説明

有機EL表示装置及びその製造方法

【課題】輝度ムラ補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減し、発光パネルの輝度ムラを抑制する。
【解決手段】有機EL表示装置の製造方法は、全画素を所定の色及び所定の階調で同時に発光させるステップS03と、発光画像を2次元色彩計に撮像させるステップS04と、表示パネルの分割領域毎に色度を求めるステップS06と、有機発光層と反射電極との間の膜厚に依存する色度カーブ及び発光効率カーブを記憶するステップと、ステップS06にて求められた色度に対応する膜厚を上記色度カーブから算出するステップと、算出膜厚に対応する発光効率を発光効率カーブから算出するステップS07と、算出発光効率を基準発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎に算出するステップS08と、算出補正パラメータを装置内記憶部に格納するステップS09とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置及びその製造方法に関し、特にアクティブマトリクス型の有機EL表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流駆動型の発光素子を用いた画像表示装置として、有機EL素子を用いた画像表示装置(有機ELディスプレイ)が知られている。この有機ELディスプレイは、視野角特性が良好で、消費電力が少ないという利点を有するため、次世代のFPD(Flat Panal Display)候補として注目されている。
【0003】
有機ELディスプレイでは、通常、画素を構成する有機EL素子がマトリクス状に配置される。複数の行電極(走査線)と複数の列電極(データ線)との交点に有機EL素子を設け、選択した行電極と複数の列電極との間にデータ信号に相当する電圧を印加するようにして有機EL素子を駆動するものをパッシブマトリクス型の有機ELディスプレイと呼ぶ。
【0004】
一方、複数の走査線と複数のデータ線との交点に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を設け、このTFTに駆動トランジスタのゲートを接続し、選択した走査線を通じてこのTFTをオンさせてデータ線からデータ信号を駆動トランジスタに入力し、その駆動トランジスタによって有機EL素子を駆動するものをアクティブマトリクス型の有機ELディスプレイと呼ぶ。
【0005】
各行電極(走査線)を選択している期間のみ、それに接続された有機EL素子が発光するパッシブマトリクス型の有機ELディスプレイとは異なり、アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイでは、次の走査(選択)まで有機EL素子を発光させることが可能であるため、デューティ比が上がってもディスプレイの輝度減少を招くようなことはない。従って、低電圧で駆動できるので、低消費電力化が可能となる。しかしながら、アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイでは、駆動トランジスタや有機EL素子の特性のばらつきに起因して、同じデータ信号を与えても、各画素において有機EL素子の輝度が異なり、輝度ムラが発生するという欠点がある。
【0006】
従来の有機ELディスプレイにおける、製造工程で生じる駆動トランジスタや有機EL素子の特性のばらつき(以下、特性の不均一と総称する)による輝度ムラの補償方法としては、以下のような技術が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示されたEL表示装置では、各画素に対し検査用データ信号を供給してEL素子のアノード電極に接続された検出用トランジスタによりアノード電圧を検出し、当該アノード電圧と、対応する画素の初期アノード電圧とからEL素子の発光効率の変化率を求める。この発光効率の変化率に応じてデータ信号を補正することができるので、画素毎の焼き付き発生を確実に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−42486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された解決手段では、補正パラメータであるEL素子の発光効率の変化率を求めるために、各画素を所定の表示階調で発光させ、各画素のEL素子のアノード電圧を測定する場合がある。この場合、各画素のEL素子のアノード電圧を画素毎に測定する必要があるので、各画素の補正パラメータを求めるまでの測定タクトが長くなってしまうという課題を有する。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑み、輝度ムラ補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減し、発光パネルの輝度ムラを抑制した有機EL表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、透明電極と反射電極間に赤色の光を放出する有機発光層を有する第1発光素子、透明電極と反射電極間に緑色の光を放出する有機発光層を有する第2発光素子、及び透明電極と反射電極間に青色の光を放出する有機発光層を有する第3発光素子を含む画素を複数配列した有機EL表示パネルと、前記有機EL表示パネルの発光画像を撮像する2次元色彩計と、前記2次元色彩計にて撮像された発光画像に基づいて各発光素子の発光効率を補正する補正パラメータを生成する情報処理装置とを含むシステムにより、前記有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置を製造する方法であって、前記有機EL表示パネルを準備する第1ステップと、前記情報処理装置からの指示によって、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子を、前記有機EL表示パネルに含まれる全画素について、所定の階調で同時に発光させる第2ステップと、前記情報処理装置からの指示によって、前記第2ステップにて発光した各発光素子から放出される光によって構成される発光画像を前記2次元色彩計に撮像させる第3ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルを所定数の領域に分割して、分割領域毎に、前記撮像された発光画像に基づいて各分割領域から放出される光の色度を求める第4ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子の色度特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した色度カーブを記憶する第5ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子の発光効率特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した発光効率カーブを記憶する第6ステップと、前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第4ステップにて求められた色度に対応する膜厚を前記色度カーブから求める第7ステップと、前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第7ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める第8ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色について、各分割領域に共通する基準の発光効率を求める第9ステップと、前記第8ステップにて求められた各分割領域の発光効率を前記第9ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎に求める第10ステップと、前記第10ステップにて求められた前記補正パラメータを前記有機EL表示パネルに用いられる前記有機EL表示装置内の記憶部に格納する第11ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機EL表示装置及びその製造方法によれば、2次元色彩計を用いて表示パネルの各分割領域を同時に撮像して分割領域ごとの色度を算出し、当該色度に基づいて各分割領域の発光効率を求めるので、各分割領域を所定の表示階調で発光させて各分割領域に流れる電流或いは各分割領域に含まれる発光素子のアノード電圧を測定する場合に比べて、発光効率を測定するまでの測定タクトを大幅に短縮することができる。よって、発光効率の変化率から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減し、発光パネルの輝度ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の各回路及び表示部の構成を示すブロック図である。
【図2】表示部の有する画素の回路構成の一例及びその周辺回路との接続を示す図である。
【図3】実施の形態に係るサブ画素の構造断面図である。
【図4】(a)は、本発明の有機EL表示装置の製造方法に使用される製造システムの概略図である。(b)は、本発明の有機EL表示装置の製造方法に使用される製造システムの機能ブロック図である。
