説明

映像表示装置

【課題】撮像部で複数の被写体を撮像した場合においても、観察者の所望する被写体を検出して適切な処理を行うこと。
【解決手段】外界像に重ねて映像を表示する映像表示部11と、映像表示部の映像表示エリアを含む画角を有し、この映像表示エリアの外界像を撮像する撮像部17と、撮像部により撮像された撮像画像から被写体Qを検出する検出部34と、検出部により検出された被写体の内容を解析する解析部35と、解析部により解析された被写体の内容に応じて処理を行う処理部36と、検出部が一つの撮像画像中に複数の被写体を検出した場合に、映像表示エリアの中心からそれぞれの被写体までの距離を算出する距離算出部37と、距離算出部により算出された距離が最小の被写体を目標の被写体に決定し、かかる被写体の内容を解析部により解析させ、解析結果に応じた処理を行う制御部43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外界を観察可能にすると共に、表示した映像を外界の像に重ねて観察者に視認させる映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像を表示する表示部を観察者の頭部に固定し、映像と共に外界像も観察できるようにした映像表示装置が普及しつつある。例えば、観察者の頭部に装着可能なハウジングにレンズ、カメラを設け、このレンズに透過型フィルム状LCDを貼り付けたゴーグルがある。このゴーグルにおいては、レンズを通して観察できる外界像に透過型フィルム状LCDに表示される映像を重ね合わせることができる。従って、観察者がカメラで撮像した外界像を管理室等に送信すると、その外界像に適した指示や作業内容を管理室からゴーグルに送信して透過型フィルム状LCDに表示させることができ、観察者に知らせることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、文書に印刷された2次元コードをカメラで撮像し、撮像した2次元コードを復号してURLを取得し、かかるURLに対応する情報をWWWから入力してCRTに情報を表示する情報閲覧システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
これらの技術を組み合わせることにより、観察者が作業場においてカメラで2次元コードを撮像し、管理室に2次元コードのデータを送信すると、管理室は受信した2次元コードを復号し、かかる2次元コードに対応する情報を送信する。送信された情報は透過型フィルム状LCDに表示され、観察者はその表示から指示や作業内容等を知ることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−217921号公報
【特許文献2】特開平11−203381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数の2次元コード(被写体)が近くに密集している場合、ある2次元コードをカメラ(撮像部)で撮像しようとして外界像を撮像した際に、周囲にある目的としていない2次元コードまでも撮像してしまい、撮像画像に複数の2次元コードが存在することがある。このような場合、映像表示装置は、どの2次元コードが必要なのかを判断することができず、観察者に適した情報を提供できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、撮像部で複数の被写体を撮像した場合においても、観察者の所望する被写体を検出して適切な処理を行うことができる映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、
(1) 外界像に重ねて映像を表示する映像表示部と、
前記映像表示部の映像表示エリアを含む画角を有し、この映像表示エリアの外界像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された撮像画像から被写体を検出する検出部と、
前記検出部により検出された被写体の内容を解析する解析部と、
前記解析部により解析された被写体の内容に応じて処理を行う処理部と、
前記検出部が一つの撮像画像中に複数の被写体を検出した場合に、前記映像表示エリアの中心からそれぞれの被写体までの距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された距離が最小の被写体を目標の被写体に決定し、かかる被写体の内容を前記解析部により解析させ、解析結果に応じた処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、
(2)上記(1)の映像表示装置において、
前記距離算出部により算出された距離が最小の被写体と2番目に距離が小さい被写体の距離差を算出する距離差算出部と、
前記距離差算出部により算出される距離差の閾値を記憶する記憶部と、
前記距離差算出部により算出された距離差が前記記憶部に記憶された閾値を超えているか否かを判定する判定部と、
