説明

板材による平面構造

【課題】複数の板材を間に所定寸法の隙間を設けて配置することにより平面を構築する構造において、美麗な意匠を提供する。
【解決手段】各板材1裏面側に隣接する板材1と対向する側端部に沿って切欠段部4を形成し、切欠段部4,4間に、切欠段部4,4の幅寸法の和よりも若干大きい幅寸法を有する目地板材10を配置する。また各板材1の表面側における側端部に湾曲面1aを形成する。壁面Wは板材1,1間に設けられる隙間Dを湾曲面1a,1aで挟んだ形態となるから、優美な外観を呈し優れた意匠性を発揮する。切欠段部4と目地板材10とを突き合わせることにより、所定寸法の隙間Dを確実に形成でき、板材1,1の位置合わせが適切になされるから位置決め作業がきわめて簡単である。板材表面に湾曲面形成を施した後、切欠段部を形成するから、所望意匠を付与するのが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板材を、間に所定寸法の隙間を設けて配置することにより、壁面・天井・床面等の平面を構築するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
腰壁などを仕上げるに際し、比較的幅の狭い板材を複数配置して壁面を構築することがある。この場合、隣接する板材の端縁部を突き合わせたときに、通常の加工精度では接合部の境界に乱れや凹凸が生じ易く、見栄えが非常に悪くなることがしばしば有る。そこで板材の加工精度の低さを目立たせないようにするため、複数の板材を間に隙間を設けて配置することにより、壁面を見栄え良く構築するための技術が例えば特許文献1に記載されている。同文献1には、隣接する板材における接合側の端部に相じゃくりとなる段部を設け、この段部を重ね合わせて接合することにより、隣接する板材間に溝を形成することが記載されている。あるいは、板材の接合用端部に、相じゃくり用の段部と共に溝をあらかじめ形成しておくことが記載されている。かかる構成によれば、隣接する板材の間に、見かけ上、所定幅の隙間が形成されるから、見合えが向上すると考えられる。
【特許文献1】特公昭55−25045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載される技術は、板材の端部に相じゃくり用の段部を形成する必要があるため、板材における接合側の端縁部に与えられる形態は、直線的・平面的なものに限定され、設けることのできる意匠が制限されるという難点があった。特に、重ね合わせたときの裏面側に位置する方の板材段部に、美麗な湾曲面を形成することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、複数の板材を間に所定寸法の隙間を設けて配置することにより平面を構築するための構造において、隣接する板材と対向する側縁部に所望に応じ美麗な意匠を容易に付与し得る手段を提供するものであって、その特徴とするところは、請求項1に記載する如く、各板材における裏面側に、隣接する板材に対向する側端部に沿って、所定幅寸法の切欠段部を形成し、前記隣接する板材の切欠段部間に嵌合する目地板材を配置し、前記目地板材を、前記隣接する板材それぞれの切欠段部の幅寸法の和に前記隙間寸法を加えた幅寸法を有するものとしたことである。
【0005】
あるいは、複数の板材により平面を構築するための構造において、請求項2に記載する如く、各板材における裏面側に、隣接する板材と対向する側端部に沿って、所定幅寸法の切欠段部を形成し、前記隣接する板材の切欠段部間に目地板材を配置し、当該目地板材の表面に、前記隣接する板材間の隙間寸法に等しい幅寸法を有する凸条を形成する構成とすることも可能である。
【0006】
本発明に係る前記構成を採用した場合、請求項3に記載する如く、各板材における隣接する板材と対向する側端部の表面側に、湾曲面を形成することが容易である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る板材による平面構造は、隣接する板材の切欠段部間に、隣接する板材それぞれの切欠段部の幅寸法の和に、形成しようとする隙間の幅寸法を加えた幅寸法を有する目地板材を配置するので、板材の切欠段部と目地板とを突き合わせることにより、板材間に所定寸法の隙間を確実に形成できる。しかも同時に、隣接する板材どうしの位置合わせが適切になされるから、位置決め作業がきわめて簡単であり、依って施工能率が非常に良い。板材における側端部の表面側に湾曲面形成等の加工を施したあとで、前記切欠段部の形成を行えばよいから、側端部に所望の意匠を付与するのが容易である。従って、きわめて意匠性に優れた美麗な平面を構築することが可能である。
