説明

映像データ処理装置、コントラスト補正方法

【課題】コントラスト補正と誤差拡散処理を行う場合に適切な補正量のコントラスト補正が実行されるようにする。
【解決手段】入力された輝度データに対してのコントラスト補正演算と、コントラスト補正がされた輝度データに対しての誤差拡散処理が行われる映像データ処理装置において、誤差拡散処理の実行/不実行が設定可能とされるようにする。この場合に、誤差拡散処理が実行されるか否かに応じて、コントラスト補正値を調整し、調整したコントラスト補正値を用いてコントラスト補正が行われるようにする。例えば誤差拡散処理が実行されない場合は、誤差拡散処理が実行される場合よりも、コントラスト補正量が抑制されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像データ処理装置とコントラスト補正方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特許第3549356号公報
【背景技術】
【0003】
上記特許文献1には、映像輝度信号について最大値、最小値を検出し、検出結果に応じて得られる補正値を輝度信号に乗算することで階調補正(コントラスト補正)を行う技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、映像信号についてのコントラスト補正には、多様な要望がある。
例えば現在、映像信号をデジタル化して処理することは一般的であるが、その場合に量子化誤差の問題を発生させないことが求められる。量子化誤差による画質低下を避けるために、誤差拡散処理が行われることがあるが、この処理とコントラスト補正の整合が必要となる。
またコントラストについては、ユーザの好みも多様であり、一律に補正することが良いとは限らない。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みて、各種状況下で適切なコントラスト補正が実行されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の映像データ処理装置は、入力された輝度データに対して、コントラスト補正値を用いた演算でコントラスト補正を行うコントラスト補正演算部と、上記コントラスト補正がされた輝度データに対して誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、上記誤差拡散部での誤差拡散処理の実行/不実行を設定する誤差拡散設定部と、入力された輝度信号の黒ピーク値、白ピーク値を検出し、検出した黒ピーク値及び白ピーク値を用いて上記コントラスト補正値を設定する補正値設定部と、上記誤差拡散設定部の指示により、上記誤差拡散部で誤差拡散処理が実行されるか否かに応じて、上記補正値設定部で設定された上記コントラスト補正値を調整して、調整した上記コントラスト補正値を上記コントラスト補正演算部に供給する補正量調整部とを備える。
また上記補正量調整部は、上記誤差拡散設定部の設定により、上記誤差拡散部で誤差拡散処理が実行されない場合は、誤差拡散処理が実行される場合よりも、上記コントラスト補正演算部によるコントラスト補正量が抑制されるように、上記コントラスト補正値を調整する。
【0007】
また、さらにユーザ選択に応じてコントラスト補正量を設定するユーザ設定部を備え、上記補正量調整部は、上記誤差拡散部での誤差拡散処理の実行/不実行に加えて、上記ユーザ設定部によるコントラスト補正量の設定を用いて、上記コントラスト補正値を調整する。
また上記補正値設定部は、検出した黒ピーク値と白ピーク値の差分と、各階調値に対応して設定されている緩和黒ピーク値、緩和白ピーク値のうちで、上記検出した黒ピーク値と白ピーク値にそれぞれ対応する緩和黒ピーク値と緩和白ピーク値との差分を用いて、上記コントラスト補正値を設定する。
また上記補正値設定部は、検出した黒ピーク値及び白ピーク値に対して、60フィールド以上の期間の平滑化時定数で平滑化し、該平滑化した黒ピーク値及び白ピーク値を用いて上記コントラスト補正値を設定する。
また映像データのシーンチェンジを検出するシーンチェンジ検出部をさらに備え、上記補正値設定部は、上記シーンチェンジ検出部によってシーンチェンジが検出された際には、上記平滑化時定数を一時的に短い時定数とする。
また上記補正値設定部は、映像画面の一部の画素領域であるピーク検出領域から、輝度信号の黒ピーク値、白ピーク値を検出するとともに、上記コントラスト補正部で補正される輝度データに対して、階調が保たれるように入出力値を変換する階調保証部をさらに備える。
【0008】
本発明のコントラスト補正方法は、誤差拡散部での誤差拡散処理の実行/不実行が設定可能とされるとともに、上記誤差拡散部で誤差拡散処理が実行されるか否かに応じて、補正値設定部で設定されたコントラスト補正値を調整し、調整した上記コントラスト補正値を用いてコントラスト補正演算部でコントラスト補正が行われるようにしたものである。
【0009】
このような本発明では、誤差拡散処理が行われるか否かにより、コントラスト補正量が調整される。
誤差拡散とは、例えばデジタルデータをnビットからmビット(但しn>m)に変換する際に、量子化ステップで制限される階調間の値をドット密度で表現することで、滑らかな階調感の画像を得る処理である。この誤差拡散としては、例えばスーパービットマッピング(SUPER BIT MAPPING:ソニー株式会社の登録商標)のように、量子化誤差成分を人の視覚では認識しにくい高周波成分に変換するノイズシェーピング方式や、ランダムノイズ等を用いるディザ方式等が知られている。
コントラスト補正を行うと、映像コンテンツの種別などにより、場合によっては映像上で階調毎の境目が視認される、いわゆるバンディングが発生することがある。
