説明

新規イソインドリン−1−オン誘導体

本発明は、式(I):
【化】


[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は低級アルキル基を示すか、或いは、R及びRが一緒になってオキソ基を示し、Xは、C(O)等を示し、Yは、酸素原子等を示し、Zは水素原子等を示し、Rは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基等を示す]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野において有用なイソインドリン−1−オン誘導体に関する。この化合物は、GPR120受容体(14273)機能調節剤として作用し、糖尿病、肥満、高脂血症の治療薬及び/又は予防薬として有用である。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役型レセプターであるGPR120は、αリノレイン酸などの不飽和長鎖脂肪酸との結合を介して、細胞内にシグナルを伝達し、種々の生体内反応を惹起する。GPR120及びそのリガンドの作用により腸管細胞株においては、血糖値の低下に機能するGLP−1(glucagon−like−peptide−1;グルカゴン様ペプチド1)の分泌を促進すると報告されている(ネイチャーメディシン(Nature Medicine)、第11巻、1号、90−94頁(January 2005年))。GLP−1は、回腸、大腸などに存在する腸内分泌細胞であるL細胞から放出されるペプチドホルモンで、血糖値に応じてインスリン分泌を誘導することが明らかになっている。したがって、GLP−1分泌促進作用を有する化合物は、過量投薬による低血糖の危険性を回避できる糖尿病治療剤として期待できる。また、GLP−1が膵β細胞の増殖や幹細胞からの分化を誘導する作用を有することから、II型糖尿病におけるβ細胞のアポトーシスの遅延や、I型糖尿病に対する膵島移植の効果持続にも有効であることが示唆される。GPR120は、脂肪細胞でも発現していることが知られている。GPR120は脂肪分化誘導に伴い発現上昇することが認められている。さらに、GPR120及びそのリガンドの作用によって脂肪分化細胞における脂肪分解が抑制されると報告されている。インスリン抵抗性の原因の一つとして血中脂肪値が高いことが知られている。したがって、GPR120アゴニストの脂肪分解抑制によって、血中遊離脂肪酸量を減少させ、血中脂肪値を正常化することでインスリン抵抗性が改善されることが期待できる。
【0003】
更に、GPR120は脳下垂体にも発現しており、GPR120のリガンドによって副腎皮質刺激ホルモンの分泌が抑制されることが報告されている。副腎皮質刺激ホルモンは、その下流の糖質コルチコイドの分泌を促進することで、肝臓における糖新生の促進、筋及び抹消組織におけるグルコース取り込みに対する阻害作用、脂肪組織における脂肪分解、脂肪酸やグリセロールの放出などの作用を惹起する。したがって、GPR120は中枢においても副腎皮質刺激ホルモンの分泌の抑制作用を介して、血糖低下作用や血中脂質低下作用を発揮するものと考えられる。上記の記載から、GPR120アゴニスト活性を有する化合物は、糖尿病、肥満症、高脂血症の治療及び/又は予防剤としてきわめて有用であると考えられる。
【0004】
本発明に係る化合物と構造上関連する化合物としては、下記式
【0005】
【化1】

で表される化合物等が記載されている(US20080108659号公報参照)。US20080108659号公報には、イソインドリン−1−オンのベンゼン環上にシアノ基等を有しているが、本発明に係る化合物は、これらの基を有してはいない。また、本発明に係る化合物は、シクロアルキル基(該シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子に置き換わっていてもよい)上に必ずオキソ基を有しているが、US20080108659号公報に記載の化合物は、オキソ基を有していない。さらに、US20080108659号公報に記載の化合物の用途は、癌の治療であって、US20080108659号公報に記載の化合物が糖尿病、肥満症、高血脂症の治療及び/又は予防に有用であるとの記載はなく、また、これを示唆する記載もない。
【0006】
また、下記式
【0007】
【化2】

で表される化合物が記載されている(WO2005037789号公報参照)。該化合物は、フタルイミド骨格を有しているが、該化合物中のシクロヘキシル基は、オキソ基を有していないのに対して、本発明に係る化合物中のシクロアルキル基は、必ずオキソ基を有している。また、WO2005037789号公報に記載の化合物の用途は、除草剤であって、WO2005037789号公報に記載の化合物が糖尿病、肥満症、高血脂症の治療及び/又は予防に有用であるとの記載はなく、また、これを示唆する記載もない。
【0008】
また、WO2002081447号公報及びWO199842666号公報には、イソインドリン−1−オン骨格等を有する化合物が記載されているが、これら化合物中のシクロアルキル基は、オキソ基を有していない。また、イソインドリン−1−オン骨格等を構成するベンゼン環上の置換基も本発明に係る化合物が有する置換基とは異なる。さらに、WO2002081447号公報及びWO199842666号公報の用途は、炎症性疾患/自己免疫性疾患に関するものであり、これらの化合物が糖尿病、肥満症、高脂血症の治療及び/又は予防に有用であるとの記載も示唆もない。
【0009】
また、下記式
【0010】
【化3】

で表される化合物等が記載されている(米国特許第4964895参照)。米国特許第4964895に記載の化合物は、フェノキシピラゾールを構成するフェニル基のパラ位に必ずニトロ基を有しているが、本発明に係る化合物はニトロ基を有してはいない。また、該化合物の用途は、除草剤であって、該化合物が糖尿病、肥満症、高脂血症の治療及び/又は予防に有用であるとの記載も示唆もない。
【0011】
また、下記式
【0012】
【化4】

で表される化合物等が記載されている(Egyptian Journal of Pharmaceutical Sciences、第21巻、177−187頁(1982年)参照)。これらの化合物中のピペリジニル基は、オキソ基を有してないが、本発明に係る化合物が、シクロアルキル基、ピペリジニル基等を有する場合には、必ずオキソ基を有している点で異なる。また、これらの化合物は、フェニル基上にヒドロキシ基を必ず有しているが、本発明に係る化合物は、フタルイミド基の窒素原子に結合したフェニル基上にヒドロキシ基を有してはいない。さらに、Egyptian Journal of Pharmaceutical Sciences、第21巻、177−187頁(1982年)に記載の化合物は、抗マラリヤ薬として有用であることが記載されているが、該化合物が糖尿病、肥満症、高脂血症の治療及び/又は予防に有用であるとの記載も示唆もない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、GPR120(14273)アゴニスト作用を有する新規イソインドリン−1−オン誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、GPR120(14273)機能調節作用、特にアゴニスト作用を有する化合物を開発すべく鋭意検討を行い、本発明に係る化合物が、GPR120(14273)機能調節作用を有する化合物として有効であることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、式(I):
【0016】
【化5】

