昇圧装置及び電動パワーステアリング装置
【課題】 製造コストの上昇及び出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができる昇圧装置を提供すること。
【解決手段】 マイコン11は、昇圧装置が初期状態にあるか否かを判定する初期状態判定部35と、その判定に基づいて目標電圧Vout*を補正する目標電圧補正演算部36とを備える。そして、目標電圧補正演算部36は、昇圧装置が初期状態にある場合には、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧から所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するよう目標電圧Vout*を補正する。
【解決手段】 マイコン11は、昇圧装置が初期状態にあるか否かを判定する初期状態判定部35と、その判定に基づいて目標電圧Vout*を補正する目標電圧補正演算部36とを備える。そして、目標電圧補正演算部36は、昇圧装置が初期状態にある場合には、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧から所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するよう目標電圧Vout*を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧装置及びそれを備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用パワーステアリング装置として、モータを駆動源とする電動パワーステアリング装置(EPS)が広く採用されるようになっており、こうしたEPSには、昇圧回路により電源電圧を昇圧し、該昇圧された昇圧電圧に基づいてモータ制御を行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のEPSは、車載電源と駆動回路との間に設けられた昇圧回路と該昇圧回路を制御する制御装置とからなる昇圧装置を備えている。そして、この昇圧装置により昇圧した電圧を駆動回路に印加することで、アシスト力の強化及びその立ち上がり特性の改善を図るようになっている。
【特許文献1】特開2003−319700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のEPSでは、制御装置は、昇圧回路の出力電圧(実電圧)とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により同出力電圧を制御することで、電源電圧の変動に関わらずその出力電圧の安定化を図るようになっている。
【0005】
しかしながら、例えば、始動時(IGオン時)や故障診断後のリセット時等の初期状態には、昇圧回路の出力電圧は電源電圧と略等しい電位まで低下しているため、目標電圧と出力電圧との偏差が極めて大きな状態となり、その結果、出力電力が急速に立ち上がり、目標電圧を超えてオーバーシュートするおそれがある。
【0006】
そのため、こうしたオーバーシュート時の過剰昇圧電圧に耐えうるよう昇圧回路の平滑コンデンサを大型化する、或いは上記昇圧制御の応答性を低下させることでオーバーシュートの発生を防止する等の対策が必要となり、何れの対策を採用するにしても、製造コストの上昇、或いは出力電圧の不安定化といった不都合が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造コストの上昇及び出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができる昇圧装置及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段を備え、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記目標電圧を前記電源電圧から時間経過とともに徐々に増加させること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、初期状態においても目標電圧と出力電圧との偏差を小さく抑えることが可能となり、出力電圧は急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧まで昇圧される。従って、昇圧回路のコンデンサの大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御演算により決定したDUTY比を有する制御信号を前記昇圧回路に対して出力することにより前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、前記DUTY比の上限を決定する決定手段と前記制御信号のDUTY比を前記上限以下に制限する制限手段とを備え、前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記上限を時間経過とともに徐々に増加させること、を要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、制御信号のDUTY比は、常に上限以下に制限され、且つその上限は、初期状態の始点から時間経過とともに徐々に増加するため、出力電圧は急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧まで昇圧される。従って、昇圧回路のコンデンサの大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が小となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が所定値より大きい場合には、前記偏差が所定値以下である場合の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、経過時間が大となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点からの経過時間が予め設定された所定時間を経過していない場合には、前記所定時間経過後の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0016】
上記各構成によれば、初期状態時において、その過大な偏差に起因する急速な出力電圧の立ち上がりにより、オーバーシュートが問題となる始動直後には、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインにてフィードバック制御がなされるため、出力電圧は、オーバーシュートすることなく、時間経過とともに滑らかに上昇する。そして、請求項3及び請求項4の構成においては偏差の縮小に伴って、また、請求項5及び請求項6の構成においては時間経過により、応答性の高い大きな値を有するフィードバックゲインにてフィードバック制御がなされることで、出力電圧は速やかに目標電圧まで昇圧される。従って、昇圧回路のコンデンサの大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6に記載の昇圧装置を備えた電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造コストの上昇及び出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することが可能な昇圧装置及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1に示すように、EPS1は、車両の操舵系にアシスト力を付与する駆動源としてのモータ2と、該モータ2を制御するECU3とを備えている。
ステアリングホイール(ステアリング)4は、ステアリングシャフト5を介してラック6に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト5の回転は、ラックアンドピニオン機構(図示略)にてラック6の往復直線運動に変換され操舵輪8に伝達される。本実施形態のEPS1は、モータ2がラック6と同軸に配置された所謂ラック型EPSであり、モータ2が発生するアシストトルクは、ボール送り機構(図示略)を介してラック6に伝達される。そして、ECU3は、このモータ2が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する。
【0021】
図2に示すように、ECU3は、モータ制御信号を出力するマイコン11と、モータ制御信号に基づいてモータ2に駆動電力を供給する駆動回路12とを備えている。尚、本実施形態のモータ2はブラシレスモータであり、駆動回路12は、モータ制御信号に基づいて三相(U,V,W)の駆動電力を供給する。
【0022】
マイコン11には、操舵トルクτを検出するためのトルクセンサ14、及び車速センサ15が接続されており(図1参照)、マイコン11は、入力された操舵トルクτ及び車速Vに基づいて操舵系に付与するアシスト力、即ちモータ2が発生するアシストトルクを決定する。
【0023】
また、マイコン11には、モータ2に通電される電流値を検出するための電流センサ17,18、及びモータ2の回転角(電気角)θを検出するための回転角センサ19が接続されており、マイコン11は、これら各センサの出力信号に基づいてモータ2の各相電流値Iu,Iv,Iw、及びその回転角θを検出する。そして、マイコン11は、この検出された各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θに基づいて、モータ2に上記決定されたアシストトルクを発生させるべくモータ制御信号を出力する。
【0024】
尚、本実施形態では、マイコン11は、相電流値Iu,Iv,Iwをd/q変換し、d/q座標系における電流制御、詳しくは、q軸電流値がアシストトルクの目標値となるq軸電流指令値に追従するように制御する。そして、マイコン11は、このd/q座標系における電流制御に基づき決定されたモータ制御信号を駆動回路12に出力する。
【0025】
一方、駆動回路12は、モータ2の相数に対応する複数(2×3個)のパワーMOSFET(以下、単にFET)により構成されており、具体的にはFET21a,21dの直列回路、FET21b,21eの直列回路及びFET21c,21fの直列回路を並列接続することにより構成されている。そして、FET21a,21dの接続点22uはモータ2のU相コイルに接続され、FET21b,21eの接続点22vはモータ2のV相コイルに接続され、FET21c,21fの接続点22wはモータ2のW相コイルに接続されている。
【0026】
マイコン11から出力されるモータ制御信号は、各FET21a〜21fのゲート端子に印加される。そして、このモータ制御信号に応答して各FET21a〜21fがオン/オフすることにより、直流電源20から供給される直流電圧が三相(U,V,W)の駆動電力に変換されモータ2に供給されるようになっている。
【0027】
また、EPS1は、電源電圧Vinを昇圧して駆動回路12に出力する昇圧装置23を備えている。本実施形態では、昇圧装置23は、昇圧回路25と、制御手段としてのマイコン11とにより構成されており、昇圧回路25は、直流電源20と駆動回路12との間の電力供給経路に設けられている。そして、昇圧回路25は、マイコン11に制御されることにより直流電源20の電源電圧Vinを昇圧して駆動回路12に出力する。
【0028】
図3に示すように、本実施形態の昇圧回路25は、FET26a,26b、コイル27、及びコンデンサ28により構成されている。コイル27は、一端が直流電源20に接続されるとともに他端がFET26aの一端に接続されており、FET26aの他端は接地されている。また、コイル27とFET26aと間の接続点aは、FET26bの一端に接続されており、FET26bの他端は、駆動回路12に接続されている。そして、FET26bと駆動回路12との間の接続点bは、コンデンサ28を介して接地されている。
【0029】
また、各FET26a,26bのゲート端子は、マイコン11と接続されており、マイコン11は、各FET26a,26bのゲート端子に制御信号を印加することにより、各FET26a,26bを交互にオン/オフ制御する。これにより、接続点aにおける電圧は、FET26aのオフ時にコイル27に発生する逆起電力が電源電圧Vinに重畳された電圧となり、FET26aがオン時に接地電位となる。そして、この電圧がFET26bのオン時に接続点bに伝達される。そして、昇圧回路25は、接続点bにおいて脈動的に変化する電圧・電流をコンデンサ28にて平滑化することにより、直流電源20の電源電圧Vinを昇圧した出力電圧Voutを出力するようになっている。
【0030】
本実施形態では、マイコン11は、各FET26a,26bに対し、制御信号として所定のDUTY比を有するパルス信号を出力することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutを制御する(昇圧制御)。
【0031】
