説明

有機半導体材料、それを用いた電界効果型トランジスタ及びその製造方法

【課題】 ウェットプロセスによる簡便な方法で素子を作製でき、キャリア移動度が高い有機半導体材料を提供する。
【解決手段】 下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体と、下記一般式(II)で示される化合物を主成分とすることを特徴とする有機半導体材料。


〔(I)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar、Arはそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、単環式、非縮合多環式または縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表わす。Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。〕


〔(II)式中m、nは0または1の整数、Ar11、Ar13は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar12は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基を表わし、R、Rはアルキレン基を表わす。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高移動度な有機半導体材料に関し、さらに詳しくは有機トランジスタ用材料、有機EL素子用材料等として有用な高移動度な有機半導体材料に関する。また本発明は、該有機半導体材料を有機半導体層として有する電界効果型トランジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機活性層を備えた電界効果型薄膜トランジスタ(TFT)は、シリコンベースTFTの安価な代替品として近年大きな注目を集めてきている。有機材料を用いてデバイスを構成することにより、印刷法、スピンコート法、浸漬法などの湿式法により簡便に回路を形成することが可能となる。すなわちシリコンベースTFTの製造プロセスで必要とされるコストのかかる工程を経ることなくデバイスを製造することが可能であり、製造コストの大幅なコストダウンや大面積化等が期待される。加えて有機材料ベースのデバイスの利点には機械的フレキシビリティー、軽量化という点も挙げられる。現状、有機材料はキャリアの移動度の観点からは無機半導体材料の性能には及ばないものの、これらの利点により、有機半導体デバイスは大きな注目を集めている。
【0003】
有機TFTの構成とその動作について説明する。図1(A)(なお、図1(A)は本発明の有機薄膜トランジスタの構成例であるが、材料以外の構造に関する説明を、図1(A)を借りて説明する)は、代表的な有機TFTの断面図である。
図1(A)中の一対の電極(ソース電極およびドレイン電極)の間に電圧をかけると、有機半導体層を通じてソース電極とドレイン電極の間に電流が流れる。この際、絶縁層により有機半導体層と隔てられたゲート電極に電圧を印加すると、電界効果によって有機半導体層の電導度が変化し、したがってソース・ドレイン電極間に流れる電流を変調することができる。これは絶縁層に近接する有機半導体層内の蓄積層の幅がゲート電圧によって変化し、チャネル断面積が変化するためであると考えられている。
【0004】
このような有機TFTの半導体材料としては、例えば低分子材料ではペンタセン(Synth.Met.,51,419,1992)、フタロシアニン(Appl.Phys.Lett.,69,3066,1996.)、フラーレン(特許文献1、Appl.Phys.Lett.,67,121,1995.)、アントラジチオフェン(特許文献2)、チオフェンオリゴマー(特許文献3、Chem.Mater.,4,457,1998.)、ビスジチエノチオフェン(Appl.Phys.Lett.,71,3871,1997.)などが、また高分子材料ではポリチオフェン(Appl.Phys.Lett.,69,4108,1996.)、ポリチエニレンビニレン(Appl.Phys.Lett.,63,1372,1993.)、ポリアリールアミン(特許文献4)などの幾つかの材料が提案されている。
【0005】
上記の材料は、TFTデバイス用の有機半導体として魅力的なキャリア移動度を有している。しかし、商用としての有機半導体を用いたTFTデバイスに適用するには、これらの材料を幾つかの点で改良することが求められている。例えば、ペンタセンは約1cm/Vsの移動度を有すると報告されている。しかし、ペンタセンは溶媒に難溶性であり、ペンタセンのフィルムを溶液から形成することは困難である。また、ペンタセンは、酸素を含有する雰囲気下では経時酸化する傾向があり、酸化に対して不安定である。同様にフタロシアニン、フラーレンなども溶媒への溶解性が低く、一般に真空蒸着法を用いて半導体層を作製せねばならず、製造工程の低コスト化、大面積化等の有機ベースのデバイスに特徴的な恩恵を享受することができない。加えて、これら材料には基板の変形によって膜の剥がれ、割れ等が生じる場合があるという問題もある。
【0006】
また、湿式塗工が可能である材料としてポリアルキルチオフェン系材料(Appl.Phys.Lett.,69,4108,1996.)が注目されているが、デバイスのオンオフ比が低いことや、酸化されやすく特性が経時変化してしまうという欠点を有する。またポリアリールアミン系材料(特許文献3)なども提案されているが、さらなる高移動度化が求められている。
【0007】
以上のように、幾つかの材料がTFT用の有機半導体材料として提案されているものの、必要とされる全ての特性を満たした有機半導体材料は未だに得られていないのが現状である。好ましい有機半導体材料においては、良好なトランジスタ特性を示すことに加えて、良好なフィルムがウェットプロセスにより作製され得るような溶媒への溶解性を示し、加えて耐酸化性をはじめとする保存安定性が求められる。
【0008】
【特許文献1】特開平8−228034号公報
【特許文献2】特開平11−195790号公報
【特許文献3】特許第3145294号公報
【特許文献4】特願2003−35582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれら問題を解決するためになされたもので、ウェットプロセスによる簡便な方法で素子を作製でき、キャリア移動度が高い有機半導体材料を提供することを目的とする。またトランジスタ移動度が高く、オンオフ比の大きい良好なトランジスタ特性を示し、かつ経時変化しにくい安定な有機半導体材料、及び該有機半導体材料を用いた電界効果型トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合体と低分子化合物の混合物を含有する有機半導体材料が上記目的に対して有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。また本発明の有機半導体材料を有機TFTの半導体層として用いることが、上記目的に対して有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明によれば、以下に示す有機半導体材料、有機半導体材料を有機半導体層として有する電界効果型トランジスタ及びその製造方法が提供される。
(1)「下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体と、下記一般式(II)で示される化合物を主成分とすることを特徴とする有機半導体材料;
【0012】
【化1】