[式中、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し;
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を示すか、或いは、R及びRが一緒になってオキソ基を示し;
Xは、C(O)又はS(O)を示し;
Yは、酸素原子、硫黄原子、NH又はCHを示し;
Zは、水素原子又はハロゲン原子を示し;
Rは、
(1)窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1
乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基(該5又は6員のヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示すか、或いは、
(2)オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基(該C3−7シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子に置き換わっていてもよく、また、該C3−7シクロアルキル基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示す]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【0017】
また、本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするGPR120機能調節剤に関し、特に、本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするGPR120(14273)アゴニストに関する。
【0018】
また、本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する糖尿病、肥満症又は高脂血症の治療剤及び/又は予防剤に関する。
【0019】
さらに、発明は、式(I)で表される化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る化合物(I)又はその薬学的に許容される塩は、強力なGPR120(14273)機能調節作用、特にアゴニスト作用を有しており、糖尿病、肥満症又は高脂血症の治療及び/又は予防に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本明細書において用いられる用語の意味について説明し、本発明に係る化合物について更に詳細に説明する。
【0022】
「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0023】
「低級アルキル基」とは、炭素数1乃至6の直鎖又は分岐を有するアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0024】
「低級アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が前記低級アルキル基で置換された基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
「C3−7シクロアルキル基」とは、炭素数3乃至7のシクロアルキル基を意味し、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロヘプチル基が挙げられる。
【0026】
本発明に係る式(I)
【0027】
【化6】

で用いられる各種記号について、具体的に説明する。
【0028】
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示す。
、R、R及びRが示すハロゲン原子は、前記定義のハロゲン原子と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる
【0029】
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を示すか、或いは、R及びRが一緒になってオキソ基を示す。
【0030】
及びRが、それぞれ独立して示す「低級アルキル基」とは、前記定義の低級アルキル基と同様であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0031】
Xは、C(O)又はS(O)を示す。
【0032】
Yは、酸素原子、硫黄原子、NH又はCHを示す。
これらのうち、Yとしては、酸素原子又はCHが好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0033】
Zは、水素原子又はハロゲン原子を示す。
Zが示す「ハロゲン原子」とは、前記定義のハロゲン原子と同様であり、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0034】
Rは、
(1)窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1
乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基(該5又は6員のヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示すか、或いは、
(2)オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基(該C3−7シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子に置き換わっていてもよく、また、該C3−7シクロアルキル基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示す。
【0035】
Rが示す「窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基」としては、具体的には、例えば、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサゾリル基及びピラゾリル基からなる群より選択される基が挙げられる。
【0036】
該5乃至6員のヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
該置換基の低級アルキル基としては、前記定義の低級アルキル基と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0037】
また、該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0038】
該置換基の低級アルコキシ基としては、前記定義の低級アルコキシ基と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0039】
該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、前記定義の同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。
該置換基のハロゲン原子としては、前記定義のハロゲン原子と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0040】
Rが示す「窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基(該5又は6員のヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲンで置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。)」としては、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基及びピラゾリル基からなる群より選択される基が好ましい。
【0041】
Rが示す「オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基」としては、前記定義のC3−7シクロプロピル基がオキソ基で置換された基を意味し、具体的には、例えば、オキソシクロプロピル基、2−オキソシクロブチル基、3−オキソシクロブチル基、2−オキソシクロペンチル基、3−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、3−オキソシクロヘキシル基、4−オキソシクロヘキシル基、2−シクロヘプチル基、3−シクロヘプチル基、4−シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0042】
また、「該オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基」は、C3−7シクロアルキル基を構成する任意の炭素原子の1つが窒素原子に置き換わっていてもよい。
【0043】
「該オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基であって、該C3−7シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子で置き換わった基」としては、具体的には、例えば、
【0044】
【化7】

[式中、
【0045】
【化8】

は、Yとの結合部位を示す]で表される基等が挙げられる。
【0046】
また、「オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基」又は「該オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基であって、該C3−7シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子で置き換わった基」は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0047】
該置換基の低級アルキル基は、前記定義の低級アルキル基と同様の基を意味し、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0048】
該置換基の低級アルコキシ基は、前記定義の低級アルコキシ基と同様の基を意味し、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0049】
該置換基のハロゲン原子とは、前記定義のハロゲン原子と同様の原子を意味し、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0050】
前記低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0051】
同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換された低級アルキル基としては、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0052】
同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基としては、具体的には、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0053】
式(I)中の式(II):
【0054】
【化9】

[式中、各記号は前記に同じ]で表される基としては、式(II−1):
【0055】
【化10】

からなる群より選択される基が好ましく、式(II−2):
【0056】
【化11】

からなる群より選択される基がより好ましい。
【0057】
式(I)で表される本発明に係る化合物としては、具体的には、例えば、
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オン、
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、
2−[3−フルオロ−5−(ピラジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
4−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1H−1,3(2H)−ジオン、
7−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインリン−1−オン、
4−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オン、
5−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オン、
2−[3−フルオロ‐(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシド、
2−{3−フルオロ−5−[(6−メチルピリジン−3−イル)オキシ]フェニル}イソインドリン−1−オン、
2−{3−フルオロ−5−[(3−メチルピラジン−2−イル)オキシ]フェニル}−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(ピリミジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(1,3−チアゾイル−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]シクロヘキサノン、
2−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]シクロペンタノン、又は
3−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]ピロリジン−2−オン
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
次に本発明に係る化合物の製造方法について説明する。
【0059】
本発明に係る化合物(I−1):
【0060】
【化12】

[式中、Rは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基(該5又は6員のヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示し、Yは、酸素原子又は硫黄原子を示し、他の記号は前記に同じ]で表される化合物は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【0061】
【化13】