これに対してコントラスト補正後の映像データに対して誤差拡散を行うことで、バンディングを目立たなくすることができる。
その一方で、誤差拡散を停止させたい場合もある。その場合、コントラスト補正によってバンディングが目立つ状態となってしまう。
そこで本発明では、誤差拡散処理の実行/不実行に応じてコントラスト補正量を調整することで、誤差拡散処理の実行か否かに関わらず、適切にコントラスト補正された映像が得られるようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誤差拡散処理の実行/不実行に関わらず、適切なコントラスト補正が行われた映像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の映像データ処理装置のブロック図である。
【図2】誤差拡散処理の説明図である。
【図3】コントラスト補正の説明図である。
【図4】実施の形態の緩和ピークを用いたコントラスト補正値設定の説明図である。
【図5】実施の形態の誤差拡散の有無及びユーザ設定に応じた調整係数の説明図である。
【図6】実施の形態の調整係数テーブルの説明図である。
【図7】実施の形態のブラック調整カーブの説明図である。
【図8】実施の形態の階調補償の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の映像データ処理装置について、次の順序で説明する。
<1.映像データ処理装置の構成>
<2.補正値設定>
<3.誤差拡散及びユーザ設定に応じた補正量調整>
<4.コントラスト安定化>
<5.表示系の違いの吸収>
<6.過補償の場合の階調補償>
【0013】
<1.映像データ処理装置の構成>

図1は実施の形態の映像データ処理装置1のブロック図である。
ここでは、この映像データ処理装置1は、映像データとして輝度データY、色差データCb,Crが入力され、この映像データに対してコントラスト補正を行う装置としている。通常、映像データの伝送は8ビットデータによるものが多い。本例の映像データ処理装置1は、供給される8ビットの映像データを10ビット以上に変換して処理を行う。そして8ビットに戻して後段の表示モニタなどに供給するものとする。
【0014】
映像データ処理装置1において、まず入力された映像データ(Y、Cb,Cr)に対する処理系として、ビット数変換部2、階調補償部4、コントラスト補正演算部3、ブラック調整部5、誤差拡散部6が設けられる。
【0015】
ビット数変換部2は、入力された8ビットの映像データ(Y、Cb,Cr)を10ビット以上のデータに変換する。例えばここでは16ビットに変換するものとする。例えば元の8ビットに、「00000000」の8ビットを付加して16ビットとする。スムージング処理をして16ビット相当の滑らかさにしておくと、さらに階調特性は良くなる。
なお、12ビット、14ビットなど、他のビット数に変換するものとしてもよい。
【0016】
16ビットの輝度データY、色差データCb,Crは、階調補償部4で処理される。ここではコントラスト補正が過補償となった場合でも黒つぶれや白つぶれが無いように、入出力値の変換が行われる。
そして輝度データY、色差データCb,Crは、コントラスト補正演算部3に供給される。
コントラスト補正演算部3には、輝度データY、色差データCb,Crのそれぞれについての演算回路3Y、3Cb、3Crを有する。
各演算回路3Y、3Cb、3Crは、輝度データY、色差データCb,Crのそれぞれに対して、補正量調整部16から供給されるコントラスト補正値を用いた所定の演算を行い、コントラスト補正された値としての輝度データY、色差データCb,Crを得る。
【0017】
コントラスト補正演算部3でコントラスト補正された輝度データY、色差データCb,Crはブラック調整部5に供給される。
ブラック調整部5では、表示系の違いやユーザの好みに応じたγカーブによる黒領域の調整が行われる。
【0018】
誤差拡散部6では、16ビットの輝度データY、色差データCb,Crを元の8ビットに変換するとともに、その際の量子化誤差による画質劣化を低減するため誤差拡散を行う。 誤差拡散は、量子化ステップで制限される階調間の値をドット密度で表現することで、滑らかな階調の画像を得る処理である。
図2で簡単に説明する。図2(a)が10ビット以上のデータとしての画像であるとする。これを8ビットに変換することを考える。
図2(a)の下部の破線は、8ビットの分解能で、実線は10ビット以上の高いビット数での分解能を示しているとする。
まず、誤差拡散を行わずに8ビットに変換すると、図2(b)のように、階調が不連続になって映像上でバンディングが発生する。
これに対して、誤差拡散を行うと図2(c)のようになる。即ち8ビットの分解能において、ドット密度で階調を表現するようにして、中間の階調を表現する。これにより図示のようにバンディングの目立たない映像を得ることができる。
【0019】
以上のこと図1の誤差拡散部6にあてはめると次のようになる。
コントラスト補正演算部3による16ビットの映像データに対する係数演算処理によれば、元の8ビットから見たら小数点以下となる値が生ずる。例えば或る輝度データYの値が「20」であったときに、コントラスト補正演算によって、「20.3」になる場合や、「20.8」になる場合がある。これを8ビットに変換したときに、「20.3」は「20」に、「20.8」は「21」になってしまうと、その階調の境目でのバンディングが目立ち、映像として低品質となることがある。
この現象は、実写映像など元からノイズ成分が多い映像ではほとんど発生しないが、コンピュータで作られたノイズのないアニメーションのような素材の場合に現れやすい。さらにコントラスト補正ゲインが絵柄に応じて変わってゆき、このバンディングの模様が変化するため、見苦しい画像となる。また、平滑化の時定数を長くすると模様がゆっくり変化して更に見苦しくなる。
