説明

新規ベンジリデン−インドリノンとその医療及び診断用途

本発明は、広く、有機化学、生化学、薬理学、及び医学に関する。より詳しくは、本発明はプロテインキナーゼ(「PKs」)、特にタンパク質チロシンキナーゼの活性を調節することによって、異常なPK活性に関連する疾患に対して有益な効果が期待される、3−ベンジリデン−インドリン−2−オン誘導体及びこれらの生理的に許容される塩及びプロドラッグに関する。本発明はさらに、がんなどのタンパク質キナーゼ介在性疾患及び疾病の緩和、予防及び/又は治療のための、単独で、又は他の治療薬との併用での、これらの化合物の使用を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2008年10月14日に出願の米国仮出願番号第61/105,206号と2009年1月19日に出願の米国仮出願番号第61/145,595号の優先権の利益を主張し、両方の出願の内容はすべての目的のために全体が参照により本出願に包含される。
【0002】
本発明は、広く、有機化学、生化学、薬理学、及び医学に関する。より詳しくは、本発明はプロテインキナーゼ(「PKs」)、特にタンパク質チロシンキナーゼの活性を調節することによって、異常なPK活性に関連する疾患に対して有益な効果が期待される、3−ベンジリデン−インドリン−2−オン誘導体及びこれらの生理的に許容される塩及びプロドラッグに関する。本発明はさらに、がんなどのタンパク質キナーゼ介在性疾患及び疾病の緩和、予防及び/又は治療のための、単独で、又は他の治療薬との併用での、これらの化合物の使用を対象とする。
【背景技術】
【0003】
調節されていないタンパク質キナーゼのシグナル伝達に関連する疾患を治療するためのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の使用は、過去20年間にわたる大規模な研究の対象となっている。たとえば、ガンなどの細胞増殖的性疾患、アテローム性動脈硬化症、関節炎、再狭窄(restenonsis)、及び糖尿病のような代謝性疾患を含む疾患の治療に有用なインドリノン化合物の使用は、米国特許第6,147,106号に記載された。
【0004】
TKIsは、進歩しつつあるガンを含むチロシンキナーゼ関連疾患に対する標的療法の分野における、一般的に重要な薬剤である。従来、これらの適用の基本機序は、腫瘍形成、すなわちがん遺伝子中毒を促進するための排他的なシグナルを提供する、慢性骨髄性白血病におけるBcr−abl転位、又は乳がんにおけるHER2増幅などの、単一の遺伝子損傷(monogenetic lesion)に依存している(Weinstein IB. Cancer. Addiction to oncogenes−the Achilles heal of cancer. Science 2002 Jul 5;297(5578):63−64)。しかし、山のような証拠は、多くの悪性腫瘍に対するキナーゼ変異が、ゲノム中の特定の「ホットスポット」上に集中するよりはむしろ、散発的であることを示唆している(Bleeker FE, Bardelli A. Genomic landscapes of cancers: prospects for targeted therapies. Pharmacogenomics 2007 Dec;8(12):1629−1633; Greenman C, Stephens P, Smith R, DalGliesh GL, Hunter C, Bignell G, et al. Patterns of somatic mutation in human cancer genomes. Nature 2007 Mar 8;446(7132):153−158; Ruhe JE, Streit S, Hart S, Wong CH, Specht K, Knyazev P, et al. Genetic alterations in the tyrosine kinase transcriptome of human cancer cell lines.Cancer Res 2007 Dec 1;67(23):11368−11376; Thomas RK, Baker AC, Debiasi RM, Winckler W, Laframboise T, Lin WM, et al. High−throughput oncogene mutation profiling in human cancer. Nat Genet 2007 Mar;39(3):347−351)。これは、病気開始と進行のための潜在的な伝達機構(driver)が、おそらく、単剤療法の効果を弱体化させる複数の発癌性欠陥を含むことを意味する。さらに、最近の研究も、レセプターのクロストークが広汎的であり、かつ、腫瘍が発癌性依存を変える手段を提供することを証明した。例えば、MET増幅は、EGFR阻害に抵抗性の非小細胞肺癌で示され(Engelman JA, Zejnullahu K, Mitsudomi T, Song Y, Hyland C, Park JO, et al. MET amplification leads to gefitinib resistance in lung cancer by activating ERBB3 signaling. Science 2007 May 18;316(5827):1039−1043)、IGF−1Rシグナリングも上方制御されて、エルロチニブに起因する成長停止を回避した(Buck E, Eyzaguirre A, Rosenfeld−Franklin M, Thomson S, Mulvihill M, Barr S, et al. Feedback mechanisms promote cooperativity for small molecule inhibitors of epidermal and insulin−like growth factor receptors. Cancer Res 2008 Oct 15;68(20):8322−8332)。その結果、複数のキナーゼを標的とすることは、慢性治療において化学療法抵抗性につながる、他のキナーゼを使用する発生率をおそらく減らす(Petrelli A, Giordano S. From single−to multi−target drugs in cancer therapy: when aspecificity becomes an advantage.Curr Med Chem 2008; 15(5):422−432;Weinstein IB,Joe A.Oncogene addiction.Cancer Res 2008 May 1;68(9):3077−3080)。
【0005】
肝細胞癌(HCC)は、細胞シグナリングにおける明白な病気を引き起こす活性化突然変異が分かりにくいままのガンの例である。いくつかのチロシンキナーゼは、HCCの発生及び増殖に結びつくことが報告されている。たとえば、FAK、PYK2、IGF−1RとFGFR3の過剰発現は、別々に報告され、かつ疾患重症度の一因となり得る(Itoh S,Maeda T,Shimada M,Aishima S,Shirabe K,Tanaka S,et al.Role of expression of focal adhesion kinase in progression of hepatocellular carcinoma.Clin Cancer Res 2004 Apr 15;10(8):2812−2817;Qiu WH,Zhou BS,Chu PG,Chen WG,Chung C,Shih J,et al.Over−expression of fibroblast growth factor receptor 3 in human hepatocellular carcinoma.World J Gastroenterol 2005 Sep 14;11(34):5266−5272;Scharf JG,Braulke T.The role of the IGF axis in hepatocarcinogenesis.Horm Metab Res 2003 Nov;35(11−12):685−693;Sun CK,Ng KT,Sun BS,Ho JW,Lee TK, Ng I,et al.The significance of proline−rich tyrosine kinase2(Pyk2)on hepatocellular carcinoma progression and recurrence. Br J Cancer 2007 Jul 2;97(1):50−57)。ごく最近、HCC患者のおよそ3分の1で、正常から腫瘍への移行において、FGFR4の上昇が報告され、かつこれとAFP制御との潜在的な関連性が証明された(Ho HK,Pok S,Streit S,Ruhe JE,Hart S,Lim KS,et al.Fibroblast growth factor receptor 4 regulates proliferation,anti−apoptosis and alpha−fetoprotein secretion during hepatocellular carcinoma progression and represents a potential target for therapeutic intervention.J Hepatol 2009 Jan;50(1):118−127)。現在、HCCにおけるTKIsの臨床試験は、当初は他の病気のために設計された、承認された薬剤又は試験用の薬剤の経験的な使用法を採用する。当然のことながら、これらは病気に関係する特定のチロシンキナーゼを必ずしも標的としているわけではなかったので、これらの試験からは限界的な効果(marginal effect)しか得られなかった。例えば、切除不能なHCCにおけるイマチニブ及びエルロチニブのフェーズII臨床研究は、参加した大多数の患者が病気の進行を示し、かつ患者のだれもが完全寛解又は部分寛解さえも示さず、期待外れの反応を示した(Lin AY,Fisher GA,So S,Tang C,Levitt L. Phase II study of imatinib in unresectable hepatocellular carcinoma.Am J Clin Oncol 2008 Feb;31(l):84−88;Thomas MB,Chadha R,Glover K,Wang X,Morris J,Brown T,et al.Phase 2 study of erlotinib in patients with unresectable hepatocellular carcinoma.Cancer 2007 Sep 1;110(5):1059−1067)。
【0006】
VEGFRs、PDGFRs、RET、c−Kit並びにRafキナーゼに関してマイクロモル以下の阻害効果を有するマルチ−ターゲティングTKIであるソラフェニブ(Nexavar(商品名))が、2007年にHCC治療に関してFDAに承認され(Simpson D,Keating GM.Sorafenib: in hepatocellular carcinoma.Drugs 2008;68(2):251−258)、そして、もう一つのマルチ−ターゲティングTKIであるスニチニブの治験が現在進行中であるが(Zhu AX.Development of sorafenib and other molecularly targeted agents in hepatocellular carcinoma.Cancer 2008 Jan 15;112(2):250−259)、当技術分野において、ガンに対して目的とした効果を有する、強力な広いスペクトルのTKIsの必要性が残っている。
【0007】
この必要性は、本発明の化合物と、これらの薬学的な使用によって解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プロテインキナーゼ(「PKs」)の活性を調節し、従ってガンなどの異常なPK活性に関連した疾病に対して有益な効果が期待されている、3−ベンジリデン−インドリン−2−オン誘導体と、これらの生理的に許容される塩及びプロドラッグを対象とする。
【0009】
第1の態様において、本発明は化学式Iの化合物、又はこれの薬学的に許容される塩又はそのプロドラッグを対象とする。
【化1】

(ここで、
それぞれのRとRは、非置換又は置換C〜C10アルキル、非置換又は置換C〜C10アルケニル、非置換又は置換C〜C10アルキニル、非置換又は置換C〜C10アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、及びトリハロメチルからなる群より独立して選択され、
mは整数1、及び、nは整数1又は2であり、
mとnがそれぞれ1の場合、Rは環Aの6位、及び、Rは環Bの2’、3’又は4’位であり、
mが1でnが2の場合、Rは環Aの6位、及びRは環Bの3’又は4’位である。)
【0010】
別の態様において、本発明は化学式IIの化合物、又は薬学的に許容される塩又はそのプロドラッグを対象とする。
【化2】

(ここで、
Xは、F、Cl、Br又はC〜Cアルコキシであり、
それぞれのRは、非置換又は置換C〜C10アルキル、非置換又は置換C〜C10アルケニル、非置換又は置換C〜C10アルキニル、非置換又は置換C〜C10アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、及びトリハロメチルからなる群より独立して選択され、
oは整数1又は2であり、
oが1の場合、Rは環Bの3’又は4’位であり、
oが2の場合、Rは環Bの3’又は4’位である。)
【0011】
さらなる態様において、本発明は化学式I又はIIの化合物を調製する方法を対象とし、該方法は、塩基の存在下で、化学式IIIのオキシインドールを、化学式IVのアルデヒドと反応させることを含む。
【化3】

【化4】

【0012】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の化合物又は塩又はプロドラッグと、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む、医薬品組成物を対象とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、タンパク質キナーゼの触媒活性を調節するための方法を対象とし、該方法は、該タンパク質キナーゼと、本発明の少なくとも1つの化合物、塩又はプロドラッグとを接触させることを含む。
【0014】
さらに別の態様において、本発明はタンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病の治療又は予防のための方法に関連し、薬学的に有効量の本発明の化合物を、それを必要とする患者に投与するを含む。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は肝細胞癌に対して特異的な効果を有するタンパク質キナーゼ阻害剤を同定するための方法を対象とし、
(i)候補化合物を肝細胞癌細胞株と培養すること、
(ii)細胞生存度を測定すること、
(iii)正常な肝細胞系に対する前記候補化合物の効果と、測定された細胞生存度とを比較して、肝細胞癌細胞に対して特異的な活性を有する化合物を同定すること、を含む。
【0016】
本発明は、以下の発明の詳細な説明で、そして、以下の図面の簡単な説明に関して、さらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図IAとIBは、G1−ブロック(図IA)とG2−ブロック(図IB)から遊離した、HCT116細胞における本発明の2つの例示的な化合物46と48の効果を示す、蛍光活性化細胞分類(FACS)図を示す。R6、R3、R4、R5は、それぞれサブG1期、G1期、S期及びG2/M期を指す。化合物46と48は、それぞれ15μMと5μMで試験した(〜1.5×IC50)。
【図2】図2は、本発明の例示的な化合物の生存度(化合物47対スニチニブ(HepG2、HuH7及びTHLE2))である。(A)HuH7、(B)HepG2、及び、(C)THLE2細胞は、96穴フォーマット上に蒔かれ、そして、0〜10μMの化合物47(■)及びスニチニブ(●)で72時間処理された。生存度は、Cell−Titer Glo(商品名)によって測定され、そして結果は未処置の対照における生細胞のパーセンテージとして、+/−変動係数(n=8)と共に表わした。
【図3】図3は、別々のHCC細胞株のパネル上での、本発明の例示的な化合物47の効果を示す。HCC増殖に対する化合物47の有効性は、Cell−Titer−Glo分析により決定され、HCC細胞株のより広いパネル上(Hep3B(●)、Hs817T(■)、PLC/PRF/5(▲)、及びSK−Hep1(▼))で試験された。
【図4】図4は、本発明の例示的な化合物、化合物47のHepG2とHuH7におけるウェスタンブロット解析を示す。HuH7又はHepG2細胞は、化合物47の濃度を増やして(0、1、5又は、10μM)、24時間処理した。細胞可溶化物は回収され、そしてHSP60をローディングコントロール(loading control)として、切断されたPARP、ホスホ−ErK、ホスホ−Akt、PCNA、サイクリンD1、Bax、及びBCL−xLに対してイムノブロットした。
【図5】図5は、本発明の例示的な化合物47のHuH7とHepG2におけるカスパーゼ−3活性についての効果を示す。図4に記載されているように処理されたHuH7細胞(塗りつぶしあり)及びHepG2細胞(塗りつぶしなし)は、蛍光発生Ac−DEVD−AMCの触媒加水分解によって実行されるカスパーゼ−3分析のために回収された。結果は、AMC基質(n=3)を用いたインキュベーション単位時間あたりの、1μg溶解物あたりの正規化されたRFUとして表わした。
【図6】図6は、本発明の例示的な化合物47が、HuH7において、AFP転写を強力に阻害することを示す。HuH7細胞は、化合物47(1、5、10μM)又はスニチニブ(10μM)で24時間処理した。リアルタイムPCRは、AFPについて行った。結果として得られた平均CT値は、ハウスキーピング対照としての18S mRNAに対して正規化され、そして、データは転写発現についての未処置対照に対する倍率変化(fold change)として表わした。エラーバーは、倍率変化に変換した標準偏差(n=3)を表わす。
【図7】図7は、RTKアレイと、本発明の例示的な化合物47のRTKリン酸化についての効果を示す。血清飢餓状態のHuH7細胞を、化合物47(1、5、10μM)又はスニチニブ(10μM)で、24時間処理した。キナーゼリン酸化の変化は、ヒトのホスホRTKアレイで決定した。
【図8】図8は、イムノブロットによる、IGF−1R、EGFR、EphA2及びTyro3リン酸化における、本発明の例示的な化合物47の効果を示す。(A)HuH7細胞は、賦形剤、化合物47(1、5又は10μM)又はスニチニブ(10μM)で24時間処理した。サンプルは、ホスホ−IGF−1R(Y980及びY1135/1136)に対してイムノブロットした。ローディングコントロールをHSP60とした。(B)同様に処理される細胞は、抗ホスホチロシン(4G10)でイムノブロッティングする前に、抗EGFR、抗EphA2と抗Tyro3で免疫沈降した。膜は、それぞれの抗体をローディングコントロールとして、その後再検出された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、化学式Iの化合物を提供する:
【化5】

化学式Iの化合物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグにおいて、置換基RとRはそれぞれ、非置換又は置換C〜C10アルキル、非置換又は置換C〜C10アルケニル、非置換又は置換C〜C10アルキニル、非置換又は置換C〜C10アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン及びトリハロメチルからなる群より、それぞれ独立して選択される。整数mは1であり、そして、整数nは1又は2である。したがって、mとnのそれぞれが1の場合、Rは環Aの6位であり、そして、Rは環Bの2’、3’又は4’位である。mが1でnが2の場合、Rは環Aの6位にあり、そして、Rは環Bの3’位及び4’位である。
【0019】
化学式Iの化合物の別の態様において、それぞれのRは、ハロゲン及びアルコキシC〜Cからなる群より独立して選択される。したがって、特定の態様において、それぞれのRは、ブロモ、クロロ、フルオロ、フルオロ及びメトキシからなる群より独立して選択される。
【0020】
化学式Iの化合物の別の態様において、それぞれのRは、C〜Cアルコキシ、ヒドロキシ、及びトリハロメチルからなる群より独立して選択される。特定の態様において、それぞれのRは、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より独立して選択される。
【0021】
いくつかの態様において、本発明は化学式IIの化合物を対象とする:
【化6】

