説明

昇降路内で相互に上下に配置された2台のエレベータケージを有するエレベータ

【課題】エレベータ昇降路内の複数のエレベータケージの垂直移動のためのエレベータ構成要素の配置をさらに改良すること。
【解決手段】本発明によるエレベータは少なくとも2台のエレベータケージ(7a、7b)を備え、これら2台のエレベータケージは相互に上下に配置され、昇降路内を互いに独立に垂直方向に移動でき、各ケージは少なくとも1つのモータおよび少なくとも1つの駆動プーリ(1a、1b)を備える専用の駆動部(A1、A2)と、専用の釣り合いおもり(12a、12b)と、少なくとも1つの専用の引張手段(Z1、Z2)とを有する。駆動部(A1)は第1昇降路壁に取り付けられ、別の駆動部(A2)は反対側の第2昇降路壁に取り付けられる。エレベータケージ(7a、7b)は駆動部(A1、A2)を通過して移動でき、駆動部(A1、A2)は関連する駆動プーリ(1a、1b)の垂直上方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に上下に配置されて、昇降路内を垂直方向に移動できる少なくとも2台のエレベータケージを有するエレベータに関する。本発明は独立請求項の導入部分において定義される。
【背景技術】
【0002】
エレベータは通常エレベータケージを備え、このケージは昇降路内を垂直に移動でき、乗客を収容して建物の所望の階に輸送する。この作業を管理可能にするために、エレベータは一般に、少なくとも以下のエレベータ構成要素、すなわち、モータおよび駆動プーリを備えた駆動部、偏向ローラ、引張手段、釣り合いおもり、ならびにエレベータケージおよび釣り合いおもりの案内にためのそれぞれの一対のガイドレールを有する。
【0003】
この場合、モータはエレベータケージ内の乗客の輸送に必要な動力を発生する。電気モータは通常、この機能を管理する。モータは、引張手段と摩擦接触している駆動プーリを直接または間接に駆動する。引張手段はベルトまたはケーブルであってもよい。引張手段は懸架要素として機能し、ならびにエレベータケージおよび釣り合いおもりを運搬する。このケージおよび釣り合いおもりの両方は、これらの重力作用の力が引張手段に沿って反対方向に作用するように懸垂される。駆動部が打ち勝つ必要のある結果として生じる重力作用の力は、この結果、大幅に減少する。これに加えて、引張手段と駆動プーリとの大きな接触力によって、大きな駆動モーメントを、駆動プーリにより引張手段に伝達できる。引張手段は偏向ローラによって案内される。
【0004】
昇降路容積の最適利用は、エレベータ構造においてさらに重要性が増している。特に、ビルの高い利用率を有する高層ビルでは、所与の昇降路容積に対して可能な限りの高効率の乗客輸送量の管理が望まれる。この目的は、第1に、エレベータ構成要素の最適空間節減配置によって大きなエレベータケージ用の空間を生成することによって、および第2に、1つの昇降路内に複数の独立したエレベータケージを垂直移動可能にするエレベータ構想によって達成できる。
【0005】
同一昇降路内に相互に上下に配置された少なくとも2台のエレベータケージを有するエレベータは、EP1489033から知られている。各エレベータケージ専用の駆動部と専用の釣り合いおもりとを有する。駆動部は第1および第2昇降路壁に近接して配置され、釣り合いおもりはまたそれぞれ関連する駆動部の下方に、第1および第2昇降路壁に近接して引張手段で懸垂されている。駆動部の駆動プーリの軸は、第1および第2昇降路壁に垂直に配置されている。独立に移動可能な2台のエレベータケージは高い輸送性能を保証する。第1および第2昇降路壁に近接して昇降路内に駆動部を位置付けることにより、別個のエンジンルームを不必要にし、昇降路ヘッド部における駆動要素の空間節減の小型配置を可能にする。
【特許文献1】欧州特許第1489033号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、エレベータ昇降路内の複数のエレベータケージの垂直移動のためのエレベータ構成要素の配置をさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題は、本発明により、独立請求項の定義にしたがって解決される。
【0008】