【0008】
請求項2に係る板材による平面構造は、隣接する板材の切欠段部間に配置する目地板材の表面に、前記隣接する板材間の隙間寸法に等しい幅寸法を有する凸条を形成したので、板材の側端部を上記凸条に突き合わせることにより、板材間に所定寸法の隙間を確実に形成できる。また隣接する板材どうしの位置決め作業もきわめて簡単になる。板材における側端部の表面側に湾曲面形成等の加工を施したあとで、前記切欠段部の形成を行えばよいから、側端部に所望の意匠を付与するのが容易である。従って、きわめて意匠性に優れた美麗な平面の構築が可能である。
【0009】
なお請求項3に係る本発明によれば、各板材における隣接する板材と対向する側端部の表面側に湾曲面が形成されるから、板材間の隙間を湾曲面で挟んだ形態の平面構造が得られる。かかる平面構造は、従来の直線や平面のみで構成されたものと比べて、はるかに優美な外観を呈することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明に係る平面構造を用いて構築した壁面Wの一例を示すものであり、同図(A)は壁面Wの一部を示す斜視図、同図(B)は要部を拡大した斜視図である。壁面Wは、複数の板材1,1…と、隣接する板材1,1間に配置される目地板材10とから構成される。本発明の特徴は、各板材1の裏面側に、隣接する板材1と対向する側端部に沿って切欠段部4を形成し、該切欠段部4,4間に、この切欠段部4,4の幅寸法の和よりも若干大きい幅寸法を有する目地板材10を嵌合配置したこと、及び、各板材1の表面側における隣接する板材1と対向する側端部に、湾曲面1aを形成したことである。かかる構成により得られる壁面Wは、板材1,1間に設けられる隙間Dを湾曲面1a,1aで挟んだ形態となるから、きわめて優美な外観を呈するものとなり、優れた意匠性を発揮する。
【0011】
本発明に使用する板材1は、材質に関し特に制限はなく、例えば、単板、合板、中質繊維板(MDF)・硬質繊維板・軟質繊維板等の繊維板、パーティクルボード、PET等の合成樹脂チップ成形板、無機質材料を圧縮成形した不燃ボード、さらにはこれらを組み合わせた積層板等が挙げられ、用途に応じ適宜選択すればよい。上記のうち内装用としては強度,価格,加工性,反りの生じにくさ等を考慮するとMDFが好適と考えられ、外装用としては不燃ボードが好適である。板材1は、薄くし過ぎると端縁部に後述の方法で湾曲面を形成するのが困難になると共に、強度が不足するおそれがあり、厚くし過ぎると重量が過大になり取り扱いが難しくなる。従って、板材1の厚みは、上記要件を勘案して、壁面構築用の場合、約1.5〜25mmの範囲が好適である。但し、この値は限定的なものではない。また天井構築用の場合は、軽量化のため比較的薄い板厚を採用し、床面構築用の場合は、強度確保のため比較的大きい板厚を採用するのが望ましい。
【0012】
板材1の表面は無加工でもよいが、塗装を施してもよく、後述するように側端部に湾曲面1aを設ける場合は、表面に、印刷紙、化粧紙、つき板、合成樹脂(例えばメラミン・DAP・PET・ウレタン・塩化ビニル等)のシート又はフィルムなどの化粧材を貼り付けたものとすることが望ましい。また化粧材の表面に、さらにポリエステル,ウレタン,メラミン,ダップ(DAP)等を塗布して合成樹脂層を設けてもよい。なお必要に応じ、化粧材の下層に、パーチメント紙、防水紙、強化紙、織布又は不織布等の布類、樹脂含浸紙等から成る補強材を介装させてもよい。
【0013】
目地板材10についても、その材質に特に制限はなく、角材・単板・合板・パーティクルボード・MDF等の木質材を薄板状に成形又は裁断したもの、プラスチック成形品、金属板等を使用できる。目地板材10の長さは板材1とほぼ等しく設定され、幅寸法は、隣接する板材1,1間に設ける隙間Dの寸法(α)を勘案して設定される。すなわち、切欠段部4,4の幅寸法の和よりもαだけ大きく設定される。厚み寸法は、板厚や形成しようとする隙間Dの深さ寸法等の施工条件に応じ適宜設定されるが、少なくとも0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上であればよい。
【0014】
