説明

有機発光デバイス

【課題】CCM方式における発光効率の改善向上を図るため、有機EL発光層からの光を低損失で色変換層へ導くことができる有機発光デバイスを提供する。
【解決手段】反射電極、有機EL層、透明電極、充填樹脂層、色変換層、カラーフィルタ層を備えた有機発光デバイスであって、該透明電極は、金属ハーフミラー電極および導電性高分子化合物層からなることを特徴とする有機発光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細で視認性に優れたフルカラー表示が可能で、携帯端末機、産業用計測器、家庭用テレビなど広範囲な画面表示への応用可能性を有する有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に適用される発光素子の一例として、有機化合物の薄膜積層構造を有する有機エレクトロルミネセンス(以下ELという)素子が知られている。有機EL素子は、薄膜の自発光型素子であり、低駆動電圧、高解像度、高視野角といった優れた特徴を有することから、それらの実用化に向けて様々な検討がなされている。
表示画像の高精細化を目指して、薄膜トランジスタ(以下TFTという)素子を利用したアクティブマトリクス方式によるフルカラーディスプレイの開発が進められている。フルカラー化の方法として、色変換層とカラーフィルタ層を組み合わせた色変換(以下CCMという)方式に注目が集まっている。CCM方式は、たとえば有機EL素子が発光する青色または青緑色の光を蛍光色素で吸収して、発光層よりも長波長の緑色から赤色までの可視光に波長分布変換するものである。
【0003】
CCM方式アクティブマトリクス型有機発光デバイスでは、素子構造を有機EL素子からの発光がTFT基板の上方から取り出されるトップエミッション構造とし、カラーフィルタ層および色変換層が形成された透明支持体と、TFT基板を含む支持体上に形成した有機EL素子とを対向して配置し、充填樹脂層で接着して有機発光デバイスを形成する。
トップエミッション構造では、光を取り出す上部電極が透光性でなければならず、該電極としてITO(In−Sn酸化物)などの透明導電材料が用いられてきた。しかしながら、ITO膜はスパッタ法で形成するので、その成膜時に下地の有機層にダメージを与え、有機EL素子の特性が低下する問題があった。
【0004】
そこで、このダメージを回避する方法として、上部電極に金属薄膜を適用した金属ハーフミラー電極を用いることが行われている。この場合、前記金属薄膜の電極を保護するため、金属ハーフミラー電極上にITO膜あるいはSiNx膜などが保護膜として形成されるが、これらの無機保護膜は屈折率2以上であるため、前記充填樹脂層(屈折率1.5程度)との界面で全反射することにより、有機EL素子からの発光の一部が前記保護膜内部に閉じ込められ、色変換層で吸収できる光の量が低下する。このため、青色または青緑色の有機EL素子からの発光が色変換層を介して赤色を得る変換効率はあまり高くならない。高い赤色発光強度を得るには、青色または青緑色の有機EL発光を、光の量を低下させることなく効率よく色変換層に導く必要があった。
【0005】
ITOなどの透明導電材料による電極膜形成時のスパッタダメージを避ける方法として、塗布方式により形成した導電性高分子化合物膜からなる主陰極を透明上部電極に適用することが開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。しかしながら、該導電性高分子化合物膜形成の原料である塗液が酸性であるため、有機EL素子の材料劣化が生じる恐れがあり、使用できる下地有機材料は、電子注入性の金属錯体に限定されている。このため、前記導電性高分子化合物膜は陰極への適用に限られており、上部に陽極を配する素子構造については考慮されていない。また、有機EL素子の上部に色変換層を配置した場合の光学的な組み合わせについては、何も開示や示唆がなされていない。
【特許文献1】特開2005−079064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の透明な上部電極では、スパッタ法で成膜時に下地層へダメージを与える問題があった。上部電極として金属薄膜を利用した金属ハーフミラー電極では、該電極を保護するための無機系保護膜の屈折率が高く、光の透過量を低下させる問題があった。該電極を保護するため塗布方式による導電性高分子化合物膜を上部電極に適用する場合には、有機EL素子の材料劣化が生じる問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、CCM方式における発光効率の改善向上を図るため、有機EL層からの青色ないし青緑色の発光を低損失で色変換層に導くことができる有機発光デバイスの層構成を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、第1基板上に、反射電極、有機EL層、透明電極を備えた第1積層体と、透明な第2基板上にカラーフィルタ層と色変換層を備えた第2積層体とを対向させて、充填樹脂層を介して接着した有機発光デバイス構造とし、前記透明電極には、金属薄膜および導電性高分子化合物層からなる電極を用いることを特徴とする。
【0009】
前記金属薄膜の材料として、Au,Pt,Ag等を使用することが好ましい。
