説明

有機強誘電体メモリ

【課題】小型化及び高集積化を図ることができる有機強誘電体メモリを提供する。
【解決手段】有機強誘電体メモリは、複数の画素領域121を有する基板110と、基板110のそれぞれの画素領域121に設けられた画素電極122と、それぞれの画素電極122に設けられた電気光学素子124と、電気光学素子124を介して複数の画素電極122と対向する対向電極126と、走査線がゲート電極136に電気的に接続され、データ線が一方の電極132に電気的に接続され、画素電極122が他方の電極134に電気的に接続された第1の薄膜トランジスタ130と、第1の薄膜トランジスタ130を介してデータ線と電気的に接続された第1の電極142、第1の電極142に対向する第2の電極146、第1及び第2の電極142,146の間に設けられた有機強誘電体層144を含む有機強誘電体キャパシタ140と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機強誘電体メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示デバイスなどの表示デバイス(例えば特許文献1参照)に不揮発性メモリ機能を付加させる場合、例えば、不揮発性メモリデバイスを外付けすることが考えられる。これによれば、表示デバイスと別個に独立して不揮発性メモリを設けなければならず、電子機器の小型化及び高集積化を図ることは難しい。また、1つの表示デバイス基板上に不揮発性メモリ機能を有する薄膜トランジスタ回路を作り込むことにより、同一基板上に表示デバイス及び不揮発性メモリを形成することも考えられるが、その場合であっても、不揮発性メモリは表示デバイスの画素領域を避けて形成せざるを得ず、電子機器の小型化及び高集積化には限界がある。
【特許文献1】特開2001−166335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、小型化及び高集積化を図ることができる有機強誘電体メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明に係る有機強誘電体メモリは、
複数の画素領域を有する基板と、
前記基板のそれぞれの前記画素領域に設けられた画素電極と、
それぞれの前記画素電極に設けられた電気光学素子と、
前記電気光学素子を介して複数の前記画素電極と対向する対向電極と、
走査線がゲート電極に電気的に接続され、データ線が一方の電極に電気的に接続され、前記画素電極が他方の電極に電気的に接続された第1の薄膜トランジスタと、
前記第1の薄膜トランジスタを介して前記データ線と電気的に接続された第1の電極、前記第1の電極に対向する第2の電極、前記第1及び第2の電極の間に設けられた有機強誘電体層を含む有機強誘電体キャパシタと、
を含み、
前記有機強誘電体キャパシタは、前記基板のそれぞれの前記画素領域に設けられている。
【0005】
本発明によれば、走査線をワード線とし、データ線をビット線とし、有機強誘電体キャパシタの第2の電極にプレート線を接続してそれぞれ駆動させることにより、いわゆる1トランジスタ1キャパシタ型の強誘電体メモリとして動作させることができる。さらに、有機強誘電体キャパシタは、画素領域に設けられているので、画素部の外側に平面領域を拡大することがない。したがって、表示機能を備え、かつ小型化及び高集積化を実現した有機強誘電体メモリを提供することができる。なお、従来の強誘電体酸化物キャパシタとは異なり、有機強誘電体キャパシタは低温プロセスで実現することが可能であるため、他素子にダメージを与えることなく画素領域に有機強誘電体キャパシタを形成することができる。
【0006】
(2)この有機強誘電体メモリにおいて、
前記画素電極に対するスイッチング機能を果たす第2の薄膜トランジスタをさらに含んでもよい。
【0007】
(3)この有機強誘電体メモリにおいて、
前記有機強誘電体キャパシタに対するスイッチング機能を果たす第3の薄膜トランジスタをさらに含んでもよい。
【0008】
(4)この有機強誘電体メモリにおいて、
前記画素電極、前記電気光学素子及び前記対向電極に対して並列接続された保持容量をさらに含んでもよい。
【0009】
(5)この有機強誘電体メモリにおいて、
前記電気光学素子は、液晶素子又は電気泳動素子であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの断面図であり、図2〜図6は、この有機強誘電体メモリの製造方法の一部を示す図であり、図7は、図1の構造図に対応する有機強誘電体メモリの回路図である。
【0012】
1.有機強誘電体メモリ
有機強誘電体メモリ100は、基板110と、画素部120と、第1の薄膜トランジスタ130と、有機強誘電体キャパシタ140と、を含む。
【0013】
