説明

曲率可変鏡およびそれを用いた光学装置

【課題】反射鏡を支える支持脚の長さや平面度の精度を向上させる必要がなく、反射面の曲率を変えることが可能で、焦点距離やビーム径、ビームモードの調整が可能な曲率可変鏡を提供することを目的としている。
【解決手段】曲率可変鏡1は、円形反射鏡2と、円形反射鏡2の裏面2B側に距離を隔てて配置される構造部材3と、裏面2Bと構造部材3との間に裏面2Bの中心を挟んで配置された一対の固定部材4と、一端が裏面2Bに垂直に固定され、他端が2本を一組として固定部材4にそれぞれ固定される二組の反射鏡支持脚5と、一端が固定部材4の中間位置に固定され、他端が構造部材3に固定される固定部材支持脚6と、裏面2Bの中心2E付近に一端が固定され、他端が構造部材3に固定される距離変更手段であるピエゾアクチュエータ7と、を備えている。反射面2Aの曲率を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームなどを用いた光学装置において、焦点距離やビーム径、あるいはビームモードを調整する曲率可変鏡およびその曲率可変鏡を用いた光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザビームなどを用いた光学装置、例えばレーザ加工装置において、曲率可変鏡は、反射面の曲率を変化させることにより、その反射面形状を平面から凹面または凸面へ連続的に変化させることができ、光学系全体の焦点距離や光路途中あるいは加工点でのビーム径やビームモードを調整できることから有効である。
【0003】
しかしながら、曲率可変鏡が、反射面形状を単純な回転対称である球面状に変形させるだけでは、非点収差の関係から入射角度を10°以下にする必要があるなど使用上の制約があった。この対策として、特許文献1に開示されている光ピックアップ装置においては、駆動素子に4個の圧電素子を用いて、(サジタル方向の曲率):(メリジオナル方向の曲率)=2:1とする、すなわち、反射面のX軸方向の曲率とY軸方向の曲率との比が1:2となるようにすることにより、入射角45°での反射条件においても、変形時の球面収差の補正が可能である形状可変ミラーが提案されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている曲率可変鏡では、駆動素子の数が1つでありながら、サジタル方向とメリジオナル方向とで曲率を変えることが可能な曲率可変鏡が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−58921号公報
【特許文献2】特開2009−63887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の形状可変ミラーにおいては、駆動素子として圧電素子が4個必要であり、圧電素子を個別に調整する必要があるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2の曲率可変鏡においては、図8に示すように、反射面40Aを有する反射鏡40と、反射鏡40の裏面40Bを固定脚43の4ヶ所で固定する構造部材41と、構造部材41の中心付近に一端が固定され、もう一端が反射鏡40の裏面40Bの中心付近に固定される距離変更手段42とを備え、反射鏡40の裏面40B内で裏面40Bの中心を通るある一軸をX軸、同じく反射鏡40の裏面40B内で裏面40Bの中心を通り、X軸に直交する軸をY軸と定義し、構造部材41の反射鏡40の裏面40Bを固定する固定脚43の4ヶ所が、反射鏡40の裏面40Bの中心40Eに対してX軸からの角度とY軸からの角度が不等に振り分けられ、距離変更手段42を駆動した場合に、反射面40AのX軸方向の曲率とY軸方向の曲率とが異なるように反射面を変形させている。上記技術においては、反射鏡40の反射面40Aの歪みを抑制し、収差の少ない曲率可変反射鏡を得るために、反射鏡40の裏面40Bと構造部材41を固定脚43の4ヶ所で固定している構造上、反射鏡40の裏面40Bおよび反射鏡40の裏面40Bを固定する構造部材41の固定脚43の4ヶ所での平面度を向上させる必要があるという問題点があり、また、そのため製造コストが高くなるという問題点もあった。