【図5】(a)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する動作フローチャートである。(b)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法における指示フローを説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法におけるステップS07を説明する動作フローチャートである。
【図7】(a)は、トップエミッション型の有機EL素子の断面構造における出射光の光路差を表す図である。(b)は、有機発光層と反射電極との間の膜厚に対する、赤色についての有機EL素子の発光効率及び色度の特性を表すグラフである。(c)は、有機発光層と反射電極との間の膜厚に対する、緑色についての有機EL素子の発光効率及び色度の特性を表すグラフである。(d)は、有機発光層と反射電極との間の膜厚に対する、青色についての有機EL素子の発光効率及び色度の特性を表すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法により補正された有機EL表示装置の効果を説明する図である。
【図9】本発明の有機EL表示装置の製造方法により生成された補正パラメータにより表示パネルを表示動作させるときの動作フローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2に係る有機EL表示装置の、表示動作時における電圧オフセットの補正動作を説明する図である。
【図11】本発明の有機EL表示装置を内蔵した薄型フラットTVの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、透明電極と反射電極間に赤色の光を放出する有機発光層を有する第1発光素子、透明電極と反射電極間に緑色の光を放出する有機発光層を有する第2発光素子、及び透明電極と反射電極間に青色の光を放出する有機発光層を有する第3発光素子を含む画素を複数配列した有機EL表示パネルと、前記有機EL表示パネルの発光画像を撮像する2次元色彩計と、前記2次元色彩計にて撮像された発光画像に基づいて各発光素子の発光効率を補正する補正パラメータを生成する情報処理装置とを含むシステムにより、前記有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置を製造する方法であって、前記有機EL表示パネルを準備する第1ステップと、前記情報処理装置からの指示によって、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子を、前記有機EL表示パネルに含まれる全画素について、所定の階調で同時に発光させる第2ステップと、前記情報処理装置からの指示によって、前記第2ステップにて発光した各発光素子から放出される光によって構成される発光画像を前記2次元色彩計に撮像させる第3ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルを所定数の領域に分割して、分割領域毎に、前記撮像された発光画像に基づいて各分割領域から放出される光の色度を求める第4ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子の色度特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した色度カーブを記憶する第5ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子の発光効率特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した発光効率カーブを記憶する第6ステップと、前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第4ステップにて求められた色度に対応する膜厚を前記色度カーブから求める第7ステップと、前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第7ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める第8ステップと、前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色について、各分割領域に共通する基準の発光効率を求める第9ステップと、前記第8ステップにて求められた各分割領域の発光効率を前記第9ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎に求める第10ステップと、前記第10ステップにて求められた前記補正パラメータを前記有機EL表示パネルに用いられる前記有機EL表示装置内の記憶部に格納する第11ステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
各画素の輝度のばらつきは、各画素に含まれる発光素子の発光効率のばらつきや、この発光素子を駆動するための駆動素子の特性ばらつきに起因して発生する。
【0016】
従来、発光素子の発光効率のばらつきを補正する補正パラメータを求めるために、各画素を所定の表示階調で発光させ、各画素に流れた電流或いは当該発光素子のアノード電圧を測定する場合がある。しかしながら、この場合、各画素に流れた電流或いは発光素子のアノード電圧を画素毎に測定する必要があるので、各画素の補正パラメータを求めるまでの測定タクトが長くなる。
【0017】
本態様によると、2次元色彩計を用いて各分割領域を同時に撮像して各分割領域の色度を算出し、当該色度に基づいて各分割領域の発光効率を求めるので、各分割領域を所定の表示階調で発光させて各分割領域に流れる電流或いは各分割領域に含まれる発光素子のアノード電圧を測定する場合に比べて、発光効率を測定するまでの測定タクトを大幅に短縮することができる。よって、発光効率の変化から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減しつつ、発光パネルの輝度ムラを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、さらに、前記情報処理装置にて、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について設定され、前記第7ステップで求められた膜厚が演算対象の膜厚であるか否かを判断するための所定の膜厚の範囲を記憶するステップを有し、前記第8ステップでは、前記第7ステップで求められた膜厚が1つの場合、前記膜厚が前記所定の膜厚の範囲内にあるか否かを判断し、前記膜厚が前記所定の膜厚の範囲内に存在する場合、前記膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求めることが好ましい。
【0019】
本態様によると、色度カーブから求めた膜厚が発光効率の算出対象とする膜厚の範囲内にあるか否かを判断し、第7ステップで求められた膜厚が、算出対象とする膜厚値の範囲内に存在する場合にだけ、該求められた膜厚に対応する発光効率を求める。換言すれば、補正対象となる画素に含まれる発光素子の色度が正常な色度である場合にだけこの画素の発光効率を求める。よって、表示パネルの表示品質が向上する。
【0020】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は 前記第8ステップでは、一の分割領域内において、前記第7ステップで求められた膜厚が2以上の場合、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚があるか否かを判断し、前記一の分割領域内において、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚が1つ存在する場合、前記前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求めてもよい。
【0021】
本態様によると、また、算出された膜厚値が複数存在する場合、当該複数の膜厚値の中で所定の膜厚の範囲内にある膜厚値を選択する。そして、当該膜厚値が算出対象とする膜厚値の範囲内にある場合にだけ、この画素の発光効率を求める。これにより、算出対象とする膜厚を1つに絞ってから発光効率を求めるので、発光効率の変化から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮することが可能となる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、前記第8ステップでは、一の分割領域内において、前記第7ステップで求められた膜厚が2以上の場合、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚があるか否かを判断し、前記一の分割領域内において、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚が存在しない場合、前記一の分割領域を不良分割領域とし、前記不良分割領域の総和が所定の基準値を超えた場合、前記有機EL表示パネルを不良と判定し、前記第9ステップ〜前記第11ステップを実行しないことが好ましい。
【0023】
本態様によると、算出された1以上の膜厚値が、いずれも算出対象とする膜厚値の範囲内にない場合、膜厚算出対象の分割領域を不良分割領域と判定し、補正対象の表示パネルに含まれる不良分割領域の総和が所定の基準値を超える場合には当該表示パネルをNGと判定し、以降の工程は実行しない。これにより、許容数以上の不良発光素子を含む有機EL表示パネルが出荷されるのを防止できる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、前記不良分割領域の総和が前記所定の基準値以下の場合、各不良分割領域については、各不良分割領域に隣接する分割領域の発光効率値の平均値を、各不良分割領域の発光効率値として求めてもよい。