前記金属薄膜の厚みとして、可視光の透過率が50%以上維持できる厚みが好ましい。
前記導電性高分子化合物層として、3,4−ポリエチレンジキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(以下PEDOT/PSSという)を有することが好ましい。
前記充填樹脂層の屈折率が1.6以上1.8以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属薄膜は、透明電極であると共に、光学的にはハーフミラーの役割を担い、有機EL層からの青色ないし青緑色発光の透過量低下を防ぐことができる。導電性高分子化合物層は金属薄膜の保護膜として機能し、導電性高分子化合物層が無機保護膜に比べて低屈折率(1.5〜1.7)であることを利用して、屈折率が1.6〜1.8の充填樹脂層との組み合わせで、色変換層への光導入効率を高めることができる。金属薄膜として耐酸性のある貴金属を用いているので、導電性高分子化合物層による有機EL素子の材料劣化の問題を防ぐことができる。したがって、CCM方式有機発光デバイスにおいて、有機EL素子から色変換層およびカラーフィルタ層までの全体の発光効率を改善向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明について実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の構成を説明するための断面模式図である。第1基板11の上に形成された有機EL素子を有する第1積層体100と、第2基板21の上に形成された3種のカラーフィルタ層23(R,G,B)および色変換層24を有する第2積層体200とを対向するように配置し、充填樹脂層20を介して接着し、有機発光デバイスを形成したものである。本構成例は、赤色の色変換層を用いる場合を例にとって示したもので、色変換層24は赤色カラーフィルタ層23Rの上方に形成されている。緑色の色変換層または青色の色変換層を用いる場合には、それぞれの色変換層を緑色カラーフィルタ層23Gまたは青色カラーフィルタ層23Bの上方に設ければよい。
【0012】
第1積層体100は、図1に示すように、第1基板11上にTFT12を所望の形状に形成する。そして、配線電極13をパターニング成膜した後に、絶縁層14を形成する。次いで、反射電極15を成膜、パターニングする。その後、有機EL層16、金属ハーフミラー電極17、導電性高分子化合物層18を順次積層し、有機EL素子を形成する。反射電極と配線電極とは絶縁層のコンタクトホールを介して接続されている。
【0013】
一方、図1に示すように、第2積層体200は、透光性の第2基板21上にブラックマトリクス22、3種のカラーフィルタ層23(R,G,B)、色変換層24を順にパターン形成されたものである。
次いで、上記第1積層体と第2積層体とを図1に示すように対向して配置し、位置決めして接着剤で貼り合わせて充填樹脂層20を形成し、有機発光デバイスを作製する。
【0014】
以下、各部の実施の形態を詳細に説明する。図1を参照する。
(第1積層体の作製)
素子基板1上に、以下のように各層を積層する。
〔TFTの形成〕
第1基板11上にTFT12がマトリックス状に配置され、TFTのソース電極が配線電極13を介して各画素に対応した反射電極15に接続される。TFTは、ゲート電極をゲート絶縁膜の下に設けたボトムゲートタイプで、能動層として多結晶シリコン膜を用いている。
【0015】
第1基板11の材料としては特に限定するものではなく、第2基板21側から光を取り出すため、必ずしも透明でなくてもよい。たとえば、Al等の金属材料や、ガラス、石英などの非晶質基板や樹脂等の透明または半透明材料、あるいはSi、GaAsなどの結晶性基板のように不透明な材料を利用できる。フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂などを用いることもできる。
【0016】
本発明の有機発光デバイスは、各画素にTFTのスイッチング素子のアレイを介在させたアクティブマトリクス駆動タイプである。TFTとしては、通常の多結晶シリコンTFTを用いることができる。TFTは、有機EL素子の各画素の端部に設けられ、その大きさは10〜30μm程度である。なお、画素の大きさは20μm×20μmないし300μm×300μm程度である。
【0017】
第1基板11上に、TFT12の配線電極13が設けられる。配線電極は抵抗が低く、電子注入電極を電気的に接続して抵抗値を低く抑える機能がある。配線電極13としては、Al、Alおよび遷移金属が、好ましく使用できる。配線電極の厚さは、100〜500nmが好ましい。有機EL素子の反射電極とTFTの配線電極とを併せた全体の厚さとしては、特に制限はないが、通常100〜1000nm程度とする。
【0018】
TFTの配線電極13と有機EL素子の反射電極15との間には絶縁層14を設ける。絶縁層14は、酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機系材料をスパッタや真空蒸着で成膜したもの、フォトレジスト、ポリイミド、アクリル樹脂などの樹脂系材料の塗膜など、絶縁性を有するものであればいずれであってもよい。絶縁層の下側には配線電極等が存在するので、絶縁層をパターニングする際にこれらにダメージを与えないようなパターニングが可能な材料を用いることが好ましい。また、絶縁層は、配線電極を水分や腐食から守る耐食・耐水膜の役割も果たすものであり、これらの諸要求を満たす材料として、ポリイミドが好ましい。絶縁層23の厚さは特に限定されず、必要な絶縁性が得られるように材料に応じて適宜決定することができる。
