説明

暴れ検出装置および暴れ検出方法

【課題】エレベータのかご内の人の暴れを誤検出させずに検出でき、高い精度で人の暴れを検出可能な暴れ検出装置を提供する。
【解決手段】撮像装置が撮影したかご内の映像を受信する受信部と、受信した映像を日付別および時刻別に記憶する記憶部と、記憶映像26および受信映像27をそれぞれ複数の小領域に分割する分割部と、分割された複数の小領域を有する記憶映像26中、連続する画像間で動きの変化が生じた小領域に対して重み付けを行い、複数の小領域を有する受信映像27中、連続する画像間で動きの変化が生じた小領域に対して重み付けを行い、各映像を数値化した数値化データを生成する解析部と、解析部が生成した2つの数値化データの差分量を算出し、差分量と予め記憶する閾値とに基づき、受信部からのかご内の映像の中から、この閾値よりも大きい差分量を有する小領域を人が暴れたエリアと検知する検知部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータかご等に設けられる暴れ検出装置および暴れ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンション等に設置されるエレベータの中には、防犯を目的としてかご内に防犯カメラを設置し、映像の記録を行う機能を持ったものが増えてきている。暴れ検出装置とは、かご内の防犯カメラからの映像を用いて、映像中の動きの変化量やこの動きの変化速度から、かご内で人が暴れていることを検知する装置である。この暴れ検出装置による暴れの検知と、かご室内アナウンスあるいは最寄階へのかごの停止制御などとを組み合わせて、セキュリティ性を高めた暴れ検知装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−276969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の暴れ検出装置では、暴れ検出の方法がカメラ映像の動きの変化量、及び動きの変化速度を用いているため、本来検出すべき暴れ以外の映像の変化により誤検出が起きることがある。例えば、エレベータの機器仕様がかごドアに防犯窓を設けるもの、あるいは昇降路壁面がガラス張りである場合、日当たりの変化やエレベータかごが昇降するときに生じる防犯窓から見える外界の変化あるいはかご内の明るさの変化により、実際には誰もかご室内に居ないにも関わらず、人が暴れている状態や人の滞留を誤って検出する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、暴れ検出装置の誤検出を回避でき、高い精度で人の暴れを検出することが可能な暴れ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、エレベータのかご内を撮像する撮像装置が撮影した前記かご内の映像を受信する受信部と、この受信部が受信した映像を日付別および時刻別に記憶する記憶部と、この記憶部が記憶する前記映像および前記受信部が受信した前記映像をそれぞれ複数の小領域に分割する分割部と、この分割部により分割された複数の小領域を有する前記記憶部の映像中、連続する画像間で動きの変化が生じた小領域に対して重み付けを行い、複数の小領域を有する前記受信部の映像中、連続する画像間で動きの変化が生じた小領域に対して重み付けを行い、各映像を数値化した数値化データを生成する解析部と、この解析部が生成した2つの数値化データの差分量を算出し、この差分量と予め記憶する閾値とに基づき、前記受信部からの前記かご内の映像の中から、この閾値よりも大きい差分量を有する小領域を人が暴れたエリアと検知する検知部と、を備えたことを特徴とする暴れ検出装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別の一態様によれば、エレベータのかご内の映像を撮像装置により日付別および時刻別に撮像して得られた複数の映像を記憶する記憶部と、前記エレベータのかご内を前記撮像装置により撮像して現在の映像を得る手段と、この現在の映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出する手段と、前記現在の映像に対して、日付および時刻が対応する前記記憶部内の映像を基準映像として選択する手段と、選択された基準映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出する手段と、前記現在の映像から抽出された部分領域と、前記基準領域から抽出された部分領域とを比較する手段と、前記現在の映像内の時間とともに変化する部分領域を出力する手段と、を備え、この出力手段は、比較の結果、同じ変化を示す部分領域の出力を抑制することを特徴とする暴れ検出装置が