このような場合に対しては、誤差拡散を行い8ビットの分解能以上の階調を表現することでバンディングを目立たなくできる。
【0020】
誤差拡散部6では、以上のように誤差拡散を行って8ビットの輝度データY、色差データCb,Crを後段に出力する。
【0021】
図1の映像データ処理装置1では、コントラスト補正演算部3に供給するコントラスト補正値を得るために、補正値設定部20が設けられる。
補正値設定部20は、ローパスフィルタ(LPF)7、黒ピーク検出部8、白ピーク検出部9、リミッタ10、平滑化部11、検出領域設定部12、補正ゲイン・バイアス決定部14、補正緩和テーブル15が設けられる。
また、シーンチェンジ検出部13、補正量調整部16、ユーザ設定部17、誤差拡散設定部18が設けられる。
【0022】
ビット数変換部2からの輝度データYは、補正値設定部20におけるLPF7に供給される。LPF7はノイズ低減のための高域カットフィルタリングを行う。
黒ピーク検出部8は、検出領域設定部12で設定された画素範囲(ピーク検出領域)において、輝度データYの最小値を検出する。
白ピーク検出部9は、検出領域設定部12で設定された画素範囲において、輝度データYの最大値を検出する。
検出領域設定部12は、例えば図8(b)の斜線部の画素領域として示すように、1フレーム画面のうちの中央領域Aを、ピーク検出領域と設定する。黒ピーク検出部8、白ピーク検出部9は、それぞれこのピーク検出領域内の画素値となる輝度データYのうちで、黒ピーク、白ピークを検出する。
画面の中央領域Aでピーク検出を行うのは、中央領域Aが映像におけるユーザの注目点であり、この領域の輝度状態に基づいてコントラスト補正を行うことが、ユーザにとって好適なコントラスト調整となりやすいからである。
【0023】
リミッタ10は、検出された黒ピーク、白ピークの値に制限をかける。例えば映像内容によっては検出された黒ピークの値が、かなり高輝度の値であることや、逆に白ピークの値がかなり低輝度の値であることもあり得る。そのような場合は、白ピークと黒ピークの差分に基づいてコントラスト補正値としての係数を設定しても適切なコントラスト補正ができない。
そこで黒ピークの値としての上限値、白ピークとしての下限値を設定し、リミッタ10で、上限値を越える黒ピークや、下限値を下回る白ピークについては、当該上限値、下限値に制限するようにしている。
【0024】
平滑化部11は、ある程度長い時定数で、検出された黒ピーク、白ピークの値を平滑化する。ここでは、60フィールド以上の時定数を設定している。
そして平滑化された黒ピーク、白ピークの値を補正ゲイン・バイアス決定部14に供給する。
ここでシーンチェンジ検出部13は、輝度データYを入力し、フレーム全体の輝度レベル平均値の変化などから、シーンチェンジを検出している。つまり映像内容としてのシーンが変わるタイミングである。
平滑化部11は、シーンチェンジ検出部13からシーンチェンジの検出信号があったら、一時的に平滑化時定数を短くするようにしている。
【0025】
補正ゲイン・バイアス決定部14は、コントラスト補正値としてコントラスト補正演算部3に与える補正ゲインとバイアス値を決定する。
また補正緩和テーブル15は、輝度において黒領域から白領域の中間調の補正を制限するために用いる緩和黒ピーク、緩和白ピークを得るためのテーブルである。詳しくは後述する。
【0026】
本例の場合、補正ゲイン・バイアス決定部14で決定されるコントラスト補正値(補正ゲイン、バイアス値)は、補正量調整部16を介してコントラスト補正演算部3に供給される。
補正量調整部16は、決定されたコントラスト補正値(補正ゲイン、バイアス値)に対して係数を与え、場合に応じて補正量が少なくなるように調整する。具体的には、補正量調整部16は、誤差拡散設定部18での設定、及びユーザ設定部17での設定に応じてコントラスト補正値を調整する。
【0027】
誤差拡散設定部18は、誤差拡散部6における誤差拡散の実行/不実行を設定する。例えばユーザの選択によって誤差拡散の実行/不実行を設定し、誤差拡散部6に実行/不実行を指示する。
ユーザ設定部17は、ユーザの好みに応じた選択によりコントラスト補正量を設定する。例えばコントラスト補正の度合いとして4段階をユーザが選択可能とする。
具体的には、ユーザ設定として、ユーザは補正度合いを0,1,2,3の4段階から選択でき、ユーザ設定部17は、ユーザの選択に応じて、選択された数値をユーザ設定係数Uを補正量調整部16に出力する。つまりユーザ設定係数Uとして0,1,2,3のいずれかの値を出力する。
後述するが、ユーザ設定係数U=3は、最もコントラスト補正効果が大きくなる設定である。ユーザ設定係数U=2の場合は、やや補正効果が小さく、ユーザ設定係数U=1は、さらに補正効果が小さくなる設定である。ユーザ設定係数U=0は、コントラスト補正効果がゼロとなる設定である。
なお、もちろんユーザ設定が4段階であるというのは一例に過ぎない。
【0028】
このユーザ設定部17でのユーザ設定係数Uと、誤差拡散設定部18での誤差拡散の実行/不実行による設定の情報に応じて、補正量調整部16が補正ゲイン及びバイアス値を調整して、コントラスト補正演算部3に供給する。
【0029】
このような構成の映像データ処理装置1では、次のような観点でコントラスト補正が実行できるようにしている。
・全体的なコントラストを改善しつつ、コンテンツ作者の意図から乖離したようなコントラスト補正を行わないようにする。
・量子化誤差によるバンディングの問題が発生しないようにする。
・コントラスト補正が過補償となった場合でも階調を残すようにする。
