説明

新規分解型反応性乳化剤、これを用いたポリマー改質方法及びポリマー

【課題】乳化重合時の安定性を良好にし、また、エマルションから得られた塗膜の耐水性、接着性、及び耐熱性、耐候性が著しく改善され、更に得られたポリマー物性を著しく改善できる新規分解型反応性乳化剤を提供する。
【解決手段】下記一般式で表される新規分解型反応性乳化剤。


[Xはアルキル基等、mは0または1、Rは水素原子またはメチル基、Yは水素原子またはイオン性の親水性基、Aはアルキレン基、nは0または1〜100の整数。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一分子内に、酸性条件下で容易に分解する1,3−ジオキソラン環と、共重合性の不飽和基を合わせ持つ化合物からなる新規な分解型反応性乳化剤に関し、更に、該新規分解型反応性乳化剤を利用するポリマー改質方法、及びその改質方法によって得られるポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乳化重合用乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等の非イオン性界面活性剤、また、高級脂肪酸石鹸、ロジン石鹸等の石鹸類が単独あるいは併用で使用されている。
【0003】
しかし、上記従来の乳化剤では、ポリマーエマルションの安定性、また該エマルションから得られた塗膜やポリマーの性質等は、必ずしも充分に満足し得るものではなく、多くの解決すべき問題点が残されている。即ち、エマルションの重合安定性、工程中の泡トラブル、得られたエマルションの機械安定性、化学安定性、凍結融解安定性、顔料混和性、貯蔵安定性等に問題があり、更に、エマルションから塗膜を作成した際、使用した乳化剤が遊離の状態で塗膜中に残留するため、塗膜の耐水性、接着性、耐熱性、耐候性等が劣る等の問題を生じている。
【0004】
また、エマルションを塩析、酸析等の手段によって破壊し、ポリマーを取り出す際、ポリマー中に乳化剤が残存した場合には、得られたポリマーの耐水性や耐熱性、耐候性、ポリマー強度等、種々ポリマー物性が低下する問題を生じている。従って、ポリマー中の乳化剤を充分除去する為に多量の洗浄水を必要とし、更に、排水中に多くの乳化剤が含有され、河川汚濁の原因となる為に、乳化剤の除去、排水処理に多大の労力が必要であるという問題があった。
【0005】
これらの対策として、乳化重合時に使用する乳化剤量の低減、また、他工程で添加される界面活性剤類の添加量低減等の方法が試みられているが、これらは上記の諸問題の根本的な解決には成り得ず、乳化重合時の重合安定性、得られたエマルションの安定性や塗膜やポリマーの種々物性の点で未だ充分な解決は図られていない。
【0006】
このような観点から、従来の乳化剤の問題点を改善するため共重合性の不飽和基を有する反応性乳化剤が数多く提案されている。例えば、特公昭46−12472号公報、特開昭54−14431号公報、特公昭46−34894号公報、特公昭54−29657号公報、特開昭51−30285号公報、特公昭49−46291号公報及び特開昭56−127697号公報等にはアニオン性の反応性界面活性剤が記載され、また、特開昭56−28208号公報及び特開昭50−98484号公報等には非イオン性の反応界面活性剤につきそれぞれ記載されており、各種モノマーについて乳化重合が試みられている。しかし、これらの反応性乳化剤は乳化剤として単独使用したときには、エマルション重合時の安定性が不充分であり、使用に際しては、従来の乳化剤と併用しなければ重合が円滑に進行しない場合が多く、また、該エマルションから得られた塗膜は、耐水性、接着性、耐熱性、耐候性において未だ充分満足するものが得られていないのが実情である。
【0007】
また、エマルションを破壊してポリマーを取り出す際、排水負荷の低減を目的として、反応性乳化剤の使用が試みられているが、従来の反応性乳化剤では、塩析法や酸析法によりエマルションを破壊してポリマーを回収する際、ポリマーの析出、分離が不完全で、容易にポリマーを取り出すことが出来ない場合やポリマー回収率が低下する場合が多く、更に、従来の反応性乳化剤では、必ずしもモノマーとの共重合性が充分ではないために、未反応の乳化剤が排水中に流出し、排水負荷の問題を充分に解決するに至っていない。
【0008】
これらの問題を改善する方策として、反応性乳化剤とは異なる観点から、化学的処理により容易に分解する分解性界面活性剤を乳化重合用乳化剤として利用する技術が提案されている。例えば、特開平3−281602号公報では、酸処理により容易に分解する分解性界面活性剤を乳化重合用乳化剤として使用し、酸析によりポリマーを容易に回収する技術が開示されている。しかしながら、分解性乳化剤では、乳化剤分子中の疎水基または親水基の種類によっては、酸処理後の分解生成物が水に難溶である場合やポリマーに吸着される場合があり、多量のポリマー洗浄水が必要であり、また、ポリマー洗浄後、ポリマー中に遊離の状態で残存した分解生成物がポリマー物性において悪影響を及ぼす場合があり、上記の諸問題を充分に解決するに至っていない。
【0009】
そこで、特開2001−261719号公報では、同一分子内に、酸性条件下で容易に分解する1,3−ジオキソラン環と、共重合性の不飽和基を合わせ持つ分解型反応性界面活性剤を乳化重合用乳化剤として使用し、得られたポリマーを改質する技術が開示されている。この場合には共重合性の不飽和基が親水基部位の近くにあり、酸性条件下での1,3−ジオキソラン環の分解により、得られたポリマーへ親水性を付与することが可能となる(特許文献1)。しかしながら樹脂の改質としては、耐水性の向上が重要視される場合が多く、この場合親水基部位の樹脂への導入は必ずしも必要ではなく、耐水性、吸水性等のポリマー物性およびポリマー回収率に悪影響を及ぼす場合があり、上記の諸問題を充分に解決するに至っていない。
【特許文献1】特開2001−261719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は乳化重合時の安定性を良好なものとし得、また、エマルションから得られた塗膜の耐水性、接着性、及び耐熱性、耐候性が著しく改善され、更に、ポリマー回収時には、容易にポリマーエマルションを破壊し、ポリマー回収率も向上し得、また得られたポリマーへ疎水性部位を導入することにより、耐水性、吸水性等のポリマー物性を著しく改善できる乳化重合用の新規分解型反応性乳化剤を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、このような従来の問題点に着目し鋭意研究を重ねた結果、同一分子内に、酸性条件下で容易に分解する1,3−ジオキソラン環と、共重合性の不飽和基としてアリル基またはメタリル基を合わせ持つ化合物が、乳化重合用乳化剤として適していることを見出し、本発明に到達したものである。
【0012】
すなわち、以上の知見に基づく本発明は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする新規分解型反応性乳化剤である。
【0013】
【化1】