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一態様によれば、コンピュータが、(a)エレベータのかご内の映像を撮像装置により日付別および時刻別に撮像して得られた複数の映像を記憶部に記憶させ、(b)前記撮像装置に前記エレベータのかご内を撮像して現在の映像を前記記憶部に記憶させ、(c)この現在の映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出し、(d)前記現在の映像に対して、日付および時刻が対応する前記記憶部内の映像を基準映像として選択し、(e)選択した基準映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出し、(f)前記現在の映像から抽出した部分領域と、前記基準領域から抽出した部分領域とを比較し、(g)前記現在の映像内の時間とともに変化する部分領域を出力するように構成され、(h)上記比較の結果、同じ変化を示す部分領域の出力を抑制することを特徴とする暴れ検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エレベータのかご内の人の暴れを誤検出させずに検出でき、高い精度で人の暴れを検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る暴れ検出装置を有するエレベータの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る暴れ検出装置のブロック図である。
【図3】(a)は過去の映像について小領域ごとの変化量を求める処理方法を説明するための図であり、(b)は現在の映像について小領域ごとの変化量を求める処理方法を説明するための図である。
【図4】映像間の比較の手法を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る暴れ検出装置のブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る暴れ検出装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る暴れ検出装置について、図1乃至図6を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る暴れ検出装置を有するエレベータの構成図である。エレベータ1は、昇降路2内に設置されたかご3と、メインロープ4が巻き掛けられる巻上機5と、昇降路2内に設けられたカウンターウェイト6と、かご3の運転を制御するエレベータ制御装置7とを備えている。
【0013】
かご3内には、出入口脇の壁面にかご内操作盤8が設けられており、かご室の天井面には防犯用のカメラ装置9が取り付けられている。かご3の屋根には、これらのかご内操作盤8及びカメラ装置9と電気的に接続されたかご制御装置10が設けられており、このかご制御装置10に本実施形態に係る暴れ検出装置11が実装されている。この暴れ検出装置11は映像中の動きの変化量及びこの動きの変化速度から、かご内で乗客が暴れていることを検知する装置である。暴れ検出装置11は、乗客の暴れを検知した場合、検知信号をかご制御装置10へ通知するようにしている。
【0014】
かご内操作盤8には表示器12、及びスピーカなどのアナウンス装置13が設けられている。かご制御装置10は暴れ検出装置11から検知信号を受けると、これらの表示器12及びアナウンス装置13に警報を報知させるようにしている。かご制御装置10はテールコード14によりエレベータ制御装置7とも接続されており、かご制御装置10及びエレベータ制御装置7の間では互いに制御信号が伝達可能にされている。エレベータ制御装置7が暴れを検知したことを示す制御信号をかご制御装置10から受信すると、このエレベータ制御装置7は巻上機5に対してかご3を最寄り階まで走行させて停止させるようになっている。
【0015】
また、かご3はかごドア15を有し、このかごドア15には透視ガラスなどの防犯窓16が設けられている。各階のエレベータホール17には、乗降口と、各乗降口を開閉するホールドア18とが設けられている。各ホールドア18にも防犯窓19が設けられている。かごドア15に設けられた図示しない係合装置によって、ホールドア18はかごドア15からの戸開及び戸閉の駆動力を伝達され、かごドア15の戸開又は戸閉に同期して戸開又は戸閉を行う。
【0016】
エレベータホール17での外光や照明は防犯窓19、16を通ってかご室内へ入射するため、かご3の昇降及びかごドア16の戸開閉によってかご室内の明るさは変化し、カメラ装置9が撮像した映像内の明るさも変化する。エレベータ1が設置された建物の屋内外に広告用あるいは看板としての電飾装置が設置されていることがある。電飾装置は、装飾性の高い発光パターン演出によって点滅、変色することがある。本実施形態に係る暴れ検出装置11は、点滅や変色する光が防犯窓19、16を通ってかご3内に差し込む場合であっても、誤検出動作が生じないよう構成されている。以下、暴れ検出装置11について詳述する。