【0025】
本態様によると、補正対象の表示パネルに含まれる不良分割領域の総和が所定の基準値以下の場合には、不良分割領域の発光効率値として隣接分割領域の発光効率値の平均値を割り当てる。これにより、不良の有機EL素子を含む有機EL表示パネルが出荷されるのを防止でき、出荷する有機EL表示パネルの表示品質が確保される。
【0026】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、さらに、前記情報処理装置にて、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について設定される基準の膜厚を記憶するステップを有し、前記第8ステップでは、前記第7ステップにて求められた膜厚が複数存在する場合、前記複数の膜厚の中で前記基準の膜厚に最も近い膜厚を取得し、前記取得した膜厚が、前記所定の膜厚の範囲内にあるか否かを判断し、前記取得した膜厚が前記所定の膜厚の範囲内に存在する場合、前記膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求めることが好ましい。
【0027】
本態様によると、膜厚−色度特性から得られる膜厚値が複数存在する場合、当該複数の膜厚値の中で基準の膜厚値に最も近い所定の膜厚値を取得する。そして、当該膜厚値が算出対象とする膜厚値の範囲内にある場合にだけ、この画素の発光効率を求める。これにより、算出対象とする膜厚を1つに絞ってから発光効率を求めるので、発光効率の変化から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮することが可能となる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について、前記所定の膜厚の範囲は、前記基準の膜厚の±10%の範囲であることが好ましい。
【0029】
本態様によると、赤色、緑色及び青色の各色について、発光効率算出の判断基準となる膜厚の範囲を、基準膜厚値の±10%の範囲と設定するものである。
【0030】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について、各発光素子から発光される光の波長をλとすると、前記基準の膜厚は、各発光色についてλ/2(半波長)であることが好ましい。
【0031】
本態様によると、赤色、緑色及び青色の各色について、基準膜厚値を各色の半波長と設定するものである。
【0032】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、さらに、前記情報処理装置にて、前記表示パネルに含まれる一の色に対応する複数の画素に共通する代表電流−電圧特性を記憶するステップを有し、前記第10ステップでは、前記第8ステップにて求められた各分割領域の発光効率と前記第9ステップにて求められた基準の発光効率との比を前記代表電流−電圧特性の各電流値に乗算又は除算することにより、各分割領域の電流−電圧特性を求め、当該各分割領域の電流−電圧特性及び前記代表電流−電圧特性の各々に、少なくとも1つの共通の電流値を入力して算出された電圧の差分を前記補正パラメータとしてもよい。
【0033】
本態様によると、算出された発光効率から補正パラメータを求めるために、まず、対象となる画素の発光効率と基準の発光効率との比を代表電流−電圧特性の各電流値に乗算又は除算して、対象となる画素の電流−電圧特性を求める。
【0034】
即ち、TFTのばらつきをほとんど含まない発光素子のばらつきを主として反映した各画素の電流−電圧特性を演算にて求める。
【0035】
そして、上記対象となる画素の電流−電圧特性及び代表電流−電圧特性に、少なくとも1つの共通の電流値を入力して得られた電圧の差分を、対象となる画素の補正パラメータとして求める。
【0036】
これにより、発光素子の発光効率のばらつきを主として補正する補正パラメータを、2次元色彩計を用いた色度の測定に基づき演算により求めることができる。そのため、各画素に流れる電流及び発光素子のアノード電圧を全画素について測定して前記発光効率のばらつきを測定する場合に比べて、補正パラメータの測定タクトを大幅に短縮することができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、各画素に含まれる前記下部電極と前記有機発光層との間には、正孔注入層を含んでもよい。
【0038】
本態様によると、下部電極と有機発光層との間には正孔注入層を含む。即ち、この場合、下部電極の上面から有機発光層の発光点までの膜厚はこの正孔注入層の膜厚に相当する。
【0039】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について、分割領域毎に前記補正パラメータを求めてもよい。
【0040】
本態様によると、赤色、緑色及び青色の各色について補正パラメータを求めるものである。
【0041】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、前記第4ステップでは、前記有機EL表示パネルに含まれる画素毎に、前記撮像された発光画像に基づいて各画素から放出される光の色度を求め、前記第7ステップでは、画素毎に、前記第4ステップにて求められた色度に対応する膜厚を前記色度カーブから求め、前記第8ステップでは、画素毎に、前記第7ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求め、前記第9ステップでは、前記有機EL表示パネルに共通する基準の発光効率を求め、前記第10ステップでは、前記第8ステップにて求められた各画素の発光効率を前記第9ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、画素毎に求めてもよい。
【0042】
本態様によると、画素毎に補正パラメータを求めても良い。
【0043】
また、本発明は、このような特徴的なステップを含む有機EL表示装置の製造方法として実現することができるだけでなく、当該製造方法に含まれる特徴的なステップを手段として生成された補正パラメータを有する有機EL表示装置としても、上記と同様の効果を奏する。
【0044】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る有機EL表示装置の有する表示パネルの輝度ばらつきを補正するための補正パラメータを生成し、当該補正パラメータを有機EL表示装置内に格納する製造工程及び当該製造工程によって製造された有機EL表示装置を説明する。上記格納された補正パラメータは、当該有機EL表示装置が出荷された後の表示動作にて使用される。
【0045】
以下説明する製造工程は、(1)有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子を、全画素について、所定の階調で同時に発光させる第2ステップと、(2)発光した有機EL表示パネルを2次元色彩計に撮像させる第3ステップと、(3)有機EL表示パネルを所定数の領域に分割して、分割領域毎に、撮像された発光画像に基づいて各分割領域から発光された光の色度を求める第4ステップと、(4)有機発光層と反射電極との間の膜厚と一の色に対応する発光素子の色度との関係を表した色度カーブ、及び、有機発光層と反射電極との間の膜厚と一の色に対応する発光素子の発光効率との関係を表した発光効率カーブを記憶するステップと、(5)分割領域毎に、第4ステップにて求められた色度に対応する膜厚を上記色度カーブから求める第7ステップと、(6)分割領域毎に、第7ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を上記発光効率カーブから求める第8ステップと、(7)一の色について、各分割領域に共通する基準の発光効率を求める第9ステップと、(8)第8ステップにて求められた各分割領域の発光効率を、第9ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎に求める第10ステップと、(9)第10ステップにて求められた補正パラメータを記憶部に格納する第11ステップとを含む。これにより、発光効率の変化から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減しつつ、発光パネルの輝度ムラを抑制することができる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0047】
図1は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置1の各回路及び表示部の構成を示すブロック図である。同図における有機EL表示装置1は、制御回路12と、表示パネル11とを備える。制御回路12はメモリ121を有する。表示パネル11は、走査線駆動回路111と、データ線駆動回路112と、表示部113とを備える有機EL表示パネルである。なお、メモリ121は、有機EL表示装置1内であって制御回路12の外部に配置されていてもよい。
【0048】
