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マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスなどの微細加工デバイス又はその部品であって、プラズマ処理などのイオン化もしくは活性化技術によって表面上に形成された、均一の非湿潤性もしくは非吸収性コーティングもしくは表面改質体を有し、表面エネルギー値を15mNm−1未満としている、微細加工デバイス又はその部品。処理は使用の間にデバイスを通した液体の易流動性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非湿潤性で、非吸収性のコーティングを提供するように処理された微細加工デバイス、特に、マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイス、ならびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術はますます小型化されたエレクトロニクスデバイスのための集積回路又はプリント回路基板(PCB)などの物品を製造するために長期にわたってエレクトロニクス産業で使用されてきた。この技術は他の技術分野において用途を見出している。
【0003】
ナノテクノロジーは急速に成長している技術分野であり、化学又は核産業などにおいて、マイクロエレクトロニクス、半導体、オプトエレクトロニクス、医療/医薬、診断、触媒、ろ過、エネルギー貯蔵などの様々な用途で、材料及びデバイスが設計され、合成されそしてナノスケールを特徴としている。
【0004】
ナノテクノロジーデバイスに分類される材料及びデバイスは、通常、100ナノメートル未満のサイズのものである。それは、通常、2つの基本的方法のうちの1つの方法で製造され、その第一はデバイスの注意深い構築、所望の構造を得るための分子ごとの注意深い構築を伴う。第二の方法は既存の構造から材料を除々にストリッピング又はエッチングすることを伴い、それは従来の半導体技術に使用されるような既存の微細加工技術を主として基礎としている。
【0005】
マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスは流体の閉じ込め及び流れのためのチャンバー及びトンネルを有する小型化デバイスである。
【0006】
マイクロ流体デバイスは少なくとも1つの寸法が1mm未満の1つ以上のチャンネルを有するものとして定義され、一方、ナノ流体デバイスは概ねより小さいチャンネルを有するであろう。マイクロメートルレベルで測定されるデバイス及びナノリットル及びピコリットルで測定される流体では、たとえば、バイオテクノロジー又は生化学においてマイクロ流体デバイスは広く使用されている。
【0007】
これらのデバイスは様々な液体サンプルタイプを取り扱うために使用されることができる。しかしながら、それらは生化学研究又は診断、特に臨床診断に特に有用であり、そこで、血液サンプル(全血又は血漿などの血液分画を含む)、細菌細胞懸濁液、たんぱく質もしくは抗原溶液及び、有機溶媒、緩衝液及び塩を含む他の試薬などの液体を取り扱うのに使用されうる。マイクロ流体デバイスの特質及び配置によって、広い範囲の分析技術及び方法に使用することができ、たとえば、分子拡散係数、流体粘度、pH、化学結合係数及び酵素反応動態の測定に使用されうる。マイクロ流体デバイスの他の用途はキャピラリー電気泳動、等電点電気泳動法、イミュノアッセイ、フローサイトメトリー、マススペクトル計による分析のためのたんぱく質のサンプル注入、核酸の増幅、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅反応を用いたもの、DNA及びたんぱく質分析、細胞操作、細胞分離、細胞パターン形成及び化学勾配形成、高スループットスクリーニング、マイクロケミカル製造、医薬候補の細胞を基礎とした試験、患者モニタリング、プロテオミクス及びジェノミクス、化学マイクロ反応、たんぱく質結晶化、ドラッグデリバリー、医薬製造のスケールアップ、セキュリティ及び防衛を含む。
【0008】
生体医学研究及び分析を行う際のマイクロ流体デバイスの使用は、いくつかの有意な利点がある。第一に、このチャンネル内の流体の体積が非常に小さく、通常、数ナノリットルなので、使用される試薬及びアナライトの量は非常に少ない。このことは、高価な試薬の場合、又は、試薬の少ない場合、たとえば、いくつかの診断用途又は法医学的DNA分析において重要である。
【0009】
マイクロ流体デバイスを構築するために使用される加工技術は比較的に安価であり、そして非常に精巧な多重デバイス及び大規模製造の両方に非常に適している。マイクロエレクトロニクスと同様に、マイクロ流体技術は同一の基板チップ上にいくつかの異なる機能を遂行する高度に集積されたデバイスの製造を可能にする。これらのデバイスはいわゆる「ラボ−オン−チップ(lab-on a chip)」デバイスを生じさせ、このデバイスは、たとえば、医院又は病院、あるいは、家でさえも、ポイントケアデバイスとして使用するための携帯臨床診断デバイスとして使用されることができ、実験室分析手順の必要性を低減することができる。
【0010】
マイクロ流体デバイスは、様々な材料、たとえば、ケイ素、ガラス、金属もしくはポリマー又はそれらの混合物から、種々の微細加工技術を用いて製造されうる。特定の技術の選定は基材材料の特質に大きく依存する。意図した使用によって、基材は非常に硬質又は剛性であり、又は、必要な寸法安定性を確保するために薬品又は温度サイクルに特に耐性があることが要求されることがある。
【0011】
たとえば、製造は、基材、及び、特にシリコン基材上にフォトレジスト(ポジティブ又はネガティブ)を塗布することで行うことができる。フォトレジストを、所望のデバイスパターンを有する高解像マスクを通してUV光に暴露し、露光領域で重合を起こさせる。その後、余分の未重合のフォトレジストを洗い流し、基材をウエットケミカルエッチング浴に入れ、フォトレジストで保護されていない場所で異方的にエッチングする。結果として、マイクロチャンネルがエッチングされたシリコンウエハなどの基材が得られる。たとえば、ガラスカバースリップなどのカバースリップを用いてチャンネルを完全に閉じ込め、そしてガラスに穴をドリル開けし、サンプルのためのマイクロチャンネルへのアクセスを可能にする。
【0012】
より真直ぐなエッジ及びより深いエッチ深さが要求される場合に特に有用であるこのタイプのウエットケミカルエッチングの代わりに、ディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)を用いてもよい。
【0013】
マイクロ流体デバイスを製造するために、成形法によって熱硬化性又は他の硬化性ポリマーを用いてもよい。このようなポリマーの特定の例はシリコーンポリマー、ポリジメチルシロキササン(PDMS)であるが、当業界で慣用されている他のものも使用してよい。液体形態のポリマーを成形型(通常、ケイ素又はフォトレジスト)の上又は中に注ぎ、ポリマーを架橋させるように硬化させる。PDMAは光学的に透明で、比較的に可とう性の材料を生じ、それは他の硬化したポリマースラブ上にスタックされて複雑な三次元形状を形成することができる。
【0014】
または、ポリマー又はプラスティックはプラスティックの表面に適切なパターンを刻印するようにホットエンボス技術を受けることができる。複雑な構造を形成するためにインジェクションモールディングを用いてよい。
【0015】
いくつかのマイクロ流体デバイスは層状ポリマーシートから製造される。マイクロ流体デバイスの輪郭を、二酸化炭素レーザーなどのレーザー切断ツールを用いて、マイラー(Myler(商標)などの光学的に透明なプラスティックの薄いシートに切断する。層どうしを薄い接着剤層を用いて結合し、三次元構造を製造する。