本発明によるエレベータは、相互に上下に配置されて、昇降路内を互いに独立に垂直方向に移動できる、少なくとも2台のエレベータケージを備える。各エレベータケージは、少なくとも1つのモータおよび少なくとも1つの駆動プーリを備える専用の駆動部と、専用の釣り合いおもりと、少なくとも1つの専用の引張手段とを有する。駆動部は第1昇降路壁に取り付けられ、別の駆動部は反対側の第2昇降路壁に取り付けられる。エレベータケージは駆動部を通過して移動でき、駆動部のモータは関連した駆動プーリの上方に垂直に配置されている。
【0009】
本発明のエレベータの利点は、第1および第2昇降路壁における駆動部の空間節減配置にある。駆動部は釣り合いおもりの障害物のない断面の領域にあり、したがって、昇降路ヘッド部または昇降路ピット内に追加の空間を一切占有しない。したがって、駆動部のこのような配置は特に空間節減に有効である。
【0010】
有利には、駆動部は昇降路の両側の壁に2つの異なる昇降路高さに交互に位置決めされており、上下に配置されたエレベータケージの2つの駆動部間の間隔は、有利には、少なくとも1台のケージ高さである。
【0011】
本発明のエレベータ装置の利点は、同一昇降路内に複数の駆動部および関連するエレベータケージがあったとしても、柔軟で簡単に位置決めできることである。これに反して、昇降路ヘッド部内の駆動部の従来の配置では、設置できる駆動部の数は、昇降路ヘッド部内の利用可能な空間により制限される。同様に、昇降路ヘッド部内の駆動部のこのような従来配置において、衝突することなく引張要素を案内することは、限界に近い制約を受ける。
【0012】
有利には、駆動プーリの軸は第1および第2昇降路壁に平行に置かれる。
【0013】
本発明のエレベータの利点は、駆動プーリに接触する引張手段を、水平方向を変更することなく、第1昇降路壁から第2昇降路壁に直接案内できることである。
【0014】
有利には、エレベータケージは、滑車方式により懸垂され、エレベータケージの下部領域に取り付けられた少なくとも2つの偏向ローラを有する。同じく有利には、釣り合いおもりは関連する駆動部の下方で滑車方式により懸垂され、この釣り合いおもりは釣り合いおもりの上部領域内に取り付けられている第3の偏向ローラを有する。
【0015】
本発明のエレベータの利点は、エレベータケージおよび釣り合いおもりの2:1懸垂にある。この懸垂によって、駆動部は半分の駆動トルクを生成するだけでよく、したがって、より小型の構成にでき、これによりエレベータ昇降路内での占有空間を減少できる。
【0016】
有利には、エレベータケージは2つのケージガイドレールによって案内され、釣り合いおもりはケージガイドレールと第1または第2昇降路壁との間に位置決めされる。
【0017】
本発明のエレベータの利点は、釣り合いおもりの簡単で空間を節減する配置にある。
【0018】
有利には、引張手段は少なくとも単一ケーブル、2重ケーブルまたはベルトからなる。同じく有利には、引張手段の負荷支承構造体はアラミド繊維またはVectran(登録商標)繊維から形成される。
【0019】
本発明のエレベータの利点は、好都合な標準的引張手段を使用することにある。高強力合成繊維の使用はさらに、従来の鋼繊維に比較して、固有重さに対する引っ張り強さの比の向上によって特徴付けられる。
【0020】
有利には、ベルトは片側を、例えば歯付ベルトなどで構成され、または片側をくさび形リブ付きベルトで構成される。有利には、このようなベルトは駆動プーリと少なくとも第1、第2および第3偏向ローラによって案内され、この場合、有利には、ベルトの片側だけが駆動プーリおよび偏向ローラに接触して配置される。これは、ベルトが、駆動プーリと第1偏向ローラとの間でベルトのそれぞれの長手方向軸周りに180°向きを変えると言う事実による。
【0021】
本発明のエレベータの利点は、片側を構造化されたベルトを標準として生成でき、有利である。駆動プーリと第1偏向ローラとの間で180°向きを変えることにより、これらのベルトは常に偏向ローラおよび駆動プーリの周りで同一方向に曲がる。これにより、ベルトの耐用年数が増加し、エレベータのメンテナンスコストが減少する。
【0022】
有利には、エレベータケージは2つのケージガイドレールによって案内され、これらのケージガイドレールは接続平面および引張手段を形成し、関連するエレベータケージの駆動プーリならびに第1および第2偏向ローラは、接続平面の片側に配置される。
【0023】
本発明のエレベータの利点は、平行に配置された複数の溝を有する駆動プーリおよび偏向ローラを使用することにある。このような駆動プーリおよび偏向ローラは複数の引張手段を受け入れる。それぞれの必要性に応じて、エレベータケージに関連する複数の引張手段を、このようにして、簡単な方法で相互に近接して平行に案内できる。