【0014】
但し、式中、Xは炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキル(アリール)エーテル基、または水素原子である。mは0または1であり、Rは水素原子またはメチル基である。Yは水素原子またはイオン性の親水性基であり、イオン性基としてはアニオン性基、カチオン性基、両イオン性基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、nは0または1〜100の整数であり、nが2以上の場合、(AO)nは、下式(2)で示される、1種の繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、下式(3)で示される、異なる置換基A(A、A、…)を有する2種以上の繰り返し単位からなるブロックポリマーまたはランダムポリマーであってもよい。
【0015】
―(AO)―(AO)―(AO)― (2)
―(AO)n―(AO)n― ……(但し、n+n+……=n) (3)
【0016】
そして、本発明のポリマーの改質方法は、上記の新規分解型反応性乳化剤の存在下で、モノマーを乳化重合した後、ポリマー中に共重合した該乳化剤分子内の1,3−ジオキソラン環部位を酸分解することにより、ポリマー中に疎水性部位を付与することを特徴とするポリマーの改質方法である。
【0017】
更に、本発明は、上記のポリマーの改質方法によって得られることを特徴とするポリマーである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、乳化重合時における安定性および得られたポリマーエマルションの安定性を良好にし得、ポリマーエマルションから得られたポリマー塗膜の耐水性を著しく改善し、また回収工程によって得られたポリマーへ疎水性部位を導入することにより、耐水性、吸水性等のポリマー物性を著しく改善できる新規な乳化重合用の新規分解型反応性乳化剤を提供することができる。
【0019】
更に、本発明の新規な乳化重合用の新規分解型反応性乳化剤を使用することにより、得られたポリマーおよびポリマー塗膜の物性を改良するポリマー改質方法を提供することができる。
【0020】
これにより、工程中での泡トラブルを解消し、しかも、ポリマー回収工程におけるポリマーの回収率を向上させ、生産性の向上に著しく寄与することが可能となり、関連産業界の発展および需要者の利益に寄与するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の新規分解型反応性乳化剤は、分子内に酸性条件下で容易に分解する1,3−ジオキソラン環を有し、合わせて、同一分子内に共重合性の不飽和基を有する、下記一般式(1)で表されることを要旨とする(以下、「本発明の新規分解型反応性乳化剤」を単に「本発明乳化剤」ということがある。)。
【0022】
【化2】

【0023】
本発明の新規分解型反応性乳化剤は、上記式(1)中のXが炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキル(アリール)エーテル基、または水素原子である。mは0または1であり、Rは水素原子またはメチル基である。Yは水素原子またはイオン性の親水性基であり、イオン性基としてはアニオン性基、カチオン性基、両イオン性基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、nは0または1〜100の整数であり、nが2以上の場合、(AO)nは、下式(2)で示される、1種の繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、下式(3)で示される、異なる置換基A(A、A、…)を有する2種以上の繰り返し単位からなるブロックポリマーまたはランダムポリマーであってもよい。
【0024】
―(AO)―(AO)―(AO)― (2)
―(AO)n―(AO)n― ……(但し、n+n+……=n) (3)
【0025】
上記一般式(1)の化合物において、置換基Xは炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキル(アリール)エーテル基、または水素原子である。
【0026】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、等が挙げられる。
【0027】
また、アルケニル基として好ましくは、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリドセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、等が挙げられる。
【0028】
アルコキシル基としては、メチルエーテル基、エチルエーテル基、プロピルエーテル基、ブチルエーテル基、ペンチルエーテル基、ヘキシルエーテル基、ヘプチルエーテル基、オクチルエーテル基、ノニルエーテル基、デシルエーテル基、ウンデシルエーテル基、ドデシルエーテル基、トリデシルエーテル基、テトラデシルエーテル基、ペンタデシルエーテル基、ヘキサデシルエーテル基、ヘプタデシルエーテル基、オクタデシルエーテル基、ノナデシルエーテル基、イコシルエーテル基、等が挙げられる。
【0029】
アルキル(アリール)エーテル基としては、メチルフェノール基、エチルフェノール基、プロピルフェノール基、ブチルフェノール基、ペンチルフェノール基、ヘキシルフェノール基、ヘプチルフェノール基、オクチルフェノール基、ノニルフェノール基、デシルフェノール基、ウンデシルフェノール基、ドデシルフェノール基、トリデシルフェノール基、テトラデシルフェノール基、ペンタデシルフェノール基、ヘキサデシルフェノール基、ヘプタデシルフェノール基、オクタデシルフェノール基、ノナデシルフェノール基、イコシルフェノール基、等が挙げられる。
【0030】
以上のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキル(アリール)エーテル基は、一般式(1)の化合物中に2種類以上が混在していてもよい。
【0031】
一般式(1)中のmは0または1であり、Rは水素原子またはメチル基である。
【0032】
また、一般式(1)中のAは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等である。
【0033】
一般式(1)中のnは0または1〜100の整数である。前記のnが2以上の場合、一般式(1)における(AO)nは、1種の繰り返し単位からなるホモポリマー(前式(2)参照)であってもよいし、異なる置換基A(A、A、…)を有する2種以上の繰り返し単位からなるブロックポリマーまたはランダムポリマー(前式(3)参照)であってもよい。また、nが2以上の場合、(AO)nがホモポリマー、ブロックポリマーあるいはランダムポリマーである化合物の混合物であっても良い。
【0034】
一般式(1)中のYは、水素原子であることができる(下記一般式(4))。
【0035】
【化3】