・コントラストの安定化を図る。
・表示系の違いを吸収する。
・ユーザーの好みを反映させる。
以下では、これらの観点から好適なコントラスト補正を行うための、上記図1の各部の動作について説明していく。
【0030】
<2.補正値設定>

全体的なコントラストを改善すると共に、作者の意図を曲げないコントラスト補正を簡易に実現するため、本実施の形態では、補正値設定部20が以下に述べるようにコントラスト補正値を決定している。
なお、ここで作者の意図を曲げないというのは、主に中間調(例えば40IREから60IRE)の映像について、コントラスト補正を抑えるという意味である。
中間調の映像は、コンテンツ制作者が淡い印象を出そうとしている映像なので、なるべく変化させないことが好ましい。
例えば前掲の特許文献1の技術などでは、リミット、加減算、乗除算等を組み合わせてコントラスト補正をおこなうことを実現しているが、中間調には変化を与えない設定は難しい。
本実施の形態では、検出した黒ピーク、白ピークを用いてコントラスト補正値を決める際に、コントラスト補正値としての補正ゲインとバイアス直流シフト量とゲインのパラメータを決めるルックアップテーブルとし、作者の意図を曲げない範囲を簡便に確実に設定できるようにした。
【0031】
まず図3で通常のコントラスト補正について述べる。
図3ではY信号の入出力を8ビットで示しているが、映像信号に有効輝度レベル範囲を8ビット値としての「16」〜「235」の範囲としている。
図3(a)は、入力された輝度データYにおいて検出された白ピークが図中「Wp」の値であった場合である。
この場合、コントラスト補正としては、白ピークの値Wpが最大値「235」に引き上げられる係数を設定し、そのフレームの各輝度データYについて乗算することで、図示する補正出力を得るようにする。
これにより、比較的暗い白が真っ白の映像となり、コントラストが向上する。
【0032】
図3(b)は、入力された輝度データYにおいて検出された黒ピークが図中「Bp」の値であった場合である。
この場合、コントラスト補正としては、黒ピークの値Bpが最小値「16」にまで引き下げられる係数を設定し、そのフレームの各輝度データYについて乗算することで、図示する補正出力を得るようにする。
これにより、多少浮いた(薄い)黒が真っ黒の映像となりコントラストが向上する。
【0033】
ここで中間調の映像についても同様の処理を行うと、コンテンツ制作者が意図しない映像となることがある。
図4(a)では、入力された輝度データYにおいて検出された白ピークが図中「Wp」の値で、黒ピークが「Bp」の値であった場合を示している。映像としては、コントラスト感の希薄な中間調の淡い映像内容の場合などである。
この場合に、上記同様にコントラスト補正として、白ピークの値Wpが最大値「235」に引き上げられ、かつ黒ピークの値Bpが最小値「16」にまで引き下げられる係数を設定し、そのフレームの各輝度データYについて乗算することで、図示する補正出力が得られる。しかしながらこの補正後の映像は、コントラストが強くなりすぎた不自然な映像となってしまう。
【0034】
そこで本実施の形態では、中間調の信号にはコントラスト補正がかからないようにするため、緩和ピーク値を用いたコントラスト補正値(補正ゲイン、バイアス値)の設定を行うようにする。
図4(b)で説明する。
図4(b)においても、入力された輝度データYから検出された白ピークが「Wp」の値で、黒ピークが「Bp」の値としている。
そして破線で緩和ピーク曲線を示している。緩和ピーク曲線とは、各輝度レベルに対しての緩和した最小値、最大値を示すものである。
例えば検出された黒ピーク値が「16」であるときは、緩和ピーク曲線で規定される最小値も「16」であるが、検出された黒ピークが「Bp」であるときは、最小値は「mBp」となる。
つまり検出された黒ピーク値、白ピーク値に応じて、最小値、最大値を可変的に設定したものである。
例えば入力値としての「16」〜「235」の各値に対応して緩和ピーク値がテーブルデータとして設定され、緩和補正テーブル15として保持されている。このテーブルデータの一例を、図4(b)では破線で示しているものである。
【0035】
この図4(b)の場合、コントラスト補正として、白ピークの値Wpが緩和白ピークmWpまで引き上げられ、かつ黒ピークの値Bpが緩和黒ピークmBpまで引き下げられるように係数(補正ゲイン)を設定し、そのフレームの各輝度データYについて乗算する。すると、図示する補正出力が得られる。これは、映像内容に応じてコントラスト補正の度合いが緩和され、特に中間調においては、コントラスト補正がかからないようにできるものとなる。
【0036】
補正ゲイン・バイアス決定部14で行われる具体的なコントラスト補正値の設定、及びコントラスト補正演算部3での演算の例を述べる。
補正ゲイン・バイアス決定部14は、平滑化部11から供給される白ピーク、黒ピークの値に基づいて、コントラスト補正値として補正ゲインとバイアス値を決定する。
補正ゲインは、
補正ゲイン=(緩和白ピーク−緩和黒ピーク)/(白ピーク−黒ピーク)・・・式1
として求める。即ち、検出した黒ピーク値と白ピーク値にそれぞれ対応する緩和黒ピーク値と緩和白ピーク値の差分を、検出した黒ピーク値と白ピーク値の差分で除算して補正ゲインを求める。
またバイアス値は、緩和黒ピークの値とする。
【0037】
このように決定された補正ゲイン、バイアス値(=緩和黒ピーク)、及び黒ピークの値は補正量調整部16を介してコントラスト補正演算部3に供給される。
今、補正量調整部16での調整を無視して述べると、コントラスト補正演算部3(演算回路3Y、3Cb、3Cr)では、補正ゲインとバイアス値を用いて、次の演算を行う。
Yout=(Yin−黒ピーク)×補正ゲイン+バイアス値 ・・・式2