前記撮像部が移動したことを検出する移動検出部と、
前記判定部により距離差が閾値を越えていないと判定された場合に、距離が最小の被写体を指す指標を前記映像表示部に表示させ、その後、前記移動検出部による前記撮像部の移動が検出された場合に、その移動方向先に存在する被写体に指標を移動させる指標表示制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記判定部により距離差が閾値を越えていると判定された場合には、距離が最小の被写体を目標の被写体に決定し、
前記判定部により距離差が閾値を越えていないと判定された場合には、前記指標表示制御部により被写体を指す指標が表示された後、前記撮像部の移動が所定時間なければ指標が指す被写体を目標の被写体に決定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、
(3)上記(2)の映像表示装置において、
前記移動検出部は、撮像時間の異なる二枚の撮像画像における同一の被写体の位置の変化量から前記撮像部の移動方向及び移動量を検出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、
(4)上記(2)又は(3)の映像表示装置において、
前記指標表示制御部は、前記移動検出部により検出された前記撮像部の移動方向成分が最大となる方向に指標を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、
(5)上記(2)〜(4)のいずれかの映像表示装置において、
前記指標表示制御部は、指標を移動させる方向に存在する被写体のうち、指標が表示されている現在の被写体からの直線距離が最小となる被写体に指標を移動させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの映像表示装置において、
前記被写体は、二次元コードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮像部により被写体を撮像すると、検出部は撮像部により撮像された撮像画像から被写体を検出する。解析部は、検出部により検出された被写体の内容を解析し、処理部は解析部により解析された被写体の内容に応じて処理を行う。
ここで、検出部が一つの撮像画像中に複数の被写体を検出した場合、距離算出部は、映像表示エリアの中心からそれぞれの被写体までの距離を算出する。そして、制御部は、距離算出部により算出された距離が最小の被写体を目標の被写体に決定し、かかる被写体の内容を解析部により解析させ、解析結果に応じた処理を行う。
すなわち、観察者は、映像表示エリアで観察できる外界像の中心を観察しているのが通常であるため、この中心に最も近い位置にある被写体を観察していたものと考えるのが妥当である。そこで、上記のような処理を制御部が行うことにより、カメラで複数の被写体を撮像した場合においても、観察者の所望する被写体を検出して適切な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】映像表示装置の構成を示す外観斜視図。
【図2】映像表示装置の構成を示すブロック図。
【図3】制御装置の構成を示すブロック図。
【図4】2次元コードの検出及び解析から目標とする2次元コードの決定に至る流れを示すフローチャート。
【図5】撮像画像の中心から各2次元コードまでの距離を算出する例を示す図。
【図6】カーソルを表示させた液晶表示素子の映像の一例を示す図。
【図7】カーソルの移動について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る映像表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<映像表示装置の構成>
図1〜図3に示すように、映像表示装置100は、使用者(観察者)が映像を見るための本体1、バックエンド2を備えている。
本体1は、眼鏡のように耳にかけて使用し、耳にかけた際に映像の表示部分が使用者の目の前に位置する。
バックエンド2は、箱状に形成され、衣服のポケット等に入れて使用する。
本体1とバックエンド2は、両者間で信号をやりとりするケーブル2aによって接続されている。
【0017】
(本体)
本体1は、フレーム10、液晶表示素子11、光源12、集光レンズ13、接眼光学系14、ハーフミラー15、液晶シャッター16、カメラ17、マイク18、イヤホン19を備えている。
フレーム10は、眼鏡フレームと同様の形状に形成されており、平面視コ字状に形成されている。フレーム10の両端部は互いに対向するように形成されており、一端部が左側のこめかみから耳にわたって、他端部が右側のこめかみから耳にわたって係止される。
【0018】
