説明

有機金属気相成長装置及び半導体の製造方法

【課題】 反応生成物が基板以外の領域に堆積することを防止すると共に、再現性良く半導体を成長させることができるMOCVD装置又は半導体層の製造方法を提供する。
【解決手段】 有機金属気相成長装置は、内部に配置されたサセプタ15上に基板1Aを保持するチャンバー10と、チャンバー10の壁部から内部にかけて設けられ、チャンバー10内に冷却ガスを導入する冷却ガス導入口2dと、チャンバー10の壁部から内部にかけて冷却ガス導入口2dとは独立して設けられ、チャンバー10内に原料ガスを導入するプロセスガス導入口2a及び2bと、プロセスガス導入口2a及び2bから連続するように設けられ、プロセスガス導入口2a及び2bから導入される原料ガスを基板1A上に搬送するプロセスガスフローチャンネルとを備えている。冷却ガス導入口2dは、冷却ガスがプロセスガスフローチャンネルの外壁に当たるような位置に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属気相成長装置及びその装置を用いた半導体の製造方法に関するものであり、特に、III 族窒化物半導体を再現性良く成長させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN、AlN、InN、これらの混晶であるAlGaN又はInGaNなどのIII族窒化物半導体は、可視から紫外領域の発光素子、受光素子又は高速動作トランジスタに用いる半導体材料として有望である。
【0003】
III 族窒化物半導体を成長させる装置としては、有機金属気相成長(MOCVD)装置が使用されることが多い。MOCVD法を用いてIII 族窒化物半導体を成長させる場合、通常、1000℃以上の高温で基板を加熱しながらIII 族窒化物半導体を成長させる。このため、反応炉における基板周辺の部材は非常な高温に加熱される。高温に加熱された部材が存在すると、原料ガスがその高温に加熱された部材と反応して反応生成物が生じ、加熱された部材にその反応生成物が付着する。
【0004】
このような反応生成物が、例えば、基板をモニタリングするために設けている透明な石英の部材に付着すると、結晶成長中の表面状態又は温度をモニタリングすることができなくなるという問題がある。
【0005】
また、多くの場合、反応生成物はフレーク状に剥がれやすく、剥がれた反応生成物が基板上に飛来することにより、結晶成長を阻害するという問題がある。
【0006】
これらの問題に対しては、以下に示す第1及び第2の従来例が提案されている。
【0007】
まず、第1の従来例(例えば特許文献1参照)に係る半導体結晶膜の成長装置の構成について、図21を参照しながら概説する。
【0008】
図21に示すように、反応容器100の内部において、シャフト101に支持されたサセプタ102上には基板100Aが搭載されており、サセプタ102の下側には、基板100Aを加熱するためのヒータ103が設置されている。また、反応容器100の側壁部には、基板100Aに対して反応ガスを水平方向から噴射するように反応ガス噴射管104が設置されている。また、反応容器100の上壁部には、上端が外部に突出すると共に下端が下方に向かってテーパー形状を有する副噴射管105が設置されている。また、反応容器100の外部には、光源106及び光線センサー107が設けられている。さらに、反応容器100には、内部のガスを排気する排気ポンプ108が設けられている。
【0009】
以上のような構成を有する第1の従来例に係る半導体結晶膜の成長装置では、基板100Aに向かって水平方向から反応ガスを噴射するすると共に、基板100Aに対して副噴射管105から不活性ガスを噴射させることにより、副噴射管105への反応生成物の堆積を防いで、基板上における結晶成長中の表面状態を副噴射管105を介してモニタリングすることができる。
【0010】
また、第2の従来例(例えば特許文献2参照)に係る半導体結晶膜の成長装置の構成について、図22を参照しながら概説する。
【0011】
図22に示すように、分岐部を有する外筒200と内筒201との二重構造によって反応炉は構成されている。また、上部側の内筒201の一部には、外筒200を流れるガスを導入可能なように傾斜板201aが設けられている。また、内筒201の内部には、2本の原料供給管202が設けられている。また、下部に位置する外筒200の分岐部及び内筒201に設けられた開口部には、回転軸203に固定され且つ内部にヒータ204を備えたサセプタ205が設けられている。
【0012】
以上のような構成を有する第2の従来例に係る半導体結晶膜の成長装置では、内筒201内には原料ガスを流すと共に外筒200内にはパージガスを流し、サセプタ205上の基板200Aの近傍において、外筒200内を流れるパージガスを内筒201に流入させることにより、外筒200から内筒201に流入するパージガスによって原料ガスが基板200Aに押し付けられるので、基板200A上で成長が起こりやすくなる。これにより、内筒201の内壁に堆積する反応生成物を抑制することができる。
【特許文献1】特開平04−170390号公報
【特許文献2】特開平10−167897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述した第1及び第2の従来例の構造では、反応生成物の生成を抑制するために用いるガスであるいわゆるパージガスが、反応ガス又は原料ガスであるいわゆるキャリアガスのフロー中に混入してしまう構造となっている。このため、以下の問題が生じる。
【0014】
まず、キャリアガスとパージガスとを独立に制御することができないので、成長条件を制御することが非常に難しいという問題がある。特に、III 族窒化物半導体を成長させる場合には、成長させる混晶層に応じて、用いるキャリアガスの条件が異なるので、成長条件を制御することが特に難しい。例えば、III 族窒化物半導体を成長させる場合として、例えばGaN、AlGaN又はAlNを成長させる場合には水素を主成分とするキャリアガスを用いる一方、例えばInGaNを成長させる場合には窒素を主成分とするキャリアガスを用いる。また、AlGaNを成長させる場合には、原料となるトリメチルアルミニウム(TMA)とアンモニアとが、基板に到達する前に気相反応を起こして、成長に寄与しない重合反応を起こしやすいことから、キャリアガスのガス流量を増やして流速を上げることにより、キャリアガスがガスの噴射口から基板上に到達するまでの時間を短縮して、気相反応を抑制することが行なわれている。このように、III 族窒化物半導体の混晶の種類に応じてキャリアガスの成分又は流量を変化させる必要があるので、最適なパージガスの条件も変化することになる。このため、III 族窒化物半導体の混晶の種類毎にキャリアガスとパージガスとを制御する必要が生じるので、成長条件の設定が非常に難しく、さらに、その制御は非常に困難である。
【0015】
また、不活性ガスよりなるパージガスがキャリアガス中に流入する構造であるので、基板上のアンモニア分圧を大きくすることができないという問題がある。
【0016】
III 族窒化物半導体を成長させる場合には、V 族元素である窒素の取り込み効率が悪いので、窒素の原料ガスであるアンモニア分圧を大きくする必要がある。しかしながら、パージガスがキャリアガス中に流入する構造であると、基板上ではアンモニアがパージガスによって薄められるので、アンモニア分圧が低下してしまう。多数枚を成長させる場合などのために大型化された装置を用いる場合には、下流にいくほどパージガスとアンモニアとが混合する割合が高くなるので、アンモニア分圧が低下する。このため、全ての基板に対して十分なアンモニア分圧を維持することが難しくなる。
【0017】
したがって、MOCVD装置を用いてIII 族窒化物半導体を成長させる場合には、製造レベルで安定して再現性良く装置を運転すること、又は生産の効率化のために大型化された設備を用いて多数枚を成長させたり又は大面積のウェハ上で成長させることが難しいという事情がある。
【0018】
前記に鑑み、本発明の目的は、反応生成物が基板以外の領域に堆積することを防止すると共に、再現性良く半導体を成長させることができるMOCVD装置又は半導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するため、本発明に係る有機金属気相成長装置は、内部に配置されたサセプタ上に基板を保持するチャンバーと、チャンバーの壁部から内部にかけて設けられ、チャンバー内に冷却ガスを導入する冷却ガス導入口と、チャンバーの壁部から内部にかけて冷却ガス導入口とは独立して設けられ、チャンバー内に原料ガスを導入するプロセスガス導入口と、プロセスガス導入口から連続するように設けられ、プロセスガス導入口から導入される原料ガスを基板上に搬送するプロセスガスフローチャンネルとを備え、冷却ガス導入口は、冷却ガスがプロセスガスフローチャンネルの外壁に当たるような位置に設置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る有機金属気相成長装置によると、冷却ガスによってプロセスガスフローチャンネルを冷却することができるので、反応生成物がプロセスガスフローチャンネルに堆積することを抑制することができる。これにより、基板上への反応生成物の飛来が低減され、再現性良く半導体を製造できる有機金属気相成長装置を提供することができる。
【0021】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、プロセスガス導入口は、V 族ガスを導入する第1の導入口と、III 族ガスを導入する第2の導入口とを有し、第1の導入口と第2の導入口とは、プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離されていることが好ましい。
【0022】
このようにすると、V 族ガスとIII 族ガスとが、基板表面近傍に至るまでに気相反応することを抑制することができる。
【0023】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、第1の導入口及び第2の導入口は、この順でサセプタに近い側から設置されていることが好ましい。
【0024】
このようにすると、第1の導入口から導入されるV 族ガスを基板上に効果的に供給することができる。
【0025】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、冷却ガス導入口は、プロセスガス導入口の上に重なるように設置されていることが好ましい。
【0026】
このようにすると、冷却ガス導入口から導入される冷却ガスによってプロセスガスフローチャンネルを効果的に冷却することができる。また、このような簡易な構造で前述の効果を実現することができるので、組み立て精度に左右されることなく安定して前述の効果を得ることができる。
【0027】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、冷却ガス導入口から連続するように設けられた冷却ガスフローチャンネルをさらに備えていることが好ましい。
【0028】
このようにすると、冷却ガスが流れる冷却ガスフローチャンネルによってプロセスガスフローチャンネルを効果的に冷却することができる。
【0029】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、冷却ガスフローチャンネルは、プロセスガスフローチャンネルの上に重なるように設置されていることが好ましい。
【0030】
このようにすると、冷却ガスフローチャンネルがプロセスガスフローチャンネル上に重なるような構造となるので、プロセスガスフローチャンネルを効果的に冷却することができる。また、このような簡易な構造で前述の効果を実現することができるので、組み立て精度に左右されることなく安定して前述の効果を得ることができる。
【0031】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、冷却ガスフローチャンネルが、石英よりなることが好ましく、また、この場合には、原料ガスに用いるV 族ガスによって冷却ガスフローチャンネルが腐食することを防止することができる。
【0032】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、プロセスガスフローチャンネルは、石英よりなることが好ましく、また、この場合には、原料ガスに用いるV 族ガスによってプロセスガスフローチャンネルが腐食することを防止することができる。
【0033】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、プロセスガス導入口は、V 族ガスを導入する第1の導入口と、III 族ガスを導入する第2の導入口と、押圧ガスを導入する第3の導入口とを有し、第1の導入口と、第2の導入口と、第3の導入口とは、プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離されていることが好ましい。