Cr_out=(Cr_in−128)×補正ゲイン+128 ・・・式3
Cb_out=(Cb_in−128)×補正ゲイン+128 ・・・式4
【0038】
なお、Yin、Cr_in、Cb_inは、それぞれコントラスト補正演算部3に入力される輝度データ、色差データ(Cr,Cb)である。またYout、Cr_out、Cb_outは、それぞれコントラスト補正演算部3から出力されるコントラスト補正後の輝度データ、色差データ(Cr,Cb)である。
【0039】
以上のように本実施の形態では、補正ゲイン・バイアス決定部14は、検出した黒ピーク値と白ピーク値の差分と、各階調値に対応して設定されている緩和黒ピーク値、緩和白ピーク値のうちで、検出した黒ピーク値と白ピーク値にそれぞれ対応する緩和黒ピーク値と緩和白ピーク値との差分を用いて、コントラスト補正値における補正ゲインを設定する。またバイアス値は緩和黒ピークの値とする。
この場合、補正緩和テーブル15における各階調値に対応して設定されている緩和黒ピーク値、緩和白ピーク値の設定により、適切なコントラスト補正を行いつつ、中間調の映像に対してはコントラスト補正をかけない(或いは殆どかけない)といったことが可能となる。
緩和ピーク曲線で示される各値は、ピーク値を押し上げる(又は押し下げる)目標として、最大値「235」、最小値「16」に代わる値とするものである。従って、比較的高い階調での黒ピークや、比較的低い階調での白ピークについては、緩和された最大値、最小値を用いて、押し上げ(又は押し下げ)の量がゼロ、又はわずかの量というような設定を行えば、中間調の映像に対するコントラスト補正を行わなかったり、わずかに補正するのみとするような設定が可能となる。つまり補正緩和テーブル15でのテーブルデータの設定のみで、元々コントラスト感の薄い映像にコントラスト補正をかけないようにするなど、映像に応じたコントラスト補正を容易に実現できる。
【0040】
<3.誤差拡散及びユーザ設定に応じた補正量調整>

本実施の形態では、上述のようにコントラスト補正値を決定するが、さらに誤差拡散の実行の有無、及びユーザの選択に応じて、コントラスト補正の度合いを調整する。
このため、補正量調整部16で、上述のように補正ゲイン・バイアス決定部14で決定された補正ゲインとバイアス値を調整するようにしている。
【0041】
上述したように、コントラスト補正を行うと、映像種別によってはバンディングが目立つ状態となることがある。これに対して誤差拡散部6で誤差拡散を行うことで、バンディングを解消し、品質のよいコントラスト補正後の映像を出力できる。
ところが、誤差拡散は、データにノイズ成分を乗せるものでもある。特にスーパービットマッピング等のノイズシェーピングでは、高域にノイズを乗せることになる。すると、誤差拡散された映像信号上のノイズ成分が、悪影響を生じさせることがある。例えばAVアンプ、テレビジョン等、映像信号の受け側の機器の設計によっては、音声にノイズが発生する場合がある。
どのような機器を用いるかはユーザサイドの都合によるため、誤差拡散が悪影響を及ぼすか否かは設計時点では知ることができない。
そこで、本実施の形態では、ユーザの都合に応じて、誤差拡散設定部18が誤差拡散の実行/不実行を設定できるようにしている。つまりユーザは、誤差拡散でのノイズ成分の音声への影響を嫌う場合には、誤差拡散をオフとすることができるようにしている。
【0042】
ところが、誤差拡散を行わないと、コントラスト補正によるバンディングが目立つ可能性が生ずる。そこで本実施の形態では、誤差拡散をオフとする場合は、コントラスト補正量が抑制されるようにする。即ちコントラスト補正量を小さくして、バンディングが見えにくくなるようにする。
さらに、コントラスト補正の効果の度合いには、ユーザ毎の好みの差もある。そこで本例ではユーザ設定部17を設け、ユーザがコントラスト補正量を好みに応じて選択できるようにもしている。
【0043】
これらのことから、補正量調整部16では、誤差拡散の実行の有無、及びユーザの選択に応じて、コントラスト補正の度合いを調整する。
具体的には次のように調整を行う。
【0044】
ユーザ設定部17によるユーザ設定は上述のようにコントラスト補正の度合いとして、0,1,2,3の4段階を選べるとする。ユーザ設定部17からのユーザ設定係数Uとしては、上記4段階の選択に応じて、0〜4のいずれかの値が補正量調整部16に供給されてくる。
また誤差拡散設定部18からの誤差拡散の実行/不実行の情報も補正量調整部16に供給されてくる。補正量調整部16は、誤差拡散の実行/不実行により、係数Sを設定する。例えば、
誤差拡散オンの場合:係数S=2
誤差拡散オフの場合:係数S=1
とする。
補正量調整部16は、これらの係数を用いて、補正ゲインの調整係数M、及びバイアス値の調整係数Nを求め、その調整係数M,Nを用いて補正ゲイン、バイアス値を調整する。
【0045】
補正ゲインの調整係数Mは、
M=U×2×(S/2) ・・・式5
とする。
バイアス値の調整係数Nは、
N=U×2×(S/2) ・・・式6
とする。
【0046】
これらの式で得られるバイアス調整係数N、補正ゲイン調整係数Mの値を、図5に示した。
この図5では、ユーザ設定が0,1,2,3の各場合、かつ誤差拡散の実行/不実行の各場合での調整係数N,Mの値を示している。
例えばユーザ設定が0のときは、調整係数N,Mは、誤差拡散の実行/不実行にかかわらず、「0」となる。
またユーザ設定が1のときは、調整係数N,Mは、誤差拡散の実行時には「2」、不実行時には「1」となる。
またユーザ設定が2のときは、調整係数N,Mは、誤差拡散の実行時には「4」、不実行時には「2」となる。
またユーザ設定が3のときは、調整係数N,Mは、誤差拡散の実行時には「6」、不実行時には「3」となる。