化学式(II)の化合物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグにおいて、置換基Xは、F、Cl、Br又はC〜Cアルコキシである。それぞれのR置換基は、非置換又は置換C〜C10アルキル、非置換又は置換C〜C10アルケニル、非置換又は置換C〜C10アルキニル、非置換又は置換C〜C10アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン及びトリハロメチルからなる群より独立して選択される。整数oは、1又は2である。したがって、oが1の場合、Rは環Bの3’又は、4’位にある。oが2の場合、Rは環Bの3’及び、4’位にある。
【0022】
化学式IIの化合物の一態様において、それぞれのRはC〜Cアルコキシ、ヒドロキシ、及びトリハロメチルからなる群より独立して選択される。特定の態様において、各々のRは、メトキシ、ヒドロキシル、及びトリフルオロメチルからなる群より独立して選択される。
【0023】
化学式IIの化合物の別の態様において、Xはメトキシ又はエトキシであることができる。
【0024】
本明細書で開示される化合物は、強力な抗増殖活性を有し、かつ、特にタンパク質チロシンキナーゼ活性の増加である、不適切又は異常タンパク質チロシンキナーゼの機能に関連し、又はタンパク質チロシンキナーゼの機能に関与する疾患や疾病の治療に特に有用である。従って、本発明の化合物によって治療及び/又は予防され得る疾患及び疾病は、例として、過剰増殖性障害、及び肝細胞癌、肺癌、大腸癌及び乳癌などのとガンが挙げられるが、これらの疾患及び疾病に限定されない。同時に、本発明者は、本発明の化合物が化学的予防の可能性(実施例5を参照)を提供することも見出した。このように、本明細書に開示される化合物は、癌のような異常なプロテインキナーゼ活性に関連する疾患に対して有益な効果を示すだけでなく、通常の細胞について潜在的な細胞保護作用を有する。
【0025】
本明細書では、「アルキル」は、直鎖又は分枝鎖を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。好ましくは、アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する(本明細書中で数値範囲、例えば「1〜10」が記載されている場合はいつでも、官能基(この場合アルキル基)は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子など、最大10個までの炭素原子を含んでもよいことを意味する)。より詳しくは、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する中程度のアルキル基、又は例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどの、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基であってもよい。アルキル基は置換されているか、又は未置換であってもよい。置換される場合、置換基は、1つ以上の置換基、例えば1又は2の置換基であり、C〜Cシクロアルキル、C〜C14アリール、1〜4個の環原子が窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される5〜10員環のヘテロアリール、1〜3個の環原子が独立して窒素、酸素又は硫黄である5〜10員環のヘテロ脂環、ヒドロキシ、C〜C10アルコキシ、C〜Cシクロアルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、シリル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、及び−NR1011であって、R10とR11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C14アリール、カルボニル、アセチル、スルホニル、アミノ、及びトリフルオロメタンスルホニル、又は、R10とR11とが、それらが結合している窒素原子と一緒に、5又は6員環を形成するヘテロ脂環からなる群より独立して選択される。
【0026】
「シクロアルキル」基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブテニル、シクロペンテニル、及びシクロヘキセニルなどの、1つ又はそれ以上の環が完全共役π電子系を有さない、3〜8個の環原子の全炭素単環(すなわち、1対の隣接した炭素原子を共有する環)を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、アダマンタン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、及びシクロヘプタトリエンを含むが、これらに限定されない。シクロアルキル基は置換されているか、又は非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、1つ以上の置換基、例えば1つ又は2つの置換基であり、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C14アリール、1〜4個の環原子が、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される5〜10員環のヘテロアリール、1〜3個の環原子が独立して窒素、酸素又は硫黄である5〜10員環のヘテロ脂環、ヒドロキシ、C〜C10アルコキシ、C〜Cシクロアルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、シリル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、及び上記で定義されるR10とR11を有する−NR1011から独立して選択される。
【0027】
本明細書で定義される「アルケニル」基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル又はペンテニル及び、1−又は2−プロペニル、1−、2−又は3−ブテニルなどのこれらの構造異性体である、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなるアルケニル基を指す。アルケニルは、2〜10個の炭素原子、例えば、2〜8個の炭素原子、2〜6個の炭素原子又は2〜5個の炭素原子を含んでもよく、ここで、例えば「2〜10」又は「C〜C10」などの数の範囲は、所定の範囲のそれぞれの整数を指し、例えば「C〜C10アルケニル」は、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子など、最大10個までの炭素原子を含むアルケニル基を意味する。本発明のアルケニル又はアルケン基は、置換されているか、又は非置換でもよい。置換される場合、置換基はアルキル基置換に関する上記と同じ群より選択してもよい。このような官能基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、1,4−ブタジエニル、ペンテニル、ヘキセニル、4−メチル−1−ヘキセニル(4−methylhex−1−enyl)、4−エチル−2−メチル−1ヘキセニル(4−ethyl−2−methylhex−1−enyl)などを含むが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で定義される「アルキニル」基は、アセチレン、エチニル、プロピニル、ブチニル又はペンチニル、及び上記のこれらの構造異性体である、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなるアルキニル基を指す。アルキニル基は、2〜10個の炭素原子、例えば、2〜8個の炭素原子、2〜6個の炭素原子又は2〜5個の炭素原子を含んでもよく、ここで、例えば「2〜10」又は「C〜C10」などの数の範囲は、所定の範囲のそれぞれの整数を指し、例えば「C〜C10アルキニル」は、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子など、最大10個までの炭素原子を含むアルキニル基を意味する。本発明のアルキニル基は、置換されているか、又は非置換でもよい。置換される場合、置換基はアルキル基置換に関する上記と同じ群より選択してもよい。アルキン基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0029】
「アリール」基は、6〜14個の環原子の、及び完全共役型π電子系を有する、全炭素単環基又は縮合環多環基(すなわち、隣接した一対の炭素原子を共有する環)を指す。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、及びアントラセニルであるが、これらに制限されない。アリール基は、置換されているか、又は非置換でもよい。置換される場合、置換基は、1つ以上の置換基、例えば1、2又は3つの置換基であって、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C14アリール、1〜4個の環原子が、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される5〜10員環のヘテロアリール、1〜3個の環原子が独立して窒素、酸素又は硫黄である5〜10員環のヘテロ脂環、ヒドロキシ、C〜C10アルコキシ、C〜Cシクロアルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、シリル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、及び上記で定義されるR10とR11を有する−NR1011から独立して選択される。好ましくは、置換基は、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、ニトロ、カルボキシ、メトキシカルボニル、スルホニル、又はアミノから独立して選択される。
【0030】
「ヘテロアリール」基は、1個、2個、3個、又は4個の環原子が、窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択され、残りは炭素である、5〜10個の環原子の単環又は縮合芳香環(すなわち、隣接した一対の原子を共有する環)を指す。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イソベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリジニル、キナゾリニル、フタラジニル(pthalazinyl)、キノキサリニル、シンノリニル(cinnnolinyl)、ナフチリジニル(napthyridinyl)、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、5,6,7,8−テトラヒドロキノリル、5、6、7、8−テトラ−ヒドロイソキノリル、プリニル、プテリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、カルバゾリル、キサンテニル又はベンゾキノリル(benzoquinolyl)であるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されているか、又は非置換でもよい。置換されている場合、置換基は、1つ以上の置換基、例えば1つ又は2つの置換基であり、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C14アリール、1〜4個の環原子が、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される5〜10員環のヘテロアリール、1〜3個の環原子が独立して窒素、酸素又は硫黄である5〜10員環のヘテロ脂環、ヒドロキシ、C〜C10アルコキシ、C〜Cシクロアルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、シリル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、及び上記で定義されるR10とR11とを有する−NR1011から独立して選択される。好ましくは、置換基は、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、ニトロ、カルボキシ、メトキシカルボニル、スルホニル、又はアミノから独立して選択される。
【0031】
「ヘテロ脂環」基は、窒素、酸素、nが0〜2である−S(O)からなる群より選択される、1個、2個、又は3個のヘテロ原子を含み、残りは炭素である、5〜10個の環原子の単環又は縮合芳香環を指す。該環は、1つ以上の二重結合を有してもよい。しかし、該環には完全共役π電子系がない。ヘテロ脂環基の例は、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾリジン、テトラヒドロピリダジン、テトラヒドロフラン、チオモルホリン、テトラヒドロピリジンであるが、これらに限定されない。ヘテロ脂環は、置換されているか、又は非置換でもよい。置換される場合、置換基は1つ以上の置換基、例えば1、2、又は3つの置換基であり、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C14アリール、1〜4個の環原子が、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される5〜10員環のヘテロアリール、1〜3個の環原子が独立して窒素、酸素又は硫黄である5〜10員環のヘテロ脂環、ヒドロキシ、C〜C10アルコキシ、C〜Cシクロアルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、シリル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、及び上記で定義されるR10とR11とを有する−NR1011から独立して選択される。好ましくは、置換基は、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、ニトロ、カルボキシ、メトキシカルボニル、スルホニル、又はアミノから独立して選択される。
【0032】
「ヒドロキシル」基は、−OH基を指す。
【0033】
本明細書中で定義される「アルコキシル」基は、−O非置換アルキル及び−O置換アルキル基を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書中で定義する、「シクロアルコキシ」基は−O−シクロアルキル基を指す。1つの例は、シクロプロピルオキシである。
【0035】
本明細書中で定義する、「アリールオキシ」基は、−O−アリールと−O−ヘテロアリール基を指す。例としては、フェノキシ、ナフチルオキシ、ピリジルオキシ、フラニルオキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0036】
「メルカプト」基は、−SH基を指す。
【0037】
本明細書中で定義する「アルキルチオ」基は、S−アルキルと−S−シクロアルキル基を指す。例としては、メチルチオ、エチルチオなどを含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書中で定義する、「アリールチオ」基は、−S−アリールと−S−ヘテロアリール基を指す。例としては、フェニルチオ、ナフチルチオ、ピリジルチオ、フラニルチオなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中で定義する「スルフィニル」基は、−S(O)−R”を指し、ここで、R”は、水素、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環の炭素を通して結合)、及び、ヘテロ脂環(環の炭素を通して結合)からなる群より選択される。
【0040】
本明細書中で定義される「スルホニル」基は、−S(O)R”基を指し、ここでR”は水素、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環の炭素を通して結合)、ヘテロ脂環(環の炭素を通して結合)からなる群より選択される。
【0041】
「トリハロメチル」基は、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、ジクロロフルオロメチルなどの、Xが本明細書中で定義したハロゲン基である、−CX基を指す。
【0042】
本明細書中で定義される「カルボニル」は、−C(=O)−R”基を指し、ここでR”は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環の炭素を通して結合)とヘテロ脂環(環の炭素を通して結合)からなる群より選択される。代表的な例としては、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、ホルミル、シクロプロピルカルボニル、ピリジニルカルボニル、ピロリジン−1イルカルボニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0043】
「チオカルボニル」基は、本明細書で定義するR”を有する−C(=S)−R”を指す。
【0044】
本明細書中で同様の意味で用いられる「C−カルボキシ」と「カルボキシ」は、例えば、−COOH、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどの、本明細書で定義するR”を有する−C(=O)O−R”基を指す。
【0045】
「O−カルボキシ」基は、例えばメチルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシなどの、本明細書で定義するR”を有する−OC(=O)R”基を指す。
【0046】
「アセチル」基は、−C(=O)CH基を指す。
【0047】
「カルボン酸」基は、R”が水素であるC−カルボキシ基を指す。
【0048】
「ハロ」又は「ハロゲン」基は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0049】
「シアノ」基は、−CN基を指す。
【0050】
「ニトロ」基は、−NO基を指す。
【0051】
「O−カルバミル」基は、本明細書中で定義するR10とR11を有する、−OC(=O)NR1011基を指す。
【0052】
「N−カルバミル」基は、本明細書中で定義するR10とR11を有する、R11OC(=O)NR10−基を指す。
【0053】
「O−チオカルバミル」基は、本明細書中で定義するR10とR11を有する、−O(C=S)NR1011基を指す。
【0054】
「N−チオカルバミル」グループは、本明細書中で定義するR10とR11を有する、R11OC(=S)NR10−基を指す。
【0055】
「アミノ」基は、例えば、−NH、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルアミノ、メチルアミノなどの、R10とR11が独立して水素又は非置換の低級アルキルである、−NR1011を指す。
【0056】
「C−アミド」基は、本明細書中で定義するR10とR11とを有する、−C(=O)NR1011基を指す。例えば、R10は水素又は非置換C〜Cアルキルであり、そして、R11は、水素、必要に応じてヘテロ脂環、ヒドロキシ、又はアミノで置換されたC〜Cアルキルである。例えば、C(=O)NR1011は、アミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、ジエチルアミノカルボニル、ジエチルアミノエチルアミノカルボニル、エチルアミノエチルアミノカルボニルなどであってもよい。
【0057】
「N−アミド」基は、例えばアセトアミドなどの、本明細書中で定義するR10とR11を有する、R11(C=O)NR10−基を指す。
【0058】
いくつかの態様において、化学式Iaの化合物が提供される。
【化7】

ここでmとnの両方が1である場合、
は、6−F、6−Cl、及び6−OCHからなる群より選択される1つであり、
は、3’OCH、3’−OH、4’−OCH、及び3’CFからなる群より選択される1つであり、
ここでmが1でnが2の場合、
は、6−F、6−Cl、及び6−OCHからなる群より選択される1つであり、
は、3’OCH、3’−OH、4’−OCH、及び3’CFからなる群より選択される1つである。
【0059】
他の態様において、化学式IIaの化合物が提供される。
【化8】

ここでnが1である場合、
は、3’−F、3’−Cl、3’−Br、3’−OCH、3’−OH、4’−OCH、3’CF、4’−F、4’−Cl、4’−Br、4’−OCH、4’−OH、3’−OCH、及び4’CFからなる群より選択される1つであり、
ここでnが2である場合、
は、3’−F、3’−Cl、3’−Br、3’−OCH、3’−OH、4’−OCH、3’CF、4’−F、4’−Cl、4’−Br、4’−OCH、4’−OH、3’−OCH及び4’CFからなる群より選択される1つである。
【0060】
特定の態様において、本明細書に記載される化合物は、
6−フルオロ−3−(3’−メトキシ-ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物39と呼ぶ)、
6−フルオロ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−フルオロ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物41と呼ぶ)、
6−クロロ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−メトキシ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物42と呼ぶ)、
6−メトキシ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−メトキシ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−フルオロ−3−(3’−ヒドロキシ−4’メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物43と呼ぶ)、
6−クロロ−3−(3’−ヒドロキシ−4’メトキシ−ベンジリデン)-インドリン−2−オン(以下、化合物44と呼ぶ)、
6−メトキシ−3−(3’−ヒドロキシ−4’メトキシ・ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物45と呼ぶ)、
6−フルオロ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物46と呼ぶ)、
6−クロロ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物47と呼ぶ)、
6−メトキシ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物48と呼ぶ)、
5−クロロ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン(以下、化合物40と呼ぶ)、
5−クロロ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
5−クロロ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、及び
5−クロロ−3−(3’トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン
からなる群より選択される。
【0061】
他の態様において、本発明の化合物は、6−クロロ−3−(3’―トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オンである。
【0062】
本発明の化合物又は薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、当技術分野で既に知られている技術と、容易に入手できる出発物質とを用いて合成することができる。本発明の化合物は、本明細書中に参照としてその全体が包含される、Tang等に付与された、米国特許第6,469,032号に記載される合成方法のような、既知の技術によっても合成してもよい。したがって、本発明の化合物は、米国特許第6,469,032号の実施例5.1と実施例5.4に記載の方法A又はBによる、適切な2−インドリノン化合物を適切なアルデヒドと反応させることによって、調製することができる。
【0063】
本発明又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグの化合物は、実施例1のスキーム1に記載される合成スキームで得られることもできる。より詳細には、化学式I又はIIの化合物は、塩基の存在下で、化学式(III)のオキシインドールと化学式(IV)のアルデヒドとを反応させることによって調製することができる。
【化9】

