した)分子量を有する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
液体封入式マウント内の力伝達液としての、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン類の使用。
【請求項13】
化粧品組成物の成分としての、請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)のポリオルガノシロキサン類の使用。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン類を含有する液体封入式マウント。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)のポリオルガノシロキサン類を含有する化粧品組成物。
【請求項16】
式:
(I’)
(式中、
a=2〜6、
b=0〜2、
c=0〜2、
d=0〜2、
c+d=1〜2、
a/(c + d) > 2
式中、
M、D、T、Qは以下、
【化3】

を表し、および
Rは:
1個以上の酸素原子、1個以上のハロゲン原子ならびに1個以上のシアノ基を含むことのできる30個までの炭素原子を備える脂肪族および/または芳香族残基からなる群から選択されるが、
ただし、M中の残基Rの内の少なくとも1つは炭素原子を介してケイ素に結合しており、残基の内の少なくとも1つはアリールアルキルまたはアリールアルケニルである)
のポリオルガノシロキサン類。
【請求項17】
請求項16に記載のポリオルガノシロキサン類を調製するための方法であって:
i)式:
(II)
(式中、a、b、c、dは上記に規定したとおりであり、M、D、T、Qは以下、
【化4】

を表し、およびRは上記に規定したとおりである)の化合物を
化合物
CH=CHR−R(式中、RおよびRは上記に規定したとおりである)と、または
化合物
CR≡CR(式中、RおよびRは上記に規定したとおりである)と、
ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させる工程、または
ii)式:
(II)
(上記に規定したとおりである)の化合物を
式HO−R(式中、Rは上記に規定したとおりである)の化合物を触媒の存在下で反応させる工程であって、その反応中にM中では水素放出を伴ってR−O−Si基が形成される工程、
または
iii)請求項1に記載した単位M、D、T、Qの前駆体に該当し、かつ、少なくとも1つのR基(Rは上記に規定したとおりである)を含む、幾つかのハロゲンおよび/またはアルコキシシラン類の加水分解またはアルコール分解)
を含む、請求項16に記載のポリオルガノシロキサン類を調製する方法。


【公表番号】特表2012−520367(P2012−520367A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553469(P2011−553469)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053180
【国際公開番号】WO2010/103103
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511220393)モーメンテイブ・パーフオーマンス・マテリアルズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】