【0047】
なお、ここでは上記式5,式6で調整係数N,Mを求めるようにしたが、より詳細に設定する場合は、対応テーブルを用いるようにしてもよい。
例えば図6のように調整係数テーブルを設ける。この場合、ユーザ設定及び誤差拡散の実行/不実行の各場合に応じた調整係数N,Mを、機種、設計事情等に応じて高い自由度で多様に設定できる。例えばこの図6の例では、ユーザ設定が1のときは、調整係数Nは、誤差拡散の実行時には「2」、不実行時には「0」となるが、調整係数Mは、誤差拡散の実行時には「2」、不実行時には「1」となる例としている。
【0048】
上記のように調整係数N,Mを算出したら、補正量調整部16は、次の演算で、補正ゲイン・バイアス決定部14で決定された補正ゲインとバイアス値を調整して、調整ゲイン、調整バイアス値を得る。
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)M/6+1 ・・・式7
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)N/6+緩和黒ピーク ・・・式8
【0049】
そしてこの調整ゲインと調整バイアス値を、コントラスト補正値としてコントラスト補正演算部3に供給する。
即ち本例ではコントラスト補正演算部3では、先に述べた式2,式3,式4ではなく、次の式9,式10,式11の演算が行われることになる。
Yout=(Yin−黒ピーク)×調整ゲイン+調整バイアス値 ・・・式9
Cr_out=(Cr_in−128)×調整ゲイン+128 ・・・式10
Cb_out=(Cb_in−128)×調整ゲイン+128 ・・・式11
【0050】
結局、図5のように調整係数N,Mが設定される場合、コントラスト補正は次のように行われることになる。
【0051】
ユーザ設定が0である場合、誤差拡散の実行/不実行にかかわらず、調整係数N=0,M=0であり、調整ゲイン=1、調整バイアス値=緩和黒ピークとなる。この場合、輝度データYについては緩和黒ピーク分のバイアスがかかるだけとなり、コントラスト補正はかからない。
【0052】
ユーザ設定が1の場合、誤差拡散が実行されるのであれば、調整係数N=2,M=2であり、
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)/3+1
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)/3+緩和黒ピーク
となる。この場合、上記の式9,式10,式11の演算によれば、軽いコントラスト補正がかけられる。
同じくユーザ設定が1であっても、誤差拡散が実行されなければ、調整係数N=1,M=1であり、
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)/6+1
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)/6+緩和黒ピーク
となり、上記の式9,式10,式11の演算によるコントラスト補正は、誤差拡散実行時よりも軽いコントラスト補正となる。
【0053】
ユーザ設定が2の場合、誤差拡散が実行されるのであれば、調整係数N=4,M=4であり、
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)2/3+1
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)2/3+緩和黒ピーク
となる。この場合、中間的な度合いのコントラスト補正がかけられる。
同じくユーザ設定が2であっても、誤差拡散が実行されなければ、調整係数N=2,M=2であり、
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)/3+1
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)/3+緩和黒ピーク
となり、誤差拡散実行時よりも軽いコントラスト補正となる。
【0054】
ユーザ設定が3の場合、誤差拡散が実行されるのであれば、調整係数N=6,M=6であり、
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)+1=補正ゲイン
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)+緩和黒ピーク
となる。この場合、補正ゲイン・バイアス決定部14で決定された補正ゲインによる最も強い度合いのコントラスト補正がかけられる。
同じくユーザ設定が3であっても、誤差拡散が実行されなければ、調整係数N=3,M=3であり、
調整ゲイン=(補正ゲイン−1)/2+1
調整バイアス値=(黒ピーク−緩和黒ピーク)/2+緩和黒ピーク
となり、誤差拡散実行時よりも軽いコントラスト補正となる。
【0055】
以上のように本実施の形態では、補正量調整部16で、誤差拡散の実行の有無、及びユーザの選択に応じて、コントラスト補正の度合いを調整する。即ち誤差拡散処理が実行されない場合は、誤差拡散処理が実行される場合よりも、コントラスト補正演算部3によるコントラスト補正量が抑制されるようにする。さらにユーザの設定に応じてコントラスト補正量を調整する。
これにより、誤差拡散を停止した場合であっても、コントラスト補正によるバンディングを抑えることができる。
またユーザの好みに合わせることができる。
コントラスト補正を行うと、映像上で黒い部分が増え、濃厚な印象の画像となる場合が多い。しかし、人によっては、淡白でやさしい感じの画像を好む人もいる。そこで上記のように補正効果量を0,1,2,3と調整できるようにすることで、ユーザ個々の好みの違いを吸収できる。