【0034】
このようにすると、押圧ガスによって基板上におけるV 族ガス及びIII 族ガスの濃度を実効的に高めることができるので、原料ガスの利用効率を高めることができる。また、V 族ガスとIII 族ガスとが、基板表面近傍に至るまでに気相反応することを抑制することができる。
【0035】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、第1の導入口、第2の導入口及び第3の導入口は、この順でサセプタに近い側から設置されていることが好ましい。
【0036】
このようにすると、第1の導入口から導入されるV 族ガスを基板上に効果的に供給することができる上に、押圧ガスがV 族ガス及びIII 族ガスの上を流れるので、基板上におけるV 族ガス及びIII 族ガスの濃度を実効的により高めることができる。
【0037】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、基板を加熱するヒータをさらに備え、ヒータは、少なくとも2つ以上に分割された構造を有していることが好ましい。
【0038】
このようにすると、プロセスガスとして用いるガスの種類又は冷却ガスに用いるガスの種類に応じて変化するサセプタにおける温度分布を均一に調整することができる。このため、発光波長又は組成分布などが基板面内において均一な半導体を基板上に成長させることができる。
【0039】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、ヒータは、同心円上に分割されていることが好ましい理由は、サセプタにおける温度分布は、プロセスガスとして用いるガスの種類又は冷却ガスに用いるガスの種類に応じて、サセプタの中央から外側に向かう程ばらつくからである。
【0040】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、ヒータの各々は、互いに独立して電力を制御することが好ましい。
【0041】
このようにすると、サセプタにおける温度分布を均一に調整することが可能になる。
【0042】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、チャンバーの外部に設けられ、プロセスガスフローチャンネルを介して、基板に対して光を照射する装置をさらに備えていることが好ましい。
【0043】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、光を照射する装置は、基板における膜厚を測定する装置であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、光を照射する装置は、基板の回転に同期して動作することが好ましい。
【0045】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、チャンバーの外部に設けられ、プロセスガスフローチャンネルを介して、基板又はサセプタからの赤外線を測定する装置をさらに備えていることが好ましい。
【0046】
本発明に係る有機金属気相成長装置において、赤外線を測定する装置は、サセプタの温度を測定する装置であることが好ましい。
【0047】
本発明に係る半導体の製造方法は、チャンバー内に配置されたサセプタ上に保持された基板上に、チャンバーの壁部から内部にかけて設けられたプロセスガス導入口から導入される原料ガスを、プロセスガス導入口から連続するように設けられたプロセスガスフローチャンネルを介して搬送することにより、基板上に半導体を成長させる半導体の製造方法であって、チャンバーの壁部から内部にかけて設けられた冷却ガス導入口から導入される冷却ガスを、プロセスガスフローチャネルの外壁に当てながら、半導体を成長させることを特徴とする。
【0048】
本発明に係る半導体の製造方法によると、冷却ガスによってプロセスガスフローチャンネルを冷却することができるので、反応生成物がプロセスガスフローチャンネルに堆積することを抑制することができる。これにより、基板上への反応生成物の飛来が低減され、再現性良く半導体を製造できる有機金属気相成長装置を提供することができる。
【0049】
本発明に係る半導体の製造方法において、プロセスガス導入口から導入される原料ガスは、III 族ガスとV 族ガスとを含み、III 族ガスとV 族ガスとは、プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離して導入されることが好ましい。
【0050】
このようにすると、V 族ガスとIII 族ガスとが、基板表面近傍に至るまでに気相反応することを抑制することができる。
【0051】
本発明に係る半導体の製造方法において、III 族ガス及びV 族ガスは、サセプタに近い側からこの順で分離して導入されることが好ましい。
【0052】
このようにすると、第1の導入口から導入されるV 族ガスを基板上に効果的に供給することができる。
【0053】
本発明に係る半導体の製造方法において、V 族ガスは、アンモニアガスを含むことが好ましい。
【0054】
このようにすると、第1の導入口から導入されるアンモニアガスを基板上に効果的に供給することができる。
【0055】
本発明に係る半導体の製造方法において、冷却ガスは、冷却ガス導入口から連続すると共にプロセスガスフローチャンネルの上に重なるように設けられた冷却ガスフローチャンネル内に導入されることが好ましい。
【0056】
このようにすると、冷却ガスが流れる冷却ガスフローチャンネルによってプロセスガスフローチャンネルを効果的に冷却することができる。
【0057】
本発明に係る半導体の製造方法において、冷却ガスとして冷却効果に優れた水素ガスを用いることができる。
【0058】
本発明に係る半導体の製造方法において、冷却ガスとして窒素ガスを用いることもできる。また、製造する半導体によって水素ガスよりなる冷却ガスを用いることが好ましくない場合に窒素ガスが有効である。
【0059】
本発明に係る半導体の製造方法において、半導体としてInを含まないIII 族窒化物半導体を成長させる際には、水素ガスを含むガスよりなる冷却ガスを用いると共に、半導体としてInを含むIII 族窒化物半導体を成長させる際には、窒素ガスよりなる冷却ガスを用いることが好ましい。
【0060】
このようにすると、水素ガスによる影響がほとんど見られないInを含まないIII 族窒化物半導体を成長させる際には、冷却効果に優れた水素ガスを用いて反応生成物がプロセスガスフローチャンネルに堆積することを効果的に抑制すると共に、水素ガスによる影響が大きいInを含むIII 族窒化物半導体を成長させる際には、窒素ガスを用いた冷却を行なうことにより、Inの取り込みが十分なIII 族窒化物半導体を成長させることができる。
【0061】
本発明に係る半導体の製造方法において、プロセスガス導入口から導入される原料ガスは、III 族ガスとV 族ガスと押圧ガスとを含み、III 族ガスとV 族ガスと押圧ガスとは、プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離して導入されることが好ましい。
【0062】
このようにすると、押圧ガスによって基板上におけるV 族ガス及びIII 族ガスの濃度を実効的に高めることができるので、原料ガスの利用効率を高めることができる。また、V 族ガスとIII 族ガスとが、基板表面近傍に至るまでに気相反応することを抑制することができる。
【0063】
本発明に係る半導体の製造方法において、III 族ガス、V 族ガス及び押圧ガスは、サセプタに近い側からこの順で分離して導入されることが好ましい。
【0064】
このようにすると、第1の導入口から導入されるV 族ガスを基板上に効果的に供給することができる上に、押圧ガスがV 族ガス及びIII 族ガスの上を流れるので、基板上におけるV 族ガス及びIII 族ガスの濃度を実効的により高めることができる。
【0065】
本発明に係る半導体の製造方法において、V 族ガスは、アンモニアガスを含むことが好ましい。
【0066】
このようにすると、アンモニアガスを基板上に効果的に供給することができる上に、押圧ガスがアンモニアガスの上を流れるので、基板上におけるアンモニアガスの濃度を実効的により高めることができる。
【0067】
本発明に係る半導体の製造方法において、押圧ガスは、窒素ガスを含む場合には、III 族窒化物半導体を成長させる際に好ましい。
【0068】
本発明に係る半導体の製造方法において、基板を加熱するために設けられているヒータは、同心円上に内側から少なくとも第1のヒータと第2のヒータとに分割された構造を有しており、冷却ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて、第1のヒータと第2のヒータとのそれぞれに印加する電力を変化させながら、半導体を成長させることが好ましい。
【0069】
このようにすると、プロセスガスとして用いるガスの種類又は冷却ガスに用いるガスの種類に応じて変化するサセプタにおける温度分布を均一に調整することができる。特に、サセプタにおける温度分布は冷却ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて変化するので、冷却ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて、第1のヒータと第2のヒータとのそれぞれに印加する電力を変化させることにより、発光波長又は組成分布などが基板面内において均一な半導体を基板上に成長させることができる。
【0070】
本発明に係る半導体の製造方法において、冷却ガスに含まれる水素ガスの割合を増加させる際には、第2のヒータに印加する電力を第1のヒータに印加する電力に比べて低下させることが好ましい理由は、冷却ガスに含まれる水素ガスの割合が増加するとサセプタの温度はその外周に向かって温度が低下するからである。
【0071】
本発明に係る半導体の製造方法において、冷却ガスに含まれる窒素ガスの割合を増加させる際には、第2のヒータに印加する電力を第1のヒータに印加する電力に比べて増加させることが好ましい理由は、冷却ガスに含まれる窒素ガスの割合が増加するとサセプタの温度はその外周に向かって温度が上昇するからである。
【0072】
本発明に係る半導体の製造方法において、基板を加熱するために設けられたヒータは、同心円上に内側から順に少なくとも第1のヒータと第2のヒータとに分割された構造を有しており、原料ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて、第1のヒータと第2のヒータとのそれぞれに印加する電力を変化させながら、半導体を成長させることが好ましい。
【0073】
このようにすると、プロセスガスとして用いるガスの種類又は冷却ガスに用いるガスの種類に応じて変化するサセプタにおける温度分布を均一に調整することができる。特に、サセプタにおける温度分布は原料ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて変化するので、原料ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて、第1のヒータと第2のヒータとのそれぞれに印加する電力を変化させることにより、発光波長又は組成分布などが基板面内において均一な半導体を基板上に成長させることができる。
【0074】
本発明に係る半導体の製造方法において、原料ガスに含まれる水素ガスの割合を増加させる際には、第2のヒータに印加する電力を第1のヒータに印加する電力に比べて低下させることが好ましい理由は、原料ガスに含まれる水素ガスの割合が増加するとサセプタの温度はその外周に向かって温度が低下するからである。
【0075】
本発明に係る半導体の製造方法において、原料ガスに含まれる窒素ガスの割合を増加させる際には、第2のヒータに印加する電力を第1のヒータに印加する電力に比べて増加させることが好ましい理由は、原料ガスに含まれる窒素ガスの割合が増加するとサセプタの温度はその外周に向かって温度が上昇するからである。
【発明の効果】
【0076】
本発明に係る有機金属気相成長装置及び半導体の製造方法によると、チャンバー内における基板以外の部分へ反応生成物が堆積することを防止できるので、再現性良く半導体を製造することができる。特に、本発明は、III 族窒化物半導体を製造する場合に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る有機金属気相成長装置及び半導体層の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0078】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機金属気相成長装置(以下、MOCVD装置と記す)の構成を示す概略断面図である。
