説明

有価金属回収装置

【課題】 高品質の有価金属を効率良く回収することができる有価金属回収装置を提供する。
【解決手段】 被処理物に含まれる有価金属を回収するための有価金属回収装置1であって、燃焼室13を有する装置本体10と、燃焼室13に加熱気体を供給する燃焼バーナ20と、燃焼室13で生成された燃焼ガスを外部に排出する煙道30と、燃焼室13内に配置され、被処理物を収容する加熱容器15とを備え、加熱容器15は、有底で上部に密閉可能な開口15aを有し、燃焼室13の上部と連通する連通部153が形成されており、加熱容器15内に開口15aを介して被処理物を連続投入する投入装置42と、加熱容器15内で生成された溶湯を攪拌する攪拌装置44とを更に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物等の被処理物に含まれる有価金属を回収するための有価金属回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の産業廃棄物等の増加に伴い、貴金属、銅、アルミニウムのような有価金属を高品位且つ高歩留まりで回収することが求められている。廃棄物中に含まれる有価金属を効率良く回収することができる装置として、例えば、特許文献1に開示された有価金属回収装置が知られている。
【0003】
この有価金属回収装置50は、図4に示すように、燃焼室51を有する装置本体52と、燃焼室51に加熱気体を供給する燃焼バーナ53と、燃焼室51で生成された燃焼ガスを外部に排出する煙道(図示せず)と、燃焼室51に収容される加熱容器54とを備える。加熱容器54は、開口が蓋体55により開閉自在とされており、蓋体55を閉じた状態で燃焼室51の上部と連通する連通部56を備えている。
【特許文献1】国際公開第2006/035570号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した有価金属回収装置50は、加熱容器54内の廃棄物を還元雰囲気で燃焼することができるので、溶融する金属の酸化を抑制することができ、有価金属を効率よく回収することができる。ところが、アルミ切粉やアルミ飲料缶など比表面積が比較的大きい廃棄物の場合には、このような有価金属回収装置50を使用しても、加熱処理中に酸化して酸化物スラグを形成したり、溶解物中に酸化物を中心とする介在物が混入するおそれがあったため、高品質のアルミニウムを高歩留まり・高効率で回収する点から更に改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、高品質の有価金属を効率良く回収することができる有価金属回収装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、被処理物に含まれる有価金属を回収するための有価金属回収装置であって、燃焼室を有する装置本体と、前記燃焼室に加熱気体を供給する燃焼バーナと、前記燃焼室で生成された燃焼ガスを外部に排出する煙道と、前記燃焼室内に配置され、被処理物を収容する加熱容器とを備え、前記加熱容器は、有底で上部に密閉可能な開口を有し、前記燃焼室の上部と連通する連通部が形成されており、前記加熱容器内に前記開口を介して被処理物を連続投入する投入装置と、前記加熱容器内で生成された溶湯を攪拌する攪拌装置とを更に備える有価金属回収装置により達成される。
【0007】
この有価金属回収装置において、前記攪拌装置は、溶湯内に浸漬されて回転により溶湯に渦流を生じさせる攪拌羽根を備えることが好ましく、前記投入装置は、前記渦流内に被処理物を落下させるように配置されていることが好ましい。
【0008】
また、前記加熱容器は、下部が前記燃焼室の側壁を介して前記装置本体の外部と連通する排出流路を備え、該排出流路の先端に形成された溶湯排出口を介して溶湯を排出可能に構成することができ、この場合、前記溶湯排出口は、前記攪拌羽根よりも上方に形成されていることが好ましい。
【0009】
前記排出流路は、前記容器本体の側壁から導出され、該側壁に隣接しながら上方に延びる上方案内部を備えることができ、この場合、前記溶湯排出口は、前記上方案内部の先端に形成してもよい。
【0010】
また、前記排出流路は、前記溶湯排出口よりも下方に形成され、前記加熱容器の底部近傍と連通するメンテナンス口を備えることができる。
【0011】
これらの排出流路を備える有価金属回収装置において、前記加熱容器は、前記排出流路が一体化された黒鉛坩堝を含むように構成することができる。
【0012】