液晶表示素子11は、フレーム10の内部に設けられている。液晶表示素子11は、バックエンド2から送信される映像信号に基づいて映像を表示して、与えられる照明光を表示した映像によって変調することにより映像を表す光とする変調型の映像表示素子である。すなわち、液晶表示素子11は、映像表示部として機能する。ここでは、液晶表示素子11として、照明光を透過させつつ変調する透過型のものを採用している。
光源12は、フレーム10の内部に設けられている。光源12は、発光ダイオードより成り、液晶表示素子11に与える照明光を発する。
集光レンズ13は、フレーム10の内部に設けられている。集光レンズ13は、光源12からの照明光を略平行光束として液晶表示素子11に導く。
【0019】
接眼光学系14は、フレーム10の内部に設けられている。接眼光学系14は、レンズより成り、液晶表示素子11からの映像を表す光(以下、映像光という)L1を使用者(観察者)の眼Eに導いて、液晶表示素子11が表示した映像の拡大虚像を提供する。すなわち、接眼光学系14は、液晶表示素子11からハーフミラー15までの映像を表す光の光路上に位置して、提供する映像を拡大する拡大光学系として機能する。
ハーフミラー15は、フレーム10を装着した際に、使用者(観察者)の一方の眼に対向する位置に設けられている。ハーフミラー15は、接眼光学系14を経た液晶表示素子11からの映像光L1を反射して眼Eに導くとともに、外界からの光(以下、外界光という)L2を透過させて眼Eに導く。ハーフミラー15は、映像光L1と外界光L2を重ねて観察者の眼Eに導くコンバイナとして機能し、観察者の眼Eには、外界像に重ねて映像が提供される。
【0020】
液晶シャッター16は、外界光L2を透過させて、ハーフミラー15に導く。液晶シャッター16の透過率は、印加電圧に依存し、印加電圧を変えることで調節することができる。すなわち、液晶シャッター16は、ハーフミラー15に至る外界光を減弱させることができ、印加電圧によりその度合いが可変となった外界光減弱部として機能する。液晶シャッター16としては、偏光板とTN液晶や強誘電液晶を組み合わせたもの、あるいはゲストホスト液晶等を用いることができる。
カメラ17は、フレーム10におけるハーフミラー15の上方に設けられている。すなわち、カメラ17は、映像表示装置100を装着した際に使用者の視界と同じ方向に画角を有するように配置されている。カメラ17は、ハーフミラー15における液晶表示素子11の映像表示エリアを含む画角を有し、映像表示エリアの背景部を測光エリアとしている。すなわち、カメラ17は、外界像を撮像する撮像部として機能する。
マイク18、イヤホン19は、フレーム10の表面に設けられており、映像の送信元の管理者と本体1の装着者との間で連絡を取ることができる。すなわち、マイク18は、本体1を装着した際に使用者の口に近い位置に、イヤホン19は、本体1を装着した際に使用者の耳に近い位置に設けられている。
【0021】
なお、液晶表示素子11は透過型を採用しているが、照明光を反射しつつ変調する反射型を採用することも可能である。
また、接眼光学系14としてレンズを採用しているが、レンズ以外の光学的パワーを有する素子、例えば凹面ミラー、回折格子等を用いて接眼光学系を構成してもよい。
また、提供する映像はモノクロームとすることも、カラーとすることも可能である。モノクロームの映像を提供する場合は、光源12として単色光を発する発光ダイオードを用いればよい。カラーの映像を提供する場合は、光源12としてそれぞれ赤色光、緑色光、青色光を発する3種の発光ダイオードを用いるとともに、液晶表示素子11の各画素に赤色光、緑色光、青色光を選択的に透過させるカラーフィルターを備えればよい。
【0022】
(バックエンド)
バックエンド2は、制御装置3、操作部4を備えている。
制御装置3は、映像輝度調節部31、外界像輝度調節部32、連動制御部33、検出部34、解析部35、処理部36、距離算出部37、距離差算出部38、記憶部39、判定部40、移動検出部41、カーソル制御部42、制御部43を備えている。
映像輝度調節部31は、光源12の発光輝度を制御する。眼Eに提供する映像の輝度は、映像光L1の量に依存し、映像光の量は液晶表示素子11に与える照明光の量に依存するから、映像輝度調節部31が光源12の発光輝度を制御することで、映像の輝度を調節することができる。
外界像輝度調節部32は、液晶シャッター16の印加電圧の制御を介して液晶シャッター16の透過率を制御する。外界像の輝度は、液晶シャッター16を透過する外界光L2の量に依存するから、外界像輝度調節部32が液晶シャッター16の透過率を制御することで、外界像の輝度を調節することができる。
連動制御部33は、映像輝度調節部31と外界像輝度調節部32とを連動して制御して、提供する映像と外界像の輝度を調節する。
【0023】
検出部34は、カメラ17により撮像された撮像画像から被写体を検出する。ここで、カメラ17によって撮像される被写体は、例えば、2次元コードである。もちろん、撮像画像から検出できるものであれば、被写体は2次元コードに限られるものではない。
解析部35は、検出部34により検出された2次元コードの内容を解析する。具体的には、検出された2次元コードに含まれる情報を解析し、どのような情報が含まれているのかを解析する。