【0079】
図1に示すMOCVD装置は、ステンレス製のチャンバー10の内部に、ステンレス製のガス導入管11、後述で詳説するフローチャンネル12、及びガスを排気する石英よりなる排気管4が水平方向に配置された横型のMOCVD装置であって、具体的には、以下の構成を有している。
【0080】
図1に示すように、チャンバー10の内部には、チャンバー10の側壁部に設置された後述するガス導入口から延びるように、ガス導入管11が設けられており、該ガス導入管11に連設するように、フローチャンネル12が設けられている。また、チャンバー10の内部には、フローチャンネル12の端部近傍からチャンバー10の側壁部まで延びるように、内部のガスを外部に排気する排気管13が設けられている。また、フローチャンネル12の下部には開口部が形成されており、該開口部には、チャンバー10の外部から内部へ延びる回転軸14によって固定されたカーボン製のサセプタ15が設けられている。そして、半導体を成長させる際には、サセプタ15の上に基板1Aを搭載する。なお、サセプタ15の上には、2インチの基板を3枚搭載することができる。
【0081】
また、回転軸14は中空構造を有しており、その中空の内部にはサセプタ15の温度を測定する熱電対(図示せず)が設けられている。なお、以降では、特に注釈がない限り、サセプタ15の温度とは、熱電対の位置における温度を意味する。また、サセプタ15の下部には、該サセプタ15を加熱する抵抗線よりなるヒータ16が設けられている。また、チャンバー10の上部には、サセプタ15上に搭載された基板1A上に結晶成長する半導体を観察できる観察窓17が設けられている。また、観察窓17の上方には、基板1A上に結晶成長する半導体層の膜厚を測定する膜厚測定装置18が設けられている。膜厚測定装置18は、基板1Aに対して白色光18aを照射して、反射スペクトルを解析することによって膜厚を解析する。反射スペクトルには、結晶成長させた半導体層の膜厚に応じた干渉が発生するので、反射スペクトルを解析することにより、その膜厚を測定することが可能になっている。なお、結晶成長中は、回転軸14によってサセプタ15を回転させるので、基板1Aの位置に同期させて膜厚の測定を行なう必要がある。このため、回転軸14には、回転角度検出機構19が設けられており、膜厚測定装置18は、回転信号ケーブル20を通じて回転角度検出機構19からの回転信号を受けて、基板1Aの位置に同期して膜厚を測定することができる。
【0082】
以下では、図1に示すMOCVD装置の構成についてさらに具体的に説明する。
【0083】
ガス導入管11には、原料ガスを導入するガス導入口として、基板1A近傍まで互いに分離したV 族ガス導入口2a及びIII 族ガス導入口2bが設けられている。これにより、V 族ガスであるアンモニアとIII 族窒化物半導体の原料となる有機金属とが基板1A近傍に至るまでに気相反応することを防止することができる。また、サセプタ15に近い側から順に、V 族ガス導入口2a及びIII 族ガス導入口2bが設けられているので、基板1Aの表面上にV 族ガスであるアンモニアを効果的に供給することができる。さらに、ガス導入管11には、ガス導入口として、フローチャンネル12を冷却する目的で、冷却ガス導入口2dが設けられている。また、V 族ガス導入口2a、III 族ガス導入口2b及び冷却ガス導入口2dは重なるように下から順に設けており、チャンバー10における同じ側からフローチャンネル12内へガスを導入することができる構成となっている。
【0084】
フローチャンネル12については、図2を参照しながら説明する。
【0085】
図2に示すように、フローチャンネル12は、石英よりなり、フローチャンネルベース12a、プロセスガスフローチャンネル12b、及び冷却ガスフローチャンネル12cの組み合わせによって構成されている。
【0086】
フローチャンネルベース12aは、フローチャンネル12全体を支える役割を有し、中央付近にサセプタ15が入る開口を有している。
【0087】
プロセスガスフローチャンネル12bは、フローチャンネルベース12aの上に重ねられている。V 族ガス導入口2aから導入され、V 族ガスフロー3a(図1参照)を流れるV 族ガスと、III 族ガス導入口2bから導入され、III 族ガスフロー3b(図1参照)を流れるIII 族ガスとは、プロセスガスフローチャンネル12bとフローチャンネルベース12aとの間の空間、すなわち、フローチャンネルベース12aの上壁a1とプロセスガスフローチャンネル12bの内壁b1とで囲まれた領域内を流れる。
【0088】
冷却ガスフローチャンネル12cは、プロセスガスフローチャンネル12bの上に重ねられている。冷却ガス導入口2dから導入され、冷却ガスフロー3d(図1参照)を流れる冷却ガスは、冷却ガスフローチャンネル12cとプロセスガスフローチャンネル12bとの間の空間、すなわち、プロセスガスフローチャンネル12bの上壁b2と冷却ガスフローチャンネル12cの内壁c1とで囲まれた領域内を流れる。
【0089】
このように、フローチャンネル12は、プロセスガスフローチャンネル12b及び冷却ガスフローチャンネル12cが重なるように構成されているため、冷却ガスフローチャンネル12c内を流れる冷却ガス導入口2d(図1参照)から導入された冷却ガスは、プロセスガスフローチャンネル12b上、つまり、プロセスガスフローチャンネル12bの上壁b2上を流れるので、プロセスガスフローチャンネル12bを効果的に冷却することができる。
【0090】
また、ここで、フローチャンネル12の構成の変形例について、図3(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0091】
図3(a)に示すように、フローチャンネル12は、石英よりなり、フローチャンネルベース12a、プロセスガスフローチャンネル12b、及び内部に中空部を有する冷却ガスフローチャンネル12dが重ねられた構成であってもよい。このような構成にすると、取り替え頻度が高いプロセスガスフローチャンネル12bのみを容易に取り替えることができる。また、このような構成を有する場合であっても、冷却ガスフロー3dにより、プロセスガスフローチャンネル12bの上壁b2を間接的に冷却することができる。
【0092】
また、図3(b)に示すように、フローチャンネル12は、石英よりなり、フローチャンネルベース12a、プロセスガスフローチャンネル12b、観察用窓を有する遮熱板12e、及び冷却ガスフローチャンネル12cが重ねられた構成であってもよい。このような構成にするのは、石英は輻射熱が大きいので、遮熱板12eを設けることにより、プロセスガスフローチャンネル12bに対する冷却効果が抑制されることを防止できる。
【0093】
なお、前述したフローチャンネル12は、フローチャンネルベース12a、プロセスガスフローチャンネル12b、及び冷却ガスフローチャンネル12cが単に重ねられた構成よりなる場合について説明したが、これらの部材を必要に応じて溶接などによって一体化してもよい。また、フローチャンネル12を構成する材料は、石英以外の材料であっても、高温に耐えると共にアンモニアなどによって腐食されない材料、例えばアルミナ、サファイア若しくはSiCよりなる材料、又はこれらのうちのいずれかの材料によってコーティングされた材料などを用いることも可能である。
【0094】
また、プロセスガスフローチャンネル12などの部材は一体の石英よりなる場合について説明したが、プロセスガスフローチャンネル12は、石英が二重に重ねられてなる場合であってもよい。この場合であっても、冷却ガスフロー3dにより、プロセスガスフローチャンネル12bの上壁12bを直接的に冷却することができる。
【0095】
排気管13は、プロセスガスフローチャンネル12内を流れる原料ガスと、冷却ガスフローチャンネル12c内を流れる冷却ガスとを排気するものであり、MOCVD装置の外部に配置された排気ガス処理装置(図示せず)へ排気口4aを通じて接続されている。
【0096】
また、図1に示すように、フローチャンネル12と排気管13とが配置されていることにより、V 族ガスが流れるV 族ガスフロー3a及びIII 族ガスが流れるIII 族ガスフロー3bと、冷却ガスが流れる冷却ガスフロー3dとは、サセプタ15上に搭載された基板1Aの直上において分離された状態であって、排気管13の直前において合流している。このため、基板1Aの直上におけるV 族ガスフロー3aとIII 族ガスフロー3bとは、冷却ガスフロー3dの影響を受けることはない。
【0097】
また、図1に示すように、冷却ガス導入口2dは、ガス導入管11内において、V 族ガス導入口2a及びIII 族ガス導入口2bと一体となって形成されている。このため、導入される冷却ガスによってプロセスガスフローチャンネル12が冷却されるような位置に、冷却ガス導入口2dを別途設けることなく、より効果的にプロセスガスフローチャンネル12を冷却することができる。また、図1及び図2に示すように、プロセスガスフローチャンネル12bの外壁b2上にプロセスガスを導く構造は、冷却ガスフローチャンネル12cをプロセスガスフローチャンネル12b上に重ねただけの単純な構造である。このため、図1に示したMOCVD装置は、フローチャンネル12の組み立て精度などに依存することなく、冷却ガスフロー3dによって得られる効果を容易に実現することができる。なお、ここでは、冷却ガス導入口2dが、V 族ガス導入口2a及びIII 族ガス導入口2bと一体的に形成されている場合について説明したが、例えばチャンバー10の上壁などのチャンバー10における他の位置に冷却ガス導入口2dを設ける場合であっても、その位置から冷却ガスをプロセスガスフローチャンネル12bの外壁b2に吹き付ける構成とすることで、プロセスガスフローチャンネル12bを冷却する効果が実現される。
【0098】
次に、本発明の第1の実施形態に係るMOCVD装置を用いて、III 族窒化物半導体を連続して成長させた場合における膜厚測定装置18によって解析される反射スペクトルの測定結果について、冷却ガスフロー3dが無い場合も含めて説明する。
【0099】
まず、図4は、本発明の第1の実施形態に係るMOCVD装置を用いて、III 族窒化物半導体を連続して成長させてなる半導体の構造を示す断面概略図を示しており、サファイアよりなる基板1Aの上には、低温GaNバッファ層31及びGaN層32が下から順に成長している。
【0100】
以下に、図4に示す構造よりなる半導体を成長させる各工程について説明する。なお、ここではまず、後述する冷却ガスを流さない場合との比較のために、図1に示したMOCVD装置において、冷却ガスを流すことなく、半導体の1回の成長方法について説明する。
【0101】
まず、サファイアよりなる基板1Aをサセプタ15の上に設置した後に、チャンバー10内を密閉する。
【0102】
次に、V 族ガス導入口2a及びIII 族ガス導入口2bから、それぞれ毎分30Lの流量にて水素ガスを導入しながら、サセプタ15の温度が1000℃となるように、ヒータ16を加熱する。このサーマルクリーニングと呼ばれる工程により、サファイアよりなる基板1Aの表面に付着している不純物を蒸発させる。
【0103】
次に、サセプタ15の温度を500℃に設定する。サセプタ15の温度が安定したところで、V 族ガス導入口2aに導入される水素ガスのうち毎分20Lの流量分をアンモニアに切り替えることにより、V 族ガス導入口2aからアンモニアを導入して、そのアンモニアをプロセスガスフローチャンネル12b内に供給する。続いて、V 族ガス導入口2aから導入されるガスのフローが安定したところで、III 族ガス導入口2bに導入される水素ガスにトリメチルガリウム(TMG)を輸送させて、TMGをプロセスガスフローチャンネル12b内に供給する。有機金属の流量は毎分μmolオーダーであって非常に微量であるため、全体のフローに対する割合は非常に少ないので、有機金属を貯蔵した容器内に水素ガスを通じることにより、蒸発した有機金属が水素ガスによって輸送されて、プロセスガスフローチャンネル12b内に導入される。これにより、加熱された基板1A上において、アンモニアとTMGとが反応して、低温GaNバッファ層31が成長する。
【0104】
次に、低温GaNバッファ層31を20nm成長させたところで、III 族ガス導入口2bに導入されるTMGの供給を停止すると共に、V 族ガスフロー3aの流量及びIII 族ガスフロー3bの流量はそのまま維持し、アンモニア及び水素ガスのみを供給させて、サセプタ15の温度を1000℃まで上昇させる。
【0105】
次に、サセプタ15の温度が1000℃で安定したところで、V 族ガスフロー3aの流量及びIII 族ガスフロー3bの流量はそのまま維持し、III 族ガス導入口2bにTMGを再び導入することにより、GaN層32を2μm成長させる。
