説明

新規な抗ウイルス剤

本発明は、
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列からなる特定のタンパク質及び
‐前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される組成物の、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための使用について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にヒト免疫不全ウイルスHIVを指向する新規な抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome;後天性免疫不全症候群)は、最大のヒト流行病の1つに相当する。AIDSは実は単一の疾患ではなく、日和見感染に関連する一連の疾患である。これら日和見感染は、病気の個体の免疫防御の減少が原因で、生体内で発症し得る。
AIDSは、1980年代に単離された[Barre-Sinoussi Fら、1983, Science, May 20;220(4599):868-71; de Clavelら、Science, 1986 Jul 18; 233(4761):343-6]、レトロウイルス科レンチウイルス属ヒト免疫不全ウイルス(Human Immune Deficiency Virus、HIV)による感染に起因する。
2つのタイプのHIVウイルス:HIV1及びHIV2ウイルスが存在する。
HIVは、CD4抗原提示細胞:CD4+ Tリンパ球、マクロファージ、樹状細胞及び大脳小グリア細胞に感染することにより、免疫系を衰弱させる。獲得免疫応答を「調節する(coordinate)」CD4+ T細胞の感染は、疾患の発症に決定的である。
【0003】
HIV感染は、徐々に互いに続けて起こる幾つかの段階:
1.症状を伴う(50 〜 75% の事例)か又は伴わない一次感染;これは汚染後の血清変換段階である。
2.全身性リンパ節障害の状態を時々伴う潜伏段階、
3.ヒト免疫不全ウイルス感染の軽い症状を伴う段階、
4.重度の免疫抑制又はAIDSの全身症状状態の段階
において発症する。
種々の段階の間、CD4 T細胞数は、感染又は非感染のCD4 T細胞の破壊が原因で、減少に歯止めがかからない。
感染細胞の死は、それら自身のタンパク質をもはや産生できないリンパ球の細胞機構の転換及び新しく形成されたウイルスが去る時の膜完全性の破壊に起因する。
さらに、感染細胞は、それらの膜表面にて、感染リンパ球に付着する健常な免疫細胞により認識されるタンパク質であるウイルスタンパク質(Env複合体)を露出する。この相互作用は、アポトーシスの作用をもたらし、健常な細胞の死を誘導する。
現在まで、HIV感染を治癒するための治療は存在しない。事実、HIV感染血清陽性の個体は、生涯血清陽性のままである。
しかしながら、生体内でのウイルスの発達をブロックし、ウイルスの存在及びその増殖のバランスを維持し、機能的な免疫系を維持することのできる治療は多数存在する。
これら治療は、ウイルスの生活環における主要なステージを阻害することを目的として、HIV血清陽性患者に提供された。
HIV感染は、次のステージを含む:
-宿主細胞とウイルスとの融合及び侵入、
-逆転写酵素によるウイルスRNAからDNAへの逆転写、
-インテグラーゼによるウイルスゲノムの宿主細胞ゲノムへの組込み、
-細胞機構及びトランス活性化タンパク質Tatを用いるウイルス遺伝子の転写、
-ウイルスタンパク質の合成及びウイルスプロテアーゼによる成熟化、
-新しいウイルスの形成。
【0004】
抗レトロウイルス剤は、進歩しながら構築される、HIVに対する治療上の武器を構成する。およそ20の抗レトロウイルス薬が市場で入手でき、それらの目的は、複製に必要なHIV酵素を阻害することか、又は標的細胞への侵入のメカニズムをブロックすることのいずれかによる、異なるメカニズムで妨害することである。
HIV感染の治療に一般に用いられる抗ウイルス剤は、逆転写酵素又はウイルスプロテアーゼを標的とする。
逆転写酵素は、種々のクラスの分子:ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター (NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(NNRTI)及びヌクレオシド類似体逆転写酵素インヒビター (NARTI)により阻害できる。
NRTIは、1985年にHIVの治療に用いられ始めた最初の抗ウイルス剤であった。それらは、特にジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)、アバカビル(ABC)及びエムトリシタビン(FTC)を含む。改変NRTIも存在し、NARTIはテノホビルに相当する。
逆転写酵素による逆転写の不正確性により生成される、ウイルスのゲノム変異は、NRTIへの耐性をHIVに与える。交差耐性は、幾つかのNRTI同士の間で可能である。
NNRTIは、HIV逆転写酵素の強力かつ非常に選択的なインヒビターであるが、HIV-1だけを標的とする。ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツは、3つの最も用いられるNNRTIである。
プロテアーゼは、両方のタイプのウイルスに有効である幾つかの強力な分子により阻害でき、その効果により、その他の標的細胞に感染できないウイルスが形成される。これらの分子のうち、アタザナビル、ホスアンプレナビル、ロピナビル、ダルナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サクイナビル又はチプラナビルを挙げることができる。
ウイルスの侵入を阻害することを狙いとするその他の抗ウイルス剤(侵入インヒビター)、宿主細胞へのウイルスゲノムの組込みを阻害することを狙いとするその他の抗ウイルス剤(インテグラーゼインヒビター)又はウイルスタンパク質の成熟化のインヒビター(成熟化インヒビター)もまた市場に出ている。
【0005】
ヌクレオシド(NRTI)、非ヌクレオシド(NNRTI)インヒビター及び/又は抗プロテアーゼ剤(IP)を組み合わせる三剤療法又は多剤療法は、多数のHIV血清陽性患者において、検出可能閾値よりも低くウイルス負荷を減少させる。この効力により、HIV感染に関連する死亡率の非常に著しい減少が可能となっている。不幸にも、抗ウイルス剤に耐性を示す遺伝子型が80%の患者において見られたほか、より不穏なことには、45.5%のウイルス集団がNRTI/IPの組合せに、26%が3つの抗HIVクラスの組合せに耐性であった(Tamaletら、AIDS. 2003 Nov 7;17(16):2383-8)。
この発見は、治療中の患者の70%において観察され、悪い観察結果(observance)及び計画外の中止をもたらし、しばしば耐性出現の原因となる、三剤療法の長期投与に関連する副作用(脂肪萎縮、リポジストロフィー、高トリグリセリド血症(hypertriglycidaemia)、高コレステロール血症、神経症など)の観点から特別な関心事である。
副作用がより少なく、交差耐性プロフィールを示さないより制限の少ない治療の開発は、したがって、多数の薬剤が現在市場に出ているにも拘らず、依然として最優先事項である。この目的のために、HIV複製サイクルにおけるその他のステージを標的とすることが必要である。
【0006】
HPBPタンパク質(ヒトホスフェート結合タンパク質)は、ヒトパラオキソナーゼの構造研究中に偶然発見された血漿タンパク質である[Morales, R.ら、 (2006) Structure 14: 601-9]。
HPBPのアミノ酸配列は、非常に保存されたN末端のために、DINGタンパク質として知られるタンパク質のファミリーに関連する[Diemer, Hら、(2008) タンパク質s 71: 1708-20]。DINGタンパク質は、真核生物に普遍的であるが、驚くべきことにヌクレオチドデータベースに存在しない [Berna, AFら、(2008) Int J Biochem Cell Biol 40: 170-5]。
アテローム性動脈硬化症の進行に明らかに関与するタンパク質であるヒトパラオキソナーゼと生理的に関連し[Shih, DMら (1998) Nature 394: 284-7]、無機ホスフェートに結合できるので、HPBPは、アテローム性動脈硬化症に関与し、心臓血管疾患のリスクマーカーとして用いられている(WO 2005/042572)。
HPBPの構造は解明されており[Morales, R.ら.(2006) Structure 14: 601-9]、このタンパク質が無機ホスフェート(iP)に結合できることを示している。
HPBP及びパラオキソナーゼPON-1は密接に会合し、この相互の会合は、それらの互いの安定化をもたらす [Rochu Dら. Toxicology. 2007 Apr 20;233(1-3):47-59, Rochu D.ら. Biochim Biophys Acta. 2007 Jul;1774(7):874-83, Rochuら. Biochem Soc Trans. 2007 Dec;35(Pt 6):1616-20]。
現在までに、ヒトHPBPタンパク質のヌクレオチド配列は単離されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、ウイルス感染及び炎症性疾患と戦うための新しい治療を提供することである。
本発明の別の目的は、軽減された副作用を示し、患者によりよく許容される新しい抗ウイルス医薬組成物を提供することである。
本発明の目的の1つは、ウイルスのサイクルのその他の標的に作用する新しい抗ウイルス組成物を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
‐配列番号5のアミノ酸配列を含む特定のタンパク質、
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される組成物であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する組成物の、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための使用について記載する。
【0009】
本発明は、
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される組成物の、
‐ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造であるが、但し、炎症に関連する病変に関しては、前記要素は配列番号1〜3のタンパク質のいずれの1つでもない製造又は
‐ウイルス感染への感受性の、特にインビトロにおける測定方法の実行
のための使用に関する。
【0010】
有利な実施態様では、本発明は、
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質、
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される組成物であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する組成物の、ウイルス感染に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための使用に関する。
【0011】
本発明の有利な実施態様は、