本実施の形態では、有機強誘電体メモリ100は、メモリ機能のみならず表示機能も備え、すなわち表示デバイス(図1では液晶表示デバイス)を兼ねている。この表示デバイスを兼ねている有機強誘電体メモリ100には、Y方向に複数配列されそれぞれX方向(Y方向に対する直交方向)に延びる複数の走査線と、X方向に複数配列されそれぞれY方向に延びる複数のデータ線と、複数の走査線及びデータ線により特定される複数の画素を含む画素部120とが配置されている。図7に示すように、第1の薄膜トランジスタ130は一方がデータ線に電気的に接続され、他方が画素部120に電気的に接続されることにより、アクティブマトリクス型の表示デバイスが構成されている。なお、走査線及びデータ線は、図示しない走査ドライバ及びデータドライバにより制御されており、有機強誘電体メモリ100は、上述したもののほか、電源回路、コントローラなど表示機能に必要な回路ブロックを有することができる。
【0014】
まず、図1を参照して有機強誘電体メモリ100の構造の詳細について説明する。
【0015】
(1−1)基板110は絶縁基板であり、例えばガラス基板又は樹脂フィルムなどのフレキシブル基板が挙げられる。基板110上には、絶縁層(例えば酸化(又は窒化)シリコン層)112が設けられていてもよい。なお、基板110は、表示パネルということができる。
【0016】
(1−2)基板110(絶縁層112)上には第1の薄膜トランジスタ130が形成されている。第1の薄膜トランジスタ130は、例えば高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、あるいはアモルファスシリコン薄膜トランジスタで形成することができる。この場合、シリコン薄膜トランジスタ回路は、耐プロセス性のある基板上に先ず形成され、次いで転写法により、画素部120が形成される基板110上に回路を転写し形成することができる。なお、第1の薄膜トランジスタ130は、例えば有機薄膜トランジスタで形成することもできる。この場合、基板110が耐プロセス性の乏しい樹脂フィルムなどのフレキシブル基板上であっても、直接、有機薄膜トランジスタ回路を形成できる。
【0017】
第1の薄膜トランジスタ130がポリシリコン薄膜トランジスタの場合について説明する。第1の薄膜トランジスタ130は、ソース領域132、チャネル領域133、ドレイン領域134、ゲート絶縁層135、ゲート電極136を含む。ソース領域132、チャネル領域133及びドレイン領域134は、ポリシリコン層に所定の不純物を注入及び拡散させることにより形成されている。ゲート絶縁層135は、少なくともチャネル領域133上に形成され、例えばソース領域132、チャネル領域133及びドレイン領域135上に形成されていてもよい。ゲート電極136は、例えばAl、Au、Ag、Cu、Ni、Ti合金、MoW合金,Crなどの金属により形成することができる。
【0018】
また、第1の薄膜トランジスタ130のソース領域132は、データ線160に電気的に接続され、ドレイン領域134は、画素部120(詳しくは画素電極122)に電気的に接続されている。
【0019】
(1−3)画素部120は、第1の薄膜トランジスタ130及び有機強誘電体キャパシタ140の上方に形成されている。図1に示す例では、第1の薄膜トランジスタ130及び有機強誘電体キャパシタ140の上に必要に応じて絶縁層150〜154が形成され、それらの上に画素部120が形成されている。画素部120は、少なくとも、複数の画素電極122と、複数の画素電極122のそれぞれに設けられた電気光学素子124と、電気光学素子124を介して複数の画素電極122と対向する対向電極126と、を含む。画素部120は、複数行複数列に配列された複数の画素に分割することができる。なお、画素電極122及び対向電極126は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明電極であってもよい。
【0020】
それぞれの画素電極122は、1つの画素に対応する画素領域121に配置されている。対向電極126は、複数行複数列に配列された複数の画素電極122に対する共通電極として設けられている。図1に示す例では、電気光学素子124は液晶素子であり、液晶素子は上下に挟まれた配向膜123,125により封止されている。また、対向電極126上には、カラーフィルタ127、ブラックマトリクス128、基板110に対向する対向基板(透明基板)170が設けられている。なお、液晶パネルの場合、基板110には図示しないバックライトが設けられる。
【0021】
(1−4)有機強誘電体キャパシタ140は、基板110(絶縁層112)上に形成されており、第1の電極(図1では下部電極)142と、第1の電極142に対向する第2の電極(図1では上部電極)146と、第1及び第2の電極142,146の間に設けられた有機強誘電体層144と、を含む。有機強誘電体キャパシタ140を設けることにより、第1の薄膜トランジスタ130を選択トランジスタとする、いわゆる1トランジスタ1キャパシタ型(蓄積容量型)の強誘電体メモリとして動作させることができる。