【0017】
図2は本実施形態に係る暴れ検出装置11のブロック図である。同図に示す符号のうち既出の符号はそれらと同じ要素を表す。暴れ検出装置11は、現在の日付情報及び時刻情報を出力するカレンダ制御部20とカメラ装置9が1年365日、1時間毎にかご3内を撮影して得た1年分の映像を記憶するカメラ映像記憶部21(記憶部)と、このカメラ映像記憶部21内から得た映像とカメラ装置9からの現在映像とを画像解析し、映像間で動きの生じたエリアを検出した場合、人が暴れたことを検知するカメラ映像解析部22(受信部、解析部、検知部)とを備えている。また、かご3内に取り付けられたカメラ装置9は通信線23を介してカメラ映像解析部22に接続されている。カメラ映像解析部22は通信線24を介して、カメラ映像記憶部21と接続されている。カメラ映像解析部22は、カレンダ制御部20と通信線25を介して接続されている。
【0018】
カレンダ制御部20は、一例として、図示しない水晶発振器と、この水晶発振器に印加される電圧を発生させる電圧源と、水晶発振器の発振周波数をカウントするカウンタ回路と、このカウンタ回路のカウントによって分、時などのデータを記憶される記憶回路と、この記憶回路から日付、時刻といった情報を読み出す読み出し部とを備えている。
【0019】
カメラ映像記憶部21は、日付毎及び時刻毎の映像データを1年分に亘って記憶する記憶装置である。カメラ映像記憶部21にはかご屋根に設けられた大容量のハードディスクドライブが用いられる。日付毎及び時刻毎の映像データとは、数秒毎のコマ落ち状の映像データである。
【0020】
カメラ映像解析部22は、カメラ装置9からの入力映像の画面領域の全体あるいは一部を解析対象の映像領域と決定し、この映像領域を複数の小領域に分割し、2つの映像を再生してから変化のあったいずれかの1個以上の小領域に重み付けを行って入力映像を数値化する。このカメラ映像解析部22は、カメラ装置9からの入力映像に対する解析と同じ解析をカメラ映像記憶部21からの入力映像に対しても行う。
【0021】
また、カメラ映像解析部22は、それぞれ数値化した複数の小領域からなるカメラ装置9からの入力映像と、それぞれ数値化した複数の小領域からなるカメラ映像記憶部21からの入力映像とを比較して、これらの入力画像の各小領域間の差分をそれぞれ算出し、各差分値のいずれかが予め決めた閾値を超えた場合、この差分値を有する小領域を動きの生じたエリアとして特定する。エリアが特定されることによって解析対象の映像領域中の局所的な変化が検出されるようにされている。
【0022】
また、カメラ映像解析部22の機能は、CPU、ROM、RAM及び通信インターフェースを有するコンピュータによって実行される。これらのCPU等が協働することにより映像の受信、映像の解析、及び映像中の動きの検知の各機能が実現される。
【0023】
以上のように構成された本実施形態に係る暴れ検出装置11の動作について説明する。かご3内に設置されたカメラ装置9はかご3内の映像を常時撮影しており、カメラ映像解析部22に対して撮影した映像を、通信線23を介して送信している。
【0024】
カメラ映像解析部22は、カレンダ制御部20から通信線25を介して現在の日付、時刻を取得し、取得した日付、時刻の情報を通信線24を介してカメラ映像記憶部21に送信する。
【0025】
カメラ映像記憶部21には予め月日別、時刻別にかご3内を撮影した映像が複数枚記憶されてある。コンピュータは、カメラ映像解析部22から受信した日付、時刻の情報から、カメラ映像記憶部21をデータ検索し、記憶されている映像の中から同じ日付、時刻の映像を選択し、選択した同じ日付、時刻の映像を、通信線24を介して、カメラ映像解析部22へ送信する。
【0026】
カメラ映像解析部22は、このカメラ映像記憶部21から得た映像の変化方向の抽出及び変化速度の測定等の解析を行い、映像中のどのエリアが変化したかを、重み付けを行って数値化することにより取得する。変化量の検出方法について図3、図4を用いて説明する。
【0027】
図3(a)は過去の映像について小領域ごとの変化量を求める処理方法を説明するための図である。カメラ映像解析部22は、映像の冒頭部分を時刻t0の基準映像としてRAM上に読み出す。カメラ映像解析部22は、これらの映像を平行上下線及び平行左右線によって例えば16個の小領域に等分割する。カメラ映像解析部22は、t1、t2…といった各時刻において、これらの時刻における映像が基準映像からどの程度変化したかを数値化する。数値化の手法は「オプティカルフロー法」など映像のエリアごとに変化量を求めるための手法が用いられる。オプティカルフローとは、演算処理により得られた映像上の動きの速度成分である。カメラ映像解析部22は、t0での基準映像と、t1〜tnでの他の映像との間で点間を結ぶとベクトルが得られる。このベクトルの大きさが動きの速度成分に相当する。あるいは、基準映像と、他の映像との間で、複数個の画素からなる部分領域どうしを結ぶことによってカメラ映像解析部22はベクトルを求める。