また、前記加熱容器は、前記燃焼室の上方に突出し、前記開口を密閉する筒状の予熱タワーを備えることが可能であり、この場合、前記投入装置は、前記予熱タワーに設けることができる。
【0013】
前記予熱タワーは、前記装置本体の上面に沿って移動可能に配置されていることが好ましく、この場合、前記攪拌羽根は、前記予熱タワーを移動させる際に、前記加熱容器と干渉しないように上方に待避可能であることが好ましい。
【0014】
上述した各有価金属回収装置において、前記投入装置は、被処理物を搬送するスクリューコンベアを備えることができる。
【0015】
また、上述した各有価金属回収装置において、前記燃焼室は、内部に隔壁を配置することにより、前記加熱容器を収容する第1燃焼室と、該第1燃焼室を取り囲む第2燃焼室とを備える構成にすることができる。この場合、前記加熱容器は、前記連通部を介して前記第2燃焼室と連通しており、前記燃焼バーナは、少なくとも前記第1燃焼室に配置されている構成として、前記第1燃焼室で生成された燃焼ガスが、燃焼ガス排出部を介して前記第2燃焼室に排出され、前記第2燃焼室で生成された燃焼ガスが、前記煙道を介して外部に排出されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有価金属回収装置によれば、高品質の有価金属を効率良く回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有価金属回収装置の断面図である。
【0018】
図1に示すように、有価金属回収装置1は、装置本体10と、この装置本体10に取り付けられた燃焼バーナ20及び煙道30とを備えている。
【0019】
装置本体10は、鉄製のケーシング11に耐火材12が内張りされて構成されており、この耐火材12で囲まれた空間が燃焼室13となっている。燃焼室13は、下部に排気口131が形成されており、この排気口131に煙道30が接続される。
【0020】
燃焼室13の床面には支持台14が設置されており、この支持台14に加熱容器15が載置されている。燃焼室13の側壁には、外部から燃焼用空気を導入するための給気口132が形成されている。給気口132は、本実施形態においては、平面視円形状の燃焼室13に対し周方向に沿って略等間隔に3カ所形成され、且つ、それぞれの箇所において上下3段に形成されており、各給気口132から導入される空気の流量は、給気口132に接続されるパイプに設置されたバルブ132aの開度調整により個別に制御可能である。給気口132からの燃焼用空気の導入方向は、本実施形態においては燃焼室13の径方向に略一致させているが、燃焼室13の内部で旋回流が生じ易くするために、燃焼室13の接線方向に沿って空気が導入されるように、給気口132を形成してもよい。
【0021】
給気口132から導入される空気は、常温のものに限られず、例えば、排気口131を介して排出される燃焼ガスや他の廃熱と熱交換する等して、予め加熱した空気を導入してもよい。また、給気口132の形成位置や個数などは本実施形態に限定されるものではなく、必要な空気導入量などによって適宜設定可能である。更に、後述する燃焼バーナ20から十分な空気を導入することができる場合には、必ずしも給気口132を設ける必要はない。
【0022】
支持台14は、筒状に形成され、側壁に通気部141を有しており、端面が加熱容器15の底面と当接することにより加熱容器15を支持している。通気部141は、本実施形態においては、支持台14の上下両端にそれぞれ等間隔に4カ所形成された溝部からなる。
【0023】
加熱容器15は、有底で上部に開口15aを有しており、熱伝導性が良好な材料からなることが好ましく、本実施形態においては、その主要部が、黒鉛坩堝からなる容器本体151により構成されている。黒鉛坩堝は、非鉄金属溶解用の坩堝炉に多用されており、鱗状黒鉛及び炭化珪素を主成分とし、熱伝導率が高く、かつ優れた耐酸化性、耐熱性及び耐熱衝撃性を有し、低温から高温までの広い温度範囲で優れた耐久性を発揮する。容器本体151の上部には1又は複数の溝部が形成されており、容器本体151の上端が、セラミックファイバなどのクッション材(図示せず)を介して円板状の保持体152の下面と当接することにより、前記溝部が連通部153として機能する。保持体152は、装置本体10の上面に着脱可能に固定されており、上方に突出する部分の上端面が水平面とされている。
【0024】