【0022】
図1に示す例では、下部側の第1の電極142がドレイン領域134に電気的に接続されている。
【0023】
有機強誘電体層144は、少なくとも第1及び第2の電極142,146の間に設けられ、例えば下部側の第1の電極142上のみに設けられていてもよいし、基板110の全面の上方に設けられていてもよい。有機強誘電体層144の強誘電体材料としては、例えばポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)(P(VDF/TrFE))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)コオリゴマー、フッ化ビニリデンオリゴマー、偶数及び奇数ナイロン、シアン化ビニリデンコポリマー、ポリ尿素などが挙げられる。なお、第1の電極142及び第2の電極146は、例えばAl、Au、Ag、Cuなどの金属材料、あるいは導電性有機材料等により形成することができる。
【0024】
本実施の形態では、複数の画素領域121のそれぞれに、少なくとも1つの有機強誘電体キャパシタ140が設けられている。そして、それぞれの有機強誘電体キャパシタ140は、画素領域121(例えば画素電極122の内側)に設けられている。これによれば、画素部120の外側に平面領域を拡大することがないので小型化及び高集積化を図ることができる。
【0025】
(1−5)次に、上述した構造を有する有機強誘電体メモリ100の動作の概略について説明する。
【0026】
前提として、強誘電体メモリは、強誘電体が有する双安定な分極状態を利用した不揮発性メモリである。分極―電界曲線におけるヒステリシスカーブを特徴とする強誘電体は、強誘電体に印加される電圧が0Vであっても、分極状態が消えない不揮発性の性質を有する。この分極状態には、強誘電体に印加された電圧が正の時と負の時とで2つ存在し、これら2つの分極状態の一方を唐O煤A他方を唐P狽ノそれぞれ対応させることで、強誘電体を不揮発性メモリの媒体として利用することができる。本実施の形態に係る有機強誘電体メモリは、走査線をワード線とし、データ線をビット線とし、有機強誘電体キャパシタの他端(第2の電極)に保持容量線(プレート線)を接続してそれぞれ駆動させることにより、不揮発性メモリとして動作させることができる。
【0027】
図7に示す回路図は、パネル表示(図7ではLCD;Liquid Crystal Display)動作電圧が有機強誘電体キャパシタ動作電圧に比べて十分に低い場合に適用することができる。すなわち、LCD動作電圧が印加されても、有機強誘電体メモリの分極反転が生じない場合に適用することができる。
【0028】
まず、普段のLCD動作時においては、LCD動作電圧の方が有機強誘電体キャパシタ140の動作電圧よりも十分に低いため、有機強誘電体キャパシタ140の記憶状態(分極状態唐O薄狽ヘ唐P煤jは影響を受けず、LCD動作に関わらずその記憶状態を維持する。すなわち、LCD動作電圧により有機強誘電体キャパシタ140の情報が書き換えられることがない。なお、このとき、有機強誘電体キャパシタ140はLCD動作用の保持容量として機能する。
【0029】
他方、メモリ動作時においては、上述したようにワード線、ビット線、プレート線をそれぞれ駆動させることにより、有機強誘電体キャパシタ140の記憶状態を適宜制御することができる。
【0030】
本実施の形態に係る有機強誘電体メモリによれば、1つの画素領域にある有機強誘電体に1つの情報を記憶させることができるため、例えば、パネル表示情報をそのまま記憶させることができる。これにより、外付けのメモリデバイスがなくても記憶した画像データを読み出すことにより、例えば電源オフ時の画像を電源オン時にそのまま表示することができる。あるいは、有機強誘電体メモリをパネル表示情報とは別に単独に不揮発性メモリとして機能させることもできる。いずれにしても本実施の形態に係る有機強誘電体メモリによれば、有機強誘電体キャパシタ140が画素領域121に設けられているので、外付けメモリが不要であることは当然ながら、画素部120の外側に平面領域を拡大することがない。したがって、表示機能を備え、かつ小型化及び高集積化を実現した有機強誘電体メモリを提供することができる。
【0031】
2.有機強誘電体メモリの製造方法
次に、図2〜図6を参照して有機強誘電体メモリの製造方法の一例について説明する。
【0032】