[式中、Rは、低級アルキル基又はフェニル基を示し、他の記号は前記に同じ]
【0062】
(工程1)
本工程は、塩基の存在下、化合物(1)と化合物(2)とを反応させることにより、化合物(3)を製造する方法である。
【0063】
用いられる塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、カリウム−tert−ブトキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
該塩基の量は、化合物(1)1当量に対して、通常1乃至20当量、好ましくは1乃至5当量である。
【0064】
用いられる化合物(2)の量は、化合物(1)1当量に対して、通常1乃至20当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0065】
反応温度は、通常0乃至150度、好ましくは、室温乃至80度である。
反応時間は、通常0.1乃至72時間、好ましくは、0.5乃至24時間である。
【0066】
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、ジメチルホルムアミド(DMFと略すこともある)、テトラヒドロフラン(THFと略すこともある)、トルエン、N−メチルピロリドン(NMPと略すこともある)等が挙げられる。
【0067】
このようにして得られる化合物(3)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0068】
(工程2)
本工程は、化合物(3)を還元することにより、化合物(4)を製造する方法である。
本工程における還元反応としては、金属触媒の存在下、水素添加を行えばよい。
用いられる金属触媒としては、具体的には、例えば、ラネーニッケル、白金、パラジウム炭素、二酸化白金等が挙げられる。
【0069】
該金属触媒の量は、化合物(3)1当量に対して、通常0.01乃至10当量、好ましくは、0.1乃至2当量である。
【0070】
反応温度は、通常0乃至100度、好ましくは、室温乃至60度である。
反応時間は、通常0.1乃至72時間、好ましくは、0.5乃至12時間である。
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、メタノール、エタノール、THF等が挙げられる。
【0071】
このようにして得られる化合物(4)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0072】
(工程3)
本工程は、化合物(4)と化合物(5)又はその反応性誘導体とを反応させることにより、化合物(6)を製造する方法である。
【0073】
本反応は、文献記載の方法(例えば、ペプチド合成の基礎と実験、泉屋信夫他、丸善、1983年、コンプリヘンシブ オーガニック シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis)、第6巻、Pergamon Press社、1991年、等)、それに準じた方法又はこれらと常法とを組み合わせることにより、通常のアミド形成反応を行えばよく、即ち、当業者に周知の縮合剤を用いて行うか、或いは、当業者に利用可能なエステル活性化方法、混合酸無水物法、酸クロリド法、カルボジイミド法等により行うことができる。このようなアミド形成試薬としては、例えば塩化チオニル、塩化オキザリル、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−メチル−2−ブロモピリジニウムアイオダイド、N,N’−カルボニルジイミダゾ−ル、ジフェニルフォスフォリルクロリド、ジフェニルフォスフォリルアジド、N,N’−ジスクシニミジルカルボネ−ト、N,N’−ジスクシニミジルオキザレ−ト、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル又はベンゾトリアゾ−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が挙げられ、中でも例えば塩化チオニル、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド又はベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が好適である。またアミド形成反応においては、上記アミド形成試薬と共に塩基、縮合補助剤を用いてもよい。
【0074】
用いられる塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−アザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)等の第3級脂肪族アミン;例えばピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン又はイソキノリン等の芳香族アミン等が挙げられ、中でも例えば第3級脂肪族アミン等が好ましく、特に例えばトリエチルアミン又はN,N−ジイソプロピルエチルアミン等が好適である。
【0075】
用いられる縮合補助剤としては、例えばN−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル水和物、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド又は3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられ、中でも例えばN−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル等が好適である。
【0076】
用いられる化合物(4)の量は、化合物(5)又はその反応性誘導体1当量に対して、通常1乃至10当量、好ましくは、1乃至3当量である。
用いられる塩基の量は、用いられる化合物及び溶媒の種類その他の反応条件により異なるが、通常1乃至10当量、好ましくは1乃至5当量である。
【0077】
本工程において用いられる反応溶媒としては、例えば不活性溶媒が挙げられ、反応に支障のない限り、特に限定されないが、具体的には、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルエステル、酢酸メチルエステル、アセトニトリル、ベンゼン、キシレン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、好適な反応温度確保の点から、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル又はジメチルホルムアミド等が好ましい。
【0078】
反応時間は、通常0.1乃至72時間、好ましくは0.5乃至24時間である。
反応温度は、通常0度乃至溶媒の沸点温度、好ましくは室温乃至80度である。
【0079】
本工程において用いられる塩基、アミド形成試薬、縮合補助剤は、1種又はそれ以上組み合わせて、使用することができる。
【0080】
このようにして得られる化合物(6)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0081】
(工程4)
本工程は、塩基の存在下、化合物(6)を分子内環化させることにより、化合物(I−1)を製造する方法である。化合物(6)中のRとしては、工程4における反応において、ORとして脱離して、化合物合物(6)が分子内環化することにより、化合物(I−1)を与えるものであれば、いかなるものでもよいが、具体的には、例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、又はフェノキシ基等が挙げられる。
【0082】
用いられる塩基としては、工程1と同様の塩基が挙げられる。
該塩基の量は、化合物(6)1当量に対して、通常1乃至20当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0083】
反応時間は、通常0.1乃至72時間、好ましくは、0.5乃至5時間である。
反応温度は、通常0乃至200度、好ましくは、室温乃至150度である。
【0084】
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、具体的には、例えば、DMF、THF、トルエン、NMP等が挙げられる。
【0085】
このようにして得られる化合物(I−1)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製することができる。
【0086】
また、本発明に係る化合物(I−2):
【0087】
【化14】

[式中、各記号は前記に同じ]で表される化合物は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【0088】
【化15】

[式中、Rは、低級アルキル基を示し、Lは、Ts又はMsを示し、Halはハロゲン原子を示し、他の記号は前記に同じ]
【0089】
(工程5)
本工程は、塩基の存在下、化合物(3)と化合物(5)とを反応させることにより、化合物(8)を製造する方法である。
用いられる塩基としては、前記工程1と同様のものが挙げられる。
該塩基の量は、化合物(3)1当量に対して、通常0.1乃至50当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0090】
用いられる化合物(5)の量は、化合物(3)1当量に対して、通常1乃至50当量、好ましくは、1乃至5当量である。
反応温度は、通常0乃至150度、好ましくは、室温乃至60度である。
反応時間は、通常0.1乃至24時間、好ましくは、0.1乃至2時間である。
【0091】
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン等が挙げられる。
【0092】
このようにして得られる化合物(8)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0093】
(工程6)
本工程は、化合物(8)を還元することにより、化合物(9)を製造する方法である。
用いられる還元剤としては、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム等が挙げられる。
該還元剤の量は、化合物(8)1当量に対して、通常1乃至50当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0094】
反応温度は、通常−78乃至80度、好ましくは、0乃至50度である。
反応時間は、通常0.1乃至24時間、好ましくは、0.5乃至2時間である。
【0095】
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0096】
このようにして得られる化合物(9)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0097】
(工程7)
本工程は、塩基の存在下、化合物(9)と化合物(10)とを反応させることにより、本発明に係る化合物(11)を製造する方法である。
【0098】
用いられる塩基としては、前記工程1と同様のものが挙げられる。
該塩基の量は、化合物(9)1当量に対して、通常1乃至50当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0099】
用いられる化合物(10)の量は、化合物(9)1当量に対して、通常1乃至50当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0100】
反応温度は、通常−50乃至100度、好ましくは、0乃至50度である。
反応時間は、通常0.1乃至24時間、好ましくは、0.5乃至5時間である。
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルエステル等が挙げられる。
【0101】
このようにして得られる化合物(11)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0102】
(工程8)
本工程は、化合物(11)と塩基とを反応させることにより、本発明に係る化合物(I−2)を製造する方法である。
【0103】
用いられる塩基としては、前記工程1と同様のものが挙げられる。
該塩基の量は、化合物(11)1当量に対して、通常1乃至100当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0104】
反応温度は、通常0乃至150度、好ましくは、室温乃至100度である。
反応時間は、通常0.1乃至24時間、好ましくは、0.5乃至4時間である。
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、具体的には、例えば、DMF、THF、トルエン、NMP等が挙げられる。
【0105】
このようにして得られる化合物(I−2)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0106】
また、本発明に係る化合物(I−3):
【0107】
【化16】

[式中、各記号は前記に同じ]で表される化合物は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【0108】
【化17】

[式中、各記号は前記に同じ]
【0109】
(工程9)
本工程は、酸の存在下、化合物(4)と無水フタル酸とを反応させることにより、本発明に係る化合物(I−3)を製造する方法である。
【0110】
用いられる酸としては、具体的には、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
該酸の量は、化合物(4)1当量に対して、通常0.1乃至100当量、好ましくは、1乃至10当量である。
【0111】
用いられる無水フタル酸の量は、化合物(4)1当量に対して、通常1乃至100当量、好ましくは、1乃至5当量である。
反応時間は、通常0.1乃至72時間、好ましくは、1乃至12時間である。
反応温度は、通常0乃至200度、好ましくは、室温乃至溶媒の沸点温度である。
【0112】
反応溶媒は、反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、DMF、THF、トルエン、クロロホルム等が挙げられる。
【0113】
このようにして得られる化合物(I−3)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製することができる。
【0114】
また、本発明に係る化合物(I−2−1)は、例えば、以下の方法によっても製造することができる。
【0115】
【化18】