連通部153の大きさや数は特に限定されないが、加熱容器15で生成された塵や灰などが排出されないように、なるべく小さいことが好ましく、その数も必要最小限であることが好ましい。また、連通部153にフィルタを設けることによって、塵や灰などの排出を確実に防止してもよい。フィルタとしては、セラミックファイバなどからなるバルク状、フェルト状、シート状、メッシュ状の通気性部材を例示することができる。また、燃焼室13で生じる燃焼ガスの流れによって容器本体151内の塵灰などが飛散しないように、連通部153の周囲近傍に、必要に応じて邪魔板などを取り付けてもよい。
【0025】
連通部153は、燃焼室の上部と連通するように形成されていることが好ましいが、その形状は必ずしも本実施形態のように溝部である必要はない。例えば、加熱容器15の側壁に形成した貫通孔を連通部153とすることもできる。また、保持体152の下面に突部を設け、この突部が容器本体151の上端面と当接することにより形成された当該突部間の隙間を連通部153としてもよい。また、容器本体151の上端面と保持体152の下面との間に形成された隙間を連通部153としてもよい。
【0026】
燃焼バーナ20は、予備燃焼を行うパイロットバーナと、本燃焼を行うメインバーナとを備える公知の構成であり、燃料パイプ21及び燃焼用給気パイプ22を介してそれぞれ供給する燃料及び燃焼用空気の流量(空気比)を適宜調整することにより、燃焼負荷や燃焼温度を制御することができる。燃焼バーナ20は、燃焼室13の上部において連通部153よりも下方位置に設けられており、生成された燃焼ガスが、加熱容器15の周囲を旋回しながら排気口131から排出されるように、加熱容器15の接線方向で且つ水平方向よりも僅かに下方に向けて配置されている。燃焼バーナ20及び排気口131の配置は、必ずしも本実施形態のものに限定されないが、燃焼バーナ20から燃焼室13に供給された燃焼ガスが、燃焼室13内において十分撹拌され、且つ、排気口131から排出されるまでの燃焼時間を十分確保することができるような配置であることが好ましい。なお、燃焼室13の内部に必要に応じて撹拌板などを設け、燃焼ガスの撹拌・混合を促すようにしてもよい。
【0027】
煙道30は、排気口131から水平に延びた配管が屈曲して鉛直上方に延びるように形成されており、煙道30の一部には断面積が拡大された拡径部31が形成されている。排気口131と拡径部31との間(すなわち、拡径部31の上流側)には、ブロワなどの加圧空気供給源(図示せず)から燃焼用空気を供給可能な第2の補助給気パイプ32が設けられている。第2の補助給気パイプ32の先端部には1又は複数の給気口321が形成されており、第2の補助給気パイプ32の途中に介在された制御弁322の開度調整により、燃焼用空気を煙道30に所望の流量で供給することができる。尚、煙道30の屈曲部には、清掃用の密閉式開閉扉301が設けられている。
【0028】
拡径部31には、複数の邪魔板311が上下方向に沿って複数配置されており、排気口131から導入される燃焼ガスと、第2の補助給気パイプ32から導入される燃焼用空気とが、拡径部31の内部において十分混合・撹拌されると共に、滞留時間が確保されるように構成されている。
【0029】
また、加熱容器15は、円筒状のタワー本体41を有する予熱タワー40を備えている。予熱タワー40は、下部にローラ401を備えており、装置本体10の上面に沿って配置されたレール402上を図面の貫通方向に移動可能とされている。タワー本体41の下端は、保持体152の直上に移動させた状態で、固定手段(図示せず)により保持体152の上端に密着固定することができる。これにより、予熱タワー40は、燃焼室13の上方に突出する状態で加熱容器15の開口15aを密閉する。
【0030】
予熱タワー40は、アルミニウム切粉などの有価金属を含む廃棄物を加熱容器15内に投入するための投入装置42と、加熱容器15内で溶融した金属を撹拌する撹拌装置44と、加熱容器15内の燃焼状態を観察するための耐熱カメラ46とを備えている。
【0031】
投入装置42は、タワー本体41の側壁に対して直交する方向(水平方向)に延びるように設けられたケーシング421を備えている。ケーシング421は、廃棄物が投入されるホッパ422と、タワー本体41の中心に向けて水平に延びるスクリューコンベア423とを備えており、ホッパ422には、開閉蓋422aが取り付けられている。スクリューコンベア423は、外周面に螺旋状のスクリュー羽根423aを備えており、電動モータ424の作動によって回転することにより、ホッパ422から投入された廃棄物等の被処理物をタワー本体41に向けて押し込むように搬送する。ケーシング421の先端には、タワー本体41の内周面と中心軸線との略中間位置に開口する廃棄物排出口425が形成されており、搬送された廃棄物は、廃棄物排出口425から加熱容器15内に落下する。電動モータ424の回転速度は調整可能であり、廃棄物を加熱容器15内に連続供給する際の供給量を制御することができる。また、ケーシング422の周囲には冷却水ジャケット426が設けられており、搬送中のケーシング422内の廃棄物を冷却することができる。