【0024】
有利には、場合によっては、エレベータケージは2つのケージガイドレールによって案内され、これらのケージガイドレールは接続平面および引張手段を形成し、関連するエレベータケージの駆動プーリならびに第1および第2の関連する偏向ローラは、接続平面の両側に配置される。
【0025】
本発明のエレベータの利点はエレベータケージの重心における対称的懸垂である。ケージガイドレールは通常、エレベータケージの重心においてエレベータケージを同様に案内するので、このような懸垂では、追加の力およびモーメントはケージガイドレールに導入されない。
【0026】
有利には、各駆動部はケージガイドレールおよび/または釣り合いおもりガイドレールに固定されたに横梁に取り付けられる。
【0027】
本発明によるエレベータの利点は、駆動部を昇降路空間内に可能な限り簡単に取り付け、既存の構造体を十分に活用することである。
【0028】
本発明は、実施形態の例および図面およびさらに詳細な説明によって、以下で明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、それぞれが専用の駆動部A1、A2を有し、および互いに独立に垂直方向に移動可能な少なくとも2台のエレベータケージ7a、7bを有するエレベータを示す。駆動部A1、A2は第1および第2昇降路壁に横方向に配置される。第1および第2昇降路壁は、それらの相互に反対側の昇降路壁であり、昇降路扉を有さない。この場合、駆動部A1、A2は両側の昇降路壁に2つの異なる昇降路高さで交互に配置されており、一般に、垂直方向の距離は、少なくとも1台のケージ高さである。駆動部A1、A2は、同一時間における、関連するエレベータケージ7a、7bの最高到達点のそれらの位置によって画定される。この理由は、実施形態の図示された形態の引張手段が、エレベータケージ7a、7bの懸垂点を駆動プーリ1a、1bの高さより上に持ち上げることができないためである。しかし、近接するエレベータケージ7a、7bの2つの駆動部A1、A2を同一昇降路高さに取り付けることを考えることもできる。
【0030】
駆動部A1、A2は、図4に示されるとおり、モータM1、M2(好ましくは、電気モータ)と、駆動プーリ1a、1bおよび、場合によっては設定プーリ13a、13bとを有し、この設定プーリによって、駆動プーリ1a、1bの周りの引張手段Z1、Z2のループ角および引張手段Z1、Z2の駆動部A1、A2からと、エレベータケージ7a、7bまたは釣り合いおもり12a、12bからの水平方向間隔を設定できる。
【0031】
モータM1、M2は、駆動プーリ1a、1bの垂直上方に置かれている。この配置によって、駆動部A1、A2は、エレベータケージ12a、12bと第1および第2昇降路壁との間の釣り合いおもり12a、12bの障害物のない投影面に位置決めできる。この結果、エレベータケージ7a、7bは、駆動部A1、A2を通過して移動でき、したがって、駆動部A1、A2を昇降路内の他の場合には必要とされない空間に取り付けできる。この結果、エンジンルームの存在しない従来のエレベータと比較して、昇降路ヘッド内および/または昇降路ピット内に空間を得ることができる。
【0032】
駆動部A1、A2のモータM1、M2は、駆動プーリ1a、1bを介して引張手段Z1、Z2を駆動する。駆動プーリ1a、1bは、1つまたは複数の引張手段Z1、Z2を受け入れるのに適するように設計されている。好ましくは、引張手段Z1、Z2は、片側にリブを有するくさび形リブ付きベルトなどのベルトであり、このリブが駆動プーリ側面の1つまたは複数の凹部に係合する。平滑ベルトおよび片面または両面に歯を有するベルトなどの変形ベルトも、対応する駆動プーリ1a、1bと共に、同様に使用できる。さらに、様々な種類のケーブル、例えば単一ケーブル、2重ケーブルまたは多重ケーブルもまた使用できる。引張手段は鋼線またはアラミドまたはVectran(登録商標)のストランドを備える。
【0033】
少なくとも2台のエレベータケージ7a、7bと2つの釣り合いおもり12a、12bとが、引張手段Z1、Z2によって滑車方式で懸垂される。この場合、エレベータケージは、エレベータケージ7a、7bの下部領域に取り付けられた、少なくとも1つの第1および第2偏向ローラ2a、2b、3a、3bを有する。偏向ローラ2a、2b、3a、3bは外周部に、1つまたは複数の引張手段Z1、Z2を受け入れできるような複数の溝の1つを有する。このように、偏向ローラ2a、2b、3a、3bは、引張手段Z1、Z2を案内するのに適し、引張手段Z1、Z2に接触している。したがって、エレベータケージ7a、7bは、下部の滑車装置として懸垂されるのが好ましい。