【0028】
図4は映像間の比較の手法を説明するための図である。図4では、カメラ映像解析部22は、時刻t0での基準映像26と、時刻t1〜tnのうちのいずれかでの映像27とを比較する。カメラ映像解析部22は、分割された16個の小領域に対応する16個のデータ領域を持つ重みデータテーブル28をRAM上に生成する。カメラ映像解析部22は、映像の例えば右上が一度でも変化した場合、重みデータテーブル28内の変化したエリアに該当するデータ領域に重みを与える。2値1、0で重み値を表す場合、データ領域に重みを表すビットをカメラ映像解析部22は立てる。また、映像の変化は明るさの変化速度や変化時間により重みの値の加算幅を細かく分割しても良い。カメラ映像解析部22が利用可能な手法は、映像のエリアごとに変化量が求められる手法であればオプティカルフロー法以外の手法を用いてもよい。
【0029】
次に、カメラ映像解析部22は、カメラ装置9から送られた現在映像も同じ方法を用いて解析を行って重み付けを行い数値化する。
【0030】
図3(b)はカメラ装置9からの現在映像について小領域ごとの変化量を求める処理方法を説明するための図である。カメラ映像解析部22は、現在映像の冒頭部分を基準映像とし、時刻t1、t2…といった現在の各時刻の映像について、基準映像に対する変化をオプティカルフロー法により数値化する。カメラ映像解析部22は、現在映像を16分割する。図3(b)のt0での基準映像と、t1〜tnでの各現在映像との間で点間あるいは複数個の画素からなる部分どうしを結ぶことによってベクトルの有無を判別する。
【0031】
続いて、カメラ映像解析部22は、現在映像を解析し数値化して得た数値データと、カメラ映像記憶部21が記憶していた映像を解析し数値化して得たデータとを比較し、両データの差分を算出した後、暴れ判定用の差分データを得る。カメラ映像解析部22は、暴れ判定用の差分データから一定の値以上の変化をしているエリアを検出すると、暴れ検知として検知信号を出力する。エレベータ制御装置10は、この検知信号を受信すると、かご3内のアナウンス装置13を鳴動させる等の動作を行う。
【0032】
このように、カメラ映像解析部22は、過去の画像について比較用に使う冒頭の過去基準映像及びそれ以降の過去映像との変化量の差と、現在の画像について比較用に使う冒頭の現在基準映像及びそれ以降の現在映像との変化量の差とを比較する。
【0033】
従ってこの暴れ検出装置11では、外界からの日差しの変化、店舗の照明等の変化があっても、過去の変化量の差分と現在の変化量の差分とを比較することで、暴れ検出対象以外の映像の変化を抑制させる事が可能となる。この暴れ検出装置11の処理により、暴れ検出の対象以外の映像の変化を極力抑制し、かご内の異常事態検出においてより精度の高い検知が可能になる。本実施形態に係る暴れ決定装置11によれば、エレベータ1のかご3内の人の暴れを誤検出させずに検出でき、高い精度で人の暴れを検出することができるようになる。
【0034】
カメラ映像記憶部21には、日付毎の映像が記憶されているため、昼の長さと夜の長さとが変わった場合でも、カメラ映像解析部22は映像比較時の基準映像として選択することが可能である。日付毎に映像を記憶するため、12月〜3月までの冬の季節や、3月〜6月までの春の季節といった季節別の映像としての基準映像もカメラ映像記憶部21は出力可能である。日の長さに応じて変化する明るさの変化を考慮して検出処理が可能となり、誤検知が少なくなる。
【0035】
また、例えば1時間間隔など時刻別の映像が記憶されているため、カメラ映像解析部22は時間帯ごとに比較用の基準映像を用意することができる。マンション等では、朝、利用者の数が多く人の流れが多い。撮影された映像も、昼間時に撮影される映像とは異なる。店舗の営業時間や、看板などのライトアップされる時間帯は時刻によって異なるものである。カメラ映像解析部22はきめ細やかな比較解析を行えるようになる。
【0036】
日中の明るい照明下での映像比較により得られる変化の度合いに比べて、夜間における変化の度合いは大きい。時間別の映像が記憶されているため、カメラ映像解析部22は、朝の基準映像、夜の基準映像など、多数の映像を用いて比較することができ、昼の長さと夜の長さとが変わった場合でも、適切な基準映像を使って解析処理を行える。従ってやはり誤検知を減らせることが可能である。
【0037】
