説明

新規構成の高意匠性光回折構造体付きカード

【課題】 隠蔽層とカード基体の間に光回折構造層を有する意匠性に優れた新規構造の光回折構造体付きカードを提供する。
【解決手段】 本発明の光回折構造体付きカード1は、カード基体100上に磁気記録層4を形成し、当該磁気記録層4上に、ヒートシール層21、光反射層22または透明反射層23、光回折構造形成層24からなるなる光回折構造層20を形成し、さらに当該光回折構造層上に、隠蔽層5、模様層6、保護層7を形成した光回折構造体付きカード1において、前記隠蔽層5に透明窓部8を設けることにより、光回折構造層20がカード表面から視認可能にしたことを特徴とする。光回折構造層20には、光反射層22と透明反射層23の双方を設け、透明反射層23面に印刷パターンを形成して透明窓部8から光回折構造層20と印刷パターンの双方が視認できるようにすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、社員証等に使用する磁気カードやICカードに関するが、特には、カード表面に部分的に光回折構造体(一般的には、ホログラム)を形成した意匠性の高い光回折構造体付きカードに関する。
従って、本発明の技術分野は、光回折構造体付きカードの製造や利用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から意匠性の高いカードは、それを使用する者に満足感を与え、手にすることにより一種のステータス感も得られるため、カードに美麗な装飾を施すことが競って行われている。カードの意匠性を高める手段の一つとして表面にホログラムを設けることが行われている。ホログラムは光輝性や立体感を有するほかに、複製が困難であるという偽造防止効果も備えている。従って、ホログラムはカードには極めて有用な技術である。
【0003】
カードにパターン状のホログラムを形成する方法に、ホログラム転写箔を使用する方法と、いわゆる「パスタホロ」と呼ばれる材料を使用する方法がある。
「パスタホロ」とは、全面に形成したホログラムの一部だけが見えるように、ホログラム形成面に蒸着して形成した光反射層(アルミ層)を、下引層の溶解により除去し、あるいはアルカリ液処理によりエッチングして(これらの処理をパスタ加工という。)窓を明け、部分的にホログラムが見えるようにしたホログラムのことをいう。「パスタホロ」とは、パスタ加工したホログラムという意味と考えられる。
【0004】
ホログラム転写箔の場合は、転写型で押圧転写するので微細または繊細なパターン形状を転写することは困難である。また、平滑なカード表面に他の異なる層を転写するため、極めて薄層ではあるが僅かな凹凸を生じる。これにより、カード表面に他の異なる物がのっているという違和感が生じることが避けられない。さらに、小サイズのホログラム転写箔では、デザイン効果にも一定の限界があるという問題がある。一方、パスタホロの場合は、アルミ蒸着やアルカリ処理といった製造工程が増える問題がある。
【0005】
ここで、従来のホログラムカードの例について、図面を参照して説明する。
図5は、ホログラム転写箔を転写した従来の磁気カードの例を示す図である。図5のように、従来の例えば、ホログラム付き磁気カード1jは、磁気記録層4を転写したカード基体100の磁気記録層4の面に隠蔽層5を形成し、当該隠蔽層5上に、多色印刷等による模様層6、保護層7を順次形成する。隠蔽層5は周知のように、黒や茶系色に着色している磁気記録層4を、主としてデザイン上の観点から隠蔽するために施すものである。
磁気記録層4は、カード表面の全面に設ける場合もあるが、通常は、一定幅にされたテープ状の磁気記録転写層を転写して設けることが多い。
【0006】
保護層7の上には、ホログラム転写シートの光回折構造層20が転写される。この構成層は転写された状態で、保護層7の上にヒートシール層21、光反射層22または透明反射層23、光回折構造形成層24、オーバープリント層25、の順である。
上記において、隠蔽層5と模様層6、保護層7の合計が4μm〜15μm程度、ホログラム転写シートの転写層の全体厚みは、4〜10μm程度となる。転写層は、このように薄層であるが、敏感な人の指先は当該層の輪郭を識別し違和感を感じる。
また、磁気記録層4の上面にホログラム転写シートを転写する場合は、隠蔽層5と模様層6を含む全体厚みが、8μm〜25μmとなるので、通常のフェライト系磁気記録層では所定の磁気出力が得られなくなる問題がある。そこで、高性能磁気記録材料の使用が必要となる。
【0007】
パスタホロの場合は、ホログラム形成層の上面にアルミニウム反射層を一旦全面に形成してから、反射させるアルミ層の一部を溶解している。この溶解した部分の透明窓を介して、当該部分からだけ下層のホログラムが視認できるようにされている。このようにして形成されたシートをカード表面の全体に貼着する。従って、パスタホロの場合は、部分的にホログラムを転写した場合とは異なりカードと一体化した平滑感が得られる。
【0008】
しかし、パスタホロの製造には前記のように追加の製造工程を伴う。そこで、本発明ではパスタホロと同様の効果を生じるように、カード表面全体の大きさのシートに部分的にホログラムを見せたい部分のみを印刷で透明窓を設けて視認可能にし、他の部分は隠蔽する構成のカードの実現を図るものである。従って部分的にではなく、ほぼカードの全面をホログラム(光回折構造層)とすることも勿論可能である。
なお、パスタホロ品の層構成について詳細な解析はされていないが、隠蔽層上にホログラム層を積み重ねる従来型のものと考えられる。
【0009】
ところで、日本市場においては、一般にカード最表面にJIS仕様の磁気テープを設けることが必要で、さらに意匠性の問題からこの磁気テープを印刷層で隠蔽したカードを提供する必要がある。磁気テープは、磁性粉の色から由来する黒又は茶系色を呈しており、カードデザインの自由度を制約する問題があるからである。
従って、ホログラムや光回折構造体を部分的に視認可能にしたカードであっても、これら隠蔽層や印刷絵柄の条件を満たす加工をする必要がある。
【0010】
なお、本願に関連する先行特許文献として、特許文献1〜特許文献3がある。特許文献1は、高性能磁気記録媒体とそれに使用する転写シートについて記載し、特許文献2は、耐擦傷性、耐磨耗性に優れた光回折構造体について記載し、特許文献3は、後加工適性に優れた磁気記録カードについて記載している。本願の光回折構造体付きカードは、以上の各特許文献とは異なる構成を有する新規構造の光回折構造体付きカードに関する。
【0011】
【特許文献1】特開2002− 42319号公報
【特許文献2】特開2002−288818号公報
【特許文献3】特開2003− 85735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、カード基体に磁気記録層を有するカードにおいて、磁気記録層上に光回折構造層を形成し、さらに当該光回折構造層上に、隠蔽層、模様層、保護層を形成した新規な構成のカードの実現を研究して完成に至ったものである。
これにより、従来法のように隠蔽層、模様層等のカード表面に光回折構造層を部分的に転写したカードとは異なり、平滑性に優れ、かつ高度の意匠性を有するカードを実現できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、カード基体上に磁気記録層を形成し、当該磁気記録層上に、ヒートシール層、光反射層または透明反射層、光回折構造形成層からなるなる光回折構造層を形成し、さらに当該光回折構造層上に、隠蔽層、模様層、保護層を形成した光回折構造体付きカードにおいて、前記隠蔽層に透明窓部を設けることにより、光回折構造層がカード表面から視認可能にしたことを特徴とする光回折構造体付きカード、にある。
【0014】
