説明

曲がりホースの製造方法

【課題】屈曲箇所の多い曲折形状や3次元の曲折形状のように複雑な曲折形状であっても、容易に曲がりホースを製造する。
【解決手段】挿入孔21を有する3枚以上のプレート2が鉛直方向に積層されたプレート群の積層方向に連なる各挿入孔21に、未加硫ゴムホース1を挿入する。そして、少なくとも一つの押し治具3の所定の凹凸形状の押し面3aをプレート群の少なくとも一つの側方に当てて押すことにより、少なくとも2枚のプレート2を他のプレート2に対して水平方向に相対移動させて、未加硫ゴムホース1を曲折形状に曲げる。曲折形状に曲げられた未加硫ゴムホース1を加熱して加硫し、曲がりホースとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム製の曲がりホースの製造方法に関する。本発明の製造方法により製造した曲がりホースは、例えば自動車のベンチレーションホース、エアクリーナホースやラジエータホースに好適に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のエンジンルーム内の搭載密度が高まり、ラジエータホースなどのホース類は複雑な曲折形状となって配設されている。ゴム製のホースは曲率半径の大きなカーブ状であれば弾性変形させて曲げることができる。しかし、ゴム製のホースを3次元形状等の複雑な曲折形状に弾性変形させて用いることは困難であり、ラジエータホースなどは所定の曲折形状に予め形成された状態で供給されている。
【0003】
所定の曲折形状のゴム製ホースを製造する方法としては、マンドレルを用いた方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。この方法では、先ず押出成形で直管状の未加硫ゴムホースを成形し、所定長さに切断する。その未加硫ゴムホースの内周面に離型剤を塗布してから、所定の曲折形状のマンドレルをホース内に挿入する。そして、そのままマンドレルと共に未加硫ゴムホースを恒温槽(圧力蒸気加硫管)内に挿入し、未加硫ゴムホースを加熱して加硫する。これにより、マンドレルの曲折形状にホース形状が固定される。その後、マンドレルを抜いて曲がりホースを得ている。
【0004】
しかし、この方法では、折れ曲ったマンドレルに直管状の未加硫ゴムホースを挿着し、さらに加硫後には曲がりホースを曲折形状のマンドレルから抜き取らなければならず、その作業は極めて面倒である。また、挿着や抜き取りの際にホースを損傷する場合もある。加えて、マンドレルと共に未加硫ゴムホースを収納可能な恒温槽が必要であるため、加硫のために大きな設備スペースや設備費を要する。
【0005】
なお、特許文献2には、樹脂製の曲がりパイプを製造する方法が記載されている。この方法では、先ず結晶性樹脂をこの樹脂のガラス転移温度未満の金型温度で射出成形することにより、パイプ状成形体を形成する。図4に示されるように、得られたパイプ状成形体80の一端を固定治具81に固定するとともに、他端を可動治具82に固定する。そして、パイプ状成形体80を所定温度に予備加熱して、曲げ加工可能な程度にパイプ状成形体80を柔軟にする。その後、パイプ状成形体80の内部に空気圧をかけながら、可動治具82をパイプ状成形体80の軸直角方向にスライドさせて、パイプ状成形体80を曲げ加工する。そして、そのままの温度で引き続き所定時間加熱することにより、樹脂を結晶化して、曲がりパイプの形状保持と強度向上とを図る。
【0006】
しかし、この曲がりパイプの製造方法では、屈曲箇所の多い曲がり形状や3次元の曲がり形状に成形することが困難である。また、複数の曲がりパイプを一度に成形することも容易ではない。
【特許文献1】特開2000−280336号公報
【特許文献2】特開平7−241921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、屈曲箇所の多い曲折形状や3次元の曲折形状のように複雑な曲折形状であっても、容易に曲がりホースを製造することのできる曲がりホースの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、同じ曲折形状の複数の曲がりホースを一度に製造することのできる曲がりホースの製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決する本発明の曲がりホースの製造方法は、配合ゴムより未加硫ゴムホースを形成する成形工程と、挿入孔を有する3枚