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号5、配列番号7及び配列番号9
から選択されるアミノ酸配列により構成される、前記に規定される組成物の使用について記載する。
【0012】
本発明の有利な実施態様は、
‐配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質、
‐配列番号6の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される、前記に規定される組成物であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する組成物の使用について記載する。
【0013】
本発明の有利な実施態様は、
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号6、配列番号8及び配列番号10
から選択されるアミノ酸配列により構成される、前記に規定される組成物の使用について記載する。
【0014】
本発明の有利な実施態様は、
‐配列番号1のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質、
‐配列番号1の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される、前記に規定される組成物であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する組成物の使用について記載する。
【0015】
本発明の有利な実施態様は、
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2及び配列番号3
から選択されるアミノ酸配列により構成される、前記に規定される組成物の使用について記載する。
【0016】
本発明の有利な実施態様は、
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2及び配列番号3
から選択されるアミノ酸配列により構成される、前記に規定される組成物の、ウイルス感染に関連する疾患の治療に関する薬剤の製造のための使用について記載する。
【0017】
本発明は、HPBPタンパク質、より具体的には配列番号5の配列を含むタンパク質の抗ウイルス及び抗炎症特性についての本発明者らによる予想外の証明に基づく。
配列番号5の配列は、下記に規定される配列番号1の配列の最初の50アミノ酸に相当する。
配列番号6の配列は、下記に規定される配列番号1の配列の最初の260アミノ酸に相当する。
より正確には、本発明は、特に転写因子C/EBPβを必要とするウイルス遺伝子又は炎症関連遺伝子の転写に対するHPBPタンパク質又はそのフラグメントの阻害作用についての本発明者らによりされた証明に基づく。
【0018】
本発明において、「特定のタンパク質」により、合成が生体内で一般に外部からの人の介入なくして起こる任意のタンパク質、ペプチド、タンパク質若しくはペプチドのフラグメント又は既知のものが意味され、自然環境から単離される。
【0019】
HPBPタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列により規定できる。HPBPの三次元構造を図1に示す。
【0020】
本発明において、「特定のタンパク質に相同なタンパク質」は、特定のタンパク質由来のタンパク質に相当し、該由来のタンパク質は、前記特定のタンパク質の配列の1つ又はそれより多いアミノ酸の変異、欠失又は付加により得られる。
より具体的には、「特定のタンパク質に相同なタンパク質」は、本発明において、配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示す前記相同なタンパク質であり、それが以下の配列:
D-I-N-G-G-G-Xn-F-G(ここで、Xは20の天然アミノ酸のいずれか1つを表し、nは約30〜約40までで変化し、特に40である)
を有するという条件で、1つ又はそれより多いアミノ酸の置換により得られるタンパク質として規定される。
タンパク質TatとHPBPタンパク質との相互作用についてのデータは、以下の実施例の部分に提示する。
これらのデータから、当業者は、HPBP/Tatの会合を可能にするのに最低限必要なアミノ酸を見出すことができる。
【0021】
本発明において、「ウイルス感染」により、ウイルス及び生体における(及び生体を犠牲にした)このウイルスの増殖により誘発された任意の疾患を意味する。ウイルス感染の測定は、一般に、感染した生体における特異的なウイルスマーカーの検出により行われる。例えば、HIVについて、マーカーp24は感染の証拠である。HIVはまた、ウイルス負荷、すなわちウイルスRNA量を測定することにより検出できる。
「炎症」により、本発明において、とりわけ血管拡張を含む、生体の一般的な免疫防御反応を意味する。数あるメカニズムのなかでも、炎症は、IL-6、TNF-α又はケモカインMCP-1のような炎症促進因子の分泌により特徴付けられる。炎症は、上述の炎症促進因子のアッセイにより測定できる。
本発明において、「炎症に関連する病変」は、慢性関節リウマチ、自己免疫疾患及び特に狼瘡、より具体的には全身性エリテマトーデス、食物アレルギー又は気道のアレルギー、特に花粉アレルギー、シェーグレン症候群、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、多発性筋炎、リウマチ性多発筋痛症、変形性関節症、敗血症性関節炎又は血管増生(vascularity)に代表され得る。
【0022】
配列番号4のアミノ酸配列で表されるセントジョーンズワートタンパク質p27SJは、配列番号1の配列と71%の配列相同性を示すので、本発明から除外される。
用語「転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する」は、C/EBPβタンパク質単体又はタンパク質Tat単体との相互作用があるか、或いはC/EBPβタンパク質及びTatタンパク質との相互作用があることを意味する。上述の用語は、したがって、次のように解釈できる:「転写因子C/EBPβと相互作用するか、又はウイルスタンパク質Tatと相互作用するか、或いは転写因子C/EBPβ及びウイルスタンパク質Tatと相互作用する」。
【0023】
「転写因子C/EBPβと相互作用する」により、本発明において、HPBPタンパク質のタンパク質、相同体又は変異体と転写因子C/EBPβとの直接結合、化学結合、静電結合又はイオン結合があることを意味する。この相互作用は、当業者に公知の標準的手法、例えば免疫共沈降法、或いはまた下記に規定されるELISA試験によって明らかにでき、前記手法は制限的でない。
「Tatタンパク質と相互作用する」によって、本発明において、HPBPタンパク質のタンパク質、相同体又は変異体とTatタンパク質との直接結合、化学結合、静電結合又はイオン結合があることを意味する。この相互作用は、当業者に公知の標準的手法、例えば免疫共沈降法又は下記に規定されるELISA試験によって明らかにでき、前記手法は制限的でない。
【0024】
C/EBPファミリー(CCAATエンハンサー結合タンパク質)は、多数の「ロイシンジッパー」型転写因子により構成される。これら因子は、CCAATモチーフに富んだDNAモチーフに結合できるタンパク質であり、前記CCAATモチーフは、非常に多くの遺伝子のプロモーター及び該遺伝子の発現を調節する配列中に存在する。これら因子は、肝細胞、脂肪細胞及びマクロファージの特化された機能に重要な役割を担う[Li H,ら、Cell Mol Immunol; 2007 Dec; 4(6):407-18]。
CCAAT型モチーフは、レトロウイルスのウイルス遺伝子プロモーター又は末端反復配列(LTR)のいずれかに存在する。CCAATサイトの存在及び因子C/EBPβの結合は、これら調節配列の制御下に、前記遺伝子の発現の誘導を特にもたらす。ウイルスの例として、HIVウイルス、肝炎ウイルス、特にB型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルスAd-36を含むアデノウイルス及びヘルペスウイルスを挙げることができるが、制限的でない[Kinoshita SM, ら、Proc Natl Acad Sci USA; 2008 Sep 30;105(39):15022-7; Wooldridge TRら、Virology Volume 374, Issue 2, 10 May 2008, Pages 371-380; Ralph WM Jrら; J Gen Virol. 2006 Jan;87(Pt 1):51-9; Rogers PMら; Int J Obes (Lond). 2008 Mar;32(3):397-406]。
NF-IL6 (核因子IL-6)とも呼ばれるC/EBPβは、免疫応答及び炎症応答に関与する前記遺伝子の調節に重要な役割を担い、特に炎症促進性のIL-6遺伝子のプロモーターのIL-1応答因子と特に相互作用する。C/EBPβはまた、TNFα遺伝子又は単球走化性因子MCP-1の発現を誘導できることも示されている。
【0025】
配列番号2の配列は、ヒトの血漿から単離された、ホスフェート結合特性を有するヒトHPBPタンパク質のアミノ酸配列に相当する。配列番号2の配列からなる規定されたアミノ酸配列を有するHPBPの精製のためのプロトコルは、国際出願WO 2005/042572に詳説される。この精製方法は、ヒトパラオキソナーゼPON-1との共精製に基づく。HPBP/PON-1複合体からのHPBPの精製は、Renaultら[Renaultら、J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2006 May 19;836(1-2):15-21]に記載されるプロトコルに従って行われる。詳細なプロトコルは、下記の実施例の節に記載する。
配列番号3の配列は、ヒトHPBPタンパク質と約90%の同一性を示し、ホスフェート結合特性、すなわち無機ホスフェート結合特性を有するタンパク質のアミノ酸配列に相当する。
配列番号7の配列は、配列番号2の配列の最初の50アミノ酸に相当する。
配列番号8の配列は、配列番号2の配列の最初の260アミノ酸に相当する。
配列番号9の配列は、配列番号3の配列の最初の50アミノ酸に相当する。
配列番号10の配列は、配列番号3の配列の最初の260アミノ酸に相当する。
【0026】
ホスフェート結合特性は、以下の放射活性ホスフェート標識化検定により測定される:
タンパク質をニトロセルロース膜に結合させる(例えばドットブロット吸引)。膜を次いで放射活性ホスフェート(32P, 10mCi/mL, Amersham-Biosciences) 2Mを含む50 mM Tris緩衝液 pH 8.0と共にインキュベートする。膜を次いで放射活性ホスフェートを含まない緩衝液で2回洗浄し、このようにして洗浄された膜を放射能写真フィルムとおよそ45分間接触させる。フィルムを次いで現像し、フィルムからの印刷物によりHPBPのホスフェート結合能を測定することが可能になる。
【0027】
別の実施態様によれば、上記の使用において、前記病変は、遺伝子転写に転写因子C/EBPβを必要とするウイルス、特にHIVウイルス、肝炎ウイルス又はヘルペスウイルスにより引き起こされる。
ウイルス遺伝子の転写は、それらの増殖に必要である。ウイルスのゲノムは、ウイルスに特異的なタンパク質(エンベロープタンパク質、酵素など)、特に、HIVについてTat、HSVウイルスについてICP27又はHBV Xタンパク質のような強力なトランス活性化特性を有するタンパク質の合成に必須の遺伝子を含む。
