説明

曲げ加工装置及び曲げ加工機

【課題】曲げ加工の際に、該素材2が引き込まれることを防止して、曲げ加工時に該素材2に損傷が生じることを防止する。
【解決手段】前記素材2に曲げ加工を施す曲げ加工装置1aは、回動軸5aで連結される第一及び第二の治具3a、4aを備える。このうちの第一の治具3aは、抑え部6と曲げ部7とを有し、第二の治具4aは、抑え部8を有する。前記素材2の曲げ中心Pは、回動中心Oに対し回動側に所定量オフセットして配置される。曲げ加工の際に、前記素材2が前記両治具3a、4aに対し変位しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電動機用コイルを構成する断面円形或は矩形の金属線(例えば平角線)や、その他、棒材、パイプ材、板材等の所定の素材に曲げ加工を施す曲げ加工装置及び曲げ加工機に係り、詳しくは、前記素材の曲げ加工時に生じる引き込みをなくすことにより、曲げ加工を精度良く行える曲げ加工装置及び曲げ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動機用コイル等は、曲げ治具に金属線等の素材を巻き付けることにより曲げ加工を施すことにより得る。従来、曲げ治具を素材上で回転させることにより、該素材を該曲げ治具に巻き付ける方法が、特許文献1により提案されている。又、素材の曲げ中心と一致させた位置で一方の治具を回転させ、該素材を他方の治具に巻き付ける方法が、特許文献2により提案されている。更に、素材の2個所を同時に曲げる場合には、素材の2個所をクランプで固定し、素材を引っ張りつつ曲げる方法が、特許文献3により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−271121号公報
【特許文献2】特開2004−104841号公報
【特許文献3】実開昭55−122924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された構造の場合、曲げ加工を行う際に、素材の端部を曲げ治具に固定した状態で、該曲げ治具を回転させつつ該素材に沿って移動させる必要がある。この為、機構が複雑になり、正確な曲げ加工を行えない可能性がある。
【0005】
又、特許文献2に記載された構造の場合、素材の曲げ中心と両治具の回動中心とを一致させている為、曲げ加工の際に、該素材が何れかの治具に対して変位する(素材が引き込まれる)。この様な素材の引き込みに就いて、図15により説明する。図15に示す曲げ加工装置1は、素材2の曲げるべき部分の両側に第一及び第二の治具3、4を配置している。そして、該両治具3、4を、図15の(A)→(B)に示す様に、回動軸5を中心として相対的に回動させることより、前記素材2に曲げ加工を施す。図15に示した構造の場合、前記両治具3、4の回動中心と前記素材2の曲げ中心とを一致させている。又、該素材2は前記第二の治具4に変位不能に固定される。この為、曲げ加工の際に、該素材2が前記回動軸5の外周面に沿って曲げられる分、前記第一の治具3に対し変位し、図15の(A)→(B)に示す様に、該素材2の端部が該第一の治具3の端面から突出する量が短くなる(引き込まれる)。
【0006】
この様に、曲げ加工の際に素材2が第一の治具3に対し変位した場合、該素材2が該第一の治具3と擦れ合い、該素材2が損傷する可能性がある。又、上述の様に、曲げ加工の際に素材2が第一の治具3に対し変位する場合、複数の曲げ加工装置を組み合わせて、前記素材2の複数個所を同時に曲げる加工を行いにくい。
【0007】
これに対して特許文献3に記載された構造の場合、素材の2個所に同時に曲げ加工を施している。又、素材の曲げ中心と回動中心とがオフセットしていると共に、素材を固定する両クランプが接離し得る方向にスライド自在に連結されている。そして、両クランプに曲げ及び引っ張り力(バックテンション)を作用して、素材を2個所で曲げているが、この際、素材が引き込みを生じないように、両クランプが離れる方向に大きなバックテンションを作用する必要がある。この為、曲げ加工の際に、素材の寸法管理が難しく、正確な曲げ加工を行いにくい。
【0008】
そこで、本発明は、金属線等の素材に正確な曲げ加工を施すことができ、曲げ加工の際に、該素材が引き込まれることを防止して、曲げ加工時に該素材に損傷が生じることを防止し、更には、複数個所に同時に曲げ加工を施しても加工精度を良好にできる曲げ加工装置及び曲げ加工機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(例えば、図1、2、7参照)、回動軸(5a)を中心に回動自在に連結される第一の治具(3a、3b)及び第二の治具(4a)を有し、これら両治具(3a、3b、4a)に所定の素材(2)を装着して相対的に回動することにより、前記素材(2)に曲げ加工を施す曲げ加工装置において、
前記第一の治具(3a、3b)は、回動方向と反対側に前記素材(2)の変位を抑える抑え部(6)と、回動中心(O)から該素材(2)の回動側に、所定量オフセットして配置され、少なくとも、前記素材(2)の曲げ加工後の内周面の曲率半径とほぼ同じ曲率半径を有する部分円筒面(18、18a)を有する曲げ部(7、7a)と、を有し、
前記第二の治具(4a)は、回動方向と反対側に前記素材(2)の変位を抑える抑え部(6)を有し、