[式中、Proは、ヒドロキシ基の保護基を示し、Lは脱離基を示し、他の記号は前記に同じ]
【0116】
(工程10)
本工程は、ヒドロキシ基の保護基Proを除去することにより、化合物(14)を製造する方法である。
【0117】
本工程における反応は、文献記載の方法(プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、T.W.Green著、第2版、John Wiley&Sons社、1991年)、これに準じた方法又はこれらと定法とを組み合わせることにより行うことができる。
【0118】
ヒドロキシ基の保護基として、ベンジル基を用いる場合、メタノール中、水素雰囲気下、パラジウム炭素により該ベンジル基を除去することができる。
このようにして得られる化合物(14)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0119】
(工程11)
本工程は、塩基の存在下、化合物(14)と化合物(2)とを反応させることにより、本発明に係る化合物(I−2)を製造する方法である。
【0120】
用いられる塩基としては、具体的には、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、カリウム−tert−ブトキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
【0121】
該塩基の量は、化合物(14)1当量に対して、通常1乃至100当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0122】
用いられる化合物(2)の量は、化合物(14)1当量に対して、通常1乃至100当量、好ましくは、1乃至5当量である。
【0123】
反応温度は、通常0乃至200度、好ましくは、室温乃至150度である。
反応時間は、通常0.1乃至72時間、好ましくは、1乃至24時間である。
【0124】
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、具体的には、例えば、DMF、THF、トルエン、NMP等が挙げられる。
【0125】
このようにして得られる化合物(I−2)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0126】
保護基の導入及び除去は、文献記載の方法(プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、T.W.Green著、第2版、John Wiley&Sons社、1991年)、これに準じた方法又はこれらと定法とを組み合わせることにより行うことができる。
【0127】
本発明に係る化合物は、薬学的に許容される塩として存在することができ、当該塩は、前記(I)及びそれに包含される(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物を用いて、常法に従って製造することができる。
【0128】
当該酸付加塩としては、例えば塩酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等の低級アルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のアリ−ルスルホン酸塩;フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸等の有機酸である酸付加塩を挙げることができる。
【0129】
また、本発明の化合物が酸性基を当該基内に有している場合、例えばカルボキシル基等を有している場合には、当該化合物を塩基で処理することによっても、相当する薬学的に許容される塩に変換することができる。当該塩基付加塩としては、例えば例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、グアニジン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩基による塩が挙げられる。
【0130】
さらに本発明の化合物は、遊離化合物又はその塩の任意の水和物又は溶媒和物として存在してもよい。
【0131】
また逆に塩又はエステルから遊離化合物への変換も常法に従って行うことができる。
【0132】
また、本発明に係る化合物は、その置換基の態様によって、光学異性体、ジアステレオ異性体、幾何異性体等の立体異性体又は互変異性体が存在する場合がある。これらの異性体は、すべて本発明に係る化合物に包含されることは言うまでもない。更にこれらの異性体の任意の混合物も本発明に係る化合物に包含されることは言うまでもない。
【0133】
2型糖尿病或いはそれに関連する疾患若しくは症状の予防又は治療のための薬剤を製造するにあたり、本発明に係る式(I)の化合物は、式(I)の化合物と担体とを組み合わせて用いることができる。
【0134】
本発明に係る式(I)の化合物の予防又は治療のための投与量は、もちろん、治療する症状の性質、選択する特定の化合物及び投与経路により変動する。
【0135】
また、年齢、体重及び各患者の感受性によっても変動する。一般的に、1日の投与量は、単回又は複数回の量として、体重1kgあたり、約0.001mgから約100mgであり、好ましくは、体重1kgあたり、約0.01mgから約50mgであり、より好ましくは約0.1mgから10mgである。これらの制限を越えた範囲での投与量の使用が必要な場合もありうる。
【0136】
適切な経口投与量の例としては、単回又は1日あたり、2乃至4回の複数回投与としては、少なくとも約0.01mgから多くとも2.0gである。好ましくは、投与量の範囲は、1日に1回又は2回の投与で、約1.0mgから約200mgである。より好ましくは、投与量の範囲は、1日1回の投与で約10mgから100mgである。
【0137】
静脈内投与又は経口投与を用いた場合には、代表的な投与範囲は、1日あたり、体重1kgあたり、式(I)の化合物を約0.001mgから約100mg、好ましくは0.01mgから約10mg、であり、より好ましくは1日あたり、体重1kgあたり、式(I)の化合物を約0.1mgから10mgである。
【0138】
上述したように、医薬組成物は、式(I)の化合物と薬学的に許容される担体を含む。「組成物」という用語は、直接又は間接的に、2又はそれ以上のいかなる成分を組み合わせ、複合させ又は凝集させてできたもの、1又はそれ以上の成分を解離させた結果できたもの、或いは、成分間の他のタイプの作用又は相互作用の結果によりできたものだけでなく、担体を構成する活性及び不活性成分(薬学的に許容される賦形剤)も含む。
【0139】
医薬上許容される担体と組み合わせて、2型糖尿病又は高脂血症の治療、予防或いその発症を遅らせるのに有効な量の式(I)の化合物が含まれる組成物が好ましい。
【0140】
本発明に係る化合物の効果的な量を哺乳類、とりわけヒトに投与するためには、いかなる適切な投与経路でも用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、静脈、眼、肺、鼻などを用いることができる。投与形態の例としては、錠剤、トローチ、散剤、懸濁液、溶液、カプセル剤、クリーム、エアロゾールなどがあり、経口用の錠剤が好ましい。
【0141】
経口用の組成物を調製するに際しては、通常の医薬用媒体であれば、いかなるものも用いることができ、そのような例としては、例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、香料添加剤、保存料、着色料などであり、経口用の液体組成物を調製する場合には、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液が挙げられ、担体としては、例えば、澱粉、砂糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられ、経口用の固体組成物を調製する場合には、例えば、パウダー、カプセル剤、錠剤などが挙げられ、中でも経口用の固体組成物が好ましい。
【0142】
投与のしやすさから、錠剤やカプセル剤が最も有利な経口投与形態である。必要ならば、錠剤は、標準の水性又は非水性の技術でコーティングすることができる。
【0143】
上記の通常の投与形態に加えて、式(I)に係る化合物は、例えば、U.S.特許番号3,845,770、3,916,899、3,536,809、3,598,123、3,630,200及び4,008,719に記載の放出制御手段及び/又はデリバリー装置によっても、投与することができる。
【0144】
経口投与に適した本発明に係る医薬組成物は、パウダー又は顆粒として、或いは水溶性の液体、非水溶性の液体、水中油型のエマルジョン又は油中水型のエマルジョンとして、それぞれがあらかじめ決められた量の活性成分を含むカプセル剤、カシュー剤又は錠剤を挙げることができる。そのような組成物は、薬剤学上いかなる方法を用いて調製することができるが、すべての方法は、活性成分と1又は2以上の必要な成分からなる担体とを一緒にする方法も含まれる。
【0145】
一般に、活性成分と液体の担体又はよく分離された固体の担体或いは両方とを均一かつ充分に混合し、次いで、必要ならば、生産物を適当な形にすることにより、組成物は調製される。例えば、錠剤は、圧縮と成形により、必要に応じて、1又は2以上の副成分と共に調製される。圧縮錠剤は、適当な機械で、必要に応じて、結合剤、潤滑剤、不活性な賦形剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、活性成分をパウダーや顆粒などの形に自由自在に圧縮することにより調製される。
【0146】
成形された錠剤は、パウダー状の湿った化合物と不活性な液体の希釈剤との混合物を適当な機械で成形することにより調製される。
【0147】
好ましくは、各錠剤は、活性成分を約1mg乃至1g含み、各カシュー剤又はカプセル剤は、活性成分を約1mg乃至500mg含む。
【0148】
式(I)の化合物についての医薬上の投与形態の例は、次の通りである。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
式(I)の化合物は、2型糖尿病又は高脂血症に関連する疾患又は症状だけでなく、2型糖尿病又は高脂血症の発症の治療/予防/遅延に用いられる他の薬剤と組み合わせて用いることができる。該他の薬剤は、通常用いられる投与経路又は投与量で、式(I)の化合物と同時に又は別々に投与することができる。
【0154】
式(I)の化合物は、1又は2以上の薬剤と同時に使用する場合には、式(I)の化合物とこれらの他の薬剤とを含んだ医薬組成物が好ましい。従って、本発明に係る医薬組成物は、式(I)の化合物に加えて、1又は2以上の他の活性成分も含む。式(I)の化合物と組み合わせて用いられる活性成分の例としては、別々に投与するか、又は同じ医薬組成物で投与してもよいが、以下のものに限定されることはない。
(a)他のGPR120アゴニスト
(b)グルコキナーゼ活性化剤
(c)ビグアニド(例、ブホルミン、メトホルミン、フェンホルミン)
(d)PPARアゴニスト(例、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ノシグリタゾン)
(e)インスリン
(f)ソマトスタチン
(g)α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、ミグリトール、アカルボース)、
(h)インスリン分泌促進剤(例、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリボムリド、グリクラジド、グリメルピリド、グリピジド、グリキジン、グリソキセピド、グリブリド、グリへキサミド、グリピナミド、フェンブタミド、トラザミド、トルブタミド、トルシクラミド、ナテグリニド、レパグリニド)、及び
(i)DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤)
【0155】
2番目の活性成分に対する式(I)の化合物の重量比は、幅広い制限の範囲内で変動し、さらに、各活性成分の有効量に依存する。従って、例えば、式(I)の化合物をPPARアゴニストと組み合わせて用いる場合には、式(I)の化合物のPPARアゴニストに対する重量比は、一般的に、約1000:1乃至1:1000であり、好ましくは、約200:1乃至1:200である。式(I)の化合物と他の活性成分との組み合わせは、前述の範囲内であるが、いずれの場合にも、各活性成分の有効量が用いられるべきである。
本発明に係る化合物は、GPR120機能調節作用を有するが、ここで、「GPR120機能調節作用」とは、GPR120受容体の機能を活性化又は抑制することを意味し、例えば、GPR120アゴニストもGPR120機能 調節作用を有するものに含まれる。
【0156】
本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩は、GPR120機能調節作用、特に、GPR120アゴニスト作用を有しており、糖尿病又は高脂血症の治療及び/又は予防に有用である。
【0157】
当業者は、添付されたクレーム又はその等価のものの範囲内に入る限り、要求される設計及び他の要因に依存して、種々の変更、組み合わせ、サブ−コンビネーション及び改変が起こりうることを理解するであろう。
【実施例】
【0158】
以下に製剤例、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0159】
製剤例1
実施例1の化合物10部、重質酸化マグネシウム15部及び乳糖75部を均一に混合して、350μm以下の粉末状又は細粒状の散剤とする。この散剤をカプセル容器に入れてカプセル剤とする。
【0160】
製剤例2
実施例1の化合物45部、澱粉15部、乳糖16部、結晶性セルロース21部、ポリビニルアルコール3部及び蒸留水30部を均一に混合した後、破砕造粒して乾燥し、次いで篩別して直径1410乃至177μmの大きさの顆粒剤とする。
【0161】
製剤例3
製剤例2と同様の方法で顆粒剤を作製した後、この顆粒剤96部に対してステアリン酸カルシウム3部を加えて圧縮成形し直径10mmの錠剤を作製する。
【0162】
製剤例4
製剤例2の方法で得られた顆粒剤90部に対して結晶性セルロース10部及びステアリン酸カルシウム3部を加えて圧縮成形し、直径8mmの錠剤とした後、これにシロップゼラチン、沈降性炭酸カルシウム混合懸濁液を加えて糖衣錠を作製する。
【0163】
実施例のシリカゲルカラムクロマトグラフィーには、和光純薬社Wakogel(登録商標)C−300またはバイオタージ社製KP−Sil(登録商標)Silicaプレパックドカラムを用いた。分取用薄層クロマトグラフィーはメルク社製KieselgelTM60F254,Art.5744を用いた。塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィーは富士シリシア化学社製Chromatorex(登録商標)NH(100−250meshまたは200−350mesh)を用いた。
【0164】
H−NMRは、JEOL AL400(400MHz)、Mercury(400MHz)、Inova(400MHz)を使用し、テトラメチルシランを標準物質として用いて測定した。またマススペクトルはWaters社製micromassZQを使用しエレクトロスプレイイオン化法(ESI)又は大気圧化学イオン化法(APCI)で測定した。
【0165】
下記の実施例における略号の意味を以下に示す。
i−Bu:イソブチル基
n−Bu:n−ブチル基
t−Bu:tert−ブチル基
Boc:tert−ブトキシカルボニル基
Me:メチル基
Et:エチル基
Ph:フェニル基
i−Pr:イソプロピル基
n−Pr:n−プロピル基
CDCl:重クロロホルム
CDOD:重メタノール
DMSO−d:重ジメチルスルホキシド
下記に核磁気共鳴スペクトルにおける略号の意味を示す。
s :シングレット
d :ダブレット
dd:ダブルダブレット
dt:ダブルトリプレット
ddd:ダブルダブルダブレット
Sept:セプテット
t :トリプレット
m :マルチプレット
br:ブロード
brs:ブロードシングレット
q :カルテット
J :カップリング定数
Hz:ヘルツ
【0166】
実施例1
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オンの合成
【0167】
【化19】