本発明に係る壁面Wを施工するにあたり、あらかじめ、板材1における隣接する板材1と対向する側端部の表面側に湾曲面1aを形成する。図2(A)に示すように、板材1が基材2に化粧材3を貼着して成る場合、当該板材1の側端部において、基材2の裏面側から化粧材3の裏面側途中までを切削し、層厚みが薄い折曲処理領域11と、やや厚みの大きい貼着領域12と、末端の断面三角形状の突起部13とを形成する。折曲処理領域11の長さや厚みは形成しようとする湾曲部の曲率半径に応じ適宜設定される。すなわち、曲率半径の大きい湾曲面を形成するときは折曲処理領域11を長くし、曲率半径の小さい湾曲面とするときは折曲処理領域11を短くする。なお湾曲面の曲率半径を5mm以下とする場合は、折曲処理領域11の層厚みを0.05〜0.7mmの範囲内に設定するのが望ましい。
【0015】
引き続き、折曲処理領域11に適量の合成樹脂Pを塗布すると共に、貼着領域12に接着剤Qを塗布する。合成樹脂Pと接着剤Qの塗布順序はいずれが先でもよく、両者同時でもよい。また合成樹脂Pと接着剤Qとは、同一種類でも別種類でもよい。しかる後、図2(B)に示すように、折曲処理領域11を折り曲げて、貼着領域12を基材2の切削面に貼着する。これにより、折曲処理領域11の裏面側が合成樹脂Pで充填された湾曲面1aが形成される。このとき、端部に設けた突起部13は、貼着位置の目安となる。前記折曲処理を加熱下で行えば、折曲処理領域11の表面側を軟化させることにより、曲率半径が小さくても表面性状が美麗な湾曲面を得られる。なお図示は省略したが、折曲処理領域11の裏面側に、合成樹脂Pと共に、竹・木・合成樹脂・ゴム・紙・金属・セラミック等で製作した細長い棒材を配置して、湾曲面1aを形成するという手法も可能である。
【0016】
前記板材1の側端部における表面側に湾曲面1aを形成したならば、続いて、図(C)に示す如く、裏面側を切削して、切欠段部4を形成する。切欠段部4の幅寸法n及び高さ寸法mは、使用する目地板材10の外形寸法と、板材1,1間に形成する隙間寸法とを勘案して設定される。通常は、切欠段部4の高さと目地板材10の厚みとはほぼ等しく設定されるが、板材1を取付面へ固定するのに両面テープを使用する場合は、当該両面テープの厚み分だけ目地板材10の厚み寸法を切欠段部4の高さmより大きく設定してもよい。あるいは、目地板材10を取付面へ固定するのに両面テープを使用する場合は、当該両面テープの厚み分だけ目地板材10の厚み寸法を切欠段部4の高さmよりも小さく設定してもよい。なお前記手順を反対にして、先に切欠段部4を形成してから、湾曲面1aを形成することも考えられるが、この手法は、板材1が十分な厚みを有していないかぎり、きわめて困難又は作業性が悪い。
【0017】
このようにして、板材1の表面側に湾曲面1a、裏面側に切欠段部4を設けたならば、この板材1を用いて壁面Wを施工する。その手順の一例を説明すると、図3(A)に示す板材1において、一方の側端部の切欠段部4に、あらかじめ目地板材10を接着剤等で固定する。また所望により、板材1の裏面における適当位置(例えば切欠段部4の近傍)に仮止め用の両面粘着テープ20を貼り付けておく。次に同図(B)に示すように、最初の板材1を、取付面30における所定位置に粘着テープ20と接着剤21とで貼着する。ここで取付面30とは、躯体壁面や下地材表面のほか、リフォーム目的の場合、既存の壁面も考えられる。
【0018】
次いで図3(C)に示す如く、裏面適所に両面粘着テープ20を貼り付け、切欠段部4とテープ20部分を除く裏面に接着剤21を塗布した次の板材1を、当該切欠段部4が前記目地板材10に合致するように配置する。このとき、次の板材1の取付位置および取付姿勢は、その切欠段部4を目地板材10に沿わせることによって簡単に決定することができる。つまり、板材1の位置決め作業が容易なので、施工能率が非常に良い。また位置決めが確実になる結果、隙間Dの形状が端正になる効果も発揮される。引き続き、上記手順を繰り返すことにより、隣接する板材1,1間に一定幅寸法(α)の隙間Dが設けられた壁面Wを構築することができる。なお、上記隙間の幅寸法αは、壁面Wの意匠性を考慮して設定され、通常は0.5〜7mm程度、好ましくは1〜3mmとする。
【0019】
ところで、図3に示すとおり、隣接する板材1,1間に配置される目地板材10の幅寸法kは、隣接する切欠段部4,4の幅寸法lの和(=2n)より若干大きく設定されている。すなわち、隣接する板材1,1間に設ける隙間Dの幅寸法αだけ、目地板材10の幅寸法kが大きい。また本例では、目地板材10の厚み寸法jは、切欠段部4の高さ寸法mにほぼ等しく設定されている。なお隣接する切欠段部4の幅寸法lが等しくない場合も考えられるが、そのような場合にも、目地板材10の幅寸法kを、隣接する切欠段部4,4の幅寸法の和より、隙間Dの幅寸法αだけ大きく設定すればよい。