本発明において、「肝炎ウイルス」により、任意の急性又は慢性的な肝臓の炎症を誘導するウイルスを意味する。先行技術は、肝炎の原因となる7つのウイルス:HAV、HBV、HCV、HDV、HEV、HFV及びHDVウイルスについて記載している。
【0028】
本発明の別の有利な実施態様は、前記HIVウイルスがHIV-1又はHIV-2ウイルスである前記に規定される組成物の使用について記載する。
本発明において、HIV-1ウイルスは、M、O又はNグループ及びMグループのサブグループ若しくはクラス:A、B、C、D、F、G、H、J及びKにより表される。
逆転写酵素の不正確性が原因の変異ウイルス株及び(2つの区別可能なウイルス株に感染した細胞から生じる)雑種株は、本発明に包含される。
変異ウイルス株はまた、一般に用いられる治療への耐性をもたらすことができる;それらは所謂耐性株である。
【0029】
本発明の有利な実施態様は、前記組成物が約0.1 nM〜約1mMまで、有利には約10nM〜約100 nMまで、特に約30 nM〜約70 nMまで、優先的には約50 nMの用量で投与される前記に規定される使用について記載する。
HPBPタンパク質は、38,000 Da (38 kDa)の質量を有する。よって、5 Lの血液容量を平均して有する成人について、本発明による組成物は、約0.3 μg/kg〜約1mg/kgまで、特に約30 μg/kg〜約300 μg/kgまで、優先的には約90 μg/kg〜約210 μg/kgまで、より優先的には150 μg/kgの用量で投与され得る。
本発明の組成物は、特に静脈内経路、皮下経路、全身経路、浸潤による局所経路によって、又は経口的に投与され得る。
治療は、連続的又は逐次的、すなわち連続的及び任意に一定の様式で、又は不連続的な形態で、1日1回若しくはそれより多い回数経口投与若しくは注入によって、連続的に又は投与の間に処置しない期間を有して任意に数日間繰り返して、前記組成物を送達する潅流によって行われ得る。
【0030】
有利には、本発明は、抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物及び/又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物を組み合わせる前記に規定される組成物の使用について記載する。
「抗ウイルス特性を有する化合物」により、本発明において、ウイルスの生活環に必要な少なくとも1つの事象を部分的に又は完全に阻害できる任意のタンパク質化合物又は化学合成から生じる化合物を意味する。
ウイルスの生活環により、本発明において、宿主細胞に感染してから新たなウイルスを産生するまでの、ウイルスの寿命における全てのステージを意味する。
非限定的な例として、本発明による抗ウイルス特性を有する化合物は、HIVの関係において:細胞融合及びウイルス侵入のプロセス、逆転写のプロセス、宿主細胞ゲノムへのウイルスゲノムの組込みのプロセス、ウイルス遺伝子の転写のプロセス、ビリオン形成のプロセス又は新たに形成されたビリオンの種々の構成要素の成熟のプロセスを阻害できる。
「抗炎症特性を有する化合物」により、本発明において、任意の天然化合物又は化学合成から生じる化合物を意味し、これは、前記に規定される炎症応答を確立するのに必要な少なくとも1つの事象を部分的に又は完全に阻害できる。
【0031】
本発明の別の好ましい実施態様は、前記抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物が、抗プロテアーゼインヒビター、特にリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル、逆転写酵素インヒビター、特にAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツ、融合インヒビター、侵入インヒビター並びにインテグラーゼインヒビターから選択される上述の使用について記載する。
本発明による組成物はまた、下記の表1に列挙される抗ウイルス組成物と組み合わせて用いることができる。
【0032】
【表1−1】

【0033】
【表1−2】

【0034】
本発明の別の好ましい実施態様は、前記抗炎症特性を有する化合物が、合成グルココルチコイド:短時間作用型 (プレドニゾン)、中時間作用型 (パラメタゾン)、長時間作用型(ベタメタゾン)又は非ステロイド抗炎症剤、例えばサリチレート(アセチルサリチル酸、メチルサリチレート又はジフルニサール)、アリールアルカン酸(インドメタシン、スリンダク又はジクロフェナク)、2-アリールプロピオン酸(プロフェン)(イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン又はケトロラク)、N-アリールアントラニル酸(フェナム酸)(メフェナム酸)、オキシカム(ピロキシカム又はメロキシカム)、コキシブ(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ又はエトリコキシブ)或いはスルホンアニリド(ニメスリド)から選択される上述の使用について記載する。
【0035】
本発明の別の有利な実施態様はまた、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための前記に規定される組成物の使用について記載し、前記組成物及び前記抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物又は抗炎症特性を有する抗ウイルス化合物は、同時に用いられるか、別々に用いられるか、又は経時的に分配して用いられる。
本発明において、前記組成物は、抗ウイルス又は抗炎症特性を有する抗ウイルス化合物と、約10/1〜約1/10、優先的には約5/1〜約1/5、より特定的には約2/1 〜約1/2、特に1/1の比で組み合わせられる。
【0036】
本発明はまた、
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質、
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成されるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための組成物について記載する。
【0037】
本発明はまた、前記に規定される少なくとも1つの要素と抗ウイルス特性及び/又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物とを含む組合せ製品について記載する。
本発明はまた、前記に規定される少なくとも1つの要素と抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物とを含む組合せ製品について記載する。
【0038】
本発明の有利な実施態様は、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療のための上述の組合せ製品について記載し、前記組成物及び前記抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物は、特に同時に用いられるか、別々に用いられるか、又は経時的に分配して用いられる。
本発明の有利な実施態様は、ウイルス感染に関連する病変の予防又は治療のための上述の組合せ製品について記載し、前記組成物及び前記抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物は、特に同時に用いられるか、別々に用いられるか、又は経時的に分配して用いられる。
【0039】
本発明はまた、
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する要素と、
少なくとも1つの抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物及び/又は少なくとも1つの抗炎症特性を有する化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる医薬組成物について記載する。
本発明はまた、
*‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する要素と、
*抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの抗ウイルス化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる医薬組成物について記載する。
【0040】
好ましい実施態様において、本発明は、前記特定のタンパク質が以下のアミノ酸配列:
配列番号5、配列番号7及び配列番号9
から選択されるアミノ酸配列により構成される前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0041】
本発明の別の好ましい実施態様はまた、
‐配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号6の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する要素と、
抗ウイルス特性及び/又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる前記に規定される医薬組成物について記載する。
本発明の別の好ましい実施態様はまた、
*‐配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号6の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する要素と、
*抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0042】
好ましい実施態様において、本発明は、前記特定のタンパク質が以下のアミノ酸配列:
配列番号6、配列番号8及び配列番号10
から選択されるアミノ酸配列により構成される前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0043】
本発明の別の好ましい実施態様は、
‐配列番号1のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号1の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する要素と、
抗ウイルス特性及び/又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる前記に規定される医薬組成物について記載する。
本発明の別の好ましい実施態様は、
*‐配列番号1のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号1の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素であるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する要素と、
*抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0044】