前記素材(2)の曲げ中心(P)を、前記両治具 (3a、3b、4a)の回動中心(O)から回動側にずれた位置に配置することにより、前記素材(2)に曲げ加工を施す際に、該素材(2)が前記両治具(3a、3b、4a)に対し変位しないことを特徴とする曲げ加工装置(1a、1b)にある。
【0010】
例えば、図1〜4、6、7を参照すると、加工前における前記曲げ部(7、7a)が、直線状態にある前記第一の治具(3a、3b)及び第二の治具(4a)に対して前記回動中心(O)を通る直交線(α)の前記第一の治具(3a、3b)側に位置し、加工後における前記曲げ部(7、7a)が、前記直交線(α)に対して前記第二の治具(4a)側に位置するように移動してなる。
【0011】
例えば、図4を参照すると、前記素材(2)の曲げ中心(P)は、前記素材(2)の曲げ角度をθ、前記素材(2)の厚さ或は直径をW、前記素材(2)の中立線から該素材(2)の曲げ加工後の内周面までの距離の前記Wに対する割合をa、前記曲げ部(7、7a)の円筒面の曲率半径をR、前記曲げ中心(P)の前記両治具(3a、3b、4a)の回動中心(O)に対する距離のうち、前記素材(2)の曲げ方向で該素材(2)を曲げる以前の状態が直線であるとした場合の直線方向と直交する方向に関する距離をX、同じく、前記直線方向と平行な方向に関する距離をY、とした場合に、
X=(R+W×a)×θ/2/tan(θ/2)
Y=(R+W×a)×θ/2
0<θ≦π/2
を満たす位置に設置される。
【0012】
例えば、図1〜4、6、7を参照すると、前記所定の素材(2)が、電動機用コイルを構成する平角線である。
【0013】
本発明は(例えば、図8〜12参照)、上記曲げ加工装置(1a、1b)を、前記第一の治具(3a、3b)と前記第二の治具(4a)とを前記回動中心(O)で交互に連結することにより、複数個直列状に配置して、前記所定の素材(2)を複数個所で曲げ加工をし得ることを特徴とする、曲げ加工機(27、27a)にある。
【0014】
例えば、図9〜12を参照すると、基台(30)と、該基台(30)に固定された固定取付部材(31)と、前記基台(30)の表面に平行する平面において直交するX方向及びY方向に移動自在なスライダ機構(32)と、該スライダ機構(32)の可動部に設けられた可動取付部材(33)と、を備え、
前記第一の治具(3a、3b)及び第二の治具(4a)を交互に5個の治具(28a、28b、29a、29b、29c)を連結した直列状の一端の前記治具(28a)を前記固定取付部材(31)に取付け、前記直列状の他端の前記治具(28b)を前記可動取付部材(33)に取付け、
前記他端の治具(28b)を、加工前と加工後とで同じ方向を保持しつつ、前記X方向及びY方向に移動させ、前記素材(2)を4個所同時に曲げ加工し得るように構成してなる。
【0015】
例えば、図9〜12を参照すると、前記直列状の5個の治具(28a、28b、29a、29b、29c)の真中の治具(29b)に曲げ力を付与することにより、前記素材(2)に曲げ加工を施す。
【0016】
例えば、図9〜12を参照すると、前記固定取付部材(31)を、前記一端の治具(28a)が前記Y方向に向けて取り付けられるように配置し、
前記可動取付部材(33)を、前記他端の治具(28b)が前記Y方向に向けて取り付けられるように配置し、
前記素材(2)を90度ずつ曲げ加工し得るように構成した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によると、素材に曲げ加工を施す為に、曲げ部を回動中心から所定量オフセットさせた状態で、第一の治具及び第二の治具を相対的に回動させるので、曲げ加工の機構が簡単でありながら、正確な曲げ加工を容易に行える。又、曲げ加工時に、前記素材が第一の治具及び第二の治具に対し変位しない為、該素材と治具との間で摺れ合いが生じることを防止でき、該素材に損傷が生じることを防止できる。
【0018】
請求項2に係る本発明によると、曲げ加工時に曲げ部を、直線状態にある第一、第二の治具に対して回動中心を通る直交線を跨いで相対的に移動させる為、素材と治具との間で摺れ合いが生じることを防止できる曲げ加工を、円滑に行うことができる。
【0019】
請求項3に係る本発明によると、素材の引き込みを確実に防止できる。
【0020】
請求項4に係る本発明によると、平角線の曲げ加工を精度良く行え、且つ、曲げ加工の際に絶縁用のエナメル層を傷つけることがない為、良質な電動機用コイルを得られる。
【0021】
請求項5に係る本発明によると、素材の複数個所に同時に曲げ加工を施すことができる為、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で製造でき、製造コストの低減を図れる。即ち、上述の請求項1〜4に係る曲げ加工装置によると、素材の曲げ加工時に引き込みが生じることがない。この為、請求項5に係る本発明の様に、前記曲げ加工装置を複数組み合わせて、前記素材の複数個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材が引っ張られることがない。従って、該素材の複数個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材の寸法が変化することがなく、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で得られる。更に、請求項5に係る発明により電動機用コイルを製造すれば、コイルの接合個所を少なくできる為、製造コストの低減を図れ、且つ、コイルの小型化を図れる。