(2−1)図2に示すように、まず、転写用の基板180を用意する。基板180は、製造プロセスにおいてのみ使用するものであり、第1の薄膜トランジスタ130、有機強誘電体キャパシタ140等を形成した後、最終的に剥離及び除去する。このように転写技術を適用することにより、製造プロセスに要求される条件(プロセス耐性など)及び完成品に要求される条件(フレキシブル性など)の両方を満たすことが可能になる。なお、基板180は、第1の薄膜トランジスタ130等の製造プロセスに耐性を有するものであればその材質は限定されず、例えばガラス基板であってもよい。基板180が光透過性を有していれば、光照射により基板180の剥離工程を容易に行うことができる。
【0033】
必要があれば、基板180上に分離層182を形成してもよい。分離層182は、基板180の剥離を容易に行うためのものである。例えば、分離層182は、光照射により結合力を消失するものであってもよいし、その他の物理的化学的作用(例えば加熱)により結合力を消失するものであってもよい。分離層182の材質としては、例えばアモルファスシリコンなどの半導体、各種セラミックス、有機材料、低融点金属、UV硬化型接着材料などが挙げられる。
【0034】
基板180(図2では分離層182)上に絶縁層112を形成してもよい。絶縁層112は、例えば有機シリコン材料であるTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate(Si(OC))を原材料としたプラズマCVD法により形成することができる。絶縁層112は、第1の薄膜トランジスタ130の保護、遮光、絶縁、マイグレーションの防止などの機能を有する。
【0035】
(2−2)次に、図3〜図5に示すように、第1の薄膜トランジスタ130を形成する。
【0036】
第1の薄膜トランジスタ130を低温ポリシリコンプロセスにより形成してもよい。これによれば、低温プロセスであるために要求される熱耐性の制限が緩和されるので、基板180等の材料選択自由度の向上を図ることができる。
【0037】
まず、図3に示すように、薄膜半導体層184を絶縁層112上に形成する。薄膜半導体層184は、例えばアモルファスシリコン層をCVD法により成膜し、脱水素アニールを行い、レーザアニール等により多結晶化させた後、必要に応じてエッチング等によりパターニングする。これにより、薄膜半導体層184をポリシリコン層として形成する。あるいは、薄膜半導体層184をシリコン系液体材料を吐出することにより直接パターニングして形成してもよい。
【0038】
次に、図4に示すように、薄膜半導体層184上にゲート絶縁層(例えばSiO層)135を形成する。ゲート絶縁層135は、例えばTEOS−CVD法により形成することができる。その後、ゲート電極136をパターニングして形成し、ゲート電極136をマスクとして薄膜半導体層184に不純物を注入する。その後、不純物を拡散させるためにアニールを行う。
【0039】
こうして、図5に示すように、薄膜半導体層184に、ソース領域132、ドレイン領域134、を形成する。
【0040】
(2−3)その後、図6に示すように、有機強誘電体キャパシタ140を形成する。
【0041】
まず、第1の電極142を形成する。第1の電極142は、例えば、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、又は溶液吐出法により形成することができる。次に、少なくとも第1の電極142上に有機強誘電体層144を形成する。例えば、ポリ(フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン)を溶媒(例えばメチルエチルケトンなどのケトン系の溶媒)に溶かして所定の溶液にした後、第1の電極142を含む領域上に成膜し、140℃程度でアニールして結晶化させる。有機強誘電体材料の場合、無機強誘電体材料と比較すると極めて低温でアニールすることができる。有機強誘電体層144の成膜方法としては、例えば、スピンコート法、マイクロディスペンス法、インクジェット法、又は溶液霧化法(LSMCD:Liquid Source Misted Chemical Deposition)などに代表される溶液吐出法、LB(Langmuir-Blodgett)法、真空蒸着法などが挙げられる。図6に示すように、有機強誘電体層144を例えば基板110の全面に設けることができる。
【0042】
その後、有機強誘電体層144上に第2の電極146を形成する。第2の電極146は、例えば、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、又は溶液吐出法により形成することができる。
【0043】