好ましい実施態様において、本発明は、前記特定のタンパク質が以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2及び配列番号3
から選択されるアミノ酸配列により構成される前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0045】
本発明において、前記医薬組成物は、抗ウイルス特性を有する化合物と、約10/1〜約1/10、優先的には約5/1〜約1/5、より特定的には約2/1 〜約1/2、特に1/1の比で組み合わせられる。
5 Lの血液容量を平均して有する成人について、本発明による組成物は、約0.3 μg/kg〜約1 mg/kgまで、特に約30 μg/kg〜約300 μg/kgまで、優先的には約90 μg/kg〜約210 μg/kgまで、より優先的には150 μg/kgの用量で投与され得る。
【0046】
本発明において、前記医薬組成物は、抗炎症特性を有する化合物と、約10/1〜約1/10、優先的には約5/1〜約1/5、より特定的には約2/1〜約1/2、特に1/1の比で組み合わせられる。
5 Lの血液容量を平均して有する成人について、本発明による組成物は、約0.3 μg/kg〜約1mg/kgまで、特に約30 μg/kg〜約300 μg/kgまで、優先的には約90 μg/kg〜約210 μg/kgまで、より優先的には150 μg/kgの用量で投与され得る。
【0047】
本発明において、前記医薬組成物は、抗ウイルス特性を有する化合物及び抗炎症特性を有する化合物と、約10/1/1〜約1/10/10、優先的には約5/1/1〜約1/5/5、より特定的には約2/1/1 〜約1/2/2、特に1/1/1の比で組み合わせられる。
5 Lの血液容量を平均して有する成人について、本発明による組成物は、約0.3 μg/kg〜約1mg/kgまで、特に約30 μg/kg〜約300 μg/kgまで、優先的には約90 μg/kg〜約210 μg/kgまで、より優先的には150 μg/kgの用量で投与され得る。
【0048】
本発明による医薬組成物は、任意に機能性食品用組成物又は化粧品用組成物であり得る。
【0049】
本発明の別の有利な実施態様は、前記病変がHIVウイルス、肝炎ウイルス又はヘルペスウイルス感染に起因する前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0050】
別の有利な実施態様において、本発明は、前記HIVウイルスがHIV-1又はHIV-2 ウイルスである前記に記載される医薬組成物について記載する。
【0051】
本発明の別の有利な実施態様は、前記抗ウイルス化合物が
抗プロテアーゼインヒビター、特にリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル並びに
逆転写酵素インヒビター、特にAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツ
から選択される前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0052】
本発明の別の有利な実施態様は、前記抗炎症化合物が合成グルココルチコイド、特にプレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン又はパラメタゾン、非ステロイド抗炎症剤、特にサリチレート、例えばメチルサリチレート及びジフルニサール、アリールアルカン酸、例えばインドメタシン、スリンダク及びジクロフェナク、2-アリールプロピオン酸 (プロフェン)、例えばイブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン及びケトロラク、N-アリールアントラニル酸(フェナム酸)、例えばメフェナム酸、オキシカム、例えばピロキシカム及びメロキシカム、コキシブ、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ又はエトリコキシブ並びにスルホンアニリド、例えばニメスリドから選択される前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0053】
本発明はまた、
- 生物学的サンプルにおいて、前記に規定される特定のタンパク質の量を測定する工程と、
- 前工程で得られた前記量を、少なくとも1つの参照サンプルにおける特定のタンパク質の量と比較する工程と、
- 前記比較から、ウイルス感染への耐性を測定する工程と
を含む、個体に由来する生物学的サンプルにおいて、特にインビトロでのウイルス感染への耐性の診断方法について記載する。
【0054】
「ウイルス感染への耐性」により、本発明において、ある個体がウイルスに感染しない能力を意味する。事実、通常の条件下で、最初にウイルスが存在する状態になったとき(一次感染)、非耐性の個体は通常該ウイルスに感染している。ある珍しい事例では、ある個体が一次感染に耐性である。すなわち、個体が最初にウイルスに接触する状態になったときでも、後者は該個体を感染させることができない。
【0055】
本発明において、「感染」により、宿主細胞の細胞機構を有利に転じさせる、すなわち新しいウイルス又はビリオンを産生させるというウイルスが有する能力を意味する。「感染できない」という事実は、ウイルスが新しいウイルスの産生を効果的に達成できないことを意味する。
本発明の方法において、HPBPタンパク質の量は、生物学的サンプル、例えば血液、血漿、リンパ又は尿において測定する。「量の測定」は、HPBP タンパク質が前記サンプルにおいてアッセイされることを意味する。
HPBPタンパク質のアッセイ方法は、当業者に公知の免疫学的方法であり得る。例えば、ウェスタンブロット技術(免疫検出)、免疫沈降又はELISA技術が用いられ得る; RIA技術もまた実行され得る。
HPBPタンパク質の検出の例は、実施例に記載されるELISAである。簡潔には、HPBPタンパク質を指向するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体をプレートに固定する。洗浄後、サンプルをプレートと共にインキュベートするか、又は前記抗体を固定する。洗浄後、HPBPタンパク質を指向する二次抗体を、サンプルと共に予めインキュベートされた前記プレートと共にインキュベートする。最後に、洗浄後、プレートを、前記抗体の定常部分を指向する抗体と共にインキュベートするが、定常部分を指向する前記抗体には、ペルオキシダーゼ(HRP)のような検出を可能にする分子と結合している。
HPBPタンパク質のアッセイは、したがって、当業者に周知の光度測定により、又は当業者に周知の分光技術により定量化できる。
【0056】
HPBPタンパク質の濃度は、少なくとも1つの参照サンプルの濃度と比較される。参照サンプルは:
- 健常な個体に由来するサンプル又は
- 個体がウイルス感染に関連する症状を発症しているか、又は発症していない、ウイルスに感染している個体、特にHIVに感染した個体に由来するサンプル又は
- 耐性の個体が感染することなく前記ウイルスに1回又はそれより多い回数接触している、ウイルス感染に耐性の個体に由来するサンプル
のいずれかに相当し得る。
【0057】
本発明による方法は、個体がウイルス感染に耐性であるかどうかを判定することを可能にする。
HPBPレベルが、健常な個体又はウイルスに感染した個体のそれに類似するか、又は実質的に同一である場合に、個体に由来するサンプルは、前記ウイルスに感染できる:個体は耐性でないと考えられる。
HPBPレベルが、ウイルス感染に耐性の個体のそれよりも高いか、又は類似する場合に、サンプルが検定された個体は、ウイルス感染に耐性であると考えられる。
【0058】
本発明はまた、前記感染がHIVウイルス、特にHIV-1若しくはHIV-2ウイルス、肝炎ウイルス又はヘルペスウイルス感染が原因である、前記に規定される診断方法に関する。
【0059】
本発明はまた、特定のタンパク質及び相同なタンパク質が転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用するという条件で、
- 配列番号5、配列番号6及び配列番号1から選択されるアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成されることを特徴とする特定のタンパク質及び
- 上述の配列の1つと少なくとも72%の相同性を有することを特徴とする、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素と
抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物及び/又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、
前記ウイルス化合物が、特に抗プロテアーゼインヒビター、例えばリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル並びに逆転写酵素インヒビター、例えばAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツから選択され、
医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療のための医薬組成物について記載する。
【0060】
本発明はまた、特定のタンパク質及び相同なタンパク質が転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用するという条件で、
*- 配列番号5、配列番号6及び配列番号1から選択されるアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成されることを特徴とする特定のタンパク質及び
- 上述の配列の1つと少なくとも72%の相同性を有することを特徴とする、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素と
*特に抗プロテアーゼインヒビター、例えばリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル並びに逆転写酵素インヒビター、例えばAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツから選択される抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる、ウイルス感染に関連する病変の予防又は治療のための医薬組成物について記載する。
【0061】
本発明はまた、有利な実施態様において、前記特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9又は配列番号10
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列から構成される、前記に規定される医薬組成物について記載する。
【0062】
本発明を以下の実施例及び図によってより詳しく説明するが、後者は特徴を限定しない。
図1〜13は本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、HPBPタンパク質の三次元構造を示す。
【図2】図2は、硝酸銀で染色した電気泳動ゲルを示し、トラックAはPON-1/HPBP複合体の精製、トラックB及びCはそれぞれPON-1及びHPBP タンパク質をヒドロキシアパタイトカラムに通過させた後の分離生成物を示す。分子量を示す。