〔反射電極〕
反射電極15は、高反射率の金属、アモルファス合金、微結晶性合金を用いて蒸着法、スパッタ法などのドライプロセスによって形成することができる。高反射率の金属は、Al,Ag,Mo,W,Ni,Crなどを含む。高反射率のアモルファス合金は、NiP,NiB,CrP,CrBなどを含む。高反射率の微結晶性合金は、NiAlなどを含む。
【0019】
反射電極15を陰極として用いる場合には、反射電極15と有機EL層16との界面にバッファ層(不図示)を設けて、有機EL層16に対する電子注入効率を向上させることが好ましい。バッファ層の材料としては、Li,Na,Kなどのアルカリ金属、Ca,Mg,Srなどのアルカリ土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などを用いることができる。
【0020】
反射電極15は、用いる材料に依存して、抵抗加熱または電子ビーム加熱による蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。複数の部分電極からなる反射電極15が必要になる場合には、所望の形状を与えるマスクを用いて複数の部分電極からなる反射電極を形成してもよい。あるいはまた、有機EL層16の積層前に、逆テーパー状の断面形状を有する分離隔壁(不図示)を形成し、それによって分離される複数の部分電極からなる反射電極を形成してもよい。
【0021】
有機EL素子中に複数の独立した発光部を形成するために、一方の電極(たとえば、上部電極である金属ハーフミラー電極17)を、ストライプパターンを持たない一様な平面電極とし、および他方の電極(たとえば、反射電極15)を各発光部に対応するような複数の部分電極にパターニングしてもよい。この場合には、TFTを利用して各発光部に対応する複数のスイッチング素子を設けて、各発光部に対応する前記の部分電極に1対1で接続して、いわゆるアクティブマトリクス駆動を行うことが可能になる。
〔有機EL層〕
有機EL素子は、陽極、陰極、および陽極と陰極に挟持され、かつ有機発光層を含む少なくとも1つの層からなる有機EL層16を有する。有機EL層16は、少なくとも有機発光層を備え、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を介在させた構造を有する。具体的には、有機EL素子は下記のような層構成からなるものが採用される(陽極および陰極は、反射電極15または金属ハーフミラー電極17のいずれかである。)。
【0022】
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
本実施の形態のトップエミッション構造では、上記の構成において、陽極は有機発光層の発する光の波長域において透明(透過率が好ましくは50%以上。)であることが必要で、この陽極を介して有機EL層が発光する光を外部へ取り出す。本発明は、陽極、有機EL層、陰極の順に積層して陰極側から光を取り出す場合にも適用可能であることはいうまでもない。
【0023】
有機EL層16を構成する各層の材料としては、公知のものが使用される。また、有機EL層を構成する各層は、蒸着法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。正孔輸送層は、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(α−NPD)を用いることができ、これにF4−TCNQなどのルイス酸化合物をドーピングしてもよい。有機発光層の材料は、所望する色調に応じて選択することが可能であり、例えば、青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などを使用することが可能である。ホスト材料としては、アルミキレート、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、2,5−ビス(5−tert−ブチル−2−ベンゾオキサゾイル)チオフェン(BBOT)を用いることができる。青色ドーパントとしては、ぺリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)、4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)などを0.1〜5%添加することが用いられる。電子輸送層は、2−(4−ビフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、アルミニウムのキノリノール錯体(例えばAlq3)などを使用することができる。そして、電子注入層はLi,Ca,Cs,Mgなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属、あるいはこれら金属のフッ化物または酸化物などを用いることができる。
【0024】