〔(I)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar、Arはそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、単環式、非縮合多環式または縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表わす。Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。〕
【0013】
【化2】

〔(II)式中m、nは0または1の整数、Ar11、Ar13は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar12は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基を表わし、R、Rはアルキレン基を表わす。〕」
(2)「前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(III)で示される繰り返し単位であることを特徴とする前記(1)に記載の有機半導体材料;
【0014】
【化3】

〔(III)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、Rが各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕」
(3)「前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(IV)で示される繰り返し単位であることを特徴とする前記(1)に記載の有機半導体材料;
【0015】
【化4】

〔(IV)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、Rはハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基から選択される基を表わす。zは0から5の整数を表わし、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、R、Rが各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕」
(4)「前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(V)で示される繰り返し単位であることを特徴とする前記(1)に記載の有機半導体材料;
【0016】
【化5】

〔(V)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、R、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わす。vは0から3の整数を表わし、w、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、R、R10、R11が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕」
(5)「前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(VI)で示される繰り返し単位であることを特徴とする前記(1)に記載の有機半導体材料;
【0017】
【化6】

〔(VI)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R14、R15、R16、R17はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、r、s、t、uはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R14、R15、R16、R17が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕」
(6)「前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(VII)で示される繰り返し単位であることを特徴とする前記(1)に記載の有機半導体材料;
【0018】
【化7】