処理部36は、解析部35により解析された2次元コードの内容に応じて処理を行う。ここで、処理部36が行う処理としては、2次元コードに含まれる情報を液晶表示素子11に表示させたり、かかる情報や指示を音声データで本体1に送信し、イヤホン19から観察者に報知する処理を行う。
【0024】
距離算出部37は、検出部34が一つの撮像画像中に複数の2次元コードを検出した場合に、映像表示エリアの中心(撮像画像の中心)からそれぞれの2次元コードまでの距離を算出する。
距離差算出部38は、距離算出部37により算出された距離が最小の2次元コードと2番目に距離が小さい2次元コードの距離差を算出する。
記憶部39は、距離差算出部38により算出される距離差の閾値を記憶している。
判定部40は、距離差算出部38により算出された距離差が記憶部39に記憶された閾値を超えているか否かを判定する。
移動検出部41は、カメラ17が移動したことを検出する。言い換えれば、本体1を装着した観察者が頭を動かしたことを検出する。移動検出部41は、撮像時間の異なる二枚の撮像画像における同一の2次元コードの位置座標の変化量からカメラ17の移動方向及び移動量を検出する。
【0025】
カーソル制御部42は、判定部40により距離差が閾値を越えていないと判定された場合に、距離が最小の2次元コード(最も撮像画像の中心に近い2次元コード)を指す指標を液晶表示素子11に表示させる。ここで、指標は、2次元コードを囲うカーソルC(図6,7参照)であり、2次元コードに重ならないように表示される。
カーソル制御部42は、移動検出部41によるカメラ17の移動が検出された場合に、その移動方向先に存在する2次元コードにカーソルCを移動させる。
カーソル制御部42は、移動検出部41により検出されたカメラ17の移動方向成分が最大となる方向にカーソルCを移動させる。
カーソル制御部42は、カーソルCを移動させる方向に存在する2次元コードのうち、カーソルCが表示されている現在の2次元コードからの直線距離が最小となる2次元コードにカーソルCを移動させる。
従って、カーソル制御部42は、指標表示制御部として機能する。
【0026】
制御部43は、距離算出部37により算出された距離が最小の2次元コードを観察者が所望する目標の2次元コードに決定し、かかる2次元コードの内容を解析部35により解析させ、解析結果に応じた処理を行う。
制御部43は、判定部40により距離差が閾値を越えていると判定された場合には、距離が最小の2次元コードを観察者が所望する目標の2次元コードに決定し、判定部40により距離差が閾値を越えていないと判定された場合には、カーソル制御部42により2次元コードを指すカーソルCが表示された後、カメラ17の移動が所定時間なければカーソルCが指す2次元コードを目標の2次元コードに決定する。
【0027】
操作部4は、使用者によって操作されるダイヤル式またはスライド式の操作部材を含み、操作部材の操作量(回転量または移動量)を連動制御部33に伝達する。連動制御部33は、操作部材の操作量に応じて提供する映像の輝度を設定する。したがって、使用者は、操作部4を介して、映像の輝度を指定することができる。
バックエンド2には、映像の送信元の管理者から作業指示等に関する映像を受信するための通信部(図示略)が備えられている。通信部は、制御装置3による通信制御の下、管理者から映像を受信するほか、カメラ17で撮像した外界像を管理者の端末に送信することができる。
バックエンド2と管理者の端末とは、通信部により無線接続されている。通信方法は自由であり、使用環境に応じて適宜変更が可能である。
【0028】
<映像の輝度調節>
映像表示装置100においては、外界の明るさによらず、映像を観察しやすくするための処理が行われる。
制御部3は、カメラ17から外界像の輝度情報を取得する。このときの測光エリアは、ハーフミラー15から視認できる映像表示エリアの背景部である。
次に、その輝度情報に基づいて、連動制御部33が、映像輝度調節部31と外界像輝度調節部32の制御を行う。外界像輝度調節部32は液晶シャッター16、映像輝度調節部31は光源12をそれぞれ調節する。
【0029】
具体的には、提供される映像の輝度と外界像の輝度の差が大きい場合には、使用者は操作部4を操作し、映像の輝度を変えて、輝度差を小さくすることができる。これにより、外界像が暗いときでも明るいときでも、映像を観察することが容易になり、また、眼の疲労も招きにくくなる。
ただし、外界像がきわめて明るいとき、それに応じて映像の輝度を高めると、映像は観察し易くなるものの、眼は疲労し易くなる。これを防止するために、連動制御部33は、提供する映像の輝度に上限を設けておき、操作部4の操作により上限値を超える輝度が指定されたときは、映像の輝度を上限値に保ったまま、液晶シャッター16の透過率を低下させて、外界像の輝度を低下させる。これで、映像と外界像の輝度差が小さくなって、映像の観察が容易になり、眼の疲労も少なくなる。
【0030】