有機EL層の膜厚については駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができるが、通常は、正孔輸送層は20〜80nm、有機発光層は20〜40nm、電子輸送層は20〜40nmとする。しかし、これらに限定するものではない。
〔金属ハーフミラー電極〕
金属ハーフミラー電極17は、有機EL素子の上部電極として透明電極の役割を持つものである。金属ハーフミラー電極17は、高反射率の貴金属(Au、Ag、Pt、など)を用いて形成することができる。成膜方法としては、蒸着法によって下地有機EL層へのダメージなく形成することが好ましい。該電極は450nm〜750nmの波長領域で透過率50%以上が必要なため、膜厚は5〜20nmであることが好ましい。
〔導電性高分子化合物層〕
導電性高分子化合物層18は前記金属ハーフミラー電極の保護膜として設ける層である。導電性高分子化合物層18として、3,4−ポリエチレンジキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)をスピンコート等の塗布方式で形成することができる。この材料は屈折率1.5〜1.6の透明材料であり、塗布面は平坦化される。膜厚は2μm以内であることが好ましい。
(第2積層体の作製)
第2基板21上にカラーフィルタ等を以下のように形成する。
〔ブラックマトリクス〕
第2基板21上に、各カラーフィルタ画素間に、主にコントラストの向上を目的として、可視域を透過しない、ブラックマトリクス22を配設する。ブラックマトリックス(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製、CK−7800)をフォトリソグラフ法で形成する。厚さは1μm程度である。
【0025】
第2基板21の材料としては、デバイスの構成上この基板側から光を取り出すため、光透過性の高い材質が利用される。たとえば、ガラス、石英などの非晶質の透明材料、あるいはポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などを用いることができる。
〔カラーフィルタ層〕
カラーフィルタ層23(R,G,B)は、入射光を分光して所望される波長域の光のみを透過させる層である。本発明のデバイスで用いるカラーフィルタ層23(R,G,B)は、液晶ディスプレイ等フラットパネルディスプレイに用いられるカラーフィルタであれば良く、近年はフォトレジストに顔料を分散させた、顔料分散型カラーフィルタが良く用いられる。
【0026】
フラットパネルディスプレイ用のカラーフィルタは、400〜550nmの波長域の光を透過する青色カラーフィルタ層23B、500〜600nmの波長域の光を透過する緑色カラーフィルタ層23G、600nm以上の波長域の光を透過する赤色カラーフィルタ層23Rのそれぞれを配列したものが一般的である。赤色カラーフィルタ層(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製、CR−7001)、緑色カラーフィルタ層(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製、CG−7001)、青色カラーフィルタ層(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製、CB−7001)をそれぞれフォトリソグラフ法で形成することができる。
【0027】
所望される波長域の光を高い色純度で得るために、カラーフィルタ層の厚さは0.5〜20μmが好ましい。より好ましくは、カラーフィルタ層の厚さは1〜2μmが好ましい。
〔色変換層〕
色変換層24は、光源から発せられる近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して、より長波長の光を放出する波長分布変換のための層である。本発明において、色変換層に用いる蛍光色素としては、発光層から発する近紫外領域ないし可視領域の光、特には青色ないし青緑色領域の光を吸収して波長分布の異なる可視光を発する機能があるものであればよいが、好ましくは、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種類以上が用いられ、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種以上と組み合わせて用いてもよい。色変換層は、100nm〜2μmの膜厚を、より好ましくは150〜600nmの範囲内の膜厚を有して形成することが好ましい。
【0028】
本発明の色変換層24は、カラーフィルタ層が形成された前記第2基板上に、赤色光への変換を行う場合には輝度の高い赤色光が得られるポリアリーレンビニレン骨格を繰り返し単位として有する高分子膜材料をインクジェット法にて塗布し成膜する。前記高分子膜材料として、たとえば、2,5−ジフェニル−1,2,4−オキサジアゾールで終端したポリ[9,9−ジ−(2−エチルへキシル)−フルオレニル−2,7−ジイル](吸収ピーク波長443nm、蛍光ピーク波長576nm)、POSSで終端したポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルへキシル−オキシ)−1,4−フェニレン−ビニレン] (吸収ピーク波長490nm、蛍光ピーク波長585nm)がある。これらを適用した色変換層の屈折率は1.8〜1.9の範囲内である。