【0032】
撹拌装置44は、ステンレスなどの耐熱材料からなるシャフト441の先端に、撹拌羽根442が螺合や嵌合などによって固定されており、シャフト441の基端側は、予熱タワー40の上部に形成された貫通孔40aを介して上方に突出し、電動モータ443に連結されている。撹拌羽根442は、電動モータ443の作動によりシャフト441を介して駆動力が伝達されることで、容器本体151内の下部中央において水平回転可能とされている。シャフト441は、フランジ部441aにおいて分離可能であり、貫通孔40aとの間にはシールファイバ等が介在されることにより、気密状態が保持される。シャフト441は上下方向に進退可能であり、予熱タワー40をレール402に沿って移動させる際に、撹拌羽根442を加熱容器15と干渉しないように上方に待避させることができる。
【0033】
撹拌羽根442の形状として、本実施形態ではプロペラ羽根を使用しており、容器本体151内に貯留された溶湯に渦流を生じさせることで、溶湯表面に落下した廃棄物を速やかに溶湯中に巻き込むように構成しているが、このような作用を生じさせる羽根の形状であれば特に限定されず、例えば、スクリュー羽根、タービン羽根、アンカー羽根、パドル羽根などを使用することもできる。また、本実施形態では、撹拌羽根442の枚数を4枚としているが、特に限定されず、例えば2枚や3枚などであってもよい。また、撹拌羽根442をシャフト441の軸方向に沿って複数段に設けてもよく、溶湯の粘性が高い場合に特に効果的である。
【0034】
耐熱カメラ46は、CCDカメラなどを使用することができ、加熱容器15の内部を撮像するように配置され、加熱容器15内における廃棄物の残量状態や、溶解・ガス発生などの状況を確認することができる。
【0035】
容器本体151の下部には、燃焼室13の側壁を介して装置本体10の外部と連通し、溶湯を外部に排出するための配管からなる排出流路154が接続されている。排出流路154は、水平方向に延びる水平部155と、水平部155から分岐して溶湯を上方へ案内する上方案内部156とを備えている。水平部155及び上方案内部156の先端には、それぞれメンテナンス口155a及び溶湯排出口156aが形成されており、装置本体10の側壁に形成された出湯管155b,156bを介して溶湯を外部に排出することができる。出湯管155b,156bは、それぞれ断熱性の蓋体155c,156cにより閉じられており、加熱処理中は、水平部155のメンテナンス口155aをタップ155dにより密栓すると共に、上方案内部156に対応する蓋体156cを開けることにより、出湯管156bから溶湯を外部に連続的に排出することができる。溶湯排出口156aは、攪拌羽根442を加熱容器15内の攪拌位置に配置した状態で、攪拌羽根442よりも上方に形成されている。また、タップ155dは、加熱容器15のメンテナンス時などに開放される。
【0036】
燃焼室13の各給気口132、及び、燃焼バーナ20の燃焼用給気パイプ22は、それぞれ工場エアやブロワなどの加圧空気供給源に接続される。これらは、それぞれ複数の加圧空気供給源に個別に接続するようにしてもよく、或いは、同一の加圧空気供給源から分岐して接続するようにしてもよい。
【0037】
次に、以上のように構成された有価金属回収装置1を用いて、廃棄物から有価金属を回収する方法について説明する。本実施形態の有価金属回収装置1は、油、プラスチック、有機塗料、ゴム、布、紙、木材などの可燃廃棄物を含む切粉や細断状の廃棄物(例えば、油付きのアルミニウム又は銅の切粉や、プラスチック付きのサッシ屑、缶類、金属スクラップなどが粉砕・細断されたもの)のように、細かい或いは薄いために比表面積が比較的大きい廃棄物から、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、貴金属などの有価金属を高歩留まりで回収するのに好適である。
【0038】