【図3】図3は、Jurkat系におけるHIVウイルスの転写活性の測定を表す。値はルシフェラーゼ活性を表す。トラックAは未処理細胞を表し、トラックBはPON-1及びHPBPタンパク質の混合物で処理した細胞を表し、トラックCはPON-1タンパク質で処理した細胞を表し、トラックDはHPBPタンパク質で処理した細胞を表す。
【図4】図4は、Jurkat系におけるHIVウイルスの複製活性の測定を表す。値はp24タンパク質の量を表す。トラックAは未処理細胞を表し、トラックBはPON-1及びHPBPタンパク質の混合物で処理した細胞を表し、トラックCはPON-1タンパク質で処理した細胞を表し、トラックDはHPBPタンパク質で処理した細胞を表す。
【図5】図5は、Jurkat系におけるHIVウイルスの転写活性の測定を表す。値はルシフェラーゼ活性を表す。トラックAは未処理細胞を表し、トラックBはHPBP タンパク質で処理した細胞を表し、トラックCはAZTで処理した細胞を表す。
【図6】図6は、Jurkat系におけるHIVウイルスの複製活性の測定を表す。値はp24タンパク質の量を表す。トラックAは未処理細胞を表し、トラックBはHPBP タンパク質で処理した細胞を表し、トラックCはAZTで処理した細胞を表す。
【図7】図7は、Jurkat系におけるHIVウイルスの転写活性の測定を示す。値は転写の誘導レベルを表す。トラックAは未処理細胞を表し、トラックBはHPBPで処理した細胞を表し、トラックCはジャガイモDINGタンパク質で処理した細胞を表す。
【図8】図8は、Jurkat系におけるHIVウイルスの複製活性の測定を示す。値は複製の誘導レベルを表す。トラックAは未処理細胞を表し、トラックBはHPBPで処理した細胞を表し、トラックCはジャガイモDINGタンパク質で処理した細胞を表す。
【図9】図9A及び9Bは、HPBP/Tat相互作用の分子モデリングを示す。 図9Aは、HPBPタンパク質の三次元構造を示し、抗体により認識されるエピトープを示す。矢印
【化1】

のそばに位置する暗灰色領域
【化2】

は、HPBP/Tat相互作用を妨害しないエピトープを表し、黒色領域
【化3】

は、Tatタンパク質との相互作用区域を表す。
図9Bは、HPBP/Tat複合体の分子モデリングを示す。
【図10】図10は、HPBP タンパク質の細胞毒性を測定する柱状グラフを示す。 白色バーは未処理のコントロール細胞を表し、黒色バーは0.2 μg.mL-1の濃度のHPBPタンパク質で処理した細胞を表し、灰色バーは2 μg.mL-1の濃度のHPBPタンパク質で処理した細胞を表し、ドット入りバーは20 μg.mL-1の濃度のHPBPタンパク質で処理した細胞を表し、線入りバーは0.2 μg.mL-1の濃度のHPBPタンパク質で処理した細胞を表す。X軸は、570 nmで測定した光学密度を表す。
【図11】図11は、タンパク質の量の関数としての、HPBPタンパク質の(%で表される)毒性曲線を示す。この曲線は、末梢血に由来するリンパ球細胞から得られる。
【図12】図12は、タンパク質の量の関数としての、セントジョーンズワートタンパク質 p27SJ (実線)又はHPBP (点線)の(%で表される)毒性曲線を示す。この曲線は、小グリア細胞から得られる。
【実施例】
【0064】
そうでないと示さない限り、以下で言及される全ての実験は、少なくとも3回独立して行われた。
【0065】
実施例1:HPBPタンパク質の精製
ステージ1: HPBP/PON-1複合体の精製
配列番号2のタンパク質をLyon-BeynostのEtablissement de Transfusion Sanguineにより提供される凍結血漿の袋(〜200 mL)から精製する。血漿への 1 M (1% v/v) CaCl2の添加により形成されたフィブリン塊を濾過により血清から分離する。血清を次いで緩衝液A (Tris/HCl 50 mM, CaCl2 1 mM, NaCl 4M, pH 8)で平衡化された400 mLのアフィニティゲル(Cibacron 3GA-Agarose, C-1535, Sigma)と混合する。これらの条件下で、主にHDL (「高密度リポタンパク質」) が吸収される。6〜8時間のインキュベーション後、ゲルに吸収されなかったタンパク質を2番多孔性フリットでの濾過により除去する。この洗浄は、タンパク質が溶出液において(280 nmのUV吸収で)検出されなくなるまで行う。ゲルを次いで緩衝液B (Tris/HCl 50 mM, CaCl2 1 mM, pH 8)で平衡化し、その後XK 50/30カラム(Pharmacia)に置く。溶出を、1 g/lのデオキシコール酸ナトリウム及び0.1%のトリトンX-100を緩衝液Bに加えることにより行う。アリールエステラーゼ活性を示す画分を混合し、XK 26/70カラム(Pharmacia)に配置した、緩衝液B及び0.1%のトリトンX-100で平衡化した50 mLの陰イオン交換ゲル(DEAE Sepharose Fast Flow, Pharmacia)に注入する。溶出をNaCl勾配により行う。最初のプラトーは87.5 mMのNaClで到達し、 パラオキソナーゼに結合したタンパク質apo A-I及び大部分の汚染タンパク質を排除する。ヒトパラオキソナーゼ(PON1)は、140 mMのNaCl濃度で大方溶出する。
HPBPタンパク質は、PON-1 タンパク質と共精製される。
【0066】
ステージ2: PON-1及びHPBPタンパク質の分離
PON-1/HPBP複合体を、分離ユニットの制御のためにUNICORNソフトウェア(バージョン3.2)を備えたヒドロキシアパタイトカラム(AKTA FPLCシステム) (Amersham Biosciences)で分離する。クロマトグラフィーを25℃で行う。
イオン交換カラムから生じる活性タンパク質の画分を、2 mlのBio-Gel HTPヒドロキシアパタイト樹脂を含むガラスカラム(1 cm×10 cm, Amersham)上で、0.5 mL/minの流速にてロードする。
ヒドロキシアパタイト樹脂を、0.1%トリトン(緩衝液A)を含むか又は含まない10 mMのリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0で予め平衡化する。
緩衝液Aで洗浄後、タンパク質を、リン酸ナトリウム緩衝液のイオン強度を10から400 mM (pH 7.0)まで増加させることにより線形的様式で溶出するか、又は400 nMのリン酸ナトリウム緩衝液で直接溶出する。平衡化及び溶出はカルシウムなしで行う。
PON-1タンパク質は、最初のヒトサンプルに依存する濃度である約0.3 mg/mLの濃度で溶出される。
HPBPタンパク質は、最初のヒトサンプルに依存する濃度である約0.05 mg/mLの濃度で溶出される。
【0067】
回収した画分を、10%のポリアクリルアミド濃度を有するSDS-PAGEゲル上で解析する。タンパク質を定電圧(200 V)で35分間分離する。分離したタンパク質を硝酸銀(Silver Stain Plus kit, Bio-Rad)で染色することにより可視化する。
単離したタンパク質の分離ゲルを図2に示す。
【0068】
実施例2:HPBP及びC/EBPβタンパク質のインビトロ相互作用
ヒトホスフェート結合タンパク質(HPBP)とC/EBPβタンパク質との会合を、ELISA技術を用いて行う。
タンパク質に高い結合親和性を有するELISA平底96ウェルプレート中で、C/EBPβタンパク質を支持体に吸着させ、4℃にて一晩インキュベートする。
プレートに結合しなかったタンパク質を、10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液で洗浄することにより除去する。
ウェルを、20 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1時間室温にて飽和させ、バックグラウンドのノイズを除去する。
10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で洗浄後、0.1 nMから100 mMまでの種々の精製HPBP溶液をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベーションする。
プレートを再度洗浄し、次いでマウスモノクローナル抗HPBP抗体又はウサギポリクローナル抗HPBP抗体と共に1〜3時間室温にてインキュベートする。
最後に、さらに洗浄後、マウス又はウサギFcフラグメントを認識するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した抗体をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベートする。
そして最後の洗浄後、プレートをHRP基質 (3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン:過酸化水素H2O2存在下のTNB)と共にインキュベートする。反応を10分後 にH2SO4を加えることにより停止させる。反応生成物の光学密度を次いで分光光度計を用いて450 nm にて測定する。
結果は、HPBPタンパク質及びC/EBPβタンパク質がインビトロで相互作用できることを示す。
【0069】
実施例3:HPBP及びC/EBPβ又はHPBP及びTatタンパク質のインビボ相互作用
HPBPとC/EBPβとの相互作用を確かめるために、免疫共沈降実験を行った。
形質転換ヒト細胞系 (Jurkat細胞、HeLa細胞など)又は初代細胞(循環リンパ球など)をHPBPタンパク質溶液と共にインキュベートする。
細胞を次いで溶菌させ、HPBPタンパク質を、特異的な抗体を用いて、タンパク質の相互作用を保つことを可能にする緩衝液中で免疫沈降させる。
免疫沈降させたタンパク質をSDS-PAGE技術に従ってゲル上で分離し、タンパク質をニトロセルロース又はPVDFメンブレンに移し、C/EBPβタンパク質の存在を、ウェスタンブロット技術により、C/EBPβタンパク質を指向する特異的な抗体を用いて検出する。
【0070】
類似の実験を、C/EBPβタンパク質を免疫沈降させ、HPBPタンパク質の存在を検出することによって行う。
【0071】
HPBPとTatとの相互作用を確かめるために、免疫共沈降実験を行った。
HIVに感染しているか又は組換えTatタンパク質を発現している形質転換ヒト細胞系 (Jurkat細胞、マクロファージ系など)又は初代細胞(循環リンパ球など)をHPBPタンパク質溶液と共にインキュベートする。
細胞を次いで溶菌させ、HPBPタンパク質を、特異的な抗体を用いて、タンパク質の相互作用を保つことを可能にする緩衝液中で免疫沈降させる。
免疫沈降させたタンパク質をSDS-PAGE技術に従ってゲル上で分離し、タンパク質をニトロセルロース又はPVDFメンブレンに移し、Tatタンパク質の存在を、ウェスタンブロット技術により、Tatタンパク質を指向する特異的な抗体を用いて検出する。
【0072】
類似の実験を、Tatタンパク質を免疫沈降させ、HPBPタンパク質の存在を検出することによって行う。
【0073】
実施例4:HPBPはC/EBPβ-Tat相互作用を妨害する。
HIVのC/EBPβ-Tat相互作用は、[Abrahamら. J Neuroimmunol. 2005 Mar;160(1-2):219-27]により記載されている。
HPBPタンパク質によるC/EBPβ-Tat相互作用の妨害を測定するために、ELISA試験を行った。
高いタンパク質結合親和性を有する平底96ウェルELISAプレートにおいて、C/EBPβタンパク質を支持体に吸着させ、4°Cにて一晩インキュベートする。