【0034】
実施形態の随意の形態では、偏向ローラ2a、2b、3a、3bはエレベータケージ7a、7b、7cの上部領域内に配置される。上述の説明に対応して、エレベータケージ7a、7b、7cは、上部の滑車装置として懸垂される。
【0035】
偏向ローラ2a、2b、3a、3bと類似の、1つまたは複数の引張手段Z1、Z2を受け入れるのに同様に適する第3の偏向ローラ4a、4bが、釣り合いおもり12a、12bの上部領域内に配置されている。これにより、好ましくは、釣り合いおもり12a、12bは、関連する駆動部A1、A2の下方で上部滑車装置として第3偏向ローラ4a、4bで懸垂される。
【0036】
引張手段Z1、Z2は、第1固定点5a、5bから第2固定点6a、6bに、複数の偏向ローラ2a、2b、3a、3b、4a、4bを介して、および第1昇降路壁から第2昇降路壁に駆動プーリ1a、1bを介して導かれる。この場合、第1固定点5a、5bは、関連する駆動部A1、A2の反対側に、第1および第2昇降路壁に近接してほぼ同一昇降路高さに配置される。第2固定点6a、6bは、反対側の第2または第1昇降路壁に、関連する駆動部A1、A2に近接して配置される。
【0037】
引張手段Z1、Z2は、第1固定点5a、5bから第1または第2昇降路壁に沿って下方に第2偏向ローラ3a、3bにまで延び、このローラ周りに外側から内側に約90°の角度で巻き付き、第1偏向ローラ2a、2bに至る。引張手段Z1、Z2は、この第1偏向ローラ2a、2b周りに内側から外側に同じく約90°の角度で巻き付き、その後エレベータケージ7a、7bに沿って上方に駆動プーリ1a、1bにまで延び、このプーリ周りに内側から外側に約150°の角度で巻き付く。随意の設定プーリ13a、13bのそれぞれの設定に依存して、ループ角は90〜180°の範囲に変化してもよい。その後、引張手段Z1、Z2は、第2または第1昇降路壁に沿って下方に第3偏向ローラ4a、4bにまで延び、このローラ周りに外側から内側に約180°の角度で巻き付き、第2または第1昇降路壁に沿って逆に上方に延びて第2固定点6a、6bに至る。
【0038】
設定プーリ13a、13bは、駆動部A1、A2の随意の構成要素である。この設定プーリ13a、13bを用いて駆動プーリ1a、1bにおける引張手段のループ角を設定でき、このループ角を増加または減少することにより、所望の牽引力を駆動プーリ1a、1bから引張手段Z1、Z2に伝達できる。駆動プーリ1a、1bからの設定プーリ13a、13bのそれぞれの間隔に依存して、引張手段Z1、Z2の、駆動部A1、A2からの、釣り合いおもり12a、12bからの、またはエレベータケージ7a、7bからの間隔をさらに設定できる。このようにして、昇降路内での駆動プーリ1a、1bと第1偏向ローラ2a、2bとの間の引張手段Z1、Z2の衝突しない案内が保証される。
【0039】
図2によれば、エレベータケージ7a、7bは2つのケージガイドレール10.1、10.2によって案内される。2つのケージガイドレール10.1、10.2は、概ね2台のエレベータケージ7a、7bのそれぞれの重心Sを通って延びる、接続平面Vを形成する。実施形態において説明される形態では、エレベータケージ7a、7bは偏心して懸垂される。この懸垂構成における引張手段Z1、Z2および関連する駆動手段、例えば偏向ローラ2a、2b、3a、3b、4a、4bおよび駆動プーリ1a、1bは、接続平面Vの片側にあり、偏向ローラ4a、4bは簡単化のために図2では示されていない。すなわち、エレベータケージ7a、7bに関連する上述の全ての構成要素は、第3昇降路壁と接続平面Vとの間、あるいは第4昇降路壁と接続平面Vとの間のいずれかの間に位置する。第3および第4昇降路壁は、少なくとも1つの昇降路扉9と両側の昇降路壁を有する昇降路壁を示す。有利には、引張手段Z1、Z2と接続平面Vとの間隔yはほぼ同一である。エレベータケージ7a、7bの引張手段Z1、Z2は、接続平面Vの一方側または他方側に交互に位置する。したがって、エレベータケージ7a、7bの偏心懸垂によって生じるモーメントは相互に打ち消し合う。等しい負荷割合のエレベータケージ7a、7bの場合、および偶数のエレベータケージ7a、7bの場合、ガイドレール10.1、10.2に作用するモーメントは、実質的に相互に打ち消し合う。