本発明の要旨の第2は、カード基体上に磁気記録層を形成し、当該磁気記録層上に、ヒートシール層、光反射層、透明反射層、光回折構造形成層からなるなる光回折構造層を形成し、さらに当該光回折構造層上に、隠蔽層、模様層、保護層を形成した光回折構造体付きカードにおいて、前記隠蔽層に透明窓部を設け、かつ前記光反射層と透明反射層の間に印刷パターンを設けることにより、当該光回折構造層と印刷パターンがカード表面から視認可能にしたことを特徴とする光回折構造体付きカード、にある。
【0015】
上記において、カード基体のコア層に隠し印刷パターンを設け、上記隠蔽層を剥離した場合には、当該隠し印刷パターンが視認可能にすることができ、そのようにすれば、カードの隠蔽層を剥離するような不正手段が行われた場合に容易に識別することができる。
また、磁気記録層上の、光回折構造層および隠蔽層、模様層、保護層の合計厚みが8μmから25μmの範囲とし、磁気記録層の磁性体に、抗磁力580〜720エルステッド、角形比0.85以上および板状比1.5以上のバリウムフェライトを用いれば、磁気ヘッドの読み取りに十分な磁気出力を得ることができる。
【0016】
さらに、カード基体内に非接触型ICチップを有するようにすれば、磁気記録層付き非接触型ICカードとすることができ、カード表面に接触型または接触非接触共用型ICモジュールの端子板を有するようにすれば、磁気記録層付き接触型または接触非接触共用型ICカードとすることができる。
なお、磁気記録層はカード基体上の一部に形成されているようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光回折構造体付きカードは、部分的に光回折構造を視認可能にされているが、転写箔を型押し転写する従来法とは異なりカード全面サイズの光回折構造層を使用しているので、カード表面の平滑性が向上するとともに微細形状の再現が可能となる。
光回折構造層が隠蔽層や模様層の下面にあるので、光回折構造層自体を剥離したり、変更するような改ざんが一層困難になり、偽造防止効果を高めることができる。
請求項2記載のカード構成とする場合には、印刷パターンと光回折構造層が透明窓部から重畳して視認できるようにされるため、高度の意匠性を表現でき、改ざんをなお一層困難にできる。
本発明の光回折構造体付きカードは、上記の構成にされているが、高性能磁気記録層を使用し、所定の層構成とすることにより磁気出力が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の光回折構造体付きカードの構成と好ましい製造方法、それに使用する転写シートなど、について詳しく説明する。
図1は、本発明の光回折構造体付きカードの第1構成を示す模式断面図、図2は、同第2構成を示す模式断面図、図3は、光回折構造転写シートの1実施形態の構成を示す模式断面図、図4は、絵柄層転写シートの1実施形態の構成を示す模式断面図、である。
【0019】
本発明の光回折構造体付きカード1の第1構成は、図1のように、カード基体100のオーバーシート103面に磁気記録層4が形成されており、当該磁気記録層4を含むオーバーシート103面に、光回折構造層20が形成されている。光回折構造層20は、カード基体100側からヒートシール層21、光反射層22または透明反射層23、光回折構造形成層24からなるものであり、オーバープリント層25を有していてもよい。
光反射層22と透明反射層23はいずれかを選択的に使用するものであり、透明反射層23にすれば、さらにその下面の印刷等も透視可能になる。
【0020】
図1において、光回折構造体付きカード1は、カード基体100の一方面にテープ状などの特定のバリウムフェライト磁性体からなる磁気記録層4が設けられている。テープ状でなくカード全面であっても構わない。カード基体100の他方面側にも磁気記録層4を設けても勿論構わないが、表面側と同様に、多層構造とするものでなければ、その側の磁気記録層にバリウムフェライト磁性体を使用する必要はない。
【0021】
光回折構造層20の上面には、隠蔽層5、模様層6、保護層7の印刷層が順次形成されている。隠蔽層5は、前記のように磁気記録層の着色を隠蔽するもので、アルミ粉を使用した印刷インキ等により印刷されている。模様層6は、プロセス印刷の場合は、3色または4色の重ね刷りとなる。保護層7はカード表面の耐久性を高める表面層である。
後述するように、光回折構造層20は光回折構造転写シートの転写によりまたはシートの挿入により形成でき、隠蔽層5、模様層6、保護層7は、シルクスクリーン印刷やオフセット印刷の直刷り、または印刷層転写シートの転写により形成することができる。
【0022】
第1構成の光回折構造体付きカードの特徴の1は、光回折構造層20が隠蔽層5の下面に形成されることにある。これは、従来のホログラム転写シートの転写カードとは逆の層構成となる。また、この光回折構造層20が部分的にではなく、層状にカード全面に形成されていることにある。
特徴の2は、当該光回折構造層20が隠蔽層5に形成した透明窓部8を介して、カード表面から視認可能にされていることである。模様層6が当該窓部8にもかかる場合は当然に模様層6も透明または半透明にする。通常は模様層6は窓部8に重ならないように印刷するが、窓部の一部に印刷(不透明な)があっても構わない。保護層7は模様層6を隠さないため本来的に透明なものである。
【0023】
上記において、カード基体100は、中心層となる白色のコアシート101,102とその両面に積層した透明なオーバーシート103,104の積層構造とすることが多い。ただし、これに限定されるものではなく、コアシートは単層であってもよい。
本発明においては、請求項3に記載するように、コアシート101に隠し印刷パターン11を設けることができる。隠し印刷パターン11は透明窓部8以外の、通常状態では、カード表面から視認できない箇所に設ける。これにより例えば、隠し印刷パターン11を「Void」の文字にした場合は、隠蔽層5を改ざん目的で剥離した場合には、「Void」の文字が視認可能になり、何らかの手段で手が加えられたカードは「無効」であることを意味することができる。隠し印刷パターン11をオーバーシート101面に設ける場合は、隠し印刷パターン11の消去や変更がある程度は可能になるので、コアシート101とオーバーシート103の密着した層間に予め印刷しておくことが好ましい。
【0024】
本発明の光回折構造体付きカード1の第2構成は、図2のように、カード基体100のオーバーシート103面に磁気記録層4が形成され、磁気記録層4を含むオーバーシート103面に、光回折構造層20が形成されている。この構成は第1構成と同一である。
光回折構造層20は、カード基体100側からヒートシール層21、光反射層22、透明反射層23、光回折構造形成層24からなるものであり、オーバープリント層25を有していてもよい。光反射層22と透明反射層23の双方が形成されている点で第1構成と相違している。光回折構造層20の上面には、隠蔽層5、模様層6、保護層7が順次形成されている。この構成は第1構成と同一であり、その内容、目的も同様とする。
【0025】
第2構成の光回折構造体付きカードの特徴の1は、光回折構造層20が隠蔽層5の下面に形成されることと、この光回折構造層20が部分的な転写ではなく、層状にカード全面に形成されていることにあるが、この構成は第1構成と同一である。
特徴の2は、当該光回折構造層20が隠蔽層5に形成した透明窓部8を介して、カード表面から視認可能にされ、かつ光回折構造層20の光反射層22と、透明反射層23の間に印刷パターン12が設けられていることにある。従って、当該印刷パターン12が光回折構造20と重畳してカード表面から視認可能になる。印刷パターン12は光回折構造転写シートの製造段階で予め透明反射層23にインクジェット、オフセット、スクリーン印刷等により印刷するので、変造・改造を一層困難にすることができる。
第2構成の光回折構造体付きカード1において、コアシート101に隠し印刷パターン11を設けることができるのも第1構成と同様である。
【0026】
上記の構成からなる光回折構造体付きカード1の各構成層の厚みは、通常、以下の数値の範囲で極力薄層に形成する。磁気ヘッドにより読み取る際の磁気出力の低下を少なくするためであり、第1構成の場合も第2構成の場合も同一である。