【0016】
すべてのこれらの技術は有用であり、そのため、マイクロ流体技術は上述のとおり、種々の用途で有望であることを示している。
【0017】
しかしながら、少量の体積が関与することは液体が表面効果、特にチャンネル内での湿潤又は吸収を起こしやすいことを意味する。デバイスは、一般に、バルク試験よりも感度が低く、不十分な液体がチャンネルを通過することができるならば破損する傾向がある。しかし、これらのデバイス中で使用される基材の特質が変化することはこのことが起こらないことを確保することが困難であることを意味する。
【0018】
この問題に対処するために使用されてきた技術はデバイス上にテフロン(登録商標)様コーティングをスパッタリングすること、又は、その構築においてフッ素化シランを使用することを含む。しかしながら、これらの技術は低い付着性品質、耐久性の欠如及び膜厚の非効率な制御などのさらなる問題を呈する。
【0019】
イオン又はフリーラジカルなどの反応性原子又は分子が発生され、表面に接触される、イオン化技術又は活性化技術は表面を改質するために使用されている。このような技術の例はプラズマ処理(プラズマ堆積及びプラズマ活性化を含む)、中性子活性化、e−ビームもしくは熱イオン化技術を含む。これらは、種々の表面、特に布帛表面にポリマーコーティングを堆積させるために非常に広く使用されてきた。
【0020】
プラズマ重合は、特に、従来のウエットケミカル法と比較して、一般に、ほとんど廃棄物を発生しないクリーンでドライな技術として認識されている。この方法を用いて、プラズマは一般に、電場を受けている有機分子から発生する。このことは基材の存在下に行われ、プラズマ中の化合物のラジカルは基材上で反応し、ポリマー膜を形成する。
【0021】
従来のポリマー合成はモノマー種と高い類似性をもった繰り返し単位を含む構造を生じる傾向があり、一方、プラズマを用いて発生したポリマーネットワークは多種のモノマー断片のために極端に複雑でありうる。得られるコーティングの性質は基材の特質ならびにモノマーの特質及び堆積条件に依存することができる。
【0022】
WO03/082483は局所湿潤性、付着性及び摩擦/磨耗性の制御などのある特定の技術的効果を達成するために、デバイス上に不均一なプラズマポリマー表面を堆積させることを記載している。
【0023】
概して湿潤性を低減しそして信頼性を増加するために、微細加工デバイス、特にマイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイス上に均一なポリマーコーティングをプラズマ堆積させることは以前には開示されていない。それゆえ、このようにして適用されたコーティングがこのレベルで吸収性の問題をなくすのに有効であるか否かは明確でない。
【発明の概要】
【0024】
本発明の発明者は、少なくとも、使用の間に液体と接触する微細加工デバイスの表面をプラズマなどのイオン化もしくは活性化手段に付し、それにより、非湿潤性を付与する表面の改質を行うことにより、微細加工デバイスの信頼性及び強靭性が有意に向上されうることを発見した。
【0025】
1つの態様によると、本発明は微細加工デバイス又はその部品から選ばれる装置であって、その少なくとも1つの表面は、イオン化もしくは活性化技術によって表面上に形成された、均一の非湿潤性もしくは非吸収性コーティングもしくは表面改質体を有し、表面エネルギー値を15mNm−1未満としている、装置を提供する。
【0026】
これらの技術を用いて達成されうる超低表面エネルギーは12mNm−1未満であることができ、たとえば、8〜10mNm−1(mNm−1はミリニュートン/メートルである)である。
【0027】
1つ態様において、使用されるイオン化もしくは活性化技術はプラズマ処理である。特に、微細加工デバイス又はその部品の表面はプラズマ堆積によってその表面上に形成された均一な非湿潤性又は非吸収性ポリマーコーティングを有する。
【0028】
本願で使用されるときに、表現「微細加工デバイス」とは小型化されたデバイス又はナノテクノロジーデバイスを指し、特に、マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスを指し、それらは、それぞれ、1mm未満又は100ナノメートル未満のチャンネルなどを有する。適切には、非湿潤性又は非吸収性を担うように処理された微細加工デバイス又はその部品の表面は、使用時に、液体に接触する表面である。しかしながら、便利には、又は、必要ならば、さらなる表面、又は、全体のデバイスがそのように処理されてもよい。
【0029】
イオン化技術又は活性化技術を用いた処理は、デバイスが全体として、又は、デバイスの個々の部品、要素又はサブアセンブリのいずれかが処理されるように、微細加工デバイスの製造のいかなる便利な段階で行ってもよい。たとえば、基材においてチャンネルがエッチングされ又は他の方法で形成されたところで、基材は処理されてよく、それにより、全体に基材の上に均一なコーティングが生じ、これにより、チャンネルの全表面が適切に非湿潤性又は非吸収性になることを確保する。同様に、デバイスの構築に使用されるカバープレート又は層状材料は組み立ての前に処理されうる。微細加工デバイスの要素、部品又はサブアセンブリの表面上でのポリマーコーティングの形成は、要素、部品又はサブアセンブリがブランクから形成される前又は後に行われることができ、それゆえ、本願で使用されるときに、用語「要素」は部品が形成されるブランクを含むことが理解される。しかしながら、出願人は、完全に加工されたときでさえ、デバイスのイオン化もしくは活性化技術への暴露、特にプラズマへの暴露によって、モノマー分子及び活性化種が事前に形成されたチャンネル及び他の複雑な三次元構造に進入し、チャンネルの表面上で現場で重合されることができるであろうということを発見した。
【0030】
非湿潤性及び非吸収性を達成するためのプラズマ処理は、たとえば、CFなどの小分子ならびに種々の飽和及び不飽和炭化水素及びフルオロカーボン化合物を含むプラズマに表面を暴露することによって達成されうる(たとえば、"Plasma Polymerisation", Academic Press Inc. (London) Ltd. 1985を参照されたい)。長鎖の半及び完全フッ素化化合物も非湿潤性及び非吸収性を付与するために使用されうる。
【0031】
微細加工デバイスの表面上に非湿潤性又は非吸収性で撥水性のポリマーコーティング層又は表面改質体を形成するためのプラズマ重合又は表面改質を経験するいずれのモノマー化合物又はガスも適切に使用されうる。使用されうる適切なモノマーはプラズマ重合によって基材上に撥水性ポリマーコーティングを製造することができることが当業者に知られているものを含み、たとえば、反応性官能基を有する炭素質化合物、特に実質的に−CFを主とするパーフルオロ化合物(WO97/38801を参照)、ペルフルオロ化アルケン(Wangら、Chem Mater 1996, 2212-2214)、ハロゲン原子を場合により含む水素含有不飽和化合物又はペルハロゲン化有機化合物であって、少なくとも10個の炭素原子を含む化合物(WO98/58117を参照)、2個の二重結合を含む有機化合物(WO99/64662)、少なくとも5個の炭素原子の場合により置換されたアルキル鎖を有し、場合によりヘテロ原子で中断されている不飽和有機化合物(WO00/05000)、場合により置換されたアルキン(WO00/20130)、ポリエーテル置換アルケン(US6,482,531B)及び少なくとも1つのヘテロ原子を含むマクロサイクル化合物(US6,329,024B)を含み、そのすべての内容を参照により本明細書中に取り込む。
【0032】
1つの態様によると、本発明は、式(I)
【化1】