制御回路12は、メモリ121、走査線駆動回路111、及びデータ線駆動回路112の制御を行う機能を有する。メモリ121には、本実施の形態で説明する製造方法による製造工程の完了後には、本発明の有機EL表示装置の製造方法により生成された補正パラメータが記憶されている。制御回路12は、表示動作時には、メモリ121に書き込まれた補正パラメータを読み出し、外部から入力された映像信号データを、その補正パラメータに基づいて補正して、データ線駆動回路112へと出力する。
【0049】
また、制御回路12は、製造工程においては、外部の情報処理装置と通信することにより、当該情報処理装置の指示に従って表示パネル11を駆動制御する機能を有する。
【0050】
表示部113は、複数の画素を備え、外部から有機EL表示装置1へ入力された映像信号に基づいて画像を表示する。
【0051】
図2は、表示部の有するサブ画素の回路構成の一例及びその周辺回路との接続を示す図である。同図におけるサブ画素208は、走査線200と、データ線201と、電源線202と、選択トランジスタ203と、駆動トランジスタ204と、有機EL素子205と、コンデンサ206と、共通電極207とを備える。また、周辺回路は、走査線駆動回路111と、データ線駆動回路112とを備える。
【0052】
走査線駆動回路111は、走査線200に接続されており、サブ画素208の選択トランジスタ203の導通及び非導通を制御する機能を有する。
【0053】
データ線駆動回路112は、データ線201に接続されており、データ電圧を出力して、駆動トランジスタ204に流れる信号電流を決定する機能を有する。
【0054】
選択トランジスタ203は、ゲートが、走査線200に接続されており、データ線201のデータ電圧を駆動トランジスタ204のゲートに供給するタイミングを制御する機能を有する。
【0055】
駆動トランジスタ204は、駆動素子として機能し、駆動トランジスタ204のゲートは、選択トランジスタ203を介してデータ線201に接続され、ソースは有機EL素子205のアノードに接続され、ドレインは電源線202に接続されている。これにより、駆動トランジスタ204は、ゲートに供給されたデータ電圧を、そのデータ電圧に対応した信号電流に変換し、変換された信号電流を有機EL素子205に供給する。
【0056】
有機EL素子205は、発光素子として機能し、有機EL素子205のカソードは、共通電極207に接続されている。また、有機EL素子205は、赤色、緑色または青色発光する素子であり、サブ画素208は、赤色、緑色または青色発光するサブ画素である。表示パネル11を構成する画素は、赤色のサブ画素、緑色のサブ画素及び青色のサブ画素からなる。
【0057】
コンデンサ206は、電源線202と駆動トランジスタ204のゲート端子との間に接続されている。コンデンサ206は、例えば、選択トランジスタ203がオフ状態となった後も、直前のゲート電圧を維持し、継続して駆動トランジスタ204から有機EL素子205へ駆動電流を供給させる機能を有する。
【0058】
なお、図1、図2には記載されていないが、電源線202は電源に接続されている。また、共通電極207も別の電源に接続されている。
【0059】
データ線駆動回路112から供給されたデータ電圧は、選択トランジスタ203を介して駆動トランジスタ204のゲート端子へと印加される。駆動トランジスタ204は、そのデータ電圧に応じた電流を、ソース−ドレイン端子間に流す。この電流が、有機EL素子205へと流れることにより、その電流に応じた発光輝度で、有機EL素子205が発光する。
【0060】
ここで、有機EL素子205を含むサブ画素208の断面構造について説明する。
【0061】
図3は、実施の形態に係るサブ画素の構造断面図である。同図に記載されたサブ画素208は、基板210と、駆動回路層211と、発光層212と、透明封止膜213とを備える。
【0062】
基板210は、例えば、ガラス基板である。また、基板210は、樹脂からなるフレキシブル基板を用いることも可能である。基板210は、駆動回路層211とともに、薄膜トランジスタ(TFT)基板を構成する。
【0063】
駆動回路層211は、図示していないが、基板210の上に形成された駆動トランジスタ204と、コンデンサ206と、選択トランジスタ203とを備える。駆動回路層211は、平坦化膜により、その上面の平担性が確保されている。
【0064】
発光層212は、反射電極251と、正孔注入層252と、有機発光層253と、電子輸送層254と、バンク層255と、電子注入層256と、透明電極257とを備える。
【0065】
図3に記載されたサブ画素208は、トップエミッション構造を有している。つまり、発光層212に電圧を印加すると、有機発光層253で光が生じ、透明電極257及び透明封止膜213を通じて光が上方に出射される。また、有機発光層253で生じた光のうち下方に向かったものは、反射電極251で反射され、透明電極257及び透明封止膜213を通じて上方に出射される。
【0066】
反射電極251は、駆動回路層211の平坦化膜の表面上に積層され、透明電極257に対して正の電圧を発光層212に印加する陽極である。
【0067】
正孔注入層252は、反射電極251の表面上に形成され、正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して、有機発光層253へ正孔を注入する機能を有する。これにより、発光層212の駆動電圧が低電圧化され、正孔注入の安定化により素子が長寿命化される。
【0068】
有機発光層253は、正孔注入層252の表面上に形成され、正孔と電子が注入され再結合されることにより発光する機能を有する。有機発光層253としては、低分子有機材料だけでなく、インクジェットやスピンコートのような湿式製膜法で製膜できる発光性の高分子有機材料も適用される。
【0069】
バンク層255は、反射電極251または正孔注入層252の表面上に形成され、湿式製膜法を用いて形成される有機発光層253を所定の領域に形成するバンクとしての機能を有する。
【0070】
電子輸送層254は、有機発光層253の表面上に形成され、電子注入層256から注入された電子を有機発光層253内へ効率良く輸送し、有機発光層253と電子注入層256との界面での励起子の失活防止をし、さらには正孔をブロックする機能を有する。
【0071】
電子注入層256は、電子輸送層254の上に形成され、有機発光層253への電子注入の障壁を低減し発光層212の駆動電圧を低電圧化すること、励起子失活を抑制する機能を有する。これにより、電子注入を安定化し素子を長寿命化すること、透明電極257との密着を強化し発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させることが可能となる。
【0072】
なお、電子注入層256は、その隣接層である電子輸送層254や有機発光層253の材料により、省略される場合がある。
【0073】
また、同様に、電子輸送層254及び正孔注入層252も、それらの隣接層との関係により、省略される場合がある。
【0074】
透明電極257は、電子注入層256の表面上に積層され、反射電極251に対して負の電圧を発光層212に印加し、電子を素子内(特に有機発光層253)に注入する機能を有する陰極である。
【0075】
透明封止膜213は、透明電極257の表面上に形成され、水分から素子を保護する機能を有する。また、透明封止膜213は、透明であることが要求される。
【0076】
上述した有機EL素子205の積層構造において、有機発光層253から直接上方へ出射した光と、下方へ出射し反射電極251で反射して上方へ出射した光とを成分として有する合成出射光は、2つの成分光の有する光路差に応じて色度及び発光効率が異なる。具体的には、色度及び発光効率は、有機発光層253と反射電極である反射電極251との間の光学的距離と相関があることが解っている。後述する有機EL表示装置の製造方法は、色度及び発光効率が上記光学的距離に依存することを利用するものである。
【0077】
次に、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実現する製造システムを説明する。
【0078】
図4(a)は、本発明の有機EL表示装置の製造方法に使用される製造システムの概略図であり、図4(b)は、本発明の有機EL表示装置の製造方法に使用される製造システムの機能ブロック図である。図4(a)に記載された製造システムは、有機EL表示装置1と、情報処理装置2と、撮像装置3とを備える。
【0079】
情報処理装置2は、図4(b)に示されたように、演算部21と、記憶部22と、通信部23とを備え、補正パラメータを生成するまでの工程を制御する機能を有する。情報処理装置2としては、例えば、パーソナルコンピュータが適用される。
【0080】
撮像装置3は、情報処理装置2の通信部23からの制御信号により、表示パネル11を撮像し、撮像された画像データを通信部23へ出力する。撮像装置3としては、例えば、2次元色彩計が適用される。
【0081】
情報処理装置2は、有機EL表示装置1内の制御回路12及び撮像装置3へ通信部23を介して制御信号を出力し、撮像装置3から測定データを取得して当該測定データを記憶部22に格納する。また、記憶部22には、撮像装置3での測定データから色度を算出するためのパラメータ、赤色、緑色及び青色それぞれについての膜厚−発光効率カーブ、膜厚−色度カーブ、設計膜厚、膜厚ばらつき範囲、及び発光効率から補正値を算出するためのパラメータ等が、予め格納されている。情報処理装置2は、これらの格納された測定データ、各種パラメータ及び各種特性カーブを演算部21に読み出して、これらをもとに演算部21で演算して発光効率や補正値を算出する。なお、制御回路12は、有機EL表示装置1に内蔵されない制御回路を使用してもよい。