ヒートシール層21:0.5〜10μm、光反射層22または透明反射層23:0.1μm以下、光回折構造形成層24:0.1〜5μm、オーバープリント層25:0.5〜5μm、隠蔽層5:2〜10μm、模様層6:0.5〜5μm、保護層7:1〜8μm
なお、オーバープリント層25は、カードの最表面にはならず、必須の構成ではないので、請求項1または請求項2には構成要素として記載していない。
【0027】
磁気記録層4上の光回折構造層20(ヒートシール層21、光反射層22または透明反射層23、光回折構造形成層24、オーバープリント層25を含む全体厚み)および隠蔽層5、模様層6、保護層7の合計厚みは、8μmから25μmの範囲とすることが好ましい。この程度の厚み範囲であれば、抗磁力580〜720エルステッド、角形比0.85以上および板状比(最大径/厚さ)1.5以上のバリウムフェライト磁性体を用いて、必要な磁気出力が得られるからである。
【0028】
カード基体100内には、非接触型ICチップを内蔵していてもよい。この場合、本発明の光回折構造体付きカード1は、磁気記録層付き非接触ICカードとなる。カード基体のコアシート101または102にアンテナコイルを形成し、当該アンテナコイルの両端に非接触ICチップを装着することになる。
また、光回折構造体付きカード1の表面には、接触型または接触非接触共用型ICモジュールの端子板を有していてもよい。この場合、本発明の光回折構造体付きカード1は、磁気記録層付き接触型ICカードまたは接触非接触共用型ICカードとなる。接触非接触共用型ICモジュールの場合は、カード基体のコアシート101または102にアンテナコイルを形成し、当該アンテナコイルの両端とICモジュール側の非接触インターフェースとを接続することになる。上記ICカード自体の構成や製造方法は先行特許文献等に周知であるため、本明細書では詳述しない。
【0029】
本発明の光回折構造体付きカード1は各種の製造方法で製造することができる。光回折構造層20も直接形成することができる。例えば、磁気記録層4を形成したカード基体100面に設けた光回折構造層用樹脂層を型押ししてから光反射層22を形成することができ、光反射層22を形成してから光反射層22面を型押しして、樹脂層を積層することもできる。光反射層22は極めて薄層なので観察側に光反射層22が位置しても形状が損なわれることはない。
【0030】
しかし、一般的には、光回折構造層20を転写シートに予め形成した光回折構造転写シートを用いてカード基体100に転写することが効率的であり、品質的にも優れたものが得られるので多用されることが多いと考えられる。
隠蔽層5や模様層6、保護層7の形成も同様であり、オフセット印刷やグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等により直接印刷することもできるが、後述のように予め製造した印刷層転写シートを転写して用いることもできる。
【0031】
光回折構造層を転写シートで形成し、隠蔽層5や模様層6保護層7も印刷層転写シートで形成する場合は、2回の転写工程を伴うことになる。すなわち、最初に、光回折構造転写シートを用いて光回折構造層20を転写し、光回折構造転写シート2の支持体シートを剥離除去した後、印刷層転写シートを再度転写することになる。これらの転写工程は、一般には複数のカードが多面付けされた状態で行うのが便利であり、転写シートも多面付け状のものを予め準備する。
【0032】
磁気カード類などの被転写体に光回折構造層20を転写する際は、例えば、光回折構造転写シート2を多面付けカード基体100の外側に設けた見当マークにより位置合わせして重ね、熱プレス装置により支持体シート2b側から加熱および圧着することにより、ヒートシール層21が軟化しカード基体100のオーバーシート103面に接着する(図3参照)。その後、支持体シート2bを引き剥がすことにより、離型性樹脂層2hとオーバープリント層25との界面で容易に剥離し、オーバープリント層25を外面とする光回折構造層20がカード基体100面に転写される。印刷層転写シートの光回折構造層20上への転写も同様に行われる。
【0033】
以下には、光回折構造転写シートと印刷層転写シートの構成、材料、製造方法、および磁気記録層、カード基体、その他の材料について詳細に説明することとする。
【0034】
〔光回折構造転写シートについて〕
光回折構造転写シート2は、図3のように、支持体シート2bに光回折構造層20の各層を形成したもので、以下の内容になる。
光回折構造転写シート2は、支持体シート2bの一方の面に離型性樹脂層2hを設け、さらにその離型性樹脂層2hの上に、光回折構造層20として、オーバープリント層25、光回折構造形成層24、光反射層22または透明反射層23、およびヒートシール層21を順に積層して構成するとともに、前記オーバープリント層25には、電離放射線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂との混合物を用いて、被転写体に転写後の光回折構造層20を保護する層を形成する。
【0035】
(支持体シート)
光回折構造転写シート2に用いる支持体シート2bとしては、その上に積層する各層、すなわち、離型性樹脂層2h、オーバープリント層25、光回折構造形成層24、光反射層22または透明反射層23、およびヒートシール層21の各層を順次コーティングなどにより形成する際に必要とされる耐熱性および耐溶剤性、また形成された光回折構造層をカード基体に転写する際、熱転写方式を利用する場合には、その耐熱性が必要である。
そこで、これらの性能を備えたプラスチックフィルム、例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」とする。)などを使用することができる。PETフィルムを使用する場合、その厚さは5〜200μmのものが好ましく、加工適性や引張強度、熱転写の際の熱効率などを考慮すると10〜50μmの厚さがさらに好ましい。
【0036】
(離型性樹脂層)
支持体シート2bの面に、塗工する離型性樹脂層2hは、支持体シート2bに良く接着し、その上に形成するオーバープリント層25の樹脂を比較的容易に剥離でき、かつ耐熱性、耐溶剤性などに優れた樹脂で形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂など架橋性に優れた各種熱硬化性樹脂が好適に使用できる。このような樹脂は、架橋度合いを制御して用いることにより、転写の際の剥離力を適宜調整することも可能である。離型性樹脂層2hは、グラビアコートなどによるコーティング方式で形成することができ、その厚さは薄くてよく0.1〜2μm程度で充分である。オーバープリント層25が支持体シート2bとの間で剥離しやすい場合には設けないでもよい。
離型性樹脂層2hは、転写後は、支持体シート2b側に残ることを前提とする。
【0037】
(オーバープリント層)
前記離型性樹脂層2hの上に設けるオーバープリント層25は、転写後、カード類などの最外層となる場合は下側の層を保護するものである。本発明の光回折構造体付きカードでは、さらに印刷層がオーバープリント層25面に形成されるが、該特性を備えているのが好ましい。オーバープリント層25形成材料としては、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、耐汚染性などに加えて、優れた後加工適性(接着性)をも兼ね備えた樹脂が適している。このような樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂との混合物が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂としては、具体的には、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれのプレポリマーに粘度、あるいは架橋密度を調整するために多官能または単官能のモノマーを添加して用いてもよく、また、必要に応じて公知の光反応開始剤や増感剤を添加して用いてもよい。このほか、ポリエン/チオール系の電離放射線硬化型樹脂なども耐摩耗性に優れており、好ましく使用できる。