【0022】
請求項6に係る本発明によると、素材の4個所に同時に、精度良く、且つ、容易に曲げ加工を行える。
【0023】
請求項7に係る本発明によると、素材の4個所を同時に曲げる加工を、より効率よく行える。
【0024】
請求項8に係る本発明によると、素材を90度ずつ曲げる加工を、精度良く、且つ、容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第一の実施の形態に係る曲げ加工装置を示す模式図で、(A)は曲げ加工前の状態を、(B)は、曲げ加工後の状態をそれぞれ回動軸の軸方向から見た正面図。
【図2】第一の実施の形態に係る曲げ加工装置を示す、(A)は曲げ加工前の状態を示す正面図、(B)は、同じく(A)の右側面図、(C)は、曲げ加工後の状態を示す正面図。
【図3】曲げ加工の前後における素材と曲げ部との位置関係を示す模式図。
【図4】素材の曲げ中心と回動中心との関係を説明する為の模式図。
【図5】回動中心と曲げ中心とを一致させた構造で、素材に曲げ加工を施す状態を順番に示す模式図。
【図6】第一の実施の形態における素材に曲げ加工を施す状態を順番に示す模式図。
【図7】第二の実施の形態に係る曲げ加工装置の一部を示す模式図で、(A)は曲げ加工前の状態を、(B)は、曲げ加工後の状態をそれぞれ示す正面図。
【図8】第三の実施の形態に係る曲げ加工機を示す模式図で、(A)は曲げ加工前の状態を、(B)は、曲げ加工後の状態をそれぞれ示す正面図。
【図9】第三の実施の形態に係る曲げ加工機を、曲げ加工前の状態で示す、(A)は側面図、(B)は正面図。
【図10】第三の実施の形態に係る曲げ加工機を、曲げ加工途中の状態で示す正面図。
【図11】同じく、図10よりも更に曲げた状態で示す正面図。
【図12】同じく、曲げ加工後の状態で示す正面図。
【図13】本発明の曲げ加工機により得られるコイル素子を示す図。
【図14】本発明により得られるコイル素子を使用したステータの斜視図。
【図15】回動中心と曲げ中心とを一致させた曲げ加工装置の1例を示す模式図で、(A)は曲げ加工前の状態を、(B)は、曲げ加工後の状態をそれぞれ示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第一の実施の形態>
以下、図1〜6に基づいて本発明の第一の実施の形態について説明する。
【0027】
先ず、本実施形態の曲げ加工装置1aの概略について、図1の模式図により説明する。曲げ加工装置1aは、第一、第二の治具3a、4aとを回動軸5aにより相対的に回動自在に連結してなる。このうちの第一の治具3aは、抑え部6と、曲げ部7と、保持部9とを備える。該抑え部6は、第一の治具3aに断面矩形の平角線等の素材2を配置した状態で、該素材2の回動方向と反対側に配置される。該素材2を配置した状態では、前記抑え部6の抑え面8が該素材2に当接する。
【0028】
又、前記曲げ部7は、外周面を円筒状に形成し、その中心が前記回動軸5aの回動中心Oから前記素材2の回動側に、所定量オフセットした位置に配置されている。前記素材2を配置した状態では、前記曲げ部7の外周面が該素材2の回動側の側面に当接し、該素材2が前記抑え部6の抑え面8と該曲げ部7の外周面とで挟持される。
【0029】
又、前記保持部9は、前記第一の治具3aに前記素材2を配置した状態で、前記抑え部6と該素材2を挟んだ反対側(即ち、素材2の回動側)に配置される。該素材2を配置した状態では、前記抑え部6の抑え面8と前記保持部9の保持面10とで、該素材2を補助的に挟持する。尚、該保持部9は、後述する図2に示すように、省略しても良い。
【0030】
一方、第二の治具4aは、前記第一の治具3aと同様の抑え部6と、保持部9とを備える。但し、該第一の治具3aと異なり、曲げ部7は備えていない。前記第二の治具4aの場合、該曲げ部7を備えていない為、前記抑え部6の抑え面8と前記保持部9の保持面10との間でのみ、前記素材2を挟持している。
【0031】
それぞれが上述のように構成される第一、第二の治具3a、4aは、前述したように、回動軸5aを介して連結される。そして、該回動軸5aの回動中心Oを中心として、互いに相対的に回動可能である。曲げ加工の際には、前記第一の治具3aに固定した前記曲げ部7は、回動の前後で、図1の(A)→(B)に示すように、直線状態にある前記両治具3a、4aに対して前記回動中心Oを通る直交線(仮想線α)を跨ぐように、相対的に移動し、その中心が前記素材2の曲げ中心Pと一致する。該曲げ中心Pは、前記回動中心Oから該素材2の回動側に、所定量オフセットして配置される。
【0032】
次に、本実施形態の曲げ加工装置1aの詳細について、図2により説明する。図2に示す構造の場合、第一の治具3aは、第一のブロック11に、抑え部6と、曲げ部7とをそれぞれ固定してなる。このうちの第一のブロック11は、図2(A)(B)の上下方向上端部乃至中間部に存在する本体部12と、該本体部12の下端から下方に向けて突出し、本体部12よりも板厚{図2(B)の左右方向の厚さ}が小さい突出部13とからなる。該突出部13は、前記本体部12に対し前記素材2を配置する側と反対側{図2(B)の右側}の側面を凹ませることにより、該本体部12よりも板厚を小さくしている。従って、前記突出部13の前記素材2を配置する側{図2(B)の左側}の側面は、前記本体部12の該素材2を配置する側の側面と同一平面上に存在する。
