説明

有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法、有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置、および、ニードル

【課題】有機EL表示装置を効率的に製造する。
【解決手段】
少なくとも第1の電極層表面を撮像して画像上から異物を検出し、当該異物に対して液状材料を塗布する修正装置600を提供する。修正装置600は、撮像カメラ631によって基板を撮像する撮像装置602と、撮像された画像から異物を検出して、その位置を特定する制御装置601と、異物が検出された位置に液状材料340を塗布する塗布装置603と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法、有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置、および、ニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子を利用した表示装置は、自発光特性が持つ高輝度特性や、ダイオード素子特有の高速応答性などの優れた性能によって、フラットパネルディスプレイ市場の中でもそのニーズや期待が高まっている。また、これまでは主として携帯電話用や携帯端末、あるいは、デジタルスチルカメラモニタ用などの小型ディスプレイとして市場に投入されてきたが、近年ではテレビへの需要の高まりもあり、対角寸法で20インチを超える製品も市場に出回っている。
【0003】
ところで、有機エレクトロルミネセンス素子の有機発光層に異物が含まれていると、その有機発光層を挟む電極(金属電極、透明電極)間の短絡等により、欠陥画素(発光不良画素、発光しない画素等)が発生する。このような欠陥画素を修正する技術には、各積層膜を成膜後に、フォトリソ工程で生じた画素パターンの欠陥部にレーザ光を照射して周辺部分ごと欠陥を除去し、絶縁膜を埋め込んで局所的に成膜する方法が知られている。
【0004】
しかしながらこのような修正技術では、絶縁膜として微少量の液滴を正確な位置に供給する必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、圧力制御により、一定量の液体をシリンジおよび中空ニードルから吐出させる、液体定量吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−056271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述のような吐出装置では、液体材料の量制御をピストンやスクリュー等により行うため、その性質上、例えば吐出量を数ピコリットルオーダーで制御することは難しく、塗布量にばらつきが生じてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、有機エレクトロルミネセンス表示装置を効率的に製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置は、有機エレクトロルミネセンス表示装置の異物による短絡を、効率的に修正する技術を提供する。
【0010】
例えば、基板上に第1の電極層および第2の電極層により挟まれる有機発光層を有する有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、少なくとも前記第1の電極層表面を撮像するための撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像から異物を検出して、その位置を特定する制御手段と、特定された前記位置に、非導電性の液体材料を塗布する塗布手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機エレクトロルミネセンス表示装置を効率的に製造する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により製造(修正)された有機EL表示装置300の平面図、(b)は、図1(a)に示す有機EL表示装置300のB−B’線断面を矢示方向から見た場合の断面図である。
【図2】有機EL表示装置300の製造方法について、その製造工程を説明するフローチャートである。
【図3】修正装置600の構成を示す概略図である。
【図4】液量規定ニードル400の断面図である。
【図5】液量規定ニードル500の断面図である。
【図6】制御装置601の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】制御装置601の電気的な構成を示すブロック図である。
【図8】(a)は、有機EL表示装置100の平面図、(b)は、(a)に示す有機EL表示装置100のA−A’線断面を矢示方向から見た場合の断面図である。