具体的には、マイコン11には、電源電圧Vinを検出するための第1の電圧センサ29とともに、昇圧回路25の出力電圧Voutを検出するための第2の電圧センサ30が接続されている。そして、マイコン11は、この第2の電圧センサ30により検出された出力電圧Voutとその制御目標である目標電圧Vout*との偏差に基づいて、出力電圧Voutのフィードバック制御演算を行う。そして、マイコン11は、このフィードバック制御演算により決定されたDUTY比を有する制御信号を各FET26a,26bに出力し、同制御信号によって各FET26a,26bのオン/オフ時間が変化することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutが制御されるようになっている。
【0032】
尚、昇圧回路25の出力電圧Voutは、制御信号のDUTY比(FET26aに対して出力する制御信号のオンDUTY比)が大きい場合に高くなり、そのDUTY比が小さい場合には低くなる。
【0033】
[昇圧制御]
次に、本実施形態の昇圧装置における昇圧制御の態様について詳述する。
図4は、本実施形態のマイコン11の制御ブロック図である。尚、以下に示す各制御ブロックは、マイコン11が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。
【0034】
同図に示すように、マイコン11は、制御目標となる目標電圧Vout*を設定する目標電圧設定部31と、昇圧回路25の出力電圧Voutを検出する出力電圧検出部32と、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づきフィードバック制御演算を行うFB制御演算部33とを備えている。
【0035】
本実施形態では、目標電圧設定部31は、目標電圧Vout*として所定電圧V0を設定し、出力電圧検出部32は、第2の電圧センサ30の出力信号に基づいて昇圧回路25の出力電圧Voutを検出する。目標電圧設定部31により設定された目標電圧Vout*、及び出力電圧検出部32により検出された出力電圧Voutは、FB制御演算部33に入力される。そして、FB制御演算部33は、その目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づいて、昇圧回路25の出力電圧Voutを制御するためのフィードバック制御演算を実行する。
【0036】
具体的には、FB制御演算部33は、フィードバック制御演算により、昇圧回路25に出力する制御信号のDUTY比を決定し、その値を示すDUTY指示値Dを制御信号出力部34に出力する。そして、制御信号出力部34が、FB制御演算部33から入力されたDUTY指示値Dに示されるDUTY比を有する制御信号を生成し、昇圧回路25に出力することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutが制御されるようになっている。
【0037】
また、本実施形態のマイコン11は、昇圧装置23が初期状態にあるか否かを判定する判定手段としての初期状態判定部35と、その判定に基づいて目標電圧Vout*を補正する目標電圧補正演算部36とを備えている。そして、目標電圧補正演算部36は、昇圧装置23が初期状態にある場合には、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧Vinから所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するように目標電圧Vout*を補正する。
【0038】
詳述すると、本実施形態のマイコン11には、車両始動時にイグニッションスイッチがオン(IGオン)されたことを示す始動信号としてのIGオン信号、及び故障診断からの復帰、即ち再始動を示す再始動信号としてのリセット信号が入力されるようになっている(図1参照)。そして、初期状態判定部35は、これらIGオン信号又はリセット信号の入力があった場合に昇圧装置23が初期状態にあると判定し、その判定結果を示す初期状態フラグを目標電圧補正演算部36に出力する。
【0039】
一方、目標電圧補正演算部36には、目標電圧設定部31により設定された目標電圧Vout*が入力される。そして、目標電圧補正演算部36は、初期状態フラグの入力があった場合には、目標電圧Vout*を補正して、その補正後の目標電圧Vout**をFB制御演算部33に出力する。
【0040】
具体的には、目標電圧補正演算部36は、初期状態フラグ入力からの経過時間tと、補正後の目標電圧Vout**を制限する目標電圧ガード係数Gvとが関連付けられた目標電圧ガード係数マップ36aを有しており(図5参照)、この目標電圧ガード係数マップ36aにおいて、目標電圧ガード係数Gvは、上記経過時間tが大となるに従って大となるように設定されている。詳しくは、目標電圧ガード係数Gvは、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定されている。
【0041】
そして、目標電圧補正演算部36は、この目標電圧ガード係数マップ36aを用いて上記経過時間tに対応する目標電圧ガード係数Gvを決定し、その目標電圧ガード係数Gvに基づく以下の式に従って目標電圧Vout*を補正する。
【0042】
Vout**=(Vout*−Vin)×Gv+Vin ・・・(1)
即ち、目標電圧補正演算部36は、目標電圧設定部31から入力される目標電圧Vout*について、その電源電圧Vinからの昇圧分に相当する値(Vout*−Vin)に、経過時間tが大となるに従って徐々に増加する目標電圧ガード係数Gvを乗ずることにより、目標電圧Vout*を補正する。そして、これにより、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)から所定時間Tを経過するまでの間、時間経過とともに徐々に増加する補正後の目標電圧Vout**をFB制御演算部33に出力するようになっている(図6参照)。
【0043】
次に、本実施形態のマイコン11による初期状態判定及び昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態では、マイコン11は、定時割り込みにより、初期状態判定及び昇圧制御を順次実行する。即ち、図7のフローチャートに示すように、マイコン11は、IGオン信号又はリセット信号の入力があるか否かを判定することにより、昇圧装置23が初期状態にあるか否かを判定する(ステップ101)。そして、IGオン信号又はリセット信号の入力がある場合(ステップ101:YES)には、昇圧装置23が初期状態にあると判定し、その判定結果を示す初期状態フラグを「ON」とする(ステップ102)。尚、IGオン信号又はリセット信号の入力がない場合(ステップ101:NO)には、上記ステップ102の処理を実行しない。
【0044】
また、図8のフローチャートに示すように、マイコン11は、昇圧制御処理において、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ201)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ202)。
【0045】
次に、マイコン11は、初期状態フラグが「ON」であるか否か、即ち初期状態にあるか否かを判定し(ステップ203)、初期状態フラグが「ON」である場合(ステップ203:YES)には、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間tに応じた目標電圧ガード係数Gvを決定する(ステップ204)。そして、その目標電圧ガード係数Gvに基づく上記(1)式に従って目標電圧補正演算を実行し(ステップ205)、その補正後の目標電圧Vout**にてフィードバック制御及び昇圧回路25に対する制御信号の出力を実行する(ステップ206)。
【0046】
次に、マイコン11は、上記経過時間tを計測するタイマをカウントアップし(t=t+1、ステップ207)、続いて経過時間tが予め設定された初期状態に相当する所定時間Tを経過したか否かを判定する(ステップ208)。そして、経過時間tが所定時間Tを経過したと判定した場合(t>T、ステップ208:YES)には、初期状態フラグを「OFF」として(ステップ209)、上記タイマをクリアする(t=0、ステップ210)。そして、所定時間Tを経過していない場合(t≦T、ステップ208:NO)には、このステップ209,ステップ210の処理を実行しない。
【0047】
即ち、マイコン11は、車両が初期状態にある場合(初期状態フラグが「ON」、ステップ203:YES)には、上記ステップ208において経過時間tが所定時間Tを経過したと判定するまで(t>T、ステップ208:YES)、定時割りこみ毎に、上記ステップ201〜ステップ208の処理を実行する。
【0048】
そして、経過時間tの増加とともに上記ステップ204において決定される目標電圧ガード係数Gvが徐々に増加することにより、上記ステップ205において演算される補正後の目標電圧Vout**もまた時間経過とともに徐々に増加するようになっている。
【0049】
尚、所定時間Tを経過し(t>T、ステップ208:YES)、上記ステップ209において初期状態フラグを「OFF」とした場合、マイコン11は、次回以降の定時割り込み時には、初期状態フラグは「OFF」であると判定し(ステップ203:NO)、上記ステップ204〜ステップ210の処理を実行しない。そして、上記ステップ202で設定された目標電圧Vout*にてフィードバック制御及び昇圧回路25に対する制御信号の出力を実行する(ステップ211)。
【0050】
[作用・効果]
次に、上記のように構成された本実施形態の昇圧装置の作用・効果について説明する。
本実施形態のマイコン11は、昇圧装置23が初期状態にあるか否かを判定する初期状態判定部35と、その判定に基づいて目標電圧Vout*を補正する目標電圧補正演算部36とを備える。そして、目標電圧補正演算部36は、昇圧装置23が初期状態にある場合には、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧Vinから所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するように目標電圧Vout*を補正する。
【0051】
このような構成とすれば、初期状態にある場合には、その始点から所定時間Tを経過するまでの間、補正後の目標電圧Vout**を前記電源電圧から時間経過とともに徐々に増加させることができる。そして、この補正後の目標電圧Vout**に基づいてフィードバック制御を行うことで、初期状態においても目標電圧Vout**と出力電圧Voutとの偏差を小さく抑えることが可能となり、これにより、出力電圧Voutは急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧Vout*まで昇圧されるようになる。従って、昇圧回路25のコンデンサ28の大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態のEPS及び昇圧装置のハードウェア構成は、上記第1の実施形態と同一であり、マイコン41内の制御ブロックのみが相違する。
図9に示すように、本実施形態のマイコン41は、目標電圧補正演算部36(図4参照)に代えて、DUTY指示値(DUTY比)の上限値Dlimを決定する決定手段としての上限値決定部42と、制御信号出力部34に入力されるDUTY指示値を上限値Dlim以下に制限する制限手段としてのDUTY制限演算部43とを備えている。そして、初期状態には、上限値決定部42が、上限値Dlimを時間経過とともに徐々に大とすることにより、昇圧回路25に出力する制御信号のDUTY比を徐々に大とするようになっている。
【0054】
詳述すると、上限値決定部42には、初期状態判定部35の出力する初期状態フラグが入力されるようになっており、上限値決定部42は、初期状態フラグの入力があった場合には、初期状態フラグ入力からの経過時間tが大となるに従って、上限値Dlimを所定の最大値Dmaxまで徐々に増加させる。
【0055】
具体的には、上限値決定部42は、図10に示すような初期状態フラグ入力からの経過時間tと、上限値Dlimを決定するためのDUTYガード係数Gdとが関連付けられたDUTYガード係数マップ42aを有しており、このDUTYガード係数マップ42aにおいて、DUTYガード係数Gdは、経過時間tが大となるに従って大となるように設定されている。詳しくは、DUTYガード係数Gdは、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定されている。そして、上限値決定部42は、このDUTYガード係数マップ42aを用いて経過時間tに対応するDUTYガード係数Gdを決定し、そのDUTYガード係数GdをDUTY指示値の最大値Dmaxに乗ずることにより上限値Dlimを決定する(Dlim=Dmax×Gd)。尚、初期状態フラグの入力がない場合、即ち初期状態ではない場合には、上限値Dlimを最大値Dmaxとする(Dlim=Dmax)。
【0056】
一方、DUTY制限演算部43には、この上限値Dlim及びFB制御演算部33の出力するDUTY指示値Dが入力される。そして、DUTY制限演算部43は、そのDUTY指示値Dを上限値Dlim以下に制限したDUTY指示値D´を制御信号出力部34に出力する。
【0057】
具体的には、DUTY制限演算部43は、FB制御演算部33から出力されたDUTY指示値Dが上限値Dlimよりも大きい場合には、上限値DlimをDUTY指示値D´として制御信号出力部34に出力する(D´=Dlim)。また、入力されたDUTY指示値Dが上限値Dlim以下である場合には、そのDUTY指示値DをDUTY指示値D´として制御信号出力部34に出力する(D´=D)。