【0082】
制御回路12は、情報処理装置2からの制御信号により、表示パネル11の有するサブ画素208へ与える電圧値を制御する。また、制御回路12は、情報処理装置2で生成された補正パラメータをメモリ121へ書き込む機能を有する。
【0083】
次に、本発明の有機EL表示装置の製造方法を説明する。
【0084】
図5(a)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する動作フローチャートである。また、図5(b)は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法における指示フローを説明する図である。
【0085】
図5(a)には、有機EL表示装置1の有する表示パネル11の輝度ばらつきを補正するため、効率的に補正パラメータを生成し、当該補正パラメータを有機EL表示装置1内に格納するまでの工程が記載されている。上記効率的に生成された補正パラメータとは、有機EL素子205の特性ばらつきに起因した表示パネル11の輝度ムラを抑制すべく、例えば、サブ画素208に印加すべき信号電圧を補正するものであるが、サブ画素208ごとに電流測定または電圧測定せずに生成されるものである。上記補正パラメータを生成するため、本製造方法では、表示部113を、複数のサブ画素208を有する分割領域に分割し、表示パネル11で一斉に撮像装置3により色度情報を測定し、以降は情報処理装置2内での演算処理により、分割領域ごとの色度を特定し、当該色度から、有機発光層−反射電極間の膜厚値というパラメータを介して当該分割領域ごとの発光効率を算出している。上述したように、色度情報の一括測定以外は、当該色度情報と情報処理装置2のメモリに予め格納された情報とから、情報処理装置2が演算することにより上記発光効率を算出するものである。
【0086】
以下、図5(a)に従って、製造工程を説明していく。
【0087】
まず、情報処理装置2は、補正パラメータを作成すべき表示パネル11を選択する。これは、有機EL表示パネルを準備する第1ステップに相当する。
【0088】
次に、情報処理装置2は、選択された表示パネル11の中の一の色(赤、緑、青のうちいずれか)に対応する発光素子を、当該表示パネル11に含まれる全画素について、所定の階調で同時に発光させる。具体的には、情報処理装置2は、まず、同時発光させるべき一の色を選択し、制御回路12に通知する(S01)。次に、情報処理装置2は、同時発光させる階調を選択し、制御回路12に通知する(S02)。そして、制御回路12は、通知された一の色に対応する全サブ画素に対し、通知された階調に応じた電圧を表示パネル11に印加し発光させる(S03)。上述したステップS01〜S03は、第2ステップに相当する。
【0089】
次に、情報処理装置2は、ステップS03で発光した各発光素子から放出される光によって構成される発光画像を撮像装置3に撮像させる(S04)。撮像装置3は、例えば、2次元色彩計であり、上記発光画像が撮像されることにより、画素毎の色度情報が計測される。上記ステップS04は、第3ステップに相当する。
【0090】
情報処理装置2は、赤色、青色及び緑色の各色について、上述したステップS01〜S04を実行する(S05)。
【0091】
次に、情報処理装置2は、表示パネル11を所定数の領域に分割して、分割領域毎に、ステップS04で撮像された発光画像に基づいて、各分割領域から放出される各色光に対する色度を特定する(S06)。上記ステップS06は、第4ステップに相当する。なお、上記分割領域は、複数の画素を単位としたものであってもよいし、一画素を単位としたものであってもよい。例えば、表示パネル11の輝度ムラが、規則性をもっていることが予測できている場合には、当該規則性に応じた分割領域を設定し、規則性を予測できない場合には一画素を分割領域の単位とすることができる。
【0092】
次に、情報処理装置2は、ステップS06で特定された各分割領域の色度から、有機発光層−反射電極間の膜厚値というパラメータを介して、分割領域ごとの発光効率を算出する(S07)。以下、ステップS07の処理動作を詳細に説明する。
【0093】
図6は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法におけるステップS07を説明する動作フローチャートである。
【0094】
まず、情報処理装置2は、分割領域毎の発光効率を算出すべき一の色を選択する(ステップS0701)。
【0095】
次に、情報処理装置2は、発光効率を算出すべき分割領域、または、画素を選択する(ステップS0702)。
【0096】
次に、情報処理装置2は、分割領域毎に、または、画素毎に、ステップS06で特定された色度に対応する膜厚値を、予め記憶部22に格納されている色度カーブから算出する(ステップS0703)。上記ステップS0703は、第7ステップに相当する。
【0097】
次に、情報処理装置2は、分割領域毎に、ステップS0703にて算出された膜厚値に対応する発光効率を、予め記憶部22に格納されている発光効率カーブから算出する(ステップS0711)。上記ステップS0711は、第8ステップに相当する。
【0098】
上記色度カーブは、予め記憶部22に保存されており、ステップS0703における膜厚値の算出時に、記憶部22から演算部21へ読み出されている。ここで、色度カーブとは、表示パネル11の中の一の色に対応する発光素子の色度特性を、有機発光層253と反射電極251との間の膜厚との関係で表したグラフである。ここで、記憶部22に予め保存されている色度カーブは、色ごとに存在する。つまり、膜厚パラメータをL1とし、色ごとの色度値をそれぞれF1R、F1G、F1Bで表すと、記憶部22には、色度カーブF1R(L1)、F1G(L1)及びF1B(L1)が格納されている。上記色度カーブを記憶部22に予め保存するステップは、第5ステップに相当する。
【0099】
また、上記発光効率カーブは、予め記憶部22に保存されており、ステップS0711における発光効率の算出時に、記憶部22から演算部21へ読み出されている。ここで、発光効率カーブとは、表示パネル11の中の一の色に対応する発光素子の発光効率特性を、有機発光層253と反射電極251との間の膜厚との関係で表したグラフである。ここで、記憶部22に予め保存されている発光効率カーブは、色ごとに存在する。つまり、膜厚パラメータをL1とし、色ごとの発光効率をそれぞれF2R、F2G、F2Bで表すと、記憶部22には、発光効率カーブF2R(L1)、F2G(L1)及びF2B(L1)が格納されている。上記発光効率カーブを記憶部22に予め保存するステップは、第6ステップに相当する。
【0100】
図7(a)は、トップエミッション型の有機EL素子の断面構造における出射光の光路差を表す図である。また、図7(b)、図7(c)及び図7(d)は、それぞれ、有機発光層と反射電極との間の膜厚に対する、赤色、緑色及び青色についての有機EL素子の発光効率及び色度の特性を表すグラフである。
【0101】
図7(a)に示されたように、有機EL素子205の積層構造において、有機発光層253から直接上方へ出射した光と、下方へ出射し反射電極251で反射して上方へ出射した光とを成分として有する合成出射光は、2つの成分光の有する光路差に依存して色度が異なる。また、上記光路差により、透明電極257と反射電極251との間に印加される電圧に対する発光輝度で定義される発光効率も異なる。具体的には、図7(b)〜図7(d)に示されたように、各色の色度及び発光効率は、上記光路差を生ぜしめる有機発光層253と反射電極251との間の膜厚L1に依存する。なお、本実施の形態では、膜厚L1は、正孔注入層252と反射電極251との界面から発光位置までの距離に相当する。また、各色により、色度及び発光効率が最大となる膜厚L1の値は異なる。図7(b)〜図7(d)の各々において、実線で表された特性が発光効率カーブに相当し、破線で表された特性が色度カーブに相当する。
【0102】
発光効率ステップS07では、ステップS06で特定された分割領域毎または画素毎の色度と、図7(b)〜図7(d)に示されたグラフとを用いて、分割領域毎または画素毎の膜厚値を算出し、当該膜厚値から発光効率を算出している。例えば、ステップS0703では、図7(b)に示されたように、赤色の有機EL素子において、ステップS06で決定された色度値Aと色度カーブ(図7(b)中の破線)より、色度値Aに対応した膜厚値Bを算出する。次に、ステップS0708では、この膜厚値Bと発光効率カーブ(図7(b)中の実線)より、膜厚値Bに対応した発光効率Cを算出する。
【0103】
但し、上述した発光効率の算出プロセスにおいて、図7(b)〜図7(d)に示されるグラフの曲線性からも解るように、算出されるべき膜厚値が一意に決定されず、複数の膜厚値が算出される場合がある(S0704でNo)。この場合には、上記複数の膜厚値の中で基準の膜厚に最も近い膜厚値を選択する(S0705)。ここで、基準の膜厚とは、各色において所望の発光効率を得るために設定した設計膜厚のことであり、例えば、各発光色についてλ/2(半波長)である。また、上記基準の膜厚は、予め記憶部22に保存されており、ステップS0705における膜厚値の選択時に、記憶部22から演算部21へ読み出されている。ここで、記憶部22に予め保存されている基準の膜厚は、色ごとに存在する。つまり、基準の膜厚をTL1で表すと、記憶部22には、色ごとの基準の膜厚TL1R、TL1G及びTL1Bが格納されている。
【0104】