まず、撹拌羽根442を上方に待避させてタワー本体41を移動させることにより、容器本体151の上方を開放し、回収される有価金属と同じ材料からなるインゴットを容器本体151内に収容する。そして、タワー本体41を容器本体151の直上に移動させて密閉し、燃焼バーナ20から燃焼室13に高温の燃焼ガスを供給することにより、容器本体151内のインゴットを溶解する。燃焼室の温度は、回収する有価金属の溶融温度を考慮して適宜設定すればよく、例えば、金属廃棄物がアルミ飲料缶やアルミ切粉等のようなアルミニウム材の場合、燃焼室13の温度を約900℃に設定することができる。燃焼室13の温度は、温度センサ(図示せず)などでモニタリングしながら燃焼バーナ20におけるメインバーナ及びパイロットバーナのオン/オフ制御や、給気口132のバルブ132aの開度調整などにより、燃焼量や空気比を調節して所望の温度に設定可能である。
【0039】
インゴットが溶解され元湯が貯留されたことを耐熱カメラ46で確認した後、撹拌羽根442を降下させて溶湯内に浸漬させて撹拌装置44を作動させ、撹拌羽根442を回転する。容器本体151の溶湯は、撹拌羽根442の回転により旋回され、渦流が発生する。これにより、溶湯の液面Lは、図示のように容器本体151の内面と接する部分が持ち上げられるため、貯留された溶湯は、排出流路154の上方案内部156を経て出湯管156bに案内される。そして、蓋体156cを取り外すことにより、溶湯を外部に供給することができる。本実施形態においては、排出流路154の溶湯排出口156aが、撹拌羽根442よりも上方に形成されているため、投入装置42及び撹拌装置44を停止すると、溶湯の供給も停止される。したがって、有価金属からなる溶湯の供給及び停止を、投入装置42及び撹拌装置44の作動状態に連動させることができる。また、排出流路154の内部が溶湯により常時満たされた状態になるため、加熱容器15の内部で発生した未燃ガス等が、溶湯排出口156aから外部に放出されるのを防止することができる。
【0040】
そして、撹拌装置44の作動開始と共に、投入装置42のスクリューコンベア423を作動させ、ホッパ422から廃棄物を投入する。投入された廃棄物は、スクリューコンベア423によりタワー本体41に向けて搬送され、開口15aを介して容器本体151に落下する。開口15aは予熱タワー40により密閉されているので、容器本体151内に落下した廃棄物の燃焼に伴い、容器本体151の内部が無酸素状態又は低酸素状態となり、燃焼が還元雰囲気下で行われる。本実施形態においては、容器本体151を支持する支持台14に通気部141が形成されているので、燃焼ガスは、容器本体151の側壁だけでなく底部とも接触し、加熱容器15の全体を効率よく加熱することができる。このような加熱容器15の伝熱を利用した間接加熱により廃棄物を還元燃焼させることで、廃棄物に含まれる有価金属の酸化を抑制することができる。容器本体151には、必要に応じてヤシの実やプラスチックなどの炭化を促進する材料を投入し、還元雰囲気を強化するようにしてもよい。このように、金属廃棄物を還元雰囲気で溶融することにより、溶融金属の酸化を防ぎ、有価金属としての回収を容易に行うことができる。
【0041】
容器本体151に落下した粉砕状の廃棄物は、撹拌羽根442の回転により発生した渦流により、溶湯中に速やかに巻き込まれて潜り込んだ状態になる。この結果、廃棄物中の有価金属は外気と接触せずに溶融するため、有価金属の酸化をより確実に防止することができる。有価金属以外の油、塗料、プラスチックなどの可燃性廃棄物については、熱分解によりガス状となって放出される。投入装置42は、被処理物を溶湯中にできる限り速やかに潜り込ませることができるように、攪拌羽根442の回転による渦流内に被処理物を分散落下させるように配置されていることが好ましい。本実施形態においては、タワー本体41の内周面と中心軸線との略中間位置に廃棄物排出口425が形成されており、渦流内の溶湯面に被処理物を略均一に分散させることができる。
【0042】
また、容器本体151の内周面にリング状のガイド板を設ける等して、溶湯の表面に堆積され渦流の遠心力により径方向外方に移動する被処理物を、ガイド板の下面によって溶湯内に速やかに潜り込ませるように構成してもよい。
【0043】