【化10】

ここで、それぞれの化学式IIIとIVにおけるRとR置換基は、本明細書中の化学式I又はIIで定義されている。いくつかの態様において、塩基はアミン塩基を含むことができる。アミン塩基は、例えばアジリジン、ピペリジンとN−メチルピペリジンなどの環状アミンを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、塩基はピペリジンでありえる。
【0064】
本明細書において、本明細書中に記載される化学式I又はIIの化合物は、E−異性体、Z−異性体又はE及びZ異性体の混合物として存在してよい。
【0065】
本発明の化合物は、単独で、又は、他の薬理活性化合物と組み合わせて、製剤処方又は医薬組成物で投与することができる。
【0066】
医薬品組成物に含まれてよい他の活性成分の例は、核酸アルキル化剤、ヌクレオシド類似体、アントラサイクリン、抗生物質、アロマターゼ阻害薬、葉酸拮抗薬、エストロゲン受容体修飾薬、無機ヒ酸塩、微小管阻害薬、ニトロソ尿素、破骨細胞阻害薬、プラチナ含有化合物、レチノイド、トポイソメラーゼ1阻害薬、トポイソメラーゼ2阻害薬、チミジル酸シンターゼ阻害薬、アロマターゼ阻害薬、シクロオキシゲナーゼ抑制薬、イソフラボン、チロシンキナーゼ阻害薬、成長因子、ビスホスホネート、及びモノクローナル抗体を包含するが、これらに限定されない。
【0067】
本発明の医薬品組成物に含まれてよいアルキル化剤は、ブスルファン(Myleran(商品名)、Busilvex(商品名))、クロラムブシル(Leukeran(商品名))、イホスファミド(Mitoxana(商品名)、MESNAの有無にかかわらない)、シクロホスファミド(Cytoxan(商品名)、Neosar(商品名))、グルホスフアミド、メルファラン/L−PAM(Alkeran(商品名))、ダカルバジン(DTIC―Dome(商品名))、及びテモゾロミド(temozolamide)(Temodar(商品名))を包含するが、これらに限定されない。具体例として、一般にシクロホスファミドとして知られている、2−ビス[(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキシアザホスフォリン−2−オキシドは、ステージIIIとIVの悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、菌状息肉腫、神経芽細胞腫、卵巣腺癌、網膜芽腫、及び乳癌の治療に使用されるアルキル化剤である。
【0068】
本発明の医薬品組成物に含まれてよいヌクレオシド類似体は、シタラビン(Cytosar(商品名))、ゲムシタビン(Gemzar(商品名))、2フッ化デオキシシチジン類似体、フルダラビン(Fludara(商品名))、プリンの類似体、6−メルカプトプリン(Puri-Nethol(商品名))と及びそのプロドラッグであるアザチオプリン(Imuran(商品名))を包含するが、これらに限定されない。
【0069】
本発明の医薬品組成物に含まれてもよいアントラサイクリンは、ドキソルビシン(Adriamycin(商品名)、Doxil(商品名)、Rubex(商品名))、ミトキサントロン(Novantrone(商品名))、イダルビシン(Idamycin(商品名))、バルルビシン(Valstar(商品名))、及びエピルビシン(Ellence(商品名))を包含するが、これらに限定されない。1つの例として、より一般的にはドキソルビシンとして知られている、化合物(8S,10S)−10−(4−アミノ−5−ヒドロキシ−6−メチル−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(2−ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−7,8,9,10−テトラヒドロテトラセン−5,12−ジオンは、Streptomyces peucetius var.Caesiusの培養物から単離される細胞障害性アントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンは、急性リンパ性白血病、急性骨髄芽球白血病、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、軟部肉腫及び骨肉腫、乳癌、卵巣癌、移行上皮性膀胱がん、甲状腺癌、ホジキン及び非ホジキン型リンパ腫、気管支原性肺癌、及び胃癌などの、播種性腫瘍性疾患において軽減をもたらすのに成功裡に用いられている。
【0070】
本発明の医薬品組成物に含まれてよい抗生物質は、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(Cosmegen(商品名))、ダウノルビシン/ダウノマイシン(Cerubidine(商品名)、DanuoXome(商品名))、ブレオマイシン(Blenoxane(商品名))、エピルビシン(Pharmorubicin(商品名))、及びミトキサントロン(Novantrone(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の実行に役立つアロマターゼ阻害剤は、アナストロゾール(Arimidex(商品名))及びレトロゾール(letroazole)(Femara(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含んでもよいビスホスホネート阻害剤は、ゾレドロネート(Zometa(商品名))を包含するが、これに限定されない。
【0071】
本発明の医薬品組成物に含まれてよいシクロオキシゲナーゼ阻害剤は、アセチルサルチル酸(Aspirin(商品名))、セレコキシブ(Celebrex(商品名))、及びロフェコキシブ(Vioxx(商品名)、Ceoxx(商品名)、Ceeoxx(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の組成物に含まれてよいエストロゲン受容体修飾剤は、タモキシフェン(Nolvadex(商品名))、及びフルベストラント(Faslodex(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の組成物に含まれてよい葉酸拮抗剤は、メトトレキサート(Trexall(商品名)、Rheumatrex(商品名))、及びトリメトレキセート(Neutrexin(商品名))を包含するが、これらに限定されない。具体例として、一般にメトトレキサートとして知られている、化合物(S)−2−(4−(((2,4−ジアミノプテリジン−6−イル)メチル)メチルアミノ)ベンズアミド)グルタール酸は、妊娠絨毛癌の治療において、並びに、破壊性絨毛腺腫及び胞状奇胎(hydatiform mole)の患者の治療において使われる、葉酸拮抗剤である。葉酸拮抗剤は、悪性リンパ腫の進行段階の治療において、そして、菌状息肉腫の進行例の治療においても有用である。
【0072】
本発明の医薬品組成物に含まれてよい無機ヒ酸塩は、三酸化ヒ素(Trisenox(商品名))を包含するが、これに限定されない。本発明の組成物に含まれてよい微小管阻害剤(本明細書中の「微小管阻害剤」は、微小管の会合又は分解を干渉する任意の製剤である)は、ビンクリスチン(Oncovin(商品名))、ビンブラスチン(Velban(商品名))、パクリタキセル(Taxol(商品名)、Paxene(商品名))、ビノレルビン(Navelbine(商品名))、ドセタキセル(Taxotere(商品名))、エポチロン(epotbilone)B又はD又はそのいずれかの誘導体、ディスコデルモリド又はその誘導体を包含するが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の医薬品組成物に含まれてよいニトロソ尿素は、プロカルバジン(Matulane(商品名))、ロムスチン(CeeNU(商品名))、カルマスティン(BCNU(商品名)、BiCNU(商品名)、Gliadel Wafer(商品名))、及びエストラムスチン(Emcyt(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含まれてよいヌクレオシド類似体は、6−メルカプトプリン(Purinethol(商品名))、5−フルオロウラシル(Adrucil(商品名))、6−チオグアニン(Thioguanine(商品名))、ヒドロキシ尿素(Hydrea(商品名))、シタラビン(Cytosar−U(商品名)、DepoCyt(商品名))、フロキシウリジン(FUDR(商品名))、フルダラビン(Fludara(商品名))、ペントスタチン(Nipent(商品名))、クラドリビン(Leustatin(商品名)、2−CdA(商品名))、ゲムシタビン(Gemzar(商品名))とカペシタビン(Xeloda(商品名))を包含するが、これらに限定されない。具体例として、一般に5−フルオロウラシルとして知られている、化合物5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオンは、外科的又は他の手段では不治であると考えられる患者の結腸癌、直腸癌、乳癌、胃癌及び膵臓癌の緩和処置に効果的な、代謝拮抗物質ヌクレオシド類似体である。ヌクレオシド類似体の別の例は、ゲムシタビンである。ゲムシタビンは、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−シチジンである。ゲムシタビンは、一塩酸塩として、そして、β異性体として市販されている。ゲムシタビンは、化学的には、1−(4−アミノ−2−オキソ−1−H−ピリミジン−1−イル)−2−デスオキシ−2,2−ジフルオロリボースとしても知られている。
【0074】
本発明の医薬品組成物に含まれてよい破骨細胞阻害剤の具体例は、パミドロン酸(Aredia(商品名))である。本発明の医薬品組成物に含まれてよい白金化合物は、シスプラチン(Platinol(商品名))及びカルボプラチン(Paraplatin(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含まれてよいレチノイドは、トレチノイン、ATRA(Vesanoid(商品名))、アリトレチノイン(Panretin(商品名))及びベクサロテン(Targretin(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含まれてよいトポイソメラーゼ1阻害剤は、トポテカン(Hycamtin(商品名))及びイリノテカン(Camptostar(商品名)、Camptothecan−11(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含まれてよいトポイソメラーゼ2阻害剤は、エトポシド(Etopophos(商品名)、Vepesid(商品名))、及びテニポシド(Vumon(商品名))を包含するが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の医薬品組成物に含まれてよい他の適当なチロシンキナーゼ阻害剤の例は、ダサチニブ(Sprycel(商品名))、エルロチニブ(Tarceva(商品名))、ゲフィチニブ(Iressa(商品名))、イマチニブ(Gleevec(商品名))、ラパチニブ(Tykerb(商品名))、ソラフェニブ(Nexavar(商品名))及びバンデタニブ(Zactima(商品名))を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含まれてよい(組み換え体)成長因子の例は、インターロイキン−11、インターフェロン−α−2b及びインターロイキン−2を包含するが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含んでもよいチミジル酸シンターゼ阻害剤の具体例は、Raltitrexed(商品名)である。本発明の医薬品組成物に含まれてよいモノクローナル抗体の例は、リツキシマブ(MabThera(商品名))又はセツキシマブ(Erbitux(商品名))を包含するが、これらに限定されない。
【0076】
いくつかの態様において、医薬品組成物が提供される。医薬品組成物は、本発明の化合物又は塩又はプロドラッグ、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含むことができる。
【0077】
「医薬品組成物」は、本明細書に記載される化合物の一つ以上、又はこれらの生理的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、例えば生理的/薬学的に許容される担体及び賦形剤などの他の化学的組成物との混合物を指す。医薬品組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0078】
化学式I又はIIの化合物は、プロドラッグとして作用してもよい。「プロドラッグ」は、生体内で親薬物(parent drug)に変換される薬剤を指す。プロドラッグはしばしば有用である。なぜなら、いくつかの状況で、プロドラッグは親薬物より投与するのが簡単であり得るからである。プロドラッグは、例えば、親薬物は経口投与できないが、経口投与によって生物学的に利用可能であってよい。プロドラッグは、医薬品組成物中で、親薬物以上の改善された可溶性を有していてもよい。プロドラッグの例は、水溶性が移動度に有害である細胞膜を通過することを容易にする一方で、水溶性が有益である細胞内一旦入ると、活性実体(active entity)であるカルボン酸に代謝的に加水分解される、エステル(「プロドラッグ」)として投与される、本発明の化合物であるが、これに限定されない。プロドラッグは、酵素のプロセスと代謝加水分解を含む、様々な機序で、親薬物に変換されうる。
【0079】
プロドラッグのさらなる例は、2〜10個のアミノ酸ポリペプチドであって、本発明の化合物のカルボキシル基と末端アミノ基を通じて結合した、短いポリペプチドであってもよいが、これに制限されず、ここで該ポリペプチドは、活性分子を放出するために生体内で加水分解又は代謝される。化学式I又はIIの化合物のプロドラッグは、本発明の範囲内である。
【0080】
また、化学式I又はIIの化合物は、ヒトなどの生物の体内の酵素によって代謝されて、タンパク質チロシンキナーゼの活動を調節することができる代謝物質を産生すると考えられる。このような代謝物質は、本発明の範囲内である。
【0081】
本明細書中の「生理的/薬学的に許容される担体」は、生物に重大な刺激作用を引き起こさず、かつ投与された化合物の生物活性と特性を抑制しない、担体又は希釈剤を指す。
【0082】
「薬学的に許容される賦形剤」は、さらに化合物の投与を容易にするために医薬品組成物に添加される、不活性物質を指す。賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖及び澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールを包含するが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書中で、用語「薬学的に許容される塩」は、親化合物の生物学的効果と特性を保持する塩を指す。このような塩は、(1)親化合物の遊離塩基と、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸、もしくは酢酸、シュウ酸、(D)又は(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタン硫酸酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸などの有機酸、好ましくは塩酸又は(L)−リンゴ酸との反応により得られる酸付加塩、又は、(2)親化合物内に存在する酸性プロトンのいずれかが、例えば、ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属イオン、マグネシウムもしくはカルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオンで置換して、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位して形成された塩を包含するが、これらに制限されない。
【0084】
本明細書中の用語「タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病」は、異常なタンパク質チロシンキナーゼ活性を含む、タンパク質チロシンキナーゼ活性に関連する状態を指す。このような疾患及び疾病の例は、例えばガン、線維性及び糸球体間質性の疾患、異常な血管形成及び脈管形成、創傷治癒、乾癬、糖尿病、及び炎症などの異常な細胞増殖の疾患;神経変性障害、遅い創傷治癒率、及び組織移植を包含するがこれらに限定されない異常な分化状態;及び、異常な細胞生存状態である。異常な細胞生存状態は、プログラムされた細胞死(アポトーシス)経路が活性化又は抑制された状態に関する。いくつかのプロテインキナーゼは、アポトーシス経路と関連している。いずれか1つのプロテインキナーゼの機能における異常は、細胞不死又は早期細胞死につながる。いくつかの態様において、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患は、例えばIGF−1R関連疾患、EphA2関連疾患又はTyro3関連疾患などの、RTK関連疾患を包含し得る。これらの疾患は、肝細胞癌、乳癌、大腸癌及び肺癌であり得る。
【0085】
本発明の化合物は、タンパク質チロシンキナーゼ、特に受容体チロシンキナーゼ(RTK)に、高い特異性と選択性で結合する。本発明の化合物と結合しうる例示的なRTKsは、EGFR、HER2、HER3、HER4、IR、IGF−1R、IRR、PDGFR CSFIR、C−Kit、C−fms、Flk−1R、Flk4、KDR/Flk1、FlT−1、FGFR−1R、FGFR−2R、FGFR−3R、FGFR−4R、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10、及びTyro3であるが、これらに限定されない。結合すると同時に、本発明の化合物は、タンパク質チロシンキナーゼ仲介細胞シグナリングを減少又は抑制する。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、本発明の化合物は、チロシンキナーゼの活性を特異的に阻害することによって、固形腫瘍を最小化及び抹消する、又は腫瘍の成長及び/又は転移を少なくとも調節又は阻害する、と考えられる。本発明の化合物がタンパク質チロシンキナーゼのシグナリングを阻害する機序を正確に理解することは、本発明を実施するためには必要とされない。しかし、いかなる特定の機序又は理論にも束縛されることがない一方で、化合物は、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、及びイオン結合などの非共有結合的な相互作用を通して、タンパク質チロシンキナーゼのATP結合領域、又は、その近傍のアミノ酸において、相互作用すると考えられる。したがって、化合物はATPの結合を遮断し、そして、他のタンパク質のリン酸化を遮断する。ここで、特定のタンパク質チロシンキナーゼに対する本発明の化合物の特異性は、本発明の化合物のオキシインドール・コア周辺の構成要素と、個々のタンパク質チロシンキナーゼに特有のアミノ酸領域との間の相互作用によってもたらされ得る。このように、異なるインドリノン置換基は、特定のタンパク質チロシンキナーゼへの選択的結合に貢献し得る。
【0086】
いくつかの態様において、本発明は、上記のタンパク質チロシンキナーゼのような、プロテインキナーゼの触媒活性を調節するための方法に関する。本方法は、該プロテインキナーゼと、本発明の化合物、塩又はそのプロドラッグとを接触させることを含む。
【0087】
本明細書中の用語「調節する」は、本明細書に記載されるプロテインキナーゼの活性における変化を指す。例えば、調節は、タンパク質の活性、結合特性、又はチロシンキナーゼの生物学的、機能的、又は免疫学的特性の増減を引き起こし得る。
【0088】
本発明の化合物は、タンパク質チロシンキナーゼ仲介細胞シグナリングの阻害剤として、有用である。タンパク質チロシンキナーゼは、とりわけ、細胞の増殖、アポトーシス、分化及び遊走において重要な役割を果たすので、本発明の化合物は、増殖抑制活性を有するため、不適切な、又は異常なタンパク質チロシンキナーゼ機能に関連する、特にタンパク質チロシンキナーゼ活性の増加、又はタンパク質チロシンキナーゼの機能に関連する、疾患及び疾病の治療に利用することができる。本発明の化合物によって治療及び/又は予防し得る疾患及び疾病の例としては、過剰増殖性疾患、例えば、IGF−1R関連疾患、EphA2関連疾患、又はTyro3関連疾患などの、RTK関連疾患などのガンであるが、これらの疾患及び疾病に限定されない。これらの疾患は、肝細胞癌、乳癌、大腸癌及び肺癌であり得る。
【0089】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病の治療又は予防するための方法を対象とする。該方法は、それを必要とする患者に、薬学的に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。患者は、哺乳類であり得る。哺乳類は、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、類人猿、及びヒトなどの生物を包含し得るが、これらに限定されない。
【0090】
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病、及び/又はこれに付随する徴候を、軽減又は抑制する方法を指す。
【0091】
「予防する」、「予防すること」、及び「予防」は、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病の発症を妨げる方法、すなわち予防方法(prophylactic method)を指す。
【0092】
「生物」は、少なくとも1つの細胞から構成される任意の生命体を指す。生物は、例えば、真核単細胞生物と同程度に単純でありえるか、又はヒトを含む哺乳類と同程度に複雑でありえる。
【0093】
ここで、医薬としての本発明の化合物の有効性のために、結合親和性以外のいくつかの変化が重要な役割を果たすことに注意しなければならない。したがって、本発明の化合物は、結合特異性及び親和性に基づくだけでなく、例えば生物学的利用能、引き起こされる副作用の重症度、化合物の代謝転換、生体内での化合物の半減期などの他の要因にも基づいて、医薬として、特異的に選択することができる。
【0094】
本発明の化合物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグは、それ自体がヒトの患者に投与されることができるか、又は前述の材料が適当な担体又は賦形剤と混合される医薬品組成物中に配合することができる。薬の調製と投与の技術は、「Remington’s Pharmacological Sciences」(Mack Publishing Co., Easton, PA)の最新版に見出し得る。
【0095】
本明細書中の「投与する」、又は「投与」は、本発明の化学式(I)又は(II)の化合物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグの、又は、本発明の化学式(I)又は(II)の化合物を含む医薬品組成物の、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病の予防又は治療の目的での、生体への送達(delivery)を指す。
