説明

新規TFIIHサブユニット

【課題】哺乳類に於けるDNA修復機構の解明及び関連疾患の治療法、診断法の提供。
【解決手段】ヒトTFIIH 8kDaサブユニットおよび関連する配列をコード化している核酸配列に関する。前記核酸は、TFIIHサブユニットを産生するための方法に使用し得る、また転写およびNER欠乏(特に裂毛症(TTD)のいくつかの形態における)を診断する又は治療するための方法に使用し得る。hTFB5/TTDA遺伝子およびコード化されたタンパク質は、先天性のNER障害を治療することを対象とする、治療の又は遺伝子治療の製品のために使用でき、またTTDAに特異的な分子プローブまたは抗体を用いて、哺乳類の基礎の転写、NERおよびTCR活性における障害を診断する方法に使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、細胞生物学および医学の分野に関し、特に遺伝子転写およびDNA修復系に、更に特に哺乳類および哺乳類細胞における基礎の及び活性化した転写、ヌクレオチド除去修復(NER)および転写共役修復システム(transcription coupled repair systems)における欠陥(defects)の検出および治療に関する。
【発明の背景】
【0002】
TFIIHは、複数コンポーネント性の基礎転写因子複合体である。転写因子IIHは、転写の間に様々な因子と相互作用し、それには核内受容体、組織特異的な転写因子、染色質再構築複合体(chromatin remodeling complexes)およびRNAが含まれる、このことはRNAポリメラーゼIおよびIIに関する転写開始における必須の役割に加え、調節因子(regulatory factor)としても関与することを示唆している。現在まで、少なくとも9つのサブユニットが、哺乳類におけるTFIIHホロ酵素複合体内で同定されている。様々な酵素活性(DNA修復、ヘリカーゼ、およびサイクリン依存性キナーゼ活性を含む)が報告されている。TFIIH複合体の9つの既知のサブユニットを、表2に要約する。
【0003】
TFIIHは、RNAポリメラーゼI(リボソームRNAの)およびRNAポリメラーゼII(メッセンジャーRNA)の転写に関与する。TFIIHは、プロモーター融解(promoter melting)、二重螺旋を形成するDNA鎖の分離、および/またはプロモータークリアランス(即ち、pol IIに関して、開始複合体(initiation complex)を自由にして伸長モードにする)に必須である。驚くことに、TFIIHは、傷害されたDNA鋳型のヌクレオチド除去修復(NER;Nucleotide Excision Repair)のコア反応にも必須である。加えて、TFIIHは、NERのサブ経路(DNAにおいて活発に転写される領域の優先的な修復);いわゆる転写共役DNA修復(TCR)プロセス(これはNER型の傷害の修復に限定されるが、酸化的なDNA傷害のTCRをも含む)において重要な役割を有していると思われる。
【0004】
XPB、XPD、p62、p52、p44、およびp34サブユニットは、TFIIH転写機構の「コア」を構成すると考えられる。2つの最大のTFIIHサブユニット、XPBおよびXPDは、プロモーター融解に重要な逆の極性のATP依存性のヘリカーゼである。2つのより小さいサブユニットは、ジンクフィンガードメインの可能性のあるドメインを有している。p44およびp34サブユニットは明確な(defined)酵素活性を有さないにもかかわらず、それらのジンクフィンガー構造は、それらが可溶性の転写因子との相互作用を仲介し得るDNA結合タンパク質であろうことを示唆する。TFIIHは、プレ開始複合体(基礎転写因子および転写された遺伝子のプロモータ上のポリメラーゼの会合体)への取り込みに関してTFIIEに依存していると思われる。Cdk−活性化キナーゼ(CAK) サブ複合体(subcomplex)は、サブユニット Cdk7、サイクリンH、およびMAT1を含み、いくつかのサイクリン依存性キナーゼ(Cdks)をリン酸化する。付随するキナーゼ活性(TFIIKとも称される)は、RNApol II最大サブユニットのC末端のドメインをリン酸化できる。セリンおよびスレオニンでの、このリン酸化は、DNA転写に、即ち、RNA鎖の伸長に必須である。
【0005】
TFIIHは、中心的な役割のほか、RNAポリメラーゼIおよびII転写において作用し、ヌクレオチド除去修復(NER)および転写共役修復(TCR)にも関与する(Egly, J.M. FEBS Lett. 498, 124−128 (2001))。NERは、DNA螺旋歪曲傷害(DNA helix−distorting injuries)の広範囲(紫外線(UV)誘発性の傷害を含む)を除去する(Hoeijmakers, J.H., Nature 411, 366−374, 2001)。TCRは、転写された鎖からの、古典的なNER傷害および酸化的なDNA傷害の両方を排除する修復経路である(de Boer, J. et al., Science 296, 1276−1279, 2002およびLe Page, F. et al., Cell 101, 159−171, 2000 )。
【0006】
修復/転写因子TFIIHサブユニット中のいくつかの遺伝性の変異は、人間(man)における3つの光過敏性症候群(photo−hypersensitive syndromes)と関連する、即ち:1)色素性乾皮症(XP)、2)XP混合型のコケーン症候群(CS)、神経発生障害および3)CS類似の脆弱毛病(brittle hair disease)裂毛症(trichothiodystrohpy)(TTD)( Lehmann, A.R., Genes Dev 15, 15−23, 2001 and Bootsma et al., in Nucleotide Excision Repair Syndromes: Xeroderma Pigmentosum, Cockayne Syndromes, And Trichothiodystrophy., 245−274, New york, 1998 )(表1に要約する)である。XP患者の光感受性の特性は欠陥のあるNERによって主に生じ、一方CSおよびTTD特性は影響を受けたTCRおよび転写機能に起因し、これは早発の又は増強した加齢の症状または表現型を生じる。
【0007】
裂毛症(TTD;Trichothiodystrophy)は、硫黄欠乏性の脆弱毛(brittle hair)および魚鱗癬(ichthyosis)により特徴づけられる稀な常染色体劣性障害である(Itin et al. 2001 )。毛幹(Hair shafts)は長軸方向に小さい線維へと分割される、この脆性は毛のタンパク質におけるシステイン/シスチンのレベル(正常な個体におけるレベルの15から50%である)と関連する。その毛は、偏光下で視認できる特徴的な「トラの尾状(tiger−tail)」バンドを有する。前記患者は、たち耳(protruding ears)および引っ込んだ顎(receding chin)を伴う、異常な顔面の外観をしばしば有している。精神的な能力は、低正常(low normal)から重度の遅延までの範囲にわたる。いくつかの前記疾病のカテゴリーは、UVダメージへの細胞応答の基準(basis)および影響された遺伝子において認識できる。
【0008】
細胞融合実験による相補性試験からの証拠により、TTD表現型が2つの別々の遺伝子の変異により生じ得ることを同定した、即ち:ERCC2/XPDおよびERCC3/XPBであって、これらは転写/修復因子 TFIIHの2つのヘリカーゼサブユニットをコード化する(Broughton, B.C. et al., Hum. Mol. Genet. 10, 2539−2547, 2001, Botta, E. et al., Am. J. Hum. Genet. 63, 1036−1048, 1998, Weeda, G. et al. Am. J. Hum. Genet. 60, 320−329, 1997, Graham, J.M., Jr. et al. Am. J. Hum. Genet. 69, 291−300, 2001 )。XPグループ BおよびDの他に、TTD−Aと称される例外的な裂毛症相補性グループがStefanini等により同定された(Am J Hum Genet 53, 817−21, 1993 )。第三の、光感受性TTDの原因である未同定遺伝子(Vermeulen, W. et al., Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 59, 317−329, 1994 )は、TTDAと称され、同様にTFIIHと関連すると思われる(Vermeulen, W. et al., Nat. Genet. 26, 307−13, 2000 )。表1に、全ての既知のTTD−A症例(2つの新たなグループAファミリーを含む)の臨床および細胞の特性を要約する。TTD−A患者からの細胞は、低いUV誘発性のDNA修復合成(予定外のDNA合成(UDS)、細胞周期のG1−、S−、およびG2期を含む完全な細胞周期を通して生じる非複製的なDNA合成)にもかかわらず、僅か軽度にUV感受性である。意外なことに、DNA修復欠乏性のTTD相補性グループAの第三形態において、9つのTFIIHコード化しているサブユニットが変異を保持していなく;代わりに全体の複合体の定常状態レベルが重度に減少していた。ヒトにおける363TTD、CSおよびXP変異の包括的な最新のリストは、www.xpmutations.org.で見つけることが可能である。
【0009】
以前、発明者は、高度に精製されたTFIIHがTTD−A細胞のNER欠陥を修正したが、TTD−Aにおいて何れの9つのTFIIH遺伝子も変異していないことを見出した。そのうえ、TTD−A細胞から分離されたTFIIHは、正常なインビトロ酵素活性を示し、またマイクロインジェクション後にTTD−A細胞におけるNER欠陥を一過性に回復させた、このことはTFIIHが質的に影響されていなかったか又は僅か軽度に影響されていたことを示唆している。
【0010】
本発明は、TFIIHの新規な8kDaサブユニットをコード化し、ヌクレオチド除去修復(NER)欠乏、転写共役修復(TCR)欠乏およびDNA転写欠乏(特に裂毛症における)の診断または治療に使用し得る核酸を提供する。
【発明の詳細記述】
【0011】
本明細書に我々は、ヒトTFB5の相同分子種(ortholog)の同定及びそのヒトTFIIHとの会合を記載する。最近、新規の第10番目のTFIIHサブユニット(TFB5)が酵母において同定された。酵母の核抽出物(nuclear extracts)からの、プロモーターに相互作用したRNAポリメラーゼIIプレ開始複合体の定量的なプロテオームスクリーニングで、新規の非常に小さい72アミノ酸(〜8kDa)のタンパク質が同定され、それは酵母TFIIHのコアコンポーネントであることが示され、TFB5と命名された(Ranish, J.A. et al., Nat. Genet. 2004 )。このタンパク質は、例外的に小さいサイズが原因で、TFIIHの以前の分析では見落とされていた。
【0012】