【図9】有機EL表示装置100の従来の製造方法について、その製造工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
まず、本発明のさらなる理解のため、従来の有機エレクトロルミネセンス表示装置(以下、有機EL表示装置と称する)の製造方法について説明する。
【0015】
図8(a)に、有機EL表示装置100の平面図、図8(b)に、図8(a)に示す有機EL表示装置100のA−A’線断面を矢示方向から見た場合の断面図を示す。図9は、有機EL表示装置100の従来の製造方法について、その製造工程を説明するフローチャートである。
【0016】
まず、基板110の一方の面(以下、裏面と称する)110a内においてマトリクス状に定められた複数の画素領域200に、それぞれ、画素を駆動するための駆動回路層120が形成される(ステップS101)。
【0017】
次に、各駆動回路層120上に、それぞれ、可視光領域で光学的に透明な第1電極130が成膜される(ステップS102)。
【0018】
そして、各第1電極130上に、それぞれ、有機発光層140が成膜され(ステップS103)、さらに、各有機発光層140上に、それぞれ、可視光領域において不透明な金属膜が、第2電極150として成膜される(ステップS104)。
【0019】
ここで、上記のように形成された積層膜170において、第1及び第2の電極130および150間に直流電流が流されると、それら電極間に挟まれた有機発光層140が発光する。発光した光Lは、基板110の他方の面(以下、表面と呼ぶ)110b側から出射される。
【0020】
しかしながら、このような通電を大気中で行うと、大気中の水分及び汚染物質が積層膜170に侵入して、積層膜170の発光特性が徐々に劣化する。よって、積層膜170を大気から隔離するために、裏面110a側を大気から隔離した環境下で、積層膜170が封止缶等の封止材160により封止される(ステップS105)。
【0021】
その後、予め定めた検査環境下、所定の距離での正面視により、有機EL表示パネルの点灯検査が行われ(ステップS106)、問題が無ければ、有機EL表示装置100が完成する。
【0022】
ここで、点灯検査の結果、すべての画素領域200が問題なく点灯することが理想的であるが、現実には途中の製造工程中で何らかの欠陥が発生し、すべての画素領域200が完全に点灯しない場合が発生する。このような欠陥は、有機発光層の上下に位置する電極が異物による短絡が主要因となることが多い。
【0023】
このような場合、欠陥のある有機EL表示装置は廃棄されるか、欠陥のある画素領域200にレーザを照射して異物を除去する、レーザリペア処理が施される(ステップS107)。
【0024】
ところで、発明者らの研究の結果、欠陥の要因となる有機発光層中に存在する異物は、有機発光層を成膜する以前、すなわち、第1の電極130を成膜した後に、第1の電極130上に付着することによってもたらされていることが判明した。
【0025】
そこで、本発明に係る有機エレクトロルミネセンスの製造方法では、第1の電極130上の異物による欠陥を、有機発光層140の成膜よりも前の段階で修復する。
【0026】
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法について、ボトムエミッション型の有機ELを製造対象とする場合を例に挙げて説明する。
【0027】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により製造(修正)された有機EL表示装置300の平面図、図1(b)は、図1(a)に示す有機EL表示装置300のB−B’線断面を矢示方向から見た場合の断面図である。
【0028】
なお、図1(a)および図1(b)では、基板310上の一つの画素領域301についてのみ示している。
【0029】
また、図2は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置300の製造方法について、その製造工程を説明するフローチャートである。
【0030】
まず、基板310の裏面310a内のマトリクス状に定められた複数の画素領域301(図1には一つのみ記載)に、画素を駆動するための駆動回路層320を形成する(ステップS301)。
【0031】
次に、各駆動回路層320上に、第1電極330を成膜する(ステップS302)。
【0032】
ここで、第1の電極330上にある異物を判定するために、対象となる基板(以下、「基板」とは基板上に積層された層をも含んだ総称とする)表面の全領域にわたり異物検査を行う(ステップS303)。
【0033】