【0106】
次に、GaN層32が2μm成長したところで、III 族ガス導入口2bに導入されるTMGの供給を停止すると共に、ヒータ16を切ってサセプタ15の温度を下げる。サセプタ15の温度が500℃になるところで、V 族ガス導入口2aに導入されるアンモニアを水素ガスに切り替えて、アンモニアの供給も停止する。さらに、サセプタ15の温度を室温付近まで下げた後、基板1Aを取り出す。
【0107】
以上の一連の工程が、1回の成長である。
【0108】
ここで、比較のために、冷却ガスフロー3dがない場合と、サセプタ15上に基板1Aを搭載する工程及びサセプタ15から基板1Aを取り出す工程以外の工程を通じて冷却ガスフロー3dがある場合とのそれぞれの場合において、膜厚測定装置18によって測定される反射スペクトルの特定の波長の強度についての成長毎の変化を測定した。反射スペクトルは前述したように膜厚に依存する性質を有するので、いずれの場合においても、GaN層32を2μm成長させた直後における反射スペクトル強度を測定すると共に、測定波長を600nmと一定にすることにより、膜厚又は測定波長の影響がない条件下で、それぞれの変化を測定した。また、冷却ガス導入口2dから導入される冷却ガスとして、窒素ガスを用いると共に、その流量を毎分20Lとした。
【0109】
以上の条件下で、前述した1回の成長を繰り返して行なっていくと、通常、プロセスガスフローチャンネル12b内の原料ガスが接する内壁b1に反応生成物が堆積する。このため、膜厚測定装置18から出射される白色光18aが反応堆積物に遮られることにより、基板1Aからの反射スペクトル強度が減少することになる。そして、反射スペクトル強度が未使用のプロセスガスフローチャンネル12bを用いたときに得られる反射スペクトル強度の20%(本実施形態に係るMOCVD装置を用いた場合)まで減衰するとノイズが多くなるので、本実施形態における膜厚測定装置18は反射スペクトル強度を正確に測定することができない。このため、反射スペクトル強度が約20%にまで減衰した時点で、フローチャンネル12を交換するメンテナンスの必要が生じる。
【0110】
図5は、反射スペクトル強度の成長回数依存性を示しており、具体的には、冷却ガス導入口2dから導入された窒素の冷却ガスフロー3dがある場合と、冷却ガス導入口2dから冷却ガスを導入しない場合とのそれぞれについて、反射スペクトル強度(相対値)と成長回数(回)との関係を示している。
【0111】
図5に示すように、冷却ガスを流さない場合には、前述の1回の成長を5回実施した時点で、反射スペクトル強度はほとんどゼロとなっており、反射スペクトルを測定することが不可能になってしまう。一方、冷却ガスを導入して冷却ガスフロー3dがある場合には、冷却ガスを流さない場合に比べて、反応生成物の堆積が抑制されており、前述の1回の成長がおよそ20回実施されるまで、反射スペクトルの測定が可能であった。このような結果が得られたのは、冷却ガスフロー3dによってプロセスガスフローチャンネル12bが冷却されることにより、反応生成物の堆積が抑制されたためである。
【0112】
ここで、冷却ガスフロー3dによる冷却温度について、以下のように考察することができる。TMGとアンモニアとによってGaNを成長させる場合には、およそ350℃で成長が開始し、500℃以上になると、供給量にほぼ律速された成長速度で飽和することが分かっている。したがって、冷却ガスフロー3dにより、プロセスガスフローチャンネル12bの温度を350℃未満に低下させることによって、反応生成物の堆積を抑制することが可能になる。
【0113】
本実施形態に係る冷却ガスフロー3dを持つMOCVD装置は、以下に示す利点を有している。図5に示した結果からも明らかなように、冷却ガスフロー3dを持たないMOCVD装置の場合には、反射スペクトルを測定するために、数回成長させる度にフローチャンネル12を交換するメンテナンスを行なう必要が生じる一方、本実施形態に係る冷却ガスフロー3dを持つMOCVD装置によると、メンテナンスの周期を大きく伸ばすことができる。また、冷却ガスフロー3dによって反応生成物がプロセスガスフローチャンネル12bに堆積されることを抑制できるため、反応生成物が基板1A上へ飛来することを低減できるので、より安定して再現性良く結晶成長を行なうことが可能になる。
【0114】
また、本実施形態に係るMOCVD装置は、他の機構を有するMOCVD装置と比べて、以下に示す利点を有している。一般的に、MOCVD装置を用いてIII 族窒化物半導体を成長させる場合には、反応性の高いアンモニアガスを用いるために、材料の選択の自由度が制限される。例えば、フローチャンネルを冷却する手段として、ステンレス、銅若しくはアルミニウムなどよりなる水冷機構又は放熱機構を用いる場合には、アンモニアガスと反応してこれらの機構が腐食するなどの問題が生じるので、水冷機構又は放熱機構を構成する材料の選択が非常に困難であると共にこれらの機構を備えた構造を作製することが非常に難しい。たとえこれらの機構を用いた構造を実現できた場合であっても、メンテナンスの周期が短いなどの問題が生じやすい。例えば、GaAsを成長させる装置として、ステンレス、銅又はアルミニウムなどよりなる水冷機構を備えた装置を実現することはできるが、これは、GaAsを成長させる場合には、ステンレス、銅又はアルミニウムなどに対して反応性が高いガスを用いる必要がないので、水冷機構が腐食するという問題を懸念する必要がない。しかしながら、III 族窒化物半導体を成長させる場合には、アンモニアガスに対して反応性が高いステンレス、銅又はアルミニウムなどよりなる水冷機構を備えることは困難である。
【0115】
これに対して、本実施形態に係るMOCVD装置では、プロセスガスフローチャンネル12bの上に、該プロセスガスフローチャンネル12bと同じ材質である石英よりなる冷却ガスフローチャンネル12cを重ねて、冷却ガスフローチャンネル12cの内部に冷却ガスを流すというシンプルな構成により、プロセスガスフローチャンネル12bに対する冷却効果を実現することができる。このように、本実施形態では、冷却ガスを用いてプロセスガスフローチャンネル12bを冷却する構成であるので、水冷などの冷却方式に比べると、冷却効果は小さいと考えられるが、実際には、前述したように、350℃未満の温度であれば、反応生成物の堆積を抑制する効果が現れる。このため、水冷によって100℃以下に強く冷却しなくても、本実施形態における冷却ガスを用いた冷却ガスフロー3dによる冷却方式によって、必要な冷却効果を得ることができる。
【0116】
また、本実施形態では、前述したように、V 族ガス導入口2a、III 族ガス導入口2b及び冷却ガス導入口2dはそれぞれ独立して設けられており、V 族ガス導入口2aから導入されるV 族ガス、III 族ガス導入口2bから導入されるIII 族ガス、及び冷却ガス導入口2dから導入される冷却ガスはそれぞれ独立した空間内に導入されるので、それぞれのガスを独立して制御することができる。このことは、以下のような場合に有効である。例えば、結晶成長の要請によってプロセスガスフロー(3a、3b)の流速を落とした場合、プロセスガスが輸送する熱量が低下することにより、フローチャンネル12の温度が上昇してしまうことがある。このとき、冷却ガスフロー3dの流量を増やすことにより、フローチャンネル12の温度を低く維持することができる。これにより、プロセスガスフロー(3a、3b)の設定の自由度を高めることができる。
【0117】
一方、従来のMOCVD装置の場合のように、冷却ガスのフローが原料ガスのフローと混入する構成では、原料ガスの流量を低減させる必要が生じた場合、前述した理由で、冷却ガスのフローを増加させて冷却効果を上昇させる必要が生じるが、結果として、基板上における流量は結果として余り変わらないことになる。したがって、原料ガスの流量を低減させるといった結晶成長の要請に十分応答することができないという問題があった。しかしながら、本実施形態に係るMOCVD装置によると、前述のように、原料ガスの設定の自由度が高いので、結晶成長の要請に十分に応答することができる。
【0118】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係るMOCVD装置によると、冷却ガスフローチャンネル12c内の冷却ガスフロー3dによって、プロセスガスフローチャンネル12bを冷却することにより、プロセスガスフローチャンネル12bなどを構成する石英などの部材に反応生成物が堆積することを防ぐことができる。このため、MOCVD装置に対するメンテナンスの周期を伸ばすことができると共に、基板1A上へ反応生成物が飛来することを防いで、安定的に且つ再現性良く窒化物半導体を成長させることができる。
【0119】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法について説明する。
【0120】
具体的には、本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る図1及び図2で示したMOCVD装置と全く同じ装置を用いて、本発明の第1の実施形態における図4で示した半導体と同じ構造よりなる半導体を連続して成長させる方法であるが、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明は繰り返さない。
【0121】
本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法が、本発明の第1の実施形態に係る半導体の製造方法と異なる点は、冷却ガスフロー3dを構成する冷却ガスとして、第1の実施形態で用いた窒素ガスの替わりに水素ガスを用いている点であって、ここでは、水素ガスの流量を毎分20Lとして図4に示した半導体を製造した。
【0122】
図6は、反射スペクトル強度の成長回数依存性を示しており、具体的には、本実施形態における水素ガスよりなる冷却ガスフロー3dの場合と第1の実施形態における窒素ガスよりなる冷却ガスフロー3dの場合とのそれぞれにおいて、反射スペクトル強度(相対値)と成長回数(回)との関係を示している。
【0123】
図6に示すように、冷却ガスフロー3dが水素ガスよりなる場合には、図4を用いて説明した前述の1回の成長がおよそ30回実施されるまで、反射スペクトルの測定が可能であった。したがって、冷却ガスフロー3dが水素ガスよりなる本実施形態によると、冷却ガスフロー3dが窒素ガスよりなる場合であって20回の成長まで反射スペクトルの測定が可能であった前述の第1の実施形態と比べて、反射スペクトルの測定が可能な成長回数を増加させることができる。
【0124】
このような効果が得られた理由としては、水素ガスは窒素ガスよりも冷却効果が高いために、プロセスガスフローチャンネル12bへの反応生成物の堆積をより抑制することができたからであると考えられる。
【0125】
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法の別の例について説明する。
【0126】
具体的には、本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法の別の例は、図1及び図2で示した本発明の第1の実施形態に係るMOCVD装置と全く同じ装置を用いて、図7に示す構造を有する半導体を製造する方法である。
【0127】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法の別の例で製造される半導体の構造、つまりLED構造を示している。つまり、図7に示すように、サファイアよりなる基板1Aの上には、低温GaNバッファ層31及びGaN層32が下から順に成長されており、引き続き、n型GaNコンタクト層33、InGaN活性層34及びp型GaNコンタクト層35が下から順に成長している。
【0128】
以下に、図7に示したLED構造よりなる半導体を成長させる各工程について説明する。なお、図7に示した構造のうち図4に示した構造と同様の部分の成長方法は、図4を用いた説明と同様であるので、以下では異なる点を中心に説明する。
【0129】
まず、冷却ガス導入口2dから毎分20Lの流量にて、冷却ガスフロー3dを構成する水素ガスを導入しながら、第1の実施形態と同様に、サーマルクリーニングを行なった後に、500℃にて低温GaNバッファ層31を20nm成長させると共に1000℃にてGaN層32を2μm成長させる。
【0130】
引き続いて、冷却ガスフロー3dとして毎分20Lの流量の水素ガスをそのまま維持して、1000℃にてn型GaNコンタクト層33を2μm成長させる。ここで、n型のドーパントとしては、Si又はGeなどを用いることができる。この場合、プロセスガスフローチャンネル12bの内部に、モノシラン又はモノゲルマンなどのドーピングガスを所定量にて導入することによってドーピングを行なうことができる。また、ドーピングガスは、V 族ガス導入口2a及びIII 族ガス導入口2bのうちのいずれの導入口から導入させる構成であってもよい。また、Si又はGeは、GaNのIII 族サイトに入るので、モノシラン又はモノゲルマンなどのドーピングガスをIII 族ガスフロー3bに混入させる方が、基板1A表面における面内均一性が向上するため好ましい。