〔式中、R、R及びRは水素、アルキル、ハロアルキル又は、ハロによって置換されていてよいアリールから独立に選ばれ、Rは−X−R{Rはアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合、式−C(O)O−の基、式−C(O)O(CHY−(nは1〜10の整数であり、Yはスルホンアミド基である)の基、又は、−(O)(O)(CH−(Rはハロによって置換されていてよいアリールであり、pは0又は1であり、qは0又は1であり、tは0又は1〜10の整数であり、ただし、qが1である場合にはtは0以外である)の基である}である〕の化合物を含むプラズマに、微細加工デバイス又はその部品の少なくとも1つの表面を、その表面上にポリマー層を形成するために十分な時間、暴露することにより形成された、ポリマーコーティングを有する微細加工デバイス又はその部品を提供する。
【0033】
本願で使用されるときに、用語「ハロ」又は「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。特に好ましいハロ基はフルオロである。用語「アリール」はフェニル又はナフチルなどの芳香族環式基を指し、特に、フェニルを指す。用語「アルキル」は炭素原子の直鎖又は枝分かれ鎖を指し、適切には、20個以下の炭素原子の長さのものを指す。用語「アルケニル」は2〜20個の炭素原子を適切には有する直鎖もしくは枝分かれの不飽和鎖を指す。「ハロアルキル」は少なくとも1個のハロ置換基を含む、上記に定義したとおりのアルキル鎖を指す。
【0034】
、R、R及びRについての適切なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。アルキル鎖は直鎖であっても又は枝分かれ鎖であってもよく、環式部分を含んでもよい。
【0035】
に関して、アルキル鎖は適切な2個又はそれ以上の炭素原子を含み、適切には2〜20個の炭素原子を含み、好ましくは4〜12個の炭素原子を含む。
【0036】
、R及びRに関して、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有することが一般に好ましい。
【0037】
好ましくは、Rはハロアルキルであり、そしてより好ましくはペルハロアルキルであり、特に、C2m+1(mは1以上の整数であり、適切には1〜20であり、好ましくは4〜12であり、たとえば、4,6又は8である)のペルフルオロアルキル基である。
【0038】
、R及びRについての適切なアルキル基は1〜6個の炭素原子を有する。
【0039】
1つの態様において、R、R及びRのうちの少なくとも1つは水素である。特定の態様において、R、R及びRのすべては水素である。なおも更なる態様においては、しかしながら、Rはメチル又はプロピルなどのアルキル基である。
【0040】
Xが−C(O)O(CHY−の基である場合には、nは適切なスペーサー基を提供する整数である。特に、nは1〜5であり、好ましくは約2である。
【0041】
Yについての適切なスルホンアミド基は式−N(R)SO(Rは水素又はアルキルであり、たとえば、C1-4アルキルであり、特にメチル又はエチルである)のものを含む。
【0042】
1つの態様において、式(I)の化合物は式(II)
【化2】