【0040】
釣り合いおもり12a、12bはそれぞれ、2つの釣り合いおもりガイドレール11a.1、11a.2、11b.1、11b.2によって案内される。釣り合いおもり12a、12bは、ケージガイドレール10.1、10.2と第1または第2昇降路壁との間の両側の昇降路壁に位置決めされる。有利には、釣り合いおもりはそれらの重心Sを引張手段Z1、Z2によって懸垂される。エレベータケージ7a、7bは偏心して懸垂されているため、釣り合いおもり12a、12bは第3および第4昇降路壁に近接して横方向に偏って位置する。
【0041】
駆動プーリ1a、1bおよび偏向ローラ2a、2b、3a、3b、4a、4bの回転軸は、第1および第2昇降路壁に平行である。図示された実施形態では、上述の構成要素は、4つの平行に延びる引張手段Z1、Z2を受け入れ、これらを案内し、駆動プーリ1a、1bの場合は、これらをまた駆動することができる形態である。引張手段Z1、Z2を受け入れ可能にするために、偏向ローラ2a、2b、3a、3b、4a、4bおよび駆動プーリ1a、1bは、4つの特殊な形状の接触面を有し、これらの接触面は、ケーブルの場合は例えば溝として設計され、あるいはベルトの場合は例えば凹面または歯形として設計でき、あるいは平坦構成の接触面の場合は、ガイドショルダが設けられる。これらの4つの接触面はそれぞれ、共通のローラ形状のベース本体上に、あるいは共通の回転軸を有する4つの個々のローラ上のいずれに形成されてもよい。
【0042】
実施形態のこの形態の知識を用いて、様々な変形形態の可能性が、それぞれに設定された課題に応じて、当業者には明らかになる。したがって、当業者は、1つの回転軸に関して相互に間隔を有するかまたは間隔を有さない1つから4つ以上の個別ローラを配置できる。この場合、各ローラは、それぞれの設計にしたがって、1つから4つまたは必要に応じてそれ以上の引張手段Z1、Z2を受け入れることができる。
【0043】
エレベータの通常運転においては、エレベータケージ7a、7bは、階に停止すると、その階と同一変面に位置合わせされ、ケージ扉8は昇降路扉9と一緒に開き、その階からエレベータケージ7a、7bへの(およびこの逆に)乗客の移動を可能にする。
【0044】
図3は、エレベータケージ7a、7bが中心懸垂されている、代替の懸垂構成を示す。この場合、引張手段Z1、Z2は、接続平面Vの両側において、偏向ローラ2a、2b、3a、3b、4a、4bおよび駆動プーリ1a、1bによって案内される。有利には、この場合、懸垂は接続平面Vに対して対称に配置される。この場合、懸垂の重心は、エレベータケージ7a、7bの重心にほぼ一致し、ケージガイドレール10.1、10.2には追加のモーメントは作用しない。
【0045】
エレベータケージ7a、7bのこの中心懸垂では、関連する偏向ローラ2a.1、2a.2、2b.1、2b.2、3a.1、3a.2、3b.1、3b.2および駆動プーリ1a.1、1a.2、1b.1、1b.2は、接続平面Vの左右に配置された少なくとも2つのローラからなる。釣り合いおもり12a、12bの偏向ローラ4a、4bは同様に、接続平面Vの左右に配置された2つのローラからなるが、図3では簡単化のために図示されていない。本発明の例では、上部エレベータケージ7aに関連する偏向ローラ2a、3a、4bおよび駆動プーリ1aは接続平面Vから第1間隔xに位置し、また上部エレベータケージ7aに関連する偏向ローラ2b、3b、4bおよび駆動プーリ1bは接続平面Vから第2間隔Xに位置し、第1間隔xは第2間隔Xより小さい。これにより、エレベータケージ7a、7bの中心懸垂の場合における引張手段Z1、Z2の衝突しない案内が保証される。
【0046】
ここではまた、有利には、釣り合いおもり12a、12bは、ケージガイドレール10.1、10.2と第1または第2昇降路壁との間で、引張手段Z1、Z2によって釣り合いおもり12a、12bの重心を懸垂される。このときエレベータケージ7a、7bは中心懸垂されているため、釣り合いおもり12a、12bもまた、第1および第2昇降路壁の中央領域に位置する。釣り合いおもり12a、12bがこの中心位置にあるために、釣り合いおもり12a、12bの横方向端と第3および第4昇降路壁との間の自由空間が増加する。これによって、釣り合いおもり12a、12bの設計自由度が大きくなる。したがって、例えば、より細くおよびより幅広の釣り合いおもり12a、12bを用いて、空間を効果的に利用できる。所与の昇降路断面に対して、エレベータケージ7a、7bは幅を広くでき、所与のエレベータケージのサイズに対して、昇降路断面を減少できる。