(2−4)こうして、第1の薄膜トランジスタ130及び有機強誘電体キャパシタ140を形成した後、図1に示すように、所定の層間絶縁層150〜154及び配線層等を形成する。有機強誘電体キャパシタ140の上方に形成する絶縁層150,152は、成膜温度が低いもの、すなわち有機強誘電体キャパシタ140の熱耐性を満たすものを使用することができる。絶縁層150,152は、例えば、テトラメチルシラン(TMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、光硬化型樹脂(例えばUV硬化型樹脂)等をCVD法、溶液吐出法等により成膜することができる。これによれば、いずれも低温(例えば140℃以下)による成膜が可能になるので、有機強誘電体キャパシタ140の熱によるダメージの低減を図ることができる。なお、絶縁層154は、第1の薄膜トランジスタ130等の保護層となるものであり、例えばアクリル樹脂により形成することができる。
【0044】
転写技術を適用する場合には、基板180上の被転写層(上述の第1の薄膜トランジスタ130及び有機強誘電体キャパシタ140を含む)を、少なくとも1回の転写工程により基板110に転写する。こうして、完成品の一部をなす基板110に、製造プロセスによるダメージを与えることなく必要な素子を形成することができる。なお、画素部120の製造プロセスは公知であるのでその説明は省略する。
【0045】
3.変形例
次に、本実施の形態に係る有機強誘電体メモリの変形例について説明する。図8〜図10は、それぞれ異なる変形例に係る有機強誘電体メモリの回路図であり、図11は、図9の回路図に対応する有機強誘電体メモリの構造断面図である。
【0046】
(3−1)第1の変形例について図8を参照して説明する。
【0047】
図8に示す回路図は、上述した図7の回路図と同様に、LCD動作電圧が有機強誘電体キャパシタ動作電圧に比べて十分に低い場合に適用することができる。すなわち、LCD動作電圧が印加されても、有機強誘電体メモリの分極反転が生じない場合に適用することができる。ただし、本変形例では、画素電極122に対するスイッチング機能を果たす第2の薄膜トランジスタ200が設けられている。
【0048】
普段のLCD動作時は、図7の回路図を参照した説明を適用することができる。なお、この場合、第2の薄膜トランジスタ200はオンにしておく。他方、メモリ動作時においては、図7の回路図を参照して説明した通りであるが、そのときに第2の薄膜トランジスタ200をオフにすることにより、LCDの表示状態が有機強誘電体メモリの書き込み又は読み出し動作により影響されないようにすることができる。すなわち、メモリ動作時の印加電圧によりLCDの表示状態が制御されるのを回避することができる。そのため、例えばLCDに耐圧がない場合、すなわち有機強誘電体キャパシタ動作電圧によりLCDがダメージを受ける可能性のある場合に特に効果的である。
【0049】
なお、第2の薄膜トランジスタ200の構成は、上述した第1の薄膜トランジスタ130の内容を適用することができる。
【0050】
(3−2)第2の変形例について図9及び図11を参照して説明する。
【0051】
図9に示す回路図は、上述した図7及び図8とは逆に、LCD動作電圧が有機強誘電体キャパシタ動作電圧に比べて十分に高い場合に適用することができる。ただし、本変形例では、有機強誘電体キャパシタ140に対するスイッチング機能を果たす第3の薄膜トランジスタ210と、画素電極122、電気光学素子124及び対向電極126に対して並列接続された保持容量220と、が設けられている。
【0052】
まず、普段のLCD動作時においては、LCD動作電圧の方が有機強誘電体キャパシタ140の動作電圧よりも十分に高いため、有機強誘電体キャパシタ140の記憶状態(分極状態唐O薄狽ヘ唐P煤jは影響される可能性がある。そのため、図9に示すように、LCD動作時においては、第3の薄膜トランジスタ210をオフにすることにより有機強誘電体キャパシタ140を電気的に遮断させる。こうすることにより、LCD動作に関わらず有機強誘電体キャパシタ140の記憶状態を維持させておくことができる。そして、この場合には、LCDに保持容量220を並列接続させることにより、保持容量220に電荷を蓄積させてLCDを動作させることができる。
【0053】
他方、メモリ動作時においては、上述したようにワード線、ビット線、プレート線をそれぞれ駆動させることにより、有機強誘電体キャパシタ140の記憶状態を適宜制御することができる。この場合、LCD動作電圧が有機強誘電体キャパシタ動作電圧よりも十分に高いため、基本的には、有機強誘電体キャパシタ動作によりLCDの表示状態が影響を受けることはない。なお、メモリ動作時には第3の薄膜トランジスタ210はオンにしておく。
【0054】