以上のプレートがプレート平面に対して垂直方向に積層されたプレート群の積層方向に連なる各該挿入孔に、前記未加硫ゴムホースを挿入する挿入工程と、少なくとも一つの押し治具を前記プレート群の少なくとも一つの側方に当てて押すことにより、少なくとも2枚の前記プレートを他のプレートに対して前記プレート平面と平行方向に相対移動させて、前記未加硫ゴムホースを曲折形状に曲げる曲げ工程と、曲折形状に曲げられた前記未加硫ゴムホースを加熱して加硫し、曲がりホースとする加硫工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の曲がりホースの製造方法では、先ず未加硫ゴムホースを形成してから、その未加硫ゴムホースを各プレートの挿入孔に挿入する。そして、プレート群の少なくとも一つの側方に少なくとも一つの押し治具を当てて押すことにより、少なくとも2枚のプレートを他のプレートに対して所定方向に所定量だけ相対移動させる。その結果、相対移動したプレートの挿入孔の内縁に押された未加硫ゴムホースの部分が、そのプレートと共にその移動方向に他の部分に対して相対移動する。これにより、未加硫ゴムホースが所定の曲折形状に曲げられる。そして、所定の曲折形状に曲げられた未加硫ゴムホースを加熱して加硫し、曲がりホースとする。
【0011】
このように本発明の曲がりホースの製造方法によれば、マンドレルを用いることなく曲がりホースを容易に製造することができる。
【0012】
また、このような本発明の曲がりホースの製造方法によれば、曲げ工程で他のプレートに対して相対移動させるプレートの数を増やすことで、屈曲箇所の多い曲がりホースを容易に製造することができる。
【0013】
本発明の曲がりホースの製造方法は、下記(2)〜(7)に示される構成のうちの少なくとも一つを有していることが好ましい。本発明の曲がりホースの製造方法は、下記(2)〜(7)の各項に示される構成をそれぞれ単独で有してもよいし、下記(2)〜(7)の各項に示される構成を二つ以上組み合わせて有してもよい。
【0014】
(2)前記プレートが複数の前記挿入孔を有し、前記成形工程で複数の前記未加硫ゴムホースを形成し、前記挿入工程で複数の該未加硫ゴムホースを複数の該挿入孔にそれぞれ挿入し、前記曲げ行程で少なくとも2枚の前記プレートを他の前記プレートに対して相対回転させることなく相対移動させることが好ましい。
【0015】
この構成によると、曲げ行程で少なくとも2枚のプレートを他のプレートに対して相対回転させることなく相対移動させれば、複数の未加硫ゴムホースを同一の曲折形状に曲げることができるので、同じ曲折形状の複数の曲がりホースを一度に製造することが可能になる。
【0016】
(3)前記曲げ工程で相対移動する少なくとも2枚の前記プレートの移動方向が互いに異なることが好ましい。
【0017】
この構成によると、少なくとも2枚のプレートが互いに異なる方向に移動するので、3次元の曲折形状の曲がりホースを容易に製造することができる。
【0018】
(4)前記曲げ工程で、二つの前記押し治具を前記プレート群の二つの側方に当てて押すことが好ましい。
【0019】
この構成によると、相対移動する少なくとも2枚のプレートの移動方向を互いに異なることが容易になる。
【0020】
(5)前記押し治具が所定の凹凸形状の押し面を有することが好ましい。
【0021】
この構成によると、押し面の凹凸形状を特定形状に設定することで、特定のプレートの相対移動を制御することができるので、特定のプレートを他のプレートに対して所定方向に所定量だけ相対移動させることが容易になる。
【0022】
(6)前記曲げ行程で相対移動される前記プレートの外形状が他の前記プレートの外形状と異なることが好ましい。
【0023】
この構成によると、特定のプレートの外形状を特定形状に設定することで、特定のプレートの相対移動を制御することができるので、特定のプレートを他のプレートに対して所定方向に所定量だけ相対移動させることが容易になる。
【0024】
(7)前記加硫工程で、前記プレート自体を加熱することで前記未加硫ゴムホースを加熱して加硫することが好ましい。
【0025】
この構成によると、未加硫ゴム及びプレート群を収納可能な大型の恒温槽が不要になるため、加硫のために大きな設備スペースや設備費を要することがない。
【発明の効果】
【0026】
したがって、本発明の曲がりホースの製造方法では、未加硫ゴムホースに曲折形状のマンドレルを挿入する従来方法と比べて作業が容易になり、また、ロボットなどを利用した全自動工程も可能になる。したがって、生産性の向上とコスト低減とを図ることができる。