(1)3−(3−フルオロ−5−ニトロフェノキシ)ピリジンの合成
3−ヒドロキシピリジン3.25gのジメチルホルムアミド75ml溶液に炭酸カリウム6.75g及び1,3−ジフルオロ−5−ニトロベンゼン5.0gを加え、反応液を100度にて6時間撹拌した。反応液を冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液にて希釈し、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、水及び飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を黄色油状物質として得た。
H−NMR(CDCl)δ:7.05(1H,dt,J=8.6,2.4Hz),7.39−7.45(2H,m),7.62−7.64(1H,m),7.70(1H,dt,J=8.2,2.2Hz),8.49(1H,d,J=2.2Hz),8.55(1H,dd,J=4.4,2.2Hz).
ESI−MS Found:m/z 235.1[M+H]+
(2)3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)アニリンの合成
3−(3−フルオロ−5−ニトロフェノキシ)ピリジン8.0gのメタノール70ml溶液にパラジウム−炭素触媒を加え、反応液を水素雰囲気下、室温にて2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧留去し、粗生成物を黄色油状物質として得た。
(3)2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オンの合成
3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)アニリン200mgのピリジン5.0ml溶液に2−(フェノキシメチル)安息香酸230mgおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド250mgを加え、反応液を室温にて1時間撹拌した。反応液に水及び飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、1N塩酸水溶液および飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗生成物を無色油状物質として得た。得られた粗生成物のN−メチルピロリドン5.0mL溶液に炭酸カリウム410mgを加え、120度にて8時間撹拌した。反応液を冷却後飽和塩化アンモニウム水溶液にて希釈し、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、水及び飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.77(2H,s),6.46−6.50(1H,m),7.30(1H,dd,J=8.3,4.6Hz),7.35−7.40(2H,m),7.46−7.53(3H,m),7.56−7.61(1H,m),7.87(1H,d,J=7.8Hz),8.38−8.45(2H,m).
ESI−MS Found:m/z 321.0[M+H]+
【0168】
実施例2
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
【0169】
【化20】