〔(VII)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R14、R15、R16、R17、R18はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、qは0から5の整数を表わし、r、s、t、uはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R14、R15、R16、R17、R18が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕」
(7)「前記一般式(I)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)において、該繰り返し単位が少なくとも一つの炭素数2〜18の置換または無置換で直鎖または分岐鎖の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基をもつことを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の有機半導体材料」
(8)「有機半導体層を具備する電界効果型トランジスタにおいて、前記有機半導体層が前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の有機半導体材料を主成分とすることを特徴とする電界効果型トランジスタ」
(9)「前記電界効果型トランジスタが絶縁ゲート型電界効果トランジスタであることを特徴とする前記(8)に記載の電界効果型トランジスタ」
(10)「基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース・ドレイン電極を順次積層し、さらにソース・ドレイン電極上に有機半導体層を有する構造からなる前記(8)又は(9)に記載の電界効果型トランジスタ」
(11)「基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、有機半導体層を順次積層し、さらに有機半導体層上にソース・ドレイン電極を有する構造からなる前記(8)又は(9)に記載の電界効果型トランジスタ」
(12)「基板上にソース・ドレイン電極、有機半導体層、ゲート絶縁層を順次積層し、さらにゲート絶縁層上にゲート電極を有する構造からなる前記(8)又は(9)に記載の電界効果型トランジスタ」
(13)「基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース・ドレイン電極を順次積層し、さらにその上に前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の有機半導体材料の溶液を塗布した後、溶媒を乾燥させて有機半導体層を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法」
(14)「基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層の順に積層し、その上に前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の有機半導体材料の溶液を塗布した後、溶媒を乾燥させて有機半導体層を形成し、さらに前記有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法」
(15)「基板上に、ソース・ドレイン電極を形成した後、その上に前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の有機半導体材料の溶液を塗布した後、溶媒を乾燥させて有機半導体層を形成し、さらに前記有機半導体層上にゲート絶縁層、ゲート電極を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法」
【発明の効果】
【0019】
本発明の、請求項1〜6の構成により、コストパフォーマンスに優れ、移動度、オンオフ比、環境耐性に優れた有機半導体材料が提供される。
請求項7の構成により、従来公知のペンタセン、フタロシアニン材料では不可能であった溶媒への良好な溶解性が得られ、湿式成膜技術にて簡便に製造できるコストパフォーマンスに優れた有機半導体材料が提供される。
請求項8の構成により、湿式成膜技術にて簡便に製造できるためにコストパフォーマンスに優れ、かつ良好な特性を示す優れた電界効果型トランジスタが提供され、請求項9〜12の構成により、湿式成膜技術にて簡便に製造できるためにコストパフォーマンスに優れ、かつ良好な特性を示す優れた絶縁ゲート型電界効果トランジスタの提供が可能となる。
請求項13〜15の構成により、コストパフォーマンスに優れ、かつ良好な特性を示す優れた薄膜トランジスタの湿式製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明を添付の図面に沿って詳細に説明する。
図1(A)、(B)、(C)、(D)は本発明に係る有機TFTの構造を表わす概略図の一例である。
本発明に係る有機TFTの有機半導体層は、特定の繰り返し単位を有する重合体と特定の化合物からなる混合物を主成分とする有機半導体材料からなる。デバイスには空間的に分離されたゲート電極、ソース電極、ドレイン電極が設けられており、ゲート電極と有機半導体層の間には絶縁層が設けられている。TFTデバイスはゲート電極への電圧の印加により、ソース電極とドレイン電極の間の有機半導体層内を流れる電流がコントロールされる。なお本発明の電界効果型トランジスタには公知の縦型有機静電誘導トランジスタ(縦型SIT:Static Induction Transistor)も含まれる。
【0021】
即ち、本発明のデバイスにおいては、有機半導体層(以下、活性層とも記載する)を構成する有機半導体材料は下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を第一の成分とする。
【0022】
【化8】


(I)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar、Arはそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、単環式、非縮合多環式または縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表わす。Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。
【0023】
上記重合体は、芳香環上に置換基を有していてもよい。溶解性の向上の観点からはアルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基などが挙げられる。これら置換基の炭素数が増加すれば溶解性はより向上するが、その反面キャリア移動度は低下してしまうため、溶解性が損なわれない範囲で所望の特性が得られるような置換基を選択することが好ましい。その場合の好適な置換基の例としては炭素数が1〜25のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。更に好適には、炭素数が2〜18のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。これら置換基は同一のものを複数導入してもよいし、異なるものを複数導入してもよい。また、これらのアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基は、さらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。
【0024】
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を一例として挙げることができ、アルコキシ基、アルキルチオ基としては上記アルキル基の結合位に酸素原子または硫黄原子を挿入してアルコキシ基、アルキルチオ基としたものが一例として挙げられる。
【0025】
上記重合体は、アルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基の存在により、溶媒への溶解性がさらに向上する。これらの材質において溶解性を向上させることは、フィルムの湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。例えば塗工溶媒の選択肢の拡大、溶液調製時の温度範囲の拡大、溶媒の乾燥時の温度及び圧力範囲の拡大となり、これらプロセッシビリティーの高さにより、結果的に高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる可能性が高くなる。
【0026】
前記一般式(I)における置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基Arとしては、単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、一例として以下のものを挙げることができる。例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられ、置換もしくは無置換の、単環式、非縮合多環式または縮合多環式芳香族炭化水素Ar、Arとしては、一例として上記芳香族基の二価基が挙げられる。
【0027】
また、これら芳香族炭化水素基は以下に示す置換基を有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基またはアルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(3)アリールオキシ基。(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有してもよく、炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基またはアルコキシ基あるいはアルキルチオ基を含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。)
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基。(アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)
(5)アルキル置換アミノ基。(具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる)
(6)アシル基。(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)
【0028】
上記一般式(I)に示されるくり返し単位を含む重合体のうち、より好ましい第一の態様は下記一般式(III)で表わされる。
【0029】
【化9】