【0058】
そして、上限値決定部42から入力される上限値Dlimが、初期状態フラグ入力、即ち始動(又は再始動)から時間経過とともに大となることで、DUTY制限演算部43が制御信号出力部34に出力するDUTY指示値D´の値もまた徐々に大となる。
【0059】
即ち、制御信号出力部34に入力されるDUTY指示値D´は、常に上限値Dlim以下に制限され、且つ時間経過とともに徐々に増加するため、図11に示すように、出力電圧Voutは急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧Vout*まで昇圧される。
【0060】
そして、これにより、第1の実施形態と同様に、昇圧回路25のコンデンサ28の大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することができるようになっている。
【0061】
次に、本実施形態のマイコン41による昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態では、マイコン41は、第1の実施形態のマイコン11と同様に、定時割り込みにより、初期状態判定及び昇圧制御を順次実行する。尚、初期状態判定の処理手順については、第1の実施形態と同一であるため、その説明を省略する(図7参照)。
【0062】
図12のフローチャートに示すように、マイコン41は、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ301)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ302)。そして、その検出された出力電圧Vout及び目標電圧Vout*に基づくフィードバック制御演算によりDUTY指示値Dを生成する(ステップ303)。
【0063】
次に、マイコン41は、初期状態フラグが「ON」であるか否か、即ち初期状態にあるか否かを判定する(ステップ304)。そして、初期状態フラグが「ON」であると判定した場合(ステップ304:YES)には、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間tに応じたDUTYガード係数Gdを決定し(ステップ305)、そのDUTYガード係数GdをDUTY指示値の最大値Dmaxに乗ずることにより上限値Dlimを決定する(Dlim=Dmax×Gd、ステップ306)。尚、上記ステップ304において、初期状態フラグは「OFF」である、即ち初期状態は終了したと判定した場合(ステップ304:NO)には、上限値Dlimを最大値Dmaxとする(Dlim=Dmax、ステップ307)。
【0064】
次に、マイコン41は、上記ステップ303において生成したDUTY指示値Dが上記ステップ306又はステップ307において決定した上限値Dlimよりも大きいか否かを判定する(ステップ308)。そして、DUTY指示値Dが上限値Dlimよりも大きい場合(D>Dlim、ステップ308:YES)には、昇圧回路25に出力する制御信号の生成に用いるDUTY指示値D´を上限値Dlimに制限する(D´=Dlim,ステップ309)。また、DUTY指示値Dが上限値Dlim以下である場合(D≦Dlim、ステップ308:NO)には、同DUTY指示値D´を上記ステップ303において生成したDUTY指示値Dとする(ステップ310)。そして、上記ステップ309又はステップ310において決定したDUTY指示値D´に基づいて制御信号を生成し、その制御信号を昇圧回路25に出力する(ステップ311)。
【0065】
次に、マイコン41は、上記経過時間tを計測するタイマをカウントアップし(t=t+1、ステップ312)、続いて経過時間tが予め設定された初期状態に相当する所定時間Tを経過したか否かを判定する(ステップ313)。そして、経過時間tが所定時間Tを経過したと判定した場合(t>T、ステップ313:YES)には、初期状態フラグを「OFF」として(ステップ314)、上記タイマをクリア(t=0、ステップ315)する。そして、所定時間Tを経過していない場合(t≦T、ステップ313:NO)には、このステップ314,ステップ315の処理を実行しない。
【0066】
即ち、マイコン41は、初期状態にある場合(初期状態フラグが「ON」、ステップ304:YES)には、上記ステップ313において経過時間tが所定時間Tを経過したと判定するまで(t>T、ステップ313:YES)、定時割りこみ毎に、上記ステップ307を実行することなく、上記ステップ301〜ステップ306、及びステップ308〜ステップ313の処理を実行する。
【0067】
そして、経過時間tの増加とともに上記ステップ305において決定されるDUTYガード係数Gdが増加し、その結果、上記ステップ306において決定される上限値Dlimがもまた時間経過とともに徐々に増加するようになっている。
【0068】
(第3の実施形態)
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態のEPS及び昇圧装置のハードウェア構成は、上記第1の実施形態と同一であり、マイコン51内の制御ブロックのみが相違する。
図13に示すように、本実施形態のマイコン51は、初期状態判定部35及び目標電圧補正演算部36(図4参照)に代えて、FB制御演算部33において用いられるフィードバックゲインを決定する決定手段としてのゲイン決定部52を備えている。そして、このゲイン決定部52において、比例ゲインKp及び積分ゲインKiが決定され、FB制御演算部33において、その比例ゲインKpに基づく比例制御(P制御)及び積分ゲインKiに基づく積分制御(I制御)が実行されることにより、出力電圧Voutのフィードバック制御が行われるようになっている。
【0070】
詳述すると、本実施形態では、ゲイン決定部52には、目標電圧設定部31が設定した目標電圧Vout*及び出力電圧検出部32により検出された出力電圧Voutが入力されるようになっており、ゲイン決定部52は、その目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づいて比例ゲインKp及び積分ゲインKiを決定する。
【0071】
具体的には、ゲイン決定部52は、入力された目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差と所定の電位差Vcとを比較し、その偏差が電位差Vc以下である場合には、通常制御時に用いる、即ち応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0とする。そして、その偏差が電位差Vcよりも大きい場合には、上記通常制御時に用いる比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0よりも応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1とする。
【0072】
即ち、本実施形態では、図14に示すような初期状態時において、その過大な偏差に起因する急速な出力電圧Voutの立ち上がりにより、そのオーバーシュートが問題となる始動直後には、ゲイン決定部52において、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1が決定される。このため、出力電圧Voutは、目標電圧Vout*をオーバーシュートすることなく、時間経過とともに滑らかに上昇する。
【0073】
そして、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が所定の電位差Vc以下となった場合(切替タイミングtc)には、ゲイン決定部52において、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0が決定されるため、出力電圧Voutは、速やかに目標電圧Vout*まで昇圧される。
【0074】
その結果、上記各実施形態と同様に、昇圧回路25のコンデンサ28の大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することができるようになっている。
【0075】
次に、本実施形態のマイコン51による昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態のマイコン51は、第1の実施形態のマイコン11と同様に、定時割り込みにより、昇圧制御を実行する。
【0076】
図15のフローチャートに示すように、マイコン51は、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ401)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ402)。
【0077】
次に、マイコン51は、上記ステップ401において検出された出力電圧Voutと上記ステップ402において設定された目標電圧Vout*との偏差(|Vout*−Vout|)が、所定の電位差Vcよりも大きいか否かを判定する(ステップ403)。そして、その偏差が所定の電位差Vcよりも大きい場合(|Vout*−Vout|>Vc、ステップ403:YES)には、フィードバック制御(PI制御)に用いる比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1を決定する(Kp=Kp1,Ki=Ki1、ステップ404)。
【0078】
一方、上記ステップ403において、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差(|Vout*−Vout|)が、所定の電位差Vc以下である場合(|Vout*−Vout|≦Vc、ステップ403:NO)には、マイコン51は、比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、通常制御時に用いる、即ち応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0を決定する(Kp=Kp0,Ki=Ki0、ステップ405)。そして、マイコン51は、上記ステップ404又はステップ405において決定された比例ゲインKp及び積分ゲインKiに基づいてフィードバック制御を実行し、それに基づく制御信号を出力する(ステップ406)。
【0079】
このように、定時割り込み毎に、上記ステップ401〜ステップ406の処理を実行することにより、マイコン51は、始動直後から目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が所定の電位差Vc以下となるまでは、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1にて、出力電圧Voutのフィードバック制御を行う。そして、その後は、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0にて、出力電圧Voutのフィードバック制御を行うようになっている。
【0080】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、目標電圧設定部31は、目標電圧Vout*として所定電圧V0を出力することとした。しかし、これに限らず、例えば、モータ2の負荷変動等に応じてその値を変更する構成としてもよい。
【0081】
・上記第1の実施形態では、初期状態判定部35において初期状態にあると判定した場合に、目標電圧補正演算部36において、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧Vinから所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するように目標電圧Vout*を補正する構成とした。しかし、これに限らず、最終的に出力電圧Voutの制御目標となる目標電圧を時間経過とともに徐々に増加させる構成であればよい。従って、例えば、目標電圧補正演算部36における「補正」ではなく、目標電圧設定部31が、経過時間tに基づくマップ演算等により、電源電圧Vinから時間経過とともに徐々に増加する目標電圧Vout*を出力する構成としてもよい。また、目標電圧補正演算部36において、経過時間tと目標電圧Vout**とが関連付けられたマップを用いて同補正を行う構成としてもよい。
【0082】
・上記第1の実施形態では、目標電圧ガード係数マップ36aにおいて、目標電圧ガード係数Gvを、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定する。そして、この目標電圧ガード係数マップ36aにより決定される目標電圧ガード係数Gvに基づく上記(1)式に従って目標電圧補正演算を実行する構成とした。しかし、目標電圧ガード係数マップ36aの形状は、これに限るものではなく、目標電圧ガード係数Gvが時間経過とともに増加する設定であればよい。
【0083】
・上記第2の実施形態では、DUTYガード係数マップ42aにおいて、DUTYガード係数Gdを、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定する。そして、初期状態時には、このDUTYガード係数マップ42aにより決定されるDUTYガード係数GdをDUTY指示値の最大値Dmaxに乗ずることにより上限値Dlimを決定する構成とした(Dlim=Dmax×Gd)。しかし、これに限らず、経過時間tと上限値Dlimとが関係付けられたマップを用いて、上限値Dlimを決定する構成としてもよい。