(充填樹脂層)
充填樹脂層20は、第1および第2積層体を貼り合わせ、有機EL素子からの発光を低損失で透過させる層である。また、充填樹脂層は、有機EL素子の電極が外気や水分により酸化したり、有機EL層が劣化したりするのを防止する働きを持つ層でもある。充填樹脂層20として用いる樹脂接着剤は、450〜750nmの波長域で平均80%以上の光透過率を有し、かつ450〜750nmの波長域で光透過率の変動幅が平均の光透過率の±5%以内であることが好ましい。それにより、充填樹脂層が450〜750nmの波長域の可視光に対して充分な透明性を有し、発光層において発生した光は充填樹脂層を通して低損失で色変換層に入射させることができる。
【0029】
本発明では、金属ハーフミラー電極17の保護膜として、低屈折率(1.5〜1.6)の導電性高分子化合物層18が形成される。一方、色変換層24の屈折率は1.7〜1.8であるので、充填樹脂層20から色変換層に入射する光の損失を抑えるためには、充填樹脂層の材料として屈折率が1.6〜1.8の透明樹脂を使用することが好ましい。このような高屈折率樹脂として、たとえば、屈折率1.68のアクリル系樹脂であるJSR(株)製オプスタ−JN7102、屈折率1.63であるフルオレン誘導体アクリレートである大阪ガスケミカル(株)製のオグソールEA−0200、屈折率1.63のエポキシ系樹脂である(株)アーデル製のオプトクレーブ、屈折率1.62のエポキシ系樹脂である大阪ガスケミカル(株)製のオグソールEG−210などが利用できる。また、充填樹脂層としては、上記材料にフィラーを添加したものを用いてもよい。たとえば、充填樹脂層に添加されるフィラーとしては、ナノ微粒子のSiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)もしくはSiN(窒化ケイ素)等の無機高屈折率材料、またはAg、NiもしくはAl等の金属材料を利用できる。
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものでない。
【実施例1】
【0031】
(第1積層体)
〔TFTの作製〕
図1に示すように、第1基板11にボトムゲート型のTFT12を形成し、その上に絶縁層13を設け、TFT上の配線電極14が絶縁層に設ける開口部(コンタクトホール)を介して、反射電極15と接触することで、反射電極にTFTのソースが接続される構成とした。素子基板には厚さ0.7mmのコーニング社製1737ガラスを用いた。
〔絶縁層〕
絶縁性コーティング剤フォトニース(東レ株式会社製)を用いてポリイミド膜を形成し、フォトリソグラフ法を用いて、反射電極の各ストライプ状部分の下に幅10μm、長さ10μmの開口部が長さ方向のピッチ40μmで配置された絶縁層13を形成した。
〔反射電極〕
反射電極15は、真空蒸着法にて厚さ300nm のAlを全面蒸着し、続いてバッファ層としてCa膜を厚さ10nm蒸着して形成された。次いでエッチングによるフォトリソグラフ法を利用してパターニングを行い、反射電極を得た。Al膜はあらかじめ絶縁層に設けておいたコンタクトホールを介して、TFTソース電極と接続された。
〔有機EL層〕
以上の工程に続き、反射電極を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、電子輸送層、有機発光層、正孔輸送層を、真空を破らずに順次成膜して有機EL層16を形成した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。電子輸送層はアルミキレート(Alq)を35nm積層した。有機発光層はホスト材料4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)に、青色ゲスト材料として4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を5%ドープして30nm積層した。正孔輸送層はα−NPDを20nm積層した。該有機EL層の屈折率は、1.8であり、波長470nmの光に対し共振条件、屈折率×膜厚=(波長/2)×整数、を満たすように膜厚が調整された。それぞれの層は1Å/sの蒸着速度で堆積された。
〔上部電極〕
次に、金属ハーフミラー電極17として、厚さ10nmのAu(透過率70%)を、真空を破らずに全面に蒸着形成した。
【0032】
引き続き、前記金属ハーフミラー電極の上に、導電性高分子化合物層18として、PEDOT/PSS混合液(H.C.Starck社製、CLEVIOS P AI4083)を回転数1800RPMでスピンコート法にて塗布後、100℃、10分間、加熱処理して、厚さ0.3μmの塗膜を形成した。この膜の屈折率は、波長500nmで1.53である。
(第2積層体の作製)
〔ブラックマトリクス〕
第2基板21として厚さ0.7mmの1737ガラス(コーニング社製)を用いた。純水で超音波洗浄し、さらにUVオゾン洗浄した。この基板の上に、スピンコート法を用いてカラーモザイクCK−7800(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製)を塗布し、フォトリソグラフ法を用いてパターニングを行い、幅8μm、膜厚1μmの複数のストライプ状部分がピッチ40μmで配列されているブラックマトリクス22を形成した。