【0036】
前記アニオン性親水基としては、下記の一般式(5)〜(10)で表されるサルフェート基(一般式(5、6))、ホスフェート基(一般式(7))、カルボキシレート基(一般式(8、9))、スルホサクシネート基(一般式(10))が挙げられる。
【0037】
【化4】

【0038】
式(5)〜(10)中、Rは二塩基酸からカルボキシル基を除いた残基を表す。M及びM’は水素原子、金属原子、アンモニウム又は炭化水素基を表し、MとM’は異なるものでも同一のものでも良い。pは2〜4の整数を示す。qは1または2の整数を示す。
【0039】
は、二塩基酸からカルボキシル基を除いた残基である。このような二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の飽和脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸(エンドメチレンテトラヒドロフタル酸)、メチルナジック酸、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸、メチルペンテニルテトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0040】
M及びM’は水素原子、金属原子、アンモニウムまたは炭化水素基を表す。金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子(但し、アルカリ土類金属原子は通常2価であるから、1/2)等が挙げられ、アンモニウムとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアンモニウムが挙げられる。炭化水素基としては上記に記載のものが挙げられる。また、M及びM’は異なるものでも同一のものでも良く、上記記載のものを2種類以上含んでいても良い。
【0041】
[本発明乳化剤の合成]
本発明の新規分解型反応性乳化剤を得るための反応条件は特に限定されるものではなく、まず、下記一般式(11)に示すアルコールは、例えば共重合性の不飽和基を有するアルコールとα−オレフィンエポキシドの開環反応、若しくは高級アルコール又はアルキルフェノールと共重合性の不飽和基を有するグリシジルエーテルの開環反応により得ることができる。
【0042】
【化5】

【0043】
次に、1,3−ジオキソラン化合物(下記一般式(12))は、上記アルコール(一般式(11))の酸化により得られるアルデヒドまたはケトンとグリセリンとを酸触媒の存在下、脱水縮合反応させて得ることができる。また、α,β‐アルキリデングリセリンのような環状アセタール、例えば、1,2−イソプロピリデングリセリンをアセチル化し、次いで、アルコール(一般式(11))の酸化により得られるアルデヒドまたはケトンと酸触媒の存在下、アセタール交換反応させた後、加水分解して得ることもできる。
【0044】
【化6】

【0045】
更に、1,3−ジオキソラン化合物(上記一般式(12))とアルキレンオキシドを常法にて付加して目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤(一般式(4))を得ることができる。更に、以下に示す方法によりイオン性基を導入して目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤(下記一般式(13〜18))を得ることができる。
【0046】
【化7】