【0084】
・上記第3の実施形態について、図16に示すマイコン61のように、更に第1及び第2の実施形態と同様の初期状態判定部35を設けて、初期状態時のみに、上記フィードバックゲインの変更を行う構成としてもよい。
【0085】
・上記第3の実施形態では、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1と、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0との切り替えを、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づいて行うこととした。しかし、これに限らず、予め切替タイミングtc(図14参照)に相当する所定時間T1を設定し、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間に基づいて行うこととしてもよい。尚、この所定時間T1は、第1及び第2の実施形態における所定時間Tよりも短く設定するとよい。
【0086】
具体的には、図17のフローチャートに示す処理手順で実現することができる。尚、この場合、第1の実施形態と同様に、定時割り込みにより、初期状態判定及び昇圧制御を順次実行するものとする。
【0087】
即ち、同図に示すように、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ501)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ502)。次に、初期状態フラグが「ON」であるか否か、即ち初期状態であるか否かを判定し(ステップ503)、初期状態フラグが「ON」である場合(ステップ503:YES)には、フィードバック制御に用いる比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1を決定する(Kp=Kp1,Ki=Ki1、ステップ504)。一方、上記ステップ503において、初期状態フラグが「OFF」である場合(ステップ503:NO)には、フィードバック制御に用いる比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0を決定する(Kp=Kp0,Ki=Ki0、ステップ505)。そして、上記ステップ504又はステップ505において決定した比例ゲインKp及び積分ゲインKiに基づいてフィードバック制御、並びにそれに基づく制御信号の出力を実行する(ステップ506)。
【0088】
次に、経過時間tを計測するタイマをカウントアップし(t=t+1、ステップ507)、続いて、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間tが、予め設定された切替タイミングtcに相当する所定時間T1を経過したか否かを判定する(ステップ508)。そして、経過時間tが所定時間T1を経過したと判定した場合(t>T1、ステップ508:YES)には、初期状態フラグを「OFF」として(ステップ509)、上記タイマをクリアする(t=0、ステップ510)。そして、所定時間T1を経過していない場合(t≦T1、ステップ508:NO)には、このステップ509,ステップ510の処理を実行しない。
【0089】
即ち、初期状態にある場合、(初期状態フラグが「ON」、ステップ503:YES)には、上記ステップ508において経過時間tが所定時間T1を経過したと判定するまで(t>T1、ステップ508:YES)、定時割りこみ毎に、上記ステップ501〜ステップ4、及びステップ506〜ステップ508の処理を実行する。つまり、ステップ504で決定される応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1(Kp=Kp1,Ki=Ki1)に基づいてフィードバック制御、並びにそれに基づく制御信号の出力を実行する。
【0090】
そして、所定時間T1が経過し(t>T1、ステップ508:YES)、上記ステップ509において初期状態フラグを「OFF」とした場合、次回以降の定時割り込み時には、初期状態フラグは「OFF」であると判定する(ステップ503:NO)。そして、上記ステップ505で決定される応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0(Kp=Kp0,Ki=Ki0)に基づいてフィードバック制御、並びにそれに基づく制御信号の出力を実行する。このような構成としても上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
・また、第3の実施形態並びに上記別例では、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0と、この比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0よりも応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1とを、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差(又は初期状態の始点からの経過時間)に基づいて切り替える構成とした。しかし、これに限らず、こうした比例ゲイン及び積分ゲインの切り替えは、3段階以上の複数段階で切り替える構成としてもよい。
【0092】
・また、図18(a)(b)に示すような、比例ゲインKp並びに積分ゲインKiと、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差とが関係付けられた比例ゲインマップ71a,積分ゲインマップ71bを用いたマップ演算等により、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が小となるほど、比例ゲインKp並びに積分ゲインKiを大とする。又は、図19(a)(b)に示すような、比例ゲインKp並びに積分ゲインKiと、初期状態の始点からの経過時間tとが関係付けられた比例ゲインマップ72a,積分ゲインマップ72bを用いたマップ演算等により、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内において、上記経過時間tが大となるほど比例ゲインKp並びに積分ゲインKiを大とする構成としてもよい。
【0093】
・更に、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が所定の電位差Vcより大きい場合(又は初期状態の始点からの経過時間が所定時間以内である場合)に用いる比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0は、通常制御時の比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1よりも応答性の低い小さな値を有するものであれば、どのように設定してもよい。従って、例えば、積分ゲインKi0を「0」として、実質的に比例制御のみにより出力電圧Voutを立ち上げて、その後、積分制御を加える構成としてもよい。
【0094】
・上記各実施形態では、本発明を昇圧装置付きのEPSに具体化したが、これに限るものではなく、EPS以外の用途に用いられる昇圧装置に具体化してもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
【0095】
(イ)請求項4に記載の昇圧装置において、前記制御手段は、前記フィードバック制御として、比例制御及び積分制御を実行するものであって、前記決定手段は、前記偏差が所定値より大きい場合には、前記積分制御のゲインをゼロとすること、を特徴とする昇圧装置。
【0096】
(ロ)請求項6に記載の昇圧装置において、前記フィードバック制御として、比例制御及び積分制御を実行するものであって、前記決定手段は、前記経過時間が前記所定時間を経過していない場合には、前記積分制御のゲインをゼロとすること、を特徴とする昇圧装置。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を示すブロック図。
【図3】昇圧装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】第1の実施形態のマイコンの制御ブロック図。
【図5】目標電圧ガード係数マップの概略構成図。
【図6】第1の実施形態における昇圧制御の作用説明図。
【図7】初期状態判定の処理手順を示すフローチャート。
【図8】第1の実施形態における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図9】第2の実施形態のマイコンの制御ブロック図。
【図10】DUTYガード係数マップの概略構成図。
【図11】第2の実施形態における昇圧制御の作用説明図。
【図12】第2の実施形態における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図13】第3の実施形態のマイコンの制御ブロック図。
【図14】第3の実施形態における昇圧制御の作用説明図。
【図15】第3の実施形態における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図16】別例のマイコンの制御ブロック図。
【図17】別例の昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図18】(a)比例ゲインマップの概略構成図、(b)積分ゲインマップの概略構成図。
【図19】(a)比例ゲインマップの概略構成図、(b)積分ゲインマップの概略構成図。
【符号の説明】
【0098】
1…EPS、11,41,51,61…マイコン、20…直流電源、23…昇圧装置、25…昇圧回路、28…コンデンサ、31…目標電圧設定部、32…出力電圧検出部、33…FB制御演算部、34…制御信号出力部、35…初期状態判定部、36…目標電圧補正演算部、42…上限値決定部、52…ゲイン決定部、Vin…電源電圧、Vout…出力電圧、Vout*,Vout**…目標電圧、V0…所定電圧、t…経過時間、T,T1…所定時間、Gv…目標電圧ガード係数、D,D´…DUTY指示値、Dlim…上限値、Dmax…最大値、Gd…DUTYガード係数、Kp,Kp0,Kp1…比例ゲイン、Ki,Ki0,Ki1…積分ゲイン、Vc…電位差、tc…切替タイミング。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧装置及びそれを備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用パワーステアリング装置として、モータを駆動源とする電動パワーステアリング装置(EPS)が広く採用されるようになっており、こうしたEPSには、昇圧回路により電源電圧を昇圧し、該昇圧された昇圧電圧に基づいてモータ制御を行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のEPSは、車載電源と駆動回路との間に設けられた昇圧回路と該昇圧回路を制御する制御装置とからなる昇圧装置を備えている。そして、この昇圧装置により昇圧した電圧を駆動回路に印加することで、アシスト力の強化及びその立ち上がり特性の改善を図るようになっている。
【特許文献1】特開2003−319700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のEPSでは、制御装置は、昇圧回路の出力電圧(実電圧)とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により同出力電圧を制御することで、電源電圧の変動に関わらずその出力電圧の安定化を図るようになっている。
【0005】
しかしながら、例えば、始動時(IGオン時)や故障診断後のリセット時等の初期状態には、昇圧回路の出力電圧は電源電圧と略等しい電位まで低下しているため、目標電圧と出力電圧との偏差が極めて大きな状態となり、その結果、出力電力が急速に立ち上がり、目標電圧を超えてオーバーシュートするおそれがある。
【0006】