〔カラーフィルタ層〕
前記第2基板上に赤色フィルタ材料(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製、カラーモザイクCR−7001)をスピンコート法にて塗布後、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、幅32μm、膜厚1μmのストライプ状の赤色カラーフィルタ層23Rを形成した。
〔色変換層〕
次に、蛍光色素としてポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルへキシル−オキシ)−1,4−フェニレン−ビニレン](ADS社製、ADS100RE)をTHF溶媒で調製した、濃度1.5wt%色変換層溶液を、インクジェット装置(ライトレックス製、Litrex120L)を用いて窒素雰囲気中で、前記形成したカラーフィルタ層上に塗布して、幅32μm、膜厚500nmの赤色の色変換層24を形成した。インクの乾燥は、窒素雰囲気を破ることなく、真空乾燥炉を用い、真空度1.0×10−3Pa、温度100℃で行った。
(充填樹脂層の形成)
上記のように作製した第1積層体100と第2積層体200とを、グローブボックス内(水分濃度1ppm以下、酸素濃度1ppm以下の窒素雰囲気)で、アクリル系樹脂接着剤であるオプスタ−JN7102(JSR(株)製、屈折率1.68)を用いて接着し貼り合わせた後、80℃、1時間、熱処理硬化して充填樹脂層20を形成し、有機発光デバイスを作製した。
【0033】
得られた有機発光デバイスを評価した結果、駆動電圧10Vにおいて、効率2.1cd/Aの赤色発光を得た。
(比較例1)
以下、比較例1において、図2を参照することとする。
金属ハーフミラー電極17の上に、導電性高分子化合物層の代わりに、無機保護膜28としてスパッタ法でIZO(In−Zn酸化物)膜(屈折率2.1)を膜厚200nmで形成すること以外は、実施例1と同様にして、赤色発光の有機発光デバイスを作製した。
【0034】
得られた有機EL発光デバイスを評価した結果、駆動電圧10Vにおいて、効率1.3cd/Aの赤色発光を得た。
(比較例2)
以下、比較例2において、図1を参照することとする。
充填樹脂層20の形成に用いる接着剤として、屈折率1.5のアクリル系樹脂接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、赤色発光の有機発光デバイスを作製した。
【0035】
得られた有機発光デバイスを評価した結果、駆動電圧10Vにおいて、効率1.8cd/Aの赤色発光を得た。
本発明にしたがって、有機EL素子内の全反射などにより発生する色変換層への入射光量の損失を改善することで、CCM方式の有機発光デバイスの発光効率が改善向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の有機発光デバイス(1画素分)の一つの実施形態を示す断面模式図である。
【図2】比較例1の有機発光デバイス(1画素分)の実施形態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0037】
11 第1基板、
12 TFT、
13 配線電極、
14 絶縁層、
15 反射電極、
16 有機EL層、
17 金属ハーフミラー電極、
18 導電性高分子化合物層、
20 充填樹脂層、
21 第2基板、
22 ブラックマトリクス、
23R,23G,23B カラーフィルタ層、
24 色変換層、
28 無機保護膜、
100 第1積層体、
200 第2積層体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上に反射電極、有機EL層、および透明電極を備えた第1積層体と、透光性の第2基板上にカラーフィルタ層および色変換層を備えた第2積層体とを対向させて、充填樹脂層を介して接着した構造を有する有機発光デバイスにおいて、前記透明電極が金属ハーフミラー電極および導電性高分子化合物層からなることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項2】
前記金属ハーフミラー電極がAu,Pt,Agのどれか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
前記金属ハーフミラー電極の可視光の透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記導電性高分子化合物層がPEDOT/PSSを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記充填樹脂層の屈折率が1.6以上1.8以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の有機発光デバイス。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−80064(P2010−80064A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243527(P2008−243527)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】