【0131】
次に、III 族ガス導入口2bに導入されるTMGの供給を停止すると共に、V 族ガス導入口2aに導入されるアンモニアの供給を継続したまま、サセプタ15の温度をInGaNの成長に好ましい温度である750℃まで低下させる。温度が安定したところで、ガス導入管11内に導入される水素ガスをすべて窒素ガスに切り替える。すなわち、V 族ガスフロー3aには、毎分10Lの流量の窒素ガス及び毎分20Lの流量のアンモニアよりなる混合ガスを流し、III 族ガスフロー3bには、毎分30Lの流量の窒素ガスを流し、冷却ガスフロー3dには、毎分20Lの窒素ガスを流す。
【0132】
この状態で、チャンバー10内に存在していた水素ガスがほぼ追い出されるまでの時間保持した後、III 族ガスフロー3b内にTMG及びトリメチルインジウム(TMI)を混入して導入することにより、InGaN活性層34を成長させる。一般に、InGaNを成長させる場合には、成長時におけるInの取り込み効率が低いために、TMIをかなり過剰に供給する。このため、成長したInGaN層の厚さが薄い場合においても、プロセスガスフローチャンネル12bへの反応生成物の堆積は比較的多くなる。しかしながら、本工程では、冷却ガスフロー3dを構成するガスとして、水素ガスを用いずに窒素ガスを用いたことにより、反応生成物の堆積を抑制しながら、Inを十分に取り込んだInGaN活性層34を実現することができる。なお、このメカニズムについては後述で詳説する。
【0133】
続いて、InGaN活性層34を5nm成長させたところで、ガス導入管11内に導入されるすべての窒素ガスを水素ガスに再び切り替えると共に、サセプタ15の温度を1000℃まで上昇させる。すなわち、V 族ガスフロー2aには、毎分10Lの流量の水素ガス及び毎分20Lの流量のアンモニアよりなる混合ガスを流し、III 族ガスフロー2bには、毎分30Lの流量の水素ガスを流し、冷却ガスフロー3dには、毎分20Lの流量の水素ガスを流す。そして、温度とフローとが安定したところで、p型GaNコンタクト層35を0.2μm成長させる。p型のドーパントとしては、Mgなどを用いることができる。この場合、プロセスガスフローチャンネル12bの内部に、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)などのドーピングガスを導入することによってドーピングを行なうことができる。また、Mgは、GaNのIII 族サイトに入るので、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)などのドーピングガスをIII 族ガスフロー3bに混入させる方が、基板1A表面における面内均一性が向上するため好ましい。
【0134】
以上の一連の工程によって、Inが十分に取り込まれたInGaN活性層34を有する波長460nmの青色LEDウェハを製造することができる。
【0135】
図8は、InGaN活性層34を成長させる際の冷却ガスフロー3dを構成する冷却ガスとして、本実施形態で説明した窒素ガスを用いる方法と、窒素ガスの替わりに毎分20Lの流量の水素ガスを用いる方法とのそれぞれにおいて、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルを比較した図を示している。PLは、レーザ光をウェハに当てて発光波長を調べる手法であり、ウェハの状態でLEDの発光波長を調べる手法である。
【0136】
水素ガスは分子量が小さいために、わずかな隙間からであっても拡散することができる性質を持っている。本実施形態に係るMOCVD装置を構成するフローチャンネル12のように、冷却ガスフロー3dとIII 族ガスフロー3b及びV 族ガスフロー3aとが分離された構造であっても、ガス導入管11とフローチャンネル12とが連設している隙間又はフローチャンネル12を構成する石英よりなる部材同士の隙間などを介して、水素が拡散して基板1A表面に到達する。このため、InGaN活性層34を成長させるときに用いる冷却ガスとして水素ガスを用いると、前述した隙間などからごく微量の水素ガスがInGaN活性層34の表面に到達することにより、InGaNが水素によって分解されるので、InGaN活性層34におけるInの組成比が低下して、図8に示すように、波長が短波長化する他、InGaN活性層34の結晶性が低下して発光強度が低下する。なお、波長の変化量などから類推すると、基板1A上において、拡散されてきた水素の濃度は1%以下である。これに対して、本実施形態では、冷却ガスフロー3dを構成するガスとして、水素ガスを用いずに窒素ガスを用いたことにより、前述したような水素ガスの拡散がないので、InGaN活性層34にはInが十分に取り込まれており、PL強度及び波長ともに優れた値が得られている。
【0137】
図9は、反射スペクトル強度の成長回数依存性を示しており、具体的には、InGaN活性層34を成長させる際の冷却ガスフロー3dを構成する冷却ガスとして、本実施形態で説明した窒素ガスを用いる方法と、窒素ガスの替わりに毎分20Lの流量の水素ガスを用いる方法とのそれぞれにおいて、LEDの成長を繰り返した場合における反射スペクトル強度(相対値)と成長回数(回)との関係を示している。図9から明らかなように、InGaN活性層34の成長させる際に用いる冷却ガスが、窒素ガスよりなるか又は水素ガスよりなるかによって、反射スペクトル強度の成長回数依存性にはほとんど差が生じていない。すなわち、いずれのガスを用いた場合であっても、LEDの成長が20回なされるまでは、反射スペクトルの測定が可能である。InGaN活性層34の成長させる際に、冷却ガスとして窒素ガスを用いると、前述したように、水素ガスを用いた場合に比べて冷却効果は低いが、InGaN活性層34の成長温度は750℃であって、GaNなどの成長温度よりも低いので、InGaN活性層34の成長させる際に、冷却ガスとして窒素ガスを用いても十分な効果を得ることができる。
【0138】
なお、反射スペクトルの測定可能な回数が、図9に示すように20回であって、図6にて示した場合に比較して低下しているのは、図6に示した場合は、GaN層32まで成長させた半導体を測定対象としており、図9に示した場合は、GaN層32の上に更なる膜が堆積されてなる膜厚が厚いLEDよりなる半導体を測定対象としているからであることは言うまでもない。
【0139】
本実施形態では、InGaN活性層34の成長の際に、冷却ガスとして窒素ガスを用いているが、窒素ガス以外のガスであっても、水素ガスを含まず且つInGaN活性層34の成長に悪影響を与えないガスであればどんなガスを用いてもよく、例えば窒素ガスに替えてヘリウム、アルゴン、キセノン、又はクリプトンなどの希ガスを用いることもできる。また、メタン、エチレン、アセチレン、又はブタンなどの炭化水素よりなるガスを用いることもできる。但し、窒素ガスとして炭化水素ガスを用いる場合には、炭素数はおよそ6以下であれば良い。なぜなら、炭素数がおよそ6を超える場合には、ガスとして十分な蒸気圧が得られないばかりか、基板1Aを加熱する熱によって炭化水素が分解されて水素を発生することがあって好ましくないからである。また、冷却ガスとしてアンモニアを用いることもできる。なぜなら、アンモニアは原料ガスであるので、チャンバー10内にアンモニアが導入されても悪影響が生じないからである。また、冷却ガスとして、前述した使用可能なガスが混合されてなるガスを用いることもできる。
【0140】
なお、InGaN活性層34の成長に悪影響を与えない前述したガスは、GaN、AlN、AlGaN、又はInNなどの他のIII 族窒化物半導体を成長させる際に用いても悪影響がないので、これらの層を形成する際において、前述したガスを冷却ガスとして用いることができることは言うまでもない。
【0141】
なお、図8を参照しながら議論したように、冷却ガスフロー3dとIII 族ガスフロー3b及びV 族ガスフロー3aとの相互間においてガスのリークが完全に防止できるように、フローチャンネル12を組み立てることはほとんど不可能である。したがって、実際には、多くて1%以下、より現実的には100ppm以下の濃度で、冷却ガスフロー3dとIII 族ガスフロー3b及びV 族ガスフロー3aとの相互間において、ガスの相互拡散が生じる。GaN、AlGaN、又はAlNなどのInを組成として含まないIII 族窒化物半導体層を成長させる場合には、1%以下の濃度で冷却ガスが混入されても、冷却ガスの種類が水素ガスであるか否かにかかわらず、基板1A上における成長に対してほとんど影響はない。このため、冷却ガスを流す冷却ガスフローチャンネル12cをプロセスガスフローチャンネル12bと可能な限り分離させた構造を実現する場合には、基板1A上における拡散されてきた冷却ガスの濃度が1%以下となるような構造を作製することが好ましい。
【0142】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置及び半導体の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0143】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置の構成を示す概略断面図である。なお、図10において、本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置を構成する部分のうち、前述した図1に示した本発明の第1の実施形態に係るMOCVD装置を構成する部分と対応する部分には共通する符号を付しており、その説明は繰り返さない。したがって、以下では、本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置が、本発明の第1の実施形態に係るMOCVD装置と異なる点を中心に説明する。
【0144】
図10に示した本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置と、図1に示した本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置とが相違する点は、ガス導入管11の構成である。すなわち、図10に示したガス導入管11は、V 族ガス導入口2a、III 族ガス導入口2b及び冷却ガス導入口2dに加え、III 族ガス導入口2bと冷却ガス導入口2dとの間に押圧ガス導入口2cが設けられている。このように、サセプタ15に近い側から順に、V 族ガス導入口2a、III 族ガス導入口2b、押圧ガス導入口2cが設置されていることにより、基板1A上にアンモニアを効果的に供給することができる。なお、図1に示したMOCVD装置との互換性を容易にするため、つまり、図1及び図2に示したフローチャンネル12をそのまま利用できるようにするため、図10に示したガス導入管11は、ガス導入管11の全体の高さ及び冷却ガス導入口2dの高さは同じとして、V 族ガス導入口2a、III 族ガス導入口2b及び押圧ガス導入口2cのそれぞれの高さを小さくする構成を有している。
【0145】
図10に示した本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置によると、押圧ガス導入口2cから導入される押圧ガスよりなる押圧ガスフロー3cによって、III 族ガスフロー3b及びV 族ガスフロー3aは、プロセスガスフローチャンネル12b内における基板1A近傍付近を流れるので、押圧ガスフロー3cがない場合に比べて、基板1A上における原料ガスの濃度を実効的に高くすることができる。このため、原料ガスの利用効率を増大させることができる。
【0146】
以下に、本発明の第3の実施形態に係る図10に示したMOCVD装置を用いた半導体の製造方法について、本発明の第1の実施形態に係る図1に示したMOCVD装置を用いた半導体の製造方法と比較しながら説明する。なお、いずれの製造方法の場合についても、前述の図7に示したLED構造を有する半導体を連続成長させる場合について説明するが、図1に示したMOCVD装置を用いたLED構造を有する半導体の成長方法は、本発明の第2の実施形態で説明した通りである。
【0147】
したがって、以下に、本発明の第3の実施形態に係る図10に示したMOCVD装置を用いた半導体の製造方法について説明する。
【0148】
まず、基板1Aをサセプタ15上に設置した後、サーマルクリーニング工程を実施する。本発明の第1の実施形態とほぼ同じ条件を再現する目的で、全流量は同じ毎分60Lとする。具体的には、押圧ガス導入口2cから窒素ガスを毎分20Lの流量、V 族ガス導入口2aから水素ガスを毎分20Lの流量、III 族ガス導入口2bから水素ガスを毎分20Lの流量、冷却ガス導入口2dから水素ガスを毎分20Lの流量にてガス導入管11内に導入しながら、サセプタ15の温度を1000℃とする。
