説明

旋回装置

【課題】 グリースバスから内輪と外輪との間の転動体収容部にグリースを自動的に補給するようになし、かつグリースに混入する不純物を除去する。
【解決手段】 内輪11と外輪12との間に形成した転動体収容部13の上下に円環状隙間13a,13bが形成され、下部側の円環状隙間13bはリップ状シール部材28でシールされており、上部側の円環状隙間13aは、内輪11の外周面及び外輪12の内周面は上端部に向けて斜め方向に切り欠いたテーパ面11a,12aとなっており、この円環状隙間13aにはプラスチックグリース30が押さえ板31により固定されており、旋回装置3の作動時にこのプラスチックグリース30により転動体収容部13にグリースが自動的に補給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等、下部構造体に対して上部構造体を旋回可能に連結するために設けられる旋回装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル,クレーン,ホイールショベル等の建設機械は、走行手段としてクローラ式若しくはホイール式の下部走行体を有し、この下部走行体に旋回装置を介して上部旋回体が設置されている。そして、上部旋回体には、作業手段や運転室等が設置されることになる。下部走行体と上部旋回体との間を旋回可能に連結する旋回装置は、旋回軸受と旋回駆動手段とから構成される。旋回軸受は、内輪と外輪とを有し、これら内輪と外輪との間に転動体収容部が形成されており、この転動体収容部内には鋼球からなる転動体が所定数だけ装着されると共に、相隣接する転動体間には間座が介装されて、各々の転動体を位置決めしている。通常、内輪は下部走行体に連結され、外輪は上部旋回体に連結されている。そして、旋回駆動手段として、内輪の内面にはリングギアが形成されており、またこのリングギアには上部旋回体に設けた旋回モータの出力軸に旋回ピニオンが取り付けられており、この旋回ピニオンが内輪のリングギアに噛合している。
【0003】
従って、旋回モータを駆動すると、リングギアに噛合している旋回ピニオンが回転することになる結果、上部旋回体に連結されている外輪が下部走行体に連結されている内輪と相対回動することになる。この外輪と内輪との相対回動時における摩擦を最小限に抑制するために、その間に転動体が介装されているが、さらに転動体の回転を円滑に行なわせるために、転動体収容部内には潤滑材として、例えばグリースが封入されている。また、転動体収容部は転動体が収容されるスペースを有するものであるが、その上下の部位は内輪と外輪との間に狭い隙間が形成されて、旋回時に内輪と外輪とが摺接しないようにしている。従って、転動体収容部の上下両端部は開口しているので、封入されたグリースが外部に漏出しないように保持するために、内輪と外輪との間にシール部材が掛け渡すようにして装着されている。シール部材は、通常、転動体収容部の上下に装着されており、これによって転動体収容部は閉塞状態となる。
【0004】
ここで、シール部材は一端側が内輪,外輪のいずれか一方に固定されているが、他端部は相手方に対して摺接することから、完全な密閉を図ることはできない。このために、長期間の間には、シール漏れ等により転動体収容部内のグリースが減少することになる。このために、従来は、転動体収容部に定期的にまたは随時において給脂を行なうようにしていたが、この給脂作業は面倒なことから、長期間にわたって給脂を行なう必要をなくすために、グリースの自動補給を行なうようにしたものは従来から知られている。
【0005】
ここで、内輪に設けたリングギアと旋回ピニオンとの間を潤滑するために、内輪の内側に円環状のグリースバスが設けられており、旋回ピニオンが回転するときに、グリースバス内のグリースが掻き揚げられることになる。そこで、このグリースバス内のグリースを補給源とする構成は、従来から知られている。このために、内輪と外輪との間における上部側にはシール部材を介装せずに、この上部側の隙間を開放させることによって、旋回ピニオンの作動により掻き揚げられたグリースをこの隙間から転動体収容部内に導くように構成している。
【0006】
さらに、グリースバスからのグリースの補給だけでなく、新鮮なグリースを供給するために、転動体収容部内に設けられる間座にプラスチックグリースを装着する構成としたものが、特許文献1に開示されている。プラスチックグリースは、ポリエチレン等の樹脂材料をその溶融温度以上に加熱した状態で、この樹脂材料とグリースとを混合した後に、それを常温にまで冷却して、所定の形状となるように固形化させたものである。このプラスチックグリースには、固形化された樹脂内に液状のグリースが分散した状態となっている。従って、プラスチックグリースを圧縮変形させると、樹脂内に保持されている新鮮なグリースが滲み出すようになり、また圧縮を解除すると、周囲に存在するグリースを吸収することになる。