燃焼室13の内部は、高温の燃焼ガスが排気口131を介して煙道30を上昇することによって負圧になるため、加熱容器15の加熱により廃棄物から発生した水蒸気や有機系物質等の未燃ガスは、連通部153から燃焼室13に導出される。この未燃ガスは、燃焼室13で燃焼されて燃焼ガスとなり、燃焼バーナ20の燃焼ガスと共に排気口131から排出される。本実施形態においては、燃焼バーナ20が排気口131よりも上方に配置されており、燃焼バーナ20から噴射される燃焼ガスが燃焼室13の壁面に沿って旋回するため、未燃ガスを燃焼室13内において十分撹拌できると共に、燃焼室13内における未燃ガスの燃焼時間を十分確保することができる。この結果、燃焼室13における未燃ガスの完全燃焼を促すことができ、排気をクリーンな状態に維持し、煙、臭気、塵灰などの排出を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、給気口132から燃焼用空気を燃焼室13に導入することができるので、燃焼バーナ20から燃焼室13に導入される空気量が不足する場合に、この不足分を補って、燃焼室13内における完全燃焼を確実にすることができる。
【0045】
燃焼バーナ20から供給される燃焼ガスの温度は、未燃ガスやダイオキシン類などの完全燃焼を促す観点から800℃以上であることが好ましく、850℃以上であることがより好ましい。燃焼温度の上限は、使用材料の耐熱性などを考慮して決定されるが、例えば、本実施形態のように黒鉛坩堝を使用する場合には、約1500℃の高温使用も可能である。
【0046】
加熱容器15が十分加熱されて、加熱容器15から燃焼室13に未燃ガスが連続的に供給される状態になると、燃焼バーナ20の燃焼量を低減することができる。例えば、燃焼バーナ20のメインバーナを停止し、パイロットバーナのみを燃焼させるようにしてもよく、或いは、燃焼バーナ20への燃料の供給を停止し、燃焼バーナ20からは常温の空気のみを供給するようにしてもよい。この際、給気口132のバルブ132aの開度を調整して、燃焼室13の内部が最適な空燃比となるように制御することができる。特に、PET樹脂や塩化ビニル樹脂などのように熱量が高い材料を含む廃棄物の場合は、大きな自己燃焼熱が得られるので、サーマルリサイクルにより、燃焼バーナ20の消費燃料を低減できると共に、排出口131から排出される高温の排気ガスをボイラや乾燥などに有効利用することができる。このように、本実施形態の有価金属回収装置は、廃棄物から有価金属を効率よく回収できるだけでなく、可燃性廃棄物の燃焼熱も資源として有効回収でき、熱エネルギの創成による応用展開も可能である。
【0047】
給気口132から燃焼室13内に導入する気体は、空気以外に、酸素など他の支燃性ガスであってもよく、これによって、燃焼室13内における完全燃焼を促すことができる。
【0048】
本実施形態の有価金属回収装置1は、還元燃焼が可能な加熱容器15内において、連続投入する廃棄物を速やかに溶湯内に潜り込ませることにより、溶湯の酸化を確実に防止して高品質の有価金属を回収できるようにしたことを特徴とするものである。したがって、大きな処理能力を得るためには、なるべく多量の廃棄物を湯面上に堆積させずに短時間で溶湯中に巻き込むことが好ましい。このためには、撹拌羽根442の回転による溶湯の旋回速度を大きくすると共に、容器本体151の内径も大きくすることが好ましい。例えば、廃棄物の最大処理能力として、約100〜3000kg/hが必要な場合、内径が、約400〜1200mmの容器本体151を使用し、溶湯の旋回速度が、最も速い最外周で約3〜30m/secとなるように、撹拌羽根442の回転速度を設定すればよい。このような撹拌羽根442の回転を実現するためには、約100〜500rpmの回転速度で回転可能な可変式回転撹拌プロペラ装置を用いることが好ましい。なお、容器本体151の内径を大きくすることは、溶湯の貯留量も大きくなって溶湯温度を維持し易いことから、安定した連続溶解処理を可能にする観点からも好ましい。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。本実施形態の有価金属回収装置1は、加熱容器15内に投入する廃棄物を溶湯中に潜り込ませて溶融するため、高品質の有価金属を高歩留まりで回収するためには、加熱容器15を十分加熱することができる構成が好ましい。そこで、図2に示すように、燃焼室1301の内部に隔壁1302を配置することにより、燃焼室1301を、加熱容器15を収容する第1燃焼室1303と、第1燃焼室1303を取り囲む第2燃焼室1304とを備える2重構造としてもよい。なお、図2において、図1に示す構成と同様の構成部分には、同一の符号を付している。
【0050】
図2に示す有価金属回収装置101は、隔壁1302の上端と保持体152の下面との間に隙間が形成されている。また、容器本体151の上端にはリング状のフランジ部1511が固定されており、フランジ部1511の外縁部が、前記隙間を介して第2の燃焼室1304に延在している。これにより、フランジ部1511と保持体152との間に、加熱容器15の内部と第2燃焼室1304とを連通する連通部1531が形成されている。連通部1531は、第1燃焼室1303を経ずに第2燃焼室1304と直接連通しており、リング状のフィルタ1531aが交換可能に配置されている。