【0096】
投与の適当な経路は、経口投与、直腸投与、経粘膜投与もしくは、又は経腸投与、又筋肉内注射、皮下注射、脊髄内注射、クモ膜下注射、直接心室内注射、静脈内注射、硝子体内注射、腹膜内注射、鼻腔内注射、又は眼内注射を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、投与の経路は、経口及び非経口である。
【0097】
あるいは、例えば、血管を介した化合物の直接注入などの、全身的な様式よりはむしろ局所的な様式で、化合物を投与してもよく、ここで化合物は、必要に応じてデポー製剤又は徐放性製剤の化合物である。
【0098】
本発明の医薬品組成物は、例えば、従来の混合、溶解、整粒、糖衣錠製造、粉末化、乳化、被包化、封入化、又は凍結乾燥工程などの、当技術分野で既知の工程によって製造してよい。
【0099】
本発明で使用するための医薬品組成物は、薬学的に使用することができる製剤への活性化合物の加工を容易にする、賦形剤及び助剤を含む、1つ以上の薬学的に許容される担体を用いて、従来の方法で調製してよい。適切な剤形は、選択される投与経路に依存する。
【0100】
注射のために、本発明の化合物は、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理的食塩水緩衝液などの生理的に適合する緩衝液である、水溶液として調製してよい。経粘膜投与のために、浸透されるバリアに適切な浸透剤が、製剤において使用される。このような浸透剤は、通常、当技術分野で知られている。
【0101】
経口投与のために、化合物は、活性化合物を当技術分野で既知の薬学的に許容される担体と混合することによって、調製することができる。患者による経口摂取のために、このような担体は、本発明の化合物が、タブレット、錠剤、トローチ剤、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに調製されるのを可能にする。経口用医薬製剤は、固体賦形剤を用いて、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し、そして顆粒の混合物を、必要に応じて他の適切な助剤を添加した後加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることにより、製造することができる。有用な賦形剤は、特に、ラクトース、ショ糖、マンニトール又はソルビトールを含む糖などの賦形剤、例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及びジャガイモ澱粉などのセルロース製剤、並びに例えばゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリビニルピロリドン(PVP)などの他の材料である。必要に応じて、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸などの崩壊剤を添加してよい。アルギン酸ナトリウムなどの塩を使用してよい。
【0102】
糖衣錠コアは、適切なコーティングが設けられている。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、適当な有機溶剤又は溶媒混合物を必要に応じて含み得る、濃縮した糖溶液を使用してよい。染料又は顔料を、識別又は活性化合物の量の異なる組合せを特徴づけるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してよい。
【0103】
経口で使用することができる医薬品組成物は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセルだけでなく、ゼラチンと、グリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で作られた、柔らかく、密封されたカプセルを包含する。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの賦形剤、澱粉などの結合剤、又はタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び必要に応じて、安定剤との混合物として、活性成分を含むことができる。柔らかいカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解され、又は懸濁されてよい。また、これらの製剤において安定剤も添加してよい。
【0104】
化合物は、例えば、大量瞬時投与又は持続性点滴などの、非経口投与のために調製してもよい。注射のための製剤は、例えば、防腐剤が添加されたアンプル又は多量投与用容器などの、単位剤形の形状で存在してよい。組成物は、懸濁液、溶液又は油性又は水性賦形剤中のエマルジョンなどの形態を採用してよく、かつ懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤材料を含んでよい。
【0105】
非経口投与のための医薬品組成物は、活性化合物の、例えば、塩などの、水溶性型の水溶液を含むが、これに限定されない。
【0106】
また、活性化合物の懸濁は、親油性賦形剤で調製することができる。適当な親油性賦形剤は、胡麻油などの脂肪油、エチルオレイン酸塩及びトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームなどの材料を包含する。水性懸濁注射液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの、懸濁液の粘性を増加させる物質を含んでよい。必要に応じて、懸濁液は、適切な安定剤及び/又は化合物の溶解度を増大させて、高濃縮溶液の調製を可能にする薬剤も含んでもよい。
【0107】
また、有効成分は、使用前に、例えば、発熱性物質除去蒸留水などの、適当な賦形剤と共に製剤化するための粉末形態であってもよい。
【0108】
化合物は、例えば、ココアバター、又は他のグリセリドなど、従来の坐剤の基剤を使用して、坐剤又は停留浣腸などの直腸組成物に調製することもできる。
【0109】
前述の製剤に加えて、化合物はデポー製剤として調製してもよい。このような長時間作用する製剤は、移植(例えば、皮下、又は筋内に)、又は筋肉注射によって投与してよい。本発明の化合物は、適当なポリマー材料又は疎水性材料(例えば、薬学的に許容される油を用いたエマルジョン中に)を用いて、イオン交換樹脂を用いて、又は難溶性塩などの、これに限定されない難溶性誘導体として、この投与の経路のために、調製されてもよい。
【0110】
本発明の疎水性化合物のための薬学的な担体の非限定的な例は、VPD共溶媒系などの、ベンジルアルコール、無極性界面活性剤、水溶性有機ポリマー、及び水相を含む共溶媒系である。VPDは、無水エタノールで定容にされた、3%w/vベンジルアルコール、8%w/v無極性界面活性剤ポリソルベート80、及び65%のポリエチレングリコール300の溶液である。VPD共溶媒系(VPD:D5W)は、5%ブドウ糖水溶液で1:1に希釈したVPDからなる。この共溶媒系は、疎水性合成物をよく溶かして、かつそれ自身は全身投与された時にほとんど毒性を起こさない。
【0111】
当然、このような共溶媒系の割合は、その溶解度と毒性特性とを損なうことなく、大幅に変更してもよい。さらにまた、共溶媒成分の内容を、変更してもよい:例えば、他の低毒性無極性界面活性剤をポリソルベート80の代わりに使用してもよく、ポリエチレングリコールの画分サイズを変更してもよく、ポリエチレングリコールを他の生物学的適合性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンで代用してもよく、及び糖又は多糖類をブドウ糖に代用してもよい。
【0112】
また、疎水性医薬品化合物のための他の供給系を使用してもよい。リポソームとエマルジョンは、疎水的な薬剤のための薬物送達賦形剤又は担体の、よく知られた例である。さらに、多くの場合、より大きな毒性という欠点があるが、ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶剤も使用してもよい。
【0113】
さらに、化合物は、治療剤を含む疎水性固体ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放系を使用して供給してもよい。
【0114】
様々な持続性材料は確立されており、かつ、これらは当業者によく知られている。持続性カプセルはその化学的性質に依存して、数週間から最大100日以上、化合物を放出し得る。治療薬の化学的性質と生物学的安定性に依存して、安定化に対する更なる戦略を、使用してよい。
【0115】
本明細書中の医薬品組成物は、適当な固相又はゲル相の担体又は賦形剤も含んでよい。このような担体又は賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々の糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーを包含するが、これらに限定されない。
【0116】
本発明の化合物の多くは、生理学的に許容される塩として提供することができ、前記化合物は、負又は正に帯電した種を形成してもよい。化合物が正に荷電する部分を形成する塩の例は、適切な塩基(例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))等)と、該化合物中のカルボキシル基又はスルホン酸基との反応によって形成される、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩を含むが、これらに限定されない。
【0117】
本発明の使用に適している医薬品組成物は、含有される活性成分が意図された目的、例えば、タンパク質チロシンキナーゼ機能の阻害、又はタンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病の治療又は予防などを達成するのに十分量の組成物を包含する。
【0118】
より詳しくは、治療に効果的な量は、病気の徴候を予防、軽減、もしくは改善するか、又は治療を受けている患者の生存期間を延長するのに効果的な化合物の量を意味する。治療に効果的な量の測定は、特に本明細書中に提供されている詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内である。
【0119】
本発明の方法で使われる任意の化合物に関して、治療に効果的な量又は投与量は、最初は細胞培養分析から推定することができる。次に、投与量は、細胞培養において測定されたIC50を含む循環濃度範囲(すなわち、タンパク質チロシンキナーゼ活性の最大半値の阻害を達成する試験化合物の濃度)の計算を達成するため、動物モデルで使用するために定式化することができる。このような情報は、その後、ヒトにおけるより正確な有用な投与量を測定するのに用いることができる。
【0120】
本明細書中に記述される化合物の毒性と治療有効性は、例えば、目的の化合物のIC50とLD50を測定することなどの、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手法で測定することができる。これらの細胞培養分析と動物実験から得られるデータが、ヒトで使用する際の投与量の範囲を定式化するのに使用することができる。投与量は、使用される剤形と利用される投与経路によって変更してよい。正確な製剤、投与経路と投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医者によって選択され得る。
【0121】
投与量と間隔は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害効果を維持するのに十分である活性種の血漿中濃度を提供するように、個別に調整してもよい。これらの血漿中濃度は、最小有効濃度(MECs)と呼ばれる。MECはそれぞれの化合物によって異なるが、例えば、特定のタンパク質チロシンキナーゼの50〜90%阻害を達成するのに必要な濃度などの、試験管内試験のデータから推定することができる。
【0122】
MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴と投与経路に依存する。HPLC分析又は生物検定は、血漿中濃度を決定するのに用いることができる。
【0123】
投与間隔は、MEC値を用いて決定することもできる。これに関連して、化合物は投与時間の10〜90%において、好ましくは30〜90%において、そして、最も好ましくは50〜90%において、MEC以上の血漿中濃度を維持する投与計画を使用して投与されなければならない。
【0124】
局所投与又は選択的取り込みの場合には、薬物の効果的な局所的な濃度は、血漿中濃度と関連しない場合もあり、当技術分野で知られているその他の方法を、適切な投与量及び間隔を決定するために用いてもよい。
【0125】
投与される組成物の量は、当然、治療を受けている患者、苦痛の重篤度、投与方法、処方した医者の判断などに依存する。
【0126】
組成物は、必要に応じて、EMEAやFDAなどの規制当局によって承認されたキットなど、活性成分を含む1つ以上の単位投与形態を含んでもよい、パック又はディスペンサー装置として提供され得る。例えばパックは、例えばブリスターパックなどの金属箔又はプラスチック箔を含んでよい。パック又はディスペンサー装置は、投与のための説明書が付随していてもよい。
【0127】
パック又はディスペンサーには医薬の製造、使用又は販売を管理している政府機関によって規定される形態の、容器に付随する通知を添付してもよく、該通知は、組成物の形態、又は、ヒトや動物への投与形態についての政府機関による承認を反映する。混合可能な製薬担体中に調製される本発明の化合物を含む組成物は、調製され、適切な容器に入れられ、及び示された状態の治療のための標識を付されてもよい。
【0128】
本明細書中に記載される化合物、又はその塩又はそのプロドラッグは、上述の疾患又は疾病の治療のための、他の薬剤と混合されてよいことも、本発明の態様である。
【0129】
本発明は、肝細胞癌に対して特定の有効性があるプロテインキナーゼ阻害剤を特定する方法も包含する。本方法は、特に肝細胞癌(HCC)に対するプロテインキナーゼ阻害剤を特定するのに有用であり、i)候補化合物を肝細胞癌細胞株と培養すること、ii)細胞生存度を測定すること、及び、iii)正常な肝細胞株に対する前記候補化合物の効果と、測定された前記細胞生存度とを比較して、肝細胞癌細胞に対して特異的な活性を有する化合物を同定すること、を含む。
【0130】
ここで、用語「肝細胞癌に対する特異的な活性」は「通常の肝細胞に対する低下された毒性」を意味し、かつスクリーニング方法によって特定された化合物が、他の癌種/タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病に対する活性の減少又は活性がないことを意味する訳ではないことが言及される。むしろ、本発明のスクリーニング方法によって特定される化合物は、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患又は疾病の影響を受ける、他の細胞(試験管内及び生体内で)に対しても、活性を有することができる。
【0131】
一態様において、スクリーニングのために使った肝細胞癌(HCC)細胞株は、当業者に知られている任意のHCC細胞株であり得る。これらの細胞株は、HepG2、HuH7、SNU398、SNU368、Hep3B、Hepa1c1c7、LH86、SK−Hep−1、PLC/PRF/5、Hs817.T及びMHCC97細胞株を包含し得るが、これらに限定されない。
【0132】
他の態様において、スクリーニングに使われる正常肝細胞株は、THLE2である。
【0133】
一態様において、方法は表現型ベースのスクリーニングアッセイである。
【0134】
本発明を容易に理解すること、及び実用的な効果を得るために、特定の実施形態が、以下の非限定的な実施例に記載される。
【実施例】
【0135】
以下の実施例は、さらに本発明を例示するために提供され、本発明の範囲を制限することを目的としない。
【0136】
<化合物>
本明細書に開示される本発明の化合物(化合物39〜48;下記の表1を参照)を、全ての目的のためにその内容の全体が参照により本明細書中に包含される米国仮出願第61/105,206号「Functionalized Indolinones」に記載の方法を用いて合成した。スニチニブは、LC Laboratories社(Boston、MA)より入手した。他の全ての試薬は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich社(St.Louis、MO)より入手した。
【0137】
<細胞培養>
HuH7は、P.Hofschneider博士(Max Planck Institute,Martinsried,Germany)より入手した。HepG2、SK−Hep1、Hep3B、PLC/PRF/5、THLE2及びHs817.T細胞を、ATCC(Manassas、VA)より入手した。HepG2、Hep3BとPLC/PRF/5はMEMで、THLE2はBEGM(Lonza,Basel,Switzerland)で、他の全ての細胞はDMEMで維持した。すべての細胞培養に、Invitrogen社(Carlsbad,CA)より入手したATCC推奨の試薬を補充した。
【0138】
<定量的リアルタイムPCR>
全RNAは上記(14)で述べたTrizol(Invitrogen社)で回収され、そしてRNeasyカラム(Qiagen,Valencia,CA)で精製された。2μgのRNAを、Superscript III(Invitrogen社)を用いたcDNA合成に用いた。操作は、メーカーの使用説明書に従って実施した。定量的リアルタイムPCRは、18S mRNAを対照として、AFP(NM_001134)について、Applied Biosystems7300(ABI,Foster City,CA)を用いて実施した。サンプルは、各々が4μLの前希釈された(predilute)cDNAであるものを、3個1組で調製した。プライマー配列は以下の通りである:AGCTTGGTGGTGGATGAAAC(AFP順方向;配列番号1);TCTTGCTTCATCGTTTGCAG(AFP逆方向;配列番号2);CGGCTTAATTTGACTCAACACG(18S順方向;配列番号3);TTAGCATGCCAGAGTCTCGTTC(18S逆方向;配列番号4)。データは平均C値として得られ、対照に対するΔCとして正規化した。正常組織対腫瘍組織の間のAFP転写物の発現変化は、2ΔΔCT(対応する組のΔCの差)を用いた倍率変化として表わした。
【0139】
<イムノブロットアッセイ>
タンパク質濃度は、BCA法(Pierce,Rockford,IL)によってアッセイした。サンプルは6〜10%のSDS−PAGEを使用して分離され、そしてタンク移動(tank transfer)によってニトロセルロース又はPVDF膜に転写された。免疫検出は、0.05%(v/v)のTween20及び5%(w/v)の粉乳又はBSAを含むPBSで希釈された特異的抗体を用いた化学ルミネセンス(SuperSignal,Pierce)で実施した。抗−ホスホ−IGF−1R、抗−ホスホ−EphA2、抗−ホスホ−Erk、抗−ホスホ-Akt、抗−Bax、及び抗−BCL−xLは、Cell Signaling Technology(Beverly,MA)社製、抗PCNA及び抗HSP60は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)社製、抗−サイクリン−D1は、BD Pharmingen社(San Jose,CA)社製であった。二次抗体は、抗マウス、及び抗ウサギ−HRP接合抗体(Pierce)であった。
【0140】
<免疫沈降>
HuH7細胞は、イムノブロット法のために上記のように処理され、そして、溶解バッファー(1% NP−40、20mM トリスHCl、137mM NaCl、10%グリセロール、2mM EDTA、1mM バナジン酸ナトリウム、10μg/mL アプロチニン、10mg/μL ロイペプチン)で回収された。溶解物(300μg)を、500μLのHNTGバッファー(250mM HEPES、150mM NaCl、10%グリセロール、0.1%Triton−X)で希釈し、そして、30μLのタンパク質A/G混合物(GE Healthcare,Waukesha,WI)、及び2μgの抗EGFR(Upstate,Lake Placid,NY)、抗EphA2(Santa Cruz)、又は抗Tyro3(Bethyl Laboratories,Montgomery,TX)と、4℃で一晩、インキュベートされた。得られたビーズは、電気泳動用の20μLのSDS−PAGEサンプルバッファー中で沸騰させる前に、HNTGバッファーで洗浄した。以降の免疫検出を、抗ホスホチロシン(4G10(Upstate))と、それぞれの一次抗体のストリッピング及び再検出により測定された検出物(loading)とで実行した。
【0141】
<細胞生存度アッセイ>
細胞は1ウェル当たり5000〜7000細胞で播種され、処理の前に24時間インキュベートした。様々な濃度(0〜10μM)の試験化合物(化合物39〜48及びスニチニブ)を、8回繰り返して、72時間、細胞に添加した。Cell Titer−Glo(Promega,Madison,WI)アッセイは、メーカーの使用説明書に従って実行し、SpectraMax M5(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)上の発光を検出した。データは、生存度対賦形剤処理対照のパーセンテージとして表わした。
【0142】
<カスパーゼ−3活性アッセイ>
細胞は、回収の24時間前に、化合物47の処理を受けた。カスパーゼ−3の活性は、前述のように測定された(Ho HK,Pok S,Streit S,Ruhe JE,Hart S,Lim KS,et al.Fibroblast growth factor receptor 4 regulates proliferation,anti−apoptosis and alpha−fetoprotein secretion during hepatocellular carcinoma progression and represents a potential target for therapeutic intervention(J Hepatol 2009 Jan;50(1):118−127)。データは、RFU/μg溶解物/時間インキュベーション、及びn=3のSDをエラーバーとして表わした。
【0143】
<ホスホ−RTKプロファイリング>
複数のRTKリン酸化の同時決定は、ヒトのホスホ−RTKアレイ(RnD Systems Minneapolis,MN)で達成した。HuH7細胞は、無血清条件下で24時間、賦形剤、化合物47又はスニチニブに晒された。細胞回収、RTKアレイとのハイブリダイゼーション、及び抗−ホスホチロシンとのインキュベーションを、メーカーの使用説明書に従って実施した。スポット強度のイメージングと定量化を、Fujifilm LAS−3000(Tokyo,Japan)で行った。それぞれのRTKの2つのスポットの平均シグナルを、決定した。
【0144】
実施例1:化合物39〜48の合成、表1
スキーム1:本発明の化合物39〜48の合成経路
【化11】