【特許文献1】特開2002−173951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように構成すると、グリースバスからグリースを補給するだけでなく、プラスチックグリースから新鮮なグリースを供給できるようにもなり、面倒な給脂をすることなく、摺動条件の良いグリースが供給されるので、旋回軸受を長期間にわたって円滑に作動させることができる等といった優れた効果を奏する。しかしながら、この特許文献1の構成においても、なお問題点がない訳ではない。
【0008】
即ち、転動体収容部へのグリース供給源として、プラスチックグリースからは新鮮なグリースが供給されるが、グリースバスから補給されるグリースには不純物が混入しているおそれがある。即ち、グリースバスは実質的に密閉状態に保たれているが、このグリースバスを区画形成する壁面の内外における温度差により結露が生じて、水分がグリースバス内のグリースに混入する可能性がある。また、グリースバスは下部走行体側と上部旋回体との間に設けられており、つまりグリースバスを密閉する壁は相対回動する下部走行体を構成する部材と上部旋回体を構成する部材とからなり、しかも円環状に形成されたグリースバスの中央に上下に貫通するようにセンタジョイントが設けられている等の点から、グリースバスの完全な密閉性確保を行なうことができない。特に、建設機械は野外で稼動するものであることから、グリースバス内に雨水や塵埃等が浸入するのを完全に防止することはできない。さらに、グリースバス内のグリースはリングギアと旋回ピニオンとの噛合部を潤滑するためのものであり、この噛合部には磨耗粉が発生するおそれもある。
【0009】
従って、グリースバス内のグリースを転動体収容部に補給源とすることは、汚損されたグリースが補給される可能性がある点で望ましいものではない。ただし、転動体収容部へのグリースの補給をプラスチックグリースに限定し、グリースバスから補給しないようにした場合には、作動中に漏れ出すグリースによる減少を補えないので、面倒な給脂を頻繁に行なわなければならなくなる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、グリースバスから内輪と外輪との間の転動体収容部にグリースを補給するに当って、このグリースに混入する不純物を除去できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明は、内輪と外輪との間に円環状の転動体収容部を形成し、この転動体収容部内に所定数の転動体と間座とを交互に配置し、かつ潤滑材を封入した旋回軸受を有する旋回装置であって、前記内輪と外輪との間には、その下部側に前記転動体収容部の下方をシールする円環状シール部材を装着し、上部側には円環状のプラスチックグリースを装着する構成としたことをその特徴とするものである。
【0012】
内輪と外輪との間に形成されている転動体収容部の上下に円環状の隙間が形成されるが、このうち上部側の隙間からグリースを自動的に補給する。上部側の隙間にはプラスチックグリースが装着されており、このプラスチックグリースには新鮮なグリースが保持されている。旋回装置の作動中に内輪と外輪との間の隙間が変化するので、プラスチックグリースが圧縮変形される。このために、プラスチックグリースに保持されている新鮮なグリースが転動体収容部に供給される。
【0013】
旋回軸受を構成する内輪と外輪とが相対回動する際に、プラスチックグリースは内輪の外周面と外輪の内周面とに当接した状態で摺動するが、この摺動はプラスチックグリースに保持されているグリースにより潤滑されるので、内輪と外輪との間の相対回動に対する抵抗は実質的に大きくならない。
【0014】
旋回軸受においては、内輪の内面にリングギアが形成されており、このリングギアに旋回ピニオンを噛合させる構成とする。このリングギアと旋回ピニオンとの噛合部を潤滑するために、内輪の内側に円環状のグリースバスが形成される。このグリースバスのグリースも転動体収容部への補給源とする。これによって、転動体収容部の空間には、給脂を行なわなくても、グリースが不足して潤滑切れが発生することはない。ただし、グリースバス内のグリースには不純物が混入している。プラスチックグリースの圧縮時にはそれに保持されているグリースが転動体収容部に供給され、圧縮力が解除され、また膨張する際にはグリースバスから流出したグリースを吸収する。このときに、グリース内の不純物を除去するフィルタとしての機能を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成することによって、転動体収容部には常に必要量のグリースを確保できるようになり、長期間にわたって給脂作業を行なう必要がなくなり、しかも転動体収容部内に汚損されたグリースが入り込むのを防止でき、常に良好な潤滑機能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。まず、図1に旋回装置が装着される建設機械の一例としての油圧ショベルの全体構成を示す。なお、本発明の旋回装置は油圧ショベルに装着されるものに限定されないことは言うまでもない。