【0047】
式中、Rは水素原子またはメチル基、Xは炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキル(アリール)エーテル基、または水素原子である。mは0または1、nは0または1〜100の整数、pは2〜4の整数、qは1または2の整数を示す。M及びM’は水素原子、金属原子、アンモニウム又は炭化水素基を表し、MとM’は異なるものでも同一のものでも良い。
【0048】
具体的には、一般式(13)の化合物は、例えば1,4−ブタンサルトン、1,3−プロパンサルトン、およびイセチオン酸ソーダ、他のスルホン化剤を用いて公知の方法でスルホン化した後、種々公知の中和剤を用いて中和することにより、目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤を得ることができる。
【0049】
また、一般式(14)の化合物は、例えば、スルファミン酸−ピリジン混合物、サルファン−ピリジン混合物、他、の硫酸化剤を用いて、公知の方法で硫酸エステル化した後、必要に応じて、種々公知の中和剤を用いて中和することにより、目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤を得ることができる。
【0050】
また、一般式(15、16)の化合物は、例えば、無水マレイン酸を触媒の存在下で反応させてモノエステル化物を得、次いで、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等のスルホン化剤を用いて、公知の方法でスルホン化することにより、目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤を得ることができる。
【0051】
また、一般式(17)の化合物は、例えば、モノクロル酢酸、モノブロム酢酸、モノクロルプロピオン酢酸、他、のモノハロゲン化酢酸またはその塩を触媒の存在下で公知の方法でカルボキシル化した後、必要に応じて、種々公知の中和剤を用いて中和することにより、目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤を得ることができる。また、アクリロニトリル、アクリル酸エステル類を反応させ、アルカリでケン化後、必要に応じて、種々公知の中和剤を用いて中和することにより、目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤を得ることもできる。
【0052】
また、一般式(18)の化合物は、例えば、五酸化二リンまたはポリリン酸を用い公知の方法でリン酸エステル化することにより、目的の本発明の新規分解型反応性乳化剤を得ることができる。
【0053】
[乳化重合用モノマー]
本発明の新規分解型反応性乳化剤を用いた乳化重合に適用されうるモノマーとしては各種のものを挙げることができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエステル等のアクリル系モノマー、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィンモノマー、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役系ジオレフィン系モノマー等の他、エチレン、無水マレイン酸、マレイン酸メチル等がある。なお、使用されるモノマーは上記に限定されるものではない。
【0054】
本発明の新規分解型反応性乳化剤は、上記モノマーの1種または2種以上の乳化重合または懸濁重合に利用できる。
【0055】
[重合条件]
本発明の新規分解型反応性乳化剤を使用した乳化重合反応では、重合開始剤は従来公知のものが使用できる。しかしながら、本発明の新規分解型反応性乳化剤は、酸性条件下で分解するため、乳化重合系のpHは、重合中終始、pH4以上に維持する必要があり、一般的な乳化重合用の重合開始剤である過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩を重合開始剤として使用する場合には、pH調製剤を使用して、乳化重合系のpHを好適な条件に維持する必要がある。
【0056】
そこで、本発明新規分解型反応性乳化剤を使用した乳化重合反応では、重合開始剤として、重合中のpH変化が小さく、pHコントロールが容易なレドックス系の重合開始剤が好適である。レドックス系重合開始剤として、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド、過酸化水素、等が使用できる。
【0057】
pH調製剤としては、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、等が使用できる。
【0058】
なお、重合促進剤としては、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第1鉄、グルコース、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸およびそのナトリウム塩、等が使用できる。
【0059】
本発明の新規分解型反応性乳化剤の乳化重合系での使用量としては、特に制限はないが、通常、全モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部が適当であり、より好ましくは、0.2〜8.0重量部が適当である。なお、本発明の新規分解型反応性乳化剤をポリマー改質の目的に使用する場合には、モノマーの種類、改質の目的、要求される性能に応じて、使用量を決定することが可能であり、使用量は上記の範囲に限定されるものではない。
【0060】
本発明の新規分解型反応性乳化剤は、それ単独でも乳化重合は良好に完結しうるが、さらに他のアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤の群から選ばれた1種類以上と併用してもよく、これにより乳化重合時の重合安定性が向上し、また後工程における処理特性を向上させることができる。
【0061】
かかるアニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリール硫酸塩などが挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。他の界面活性剤の使用量としては、本発明の乳化重合用乳化剤100部に対して、0.5〜100重量部含まれることが好ましく、より好ましくは5〜60重量部である。さらに好ましくは10〜30重量部である。
【0062】
また、必要に応じて、他種乳化剤または保護コロイド剤、連鎖移動剤、電解質、等を併用してもよい。
【0063】
また、モノマーおよび重合開始剤の重合系への添加方法は、特に限定されるされるものではなく、従来の乳化重合で適用されている方法、例えば、一括添加法、連続添加法、分割添加法、等の方法、条件を適宜選択できる。
【0064】
[作用]
本発明の新規分解型反応性乳化剤は、その分子内に、酸性条件下で容易に分解する1,3−ジオキソラン環と、共重合性の不飽和基を合わせ持つことを特徴とする新規な乳化重合用乳化剤である。
【0065】
本発明の新規分解型反応性乳化剤の使用により、乳化重合系では、本質的に乳化剤として、重合を円滑にかつ安定に進行させ、また、同時にその分子中の共重合性の不飽和基がモノマーと反応して、ポリマー組成に組み込まれ、得られたポリマーエマルションの泡立ち、機械安定性、貯蔵安定性、等が著しく改善される。
【0066】
また、得られたポリマーエマルションから作成した塗膜中においては、遊離した状態で存在する乳化剤量が著しく減少し、塗膜の耐水性、接着性、耐熱性、耐候性、等の塗膜物性の向上に極めて優れた効果を発揮する。
【0067】
また、乳化重合後、ポリマーエマルションに有機酸または無機酸を添加して、pHを下げることにより、本発明の新規分解型反応性乳化剤分子内の1,3−ジオキソラン環が分解し、乳化剤としての性能を消失し、容易にポリマーを分離、回収することができる。
【0068】
本発明の分解性反応性乳化剤を使用して得られたポリマーエマルションは、任意の時点で、容易にポリマーエマルションの分散状態を破壊することが可能であり、また、ポリマーの回収、洗浄後の工程排水中に排出される有機物質の総量を低減できる点において、非常に有効である。
【0069】
更に、本発明の新規分解型反応性乳化剤をポリマーの改質を目的として使用する場合には、乳化剤としてモノマーとの相溶性を良好にし得、乳化重合後、酸処理することで、乳化剤分子中の1,3−ジオキソラン環が分解して、ポリマーに疎水性部位のみを付与でき、ポリマーに対して、疎水性付与、耐水性付与、等、ポリマー改質の効果を有し、且つ、性能が長期間維持できる点において非常に有効である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例により本発明の実施様態および効果につき述べるが、例示は単に説明用のものであって、発明思想の限定または制限を意図したものではない。なお、文中「%」および「部」とあるのはそれぞれ重量基準を意味する。
【0071】
(製造例1)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、アリルアルコール192g、触媒として水酸化ナトリウム0.9gを仕込み、次にAOE−X24(炭素数12,14のα−オレフィンエポキシド、ダイセル化学工業(株)製)588gを滴下し、90℃にて10時間反応した。110℃に加温し、減圧にて過剰のアリルアルコールを除去した後に、リン酸を用いて中和し、析出塩を濾過により除去した。
【0072】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてDMSOを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0073】
次に、攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、得られた精製物504gとグリセリン184g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で24時間脱水縮合反応させ、次いで、得られた反応粗製物を炭酸カリウム水溶液にて洗浄し、更に蒸留水にて3回洗浄した後、減圧にて蒸留した。
【0074】
次いで、得られた蒸留物326gをオートクレーブに移し、水酸化ナトリウムを触媒として、圧力1.5/cm、50℃の条件下で、エチレンオキシド1320g(30モル)を付加して得られたエチレンオキシド30モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[A]とした。(以下、「エチレンオキシド」を単に「EO」と記載する場合がある)。
【0075】
また、同様の操作にてエチレンオキシド3520g(80モル)を付加し、得られたエチレンオキシド80モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[B]とした。
【0076】
【化8】

【0077】
【化9】

【0078】
(製造例2)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、アリルアルコール192g、触媒として水酸化カリウム0.9gを仕込み、次にAOE−Y08(炭素数20,22,24,26,28のα−オレフィンエポキシド、ダイセル化学工業(株)製)1026gを滴下し、90℃にて10時間反応した。110℃に加温し、減圧にて過剰のアリルアルコールを除去した後に、酢酸を用いて中和し、ろ過することにより析出塩を除去した。
【0079】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてピリジンを加え、触媒として酢酸パラジウム33g、更にモレキュラーシーブ3A300gを加えて、酸素気流下で80℃にて35時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0080】
次に、攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、精製物796gとグリセリン184g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で24時間脱水縮合反応させ、次いで、得られた反応粗製物を炭酸カリウム水溶液にて洗浄し、更に蒸留水にて3回洗浄した後、減圧にて蒸留した。
【0081】
次いで、得られた蒸留物472gをオートクレーブに移し、水酸化ナトリウムを触媒として、圧力1.5/cm、130℃の条件下で、エチレンオキシド880g(20モル)を付加して得られたエチレンオキシド20モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[C]とした。
【0082】
また、同様の操作にてエチレンオキシド2200g(50モル)を付加し、得られたエチレンオキシド50モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[D]とした。
【0083】
【化10】