データベース スクリーニングにより、推定されたヒト相同体を含む、いくつかのTFB5の相同分子種を同定した(図5)。ヒトTFB5遺伝子は、71アミノ酸ポリペプチドをコード化しており、その推定された分子量は8kDaである(p8と称される)。TFB5は、ヒトおよび酵母間で25%および56%類似度の配列同一性を有する、高度に保存されたものと思われた。各TFIIHサブユニットの強い進化上の保存性(表2および図5)に加え、前記複合体の全体的な構造上の相同性(Schultz, P. et al., Cell 102, 599−607, 2000 およびChang, W.H. & Kornberg, R.D., Cell 102, 609−613, 2000 )は、ヒトTFB5も哺乳類のTFIIHの一部であるかどうか、またそれが謎の(enigmatic)TTDA因子であるかどうかについて我々が調査するきっかけとなった。
【0013】
hTFB5 cDNAのマイクロインジェクションがTTD−A細胞のDNA修復欠陥を修正し、また3つの機能的な不活性化変異が3つの無関係のTTD−Aファミリーにおいて同定された。このTTDA遺伝子産物はTFIIHのレベルの制御に作用することが示された、またそれはインビボでTFIIH複合体を有意に安定化する。TTD−Aに関係するTFIIHの新しい進化的に保存されたサブユニットの同定は、転写におけるTFIIH機能不全、DNA修復系(特にNERおよびTCR系における)並びにNERおよびTCR機能不全に関連するヒト疾患を診断する及び治療するための重要な解決策を提供する。
【0014】
第一側面において、本発明は、TFIIH安定化活性および/またはNER促進活性を有するポリペプチドをコード化している配列を含む核酸分子に関する。前記核酸分子は、好ましくは以下からなる群から選択される:
(a)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも50、60、70、80、90、95、98または99%同一性を有するアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドをコード化している核酸分子;
(b)核酸分子であって、その相補鎖が、配列番号2に記載されたヌクレオチド配列を有している核酸分子とハイブリダイズする核酸分子;および
(c)核酸分子であって、その配列が、遺伝暗号の縮重によって(a)または(b)の核酸分子とは異なる核酸分子。
【0015】
TFIIH安定化および/またはNER促進活性を有するポリペプチドは、本明細書において、機能的なアッセイ(好ましくは実施例4に提供されるアッセイ)で決定されるTFIIHを安定化する能力を有するポリペプチド、および/または、機能的なNERアッセイおよび/またはTCRサブ経路に特異的なアッセイ(好ましくは実施例3に提供されるアッセイ)で決定されるNER促進活性が活性状態であるポリペプチドを意味する。更なるTFIIH安定化および/またはNER促進化の活性に関する機能的アッセイは、TTD−A細胞(即ち、TTD−A相補性グループに属するTTD細胞)の相補性によって提供される。TFIIH安定化および/またはNER促進化を伴うポリペプチドは、TTD−A細胞のDNA修復欠陥を修正する能力を有するものである(例えば、前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドを発現する能力を有する核酸構築物のマイクロインジェクションによって)。
【0016】
「配列同一性(Sequence identity)」は、本明細書において、2以上のアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列間の又は2以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の(前記配列を比較することによって決定される)関係(relationship)と定義される。また当該技術において、「同一性(identity)」は、アミノ酸または核酸配列の間の、場合に応じて(as the case may be)、かかる配列のストリング(strings)間の適合(match)により決定される、配列関連性(sequence relatedness)の程度を意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似度(Similarity)」は、アミノ酸配列と、その1つのポリペプチドから第二のポリペプチドの配列への保存されたアミノ酸置換とを比較することにより決定される。「同一性」および「類似度」は、文献(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heine, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991;およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48:1073 (1988))に記載された方法を含む既知の方法により容易に計算することが可能であるが、それら方法に限定されない。
【0017】
同一性を決定するための好適な方法が設計され、試験された配列間の最大適合(largest match)が算出される。同一性および類似度を決定するための方法は、公に利用可能なコンピュータ・プログラムに体系化(codified)されている。2つの配列間の同一性および類似度を決定するための好適なコンピュータプログラムは、例えばGCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12 (1): 387 (1984))、BestFit、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Mol. Biol. 215:403−410 (1990))を含む。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の供給元から公に利用可能である(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215:403−410 (1990))。また、周知のSmith Watermanアルゴリズムを、同一性を決定するために使用してもよい。
【0018】
ポリペプチド配列比較のための好適なパラメータは、以下に記載するものを含む、即ち:アルゴリズム:Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443−453 (1970); 比較マトリックス:Hentikoff and Hentikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:10915−10919 (1992)からのBLOSSUM62; ギャップペナルティー:12; およびギャップ長ペナルティー:4である。これらのパラメータに関して有用なプログラムは、ジェネティックス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group, located in Madison, WI)から、「0ギャップ」プログラムとして公に利用可能である。上述のパラメータは、アミノ酸比較に関する初期設定パラメータ(default parameter)である(エンドギャップに対してペナルティーなしの基準に従う)。
核酸配列比較のための好適なパラメータは、以下に記載するものを含む、即ち:アルゴリズム:Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443−453 (1970); 比較マトリックス:適合(matches)=+10、非適合(mismatch)=0; ギャップペナルティー:50; ギャップ長ペナルティー:3である。ジェネティックス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group, located in Madison, WI)から、ギャッププログラムとして公に利用可能である。上記の記載は、核酸比較のための初期設定パラメータである。
【0019】
アミノ酸類似度の程度を決定することにおいて、随意に、当業者は、当業者には明確な所謂「保存された」アミノ酸置換をも考慮し得る。保存されたアミノ酸置換は、類似する側鎖を有する残基の可換性(interchangeability)を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;脂肪族―ヒドロキシルの側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニン;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミン;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジン;酸性側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン酸 およびグルタミン酸並びに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好適な保存されたアミノ酸置換の群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。本明細書中に開示される、アミノ酸配列の置換変異体(Substitutional variants)は、開示された配列において少なくとも1残基が除去され、その場所に異なる1残基が挿入されるものである。好ましくは、アミノ酸変化は保存性の変化である。天然のアミノ酸の各々に対する、好適な保存性の置換は、次の通りである、即ち:Alaに対してser;Argに対してlys;Asnに対してglnまたはhis;Aspに対してglu;Cysに対してserまたはala;Glnに対してasn;Gluに対してasp;Glyに対してpro;Hisに対してasnまたはgln;Ileに対してleuまたはval;Leuに対してileまたはval;Lysに対してarg;glnまたはglu;Metに対してleuまたはile;Pheに対してmet, leuまたはtyr;Serに対してthr;Thrに対してser;Trpに対してtyr;Tyrに対してtrpまたはphe;および,Valに対してileまたはleuである。
【0020】