次に、情報処理装置2は、選択された膜厚値が、所定の膜厚の範囲内に存在する場合(S0706でYes)、ステップS0711において当該選択された膜厚値と発光効率カーブとから、発光効率を算出する。ここで、所定の膜厚の範囲とは、例えば、上記基準の膜厚の±10%の範囲である。また、上記所定の膜厚の範囲は、予め記憶部22に保存されており、ステップS0706の判断時に、記憶部22から演算部21へ読み出されている。ここで、記憶部22に予め保存されている所定の膜厚の範囲は、色ごとに存在する。つまり、所定の膜厚の範囲をRL1で表すと、記憶部22には、色ごとの所定の膜厚の範囲RL1R、RL1G及びRL1Bが格納されている。
【0105】
ここで、情報処理装置2は、選択した膜厚値が、所定の膜厚の範囲内に存在しない場合(S0706でNo)、当該膜厚の算出対象となっている分割領域または画素を、不良分割領域または不良画素としてカウントする。つまり、選択している表示パネル11の不良分割領域数または不良画素数を1増加させる(S0707)。次に、情報処理装置2は、選択している表示パネル11の不良分割領域数または不良画素数が、NG許容分割領域数またはNG許容画素数を超えているかを判定する(S0708)。ここで、NG許容分割領域数またはNG許容画素数とは、1つの表示パネル11の中に許容できる、不良分割領域または不良画素の数を示す基準値である。NG許容分割領域数は、分割領域の表示パネル面積に対する割合に依存して決定され、例えば、分割領域の表示パネル面積に対する割合が大きい場合にはNG許容分割領域数は小さくなる。ステップS0708において、選択している表示パネル11の不良分割領域数または不良画素数が、NG許容分割領域数またはNG許容画素数を超えている場合、当該表示パネル11を不良品であると判定し、以降の補正パラメータを生成する工程を停止する。一方、ステップS0708において、選択している表示パネル11の不良分割領域数または不良画素数が、NG許容分割領域数またはNG許容画素数を超えていない場合、当該膜厚の算出対象となっている不良分割領域または不良画素にフラグを設定する(S0710)。次に、他の分割領域、または、他の画素について、ステップS0703以降を実行する。
【0106】
なお、ステップS0703で算出された膜厚値が一意に決定された場合でも、上述したステップS0706において当該膜厚値が、所定の膜厚の範囲内に存在するか否かを判定し、ステップS0706以降において同様の処理を実行する。
【0107】
つまり、ステップS0703〜S0711では、色度カーブから算出された膜厚が発光効率の算出対象とする膜厚の範囲内にあるか否かを判断し、算出された膜厚が、算出対象とする膜厚値の範囲内に存在する場合にだけ、算出された膜厚に対応する発光効率を求める。換言すれば、補正対象となる分割領域に含まれる有機EL素子205の色度が正常な色度である場合にだけ当該分割領域の発光効率を求める。これにより、表示パネルの表示品質が向上する。
【0108】
また、算出された膜厚値が複数存在する場合、当該複数の膜厚値の中で基準の膜厚値に最も近い所定の膜厚値を選択する。そして、当該膜厚値が算出対象とする膜厚値の範囲内にある場合にだけ、この画素の発光効率を求める。これにより、算出対象とする膜厚を1つに絞ってから発光効率を求めるので、発光効率の変化から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮することが可能となる。
【0109】
上述したステップS0703〜S0711を経ることにより、ステップS0702で選択された分割領域、または、画素についての発光効率が算出される。
【0110】
上述したステップS0703〜S0711を、他の分割領域、または、他の画素について、順次実行することにより、表示パネル11全体における発光効率分布を算出することが可能となる(S0709でYes)。
【0111】
次に、情報処理装置2は、選択した色に対して、分割領域毎または画素毎に算出された発光効率値を記憶部22に格納する。具体的には、まず、発光効率値を格納するために選択された分割領域または画素に、フラグが設定されているか否かを判定する(S0713)。ステップS0713にて、選択された分割領域または画素にフラグが設定されている場合、選択された分割領域または画素は不良分割領域または不良画素であるので、発光効率は算出されていない。よって、当該不良分割領域または不良画素については、当該不良分割領域または不良画素に隣接する分割領域または画素の発光効率値の平均値を、当該不良分割領域または不良画素の発光効率値として求め、当該発光効率値を記憶部22に格納する(S0715)。一方、ステップS0713にて、選択された分割領域または画素にフラグが設定されていない場合、選択した色に対して、当該分割領域または画素についての、ステップS0711で算出された発光効率値を記憶部22に格納する(S0714)。以上のステップS0714及びS0715を全分割領域または全画素において実行する。
【0112】
上述したように、算出された1以上の膜厚値が、いずれも算出対象とする膜厚値の範囲内にない場合、膜厚算出対象の分割領域を不良分割領域と判定し、補正対象の表示パネルがNG許容分割領域数を超える場合には当該表示パネルをNGと判定し、以降の工程は実行しない。また、補正対象の表示パネルがNG許容分割領域数を超えない場合には、不良分割領域の発光効率値として隣接分割領域に起因した発光効率値を割り当てる。これにより、不良の有機EL素子205を含む有機EL表示パネルが出荷されるのを防止でき、また出荷する有機EL表示パネルの表示品質が確保される。
【0113】
次に、上述したステップS0702〜S0714またはS0715を、他の色について、順次実行することにより、全色における発光効率分布を算出して記憶部22に格納する(S0716でYes)。
【0114】
以上により、図5に記載されたステップS07が完了する。再び、図5(a)に戻って、本発明の有機EL表示装置の製造方法を説明する。
【0115】
次に、情報処理装置2は、ステップS07で算出した発光効率分布を用いて補正パラメータを算出する(S08)。
【0116】
具体的には、情報処理装置2は、色ごとに、各分割領域または各画素に共通する基準の発光効率を求める。ここで、基準の発効効率とは、例えば、ステップS07で算出した発光効率を色ごとに平均した値である。この基準の発光効率を算出するステップは、第9ステップに相当する。
【0117】
次に、情報処理装置2は、ステップS07にて求められた各分割領域または各画素の発光効率を、ステップS09にて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎または画素毎に算出する。上記補正パラメータを算出するステップは、第10ステップに相当する。
【0118】
最後に、上記補正パラメータを有機EL表示装置1のメモリ121に格納する(ステップS09)。上記ステップS09は第11ステップに相当する。
【0119】
以上の工程により、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法が完了する。
【0120】
ここで、上述したステップS08に記載された補正パラメータの算出方法について詳細に説明する。ここで説明する上記補正パラメータは、有機EL表示装置1に入力される映像信号に対応した、各画素に印加すべき信号電圧を加減算する補正電圧値のことである。
【0121】
まず、情報処理装置2は、表示パネル11に含まれる一の色に対応する複数の画素に共通する代表電流−電圧特性を、予め記憶部22に格納している。ここで、上記代表電流−電圧特性とは、例えば、以下のようにして取得される。
【0122】
例えば、まず、情報処理装置2は、表示部113の有する複数の画素から、代表電流−電圧特性を決定するための測定用画素を抽出する。この測定用画素は、1つであってもよいし、規則性に従い、または無作為に選択された複数の画素であってもよい。
【0123】
次に、情報処理装置2は、測定用画素の各々について制御回路12にデータ電圧を印加させ、電流計により対応する電流値を測定させる。演算部21は、測定データを取得し、測定用画素ごとの電流−電圧特性を求める。
【0124】
最後に、情報処理装置2は、複数の測定用画素の各々について得られた電流−電圧特性を平均化することにより代表電流−電圧特性を求める。ここで、代表電流(I)−電圧(V)特性を、
I=F(V) (式1)
とする。
【0125】
次に、ステップS08において、ステップS07にて求められた各分割領域の発光効率と上記基準の発光効率との比を代表電流−電圧特性の各電流値に乗算又は除算することにより、各分割領域の電流−電圧特性を求める。つまり、補正電圧値をα、基準の発効効率をηAVE、各分割領域または各画素の発光効率をηnとすると、
I×(ηAVE/ηn)=F(V+α) (式2)
が成立する。上記式1及び式2に、少なくとも1つの共通の電流値(I)を入力することにより、各分割領域または各画素(n=1、2、3、・・・)について、階調ごと(Vごと)の補正電圧値α=G(V)を補正パラメータとして求めることが可能となる。
【0126】
なお、代表電流−電圧特性を取得する具体的方法は、本発明の有機EL表示装置ごとにしなくてもよい。例えば、代表電流−電圧特性として、同一条件で製造される他の有機EL表示装置の製造方法において取得された代表電流−電圧特性を自己の有機EL表示装置の代表電流−電圧特性としてそのまま利用してもよい。これにより、ある有機EL表示装置の製造方法で求められた代表電流−電圧特性を、当該装置と同一条件で製造される他の有機EL表示装置の製造方法で利用するので、複数の表示パネルの補正パラメータを測定するたびに代表電流−電圧特性を設定する手間を省くことができる。その結果、本装置の製造プロセスを短縮できる。