【0027】
また、複雑な曲折形状の曲がりホースを製造したり、あるいは同じ曲折形状の複数の曲がりホースを一度に製造したりすることが容易である。
【0028】
さらに、加硫工程で、プレート自体を加熱することにより未加硫ゴムホースを加熱して加硫する場合は、加硫のための大きな設備スペースや設備費が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の曲がりホースの製造方法の実施形態について詳しく説明する。なお、説明する実施形態は一実施形態にすぎない。すなわち、本発明の曲がりホースの製造方法は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0030】
(実施形態1)
実施形態1では、請求項1、2、3、4、5又は7に記載の発明を具現化する。
【0031】
図1は、実施形態1の曲がりホースの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。この曲がりホースの製造方法は、成形工程と、挿入工程と、曲げ工程と、加硫工程と、抜き工程とを備える。
【0032】
図1(a)は、挿入工程でプレート群の各プレート2の挿入孔21に未加硫ゴムホース1を挿入する様子を示す。図1(b)は、挿入工程でプレート群の各プレート2の挿入孔21に未加硫ゴムホース1を挿入した状態を示す。図1(c)は、曲げ工程で、押し治具3をプレート群の側方に押し当てる様子を示す。図1(d)は、曲げ工程で、プレート群のうちの特定のプレート2を他のプレート2に対して相対移動させて、未加硫ゴムホース1を所定の曲折形状に曲げ成形した状態を示す。
【0033】
また、図2(a)は、挿入工程でプレート群の各プレート2の挿入孔21に未加硫ゴムホース1を挿入した状態を模式的に示す部分断面である。図2(b)は、曲げ工程で、プレート群のうちの特定のプレート2を他のプレート2に対して相対移動させて、未加硫ゴムホース1を所定の曲折形状に曲げ成形した状態を模式的に示す部分断面図である。
【0034】
<成形工程>
成形工程では、配合ゴムから未加硫ゴムホース1を形成する(図1(a)参照)。
【0035】
未加硫ゴムホース1の形成方法は特に限定されないが、作業の容易性より押出成形を利用することが好ましい。また、配合ゴムの種類も制限がなく、天然ゴム及び合成ゴムの中から目的に合わせて種々選択して用いることができる。好ましいゴムの種類としては、ACM、NBR、CSM、EPDMやFKM等を挙げることができる。
【0036】
未加硫ゴムホース1の形状としては、挿入工程での作業の容易性を考慮して、直管状であることが望ましい。ただし、挿入工程で後述するプレートの挿入孔に未加硫ゴムホース1を挿入、貫通させることができるのであれば、未加硫ゴムホース1が異形部を部分的に有していてもよい。
【0037】
成形工程で形成する未加硫ゴムホース1の数は特に限定されず、1本でも複数本でもよい。ただし、生産性を考慮すれば、複数本の未加硫ゴムホース1を形成することが望ましい。
【0038】
<挿入工程>
挿入行程では、挿入孔21を有する3枚以上のプレート2が鉛直方向に積層されたプレート群の積層方向に連なる各挿入孔21に、プレート群の上方から未加硫ゴムホース1を挿入する(図1(a)、図2(a)参照)。各プレート2は、プレート平面が互いに平行となるように積層されている。
【0039】
なお、プレート2の積層方向としては、プレート2のプレート平面に対して垂直方向であれば鉛直方向に限られない。例えば、少し斜め方向にプレート2を積層してもよい。
【0040】
また成形行程で、1本の未加硫ゴムホース1を形成した場合は、その未加硫ゴムホース1をプレート2の挿入孔21に挿入し、複数本の未加硫ゴムホース1を形成した場合は、それらの未加硫ゴムホース1をプレート2の複数の挿入孔21にそれぞれ挿入する。
【0041】
プレート2の材質としては、加硫工程での加熱温度に耐えうるものであれば特に限定されないが、金属とすることが望ましい。プレート2が金属製であれば、加硫工程で、プレート2自体を加熱することで未加硫ゴムホース1を加熱して加硫することが容易となる。また、通電によりプレート2にジュール熱を発生させて、未加硫ゴムホース1を加熱することもできる。
【0042】