TFIIH安定化活性および/またはNER促進活性を有するポリペプチドをコード化している核酸配列は、配列番号2のヌクレオチド配列(の相補鎖と)と、好ましくは中等度の条件下、より好ましくは厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブダイズする能力により規定されてもよい。厳密なハイブリダイゼーション条件は、本明細書中で次の条件として規定される、即ち、少なくとも約25、好ましくは約50ヌクレオチド、75または100および最も好ましくは約200以上のヌクレオチドの核酸配列を、約1Mの塩(salt)、好ましくは6xSSCを含む溶液中で又は匹敵するイオン強度を有する任意の他の溶液中で約65℃の温度でハイブリダイズさせ、約0,1M以下の塩、好ましくは0,2xSSCを含む溶液中で又は匹敵するイオン強度を有する任意の他の溶液中で65℃で洗浄する条件である。好ましくはハイブリダイゼーションは、一晩、即ち、少なくとも10時間実施され、好ましくは洗浄は、少なくとも1時間、少なくとも洗浄溶液を2回交換して実施される。通常これらの条件は、約90%以上の配列同一性を有している配列の特異的なハイブリダイゼーションを可能とする。中等度(Moderate)の条件は、本明細書中で次の条件として規定される、即ち、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは約200以上のヌクレオチドの核酸配列を、約1Mの塩、好ましくは6xSSCを含む溶液中で又は匹敵するイオン強度を有する任意の他の溶液中で約45℃の温度でハイブリダイズさせ、約1Mの塩(salt)、好ましくは6xSSCを含む溶液中又は匹敵するイオン強度を有する任意の他の溶液中室温で洗浄する条件である。好ましくはハイブリダイゼーションは、一晩、即ち、少なくとも10時間実施され、好ましくは洗浄は、少なくとも1時間、少なくとも洗浄溶液を2回交換して実施される。通常これらの条件は、50%までの配列同一性を有している配列の特異的なハイブリダイゼーションを可能とする。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件を、50%および99%間で同一性が変化している配列を特異的に同定するために修飾することができる。
【0021】
本発明の核酸分子は、好ましくはTFIIH安定化および/またはNER促進活性を有するポリペプチド(該ポリペプチドは、哺乳類の、好ましくはヒトのTTDAタンパク質またはマウスのTTDAタンパク質である)をコード化している。
【0022】
更なる側面において、本発明は、配列番号2に記載されるヌクレオチド配列又はその相補配列(complement sequence)と少なくとも90%を有するヌクレオチド配列の一部を含む核酸プローブに関する。好ましくは、前記プローブは、配列番号2(ポジション1から331まで、より好ましくはポジション60から275まで)に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも90%を有するヌクレオチド配列の一部を含む。核酸プローブを使用して、TFIIH安定化およびNER促進活性を有するポリペプチドをコード化している核酸が分析される。かかる分析は、TTDAをコード化している配列に関する被験者の遺伝子型(genotype)の分析(例えば、特定の変異または対立遺伝子の存在または非存在)を含んでいてもよく、或いはTTDAをコード化している核酸の発現の分析が関与するものであってもよい。前記被験者は、哺乳類であってもよく、好ましくはヒトである。かかる分析は、診断上の目的に関して実施し得る(以下を参照のこと)。核酸プローブは、それゆえハイブリダイゼーションプローブとして、配列決定または増幅のためのプライマーとして使用するための及びオリゴヌクレオチド・ライゲーション(−アンプリフィケーション)アッセイ(例えば、US 4,988,617; US 5,876,924; WO 96/15271;およびWO 97/45559を参照されたい)または一重鎖構造多形アッセイ(例えば、Orita et al., 1989, Genomics 5: 874−879を参照されたい)などの技術に使用するためのポリおよびオリゴヌクレオチドを含む。更なる核酸分析テクニックに関して、SambrookおよびRussell(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY )が参照される。好適な核酸プローブは、少なくとも70、80または90%の同一性を配列番号2に記載されたヌクレオチド配列に対して有するヌクレオチド配列の、少なくとも10、12、14、16または20の近接する(contiguous)ヌクレオチドを含むプローブである(この配列番号2は、ヒトhTFB5/TTDA遺伝子の全体のコード配列にわたるものである)。従って、配列番号2またはゲノムのTTDA遺伝子座(配列番号3、4、及び5)に由来するプローブを使用して、エキソン及びイントロン両方を並びにTTDA/hTFB5遺伝子発現の制御に関与し得る転写単位から上流または下流の非コード配列を分析し得る。核酸のある範囲(a stretch)を含む本発明のプローブは、固体の支持体(例えば、DNA(マイクロ)アレイであるが、これに限定されない)に有利に物理的に連結(linked)されてもよい。
【0023】
別の側面において、本発明は、上記に規定した核酸分子またはプローブを含むベクターに関する。好ましくは前記ベクターは、適切な宿主において前記ベクターの増殖を保証する複製起点(または自律的な複製配列)を含む、複製的なベクター(a replicative vector)である。或いは、前記ベクターは、例えば相同的組換え、ランダムな統合または別の手段を介して、宿主細胞のゲノムに統合される能力を有する。
【0024】
特に好適なベクターは発現ベクターであって、上記に規定した、TFIIH安定化および/またはNER促進活性を有するポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列が、前記ベクターのための宿主細胞においてコード配列の発現に方向付ける能力を有するプロモーターに、動作可能に連結される発現ベクターである。
【0025】
本明細書中の「プロモーター」の用語は核酸断片を意味し、該断片は、機能して1以上の遺伝子の転写をコントロールし、前記遺伝子の転写開始部位の転写の方向に対し上流に配置され、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位および任意の他のDNA配列(転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質の結合部位、および当業者に既知の、前記プロモーターからの転写量を直接的または間接的に作用して制御するヌクレオチドの任意の他の配列を含むが、それらに限定されない)の存在により構造的に同定される。「構成的」プロモーターは、大抵の(most)生理的な及び発生(developmental)の条件下で活性があるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、生理的な又は発生の状態に依存して制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、分化した細胞/組織の特定のタイプにおいてのみ活性がある。
【0026】
発現ベクターにより、本発明のTFIIH安定化および/またはNER促進活性を有するポリペプチドを調製し得る、この際、組換え技術が用いられ、この技術により所望のポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列が適切な細胞(培養された細胞または多細胞生物の細胞)において発現される、この技術は、Ausubel(Ausubel ed., “Current Protocols in Molecular Biology”, Greene Publishing and Wiley−Interscience, New York (2003))並びにSambrookおよびRussell(2001, 上記)などに記載され;その双方は本明細書中に参照によりその全体が援用される。また、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. 82:488(部位特異的突然変異誘発を記載している)およびRoberts et al. (1987) Nature 328:731−734またはWells, J.A., et al. (1985) Gene 34:315 (カセット突然変異誘発を記載している)を参照されたい。
【0027】
典型的には、所望のポリペプチドをコード化している核酸は、発現ベクターに使用される。「発現ベクター」の用語は、ヌクレオチド配列であって、かかる配列に適合性の宿主において、遺伝子の発現に影響する能力を有するヌクレオチド配列を一般的に意味する。典型的には、これらの発現ベクターは、少なくとも適切なプロモーター配列および随意に転写終結シグナル(transcription termination signals)を含む。効果的な発現に必要な又は役立つ付加的因子も、本明細書中に記載のとおり使用できる。ポリペプチドをコード化しているDNAは、インビトロ細胞培養での導入および発現が可能なDNA構築物に導入される。具体的には、DNA構築物は、原核生物の宿主(例えば、E.Coliなどの細菌)における複製に関して適切なものであるか、又は培養された哺乳類の、植物の、昆虫の(例えばSf9)、酵母の、菌類の若しくは他の真核生物の細胞株に導入できるものである。
【0028】
特定の宿主に導入するために調製されるDNA構築物は、複製システム(宿主により認識される)、意図するDNAセグメント(所望のポリペプチドをコード化している)、並びに転写の開始および終結の制御配列(ポリペプチドコード化セグメントに動作可能に連結される)を典型的に含む。DNAセグメントが「動作可能に連結される」とは、それが別のDNAセグメントと機能的に関連付けられ配置された場合である。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列に動作可能に連結されるとは、それが前記配列の転写を刺激する場合である。シグナル配列に関するDNAがポリペプチドをコード化しているDNAに動作可能に連結されるとは、それが前記ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質(preprotein)として発現された場合である。一般に、動作可能に連結されるDNA配列は、近接するものである、またシグナル配列の場合は、近接するもの及び読み相(reading phase)内であるものという両方の条件を満たすものである。しかしながら、エンハンサーは、それらがコントロールするコード配列に近接する必要はない。連結(Linking)は、便利な制限酵素部位で又はその代わりに挿入されるアダプター若しくはリンカーでライゲーションすることにより達成される。
【0029】
一般に、適切なプロモーター配列の選択は、DNAセグメントの発現に関して選択された宿主細胞に依存する。適切なプロモータ配列の例には、当該技術において周知の原核生物および真核生物のプロモータが含まれる(例えば、SambrookおよびRussell, 2001, 上記)。転写制御配列は、典型的には前記宿主により認識される、異種性のエンハンサーまたはプロモーターを含む。適切なプロモータの選択は宿主に依存するが、trp、lacおよびファージ・プロモータ、tRNAプロモータおよび糖分解酵素プロモータなどのプロモーターは、既知であり、入手可能である(例えば、SambrookおよびRussell, 2001, 上記)。セグメントをコード化しているポリペプチドのための挿入部位と共に、複製システム(replication system)並びに転写および翻訳の制御配列を含む発現ベクターを使用することができる。細胞株および発現ベクターの実施可能な組み合わせの例は、SambrookおよびRussell(2001, 上記)並びにMetzger等(Metzger et al. (1988) Nature 334: 31−36)に記載されている。例えば、適切な発現ベクターは、酵母(例えば、S.cerevisiae)、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)および細菌細胞(例えば、E. coli)において発現させることが可能である。