【0127】
分割領域及び各画素の輝度のばらつきは、各画素に含まれる有機EL素子205の発光効率のばらつきや、有機EL素子205を駆動するための駆動トランジスタ204の特性ばらつきに起因して発生する。
【0128】
従来、有機EL素子の発光効率のばらつきを補正する補正パラメータを求めるために、各画素を所定の表示階調で発光させ、各画素に流れた電流或いは有機EL素子のアノード電圧を測定する場合がある。しかしながら、この場合、各画素に流れた電流或いは有機EL素子のアノード電圧を画素毎に測定する必要があるので、各画素の補正パラメータを求めるまでの測定タクトが長くなる。
【0129】
本実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法によれば、2次元色彩計を用いて各分割領域を同時に撮像して各分割領域の色度を算出し、当該色度に基づいて各分割領域の発光効率を求めるので、各分割領域を所定の表示階調で発光させて各分割領域に流れる電流或いは各分割領域に含まれる有機EL素子205のアノード電圧を測定する場合に比べて、発光効率を測定するまでの測定タクトを大幅に短縮することができる。よって、発光効率の変化から補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減しつつ、表示パネル11の輝度ムラを抑制することができる。
【0130】
図8は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法により補正された有機EL表示装置の効果を説明する図である。従来の製造方法では、補正パラメータを生成するにあたり、表示パネルの分割領域ごとに電流或いは有機EL素子のアノード電圧を測定する必要がある。また、補正パラメータを生成するためのタクト時間は、各種測定機器を用いて電流或いはアノード電圧を測定する時間が支配的であり、情報処理装置による演算時間は微小である。よって、上記タクト時間は、分割領域の数または画素数が増加するに伴い増加する。表1に示されるように、従来では、例えば、分割領域数が400以上でタクト時間が478秒となる。
【0131】
【表1】

【0132】
一方、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法を用いた場合、撮像装置3を用いて表示パネル11を撮像する時間は、分割領域の数によらず一定であり、また、情報処理装置による演算時間は微小である。よって、表1に示されるように、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法では、例えば、分割領域数によらずタクト時間は20秒となる。分割領域の数を400以上として表示パネル11の輝度ムラの補正パラメータを生成する場合、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置の製造方法を用いることにより、タクト時間を1/24程度に低減することが可能となる。
【0133】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の有機EL表示装置の製造方法により生成された補正パラメータを用いて、有機EL表示装置が表示パネルを表示動作させる場合について説明する。
【0134】
図9は、本発明の有機EL表示装置の製造方法により生成された補正パラメータにより表示パネルを表示動作させるときの動作フローチャートである。
【0135】
また図10は、本発明の実施の形態2に係る有機EL表示装置の、表示動作時における電圧オフセットの補正動作を説明する図である。
【0136】
まず、有機EL表示装置1は、外部から映像信号を入力する(S10)。
【0137】
次に、制御回路12は、メモリ121から、実施の形態1で格納された分割領域毎の補正パラメータから、映像信号に対応した補正電圧値αを読み出す(S11)。
【0138】
次に、制御回路12は、映像信号に対応する信号電圧に上記補正電圧値を加減算して、補正された信号電圧を算出する(S12)。
【0139】
最後に、制御回路12は、走査線駆動回路111及びデータ線駆動回路112に対して、補正電圧値αにより補正された信号電圧を対象分割領域または対象画素へ供給させる(S13)。
【0140】
以上の表示動作により、表示パネルに含まれる各有機EL素子の発光ばらつきを抑制できる。その結果、発光パネルの輝度ムラを防止できる。
【0141】
以上実施の形態1及び2について述べてきたが、本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。上述した実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る有機EL表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0142】
例えば、本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法は、図11に記載されたような薄型フラットTVに内蔵される。本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法により、補正パラメータを生成するためのタクト時間を短縮して製造コストを低減しつつ、発光パネルの輝度ムラが抑制されたディスプレイを備えた低コストの薄型フラットTVが実現される。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、特に有機EL表示装置を内蔵する有機ELフラットパネルディスプレイに有用であり、低コスト及び画質の均一性が要求されるディスプレイの表示装置及びその製造方法として用いるのに最適である。
【符号の説明】
【0144】
1 有機EL表示装置
2 情報処理装置
3 撮像装置
12 制御回路
21 演算部
22 記憶部
23 通信部
11 表示パネル
111 走査線駆動回路
112 データ線駆動回路
113 表示部
121 メモリ
200 走査線
201 データ線
202 電源線
203 選択トランジスタ
204 駆動トランジスタ
205 有機EL素子
206 コンデンサ
207 共通電極
208 サブ画素
210 基板
211 駆動回路層
212 発光層
213 透明封止膜
251 反射電極
252 正孔注入層
253 有機発光層
254 電子輸送層
255 バンク層
256 電子注入層
257 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と反射電極間に赤色の光を放出する有機発光層を有する第1発光素子、透明電極と反射電極間に緑色の光を放出する有機発光層を有する第2発光素子、及び透明電極と反射電極間に青色の光を放出する有機発光層を有する第3発光素子を含む画素を複数配列した有機EL表示パネルと、前記有機EL表示パネルの発光画像を撮像する2次元色彩計と、前記2次元色彩計にて撮像された発光画像に基づいて各発光素子の発光効率を補正する補正パラメータを生成する情報処理装置とを含むシステムにより、前記有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置を製造する方法であって、
前記有機EL表示パネルを準備する第1ステップと、
前記情報処理装置からの指示によって、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子を、前記有機EL表示パネルに含まれる全画素について、所定の階調で同時に発光させる第2ステップと、
前記情報処理装置からの指示によって、前記第2ステップにて発光した各発光素子から放出される光によって構成される発光画像を前記2次元色彩計に撮像させる第3ステップと、
前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルを所定数の領域に分割して、分割領域毎に、前記撮像された発光画像に基づいて各分割領域から放出される光の色度を求める第4ステップと、
前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子の色度特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した色度カーブを記憶する第5ステップと、
前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色に対応する発光素子の発光効率特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した発光効率カーブを記憶する第6ステップと、
前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第4ステップにて求められた色度に対応する膜厚を前記色度カーブから求める第7ステップと、
前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第7ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める第8ステップと、
前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色について、各分割領域に共通する基準の発光効率を求める第9ステップと、
前記第8ステップにて求められた各分割領域の発光効率を前記第9ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎に求める第10ステップと、