<2次元コードの検出、解析>
本体1及びバックエンド2の電源が投入されると、図4に示す流れで処理が行われる。
映像表示エリアの外界像をカメラ17で撮像し、撮像画像を取得する(ステップS1)。
次いで、検出部34は、撮像画像から2次元コードQを検出し、撮像画像中に複数の2次元コードQ1,Q2,・・・,Qnがあるか否かを判定する(ステップS2)。
【0031】
ステップS2において、検出部34は、撮像画像中に複数の2次元コードQ1,Q2,・・・,Qnがあると判定した場合(ステップS2:YES)、距離算出部37は、撮像画像の中心からそれぞれの2次元コードQ1,Q2,・・・,Qnまでの距離d1,d2,・・・,dnを算出する(ステップS3)。一方、検出部34は、撮像画像中に2次元コードQ1,Q2,・・・,Qnがないと判定した場合(ステップS2:NO)、ステップS1に戻る。
例えば、図5に示すように、撮像画像中に四つの2次元コードQ1,Q2,Q3,Q4がある場合、距離算出部37は、撮像画像の中心Oからそれぞれの2次元コードQ1,Q2,Q3,Q4までの距離d1,d2,d3,d4を算出する。
【0032】
次いで、距離差算出部38は、ステップS2において算出された距離の最小値dmin1と2番目に小さい値dmin2の距離差を算出する(ステップS4)。図5においては、撮像画像の中心からの距離が最も小さいのは2次元コードQ2までの距離d2であり、2番目に距離が小さいのは2次元コードQ3までの距離d3である。従って、距離差算出部38は、d3−d2の演算を行う。
次いで、判定部40は、ステップS4において算出された距離差dmin2−dmin1が記憶部39に記憶された閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。
【0033】
ステップS5において、判定部40は、算出された距離差dmin2−dmin1が記憶部39に記憶された閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS5:YES)、言い換えると、撮像画像の中心Oからの距離が最小の2次元コードQだけが撮像画像の中心の近くに存在し、他の2次元コードQが撮像画像の中心Oから大きく離れている場合には、制御部43は、dmin1である2次元コードQmin1が観察者の目標とする2次元コードであると決定する(ステップS6)。
図5においては、d3−d2の距離差が閾値よりも大きい場合には、制御部43は、2次元コードQ2が観察者の目標とする2次元コードであると決定する。
【0034】
次いで、制御部43は、決定された2次元コードQの内容を解析部35により解析させ、処理部36により解析結果に応じた処理を行わせる(ステップS10)。
ここで、ステップS10における処理は、例えば、観察者の作業完了を伝えるメールの送信や、作業マニュアルや画像等の液晶表示素子11への表示等が挙げられる。
ステップS5において、判定部40は、算出された距離差dmin2−dmin1が記憶部39に記憶された閾値以下であると判定した場合(ステップS5:NO)、言い換えると、撮像画像の中心に最も近い2次元コードと2番目に近い2次元コードが共に接近していた場合には、カーソル制御部42は、距離が最小値dmin1の2次元コードQmin1を示すカーソルCを液晶表示素子11に表示させる(ステップS7)。
図5においては、d3−d2の距離差が閾値以下の場合には、図6に示すように、カーソル制御部42は、2次元コードQ2を指すカーソルCを表示する。
【0035】
次いで、制御部43は、所定時間内にカーソルCが移動したか否かを判定する(ステップS8)。カーソルCの移動は、カーソルCの位置座標が変化したか否かで判定することができる。
ここで、カーソルCが移動したことの検出は、移動検出部41によって行われる。移動検出部41は、撮像時間の異なる二枚の撮像画像における同一の2次元コードQの位置の変化量からカメラ17の移動方向(上下左右)及び移動量を検出する。言い換えると、カメラ17の移動方向及び移動量を検出することで観察者が頭を動かした方向及びその動作量を検出する。
図6においては、撮像時間の異なる二枚の撮像画像から2次元コードQ2の位置座標の変化を検出する。
【0036】
ステップS8において、制御部43は、所定時間内にカーソルCが移動したと判定した場合(ステップS8:YES)、制御部43は、ステップS8の判定を繰り返し、再度カーソル移動の検出を判定する。
ここで、図7に示すように、撮像時間の異なる二枚の撮像画像を比較する場合において、図7上図の撮像画像から図7下図の撮像画像に変化したとすると、2次元コードQ2の位置座標は(105,121)から(77,131)に変化しているため、移動検出部41は、2次元コードQ2の位置座標が、X方向に−28、Y方向に+10変化したことを検出する。すなわち、2次元コードQ2が左下に向けて移動しているので、観察者は右上に頭を動かしたことになる。
【0037】