(式中、Rは式(I)に関して上述に定義されたとおりである)の化合物である。
【0043】
式(II)の化合物において、式(I)のXは結合である。
【0044】
しかしながら、好ましい態様において、式(I)の化合物は式(III)
【化3】

(式中、n及びRは式(I)に関して上述に定義されたとおりであり、Rは水素、C1-10アルキル又はC1-10ハロアルキルである)のアクリレートである。特に、Rは水素又はC1-6アルキル、たとえば、メチルである。式(III)の化合物の特定の例は式(IV)
【化4】

(式中、Rは上述に定義されたとおりであり、特に、水素であり、そしてxは1〜9の整数であり、たとえば、4〜9であり、好ましくは7である)の化合物である。その場合、式(IV)の化合物は1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアシレートである。
【0045】
別の態様によると、微細加工デバイスの少なくとも表面を、1種以上の有機モノマー化合物を含み、そのうちの少なくとも1種の化合物が2個の二重結合を含むプラズマに、表面上にポリマー層を形成させるために十分な時間にわたって暴露することによってポリマーコーティングが形成される。
【0046】
適切には、1個より多くの二重結合を有する化合物は式(V)
【化5】

(R、R、R10、R11、R12及びR13は、すべて独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、又は、ハロによって置換されていてよいアリールから選ばれ、Zは橋掛け基である)の化合物を含む。
【0047】
式(V)の化合物での使用のための適切な橋掛け基Zの例はポリマー技術において知られているものである。特に、それは酸素原子が介在していてよい、置換されていてよいアルキル基を含む。橋掛け基Zのための適切な存在しうる置換基はペルハロアルキル基、特に、ペルフルオロアルキル基を含む。
【0048】
特に好ましい態様において、橋掛け基Zは1つ以上のアシルオキシ基又はエステル基を含む。特に、式Zの橋掛け基は下位の式(VI)
【化6】

(式中、nは1〜10の整数であり、適切には1〜3であり、各R14及びR15は水素、アルキル又はハロアルキルから独立に選ばれる)の基である。
【0049】
適切には、R、R、R10、R11、R12及びR13は、フルオロアルキルなどのハロアルキル、又は水素である。特に、それらはすべて水素である。
【0050】
適切には、式(V)の化合物は、少なくとも1つのハロアルキル基、好ましくはペルハロアルキル基を含む。
【0051】
式(V)の化合物の特定の例は、以下のもの
【化7】

(式中、R14及びR15は上記に定義されたとおりであるが、ただし、少なくとも1つは水素以外である)を含む。特定の例は式B
【化8】

の化合物を含む。
【0052】
さらなる態様において、ポリマーコーティングは、ヘテロ原子によって場合により中断されていてよい、少なくとも5個の炭素原子の、場合によって置換されていてよいアルキル鎖を含む、モノマー飽和有機化合物を含むプラズマに、微細加工デバイスの少なくとも表面を、該表面にポリマー層を形成させるために十分な時間にわたって暴露させることにより形成される。
【0053】
用語「飽和」は、本願において使用されるときに、モノマーが芳香環の一部でない2つの炭素原子間に多重結合(すなわち、二重結合又は三重結合)を含まないことを意味する。用語「ヘテロ原子」は酸素、硫黄、ケイ素又は窒素原子を含む。アルキル鎖が窒素原子によって中断されている場合には第二級又は第三級アミンを形成するように置換されるであろう。同様に、ケイ素は、適切に、たとえば、2つのアルコキシ基によって置換されるであろう。
【0054】
特に適切なモノマー有機化合物は式(VII)
【化9】