【0056】
<4.コントラスト安定化>

本実施の形態では、平滑化部11で60フィールド以上の時定数で、検出された黒ピーク、白ピークの値を平滑化している。
例えば先に挙げた特許文献1のように、従来は、平滑化は1フィールド単位等の短い期間で行っていた。ところが、映像内容として、例えば、自動車のランプが点滅していて、ここが最大値となっている場合などは、時定数が短いと、むやみにコントラスト補正値が変動してしまい、点滅に呼応して画面全体の明るさが変わってしまう。
また字幕が出たり消えたりする場合も同じ現象が現れる。
【0057】
そこで本実施の形態では、平滑化時定数は60フィールド以上の長時定数としてこの問題を解決している。つまり、むやみにコントラスト補正値が変動して、コントラスト補正が無用に画像内容に追従しないようにしている。
これによって、コントラストの安定化が実現される。
【0058】
但し、映像のシーンが変わって絵柄が変わった直後には、コントラスト改善効果が過剰になったり、過少になったりしてしまう。そこで、シーンチェンジ検出部13でシーンチェンジを検出し、その直後だけは平滑化部11の時定数を短くするようにしている。つまりシーンチェンジの際には、一時的に追従性を高くして、即座に新たな画像内容に応じたコントラスト補正がかかるようにしている。例えばシーンチェンジ検出から30フィールド期間は、時定数を1フィールド期間相当とするなどである。
【0059】
<5.表示系の違いの吸収>

画像を表示するテレビジョン装置、モニタ装置等の表示装置は、各メーカーや機種によって、階調(トーンカーブ)の作り方が異なる。
黒に近い諧調をより黒に近づけると、相対的に白の部分が強く感じられ、コントラスト感が強まる。一方、黒に近い部分の諧調はつぶれないようにすることを優先する設計としている表示装置もある。
また、表示装置の画質モードを切り替えるとこの様子は様々に変わる。
【0060】
本実施の形態では、コントラスト補正はコンテンツの違いを吸収するように働き、黒が浮いて見えていたコンテンツは黒が引き締まる。その結果、表示装置によっては、黒の確率が増えすぎて、好ましくないと感じられる場合も発生する。また、表示装置によっては、更に、黒を引き締めたいと感じられる場合もある。
そこで本実施の形態ではブラック調整部5として、例えば表示装置に応じたユーザ操作により、トーンカーブ(特に黒領域のカーブ)を調整できる回路をも備えるようにしている。
【0061】
図7(a)にブラック調整部5で選択可能なブラック調整カーブC1〜C6を示す。ユーザは、使用する表示装置や好みに応じて、ブラック調整カーブC1〜C6のいずれかを選択することで、選択された特性で、コントラスト補正された映像信号の黒領域の補正が行われる。
これによって表示装置やユーザの好みに応じて、適切なコントラスト感の映像を得ることができる。
【0062】
なお、本例のコントラスト補正と、ブラック調整カーブによる黒領域の補正を併用して、両方供黒へ引っ張る場合、黒に近い部分の色は濃く見える。また、色が濃い部分は輝度信号を下げただけでは輝度が落ちない場合がある。そこで、黒に近い部分の色の濃さを下げる回路を併用するようにすれば、より自然な画質が得られる。
【0063】
ところで、図7(b)は、本例のようなコントラスト補正を行わない機器で用いられているブラック調整カーブの例を示している。
本実施の形態のコントラスト補正を行う場合の黒領域の補正量は少なくてよい。そこで本実施の形態の映像データ処理装置1での図7(a)のブラック調整カーブは、図7(b)と比較してわかるように、異なる特性としている。つまり調整量を抑制した特性としている。
【0064】
なお、ユーザ設定等により、本実施の形態の映像データ処理装置1において、コントラスト補正演算部3でのコントラスト補正を実行しないようにすることも考えられる。そこで、ブラック調整部5は、図7(a)の特性のブラック調整カーブC1〜C6と、図7(b)の特性のブラック調整カーブC1〜C6の両方を備えるようにし、コントラスト補正がオンの場合は図7(a)の特性を、コントラスト補正がオフの場合は図7(b)の特性を用いるようにすることも考えられる。
【0065】
<6.過補償の場合の階調補償>

本実施の形態では、コントラスト補正演算部3でのコントラスト補正が過補償となった場合でも階調を残すようにしている。
前述したように、黒ピーク検出部8、白ピーク検出部9でのピーク検出は、検出領域設定部12で設定された検出領域、例えば図8(b)の中央領域A内で行う。このように画面中央で検出することで、ユーザの注目点の輝度状態に基づいて適切なコントラスト補正ができる。
しかし、例えば図8(b)に示す周辺領域Bにコントラストが強い画素値が存在することもあり、その場合、コントラスト補正後の映像データでは、その部分が過補償となることがある。例えば周辺領域Bに、中央領域Aでの白ピークよりも高い輝度データが存在した場合、中央領域Aで検出された白ピークを用いてコントラスト補正値が決定され、コントラスト補正が行われると、その高い輝度データ値が、有効輝度最大値(8ビットでの235)を越えてしまうことがある。
周辺領域Bに、中央領域Aでの黒ピークよりも低い輝度データが存在した場合も同様、その低い輝度データ値が、コントラスト補正により、有効輝度最小値(8ビットでの16)以下となってしまうことがある。
【0066】
通常は、コントラスト補正後のデータに対してリミッタをかけ、有効輝度最大値、有効輝度最小値を越える値は、有効輝度最大値、又は有効輝度最小値になるようにする。ところがそうすると、階調のつぶれが生ずる。
そこで本実施の形態では、コントラスト補正前に、階調補償部4で、図8(a)のような緩やかな折れ線としての入出力特性でデータ変換を行うようにすることで、階調のつぶれが生じないようにしている。