【0030】
インビトロ突然変異誘発および変異体タンパク質の発現は、Ausubel等(2003, 上記)並びにSambrookおよびRussell(2001, 上記)に一般的に記載されている。また、Kunkel(1985, 上記;部位特異的突然変異誘発を記載している)およびRoberts等(1987, 上記;カセット突然変異誘発を記載している)を参照されたい。
【0031】
ポリペプチドを調製するための別の方法は、インビトロ転写/翻訳システムを用いることである。ポリペプチドをコード化しているDNAは、上記の発現ベクターにクローン化される。前記発現ベクターは、次にインビトロにおいて、転写され、翻訳される。翻訳産物は、直接使用し得る又は最初に精製してもよい。インビトロ翻訳から生じたポリペプチドは、インビボで合成されたポリペプチドに存在する翻訳後修飾を含まないが、ミクロソームの固有の影響力(inherent presence)により、ある種の翻訳後修飾が生じる可能性がある。インビトロ翻訳によるポリペプチドの合成のための方法は、例えば、文献(Berger & Kimmel, Methods in Enzymology, Volume 152, Guide to Molecular Cloning Techniques, Academic Press, Inc., San Diego, CA, 1987 )に記載されている。
【0032】
従って、更なる側面において、本発明は、上記で規定したベクターを含む宿主に関する。宿主細胞は、上記で指摘された原核生物の又は真核生物の宿主細胞であってもよい。宿主細胞は、液体中で又は固形の培地上で培養するために適切な宿主細胞であってもよい。或いは、宿主細胞は、多細胞生物(例えば、遺伝子組換え植物または動物、好ましくは非ヒト動物)の一部の細胞である。
【0033】
更なる側面として、本発明は、TFIIH安定化活性および/またはNER促進活性を有するポリペプチドを産生するための方法に関する。前記方法は、上記で規定した宿主細胞を前記ポリペプチドの発現を助成(conducive)する条件下で培養することを含む。随意に、前記方法は、前記ポリペプチドの回収(recovery)を含んでいてもよい。前記ポリペプチドは、例えば、培地から標準のタンパク質精製テクニックにより回収されてもよい(この方法には、それ自体は当該技術において既知である種々のクロマトグラフィー方法が含まれる)。
【0034】
本発明の別の側面は、トランスジェニック動物に関し、該トランスジェニック動物は、その体細胞性の及び胚性の細胞中に上記で規定したベクターを含んでいる。前記トランスジェニック動物は、好ましくは非ヒト動物である。トランスジェニック動物を作出するための方法は、例えばWO 01/57079に及びその中で引用された文献に記載されている。かかるトランスジェニック動物は、TFIIH安定化活性および/またはNER促進活性を有するポリペプチドを産生するための方法に使用でき、該方法は、体液または組織をトランスジェニック動物(該トランスジェニック動物は前記ベクター又はその雌性の子孫を含む)から回収することを含み(前記体液は前記ポリペプチドを含有する)、および、随意に前記ポリペプチドの前記体液からの回収を含む。かかる方法は、WO 01/57079に及びその中で引用された文献にも記載されている。前記ポリペプチドを含んでいる体液は、好ましくは血液、又は、より好ましくはミルクである。別の態様において、前記トランスジェニック動物はノックアウト動物であってもよく、該ノックアウト動物において、内在性のTTDA対立遺伝子は、機能障害性の(dysfunctional)又は変異した対立遺伝子へと既知の相同的組換えテクニックにより置換されている。例えば、TTDAの読み枠は、配列の挿入によって除去され又は破壊され(disrupted)ていてもよく、および/または、選択可能なマーカー ネオマイシンR(耐性)、ハイグロマイシン R、DHFR、ピューロマイシン R、HSVtkまたはレポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)と融合されていてもよい。また、TTDAのバイ―シストロン性のメッセンジャーおよびマーカー対立遺伝子は、IRES配列を用いて構築されてもよい。他の態様において、条件的ノックアウト(conditional knock outs)またはノックイン(knock in)動物を、Cre−LoxまたはFrt/Flpリコンビナーゼシステムを用いて構築し得る。なお別の態様において、前記トランスジェニック動物は、TTDA対立遺伝子の一方または双方のコピーがタグ形態(tagged forms)のTTDAをコード化している配列によって置換されているノックイン動物である。TTDA読み枠との融合に関して適切な、様々なタグ(例えば、蛍光タンパク質(例えば、GFP及びその変形)、同様にアフィニティータグが含まれる)は、当該技術において周知である(以下の記載を参照されたい)。なお別の態様において、当該技術において既知の、RNA干渉(RNAi)戦略およびRNAi分子を適用して、TTDAの発現を局所的に又は全身性に、哺乳類において又は細胞において不活性化し得る。
【0035】
本発明の更なる側面は、TFIIH安定化活性および/またはNER促進活性を有するポリペプチドに関し、これは配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80、90、95、98または99%同一性を有しているアミノ酸配列を含む。前記ポリペプチドは、上記のとおり更に好ましい。本発明の範囲内に含まれるものは、TFIIH安定化活性および/またはNER促進活性を有すると共に、例えば、変更された特異性(altered specificity)または付加的な特性(例えば、精製/単離、同定、可視化/局在化または免疫化の目的(しかし、これらに限定されない)に使用し得る分子タグへの融合であるが、これに限定されない)を有している変異体ポリペプチドである。配列番号1のアミノ酸配列は、HA、FLAG、myc、複数のHis、二重のHA、チューブリン、GST、プロテインA、MBP、ビオチンまたは当該技術において既知の任意の他のタグと融合させてもよい。また、蛍光タグを有利に適用でき、それらは例えば、GFP、EGFP、eCFP、eYFP、dsRed、RFP、GFP2、FLASH、SNAPおよび他の蛍光タンパク質タグ、或いは蛍光性の小さい分子の実体(fluorescent small molecular entities)、量子ドットまたは当該技術において既知の任意の分子と特異的に結合するタグである。TFIIHを安定化すること、NERおよびTCRを促進すること、並びにDNA転写を促進することにおけるTTDAの特異的な活性に基づいて;マイナーなアミノ酸の置換および/または削除、挿入および融合により、その細胞の活性を変更させ、TFIIH複合体における天然の又は人為的な結合パートナーに対する親和性を増加または減少させ、前記タンパク質の半減期を増加させ、上記で説明したタグまたは蛍光レポーターに融合させるために、如何に必須アミノ酸を修飾するかを当業者は理解する。配列番号1に記載の酵素に基づくTTDAタンパク質の三次構造を、上記と同じ原理を前記構造に適用することにより変更することが可能であり、これにより前記タンパク質の相互作用部位の構造を調節し、引き続いて前記変異体をそのTFIIH安定化活性および/またはそのNER、TCRおよびDNA転写に対する促進活性に関してアッセイし得る。
【0036】
本発明の別の側面は、上記で規定したTFIIH安定化および/またはNER促進活性を有するポリペプチドと特異的に結合する、抗体または抗体断片に関する。特定のポリペプチドと特異的に結合するモノクローン性の又はポリクローン性の抗体または抗体断片を産生するための方法は、例えばHarlowおよびLane (1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)およびWO 91/19818;WO 91/18989;WO 92/01047;WO 92/06204;WO 92/18619;US 6,420,113およびWO02/085944及びそれらの中で引用された文献に記載され、これらには、V、V、scFv、Fab、Fab断片、同様にラクダの単鎖抗体またはファージディスプレイライブラリーからの抗体または抗体断片が含まれる。本明細書中に使用される「特異的な結合」の用語は、低および高親和性両方の特異的な結合を含む。特異的な結合は、少なくとも約10−4MのKdを有する低親和性の抗体または抗体断片により提示される。また、特異的な結合は、高親和性の抗体または抗体断片(例えば、少なくとも約10−7M、少なくとも約10−8M、少なくとも約10−9M、少なくとも約10−10MのKdを有している抗体または抗体断片、或いは少なくとも約10−11Mまたは10−12M以上のKdを有し得る抗体または抗体断片)により提示(exhibited)される。抗体は、任意の哺乳類において産生でき、また抗体は好ましくはヒト化又は脱免疫(deimmunized)される。
【0037】
本発明の別の側面は、上記で規定した核酸またはポリペプチドを含むマイクロアレイ(または他のハイスループットなスクリーニング装置)に関する。マイクロアレイは、核酸またはアミノ酸の配列又はその混合物を分析するための、1以上の固定化された核酸またはポリペプチドの断片を含有している固体の支持体またはキャリアである(例えば、WO 97/27317、WO 97/22720、WO 97/43450、EP 0 799 897、EP 0 785 280、WO 97/31256、WO 97/27317、WO 98/08083並びにZhuおよびSnyder, 2001, Curr. Opin. Chem. Biol. 5: 40−45を参照されたい)。前記核酸を含むマイクロアレイを、例えば、下記のTTDA遺伝子型を分析するための方法に適用し得る。ポリペプチドを含むマイクロアレイを、結合パートナーに対して変化した親和性を有する又は変化した活性を有するTTDA変異体の適切な候補の検出のために使用し得る。
【0038】
別の側面において、本発明は、被験者、組織サンプルまたは細胞または細胞株、特にそのTTDA/hTFB5遺伝形質の、NER状態または遺伝形質を分析するための方法に関する。本明細書中においてNER状態の遺伝形質を分析することは、遺伝的な欠陥が、TFIIH安定性および/またはレベルにおける欠陥、DNA転写における欠陥、一般的なNERにおける欠陥および特にTCRサブ経路における欠陥を有するサンプルに存在しているかどうかを分析することを意味している。好ましくは、前記方法は、上記で規定した核酸分子またはプローブまたは抗体の使用を含む。好ましくは、前記方法は、TTD欠乏を診断するための方法である。或いは、DNA転写欠乏またはNER/TCR欠乏を診断するための方法は、上記に規定した抗体または抗体断片の使用を含む方法である。
【0039】