【0047】
図4は、ケージガイドレール10.1および/または釣り合いおもりガイドレール11a.1、11a.2に固定された横梁19に取り付けられている駆動部A1を示す。図4ではまた、モータの下に配置された駆動プーリ1aを備えたモータM1と、随意の設定プーリ13aと、釣り合いおもり12aが懸垂される第3偏向ローラ4aと、後方のエレベータケージ7aとを見ることができる。ここに示された例は、接続平面Vに対して、図2の配置と比較して鏡像関係にある。
【0048】
駆動部A1、A2はまた、場合によっては、昇降路壁に直接取り付けでき、横梁19を除くこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】2台のエレベータケージ、2つの駆動部、2つの駆動プーリ、2つの引張手段、および複数の偏向ローラを備えたエレベータの配置の概略側面図を示す。
【図2】2台のエレベータケージ、2つの駆動部、2つの駆動プーリ、2つの引張手段、および複数の偏向ローラを備えたエレベータの配置の概略平面図を示し、これら各構成要素は2つのケージガイドレールによって形成される接続平面の片側に位置する。
【図3】2台のエレベータケージ、2つの駆動部、2つの駆動プーリ、2つの引張手段、および複数の偏向ローラを備えたエレベータの配置の概略平面図を示し、これら各構成要素は2つのケージガイドレールによって形成される接続平面のいずれの側にも位置する。
【図4】昇降路内の横梁上の駆動部の配置の側面図を示す。
【符号の説明】
【0050】
A1、A2 駆動部
M1、M2 モータ
S 重心
V 接続平面
Z1、Z2 引張手段
x、X 間隔
1a、1b 駆動プーリ
2a、2b 第1偏向ローラ
3a、3b 第2偏向ローラ
4a、4b 第3偏向ローラ
5a、5b 第1固定点
6a、6b 第2固定点
7a、7b エレベータケージ
10.1、10.2 ガイドレール
11a、11b 釣り合いおもりガイドレール
12a、12b 釣り合いおもり
13a、13b 設定プーリ
19 横梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に上下に配置され、および昇降路内を互いに独立に垂直方向に移動できる2台のエレベータケージ(7a、7b)を有するエレベータであって、
これら2台の各エレベータケージが少なくとも1つのモータおよび少なくとも1つの駆動プーリ(1a、1b)を備える専用の駆動部(A1、A2)と、専用の釣り合いおもり(12a、12b)と、少なくとも1つの専用の引張手段(Z1、Z2)とを有し、
駆動部(A1)が第1昇降路壁に取り付けられ、別の駆動部(A2)が反対側の第2昇降路壁に取り付けられ、エレベータケージ(7a、7b)が駆動部(A1、A2)を通過して移動できる、エレベータにおいて、
駆動部(A1、A2)のモータは関連する駆動プーリ(1a、1b)の垂直上方に配置されていることを特徴とする、エレベータ。
【請求項2】
駆動部(A1、A2)が反対側の第1および第2昇降路壁に2つの異なる昇降路高さで交互に位置決めされていることを特徴とする、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
相互に上下に配置されたエレベータケージ(7a、7b)の駆動部(A1、A2)間の間隔が、少なくともケージ高さであることを特徴とする、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
駆動プーリ(1a、1b)の軸が、第1および第2昇降路壁に平行であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項5】
エレベータケージ(7a、7b)が滑車方式で懸垂されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項6】
エレベータケージ(7a、7b)のそれぞれが、エレベータケージ(7a、7b)の下部領域内に取り付けられた少なくとも2つの偏向ローラ(2a、2b、3a、3b)を有することを特徴とする、請求項5に記載のエレベータ。
【請求項7】
エレベータケージ(7a、7b)のそれぞれが、エレベータケージ(7a、7b)の上部領域内に取り付けられた少なくとも2つの偏向ローラ(2a、2b、3a、3b)を有することを特徴とする、請求項5に記載のエレベータ。
【請求項8】