異物検査はどのような方法により行っても良いが、例えば、光の散乱により異物380を検出し、当該異物の存在する座標を記録しておく事で、後に修正が施される位置を決定しておく。なお、ステップS303で異物380が発見されなかった場合には、ステップS305へと進む。
【0034】
ステップS303で異物380が発見された場合には、まず、異物検査で検出された座標上に存在する異物380表面に非導電性の液体材料340を塗布して(ステップS304)、異物による欠陥を予め修正する。このような絶縁被覆処理によって、第1電極330と第2の電極360の間の短絡を抑制することが可能である。
【0035】
その後、第1電極330上に、有機発光層350を成膜し(ステップS305)、さらに、各有機発光層350上に第2電極360を成膜する(ステップS306)。
【0036】
次に、積層膜370が形成された裏面310a側を、封止缶等の封止材(不図示)により封止する(ステップS307)。
【0037】
その後、有機EL表示パネルの点灯検査が行われ(ステップS308)、有機EL表示装置300が完成する。
【0038】
なお、異物の検出および修正は、第1の電極130が形成されている座標に対してのみ行っても良い。
【0039】
以上、本実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法について説明した。このように形成された有機EL表示装置300の積層膜370では、第1の電極330及び第2の電極360間に直流電流が流されると、異物380が存在した場合でも電極330と360とに挟まれた有機発光層350が発光する。
【0040】
従って、本実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法によれば、異物による欠陥を製造工程中で修正ことができるため、有機EL表示装置を効率的に製造することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置300の修正装置600について、図3を参照しながら説明する。修正装置600は、第1の実施形態に係る製造方法において、異物380の検出、および、非導電性の液体材料340の塗布に使用され、異物による欠陥を修正するための装置である。
【0041】
図3は、本実施形態に係る修正装置600の構成を示す概略図である。
【0042】
修正装置600は、ステージ650上に固定される基板640の欠陥(異物)に液体材料340を塗布するための塗布装置602と、基板640(以下、「基板」とは基板上に積層された層をも含んだ総称とする)表面の異物を検出するための撮像装置603と、塗布装置602および撮像装置603を制御するための制御装置601と、を備えている。
【0043】
塗布装置602は、液量規定ニードル400と、バルブ621と、アクチュエータ622と、高さセンサ623と、非導電性の液体材料340が貯留される液壷624と、を備えている。
【0044】
まず、液量規定ニードル400について、図4を参照しながら、詳細に説明する。
【0045】
図4に、本実施形態に係る液量規定ニードル400の断面図を示す。
【0046】
液量規定ニードル400は、中空の円筒であるニードル本体410と、ニードル本体410に嵌め込まれた先端部材420と、からなる。
【0047】
また、ニードル本体410の入口側開口Iには、バルブ621が接続されている。
【0048】
バルブ621からは、矢印P方向に加圧された気体が給気されて、当該気体の圧力により先端部材420の出口側開口Oに保持されている液滴の脱離(液離れ)を促す構成となっている。
【0049】
ニードル本体410は、筒状部材411と、被膜430と、からなる。
【0050】
筒状部材411は、長手方向に貫通する、気体を通過させるための貫通孔440が設けられた中空の円筒である。
【0051】
なお、筒状部材411には、例えば、ガラス、金属材料、樹脂材料、セラミックスなど、十分な強度と耐久性が得られるものであれば、どのような素材を選択しても構わない。
【0052】
また、筒状部材411には、全面に撥液性の被膜430が成膜されている。
【0053】
被膜430の形成方法としては、フッ素を含む有機物を溶媒に溶かし、これを塗布またはその溶液に漬け込んだ後、乾燥させることで行う。なお、撥液性(液体材料340に対して高い撥水性を有している程良い)を示すものであればフッ素を含む有機物に限らず、どのような材料を用いても良い。例えば、金属や合金等によるめっきとしても良い。
【0054】
先端部材420は、液体保持部材421と、被膜480と、からなり、貫通孔440の気体の出口側に、その底面401よりも突出するよう嵌め込まれて固定されている。
【0055】
ニードル本体410および先端部材420の固定は、液体材料340が化学反応を起こして両者に影響がなければ、接着剤を用いることができる。
【0056】