別の側面において、本発明は、上記に規定した発現ベクターに関し、前記ベクターは遺伝子治療に適切なベクターである。遺伝子治療に適切なベクターは、文献(Anderson 1998, Nature 392: 25−30; Walther and Stein, 2000, Drugs 60: 249−71; Kay et al., 2001, Nat. Med. 7: 33−40; Russell, 2000, J. Gen. Virol. 81: 2573−604; Amado and Chen, 1999, Science 285: 674−6; Federico, 1999, Curr. Opin. Biotechnol.10: 448−53; Vigna and Naldini, 2000, J. Gene Med. 2: 308−16; Marin et al., 1997, Mol. Med. Today 3: 396−403; Peng and Russell, 1999, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 454−7; Sommerfelt, 1999, J. Gen. Virol. 80: 3049−64; Reiser, 2000, Gene Ther. 7: 910−3;)及びその中に引用された文献に記載されている。前記ベクターは、好ましくは以下に規定される適切な薬学的キャリアを含む薬学的組成物に製剤化(formulate)される。投与可能な組成物を調製するための方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、文献(Remington: The Science and Practice of Pharmacy by Alfonso R. Gennaro, published by Lippincott Williams & Wilkins; 20th edition, June 1, 2003)を含む様々な情報源に詳細に記載されている。
【0040】
更なる側面において、本発明は、NERの治療、DNA転写欠乏、特にTTDA遺伝子における遺伝的な欠陥のための医薬の製造における、上記に規定した遺伝子治療に適切なベクターの使用に関する。同様に本発明は、TTDA遺伝的欠陥および/またはTFIIH安定化欠乏を治療するための方法に関し、該方法は、TTDA欠乏を罹患している被験者に、上記に規定した遺伝子治療に適切なベクターを含む薬学的組成物を、前記欠乏を克服するのに効果的な量で投与する工程を含む。
【0041】
更に本発明は、上記に規定したTTDA安定化およびNER、TCRおよびDNA転写促進活性を有するポリペプチドを含む薬学的製剤(pharmaceutical preparation)に関する。前記組成物は、好ましくは薬学的に許容されるキャリアを含む。いくつかの方法において、TFIIH安定化活性を有し、哺乳類、昆虫、または微生物の細胞の培養物から、トランスジェニック哺乳類または他の供給源のミルクから精製された前記ポリペプチドは、精製形態で、薬学的キャリアと共に薬学的組成物として投与される。好適な形態は、投与の及び治療適用(therapeutic application)の意図されるモードに依存する。薬学的キャリアは、前記ポリペプチドを前記患者に送達するために適切な、任意の適合性の(compatible)非毒性物質であってもよい。滅菌水、アルコール、脂質(fats)、ワックスおよび不活性な固体(solids)を前記キャリアとして使用し得る。また、薬学的に許容されるアジュバンド、緩衝剤、分散剤(dispersing agents)などを、前記薬学的組成物に導入してもよい。
【0042】
経口投与に関して、活性成分を、固形の剤形(solid dosage forms)、例えば、カプセル、錠剤、および粉剤として、または液体の剤形(liquid dosage forms)、例えば、エリキシル剤、シロップ、および懸濁剤(suspensions)として、投与してもよい。活性コンポーネント(Active component(s))は、ゼラチンカプセルに、不活性成分および粉化されたキャリア(例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸、サッカリンナトリウム(sodium saccharin)、タルカム(talcum)、マグネシウム炭酸塩(magnesium carbonate)など)と共に被包(encapsulated)されてもよい。付加的な不活性成分の例(これらを添加して、望ましい色、食味、安定性、緩衝作用能力、分散または他の既知の望ましい特性が提供される)は、赤色の鉄酸化物(red iron oxide)、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、二酸化チタン(titanium dioxide)、食用のホワイト・インク(white ink)などである。同様の希釈剤を使用して圧縮錠剤(compressed tablets)を作出することができる。錠剤およびカプセルの双方を、徐放性製品(sustained release products)として製造して、何時間(a period of hours)にもわたる薬物(medication)の連続的な放出を提供できる。圧縮錠剤を、糖被覆して又はフィルム被覆して、任意の不快な食味をマスクできる、また前記錠剤を大気から防御できる、或いは胃腸管における選択的な崩壊のために腸溶性に被覆(enteric−coated)できる。経口投与のための液体の剤形は、着色(colouring)および味(flavouring)を含有させて、患者の認容性(acceptance)を高めてもよい。投与可能な組成物を調製するための方法は、当該技術において既知であり、様々な情報源(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy by Alfonso R. Gennaro, published by Lippincott Williams & Wilkins; 20th edition, June 1, 2003 を含む)に更に詳細に記載されている。
【実施例】
【0043】
酵母TFB5のヒト相同分子(orthologue)をコード化しているcDNAおよびゲノムクローン(genomic clone)の単離および特性分析
【0044】
実施例1 hTFB5/TTDAのクローニング
我々は、初代線維芽細胞からヒトTFB5 cDNAを、その酵母TFB5との相同性に基づいて、当該技術において既知の通常の技術を用いてクローン化した。hTFB5(p8−HA)のHAタグされたバージョンを、従来の分子クローニング方法により構築し(Maniatis et al, 上記)、そしてTTD−A線維芽細胞中で発現させ、そして次に抗HAによる免疫沈降に使用した(図1a)。XPBコアTFIIH及び関連するCAKコンポーネント(CDK7)は、p8−HAと共沈した(複製/修復因子RPA1とは対照的に)(データ示さず)。逆に、抗−p44(別のコア−TFIIHコンポーネント)は、p8−HAと共沈した。我々は、酵母と同様に、この小さいポリペプチドが哺乳類細胞におけるTFIIHと関連していると結論づけた。
【0045】
我々は、p8のTFIIHとの相互作用を、Hela細胞から精製したTFIIHを用いて更に分析した(Gerard, M. et al., J. Biol. Chem. 266, 20940−20945, 1991 )。〜8kDaのタンパク質バンドが、他のTFIIHサブユニットと並びに転写およびDNA修復活性と共に共沈した(図1b)ことを、銀染色は示した。この〜8kDaバンドのトリプシン消化物のMALDIペプチド・マス・フィンガープリント分析は、全ての同定されたペプチドがhTFB5の一部であることを示した(図1c)。最終的に、この8kDaのポリペプチドに対して産生されたポリクローナル抗体を用いたイムノ−ブロッティングは、それがTFIIHと共沈することを示した(図1B)。これらの実験により、このポリペプチドは、TFB5のヒト相同分子として、また本物の(genuine)新規の第十のTFIIHコンポーネントとして認められた。
【0046】
hTFB5がTTD−Aにおいて影響される遺伝子であることを確認するために、我々は前記cDNAを多核化した(polynucleated)TTD−A線維芽細胞にマイクロインジェクトし、そしてインジェクトされた細胞のDNA修復能力をUV誘導性のUDS(予定外のDNA合成)を測定することにより決定した。図2aは、二核性の(binucleated)p8を注射した細胞(2)を示しており、非注射の隣接するTTD−A細胞(1)における低いUDSと比較して、明瞭に増加したUDS(粒子数の上昇)を有している。p8 cDNAは、並行してアッセイされた野生型細胞において観察されたレベルと匹敵するレベルにまでTTD−A細胞の修復欠陥を修正し、このことはhTFB5(p8)がTTDグループAにおいて影響を受けたことを指摘している。
【0047】
実施例2 被験者のTTDA診断
hTFB5がTTD−Aにかかわるかを検証するために、我々は3つの無関係のTTD−AケースのゲノムDNAを分析した(表1)。3つ全てのTTD−A患者は、hTFB5遺伝子内に不活性化している(しかし区別しえる)変異を示した(図2b)。患者TTD99ROは、ホモ接合性のC→T遷移をコドン56に保持し、これによりCGA(アルギニン)はTGA終止コドンへと変換され、前記タンパク質を23%まで切断(truncating)する。同胞(Siblings)TTD13PVおよびTTD14PVは、開始コドンに変異を(ホモ接合性に)保持し、これによりATGをACGへと変換する。この変異は、タンパク質合成の完全な欠損か又はN末端切断型ポリペプチド(最初の最も保存された15のアミノ酸(21%)を欠損している)の産生か(コドン16での下流のAUGが使用された場合)の何れかを生じる。ただ1つの対立遺伝子が検出されたので、両方の変異は機能的にホモ接合性であると考えられる。
【0048】
最終的に、患者TTD1BRは、合成異型接合体(compound heterozygote)であると思われた:一方の対立遺伝子はTTD99ROと同一であり、他方はT→C遷移をコドン21に保持しており、保存されたロイシン残基をプロリンへと変換する。また、ゲノムの変異が分離されたmRNAにおいて同定され(RT−PCRにより示された)、このことは、これらの対立遺伝子が発現されることを示している(データ示さず)。我々のデータは、hTFB5をTTDグループAにおいてNER欠陥を生じる遺伝子として明確に同定した。我々は、この新規のTFIIHサブユニットをTTDAと命名した(アクセッション番号 AJ634743)。
【0049】
配列表(各々、配列番号1および配列番号2)に記載されるTTDAのタンパク質およびDNA コード配列は、TTDA遺伝子における遺伝子欠陥の存在に関して被検者を診断するための手段を提供する。遺伝子欠陥の検出は、被験者からの試料(例えば、組織サンプル、血液サンプル、毛髪サンプル、糞便、尿、唾液)に関して、当該技術において既知の様々な方法によりインサイチューまたはインビトロで実施可能である。様々な技術を、被験者におけるTTDAの変異分析に適用でき、例えば、次に示すようなものが含まれるが、それらに限定されない:それは、即ち、ゲノムDNAまたはcDNAのDNA配列決定、PCRまたはNasba分析、サザンブロッティングを用いる分析、ノーザンブロットまたはウエスタンブロット法を用いた発現分析、DNAマイクロアレイまたはタンパク質マイクロアレイ分析、SAGE分析、ESTまたはSNP分析である。