このような場合、カーソル制御部42は、移動検出部41により検出された2次元コードQ2の移動方向成分が最大となる方向で、かつ、頭を移動させた方向に注目し、図7における右方向にカーソルCを移動させる。
ここで、後のフレームの撮像画像内から2次元コードQ2がフレームアウトしてしまった場合には、再度検出部34による2次元コードの検出を行う。
【0038】
カーソル制御部42は、カーソルCの移動の際、カーソルCを移動させる図7の右方向に存在する2次元コードQ3,Q4のうち、カーソルCが表示されている現在の2次元コードQ2からの直線距離が最小となる2次元コードQ3にカーソルCを移動させる。
なお、移動検出部41により検出されたカメラ17の移動方向に2次元コードが無い場合には、カーソルCは移動させず、現在の位置を維持する。
【0039】
ステップS8において、制御部43は、所定時間内にカーソルCが移動していないと判定した場合(ステップS8:NO)、制御部43は、現在カーソルによって囲まれている2次元コードQが目標の2次元コードであると決定する(ステップS9)。
すなわち、図6に示すように、2次元コードQ2にカーソルCが表示された後、移動検出部41が所定時間内に2次元コードQ2の位置が変化していないことを検出すれば、制御部43は、2次元コードQ2が目標の2次元コードであると決定する。一方、移動検出部41により2次元コードQ2の移動が検出されて2次元コードQ3にカーソルCが移動した後、移動検出部41が所定時間内に2次元コードQ3の位置が変化していないことを検出すれば、制御部43は、2次元コードQ3が目標の2次元コードであると決定する。
次いで、制御部43は、決定された2次元コードQの内容を解析部35により解析させ、処理部36により解析結果に応じた処理を行わせる(ステップS10)。
なお、上記のフローチャートは、撮像画像中に複数の二次元コードが存在する場合の処理の流れであり、撮像画像中に2次元コードが一つしか存在しない場合には、その2次元コードが、観察者が目標とする2次元コードであり、かかる2次元コードに応じた処理を実行することになる。
【0040】
<作用・効果>
以上のように、映像表示装置100によれば、カメラ17により2次元コードQを撮像すると、検出部34はカメラ17により撮像された撮像画像から2次元コードQを検出する。解析部35は、検出部34により検出された2次元コードQの内容を解析し、処理部36は解析部35により解析された2次元コードQの内容に応じて処理を行う。
ここで、検出部34が一つの撮像画像中に複数の2次元コードQを検出した場合、距離算出部37は、映像表示エリアの中心からそれぞれの2次元コードQまでの距離を算出し、距離差算出部38は、最も距離が小さい2次元コードQと2番目に距離が小さい2次元コードQの距離差を算出する。
そして、この距離差が閾値を超えている場合には、最も距離が小さい2次元コードQを目標とする2次元コードQとして決定し、制御部43による制御の下、処理部36が処理を行う。
一方、算出された距離差が閾値を超えていない場合には、最も距離が小さい2次元コードQにカーソルCを表示させ、2次元コードQを選択し直す機会を観察者に与える。カメラ17の移動が検出された場合には、現在の2次元コードQからカメラ17の移動方向に向かって直近の2次元コードQにカーソルCを移動させる。
【0041】
このように、観察者は、映像表示エリアで観察できる外界像の中心を観察しているのが通常であるため、撮像画像の中心に最も近い位置にある2次元コードQを観察していたものと考えるのが妥当である。そこで、上記のような処理を制御装置3が行うことにより、カメラ17で複数の2次元コードQを撮像した場合においても、観察者の所望する2次元コードQを検出して適切な処理を行うことができる。
【0042】
また、カメラ17の移動の検出は、カメラ17で撮像した二枚の撮像画像における同一の2次元コードQから演算で求めることができるので、本体1に移動検出のための別個の装置を設ける必要はなく、部品点数の減少、軽量化を図ることができる。
また、カーソル制御部42は、カメラ17の移動方向成分が最大となる方向にカーソルCを移動させるので、観察者の意図を反映しやすいものとすることができる。
また、カーソルCを移動させる際には、現在の2次元コードQから最も近い2次元コードQにカーソルCを移動させることができるので、観察者の意図を反映しやすいものとすることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の本質的部分を変更しない範囲内で自由に設計変更が可能である。
また、上記実施形態においては、液晶表示素子、光源、集光レンズ、接眼光学系は、本体に内蔵されているが、これらをバックエンドに設けてもよい。
また、検出部、解析部、処理部、距離算出部、距離差算出部、判定部、移動検出部、カーソル制御部、制御部は、バックエンドの制御装置に備えられ、これらの制御は全てバックエンドにて行われていたが、一部又は全ての制御をバックエンドと無線接続された管理室で行うようにしてもよい。