【0038】
上記電離放射線硬化型樹脂と併用する熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステルなどのビニルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテートなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられ、特に好ましいものは、ビニル系樹脂およびポリエステル系樹脂である。
【0039】
前記電離放射線硬化型樹脂(A)と上記熱可塑性樹脂(B)とは、質量比でA/B=95/5〜5/95の割合で使用する。好ましくはA/B=90/10〜10/90、さらに好ましくはA/B=80/20〜20/80である。熱可塑性樹脂の量が少なすぎると、形成されるオーバープリント層25の表面の後加工適性が不足し、一方、熱可塑性樹脂の量が多すぎると、形成されるオーバープリント層の各種耐久性が低下する。
【0040】
以上のようなオーバープリント層用樹脂には、さらに必要に応じて、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を加えることもできる。また、オーバープリント層を設ける方法は、前記オーバープリント層用樹脂組成物で塗工液を作製し、従来公知の各種ロールコーティング方式やグラビアコーティング方式で塗布した後、UV(紫外線)照射、またはEB(電子線)照射などにより樹脂を硬化させて当該層を形成できる。
なお、前記塗工液には粘度調整のため、必要に応じて適当な有機溶剤を添加してもよく、その場合には塗布後、先ず有機溶剤を除くための熱風乾燥を行い、次いでUVまたはEBの照射により樹脂の硬化を行えばよい。
【0041】
オーバープリント層25の厚さは、光回折構造層全体の厚さを薄くするために、0.5〜5μmの範囲、さらに好ましくは、1〜2μmにすることが好ましい。オーバープリント層25の厚さが0.5μm未満の場合は、充分な耐擦傷性、耐摩耗性が得られず、また、5μmを超える厚さは、既に耐摩耗性は充分にあるため必要性がない。
【0042】
(光回折構造形成層)
前記オーバープリント層25の上には、光回折構造形成層24、すなわち、ホログラムまたは回折格子を形成した層を設ける。光回折構造自体は、平面ホログラム、体積ホログラムともに使用でき、具体例としては、レリーフホログラム、リップマンホログラム、フレンネルホログラム、フラウンホーファホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、レーザー再生ホログラム(イメージホログラムなど)、白色光再生ホログラム(レインボーホログラムなど)、カラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子などが挙げられる。
【0043】
これらの光回折構造を形成する形成層の材料には、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレートなどの熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、あるいは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができ、さらには、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、あるいはこれらにラジカル重合性不飽和単量体を加え、電離放射線硬化性としたものなどを使用することができる。このほか、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、サーモクロミックス材料、カルコゲンガラスなどの感光材料なども使用できる。
【0044】
上記の材料を用いて光回折構造を形成する方法は、従来既知の方法によって形成することができ、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、前記支持体シート2b上に離型性樹脂層2hおよびオーバープリント層25を順に積層した積層シートのオーバープリント層25の上に、前記光回折構造形成層用樹脂の塗布液をグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法などの手段で塗布して、塗膜を形成し、その上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。また、フォトポリマーを用いる場合は、前記積層シートのオーバープリント層上に、フォトポリマーを同様にコーティングした後、前記原版を重ねてレーザー光を照射することにより複製することができる。
このように、表面凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を光回折構造層の表面に記録する方法は、量産性があり、コストも低くできる点で特に好ましい。このような光回折構造形成層24の膜厚は0.1〜5μmの範囲、さらに好ましくは、0.2〜2μmにすることが好ましい。
【0045】
(光反射層、透明反射層)
前記のように光回折構造形成層24の表面に凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を記録した場合には、その回折効率を高めるために光反射層22または透明反射層23をレリーフ面に形成することが好ましい。光反射層22として、光を全反射する金属薄膜をレリーフ面に形成すれば反射型の光回折構造が得られ、また、半透明薄膜をレリーフ面に形成すれば透明反射型の光回折構造が得られる。これらは目的に応じて適宜選択することができる。本発明における光回折構造形成層24として、光回折構造形成層の下層にも情報表示、その他の印刷パターンが設けられることもあることから、その場合には透過性を有することが必要であり、透明反射層23が用いられる。
【0046】
このような光反射層22または透明反射層23の材質としては、光回折構造形成層24とは屈折率の異なる物質の連続薄膜や金属薄膜などが挙げられる。全反射させる光反射層22の場合は、アルミニウムや銀、クロム、ニッケル、錫、インジウム等の金属を単独または組み合わせして用いられる。連続薄膜の膜厚は、薄膜を形成できる範囲であればよいが、0.1μm以下の厚み、通常は10〜100nmが好ましい。
連続薄膜をレリーフ面に形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法が挙げられる。連続薄膜は、その屈折率が光回折構造形成層24より大きくても小さくてもよいが、屈折率の差が0.3以上あることが好ましく、差が0.5以上、さらには1.0以上あることがより好ましい。
【0047】
光回折構造形成層24より屈折率が大きい連続薄膜としては、ZnS、TiO2 、Al2 3 、Sb2 3 、SiO、TiO、SiO2 などが挙げられる。光回折構造形成層より屈折率が小さい連続薄膜としては、LiF、MgF2 、AlF3 などが挙げられる。
また、厚さが20nm未満の場合には、光の透過率が比較的小さいため、透明でありながら光反射する透明反射層23として使用することができる。さらに、光回折構造形成層24とは屈折率の異なる透明な合成樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートの層を光反射層に用いることもできる。
【0048】
(ヒートシール層)