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、反射鏡を支える支持脚の長さや平面度の精度を向上させる必要がなく、駆動素子数が1個の簡便な方法により、サジタル方向とメリジオナル方向とで曲率を変えることが可能で、反射面の歪みを発生させることなく、焦点距離やビーム径、ビームモードの調整が可能な曲率可変鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の曲率可変鏡は、反射鏡と、反射鏡の裏面に距離を隔てて配置される構造部材と、反射鏡の裏面と構造部材との間で、反射鏡の裏面の中心を挟んで配置される一対の固定部材と、一端が反射鏡の裏面に固定され、他端が2本を一組として前記固定部材にそれぞれが固定される二組の反射鏡支持脚と、各一組の反射鏡支持脚が固定される固定部材の中間位置の反対面に一端が固定され、他端が構造部材に固定される固定部材支持脚と、一端が反射鏡の裏面中心付近に固定され、他端が構造部材に固定される距離変更手段と、を備え、距離変更手段を駆動した場合に、反射鏡の反射面の曲率が変更される位置に反射鏡支持脚を配置したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光学装置は、反射鏡に上記の曲率可変鏡を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る曲率可変鏡によれば、安価、かつ、簡便に焦点距離やビーム径、ビームモードの調整を行うことができる効果がある。
【0012】
また、本発明に係る光学装置は、安価、かつ、簡便に焦点距離やビーム径、ビームモードの調整が実現できる光学装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1における曲率可変鏡の構造を説明する組立図である。
【図2】実施の形態1における曲率可変鏡の動作概念を説明する図である。
【図3】実施の形態1における反射鏡支持脚もしくは固定用支持脚に形成された突起部を示す図である。
【図4】実施の形態1における曲率可変鏡の円形反射鏡の裏面に円座を設けた場合の組立図である。
【図5】実施の形態1における他の円座の形状を示す図である。
【図6】実施の形態2における曲率可変鏡の構造を説明する組立図である。
【図7】実施の形態3における曲率可変鏡を用いた光学装置の構成図である。
【図8】従来例における曲率可変鏡の構造を説明する組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る曲率可変鏡について図1〜図7に基づいて説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における曲率可変鏡の概略を示す組立図である。
図1において、曲率可変鏡1は、円形反射鏡2と、円形反射鏡2の裏面2B側に距離を隔てて配置される構造部材3と、円形反射鏡2の裏面2Bと構造部材3との間に裏面2Bの中心を挟んで配置された一対の固定部材4と、一端が円形反射鏡2の裏面2Bに垂直に固定され、他端が2本を一組として固定部材4にそれぞれ固定される二組の反射鏡支持脚5と、一端が固定部材4の中間位置に固定され、他端が構造部材3に固定される固定部材支持脚6と、円形反射鏡2の裏面2Bの中心付近に一端が固定され、他端が構造部材3に
固定される距離変更手段であるピエゾアクチュエータ7とで構成されている。
【0016】
ここで、円形反射鏡2の裏面2Bの中心2Eを通るある一軸をX軸、同じく中心2Eを通り、X軸と直交する軸をY軸と定義したとき、X軸となす角度が36.5°、Y軸となす角度が53.5°となる2本の軸2Cが外周円と交差する4ヶ所の点2D付近で、反射鏡支持脚5が裏面2Bに対して垂直にネジ止め、ロウ付け、あるいは接着などにより固定されている。また、構造部材3は、円形反射鏡2とほぼ同じ外径であり、4本の反射鏡支持脚5の長さは、ほぼ同一である。反射鏡支持脚5の底面5Bと固定部材4の天面4A、固定部材4の底面4Bと固定部支持脚6の天面6A、固定部材支持脚6の底面6Bと構造部材3の天面3Aとは、ネジ止め、ロウ付け、あるいは接着などにより固定される。
【0017】
次に、実施の形態1における曲率可変鏡の動作について、図1を参照して説明する。