【0084】
【化11】

【0085】
(製造例3)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、ドデシルアルコール558g、触媒として水酸化ナトリウム0.9gを仕込み、次にアリルグリシジルエーテル342gを滴下し、90℃にて10時間反応した。リン酸を用いて中和し、析出塩を濾過により除去した。
【0086】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてDMSOを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0087】
次に、攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、精製物596gとグリセリン184g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で24時間脱水縮合反応させ、次いで、得られた反応粗製物を炭酸カリウム水溶液にて洗浄し、更に蒸留水にて3回洗浄した後、減圧にて蒸留した。
【0088】
次いで、得られた蒸留物372gをオートクレーブに移し、三フッ化ホウ素エーテル錯体を触媒として、圧力1.5/cm、50℃の条件下で、エチレンオキシド440g(10モル)を付加して得られたエチレンオキシド10モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[E]とした。
【0089】
【化12】

【0090】
(製造例4)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、オクチルアルコール390g、触媒として水酸化ナトリウム0.9gを仕込み、次にアリルグリシジルエーテル342gを滴下し、90℃にて10時間反応した。リン酸を用いて中和し、析出塩を濾過により除去した。
【0091】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてDMSOを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0092】
次に、攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、精製物484gとグリセリン184g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で24時間脱水縮合反応させ、次いで、得られた反応粗製物を炭酸カリウム水溶液にて洗浄し、更に蒸留水にて3回洗浄した後、減圧にて蒸留した。
【0093】
次いで、得られた蒸留物316gをオートクレーブに移し、水酸化ナトリウムを触媒として、圧力1.5/cm、50℃の条件下で、エチレンオキシド1320g(30モル)を付加して得られたエチレンオキシド30モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[F]とした。
【0094】
【化13】

【0095】
(製造例5)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、ノニルフェノール660g、触媒として水酸化ナトリウム0.9gを仕込み、次にアリルグリシジルエーテル342gを滴下し、90℃にて10時間反応した。酢酸を用いて中和し、析出塩を濾過により除去した。
【0096】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてDMSOを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0097】
次に、攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、精製物664gとグリセリン184g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で24時間脱水縮合反応させ、次いで、得られた反応粗製物を炭酸カリウム水溶液にて洗浄し、更に蒸留水にて3回洗浄した後、減圧にて蒸留した。
【0098】
次いで、得られた蒸留物406gをオートクレーブに移し、水酸化ナトリウムを触媒として、圧力1.5/cm、50℃の条件下で、エチレンオキシド880g(20モル)を付加して得られたエチレンオキシド20モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[G]とした。
【0099】
【化14】

【0100】
(製造例6)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、アリルグリコール(エチレングリコールモノアリルエーテル、日本乳化剤(株)製)306g、溶媒としてピリジンを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0101】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、1,2−イソプロピリデングリセリン264gと無水酢酸306g、触媒としてピリジンを加え、還流条件下で1時間反応させてアセチル化した後、減圧蒸留して、アセチル−1,2−イソプロピリデングリセリンを得た。
【0102】
次に、アセチル−1,2−イソプロピリデングリセリン348gと先に得られた精製物200g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下でアセタール交換反応させた。次いで、水酸化ナトリウムのエタノール溶液を加えて還流条件下でエステル部位を分解した後、エタノールを減圧留去して得られた反応粗製物をジエチルエーテルで抽出し、更に蒸留水にて3回洗浄した。続いて、ジエチルエーテル層を炭酸カリウムで乾燥した後、ジエチルエーテルを留去し、更に、減圧にて蒸留した。
【0103】
次いで、得られた蒸留物174gをオートクレーブに移し、水酸化カリウムを触媒として、圧力1.5/cm、140℃の条件下で、まず、ブチレンオキシド216g(3モル)を付加し、次いで、圧力1.5/cm、130℃の条件下で、エチレンオキシド3960g(90モル)を付加して得られたブチレンオキシド3モル、エチレンオキシド90モル付加体を本発明新規分解型反応性乳化剤[H]とした。(以下、「ブチレンオキシド」を単に「BO」と記載する場合がある)。
【0104】
【化15】

【0105】
(製造例7)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、メタリルアルコール237g、触媒として水酸化カリウム0.9gを仕込み、次にAOE−X24(炭素数12,14のα−オレフィンエポキシド、ダイセル化学工業(株)製)588gを滴下し、90℃にて10時間反応した。110℃に加温し、減圧にて過剰のメタリルアルコールを除去した後に、リン酸を用いて中和し、析出塩を濾過により除去した。
【0106】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてDMSOを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0107】
製造例1に準じて、得られた精製物とグリセリンから2−メタリルオキシメチル−2−アルキル(炭素数10,12)−4−ヒドロキシメチル−1,3ジオキソランを得、次にエチレンオキシド5モルを付加させて本発明新規分解型反応性乳化剤[I]を得た。
【0108】
【化16】

【0109】
(製造例8)
製造例7と同様にして得た2−メタリルオキシメチル−2−アルキル(炭素数10,12)−4−ヒドロキシメチル−1,3ジオキソランにエチレンオキシド2モル、ブチレンオキシド4モル、エチレンオキシド80モルを順次付加させて本発明新規分解型反応性乳化剤[J]を得た。
【0110】
【化17】

【0111】
(製造例9)
攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、ノニルフェノール660g、触媒として水酸化ナトリウム0.9gを仕込み、次にメタリルグリシジルエーテル384gを滴下し、90℃にて10時間反応した。リン酸を用いて中和し、析出塩を濾過により除去した。
【0112】
攪拌装置、還流冷却器、温度計、酸素導入管を備えた反応器に、得られた反応物を移し、溶媒としてDMSOを加え、更に触媒として酢酸パラジウム33g、塩基として重炭酸ソーダ24gを加えて、酸素気流下で80℃にて30時間反応させ、次いで得られた反応粗製物を溶媒留去後、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0113】
次に、攪拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応器に、精製物696gとグリセリン184g、溶媒としてトルエンを加え、更に触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えて、還流条件下で24時間脱水縮合反応させ、次いで、得られた反応粗製物を炭酸カリウム水溶液にて洗浄し、更に蒸留水にて3回洗浄した後、減圧にて蒸留した。
【0114】
次いで、得られた蒸留物にエチレンオキシド50モル、プロピレンオキシド5モルをランダム付加させて本発明新規分解型反応性乳化剤[K]を得た。(以下、「プロピレンオキシド」を単に「PO」と記載する場合がある)。
【0115】
【化18】