接着剤を用いない場合には、ニードル本体410の内径よりも先端部材420の外径を大きくし、焼きばめ、冷やしばめ等によって固定しても良い。
【0057】
さらに、ニードル本体410を加熱等により一旦軟化させ、先端部材420を融着しても良い。
【0058】
もちろん、上記の固定方法に限らず、先端部材420が中空に供給される気体の圧力でニードル本体410から外れたり、また、嵌め合わせ部から気体が漏れ出したりしなければ、どのような方法を用いても良い。
【0059】
液体保持部材421は、その長手方向を貫通し、ニードル本体410からの気体を通過させるための貫通孔490が設けられた中空の円筒である。
【0060】
なお、貫通孔490は、数umの直径でアスペクト比10未満であれば、ドリルでの精密加工が可能である。
【0061】
また、液体保持部材421には、どのような材料を用いてもよい。筒状部材411と同じ材質に限らず、例えば、アルミナやジルコニアなどのセラミックス材料を用いてもよく、また、金属材料でも構わない。
【0062】
さらに、液体保持部材421には、その気体の出口側底面(以下、液体接触部470と称する)を除く全面に、液体保持部材421よりも液体材料340に対して高い撥液性を有する(すなわち、液体材料340の接触角θが大きい)被膜480が形成されている。
【0063】
液体保持部材421の液体接触部470は、撥水性の被膜480を、被膜430と同様の方法で液体保持部材421の全面に形成してから、気体の出口側底面を精密研磨で研削することで形成することができる。もちろん、研磨以外の方法によって、被膜480を除去しても良い。
【0064】
すなわち、液体接触部470とは、被膜480で覆われておらず、液体保持部材421が露出している部分である。よって、被膜480が形成されている部分に比べ液体材料340に対する撥水性が低い(すなわち、液体材料340の接触角θが小さい)。
【0065】
なお、撥水性については、接触角により評価できる。例えば、被膜430および被膜480の液体材料340に対する接触角は、90度以上であることが望ましい。また、液体保持部材421の液体材料340に対する接触角は、90度未満(すなわち、親水性)であることが望ましい。
【0066】
このような構成によれば、液体材料340の液滴460は、液体保持部材421の中空内周面や外周面を覆う被膜480や、ニードル本体410の被膜430を避け、そのほとんどが親水性の液体接触部470にのみ付着して、液滴460を形成する。よって、その付着量を再現性良く管理することができる。
【0067】
また、ここでは被膜480は、液体保持部材421の上面をも覆う構成としているが、少なくとも外周面および中空内周面を覆っていれば良い。
【0068】
さらに、ニードル本体410を設けずに、先端部420のみでニードルを構成することも可能である。
【0069】
なお、液滴460の付着量は、液体保持部材421および貫通孔490の径、被膜480の厚さ、材質、および、その接触角θにより調整することができる。
【0070】
以下、液体保持部材の径を小さくした液量規定ニードルの例について、図5に示す。
【0071】
図5は、液量規定ニードル500の断面図である。
【0072】
液量規定ニードル500は、液量規定ニードル400と比較して、先端部材520の形状が異なる。
【0073】
先端部材520の液体保持部材521は、ニードル本体410への嵌め合せ部から気体出口側開口Oへと近づくにつれ、斜面561により漸次その外径が絞られ、嵌め合せ部の外径465よりも底面の外径565が小さくなっている。
【0074】
このような先端部材520では、その液体接触部570の面積が、上述の液体接触部470よりも小さくなっているため、より少量の液滴560を保持することができる。
【0075】
塗布装置602の説明に戻る(図3)。
【0076】
バルブ621は、液量規定ニードル400の入口側開口Iと接続されており、圧空制御部614からの命令を受けると、加圧手段により液量規定ニードル400へと所定の間、加圧された気体(ここでは、空気)を供給する。
【0077】
アクチュエータ622は、駆動制御部613からの命令を受け付けて、液量規定ニードル400および高さセンサ623を基板位置に対応するX(右左)方向、Y(前後)方向、Z(上下)方向へと変位させて、その座標位置を変更する。
【0078】
高さセンサ623は、基板640表面までの高さを光学的に測定して、そのZ座標を検出する。なお、高さセンサ623は、液量規定ニードル400と一体に構成されており、両者の存在するXY座標は常に同じである。
【0079】
液壷624には、液体材料340が貯留されている。なお、液壷624は、溶媒の揮発による濃度変化を防ぐために、液量規定ニードル400を挿入出可能な孔が設けられた蓋625を有する。
【0080】
また、液壷624は、内部の液体材料340を撹拌するための撹拌子(図示しない)を有していても良い。