本発明の化合物39〜48を、化学式IVのアルデヒドと化学式IIIのオキシインドールの間のクネーフェナーゲル反応によって合成した。縮合は、塩基触媒としてのピペリジンを含むエタノール中で、還流により、又はマイクロ波反応器内で行った(スキーム1)。
【表1】

【0145】
<化合物39〜48の合成の基本手順>
等モル量(0.5mmol)のオキシインドールとアルデヒドをエタノール(10ml)に溶解し、1滴のピペリジン(2μl)を添加して、そして、混合物はアルゴンを流した密封容器(10ml)内で加熱した。容器は、マイクロ波シンセサイザー(Biotage Initiator(商品名))内で、140℃で15分間加熱した。その後反応混合物は、室温に冷やされて、得られた沈殿物は濾過によって除去され、冷えたエタノールで慎重に洗浄し、そして所望の生成物を産生するために、エタノールから少なくとも一つを再結晶した。
【0146】
<合成された化合物の構造決定>
合成された化合物は、環外二重結合の存在により、E又はZ異性体のいずれかとして存在することができた。このように、合成が一つの(支配的な)異性体、又は、異性体の混合物を産生したかどうかについて決定することが、必要であった。化合物のH及び13C NMRスペクトルの解析は、これらが一つの(又は支配的な)異性体として得られることを示した。
【0147】
本明細書中に記載される合成された化合物がE又はZ異性体であるかどうか決定するために、ベンジリデン環B(H−2’とH−6’)の芳香族のプロトンの化学シフトを分析した。Z異性体ではなく、E異性体では、H−2’又はH−6’プロトンは、カルボニル基による反遮へいのため、低磁場側にシフトする。文献では、7.85−8.53ppmの化学シフトは、Z異性体に、及び7.45−7.84ppmの化学シフトは、E異性体に帰属した(Sun,L.et al.,J Med Chem 1998,41,2588;Andreani,A et al,J Med Chem 2006,49,6922)。すでにE異性体であることが報告されている化合物、及び化学シフトが文献から入手可能であった化合物に対して、本明細書中の実験値と報告値との比較は、必要とされる確証を提供した(Corsico Coda,A.;et al,J.Chem.Soc,Perkin Trans.2(1972−1999),1984,4,615;Andreani,A.et al,Eur.J.Med.Chem.1990,25,187;Andreani,A.,et al,Eur.J.Med.Chem.1992,27,167)。
【0148】
立体化学が以前に帰属しなかった化合物のために、7.45−7.84ppmにおけるH−2’及びH−6’プロトンの化学シフトは、合成された化合物がE異性体であったと結論するのに用いられた。化合物46と47などの本発明の化合物は、1つの支配的な異性体としてではなく、E異性体とZ異性体の混合物として得られた。異性体(カラムクロマトグラフィーによる分離の後)のHのスペクトルを調べたとき、H−2’及びH−6’の化学シフトは、支配的な異性体の7.90−8.01ppmと、少量の異性体の8.40−8.50ppmで見出された。従って、支配的な異性体は、E構造に帰属された。
【0149】
<実験手順及び化合物39〜48の分析データ>
(E)−6−フルオロ−3−(3−メトキシベンジリデン)インドリン−2−オン(39),収率29%,融点(mp)169−170°C;MS−APCI:[M+H]270.3(269.1);H NMR(300MHz DMSO−d)δppm 3.79(s,3H),6.68(m,2H),7.03(dd,J=8.1,2.1Hz,1H),7.24(m,2H),7.43(t,J=7.9Hz,1H),7.54(m,2H),10.77(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 168.92,164.80,161.55,159.36,144.94,144.78,135.60,135.35,135.31,130.01,126.75,124.24,124.10,121.40,117.35,117.32,115.69,114.25,107.74,107.44,98.39,98.02,55.24。
【0150】
(E)−5−クロロ−3−(3−メトキシベンジリデン)インドリン−2−オン(40),収率70%,mp 212−214℃;MS−APCI:[M+H] 286.2(285.1);H NMR(300 MHz DMSO−d)δppm 3.80(s,3H),6.88(d,J=8.7Hz,1H),7.07(m,1H),7.27(m,3H),7.46(m,2H),7.68(s,1H),10.75(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 168.31,159.39,141.77,137.55,135.37,130.05,129.64,127.02,124.94,122.51,122.02,121.50,116.15,114.18,111.54,55.26。
【0151】
(E)−6−クロロ−3−(3−メトキシベンジリデン)インドリン−2−オン(41),収率71%,mp 198−200℃;MS−APCI:[M+H] 286.2(285.1);H NMR(300MHz DMSOd)δppm 3.79(s,3H),6.91(m,2H),7.04(dd,J=8.3,2.3Hz,1H),7.24(m,2H),7.43(t,J−7.9Hz,1H),7.52(d,J=8.3Hz,1H),7.63(s,1H),10.76(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 168.60,159.36,144.33,136.55,135.50,134.20,130.02,126.71,123.77,121.52,120.95,119.80,115.91,114.28,110.14,55.24。
【0152】
(E)−6−メトキシ−3−(3−メトキシベンジリデン)インドリン−2−オン(42)47:収率31%,mp 161−163℃,lit.162−163℃;MS−APCI:[M+H] 282.2(281.1);H NMR(300MHz DMSOd)δppm 3.77(m,6H),6.44(m,2H),7.01(dd,j=8.1,2.1Hz,1H),7.22(m,2H),7.41(m,2H),7.49(d,J=8.3Hz,1H),10.54(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 169.29,161.15,159.29,144.77,136.06,132.32,129.83,127.36,123.80,121.37,115.20,114.18,113.63,106.52,96.50,55.30,55.17。
【0153】
(E)−6−フルオロ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)インドリン−2−オン(43),収率33%,mp 225−227℃;MS−APCI:[M+H] 286.2(285.1);H NMR(300MHz DMSOd)δppm 3.83(s,3H),6.69(t,J=10.2Hz,2H),7.05(m,1H),7.16(s,2H),7.47(s,1H),7.71(dd,J=8.1,5.8Hz,1H),9.41(s,1H),10.70(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 169.32,164.48,161.22,149.50,146.51,144.52,144.35,136.20,136.16,126.69,124.27,123.93,123.81,122.16,117.69,117.65,116.14,112.13,107.50,107.20,98.18,97.82,55.66。
【0154】
(E)−6−クロロ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)インドリン−2−オン(44),収率53%,mp 220−223℃;MS−APCI:[M+H] 302.2(301.1);H NMR(300MHz DMSOd)δppm 3.84(s,3H),6.87(d,J=1.9Hz,1H),6.94(dd,J=8.3,1.9Hz,1H),7.06(d,J=9.0Hz,1H),7.18(m,2H),7.52(s,1H),7.70(d,J=8.3Hz,1H),9.41(s,1H),10.69(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d6)δppm 169.02,149.72,146.55,143.94,137.45,133.55,126.64,124.14,123.53,122.43,120.77,120.17,116.30,112.12,109.96,55.68。
【0155】
(E)−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−6−メトキシインドリン−2−オン(45),収率38%,mp 184−186℃;MS−APCI:[M+H] 298.2(297.1);H NMR(300MHz DMSOd)δppm 3.75(s,3H),3.83(s,3H),6.44(m,2H),7.03(d,J=8.3Hz,1H),7.13(d,J=10.6Hz,2H),7.31(s,1H),7.64(d,J=8.3Hz,1H),9.35(s,1H),10.49(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 169.72,160.78,149.11,146.45,144.38,133.30,127.23,125.04,123.63,121.90,116.09,114.07,112.14,106.42,96.43,55.67,55.34.
【0156】
(E)−6−フルオロ−3−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)インドリン−2−オン(46),収率50%,mp 132−135℃;MS−APCI:[M+H] 308.1(307.1);H NMR(300MHz DMSO−d)δppm 6.66(m,2H),7.32(dd,J=8.3,5.7Hz,1H),7.64(s,1H),7.77(m,2H),7.97(d,J=6.4Hz,2H),10.82(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 168.62,165.06,161.79,145.30,145.13,135.49,133.38,133.34,132.87,130.27,129.96,129.84,129.42,129.00,128.10,128.08,125.99,125.95,125.80,125.76,123.91,123.78,122.16,118.55,117.00,116.96,107.77,107.48,98.57,98.21. 46(Z),H NMR(300MHz DMSOd)δppm 6.66(dd,J=9.2,2.1Hz,1H),6.83(m,1H),7.73(m,3H),7.89(s,1H),8.46(d,J=7.5Hz,1H),8.83(s,1H),10.82(s,1H)。
【0157】
(E)−6−クロロ−3−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)インドリン−2−オン(47)48:収率51%,mp 204−207℃;H NMR(300MHz DMSO−d6)δppm 6.87(d,J=7.9Hz,2H),7.29(d,J=7.9Hz,1H),7.76(m,3H),7.97(d,J=7.2Hz,2H),10.81(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 168.26,144.60,135.39,134.66,132.94,130.02,129.84,129.42,128.06,126.18,126.15,125.94,125.90,125.75,123.46,122.14,121.01,119.44,110.33. 47(Z),H NMR(300MHz DMSOd)δppm 6.88(s,1H),7.05(dd,J=8.1,1.7Hz,1H),7.72(m,3H),7.91(s,1H),8.43(d,J=7.9Hz,1H),8.84(s,1H),10.81(s,1H)。
【0158】
(E)−6−メトキシ−3−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)インドリン−2−オン(48),収率43%,mp157−160℃;MS−APCI:[M+H] 320.1(319.1);H NMR(300MHz DMSOd)δppm 3.74(s,3H),6.40(dd,J=10.9,2.6Hz, 2H),7.28(d,J=8.3Hz,1H),7.47(s,1H),7.74(ddd,J=15.0,7.9,7.6Hz,2H),7.96(d,J=7.2Hz,2H),10.61(s,1H);13C NMR(75MHz,DMSO−d)δppm 169.04,161.54,145.14,135.99,132.91,130.40,130.16,129.90,129.74,129.44,129.31,128.89,128.72,125.83,125.69,125.65,125.59,123.50,122.22,118.61,113.28,106.61,96.75,55.39。
【0159】
実施例2:HPLCによる化合物39〜48の化合物純度の測定
化合物の純度は、逆相高圧カラムクロマトグラフィーで評価した。測定は、Agilent Zorbax Eclipse XDB−C1カラム(4.6mm x 150mm、5μm)を使用して、Waters Delta 600 液体クロマトグラフィー・システム上で実施した。2つの溶媒系を用いて、定組成モードを採用した(4:1の比率で、A:メタノール−水、及びB:アセトニトニル−水)。流量は1ml/分に固定し、そして、二重波長(278nmと305nm)のUV検出を採用した。20分間の分析の間、メインピーク下の面積を測定し、そして全体のピーク面積の%として表わした。すべての化合物は、それらのクロマトグラムが、主なピーク(PHPLC)面積が両方の溶媒系で96%を超えることを示すまで、精製した。2つの溶媒系におけるメインピークの保持時間(tR)は、分(min)単位で決定された。
【表2】