〔式中、R16、R17、R18、R19及びR20は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、又は、ハロによって置換されていてよいアリールから独立に選ばれ、R21はX−R22{R22はアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合、−C(O)O(CH2Y−(xは1〜10の整数であり、Yは結合又はスルホンアミド基である)の基、−(O)23(O)(CH−(R23はハロによって置換されていてよいアリールであり、pは0又は1であり、sは0又は1であり、tは0又は1〜10の整数であり、ただし、sが1の場合にはtは0以外である)の基である}である〕の化合物である。
【0055】
16、R17、R18、R19及びR20についての適切なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。アルキル鎖は直鎖であっても又は枝分かれ鎖であってもよく、環式部分を含んでもよく、たとえば、1〜6個の炭素原子を有する。
【0056】
22については、アルキル基は適切には1個又はそれ以上の炭素原子を含み、適切には1〜20個の炭素原子を含み、好ましくは6〜12個の炭素原子を含む。
【0057】
好ましくは、R22はハロアルキルであり、そしてより好ましくはペルハロアルキルであり、特に、C2z+1(zは1以上の整数であり、適切には1〜20であり、好ましくは6〜12であり、たとえば、8又は10である)のペルフルオロアルキル基である。
【0058】
Xが−C(O)O(CH2Y−の場合、yは適切なスペーサー基を提供する整数である。特に、yは1〜5であり、好ましくは約2である。
【0059】
Yのための適切なスルホンアミド基は式−N(R23)SO(R23は水素、アルキル又はハロアルキル、たとえば、C1-4アルキルであり、特にメチル又はエチルである)の基を含む。
【0060】
本発明の方法に使用されるモノマー化合物は、好ましくは、ハロゲンによって置換されていてよいC6-25アルカンを含み、特にペルハロアルカン、特に、ペルフルオロアルカンを含む。
【0061】
別の態様によると、ポリマーコーティングは微細加工デバイスの少なくとも1つの表面を、置換されていてよいアルキンを含むプラズマに、該表面上にポリマー層を形成させるために十分な時間にわたって暴露させることによりポリマーコーティングが形成される。
【0062】
適切には、本発明の方法において使用されるアルキン化合物は1個以上の炭素−炭素三重結合を含む炭素原子鎖を含む。この鎖は場合によってヘテロ原子によって中断されていてよく、環及び他の官能基を含む置換基を有してよい。直鎖又は枝分かれ鎖であってよい適切な鎖は2〜50個の炭素原子を有し、より適切には6〜18個の炭素原子を有する。それらは出発材料として使用されるモノマー中に存在しても、又は、プラズマの適用時に、たとえば、開環によってモノマー中に形成されてもよい。
【0063】
特に適切なモノマー有機化合物は式(VIII)
【化10】

(式中、R24は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は、ハロによって置換されていてよいアリールであり、
は結合又は橋掛け基であり、
25はアルキル、シクロアルキル、又は、ハロゲンによって置換されていてよいアリール基である)の化合物である。
【0064】
適切な橋掛け基Xは式−(CH−、−CO(CH−、−(CHO(CH−、−(CHN(R26)CH−、−(CHN(R26)SO−(sは0又は1〜20の整数であり、p及びqは1〜20の整数から独立に選ばれ、そしてR26は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである)を含む。R26のための特定のアルキル基はC1-6アルキル、特に、メチル及びエチルを含む。
【0065】
24がアルキル又はハロアルキルの場合には、それは一般に1〜6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0066】
24に適切なハロアルキル基はフルオロアルキル基を含む。アルキル鎖は直鎖であっても又は枝分かれ鎖であってもよく、環式部分を含んでもよい。しかしながら、好ましくはR24は水素である。
【0067】
好ましくは、R25はハロアルキルであり、そしてより好ましくはペルハロアルキルであり、特に、C2r+1(rは1以上の整数であり、適切には1〜20であり、好ましくは6〜12であり、たとえば、8又は10である)のペルフルオロアルキル基である。
【0068】
好ましい態様において、式(VIII)の化合物は式(IX)
【化11】

(式中、sは上記に定義されたとおりであり、R27はハロアルキルであり、特に、C13などのC6-12ペルフルオロ基である)の化合物である。
【0069】
別の好ましい態様において、式(VIII)の化合物は式(X)
【化12】

(式中、pは1〜20の整数であり、R27は上記の式(IX)に関して上記に定義されるとおりであり、特にC17基である)の化合物である。好ましくは、この場合、pは1〜6の整数であり、最も好ましくは約2である。
【0070】
式(I)の化合物の他の例は式(XI)
【化13】

(式中、pは上記に定義したとおりであるが、特に、1であり、qは上記に定義したとおりであるが、特に1であり、R27は式(IX)に関して定義したとおりであり、特にC13の基である)の化合物、または、
【0071】
式(XII)
【化14】

(式中、pは上記に定義したとおりであるが、特に1であり、qは上記に定義したとおりであるが、特に1であり、R26は上記に定義したとおりであり、特に水素であり、R27は式(IX)に関して定義したとおりであり、特にC15の基である)の化合物、または、
【0072】
式(XIII)
【化15】

(式中、pは上記に定義したとおりであるが、特に1であり、R26は上記に定義したとおりであり、特にエチルであり、R27は式(IX)に関して定義したとおりであり、特にC17の基である)の化合物である。
【0073】
別の態様において、この方法に使用されるアルキンモノマーは式(XIV)
【化16】