【0017】
図中において、1は下部走行体、2は上部旋回体をそれぞれ示し、上部旋回体2は旋回装置3を介して下部走行体1に連結されている。下部走行体1は、図示のものでは、履帯を有するクローラ式の走行手段を備えている。また、上部旋回体2には、作業手段としてのフロント作業機4が装着されており、またこのフロント作業機4と並べて運転室5が設置されている。そして、運転室5の後部位置には、エンジン等の機器類を内蔵する建屋6が設けられ、最後部位置にはカウンタウエイト7が設置されている。
【0018】
図2に旋回装置3の構成を示す。旋回装置3は、旋回軸受10と、旋回駆動手段20とから構成されている。旋回軸受10は、それぞれ円筒状に形成した内輪11及び外輪12を有し、これら内輪11の外周面と外輪12の内周面との間には転動体収容部13が形成されており、この転動体収容部13には、鋼球からなる転動体14と、図示しない間座とが円周方向に交互に配列されている。内輪11は下部走行体1のセンタフレームに立設した丸胴15にボルトにより連結されており、また外輪12は上部旋回体2の床面16にボルトで連結されている。
【0019】
旋回駆動手段20は、上部旋回体2に設置した旋回モータ21を有し、この旋回モータ21の出力軸には旋回ピニオン22が連結して設けられている。そして、内輪11の内周面にはリングギア23が設けられており、旋回ピニオン22はこのリングギア23と噛合している。
【0020】
旋回ピニオン22とリングギア23との噛合部を潤滑するために、丸胴15にはバス形成壁24が取り付けられている。このバス形成壁24は、旋回ピニオン22が配置されている部位より内周側において、斜め上方に立ち上がる傾斜壁24aとなっており、これによって円環状のグリースバス25が形成され、このグリースバス25には所定の高さ位置までグリースが貯留されている。バス形成壁24の傾斜壁24aより内側の部位は、上部旋回体2の床面16に近接した位置で水平壁部24bを構成し、この水平壁部24bと床面16との間にはグリースバス25を密閉するために円環状のシール部材26が装着されている。さらに、バス形成壁24の中央部は開口しており、この開口部にセンタジョイント27が取り付けられている。センタジョイント27は上部旋回体2側に設置した油圧ポンプからの配管を下部走行体1における走行駆動手段を構成する走行モータに接続するためのものである。
【0021】
以上のように構成される旋回装置3において、旋回駆動手段20を構成する旋回モータ21を駆動して旋回ピニオン22を回転させると、この旋回ピニオン22は旋回軸受10を構成する内輪11のリングギア23に沿って転動する。内輪11は接地している下部走行体1側に設けられているので、外輪12と共に上部旋回体2が旋回することになる。このときに転動体14は転動体収容部13内で回転することになり、内輪11と外輪12とは非接触状態に保持される。このために、転動体14の全周をグリースの油膜で覆うようにして潤滑することにより、円滑な旋回を可能とし、旋回時における負荷の軽減が図られる。また、転動体14と内輪11の外面及び外輪12の内面との当接部に磨耗が生じるのを抑制している
【0022】
このように、旋回時の負荷の軽減及び磨耗の抑制を図るために、図3に示したように、転動体収容部13内にはグリースが封入されるが、内輪11と外輪12との間全体を非接触状態に保つために、転動体収容部13の上下には開放された円環状隙間13a,13bが形成される。従って、この円環状隙間13a,13bからグリースが流出しないように保持する構成としている。このために、転動体収容部13に通じる下部側の円環状隙間13bは、内輪11側に固定され、外周方向に延在させたリップ状シール部材28が装着されている。これによって、転動体収容部13内のグリースは下方に流出するのを防止することができる。
【0023】