そのため、こうしたオーバーシュート時の過剰昇圧電圧に耐えうるよう昇圧回路の平滑コンデンサを大型化する、或いは上記昇圧制御の応答性を低下させることでオーバーシュートの発生を防止する等の対策が必要となり、何れの対策を採用するにしても、製造コストの上昇、或いは出力電圧の不安定化といった不都合が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造コストの上昇及び出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができる昇圧装置及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段を備え、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記目標電圧を前記電源電圧から時間経過とともに徐々に増加させること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、初期状態においても目標電圧と出力電圧との偏差を小さく抑えることが可能となり、出力電圧は急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧まで昇圧される。従って、昇圧回路のコンデンサの大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御演算により決定したDUTY比を有する制御信号を前記昇圧回路に対して出力することにより前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、前記DUTY比の上限を決定する決定手段と前記制御信号のDUTY比を前記上限以下に制限する制限手段とを備え、前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記上限を時間経過とともに徐々に増加させること、を要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、制御信号のDUTY比は、常に上限以下に制限され、且つその上限は、初期状態の始点から時間経過とともに徐々に増加するため、出力電圧は急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧まで昇圧される。従って、昇圧回路のコンデンサの大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が小となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が所定値より大きい場合には、前記偏差が所定値以下である場合の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、経過時間が大となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点からの経過時間が予め設定された所定時間を経過していない場合には、前記所定時間経過後の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を要旨とする。
【0016】
上記各構成によれば、初期状態時において、その過大な偏差に起因する急速な出力電圧の立ち上がりにより、オーバーシュートが問題となる始動直後には、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインにてフィードバック制御がなされるため、出力電圧は、オーバーシュートすることなく、時間経過とともに滑らかに上昇する。そして、請求項3及び請求項4の構成においては偏差の縮小に伴って、また、請求項5及び請求項6の構成においては時間経過により、応答性の高い大きな値を有するフィードバックゲインにてフィードバック制御がなされることで、出力電圧は速やかに目標電圧まで昇圧される。従って、昇圧回路のコンデンサの大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6に記載の昇圧装置を備えた電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造コストの上昇及び出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧のオーバーシュートを防止することが可能な昇圧装置及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1に示すように、EPS1は、車両の操舵系にアシスト力を付与する駆動源としてのモータ2と、該モータ2を制御するECU3とを備えている。
ステアリングホイール(ステアリング)4は、ステアリングシャフト5を介してラック6に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト5の回転は、ラックアンドピニオン機構(図示略)にてラック6の往復直線運動に変換され操舵輪8に伝達される。本実施形態のEPS1は、モータ2がラック6と同軸に配置された所謂ラック型EPSであり、モータ2が発生するアシストトルクは、ボール送り機構(図示略)を介してラック6に伝達される。そして、ECU3は、このモータ2が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する。
【0021】
図2に示すように、ECU3は、モータ制御信号を出力するマイコン11と、モータ制御信号に基づいてモータ2に駆動電力を供給する駆動回路12とを備えている。尚、本実施形態のモータ2はブラシレスモータであり、駆動回路12は、モータ制御信号に基づいて三相(U,V,W)の駆動電力を供給する。
【0022】
マイコン11には、操舵トルクτを検出するためのトルクセンサ14、及び車速センサ15が接続されており(図1参照)、マイコン11は、入力された操舵トルクτ及び車速Vに基づいて操舵系に付与するアシスト力、即ちモータ2が発生するアシストトルクを決定する。
【0023】
また、マイコン11には、モータ2に通電される電流値を検出するための電流センサ17,18、及びモータ2の回転角(電気角)θを検出するための回転角センサ19が接続されており、マイコン11は、これら各センサの出力信号に基づいてモータ2の各相電流値Iu,Iv,Iw、及びその回転角θを検出する。そして、マイコン11は、この検出された各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θに基づいて、モータ2に上記決定されたアシストトルクを発生させるべくモータ制御信号を出力する。
【0024】
尚、本実施形態では、マイコン11は、相電流値Iu,Iv,Iwをd/q変換し、d/q座標系における電流制御、詳しくは、q軸電流値がアシストトルクの目標値となるq軸電流指令値に追従するように制御する。そして、マイコン11は、このd/q座標系における電流制御に基づき決定されたモータ制御信号を駆動回路12に出力する。
【0025】
一方、駆動回路12は、モータ2の相数に対応する複数(2×3個)のパワーMOSFET(以下、単にFET)により構成されており、具体的にはFET21a,21dの直列回路、FET21b,21eの直列回路及びFET21c,21fの直列回路を並列接続することにより構成されている。そして、FET21a,21dの接続点22uはモータ2のU相コイルに接続され、FET21b,21eの接続点22vはモータ2のV相コイルに接続され、FET21c,21fの接続点22wはモータ2のW相コイルに接続されている。
【0026】
マイコン11から出力されるモータ制御信号は、各FET21a〜21fのゲート端子に印加される。そして、このモータ制御信号に応答して各FET21a〜21fがオン/オフすることにより、直流電源20から供給される直流電圧が三相(U,V,W)の駆動電力に変換されモータ2に供給されるようになっている。
【0027】
また、EPS1は、電源電圧Vinを昇圧して駆動回路12に出力する昇圧装置23を備えている。本実施形態では、昇圧装置23は、昇圧回路25と、制御手段としてのマイコン11とにより構成されており、昇圧回路25は、直流電源20と駆動回路12との間の電力供給経路に設けられている。そして、昇圧回路25は、マイコン11に制御されることにより直流電源20の電源電圧Vinを昇圧して駆動回路12に出力する。
【0028】
図3に示すように、本実施形態の昇圧回路25は、FET26a,26b、コイル27、及びコンデンサ28により構成されている。コイル27は、一端が直流電源20に接続されるとともに他端がFET26aの一端に接続されており、FET26aの他端は接地されている。また、コイル27とFET26aと間の接続点aは、FET26bの一端に接続されており、FET26bの他端は、駆動回路12に接続されている。そして、FET26bと駆動回路12との間の接続点bは、コンデンサ28を介して接地されている。
【0029】
また、各FET26a,26bのゲート端子は、マイコン11と接続されており、マイコン11は、各FET26a,26bのゲート端子に制御信号を印加することにより、各FET26a,26bを交互にオン/オフ制御する。これにより、接続点aにおける電圧は、FET26aのオフ時にコイル27に発生する逆起電力が電源電圧Vinに重畳された電圧となり、FET26aがオン時に接地電位となる。そして、この電圧がFET26bのオン時に接続点bに伝達される。そして、昇圧回路25は、接続点bにおいて脈動的に変化する電圧・電流をコンデンサ28にて平滑化することにより、直流電源20の電源電圧Vinを昇圧した出力電圧Voutを出力するようになっている。
【0030】
本実施形態では、マイコン11は、各FET26a,26bに対し、制御信号として所定のDUTY比を有するパルス信号を出力することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutを制御する(昇圧制御)。
【0031】
具体的には、マイコン11には、電源電圧Vinを検出するための第1の電圧センサ29とともに、昇圧回路25の出力電圧Voutを検出するための第2の電圧センサ30が接続されている。そして、マイコン11は、この第2の電圧センサ30により検出された出力電圧Voutとその制御目標である目標電圧Vout*との偏差に基づいて、出力電圧Voutのフィードバック制御演算を行う。そして、マイコン11は、このフィードバック制御演算により決定されたDUTY比を有する制御信号を各FET26a,26bに出力し、同制御信号によって各FET26a,26bのオン/オフ時間が変化することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutが制御されるようになっている。
【0032】
尚、昇圧回路25の出力電圧Voutは、制御信号のDUTY比(FET26aに対して出力する制御信号のオンDUTY比)が大きい場合に高くなり、そのDUTY比が小さい場合には低くなる。
【0033】
[昇圧制御]
次に、本実施形態の昇圧装置における昇圧制御の態様について詳述する。
図4は、本実施形態のマイコン11の制御ブロック図である。尚、以下に示す各制御ブロックは、マイコン11が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。
【0034】
同図に示すように、マイコン11は、制御目標となる目標電圧Vout*を設定する目標電圧設定部31と、昇圧回路25の出力電圧Voutを検出する出力電圧検出部32と、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づきフィードバック制御演算を行うFB制御演算部33とを備えている。
【0035】
本実施形態では、目標電圧設定部31は、目標電圧Vout*として所定電圧V0を設定し、出力電圧検出部32は、第2の電圧センサ30の出力信号に基づいて昇圧回路25の出力電圧Voutを検出する。目標電圧設定部31により設定された目標電圧Vout*、及び出力電圧検出部32により検出された出力電圧Voutは、FB制御演算部33に入力される。そして、FB制御演算部33は、その目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づいて、昇圧回路25の出力電圧Voutを制御するためのフィードバック制御演算を実行する。
【0036】
具体的には、FB制御演算部33は、フィードバック制御演算により、昇圧回路25に出力する制御信号のDUTY比を決定し、その値を示すDUTY指示値Dを制御信号出力部34に出力する。そして、制御信号出力部34が、FB制御演算部33から入力されたDUTY指示値Dに示されるDUTY比を有する制御信号を生成し、昇圧回路25に出力することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutが制御されるようになっている。
【0037】
また、本実施形態のマイコン11は、昇圧装置23が初期状態にあるか否かを判定する判定手段としての初期状態判定部35と、その判定に基づいて目標電圧Vout*を補正する目標電圧補正演算部36とを備えている。そして、目標電圧補正演算部36は、昇圧装置23が初期状態にある場合には、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧Vinから所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するように目標電圧Vout*を補正する。
【0038】
詳述すると、本実施形態のマイコン11には、車両始動時にイグニッションスイッチがオン(IGオン)されたことを示す始動信号としてのIGオン信号、及び故障診断からの復帰、即ち再始動を示す再始動信号としてのリセット信号が入力されるようになっている(図1参照)。そして、初期状態判定部35は、これらIGオン信号又はリセット信号の入力があった場合に昇圧装置23が初期状態にあると判定し、その判定結果を示す初期状態フラグを目標電圧補正演算部36に出力する。
【0039】
一方、目標電圧補正演算部36には、目標電圧設定部31により設定された目標電圧Vout*が入力される。そして、目標電圧補正演算部36は、初期状態フラグの入力があった場合には、目標電圧Vout*を補正して、その補正後の目標電圧Vout**をFB制御演算部33に出力する。
【0040】