(III)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、Rが各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基への置換基については前記一般式(I)と同様である。
【0030】
上記一般式(I)に示されるくり返し単位を含む重合体のうち、より好ましい第二の態様は下記一般式(VI)で表わされる。
【0031】

(VI)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R14、R15、R16、R17はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、r、s、t、uはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R14、R15、R16、R17が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基への置換基については前記一般式(I)と同様である。
【0032】
上記一般式(III)に示されるくり返し単位を含む重合体のうち、さらに好ましい第一の態様は下記一般式(IV)で表わされる。
【0033】
【化10】

(IV)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、Rはハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基から選択される基を表わす。zは0から5の整数を表わし、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、R、Rが各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基への置換基については前記一般式(I)と同様である。
【0034】
上記一般式(III)に示されるくり返し単位を含む重合体のうち、さらに好ましい第二の態様は下記一般式(V)で表わされる。
【0035】
【化11】

(V)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、R、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わす。vは0から3の整数を表わし、w、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、R、R10、R11が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基への置換基については前記一般式(I)と同様である。
【0036】
また、上記一般式(VI)に示されるくり返し単位を含む重合体のうち、さらに好ましい第一の態様は下記一般式(VII)で表わされる。
【0037】
【化12】

(VII)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R14、R15、R16、R17、R18はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、qは0から5の整数を表わし、r、s、t、uはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R14、R15、R16、R17、R18が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基への置換基については前記一般式(I)と同様である。
【0038】
以下に、本発明における一般式(I)で表わされる、重合体の繰り返し単位の具体例(化合物(1)〜(19))を列挙する。
なおこれら具体例は本発明を制限的に提示しているものでも、限定する意図で開示しているものでもない。
【0039】
【表1−1】

【0040】
【表1−2】

【0041】
【表1−3】

【0042】
【表1−4】

【0043】
【表1−5】

【0044】
上記一般式(I)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)に示される繰り返し単位を含む重合体の製造方法は、例えばアルデヒドとホスホネートを用いたWittig−Horner反応、アルデヒドとホスホニウム塩を用いたWittig反応、ビニル置換体とハロゲン化物を用いたHeck反応、アミンとハロゲン化物を用いたUllmann反応などを用いることができ、公知の方法により製造可能である。特にWittig−Horner反応およびWittig反応は反応操作の簡便さから有効である。
【0045】
一例としてWittig−Horner反応を用いた本発明における重合体の製造方法について説明する。
【0046】
本発明における重合体は、下記の反応式で示されるように、ホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物が化学量論的に等しく存在する溶液と、その2倍モル量以上の塩基を混合させることにより重合反応が進行し、得ることができる。
【0047】
【化13】

本発明のアリールアミン重合体を製造する場合には、例えば、Aとしてアリールアミン部位、BとしてArの組み合わせのモノマーを用いるか、またはAとしてAr、Bとしてアリールアミン部位の組み合わせのモノマーを用いればよい。
【0048】
上記ジアルデヒド化合物は、公知の種々の反応により合成することが可能である。例として下記Vilsmeier反応、
【0049】
【化14】

あるいは、アリールリチウム化合物と、DMF、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン等をはじめとするホルミル化剤との反応、
【0050】
【化15】

あるいは、下記Gatterman反応、
【0051】
【化16】

あるいは、ヒドロキシメチル化合物の各種酸化反応、
【0052】
【化17】

等を一例として挙げることができ、これら反応を用いてジアルデヒド化合物を合成することができる。
【0053】
また、上記ホスホン酸ジエステル化合物についても、公知の種々の反応により合成することが可能であるが、下記Michaelis−Arbuzov反応が特に容易である。
【0054】
【化18】