【0116】
(製造例10)
製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体766gを反応器に仕込み、溶媒としてトルエンを加え、更に水酸化ナトリウム40gを加えて、60℃に加熱した。続いて 1,4−ブタンサルトン136gを70℃までの温度で徐々に滴下した後、75℃まで昇温し、6時間熟成した。熟成終了後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[L]とした。
【0117】
【化19】

【0118】
(製造例11)
製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体766gを反応器に仕込み、溶媒としてジメチルホルムアミドを加えて、60℃に加熱した。続いて、硫酸化剤として、スルファミン酸97gとピリジン116gの攪拌混合物を70℃までの温度で徐々に滴下した後、80℃まで昇温し、2時間熟成した。熟成終了後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[M]とした。
【0119】
また、同様の操作にて、製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド40モル付加体を硫酸エステル化して得られた反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[N]とした。
【0120】
【化20】

【0121】
【化21】

【0122】
(製造例12)
製造例3と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体812gを反応器に仕込み、溶媒としてジメチルホルムアミドを加えて、60℃に加熱した。続いて、硫酸化剤として、スルファミン酸97gとピリジン116gの攪拌混合物を70℃までの温度で徐々に滴下した後、80℃まで昇温し、2時間熟成した。熟成終了後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[O]とした。
【0123】
【化22】

【0124】
(製造例13)
製造例3と同様にして得られた蒸留物372gを反応器に仕込み、溶媒としてジメチルホルムアミドを加えて、60℃に加熱した。続いて、硫酸化剤として、スルファミン酸97gとピリジン116gの攪拌混合物を70℃までの温度で徐々に滴下した後、80℃まで昇温し、2時間熟成した。熟成終了後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[P]とした。
【0125】
【化23】

【0126】
(製造例14)
製造例5と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体846gを反応器に仕込み、溶媒としてジメチルホルムアミドを加えて、60℃に加熱した。続いて、硫酸化剤として、スルファミン酸97gとピリジン116gの攪拌混合物を70℃までの温度で徐々に滴下した後、80℃まで昇温し、2時間熟成した。熟成終了後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[Q]とした。
【0127】
【化24】

【0128】
(製造例15)
製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体766gを反応器に仕込み、溶媒としてジメチルホルムアミドを加えて、60℃に加熱した。続いて、硫酸化剤として、スルファミン酸97gとピリジン116gの攪拌混合物を70℃までの温度で徐々に滴下した後、80℃まで昇温し、2時間熟成した。熟成終了後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、水酸化ナトリウム40gを含むメタノール溶液を加え、生成するアンモニアガスおよび溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[R]とした。
【0129】
【化25】

【0130】
(製造例16)
製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体766gを反応器に仕込み、触媒として酢酸ナトリウムを加え、続けて無水マレイン酸98gを加えた後、80℃まで昇温し、4時間反応させた。続いて、亜硫酸ナトリウム126gを水150gに溶解して加え、次いでイソプロピルアルコール150gを加え、更に酸性亜硫酸ナトリウムでpH5〜6に調整して、80℃で3時間反応させた後、水および溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[S]とした。
【0131】
【化26】

【0132】
(製造例17)
製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド10モル付加体766gを反応器に仕込み、続いて、モノクロル酢酸ナトリウム117gを加え、更に、水酸化ナトリウム40gをメタノール溶液として徐々に添加した後、50℃で15時間熟成した。熟成終了後、アセトンを加えて攪拌し、析出塩を濾過により除去した後、溶剤を減圧留去して得られる反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[T]とした。
【0133】
また、同様の操作にて、製造例1と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド40モル付加体をカルボキシル化して得られた反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[U]とした。
【0134】
【化27】

【0135】
【化28】

【0136】
(製造例18)
製造例2と同様にして得られた蒸留物のエチレンオキシド20モル付加体を製造例11に準じて、スルファミン酸−ピリジン混合物により硫酸エステル化して得られた反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[V]とした。
【0137】
【化29】

【0138】
(製造例19)
製造例7で得られた蒸留物のエチレンオキシド5モル付加体(本発明新規分解型反応性乳化剤[I])を製造例15に準じて、スルファミン酸−ピリジン混合物により硫酸エステル化して得られた反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[W]とした。
【0139】
【化30】

【0140】
(製造例20)
製造例6で得られた蒸留物にブチレンオキシド3モル、エチレンオキシド30モルを順次付加させ、次いで、製造例15に準じて、スルファミン酸−ピリジン混合物により硫酸エステル化した反応組成物を本発明新規分解型反応性乳化剤[X]とした。
【0141】
【化31】

【0142】
(使用例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えた反応器に、イオン交換水290g、炭酸水素ナトリウム0.5gを仕込み、80℃まで昇温させ、窒素ガスを通気して水中の溶存酸素を除去した。次に、酢酸ビニル140g、アクリル酸ブチル60gに表1に示す本発明の新規分解型反応性乳化剤10gを溶解させ、その内の41gを反応器に仕込み、次いで過硫酸アンモニウム0.5gを加えて先行重合させた。続いて、重合開始10分後より3時間かけて、残りのモノマーと乳化剤の混合液165gを滴下して重合させた。更に続けて、重合温度にて2時間熟成した後、冷却し、エマルションを取り出し、供試サンプルとした。
【0143】
この乳化重合時の凝集物量、得られたエマルションの固形分、機械安定性、起泡性、乳化剤反応率およびこのエマルションより作成したポリマーフィルムの耐水性の各試験結果を表1に示した。各試験方法は下記の通りである。
【0144】
また、比較として、炭酸水素ナトリウム無添加で実施した乳化重合の結果を表1に示した。更に、表1に示す従来の乳化剤についても、同様の試験を実施した。
【0145】
固形分:エマルション2gを105℃、2時間乾燥後、重量測定し、秤取したエマルション重量に対して%表示した。
【0146】
凝集物量:エマルションを150メッシュ金網で濾過し、残渣を水洗後、乾燥して得た凝集物重量を仕込みモノマー重量に対して%表示した。
【0147】
機械安定性:エマルション50gをマーロン型試験器にて荷重10Kg、回転数1000rpmで5分間攪拌し、生成した凝集物を150メッシュ金網で濾過し、残渣を水洗後、乾燥し、その重量をエマルションの固形分に対して%表示した。
【0148】
起泡性:エマルションをイオン交換水で2倍希釈し、100mlネスラー管に30ml入れ、1分間振とうした後、静置5分後における泡の量(ml)を測定した。
【0149】
乳化剤反応率:エマルションにメタノールを加えて、ポリマーを凝固し、遠心分離処理後、その上済みを用い、HPLCにて未反応の乳化剤量を測定して、乳化剤の反応率(%)を算出した。
【0150】
耐水性試験:ガラス板上に0.5mm厚のポリマーフィルムを作製し、これを水中に浸漬し、前記フィルムを透して4.5ポイント文字が読めなくなるまでの時間を測定した。
【0151】
【表1】