前記光反射層22または透明反射層23の上にはヒートシール層21を設けて光回折構造転写シート2を完成する。ヒートシール層21の材質は、光反射層22または透明反射層23との接着性がよく、かつ転写に際して磁気記録カード類などの被転写体に対しても強固に接着できるものが好ましい。具体的には、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム変性物などが挙げられ、これらの中から適するものを適宜選択して使用でき、また、これらは単体、もしくは2種以上の混合系で、さらに必要に応じてハードレジンや可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる。
【0049】
上記のような材料で形成されるヒートシール層21は、通常、上記材料を溶液状の塗布液とし、これをロールコーターなどで塗布および乾燥することによって形成できる。ヒートシール層21の厚さは、0.5〜10μmの範囲が好ましく、1.0〜3.0μmの範囲がさらに好ましい。以上のようにして、支持体シート2bの離型性樹脂層2hの上に、光回折構造転写層として、オーバープリント層25、光回折構造形成層24、光反射層22または透明反射層23、ヒートシール層21が順に積層された光回折構造転写シート2が製造できる。上記光回折構造層20は、全体としての厚さが8μm以下に形成されることが好ましく、6μm以下がさらに好ましい。
【0050】
〔印刷層転写シートについて〕
印刷層転写シート3は、図4のように、支持体シート3bの一方の面に離型性樹脂層3hを設け、さらにその離型性樹脂層3hの上に、保護層7、模様層6、隠蔽層5、必要によりヒートシール層(不図示)を順に積層して構成されるとともに、隠蔽層5には、透明窓部8を設けて光回折構造層20を視認可能にする。透明窓部8には、転写時の接着性を高めるために透明メジウムを印刷するのが通常である。透明窓部8は、1箇所に限らず、本発明のカードでは複数箇所設けることができる。その形状も矩形状に限らず円形や星形、特定のデザイン形状、それらの組み合わせとすることができる。
ヒートシール層を設けない場合は、隠蔽層5がヒートシール層の役割を兼ねるようにする。以下は、ヒートシール層のない構成について説明する。
【0051】
(支持体シート)
印刷層転写シート3に用いる支持体シート3bとしては、その上に積層する各層、すなわち、離型性樹脂層3h、保護層5、模様層6、隠蔽層7の各層を順次コーティングなどにより形成する際に必要とされる耐熱性および耐溶剤性、また、形成された印刷層をカード基体に転写する際、熱転写方式を利用する場合には、その耐熱性が必要である。
そこで、これらの性能を備えたプラスチックフィルムには、光回折構造転写シートと同様に2軸延伸PETフィルムなどを使用することができる。2軸延伸PETフィルムを使用する場合、その厚さは5〜250μmのものが好ましく、加工適性や引張強度、熱転写の際の熱効率などを考慮すると10〜200μmの厚さがさらに好ましい。
【0052】
(離型性樹脂層)
支持体シート3bの面に、塗工する離型性樹脂層3hは、支持体シート3bに良く接着し、その上に形成する保護層7の樹脂層を比較的容易に剥離でき、かつ耐熱性、耐溶剤性などに優れた樹脂で形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂など架橋性に優れた各種熱硬化性樹脂が好適に使用できる。当該樹脂は、架橋度合いを制御して用いることにより、転写の際の剥離力を適宜調整することも可能である。離型性樹脂層2hは、グラビアコートなどによるコーティング方式で形成でき、その厚さは薄くてよく0.1〜2μm程度で充分である。保護層7が支持体シート3bとの間で剥離しやすい場合には設けないでもよい。離型性樹脂層3hは、転写後は、支持体シート3b側に残ることを前提とする。
【0053】
(保護層)
前記離型性樹脂層3hの上に設ける保護層7は、転写後、カード類などの最外層となり下側の層を保護するものである。保護層7形成材料としては、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、耐汚染性などに加えて、優れた後加工適性(接着性)をも兼ね備えた樹脂が適している。このような樹脂としては、オーバーコート層において前記した電離放射線硬化型樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との混合物が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂(A)や熱可塑性樹脂(B)の内容については、光回折構造転写シートの場合と同様であり、同様の配合比にすることができる。後加工適性(接着性)とは、ホログラム転写シート以外の転写材料、例えば、印字記録層等を考慮するものである。
保護層7の厚さは、印刷層全体の厚さを薄くするために、1〜8μmの範囲、さらに好ましくは1〜3μmの範囲にすることが好ましい。保護層7の厚さが1μm未満の場合は、充分な耐擦傷性、耐摩耗性が得られず、また、8μmを超える厚さは、既に耐摩耗性は充分にあるため必要性がない。保護層7は、グラビア印刷やシルクスクリーン印刷で形成することができる。
【0054】
なお、実用上は、アクリル系の単体樹脂を、剥離層兼保護層として用いることも可能である。この場合の剥離層兼保護層は支持体シート3b側には残らないで、カード側に転写される。剥離層兼保護層も、グラビア印刷やシルクスクリーン印刷で形成できる。
【0055】
(模様層)
模様層6は、カードに情報表示や装飾的効果を与えるものであり、隠蔽層5上に絵柄などの模様層6を設けることによって、得られる磁気記録カードの意匠性を著しく向上させることができる。模様層6は、オフセット印刷やグラビア印刷、あるいはシルクスクリーン印刷で形成することができる。模様層6の印刷には保護層7や隠蔽層5と密着性のよいインキ樹脂材料を使用するのが好ましい。プロセス印刷の場合は、3色または4色のカラー印刷となるが、特色インキを使用して、2色ないし4色の印刷を行ってもよい。
該模様層6の厚みは薄いほど好ましいが、通常は0.5〜5μm程度の厚み、より好ましくは1〜3μm程度である。ただし、磁気記録層4上でない場合は、模様層6の厚みを制限する必要は特にない。他の印刷層を加えた総厚みも同様である。
印刷層転写シート3を光回折構造層20上に転写した際に、下面の光回折構造形成層24からの回折光を観察できるように透明窓部8を形成するが、当該透明窓部8に模様層6がかからないように印刷するのが通常である。
【0056】
(隠蔽層)
隠蔽層5は、光回折構造層20の所定の部分のみがカード上面から視認可能になるようにするため、透明窓部8以外を遮蔽すると共に、磁気記録層4の着色を隠蔽して、カード表面の自由なデザイン構成を可能にするための層である。隠蔽能力を高めるため、隠蔽層5を構成するインク樹脂組成中にはアルミニウム粉末を分散して使用するのが通常である。あるいは隠蔽材料として酸化チタン(TiO2 )などの隠蔽性の高い白色顔料を使用してもよい。
【0057】
隠蔽層塗工用インキ組成物に用いるバインダー樹脂は、オーバープリント層25との適合性を考慮して定めるが、一般的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、エチルヒドロキシセルロース、もしくは酢酸セルロース、等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のスチレン誘導体樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、もしくはポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂の単独、あるいは共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、クマロン樹脂、ビニルトルエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはビニルブチラール樹脂等が使用できる。
【0058】