【0160】
<生物学的アッセイのための材料>
メナジオン、ジギトニン、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)、β−ナフトフラボン(BNF)、ジクマロール(dicuomarol)、サリチルアミド、ヨウ化プロピジウム、KNaseA、7−エトキシレゾルフィン、及びスルフォラファンは、Sigma−Aldrich(St Louis,MO)から購入した。2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ダイオキシン(TCDD)は、AccuStandard(New Haven,USA)から購入した。その他の試薬は分析用グレードであった。
【0161】
実施例3;NQO1活性の決定
Hepa1c1c7は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入し、熱及び活性炭処理したウシ胎児血清(100mlの血清あたり1gの活性炭;55℃で90分)、0.15%の重炭酸ナトリウム、0.01%のペニシリンG、0.01%のストレプトマイシン硫酸塩を含み、ヌクレオシドを含まないα−最小限必須培地(α−MEM)、10%(v/v)中で、37℃、5%COの加湿雰囲気下で培養した。細胞を、細胞が80〜90%の集密度に達したときに継代培養し、そして測定のために6〜17の範囲内の継代物を使った。アッセイのために、約10000個の細胞を、α−MEMで24時間、96穴プレートの各々のウェルで生育した。ブラッドフォード分析に基づき、全体のタンパク質含有量が、1ウェルあたり0.036mgであることが分かった。試験化合物の保存液をDMSOで調製し、そして、所定量を、所望の濃度を与えるために、各ウェルに添加した。各ウェルのDMSOの最終濃度を、0.5%v/v以下に保った。48時間のインキュベーションの後、培地を容器を傾けて上清を捨て、そして、0.8%v/vジギトニン及び2mMのEDTAを含む溶液で、細胞を37℃(10分)でインキュベーションしながら溶解した。プレートを、23℃で10分間、オービタルシェーカー上で穏やかに攪拌した。溶液(「完全な反応混合物」)の所定量(200μl)を、その後各ウェルに添加した。この溶液は使用の直前に新たに準備され、かつ7.5mlの0.5M Tris−Cl(pH=7.4)、100mgのウシ血清、1mlの1.5% Tween−20、0.1mlの7.5mM FAD、1mlの150mM グルコース−6−リン酸塩、90μlの50mM NADP、300単位のイースト・グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、45mgのMTT、及び脱イオン水で最終体積を150mlに定容したものからなる。メナジオン(アセトニトリルに溶かした50mMメナジオンを1μl)を、混合物がウェルに分配される直前に、反応混合物のミリリットル毎に添加した。添加後、プレートを5分間穏やかに攪拌し、そして、反応を、0.5%DMSO及び5mMリン酸カリウム(pH=7.4)中の0.3mMジクマロール溶液(50μl)を添加して停止した。ホルマザン形成による青色が各ウェルで観察され、その吸光度をプレートリーダー上で590nmで測定した。空のウェルは細胞を含まず、及び対照ウェルは、0.5%DMSOを含むが、試験化合物を含まない培地で処理したHepa1c1c7細胞が含んだ。所定の濃度での試験化合物のNQO1誘導活性は、次式から決定された:
誘導度=A試験化合物−Aブランク/A対照−Aブランク
ここで、Aは590nmで測定されたホルマザンの吸光度である。
【0162】
スルフォラファン及びBNFは、正の対照として、類似の条件下で測定された。結果はOriginPro 7.5 SR1(Version V7.5776 B776,OriginLab Corporation、MA)でプロット(誘導度対濃度)し、そして、基礎NQO1活性(CD)を2倍にするのに必要とされる試験化合物の濃度を決定した。別々に3回の定量を行い、そして、CDはn=3の平均±SDとして表わした。
【0163】
<Hepa1c1c7細胞におけるNQO1の誘導>
化合物を、ネズミ肝癌(Hepa1c1c7)細胞において、NQO1活性の誘導のために選別した(Prochaska,H.J.;Santamaria,A.B.Anal.Biochem.1988,169,328)。簡潔には、アッセイはグルコース−6−リン酸(G6P)がその補因子NADPの存在下で、G6Pデヒドロゲナーゼによって還元されるときの、NADPHの産生に基づく。NADPHは、NQO1が介在するメナジオン(キノン)のメナジオール(ジフェノール)への還元のための電子供与体としてふるまう。メナジオールはMTTをホルマザン(着色製品)に還元し、そして、その形成はアッセイにおいてモニターされる。NQO1を誘導する化合物は、メナジオールの形成速度を増やし、それゆえ、ホルマザンの産生を増やす。
【0164】
誘導アッセイにおいて使われる濃度が細胞に細胞毒性がないことを確実とするために、化合物を、Hepa1c1c7細胞における成長阻害IC50値について、一次スクリーニングした。25μM(試験される最高濃度)で細胞生存度に影響を及ぼさなかった化合物は、25μMを上回っているIC50値を持つものとされた。化合物は、未処理のHepa1c1c7細胞と比較して、処理した細胞のNQO1活性に2倍の増加をもたらすのに必要とされる濃度と定義され、CDで表わされる誘導活性について、10〜100倍の濃度範囲にわたり試験された。結果は、表3で与えられる。このアッセイのための正の対照は、既知のNQO1誘導剤である、スルフォラファン、及びβ−ナフトフラボン(BNF)であった。これらのCD値は、0.26(±0.04)μM及び0.028(±0.003)μMであり、報告された値とほぼ一致する(Dinkova−Kostova,A. T.;Liby,K.T.;Stephenson,K.K.;Holtzclaw,W.D.;Gao,X.;Suh,N.;Williams,C;Risingsong,R.;Honda,T.;Gribble,G.W.;Sporn,M.B.;Talalay)。
【表3】

未処理のHepa1c1c7細胞と比較して、処理した細胞のNQO1活性の2倍の増加をもたらすために必要な濃度。平均及びSD(N=3)。
【0165】
表3から分かるように、本発明の化合物は、CD値が0.36μM〜4nMにわたる、概して強力なNQO1誘導物であった。環Aの置換が改善された誘導プロフィールに有益であるかどうかを決定するために、以下の比較(一元配置分散分析によって分析された)を行った。化合物39〜42(環Bの3’−OCH、環Aの様々な置換基)の場合、より大きな誘導が、41(6−Cl)と42(6−OCH)について観察された。環B上に3’−CFがあり、かつ環A上に置換基がない化合物と、化合物46〜47(環Bに3’−CFがあり、かつ様々な置換基が環A上にある)とを比較すると、47(6−Cl)のみが、活性を改善した。このように、環A上に6−Clがある化合物は、特定の環Bの官能基、すなわち、3−OCH及び3’−CFと組み合わされた時だけ、これらの非置換環A類似物より良好であった。これは他の置換基にとっても同様に真実であり得るが、しかし、環A又はBが主要な役割を果たすかどうかは、現在のところ確定していない。
【0166】
実施例4;Hepa1c1c7細胞の7−エトキシレゾルフィンO−デエチラーゼ(EROD)活性の測定
Hepa1c1c7細胞は96−ウェルプレートのウェルあたり10000細胞の密度で蒔かれ、そして24時間培養した。テスト化合物の保存液は、DMSO中で調製され、そしてウェル中で所望の濃度を与えるために、連続的に培地で希釈された。DMSOの最終濃度は、0.5%v/vであった。細胞は48時間試験化合物でインキュベートした後、培地は除去され、そして、ウェルは、200μlの1xリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄され、次いで、5μMの7−エトキシレゾルフィンと2mMのサリチルアミドを含む200μlの培地で、37℃で40分間インキュベートした。蛍光測定器で、530nmのλ励起と590nmのλ発光で測定値を読んだ。試験化合物の蛍光(ある場合)は、観測された測定値に対するその寄与を考慮するために、同じ波長で測定された。空のウェル(細胞なし、「ブランク」)、及び0.5%のDMSOを含むが試験化合物を含まない培地中のHepa1c1c7細胞のウェル(「対照」)の測定値も、読んだ。CYP1A1活性の強い誘導物質であるTCDD、ならびにBNF及びスルフォラファンを、対照として用いた。CYP1A1誘導活性を、以下の式によって算出した:
誘導度=F細胞+試験化合物−Fブランク/F対照−ブランク
【0167】
Hepa1c1c7細胞の7−エトキシレゾルフィンO−デエチラーゼ(EROD)活性に対する化合物の効果
NQO1活性の誘導が上記の化合物について観察されたので、(実施例3を参照)、第1段階の酵素活性も同様に誘導されたかどうかを判断することが重要であった。ERODアッセイを、このために使用した(Burke,M.D.;Mayer,R.T.,DrugMetab Dispos 1974,2,583)。EROD活性は、CYP1A1による7−エトキシレゾルフィンのレゾルフィンへのO−脱エチル化した割合を表わす。化合物がCYP1A1活性を誘導するならば、対照の未処置Hepa1c1c7細胞と比べてより多くのレゾルフィンが形成され、そして、対照のHepa1c1c7細胞に対する処理したHepa1c1c7細胞のレゾルフィンの蛍光の比率は増加するだろう。この比率は、化合物について、これらのCD値の約4倍の濃度で、測定された。一定濃度はここで使用しなかった。なぜなら、NQO1誘導活性における大きな変動を考慮すると、この濃度を選択することが難しいと考えられたからである。NQO1及びCYP1A1誘導率(同じ濃度で測定される比率)の割合を、各々の化合物についても得た。値>1は、CYP1A1と比較してNQO1のよりよい誘導を意味する。化合物39〜48についての結果は、表4に表した。
【0168】
TCDD、BNF及びスルフォラファンを、この実験の対照として用いた。TCDDはCYP1A1の既知の誘導物であり(Nishiumi,S.;Yamamoto,N.;Kodoi,R.;Fukuda,L;Yoshida,K.;Ashida,H.,Arch Biochem Biophys 2008,470,187)、そして、このアッセイで使用する場合、1nMでERODアッセイにおいて2.99の比率を与える。BNFとスルフォラファンは、それぞれ二官能性及び一官能性のNQO1誘導物質である(Dinkova−Kostova,A.T.;Liby,K.T.;Stephenson,K.K.;Holtzclaw,W.D.;Gao,X.;Suh,N.;Williams,C;Risingsong,R.;Honda,T.;Gribble,G.W.;Sporn,M.B.;Talalay)。それゆえに、BNFはHepa1c1c7細胞でCYP1A1とNQO1活性を誘導する筈であり、スルフォラファンはCYP1A1活性より著しくNQO1活性を誘導する筈である。0.01μMのBNFが、1.83倍(NQO1誘導率)のNQO1活性と1.13倍(CYP1A1誘導率)のCYP1A1活性を誘導し、従って、1.62のNQO1/CYP1A1割合を与えることが見出された。スルフォラファンで得られた結果は、その一官能性の特徴に沿っていた。1μMで、スルフォラファンはかろうじてCYP1A1活性(比率=0.924)を誘導したが、NQO1活性を約4倍(比率=3.89)増加させた。
【0169】
概して、本発明の化合物は、CYP1A1の弱い誘導物質であった。具体例として、化合物47はCYP1A1活性を2倍以上増やす。CYP1A1誘導率より重要なのは、CYP1A1誘導率に対するNQO1誘導率の割合である。何故なら、化合物がCYP1A1に優先してNQO1を誘導したかどうかを示すからである。より強いNQO1誘導によって相殺されるのであれば、強いCYP1A1誘導は不利でない場合がある。最も強力なNQO1誘導物質は47(NQO1誘導率5.20、表4)であり、そして、2.17のやや低いNQO1/CYP1A1割合を有していた。類似の関係は、化合物45についても見られた。
【表4】

化合物番号及びCYP1A1誘導アッセイに用いられた濃度(NQO1活性に対する〜4xCD)は、括弧内に与えられる。
第1列に示す濃度でHepa1c1c7細胞で測定。平均±SD、n=3。CYP1A1誘導比=(蛍光細胞+試験化合物−Fブランク)/(蛍光対照細胞−Fブランク
CYP1A1の誘導比と同じ濃度で、Hepa1c1c7細胞で測定。値は、各化合物の濃度に対する誘導度のプロットから読み取った。
割合=NQO1誘導活性/CYP1A1誘導活性
この値は、0.005、0.05、0.5、及び5μMの濃度のBNFから構築された曲線から読み取った。したがって、この値にはSDはない。0.05μMのBNFでは、CYP1A1の比率は1.27±0.12であった。
【0170】
実施例5;ミクロ培養テトラゾリウム(MTT)アッセイによる抗増殖性活性の測定
本発明の化合物の抗増殖性活性を、以下の細胞系でのMTTアッセイによって測定した:MCF7(ヒト乳癌細胞株)、HCT116(ヒト大腸癌細胞株)、及びCCL186(正常ヒト二倍体胚性肺線維芽細胞)。細胞株を、American Type Culture Collection(Rockville,MD)より購入した。MCF7及びCCL186細胞は、10%のFBS及び0.01%の抗生物質を補充した、1mMのピルビン酸ナトリウム、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、2mMのL−グルタミンを含むEagle’s最小必須培地(EMEM)で培養した。HCT116細胞は、10%のFBSと0.01%の抗生物質を補充した、2.2g/Lの重炭酸ナトリウムを含むMcCoy’s 5A培地で培養した。細胞は、以下の密度で蒔いた:10000細胞/ウェル(MCF7)、4000細胞/ウェル(HCT116)、5000細胞/ウェル(CCL186)。これらを96穴プレートで24時間生育し、各々のウェル中の対応する培地は100μlであった。試験化合物をDMSOで調製し、そして培地で一連の濃度に希釈した。1%以下のDMSO(最終濃度)が、各ウェルに存在した。試験化合物は細胞と72時間インキュベートし、その後、100μlのMTT溶液(0.5mg/mlの1xPBS)を添加して3時間インキュベートし、そして細胞をホルマザン産物を遊離するために溶解した。ホルマザン産物をDMSO(150μl)に溶解後、マイクロタイター・プレートリーダー上で、590nmで30分以内に吸光度を測定した。細胞生存度は、以下の式によって算出した:
細胞生存度(%)=[(A細胞+試験化合物−Aブランク)/(A未処理細胞−Aブランク)]X100
ここでAは、試験(A細胞+試験化合物)、対照(A未処理細胞)又はブランク(Aブランク)ウェルにおける、590nmで測定されたホルマザンの吸光度である。試験化合物の各々の濃度を、3回にわたり評価した。細胞成長の50%を阻害する濃度(IC50)は、OriginPro 7.5 SR1(Version V7.5776 B776,OriginLab Corporation,MA)を用いて生存細胞%対濃度をプロットすることによって得られたS字形曲線から決定した。MTTアッセイは、試験化合物の細胞障害性を測定する目的で、Hepa1c1c7細胞でも行った。細胞による化合物のインキュベーション期間が72時間の代わりに48時間であったこと以外は、同じ手順を採用した。
【0171】
<HCT116、MCF7及びCCL186細胞の化合物の抗増殖性活性>
化合物は、最初に、ヒトガン細胞株HCT116とMCF7細胞において、10μMの一定濃度でスクリーニングした。42、45〜48のような化合物は、この濃度において50%以上の細胞死を引き起し、これらの化合物は、2つのガン細胞株(表5)に対するIC50についてさらに評価した。細胞生存度に影響を及ぼすことが見出された化合物の少数であること(11、18%)は、大部分の化合物がCD値<10μM(表3)でNQO1活性を誘導する化学防御と比較して、抗増殖性活性のためのより厳しい必要条件が存在することを意味し得る。
【表5】