具体的には、目標電圧補正演算部36は、初期状態フラグ入力からの経過時間tと、補正後の目標電圧Vout**を制限する目標電圧ガード係数Gvとが関連付けられた目標電圧ガード係数マップ36aを有しており(図5参照)、この目標電圧ガード係数マップ36aにおいて、目標電圧ガード係数Gvは、上記経過時間tが大となるに従って大となるように設定されている。詳しくは、目標電圧ガード係数Gvは、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定されている。
【0041】
そして、目標電圧補正演算部36は、この目標電圧ガード係数マップ36aを用いて上記経過時間tに対応する目標電圧ガード係数Gvを決定し、その目標電圧ガード係数Gvに基づく以下の式に従って目標電圧Vout*を補正する。
【0042】
Vout**=(Vout*−Vin)×Gv+Vin ・・・(1)
即ち、目標電圧補正演算部36は、目標電圧設定部31から入力される目標電圧Vout*について、その電源電圧Vinからの昇圧分に相当する値(Vout*−Vin)に、経過時間tが大となるに従って徐々に増加する目標電圧ガード係数Gvを乗ずることにより、目標電圧Vout*を補正する。そして、これにより、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)から所定時間Tを経過するまでの間、時間経過とともに徐々に増加する補正後の目標電圧Vout**をFB制御演算部33に出力するようになっている(図6参照)。
【0043】
次に、本実施形態のマイコン11による初期状態判定及び昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態では、マイコン11は、定時割り込みにより、初期状態判定及び昇圧制御を順次実行する。即ち、図7のフローチャートに示すように、マイコン11は、IGオン信号又はリセット信号の入力があるか否かを判定することにより、昇圧装置23が初期状態にあるか否かを判定する(ステップ101)。そして、IGオン信号又はリセット信号の入力がある場合(ステップ101:YES)には、昇圧装置23が初期状態にあると判定し、その判定結果を示す初期状態フラグを「ON」とする(ステップ102)。尚、IGオン信号又はリセット信号の入力がない場合(ステップ101:NO)には、上記ステップ102の処理を実行しない。
【0044】
また、図8のフローチャートに示すように、マイコン11は、昇圧制御処理において、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ201)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ202)。
【0045】
次に、マイコン11は、初期状態フラグが「ON」であるか否か、即ち初期状態にあるか否かを判定し(ステップ203)、初期状態フラグが「ON」である場合(ステップ203:YES)には、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間tに応じた目標電圧ガード係数Gvを決定する(ステップ204)。そして、その目標電圧ガード係数Gvに基づく上記(1)式に従って目標電圧補正演算を実行し(ステップ205)、その補正後の目標電圧Vout**にてフィードバック制御及び昇圧回路25に対する制御信号の出力を実行する(ステップ206)。
【0046】
次に、マイコン11は、上記経過時間tを計測するタイマをカウントアップし(t=t+1、ステップ207)、続いて経過時間tが予め設定された初期状態に相当する所定時間Tを経過したか否かを判定する(ステップ208)。そして、経過時間tが所定時間Tを経過したと判定した場合(t>T、ステップ208:YES)には、初期状態フラグを「OFF」として(ステップ209)、上記タイマをクリアする(t=0、ステップ210)。そして、所定時間Tを経過していない場合(t≦T、ステップ208:NO)には、このステップ209,ステップ210の処理を実行しない。
【0047】
即ち、マイコン11は、車両が初期状態にある場合(初期状態フラグが「ON」、ステップ203:YES)には、上記ステップ208において経過時間tが所定時間Tを経過したと判定するまで(t>T、ステップ208:YES)、定時割りこみ毎に、上記ステップ201〜ステップ208の処理を実行する。
【0048】
そして、経過時間tの増加とともに上記ステップ204において決定される目標電圧ガード係数Gvが徐々に増加することにより、上記ステップ205において演算される補正後の目標電圧Vout**もまた時間経過とともに徐々に増加するようになっている。
【0049】
尚、所定時間Tを経過し(t>T、ステップ208:YES)、上記ステップ209において初期状態フラグを「OFF」とした場合、マイコン11は、次回以降の定時割り込み時には、初期状態フラグは「OFF」であると判定し(ステップ203:NO)、上記ステップ204〜ステップ210の処理を実行しない。そして、上記ステップ202で設定された目標電圧Vout*にてフィードバック制御及び昇圧回路25に対する制御信号の出力を実行する(ステップ211)。
【0050】
[作用・効果]
次に、上記のように構成された本実施形態の昇圧装置の作用・効果について説明する。
本実施形態のマイコン11は、昇圧装置23が初期状態にあるか否かを判定する初期状態判定部35と、その判定に基づいて目標電圧Vout*を補正する目標電圧補正演算部36とを備える。そして、目標電圧補正演算部36は、昇圧装置23が初期状態にある場合には、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧Vinから所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するように目標電圧Vout*を補正する。
【0051】
このような構成とすれば、初期状態にある場合には、その始点から所定時間Tを経過するまでの間、補正後の目標電圧Vout**を前記電源電圧から時間経過とともに徐々に増加させることができる。そして、この補正後の目標電圧Vout**に基づいてフィードバック制御を行うことで、初期状態においても目標電圧Vout**と出力電圧Voutとの偏差を小さく抑えることが可能となり、これにより、出力電圧Voutは急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧Vout*まで昇圧されるようになる。従って、昇圧回路25のコンデンサ28の大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することができるようになる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態のEPS及び昇圧装置のハードウェア構成は、上記第1の実施形態と同一であり、マイコン41内の制御ブロックのみが相違する。
図9に示すように、本実施形態のマイコン41は、目標電圧補正演算部36(図4参照)に代えて、DUTY指示値(DUTY比)の上限値Dlimを決定する決定手段としての上限値決定部42と、制御信号出力部34に入力されるDUTY指示値を上限値Dlim以下に制限する制限手段としてのDUTY制限演算部43とを備えている。そして、初期状態には、上限値決定部42が、上限値Dlimを時間経過とともに徐々に大とすることにより、昇圧回路25に出力する制御信号のDUTY比を徐々に大とするようになっている。
【0054】
詳述すると、上限値決定部42には、初期状態判定部35の出力する初期状態フラグが入力されるようになっており、上限値決定部42は、初期状態フラグの入力があった場合には、初期状態フラグ入力からの経過時間tが大となるに従って、上限値Dlimを所定の最大値Dmaxまで徐々に増加させる。
【0055】
具体的には、上限値決定部42は、図10に示すような初期状態フラグ入力からの経過時間tと、上限値Dlimを決定するためのDUTYガード係数Gdとが関連付けられたDUTYガード係数マップ42aを有しており、このDUTYガード係数マップ42aにおいて、DUTYガード係数Gdは、経過時間tが大となるに従って大となるように設定されている。詳しくは、DUTYガード係数Gdは、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定されている。そして、上限値決定部42は、このDUTYガード係数マップ42aを用いて経過時間tに対応するDUTYガード係数Gdを決定し、そのDUTYガード係数GdをDUTY指示値の最大値Dmaxに乗ずることにより上限値Dlimを決定する(Dlim=Dmax×Gd)。尚、初期状態フラグの入力がない場合、即ち初期状態ではない場合には、上限値Dlimを最大値Dmaxとする(Dlim=Dmax)。
【0056】
一方、DUTY制限演算部43には、この上限値Dlim及びFB制御演算部33の出力するDUTY指示値Dが入力される。そして、DUTY制限演算部43は、そのDUTY指示値Dを上限値Dlim以下に制限したDUTY指示値D´を制御信号出力部34に出力する。
【0057】
具体的には、DUTY制限演算部43は、FB制御演算部33から出力されたDUTY指示値Dが上限値Dlimよりも大きい場合には、上限値DlimをDUTY指示値D´として制御信号出力部34に出力する(D´=Dlim)。また、入力されたDUTY指示値Dが上限値Dlim以下である場合には、そのDUTY指示値DをDUTY指示値D´として制御信号出力部34に出力する(D´=D)。
【0058】
そして、上限値決定部42から入力される上限値Dlimが、初期状態フラグ入力、即ち始動(又は再始動)から時間経過とともに大となることで、DUTY制限演算部43が制御信号出力部34に出力するDUTY指示値D´の値もまた徐々に大となる。
【0059】
即ち、制御信号出力部34に入力されるDUTY指示値D´は、常に上限値Dlim以下に制限され、且つ時間経過とともに徐々に増加するため、図11に示すように、出力電圧Voutは急速に立ち上がることなく、徐々に目標電圧Vout*まで昇圧される。
【0060】
そして、これにより、第1の実施形態と同様に、昇圧回路25のコンデンサ28の大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することができるようになっている。
【0061】
次に、本実施形態のマイコン41による昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態では、マイコン41は、第1の実施形態のマイコン11と同様に、定時割り込みにより、初期状態判定及び昇圧制御を順次実行する。尚、初期状態判定の処理手順については、第1の実施形態と同一であるため、その説明を省略する(図7参照)。
【0062】
図12のフローチャートに示すように、マイコン41は、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ301)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ302)。そして、その検出された出力電圧Vout及び目標電圧Vout*に基づくフィードバック制御演算によりDUTY指示値Dを生成する(ステップ303)。
【0063】
次に、マイコン41は、初期状態フラグが「ON」であるか否か、即ち初期状態にあるか否かを判定する(ステップ304)。そして、初期状態フラグが「ON」であると判定した場合(ステップ304:YES)には、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間tに応じたDUTYガード係数Gdを決定し(ステップ305)、そのDUTYガード係数GdをDUTY指示値の最大値Dmaxに乗ずることにより上限値Dlimを決定する(Dlim=Dmax×Gd、ステップ306)。尚、上記ステップ304において、初期状態フラグは「OFF」である、即ち初期状態は終了したと判定した場合(ステップ304:NO)には、上限値Dlimを最大値Dmaxとする(Dlim=Dmax、ステップ307)。
【0064】
次に、マイコン41は、上記ステップ303において生成したDUTY指示値Dが上記ステップ306又はステップ307において決定した上限値Dlimよりも大きいか否かを判定する(ステップ308)。そして、DUTY指示値Dが上限値Dlimよりも大きい場合(D>Dlim、ステップ308:YES)には、昇圧回路25に出力する制御信号の生成に用いるDUTY指示値D´を上限値Dlimに制限する(D´=Dlim,ステップ309)。また、DUTY指示値Dが上限値Dlim以下である場合(D≦Dlim、ステップ308:NO)には、同DUTY指示値D´を上記ステップ303において生成したDUTY指示値Dとする(ステップ310)。そして、上記ステップ309又はステップ310において決定したDUTY指示値D´に基づいて制御信号を生成し、その制御信号を昇圧回路25に出力する(ステップ311)。
【0065】
次に、マイコン41は、上記経過時間tを計測するタイマをカウントアップし(t=t+1、ステップ312)、続いて経過時間tが予め設定された初期状態に相当する所定時間Tを経過したか否かを判定する(ステップ313)。そして、経過時間tが所定時間Tを経過したと判定した場合(t>T、ステップ313:YES)には、初期状態フラグを「OFF」として(ステップ314)、上記タイマをクリア(t=0、ステップ315)する。そして、所定時間Tを経過していない場合(t≦T、ステップ313:NO)には、このステップ314,ステップ315の処理を実行しない。