電飾装置として屋内にはカラー豆電球付きの装飾物がある。建物の外壁や商店街に設置される広告、看板には、LEDランプやネオン管が用いられている。例えばガラス張りの昇降路をかご3が昇降する場合、電飾装置による外光や景色の変化の大きさは大きい。本実施形態に係る暴れ検出装置11によれば誤検知を減らせられる。かご3内の異常事態を検出する暴れ検出システムにおいてより精度の高い検知を実現でき、適切な報知を行えるようになる。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、暴れ検出装置が天候に応じて基準映像を選択するようにしている。
【0039】
図5は本発明の第2の実施形態に係る暴れ検出装置のブロック図である。同図中、既出の符号は上述した符号と同じ要素を表す。
【0040】
本実施形態に係る暴れ検出装置29の構成は、図1の暴れ検出装置11内のカレンダ制御部20、カメラ映像解析部22、及びカメラ映像記憶部21に、カメラ映像記憶部21に接続された通信線30及びこの通信線30に接続された天候検出部31を追加した構成である。
【0041】
天候検出部31は、建物外の晴天、曇天といった現在の天候の情報を出力するものである。天候検出部31には、インターネット接続された通信端末が用いられる。あるいは、天候検出部31には、降雨や降雪を感知して感知信号を出力する降雨降雪センサが用いられる。
【0042】
このような構成の本実施形態に係る暴れ検出装置29の天候検出部31が行う天候情報の検出の方法は、インターネット配信による天候情報の配信サービスにより取得する方法や、降雨降雪センサ等から定期的に送られてくる信号を受信する方法を用いる。
【0043】
カメラ映像記憶部21は、天候検出部31から通信線30を介して送られる天候の情報を受信し、受信した天候の情報と同じ日付、時刻の映像を複数記憶しておく。例えば3月31日午後6:00について、晴天時、曇天時、降雪時及び降雨時のそれぞれの場合におけるかご3内の映像を、カメラ映像記憶部21は予め記憶しておく。このカメラ映像記憶部21はカメラ映像解析部22からの要求に応じて記憶している全ての映像をこのカメラ映像解析部22へ送信する。
【0044】
また、カメラ映像解析部22は、第1の実施形態での映像解析手法と同様の手法を用いる。カメラ映像解析部22は、カメラ装置9から送られた現在映像について変化量を求める。カメラ映像記憶部21は、カメラ映像解析部22に対し、複数の天候種別に応じて選択した複数の基準映像を送る。カメラ映像解析部22は、このカメラ映像記憶部21から送られた映像全てについて変化量を求める。カメラ映像解析部22は、現在映像について求めた変化量と、各天候種別に応じて送られた映像について求めた変化量とを比較し、比較結果が暴れ検知と判断した場合、暴れ検出としてアナウンス等の動作を行う。
【0045】
従って本発明のこの実施形態に係る暴れ検出装置29によれば、基準映像を同じ日付、時刻で天候の異なる映像を予め記憶しておき、全ての映像と比較することで、天候の違いに映像が変わっても暴れを誤検出することを抑制させる事が可能となる。
【0046】
同じ日付、時刻について保持しておく基準映像が一枚であると、現在映像と基準映像とを比較する処理において、一定の検出精度を保つことができない場合がある。本実施形態に係る暴れ検出装置29は同じ日付、時刻について基準映像を複数用意することによって晴天時の過去の映像についての変化量や、曇天時の過去の映像についての変化量などを求めることができるようになる。カメラ映像解析部22が、現在映像から求めた変化量を、これらの天候別の変化量と比べるようにするため、検知の確実性が図れるようになる。
【0047】
本実施形態では、基準映像の種類として天候を選択したが、天候以外の条件を用いて、複数種類の基準映像を用意しておいてもよい。たまたまカメラ装置9が撮影したタイミングで、防犯窓16あるいは防犯窓19の前を人が横切ったような場合、基準映像が単一であると、偶然通りかかった人により誤検出が起こる。この誤検出を回避するため、カメラ映像解析部22が複数種類の記憶映像を使って検知判断を行うことによって、検出の精度の向上を図れる。
【0048】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態において、暴れ検出装置11あるいは暴れ検出装置29によって検出される映像間の差異の検出時間が一定時間以上続いた場合、基準映像を更新するものである。図2の暴れ検出装置11のカメラ映像解析部22は、CPUタイマによって実現される時間経過の計測機能を有する。
【0049】
このような構成により、カメラ映像解析部22は予めタイマのカウンタ動作をさせ始めておく。カメラ映像解析部22はカメラ映像記憶部21からの過去映像について求めた変化量と、カメラ装置9からの現在映像について求めた変化量との比較を行う際、タイマに設定された設定時間以上、同じ差異を検出した場合、カメラ映像記憶部21にカメラ装置9から送られた映像データを送信する。カメラ映像記憶部21は受信した映像をカメラ映像記憶部21内の記憶装置に記憶し、比較用の基準映像を更新する。