【0050】
実施例3 NER修復に関与するTTDA(TTDA活性に関するアッセイ)
NERにおけるTTDAの役割を更に探索するために、我々はHAタグされたTTDAを安定的に発現しているTTD1BR−SV細胞を作出した。TTDA−HA発現細胞のUV−Cライトへの暴露(図3a)は、前記細胞が、並行してアッセイされたNERに熟達した細胞に匹敵するUV感受性レベルを呈したことを明瞭に示した。UVダメージが細胞核に、(5μm)ポアを有するフィルターを通して照射されることによって局所的に負荷される(inflicted)アッセイを用いて、TFIIHコンポーネントが一過性にこれらの部位に蓄積することを我々は以前に実証した(Mone, M.J. et al., EMBO Rep. 2, 1013−10117, 2001、Volker, M. et al., Mol. Cell 8, 213−224, 2001およびHoogstraten, D. et al, Mol. Cel. 10, 1163−1174, 2002 )。我々は、同じ手順をTTDA−HA発現細胞に適用して、NER反応におけるTTDAの関与をインビボで試験した。局所の傷害部位(内在性のXPBの蓄積によってマークされる)で、TTDA−HAが蓄積される(図3b)。このことは、TTDAが、他のNER因子と同様にNER反応に関与することを指摘する(Rademakers, S. et al., Mol. Cell. Biol. 23, 5755−5767, 2003)。
【0051】
我々は、更にNERにおけるTTDAの関与を試験するためのアッセイを開発した、このアッセイは、インビトロで切断/除去修復アッセイを再構成し、組換え型NER因子、精製したTFIIHおよびシスプラチン付加物(cisplatin−adduct)を含んでいるプラスミドを用いるものである。固定量の精製TFIIHと共にインキュベーションした、精製した抗−TTDA(p8)ポリクローナル抗体を増加させて添加すると、修復反応を明らかに阻害したが、プレ−免疫血清での処理は効果がなかった(図3c)。結論として、これらの結果は、TTDAがTFIIHの一部としてNERに関与していることを実証している。
【0052】
そのうえ、機能的なアッセイが本発明によって提供され、このアッセイは、NER促進活性に関して、TTDAタンパク質の調製物(preparation)と変異させ又は化学的に若しくは翻訳後修飾されたTTDAタンパク質とにおける試験を可能とする。上記の(また、以前にShivji et al., 1999, Methods Mol. Biol, 113, 373−392に記載された)インビトロで再構成された切断/除去修復アッセイは、(内在性の)TTDAタンパク質をポリクローナル又はモノクローナル抗体を用いた従来の技術(例えば、固定化した二次抗体又は固定化したプロテインA若しくはプロテインGへの結合)を用いて取り除き(stripped)/消去(cleared)し得る。次に、様々な供給源および調製物からのTTDAタンパク質(特に本明細書で説明した該タンパク質の変異型)、化学的に合成され、インビトロ翻訳された調製物またはインビボ供給源(例えば、微生物、植物または動物)から精製したTTDAを、NER促進活性に関して、再構成アッセイのインビトロ修復反応でアッセイし得る。
【0053】
実施例4 TFIIH安定化アッセイ
TTD−AにおけるNER欠陥およびTTD−特異的な特性は、TFIIHの総量の定常状態レベル(steady−state level)の減少に関連しているように思われる(Vermeulen, W. et al., Nat. Genet. 26, 307−13, 2000)。図4に示すとおり、TTDA−HAを発現する細胞は、随伴性の(concomitant)高いXPBレベルを有しており、このことはTTDAが安定化機能を有し、TFIIHを分解から防御することを示唆している。同様の観察が、他のTFIIHコンポーネント(即ち、p62、p44およびCDK7)に対する抗体で染色した細胞においてなされ、これは全体のTFIIH複合体の核内(intra−nuclear)レベルが増加することを示している。対照的に、非TFIIH NER因子(ERCC1)は増加しない(図4b)。また、免疫ブロット実験(図1a)において、上昇したレベルのXPBおよびCDK7がTTDA発現後に観察された。
【0054】
これらの実験は、TFIIH濃度がTTDAタンパク質の存在に依存することを示しており、その結果、TTDAタンパク質活性に関する機能的アッセイが提供される。本発明において提供されるアッセイは、多様な供給源および調製物、TTDA変異体、(天然で生じた変異体および構築された変異体)および修飾されたタンパク質からのTTDAの機能的な試験を可能とする。我々は、MRC5(野生型 SV40−不死化)においてTTDA−HAを一過性に過剰発現させた。これらのTTDAが豊富な細胞(TTDA−proficient cells)においてさえ、TTDA遺伝子の一過性過剰発現は、細胞のTFIIH量(図4c)を増加させるように思われ、このことはTTDA発現がインビボにおけるTFIIH濃度を制御することを示している。TTDA−欠乏細胞(TTDA−deficient cells)における(機能的な)TTDA遺伝子の過剰発現は、相対的なTFIIH安定化効果を増強し、機能障害性のTTDA変異体は、変異体の残効性(residual activity)によって減少した効果を有するか又は効果を有していない。
【0055】
培養したTTD−A細胞の最も明白な細胞の表現型の1つは、TFIIHレベルの顕著な減少(〜30%)である(表1)。TTDAが野生型細胞においてさえも一過性にTFIIHのレベルを増加させたという事実(図4c)は、この8kDaタンパク質がTFIIHレベルの定常状態の制御に関与していることを実証する。TFIIHコンポーネントのmRNAレベルはTTD−A細胞において減少しないので(Vermeulen et al, 2000 上記)、TTDAによるTFIIH量の制御は翻訳後修飾にちがいない。翻訳又は翻訳後レベルでの制御は、複合体会合または複合体構造の維持に関するTTDAのシャペロン類似機能を示唆している。変化したTFIIHの三次構造(TTDAが存在しないことによる)は、この複合体の生存期間(longevity)並びにその修復および転写活性の双方を妨害(impede )し得る。
【0056】
ヒトと酵母との間のTFIIHの組成、構造および機能における著しい類似性(parallels)にもかかわらず(表2)、転写効率に対するTFB5’sの相対的な寄与の差異が観察される。酵母においてTFB5の非存在は、転写およびNERの効率に影響するように思われるが、ヒトにおいてTTDA変異は、ある程度転写に影響する(Tirode, F., Busso, D., Coin, F. & Egly, J.M., Mol. Cell 3, 87−95, 1999)。さらにまた、ヒトにおいてTTDAの非存在は、主にTFIIHの安定性および/または定常状態レベルに影響するように思われるが、酵母においてはTFB5の非存在はTFIIHレベルを減少させなかった。
【0057】
NER機能における重度の影響は、NERが、転写よりも高い濃度のTFIIHを必要とすることを示唆する。最近の生細胞の研究は、TFIIHが、転写よりもNERに有意に長く関与することを示した(Hoogstraten, D. et al., Mol. Cel. 10, 1163−1174, 2002)、このことはNERにおけるTFIIH(の十分量に対する)の必要性の増大に関して可能性のある説明を提供する。また、変異したTTDAによるTFIIHの変化した構造は、主にNER機能に影響し得る。
【0058】
結論として、新規の進化的に保存されたTFIIHの第十サブユニットとしてのTTDAの同定は、DNA修復、転写、およびヒトの疾患におけるTFIIHの分子機構を理解するための必須の情報を提供する。これらの所見は、明確にTTDグループAにおけるNER欠陥の原因遺伝子としてTTDAを同定し;被験者においてpol Iおよびpol II DNA転写における欠乏、NER欠乏および特にTCR欠乏を生じるだろう、TFIIHの不十分な細胞レベルにより生じる障害を診断および治療する機会(opportunity)を提供する。
【0059】
材料および方法
クローニング。分子クローニング技術に関して、一般的な文献は、Sambrook and Russell, 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY, 並びに Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel ed., published by John Wiley & Sons Inc., December 2003である。核酸修飾酵素、キット、設備および自動DNA合成機を、製造者の指示にしたがって使用した。
【0060】
細胞株、培養条件およびトランスフェクション。初代ヒト繊維芽細胞 TTD99RO、TTD1BR、TTD13PV、TTD14PV(全てTTD−A)およびC5RO(野生型、NERに熟達)を標準の条件下、12% FCSおよび抗生物質(ペニシリンおよびストレプトマイシン)を添加したハムのF−10培地中で、37℃、5%COおよび3%酸素で培養した。SV−40で形質転換した細胞株 TTD1BR−SV(TTD−A)およびMRC5−SV(野生型)を、37℃、5%COで、8%FCSおよび抗生物質を添加した、F−10およびDMEM(ギブコ)の1:1混合物中で培養した。C−末端にHA−タグをつけたTTDAを、発現ベクター pCDNA3(インビトロゲン)にクローン化し、この構築物をTTD1BRSV繊維芽細胞にFUGENE 6トランスフェクション試薬(ロッシュ)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクタント(Transfectants)を、8J/m2のトリプル紫外−C照射に、二日間のインターバルで供試し、TTDA−HA発現細胞の集団を豊富化した。最後の照射の1週後、安定なトランスフェクタントを、単一細胞にソートした(FACSVantage, Becton Dickinson, Belgium)。単一細胞に由来するコロニーを、融合遺伝子の発現に関して抗−HA免疫蛍光により試験した。選択したクローン(安定してTTDA−HAを発現している)を、その修復能力(UV−生存, 以下を参照されたい)に関して試験した。
【0061】
免疫沈降および免疫ブロット分析。MRC5SV、TTD1BRSVおよびTTD1BRSV+hTFB5HAからの細胞全体の抽出物を、6ペトリ皿/細胞株(13cm)から分離した細胞で調製した。集めた細胞ペレットを、溶解前にPBS中で1回洗浄し、緩衝剤A(50mM Tris pH7.9; 150mM 塩化ナトリウム;20%グリセリン;0.1% NP40; 5mM β−メルカプトエタノール)に抗−プロテアーゼを添加した2mlの溶液中でダウンシング(douncing)により(12.61mmのダウンスホモジナイザーを用いて20ストローク, Bellco Glass, INC., USA)溶解させた。MRC5SV、TTD1BRSVおよびTTD1BRSV+hTFB5HAからの細胞抽出物を、緩衝剤A中で、プロテインA−セファロースビーズ(Amersham Biosciences, UK)にクロスリンクした、それぞれ抗−HA(12CA5)および抗−p44(1H5)抗体と4℃で一晩インキュベーションした。免疫沈降前に、クロスリンクしたビーズを緩衝液A中で3回洗浄した。抽出物とのインキュベーション後、ビーズを緩衝液Aで頻繁に洗浄し、次にSDS−PAGE並びに抗−XPB(1B3)、抗−cdk7(2F8)および抗−HA(3F10)を用いた免疫ブロットにより分析した。