プレートに結合しなかったタンパク質を、10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液で洗浄することにより除去する。
ウェルを、20 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液で1時間室温にて飽和させ、バックグラウンドのノイズを排除する。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で洗浄後、0.1 nMから100 mMまでの種々の精製HPBP溶液をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベーションする。
プレートを再度洗浄し、次いで種々の濃度のTATタンパク質と共に1〜3時間室温にてインキュベートする。
プレートを再度洗浄し、次いでマウスモノクローナル抗TAT抗体又はウサギポリクローナル抗TAT抗体と共に室温にて1〜3時間インキュベートする。
最後に、さらに洗浄後、マウス又はウサギFcフラグメントを認識するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した抗体をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベートする。
そして最後の洗浄後、プレートをHRP基質 (3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン:過酸化水素H2O2存在下のTNB)と共にインキュベートする。反応を10分後 H2SO4を加えることにより停止させる。反応生成物の光学密度を次いで分光光度計を用いて450 nm にて測定する。
【0074】
実施例6:HPBPは複製を阻害し、HIVウイルスのゲノムの転写を阻害する。
方法:HIV-1プロモーター(HIV-1 LTR) により発現が制御されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む構築物がゲノム中に組み込まれているJurkat CD4+ Tリンパ球細胞系(1G5系)(HIV-LTR Jurkat系)を用いた。細胞抽出物からのルシフェラーゼ活性の測定は、したがって、HIV-1転写活性を評価することを可能にする。
Jurkat HIV-LTR及びJurkat 1G5系を、プロウイルスゲノムNL4.3 (完全HIV-1ゲノム、LAI株)用いるDEAE-デキストラン技術により形質導入した。
【0075】
このようにして感染したHIV-LTR Jurkat及び1G5 Jurkat系を、24時間後、最終濃度2 μg/mL培地(タンパク質単体で52 nM)のHPBP/PONタンパク質複合体又は精製したPON若しくはHPBPタンパク質で処理する。
細胞及び細胞上清を24時間の処理後にサンプリングする。
転写活性を、ルシフェラーゼ検定を行うことにより測定する。HIV-1複製の強度を、感染した1G5系の細胞培養物上清中に存在するウイルスp24カプシドタンパク質の量のELISAアッセイにより測定する[Rohr, O., ら. (2000). The Journal of Biological Chemistry 275, 2654-2660]。
未処理のネガティブコントロール及び最終濃度10 μMのAZTで処理したポジティブコントロールを併行して行った。各実験を3回行う。
併行して、得られた感染リンパ球系を10 μgのジャガイモDINGタンパク質で処理した。
【0076】
結果は、HPBPが、CD4+ Tリンパ球におけるHIV-1複製の抑制効果(89%阻害)を有することを示す(図4)。対照的に、PON-1及びHPBPは抑制効果を有さない。さらに、標準的なプロトコルに従って精製したPON-1/HPBP混合物は、HPBPタンパク質単体ほど大きい阻害特性を有さない。
【0077】
複製阻害は、HPBPにより80%抑制される転写活性阻害を起こすようである(図 3)。複製活性と同様に、PON-1及びHPBPタンパク質の混合物又はPON-1タンパク質単体ではこのような阻害効果を有さない。
【0078】
HPBPタンパク質によるHIV複製阻害(89%阻害)は、10μMのAZTで処理する場合に観察されたもの (60%阻害)よりも著しく大きい (図 6)。
さらに、AZTはウイルス複製に効果を有さないが、HPBPは、その6倍よりも大きい率でウイルス複製を阻害する(図 5)。
【0079】
HPBPの抗HIV活性は、ウイルスの転写ステージの阻害を起こすようである。ウイルスのサイクルのこのステージは、現行の治療戦略により未だ標的とされていない。活発な多剤療法(HAART)の関係において用いられる分子に耐性のウイルス株は、したがって、HPBPでの治療に任意の耐性を付与することを可能にする選択圧に晒されていない。HIV-1株NL4.3について観察される抑制効果は、したがって、治療耐性株を含むその他のウイルス株に論理上は匹敵するはずである。
【0080】
ジャガイモDINGタンパク質を用いる実験は、予想外にも、HPBPに相同なタンパク質がHIV複製を阻害できないか、又はHIV複製を全く阻害しないことを示す。対照的に、ジャガイモタンパク質は、3倍よりも多い複製刺激活性(図6)及び5倍よりも多い転写刺激活性(図5)を有する。
【0081】
実施例7:HPBPは、炎症促進性のMCP-1及びIL-6遺伝子の発現を阻害する。
ルシフェラーゼ遺伝子がMCP-1遺伝子又はIL-6遺伝子の調節配列の制御下に置かれている構築物での形質転換細胞系を、炎症誘導体(LPS)で処理するか又は処理せず、併行してHPBPタンパク質で処理するか又は処理しない。
ルシフェラーゼの誘導を、アドホック基質(ad hoc substrate)(例えばルシフェリン)を用いて明らかにし、ルシフェラーゼ活性を、ルミノメーターを用いて測定する。
【0082】
実施例8:HPBPによるHIV阻害の用量作用
HIV-1複製及び転写を阻害するのに最も有効なHPBPタンパク質濃度(阻害濃度50; IC50)は、実施例6に記載される方法に従って評価した。
細胞を、0.1 nM〜100 mMまで変動する濃度範囲のHPBPタンパク質で処理した。
【0083】
実施例9:タンパク質の毒性のインビボ測定
HPBPタンパク質の毒性を、0.1 nM〜100 mMまで変動する用量のHPBPで処理したJurkatヒト細胞系の増殖及び生存能を測定することにより評価する。
増殖は、死細胞を排除するためのトリパンブルー染色後の細胞を毎日カウントすることによって、又はMTT染色によって測定する(下記参照)。
代替方法は、DNA複製、したがって細胞分裂の証拠を提供するトリチウム化チミジン(3H)の取込みを測定することからなる。
これら同一の細胞の生存能は、種々の技術、特にトリパンブルー陽性細胞(染料を取り込んでいる細胞)のカウントにより評価できる。
アポトーシスを測定するためのその他の技術としては、例えばフローサイトメトリーによる所謂「subG1」断片化DNA量の測定又はアポトーシスの初期(アネキシンV)若しくは後期(DNAのヌクレオソームへの断片化)マーカーの測定も用いられる。
【0084】
実施例10:標準的な治療に耐性のHIV株の阻害
2003〜2004年のフランスにおいて、一次感染の時に診断された患者における少なくとも1つの抗レトロウイルス剤に耐性のウイルスの頻度は、12.3%であった。
INTIに耐性のウイルスの頻度は6%であり、INNTIに耐性のウイルスの頻度は5.9%であり、IPに耐性のウイルスの頻度は3.4%である。
抗レトロウイルス剤への耐性に関与する耐性メカニズム及び変異は、先進国において最もよく起こるサブタイプB (6)のHIV-1単離体について、本質的に知られている。
変異T215Yを有するAZT耐性株(プロウイルスゲノムNL4.3) (完全HIV-1ゲノム、LAI株)のウイルスの複製及びウイルスの転写のHPBPタンパク質による阻害は、実施例6に記載されるプロトコルに従って検定された。
【0085】
実施例11:その他のHIV感染細胞へのHPBPの作用の検定
Tリンパ球細胞の他に、HIVはマクロファージ、樹状細胞及び小グリア細胞に感染できる。
ウイルスの複製及びウイルスの転写の阻害は、以下の細胞:
-ヒトマクロファージTHP-1細胞(ATCC番号 TIB-202(商標))及び
-ヒト小グリア細胞:HMO6 [Nagai A. ら. (2001) Neurobiology of Disease 8, 1057-1068]
を用いて、実施例6に記載されるようにして評価する。
【0086】
実施例12:非進行性患者のコホートにおけるHPBPアッセイ
血漿タンパク質におけるHPBP濃度は、HPBP ELISAによって非進行性患者において検定された。
高いタンパク質結合親和性を有する平底96ウェルELISAプレートにおいて、抗HPBP抗体を支持体に吸着させ、4℃で一晩インキュベートする。
プレートに結合しなかった抗体を、10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液で洗浄することにより除去する。
ウェルを、20 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝溶液で1時間室温にて飽和させ、バックグラウンドのノイズを排除する。
10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で洗浄後、患者からの血清の種々の希釈液をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベートする。
プレートを再度洗浄し、次いでマウスモノクローナル抗HPBP抗体又はウサギ抗HPBPポリクローナル抗体と共に1〜3時間室温にてインキュベートする。
最後に、さらに洗浄後、マウス又はウサギFcフラグメントを認識するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した抗体をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベートする。
そして最後の洗浄後、プレートをHRP基質 (3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン:過酸化水素H2O2存在下のTNB)と共にインキュベートする。反応を10分後 H2SO4を加えることにより停止させる。反応生成物の光学密度を次いで分光光度計を用いて450 nm にて測定する。
ELISAは、患者の血清におけるHPBPタンパク質の濃度を測定することを可能にする。
【0087】
実施例13:HPBP及びTatタンパク質のインビトロ相互作用
ヒトホスフェート結合タンパク質(HPBP)とC/EBPβタンパク質との会合は、ELISA技術を用いて行う。
高いタンパク質結合親和性を有する平底96ウェルELISAプレートにおいて、GST-Tatタンパク質を支持体に吸着させ、4℃で一晩インキュベートする。
プレートに結合しなかったタンパク質を、10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液で洗浄することにより除去する。
ウェルを、20 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝溶液で1時間室温にて飽和させ、バックグラウンドのノイズを排除する。