一対の固定部材4は、距離変更手段であるピエゾアクチュエータ7を挟むようにし、ピエゾアクチュエータ7の両端面はそれぞれ円形反射鏡2の中心2Eと構造部材3の中心3Bに接合される。反射鏡支持脚5の長さと固定部材4の厚みと固定部材支持脚6の長さの合計は、ピエゾアクチュエータ7の稼働域の中間とほぼ同じ長さになるように設定されている。ここで、ピエゾアクチュエータ7に電圧を印加し、ピエゾアクチュエータ7の長さを短くなると、反射鏡支持脚5により、2D付近の4ヶ所の点で円形反射鏡2の裏面2Bを押す方向の荷重と、裏面2Bの中心2E付近で円形反射鏡2を引く方向の荷重が発生し、反射面2AをX軸方向とY軸方向とで曲率の比がおよそ2:1となる凹形に変形させることができる。逆に、ピエゾアクチュエータ7の長さが長くなると、反射鏡支持脚5により、2D付近の4ヶ所の点で円形反射鏡2の裏面2Bを引く方向の荷重と、裏面2Bの中心2E付近で円形反射鏡2を押す方向の荷重が発生し、反射面2AをX軸方向とY軸方向とで曲率の比がおよそ2:1となる凸形に変形させることができる。なお、円形反射鏡2の裏面2Bの中心2Eに加わる荷重は、反射鏡支持脚5により加わる2Dにおける荷重の4倍である。これにより、光線の入射角が45°の場合においても、収差が発生することなく、反射面2Aの曲率を変えることができる曲面可変鏡1を実現することができる。
【0018】
上記説明では、反射支持脚5が、X軸に対して、36.5°の角度をなす位置に配置される場合について述べたが、円形反射鏡2の裏面2Bに固定される反射鏡支持脚5の4ヶ所が、X軸となす角度が30°〜40°であれば、光線の入射角45°に対して、円形反射鏡2でX軸方向の曲率とY軸方向の曲率の比を、ほぼ2:1となるよう変形させることができ、収差の少ない曲率可変鏡1が得られる。なお、反射支持脚5の位置を、X軸に対する角度で説明したが、X軸とY軸を入れ替えても同様である。
【0019】
上記構造においては、例えば図2に示すように、反射鏡支持脚5の中に1本、他の反射鏡支持脚5の長さよりも長い反射鏡支持脚5Cが存在する場合であっても、固定部材4の一方は傾き、この傾きから2本の固定部材支持脚6の底面6Bの高さが異なってしまうため、構造部材3は傾くが、円形反射鏡2の反射面2Aに歪みを発生させることは無い。構造部材3の傾きの修正については、この曲率可変鏡1をあおり調整の可能なホルダーに構成することにより、上記の構造部材3の傾きを修正することが可能である。
【0020】
また、円形反射鏡2の裏面2Bの高さの違いや、固定部材4の厚みの違い、固定部材支持脚6の長さの違い、構造部材3の端面3Aの高さの違いがあっても同様である。円形反射鏡2や固定部材4や構造部材3の素材、厚み、反射鏡支持脚5や固定部材脚6の素材、断面形状、断面積などは、適度な凹凸変形により、荷重に対し破損しなければ、どのように選択、設定しても良い。
【0021】
すなわち、反射鏡支持脚5や固定部材支持脚6の天面6Aと底面形状に天面および底面から垂直に、適度な凹凸変形が起こり、かつ選択した接合方法において円形反射鏡2の曲
率を変更させる荷重に対し接合面が剥がれなければ良い。例えば、図3(a)に示すように、反射鏡支持脚5および固定部材脚6の天面5A,6Aと底面5B,6Bに微小な方形の凸形状の突起8設けることにより、円形反射鏡2、固定部材4や構造部材3の平面度により発生する歪みも吸収することができ、より収差の発生を抑制した曲率可変鏡を提供することができる。また、図3(b)に示すように、反射鏡支持脚5および固定部材脚6の天面5A,6Aと底面5B,6Bに設けた突起部は、畝状の突起9であっても同様の効果が期待できる。
【0022】
固定部材4や構造部材3の厚みを薄くするなど、固定部材4や構造部材3の剛性を小さくすれば、ピエゾアクチュエータ7による距離の変化に対する円形反射鏡2の変形の度合いが小さくなり、円形反射鏡2のよりきめ細かな曲率の変化の制御が期待できる。
【0023】
さらに、図4に示すように、円形反射鏡2とピエゾアクチュエータ7との間に円座10を設け、円座10の両端面10Aと10Bとに、それぞれ円形反射鏡2とピエゾアクチュエータ7と接合する。円座10の直径を変えることで、変形時の反射面2AのX軸方向断面2XおよびY軸方向断面2Yの形状を変えることができる。また、より好適には、図5(a)に示すように、円座10の面10A側の中心付近にザグリ加工を施し、円形反射鏡2と円弧状に接合する。もしくは図5(b)に示すように、円座10の面10A側に3本以上の脚10Cを設ける場合であっても良い。
【0024】
これにより、円形反射鏡2の変形形状を、円座10の直径の内と外とで、より滑らかに連続的につながった曲面形状にできる。円座10の直径を適切に設定することで、X軸方向およびY軸方向の断面形状を変更することができ、特に楕円や円形に近づけることが可能になる。なお、円座10と脚10Cは一体に形成しても良く、別部品として形成したものを接合したものであっても良い。また、円座10と円形反射鏡2を同一材料から切削などにより形成しても良い。さらに、円座10を円形として説明したが、楕円形であっても良い。以上のことは、後述する他の実施の形態においてもあてはまる。