図11に示すように、基板110(絶縁層112)上には、第3の薄膜トランジスタ210及び保持容量220が設けられている。第3の薄膜トランジスタ210は、ソース領域212、チャネル領域213、ドレイン領域214、ゲート絶縁層215、ゲート電極216を含む。また、保持容量220は、第1の電極222と、第1の電極222に対向する第2の電極226と、第1及び第2の電極222,226の間に設けられた絶縁層224と、を含む。基板110の絶縁層112上に、薄膜半導体層を形成することにより、複数の薄膜トランジスタのソース領域132,212及びドレイン領域134,214、並びに複数のキャパシタの第1の電極222を一体的に形成することができる。なお、保持容量220の絶縁層224は、ゲート絶縁層135と一体的に形成することができる。
【0055】
(3−3)第3の変形例について図10を参照して説明する。
【0056】
図10に示す回路図は、上述した図9の回路図と同様に、LCD動作電圧が有機強誘電体キャパシタ動作電圧に比べて十分に高い場合に適用することができる。ただし、本変形例では、画素電極122に対するスイッチング機能を果たす第2の薄膜トランジスタ200と、有機強誘電体キャパシタ140に対するスイッチング機能を果たす第3の薄膜トランジスタ210と、画素電極122、電気光学素子124及び対向電極126に対して並列接続された保持容量220と、が設けられている。
【0057】
普段のLCD動作時は、図10の回路図を参照した説明を適用することができる。なお、この場合、第2の薄膜トランジスタ200はオンにしておく。
【0058】
他方、メモリ動作時においては、図10の回路図を参照して説明した通りであるが、そのときに第2の薄膜トランジスタ200をオフにすることにより、LCDの表示状態が有機強誘電体メモリの書き込み又は読み出し動作により影響されないようにすることができる。すなわち、メモリ動作時の印加電圧によりLCDの表示状態が少しでも影響を受けるのを回避することができる。なお、メモリ動作時には第3の薄膜トランジスタ210はオンにしておく。
【0059】
4.変形例
次に、本実施の形態に係る有機強誘電体メモリの他の変形例について説明する。図12は、電気泳動表示デバイスとしての有機強誘電体メモリの断面図である。
【0060】
本変形例に係る有機強誘電体メモリ300は、画素部320の構成が上述と異なる。本変形例では、表示デバイスの例として電気泳動表示デバイスを説明する。
【0061】
画素部320は、少なくとも、複数の画素電極322と、複数の画素電極322のそれぞれに設けられた電気光学素子(本変形例では電気泳動素子)と、電気光学素子を介して複数の画素電極322と対向する対向電極326と、を含む。電気泳動素子とは、液体中に分散している帯電粒子が外部からの印加電圧により液中を移動する現象により表示機能を発揮する素子を指し、例えばマイクロカプセル方式を適用することができる。
【0062】
図12に示す例では、画素電極322及び対向電極326の間にバインダ324が封入され、バインダ324には複数のマイクロカプセル328が設けられている。そして、マイクロカプセル328には、正負のいずれかの電荷を帯びた2種からなる分散液329が内包されている。例えば、分散液329は、正又は負の一方の電荷を帯びた帯電粒子329aと、他方の電荷を帯びた分散媒329bと、を含む。画素部1320に電圧を印加することにより、帯電粒子329a又は分散媒329bのいずれかを所定の電極方向に引き寄せ、これにより各画素ごとにその材料が有する色(白又は黒)が表示され、全体として画像又は文字として認識することができるようになる。なお、対向電極326上には、基板110に対向する対向基板(透明基板)370が設けられている。対向基板370は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などの樹脂フィルムにより形成することができる。
【0063】
本変形例においても有機強誘電体キャパシタ140は、画素領域321(例えば画素電極322の内側)に設けられており、これにより、小型化及び高集積化を図ることができる。なお、本変形例におけるその他の構成、動作概要及び効果等は、上述した内容(回路図を参照した変形例を含む)を適用することができる。
【0064】
5.その他の変形例
上述した例では、薄膜トランジスタとしてポリシリコン薄膜トランジスタを挙げて説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタを適用することもできる。この場合、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は、Au及びAl、Ag、Cu、Niなどの金属材料だけでなく導電性有機材料を用いても形成することができる。導電性有機材料としては、例えば、導電性高分子であるポリスチレンサルフォネート(PSS)をドープしたポリエチレンジオキサンチオフェン(PEDOT)、又はポリアニリンなどが挙げられる。有機半導体材料及び導電性有機材料は、例えばスピンコート法、マイクロディスペンス法、インクジェット法、又は溶液霧化法(LSMCD:Liquid Source Misted Chemical Deposition)などの溶液吐出法により設けることができる。なお、有機半導体層の材料としては、例えばフルオレン−チオフェン共重合体の一つであるF8T2が挙げられる。