【0033】
又、前記突出部13の回動側の側面{図2(A)の右側面}は、前記本体部12の回動側の側面よりも凹ませている。これと共に、前記突出部13の下端面と回動側の側面との連続部14は、部分円筒状に形成している。これにより、両治具3a、4aの相対回動時に、前記突出部13の該連続部14が前記第二の治具4aに接触することを防止している。
【0034】
又、前記抑え部6は、ボルト15、15により前記第一のブロック11の片面{図2(A)の手前側の面、(B)の左側面}に固定している。又、前記第一のブロック11の回動側と反対側{図2(A)の左側、(B)の奥側}に、位置決め板16をボルト15、15により固定し、該位置決め板16の側面を前記抑え部6の回動側と反対側の側縁部に当接させている。そして、前記第一のブロック11の片面上で、該抑え部6の前記素材2に直交する方向{図2(A)の左右方向}に関する位置決めを図っている。
【0035】
又、前記第一のブロック11の片面の中間部に対向する位置には、前記素材2を挟んで抜け止め板17を固定している。該抜け止め板17は、前記素材2を跨ぐ様に配置され、両端部を前記第一のブロック11にボルト15、15により固定している。このうちの片端部は、前記抑え部6を介して固定している。これにより、前記素材2を配置した状態で、該素材2を前記抜け止め板17と第一のブロック11とにより挟持して、該素材2が図2(A)の表裏方向、図2(B)の左右方向に変位する事を防止している。
【0036】
又、前記曲げ部7は、略段付円柱状に形成され、中間部に大径の円筒面を有する曲げ円筒面18を、基端部{図2(B)の右端部}に小径の円筒面を有する嵌合部19をそれぞれ設けている。又、前記曲げ部7の先端部{図2(B)の左端部}外周面は、部分円すい面としている。又、前記曲げ円筒面18の曲率半径は、前記素材2の曲げ加工後の内周面の曲率半径とほぼ同じとしている。
【0037】
このような曲げ部7は、前記嵌合部19を、前記第一のブロック11の突出部13に形成した嵌合孔20に嵌合固定している。該嵌合孔20は、回動軸5aの回動中心Oから回動側に所定量オフセットした位置に、該突出部13の厚さ方向に貫通するように形成している。又、前記嵌合部19を前記嵌合孔20に嵌合した状態で、前記曲げ円筒面18と前記嵌合部19との段差部21を前記突出部13の片側面に当接させている。前記第一の治具3aに前記素材2を配置した状態では、前記曲げ部7の曲げ円筒面18が該素材2の側面に当接する。そして、前記抑え部6の抑え面8と該曲げ円筒面18とで該素材2を挟持する。
【0038】
一方、第二の治具4aは、第二のブロック22に、抑え部6と、保持部9とをそれぞれ固定してなる。このうちの第二のブロック22は、図2(A)(B)の上下方向下端部乃至中間部の本体部23と、該本体部23の上端から上方に向けて突出し、本体部23よりも板厚{図2(B)の左右方向の厚さ}が小さい突出部24とを備える。該突出部24は、前記本体部23に対し前記素材2を配置する側{図2(B)の左側}の側面を凹ませることにより、該本体部23よりも板厚を小さくしている。又、該凹み量は、前記第一のブロック11の突出部13の板厚とほぼ同じとしている。
【0039】
又、前記抑え部6は、ボルト15、15により前記第二のブロック22の片面{図2(A)の手前側の面、(B)の左側面}に固定している。又、前記第二のブロック22の回動側と反対側{図2(A)の左側、(B)の奥側}に、位置決め板16をボルト15、15により固定し、該位置決め板16の側面を前記抑え部6の回動側と反対側の側縁部に当接させている。そして、前記第二のブロック22の片面上で、該抑え部6の前記素材2に直交する方向{図2(A)の左右方向}に関する位置決めを図っている。
【0040】
又、前記保持部9は、ボルト15、15により前記第二のブロック22の片面で、前記抑え部6と前記素材2を挟んで反対側(即ち、回動側)に固定している。前記第二の治具4aに前記素材2を配置した状態では、前記抑え部6の抑え面8と前記保持部9の保持面10とで、前記素材2を挟持する。
【0041】
又、前記第二のブロック22の片面の中間部に対向する位置には、前記素材2を挟んで抜け止め板17を固定している。該抜け止め板17は、前記素材2を跨ぐ様に配置され、両端部を前記第二のブロック22に、前記抑え部6と保持部9とを介して、ボルト15、15により固定している。これにより、前記素材2を配置した状態で、該素材2を前記抜け止め板17と第二のブロック22とにより挟持して、該素材2が図2(A)の表裏方向、図2(B)の左右方向に変位する事を防止している。
【0042】
それぞれが上述のように構成される第一、第二の治具3a、4aは、回動軸5aを介して連結される。この為に、第一のブロック11の突出部13と、第二のブロック22の突出部24とを、それぞれの突出部13、24に形成した通孔25、25同士を整合させた状態で、図2に示すように重ね合わせ、該通孔25、25に前記回動軸5aを嵌合する。この状態で、前記第一のブロック11の前記素材2を配置する側の片面と、前記第二のブロック22の同じく片面とを、同一平面状に位置させる。
【0043】