(1)2−({[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]アミノ}スルホニル)安息香酸メチルの合成
3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)アニリン1.10gのピリジン22ml溶液に2−クロロスルホニル安息香酸メチル1.92gを加え、反応液を室温にて終夜撹拌した。反応液に水及び飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、1N塩酸水溶液および飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.03(3H,s),6.43(1H,dt,J=9.4,2.2Hz),6.65−6.67(1H,m),6.75(1H,dt,J=9.4,2.2Hz),7.23−7.31(2H,m),7.57−7.67(2H,m),7.85(1H,dd,J=7.3,1.5Hz),7.91(1H,dd,J=7.8,1.5Hz),8.20(1H,brs),8.28−8.30(1H,m),8.42(1H,dd,J=4.6,1.7Hz).
ESI−MS Found:m/z 403.2[M+H]+
(2)N−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−2−(ヒドロキシメチル)ベンゼンスルホンアミドの合成
2−({[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]アミノ}スルホニル)安息香酸メチル1.50gのテトラヒドロフラン22ml溶液に、0℃にて1.0M水素化ジイソブチルアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液7.50mlを加え、反応液を同温にて1時間撹拌した。反応液に飽和ロッシェル塩水溶液及び酢酸エチルを加え30分間撹拌した後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を無色油状物質として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:4.84(2H,s),6.18−6.24(1H,m),6.29(1H,brs),6.42(1H,d,J=11.7Hz),7.30(1H,t,J=7.6Hz),7.34−7.38(1H,m),7.40−7.43(1H,m),7.49(1H,t,J=7.6Hz),7.61(1H,d,J=7.3Hz),7.69(1H,dd,J=7.6,1.2Hz),8.30(1H,d,J=2.4Hz),8.39(1H,dd,J=4.4,1.5Hz).
ESI−MS Found:m/z 375.1[M+H]+
(3)2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
N−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−2−(ヒドロキシメチル)ベンゼンスルホンアミド1.39gの酢酸エチル20ml溶液に、トリエチルアミン1.30ml及びメタンスルホニルクロリド0.36mlを加え、室温にて反応液を1時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧留去し、粗生成物を無色油状物質として得た。得られた粗生成物のジメチルホルムアミド20ml溶液に炭酸カリウム920mgを加え、室温にて1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、水及び飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.83(2H,s),6.47(1H,dt,J=9.6,2.1Hz),6.91−6.93(1H,m),7.01(1H,dt,J=10.1,2.1Hz),7.32−7.35(1H,m),7.38−7.42(1H,m),7.51(1H,d,J=7.8Hz),7.62(1H,t,J=7.6Hz),7.69−7.73(1H,m),7.88(1H,d,J=7.8Hz),8.46(1H,dd,J=4.6,1.2Hz),8.48(1H,d,J=2.9Hz).
ESI−MS Found:m/z 357.3[M+H]+
【0170】
実施例3
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオンの合成
【0171】
【化21】

3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)アニリン330mgの酢酸5.0ml溶液に無水フタル酸160mgを加え、反応液を100℃にて終夜撹拌した。反応液を冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムにて抽出した。有機層を合わせて、水及び飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:6.70−6.74(1H,m),6.96(1H,s),7.00−7.05(1H,m),7.31(1H,dd,J=8.4,4.6Hz),7.40(1H,d,J=8.4Hz),7.78(2H,dd,J=5.3,3.1Hz),7.92(2H,dd,J=5.3,3.1Hz),8.42(1H,d,J=4.3Hz),8.45−8.47(1H,m).
ESI−MS Found:m/z 335.1[M+H]+
【0172】
実施例4
2−[3−フルオロ−5−(ピラジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
【0173】
【化22】

(1)2−[3−(ベンジルオキシ)−5−フルオロフェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
ベンジルアルコールを用いて、実施例1(1)、(2)及び実施例(1)−(3)と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
(2)3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンズイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノールの合成
2−[3−(ベンジルオキシ)−5−フルオロフェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシド800mgのメタノール10.0ml溶液にパラジウム−炭素触媒を加え、反応液を水素雰囲気下、室温にて1.5時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧留去し、粗生成物を白色固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:5.03(2H,s),6.38(1H,dt,J=10.8,2.2Hz),6.65(1H,dt,J=10.8,2.2Hz),6.78−6.80(1H,m),7.66−7.70(2H,m),7.79−7.83(1H,m),7.99(1H,d,J=8.3Hz),10.21(1H,brs).
(3)2−[3−フルオロ−5−(ピラジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンズイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノールのジメチルホルムアミド溶液に炭酸カリウムおよび2−クロロピラジンを加え、反応液を80℃にて終夜撹拌した。反応液を冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液にて希釈し、酢酸エチルにて抽出した。有機層を合わせて、水及び飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、表題化合物を黄色油状物質として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.86(2H,s),6.74(1H,dt,J=9.3,2.0Hz),7.07−7.12(2H,m),7.51(1H,d,J=7.3Hz),7.60−7.64(1H,m),7.68−7.73(1H,m),7.89(1H,d,J=7.8Hz),8.15(1H,dd,J=2.9,1.5Hz),8.33(1H,d,J=2.9Hz),8.47−8.49(1H,m).
ESI−MS Found:m/z 358.1[M+H]+
【0174】
実施例5
4−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1H−1,3(2H)−ジオンの合成
【0175】
【化23】