【0051】
第1燃焼室1303の下部には、第1の燃焼バーナ201が配置され、第2の燃焼室1304の上部には、第2の燃焼バーナ202が配置されている。第1の燃焼バーナ201及び第2の燃焼バーナ202の構成は、図1に示す燃焼バーナ20と同様であるため、説明を省略する。第1の燃焼バーナ201により第1燃焼室1303で生成された燃焼ガスは、フランジ部1511と隔壁1302の上端との間に形成された燃焼ガス排出部1305を介して、第2燃焼室1304に排出される。第1燃焼室1303と第2燃焼室1304との間には、周方向に沿って複数のスペーサ1306が配置されており、第2燃焼室1304の室内が所定の大きさに保持されている。
【0052】
このように構成された有価金属回収装置101によれば、第1燃焼室1303においては、加熱容器15内で発生した未燃ガスが供給されず、しかも燃焼が必ずしも完結する必要がないので、第1の燃焼バーナ201による容器本体151の加熱効率を高めることができ、溶湯を高温に維持することができる。一方、第2燃焼室1304においては、加熱容器15内で発生した未燃ガスが、第1燃焼室1303で生成された燃焼ガスと合流し、必要に応じて給気口132から供給される空気と混合することにより、完全燃焼が促される。したがって、加熱容器15内の溶湯に対する加熱効率を良好に維持しつつ、燃焼効率を高めてクリーン燃焼を実現することができる。第1燃焼室1303の容積及び第2燃焼室1304の容積の合計は、図1に示す燃焼室13の容積と同程度でよく、コンパクトな構成を維持することができる。第1燃焼室1303及び第2燃焼室1304を備える構成において、第2燃焼室1304に配置される第2の燃焼バーナ202は必ずしも必要ではなく、第1燃焼室1303のみに第1の燃焼バーナ201を備えた構成にすることも可能である。
【0053】
また、図1に示す有価金属回収装置1において、投入装置42は、タワー本体41に対して複数設けてもよい。例えば、複数の投入装置42をタワー本体41の中心から放射状に配置することで、廃棄物を容器本体151の渦流内に均一に分散落下させることが容易になる。また、投入装置42をタワー本体41の側壁に設ける変わりに、タワー本体41の上部から被処理物が落下するように配置してもよい。
【0054】
本実施形態の有価金属回収装置1で処理する廃棄物等の被処理物は、投入装置42によるスムーズな搬送を可能にするため、必要に応じて、事前に粉砕処理を行ってもよい。或いは、投入装置42のホッパ422に粉砕装置を接続して、被処理物を粉砕装置で予め粉砕してから、投入装置42に投入されるように構成してもよい。
【0055】
また、投入装置42は、スクリューコンベア423による搬送中の廃棄物の粉砕を促すため、ケーシング421内に固定刃または回転刃を適宜配置してもよい。投入装置42の具体的な構成は、本実施形態のものに限定されず、加熱容器15内に生成される溶湯の渦流内に廃棄物等の被処理物を落下させることができるものであれば、他の構成であってもよい。例えば、切粉状、細断状の被処理物を収容した回収容器に振動を付与して、傾斜路などを介して加熱容器内に落下させる構成の投入装置を用いることもできる。
【0056】
また、図1に示す有価金属回収装置1における加熱容器15としては、黒鉛坩堝からなる容器本体151と、黒鉛坩堝材等の耐熱材料からなる排出流路154とが一体化された異形の黒鉛坩堝を使用することができる。異形の黒鉛坩堝としては、その他、例えば図3に示すように、容器本体151と一体化される排出流路1541を構成する上方案内部1561が、水平部155から分岐するのではなく、容器本体151の側壁から導出されこの側壁に隣接しながら上方に延びる構成にして、上方案内部1561の途中に形成された出湯口1562を介して溶湯を排出できるようにしてもよい。この構成によれば、上方案内部1561を通過する溶湯が、容器本体151内に貯留された溶湯から伝熱を受けるため、出湯管156bから排出される溶湯の温度を高温に維持することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、容器本体151が黒鉛坩堝により構成されているが、亜鉛や低融点アルミニウム合金材などのように溶融温度が低い金属廃棄物を溶融させる場合には、安価で熱伝導性が良好な鉄製の容器からなる容器本体151を使用することもできる。なお、容器本体151としては、その他に、耐火セラミック製や鉄以外の金属製の容器などを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る有価金属回収装置の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る有価金属回収装置の断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る有価金属回収装置の断面図である。