引張手段(Z1、Z2)が、駆動プーリ(1a、1b)と第1および第2偏向ローラ(2a、2b、3a、3b)とによって第1固定点まで案内されることを特徴とする、請求項7に記載のエレベータ。
【請求項9】
釣り合いおもり(12a、12b)が、関連する駆動部(A1、A2)の下方において滑車方式で懸垂されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項10】
釣り合いおもり(12a、12b)が、釣り合いおもり(12a、12b)の上部領域内に取り付けられた第3偏向ローラ(4a、4b)を有することを特徴とする、請求項9に記載のエレベータ。
【請求項11】
引張手段(Z1、Z2)が、駆動プーリ(1a、1b)によって第3偏向ローラ(4a、4b)を介して第2固定点(6a、6b)まで案内されることを特徴とする、請求項10に記載のエレベータ。
【請求項12】
釣り合いおもり(12a、12b)のそれぞれが、2つの釣り合いおもりガイドレール(11a.1、11a.2、11b.1、11b.2)によって案内されることを特徴とする、請求項11に記載のエレベータ。
【請求項13】
エレベータケージ(7a、7b)が2つのケージガイドレール(10)によって案内され、釣り合いおもり(12a、12b)がケージガイドレール(10)と第1または第2昇降路壁との間に位置決めされることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項14】
引張手段(Z1、Z2)が少なくとも単一ケーブルまたは2重ケーブルからなることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項15】
引張手段(Z1、Z2)が少なくとも単一ベルトからなることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項16】
引張手段(Z1、Z2)の支持構造体が、アラミドまたはVectran(登録商標)繊維から形成されていることを特徴とする、請求項14または15に記載のエレベータ。
【請求項17】
ベルトが片側を構造化されていることを特徴とする、請求項15に記載のエレベータ。
【請求項18】
ベルトが歯付ベルトまたはくさび形リブ付きベルトであることを特徴とする、請求項15または17に記載のエレベータ。
【請求項19】
ベルトが駆動プーリ(1a、1b)と少なくとも第1(2a、2b)、第2(3a、3b)および第3(4a、4b)偏向ローラによって案内され、
ベルトの片側だけが駆動プーリ(1a、1b)および偏向ローラ(2a、2b、3a、3b、4a、4b)に接触しており、
ベルトが駆動プーリ(1a、1b)と第1偏向ローラ(2a、2b)との間でベルトのそれぞれの長手方向軸周りに180°向きを変える、
ことを特徴とする、請求項14、17または18に記載のエレベータ。
【請求項20】
エレベータケージ(7a、7b)が2つのケージガイドレール(10)によって案内され、
これらのケージガイドレール(10)が接続平面および引張手段(Z1、Z2)を形成し、
関連するエレベータケージ(7a、7b)の駆動プーリ(1a、1b)ならびに第1および第2偏向ローラ(2a、2b、3a、3b)が、接続平面の片側に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項21】
エレベータケージ(7a、7b)が2つのケージガイドレール(10)によって案内され、
これらのケージガイドレール(10)が接続平面および引張手段(Z1、Z2)を形成し、
関連するエレベータケージ(7a、7b)の駆動プーリ(1a、1b)ならびに第1および第2偏向ローラ(2a、2b、3a、3b)が、接続平面の両側に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項22】
各駆動部(A1、A2)がケージガイドレール(10)および/または釣り合いおもりガイドレール(11a.1、11a.2、11b.1、11b.2)に固定された横梁(19)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156116(P2008−156116A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−315447(P2007−315447)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】