(式中、R28は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は、ハロによって置換されていてよいアリールであり、R29、R30及びR31はアルキル又はアルコキシから独立に選ばれ、特にC1-6アルキル又はアルコキシである)の化合物である。
【0074】
好ましいR28基は水素又はアルキルであり、特にC1-6アルキルである。
【0075】
好ましいR29、R30及びR31基はC1-6アルコキシであり、特にエトキシである。
【0076】
一般に、処理される物品は気相状態で堆積される材料とともにプラズマチャンバー内に配置され、チャンバー内でグロー放電が点火され、そして適切な電圧が印加され、そしてその電圧はパルス型であってよい。
【0077】
非湿潤性又は非吸収性ポリマーコーティングはパルス型プラズマ堆積及び連続波プラズマ堆積の条件の両方で製造することができるが、パルス型プラズマが好ましい。
【0078】
本願で使用するときに、表現「気相状態で」とは単独又は混合物としての気体又は蒸気、あるいは、エアロゾルを指す。
【0079】
本方法で処理される微細加工デバイスは向上した非湿潤性又は非吸収性を示し、低減した感度又は欠陥などの吸着に関連する問題を最小限にするようにマイクロ流体手順などの手順において有利に使用される。
【0080】
有効なやり方でプラズマ重合が起こる正確な条件はポリマー、微細加工デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリの特質などのファクターによって変化し、常用の方法及び/又は技術を用いて決定されるであろう。
【0081】
本発明の方法での使用に適するプラズマは高周波(Rf)、マイクロ波又は直流(DC)によって生じるプラズマなどの非平衡プラズマを含む。これらは当業界で知られたとおり、大気圧又は減圧で操作されうる。しかしながら、特に、高周波(Rf)で発生される。
【0082】
変型装置も気相プラズマを発生するために使用されうる。一般に、変型装置はプラズマを発生することができる容器又はプラズマチャンバーを含む。このような装置の特定の例は、たとえば、WO2005/089961又はWO02/28548に記載されているが、多くの他の慣用のプラズマ発生装置もある。
【0083】
プラズマチャンバー内に存在するガスはモノマー化合物単体の蒸気を含むことができるが、必要ならば、キャリアガス、特に、ヘリウム又はアルゴンなどの不活性ガスと組み合わされてもよい。特に、ヘリウムは、モノマーの分解を最少化することができるので、好ましいキャリアガスである。
【0084】
混合物として使用されるときには、モノマー蒸気のキャリアガスに対する相対量は当業界で慣用されている手順によって適切に決定される。添加されるモノマーの量は使用される特定のモノマーの特質、処理される基材の特質、プラズマチャンバーのサイズなどにある程度依存するであろう。一般に、慣用のチャンバーの場合には、モノマーは50〜250mg/分の量、たとえば、100〜150mg/分の速度で送られる。しかしながら、速度は選択される反応器のサイズ及び一度に処理される必要がある基材の数により変化し、それは要求される年間生産量及び投下資本などの考慮点によることは理解されるであろう。
【0085】
ヘリウムなどのキャリアガスは、適切には、たとえば、5〜90、たとえば、15〜30sccmの速度で一定速度で投与される。ある場合には、モノマー/キャリアガスの比は100:0〜1:100であり、たとえば、10:0〜1:100であり、特に約1:0〜1:10である。正確な比はプロセスによって要求される流速が確実に達成されるように選択されるであろう。
【0086】
ある場合には、予備的な連続出力プラズマを、チャンバー内に、たとえば、15秒〜10分間、たとえば、2〜10分間、発生させてもよい。これは表面予備処理工程として作用することができ、モノマーが表面に容易に付着し、それにより、重合を起こし、コーティングが表面上に「成長する」ことを確保する。予備処理工程はモノマーをチャンバー中に導入する前に、不活性ガスのみの存在下に行ってよい。
【0087】
その後、プラズマはパルス型プラズマに適切にスイッチされ、少なくともモノマーが存在しているときに重合を進行させる。
【0088】
すべての場合に、グロー放電は高周波電圧、たとえば、13.56MHzを印加することで適切に点火される。これは電極を用いて印加され、電極はチャンバーの内部にあっても又は外部にあってもよいが、より大きなチャンバーの場合には、一般に内部にある。
【0089】
適切には、気体、蒸気、又は気体混合物を少なくとも1標準立方センチメートル/分(sccm)の速度、好ましくは1〜100sccmの範囲で供給する。
【0090】
モノマー蒸気の場合には、これは、パルス電圧を印加している間に、モノマーの特質によって80〜300mg/分の速度、たとえば、約120mg/分で適切に供給される。しかしながら、工業規模での使用では、一定の合計モノマー送付量であることがより適切であり、その量は規定される処理時間で変化し、また、モノマーの特質及び要求される技術的効果にもよるであろう。
【0091】
慣用のいかなる方法を用いてプラズマチャンバー内に気体又は蒸気を輸送してもよい。たとえば、それはプラズマ領域に引き込まれ、注入され又はポンプ送りされてよい。特に、プラズマチャンバーを使用する際に、排気ポンプの使用によるチャンバー内の減圧の結果としてチャンバー中に気体又は蒸気が引き込まれることができ、又は、液体の取り扱いに一般的なように、チャンバー内にポンプ送りされ、スプレーされ、ドリップされ、静電イオン化されまたは注入されることができる。
【0092】
0.1〜400mtorr、適切には約10〜100mtorrの圧力に維持された、化合物、たとえば、式(I)の化合物の蒸気を用いて重合を適切に行う。
【0093】
印加される場は、連続場又はパルス場として印加され、適切には5〜500W、たとえば、20〜500Wの出力であり、適切には約100Wピーク出力である。使用される際に、パルスは非常に低い平均出力でシーケンスで適切に印加され、たとえば、オン時間:オフ時間の比が1:500〜1:1500のシーケンスで印加される。このようなシーケンスの特定の例は出力が20〜50μ秒、たとえば、約30μ秒の間、オンであり、1000μ秒〜30000μ秒、特に約20000μ秒の間、オフであるシーケンスである。このようにして得られる典型的な平均出力は0.01Wである。
【0094】
電場は適切には30秒〜90分間印加され、好ましくは5〜60分間印加され、それは式(I)の化合物の特質及び微細加工デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリなどの基材による。
【0095】
適切には、使用されるプラズマチャンバーは複数の微細加工デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリを収容することができるために十分な体積のものである。
【0096】
本発明によって微細加工デバイスを製造するのに特に適切な装置及び方法はWO2005/089961に記載されており、その内容を参照により本明細書中に取り込む。
【0097】
特に、このタイプの高体積のチャンバーを用いる際には、0.001〜500w/m、たとえば、0.001〜100w/m、適切には0.005〜0.5w/mの平均出力で、パルス場としての電圧によってプラズマが形成される。
【0098】
これらの条件は、大きなチャンバー、たとえば、プラズマ領域の体積が500cmを超え、たとえば、0.1m以上であり、たとえば、0.5m〜10mであり、適切には約1mであるチャンバーにおいて、良好な品質の均一なコーティングを堆積させるのに特に適切である。このように形成される層は良好な機械強度を有する。
【0099】
チャンバーの寸法は、処理されるべき特定の微細加工デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリを収容するように選択されるであろう。たとえば、概して立方形のチャンバーは幅広い用途に適切でありうるが、必要ならば、長い又は矩形のチャンバーを構成してよく、または、実際には筒型又は他のいかなる適切な形状であってもよい。
【0100】
チャンバーはシール可能な容器であってよく、それにより、バッチプロセスを可能とし、又は、微細加工デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリのためのインレット及びアウトレットを含んでよく、それにより、インラインシステムとして連続プロセスにおいて使用されうる。特に、後者の場合には、チャンバー内でプラズマ放電を形成するのに必要な圧力条件は、たとえば、「ホイッスリングリーク」を有するデバイスで慣用されているような高容積ポンプを用いて維持される。しかしながら、微細加工デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリを大気圧又はその近傍で処理し、「ホイッスリングリーク」の必要性をなくすことも可能である。
【0101】
さらなる態様において、本発明はマイクロ流体又はナノ流体デバイスをとおして液体の易流動性を向上させる方法であって、少なくとも、チャンネル又はウェルの内部表面などの液体と接触する表面がプラズマ処理などのイオン化もしくは活性化技術によって形成された非湿潤性又は非吸収性ポリマーコーティング又は表面改質物を含み、表面エネルギーが15mNm-1であるマイクロ流体もしくはナノ流体デバイスを用いることを含む方法を提供する。
【0102】
適切には、マイクロ流体もしくはナノ流体デバイス又はサブアセンブリをプラズマ堆積チャンバー内に配置し、グロー放電を前記チャンバー内で点火し、パルス場として電圧を印加する。
【0103】
本方法における使用のための適切なモノマー及び反応条件は上記のとおりである。
【実施例】
【0104】
例1
透明な基材上のチャンネル群によって相互に連結された一連のウェルを含む完全に構成されたマイクロ流体デバイスを約300リットルの処理体積のプラズマチャンバーに入れた。マスフローコントローラ及び/又は液体マスフローメータ及びミキシングインジェクタ又はモノマーリザーバを必要に応じて介して、チャンバーを、要求される気体及び/又は蒸気のサプライに連結した。
【0105】
3〜10mtorrのベース圧にチャンバーを排気し、その後、ヘリウムを20sccmでチャンバー内に80mtorrの圧力になるまで入れた。その後、連続出力プラズマを、300Wで13.56MHzのRFを用いて4分間生じさせた。
【0106】
この期間の後に、下記式
【化17】