【0055】
上記重合反応に使用する塩基はホスホネートカルボアニオンが形成されるものであれば特に限定されず、金属アルコシド、金属ヒドリド、有機リチウム化合物等が挙げられ、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、リチウムナフチリド、リチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド等を挙げることができる。
【0056】
反応に用いる塩基の量は、通常ホスホン酸エステル化合物の重合活性点に対して同量使用するだけでよいが、さらに過剰量用いても支障ない。
【0057】
上記の塩基は固形状態や懸濁溶液の状態で反応系内に添加してもよいが、得られる重合体の均質性が良好になる為に、特に均一溶液として添加する事が好ましい。塩基を溶解する溶媒としては、使用する塩基と安定な溶液を形成する溶媒を選択しなければならないが、その他の要因として塩基の溶解度が高いものがよく、また反応系で生成する高分子量体の反応溶媒に対する溶解性を損ねないものがよく、さらに生成する高分子量体が良好に溶解する溶媒がよく、用いる塩基と製造する高分子量体の特性に応じて、一般に知られているアルコール系、エーテル系、アミン系、炭化水素系溶媒等から任意に選択することができる。
【0058】
塩基とそれを均一に溶解する溶媒の組み合わせとしては、例えばナトリウムメトキシドのメタノール溶液、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液、カリウムt−ブトキシドの2−プロパノール溶液、カリウムt−ブトキシドの2−メチル−2−プロパノール溶液、カリウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液、カリウムt−ブトキシドのジオキサン溶液、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液、メチルリチウムのエーテル溶液、リチウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液、リチウムジイソプロピルアミドのシクロヘキサン溶液、カリウムビストリメチルシリルアミドのトルエン溶液等をはじめとして、種々の組み合わせの溶液が挙げられ、幾つかの溶液は市販品として容易に入手することができる。温和な反応条件、取り扱いの容易さの観点から好ましくは金属アルコキシド系の溶液が用いられ、生成する重合体の溶解性、取り扱いの容易さ、反応の効率性、生成する重合体の溶解性等の観点からより、好ましくは金属t−ブトキシドのエーテル系溶液が用いられ、さらに好ましくはカリウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液が用いられる。
【0059】
上記重合反応はホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物の溶液に塩基溶液を添加してもよく、塩基溶液にホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物の溶液を加えてもよく、同時に反応系に加えてもよく、添加の順序に制約はない。
【0060】
上記重合反応における重合時間は、用いられるモノマーの反応性、または望まれる重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよいが、0.2時間〜30時間が好適である。
【0061】
上記重合反応における反応温度は特に制御する必要なく室温において良好に重合反応が進行するが、反応効率をより上げるために加熱したり、または冷却してより温和な条件にすることも可能である。
【0062】
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応系に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明におけるアリールアミン重合体の末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。
【0063】
分子量調節剤、末端封止剤としては、ベンジルホスホン酸ジエチル、ベンズアルデヒド等、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。
【0064】
上記一般式(I)、(III)、(IV)、(V)に示される重合体の好ましい分子量はGPCによるポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。
上記重合体は種々の一般的有機溶媒、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、ジクロロベンゼン及びキシレン等に対し良好な溶解性を示す。
【0065】
本発明の有機半導体材料は下記一般式(II)で示される化合物を第二の成分とする。
(II)式中m、nは0または1の整数、Ar11、Ar13は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar12は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基を表わし、R、Rはアルキレン基を表わす。
【0066】
【化19】

【0067】
以下に、一般式(II)の具体例(化合物(20)〜(23))を列挙する。
なおこれら具体例は本発明を制限的に提示しているものでも、限定する意図で開示しているものでもない。
【0068】
【表2】