【0025】
ピエゾアクチュエータ7は、時間連続的に制御可能なため、例えば、レーザ加工装置において、レーザ加工途中での焦点位置の変化が必要な場合でも、焦点位置の調整ができる効果が期待できる。
【0026】
このように、実施の形態1における曲率可変鏡では、反射鏡の裏面と構造部材の間に固定部材を設け、それぞれ反射鏡支持脚と固定部材支持脚を設置し、2本の固定部材支持脚と距離変更手段とで反射鏡全体を支える構成とすることにより、構成部材の加工精度が低くても収差の発生を抑えて反射鏡の曲率を可変にすることができ、安価で、簡便に焦点距離やビーム径、ビームモードを調整することができるという顕著な効果がある。
【0027】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2における曲率可変鏡の構造を説明する組立図である。
実施の形態2の曲率可変鏡は、実施の形態1の曲率可変鏡において、ピエゾアクチュエータの替わりに、ねじ部材を距離変更手段として使用するものである。
【0028】
図6において、実施の形態1の図4のピエゾアクチュエータ7の替わりに、両端部にピッチの異なる雄ねじを形成したねじ部材11を用いるものである。円座10の面10Bの中心には、ねじ部材11の片側の雄ねじ11Aに螺合する雌ねじ10Fを設ける。また、構造部材3の中心部には、ねじ部材11のもう一方の側の雄ねじ11Bに螺合する雌ねじ3Fが設けられている。なお、図1、図4に示す実施の形態1と同一符号は、同一又は相当部分を示し、同一の構成部分については説明を省略する。
【0029】
次に、実施の形態2の動作について説明する。ねじ部材11の両端の雄ねじ11A,11Bのピッチが異なるため、ねじ部材11を左あるいは右へ回転させることで、円形反射鏡2と構造部材3との間隔を変えることができる。これにより、ピエゾアクチュエータ7を用いた場合と同様、円形反射鏡2の反射面2AをX軸方向とY軸方向とで異なる曲率を有する曲率可変鏡1を実現することができる。
【0030】
実施の形態1と同様、反射鏡支持脚5の位置とX軸とのなす角度が36.5°であれば、X軸方向の曲率とY軸方向の曲率の比がおよそ2:1となる凹形もしくは凸形に反射面2Aを変形させることができる。凹側にも凸側にも必要なだけ変形可能となるように、ねじ部材11の可動域を設定して設計、製作を行うことにより、ねじ部材11を用いても、円形反射鏡2の反射面2Aを凹凸に自在に変形させることができ、光学系全体の焦点距離や光路途中あるいは加工点でのビーム径やビームモードを調整することが可能となる。
【0031】
反射鏡の曲率を時間連続的に制御する必要が無い場合は、実施の形態2に示すように、ピエゾアクチュエータ7の替わりにねじ部材11などの、長さの調整が可能であり、かつその長さを維持できる距離変更手段が有効である。ねじ部材11の両端の雄ねじ11A,11Bは、所定のピッチの差があればよく、右ねじと左ねじとの組み合わせによりピッチの差を発生させてもよい。ピッチの差を小さくすれば、円形反射鏡2の凹凸変形を微細に調整することが容易になる。また、距離の変更ができれば、他のどのような機構であっても構わず、反射鏡の曲率を調整は可能である。
【0032】
このように、実施の形態2に係る曲率可変鏡によれば、距離変更手段として、円形反射鏡の裏面側に雌ねじを形成した座と、雌ねじを形成した構造部材と、これら雌ねじと螺合する両端部に異なるピッチの雄ねじを設けたねじ部材とを設け、2本の固定部材支持脚と距離変更手段とで反射鏡全体を支える構成とすることにより、構成部材の加工精度が低くても収差の発生を抑えて反射鏡の曲率を可変にすることができ、安価で、簡便に焦点距離やビーム径、ビームモードを調整することができるという顕著な効果がある。
【0033】
なお、実施の形態2では、両側にピッチが異なる雄ねじを設けたねじ部材を用いる場合について説明したが、両側にピッチが異なる雌ねじを設けたねじ部材を用いて、円座と構造部材側に雄ねじを設け、ねじ部材の雌ねじと螺合するようにしても同様の効果がある。また、円形反射鏡と円座を一体に形成したものであってもよい。
【0034】
また、実施の形態1および実施の形態2では、曲率可変鏡を円形としたが、必ずしも円形である必要はなく、他の形状の反射鏡であっても適用可能であることは言うまでもない。
【0035】
実施の形態3.