該隠蔽層5の厚みは通常2〜10μm程度であるが、より好ましくは4〜8μmとする。これらはグラビア印刷やシルクスクリーン印刷で塗工することができる。透明窓部8となる部分は、アルミニウム粉末等を含まない透明なインク樹脂組成によるインク(透明メジウム)を周囲形状に合わせして印刷しておく。実際は印刷精度の関係で透明窓部8の形状よりは大きめに透明メジウムを印刷する。
【0059】
本発明の光回折構造付きカード1では、隠蔽層5が光回折構造層20のオーバープリント層25に接して転写されるため、隠蔽層5が同時にヒートシール層の役割を果たすことが必要となる。従って、隠蔽層5に使用する材質としては、光回折構造転写シート2のヒートシール層21に使用すると同様な樹脂材料を使用することができる。
【0060】
〔カード基体〕
本発明の光回折構造付きカードのカード基体としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、などのほか、廃棄時の焼却において問題が生じないポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂や非結晶性ポリエステル系樹脂シートを使用することが好ましい。
非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂の例としては、ジカルボン酸成分がテレフタル酸で、ジオール成分がエチレングリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールで構成されるものが挙げられる(PET−G)。ジオール成分としては、前者が70質量%程度、後者が30質量%程度である。
【0061】
カード等の用途で、より耐熱性が要求され、しかもエンボス適性も必要なときには、上記したような非結晶性ポリエステル樹脂シートの使用が好ましく、またより高度な耐熱性が要求される場合には、非結晶性ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とのブレンド樹脂シート等も使用できる。
【0062】
このようなカード基体の厚さは、材質によっても異なるが、通常、100μm〜5mm程度の範囲である。特に磁気記録カードの場合、カード基体をISO規格に準拠したものとする場合には、その厚さは0.76mmが基準である。そして、カード基体を、例えばポリ塩化ビニル(以下、「PVC」という)やPET−Gで形成する場合、通常、厚さ280μmの白色PVC(またはPET−G)シートの2枚をコアシート101,102として、これを重ねその両側にそれぞれ厚さ100μmの透明PVC(またはPET−G)シートをオーバーシート103,104として重ねて、熱プレスなどにより積層する4層構成のカード基体(合計厚さ0.76mm)が用いられている。
【0063】
〔磁気記録層〕
磁気記録層4は、前記透明PVC(またはPET−G)オーバーシート103の表面にテープ状または全面状に予め設けておくことにより、熱プレスなどによる積層時に、テープ状であってもカード基体に押し込まれ、表面平滑に一体化され積層される。
このような磁気記録層4は、磁性体を樹脂バインダー溶液中に分散させた磁性塗料の塗布および乾燥によって形成される。本発明では、上記磁性体として抗磁力、580〜720エルステッド、角形比0.85以上および板状比1.5以上のバリウムフェライトを用いることが必要である。上記バリウムフェライトの抗磁力が580〜720エルステッド(650エルステッド±70エルステッド)の範囲から外れると、形成される磁気記録層4が、クレジットカードやキャッシュカードなどで一般的に使用されている磁気ストライプの特性から外れ、汎用のシステム(発行機やATMなど)で使用できなくなり、角形比が0.85未満であると、磁気記録層4の厚みが厚く(8μm以上)なり、磁気出力や磁気情報の分解能の低下を生じ、磁気情報の記録・読み取りが困難となり、また、板状比が1.5未満であると角形比が0.85未満となり、やはり磁気情報の記録・読み取りが困難となる。
【0064】
また、光回折構造形成層24は、下地の透過性を有するので、上記コアシート101または光反射層22に設けられた情報表示や印刷パターンなどを視認可能にできる。さらに、光回折構造層20をカードのカード基体上の略全領域に設けることにより、意匠性が向上すると同時に、光回折構造層20を剥がして他のカードに貼り替えるなどの偽造が困難となりセキュリティー性も向上する。
【0065】
また、上記本発明の光回折構造体付きカードにおいて、磁気記録層4の磁性体として、前記の如き特定の磁性体を用いることによって、隠蔽層5および模様層6を設けた結果、磁気記録層4と保護層7表面との間隔が大きくなっても、磁気記録層4の記録・読み出しに支障が生じない。通常の磁性体を用いた場合、磁気記録層4と保護層7最表面との間隔は8μm程度が限界であるが、本発明の場合には上記間隔が8μmを超えて、8〜25μmとなっても、磁気記録層4の記録特性が充分に発揮されるので、充分な厚みの隠蔽層5および模様層6を形成し、優れた意匠性をカードに付与することができる。
【0066】
以下に、具体的な実施例、比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中に付した符号は、既述した各図の符号と整合するようにされている。
【実施例1】
【0067】
〔光回折構造転写シートの作製〕
厚さ25μmの2軸延伸PETフィルム(片面コロナ放電処理)のコロナ放電処理面に、下記組成の離型性樹脂層用塗布液をグラビアコート法により、乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布して、離型性樹脂層2hが積層された支持体シート2bを作製した。
【0068】
(離型性樹脂層用塗工液)
メラミン系樹脂 5質量部
メチルアルコール 25質量部
エチルアルコール 45質量部
酢酸セルロース樹脂 1質量部
パラトルエンスルフォン酸 0.05質量部
【0069】
前記離型性樹脂層2hの上に、下記組成のオーバープリント層用塗工液(A)と同塗工液(B)を樹脂成分の混合質量比が50:50になるように混合し、グラビアコート法により塗布し、100°C、1分間の条件により熱乾燥を行い溶剤を乾燥させた後、紫外線照射装置(出力160W/cmの高圧水銀ランプ2灯式)により、紫外線を照射量500mJ/cm2 で照射して塗膜の硬化を行い、硬化後の厚さが2μmのオーバープリント層25を形成した。なお、転写の際には、離型性樹脂層2hとオーバープリント層25との間で剥離する(図3参照)。
【0070】
(オーバープリント層用塗工液(A))
ポリウレタンアクリレート(プレポリマー) 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100質量部
2ーヒドロキシエチルアクリレート 5質量部
光重合開始剤 1質量部
増感剤 1質量部
メチルエチルケトン 100質量部
【0071】
(オーバープリント層用塗工液(B))
酢酸セルロース樹脂 10質量部
ポリエステル樹脂 20質量部
メチルエチルケトン 100質量部
パラトルエンスルフォン酸 0.05質量部
【0072】
前記オーバープリント層25の上に、下記組成の光回折構造形成層24用塗布液をグラビアコート法により、乾燥時の厚さが2μmとなるように塗布し、100°C、1分間の条件で乾燥させて光回折構造を形成するための樹脂層を形成した。
(光回折構造形成層用塗工液)
アクリル樹脂 40質量部
メラミン樹脂 10質量部
シクロヘキサノン 50質量部
メチルエチルケトン 25質量部
【0073】
前記光回折構造を形成するための樹脂層の上に、ホログラム原版を載置し、150°C、50kg/cm2 、1分間の条件で加熱圧着してホログラムレリーフを型付けした後、ホログラム原版を剥離してホログラムレリーフを備えた光回折構造形成層24を形成した。次に、前記光回折構造形成層24のホログラムレリーフ形成面に、スパッタ法により厚さ20nmのZnS薄膜層を形成して光反射層22とした。
【0074】