【0149】
次に、各導入口2a〜2d内に導入される各ガスの流量はそのまま維持して、サセプタ15の温度を500℃に設定して、基板1A上に低温GaNバッファ層31の成長を行なう。サセプタ15の温度が安定したところで、III 族ガス導入口2bから導入される水素ガスのうち毎分15Lの流量分をアンモニアに切り替えてアンモニアを導入する。さらに、ガスのフローが安定したところで、V 族ガス導入口2aから導入される水素ガスにトリメチルガリウム(TMG)を輸送させて、TMGをIII 族ガスフロー3bに導入する。前述したように、押圧ガスフロー3cによってガスの利用効率が増加するので、図10に示したMOCVD装置を用いた本実施形態によると、図1に示すMOCVD装置を用いた場合のアンモニアの流量(毎分20L)よりも少ないアンモニアの流量(毎分15L)であっても、特性がほぼ同じ膜を成長させることができる。
【0150】
次に、低温GaNバッファ層31を20nm成長させたところで、V 族ガス導入口2aに導入されるTMGの供給を停止すると共に、各ガスフロー3a〜3dの流量はそのままの状態でアンモニア及び水素ガスのみを引き続き供給して、サセプタ15の温度を1000℃まで上昇させる。サセプタ15の温度が1000℃で安定したところで、V 族ガス導入口2aにTMGを再び導入してGaN層32を2μm成長させる。
【0151】
引き続き、各ガスフロー3a〜3dの流量はそのまま維持して、第2の実施形態でも説明したように、モノシランガスなどのドーピングガスをプロセスガスフローチャンネル12b内に導入することにより、1000℃でn型GaNコンタクト層33を2μm成長させる。
【0152】
次に、V 族ガス導入口2aに導入されるTMGの供給を停止すると共にアンモニアは供給させたままの状態で、サセプタ15の温度を750℃まで低下させる。サセプタ15の温度が安定したところで、ガス導入管11内に導入される水素ガスをすべて窒素ガスに切り替える。すなわち、V 族ガスフロー3aには毎分5Lの流量の窒素ガス及び毎分15Lの流量のアンモニアよりなる混合ガスを流す。III 族ガスフロー3bには毎分20Lの流量の窒素ガスを流す。押圧ガスフロー3cには毎分20Lの流量の窒素ガスを流す。冷却ガスフロー3dには毎分20Lの窒素ガスを流す。この状態を所定時間保持した後、TMG及びトリメチルインジウム(TMI)をIII 族ガスフロー3bに混ぜて導入することにより、InGaN活性層34を成長させる。
【0153】
次に、InGaN活性層34を5nm成長させたところで、ガス導入管11内に導入されるすべての窒素ガスを再び水素ガスに切り替えると共に、サセプタ15の温度を1000℃まで上昇させる。すなわち、V 族ガスフロー3aには毎分5Lの流量の水素ガス及び毎分15Lの流量のアンモニアよりなる混合ガスを流す。III 族ガスフロー3bには毎分20Lの流量の水素ガスを流す。押圧ガスフロー3cには毎分20Lの流量の水素ガスを流す。冷却ガスフロー3dには毎分20Lの流量の水素ガスを流す。
【0154】
次に、サセプタ15の温度とガスのフローとが安定したところで、TMGとシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)などのドーピングガスとをプロセスガスフローチャンネル12b内に導入して、p型GaNコンタクト層35を0.2μm成長させる。
【0155】
次に、p型GaNコンタクト層35の成長を終えたところで有機金属の供給を停止して、ヒータ16を切ってサセプタ15の温度を下げる。サセプタ15の温度が500℃になったところで、V 族ガスフロー3aに導入されるアンモニアを水素ガスに切り替えて、アンモニアの供給も停止する。さらに、サセプタ15の温度を室温付近まで下げた後、基板1Aを取り出す。
【0156】
以上の一連の工程が1回の成長であって、この1回の成長を繰り返す。
【0157】
図11は、反射スペクトル強度の成長回数依存性を示しており、具体的には、本発明の第2の実施の形態に係る半導体の製造方法による測定結果と本発明の第3の実施形態に係る半導体の製造方法による測定結果との比較を示している。
【0158】
本発明の第2の実施形態に係る図1に示したMOCVD装置を用いたLED構造を有する半導体の製造方法では、冷却ガスフロー3dの効果によって、およそ20回の成長までは反射スペクトルの測定が可能であった。これに対して、本発明の第3の実施形態に係る図10に示したMOCVD装置を用いたLED構造を有する半導体の製造方法では、冷却ガスフロー3dの効果に加えて押圧ガスフロー3cの効果によって、およそ40回の成長までは反射スペクトルの測定が可能となるので、本発明の第1の実施形態における図1に示したMOCVD装置を用いる場合に比べて、さらにメンテナンスの周期を伸ばすことができる。
【0159】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置によると、押圧ガス導入口2cを設けて、V 族ガスフロー3a及びIII 族ガスフロー3bの上に押圧ガスフロー3cが流れることにより、メンテナンスの周期をより伸ばすことができる。これにより、メンテナンスに要するコストをより削減できるので、設備の稼働率を一層向上させることができる。さらには、アンモニア及びTMGなどの原料ガスの利用効率を増加させることができる。
【0160】
なお、押圧ガス導入口2cに導入する押圧ガスとしては、III 族窒化物半導体の成長に悪影響を与えないガスであればどんなガスであってもよく、例えば窒素ガスに替えてヘリウム、アルゴン、キセノン、又はクリプトンなどの希ガスを用いることができる。その他、メタン、エチレン、アセチレン又はブタンなどの炭化水素のガスを用いることもできる。但し、炭化水素ガスを用いる場合には、炭素数がおよそ6以下が良い。なぜなら、炭素数がおよそ6を超えると、ガスとして十分な蒸気圧が得られないので好ましくないからである。また、AlGaN又はGaNを成長させる場合には、押圧ガスとして水素ガスを用いることができるが、InGaNを成長させる場合には、押圧ガスとして水素ガスを用いることが好ましくないのは、第2の実施形態で説明した理由と同様である。また、前述したガスの混合ガスを押圧ガスとして用いることもできるが、InGaNを成長させる場合には水素ガスが混合されたガスを用いることが好ましくない点は同様である。
【0161】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置及び半導体の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0162】
図12は、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置の構成を示す概略断面図である。なお、図12において、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置を構成する部分のうち、前述した図10に示した本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置を構成する部分と対応する部分には共通する符号を付しており、その説明は繰り返さない。したがって、以下では、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置が、本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置と異なる点を中心に説明する。
【0163】
図12に示した本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置と、図10に示した本発明の第3の実施形態に係るMOCVD装置とが相違する点は、抵抗線よりなるヒータ16の構成である。また、本実施形態ではヒータ16の構成に特徴があるので、本実施形態の効果を確認する目的で、図10に示した膜厚測定装置18に替えて温度分布測定装置21を設けており、温度分布測定装置21は、サセプタ15などから放出される赤外線を解析して、温度分布を画像として表示することができる装置である。
【0164】
図12に示したMOCVD装置を構成するヒータ16は、同心円状の内周ヒータ16aと外周ヒータ16bとに分割された構成を有しており、内周ヒータ16a及び外周ヒータ16bはそれぞれ独立に投入電流を操作することが可能である。
【0165】
まず、以下では、冷却ガスに用いるガスの種類によって、サセプタ15の温度分布がどのように変化するかについて実験した結果について説明する。
【0166】
図13は、冷却ガスフロー3dとして窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを流す場合において、窒素ガスと水素ガスとの混合割合を変化させたときにおけるサセプタ15の温度分布を示している。
【0167】
ここで、サセプタ15は加熱時において回転しているので、同心円状の温度分布を示す。このため、サセプタ15の中央部を0mmとして、ある半径位置の外側方向に向かって温度分布をプロットしている。このとき、押圧ガスフロー3cには毎分20Lの流量で窒素ガスを流し、III 族ガスフロー3bには毎分20Lの流量にて水素ガスを流し、V 族ガスフロー3aには毎分5Lの流量の水素ガス及び毎分15Lの流量のアンモニアを流すように設定すると共に、サセプタ15の設定温度、すなわち熱電対がある位置の温度を1000℃に設定している。内周ヒータ16aの電流と外周ヒータ16bの電流とは同じとしている。つまり、外周電流/内周電流を内外周電流比と定義した場合、内外周電流比は100%である。なお、ヒータ16の制御は電流制御で行なっているので、内外周電流比で内周ヒータ16aと外周ヒータ16bとに対する加熱量を調整しているが、温度の増減は、電流よりも電力の方が効いている。
【0168】
図13から明らかなように、サセプタ15の中央部、すなわち熱電対がある位置の近くでは、冷却ガスフロー3dを構成するガスの混合割合にほとんど依存することなく、サセプタ15の温度はほぼ1000℃に保たれている。しかしながら、サセプタ15の周辺部では、冷却ガスフロー3dの水素ガスの割合が多くなるほど冷却されて、サセプタ15の温度が低下する一方、冷却ガスフロー3dの窒素ガスの割合が多くなるほど加熱されて、サセプタ15の温度は上昇することが分かる。
【0169】
図14は、冷却ガスフロー3dとして流量が毎分20Lの水素ガスを流すと共に他の条件は図13の場合と同様に設定し、内外周電流比を変化させたときにおけるサセプタ15の温度分布を示している。図14から明らかなように、内外周電流比が105%である場合に、サセプタ15の温度分布がほぼ均一になることが分かった。
【0170】
図15は、冷却ガスフロー3dとして流量が毎分20Lの窒素ガスに設定すると共に他の条件は図13の場合と同様に設定し、内外周電流比を変化させたときのサセプタ15の温度分布を示している。図15から明らかなように、内外周電流比が95%である場合に、サセプタ15の温度分布がほぼ均一になることが分かった。
【0171】
以上に示したように、同じヒータを用いると共に同じ加熱条件で加熱する場合に、冷却ガスフロー3dを構成するガスの種類を変更すると、サセプタ15の温度分布が変化してしまう。したがって、このとき、ヒータが単一の構成よりなる場合には、均一な温度分布が得られるように、成長条件に応じてヒータの巻き方又は太さを工夫したヒータに取り替える必要があった。
【0172】
以上の実験結果に基づいて、本発明の第4の実施形態では、少なくとも2分割以上に分割したヒータ16を用いると共にヒータ間の電流比を適切に設定することにより、冷却ガスフロー3dがどのような種類のガスよりなる場合であっても均一な温度分布が得られることを実現するものである。そこで、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置におけるヒータ16として、内周ヒータ16a及び外周ヒータ16bよりなる2分割されたヒータ16を一例として用いている。
【0173】
また、以下に、プロセスガスに用いるガスの種類によって、サセプタ15の温度分布がどのように変化するかについて実験した結果について説明する。
【0174】
図16は、III 族ガスフロー3bに水素及び窒素よりなる混合ガスを流す場合について、水素と窒素との割合を変化させたときにおけるサセプタ15の温度分布を示している。このとき、冷却ガスフロー3dに毎分20Lの流量の水素ガスを流し、押圧ガスフロー3cに毎分20Lの流量の窒素ガスを流し、V 族ガスフロー3aに毎分5Lの流量の水素ガス及び毎分15Lの流量のアンモニアを流すと共に、サセプタ15の設定温度、すなわち熱電対の位置での温度を1000℃に設定している。また、内外周電流比を100%としている。