プレート2の板厚も特に限定されず、1〜5mm程度することができる。ただし、プレート2が厚すぎると、曲げ工程で、未加硫ゴムホース1を所定の曲折形状に曲げにくくなる。このため、プレート2の板厚は1〜3mmとすることが好ましく、1〜2mmとすることがより好ましい。
【0043】
プレート2の挿入孔21の形状及び大きさは、未加硫ゴムホース1を挿入、貫通させることができるのであれば特に限定されないが、未加硫ゴムホース1の外径よりも少し(2〜2mm程度)大きい内径の円形であることが望ましい。未加硫ゴムホース1の外径よりも少し大きい内径を有する円形の挿入孔21であれば、挿入孔21への未加硫ゴムホース1の挿入が容易であり、また、曲げ工程で未加硫ゴムホース1が挿入孔21の内縁で損傷することを防止することができる。
【0044】
プレート2の挿入孔21の数は特に限定されず、1個でも複数個でもよい。ただし、生産性を考慮すれば、複数個の挿入孔21とすることが望ましい。
【0045】
プレート2の数も3枚以上であれば限定されず、製造しようとする曲がりホースの曲折箇所の数に応じて適宜選定することができる。
【0046】
プレート2の外形状も特に限定されないが、曲げ工程でのプレート2の移動容易性を考慮して、長方形状又は正方形状であることが望ましい。
【0047】
なお、プレート群を構成するプレート2は全て同一の形状を呈し、かつ同一の大きさである。
【0048】
複数のプレート2は、図示しない保持治具に、各プレート2を水平に維持した状態で保持させることができる。この保持治具としては、例えば、各プレート2をスライド可能に保持する案内レールや案内溝を互いに対向する内面に有する一対二組の保持台を採用することができる。
【0049】
各プレート2は、製造しようとする曲がりホースの曲折形状に応じて、所定の間隔を隔てつつ鉛直方向に積層されて保持される。積層された複数のプレート2は本発明のプレート群を構成する。このプレート群において、積層された各プレート2の挿入孔21は鉛直線上に連なる。
【0050】
また、各プレート2は、製造しようとする曲がりホースの曲折形状に応じて、水平方向における一方向(例えば、プレート2の一辺方向)又は互いに直交する二方向(例えば、プレート2の一辺方向(例えば、短辺方向)及び該一辺方向と直交する他辺方向(例えば、長辺方向))に移動可能に保持される。すなわち、2次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、水平方向における一方向(例えば、プレート2の一辺方向)に移動可能に保持される。また、3次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、水平方向において互いに直交する二方向(例えば、プレート2の一辺方向(例えば、短辺方向)及び該一辺方向と直交する他辺方向(例えば、長辺方向))に移動可能に保持される。
【0051】
<曲げ行程>
曲げ行程では、少なくとも一つの押し治具3をプレート群の少なくとも一つの側方に当てて押すことにより、少なくとも2枚のプレート2を他のプレート2に対して水平方向(プレート2のプレート平面と平行方向)に相対移動させて、未加硫ゴムホース1を曲折形状に曲げる(図1(c)、図1(d)参照)。
【0052】
ここに、複数の挿入孔21を有するプレート2を用いる場合は、他のプレート2に対して相対回転させることなく、特定のプレート2を相対移動させる。相対移動させるプレート2が他のプレート2に対して相対回転すると、挿入孔21に挿入された未加硫ゴムホース1の全てを同一の曲折形状に折り曲折させることができなくなる。
【0053】
図2(b)に示されるように、特定のプレート2が他のプレート2に対して図2の矢印方向に相対移動すると、相対移動したプレート2の挿入孔21の内縁に押された未加硫ゴムホース1の部分が、そのプレート2と共にその移動方向に他の部分に対して相対移動する。これにより、未加硫ゴムホース1が所定の曲折形状に曲げられる。
【0054】
2次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、プレート群のうち所定の少なくとも2枚のプレート2を、製造しようとする曲がりホースの曲折形状に応じて、水平方向における一方向(例えば、プレート2の一辺方向)にそれぞれ所定量だけ移動させる。また、3次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、プレート群のうち所定の少なくとも2枚のプレート2を、水平方向において互いに直交する二方向(例えば、プレート2の一辺方向(例えば、短辺方向)及び該一辺方向と直交する他辺方向(例えば、長辺方向))に移動させる。