10 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で洗浄後、0.1 nM〜100 mMまでの精製HPBPの種々の溶液をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベートする。
プレートを再度洗浄し、次いでマウスモノクローナル抗HPBP抗体又はウサギ抗HPBPポリクローナル抗体と共に1〜3時間室温にてインキュベートする。
最後に、さらに洗浄後、マウス又はウサギFcフラグメントを認識するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した抗体をウェルに加え、1〜3時間室温にてインキュベートする。
そして最後の洗浄後、プレートをHRP基質 (3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン:過酸化水素H2O2存在下のTNB)と共にインキュベートする。反応を10分後 H2SO4を加えることにより停止させる。反応生成物の光学密度を次いで分光光度計を用いて450 nm にて測定する。
結果は、HPBPタンパク質及びTatタンパク質がインビトロで相互作用できることを示す。
【0088】
実施例14:HPBP及びTATタンパク質のインビトロ相互作用
予備調製:
ウサギ及びマウスの免疫化により、本発明者らは、HPBPタンパク質を標的にするモノクローナル及びポリクローナル抗体を得た。モノクローナル抗体により認識されるエピトープの位置を、HPBPの三次元構造について特徴付けし、位置付けした。これらの分子ツールを用いて、ウェスタンブロット、免疫組織化学及びELISA試験を行った。種々のモノクローナル抗体により認識されるエピトープの位置を知ることは、HPBPとそのパートナーとの相互作用を定量化し、マッピングすることを可能にするシステムの確立に導く。
【0089】
プロトコル:
本発明者らは、HPBPタンパク質とHIV-1(TAT)タンパク質との相互作用を研究するのに適した酵素結合免疫吸着 (ELISA)技術を用いた(Engvall及びPerlmann、1971)。HIV-1 TATタンパク質をGSTと融合した形態で発現させ、多量(約2 mg/mL)の可溶性タンパク質を得た。
【0090】
PBS (Biorad ref: 161-0780EDU)中に1/250に希釈したGST-TAT融合タンパク質を、ELISAプレート(Greiner Bio-one Medium Binding 96 Well Plate MICROLONTM 200 Flat-Bottom Clear)のウェルの底面における吸着により結合させ、プレートを4°Cで一晩放置する。プレートを次いで20 mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA) 溶液で1時間室温にて飽和させて非特異的結合を排除し、次いでPBSで洗浄する。PBS/BSA中に10 mg/mLに希釈したHPBPタンパク質の3種の希釈液(1 mg/mL、0.5 mg/mL及び0.25 mg/mL)を、次いでウェル中で3時間37℃で沈殿させる。プレートを、次いで10 mg/mLのPBS/BSAで3回洗浄し、結合していないタンパク質を除去する。所与のエピトープを検定するために、10 mg/mLのPBS/BSA中に1/1000に希釈したモノクローナル抗体をウェル中で1時間37℃で沈殿させる。プレートを再度10 mg/mLのPBS/BSAで3回洗浄し、結合していない抗体を除去する。1/2000に希釈液を加えたセイヨウワサビペルオキシダーゼ抗マウス二次抗体(Biorad ref: 170-5047)を、次いでウェル中で1時間37℃で沈殿させ、相互作用を検出する。最後に、プレートを10 mg/mLのPBS/BSAで3回洗浄し、PBSでもう一度洗浄し、相互作用を検出する色素産生基質(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB), Biorad ref: 166-2402)を用いて検出する。
【0091】
種々のモノクローナル抗体の結合能を検定することにより、もはや認識されないエピトープを示すことができる。これらのエピトープは、DINGタンパク質−標的タンパク質複合体の形成によりマスクされる。複合体をもはや認識しない抗体を同定することにより、本発明者らは、HPBPの構造について相互作用区域をモデリングできる。
抗体により認識される領域を図9Aに示す。
【0092】
結晶学的データがない中で相互作用の分子的な可視化を達成する目的で、本発明者らは、分子ドッキングによるモデリングを利用した。HPBPモデルのDINGタンパク質とTATタンパク質との相互作用をモデリングするために、本発明者らは、最も確からしいTATタンパク質の構造を用いた(Anand ら、2008, Nat Struct Mol Biol 15, 1287-1292)。ドッキングは、PATCHDOCKソフトウェア(Schneidman-Duhovny ら、2005, Nucleic Acids Res 33, W363-367)を用いて行い、得られた最良の100の解を次いで側鎖を解放することにより結果の精密化を可能にするFIREDOCKソフトウェア(Mashiach ら、2008, Nucleic Acids Res 36, W229-232)に入力した。本発明者らは次いで、全体のエネルギーの観点から分類し、pymol 1.1を用いて可視化された最良の10の解を得た。その他の解とも比較して、全体のエネルギーの観点から最も好ましい解は、実験のマッピングデータに一致している。
HPBP/Tat相互作用のモデリングを図9Bに示す。
以下の表に、Tatタンパク質との相互作用に必要なHPBPタンパク質のエピトープを特定する相互作用データを要約する。
【0093】
【表2】

【0094】
よって、Tatタンパク質と相互作用できるタンパク質は、以下:
【表3】

【0095】
ダッシュ(-)は、最先端の科学から公知の20天然アミノ酸のいずれか1つ又は任意に改変されたアミノ酸を示す。
言い換えれば、文字で表されるアミノ酸は、相互作用に必須のアミノ酸である。また、配列番号1、2又は3の配列のタンパク質と少なくとも72%の相同性又は同一性を有するHPBPの任意の変異体は、示されたアミノ酸が存在する場合に、Tatとのその相互作用特性を維持する。
【0096】
実施例15:HPBPタンパク質の毒性
HPBPタンパク質の細胞毒性を培養細胞について測定した。
細胞系R3HR-1G5 (1g5)
5.106細胞/mLのリンパ様系B 1g5をプレートに播種し、種々の用量の精製したHPBPタンパク質:0.2 μg/mL、2 μg/mL、20 μg/mL若しくは90 μg/mLで処理するか、又は処理しなかった。細胞は、24時間37℃で培養する。
24時間培養後、タンパク質の毒性を、Berridge ら. Biotechnology Annual Review, 2005, 11, 127-152に記載されるようなMTT法(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)により生細胞数を測定することによって評価する。
簡潔には、10 μLのMTTを各培地に加える。
混合物を1分以上素早く加え、次いで培養物を37℃に4時間戻す。
培養上清を次いでアスピレートし、MTTの存在により形成された結晶を酢酸に溶解する。
それぞれの培養物の光学密度(OD)を、分光光度計を用いて570 mnで測定する。
【0097】
得られた結果を図10に提示する。
結果は、致死量の50%(LD50 - 細胞の半分を殺す用量)が約20 μg/mLであることを示し、これはHIVを阻害するのに必要な用量よりも10〜100倍大きい用量に相当する。
【0098】
末梢血リンパ球(PBL)細胞
類似の実験を初代リンパ球について行った。1g5細胞について用いたものと類似の条件を用いた。
PBL細胞を、0.24 μg/mL、0.48 μg/mL、0.96 μg/mL、2.4 μg/mL、4.8 μg/mL、9.6 μg/mL又は24 μg/mLのHPBPタンパク質で処理した。未処理の細胞をコントロールとして検定した。
結果を図11に提示する。
結果は、LD50が約5 μg/mLであることを示す。
【0099】
小グリア細胞系
類似の実験を小グリア系について行った。1g5細胞について用いたものと類似の条件、5.105細胞/mLを用いた。
PBL細胞を、0.24 μg/mL、0.48 μg/mL、0.96 μg/mL、2.4 μg/mL、4.8 μg/mL、9.6 μg/mL又は24 μg/mLのHPBPタンパク質で処理した。未処理の細胞をコントロールとして検定した。
結果を図12、点線で提示する。
結果は、LD50が約2.5 μg/mLであることを示す。
【0100】
実施例16:p27SJ タンパク質の毒性
セントジョーンズワートタンパク質p27SJの細胞毒性を、実施例15に記載される条件下に、培地中の細胞について測定した。p27SJを、0 μg/mL (コントロール)、0.01 μg/mL、0.1 μg/mL、0.5 μg/mL、1 μg/mL、5 μg/mL、10 μg/mL、20 μg/mL及び40 μg/mLの用量で検定した。
毒性のパーセンテージとして表した結果を図 12、実線で提示する。
結果は、40 μg/mLのp27SJ用量で約4%の細胞だけが死んでいるために、LD50が2.5 μg/mL (LD50 HPBP)よりも明らかに大きいことを示す。よって、p27SJタンパク質は、HPBPタンパク質のそれよりも非常に明らかに小さい毒性を有する。
p27SJタンパク質について得られたものに匹敵する結果は、ジャガイモDINGタンパク質について得られた。
【0101】
実施例17:HPBP+抗ウイルス剤の組合せ効果
方法:HIV-1プロモーター(HIV-1 LTR;HIV-LTR Jurkat系)により発現が制御されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む構築物がゲノム中にインテグレートされているJurkat CD4+ Tリンパ球細胞系(1G5系)を用いた。細胞抽出物からのルシフェラーゼ活性の測定は、したがって、HIV-1転写活性を評価することを可能にする。
HIV-LTR Jurkat及び1G5 Jurkat系を、プロウイルスゲノムNL4.3 (完全HIV-1 ゲノム、株LAI)を用いるDEAE-デキストラン技術によって形質導入した。
【0102】
このようにして感染したHIV-LTR Jurkat及びJurkat 1G5系を、24時間後最終濃度2 μg/mL培地(タンパク質単体で52 nM)又はHPBP 2 μg/mL + 10 μM AZ又はAZT単体を用いて処理する。細胞及び細胞上清を24時間の処理後にサンプリングする。
転写活性及び複製阻害を、実施例6に記載されるようにして測定する。
結果は、HPBP + AZTの組合せが転写活性及び複製阻害により良い効果を有することを示す。
【0103】
類似の結果が、HPBP + 逆転写酵素インヒビター、HPBP + 侵入インヒビター、HPBP + 融合インヒビター又はHPBP + インテグラーゼインヒビターの組合せについて得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される組成物の、
‐ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造であるが、但し、炎症に関連する病変に関しては、前記要素が配列番号1〜3のタンパク質のいずれの1つでもない製造又は