【0067】
以上実施の形態について説明してきたが、本発明は実施の形態の例に限られず多様な変形例が考えられる。
補正緩和テーブル15による設定(緩和ピーク曲線の設定)によれば、コントラスト補正を抑えたい階調範囲を任意に設定できるため、その設定は多様に考えられる。
補正量調整部16での補正量調整のための演算は上記の例に限定されない。またユーザ設定は4段階でなく、少なくとも2段階以上であればよい。
また補正量調整部16は、誤差拡散の不実行やユーザ設定に応じて、コントラスト補正量を抑制する方向に調整するものとし、誤差拡散の実行時でユーザ設定が最大「3」のときは、補正値設定部20で決定された補正が行われる例としたが、補正量を大きくする調整を行っても良い。例えば誤差拡散の実行時でユーザ設定が最大のときは、補正値設定部20で決められた補正ゲインを大きくするような調整を行ってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 映像データ処理装置、2 ビット数変換部、3 コントラスト補正演算部、4 階調補償部、5 ブラック調整部、6 誤差拡散部、7 ローパスフィルタ(LPF)、8 黒ピーク検出部、9 白ピーク検出部、10 リミッタ、11 平滑化部、12 検出領域設定部、13 シーンチェンジ検出部、14 補正ゲイン・バイアス決定部、15 補正緩和テーブル、16 補正量調整部、17 ユーザ設定部、18 誤差拡散設定部、20 補正値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された輝度データに対して、コントラスト補正値を用いた演算でコントラスト補正を行うコントラスト補正演算部と、
上記コントラスト補正がされた輝度データに対して誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、
上記誤差拡散部での誤差拡散処理の実行/不実行を設定する誤差拡散設定部と、
入力された輝度信号の黒ピーク値、白ピーク値を検出し、検出した黒ピーク値及び白ピーク値を用いて上記コントラスト補正値を設定する補正値設定部と、
上記誤差拡散設定部の指示により、上記誤差拡散部で誤差拡散処理が実行されるか否かに応じて、上記補正値設定部で設定された上記コントラスト補正値を調整して、調整した上記コントラスト補正値を上記コントラスト補正演算部に供給する補正量調整部と、
を備えた映像データ処理装置。
【請求項2】
上記補正量調整部は、上記誤差拡散設定部の設定により、上記誤差拡散部で誤差拡散処理が実行されない場合は、誤差拡散処理が実行される場合よりも、上記コントラスト補正演算部によるコントラスト補正量が抑制されるように、上記コントラスト補正値を調整する請求項1に記載の映像データ処理装置。
【請求項3】
さらにユーザ選択に応じてコントラスト補正量を設定するユーザ設定部を備え、
上記補正量調整部は、上記誤差拡散部での誤差拡散処理の実行/不実行に加えて、上記ユーザ設定部によるコントラスト補正量の設定を用いて、上記コントラスト補正値を調整する請求項2に記載の映像データ処理装置。
【請求項4】
上記補正値設定部は、
検出した黒ピーク値と白ピーク値の差分と、
各階調値に対応して設定されている緩和黒ピーク値、緩和白ピーク値のうちで、上記検出した黒ピーク値と白ピーク値にそれぞれ対応する緩和黒ピーク値と緩和白ピーク値との差分を用いて、上記コントラスト補正値を設定する請求項3に記載の映像データ処理装置。
【請求項5】
上記補正値設定部は、検出した黒ピーク値及び白ピーク値に対して、60フィールド以上の期間の平滑化時定数で平滑化し、該平滑化した黒ピーク値及び白ピーク値を用いて上記コントラスト補正値を設定する請求項4に記載の映像データ処理装置。
【請求項6】
映像データのシーンチェンジを検出するシーンチェンジ検出部をさらに備え、
上記補正値設定部は、上記シーンチェンジ検出部によってシーンチェンジが検出された際には、上記平滑化時定数を一時的に短い時定数とする請求項5に記載の映像データ処理装置。
【請求項7】
上記補正値設定部は、映像画面の一部の画素領域であるピーク検出領域から、輝度信号の黒ピーク値、白ピーク値を検出するとともに、
上記コントラスト補正部で補正される輝度データに対して、階調が保たれるように入出力値を変換する階調保証部をさらに備えた請求項6に記載の映像データ処理装置。
【請求項8】
入力された輝度データに対して、コントラスト補正値を用いた演算でコントラスト補正を行うコントラスト補正演算部と、
上記コントラスト補正がされた輝度データに対して誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、
入力された輝度信号の黒ピーク値、白ピーク値を検出し、検出した黒ピーク値及び白ピーク値を用いて上記コントラスト補正値を設定する補正値設定部と、
を備えた映像データ処理装置におけるコントラスト補正方法として、
上記誤差拡散部での誤差拡散処理の実行/不実行が設定可能とされるとともに、
上記誤差拡散部で誤差拡散処理が実行されるか否かに応じて、上記補正値設定部で設定された上記コントラスト補正値を調整し、調整した上記コントラスト補正値を用いて上記コントラスト補正演算部でコントラスト補正が行われるようにしたコントラスト補正方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−44382(P2012−44382A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182764(P2010−182764)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】