又、前記回動軸5aを、例えば、一方の通孔25に対しては締まり嵌めと、他方の通孔25に対しては隙間嵌めと、それぞれすることにより、前記第一、第二の治具3a、4aが前記回動軸5aの中心軸を中心として回動可能とする。この場合、隙間嵌めとした方に、回動軸5aの抜け止め手段を設けることが好ましい。或は、前記回動軸5aを、何れか一方の通孔25に対しては締まり嵌めとし、他方の通孔25には軸受を介して嵌合しても良い。何れにしても、前記第一、第二の治具3a、4a同士を、前記回動軸5aの中心軸(回動中心O)を中心として、互いに相対的に回動可能とする。図2に示した構造の場合も、前述の図1に示した構造と同様に、前記曲げ部7が、回動の前後で、図2の(A)(B)→(C)に示すように移動する。
【0044】
曲げ加工を行う場合、前記第一、第二の治具3a、4aに前記素材2を配置する。このように配置する場合には、例えば、次のように行う。先ず、前記両治具3a、4aを構成する抜け止め板17、17の少なくとも片端部を、同じく第一、第二のブロック11、22から取り外す。そして、前記素材2を、前記第一の治具3aを構成する抑え部6と曲げ部7との間、及び、前記第二の治具4aを構成する抑え部6と保持部9との間に配置する。次いで、前記両治具3a、4aを構成する前記抜け止め板17、17を前記第一、第二のブロック11、22に取り付ける。この結果、前記素材2が、該両ブロック11、22と前記抜け止め板17、17との間で挟持される。
【0045】
このように、素材2を両治具3a、4aに配置した状態で、第一の治具3aを第二の治具4aに対し、回動軸5aを中心として相対的に回動させる。この際、前記素材2の回動側と反対側の側面が、両治具3a、4aを構成する抑え部6の抑え面8に当接し、該素材2が回動方向と反対方向に変位することを抑える。又、前記曲げ部7が、図2の(A)(B)→(C)に示すように移動する。
【0046】
このように曲げ部7が移動する点について、図3により説明する。図3は、前記素材2を90度曲げる場合の、曲げ加工の前後での該素材2と前記曲げ部7との位置関係を示している。加工前における該曲げ部7の位置は、前記素材2が直線状態にある場合、前記回動中心Oを通り、該素材2に直交する仮想線αの前記第一の治具3a側(図3の上側)に位置する。そして、曲げ加工時に、前記曲げ部7は、前記第一の治具3aと共に、前記回動中心Oを中心とした回転方向に移動し、加工後には、前記仮想線αよりも前記第二の治具4a側(図3の下側)に位置する。この状態で、前記曲げ部7の曲げ円筒面18の曲率中心は、前記素材2の曲げ中心Pに位置する。該曲げ中心Pは、前記回動中心Oから、該素材2の回動側に、所定量オフセットした位置となる。
【0047】
前記曲げ中心Pと回動中心Oとの関係について、図4により説明する。先ず、次の数値を規定する。前記素材2の曲げ角度をθ、前記素材2の厚さ(素材2が断面円形の場合は直径)をW、前記素材2の中立線Nから該素材2の曲げ加工後の内周面までの距離の前記Wに対する割合をa、前記曲げ部7の曲げ円筒面18の曲率半径をR、前記曲げ中心Pの前記回動中心Oに対する距離のうち、前記素材2の曲げ方向で該素材2を曲げる以前の状態が直線であるとした場合の直線方向と直交する方向(X方向、図4の左右方向)に関する距離をX、同じく、前記直線方向と平行な方向(Y方向、図4の上下方向)に関する距離をY、とする。この場合に、前記曲げ中心Pは、前記回動中心Oに対し、
X=(R+W×a)×θ/2/tan(θ/2)
Y=(R+W×a)×θ/2
0<θ≦π/2
を満たす位置に設置される。
【0048】
上述の式について説明する。先ず、仮に、前述の図15に示したように、曲げ中心Pと回動中心Oとを一致させた状態で前記素材2に曲げ加工を施した場合、前記中立線Nの位置で、該素材2が(R+W×a)×θだけ、前記第一の治具3aに対し移動する。即ち、該中立線Nの曲げ部分の円周長さ分、前記素材2が引き込まれる。従って、曲げ加工の際に該素材2が引き込まれないようにする為には、前記曲げ部7を曲げ加工の前後で該素材2に沿って前記(R+W×a)×θだけ移動させれば良い。図4から明らかなように、前記曲げ部7のX方向の距離は、曲げ加工の前後では変化しない為、該曲げ部7はY方向に前記(R+W×a)×θだけ移動させれば良い。又、該曲げ部7の移動は、前記回動中心Oを中心として行われる為、図4(B)から明らかなように、前記曲げ中心Pの回動中心OからのY方向の距離は、前記曲げ部7の移動距離の半分である(R+W×a)×θ/2となる。
【0049】
このように、曲げ中心Pの回動中心OからのY方向の距離が分かれば、三角関数から、同じくX方向の距離(R+W×a)×θ/2/tan(θ/2)を導き出せる。尚、0<θ≦π/2と規定したのは、本実施形態の場合、曲げ角度をπ/2よりも大きくした場合に、前記素材2の引き込みを防止できない為である。
【0050】
上述したような本実施形態によると、前記素材2に曲げ加工を施す為に、前記曲げ部7を回動中心Oから所定量オフセットさせた状態で、前記第一、第二の治具3a、4aを相対的に回動させるだけである為、曲げ加工の機構が簡単である。従って、正確な曲げ加工を容易に行える。
【0051】
又、曲げ加工時に、前記素材2が前記第一の治具3aに対し変位しない。この点について、図5、6により説明する。図5、6では、素材2の曲げ加工前の第一の治具3aの端部に位置する部分に印を付け、曲げ加工時の、該印の該第一の治具3aに対する移動量を示している。又、図5は、回動中心Oと曲げ中心Pとを一致させて曲げ加工を行う場合を、図6は、本実施形態により曲げ加工を行う場合をそれぞれ示している。
【0052】