【0069】
本発明の有機半導体層を形成するためには、一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体と、一般式(II)で示される化合物を適当な溶剤、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、ジクロロベンゼン及びキシレン等に溶解あるいは分散して適当な濃度の溶液を作製し、これを用いて湿式成膜法により半導体薄膜を作製することができる。
【0070】
有機半導体層を形成するための湿式成膜法としては、スピンコート法、ディッピング法、ブレード塗工法、スプレー塗工法、キャスト法、インクジェット法、印刷法等の公知の湿式成膜技術によって作製することができる。これら各種成膜法に対し、上記記載の溶媒種から適切な溶媒が選択される。
【0071】
有機半導体層における一般式(II)で示される化合物の割合は、一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体100重量部に対し0.01から100重量部が好ましく、好適には0.5から20重量部が好ましく、さらに好適には1から10重量部が好ましい。
本発明に係る有機半導体材料は、固体もしくは溶液の状態では、空気中でも実質的に酸化されることはない。
【0072】
本発明の有機TFTにおいて、上記重合体にて形成される有機半導体材層は、図1(A)〜(D)に示す様にいずれの構造においても有機半導体層はソース電極およびドレイン電極に挟まれるようになっている。有機半導体層の厚みは、均一なフィルム(即ち、材質のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない薄膜)が形成されるような厚みに選択される。有機半導体層の厚みは、約200nm〜約5nmが好ましく、特に約100nm〜約5nmが好適である。
【0073】
本発明の有機TFTは、通常、ガラス、シリコン、プラスチックよりなる基板に形成される。デバイスにフレキシビリティー、軽量、安価等の特性が所望される場合、通常はプラスチック基板が用いられる。また、図1(A)、(B)に示すトランジスタ構造の場合には、導電性の基板を用いることにより、ゲート電極を兼ねることが可能である。
【0074】
また絶縁層はゲート電極及び半導体層の間に配置される。好適な絶縁材は当業者には周知である。例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン等の無機系材料や、またはフレキシビリティー、軽量、安価なデバイスが所望される場合にはポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等をはじめとする高分子化合物や、各種絶縁性LB膜等の種々の有機系材料が挙げられ、これらの材料を2つ以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定しないが、導電率が低いものが好ましい。
【0075】
これら絶縁層の作製法としては特に制限はなく、たとえばCVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法、スピンコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、およびLB法などが挙げられ、いずれも使用可能である。また、シリコンをゲート電極と基板を兼ねて用いる場合にはシリコンの熱酸化により得られる酸化シリコンが好適である。
【0076】
本発明のデバイスは、3つの空間的に分離された電極(ソース、ドレイン、ゲート電極)を有する。ゲート電極は、絶縁層と接触している。各電極は周知の従来技術を用いて基板上に形成される。
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の材質としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金や、インジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機および有機半導体、たとえばシリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。ソース電極およびドレイン電極は、上記導電性物質の中でも半導体層との接触面においてオーミックに接続されるものが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
【0078】
実施例1
重合体Aの合成
【0079】
【化20】


100ml四つ口フラスコに、上記のジアルデヒド0.852g(2.70mmol)及びジホスホネート1.525g(2.70mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン75mlを加えた。この溶液にカリウムt−ブトキシドの1.0mol dm−3テトラヒドロフラン溶液6.75ml(6.75mmol)を滴下し室温で2時間撹拌した後、ベンジルホスホン酸ジエチル及びベンズアルデヒドを順次加え、さらに2時間撹拌した。酢酸およそ1mlを加えて反応を終了し、溶液を水洗した。溶媒を減圧留去した後テトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱による精製を行ない、重合体Aを1.07g得た。収率73%。
【0080】
元素分析値(計算値);C:84.25%(84.02%)、H:8.20%(7.93%)、N:2.33%(2.45%)。
【0081】
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は116.9℃であった。
【0082】
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8500、重量平均分子量は20000であった。
【0083】
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図4に示した。
【0084】
下記重合体A(表1−1中の化合物(1)に相当;重量平均分子量20000、数平均分子量8500)90重量部および、化合物(23)10重量部からなる混合物の10wt%のテトラヒドロフラン溶液を調製した。この溶液をAl電極が蒸着されたPET基板上にブレード塗工し、75℃で30分乾燥して膜厚およそ10μmの薄膜を作製した。さらにこの半導体フィルム上に金を蒸着してサンドイッチセルを作製した。このセルを用いて、20℃にてタイムオブフライト法により有機半導体材料のキャリア移動度を測定した。結果を図2に示す。
【0085】
【化21】