【0066】
即ち、マイコン41は、初期状態にある場合(初期状態フラグが「ON」、ステップ304:YES)には、上記ステップ313において経過時間tが所定時間Tを経過したと判定するまで(t>T、ステップ313:YES)、定時割りこみ毎に、上記ステップ307を実行することなく、上記ステップ301〜ステップ306、及びステップ308〜ステップ313の処理を実行する。
【0067】
そして、経過時間tの増加とともに上記ステップ305において決定されるDUTYガード係数Gdが増加し、その結果、上記ステップ306において決定される上限値Dlimがもまた時間経過とともに徐々に増加するようになっている。
【0068】
(第3の実施形態)
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態のEPS及び昇圧装置のハードウェア構成は、上記第1の実施形態と同一であり、マイコン51内の制御ブロックのみが相違する。
図13に示すように、本実施形態のマイコン51は、初期状態判定部35及び目標電圧補正演算部36(図4参照)に代えて、FB制御演算部33において用いられるフィードバックゲインを決定する決定手段としてのゲイン決定部52を備えている。そして、このゲイン決定部52において、比例ゲインKp及び積分ゲインKiが決定され、FB制御演算部33において、その比例ゲインKpに基づく比例制御(P制御)及び積分ゲインKiに基づく積分制御(I制御)が実行されることにより、出力電圧Voutのフィードバック制御が行われるようになっている。
【0070】
詳述すると、本実施形態では、ゲイン決定部52には、目標電圧設定部31が設定した目標電圧Vout*及び出力電圧検出部32により検出された出力電圧Voutが入力されるようになっており、ゲイン決定部52は、その目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づいて比例ゲインKp及び積分ゲインKiを決定する。
【0071】
具体的には、ゲイン決定部52は、入力された目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差と所定の電位差Vcとを比較し、その偏差が電位差Vc以下である場合には、通常制御時に用いる、即ち応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0とする。そして、その偏差が電位差Vcよりも大きい場合には、上記通常制御時に用いる比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0よりも応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1とする。
【0072】
即ち、本実施形態では、図14に示すような初期状態時において、その過大な偏差に起因する急速な出力電圧Voutの立ち上がりにより、そのオーバーシュートが問題となる始動直後には、ゲイン決定部52において、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1が決定される。このため、出力電圧Voutは、目標電圧Vout*をオーバーシュートすることなく、時間経過とともに滑らかに上昇する。
【0073】
そして、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が所定の電位差Vc以下となった場合(切替タイミングtc)には、ゲイン決定部52において、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0が決定されるため、出力電圧Voutは、速やかに目標電圧Vout*まで昇圧される。
【0074】
その結果、上記各実施形態と同様に、昇圧回路25のコンデンサ28の大型化による製造コストの上昇、昇圧制御の応答性の低下による出力電圧の不安定化を招くことなく、効果的に、初期状態における出力電圧Voutのオーバーシュートを防止することができるようになっている。
【0075】
次に、本実施形態のマイコン51による昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態のマイコン51は、第1の実施形態のマイコン11と同様に、定時割り込みにより、昇圧制御を実行する。
【0076】
図15のフローチャートに示すように、マイコン51は、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ401)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ402)。
【0077】
次に、マイコン51は、上記ステップ401において検出された出力電圧Voutと上記ステップ402において設定された目標電圧Vout*との偏差(|Vout*−Vout|)が、所定の電位差Vcよりも大きいか否かを判定する(ステップ403)。そして、その偏差が所定の電位差Vcよりも大きい場合(|Vout*−Vout|>Vc、ステップ403:YES)には、フィードバック制御(PI制御)に用いる比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1を決定する(Kp=Kp1,Ki=Ki1、ステップ404)。
【0078】
一方、上記ステップ403において、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差(|Vout*−Vout|)が、所定の電位差Vc以下である場合(|Vout*−Vout|≦Vc、ステップ403:NO)には、マイコン51は、比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、通常制御時に用いる、即ち応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0を決定する(Kp=Kp0,Ki=Ki0、ステップ405)。そして、マイコン51は、上記ステップ404又はステップ405において決定された比例ゲインKp及び積分ゲインKiに基づいてフィードバック制御を実行し、それに基づく制御信号を出力する(ステップ406)。
【0079】
このように、定時割り込み毎に、上記ステップ401〜ステップ406の処理を実行することにより、マイコン51は、始動直後から目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が所定の電位差Vc以下となるまでは、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1にて、出力電圧Voutのフィードバック制御を行う。そして、その後は、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0にて、出力電圧Voutのフィードバック制御を行うようになっている。
【0080】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、目標電圧設定部31は、目標電圧Vout*として所定電圧V0を出力することとした。しかし、これに限らず、例えば、モータ2の負荷変動等に応じてその値を変更する構成としてもよい。
【0081】
・上記第1の実施形態では、初期状態判定部35において初期状態にあると判定した場合に、目標電圧補正演算部36において、その補正後の目標電圧Vout**が、電源電圧Vinから所定電圧V0、即ち目標電圧設定部31の出力する目標電圧Vout*の値まで、時間経過とともに徐々に増加するように目標電圧Vout*を補正する構成とした。しかし、これに限らず、最終的に出力電圧Voutの制御目標となる目標電圧を時間経過とともに徐々に増加させる構成であればよい。従って、例えば、目標電圧補正演算部36における「補正」ではなく、目標電圧設定部31が、経過時間tに基づくマップ演算等により、電源電圧Vinから時間経過とともに徐々に増加する目標電圧Vout*を出力する構成としてもよい。また、目標電圧補正演算部36において、経過時間tと目標電圧Vout**とが関連付けられたマップを用いて同補正を行う構成としてもよい。
【0082】
・上記第1の実施形態では、目標電圧ガード係数マップ36aにおいて、目標電圧ガード係数Gvを、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定する。そして、この目標電圧ガード係数マップ36aにより決定される目標電圧ガード係数Gvに基づく上記(1)式に従って目標電圧補正演算を実行する構成とした。しかし、目標電圧ガード係数マップ36aの形状は、これに限るものではなく、目標電圧ガード係数Gvが時間経過とともに増加する設定であればよい。
【0083】
・上記第2の実施形態では、DUTYガード係数マップ42aにおいて、DUTYガード係数Gdを、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内に、「0」から「1.0」まで経過時間tの増大とともに単調(比例)増加するように設定する。そして、初期状態時には、このDUTYガード係数マップ42aにより決定されるDUTYガード係数GdをDUTY指示値の最大値Dmaxに乗ずることにより上限値Dlimを決定する構成とした(Dlim=Dmax×Gd)。しかし、これに限らず、経過時間tと上限値Dlimとが関係付けられたマップを用いて、上限値Dlimを決定する構成としてもよい。
【0084】
・上記第3の実施形態について、図16に示すマイコン61のように、更に第1及び第2の実施形態と同様の初期状態判定部35を設けて、初期状態時のみに、上記フィードバックゲインの変更を行う構成としてもよい。
【0085】
・上記第3の実施形態では、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1と、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0との切り替えを、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差に基づいて行うこととした。しかし、これに限らず、予め切替タイミングtc(図14参照)に相当する所定時間T1を設定し、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間に基づいて行うこととしてもよい。尚、この所定時間T1は、第1及び第2の実施形態における所定時間Tよりも短く設定するとよい。
【0086】
具体的には、図17のフローチャートに示す処理手順で実現することができる。尚、この場合、第1の実施形態と同様に、定時割り込みにより、初期状態判定及び昇圧制御を順次実行するものとする。
【0087】
即ち、同図に示すように、先ず出力電圧Voutを検出し(ステップ501)、続いて目標電圧Vout*を設定する(Vout*=V0,ステップ502)。次に、初期状態フラグが「ON」であるか否か、即ち初期状態であるか否かを判定し(ステップ503)、初期状態フラグが「ON」である場合(ステップ503:YES)には、フィードバック制御に用いる比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1を決定する(Kp=Kp1,Ki=Ki1、ステップ504)。一方、上記ステップ503において、初期状態フラグが「OFF」である場合(ステップ503:NO)には、フィードバック制御に用いる比例ゲインKp及び積分ゲインKiとして、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0を決定する(Kp=Kp0,Ki=Ki0、ステップ505)。そして、上記ステップ504又はステップ505において決定した比例ゲインKp及び積分ゲインKiに基づいてフィードバック制御、並びにそれに基づく制御信号の出力を実行する(ステップ506)。
【0088】
次に、経過時間tを計測するタイマをカウントアップし(t=t+1、ステップ507)、続いて、初期状態の始点、即ち始動(又は再始動)からの経過時間tが、予め設定された切替タイミングtcに相当する所定時間T1を経過したか否かを判定する(ステップ508)。そして、経過時間tが所定時間T1を経過したと判定した場合(t>T1、ステップ508:YES)には、初期状態フラグを「OFF」として(ステップ509)、上記タイマをクリアする(t=0、ステップ510)。そして、所定時間T1を経過していない場合(t≦T1、ステップ508:NO)には、このステップ509,ステップ510の処理を実行しない。
【0089】
即ち、初期状態にある場合、(初期状態フラグが「ON」、ステップ503:YES)には、上記ステップ508において経過時間tが所定時間T1を経過したと判定するまで(t>T1、ステップ508:YES)、定時割りこみ毎に、上記ステップ501〜ステップ4、及びステップ506〜ステップ508の処理を実行する。つまり、ステップ504で決定される応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1(Kp=Kp1,Ki=Ki1)に基づいてフィードバック制御、並びにそれに基づく制御信号の出力を実行する。
【0090】