次に、実施の形態3における曲率可変鏡を用いた光学装置について説明する。図7は、実施の形態3の光学装置としてレーザ加工装置の構成図を示す。実施の形態3では、実施の形態1又は実施の形態2で説明した何れかの曲率可変鏡を1つの光学系に複数本のレーザビームを通したレーザ加工装置に適用する場合について説明する。
【0036】
図7において、レーザ発振器20より出射されたレーザビームLは、光路途中の反射鏡21によって伝送され、分光用偏光ビームスプリッタ22によってレーザビームMとレーザビームNとに分離される。レーザビームMは二組の反射鏡23によって、また、レーザビームNは二組のガルバノスキャナ24により回転駆動されるガルバノミラー25によって、合成用偏光ビームスプリッタ26へと伝送される。さらにレーザビームMとレーザビームNは、二組のガルバノスキャナ27により回転駆動されるガルバノミラー28によって2次元スキャンされると共に、集光レンズ29によって被加工物30上に位置決め、照
射される。被加工物30上の点線で囲んだ四角の範囲は、スキャン可能範囲31である。被加工物30はテーブル32に載せられ、テーブル32はX軸、Y軸方向の2個のテーブル駆動機構33によって2次元に所定の範囲で移動可能に構成される。
【0037】
レーザビームMとレーザビームNの光路が異なる部分である分光用偏光ビームスプリッタ22、反射鏡23、ガルバノミラー25、および合成用偏光ビームスプリッタ26の平面度などのばらつきにより、レーザビームMとレーザビームNの間に焦点位置の差異が生じることがある。そこで、二組の反射鏡23のうち1つに実施の形態1又は実施の形態2の何れかの曲率可変鏡1を適用する。
【0038】
レーザビームMの反射鏡23への入射角は、45°であるので、曲率可変鏡1である反射鏡23のサジタル方向にX軸を、メリジオナル方向にY軸を合わせて配置する。レーザビームMの焦点位置が、レーザビームNの焦点位置よりも集光レンズ29から遠い側にある場合は、曲率可変鏡1を凹形に変形すれば、発生する収差を抑えながら、レーザビームMの焦点位置とレーザビームNの焦点位置を一致させることができる。また、レーザビームMの焦点位置が、レーザビームNの焦点位置よりも集光レンズ29に近い側にある場合は、曲率可変鏡1を凸形に変形すれば、発生する収差を抑えながら、レーザビームMの焦点位置とレーザビームNの焦点位置を一致させることができる。
【0039】
図7に示す実施の形態3においては、実施の形態1又は実施の形態2の何れかの曲率可変鏡をレーザ加工装置に用いる場合について図示説明したが、曲率可変鏡を使用する効果は光学系全体の焦点距離や光路途中あるいは加工点でのビーム径やビームモードに対して作用するものであるため、レーザ加工装置以外の光学装置にも適用可能である。
【0040】
また、レーザ加工装置でも、1つの光学系に複数本のレーザビームを通し、2次元スキャンするレーザ加工装置に限定するものではない。すなわち、レーザビームが1本でも良く、ガルバノスキャナ24、27やテーブル32のいずれが1次元、2次元もしくは3次元のスキャン、あるいはスキャンをしないレーザ加工装置においても、同様の効果が得られる。
【0041】
更に、レーザビームは、単パルス、複数パルスあるいは連続発振の何れであっても良い。加工内容は、穴あけに限定されず、切断、変形、溶接、熱処理、あるいはマーキングなどのレーザにより加工可能なものであればどのようなものでも良い。また、被加工物には、燃焼、溶融、昇華あるいは変色などのレーザにより発生できる変化であればどのような変化を発生させても良い。以上のように、実施の形態3に係るレーザ加工装置によれば、実施の形態1又は実施の形態2の何れかの曲率可変鏡を加工光学系に用いることにより、レーザ加工における焦点距離やビーム径、ビームモードを調整することができる。
【0042】
このように、実施の形態3におけるレーザ加工装置によれば、実施の形態1又は実施の形態2の何れかの曲率可変鏡を加工光学系に用いることにより、レーザ加工における焦点距離やビーム径、ビームモードを調整することができるという顕著な効果がある。
【0043】
なお、上記実施の形態において、曲率可変鏡を光学系における焦点距離やビーム径、ビームモードを調整する場合について説明したが、反射鏡の歪を修正するために用いることもできる。