3−フルオロフタル酸無水物を用いて、実施例3と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:6.74(1H,d,J=9.6Hz),6.93(1H,s),7.00(1H,d,J=9.6Hz),7.31(1H,dd,J=8.4,4.7Hz),7.38−7.47(2H,m),7.72−7.81(2H,m),8.42(1H,d,J=4.7Hz),8.46(1H,d,J=2.2Hz).
ESI−MS Found:m/z 353.1[M+H]+
【0176】
実施例6
7−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインリン−1−オンの合成
【0177】
【化24】

2−フルオロ−6−フェノキシメチル安息香酸を用いて、実施例1(3)と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.78(2H,s),6.50(1H,dt,J=9.2,2.2Hz),7.11(1H,t,J=8.8Hz),7.25−7.32(2H,m),7.35−7.39(2H,m),7.45(1H,dt,J=10.8,2.2Hz),7.53−7.59(1H,m),8.38−8.43(2H,m).
ESI−MS Found:m/z 339.4[M+H]+
【0178】
実施例7
4−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オンの合成
【0179】
【化25】

3−フルオロ−2−フェノキシメチル安息香酸を用いて、実施例1(3)と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.82(2H,s),6.50(1H,dt,J=9.2,2.2Hz),7.26−7.33(2H,m),7.38(2H,d,J=8.8Hz),7.48(2H,dt,J=10.6,2.2Hz),7.68(1H,d,J=7.6Hz),8.40−8.44(2H,m).
ESI−MS Found:m/z 339.4[M+H]+
【0180】
実施例8
5−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オンの合成
【0181】
【化26】

4−フルオロ−2−フェノキシメチル安息香酸を用いて、実施例1(3)と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.75(2H,s),6.48(1H,dt,J=9.4,2.2Hz),7.15−7.20(2H,m),7.30(1H,dd,J=8.9,4.2Hz),7.34−7.39(2H,m),7.47(1H,dt,J=11.0,2.2Hz),7.85(1H,dd,J=8.9,5.2Hz),8.40−8.45(2H,m).
ESI−MS Found:m/z 339.4[M+H]+
【0182】
実施例9
2−[3−フルオロ‐(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドの合成
【0183】
【化27】

2−クロロスルホニル安息香酸メチルを用いて、実施例2(1)と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:6.81(1H,dt,J=9.5,2.1Hz),7.02(1H,s),7.08(1H,dt,J=8.6,2.1Hz),7.33(1H,dd,J=8.2,4.7Hz),7.42(1H,d,J=8.2Hz),7.85−7.98(3H,m),8.13(1H,d,J=7.2Hz),8.43−8.50(2H,m).
ESI−MS Found:m/z 371.1[M+H]+
【0184】
実施例10
2−{3−フルオロ−5−[(6−メチルピリジン−3−イル)オキシ]フェニル}イソインドリン−1−オンの合成
【0185】
【化28】

3−ヒドロキシ−6−メチルピリジンを用いて、実施例1(1)〜(3)と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.54(3H,s),4.75(2H,s),6.43(1H,dt,J=9.5,2.2Hz),7.15(1H,d,J=8.5Hz),7.28(1H,dd,J=8.5,2.8Hz),7.32−7.35(1H,m),7.45−7.49(3H,m),7.55−7.60(1H,m),7.86(1H,d,J=7.6Hz),8.31(1H,d,J=2.8Hz).
ESI−MS Found:m/z 335.2[M+H]+
【0186】
実施例11
2−{3−フルオロ−5−[(3−メチルピラジン−2−イル)オキシ]フェニル}−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
【0187】
【化29】

2−クロロ−3−メチルピラジンを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.66(3H,s),4.87(2H,s),6.72(1H,dt,J=9.1,2.2Hz),7.05−7.09(2H,m),7.51(1H,d,J=7.8Hz),7.62(1H,t,J=7.8Hz),7.71(1H,t,J=7.8Hz),7.89(1H,d,J=7.8Hz),7.94(1H,d,J=2.4Hz),8.20(1H,d,J=2.4Hz).
ESI−MS Found:m/z 372.4[M+H]+
【0188】
実施例12
2−[3−フルオロ−5−(ピリミジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
【0189】
【化30】

2−クロロピリミジンを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.87(2H,s),6.79(1H,dt,J=9.1,2.2Hz),7.07−7.12(2H,m),7.16(1H,dt,J=10.2,2.2Hz),7.51(1H,d,J=7.8Hz),7.62(1H,t,J=7.6Hz),7.70(1H,td,J=7.6,1.1Hz),7.89(1H,d,J=7.8Hz),8.60(2H,d,J=4.9Hz).
ESI−MS Found:m/z 358.4[M+H]+
【0190】
実施例13
2−[3−フルオロ−5−(1,3−チアゾイル−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
【0191】
【化31】

2−ブロモチアゾールを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:5.08(2H,s),7.09−7.15(2H,m),7.19−7.21(1H,m),7.27−7.31(2H,m),7.62−7.67(2H,m),7.78(1H,t,J=7.6Hz),7.98(1H,d,J=7.8Hz).
ESI−MS Found:m/z 363.0[M+H]+
【0192】
実施例14
2−[3−フルオロ−5−(ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシドの合成
【0193】
【化32】

4−クロロピリミジンを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.87(2H,s),6.75(1H,dt,J=8.9,2.1Hz),6.97−7.00(1H,m),7.07−7.09(1H,m),7.12(1H,dt,J=10.1,2.1Hz),7.51(1H,d,J=7.8Hz),7.63(1H,t,J=7.6Hz),7.69−7.74(1H,m),7.89(1H,d,J=7.8Hz),8.64(1H,d,J=5.9Hz),8.82(1H,s).
ESI−MS Found:m/z 358.1[M+H]+
【0194】
実施例15
2−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]シクロヘキサノンの合成
【0195】
【化33】

2−クロロシクロヘキサノンを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:1.53−1.56(1H,m),1.74−1.85(3H,m),1.96−2.01(1H,m),2.27−2.35(2H,m),2.61(1H,td,J=13.5,7.0Hz),5.03(2H,s),5.05−5.10(1H,m),6.58(1H,dt,J=9.5,2.1Hz),6.75−6.82(2H,m),7.63−7.68(2H,m),7.79(1H,t,J=7.3Hz),7.96(1H,d,J=7.6Hz).
ESI−MS Found:m/z 376.1[M+H]+
【0196】
実施例16
2−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]シクロペンタノンの合成
【0197】
【化34】

2−クロロシクロペンタノンを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:1.77−1.84(2H,m),1.94−1.97(1H,m),2.19−2.31(3H,m),4.97(1H,t,J=8.9Hz),5.04(2H,s),6.73(1H,dt,J=10.2,2.1Hz),6.82−6.86(2H,m),7.64−7.68(2H,m),7.79(1H,t,J=7.6Hz),7.96(1H,d,J=8.2Hz).
ESI−MS Found:m/z 362.2[M+H]+
【0198】
実施例17
3−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]ピロリジン−2−オンの合成
【0199】
【化35】