図5に示す構造の場合、素材2が該曲げ部7の曲げ円筒面18に倣うように曲げられる。この際、図5(A)〜(E)に示すように、該曲げ円筒面18に倣って変形する分、該素材2が第一の治具3aに対し変位し、最終的に図5(E)に示す長さL分、該素材2が該第一の治具3aに対し変位する。このLは、前述した(R+W×a)×θに相当する。このように、曲げ加工の際に、素材2が第一の治具3aに対し移動した場合、該素材2と該第一の治具3aを構成する抑え部6の抑え面8とが擦れ合い、該素材2に損傷が生じる可能性がある。尚、図5に示した構造の場合、前記素材2が第二の治具4aに対し変位しないように固定した構造について示している。該素材2が該第二の治具4aに対し変位可能であれば、該素材2が該第二の治具4aに対しても変位する可能性がある。
【0053】
これに対して、図6に示す本実施形態の場合、図6(A)〜(E)に示すように、曲げ部7が素材2と共に、回動中心Oを中心として回動する。そして、図6(E)に示すように、前記曲げ部7が、曲げ円筒面18の曲率中心が曲げ中心Pと一致する位置に移動する。このような本実施形態の場合、曲げ中心Pを回動中心Oに対して、適切な距離オフセットさせている為、図6(E)に示すように、前記素材2が前記第一の治具3aに対し移動しない。この結果、曲げ加工時に該素材2と第一の治具3aとの間で摺れ合いが生じることを防止でき、該素材2に損傷が生じることを防止できる。又、該素材2が、電動機用コイルを構成する平角線の場合、曲げ加工の際に絶縁用のエナメル層を傷つけることがない為、良質な電動機用コイルを得られる。
【0054】
尚、上述の説明では、第一の治具3aを第二の治具4aに対し回動させた場合について説明したが、第一の治具3aを固定とし、第二の治具4aを該第一の治具3aに対し回動させても良い。この場合、該第一の治具3aを構成する曲げ部7の曲げ円筒面18の曲率中心が曲げ中心となる。
【0055】
<第二の実施の形態>
図7は、本発明の第二の実施の形態に係る曲げ加工装置1bを示すものであり、第一の実施の形態における曲げ部7の形状を変更したものである。以下に第一の実施の形態の構成と相違する部分を中心に説明する。
【0056】
図7に示すように、第一の治具3bを構成する曲げ部7aは、素材2の軸方向に長く、軸方向に直交する断面が矩形の矩形部26の先端面に、図7の表裏方向から見た場合に1/4円弧状となる曲げ円筒面18aを形成している。該曲げ円筒面18aは、前記曲げ部7aの素材2側の側面と先端面との連続部に設けた、その中心軸(曲率中心を通る軸)が図7の紙面表裏方向に通る部分円筒面である。本実施形態の場合、前記矩形部26の側面と前記第一の治具3bを構成する抑え部6とにより、前記素材2を挟持する。前記曲げ円筒面18aの曲率中心の、第一、第二の治具3b、4aの回動中心Oに対する位置関係は、前述の第一の実施の形態の構成と同じである。
【0057】
本実施形態の場合、前記矩形部26が、図1の保持部9に相当する。この結果、保持部と曲げ部とを単一の部材で構成できる為、図1に示した構造よりも部品点数を減らすことができ、より低コスト化を図れる。
【0058】
<第三の実施の形態>
図8〜13は、本発明の第三の実施の形態に係る曲げ加工機27を示すものであり、前述したような曲げ加工装置を複数組み合わせたものである。曲げ加工装置単体の構成は、前述の第一の実施の形態と同様である。先ず、本実施形態の曲げ加工機27の概略について、図8により説明する。
【0059】
曲げ加工機27は、曲げ加工装置1aを、第一の治具3aと第二の治具4aとを回動中心Oで交互に連結することにより、複数個直列状に配置して、素材2を複数個所で曲げ加工し得るように構成したものである。この為に、1対の端部治具28a、28b同士の間に、3個の中間治具29a、29b、29cを配置している。このうちの、図8(A)の下端部に配置される端部治具28aは、片端側{図8(A)の上端側}に第二の治具4aを設けている。又、図8(A)の上端部に配置される端部治具28bは、他端側{図8(A)の下端側}に第一の治具3aを設けている。
【0060】
又、前記各中間治具29a、29b、29cは、両端側にそれぞれ第一の治具3aと第二の治具4aとをそれぞれ設けている。又、該3個の中間治具29a、29b、29cのうち、真中の中間治具29bで回動方向が変わるように、前記各第一、第二の治具3a、4aを前記各治具29a、29b、29cにそれぞれ設けている。
【0061】
上述のように構成される各治具28a、28b、29a、29b、29cは、それぞれ、第一の治具3aと第二の治具4aとを回動軸5aを介して連結している。即ち、端部治具28aの第二の治具4aと中間治具29aの第一の治具3aとを、該中間治具29aが該端部治具28aに対し、図8の時計方向に回動するように連結している。又、該中間治具29aの第二の治具4aと中間治具29bの第一の治具3aとを、該中間治具29bが該中間治具29aに対し、図8の時計方向に回動するように連結している。又、該中間治具29bの第二の治具4aと中間治具29cの第一の治具3aとを、該中間治具29cが該中間治具29bに対し、図8の反時計方向に回動するように連結している。又、該中間治具29cの第二の治具4aと端部治具28bの第一の治具3aとを、該端部治具28bが該中間治具29cに対し、図8の反時計方向に回動するように連結している。
【0062】