【0086】
実施例2
重合体Bの合成
【0087】
【化22】


重合体Aの合成と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド419.5mg(1.00mmol)及びジホスホネート564.5mg(1.00mmol)から重合体Bを518.3mg得た。収率62%。
【0088】
元素分析値(計算値);C:85.18%(85.55%)、H:8.03%(7.63%)、N:2.10%(2.08%)。
【0089】
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は133℃であった。
【0090】
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は39200、重量平均分子量は116000であった。
【0091】
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図5に示した。
【0092】
次に、これを用いて、実施例1と同様の方法によりサンドイッチセルを作製した。このセルを用いて、−40℃にてタイムオブフライト法により有機半導体材料のキャリア移動度を測定した。結果を図2に示す。
【0093】
比較例1
重合体Aのみの10wt%のテトラヒドロフラン溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法によりキャリア移動度を測定した。結果を図2に示す。
【0094】
比較例2
比較例1と同様の方法によりサンドイッチセルを作製した。このセルを用いて、−40℃にてタイムオブフライト法により有機半導体材料のキャリア移動度を測定した。結果を図2に示す。
【0095】
図2において、同一の測定温度環境下である実施例1と比較例1及び、実施例2と比較例2を比較する。重合体Aと化合物(23)を含有する有機半導体膜の試料は、重合体Aのみの有機半導体膜の試料と比較して、いずれの電界強度においても明らかに高速なキャリア移動度を示した。
【0096】
実施例3
重合体Aおよび化合物(23)の有機半導体材料を用いて図1(B)に示される構造の薄膜デバイスを作製した。p−ドープされてゲートとして作用するシリコン基板表面を熱酸化してSiOの絶縁層を200nm形成した後、酸化膜を片面だけ除去し、除去した面にAlを蒸着してゲート電極とした。次に該SiOの絶縁層上に、重合体Aおよび化合物(23)を重合体A(重量平均分子量69160、数平均分子量19830)を95重量部、化合物(23)を5重量部の1.0wt%のTHF/pキシレン(80/20)混合溶液にて塗布液を調整し、スピンコートして乾燥することにより膜厚30nmの有機半導体層を作製した。乾燥した後、有機半導体層上にチャネル長50μm、チャネル幅9mmのソース・ドレイン電極のAuを蒸着した。作製したTFTの電気特性評価を実施した。結果を図3に示す。
【0097】
また、以下の式を用いて有機半導体の電界効果移動度を算出した。
ds=μCinW(V−Vth/2L
ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートのしきい値電圧である。
作製した有機TFTにおける電界効果移動度は2.1×10−3(cm/Vs)の高移動度であった。
【0098】
また環境性評価、即ちこの素子の、(1)作製直後の電気特性評価、及び(2)1週間大気中に放置後の電気特性評価を行なった。(1)における値と、(2)における値の比(2)/(1)を取り、この値を変動比として評価した。その結果、オン電流の変化率は1.00、また、オンオフ比の変化率は1.00であり耐環境性に優れていた。
【0099】
実施例4
重合体Aおよび化合物(23)の混合材料を用いて図1(A)に示される構造の薄膜デバイスを作製した。p−ドープされてゲートとして作用するシリコン基板表面を熱酸化してSiOの絶縁層を200nm形成した後、酸化膜を片面だけ除去し、除去した面にAlを蒸着してゲート電極とした。次に該SiOの絶縁層上にチャネル長45μm、チャネル幅9mmとなるようにソース電極およびドレイン電極のAu/Cr膜を蒸着した。引き続き、重合体Aおよび化合物(23)を重合体A(重量平均分子量74470、数平均分子量17210)を95重量部、化合物(23)を5重量部の1.0wt%のTHF/pキシレン(80/20)混合溶液にて塗布液を調整し、スピンコートして乾燥することにより膜厚30nm有機半導体層を作製した。このようにして作製した有機TFTのトランジスタ特性を測定したところ、実施例3とほぼ同じ結果であり、作製した有機TFTはキャリア移動度、オンオフ比、耐環境性に優れた特性を示した。
【0100】
比較例3
有機半導体層として重合体A(重量平均分子量69160、数平均分子量19830)のみを用いた以外は実施例3と同様の方法により、有機TFTを作製した。作製したTFTの電気特性評価を実施した。結果を図3に示す。作製した有機TFTにおける移動度は1.2×10−3(cm/Vs)であり、実施例3には劣る性能であった。
【0101】
比較例4
有機半導体層としてポリ−3−ヘキシルチオフェンを用いた以外は実施例3と同様の方法により、図1(B)に示される構造の薄膜デバイスを作製した。作製した有機TFTにおける移動度は7.76×10−5(cm/Vs)であった。また、オフ電流(V=0Vの場合のIds)が大きいために、オンオフ比は10程度であった。この素子の耐環境性評価を実施例6と同様に実施した。その結果オン電流の変化率は0.80、またオンオフ比の変化率は0.62であり、移動度、オンオフ比、耐環境性ともに本発明に劣る結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係る有機TFTの構造を表わす概略図の一例である。
【図2】実施例及び比較例の有機半導体材料のキャリア移動度を示す図である。
【図3】実施例及び比較例の電気特性評価を示す図である。
【図4】実施例1の重合体の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例2の重合体の赤外吸収スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体と、下記一般式(II)で示される化合物を主成分とすることを特徴とする有機半導体材料。
【化1】