【0175】
図16から明らかなように、III 族ガスフロー3bにおける窒素の割合を増加させると、サセプタ15の周辺部の温度が上昇することが確認された。
【0176】
図17は、III 族ガスフロー3bに毎分20Lの窒素ガスを流した場合について、内外周電流比を変化させたときにおけるサセプタ15の温度分布の変化を示している。
【0177】
図17から明らかなように、内外周電流比が90%であると、サセプタ15の温度はほぼ均一になることが分かった。
【0178】
以上の実験結果から分かるように、冷却ガスに用いるガスの種類だけではなく、プロセスガスの種類を変更する場合においても、サセプタ15の温度分布が変化することが明らかである。このため、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置では、内周ヒータ16a及び外周ヒータ16bよりなる分割された構造を有するヒータ16を用いることにより、任意に選択された冷却ガス及びプロセスガスの種類に応じてサセプタ15の温度を均一に保つことができる。このため、基板1A上に成長させる各窒化物半導体の成長条件毎にヒータ16の巻き方又は太さ等を変更する必要がない。
【0179】
以下に、以上の実験結果に基づいて、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置を用いたLED構造の半導体を製造する方法について説明する。
【0180】
図18は、本発明の第4の実施形態に係る半導体層の製造方法によって製造されるLED構造の半導体層を示している。つまり、図18に示すように、サファイアよりなる基板1Aの上には、低温GaNバッファ層31及びGaN層32が下から順に成長されており、引き続き、n型GaNコンタクト層33、InGaN活性層34が下から順に成長している。さらに、InGaN活性層34の直上には、組成比15%、厚さ10nmのAlGaNよりなる電子障壁層36が成長している。該電子障壁層36の上には、p型GaNコンタクト層35が成長している。図18に示したLED構造は、AlGaNよりなる電子障壁層36を設けることで、LEDの効率を増加させることを目的とした構造である。
【0181】
以下に、図18に示したLED構造の半導体を成長させる各工程について説明する。なお、前述した図7に示した構造と同様の部分の成長方法は、図7を用いた説明と同様であるので、以下では異なる点を中心に説明する。
【0182】
まず、基板1Aをサセプタ15上に設置した後、サーマルクリーニング工程を実施する。本発明の第3の実施形態とほぼ同じ条件を再現する目的で、全流量は同じ毎分60Lとする。具体的には、押圧ガス導入口2cから窒素ガスを毎分20Lの流量、V 族ガス導入口2aから水素ガスを毎分20Lの流量、III 族ガス導入口2bから水素ガスを毎分20Lの流量、冷却ガス導入口2dから水素ガスを毎分20Lの流量にてガス導入管11内に導入しながら、サセプタ15の温度を1000℃とする。また、内外周電流比を105%とする。
【0183】
次に各導入口2a〜2d内に導入される各ガスの流量はそのまま維持して、サセプタ15の温度を500℃に設定して、第3の実施形態と同様にして、基板1A上に低温GaNバッファ層31を20nm成長させる。
【0184】
低温GaNバッファ層31を20nm成長させたところで、V 族ガス導入口2aに導入されるTMGの供給を停止すると共に、各ガスフロー3a〜3dの流量はそのままの状態でアンモニア及び水素ガスのみを引き続き供給して、サセプタ15の温度を1000℃まで上昇させる。サセプタ15の温度が1000℃で安定したところで、V 族ガス導入口2aにTMGを再び導入してGaN層32を2μm成長させる。
【0185】
引き続き、各ガスフロー3a〜3dの流量はそのまま維持して、第3の実施形態と同様に、モノシランガスなどのドーピングガスをプロセスガスフローチャンネル12b内に導入することにより、1000℃でn型GaNコンタクト層33を2μm成長させる。なお、このとき、押圧ガスフロー3cには窒素ガスが流れている。
【0186】
次に、V 族ガス導入口2aに導入されるTMGの供給を停止すると共にアンモニアは供給させたままの状態で、サセプタ15の温度を770℃まで低下させる。このとき、内外周電流比を95%に変更する。
【0187】
サセプタ15の温度が安定したところで、ガス導入管11内に導入される水素ガスをすべて窒素ガスに切り替える。すなわち、V 族ガスフロー3aには毎分5Lの流量の窒素ガス及び毎分15Lの流量のアンモニアよりなる混合ガスを流す。III 族ガスフロー3bには毎分20Lの流量の窒素ガスを流す。押圧ガスフロー3cには毎分20Lの流量の窒素ガスを流す。冷却ガスフロー3dには毎分20Lの窒素ガスを流す。この状態を所定時間保持した後、TMG及びトリメチルインジウム(TMI)をIII 族ガスフロー3bに混ぜて導入することにより、InGaN活性層34を成長させる。
【0188】
次に、InGaN活性層34を5nm成長させたところで、ガス導入管11内に導入されるすべての窒素ガスを再び水素ガスに切り替えると共に、サセプタ15の温度を1000℃まで上昇させる。すなわち、V 族ガスフロー3aには毎分5Lの流量の水素ガス及び毎分15Lの流量のアンモニアよりなる混合ガスを流す。III 族ガスフロー3bには毎分20Lの流量の水素ガスを流す。押圧ガスフロー3cには毎分20Lの流量の水素ガスを流す。冷却ガスフロー3dには毎分20Lの流量の水素ガスを流す。
【0189】
次に、サセプタ15の温度とガスのフローとが安定したところで、TMGと共に適切な割合のトリメチルアルミニウム(TMA)を導入することにより、AlGaNよりなる電子障壁層36を10nm成長させる。続いて、TMGとシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)などのドーピングガスとをプロセスガスフローチャンネル12b内に導入して、電子障壁層36の上にp型GaNコンタクト層35を0.2μm成長させる。
【0190】
次に、p型GaNコンタクト層35の成長を終えたところで有機金属の供給を停止して、ヒータ16を切ってサセプタ15の温度を下げる。サセプタ15の温度が500℃になったところで、V 族ガスフロー3aに導入されるアンモニアを水素ガスに切り替えて、アンモニアの供給も停止する。さらに、サセプタ15の温度を室温付近まで下げた後、基板1Aを取り出す。
【0191】
以上の成長工程により、青色LEDウェハが完成する。
【0192】
図19は、AlGaNよりなる電子障壁層36におけるAl組成比のウェハ内分布の内外周電流依存性を示しており、具体的には、電子障壁層36を成長させる場合のガスフロー条件は前述した条件と同じとし、内外周電流比を変化させた場合におけるAl組成比(%)とウェハの位置との関係を示している。
【0193】
図19から明らかなように、前述した電子障壁層36の成長条件と同じ条件の内外周電流比が105%である場合には、Al組成比はウェハ内で均一であることが分かる。しかしながら、内外周電流比を変化させると、Al組成比の分布が拡大していることが分かる。この結果は、温度が上昇するとGaが蒸発してAl組成比が増加する一方、温度が低下するとGaの蒸発が抑制されてAl組成比が低下することに対応している。本実施形態に係る半導体の製造方法では、AlGaNよりなる電子障壁層36を成長させる際に内外周電流比を105%としたことにより、ウェハ内で均一なAl組成比を得ることができる。
【0194】
図20は、InGaN活性層34の発光波長のウェハ内分布の内外周電流依存性を示しており、具体的には、InGaN活性層34を成長させる場合のガスフロー条件は前述した条件と同じとし、内外周電流比を変化させた場合におけるPL発光波長(nm)とウェハの位置との関係を示している。
【0195】
図20から明らかなように、前述したInGaN活性層34の成長条件と同じ条件の内外周電流比が95%である場合には、発光波長はウェハ内で均一であることが分かる。しかしながら、内外周電流比を変化させると、発光波長の分布が拡大していることが分かる。この結果は、温度が上昇するとInの取り込みが減少する一方、温度が低下するとInの取り込みが増加することに対応している。本実施形態に係る半導体の製造方法では、InGaN活性層34を成長させる際に内外周電流比を95%としたことにより、ウェハ内で均一な発光波長分布を得ることができる。
【0196】
なお、本実施形態に係る半導体の製造方法では、ヒータ16の内外周電流比を変化させて、InGaN活性層34及び電子障壁層36を成長させることを除けば、前述した本発明の第3の実施形態に係る半導体の製造方法とほとんど同じであるので、メンテナンスの周期は、第3の実施形態の場合と同様のほぼ同じ約40回成長毎となる。
【0197】
以上のように、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置及び半導体層の製造方法によると、III 族窒化物半導体の成長において、用いるプロセスガス及びその流量などの成長条件が他の半導体の成長条件と大きく異なるAlGaNよりなる電子障壁層とInGaN層とのいずれの成長においても、Al組成の分布がウェハ内で均一な電子障壁層及び発光波長分布がウェハ面内で均一となるInGaN層を成長させることができる。しかも、本発明の第4の実施形態に係るMOCVD装置及び半導体の製造方法では、本発明に係る第1〜第3の実施形態で説明したように、冷却ガスフロー3d及び押圧ガスフロー3cの効果により、前述したような均一な分布を有する半導体を高い稼働率で安定して成長させ続けることができるので、産業利用上非常に有用である。なお、本実施形態では、LED構造を有する半導体層を製造する場合について説明したが、AlGaN及びInGaNの両方を備えた半導体装置、特に、レーザ又はヘテロバイポーラトランジスタなどの半導体装置を製造する場合にも非常に有効であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明に係る有機金属気相成長装置及び半導体層の製造方法は、III 族窒化物半導体を再現性良く成長させる方法を提供すると共に、III 族窒化物半導体を用いた半導体装置を効率よく製造することにとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機金属気相成長装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるフローチャンネルの構造を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるフローチャンネルの構造の変形例を説明するための概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体の製造方法によって成長させる半導体層の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における冷却ガスフローに窒素ガスを流した場合と流さない場合とについての反射スペクトル強度と成長回数との関係図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における冷却ガスフローが水素ガスよりなる場合と窒素ガスよりなる場合とについての反射スペクトル強度と成長回数との関係図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体の製造方法によって成長させる半導体層の構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるInGaN活性層の成長時に用いる冷却ガスが水素ガスよりなる場合と窒素ガスよりなる場合とについてのフォトルミネッセンス(PL)強度と波長との関係図である。
【図9】本発明の第2の実施形態におけるInGaN活性層の成長時に用いる冷却ガスフローが水素ガスよりなる場合と窒素ガスよりなる場合とについての反射スペクトル強度と成長回数との関係図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る有機金属気相成長装置の構成を示す概略図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における反射スペクトル強度と成長回数との関係図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る有機金属気相成長装置の構成を示す概略図である。
【図13】本発明の第4の実施形態における、冷却ガスフローが窒素ガスと水素ガスとの混合ガスよりなる場合に、その混合割合を変化させたときのサセプタの表面温度とサセプタの位置との関係図である。