前記曲げ加工機27により素材2に曲げ加工を施す場合には、該素材2を前記各治具28a、28b、29a、29b、29cに配置し、図8(A)→(B)に示すように、該各治具28a、28b、29a、29b、29cを相対的に回動させる。この結果、前記素材2が、4個所で折り曲げられ、略S字型となる。尚、前記各治具28a、28b、29a、29b、29cを構成する曲げ加工装置として、前述の第二の実施の形態における曲げ加工装置1bを適用しても良い。又、中間治具の個数を増やしたり減らしたりすることにより、素材2を折り曲げる個所の数を調整できる。更には、中間治具の長さを変えることにより、素材2の折り曲げる位置も調整可能である。
【0063】
上述のように、各治具28a、28b、29a、29b、29cを相対的に回動させる機構を含めた曲げ加工機27aについて、図9〜12に基づいて説明する。該曲げ加工機27aは、基台30と、該基台30に固定された固定取付部材31と、前記基台30の表面に平行する平面において直交する(互いに直角となる方向である)X方向及びY方向に移動自在なスライダ機構32と、該スライダ機構32の可動部に設けられた可動取付部材33とを備える。
【0064】
前記固定取付部材31は、前記端部治具28aがY方向に向けて取り付けられるように配置している。又、前記スライダ機構32は、X方向に配置された第一のレール部材34と、Y方向に配置された第二のレール部材35と、該第一のレール部材34上を移動可能な第一の移動子36と、該第二のレール部材35上を移動可能な第二の移動子37とを備える。該第一の移動子36には、前記可動取付部材33を固定している。又、該第二の移動子37には、前記第一のレール部材34を固定している。又、前記可動取付部材33は、前記端部治具28bがY方向に向けて取り付けられるように配置している。これにより、前記可動取付部材33が、前記端部治具28bをY方向に向けたまま、X方向及びY方向に変位自在としている。
【0065】
又、前記固定取付部材31と前記可動取付部材33とに、それぞれ前記両端部治具28a、28bとを、Y方向に向けて取り付ける。又、前記各中間治具29a、29b、29cのうち、真中に配置される中間治具29bを回転盤38により回転駆動可能としている。この為に、該回転盤38上に径方向に形成した長孔39に、前記中間治具29bに設けた枢軸40を変位可能に遊合している。前記回転盤38の回転中心は、前記端部治具28aと前記中間治具29aとの回動中心に一致させている。尚、前記長孔39を前記中間治具29b側に、前記枢軸40を前記回転盤38側にそれぞれ設けても良い。
【0066】
曲げ加工の際には、図9に示すように、前記各治具28a、28b、29a、29b、29cに前記素材2を配置する。この状態から前記回転盤38を回転させることにより、前記長孔39と前記枢軸40との係合に基づき、前記中間治具29bが、前記端部治具28aと前記中間治具29aとの回動中心を中心として回転を開始する。そして、図10〜12に示すように、前記端部治具28bがY方向に向いた状態を保ちつつ、前記各治具28a、28b、29a、29b、29cが、それぞれ相対的に回動する。
【0067】
この際、図11→図12に示すように、前記端部治具28bに設けたローラ41を、前記基台30上に設けたY方向に対し傾斜した壁面42に係合させ、該端部治具28bを所定位置に、円滑に移動させるようにしている。そして、図12に示すように、前記基台30上で、前記固定取付部材31に隣接する部分に設けたスットパ43に、前記中間治具29cが当接した状態で、前記回動が終了する。この結果、前記素材2の4個所に同時に90度ずつ曲げ加工を施せる。尚、図9(B)に示すように、前記基台30上に設けた別のストッパ44、44に、端部治具28bと中間治具29cとを当接させた状態で、前記各治具28a、28b、29a、29b、29cが直線状に配置される。
【0068】
上述のように構成され作用する本実施形態によると、素材2の4個所に同時に曲げ加工を施すことができる為、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で製造でき、製造コストの低減を図れる。即ち、前記曲げ加工機27aを構成する各曲げ加工装置1aは、前述したように、曲げ加工時に、前記素材2の引き込みが生じることがない為、4個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材2が引っ張られることがない。従って、該素材2の4個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材2の寸法が変化することがなく、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で得られる。
【0069】
又、前記素材2に、上述のような曲げ加工を、例えば複数回繰り返すこと等により、図13に示すような、波型のコイル素子45が得られる。このような波型のコイル素子45は、例えば、図14に示すようなステータ46に使用する。該ステータ46について、簡単に説明する。ステータ46は、電動機に使用されるもので、円筒状のステータコア47の内周面複数個所に形成したスロット48、48内に、それぞれが前記コイル素子45を複数重ねてなる、U相、V相、W相の3相からなるコイル49を配設してなる。前記ステータ46を構成する場合には、前記ステータコア47内に配置する前に、前記コイル素子45を複数重ねてコイル49を形成し、挿入治具を用いて該コイル49を前記ステータコア47内に配置する場合が多いが、複数の前記コイル素子45を該ステータコア47内に配置した状態で、各コイル素子45を溶接等により接合する場合もある。