一方、転動体収容部13の上部側の円環状隙間13aについては、内輪11の外周面及び外輪12の内周面は上端部に向けて斜め方向に切り欠いたテーパ面11a,12aとなっており、断面が上方に向けて概略V字状に拡開している。そして、この円環状隙間13aにはプラスチックグリース30が装着されている。プラスチックグリース30は円環状隙間13aとほぼ同じ形状となっており、V字状に拡開している円環状隙間13aの上方からプラスチックグリース30を容易に装着できるようにしている。また、このようにして装着したプラスチックグリース30がみだりに円環状隙間13aから脱出しないように固定するために、外輪12の上面には押さえ板31が着脱可能に装着されている。この押さえ板31は、図4に示したように、プラスチックグリース30の上面に対して、4箇所程度装着されており、この押さえ板31によりプラスチックグリース30はテーパ面11a,12aに向けて若干押圧された状態となっている。これによって、プラスチックグリース30はこれらテーパ面11a及び12aに密着することになる。
【0024】
ここで、プラスチックグリース30は、背景技術の項で説明したように、このポリエチレン等の樹脂材料とグリースとを混合した状態で、樹脂材料を溶融温度以上に加熱し、それを常温にまで冷却すると共に所定の形状となるように成形したものであり、内部にはグリースが保持されている。つまり、プラスチックグリース30はグリースのキャリアであり、その樹脂を圧縮させると、内部からグリースが滲み出すようになり、また圧縮力を解除して元の状態に復元する際や、部分的に膨張させると、周囲からグリースを吸引することになる。
【0025】
旋回軸受10を以上のように構成することによって、転動体収容部13内に封入されたグリースにより転動体14の全周にグリースの油膜が形成されて、内輪11と外輪12との相対回動時における摩擦が著しく低減されて、旋回を軽い負荷で円滑に行なわせることができ、しかも転動体14,内輪11及び外輪12の摺動部の磨耗低減が図られる。実際にグリースが必要な部位は、転動体収容部13の内部であって、転動体14が装着されている部位である。また、内輪11と外輪12との間において、その上部側に形成したテーパ面11a,12aにはプラスチックグリース30が当接しており、しかも押さえ板31の作用により押し付け力が作用している。プラスチックグリース30にはグリースが保持されているので、旋回時にその間の摺動を円滑に行なうことができる。
【0026】
転動体収容部13の上下に形成されている下部側の円環状隙間13bにはリップ状シール部材28が装着されているので、内部に封入したグリースが保持されて、流出することはない。しかしながら、リップ状シール部材28は相互に相対回動する内輪11と外輪12との間を掛け渡しているので、長期間の間には、転動体収容部13内のグリースは徐々に漏出することになるために、グリースを補給する必要がある。
【0027】
プラスチックグリース30はグリースのキャリアであって、それを構成する樹脂は多孔質となり、その空隙にグリースが保持されている。旋回時には、内輪11と外輪12との隙間が若干変形することになるので、このプラスチックグリース30が圧縮されて、その内部に保有するグリースが滲み出して、重力の作用によって転動体収容部13に供給される。一方、旋回時には旋回ピニオン22とリングギア23との噛合によりグリースバス25内のグリースが掻き揚げられて、プラスチックグリース30の上面等がグリースを被ることになる。前述のようにして圧縮されたプラスチックグリース30が復元する際には、周囲からグリースを吸収することになる。このときには、プラスチックグリース30はグリースバス25からのグリースで濡れた状態となっているので、このグリースを飽和状態となるまで吸収することになる。旋回装置3の作動時には、これが繰り返されるので、転動体収容部13内に自動的にグリースの補給が行なわれる。
【0028】
ところで、グリースバス25の内部は一応シールされているものの、完全に密閉状態とはなっていない。特に、内輪11及び外輪12の取付部や、旋回モータ21の取付部には僅かな隙間が生じるのを防止できない。また、バス形成壁24と上部旋回体2の床面16との間に介装されているシール部材26は長期間の間には、磨耗によりシール機能が低下することになる。そして、油圧ショベル等の建設機械は野外で稼動することから、湿潤な空気がグリースバス25に入り込み、内外の気温差によりバス形成壁24等に結露が発生して、グリースバス25内のグリースに水分が混入する可能性がある。また、雨天時には、雨水がグリースバス25内に浸入する可能性もある。さらに、細かい塵埃も入り込む可能性があり、さらに旋回ピニオン22とリングギア23との噛合による磨耗粉の発生、さらにシール部材26の摺動による磨耗粉の発生も防止することができない。
【0029】