【0152】
(使用例2)
アクリル酸ブチル100g、スチレン100g、イオン交換水194gおよび表2に示す本発明の新規分解型反応性乳化剤6gをホモディスパーにより混合して得たモノマー乳濁液を調製した。次に、攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えた反応器に、イオン交換水100g、炭酸水素ナトリウム0.5gを仕込み、80℃まで昇温させ、窒素ガスを通気して水中の溶存酸素を除去した。続いて、上記モノマー乳濁液の内、80gを攪拌しながら反応器に加え、更に過硫酸アンモニウム0.5gを加えて先行重合させた。そして、重合開始10分後より3時間かけて、残りのモノマー乳濁液320gを滴下して重合させた。更に続けて、重合温度80℃を維持して2時間熟成した後、冷却し、エマルションを取り出し、供試サンプルとした。
【0153】
この乳化重合時の凝集物量、得られたエマルションの固形分、機械安定性、起泡性、乳化剤反応率およびこのエマルションより作成したポリマーフィルムの耐水性の各試験結果を表2に示した。
【0154】
また、比較として、炭酸水素ナトリウム無添加で実施した乳化重合の結果を表2に示した。更に、表2に示す従来の乳化剤についても、同様の試験を実施した。試験方法は上記と同様である。
【0155】
【表2】

【0156】
(使用例3)
反応器として、耐圧性を有するガラス瓶、具体的には炭酸飲料用の空き瓶にイオン交換水60gを仕込み、窒素ガスを通気して溶存酸素を除去した。次にガラス瓶を氷水浴中で冷却した後、表3に示す本発明の新規分解型反応性乳化剤 2.0g、 ナフタレンスルホン酸ホリマリン縮合物0.12g、ドデシルメルカプタン 0.12g、スチレン 16g、パラメンタンヒドロペルオキシド0.03g、硫酸第一鉄7水和物0.02g、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシド0.01gを仕込んだ。
【0157】
次いでメタノールドライアイス浴中の目盛付き試料採取管にボンベからブタジエンを導入し、液化させて計量したブタジエン26gをストップコック付きのシリンジを用いてガラス瓶に仕込み、2g分のブタジエンを気化させて空気を追い出した後、直ちに打栓、振とうして、ガラス瓶中の内容液を乳濁状態とした。
【0158】
次に、水温5℃に調整した回転式重合槽内のホルダーにガラス瓶をセットし、回転数50rpmにて5時間重合させた。重合反応終了後、ガラス瓶を開栓し、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させ、続いて減圧下で残存モノマーを留去して得られたポリブタジエンラテックスを供試サンプルとした。
【0159】
この乳化重合時の凝集物量、得られたラテックスの固形分、機械安定性、起泡性、ポリマーフィルムの吸水率、耐熱着色性の各試験結果を表3に示した。
【0160】
また、得られたポリマーラテックスについて、1%硫酸を添加してpHを2以下としたところ、ラテックスが破壊され、直ちにポリマーが析出した。更に、引き続き攪拌しながら60℃に昇温した後、静置してポリマーを浮上させ、これを回収して温水で3回洗浄した後、ポリマーを脱水し、60℃で減圧乾燥した。この時に得られた乾燥ポリマーの回収率を表3に示した。各試験方法は下記の通りである。
【0161】
なお、比較として従来の乳化剤についても同様の試験を実施し、表3にその試験結果を示した。
【0162】
固形分:ラテックス2gを105℃、1時間減圧乾燥後、重量測定し、秤取したラテックス重量に対して%表示した。
【0163】
凝集物量:ラテックスを150メッシュ金網で濾過し、残渣を水洗後、減圧乾燥して得た凝固物重量を仕込みモノマー重量に対して%表示した。
【0164】
機械安定性:ラテックス50gをマーロン型試験器にて荷重10Kg、回転数1000rpmで5分間攪拌し、生成した凝集物を150メッシュ金網で濾過し、残渣を水洗後、減圧乾燥し、その重量をラテックスの固形分に対して%表示した。
【0165】
起泡性:ラテックスをイオン交換水で2倍希釈し、100mlネスラー管に30ml入れ、30回倒立させてから静置5分後における泡の量(ml)を測定した。
【0166】
吸水率:ガラス板上に0.5mm厚のポリマーフィルムを作製し、ガラス板からフィルムを注意深く引き剥がし、フィルムを縦100mm×横100mmの大きさに切断して試験片を作成した。これを水中に浸漬し、24時間後に取り出し、素早く2枚の濾紙間で水分を除去し、重量測定し、重量増加分を浸漬前の重量に対して%表示した。
【0167】
耐熱着色性:ガラス板上に0.5mm厚のポリマーフィルムを作製し、250℃の熱風乾燥器内で30分間熱処理して、ポリマーフィルムの着色を下記基準で調べた。
(評価基準)
◎:全く着色が認められない
○:極僅かに着色が認められる
△:淡い黄色に着色している
×:濃い褐色に着色している
【0168】
ポリマー回収率:得られた乾燥ポリマーの重量を、ラテックスの固形分値から算出した理論固形分重量に対して%表示した。
【0169】
【表3】