【0050】
また、図4の暴れ検出装置29のカメラ映像解析部22も、この例と同様の動作を行い、同様の効果を奏する。
【0051】
従って本発明のこの実施形態に係る暴れ検出装置によれば、カメラ映像記憶部21に記憶されていない映像がカメラ装置9により撮影され続けた場合、基準となる映像を更新することで、暴れの誤検出を抑制することが可能となる。
【0052】
建物内で最初にエレベータが稼動して、暴れ検出装置22がカメラ装置9の電源を投入し始めると、暴れ検出装置22は多数の撮影を開始して基準映像を収集する。エレベータ運用が続いた後、例えばエレベータホールの窓から臨む方向に新規のビルが建設された場合、このビルの影が一日の決まった時間帯だけ防犯窓16に差し込む。これを放置すると、毎日特定の時点で、暴れ検出機能が常時作動してしまう。この実施形態に係る暴れ検出装置では、必要に応じて基準映像を更新していくことにより、誤検出を回避している。毎日朝の1〜2時間、変化が常時起こり放しになるような状況の発生を防止することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、かごドアの戸開動作及び戸閉動作に起因して起こりうる暴れ検出装置の誤検出を回避するものである。
【0054】
図6は本発明の第4の実施形態に係る暴れ検出装置のブロック図である。同図中、既出の符号は上述した符号と同じ要素を表す。
【0055】
暴れ検出装置32は、カレンダ制御部20、カメラ映像解析部22A、カメラ映像記憶部21を有する。カメラ映像解析部22Aは、テールコード14及び図示しないかご制御装置10を介して、エレベータ制御装置7と接続されている。この点以外のカメラ映像解析部22Aは、カメラ映像解析部22の有する機能と同じ機能を有する。
【0056】
かご制御装置10はエレベータ制御部装置7から、戸開を指令する信号を受信するようにされている。かごドアの戸開及び戸閉の状態を示す信号は、かご制御装置10からテールコード14を介してエレベータ制御装置7へ通知されるようになっている。エレベータ制御部装置7はかご3の状態を監視可能になっている。
【0057】
本実施形態に係る暴れ検出装置32は、エレベータ制御装置7からかご3の昇降中やかごドアの開閉動作中の信号を受信し、エレベータ機器が稼動している時は、暴れ検出機能を無効にする処理を行っている。これにより、暴れ検出装置32は誤検出を抑制するようにしている。
【0058】
このような構成の本実施形態に係る暴れ検出装置32との間でデータを授受するエレベータ制御装置7はエレベータのかご3を走行させ、かごドアの開閉の制御を行う。運行中の間、エレベータ制御装置7はテールコード14を介してカメラ映像解析部22Aに対して、暴れ検出動作を禁止することを示す信号を送信する。
【0059】
カメラ映像解析部22は、暴れ検出動作禁止の信号を受信している間は、いかなる映像の変化を検出しても暴れの発生を検知しないように処理を行う。
【0060】
従って本発明のこの実施形態に係る暴れ検出装置32によれば、防犯窓16から写り込むエレベータ走行中の外界の変化や、かごドア開閉時の映像の変化に対し、エレベータ機器の動作による映像の変化が発生する場合、暴れ検出機能を無効とすることため、暴れの誤検出を抑制することが可能となる。
【0061】
この暴れ検出装置32では、カメラ装置9からの現在映像を用いて直接に検知処理を行う代わりに、エレベータ制御装置7側からのエレベータ運行の信号を使って、この信号が暴れ検出動作処理を禁止している最中だけ検出機能をカットするため、実際上のエレベータ運用で既に使われている機能を生かしてソフトウェア実装が比較的容易に行える。
【0062】
(他の実施形態)
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0063】
上記実施形態では、暴れ検出装置11は、かご3の屋根の設けられた箱体の中に収納された回路基板類に実装されていたが、暴れ検出装置11の構成の仕方、例えば、基準映像を記憶する記憶装置をコネクタ類を介して別構成にするなど種々変更可能である。このような変更を行ったに過ぎない発明及び発明の実施に対して本発明の優位性は何ら損なわれるものではない。