そして、所定時間T1が経過し(t>T1、ステップ508:YES)、上記ステップ509において初期状態フラグを「OFF」とした場合、次回以降の定時割り込み時には、初期状態フラグは「OFF」であると判定する(ステップ503:NO)。そして、上記ステップ505で決定される応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0(Kp=Kp0,Ki=Ki0)に基づいてフィードバック制御、並びにそれに基づく制御信号の出力を実行する。このような構成としても上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
・また、第3の実施形態並びに上記別例では、応答性の高い大きな値を有する比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0と、この比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0よりも応答性の低い小さな値を有する比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1とを、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差(又は初期状態の始点からの経過時間)に基づいて切り替える構成とした。しかし、これに限らず、こうした比例ゲイン及び積分ゲインの切り替えは、3段階以上の複数段階で切り替える構成としてもよい。
【0092】
・また、図18(a)(b)に示すような、比例ゲインKp並びに積分ゲインKiと、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差とが関係付けられた比例ゲインマップ71a,積分ゲインマップ71bを用いたマップ演算等により、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が小となるほど、比例ゲインKp並びに積分ゲインKiを大とする。又は、図19(a)(b)に示すような、比例ゲインKp並びに積分ゲインKiと、初期状態の始点からの経過時間tとが関係付けられた比例ゲインマップ72a,積分ゲインマップ72bを用いたマップ演算等により、予め設定された初期状態に相当する所定時間T内において、上記経過時間tが大となるほど比例ゲインKp並びに積分ゲインKiを大とする構成としてもよい。
【0093】
・更に、目標電圧Vout*と出力電圧Voutとの偏差が所定の電位差Vcより大きい場合(又は初期状態の始点からの経過時間が所定時間以内である場合)に用いる比例ゲインKp0及び積分ゲインKi0は、通常制御時の比例ゲインKp1及び積分ゲインKi1よりも応答性の低い小さな値を有するものであれば、どのように設定してもよい。従って、例えば、積分ゲインKi0を「0」として、実質的に比例制御のみにより出力電圧Voutを立ち上げて、その後、積分制御を加える構成としてもよい。
【0094】
・上記各実施形態では、本発明を昇圧装置付きのEPSに具体化したが、これに限るものではなく、EPS以外の用途に用いられる昇圧装置に具体化してもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
【0095】
(イ)請求項4に記載の昇圧装置において、前記制御手段は、前記フィードバック制御として、比例制御及び積分制御を実行するものであって、前記決定手段は、前記偏差が所定値より大きい場合には、前記積分制御のゲインをゼロとすること、を特徴とする昇圧装置。
【0096】
(ロ)請求項6に記載の昇圧装置において、前記フィードバック制御として、比例制御及び積分制御を実行するものであって、前記決定手段は、前記経過時間が前記所定時間を経過していない場合には、前記積分制御のゲインをゼロとすること、を特徴とする昇圧装置。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を示すブロック図。
【図3】昇圧装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】第1の実施形態のマイコンの制御ブロック図。
【図5】目標電圧ガード係数マップの概略構成図。
【図6】第1の実施形態における昇圧制御の作用説明図。
【図7】初期状態判定の処理手順を示すフローチャート。
【図8】第1の実施形態における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図9】第2の実施形態のマイコンの制御ブロック図。
【図10】DUTYガード係数マップの概略構成図。
【図11】第2の実施形態における昇圧制御の作用説明図。
【図12】第2の実施形態における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図13】第3の実施形態のマイコンの制御ブロック図。
【図14】第3の実施形態における昇圧制御の作用説明図。
【図15】第3の実施形態における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図16】別例のマイコンの制御ブロック図。
【図17】別例の昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図18】(a)比例ゲインマップの概略構成図、(b)積分ゲインマップの概略構成図。
【図19】(a)比例ゲインマップの概略構成図、(b)積分ゲインマップの概略構成図。
【符号の説明】
【0098】
1…EPS、11,41,51,61…マイコン、20…直流電源、23…昇圧装置、25…昇圧回路、28…コンデンサ、31…目標電圧設定部、32…出力電圧検出部、33…FB制御演算部、34…制御信号出力部、35…初期状態判定部、36…目標電圧補正演算部、42…上限値決定部、52…ゲイン決定部、Vin…電源電圧、Vout…出力電圧、Vout*,Vout**…目標電圧、V0…所定電圧、t…経過時間、T,T1…所定時間、Gv…目標電圧ガード係数、D,D´…DUTY指示値、Dlim…上限値、Dmax…最大値、Gd…DUTYガード係数、Kp,Kp0,Kp1…比例ゲイン、Ki,Ki0,Ki1…積分ゲイン、Vc…電位差、tc…切替タイミング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段を備え、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記目標電圧を前記電源電圧から時間経過とともに徐々に増加させること、
を特徴とする昇圧装置。
【請求項2】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御演算により決定したDUTY比を有する制御信号を前記昇圧回路に対して出力することにより前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、
始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、
前記DUTY比の上限を決定する決定手段と
前記制御信号のDUTY比を前記上限以下に制限する制限手段とを備え、
前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記上限を時間経過とともに徐々に増加させること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項3】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が小となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項4】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が所定値より大きい場合には、前記偏差が所定値以下である場合の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項5】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、
始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、
前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、
前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、経過時間が大となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項6】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、
始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、
前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、
前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点からの経過時間が予め設定された所定時間を経過していない場合には、前記所定時間経過後の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載の昇圧装置を備えた電動パワーステアリング装置。
【請求項1】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段を備え、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記目標電圧を前記電源電圧から時間経過とともに徐々に増加させること、
を特徴とする昇圧装置。
【請求項2】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御演算により決定したDUTY比を有する制御信号を前記昇圧回路に対して出力することにより前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、
始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、
前記DUTY比の上限を決定する決定手段と
前記制御信号のDUTY比を前記上限以下に制限する制限手段とを備え、
前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、前記上限を時間経過とともに徐々に増加させること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項3】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が小となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項4】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、前記偏差に基づいて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段を備え、該決定手段は、前記偏差が所定値より大きい場合には、前記偏差が所定値以下である場合の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項5】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、
始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、
前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、
前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点から所定時間を経過するまでの間、経過時間が大となるほど応答性の高い大きな値を有する前記フィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項6】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御する昇圧装置であって、
前記制御手段は、
始動信号又は再始動信号に基づいて初期状態にあるか否かを判定する判定手段と、
前記フィードバック制御のフィードバックゲインを決定する決定手段とを備え、
前記決定手段は、前記初期状態にある場合には、その始点からの経過時間が予め設定された所定時間を経過していない場合には、前記所定時間経過後の前記フィードバックゲインよりも、応答性の低い小さな値を有するフィードバックゲインを決定すること、を特徴とする昇圧装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載の昇圧装置を備えた電動パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−62515(P2006−62515A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247154(P2004−247154)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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