〔(I)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar、Arはそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、単環式、非縮合多環式または縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表わす。Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。〕
【化2】

〔(II)式中m、nは0または1の整数、Ar11、Ar13は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Ar12は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基を表わし、R、Rはアルキレン基を表わす。〕
【請求項2】
前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(III)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【化3】

〔(III)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、Rが各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕
【請求項3】
前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(IV)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【化4】

〔(IV)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、Rはハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基から選択される基を表わす。zは0から5の整数を表わし、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、R、Rが各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕
【請求項4】
前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(V)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【化5】

〔(V)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R、R、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わす。vは0から3の整数を表わし、w、x、yはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R、R、R10、R11が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕
【請求項5】
前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(VI)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【化6】

〔(VI)式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わし、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R14、R15、R16、R17はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、r、s、t、uはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R14、R15、R16、R17が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕
【請求項6】
前記一般式(I)で示される繰り返し単位が、下記一般式(VII)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【化7】

〔(VII)式中、Arはベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセンの2価基を表わし、これらは置換基を有していてもよい。R14、R15、R16、R17、R18はそれぞれ独立にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基を表わし、qは0から5の整数を表わし、r、s、t、uはそれぞれ独立に0から4の整数を表わし、R14、R15、R16、R17、R18が各々複数存在する場合には、同一でも別異でもよい。〕
【請求項7】
前記一般式(I)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)において、該繰り返し単位が少なくとも一つの炭素数2〜18の置換または無置換で直鎖または分岐鎖の、アルキル基またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基をもつことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の有機半導体材料。
【請求項8】
有機半導体層を具備する電界効果型トランジスタにおいて、前記有機半導体層が請求項1乃至7のいずれかに記載の有機半導体材料を主成分とすることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項9】
前記電界効果型トランジスタが絶縁ゲート型電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項8に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項10】
基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース・ドレイン電極を順次積層し、さらにソース・ドレイン電極上に有機半導体層を有する構造からなる請求項8又は9に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項11】
基板上にゲート電極、ゲート絶縁層、有機半導体層を順次積層し、さらに有機半導体層上にソース・ドレイン電極を有する構造からなる請求項8又は9に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項12】
基板上にソース・ドレイン電極、有機半導体層、ゲート絶縁層を順次積層し、さらにゲート絶縁層上にゲート電極を有する構造からなる請求項8又は9に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項13】
基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース・ドレイン電極を順次積層し、さらにその上に請求項1乃至7のいずれかに記載の有機半導体材料の溶液を塗布した後、溶媒を乾燥させて有機半導体層を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項14】
基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層の順に積層し、その上に請求項1乃至7のいずれかに記載の有機半導体材料の溶液を塗布した後、溶媒を乾燥させて有機半導体層を形成し、さらに前記有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項15】
基板上に、ソース・ドレイン電極を形成した後、その上に請求項1乃至7のいずれかに記載の有機半導体材料の溶液を塗布した後、溶媒を乾燥させて有機半導体層を形成し、さらに前記有機半導体層上にゲート絶縁層、ゲート電極を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−261225(P2006−261225A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73489(P2005−73489)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】