【図4】従来の有価金属回収装置の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 有価金属回収装置
10 装置本体
13 燃焼室
15 加熱容器
15a 開口
153 連通部
154 排出流路
155a メンテナンス口
156a 溶湯排出口
20 燃焼バーナ
30 煙道
40 予熱タワー
42 投入装置
423 スクリューコンベア
44 撹拌装置
442 撹拌羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に含まれる有価金属を回収するための有価金属回収装置であって、
燃焼室を有する装置本体と、
前記燃焼室に加熱気体を供給する燃焼バーナと、
前記燃焼室で生成された燃焼ガスを外部に排出する煙道と、
前記燃焼室内に配置され、被処理物を収容する加熱容器とを備え、
前記加熱容器は、有底で上部に密閉可能な開口を有し、前記燃焼室の上部と連通する連通部が形成されており、
前記加熱容器内に前記開口を介して被処理物を連続投入する投入装置と、
前記加熱容器内で生成された溶湯を攪拌する攪拌装置とを更に備える有価金属回収装置。
【請求項2】
前記攪拌装置は、溶湯内に浸漬されて回転により溶湯に渦流を生じさせる攪拌羽根を備え、
前記投入装置は、前記渦流内に被処理物を落下させるように配置されている請求項1に記載の有価金属回収装置。
【請求項3】
前記加熱容器は、下部が前記燃焼室の側壁を介して前記装置本体の外部と連通する排出流路を備え、該排出流路の先端に形成された溶湯排出口を介して溶湯を排出可能に構成されており、
前記溶湯排出口は、前記攪拌羽根よりも上方に形成されている請求項2に記載の有価金属回収装置。
【請求項4】
前記排出流路は、前記容器本体の側壁から導出され、該側壁に隣接しながら上方に延びる上方案内部を備え、
前記溶湯排出口は、前記上方案内部の先端に形成されている請求項3に記載の有価金属回収装置。
【請求項5】
前記排出流路は、前記溶湯排出口よりも下方に形成され、前記加熱容器の底部近傍と連通するメンテナンス口を備える請求項3又は4に記載の有価金属回収装置。
【請求項6】
前記加熱容器は、前記排出流路が一体化された黒鉛坩堝を含む請求項3から5のいずれかに記載の有価金属回収装置。
【請求項7】
前記加熱容器は、前記燃焼室の上方に突出し、前記開口を密閉する筒状の予熱タワーを備え、
前記投入装置は、前記予熱タワーに設けられている請求項1から6のいずれかに記載の有価金属回収装置。
【請求項8】
前記予熱タワーは、前記装置本体の上面に沿って移動可能に配置されており、
前記攪拌羽根は、前記予熱タワーを移動させる際に、前記加熱容器と干渉しないように上方に待避可能である請求項7に記載の有価金属回収装置。
【請求項9】
前記投入装置は、被処理物を搬送するスクリューコンベアを備える請求項1から8のいずれかに記載の有価金属回収装置。
【請求項10】
前記燃焼室は、内部に隔壁を配置することにより、前記加熱容器を収容する第1燃焼室と、該第1燃焼室を取り囲む第2燃焼室とを備え、
前記加熱容器は、前記連通部を介して前記第2燃焼室と連通しており、
前記燃焼バーナは、少なくとも前記第1燃焼室に配置されており、
前記第1燃焼室で生成された燃焼ガスが、燃焼ガス排出部を介して前記第2燃焼室に排出され、前記第2燃焼室で生成された燃焼ガスが、前記煙道を介して外部に排出されるように構成された請求項1から9のいずれかに記載の有価金属回収装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−82640(P2008−82640A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264483(P2006−264483)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(592134871)日本坩堝株式会社 (31)
【Fターム(参考)】