【0062】
質量分析。
TFIIHサブユニットを15%ポリアクリルアミドSDS−PAGEで分離し、銀染色した(Rabilloud, T. Silver staining of 2−D electrophoresis gels. Methods Mol. Biol. 112, 297−305, 1999)。10kDaマーカー以下に移動したバンドを切り出し、ゲル中でトリプシンで消化した(Cavusoglu, N., Brand, M., Tora, L. & Van Dorsselaer, Proteomics 3, 217−223, 2003)。ペプチド抽出物をスピードバックで濃縮し、C18逆相「ZipTip」ピペットチップ(ミリポア)でクロマトグラフィー精製し、そして最終的に2μlのアセトニトリル50%中に溶出した。0.5μlのペプチドを、等量の飽和アルファ―シアノ―4ヒドロキシケイ皮酸(50%アセトニトリルに溶解)又は同容量の飽和2,5−ジヒドロキシ安息香酸(20%アセトニトリルに溶解)の何れかと混合した。両方のマトリックスは、LaserBio Labsから入手した。質量分析をBruker Reflex IV MALDI−TOFスペクトロメーターで陽イオンリフレクターモードで実施した。質量の獲得範囲は、800〜3000Daであり、低質量ゲート(low mass gate)を700 Daにセットした。内部較正を自己融解のトリプシンペプチド類(m/z=842.51、2211.11および2807.47を有するMH)を用いて実施した。モノアイソトピックペプチド質量を、Bruker X−TOFソフトウェアを用いてマニュアルで割り当てた。パラメータを用いた、データベースサーチ(NCBI, ヒト起源のタンパク質):0〜10kDaの間のMW;トリプシン消化(1つのミス切断は許容される)、カルバミドメチレーションにより修飾したシステイン、メチオニン酸化および質量許容性75ppmを、Profoundプログラム(http://prowl.rockefeller.edu/)で実施した:4つの(5つのうち)p8ペプチドが、アルファ−シアノ−4ヒドロキシケイ皮酸(データ示さず)および2,5−ジヒドロキシ安息香酸をマトリックスとして用いて検出された。
【0063】
マイクロニードル注射およびDNA修復アッセイ。HTFB5 cDNA構築物(HA−タグ有り及び無し)を、TTD−A線維芽細胞(TTD99RO, TTD1BR)に、文献(Vermeulen, W. et al,. Am J Hum. Genet. 54, 191−200, 1994)のとおりにマイクロインジェクションした。簡単に説明すると、マイクロインジェクションの3日前に、細胞を不活化したセンダイウイルスを用いて融合し、カバーグラス上に播種した。注射の24hrs後、注射された遺伝子の発現を可能とするため、細胞を15J/m UV−Cに暴露し、そしてH−チミジンを添加した培地中で2hrインキュベーションした。遊離したH−チミジンの過剰分を除去した後、細胞を固定した。DNA修復能力(UV−誘導した予定外のDNA修復合成またはUDS)を、核上のオートラジオグラフィー上の粒子量として決定し、それはNER欠乏細胞において通常非常に減少している(詳細に関してはVermeulen, W. et al., Nat. Genet. 26, 307−13, 2000を参照されたい)。
【0064】
TTD1BRSV(TTD−A)線維芽細胞、TTD1BRSV+hTFB5−HA(TTD−A 修正された)およびNERに熟達したMRC5SV(wt)ヒト繊維芽細胞の紫外線に対する感受性を、H−チミジン取り込みにより、以前の記載(Sijbers, A.M. et al., Nucleic Acids Res. 24, 3370−3380, 1996およびvan Gool, A.J. et al., Embo J. 16, 5955−5965, 1997)とおり決定した。
【0065】
hTFB5遺伝子およびcDNAにおける変異分析。
トータルRNA(10μg)を、野生型(C5RO)およびTTDA初代線維芽細胞(TTD99RO; TTD1BR; TTD13PVおよびTTD14PV)から、Rneasy Miniカラム(キアゲン, USA)を用いて抽出し、そして逆転写によるcDNAの調製のために使用した。逆転写を、RT−PCRのためのSuperScript tm First−Strand Synthesis System(インビトロゲン, USA)を用いて実施した。hTFB5 cDNAの増幅を、puReTaqTMReady−To−GoTMPCRビーズ(アマシャム, USA)および10pmolのプライマー(Tm:60°)を用いて実施した。
【0066】
ゲノムのhTFB5のコード領域を、コード領域のエクソン2および3をカバーしている、2セットのプライマーを用いて増幅した。プライマー配列は、請求により利用可能(available on request)である。
ゲノムDNA(100−500ng)を、puReTaqTMReady−To−GoTMPCRビーズ(アマシャム, USA)および10pmolの各プライマーセットを用いて増幅した。増幅産物を、T−easyベクター(プロメガ, USA)にクローン化した。各細胞株に関して、18の独立したクローンを、BaseClear labservices(BaseClear, オランダ)で配列決定した。
【0067】
免疫蛍光。マイクロニードル注射またはトランスフェクションの2日後、細胞をPBSで2回洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%トリトンX−100(PBS−T)を含有しているPBS中で10分間2回水洗することにより透過化(permeabilized)し、次にPBS+(PBS+0.15%グリシンおよび0.5%BSA)で洗浄した。PBS+で希釈した抗体を、2h、湿室(moist chamber)中でRTでインキュベーションした、希釈は:抗−XPB(IB3),1000x; 抗−HA(3F10, ロシュ),1000xである。引き続いて、カバーグラスをPBS−T中で洗浄(5x; 5min)し、それぞれ二次抗体とインキュベーションした:ヤギ抗−マウス、Cy3−抱合(ジャクソン研究室);ヤギ抗−ラット、Alexa488−抱合(Molecular Probes)、各々PBS+中で1000x希釈した。同じ洗浄手順の後、カバーグラスを、DAPI(4’−6−ジアミノ−2−フェニルインドール)を含有しているベクタシールド・マウンティングメディウム(Vector Laboratories) 1.5μg/μlでマウントした。落射蛍光(Epifluorescent)および位相差イメージを、落射蛍光光学(epi−fluorescence optics)を備えたLeitz Aristoplan顕微鏡およびPLANAPO 63x/1.40油浸レンズにより取得した。
【0068】
二重切断NERアッセイ(Dual incision NER assay)。二重切断アッセイを、以前に記載(Riedl, T., Hanaoka, F. & Egly, J.M., Embo J. 22, 5293−5303, 2003)されたとおり、25μlの二重切断緩衝剤(2mM ATPを添加した)中で実施した。各反応には、表示されたとおり、5ngのXPG、15ngのXPF/ERCC1、10ngのXPC−hHR23B、50ngのRPA、25ngのXPAおよびTFIIHを含有させた。10minのプレ−インキュベーション(30°Cでの)後、30ngのPt DNAを添加し、反応を90min 30°Cで継続する。摘出した断片を14%尿素アクリルアミド上で、9ngの相補的なオリゴヌクレオチドでアニーリングさせ、4つの放射性標識したdCMPα−P32(3000μCi/mmol)残基(Sequenase V2.1(USB)により)を添加した後に検出した。修復反応への添加前に、TFIIHを、p8ポリクローナル抗体またはプレ免疫血清の何れかとプレインキュベーションした。ウサギポリクローナルを、ペプチド VGELMDQNAFSLTQK(57−71)を卵白アルブミンに連結し、それをウサギに注射することで産生した。
【0069】
局所の紫外線照射。培養細胞を、以前の記載(Mone, M.J. et al., EMBO Rep. 2, 1013−10117, 2001およびVolker, M. et al., Mol. Cell 8, 213−224, 2001)のとおり、直径5μmの孔を有するアイソポア(isopore)ポリカーボネートフィルター(ミリポア)を介して、40J/mでUV−照射(254nm)した。引き続いて、フィルター除去後、細胞をパラフォルムアルデヒドで固定し、更に免疫細胞化学のために処理した(上記の通りに)。
【0070】
アクセッション番号。完全なヒトTTDA cDNA配列は、BC060317、AK055106またはAJ634743の番号で利用可能である。ヒトゲノムのTTDA配列は、ヒト染色体6q25.3コンティグに見つけられ、これはHs 356224およびNT−007422, chr6コンティグHs_7579の番号で利用可能である。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1a】TTDA(hTFB5)がTFIIH複合体の一部であることを示す写真。 a.免疫沈降(I.P.)アッセイ。レーン1:分子量マーカー;レーン2〜4:MRC5SV(wt)、TTD−AおよびTTD−A+p8からの全細胞抽出物(WCE);レーン5〜6:TTD−AおよびTTD−A+p8細胞抽出物からのI.P.。右パネル:18%SDS−PAGEゲルに、WCE’sからの10μgのタンパク質およびα−p44 I.P.細胞抽出物(TTD−AおよびTTD−A+p8からの)をロード。ブロットをα―HAで免疫染色した;矢印はHAタグを付けたp8に対応する免疫染色されたバンドを示す。中央および左パネル:11%SDS−PAGEゲル上に、WCEおよびα−HA I.P.細胞抽出物(TTD−AおよびTTD−A+p8からの)をロード。ブロットを各々α―XPBおよびα―cdk7で免疫染色した;矢印は対応する免疫染色されたタンパク質を示す。
【図1b】TTDA(hTFB5)がTFIIH複合体の一部であることを示す写真。 b. ポリペプチドp8(HAPカラムから高度に精製されたTFIIHに含有される)は、パネルのトップに示される他の9つの同定されたコンポーネント(15% SDS−PAGEの銀染色および免疫ブロット)と及びTFIIHの転写および修復活性と共精製(co−purifies)される。下のパネル:イムノブロッティングにより、HAP画分中のp8が同定される。ウサギポリクローナル抗体(p8のC末端側の終端に対して産生されたもの)を、TFIIHを含んでいるHAP画分におけるp8の検出に使用した。