【0081】
なお、塗布装置602の非稼働時には、液量規定ニードル400は、液壷の蓋625の孔に差し込まれた状態で維持されることが望ましい。これにより、先端部材420の乾燥を抑えることが可能である。
【0082】
撮像装置603は、撮像カメラ631と、検出系632と、照明系633と、アクチュエータ634と、を備えている。
【0083】
撮像カメラ631は、検出系632によって拡大された基板640の表面を、2次元撮像する。
【0084】
検出系632は、結像レンズ、対物レンズ等を備え、所定の光学倍率で基板640表面を拡大し、撮像カメラ631に撮像させる。
【0085】
照明系633は、ミラーおよび照明光源等を備え、観察光軸に対する照明光束の入射角を一定の角度に調節して、検出系632へと入射させる。
【0086】
このように、照明系633が照明する基板640表面を検出系632が拡大・集光し、撮像カメラ631がその反射散乱光を撮像する。その結果、画像上で異物を反射散乱光の輝点として顕在化することが可能である。
【0087】
アクチュエータ634は、駆動制御部613からの命令を受け付けて、撮像カメラ631、検出系632、および、照明系633を移動させ、そのXYZ座標を変更する。
【0088】
制御装置601は、制御部610と、記憶部620と、を有する。
【0089】
記憶部620は、画像情報記憶領域615と、異物情報記憶領域616と、を有している。
【0090】
画像情報記憶領域615には、撮像位置のXY座標を示す情報と対応付けられた撮像画像が、画像情報として記憶される。
【0091】
異物情報記憶領域616には、異物が検出された画像の撮像位置のXY座標が、異物情報として記憶される。
【0092】
制御部610は、画像解析部611と、塗布制御部612と、駆動制御部613と、圧空制御部614と、を備えている。
【0093】
駆動制御部613は、アクチュエータ622および634を制御する。
【0094】
画像解析部611は、撮像装置603から撮像画像を取得して、当該画像から異物の位置を特定する。
【0095】
具体的に、画像解析部611は、撮像装置603に基板状の所定の撮像座標を撮像させ、当該画像上に存在する異物を検出する。この処理は、例えば、予め定められた閾値(例えば、10階調)で撮像画像を2値化し、各輝点(孤立点)を異物として検出することで実現可能である。
【0096】
画像上に異物が検出された場合、画像解析部611は、当該画像の撮像位置のXY座標(X,Y)を、異物情報として記憶部620の異物情報記憶領域616へと記憶させる。
【0097】
塗布制御部612は、上記特定された位置の異物に対し、塗布装置602に液状材料を塗布させる。
【0098】
具体的に、塗布制御部612は、まず、高さセンサ623および液量規定ニードル400を、同様に異物の上方へ移動させる。例えば、塗布制御部612は、異物情報記憶領域616から異物情報を読み出し、駆動制御部613に、異物の存在するXY座標(X,Y)で、かつ、高さセンサ623の測定する基板640表面までの距離が、予め定められた所定の値Dとなる位置(X,Y,Z)まで、高さセンサ623を移動させるよう要求する。
【0099】
なお、この際、高さセンサ623と一体型の液量規定ニードル400も、同様に異物の上方へ移動する。また、液量規定ニードル400は、予め液壷624中の液体材料340に先端部材420を浸した状態で保持されていたものとする。
【0100】
移動が終了すると、次に、塗布制御部612は、液量規定ニードル400を異物に液体材料340を塗布するのに最適な位置である塗布位置まで降下させる。例えば、塗布制御部612は、駆動制御部613に、高さセンサ623と基板640表面までの距離が、値Dよりも小さな所定の値Dとなる位置(X,Y,Z)まで、高さセンサ623を降下させるよう要求する。なお、Dは、液量規定ニードル400の液体接触部470が、異物に液体材料340を塗布するのに最適な位置である塗布位置(X,Y,Zδ)に配置されるよう調整された任意の値である。
【0101】
高さセンサ623と基板640表面までの距離が所定の値Dに達し、液量規定ニードル400が塗布位置に移動し終えると、塗布制御部612は、圧空制御部614に気体の供給命令を出力する。
【0102】
圧空制御部614は、バルブ621を所定の時間開放させ、ニードル本体410の入口側開口Iへと加圧された気体を供給する。当該気体の圧力により先端部材420の保持する液滴は液体接触部470から脱離し、異物380を覆って欠陥を修復する。なお、塗布の際さらに液離れを促進するため、ステージ650に移動手段を設け、これを上昇させてもよい。
【0103】