の1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアシレート(cas#27905−45−9)をチャンバー内に120ミリグラム/分の速度で入れ、プラズマを、40分間、ピーク出力100wで30μ秒のオン時間及び20ミリ秒のオフ時間のパルス型プラズマに切り替えた。40分間の完了時に、処理ガス及び蒸気とともにプラズマ出力をオフにし、チャンバーをベース圧に排気して戻した。その後、チャンバーを大気圧にベントし、デバイスを取り出した。
【0107】
チャンネル及びウェルを含むデバイスを非湿潤性又は非吸収性ポリマー層によって被覆し、それにより、液体を表面に吸着することを防止し、それで、デバイスをとおした液体サンプルの易流動性を向上させたことが分かった。
【0108】
このようにして得られたデバイスを、当業界で慣用されているように、蛍光シグナル装置を用いて酵素アッセイの動態検査に用いた。同様の検査をバルクサンプルで同様の方法を用いて行った。複数検査の結果は同等の性能を示した。界面の問題及び蒸発の問題は小型化の形態で回避した。
【0109】
蛍光酵素抑制検査も、上記のように調製した小型化デバイス及びバルク手順の両方で行った。ここでも、バルク及び小型化デバイスの両方で同等の結果を得た。
【0110】
上記のとおりに調製したマイクロ流体デバイスを用いて得られた結果は信頼性があり、正確な結果であることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細加工デバイス又はその部品から選ばれる装置であって、その少なくとも1つの表面は、イオン化もしくは活性化技術によって表面上に形成された、均一の非湿潤性もしくは非吸収性コーティングもしくは表面改質体を有し、表面エネルギー値を15mNm−1未満としている、装置。
【請求項2】
前記イオン化もしくは活性化技術はプラズマ処理である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスであり、前記表面は前記デバイスを使用する際に液体と接触する表面である、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリをプラズマに暴露し、それにより、表面の改質を行い、その表面に非湿潤性もしくは非吸収性を付与することで形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記プラズマはプラズマ重合を経て非湿潤性もしくは非吸収性ポリマーを形成するモノマー化合物を含み、かつ、前記デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリはその表面上に均一なポリマー層を形成させるために十分な時間、暴露されたものである、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリをプラズマ堆積チャンバー内でパルス型プラズマに暴露させたものである、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記モノマー化合物は式(I)
【化1】