前記光反射層22の上に、下記組成のヒートシール層21用塗布液をグラビアコート法により、乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布および乾燥してヒートシール層21を形成し、本発明で使用する光回折構造転写シート2を作製した。
(ヒートシール層形成用塗工液)
塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体 20質量部
アクリル樹脂 10質量部
酢酸エチル 20質量部
トルエン 50質量部
【0075】
以上のようにして作製した光回折構造転写シート2の各層の厚さ構成は以下の通りである。
(厚さ構成) 支持体シート 25μm
離型性樹脂層 0.5μm
オーバープリント層 2μm
光回折構造形成層 2μm
光反射層 20nm
ヒートシール層 2μm
【0076】
〔印刷層転写シートの作製〕
厚さ50μmの2軸延伸PETフィルム(片面コロナ放電処理)のコロナ放電処理面に、光回折構造転写シート2と同一組成の離型性樹脂層用塗布液をグラビアコート法により、乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布して、離型性樹脂層3hが積層された支持体シート3bを作製した。
【0077】
次に、前記離型性樹脂層3hの上に、下記組成の保護層用塗工液(A)と同塗工液(B)を樹脂成分の混合質量比が50:50になるように混合し、グラビアコート法により塗布し、100°C、1分間の条件により熱乾燥を行い溶剤を乾燥させた後、紫外線照射装置(出力160W/cmの高圧水銀ランプ2灯式)により、紫外線を照射量500mJ/cm2 で照射して塗膜の硬化を行い、硬化後の厚さが2μmの保護層7を形成した。なお、転写の際には、離型性樹脂層3hと保護層7との間で剥離する(図4参照)。
【0078】
(保護層用塗工液(A))
ポリウレタンアクリレート(プレポリマー) 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100質量部
2ーヒドロキシエチルアクリレート 5質量部
光重合開始剤 1質量部
増感剤 1質量部
メチルエチルケトン 100質量部
【0079】
(保護層用塗工液(B))
酢酸セルロース樹脂 10質量部
ポリエステル樹脂 20質量部
メチルエチルケトン 100質量部
パラトルエンスルフォン酸 0.05質量部
【0080】
(模様層、隠蔽層)
次に、前記保護層7上に、3色オフセット印刷により、厚さ2μmの模様層6のパターン印刷を行い、その後下記組成の隠蔽層5用塗工液をシルクスクリーン印刷法により塗工し、厚さ5μmの隠蔽層5を形成した。隠蔽層5は接着層を兼ねる組成のものである。
(隠蔽層用塗工液)
アクリル系樹脂 10質量部
酢酸ビニル系樹脂 10質量部
アルミニウム粉末 50質量部
顔料 4質量部
溶剤 50質量部
【0081】
なお、透明窓部8は、大きさ20mm×20mmの矩形状とし、隠蔽層5用塗工液を塗工しないようにし、同塗工液からアルミニウム粉末と顔料を除いた透明樹脂塗工液を、当該矩形状内に合致するようにして、別のシルクスクリーン版を用いて毛抜き合わせで印刷した。厚みは5μmとし隠蔽層5と同一厚みにした。
【0082】
以上のようにして作製した印刷層転写シート3の各層の厚さ構成は以下の通りである。(厚さ構成) 支持体シート 50μm
離型性樹脂層 0.5μm
保護層 2μm
模様層 2μm
隠蔽層 5μm
【0083】
〔磁気記録層およびカード基体の作製〕
厚さ25μmのPETフィルムに、下記組成を有する磁気記録層形成用の塗工液をグラビアコート法により塗布して、残留磁束密度が1.7maxell/cmとなるように磁気記録層形成用転写シートを作製した。なお、この磁気記録層4の角形比は、理研電子(株)製VSM(振動試料型磁力計)により、印加磁界2000エルステッド条件で測定した結果0.90となった。
【0084】
(磁気記録層形成用の塗工液)
Baフェライト 36質量部
(抗磁力620エルステッド、板状比2.2)
ウレタン樹脂 12質量部
トルエン 18質量部
メチルエチルケトン 15質量部
メチルイソブチルケトン 15質量部
イソシアネート系硬化剤 4質量部
【0085】
この磁気記録層4形成用転写シートを厚さ100μmの透明PET−G製オーバーシート103の所定位置にテープ状に熱転写し、支持体であるPETフィルムを剥離することにより磁気記録層4を施したオーバーシート103を得た。次に、厚さ280μmの白色不透明なPET−G製コアシート101,102の2枚が中心層となるようにし、その両側に厚さ100μmの透明PET−G製オーバーシート103,104を、前記方法で得られた磁気記録層4を熱転写した透明なオーバーシート103が光回折構造層20側になるように積層し、温度150°C、圧力25kg/cm2 、時間15分の条件で熱プレスを行い、カード基体100の樹脂積層体を得た。
なお、コアシート101のオーバーシート103側となる面には、「Void」の小さい文字からなる隠し印刷パターン11を赤色にオフセット印刷しておいた。
【0086】
先に準備した光回折構造転写シート2を、上記の磁気記録層4面およびオーバーシート103面に重ねて、熱プレス装置により、150°C、10kg/cm2 、1秒間の条件で加熱圧着して転写後支持体シート2bを引き剥がすことにより、離型性樹脂層2hとオーバープリント層25との界面で容易に剥離し、オーバープリント層25を最外層とする光回折構造層20が積層されたカード基体を得た。
【0087】
この光回折構造層20を積層したカード基体のオーバープリント層25面に、先に準備した印刷層転写シート3を重ねて、熱プレス装置により、150°C、10kg/cm2 、1秒間の条件で加熱圧着して転写後支持体シート3bを引き剥がすことにより、離型性樹脂層3hと保護層7との界面で容易に剥離し、保護層7を最外層とする隠蔽層5および模様層6付き光回折構造層20の積層した光回折構造体付きカード1を得た。
最後にJISサイズ(86mm×54mm)に打ち抜きした。このものの磁気記録層4上の、光回折構造層20および隠蔽層5、模様層6、保護層7の合計厚みは、約15μmとなった。
【実施例2】
【0088】
上記実施例1において、光回折構造転写シート2のヒートシール層21の厚みを4μmとし、印刷層転写シートの保護層7の厚みを5μmとした以外は、実施例1と同一の条件で光回折構造体付きカード1を作製した。このものの磁気記録層4上の、光回折構造層20および隠蔽層5、模様層6、保護層7の合計厚みは、約20μmとなる。
【実施例3】
【0089】
上記実施例1において、光回折構造転写シートのヒートシール層21の厚みを7μmとし、印刷層転写シートの保護層7の厚みを7μmとした以外は、実施例1と同一の条件で光回折構造体付きカード1を作製した。このものの磁気記録層4上の、光回折構造層20および隠蔽層5、模様層6、保護層7の合計厚みは、約25μmとなる。
【実施例4】
【0090】
下記組成を有する磁気記録層形成用の塗工液をグラビアコート法により塗布して、残留磁束密度が1.7maxell/cmとなるように磁気記録層4形成用転写シートを作製した以外は、実施例1と同様にして磁気記録カードを得た。なお、この磁気記録層の角形比は、理研電子(株)製VSM(振動試料型磁力計)により、印加磁界2000エルステッド条件で測定した結果0.85となった。
【0091】
(磁気記録層形成用の塗工液)
Baフェライト 36質量部
(抗磁力620エルステッド、板状比1.5)
ウレタン樹脂 12質量部
トルエン 18質量部
メチルエチルケトン 15質量部
メチルイソブチルケトン 15質量部
イソシアネート系硬化剤 4質量部
【0092】
(比較例1)
実施例1と同一条件により、同一の磁気記録層形成用転写シートを転写し、PET−Gシートによるカード基体100の樹脂積層体を得た。このカード基体100の磁気記録層4面およびオーバーシート103面に、予め準備した印刷層転写シート3を重ねて、熱プレス装置により150°C、10kg/cm2 、1秒間の条件で加熱圧着して転写後支持体シート3bを引き剥がすことにより、離型性樹脂層3hと保護層7との界面で容易に剥離し、保護層7を最外層とする隠蔽層5および模様層6付き磁気カード基体を得た。