【0055】
2次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、一方向に往復移動可能とされた1つの押し治具3を用い、3次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、互いに直交する二方向にそれぞれ往復移動可能とされた2つの押し治具3を用いる。
【0056】
押し治具3は、所定の凹凸形状の押し面3aを有する。押し治具3の押し面3aは、押し治具3がプレート群の側方に当たって該側方を押すことで特定のプレート2を他のプレートに対して所定量だけ移動させる、所定の凹凸形状を有する。
【0057】
2次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、一方向に往復移動可能とされた押し治具3の押し面3aをプレート群の一つの側方に当てて押す。また、3次元の曲折形状の曲がりホースを製造する場合は、互いに直交する二方向に往復移動可能とされた押し治具3の押し面3aをプレート群の二つの側方にそれぞれ当てて押す。
【0058】
<加硫行程>
加硫工程では、曲折形状に曲げられた未加硫ゴムホース1を加熱して加硫し、曲がりホースとする。
【0059】
曲げ工程で未加硫ゴムホース1を曲げ加工したままの状態の、未加硫ゴムホース1、押し治具3及びプレート群の組体を、恒温槽(圧力蒸気管)等に入れて加熱してもよいが、設備スペース、設備費や作業の容易性を考慮して、プレート2を加熱することで未加硫ゴムホース1を加熱、加硫することが望ましい。
【0060】
プレート2の加熱方法は特に限定されず、ヒータ等によってプレート2を加熱してもよいが、通電によりプレート2にジュール熱を発生させてプレート2を加熱することが望ましい。
【0061】
<抜き工程>
抜き工程では、プレート群の各プレート2の各挿入孔21から曲がりホースを弾性変形させながら抜き取る。抜き取る方法は特に限定されないが、押し治具3を元の位置に後退させるとともに、必要に応じてプレート群の各プレート2を保持治具から解放してから、各プレート2の挿入孔21から曲がりホースを抜き取ることが望ましい。
【0062】
このような実施形態1の曲がりホースの製造方法によれば、マンドレルを用いることなく曲がりホースを容易に製造することができる。
【0063】
そして、曲げ工程で他のプレート2に対して相対移動させるプレート2の数を増やすことで、屈曲箇所の多い曲がりホースを容易に製造することができる。また、曲げ工程で相対移動させる少なくとも2枚のプレートの移動方向を互いに異ならせることで、3次元の曲折形状の曲がりホースを容易に製造することができる。
【0064】
さらに、複数の挿入孔21を有するプレート2を用い、成形工程で複数の未加硫ゴムホース1を形成するとともに、挿入工程で複数の未加硫ゴムホース1を複数の挿入孔21にそれぞれ挿入することにより、複数の未加硫ゴムホース1を同一の曲折形状に曲げることができるので、同じ曲折形状の複数の曲がりホースを一度に製造することが可能になる。
【0065】
そして、ロボットなどを利用した全自動工程の実現により、大幅な生産性の向上とコスト低減とを期待できる。
【0066】
(実施形態2)
実施形態2では、請求項1、2、3、4、6又は7に記載の発明を具現化する。
【0067】
図3は、実施形態2の曲がりホースの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。図3(a)は、挿入工程でプレート群の各プレート2の挿入孔21に未加硫ゴムホース1を挿入する様子を示す。図3(b)は、挿入工程でプレート群の各プレート2の挿入孔21に未加硫ゴムホース1を挿入した状態を示す。図3(c)は、曲げ工程で、押し治具3をプレート群の側方に押し当てる様子を示す。図3(d)は、曲げ工程で、プレート群のうちの特定のプレート2を他のプレート2に対して相対移動させて、未加硫ゴムホース1を所定の曲折形状に曲げ成形した状態を示す。
【0068】
実施形態2の曲がりホースの製造方法も、実施形態1の曲がりホースの製造方法と同様、成形工程と、挿入工程と、曲げ工程と、加硫工程と、抜き工程とを備える。以下、実施形態2の製造方法について実施形態1の製造方法とは異なる点のみを説明し、実施形態1の製造方法と同じ点についての説明を省略する。