また、上記処理は、各基板を同じ姿勢に固定して行うことが望ましい。そのためには、例えば、ステージ650には位置決めピンなどを設けて、基板640の端面を押付けて位置決めをしておくとよい。また、ステージ650に基板640を真空吸着できるような孔および溝を設けておけば、基板640を所定の位置で確実に固定することが出来る。
【0104】
さらに、基板640が所定の位置に固定されているか否かは、例えば、撮像装置603により基板640を撮像し、そのアライメントが予め用意された所定の基準画像と合致するか否かを判断することで確認できる。
【0105】
ここで、制御装置601のハードウェア構成について説明する。図7は制御装置601の電気的な構成を示すブロック図である。
【0106】
図7に示すように、制御装置601は、各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)901と、各種データを書換え可能に記憶するメモリ902と、各種のプログラム、プログラムの生成するデータ等を格納する外部記憶装置903と、これらを接続するバス904と、を備える。制御装置601は、例えば、外部記憶装置903に記憶されている所定のプログラムを、メモリ902に読み込み、CPU901で実行することにより実現可能である。
【0107】
なお、上記した各構成要素は、制御装置601の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。制御装置601が行う処理は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0108】
また、各機能部は、ハードウエア(ASICなど)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が一つのハードウエアで実行されてもよいし、複数のハードウエアで実行されてもよい。
【0109】
以上のように構成される本実施形態にかかる制御装置601を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図6は、本実施形態に係る制御装置601の実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0110】
画像解析部611は、まず、撮像装置603に、所定の撮像座標を撮像させる(ステップS701)。
【0111】
具体的に、画像解析部611は、駆動制御部613に、撮像装置603を所定の撮像座標(X,Y,Z)へと移動させるよう命令する。なお、撮像座標は、基板に対する全撮像座標が、その撮像順と共に予め記憶部620に記憶されているものとする。また、第1の電極が形成される座標のみが撮像座標と記憶されていても良い。
【0112】
駆動制御部613は、アクチュエータ634を制御して、撮像装置603を所定の座標へと移動させ、移動の終了と同時に画像解析部611に移動終了応答を出力する。画像解析部611は、移動終了応答を受け付けると、撮像装置603に撮像命令を出力して、撮像カメラ631から出力される撮像画像を取得する。そして、当該画像を、その撮像位置のXY座標を示す情報と対応付けて、画像情報として画像情報記憶領域615へと記憶させる。
【0113】
次に、画像解析部611は、撮像画像から異物が検出されるか否かを判断する(ステップS702)。
【0114】
具体的に、画像解析部611は、撮像画像を所定の閾値で2値化し、画像上の異物を輝点(孤立点)として顕在化して異物を認識する。異物が存在した場合には(YES)、画像解析部611は、当該異物が存在する画像の撮像位置のXY座標(X,Y)を、異物情報として異物情報記憶領域616へと記憶させる。そして、塗布制御部612に修正命令を出力してステップS703へと進む。異物が存在しなかった場合には(NO)、次の撮像座標を記憶部620から読み込み(ステップS707)、ステップS701へと戻って処理を繰り返す。
【0115】
塗布制御部612は、画像解析部611からの修正命令を受け付けると(ステップS702でYES)、高さセンサ623および液量規定ニードル400を、異物の上方へ移動させる(ステップS703)。
【0116】
具体的に、塗布制御部612は、異物情報記憶領域616から異物情報を読み出し、駆動制御部613に、異物の存在する座標(X,Y)で、かつ、高さセンサ623の測定する基板640表面までの距離が予め定められた所定の値Dとなる座標(X,Y,Z)へと、高さセンサ623を移動させるよう命令する。
【0117】
駆動制御部613は、アクチュエータ622を制御して、高さセンサ623を座標(X,Y,Z)へと移動させる。もちろん、液量規定ニードル400も同様のXY座標へと移動する。また、液量規定ニードル400は、予め液壷624中の液体材料340に先端部材420を浸した状態で保持されていたものとする。移動が終了すると、駆動制御部613は、塗布制御部612に移動終了応答を出力する。
【0118】