なお、印刷層転写シート3は実施例1と同一材料による同一層構成、厚みとしたが、透明窓部8を設けないものとした。
【0093】
先に実施例1で予め準備した光回折構造転写シート2を、10mm×10mmの正方形状の転写型を用いて150°C、10kg/cm2 、1秒間の条件で押圧転写した。
転写後支持体シート2bを引き剥がすことにより、離型性樹脂層2hとヒートシール層21との界面で容易に剥離し、オーバープリント層25を最表面とする光回折構造層20が部分的に転写された光回折構造体付きカード1を得た。
【0094】
(比較例2)
下記組成を有する磁気記録層形成用の塗工液をグラビアコート法により塗布して、残留磁束密度が1.7maxell/cmとなるように磁気記録層4形成用転写シートを作製した以外は、実施例2と同一条件にして磁気記録カードを得た、なお、この磁気記録層の角形比は、理研電子(株)製VSM(振動試料型磁力計)により、印加磁界2000エルステッド条件で測定した結果0.80となった。
【0095】
(磁気記録層形成用の塗工液)
Baフェライト 36質量部
(抗磁力620エルステッド、板状比1.4)
ウレタン樹脂 12質量部
トルエン 18質量部
メチルエチルケトン 15質量部
メチルイソブチルケトン 15質量部
イソシアネート系硬化剤 4質量部
【0096】
(比較例3)
下記組成を有する磁気記録層形成用の塗工液をグラビアコート法により塗布して、残留磁束密度が1.7maxell/cmとなるように磁気記録層4形成用転写シートを作製した以外は、実施例1と同一条件にして磁気記録カードを得た、なお、この磁気記録層の角形比は、理研電子(株)製VSM(振動試料型磁力計)により、印加磁界2000エルステッド条件で測定した結果、0.75となった。
【0097】
(磁気記録層形成用の塗工液)
酸化鉄 36質量部
(抗磁力620エルステッド、板状比1.4)
ウレタン樹脂 12質量部
トルエン 18質量部
メチルエチルケトン 15質量部
メチルイソブチルケトン 15質量部
イソシアネート系硬化剤 4質量部
【0098】
実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例3における各構成層の厚みや磁性材料の特性を表1にまとめて表示する。なお、表1中、単位表示の無い厚みの単位はμmであり、抗磁力の単位は、エルステッド(Oe)である。
【表1】

【0099】
前記実施例1〜4および比較例1〜3で得られた光回折構造体付きカードの平滑性を指触により評価した。また、リーダライタ(株式会社ニューロン製「CT−670N」)で磁気記録および読み取りを行い、連続4000回読み取り後の保護層の外観損傷、磁気情報読み取り、について評価を行った。それらの結果について、表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
*1:評価基準
○:(良好)完全に平滑である。
△:(不良)指触で違和感がある。
*2:評価基準
○:(良好)記録後の読み取り時に磁気情報読み取り不良は発生しない。
×:(不良)記録後の読み取り時に磁気情報を読み取れない、あるいは読み取り不良が 生じやすい。
*3:評価基準
○:(良好)光回折構造の再生画像を良好に視認できる。
【0102】
表2の結果が示すように、平滑性はカードの最表面に光回折構造体を転写した比較例1を除き良好な結果が得られた。保護層7を構成する電離放射線硬化型樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の実施例の範囲で、表面耐久性の優れ外観損傷の生じない光回折構造体付きカードが得られた。また、磁気記録層4に、抗磁力620エルステッド、角形比0.85以上、板状比1.5以上のバリウムフェライトを用いることで、磁気記録層4と保護層7の最表面との間隔が大きくなっても、磁気記録層の良好な記録・情報読み取りが可能であることが判明した。
また、隠蔽層5を剥離すると、隠し印刷パターン11が現れるので、偽造防止効果を発揮することも確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の光回折構造体付きカードの第1構成を示す模式断面図である。
【図2】同第2構成を示す模式断面図である。
【図3】光回折構造転写シートの1実施形態の構成を示す模式断面図である。
【図4】絵柄層転写シートの1実施形態の構成を示す模式断面図である。
【図5】ホログラム転写箔を転写した従来の磁気カードの例を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1 光回折構造体付きカード
2 光回折構造転写シート
3 印刷層転写シート
4 磁気記録層
5 隠蔽層
6 模様層
7 保護層
8 透明窓部
11 隠し印刷パターン
12 印刷パターン
20 光回折構造層
21 ヒートシール層
22 光反射層
23 透明反射層
24 光回折構造形成層
25 オーバープリント層
100 カード基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基体上に磁気記録層を形成し、当該磁気記録層上に、ヒートシール層、光反射層または透明反射層、光回折構造形成層からなるなる光回折構造層を形成し、さらに当該光回折構造層上に、隠蔽層、模様層、保護層を形成した光回折構造体付きカードにおいて、前記隠蔽層に透明窓部を設けることにより、光回折構造層がカード表面から視認可能にしたことを特徴とする光回折構造体付きカード。
【請求項2】
カード基体上に磁気記録層を形成し、当該磁気記録層上に、ヒートシール層、光反射層、透明反射層、光回折構造形成層からなるなる光回折構造層を形成し、さらに当該光回折構造層上に、隠蔽層、模様層、保護層を形成した光回折構造体付きカードにおいて、前記隠蔽層に透明窓部を設け、かつ前記光反射層と透明反射層の間に印刷パターンを設けることにより、当該光回折構造層と印刷パターンがカード表面から視認可能にしたことを特徴とする光回折構造体付きカード。
【請求項3】
カード基体のコア層に隠し印刷パターンが設けられており、上記隠蔽層を剥離した場合には、当該隠し印刷パターンが視認可能にされていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光回折構造体付きカード。
【請求項4】
磁気記録層上の、光回折構造層および隠蔽層、模様層、保護層の合計厚みが8μmから25μmの範囲であり、磁気記録層の磁性体に、抗磁力580〜720エルステッド、角形比0.85以上および板状比1.5以上のバリウムフェライトを用いていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光回折構造体付きカード。
【請求項5】
カード基体内に非接触型ICチップを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の光回折構造体付きカード。
【請求項6】
カード表面に接触型または接触非接触共用型ICモジュールの端子板を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の光回折構造体付きカード。
【請求項7】
磁気記録層がカード基体上の一部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の光回折構造体付きカード。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−76022(P2007−76022A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263276(P2005−263276)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】