【0069】
実施形態2の製造方法では、平坦状の押し面3aを有する押し治具3を用いる。また、曲げ行程で相対移動させるプレート2の外形状が他のプレート2の外形状と異なる。すなわち、他のプレート2に対して相対移動するプレート2は、他のプレート2の側端に対して所定量余分に延びた少なくとも一つの延長側端部22を有する。
【0070】
したがって、平坦状の押し面3aをプレート群の一つの側方に押し当てて押し具3を移動させると、延長側端部22を有するプレート2のみが、他のプレート2に対して相対移動する。このときの相対移動量は、延長側端部22の延長量で調整できる。
【0071】
よって、実施形態2の曲がりホースの製造方法も、実施形態1の曲がり方法の製造方法と同様の効果を奏する。
【0072】
(その他の実施形態)
前記実施例1、2では、プレート群における各プレート2同士の間に積層方向に所定の隙間を形成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数のプレート2を重ね合わせるように積層してプレート群を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態1の曲がりホースの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】図2(a)は挿入工程でプレート群の各プレートの挿入孔に未加硫ゴムホース1を挿入した状態を模式的に示す部分断面であり、図2(b)は曲げ工程でプレート群のうちの特定のプレートを他のプレートに対して相対移動させて、未加硫ゴムホースを所定の曲折形状に曲げ成形した状態を模式的に示す部分断面図である。
【図3】実施形態2の曲がりホースの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】従来の曲がりホースの製造方法を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1…未加硫ゴムホース 2…プレート
21…挿入孔 3…押し治具
3a…押し面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合ゴムより未加硫ゴムホースを形成する成形工程と、
挿入孔を有する3枚以上のプレートがプレート平面に対して垂直方向に積層されたプレート群の積層方向に連なる各該挿入孔に、前記未加硫ゴムホースを挿入する挿入工程と、
少なくとも一つの押し治具を前記プレート群の少なくとも一つの側方に当てて押すことにより、少なくとも2枚の前記プレートを他のプレートに対して前記プレート平面と平行方向に相対移動させて、前記未加硫ゴムホースを曲折形状に曲げる曲げ工程と、
曲折形状に曲げられた前記未加硫ゴムホースを加熱して加硫し、曲がりホースとする加硫工程と、を備えることを特徴とする曲がりホースの製造方法。
【請求項2】
前記プレートが複数の前記挿入孔を有し、
前記成形工程で複数の前記未加硫ゴムホースを形成し、前記挿入工程で複数の該未加硫ゴムホースを複数の該挿入孔にそれぞれ挿入し、前記曲げ行程で少なくとも2枚の前記プレートを他の前記プレートに対して相対回転させることなく相対移動させる請求項1に記載の曲がりホースの製造方法。
【請求項3】
前記曲げ工程で相対移動する少なくとも2枚の前記プレートの移動方向が互いに異なる請求項2に記載の曲がりホースの製造方法。
【請求項4】
前記曲げ工程で、二つの前記押し治具を前記プレート群の二つの側方に当てて押す請求項3に記載の曲がりホースの製造方法。
【請求項5】
前記押し治具が所定の凹凸形状の押し面を有する請求項1〜4のいずれか一つに記載の曲がりホースの製造方法。
【請求項6】
前記曲げ行程で相対移動される前記プレートの外形状が他の前記プレートの外形状と異なる請求項1〜5のいずれか一つに記載の曲がりホースの製造方法。
【請求項7】
前記加硫工程で、前記プレート自体を加熱することで前記未加硫ゴムホースを加熱して加硫する請求項1〜6のいずれか一つに記載の曲がりホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52374(P2010−52374A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221834(P2008−221834)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】