【0020】
板材1の表面側における隣接する板材1と対向する側縁部の形態は、前記湾曲面1aのほか、図4(A)に例示する如く、傾斜面1bとする形態、同図(B)の如く断面Vカット1cとする形態も考えられる。さらには、同図(C)のように側端部を加工しない態様を採用することも妨げない。いずれの場合でも、本発明によれば、施工能率の向上、隙間Dの端正化の効果が発揮される。
【0021】
図5(A)は、目地板材10の表面に凸条10aを設け、この凸条10aに板材1,1の側端部を当接させることにより、板材1,1間に隙間Dを形成するようにした実施形態を示すものである。本例の場合、凸条10aによって板材1の位置決めがなされるから、目地板材10の幅寸法を、隣接する切欠段部4,4の幅寸法と隙間Dの幅寸法との和より短くすることも可能である。
【0022】
図5(B)に示すように、板材1の裏面に貼り付ける両面粘着テープ20の厚みが大きい場合、目地板材10の取付面30に対する接触状態を適正にするため、目地板材10の厚みを、切欠段部4の高さより若干大きく設定することが望ましい。反対に目地板材10の裏面に厚みの大きい両面粘着テープ22を貼り付ける場合は、図5(C)に示す如く、目地板材10の厚みを、切欠段部4の高さ寸法より若干小さく設定することが望ましい。
【0023】
本発明の適用対象は、壁面に限定されるのではなく、天井面や床面の構築にも適用し得るものであり、材質を適当に選定すれば、内装のみならず、外装用にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に関するものであって、図(A)は壁面の一部を示す斜視図、図(B)は壁面の要部を拡大して示す斜視図である。
【図2】本発明に用いる板材の加工手順を示すものであって、図(A)は板材の側端部を切削した状態を示す要部の側面図、図(B)は折曲処理領域を湾曲させた状態を示す側面図、図(C)は切欠段部を形成した状態を示す側面図である。
【図3】本発明を適用した壁面の施工手順を示すものであって、図(A)は板材と目地板材とを示す要部の平面図、図(B)は目地板材を固定した板材を取付面に貼着した状態を示す平面図、図(C)は別の板材を貼り付けた状態を示す平面図である。
【図4】図(A)〜(C)はいずれも本発明の異なる実施形態に関するものであり、壁面の要部を示す平面図である。
【図5】図(A)〜(C)はいずれも本発明のさらに異なる実施形態に関するものであり、壁面の要部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…板材 1a…湾曲面 2…基材 3…化粧材 4…切欠段部 10…目地板材 20…両面粘着テープ 21…接着剤 30…取付面 D…隙間 W…壁面(平面構造) α…隙間の幅寸法 j…目地板材の高さ寸法 k…目地板材の幅寸法 m…切欠段部の高さ寸法 n…切欠段部の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材を間に所定寸法の隙間を設けて配置することにより平面を構築するための構造であって、各板材における裏面側に、隣接する板材と対向する側端部に沿って、所定幅寸法の切欠段部が形成され、前記隣接する板材の切欠段部間に嵌合する目地板材が配置され、前記目地板材は、前記隣接する板材それぞれの切欠段部の幅寸法の和に前記隙間寸法を加えた幅寸法を有していることを特徴とする板材による平面構造。
【請求項2】
複数の板材を間に所定寸法の隙間を設けて配置することにより平面を構築するための構造であって、各板材における裏面側に、隣接する板材と対向する側端部に沿って、所定幅寸法の切欠段部が形成され、前記隣接する板材の切欠段部間に目地板材が配置され、当該目地板材の表面に、前記隣接する板材間の隙間寸法に等しい幅寸法を有する凸条が形成されていることを特徴とする板材による平面構造。
【請求項3】
各板材における隣接する板材と対向する 側端部の表面側に、湾曲面が形成されている請求項1又は2に記載の板材による平面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−316404(P2006−316404A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136895(P2005−136895)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(390000723)
【Fターム(参考)】