また、移動検出部によるカメラの移動方向及び移動量の検出は、二枚の撮像画像を用いて行われているが、この二枚の撮像画像は隣接するフレームでもよいし、数フレーム間隔をおいたフレーム同士であってもよい。
また、移動検出部によるカメラの移動方向及び移動量の検出は、二枚の撮像画像を用いて行われているが、本体に加速度センサを設け、この加速度センサによる検出結果から求めてもよい。
また、移動検出部41によるカーソルCの移動の検出時においては、カーソルC自身の移動を直接検出するものでもよいし、カーソルC内の画像データが変化したことにより、カーソルCの移動を間接的に検出するようにしてもよい。
また、カーソル制御部は、カメラの移動方向成分が最大となる方向にカーソルを移動させているが、カメラの移動方向にカーソルを移動させてもよい。
また、カーソルを移動させる際には、現在の2次元コードからの直線距離が最も近い2次元コードに移動させているが、移動先の2次元コードの決定方法も変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
11 液晶表示素子(映像表示部)
17 カメラ(撮像部)
34 検出部
35 解析部
36 処理部
37 距離算出部
38 距離差算出部
39 記憶部
40 判定部
41 移動検出部
42 カーソル制御部(指標表示制御部)
43 制御部
100 映像表示装置
C カーソル(指標)
Q 2次元コード(被写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外界像に重ねて映像を表示する映像表示部と、
前記映像表示部の映像表示エリアを含む画角を有し、この映像表示エリアの外界像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された撮像画像から被写体を検出する検出部と、
前記検出部により検出された被写体の内容を解析する解析部と、
前記解析部により解析された被写体の内容に応じて処理を行う処理部と、
前記検出部が一つの撮像画像中に複数の被写体を検出した場合に、前記映像表示エリアの中心からそれぞれの被写体までの距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された距離が最小の被写体を目標の被写体に決定し、かかる被写体の内容を前記解析部により解析させ、解析結果に応じた処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記距離算出部により算出された距離が最小の被写体と2番目に距離が小さい被写体の距離差を算出する距離差算出部と、
前記距離差算出部により算出される距離差の閾値を記憶する記憶部と、
前記距離差算出部により算出された距離差が前記記憶部に記憶された閾値を超えているか否かを判定する判定部と、
前記撮像部が移動したことを検出する移動検出部と、
前記判定部により距離差が閾値を越えていないと判定された場合に、距離が最小の被写体を指す指標を前記映像表示部に表示させ、その後、前記移動検出部による前記撮像部の移動が検出された場合に、その移動方向先に存在する被写体に指標を移動させる指標表示制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記判定部により距離差が閾値を越えていると判定された場合には、距離が最小の被写体を目標の被写体に決定し、
前記判定部により距離差が閾値を越えていないと判定された場合には、前記指標表示制御部により被写体を指す指標が表示された後、前記撮像部の移動が所定時間なければ指標が指す被写体を目標の被写体に決定することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記移動検出部は、撮像時間の異なる二枚の撮像画像における同一の被写体の位置の変化量から前記撮像部の移動方向及び移動量を検出することを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記指標表示制御部は、前記移動検出部により検出された前記撮像部の移動方向成分が最大となる方向に指標を移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記指標表示制御部は、指標を移動させる方向に存在する被写体のうち、指標が表示されている現在の被写体からの直線距離が最小となる被写体に指標を移動させることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記被写体は、二次元コードであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209805(P2011−209805A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74357(P2010−74357)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】