試験化合物と72時間のインキュベーション後に、50%の細胞生存度を減らすために必要な濃度。平均±SD、n=3。太字又は斜体の値は、選択比を表す:IC50 CCL186/IC50 MCF7 又はIC50 CCL186/IC50 HCT116
【0172】
表5の化合物は、両方のガン細胞株において、IC50値が1.2〜19.6μMの範囲の、同程度の抗増殖性活性を有していた。これらの活性を通常の細胞株(ヒト肺線維芽細胞)で得られるものと比較したとき、やや低めの選択性(平均で約2倍)を観測した。化合物46及び47は、ガン細胞と通常の細胞とをあまり区別せず、選択性は1に近かった。
【0173】
本発明の化合物は、強い抗増殖活性を示した。具体例として、表5に挙げた環B(46、47、48)に3’−CFを有する化合物は、環A置換基と全く独立した、この置換基によってもたらされる重要な役割を示している。同様に、クラス2の環Aは、6位での3つの異なる置換基、すなわち、6−OCH、6−Cl及び6−Fだけを有した。これらのうち、環Bの官能基にかかわりなく、6−OCHを有する3つ全ての化合物(42、45、48)が表5に挙げられているので、6−OCHが好ましいように見える。それゆえに、6−OCH(環A)と3’−CF(環B)が抗増殖性活性のための好ましい官能基であると結論され得るが、それにもかかわらず、最も活性の高い化合物42(6−OCH、3’−OCH)には同じ分子で両方の特徴はなかった。実施例3に記載したNQO1誘導活性とは異なり、抗増殖性活性について好ましい置換基は、比較的はっきりしている。
【0174】
実施例6:細胞数測定によるHCT116細胞の細胞周期に対する試験化合物の効果の測定
HCT116細胞をコンフルエンスに生育し、そして培地の交換なしで、少なくとも5日間この状態で維持した。血清飢餓状態の細胞は、その後トリプシン処理され、そして6ウェルプレート中に5x10細胞/ウェルの密度で二次培養した。成長培地は、10%のウシ胎児血清を含んでいた。試験化合物を、細胞がG1期に同期してすぐに、又は、細胞がG2期に同期したときである、24時間後のいずれかで添加した。細胞は、添加の時から24時間、試験化合物とインキュベートした。この時間の後、細胞は回収され、トリプシン処理され、そして70%の氷冷エタノールで最低24時間固定した。遠心分離後、上澄みを捨て、そして沈殿物はRNase A(200μg/ml)で30分間室温で処理し、その後20μg/mlの最終濃度のヨウ化プロピジウムを用いて細胞染色した。染色された細胞は、その後アルゴン固体レーザー(488nm)を備えたDako Cytomation Cyan LX(Dako Colorado,Fort Collins,CO,USA)上で、Summit(version 4.3)softwareを用いて、サブG1、G1、S及びG2/Mにおいて、細胞周期分布について解析した。化合物は、HCT116細胞上のMTTアッセイで測定したIC50である、〜1.5×IC50の濃度で試験した。
【0175】
<統計解析>
データは、SPSS 15.0(for Windows(登録商標)、Chicago,IL.)上の事後テストとしてチューキーHSDが続く一方向分散アッセイにより、統計的有意性について解析した。スピアマンの相関解析を、同じソフトウェアで行った。0.05の確率のレベルを、有意水準として使用した。
【0176】
<選択した化合物のHCT116細胞の細胞周期における効果>
表5に挙げられた化合物の抗腫瘍性活性の根本的な機序をより理解するため、細胞周期におけるこれらの効果を、フローサイトメトリーを用いた蛍光標示式細胞分取器(FAC)アッセイ法によって調査した。実験は、G1又はG2/M期における同期した細胞数に対する試験化合物の効果を調べるように設計した。G1同期化した細胞は、最高5日間コンフルエントに細胞を生育させて、それから低密度の継代培養による細胞周期への再入を刺激することによって得られた。24時間の生育後、これらの細胞は、G2/M期に調整された。
【0177】
G1ブロックから遊離した細胞は、異なる期の細胞の分布が決定した後、一定濃度(HCT116細胞上で〜1.5×IC50)の試験化合物に24時間曝露した後、対照の未処置細胞と比較した。G2/M期に調製された細胞も、同様に処理した。G1ブロック及びG2ブロックから遊離した対照細胞の代表的なFACS図を、図1に示す。G1又はG2停止の解除後の各期の細胞の割合を、表6に示す。
【表6】

使用した濃度は括弧内に示す。〜1.5xIC50 HCT116
各周期における細胞の比率は、3つの個別の測定の平均である。
【0178】
アッセイの結果は、化合物がG1停止(46、47)又はG2停止(42、45、48)を引き起こすことを示した。その抗増殖性活性は、自食又は壊死のような他の機序から発生し得る。46をG1停止と関連した化合物の例として、FACS図は、G1ブロックから遊離した細胞が46で処理されたとき、G1からG2/Mへの進行が中断したことを示した(図IA)。サブG1期の顕著な増加を、観測した(表6)。予想されたように、46はG2/MからG1への細胞の移行に影響を及ぼさなかった(図IB)。G2停止を引き起こした48の場合、48はG1から遊離した細胞の進行に干渉しないが(図IA)、G2/MからG1(図IB)への細胞移行を妨げた。このように、G1期の細胞の割合は、48への曝露後(24時間)増加しなかった(未処理の細胞の55.88%と比較して、G1期で30.55%)(表6)。サブG1期(図IB、表6)における、アポトーシス細胞の顕著な増加もあった。
【0179】
G1又はG2停止を引き起こした化合物の間の構造傾向を観察した。G2停止を引き起こした化合物(42、45、48)には、環A又はB上に共通して1つ又は2つのメトキシ基が存在していた。化合物42、45及び48は、環A上に6−OCHを有していた。42及び45の環Bも、メトキシル化されていた。対照的に、G1停止を引き起こした化合物(46、47)は、ハロゲン化されていた(46、47)。
【0180】
実施例7:HCC細胞株における化合物39〜48の抗増殖性潜在能力
HCCに対するこれらの化合物の制癌性潜在能力は、2つの代表的な肝がん細胞株、HepG2とHuH7を用いて、化合物を100倍以上の濃度範囲(0.1〜10μM)でスクリーニングする表現型アッセイを用いて試験した。さらに、THLE2を、制癌性潜在能力を非特異的な細胞障害と区別する、通常の肝細胞株として使用した。72時間後の細胞生存度の50%阻害に基づくIC50値は、細胞内ATP量の減少によって求めた。結果から、化合物47は、HuH7とHepG2(それぞれ0.5μMと0.6μM)に対して、μM以下のIC50を示した。化合物46と48は、類似した力価を示したが、HuH7よりHepG2に対して、より効果があった(表2)。これらの応答は、HuH7及びHepG2でのIC50はそれぞれ4.7μM及び4.5μMであり、臨床的に関連したインドリノンであるスニチニブと同等か、より優れていた。
【0181】
図2に示される細胞生存度アッセイは、それぞれのIC50値の測定のために、Prism5によって解析した。
【表7】

【0182】
その後、試験化合物の安全性指標を、正常肝臓対照細胞株で10μMでの生存率を正規化することによって定量化した(すなわちTHLE2/(HuH7又はHepG2)。大部分の化合物は、値>1であり、これは化合物についての抗増殖性効果の腫瘍細胞対正常細胞における選択性を示す(表8)。
【0183】
細胞生存度は、上記の表7で記載したように測定した。10μM処置での生存率が測定され、そして、安全率はTHLE2に対するHCC細胞株の生存率を正規化することによって計算された。
【表8】

【0184】
驚くことに、HuH7(Sr=21.76)及びHepG2(Sr=65.27)によって評価されるように、化合物47は顕著な安全性を示した。スニチニブとの比較は、化合物47がより良い有効性及び減じられた細胞障害性を示すことを確認した(図2)。
【0185】
実施例8;化合物47のHCC細胞株の別々のパネルにおける効果
そこで、化合物47をHCC細胞株の4つのより大きなパネルに対してスクリーニングした。これ以降の実験は、試験される4つの細胞株のうちの3つで、低マイクロモル濃度又はマイクロモル濃度以下におけるIC50でその効果を確認した。SK−Hep1は、IC50が10μMで達成できなかった唯一の低い応答を示したものであった。一方、Hs817Tは、化合物47に最も感度が高く、5μMで生存度が検知されなかった(図3)。
【0186】
実施例9:細胞周期とアポトーシスの生化学的マーカーに対する化合物47の効果
次に、化合物47の反増殖的な効果の機序を、調査した。化合物47は、24時間で、Erk及びAktの両方のリン酸化の用量依存的な阻害を引き起こした(図3)。細胞周期マーカー、サイクリン−D1及びPCNA発現の対応する減少もあった。同様に、切断されたPARP(図4)及び、カスパーゼ−3活性(図5)などのアポトーシスマーカーは、プロアポトーシスの機序の関与を裏付けた。しかし、ミトコンドリアアポトーシスに関与するBaxとBCL−xLに対する影響は、ほとんどなかった。
【0187】
実施例10:化合物47はHuH7におけるAFP転写を阻害する
HCCの治療に関する化合物47の特性を評価するために、腫瘍マーカーAFPを、転写的に測定した。より確立されたELISAにに勝るAFP mRNA定量の長所は、化合物47によるAFPの撹乱(perturbation)が、直接的な遺伝子制御効果、又は変化した細胞増殖の間接的な結果によるものかどうかを確認することである。HuH7(高いAFPを生産する)を用いて、本発明者は、AFPコピーが化合物47の投与(10μM)後24時間以内に3分の1まで顕著に抑制される一方で、この間スニチニブが測定可能な効果を示さないことを見出した(図6)。
【0188】
実施例11:抗体アレイによるRTK標的のプロファイリング
その後、化合物47のRTK標的を、HCC細胞株におけるその有効性に関して考察した。化合物47又はスニチニブのいずれかによる受容体型チロシンキナーゼ阻害のプロファイリングを、処理した細胞の溶解物を、ヒトのホスホRTKアレイ(RnD Systems)でインキュベートすることによって測定した。血清飢餓状態HuH7細胞を使用した。何故なら、これはこの研究において使用される他のHCC細胞株より、恒常的にリン酸化されたRTKを有するからである(データ示さず)。それゆえに、このプラットホームは、標的キナーゼのリン酸化の阻害と同時のシグナル変化を検出するのを可能にする。ここでは、化合物47によるインシュリン受容体、IGF1−R、Tyro3、EphA2、HER3、Met、及びRONを含むRTKの顕著な阻害が、観測された(図7)。これらの効果の大きさが、濃度測定的に測定され、そしてインシュリン受容体を重要な例外として、スニチニブより一般に高いことがわかった(表9)。
【0189】
化合物47又はスニチニブ(図7)での処理後のRTKリン酸化における変化は、定量化されて、未処置の対照における発現の大きさの順にランク付けされた(最高〜最低)。
【表9】