【0064】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…エレベータ、2…昇降路、3…かご、4…メインロープ、5…巻上機、6…カウンターウェイト、7…エレベータ制御装置、8…かご内操作盤、9…カメラ装置(撮像装置)、10…かご制御装置、11,29,32…暴れ検出装置、12…表示器、13…アナウンス装置、14…テールコード、15…かごドア、16,19…防犯窓、17…エレベータホール、18…ホールドア、20…カレンダ制御部、21…カメラ映像記憶部(記憶部)、22,22A…カメラ映像解析部(受信部、解析部、検知部)、23,24,25,30…通信線、26…基準映像(記憶映像)、27…カメラ映像(受信映像)、28…重みデータテーブル、31…天候検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご内を撮像する撮像装置が撮影した前記かご内の映像を受信する受信部と、
この受信部が受信した映像を日付別および時刻別に記憶する記憶部と、
この記憶部が記憶する前記映像および前記受信部が受信した前記映像をそれぞれ複数の小領域に分割する分割部と、
この分割部により分割された複数の小領域を有する前記記憶部の映像中、連続する画像間で動きの変化が生じた小領域に対して重み付けを行い、複数の小領域を有する前記受信部の映像中、連続する画像間で動きの変化が生じた小領域に対して重み付けを行い、各映像を数値化した数値化データを生成する解析部と、
この解析部が生成した2つの数値化データの差分量を算出し、この差分量と予め記憶する閾値とに基づき、前記受信部からの前記かご内の映像の中から、この閾値よりも大きい差分量を有する小領域を人が暴れたエリアと検知する検知部と、を備えたことを特徴とする暴れ検出装置。
【請求項2】
前記記憶部はそれぞれ同じ日付及び同じ時刻に対応する複数枚の映像を記憶しておき、前記解析部はこれらの映像の全てについて前記数値化データを生成し、前記検知部は全ての映像と前記受信部が受信した現在の前記かご内の映像とを比較し、全ての映像比較によって映像差異を検出した場合、暴れを検出することを特徴とする請求項1記載の暴れ検出装置。
【請求項3】
前記受信部から受信した映像と、前記記憶部が記憶する映像との差異の変化が予め設定した時間以上連続して続く場合、前記解析部は、前記記憶部に記憶された前記かご内の映像を更新することを特徴とする請求項1記載の暴れ検出装置。
【請求項4】
前記エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置から制御信号を入力される入力手段を更に設け、
前記解析部がこの入力手段から前記かごの昇降中又はかごドアの開閉動作中の制御信号を入力されると、前記解析部はエレベータ機器が稼動している間、この解析部の有する暴れ検出機能を無効とすることを特徴とする請求項1記載の暴れ検出装置。
【請求項5】
エレベータのかご内の映像を撮像装置により日付別および時刻別に撮像して得られた複数の映像を記憶する記憶部と、
前記エレベータのかご内を前記撮像装置により撮像して現在の映像を得る手段と、
この現在の映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出する手段と、
前記現在の映像に対して、日付および時刻が対応する前記記憶部内の映像を基準映像として選択する手段と、
選択された基準映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出する手段と、
前記現在の映像から抽出された部分領域と、前記基準領域から抽出された部分領域とを比較する手段と、
前記現在の映像内の時間とともに変化する部分領域を出力する手段と、を備え、
この出力手段は、比較の結果、同じ変化を示す部分領域の出力を抑制することを特徴とする暴れ検出装置。
【請求項6】
コンピュータが、
エレベータのかご内の映像を撮像装置により日付別および時刻別に撮像して得られた複数の映像を記憶部に記憶させ、
前記撮像装置に前記エレベータのかご内を撮像して現在の映像を前記記憶部に記憶させ、
この現在の映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出し、
前記現在の映像に対して、日付および時刻が対応する前記記憶部内の映像を基準映像として選択し、
選択した基準映像内の部分領域のうち、時間とともに変化する部分領域を抽出し、
前記現在の映像から抽出した部分領域と、前記基準領域から抽出した部分領域とを比較し、
前記現在の映像内の時間とともに変化する部分領域を出力するように構成され、
上記比較の結果、同じ変化を示す部分領域の出力を抑制することを特徴とする暴れ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63416(P2011−63416A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217677(P2009−217677)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】