〔式中、R、R及びRは水素、アルキル、ハロアルキル又は、ハロによって置換されていてよいアリールから独立に選ばれ、Rは−X−R{Rはアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合、式−C(O)O−の基、式−C(O)O(CHY−(nは1〜10の整数であり、Yはスルホンアミド基である)の基、又は、−(O)(O)(CH−(Rはハロによって置換されていてよいアリールであり、pは0又は1であり、qは0又は1であり、tは0又は1〜10の整数であり、ただし、qが1である場合にはtは0以外である)の基である}である〕の化合物である、請求項5又は6記載の装置。
【請求項8】
前記式(I)の化合物は式(II)、
【化2】

(式中、Rは請求項5に定義されたとおり)の化合物であり、又は、式(III)
【化3】

(式中、n及びRは請求項5に定義されたとおりであり、Rは水素、C1-10アルキル又はC1-10ハロアルキルである)の化合物である、請求項7記載の装置。
【請求項9】
式(I)の化合物は式(III)の化合物である、請求項8記載の装置。
【請求項10】
式(III)の化合物は式(IV)
【化4】

(式中、Rは請求項6に定義されたとおりであり、xは1〜9の整数である)の化合物である、請求項9記載の装置。
【請求項11】
式(IV)の化合物は1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアシレートである、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記モノマー化合物は式(V)
【化5】

(式中、R、R、R10、R11、R12及びR13は、すべて独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、又は、ハロによって置換されていてよいアリールから選ばれ、Zは橋掛け基である)の化合物である、請求項5又は6記載の装置。
【請求項13】
前記モノマー化合物は式(VII)
【化6】

〔式中、R16、R17、R18、R19及びR20は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、又は、ハロによって置換されていてよいアリールから独立に選ばれ、R21はX−R22{R22はアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合、−C(O)O(CH2Y−(xは1〜10の整数であり、Yは結合又はスルホンアミド基である)の基、−(O)23(O)(CH−(R23はハロによって置換されていてよいアリールであり、pは0又は1であり、sは0又は1であり、tは0又は1〜10の整数であり、ただし、sが1の場合にはtは0以外である)の基である}である〕の化合物である、請求項5又は6記載の装置。
【請求項14】
前記モノマー化合物は式(VIII)
【化7】

(式中、R24は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は、ハロによって置換されていてよいアリールであり、
は結合又は橋掛け基であり、
25はアルキル、シクロアルキル、又は、ハロゲンによって置換されていてよいアリール基である)の化合物である、請求項5又は6記載の装置。
【請求項15】
マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスをとおして液体の易流動性を向上させるための方法であって、前記マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスの少なくとも液体接触表面が、イオン化もしくは活性化技術によってその上に形成された、均一の非湿潤性もしくは非吸収性コーティングもしくは表面改質体が存在することによって、15mNm-1未満の表面エネルギーを有する、マイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスを用いることを含む、方法。
【請求項16】
前記液体接触表面は、該表面上にポリマー層を形成させるに十分な時間、気相状態で、式(I)
【化8】

〔式中、R、R及びRは水素、アルキル、ハロアルキル又は、ハロによって置換されていてよいアリールから独立に選ばれ、Rは−X−R{Rはアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合、式−C(O)O−の基、式−C(O)O(CHY−(nは1〜10の整数であり、Yはスルホンアミド基である)の基、又は、−(O)(O)(CH−(Rはハロによって置換されていてよいアリールであり、pは0又は1であり、qは0又は1であり、tは0又は1〜10の整数であり、ただし、qが1である場合にはtは0以外である)の基である}である〕の化合物を含むパルス型プラズマに対して前記表面を暴露させることで形成されるポリマーコーティングをその表面上に堆積している、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリをプラズマ堆積チャンバー中に配置し、グロー放電を前記チャンバー内で点火し、そして電圧をパルス場として印加する、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
印加される電圧は5〜500Wの出力での電圧である、請求項15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記電圧はオン時間:オフ時間の比が1:500〜1:1500であるシーケンスでパルス印加される、請求項15〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記電圧は出力が20〜50μs、オンであり、1000μs〜30000μs、オフであるシーケンスでパルス印加される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記電圧は30秒間から90分間、パルス場として印加される、請求項15〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記電圧は5〜60分間、パルス場として印加される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
予備工程において、連続出力プラズマを前記デバイス又はその要素、部品もしくはサブアセンブリに印加する、請求項15〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記予備工程を不活性ガスの存在下に行う、請求項23記載の方法。
【請求項25】
パルス型電圧を印加しながら、80〜300mg/分の速度で、気相状態の式(I)の化合物をプラズマ中に供給する、請求項15〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記プラズマを0.001〜500w/mの平均出力での電圧で形成する、請求項15〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記プラズマを0.001〜100w/mの平均出力での電圧で形成する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記プラズマを0.005〜0.5w/mの平均出力での電圧で形成する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記式(I)の化合物は式(II)、
【化9】

(式中、Rは請求項5に定義されたとおり)の化合物であり、又は、式(III)
【化10】

(式中、n及びRは請求項5に定義されたとおりであり、Rは水素、C1-10アルキル又はC1-10ハロアルキルである)の化合物である、請求項15〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
式(I)の化合物は式(III)の化合物である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
式(III)の化合物は式(IV)
【化11】

(式中、Rは請求項9に定義されたとおりであり、xは1〜9の整数である)の化合物である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
式(IV)の化合物は1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
実施例の参照によって実質的に記載された微細加工デバイス又はその部品。
【請求項34】
実施例の参照によって実質的に記載されたマイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスをとおして流体の易流動性を向上させるための方法。

【公表番号】特表2010−508162(P2010−508162A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533932(P2009−533932)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003969
【国際公開番号】WO2008/053150
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(508216699)ピーツーアイ リミティド (12)
【Fターム(参考)】