【0065】
半導体層の材料として有機材料を用いることにより、さらなる低温プロセスが可能となり、例えばシリコンを用いる場合と比べて製造プロセスが極めて容易となる。従って、有機薄膜トランジスタを用いた場合、前述したような転写法を用いずとも、樹脂フィルムなどのフレキシブル基板上に本発明のデバイスを、直接、形成することが出来る。
【0066】
なお、有機薄膜トランジスタの場合、トップゲート―ボトムコンタクト型、ボトムゲート―トップコンタクト型、トップゲート―トップコンタクト型、ボトムゲート―ボトムコンタクト型などの多様な薄膜トランジスタ構造をとることが出来る。
【0067】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの製造方法を説明する図。
【図3】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの製造方法を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの製造方法を説明する図。
【図5】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの製造方法を説明する図。
【図6】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの製造方法を説明する図。
【図7】本発明の実施の形態に係る有機強誘電体メモリの回路図。
【図8】本発明の実施の形態の変形例に係る有機強誘電体メモリの回路図。
【図9】本発明の実施の形態の変形例に係る有機強誘電体メモリの回路図。
【図10】本発明の実施の形態の変形例に係る有機強誘電体メモリの回路図。
【図11】本発明の実施の形態の変形例に係る有機強誘電体メモリの断面図。
【図12】本発明の実施の形態の変形例に係る有機強誘電体メモリの断面図。
【符号の説明】
【0069】
100…有機強誘電体メモリ 110…基板 121…画素領域
122…画素電極 124…電気光学素子 126…対向電極
130…第1の薄膜トランジスタ 136…ゲート電極
140…有機強誘電体キャパシタ 142…第1の電極 144…有機強誘電体層
146…第2の電極 200…第2の薄膜トランジスタ
210…第3の薄膜トランジスタ 216…ゲート電極 220…保持容量
300…有機強誘電体メモリ 322…画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素領域を有する基板と、
前記基板のそれぞれの前記画素領域に設けられた画素電極と、
それぞれの前記画素電極に設けられた電気光学素子と、
前記電気光学素子を介して複数の前記画素電極と対向する対向電極と、
走査線がゲート電極に電気的に接続され、データ線が一方の電極に電気的に接続され、前記画素電極が他方の電極に電気的に接続された第1の薄膜トランジスタと、
前記第1の薄膜トランジスタを介して前記データ線と電気的に接続された第1の電極、前記第1の電極に対向する第2の電極、前記第1及び第2の電極の間に設けられた有機強誘電体層を含む有機強誘電体キャパシタと、
を含み、
前記有機強誘電体キャパシタは、前記基板のそれぞれの前記画素領域に設けられている、有機強誘電体メモリ。
【請求項2】
請求項1記載の有機強誘電体メモリにおいて、
前記画素電極に対するスイッチング機能を果たす第2の薄膜トランジスタをさらに含む、有機強誘電体メモリ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の有機強誘電体メモリにおいて、
前記有機強誘電体キャパシタに対するスイッチング機能を果たす第3の薄膜トランジスタをさらに含む、有機強誘電体メモリ。
【請求項4】
請求項3記載の有機強誘電体メモリにおいて、
前記画素電極、前記電気光学素子及び前記対向電極に対して並列接続された保持容量をさらに含む、有機強誘電体メモリ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の有機強誘電体メモリにおいて、
前記電気光学素子は、液晶素子又は電気泳動素子である、有機強誘電体メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−35838(P2007−35838A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215614(P2005−215614)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】