【0190】
他のマイナーな効果がFGFR4とCSF−IRについて観測されたが、これらのスポットは正確な定量化のためには薄すぎた(図7)。
【0191】
実施例12:ウェスタンブロットによるIGF−1R、EphA2及びTyro3リン酸化の阻害の確認
主なRTKリン酸化の変化を、イムノブロッティングよって個別に決定した。具体的には、本発明者はHuH7の腫瘍形成性のための新しい伝達機構であるかもしれない興味深い標的として、恒常的にリン酸化されるIGF−1R、EphA2及びTyro3を調べた。結果から、IGF−1R及びEphA2リン酸化の比例的な減少が、化合物47(図8A及び8B)の濃度の増加と共に観測された。この観測は化合物に特有であった。何故なら、10μMのスニチニブがどちらのチロシンキナーゼのリン酸化も認め得るほどに抑制しなかったからである。一方、Tyro3リン酸化は、用いられた最も低い濃度(1μM)においてさえ阻害され、そして、より高い濃度で更なる阻害は観測されなかった。スニチニブは、Tyro3に対して類似の効果を示した。これとは別に、EGFRリン酸化の予想外の増加も、スニチニブではなく化合物47で処置すると再生された(図8B)。
【0192】
要約すると、本発明の発明者は、本明細書中に記載される化合物が抗増殖性活性だけでなく、化学防御にも適していることを見出した。
いかなる特定の理論の束縛を受けることなく、環Bの3’−CF置換基と環Aの6−OCH置換基は抗増殖性活性のための重要な置換基であるようであったが、NQO1誘導に好ましいものはより明確でなかった。良い抗増殖性活性と化学的予防可能性(これらのNQO1/CYP1A1割合から評価される)とを併せ持つ、少数の化合物を特定した。これらは、主に化合物(42、45〜48)であった。これらの化合物は、2を超えるNQO1/CYP1A1割合を有していた。化合物42、45〜48が特に有望である。何故なら、これらはナノモル範囲のCD値を有するが、NQO1誘導に対する少なくとも2倍の選択性を示すからである。これらの化合物は、正常な細胞に対して細胞保護性である一方で、癌細胞に対して細胞傷害性であるという、二重の効果を潜在的に有し得る。
【0193】
予想外の発見は、抗増殖性活性を有する化合物の構造特徴が、細胞周期の進行におけるこれらの影響とどのように関連するかであった。おそらく紡錘体の形成を阻害することによって、環A及びBに少なくとも2つのメトキシ基を有する化合物(42、45)は、G2停止を引き起こすことが見出された。対照的に、両方の環上にハロゲン基を有する化合物(46〜48)は、サイクリン依存的キナーゼ活性の阻害に関与し得るG1期停止を引き起こした。アポトーシスの兆候を、これらの化合物について観測した。
【0194】
結論として、本発明者は、本明細書中に記載される化合物の、これらのNQO1活性を誘導する能力から見られる化学的予防可能性を示した。評価された大部分の化合物は、10μM未満のCD値を有しており、化学的予防への足場を提供する可能性を強く示す。一方、このシリーズにおいて4倍以上選択的にNQO1を誘導した候補化合物が存在していたが、窒素の存在は、化合物をCYP1A1及びNQO1活性へと誘導した可能性がある。抗増殖性活性の場合、本明細書中に記載される化合物(42、45〜48)は、NQO1の選択的な誘導と、良好な抗増殖性活性(2つの癌細胞株でIC50<10μM)とを成功裡に併せ持つことができた。したがって、これらは癌細胞に対する抗増殖性活性と、正常な細胞においてNQO1誘導を介したある程度の細胞保護作用とを併せ持つ、化合物の有用な先駆けである。
【0195】
本発明の発明者は、有効性の予備証拠として、HuH7及びHepG2における細胞生存度の阻害を用いて、新規ベンジリデン−インドリノンをスクリーニングした。インドリノン環は、化合物ライブラリーを産生するための、誘導体化のための多部位を有する多目的の足場である。重要なことに、この足場は、効果的な送達のための低分子量(<500)、及び細胞透過性と分布のための良好な親油性(cLogP<5)などの、薬様の特性の重要な基準を満たす。さらに、インドリノンの従前の最適化が、スニチニブのような他の強力なマルチターゲット阻害剤も引き起こしたので、インドリノンが最適に複数のキナーゼのATP結合ポケットの化学的環境に適合し、そして、足場の微妙な機能化が、臨床的価値の他の類似物を発見するのに役立ち得ると推測された。
【0196】
この手法を使って、本発明者は、置換ベンジリデンインドリノン(化合物46〜48)のサブセットが、HCCで特に効果的であるのを見出した。これらの分子はもっぱら化合物ライブラリー由来の3−トリフルオロメチルの置換類似体であり、したがって、これを薬物設計のさらなる最適化のために有用なファーマコフォアであることを示唆する。特に、前述のように、化合物47はマイクロモル以下のIC50を示し、HepG2細胞での、スニチニブ(図3)及びソラフェニブより優れていた(Liu L,Cao Y,Chen ,Zhang X,McNabola A,Wilkie D,et al.Sorafenib blocks the RAF/MEK/ERK pathway,inhibits tumor angiogenesis,and induces tumor cell apoptosis in hepatocellular carcinoma model PLC/PRF/5.Cancer Res 2006 Dec 15;66(24):11851−11858)。この効果は、多様な病因の肝細胞癌細胞株の範囲へ外挿することができる。唯一の弱い応答者は、孤立間葉系幹細胞様細胞系である、SK−Hep1であり、それは非常にさまざまな病態を有する(結腸癌の遠転移由来の二次性腫瘍)。その上、化合物47はTHLE2における減少した細胞障害性に基づく、非常に好ましい安全性プロファイルを示した。これは、マルチターゲットのキナーゼ阻害剤の特に重要な属性である。何故なら、その標的選択性における本質的に低い厳密性が、何かの事情で、より非特異的な効果につながる可能性があるからである。
【0197】
上記の結果が潜在的な薬剤候補としての化合物47を裏付けるので、阻害されたキナーゼが、遡及的に検討され、その際そのHuH7における活性の基本機序が、(血清飢餓条件下で)推測された。おそらく、このような戦略は、標的とされるすべてのキナーゼの包括的特定を防止し得る。しかし、このアプローチの利点は、恒常的にHCCで活性であり、そのため腫瘍原性を維持するのに極めて重要な役割を果たしている、RTKsのサブセットに価値ある見識を生み出すことである。したがって、IGF−1Rが、主要な標的として、HCC病因の将来の研究における新規かつ潜在的に重要な寄与する分子としての、EphA2とTyro3と共に、発見された。面白いことに、EGFRリン酸化の逆説的な増加も、観測された。EGFR活性は通常Ekrシグナリングを通して細胞増殖の増加と相関するが、そのような下流の効果は検出されなかった(図5)。任意の理論の束縛を受けることを望むことなく、1つの仮説は、EGFR活性は、腫瘍が発癌性依存を別の経路に切り替えようとする中での、IGF−1R阻害への補償応答であるかもしれない。EGFR活性に正比例する、爾後のEkrリン酸化の障害は、EGFRでなく、IGF−1Rが腫瘍増殖を打ち消す制御をすることを示唆する。EGFRとIGF−1Rの間の相互依存は、肝癌細胞がIGF−1Rシグナリングを通してEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)に対する抵抗を得るというクロストークについての以前の報告に裏付けられる(sbois−Mouthon C,Cacheux W,Blivet−Van Eggelpoel MJ,Barbu V,Fartoux L,Poupon R,et al.Impact of IGF−1R/EGFR cross−talks on hepatoma cell sensitivity to gefitinib.Int J Cancer 2006 Dec 1.119(11):2557−2566)。IGF−1Rの相互抑制も、これらの観測を反映したBxPC3細胞中で、EGFRリン酸化の増加を示した(Buck E,Eyzaguirre A,Rosenfeld−Franklin M,Thomson S,Mulvihill M,Barr S,et al.Feedback mechanisms promote cooperativity for small molecule inhibitors of epidermal and insulin−like growth factor receptors.Cancer Res 2008 Oct 15.68(20):8322−8332)。同様に、別の研究は、IGF−1Rの撹乱は、HuH7細胞におけるEkrリン酸化を直接変化させ、そして、腫瘍形成の一因となることを記載し(Cheng W,Tseng CJ,Lin TT,Cheng I,Pan HW,Hsu HC,et al.Glypican−3−mediated oncogenesis involves the Insulin−like growth factor−signaling pathway.Carcinogenesis 2008 Jul;29(7).1319−1326)、したがって、他の癌種で見られるより確立されたEGFRシグナリングと比較して、IGF−1RをHCCにおけるMAPKシグナリングの最も有望なトランスデューサーとして確認した。
【0198】
IGF−1Rは、がん研究への意義を高める遺伝子である。報告書は、肝細胞癌におけるIGF−1Rの役割と、その下流の細胞周期及びHCCモデルにおける抗アポトーシス経路の制御を記載している(Cheng W,Tseng CJ,Lin TT,Cheng I,Pan HW,Hsu HC,et al.Glypican−3−mediated oncogenesis involves the Insulin−like growth factor−signaling pathway.Carcinogenesis 2008 Jul.29(7):1319−1326.Hopfner M,Huether A,Sutter AP,Baradari V,Schuppan D,Scherubl H.Blockade of IGF−1 Receptor tyrosine kinase has antineoplastic effects in hepatocellular carcinoma cells.Biochem Pharmacol 2006 May 14;71(10).1435−1448)。IGF−1Rが、HuH7において最も強くリン酸化されたRTK(生理活性インシュリン受容体の近傍)であるという観察は、それをHCC表現型の維持における重要な候補にする。個別に、EphA2とTyro3は、HCCにおける新規の癌遺伝子である。EphA2は、蓄積された証拠が、いくつかの悪性腫瘍での発現と役割を示唆しているので、新たな標的である。少なくともいくつかの黒色腫において、EphA2活性は、腫瘍新血管形成の一因となることが示された(Walker−Daniels J,Hess AR,Hendrix MJ,Kinch MS.Differential regulation of EphA2 in normal and malignant cells.Am J Pathol 2003 Apr.162(4):1037−1042)。Tyro3は、RTKのAxIサブファミリーに属す。現在まで、その変化特性が実験的なモデルで実験的に示されたが、限られた報告はヒトのガンとTyro3とを関連付けた(Hafizi S,Dahlback B.Gas6 and protein S. Vitamin K−dependent ligands for the AxI receptor tyrosine kinase subfamily.FEBS J 2006 Dec.273(23):5231−5244)。HCCにおけるこれらのRTKの正確な機能が更なる調査を必要とする一方で、細胞サイクリングマーカー(PCNA及びサイクリンD1)の阻害と、初期のアポトーシス(カスパーゼ−3活性化及びPARP切断)の刺激は、キナーゼ阻害の結果がシグナリングカスケードを通して翻訳され、成長停止と細胞死の相乗効果をもたらしたという、更なる証拠を提供した。
【0199】
化合物47のRTK標的の完全なスペクトルが調査されてない一方で、今までのところ提供されている証拠は、古典的なマルチ−RTK阻害剤(スニチニブ)との際立った対照を明らかにした。インシュリン受容体は化合物47によって阻害されたが、スニチニブよりかなり弱かった。これは、観測された化合物47のスニチニブに対する、低減された細胞障害性の効果を説明し得る。対照的に、化合物47による強いIGF−1RとEphA2阻害は、スニチニブで見られなかった。1つの重要な結果は、スニチニブが無視できる効果しか有しない一方で、化合物47が劇的にAFP転写を減少させたという、AFPの調節における顕著な違いであった。この発見は、キナーゼが阻害されたパネルがAFPを機構的に調節しそれによって、60−70%がAFP陽性であることが知られているHCCに、選択的な効果を与えたかもしれないという可能性を暗に示した(Abelev GI,Eraiser TL.Cellular aspects of alpha−fetoprotein reexpression in tumors.Semin Cancer Biol 1999 Apr;9(2).95−107)。さらに、AFPノックダウンがHuH7細胞でアポトーシスを促進するという最近の発見は、AFPが無害な腫瘍マーカーの代わりにHCC成長を能動的に制御し得ることを示唆する(Yang X,Zhang Y,Zhang L,Zhang L,Mao J. Silencing alpha−fetoprotein expression induces growth arrest and apoptosis in human hepatocellular cancer cell.Cancer Lett 2008 Nov 28;271(2):281−293)。全体として、IGF−1RとEphA2及びTyro3などの他のRTKを含むキナーゼ阻害の新しい組合せは、化合物47を、HCC治療に適切なRTK標的の他の先端的な最適化と、探索のための、興味深く、かつ潜在的に有用な薬剤とする。
【0200】
結論として、新しいインドリノン誘導体は、癌、特に肝細胞癌に対して、既存のTKI以上の治療上の利点を表示することが、同定された。機構的に、IGF−1RシグナリングはおそらくHCCの腫瘍維持手段のための重要な伝達機構であり、そして、EphA2及びTyro3の果たし得る役割は、更なる調査を必要とする。IGF−1R及び他の経路に集中する多元標的とされたキナーゼ阻害剤は、したがって、HCCならびに複数のシグナリング異常が関係し得る他の悪性に対して使用するTKIsの新しいクラスを示し得る。
【0201】
当業者は、本発明が目的を実行し、かつ本明細書中に記載されている固有のものと同様の結果と利点を得るのによく適合しているとも容易に認めるだろう。本明細書に記載される分子複合体、及び、方法、手順、処置、分子、特定の化合物は、現段階での好ましい態様を代表して、例示的であり、かつ発明の範囲に対する制限を意図しない。当業者に想到される、本発明の精神の範囲内の本明細書中の変更及び他の用途は、特許請求の範囲によって定められる。
【0202】
置換と修飾の変更が、発明の範囲と精神を逸脱しない範囲で、本明細書中で開示された発明になされるかもしれないことは、当業者にとって容易に明らかになるだろう。
【0203】
本明細書中に記載のすべての特許と文献は、本発明に関係する当業者のレベルを示す。個々の文献が明確に、そして、個別に参照として包含されることを示すように、すべての特許と文献は同程度に参照として本明細書中に包含される。
【0204】
適切に具体例として本明細書中に開示される発明は、特に本明細書中に明らかにされない任意の1つの要素又は複数の要素、1つの制限又は複数の制限がない場合でも実施されてよい。このように、本明細書中のいかなる場合でも、用語「含む」、「実質的に〜からなる」、及び「〜からなる」のうちのいずれも、他の2つの用語と置き換えてよい。使用された用語及び表現は、制限の用語でなく開示の用語として使用され、そして、このような用語及び表現の使用において、示された、又は開示された特徴又はその一部の任意の均等物を除外することを意図しないが、様々な修正が主張される発明の範囲内で可能であることが認識される。このように、本発明が好ましい態様及び選択的な特徴によって明らかにされたが、本明細書中に開示される概念の修正及び変更は当業者によってなされてもよく、そしてこのような修正及び変更が、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0205】
さらに、本発明の特徴又は面がマーカッシュグループに関して記載されている場合、当業者は、本発明が、それによってマーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はサブグループのメンバーに関しても記載されていることを認識するであろう。例えば、Xが臭素、塩素とヨウ素からなる群より選択されると記載されている場合、Xが臭素である主張と、Xが臭素及び塩素である主張とが、完全に記載される。
【0206】
他の態様は、以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iの化合物、又はこれの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグであって、
【化1】

ここで、
とRは、非置換又は置換C〜C10アルキル、非置換又は置換C〜C10アルケニル、非置換又は置換C〜C10アルキニル、非置換又は置換C〜C10アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、及びトリハロメチルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、
mは整数1、及びnは整数1又は2であり、
mとnがそれぞれ1の場合、Rは環Aの6位、及びRは環Bの2’、3’又は4’位であり、
mが1でnが2の場合、Rは環Aの6位、及びRは環Bの3’及び4’位である、化合物。
【請求項2】
それぞれのRが、ハロゲン及びC〜Cアルコキシからなる群より独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
それぞれのRが、ブロモ、クロロ、フルオロ及びメトキシからなる群より独立して選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
それぞれのRが、C〜Cアルコキシ、ヒドロキシル、及びトリハロメチルからなる群より独立して選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
それぞれのRが、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシル、及びトリフルオロメチルからなる群より独立して選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は化学式Iaの構造を有し、
【化2】

ここで、mとnが共に1の場合、
は6−F,6−Cl、及び6−OCHからなる群より選択される1つであり、
は、3’OCH、3’−OH,4’−OCH、及び3’CFからなる群より選択される1つであり、
ここで、mが1でnが2の場合、
は6−F,6−Cl、及び6−OCHからなる群より選択される1つであり、
は、3’OCH、3’−OH,4’−OCH、及び3’CFからなる群より選択される1つである、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、
6−フルオロ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−フルオロ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−フルオロ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−メトキシ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−メトキシ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−メトキシ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−フルオロ−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−メトキシ−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−フルオロ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
6−クロロ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、及び
6−メトキシ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、6−クロロ−3−(3’−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オンである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
化学式IIの化合物、又はこれの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグであって、
【化3】

ここで、
Xは、F、Br、又はC〜Cアルコキシであり、
それぞれのRは、非置換又は置換C〜C10アルキル、非置換又は置換C〜C10アルケニル、非置換又は置換C〜C10アルキニル、非置換又は置換C〜C10アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、及びトリハロメチルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、
oは整数1又は2であり、
oが1の場合、Rは環Bの3’又は4’位であり、
oが2の場合、Rは環Bの3’及び4’位である、化合物。
【請求項10】
それぞれのRが、C〜Cアルコキシ、ヒドロキシ、及びトリハロメチルからなる群より独立して選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
それぞれのRが、メトキシ、ヒドロキシル、及びトリフルオロメチルからなる群より独立して選択される、請求項9又は10に記載の化合物。
【請求項12】
Xがメトキシ又はエトキシである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が化学式IIaを有し、
【化4】

ここで、nが1の場合、Rは、3’−F,3’−Cl,3’−Br,3’−OCH;3’−OH;4’−OCH;3’CF,4’−F,4’−Cl,4’−Br,4’−OCH;4’−OH;3’−OCH,及び4’−CFからなる群より選択される1つであり、
ここで、nが2の場合、Rは3’−F,3’−Cl,3’−Br,3’−OCH;3’−OH;4’−OCH;3’CF,4’−F,4’−Cl,4’−Br,4’−OCH;4’−OH;3’−OCH,及び4’−CFからなる群より選択される1つである、
請求項9〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、
5−クロロ−3−(3’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
5−クロロ−3−(3’−ヒドロキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
5−クロロ−3−(4’−メトキシ−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、及び
5−クロロ−3−(3’トリフルオロメチル−ベンジリデン)−インドリン−2−オン、
からなる群より選択される、請求項9〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
化学式I又はIIの化合物を調製する方法であって、塩基の存在下で、化学式(III)のオキシインドールを、化学式(IV)のアルデヒドと反応させることを含む、方法。
【化5】

【化6】

【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物、又は塩、又はプロドラッグと、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
追加の薬剤又は薬物をさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
タンパク質キナーゼの触媒活性を調節する方法であって、前記タンパク質キナーゼを、請求項1〜14のいずれか1項に記載の前記化合物、塩又はプロドラッグと接触させることを含む、方法。
【請求項19】
前記タンパク質キナーゼは、タンパク質チロシンキナーゼを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質チロシンキナーゼは、受容体タンパク質チロシンキナーゼを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記受容体タンパク質チロシンキナーゼは、EGFR、HER2、HER3、HER4、IR、IGF−1R、IRR、PDGFR、CSFIR、C−Kit、C−fms、Flk−1R、Flk4、KDR/Flk1、Flt−1、FGFR−1R、FGFR−2R、FGFR−3R、FGFR−4R、EphA2、及びTyro3からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
タンパク質チロシンキナーゼ関連疾病又は疾患を治療又は予防するための方法であって、薬学的に有効量の請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記患者が哺乳類、好ましくはヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質チロシンキナーゼ関連疾病又は疾患は、受容体タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患を含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記タンパク質チロシンキナーゼ関連疾病又は疾患が、IGF−1R関連疾患である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
前記IGF−1R関連疾患が癌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質チロシンキナーゼ関連疾病又は疾患が、肝細胞癌、乳癌、大腸癌及び肺癌からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質チロシンキナーゼ関連疾病又は疾患は肝細胞癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
肝細胞癌に対して特異的な効果を有するタンパク質キナーゼ阻害剤を同定するための方法であって、
(i)候補化合物を肝細胞癌細胞株と培養すること、
(ii)細胞生存度を測定すること、
(iii)正常な肝細胞株に対する前記候補化合物の効果と、測定された前記細胞生存度とを比較して、肝細胞癌細胞に対して特異的な活性を有する化合物を同定すること
を含む、方法。
【請求項30】
前記肝細胞癌細胞株は、HepG2及びHuH7からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−505880(P2012−505880A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532047(P2011−532047)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000376
【国際公開番号】WO2010/044753
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(502152665)ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール (4)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】