【図1c】TTDA(hTFB5)がTFIIH複合体の一部であることを示す図。 c.p8のMALDI−MS同定。上部のパネル:MALDIペプチド質量フィンガープリント法によるp8同定。表に実験的に決定した値およびp8トリプシン消化ペプチドの対応する理論的な質量(masses)を列挙する。質量の正確性(accuracy)(ppM)およびアミノ酸配列も、各ペプチドに対して示される。中央のパネル:MALDIペプチドフィンガープリント法の結果の概略図。P8は、NCBIデータベースにおけるCG14037遺伝子産物と同定された。
【図2】TTD−AのDNA修復欠乏のhTFB5による修正(Correction)を示す図。 a. TTD99RO(TTD−A)の初代線維芽細胞における、hTFB5(p8)のwt cDNAを含んでいる発現ベクターのマイクロニードル注射。DNA修復活性におけるp8発現の効果を示す顕微鏡写真。未注射の周囲を取り囲むTTD−A線維芽細胞(TTD−Aに関して典型的な低い残りの(residual)UDSレベルを発現する)(1)と比較した場合に、注射された多核化した初代線維芽細胞(2)(矢印で示される)は、それらの核の上部の銀粒子の数から明らかなとおり、高い(野生型)レベルのUV誘導性のUDSを示した。p8マイクロインジェクションによるUDS修正は、他のTTDグループA細胞(TTD1BRおよびTTD13PV)に注射した際にも観察された(示さず)。 b. 3つの無関係のTTD−A症例に由来する、分析された4つの細胞株において発見された変異を要約する図である。太字で、コドンにおいて変異した塩基を示している。
【図3】TTDAのヌクレオチド除去修復の特性を示す図。 a. 野生型のMRC5SV(クローズの黒色菱形)、TTD1BRSV(クローズの赤色三角)およびTTDA−HAを発現しているTTD1BRSV(クローズの緑色四角)の細胞集団を用いたUV生存。生存している細胞のパーセンテージを、UV−C用量(J/mで)に対してプロットする。 b. 局所的にUV照射(40J/m)されたTTD1BRSVを発現しているTTDA−HAは、α−HA(左のパネル)およびα−XPB(右のパネル)抗体で染色される。局所的に傷害された領域が矢印で示される。 c. TFIIH HAP分画6(1μl)を、抗体なし(レーン1)で、或いはAb−p8(それぞれ、1、5および10μg;レーン2−4)、またはAbコントロール(それぞれ、1、5および10μg;レーン5−7)の増加量の何れかでプレ−インキュベーションした、これは二重切断を測定するための傷害されたDNAに加えて、全ての他のNER因子;XPC−hR23b、XPA、RPA、XPGおよびERCC1−XPFを添加する前に実施された。
【図4】TTDA−HAを発現しているTTD−A線維芽細胞において減少したTFIIH濃度の回復を示す写真。 a. TTDA−HAを発現しているTTD1BRSVの一般的集団(Mass population)。TTDA−HAを発現している細胞(左パネル)は、XPBタンパク質(右パネル)の増加したレベルを示す。 b. TTDA−HAを発現しているTTD1BRSVの一般的集団(Mass population)。ERCC1レベル(右パネル)は、TTDA−HA発現(左パネル)により影響されない。 c. TTDA−HAを発現しているMRC5SV細胞(左パネル)は、XPBタンパク質(右パネル)の増加したレベルを示す。
【図5】ヒトTFB5の一次アミノ酸配列アライメント(そのホモログと共に示す)を示す図。 進化ライン(evolutionary line)に沿ったhTFB5の保存されたホモロジーを示す。アライメント。示されているものは、H. Sapiens、M. musculus、A. thaliana、C. elegans(全て71aa)、C. reinhardtii(78aa)、S. pombe(68aa)およびS. cerevisiaeホモログ(72aa)におけるTFB5ホモログである。同一のアミノ酸を黒色の網掛けで示し、また物理化学的に関連する残基を淡黒色の網掛けで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFIIHと相互作用する能力を有するポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が:
a)配列番号1と少なくとも50%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有しているポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列;
b)配列番号2または3と少なくとも50%ヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列;
c)ヌクレオチド配列であって、その相補鎖が(a)または(b)のヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列;
d)遺伝暗号の縮重によって(c)のヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列;
から選択される核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸であって、前記ポリペプチドがTFIIH安定化活性を有する核酸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の核酸であって、前記ポリペプチドがNER促進活性を有する核酸。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の核酸であって、前記ヌクレオチド配列が哺乳類TFIIH 8kDaサブユニット TTDAをコード化する核酸。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の核酸であって、前記ヌクレオチド配列がヒトもしくはマウスのTTDA又はその誘導体をコード化する核酸。
【請求項6】
核酸プローブであって、前記プローブが配列番号2に記載されたヌクレオチド配列と少なくとも90%同一性を有するヌクレオチド配列のうち少なくとも10の近接するヌクレオチドを含む核酸プローブ。
【請求項7】
固体の支持体上に固定化された、請求項6に記載の核酸プローブ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に規定した、核酸分子またはプローブを含むベクター。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、前記ベクターのための宿主細胞において、前記ポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列が、コード配列の発現に方向付ける能力を有するプロモーターに動作可能に連結された発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターであって、前記ポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列が、分子タグをコード化している第2のヌクレオチド配列を含み、第2のコード配列が前記ポリペプチドをコード化している配列にインフレームに融合された発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の発現ベクターであって、前記分子タグが蛍光タグまたはアフィニティータグである発現ベクター。
【請求項12】
請求項8〜11の何れか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
TFIIHの相互作用または安定化活性を有するポリペプチドを産生するための方法であって、請求項12に規定した宿主細胞を前記ポリペプチドの発現を助成する条件下で培養することと、および、随意に前記ポリペプチドを回収することと、を含む方法。
【請求項14】
トランスジェニック動物であって、その体細胞性(somatic)の及び胚性(germ)の細胞中に請求項8〜11に記載のベクターを含むトランスジェニック動物。
【請求項15】
請求項14に記載のトランスジェニック動物であって、前記ベクターが内在性のTTDA座位に相同的組換えを介して統合されるトランスジェニック動物。
【請求項16】
請求項14または15に記載のトランスジェニック動物であって、前記ポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列が変異を含むトランスジェニック動物。
【請求項17】
請求項16に記載のトランスジェニック動物であって、前記変異が不活性化変異(an inactivating mutation)であるトランスジェニック動物。
【請求項18】
TFIIH相互作用活性を有し、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも50%同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドがTFIIH安定化活性を有しているポリペプチド。
【請求項20】
請求項18に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドがNER促進活性を有しているポリペプチド。
【請求項21】
請求項18〜20の何れか1項に規定したポリペプチドと特異的に結合する抗体または抗体断片。
【請求項22】
被験者のTTDA遺伝形質を分析するための方法であって、請求項1〜7の何れか1項に規定した核酸分子またはプローブの使用を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、NER欠乏(NER deficiency)を診断するための方法。
【請求項24】
NER欠乏を診断するための方法であって、請求項21に規定した抗体または抗体断片の使用を含む方法。
【請求項25】
請求項8〜11に記載の発現ベクターであって、遺伝子治療に適切なベクター。
【請求項26】
請求項25に規定したベクターを含む薬学的製剤。
【請求項27】
請求項25に規定したベクターの又は請求項1〜7に規定した核酸分子の医薬(medicament)としての使用。
【請求項28】
請求項25に規定したベクターの又は請求項1〜7に規定した核酸分子の、UV感受性症候群(UV sensitivity syndrome)またはNER欠乏の治療のための医薬の製造のための使用。
【請求項29】
被験者におけるUV感受性障害を治療するための方法であって、請求項18〜20の何れか1項に規定したポリペプチドの供給源を投与することを含む方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記ポリペプチドの供給源が請求項25に規定したベクターまたは請求項1〜7に規定した核酸分子である方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−20540(P2006−20540A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−199654(P2004−199654)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(504260287)ウニフェルジター・メディッシュ・セントルム・ロッテルダム (1)
【Fターム(参考)】