‐ウイルス感染への感受性の、特にインビトロにおける測定方法の実行
のための使用。
【請求項2】
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号5、配列番号7及び配列番号9
から選択されるアミノ酸配列により構成される、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
‐配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号6の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項4】
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号6、配列番号8及び配列番号10
から選択されるアミノ酸配列により構成される、請求項1又は3に記載の組成物の使用。
【請求項5】
‐配列番号1のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号1の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成される、請求項1又は3に記載の組成物の使用。
【請求項6】
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2及び配列番号3
から選択されるアミノ酸配列により構成される、請求項1、3又は5に記載の組成物の使用。
【請求項7】
ウイルス感染に関連する病変が、遺伝子転写に転写因子C/EBPβを必要とするウイルス、特にHIVウイルス、肝炎ウイルス又はヘルペスウイルスに起因する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
HIVウイルスがHIV-1又はHIV-2ウイルスである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
組成物が、約0.1 nm〜約10 μMまで、特に約10 nM (30 μg/kg)〜約100 nM (300 μg/kg)まで、特に約30 nM (90 μg/kg)〜約70 nM (210 μg/kg)まで、優先的には約50 nM (150 μg/kg)の用量で投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物及び/又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と組み合わせられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物が、
抗プロテアーゼインヒビター、特にリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル並びに
逆転写酵素インヒビター、特にAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツ
から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための、
‐請求項10又は11に記載の組成物及び抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物又は
‐抗炎症特性を有する抗ウイルス化合物
が同時に用いられるか、別々に用いられるか、又は経時的に分配して用いられる、請求項10又は11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列により構成される特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素を含むか、又は該要素により構成されるが、但し、前記タンパク質が、転写因子C/EBPβ及び/又はウイルスタンパク質Tatと相互作用する、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療を意図する薬剤の製造のための組成物。
【請求項14】
‐請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの要素と
‐抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの化合物又は抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を含む組合せ製品。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物と
‐抗ウイルス特性を有する抗ウイルス化合物又は
‐抗炎症特性を有する抗ウイルス化合物と
が、特に同時に用いられるか、別々に用いられるか、又は経時的に分配して用いられる、ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療のための、請求項13に記載の組合せ製品。
【請求項16】
‐配列番号5のアミノ酸配列を含む特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素と
‐抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの抗ウイルス化合物及び/又は
‐抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる医薬組成物。
【請求項17】
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号5、配列番号7及び配列番号9
から選択されるアミノ酸配列により構成される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
‐配列番号6のアミノ酸配列を含む特定のタンパク質及び
‐配列番号6の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素と
‐抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの抗ウイルス化合物及び/又は
‐抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号6、配列番号8及び配列番号10
から選択されるアミノ酸配列により構成される、請求項16又は18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
‐配列番号1のアミノ酸配列を含む特定のタンパク質及び
‐配列番号1の配列と少なくとも72%の相同性を示すアミノ酸配列を有する、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素と
‐抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの抗ウイルス化合物及び/又は
‐抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる、請求項16又は18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
特定のタンパク質が、以下のアミノ酸配列:
配列番号1、配列番号2及び配列番号3
から選択されるアミノ酸配列により構成される、請求項16、18又は20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ウイルス感染に関連する病変が、HIVウイルス、肝炎ウイルス又はヘルペスウイルス感染に起因する、請求項16〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
HIVウイルスが、HIV-1又はHIV-2ウイルスである、請求項16〜22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
抗ウイルス化合物が、
抗プロテアーゼインヒビター、特にリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル並びに
逆転写酵素インヒビター、特にAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツ
から選択される、請求項16〜23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
‐生物学的サンプルにおいて、請求項1〜6のいずれか1項に規定される特定のタンパク質の量を測定する工程と、
‐前工程で得られた量を、少なくとも1つの参照サンプルからの特定のタンパク質の量と比較する工程と、
‐前記比較から、ウイルス感染への耐性を測定する工程と
を含む、個体に由来する生物学的サンプルにおける、ウイルス感染への耐性のインビトロ診断方法。
【請求項26】
感染が、HIVウイルス、特にHIV-1若しくはHIV-2ウイルス、肝炎ウイルス又はヘルペスウイルス感染が原因である、請求項25に記載の診断方法。
【請求項27】
‐配列番号5のアミノ酸配列を含むことを特徴とする特定のタンパク質及び
‐配列番号5の配列と少なくとも72%の相同性を有することを特徴とする、前記特定のタンパク質に相同なタンパク質
から選択される少なくとも1つの要素と
‐抗ウイルス特性を有する少なくとも1つの抗ウイルス化合物及び/又は
‐抗炎症特性を有する少なくとも1つの化合物と
を活性成分として含み、
前記抗ウイルス特性を有する化合物が、
抗プロテアーゼインヒビター、例えばリトナビル、インジナビル、サクイナビル及びネルフィナビル並びに
逆転写酵素インヒビター、例えばAZT、ddI、ddC、3TC、d4T、ネビラピン、デラビルジン及びエファビレンツ
から特に選択され、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせられる、
ウイルス感染又は炎症に関連する病変の予防又は治療のための医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2012−519673(P2012−519673A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552492(P2011−552492)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050369
【国際公開番号】WO2010/100381
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(511214886)ユニベルシテ ド ストラスブール (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE STRASBOURG
【住所又は居所原語表記】4, rue Blaise Pascal, F−67081 Strasbourg Cedex, France
【出願人】(511025226)ユニヴェルシテ ド ラ メディテラネ(エクス マルセイユ セカンド) (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA MEDITERRANEE(AIX MARSEILLE II)
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F−13284 Marseille cedex 07, France
【Fターム(参考)】