【図14】本発明の第4の実施形態における、冷却ガスフローが水素ガスよりなる場合に、内外周電流比を変化させたときのサセプタの表面温度とサセプタの位置との関係図である。
【図15】本発明の第4の実施形態における、冷却ガスフローが窒素ガスよりなる場合に、内外周電流比を変化させたときのサセプタの表面温度とサセプタの位置との関係図である。
【図16】本発明の第4の実施形態における、III 族ガスフローの水素ガス及び窒素ガスの混合割合を変化させたときのサセプタの表面温度とサセプタの位置との関係図である。
【図17】本発明の第4の実施形態における、III 族ガスフローが窒素ガスよりなる場合に、内外周電流比を変化させたときのサセプタの表面温度とサセプタの位置との関係図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る半導体の製造方法によって成長させる半導体層の構造を示す断面図である。
【図19】本発明の第4の実施形態におけるAlGaNよりなる電子障壁層のAl組成比とウェハ位置との関係図である。
【図20】本発明の第4の実施形態におけるInGaNのPL発光波長とウェハ位置との関係図である。
【図21】第1の従来例に係るMOCVD装置の構成を示す断面図である。
【図22】第2の従来例に係るMOCVD装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0200】
1A 基板
2a V 族ガス導入口
2b III 族ガス導入口
2c 押圧ガス導入口
2d 冷却ガス導入口
3a V 族ガスフロー
3b III 族ガスフロー
3c 押圧ガスフロー
3d 冷却ガスフロー
10 チャンバー
11 ガス導入管
12 フローチャンネル
12a、12d フローチャンネルベース
12b プロセスガスフローチャンネル
12c 冷却ガスフローチャンネル
12e 遮熱板
13 排気管
14 回転軸
15 サセプタ
16 ヒータ
17 観察窓
18 膜厚測定装置
18a 白色光
19 回転角度検出機構
20 回転信号ケーブル
21 温度分布測定装置
31 低温GaNバッファ層
32 GaN層
33 n型GaNコンタクト層
34 InGaN活性層
35 p型GaNコンタクト層
36 電子障壁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配置されたサセプタ上に基板を保持するチャンバーと、
前記チャンバーの壁部から内部にかけて設けられ、前記チャンバー内に冷却ガスを導入する冷却ガス導入口と、
前記チャンバーの壁部から内部にかけて前記冷却ガス導入口とは独立して設けられ、前記チャンバー内に原料ガスを導入するプロセスガス導入口と、
前記プロセスガス導入口から連続するように設けられ、前記プロセスガス導入口から導入される前記原料ガスを前記基板上に搬送するプロセスガスフローチャンネルとを備え、
前記冷却ガス導入口は、前記冷却ガスが前記プロセスガスフローチャンネルの外壁に当たるような位置に設置されていることを特徴とする有機金属気相成長装置。
【請求項2】
前記プロセスガス導入口は、V 族ガスを導入する第1の導入口と、III 族ガスを導入する第2の導入口とを有し、
前記第1の導入口と前記第2の導入口とは、前記プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離されていることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項3】
前記第1の導入口及び前記第2の導入口は、この順で前記サセプタに近い側から設置されていることを特徴とする請求項2に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項4】
前記冷却ガス導入口は、前記プロセスガス導入口の上に重なるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項5】
前記冷却ガス導入口から連続するように設けられた冷却ガスフローチャンネルをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項6】
前記冷却ガスフローチャンネルは、前記プロセスガスフローチャンネルの上に重なるように設置されていることを特徴とする請求項5に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項7】
前記冷却ガスフローチャンネルは、石英よりなることを特徴とする請求項5に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項8】
前記プロセスガスフローチャンネルは、石英よりなることを特徴とする請求項5に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項9】
前記プロセスガス導入口は、V 族ガスを導入する第1の導入口と、III 族ガスを導入する第2の導入口と、押圧ガスを導入する第3の導入口とを有し、
前記第1の導入口と、前記第2の導入口と、前記第3の導入口とは、前記プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離されていることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項10】
前記第1の導入口、前記第2の導入口及び前記第3の導入口は、この順で前記サセプタに近い側から設置されていることを特徴とする請求項9に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項11】
前記基板を加熱するヒータをさらに備え、
前記ヒータは、少なくとも2つ以上に分割された構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項12】
前記ヒータは、同心円上に分割されていることを特徴とする請求項11に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項13】
前記ヒータの各々は、互いに独立して電力を制御することを特徴とする請求項11に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項14】
前記チャンバーの外部に設けられ、前記プロセスガスフローチャンネルを介して、前記基板に対して光を照射する装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項15】
前記光を照射する装置は、前記基板における膜厚を測定する装置であることを特徴とする請求項14に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項16】
前記光を照射する装置は、前記基板の回転に同期して動作することを特徴とする請求項14に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項17】
前記チャンバーの外部に設けられ、前記プロセスガスフローチャンネルを介して、前記基板又は前記サセプタからの赤外線を測定する装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項18】
前記赤外線を測定する装置は、前記サセプタの温度を測定する装置であることを特徴とする請求項17に記載の有機金属気相成長装置。
【請求項19】
チャンバー内に配置されたサセプタ上に保持された基板上に、前記チャンバーの壁部から内部にかけて設けられたプロセスガス導入口から導入される原料ガスを、前記プロセスガス導入口から連続するように設けられたプロセスガスフローチャンネルを介して搬送することにより、前記基板上に半導体を成長させる半導体の製造方法であって、
前記チャンバーの壁部から内部にかけて設けられた冷却ガス導入口から導入される冷却ガスを、前記プロセスガスフローチャンネルの外壁に当てながら、前記半導体を成長させることを特徴とする半導体の製造方法。
【請求項20】
前記プロセスガス導入口から導入される前記原料ガスは、III 族ガスとV 族ガスとを含み、
前記III 族ガスと前記V 族ガスとは、前記プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離して導入されることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項21】
前記III 族ガス及び前記V 族ガスは、前記サセプタに近い側からこの順で分離して導入されることを特徴とする請求項20に記載の半導体の製造方法。
【請求項22】
前記V 族ガスは、アンモニアガスを含むことを特徴とする請求項21に記載の半導体の製造方法。
【請求項23】
前記冷却ガスは、前記冷却ガス導入口から連続すると共に前記プロセスガスフローチャンネルの上に重なるように設けられた冷却ガスフローチャンネル内に導入されることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項24】
前記冷却ガスは、水素ガスであることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項25】
前記冷却ガスは、窒素ガスであることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項26】
前記半導体としてInを含まないIII 族窒化物半導体を成長させる際には、水素ガスを含むガスよりなる前記冷却ガスを用いると共に、前記半導体としてInを含むIII 族窒化物半導体を成長させる際には、窒素ガスよりなる前記冷却ガスを用いることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項27】
前記プロセスガス導入口から導入される前記原料ガスは、III 族ガスとV 族ガスと押圧ガスとを含み、
前記III 族ガスと前記V 族ガスと前記押圧ガスとは、前記プロセスガスフローチャンネルの近傍まで、互いに分離して導入されることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項28】
前記III 族ガス、前記V 族ガス及び前記押圧ガスは、前記サセプタに近い側からこの順で分離して導入されることを特徴とする請求項27に記載の半導体の製造方法。
【請求項29】
前記V 族ガスは、アンモニアガスを含むことを特徴とする請求項28に記載の半導体の製造方法。
【請求項30】
前記押圧ガスは、窒素ガスを含むことを特徴とする請求項28に記載の半導体の製造方法。
【請求項31】
前記基板を加熱するために設けられているヒータは、同心円上に内側から順に少なくとも第1のヒータと第2のヒータとに分割された構造を有しており、
前記冷却ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて、前記第1のヒータと前記第2のヒータとのそれぞれに印加する電力を変化させながら、前記半導体を成長させることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項32】
前記冷却ガスに含まれる前記水素ガスの割合を増加させる際には、前記第2のヒータに印加する電力を前記第1のヒータに印加する電力に比べて低下させることを特徴とする請求項31に記載の半導体の製造方法。
【請求項33】
前記冷却ガスに含まれる窒素ガスの割合を増加させる際には、前記第2のヒータに印加する電力を前記第1のヒータに印加する電力に比べて増加させることを特徴とする請求項31に記載の半導体の製造方法。
【請求項34】
前記基板を加熱するために設けられたヒータは、同心円上に内側から順に少なくとも第1のヒータと第2のヒータとに分割された構造を有しており、
前記原料ガスに含まれる水素ガスの割合に応じて、前記第1のヒータと前記第2のヒータとのそれぞれに印加する電力を変化させながら、前記半導体を成長させることを特徴とする請求項19に記載の半導体の製造方法。
【請求項35】
前記原料ガスに含まれる前記水素ガスの割合を増加させる際には、前記第2のヒータに印加する電力を前記第1のヒータに印加する電力に比べて低下させることを特徴とする請求項34に記載の半導体の製造方法。
【請求項36】
前記原料ガスに含まれる窒素ガスの割合を増加させる際には、前記第2のヒータに印加する電力を前記第1のヒータに印加する電力に比べて増加させることを特徴とする請求項34に記載の半導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−173346(P2006−173346A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363492(P2004−363492)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】