【0070】
本実施形態によれば、コイル素子45の折り曲げ部を多く形成できる為、該コイル素子45の接合個所を少なくでき、製造コストの低減を図れる。又、接合個所を少なくできれば、各コイル素子45同士の間隔を詰めることができ、前記コイル49の小型化を図れる。
【符号の説明】
【0071】
1、1a、1b 曲げ加工装置
2 素材
3、3a、3b 第一の治具
4、4a 第二の治具
5、5a 回動軸
6 抑え部
7、7a 曲げ部
8 抑え面
9 保持部
10 保持面
11 第一のブロック
12 本体部
13 突出部
14 連続部
15 ボルト
16 位置決め板
17 抜け止め板
18、18a 曲げ円筒面
19 嵌合部
20 嵌合孔
21 段差部
22 第二のブロック
23 本体部
24 突出部
25 通孔
26 矩形部
27、27a 曲げ加工機
28a、28b 端部治具
29a、29b、29c 中間治具
30 基台
31 固定取付部材
32 スライダ機構
33 可動取付部材
34 第一のレール部材
35 第二のレール部材
36 第一の移動子
37 第二の移動子
38 回転盤
39 長孔
40 枢軸
41 ローラ
42 壁面
43 ストッパ
44 別のストッパ
45 コイル素子
46 ステータ
47 ステータコア
48 スロット
49 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸を中心に回動自在に連結される第一の治具及び第二の治具を有し、これら両治具に所定の素材を装着して相対的に回動することにより、前記素材に曲げ加工を施す曲げ加工装置において、
前記第一の治具は、回動方向と反対側に前記素材の変位を抑える抑え部と、回動中心から該素材の回動側に所定量オフセットして配置され、少なくとも、前記素材の曲げ加工後の内周面の曲率半径とほぼ同じ曲率半径を有する部分円筒面を有する曲げ部と、を有し、
前記第二の治具は、回動方向と反対側に前記素材の変位を抑える抑え部を有し、
前記素材の曲げ中心を、前記両治具の回動中心から回動側にずれた位置に配置することにより、前記素材に曲げ加工を施す際に、該素材が前記両治具に対し変位しないことを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項2】
加工前における前記曲げ部が、直線状態にある前記第一の治具及び第二の治具に対して前記回動中心を通る直交線の前記第一の治具側に位置し、加工後における前記曲げ部が、前記直交線に対して前記第二の治具側に位置するように移動してなる、請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記素材の曲げ中心は、前記素材の曲げ角度をθ、前記素材の厚さ或は直径をW、前記素材の中立線から該素材の曲げ加工後の内周面までの距離の前記Wに対する割合をa、前記曲げ部の円筒面の曲率半径をR、前記曲げ中心の前記両治具の回動中心に対する距離のうち、前記素材の曲げ方向で該素材を曲げる以前の状態が直線であるとした場合の直線方向と直交する方向に関する距離をX、同じく、前記直線方向と平行な方向に関する距離をY、とした場合に、
X=(R+W×a)×θ/2/tan(θ/2)
Y=(R+W×a)×θ/2
0<θ≦π/2
を満たす位置に設置される、請求項1又は2に記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記所定の素材が、電動機用コイルを構成する平角線である、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの何れか1項に記載の曲げ加工装置を、前記第一の治具と前記第二の治具とを前記回動中心で交互に連結することにより、複数個直列状に配置して、前記所定の素材を複数個所で曲げ加工をし得ることを特徴とする、曲げ加工機。
【請求項6】
基台と、該基台に固定された固定取付部材と、前記基台の表面に平行する平面において直交するX方向及びY方向に移動自在なスライダ機構と、該スライダ機構の可動部に設けられた可動取付部材と、を備え、
前記第一の治具及び第二の治具を交互に5個の治具を連結した直列状の一端の前記治具を前記固定取付部材に取付け、前記直列状の他端の前記治具を前記可動取付部材に取付け、
前記他端の治具を、加工前と加工後とで同じ方向を保持しつつ、前記X方向及びY方向に移動させ、前記素材を4個所同時に曲げ加工し得るように構成してなる、請求項5に記載の曲げ加工機。
【請求項7】
前記直列状の5個の治具の真中の治具に曲げ力を付与することにより、前記素材に曲げ加工を施す、請求項6に記載の曲げ加工機。
【請求項8】
前記固定取付部材を、前記一端の治具が前記Y方向に向けて取り付けられるように配置し、
前記可動取付部材を、前記他端の治具が前記Y方向に向けて取り付けられるように配置し、
前記素材を90度ずつ曲げ加工し得るように構成した、請求項6又は7に記載の曲げ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−158698(P2010−158698A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2187(P2009−2187)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】