以上のことから、グリースバス25内のグリースは徐々に不純物が混入して劣化することになる。グリースバス25内のグリースは旋回ピニオン22とリングギア23との噛合部を潤滑するためのものであり、グリースバス25内のグリースの量も多いこと等から、グリースに多少の不純物が混入しても大きく潤滑性が損なわれるようなことはない。これに対して、転動体収容部13内における転動体14と内輪11及び外輪12との間における当接部の潤滑性の要求はグリースバス25より厳しいものであり、接触面積も大きいことから、不純物による摺動性の低下、異物等による磨耗の促進等がより顕著になる。従って、不純物により汚損され、異物が混入したグリースバス25内のグリースを直接転動体収容部13内に導入させず、不純物や異物を除去して摺動条件の良いグリースを供給するようにしている。
【0030】
このために、プラスチックグリース30を、グリースバス25から転動体収容部13にグリースを補給する際に、これら不純物や異物等を除去するフィルタとしての機能を発揮させるようにしている。即ち、プラスチックグリース30は外部からグリースを吸収することができる多孔質の部材であるが、多数の微小孔を有するものであって、外部から磨耗粉や塵埃等がプラスチックグリース30内に取り込まれるのを防止できる。また、水とグリースとの比重差が大きいものであり、プラスチックグリース30がグリースバス25から供給されるグリースを吸収する際には、その上面側からであり、しかもこのグリースの吸収は緩慢な速度で行なわれることから、このグリース吸収時に油水分離がなされて、プラスチックグリース30に水分を含んだグリースが吸収されるのを極力抑制される。つまり、新鮮な、若しくは劣化度合いが少なく、潤滑条件が良好なグリースを転動体収容部13に補給することができる。
【0031】
また、旋回時にはグリースがプラスチックグリース30の上に掻き揚げられるが、かつ振動の発生や車両の傾き等によって、掻き揚げられたグリースが流動化することになる。従って、プラスチックグリース30でグリースから分離された残滓である磨耗粉や塵埃等はその流れにより流出することになり、このプラスチックグリース30がフィルタとして機能する際における目詰まりが防止される。
【0032】
以上のように、転動体収容部13には、良質のグリースが自動的に補給されるので、長期間にわたって面倒な給脂作業を行なわなくても、旋回軸受10を円滑に作動させることができ、潤滑切れ等が発生するおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の旋回装置が装着される建設機械の一例としての油圧ショベルの全体構成図である。
【図2】本発明の実施の一形態を示す旋回装置の要部断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】旋回軸受の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 下部走行体 2 上部旋回体
3 旋回装置 10 旋回軸受
11 内輪 12 外輪
11a,12a テーパ面
13 転動体収容部
13a,13b 円環状隙間
14 転動体 16 床面
20 旋回装置 21 旋回モータ
22 旋回ピニオン 23 リングギア
24 バス形成壁 25 グリースバス
30 プラスチックグリース 31 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪との間に円環状の転動体収容部を形成し、この転動体収容部内に所定数の転動体と間座とを交互に配置し、かつ潤滑材を封入した旋回軸受を有する旋回装置において、
前記内輪と外輪との間には、その下部側に前記転動体収容部の下方をシールする円環状シール部材が装着され、上部側には円環状のプラスチックグリースを装着する
構成としたことを特徴とする旋回装置。
【請求項2】
前記内輪の内面にリングギアを形成し、このリングギアには旋回ピニオンを噛合させる構成となし、このリングギアと前記旋回ピニオンとの噛合部にグリースを供給するために、前記内輪の内側に円環状のグリースバスを形成し、前記プラスチックグリースは前記内輪と前記外輪とに密着するように装着し、このプラスチックグリースを介して前記グリースバスからのグリースを前記転動体収容部に補給する構成としたことを特徴とする請求項1記載の旋回装置。
【請求項3】
前記内輪及び外輪における前記プラスチックグリースの装着部は、上端側に向けて拡開するテーパ面により形成し、かつこのプラスチックグリースを前記テーパ面に押圧する押さえ部材を設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の旋回装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−16887(P2006−16887A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196952(P2004−196952)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】