3−クロロピロリジン−2−オンを用いて、実施例4と同様の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物を白色固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:1.96−2.02(1H,m),2.49−2.51(1H,m),3.20−3.22(2H,m),4.96(1H,t,J=7.6Hz),5.04(2H,s),6.78(1H,dt,J=10.2,2.1Hz),6.83−6.87(2H,m),7.65−7.67(2H,m),7.79(1H,t,J=7.8Hz),7.96(1H,d,J=8.5Hz),8.03−8.06(1H,brm).
ESI−MS Found:m/z 363.1[M+H]+
【0200】
式(I)に包含される化合物が示す医薬としての有用性は、例えば下記の試験例において証明される。
【0201】
本発明に係る化合物の医薬としての有用性の評価を以下のin vitro試験記載の方法で行った。
試験1:遺伝子のクローニング
GenBank Accesion No. NM_181745(ヒト)、No. NM_181748(マウス)における既知のGPCR、GPR120のORFの塩基配列前後の領域でプライマーを合成し、RT−PCRにより遺伝子のクローニングを行った。使用したプライマーの塩基配列は下記の通りである。サブクローニング用にそれぞれ制限酵素BamHI、EcoRI認識部位を導入している。
hGPR120_F01: aggatccgccgccatgtcccctgaatgcgcgcgggcag (配列番号:1)
hGPR120_R01: CGAATTCTTAGCCAGAAATAATCGACAAGTCATTTC (配列番号:2)
mGPR120_F01: AGGATCCGCCGCCATGTCCCCTGAGTGTGCACAGACGAC (配列番号:3)
mGPR120_R01: CGAATTCTTAGCTGGAAATAACAGACAAGTCATTTC (配列番号:4)
【0202】
ヒトGPR120受容体遺伝子は、Human small intestine Marathon−ready cDNA(CLONTECH社:現TaKaRa社)、マウスGPR120受容体遺伝子は、マウスBAT組織由来RNAを逆転写したcDMAをPCRの試料として用いた。
【0203】
PCRは、KOD_Plus(TOYOBO社)を用い、94℃2分の後、94℃15秒、55℃30秒、68℃1分を30サイクル行い、反応後にExTaq(TaKaRa社)0.5Unitsを加えさらに72℃10分間インキュベートし、末端にAの付加反応を行った。マウスのPCRには、終濃度2% DMSOの条件で35サイクル行った。
増幅されたPCR産物は、pCR2.1−TOPO TA cloning kit(Invitrogen社)を用いてクローニングした。塩基配列の確認にはBigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit ver.3.0 、DNAシークエンサー377(Applied Biosystems社)で電気泳動し塩基配列を決定した。ヒトGPR120遺伝子は、GenBank Accesion No. NM_181745に登録されている配列より16アミノ酸短いものであった。
pCR2.1−TOPOベクターにクロ−ニングされたGPR120受容体遺伝子は、制限酵素BamHI、EcoRI認識部位が導入されており、同酵素によりベクターより切り出し、真核生物発現ベクターEF1/V5−His B(Invitrogen社)のBamHI、EcoRI認識部位にサブクローニングした。
【0204】
試験2:発現細胞の作製
LIPOFECTAMINE2000(Invitrogen社製)を使用して、GPR120受容体のcDNAをCHO/NFAT−BLA細胞にトランスフェクトし、薬剤耐性細胞を単離し、GPR120安定発現株を得た。GPR120を発現させたCHO細胞は、10%牛胎児血清、100units/mL penicillin、0.1mg/mL streptomycin sulfate、250ug/mL Zeocin、500ug/mL Geneticin 15mM HEPESを含むDMEM/F12培地で培養した。
【0205】
試験3:細胞内カルシウム濃度測定
測定前日に96ウェルブラックプレート(パッカード社、ViewPlate)1ウェルにつき20,000細胞でプレーティングされたヒトGPR120発現CHO細胞に、2.5mM Probenecid 存在下で、4μM Fluo−4 AM(蛍光カルシウム指示試薬)をCO2インキュベーターで1時間インキュベートし、取り込ませた。これに、20mM HEPES、2.5mM Probenecidを含んだHBSS溶液にて希釈した被検化合物を加え、Fluorescence Imagin Plate Reader(FLIPR、モレキュラー・デバイス社)にて細胞内カルシウム濃度の変化を測定してアゴニスト作用を調べた。
本発明化合物に包含される化合物群のGPR120アゴニスト作用は、以下の通りであった。
【0206】
【表5】

【0207】
上記の結果より、本発明に係る化合物又は薬学的に許容されるその塩は、GPR120アゴニスト作用を有しており、糖尿病、肥満症、高脂血症の治療及び/又は予防に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し;
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を示すか、或いは、R及びRが一緒になってオキソ基を示し;
Xは、C(O)又はS(O)を示し;
Yは、酸素原子、硫黄原子、NH又はCHを示し;
Zは、水素原子又はハロゲン原子を示し;
Rは、
(1)窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を環内に1乃至3有する、5又は6員のヘテロアリール基(該5又は6員のヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示すか、或いは、
(2)オキソ基で置換されたC3−7シクロアルキル基(該C3−7シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子に置き換わっていてもよく、また、該C3−7シクロアルキル基(該C3−7シクロアルキル基を構成する炭素原子の1つが窒素原子に置き換わっていてもよい)は、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)、を示す]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Yが酸素原子又はCHである請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Yが酸素原子である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
Rが、
(1)ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサゾリル基及びピラゾリル基からなる群より選択される基であるか、或いは、
(2)シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基及びヘキサメチレンイミニル基(これらの基は、オキソ基で置換されており、また、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)、からなる群より選択される基である請求項3記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Rが、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサゾリル基及びピラゾリル基からなる群より選択される基である請求項3記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Rが、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基及びヘキサメチレンイミニル基(これらの基は、オキソ基で置換されており、また、同一又は異なる1乃至3の低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該低級アルキル基及び低級アルコキシ基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)からなる群より選択される基である請求項3記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
式(I)中の式(II):
【化2】

が、式(II−1):
【化3】

からなる群より選択される基である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記式(II)が、式(II−2):
【化4】

からなる群より選択される基である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
式(I)で表される化合物が、
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オン、
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、
2−[3−フルオロ−5−(ピラジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
4−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1H−1,3(2H)−ジオン、
7−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインリン−1−オン、
4−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オン、
5−フルオロ−2−[3−フルオロ−5−(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]イソインドリン−1−オン、
2−[3−フルオロ‐(ピリジン−3−イルオキシ)フェニル]−1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシド、
2−{3−フルオロ−5−[(6−メチルピリジン−3−イル)オキシ]フェニル}イソインドリン−1−オン、
2−{3−フルオロ−5−[(3−メチルピラジン−2−イル)オキシ]フェニル}−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(ピリミジン−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(1,3−チアゾイル−2−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−フルオロ−5−(ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、
2−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]シクロヘキサノン、
2−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]シクロペンタノン、又は
3−[3−(1,1−ジオキシド−1,2−ベンゾイソチアゾール−2(3H)−イル)−5−フルオロフェノキシ]ピロリジン−2−オン
である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含むGPR120機能調節剤。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含むGPR120アゴニスト。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖尿病、肥満症又は高脂血症の予防及び/又は治療剤。

【公表番号】特表2012−520240(P2012−520240A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538761(P2011−538761)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/JP2010/054288
【国際公開番号】WO2010/104195
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(595152759)MSD株式会社 (22)
【Fターム(参考)】