【0044】
また、本発明は上記実施の形態のみに限られるものではなく、これらの可能な組み合わせを含むことは云うまでもない。
【0045】
また、図において、同一符号は、同一または相当部分を示す。
【符号の説明】
【0046】
1 曲率可変鏡
2 円形平面鏡
2A 平面面
3 構造部材
3F,10F 雌ねじ
4 固定部材
5 反射鏡支持脚
6 固定部材支持脚
7 ピエゾアクチュエータ
8,9 突起
10 円座
11 ねじ部材
11A,11B 雄ねじ
20 レーザ発振器
22 分光用偏光ビームスプリッタ
23 反射鏡
26 合成用偏光ビームスプリッタ
30 被加工物
L,M,N レーザビーム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射鏡と、
前記反射鏡の裏面に距離を隔てて配置される構造部材と、
前記反射鏡の裏面と前記構造部材との間で、前記反射鏡の裏面の中心を挟んで配置される一対の固定部材と、
一端が前記反射鏡の裏面に固定され、他端が2本を一組として前記固定部材にそれぞれが固定される二組の反射鏡支持脚と、
前記各一組の反射鏡支持脚が固定される前記固定部材の中間位置の反対面に一端が固定され、他端が前記構造部材に固定される固定部材支持脚と、
一端が前記反射鏡の裏面中心付近に固定され、他端が前記構造部材に固定される距離変更手段と、を備え、
前記距離変更手段を駆動した場合に、前記反射鏡の反射面の曲率が変更される位置に前記反射鏡支持脚を配置したことを特徴とする曲率可変鏡。
【請求項2】
前記反射鏡の裏面内で裏面中心を通るある一軸をX軸、同じく前記反射鏡の裏面内で裏面中心を通り、前記X軸に直交する軸をY軸と定義し、
前記一組の反射鏡支持脚は、前記X軸に対して対称な位置にあり、また、前記別の一組の反射鏡支持脚は、前記一組の反射鏡支持脚と前記Y軸に対して対称な位置にあって、前記二組のそれぞれの反射鏡支持脚の位置のX軸との角度が30°〜40°となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の曲率可変鏡。
【請求項3】
前記反射鏡と前記距離変更手段との間に、円形もしくは楕円形の座を設け、前記座の両端面がそれぞれ前記反射鏡裏面と前記距離変更手段の一端とに固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲率可変鏡。
【請求項4】
前記距離変更手段に、ピエゾアクチュエータを用いたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の曲率可変鏡。
【請求項5】
前記距離変更手段が、両端部のピッチが異なる雄ねじが形成されたねじ部材と、前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成された前記座および前記構造部材と、により構成されるものであることを特徴とする請求項3に記載の曲率可変鏡。
【請求項6】
前記反射鏡支持脚の前記反射鏡の裏面に固定する側の端面と、前記固定部材支持脚の前記構造部材に固定する側の端面とに、矩形、円形もしくは畝状の突起部を設け、前記突起部を前記反射鏡裏面と前記構造部材とにそれぞれ固定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の曲率可変鏡。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の曲率可変鏡を用いたことを特徴とする光学装置。
【請求項8】
光学装置は、単パルス、複数パルスあるいは連続発振のレーザビームを被加工物面上で位置決め照射して、被加工物を燃焼、溶融、昇華あるいは変色させて、切断、穴あけ、溶接、熱処理、あるいはマーキングなどの加工を行うレーザ加工装置であることを特徴とする請求項7に記載の光学装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−128515(P2011−128515A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289099(P2009−289099)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】