次に、塗布制御部612は、液量規定ニードル400を、好適な塗布位置(X,Y,Zδ)まで降下させる(ステップS704)
具体的に、塗布制御部612は、移動終了応答を受け付けると、さらに駆動制御部613に、高さセンサ623の測定する基板640表面までの距離が、所定の値Dとなる座標位置(X,Y,Z)へと、高さセンサ623を移動させるよう命令する。
【0119】
駆動制御部613は、アクチュエータ622を制御して、高さセンサ623を座標(X,Y,Z)へと移動させる。なお、液量規定ニードル400の液体接触部470は、塗布位置(X,Y,Zδ)へと移動する。これが終了すると、駆動制御部613は、塗布制御部612に移動終了応答を出力する。
【0120】
塗布制御部612は、移動終了応答を受け付けると、液量規定ニードル400に気体を供給させる(ステップS705)。
【0121】
具体的に、塗布制御部612は、駆動制御部613からの移動終了応答を受け付けると、圧空制御部614に気体の供給命令を出力する。圧空制御部614は、バルブ621を所定の時間開放させ、ニードル本体410の入口側開口Iへと加圧された気体を供給する。当該気体の圧力により先端部材420の保持する液滴は液体接触部470から脱離し、異物380を覆って欠陥を修復する。圧空制御部614は、気体の供給が終了すると、塗布制御部612へと塗布終了応答を出力する。塗布制御部612は、塗布終了応答を受け付けると、駆動制御部613に、液量規定ニードル400を所定の位置(液壷中)へと戻すよう命令する。
【0122】
次に、塗布制御部612は、記憶部620に記憶される全座標で異物の検出および修正が終了したか否かを判断して(ステップS706)、終了していない場合には(NO)、次の撮像座標を記憶部620から読み込み(ステップS707)、ステップS701へと戻って処理を繰り返す。終了している場合には(YES)、処理を終了する。
【0123】
このようにして、制御装置601は、第1の電極を形成した段階で、基板640上の異物を検出および修正する。
【0124】
なお、上記したフローの各処理単位は、制御装置601の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。構成要素の分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。修正装置600の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分割することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0125】
以上、修正装置600が、基板640上の欠陥を修正する一実施例について説明した。
【0126】
本発明の修正装置600によれば、液量規定ニードル400を使用することで、従来の中空ニードルやピン等で生じてしまう先端に形成される液滴のメニスカス変化による塗布量のばらつきを抑えることが可能である。
【0127】
また、撥水性に部分的な差を設けた液量規定ニードル400では、撥液処理が施されていない範囲でのみ液体材料が保持され、撥液処理が施されている部分には液残りが生じない。よって、微量の液滴を、常に一定量保持できるため、再現性よく液状材料を塗布することが可能である。
【0128】
さらに、第1の電極を形成した段階で異物による欠陥を修復できるため、積層膜を封止してからのレーザリペアによる弊害、例えば、異物にレーザを照射した際に異物や異物のフラグメントが飛散し、再度基板に付着するという問題を回避することができる。もちろん、欠陥による廃棄の必要もなくなるため、効率的な製造が可能となる。
【0129】
さらに、本発明は、上記のような実施形態には制限されない。上記の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0130】
例えば、中空ニードルに替えて、ピンを用いても良い。
【0131】
なお、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0132】
300:有機EL表示装置、301:画素領域、310:基板、310a:裏面、320:駆動回路層、330:第1電極、340:液体材料、350:有機発光層、360:第2の電極、370:積層膜、380:異物、400:液量規定ニードル、410:ニードル本体、411:筒状部材、420:先端部材、421:液体保持部材、430・480:被膜、440:貫通孔、460:液滴、465:外径、470:液体接触部、480:被膜、490:貫通孔、600:修正装置、601:制御装置、602:塗布装置、603:撮像装置、610:制御部、611:画像解析部、612:塗布制御部、613:駆動制御部、614:圧空制御部、620:記憶部、621:バルブ、622:アクチュエータ、623:高さセンサ、624:液壷、625:蓋、631:撮像カメラ、632:検出系、633:照明系、634:アクチュエータ、640:基板、650:ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に積層膜が成膜される有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法であって、