【0170】
(使用例4)
攪拌機、温度計および冷却、加熱装置を備えたオートクレーブに、イオン交換水500g、表4に示す本発明の新規分解型反応性乳化剤25g、ナフタレンスルホン酸ホリマリン縮合物2.5g、炭酸ナトリウム2.5g、ドデシルメルカプタン2.5gを仕込み、更に過硫酸カリウム1.5gを加えた後、オートクレーブ内を窒素置換した。続いて、オートクレーブに5℃の冷却水を通水して内容物を冷却した後、ブタジエンボンベからオートクレーブにブタジエン500gを導入し、攪拌を高速にして内容物を乳濁状態とした。次に、内温を60℃まで昇温し、35時間重合させた。重合終了後、冷却し、減圧下で未反応ブタジエンを留去してポリブタジエンラテックスを得た。この乳化重合時の凝集物量および得られたポリマーラテックスの固形分、平均粒子径について表4に示した。
【0171】
次に、攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、上記操作にて調製したポリブタジエンラテックスを固形分換算で384g、イオン交換水180g(ただし、ポリマーラテックス固形分に応じて微調整する)を仕込み、そして、スチレン192g、アクリロニトリル 64g、イオン交換水 300g、更に乳化剤としてポリブタジエンラテックス調製時と同一の本発明新規分解型反応性乳化剤9.6gをホモディスパーにより混合して得たモノマー乳濁液の内、65gを攪拌しながら反応器に加えた後、窒素置換した。次いで、反応器を冷却して、内温が10℃となった時点で、パラメンタンヒドロペルオキシド1.2g、硫酸第一鉄7水和物0.6g、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシド 0.3gを加えて先行重合させた。次に、重合開始15分後より3時間かけて、残りのモノマー乳濁液を滴下して重合させた。更に続けて、重合温度を維持して2時間熟成した後、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させ、続いて、窒素ガス通気、減圧条件下で残存モノマーを留去して得られたポリマーラテックスを供試サンプルとした。
【0172】
この乳化重合時の凝集物量および得られたポリマーラテックスの固形分、平均粒子径、乳化剤反応率の各試験結果を表5に示した。
【0173】
また、得られたポリマーラテックス250gについて、1%硫酸を添加してpHを2以下としたところ、ラッテクスが破壊され、直ちにポリマーが析出した。引き続き、攪拌しながら60℃に昇温した後、静置してポリマーを浮上させ、これを回収して温水で3回洗浄した後、ポリマーを脱水、乾燥した。この時のポリマーの回収率を表5に示した。
【0174】
なお、比較として従来の乳化剤についても同様の試験を実施し、表4、表5にその試験結果を示した。
【0175】
固形分、凝集物量、ポリマーの回収率の試験方法は上記ラテックスと同様であり、平均粒子径、乳化剤反応率の試験方法は下記の通りである。
【0176】
平均粒子径:島津レーザー回析式粒度分布測定装置SALD−2000を使用して、ラテックスの平均粒子径(μm)を測定した。
【0177】
乳化剤反応率:ラテックスにメタノールを加えて、ポリマーを凝固し、遠心分離処理後、その上済みを用い、HPLCにて未反応の乳化剤量を測定して、乳化剤の反応率を算出した。
【0178】
【表4】

【0179】
【表5】

【0180】
(使用例5)
使用例4と同様の操作にてポリブタジエンラテックスを調製し、以後、ポリブタジエンラテックス中でスチレン、アクリロニトリルを乳化重合する際に使用する新規分解型反応性乳化剤量を35gに変更した以外は同様の条件で重合してポリマーラテックスを得た。更に得られたポリマーラテックスからポリマーを回収、乾燥を行った。この時得られたポリマーを成形温度250℃、金型温度50℃で成形し、縦125mm×横125mm×厚さ3.5mmの試験片を作成した。この試験片について、下記の試験方法により接触角、吸水率の測定を行った。その各試験の結果について表6に示した。
【0181】
なお、比較として従来の乳化剤についても同様の試験を実施し、表6にその試験結果を示した。
【0182】
接触角:得られた乾燥ポリマーを成形温度250℃、金型温度50℃で成形し、縦125mm×横125mm×厚さ3.5mmの試験片を作成し、接触角測定器により水滴の接触角を測定した。
【0183】
吸水率:成形することにより得られた縦125mm×横125mm×厚さ3.5mmの試験片を水中に浸漬し、24時間後に取り出し、素早く2枚の濾紙間で水分を除去し、重量測定し、重量増加分を浸漬前の重量に対して%表示した。
【0184】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の乳化重合用乳化剤を添加して得られるポリマーエマルションは、例えば接着剤、被覆剤、含浸補強剤等として、木材、金属、紙、布、その他コンクリートなどに適用することができる。また、エマルションあるいはラテックスから取り出したポリマーは樹脂、ゴム、ポリマーの改質剤等に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする新規分解型反応性乳化剤。
【化1】

[但し、式中、Xは炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキル(アリール)エーテル基、または水素原子である。mは0または1であり、Rは水素原子またはメチル基である。Yは水素原子またはイオン性の親水性基であり、イオン性基としてはアニオン性基、カチオン性基、両イオン性基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、nは0または1〜100の整数であり、nが2以上の場合、(AO)nは、下式(2)で示される、1種の繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、下式(3)で示される、異なる置換基A(A、A、…)を有する2種以上の繰り返し単位からなるブロックポリマーまたはランダムポリマーであってもよい。]
―(AO)―(AO)―(AO)― (2)
―(AO)n―(AO)n―…… (但し、n+n+……=n) (3)
【請求項2】
請求項1に記載の新規分解型反応性乳化剤の存在下で、モノマーを乳化重合した後、ポリマー中に共重合した該乳化剤分子内の1,3−ジオキソラン環部位を酸分解することにより、ポリマー中に疎水性部位を付与することを特徴とするポリマーの改質方法。
【請求項3】
請求項2に記載のポリマーの改質方法によって得られることを特徴とするポリマー。

【公開番号】特開2007−238876(P2007−238876A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66653(P2006−66653)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】