前記第10ステップにて求められた前記補正パラメータを前記有機EL表示パネルに用いられる前記有機EL表示装置内の記憶部に格納する第11ステップとを含む
有機EL表示装置の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記情報処理装置にて、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について設定され、前記第7ステップで求められた膜厚が演算対象の膜厚であるか否かを判断するための所定の膜厚の範囲を記憶するステップを有し、
前記第8ステップでは、
前記第7ステップで求められた膜厚が1つの場合、
前記膜厚が前記所定の膜厚の範囲内にあるか否かを判断し、
前記膜厚が前記所定の膜厚の範囲内に存在する場合、前記膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める
請求項1記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第8ステップでは、
一の分割領域内において、前記第7ステップで求められた膜厚が2以上の場合、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚があるか否かを判断し、
前記一の分割領域内において、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚が1つ存在する場合、前記前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める
請求項2記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第8ステップでは、
一の分割領域内において、前記第7ステップで求められた膜厚が2以上の場合、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚があるか否かを判断し、
前記一の分割領域内において、前記2以上の膜厚の中に前記所定の膜厚の範囲内にある膜厚が存在しない場合、前記一の分割領域を不良分割領域とし、
前記不良分割領域の総和が所定の基準値を超えた場合、前記有機EL表示パネルを不良と判定し、前記第9ステップ〜前記第11ステップを実行しない
請求項2記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記不良分割領域の総和が前記所定の基準値以下の場合、各不良分割領域については、各不良分割領域に隣接する分割領域の発光効率値の平均値を、各不良分割領域の発光効率値として求める
請求項4記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記情報処理装置にて、前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について設定される基準の膜厚を記憶するステップを有し、
前記第8ステップでは、
前記第7ステップにて求められた膜厚が複数存在する場合、
前記複数の膜厚の中で前記基準の膜厚に最も近い膜厚を取得し、
前記取得した膜厚が、前記所定の膜厚の範囲内にあるか否かを判断し、
前記取得した膜厚が前記所定の膜厚の範囲内に存在する場合、前記膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める
請求項2記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について、前記所定の膜厚の範囲は、前記基準の膜厚の±10%の範囲である
請求項6記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について、各発光素子から発光される光の波長をλとすると、
前記基準の膜厚は、各発光色についてλ/2(半波長)である
請求項6又は7に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記情報処理装置にて、前記表示パネルに含まれる一の色に対応する複数の画素に共通する代表電流−電圧特性を記憶するステップを有し、
前記第10ステップでは、
前記第8ステップにて求められた各分割領域の発光効率と前記第9ステップにて求められた基準の発光効率との比を前記代表電流−電圧特性の各電流値に乗算又は除算することにより、各分割領域の電流−電圧特性を求め、
当該各分割領域の電流−電圧特性及び前記代表電流−電圧特性の各々に、少なくとも1つの共通の電流値を入力して算出された電圧の差分を前記補正パラメータとする
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項10】
各画素に含まれる前記下部電極と前記有機発光層との間には、正孔注入層を含む
請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1発光素子、前記第2発光素子、及び前記第3発光素子の各々について、分割領域毎に前記補正パラメータを求める
請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第4ステップでは、前記有機EL表示パネルに含まれる画素毎に、前記撮像された発光画像に基づいて各画素から放出される光の色度を求め、
前記第7ステップでは、画素毎に、前記第4ステップにて求められた色度に対応する膜厚を前記色度カーブから求め、
前記第8ステップでは、画素毎に、前記第7ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求め、
前記第9ステップでは、前記有機EL表示パネルに共通する基準の発光効率を求め、
前記第10ステップでは、前記第8ステップにて求められた各画素の発光効率を前記第9ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、画素毎に求める
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項13】
透明電極と反射電極間に赤色の光を放出する有機発光層を有する第1発光素子、透明電極と反射電極間に緑色の光を放出する有機発光層を有する第2発光素子、及び透明電極と反射電極間に青色の光を放出する有機発光層を有する第3発光素子を含む画素を複数配列した表示部を備える有機EL表示装置であって、
前記有機EL表示装置は、
前記表示部に含まれる複数の画素の各々にデータ電圧を供給するための複数のデータ線と、
映像信号に対応するデータ電圧を前記複数のデータ線に供給するデータ線駆動回路と、
所定の補正パラメータを前記複数の画素毎に格納する記憶部と、
前記記憶部から前記複数の画素の各々に対応する前記所定の補正パラメータを読出し、外部から入力された映像信号に対して前記所定の補正パラメータを加減算して前記複数の画素の各々に対応する映像信号を補正し、前記補正された映像信号を前記データ線駆回路に供給する補正部と、を備え、
前記所定の補正パラメータは、前記表示部を撮像する2次元色彩計と、前記2次元色彩計にて撮像された発光画像に基づいて各発光素子の発光効率を補正する補正パラメータを生成する情報処理装置とを含むシステムにより生成され、
前記情報処理装置からの指示によって、前記表示部の中の一の色に対応する発光素子を、前記有機EL表示パネルに含まれる全画素について、所定の階調で同時に発光させる第1ステップと、
前記情報処理装置からの指示によって、前記第1ステップにて発光された各発光素子から放出される光によって構成される発光画像を前記2次元色彩計に撮像させる第2ステップと、
前記情報処理装置にて、前記表示部を所定数の領域に分割して、分割領域毎に、前記撮像された発光画像に基づいて各分割領域から放出される光の色度を求める第3ステップと、
前記情報処理装置にて、前記表示部の中の一の色に対応する発光素子の色度特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した色度カーブを記憶する第4ステップと、
前記情報処理装置にて、前記表示部の中の一の色に対応する発光素子の発光効率特性を、前記有機発光層と前記反射電極との間の膜厚との関係で表した発光効率カーブを記憶する第5ステップと、
前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第3ステップにて求められた色度に対応する膜厚を前記色度カーブから求める第6ステップと、
前記情報処理装置にて、分割領域毎に、前記第6ステップにて求められた膜厚に対応する発光効率を前記発光効率カーブから求める第7ステップと、
前記情報処理装置にて、前記有機EL表示パネルの中の一の色について、各分割領域に共通する基準の発光効率を求める第8ステップと、
前記第7ステップにて求められた各分割領域の発光効率を前記第8ステップにて求められた基準の発光効率に補正するための補正パラメータを、分割領域毎に求める第9ステップと、
前記9ステップにて求められた前記補正パラメータを前記記憶部に格納する第10ステップと、により生成される
有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−8405(P2012−8405A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145408(P2010−145408)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】