基板上に、駆動回路層を形成するステップと、
前記駆動回路層上に、第1の電極層を形成するステップと、
少なくとも前記第1の電極層表面を撮像するステップと、
撮像した画像から異物を検出して、その位置を特定するステップと、
特定した前記位置に、非導電性の液体材料を塗布するステップと、
前記第1の電極層上に、有機発光層を形成するステップと、
前記有機発光層上に、第2の電極層を形成して、積層膜を完成させるステップと、
前記積層膜を封止するステップと、を実行すること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法。
【請求項2】
基板上に第1の電極層および第2の電極層により挟まれる有機発光層を有する有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
少なくとも前記第1の電極層表面を撮像するための撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から異物を検出して、その位置を特定する制御手段と、
特定された前記位置に、非導電性の液体材料を塗布する塗布手段と、を備えること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置。
【請求項3】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
前記塗布手段は、
一方の先端に前記液状材料の液滴を保持する中空のニードルと、
他方の先端から中空内へ加圧した気体を供給する給気手段と、をさらに備え、
前記ニードルの前記一方の先端の底面は、外周面および中空内周面よりも、前記液体材料に対する接触角が小さいこと
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置。
【請求項4】
請求項3に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
前記底面の前記液体材料に対する接触角が90度以上であって、
前記外周面および中空内周面の前記液体材料に対する接触角が90度未満であること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のエレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
前記ニードルは、
中空の液体保持部材と、当該液体保持部材の前記底面を除いて、少なくとも外周面および中空内周面を覆う被膜と、により構成されていること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
前記被膜は、フッ素を有する有機物からなること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の修正装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のエレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
前記液体保持部材は、セラミックスであること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造装置。
【請求項8】
請求項3から7の何れか一項に記載のエレクトロルミネセンス表示装置の修正装置であって、
前記塗布手段は、
前記給気手段により、前記底面に液状材料を保持した状態の前記ニードルに気体を供給させて、前記底面から液状材料を脱離させること
を特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造装置。
【請求項9】
液状材料を塗布するための中空のニードルであって、
前記液状材料の液滴を保持する一方の先端の底面は、外周面および中空内周面よりも、前記液体材料に対する接触角が小さいこと
を特徴とするニードル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−108369(P2011−108369A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258959(P2009−258959)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】